説明

PWMサイクロコンバータ

【課題】電源異常が発生した場合でも、運転を中断することなく電源の切り替えを行う。
【解決手段】
三相交流電源1に電源異常が発生すると、電源異常検出回路30により電源異常検出信号120が出力される。そのため、電源切り替え器20は、無停電電源10の出力電圧を選択して出力する。位相検出回路切り替え器43は、無停電電源位相検出回路41から出力される位相情報を選択して出力する。無停電電源位相検出回路41では、電源異常が発生する前から無停電電源10の位相の検出を行っているので、位相検出回路切り替え器43が出力する位相情報の切り替えを行った直後でも無停電電源10の正確な位相情報を出力できる。従って、電源切り替えの際に運転を中断することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定周波数の交流電源から任意の周波数の交流出力を直接生成する電力変換装置であるサイクロコンバータに関し、特にパルス幅変調(PWM)制御方式を用いたPWMサイクロコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
PWMサイクロコンバータは、入力電源と出力とが直接双方向に電流が流れることができる双方向スイッチを介して直接接続されている。また、PWMサイクロコンバータでは、欠相、停電、電源不平衡等の入力電源の異常が発生し通常の運転を維持することができなくなった場合には運転を停止しなければならない。電源の異常が発生した場合に運転を停止する従来のPWMサイクロコンバータを図7に示す。この従来のPWMサイクロコンバータは、三相交流電源1と、入力フィルタ2と、電源異常検出回路30と、入力電源位相検出回路40と、入力電源レベル検出回路50と、制御コントローラ160と、ゲートドライバ70と、双方向スイッチモジュール80とから構成されている。
【0003】
三相交流電源1は、入力フィルタ2を介して双方向スイッチモジュール80に接続されている。双方向スイッチモジュール80は、入力フィルタ2を介して入力された三相交流電源1の三相電圧(R、S、T)と三相の出力電圧(U、V、W)との間の全ての組合わせを接続する9つの双方向スイッチSur〜Swtにより構成されている。そして、双方向スイッチモジュール80の出力は、負荷R1〜R3に接続される。
【0004】
制御コントローラ160は、入力電源レベル検出回路50、入力電源位相検出回路40から入力される情報に基いて、ゲートドライバ70へゲート信号を出力している。ゲートドライバ70は、ゲート信号に基いて双方向スイッチモジュール80の各双方向スイッチSUR〜SWTを駆動している。入力電源レベル検出回路50は、三相交流電源1の電圧値を検出している。
【0005】
入力電源位相検出回路40は、三相交流電源1のうちの2相を入力とし、三相交流電源1の位相を検出している。また、入力電源位相検出回路40は、図8に示すように、トランス100と、コンパレータ101と、位相周波数比較器(PFD)102と、フィルタ103と、電圧制御発振器(VCO)104と、カウンタ105とから構成されている。
【0006】
三相交流電源1からの入力電圧のうちの2相分はトランス100を介してコンパレータ101に入力され、PFD102、フィルタ103、VCO104、カウンタ105に入力されることにより位相情報となる。カウンタ105の最上位ビット(MSB)は、PFD102にフィードバックされることによりPLL回路が構成されている。入力電圧の位相を検出する手段は、図8に示されるような回路でなく、コンパレータ101の出力の矩形波のエッジからエッジまでをタイマによって計測するような回路によっても構成することができる。
【0007】
電源異常検出回路30は、三相交流電源1に欠相、停電、不平衡といった電源異常が検出された場合、電源異常検出信号120を制御コントローラ160に出力する。制御コントローラ160は、電源異常検出信号120を入力すると、双方向スイッチモジュール80を停止させるために、ゲートドライバ70に停止用ゲート信号を出力する。
【0008】
上記で説明した従来のPWMサイクロコンバータによれば、電源異常が発生した場合でも、運転の停止が自動的に行われる。しかし、電動機が使用される用途によっては、電源異常が発生した場合でも運転の継続が必要となる場合がある。このような課題を達成するためには、一般的に直流電源や無停電電源等の非常用電源を備えるようにし、電源異常が発生した場合には通常の電源を非常用の電源に切替えることにより運転の継続を行うようにすることが考えられる。
【0009】
