説明

PY155に基づく顔料調製品

【課題】高い彩度およびより良好な細かさを有する、特にはインクジョット用途の、PY155に対する顔料調製品を提供する。
【解決手段】C.I.ピグメントイエロー155に基づく顔料調製品であって、C.I.ピグメントイエロー155の重量を基準にして0.1重量%から50重量%の、少なくとも1つのスルホン酸基で置換されるモノアゾもしくはジスアゾ顔料の群から選択される少なくとも1種類の顔料分散剤を含み、6.7重量%濃度の顔料調製品を含有する溶媒系アルキドメラミンワニスにおいてCIELAB系で53を上回る彩度Cを有し、および/または0.2重量%濃度の白色減力顔料調製品を含有する白色減力水系ワニス系においてCIELAB系で35を上回る彩度Cを有する顔料調製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2006年3月14日出願の欧州優先出願第06290428.9号に記載され、これは参照により本明細書に完全に開示されるものとしてここに組み込まれる。
【0002】
本発明は、C.I.ピグメントイエロー155(以下、PY155と呼ぶ)に基づく新規の改善された顔料調製品、この製造方法および、特にはインクジェット印刷における、この使用に関する。
【背景技術】
【0003】
顔料調製品は基本顔料およびいわゆる顔料分散剤、すなわち、特定の活性を有する基で置換されている顔料の組合せである。顔料分散剤は、適用媒体、特には、コーティングおよび印刷インク中での分散を容易にするため、並びに顔料のレオロジー的および色特性を強化するため、顔料に添加される。
【0004】
高分子有機材料の着色に用いられる顔料は高い性能要求、例えば、高い色強度、容易な分散性、高い彩度および色相の清澄性並びに良好な光および天候堅牢性を満たさなければならない。様々な高分子系、例えば、印刷インク、コーティングもしくはプラスチックを着色し、および、例えば、コーティングもしくは印刷インクの場合には、溶媒含有系だけではなく水系に関しても着色する汎用性が理想として望まれる。コーティングおよび印刷インクの両者に関しては、粉砕状態で高顔料濃度に向かう傾向があり、これは高度に着色されたコーティングおよび印刷インク濃縮体もしくは低粘性ではあるが練り顔料が要求されるためであり;同様に、最終コーティングもしくは印刷インクの粘度は予定された用途に適合するものでなければならない。印刷インクは高い透明性を有することが望まれ、コーティング系は完璧なオーバーコーティング堅牢性および溶媒堅牢性、アルカリおよび酸に対する耐性並びに、特に金属効果コーティングの場合には、高い透明性および鮮やかな色相を有することが望まれる。プラスチックの着色の場合、例えば高い色強度に反映されるため、高いブリード堅牢性、熱安定性および良好な分散性が要求される。様々な系、例えば、水系および溶媒含有系における汎用性も理想として望まれる。
【0005】
顔料の用途のさらなる分野には、例えば、電子写真トナーおよび現像剤、液体インク、例えば、インクジェットインクもしくはe−インク、カラーフィルター、または粉末コーティングが含まれ、これらすべてにこれらに特有のさらなる必要条件がある。
【0006】
インクジェット印刷は非接触式印刷プロセスであり、記録流体の液滴が1つ以上のノズルから印刷しようとする基体上に向けられる。優れた品質の印刷を得るため、記録流体およびこれらが含有する着色剤は、特には望ましい色相および印刷プロセス中の信頼性に関するものを含めて、高い要求を満たさなければならない。
【0007】
染料系液体インクに加えて、顔料系液体インクをインクジェット印刷において用いる傾向が増加している。液体インクに含まれる顔料の部分に関する微細分割状態は、第1にはノズルの目詰まりを防止するためであるが、第2には高い透明性および望ましい、例えば緑の、色相を達成するため、インクジェット印刷におけるこれらの使用の基本的な必要条件である。
【0008】
下記式(I)のジスアゾ顔料のインクジェットインクにおける使用は公知であり、例えば、EP−A−0908789に記載されている。式(I)による構造を有する顔料はC.I.ピグメントイエロー155の名称で商業的に入手可能である。
【0009】