このような考え方により、電源異常の場合でも電動機の運転の継続を実現した方法を、PWMインバータの場合を用いて説明する。
【0010】
このPWMインバータは、図9に示すように、交流電源111と、ダイオードモジュール112と、非常用電源である直流電源113と、トランジスタモジュール114と、ダイオード115、116と、コントローラ117と、平滑コンデンサ118とから構成されている。
【0011】
ダイオードモジュール112は、交流電源1の出力電圧を整流し直流電圧に変換している。ダイオード115、116は、ダイオードモジュール112からの出力電圧と、直流電流113からの出力電圧のうちの電圧値が高い方を選択している。コントローラ117は、トランジスタモジュール114を構成している各トランジスタに対して制御信号をそれぞれ出力することにより、直流電圧を三相交流電圧に変換して負荷R1〜R3に対して出力している。
【0012】
このPWMインバータでは、交流電源111の電圧が低下し、平滑コンデンサ118の電圧が低下すると自動的に直流電源113はトランジスタモジュール114への電力の供給を行う。そのため、交流電源111に異常が発生しその出力電圧が低下した場合でも、負荷である電動機の運転を中断することなく非常用電源である直流電源113への切り替えを行うことができる(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
このように、PWMインバータでは直流電源113とダイオード115、116を設けるという簡易な方法により電源異常の場合でも運転の継続を行うことができるのは、直流部を有しているからである。
【0014】
しかし、PWMサイクロコンバータでは、交流電源を直接任意の周波数の交流電源に変換しているため直流部を有していない。そのため、PWMサイクロコンバータでは、PWMインバータのようにダイオード等を用いて供給電源を切替えることは不可能である。
【0015】
また、PWMサイクロコンバータでは、入力電源の位相情報を知ることができなければその動作を制御することができない。従って、図7に示したような従来のPWMサイクロコンバータでは、無停電の三相交流電源を非常用電源として備えておき、電源異常時には使用する電源を三相交流電源1から非常用電源に単純に切替えただけでは、電動機の運転を一旦停止することが必要となり運転を継続させることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭58−183576号公報(図2、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述した従来のPWMサイクロコンバータでは、電源異常が発生して通常電源から非常用電源への切り替えを行うとすると、運転を中断しなければならなず継続した運転を実現することができないという問題点があった。
本発明の目的は、電源異常が発生した場合でも、運転を中断することなく通常電源から非常用電源への切り替えを行うことにより継続した運転を実現することができるPWMサイクロコンバータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明のPWMサイクロコンバータは、三相交流電源の三相電圧と、三相の出力電圧との間をそれぞれ接続する9つの双方向スイッチにより構成されている双方向スイッチモジュールと、前記双方向スイッチモジュールに入力される三相交流電圧のうちの2相を入力とし、その位相の検出を行っている入力電源位相検出回路とを有するPWMサイクロコンバータにおいて、単相交流電源である無停電電源と、前記三相交流電源の電源異常を検出した場合に電源異常検出信号を出力する電源異常検出回路と、前記電源異常検出信号が入力されていない場合には前記三相交流電源からの三相出力電圧を前記双方向スイッチモジュールへ出力し、前記電源異常検出信号が入力された場合には前記三相交流電源からの三相出力電圧のうちの、前記入力電源位相検出回路が位相の検出を行っている2相の出力電圧の替わりに前記無停電電源からの単相交流電圧を前記双方向スイッチモジュールへ出力する電源切り替え器と、前記入力電源位相検出回路により検出された位相情報に基いて前記双方向スイッチモジュールに対する制御を行っていて、前記電源異常検出信号が入力されていない場合には、前記双方向スイッチモジュールに対して三相入力運転するような制御を行ない、前記電源異常検出信号が入力されると、前記双方向スイッチモジュールの制御方式を三相入力運転から単相入力運転に切替える制御部とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明は、三相交流電源に異常が発生した場合には、使用する電源を三相交流電源から単相の無停電電源へ切り替え、双方向スイッチモジュールの制御方式を三相運転から単相運転に切り替えるようにしているので、運転をほぼ中断させることなく電源の切り替えを行うことにより継続した運転を実現することができる。
【0020】
また、本発明の他のPWMサイクロコンバータによれば、上記発明に加えて無停電電源の位相の検出を行っている無停電電源位相検出回路と、前記電源異常検出信号が入力された場合には前記無停電電源位相検出回路から出力される位相情報を選択して出力し、前記電源異常検出信号が入力されていない場合には前記入力電源位相検出回路から出力される位相情報を選択して出力している位相検出回路切り替え器とを有し、制御部は位相検出回路切り替え器から出力された位相情報に基いて双方向スイッチモジュールに対する制御を行うようにしている。
【0021】
本発明は、電源異常が発生する前から、無停電電源位相検出回路により無停電電源の位相の検出を行うことにより、位相検出回路切り替え器が出力する位相情報の切り替えを行った直後でも無停電電源の正確な位相情報が出力されるようにしているので、電源切り替えの際の運転の停止をほぼ無くすことができ、継続した運転を実現することができる。
【0022】
また、本発明の他のPWMサイクロコンバータによれば、三相交流電源の三相電圧と、三相の出力電圧との間をそれぞれ接続する9つの双方向スイッチにより構成されている双方向スイッチモジュールと、前記双方向スイッチモジュールに入力される三相交流電圧のうちの2相を入力とし、その位相の検出を行っている入力電源位相検出回路とを有するPWMサイクロコンバータにおいて、直流電源と、前記三相交流電源の電源異常を検出した場合に電源異常検出信号を出力する電源異常検出回路と、前記電源異常検出信号が入力されていない場合には前記三相交流電源からの三相出力電圧を前記双方向スイッチモジュールへ出力し、前記電源異常検出信号が入力された場合には前記三相交流電源からの三相出力電圧のうちの、前記入力電源位相検出回路が位相の検出を行っている2相の出力電圧の替わりに前記直流電源からの直流電圧を前記双方向スイッチモジュールへ出力する電源切り替え器と、固定位相情報生成回路と、前記電源異常検出信号が入力された場合には前記固定位相情報生成回路から出力される固定位相情報を選択して出力し、前記電源異常検出信号が入力されていない場合には前記入力電源位相検出回路から出力される位相情報を選択して出力している位相検出回路切り替え器と、前記位相検出回路切り替え器から出力された位相情報に基いて前記双方向スイッチモジュールに対する制御を行っていて、前記電源異常検出信号が入力されていない場合には、前記双方向スイッチモジュールに対して三相入力運転するような制御を行ない、前記電源異常検出信号が入力されると、前記双方向スイッチモジュールの制御方式を三相入力運転から単相入力運転に切替える制御部とを有することを特徴とする。
【0023】
さらに、本発明の他のPWMサイクロコンバータによれば、三相交流電源の三相電圧と、三相の出力電圧との間をそれぞれ接続する9つの双方向スイッチにより構成されている双方向スイッチモジュールと、前記双方向スイッチモジュールに入力される三相交流電圧のうちの2相を入力とし、その位相の検出を行っている入力電源位相検出回路と、前記入力電源位相検出回路により検出された位相情報に基いて前記双方向スイッチモジュールに対する制御を行っている制御部とを有するPWMサイクロコンバータにおいて、前記三相交流電源の電源異常を検出した場合に電源異常検出信号および切り替え制御信号を出力し、電源異常が復帰した場合には、前記電源異常検出信号の出力を停止し、その後一定時間経過してから前記切り替え制御信号の出力を停止する電源異常検出回路と、前記三相交流電源の位相を常に検出することにより前記三相交流電源の出力電圧と同期した三相電圧を生成していて、前記電源異常検出信号を入力すると、前記電源異常検出信号が入力される直前の位相情報に基いた三相電圧を一定周期で出力する無停電電源モジュールと、前記切り替え制御信号が入力されていない場合には前記三相交流電源からの三相出力電圧を前記双方向スイッチモジュールへ出力し、前記切り替え制御信号が入力された場合には前記無停電電源モジュールからの三相出力電圧を前記双方向スイッチモジュールへ出力する電源切り替え器とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明は、三相交流電源に同期している三相交流電圧を無停電電源モジュールにより常に生成しておくようにしているので、三相交流電源に異常が発生した場合でも、三相交流運転を中断することなく継続することができる。