【化6】

式(I)は理想化された表現として理解されなければならない。式(I)のジスアゾ顔料は、部分的にもしくは完全に、他の互変異性および/またはシス/トランス異性体形態で存在することもできる。
【0010】
ジアゾ化ジメチル2−アミノテレフタレートと1,4−ビス(アセトアセチルアミノ)ベンゼンとのカップリングによる式(I)のジスアゾ顔料の調製方法が、例えば、US−A−3,997,521(実施例20)およびDE−A−2058849(実施例72)に開示されている。
【0011】
しかしながら、得られる生成物(以下、粗製顔料と呼ぶ)は、通常、結晶品質に劣るものであり、凝集し、および望ましい性能特性を有していない。最適有用性を得るため、一般には仕上げと呼ばれる後処理が、例えば表面活性剤を含有し、もしくは含有しない溶媒中で、しばしば行われる。
【0012】
GB−A−2239254は、式(I)による構造を有する粗製顔料を、合成後に、ジメチルホルムアミド中で加熱する方法を開示する。
【0013】
US−A−4,003,886は、合成されたままのジスアゾ顔料をo−ジクロロベンゼンを用いる130から135℃の温度での仕上げに処する方法を記載する。
【0014】
JP−1241365は、粗製顔料、特には、アゾ、キナクリドンもしくはジオキサジン顔料を水および有機溶媒の混合液中、低温(<100℃)およびアルカリ性pHで、表面活性剤、特には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの存在下において仕上げることを提示する。
【0015】
式(I)のジスアゾ顔料並びにスルホ含有モノアゾおよびジスアゾ顔料誘導体の組合せは公知である。GB−A−2356634およびGB−A−2356866はカルボキシル/スルホ置換モノアゾおよびジスアゾ化合物並びにC.I.ピグメントイエロー155と一緒に顔料および液体インク組成物中でこれらを使用することを開示する。これらのモノアゾおよびジスアゾ化合物はC.I.ピグメントイエロー155にこれらの水溶液の形態で分散工程中に添加されて顔料配合物を形成する。対応する顔料分散体およびインクジェットインクについて得られる平均粒子径(>160nm)はインクジェット用途に好ましい<100nmの小粒子径とは一致しない。
【0016】
PY155の性能特性はすべての点において、特には、様々な適用媒体における細かさおよび透明性に関して、上述の必要条件をもはや満たさない。
【0017】
EP−A−0076024は、非水系において顔料分散体を液化するのに用いられるジスアゾ化合物を開示する。
【0018】
WO−2004/029167A1はEP−A−0076024に開示される化合物を含有する顔料調製品を開示する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
公知のジスアゾ顔料の不都合を克服し、および様々な適用媒体中で上記必要条件を満たすジスアゾ顔料に対する需要が存在する。特には、高い彩度およびより良好な細かさを有する、特にはインクジョット用途の、PY155に対する需要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
我々は、驚くべきことに以下に説明される顔料調製品により、この目的が達成されることを見出している。
【0021】
したがって、本発明は、C.I.ピグメントイエロー155に基づく顔料調製品であって、C.I.ピグメントイエロー155の重量を基準にして0.1重量%から50重量%、好ましくは、0.5重量%から20重量%、より好ましくは、1重量%から10重量%、特には、1重量%から5重量%の、少なくとも1つのスルホン酸基で置換されるモノアゾもしくはジスアゾ顔料の群から選択される少なくとも1種類の顔料分散剤を含み、6.7重量%濃度の顔料調製品を含有する溶媒系アルキドメラミン樹脂ワニスにおいてCIELAB系で53を上回る、好ましくは、55を上回る、より好ましくは、57を上回る彩度Cを有し、および/または0.2重量%濃度の白色減力顔料調製品を含有する白色減力水系ワニス系においてCIELAB系で35を上回る、好ましくは、36を上回る、より好ましくは、37を上回る彩度Cを有することを特徴とする顔料調製品を提供する。