また、電源異常が復帰した場合には、切り替え制御信号の出力を停止するのを電源異常検出信号の出力を停止してから一定時間後に行うようにしているので、無停電電源から出力される三相交流電圧と、三相交流電源から出力される三相交流電圧とが同期してから電源切り替え器による切り替えが行われる。そのため、電源異常が復帰のした場合でも運転を中断することなく電源の切り替えを行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明は、運転を行っている最中に電源異常が発生した場合でも、運転を中断することなく通常電源である三相交流電源から非常用電源への切り替えを行うことができるという効果を有している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態のPWMサイクロコンバータの構成を示すブロック図
【図2】本発明の第2の実施形態のPWMサイクロコンバータの構成を示すブロック図
【図3】本発明の第3の実施形態のPWMサイクロコンバータの構成を示すブロック図
【図4】本発明の第4の実施形態のPWMサイクロコンバータの構成を示すブロック図
【図5】図4のPWMサイクロコンバータ中の無停電電源モジュール90の構成を示すブロック図
【図6】図4のPWMサイクロコンバータの動作を示すタイミングチャート
【図7】従来のPWMサイクロコンバータの構成を示すブロック図
【図8】図7のPWMサイクロコンバータ中の入力電源位相検出回路40の構成を示すブロック図
【図9】PWMインバータの構成を示すブロック図
【0027】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明の第1の実施形態のPWMサイクロコンバータの構成を示すブロック図である。図1において、図7中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0029】
本実施形態のPWMサイクロコンバータは、図7に示した従来のPWMサイクロコンバータに対して、電源切り替え器20、単相交流電源である無停電電源10を新たに設け、制御コントローラ160を制御コントローラ60に置き換えたものである。
【0030】
電源切り替え器20は、電源異常検出信号120が入力されていない場合には三相交流電源1からの三相出力電圧(R、S、T)をそのまま入力フィルタ2へ出力し、電源異常検出信号120が入力された場合には三相交流電源1からの三相出力電圧(R、S、T)のうちのR、S相の替わりに無停電電源10からの単相交流電圧を入力フィルタ2へ出力する。
【0031】
制御コントローラ60は、電源異常検出信号120が入力されていない通常の状態では、制御コントローラ160と同様な動作を行ない双方向スイッチモジュール80の動作を制御するためのゲート信号をゲートドライバ70へ対して出力している。そして、制御コントローラ60は、電源異常検出信号120が入力されると、制御方式を三相入力運転から単相入力運転に切替える。
【0032】
また、本実施形態では、入力電源位相検出回路40は、電源切り替え器20から出力され入力フィルタ2へ入力される三相出力電圧のうちのR、S相を入力として位相の検出を行っている。
【0033】
次に、本実施形態のPWMサイクロコンバータの動作について図1を参照して詳細に説明する。
【0034】
本実施形態のPWMサイクロコンバータでは、三相交流電源1に異常が発生すると電源異常検出回路30によりその三相交流電源1の異常が検出され電源異常検出信号120が出力される。そして、電源異常検出信号120が出力されたことにより、電源切り替え器20は、三相交流電源1からのからの三相出力電圧(R、S、T)のうちのR、S相の替わりに無停電電源10からの単相交流出力電圧を入力フィルタ2へ出力するようになる。
【0035】
そのため、入力電源位相検出回路40は、無停電電源10の位相の検出を行うようになる。そして、制御コントローラ60は、電源異常検出信号120が入力されたことにより、制御方式を三相入力運転から単相入力運転に切替え、入力電源位相検出回路40により検出された無停電電源10の位相情報を用いてゲートドライバ70を介して双方向スイッチモジュール80の制御を行う。
【0036】
本実施形態のPWMサイクロコンバータによれば、三相交流電源1に異常が発生した場合には、使用する電源を三相交流電源1から単相の無停電電源10へ切り替え、制御方式を三相運転から単相運転に切り替えるようにすることにより、運転をほぼ中断させることなく電源の切り替えを行うことにより継続した運転を実現することができる。
【実施例2】
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態のPWMサイクロコンバータについて説明する。
【0038】
上記で説明した第1の実施形態のPWMサイクロコンバータでは、電源異常検出信号120が出力され入力電源位相検出回路40に入力される電源が三相交流電源1から無停電電源10に切り替わった場合、入力電源位相検出回路40を構成しているPLLがロックして、無停電電源10の位相が検出され位相情報が出力されるまでにはある程度の時間を必要とする。この時間は、入力される信号への周波数変動の追従範囲を広く設定すれば、一般的なPLL回路の性質と同様に長くなる。従って、上記第1の実施形態のPWMサイクロコンバータによれば、非常用電源である無停電電源10への切り替えの際には、一瞬だけ運転が中断してしまう可能性が有る。
【0039】
本実施形態のPWMサイクロコンバータは、このような点を改善し、電源異常が発生した場合でも、運転を中断することなく電源の切り替えを行ない、継続した運転を実現するためのものである。
【0040】
本実施形態のPWMサイクロコンバータの構成を示したブロック図を図2に示す。図2において、図1中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。本実施形態のPWMサイクロコンバータでは、図1に示した第1の実施形態のPWMサイクロコンバータに対して、無停電電源10の位相を検出するための無停電電源位相検出回路41と、位相検出回路切り替え器43が新たに設けられている。
【0041】
無停電電源位相検出回路41は、図8に示したような入力電源位相検出回路40と同様な構成となっている。そして、無停電電源位相検出回路41は、常に無停電電源10の位相の検出を行っている。
【0042】
位相検出回路切り替え器43は、電源異常検出信号120が入力された場合には無停電電源位相検出回路41から出力される位相情報を選択して出力し、電源異常検出信号120が入力されていない場合には入力電源位相検出回路40から出力される位相情報を選択して出力している。
【0043】
次に、本実施形態のPWMサイクロコンバータの動作について図2を参照して詳細に説明する。
【0044】
本実施形態のPWMサイクロコンバータでは、三相交流電源1に異常が発生して、電源異常検出回路30により電源異常検出信号120が出力された場合、上記第1の実施形態のPWMサイクロコンバータにおける動作に加えて以下のような動作が行われる。
【0045】
位相検出回路切り替え器43は、出力する位相情報を、入力電源位相検出回路40から出力される位相情報から、無停電電源位相検出回路41から出力される位相情報に切り替える。無停電電源位相検出回路41では、電源異常が発生する前から無停電電源10の位相の検出を行っているので、位相検出回路切り替え器43が出力する位相情報の切り替えを行った直後でも無停電電源10の正確な位相情報を出力することができる。
【0046】
従って、本実施形態のPWMサイクロコンバータによれば、上記第1の実施形態のPWMサイクロコンバータによる場合と比較して、電源切り替えの際の運転の停止をほぼ無くすことができ、継続した運転を実現することができる。
【実施例3】
【0047】
次に、本発明の第3の実施形態のPWMサイクロコンバータについて説明する。本実施形態のPWMサイクロコンバータの構成を示したブロック図を図3に示す。図3において、図2中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0048】
本実施形態のPWMサイクロコンバータは、図2に示した第2の実施形態のPWMサイクロコンバータに対して、無停電電源10のかわりにバッテリ11を備え、無停電電源位相検出回路41のかわりに固定位相情報生成回路42を備えるようにしたものである。固定位相情報生成回路42は、固定位相情報を生成して出力している。
【0049】
次に、本実施形態のPWMサイクロコンバータの動作について図3を参照して詳細に説明する。
【0050】
本実施形態における電源切り替え器20および位相検出回路切り替え器43は、図2に示した第2の実施形態の場合と同様に動作を行う。三相交流電源1に異常が発生し、電源異常検出回路30から電源異常検出信号120が出力された場合、固定位相情報生成回路42により生成された固定位相情報が位相検出回路切り替え回路43によれ選択された制御コントローラ60に出力される。
【0051】
バッテリ11は直流電源であるため、その位相は常に一定である。そのため、本実施形態では、制御コントローラ60は固定位相情報生成回路42により生成された固定位相情報を用いて単相運転を行うようにすれば、電源切り替えの際に運転を停止することなく継続した運転を実現することができる。
【実施例4】
【0052】
次に、本発明の第4の実施形態のPWMサイクロコンバータについて説明する。
【0053】
本実施形態のPWMサイクロコンバータの構成を示したブロック図を図4に示す。図4において、図1中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。本実施形態のPWMサイクロコンバータは、図1に示した第1の実施形態のPWMサイクロコンバータに対して、無停電電源10を無停電電源モジュール90に置き換え、電源切り替え器20を電源切り替え器21に置き換え、電源異常検出回路30を電源異常検出回路31に置き換えたものである。
【0054】
電源異常検出回路31は、三相交流電源1に欠相、停電、不平衡といった電源異常が検出された場合、電源異常検出信号120および切り替え制御信号121を出力し、電源異常が復帰した場合には、電源異常検出信号120の出力を停止し、その後一定時間経過してから切り替え制御信号121の出力を停止する。
【0055】
無停電電源モジュール90は、三相交流電源1の位相を常に検出することにより三相交流電源1の出力電圧と同期した三相電圧を生成していて、電源異常検出信号120を入力すると、電源異常検出信号120が入力される直前の位相情報に基いた三相電圧を一定周期で出力する。
【0056】
電源切り替え器21は、切り替え制御信号121が入力されていない場合には三相交流電源1からの三相出力電圧(R、S、T)を入力フィルタ2へ出力し、切り替え制御信号121が入力された場合には無停電電源10からの三相交流出力電圧(R’、S’、T’)を入力フィルタ2へ出力する。
【0057】
本実施形態における制御コントローラ60には、電源異常検出信号120は入力されておらず、電源異常が発生した場合でも通常の三相運転を行う。
【0058】
無停電電源モジュール90の構成を説明するためのブロック図を図5に示す。図5において、図9中の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略するものとする。
【0059】
無停電電源モジュール90は、無停電電源(UPS:Uninterruptible Power Supply)91と、ダイオードモジュール112と、コンデンサ118と、トランジスタモジュール114と、コントローラ92と、電源位相検出回路93とから構成されている。
【0060】
電源位相検出回路93は、三相交流電源1の三相の出力電圧を入力することにより、三相交流電源1の位相を常に検出し、検出した位相を位相情報としてコントローラ92に対して出力している。
【0061】
コントローラ92は、電源異常検出信号120が入力されていない通常状態では、電源位相検出回路93により検出された三相交流電源1の位相情報に基いてトランジスタモジュール114の各トランジスタを制御しトランジスタモジュール114から出力される三相の出力電圧の位相を三相交流電源1に同期させるような制御を行っている。そして、コントローラ92は、電源異常検出信号120が入力されると、電源異常検出信号120が入力される直前の位相情報に基いてトランジスタモジュール114の各トランジスタの制御を行うことにより、トランジスタモジュール114から出力される三相の出力電圧が一定周期となるような制御を行っている。
【0062】
次に、本実施形態のPWMサイクロコンバータの動作を図4、5、6を参照して詳細に説明する。図6は、本実施形態のPWMサイクロコンバータの動作を説明するためのタイミングチャートである。この図6は、三相交流電源1の出力電圧波形、無停電電源90の出力電圧波形、双方向スイッチモジュール80の入力電圧のうちのR相の波形および電源異常検出信号120の切り替え制御信号121の変化の様子を示したものである。
【0063】
この図6では、時刻t1で三相交流電源1において停電となる電源異常が発生し、時刻t2で三相交流電源1が停電から復帰した場合を示している。
【0064】
時刻t1までは、三相交流電源1の出力電圧がそのまま双方スイッチモジュール80に入力されている。そして、その間も無停電電源モジュール90では、三相交流電源1の出力電圧に同期した出力電圧(R、’S’、T’)が生成されている。
【0065】
そして、時刻t1において三相交流電源1が停電となると、電源異常検出回路31がその異常を検出し、電源異常検出信号120および切り替え制御信号121を出力する。そのため、電源切り替え器21は、無停電電源モジュール90の出力電圧を選択して出力するようになる。そして、無停電電源モジュール90では、電源異常検出信号120が入力されると、その直前に出力していた出力電圧をそのまま一定周期で出力するような動作を行っている。そのため時刻t1以降においても、双方向スイッチモジュール80に入力される電圧は、電源異常が発生しなかった場合とほぼ同様な電圧波形となる。
【0066】
そして、時刻t2おいて、三相交流電源1が停電から復帰すると、電源異常検出回路31は、先ず電源異常検出信号120の出力を停止する。そのため、無停電電源モジュール90では、トランジスタモジュール114の出力電圧が交流電源1の出力電圧と同期するような制御が行われる。そして、時刻t2から一定時間が経過した時刻t3において、電源異常検出回路31は切り替え制御信号121の出力を停止する。そのため、電源切り替え器21は、三相交流電源1の出力電圧を選択して入力フィルタ2に出力するようになる。
【0067】
電源異常検出回路31が、電源異常が復帰した際に、電源異常検出信号120の出力を停止してから一定時間経過後に切り替え制御信号121の出力を停止するようにしているのは、無停電電源モジュール90の出力電圧と三相交流電源1の出力電圧の位相が同期するために時間を確保するためである。
【0068】
上記で説明したように、本実施形態のPWMサイクロコンバータによれば、三相交流電源1に同期している三相交流電圧を無停電電源モジュール90により常に生成しておくことにより、三相交流電源1に異常が発生した場合でも、三相交流運転を中断することなく継続することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 三相交流電源
2 入力フィルタ
10 無停電電源
11 バッテリ
20、21 電源切り替え器
30、31 電源異常検出回路
40 入力電源位相検出器
41 無停電電源位相検出回路
42 固定位相情報生成回路
43 位相検出回路切り替え器
50 入力電源レベル検出回路
60 制御コントローラ
70 ゲートドライバ
80 双方向スイッチモジュール
90 無停電電源モジュール
91 無停電電源(UPS)
92 コントローラ
93 電源位相検出回路
100 トランス
101 コンパレータ
102 位相周波数比較器(PFD)
103 フィルタ
104 電圧制御発振器(VCO)
105 カウンタ
111 交流電源
112 ダイオードモジュール
113 直流電源
114 トランジスタモジュール
115、116 ダイオード
117 コントローラ
118 平滑コンデンサ
120 電源異常検出信号
121 切り替え制御信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流電源の各相と出力側の各々の相とが双方向スイッチを介して直接接続されるPWMサイクロコンバータにおいて、
非常用の直流電源と、
前記三相交流電源の異常が発生した場合には前記PWMサイクロコンバータへの入力電源を前記三相交流電源から前記直流電源に切り替える電源切り替え器と、
前記三相交流電源の異常が発生した場合には、前記双方向スイッチの制御を、前記三相交流電源の位相情報に基づく制御から位相が一定である直流電圧入力に基づく制御へと切り替える制御部と、
を備えたことを特徴とするPWMサイクロコンバータ。
【請求項2】
三相交流電源の各相と出力側の各々の相とが双方向スイッチを介して直接接続されるPWMサイクロコンバータにおいて、
前記三相交流電源の異常が発生した場合には非常用の直流電源を入力電源として、前記双方向スイッチの制御を、前記三相交流電源の位相情報に基づく制御から位相が一定である直流電圧入力に基づく制御へと切り替える制御部を備えたことを特徴とするPWMサイクロコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−240157(P2009−240157A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166503(P2009−166503)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【分割の表示】特願2000−64854(P2000−64854)の分割
【原出願日】平成12年3月9日(2000.3.9)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】