【0022】
本発明は、本発明による顔料調製品の製造方法であって、PY155粗製顔料を水および(大気圧で)100℃を上回る沸点を有する有機溶媒、好ましくは、芳香族溶媒、特には、o−ジクロロベンゼンの混合液中、アルカリ性pH、特には、9以上のpHおよび、C.I.ピグメントイエロー155の重量を基準にして、0.1重量%から50重量%、好ましくは、0.5重量%から20重量%、より好ましくは、1重量%から10重量%、特には、1重量%から5重量%の顔料分散剤の存在下で、60℃を上回る、好ましくは、90℃を上回る温度に加熱することを含む方法も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
用いられるPY155粗製顔料は有利には式(I)のジスアゾ顔料であり、これは公知の方法によって調製することができ、非晶質形態、結晶形態もしくは非晶質形態および結晶形態の混合物として存在することができる。結晶形態は、各々の場合において、特定の結晶相もしくは複数の結晶相の混合物からなり得る。式(I)の異なる粗製顔料の混合物を用いることも可能である。
【0024】
必要であれば、合成されたままの粗製顔料を、例えば、アシッドペースティング(acid pasting)、酸膨潤、乾式粉砕もしくは湿式粉砕により、通例の微粉砕に処することができる。
【0025】
粗製顔料は仕上げにおいて乾燥形態で、もしくは圧縮ケークとして用いることができ、好ましくは、乾燥形態で用いられる。乾燥は公知の方法に従って、例えば、キャビネット乾燥、ベルト乾燥、パドル・ホィール乾燥、回転式乾燥、接触乾燥、スピン・フラッシュ乾燥もしくは噴霧乾燥によって達成される。
【0026】
本発明の仕上げに用いられる溶媒系は、水、有機溶媒およびアルカリ性pHに設定するのに十分な量の塩基からなる。有用な有機溶媒には、原理的に、100℃を上回り、好ましくは、110℃を上回る沸点を有するすべての有機溶媒およびまた、これらの混合液が含まれる。芳香族溶媒が特に適することが判明するであろう。これらは1個以上のハロゲン原子、特には、塩素、臭素もしくはヨウ素、ニトロおよび/またはC−C−アルキルによって置換されていてもよい。置換ベンゼン、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンもしくはブロモベンゼンが考慮され、特には、o−ジクロロベンゼンが最も適することが判明するであろう。
【0027】
アルカリ性pHの設定に用いられる好ましい塩基は、適切であるならばこれらの水溶液の形態にある、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウムである。窒素系塩基も考慮することができ、この例はアンモニアもしくはメチルアミンである。
【0028】
望ましい効果を達成するには、9.0以上のpH、好ましくは、10以上のpH、特には、10.5以上のpHが有利である。11.0以上のpHを用いることが通例である。塩基は、水の量を基準にして、20重量%まで、好ましくは、15重量%まで、特には、10重量%までの多量で用いることもできる。
【0029】
水の有機溶媒に対する重量比は5:95から95:5の範囲内、好ましくは、7.5:92.5から92.5:7.5の範囲内、特には、10:90から90:10の範囲内、より好ましくは、20:80から80:20の範囲内である。
【0030】
水および有機溶媒の総量は顔料の重量部あたり0.5から40、好ましくは、1から20、特には、2から15重量部の範囲内である。
【0031】
溶媒系は1相系であっても2相系であってもよい。このような有機溶媒を水と完全に混和していないものとして用いることが好ましく、仕上げは、好ましくは、水相および有機相を含む2相溶媒系において行う。
【0032】
本発明による仕上げは60から250℃、好ましくは、90から200℃、特には、100から190℃の温度で、有利には、5分から24時間、特には、5分から18時間、とりわけ、5から12時間行うことができる。好ましくは、仕上げは沸点、特には、溶媒系の沸点を上回る温度で、超大気圧の下で行う。
【0033】
モノアゾ顔料から誘導される顔料分散剤には、例えば、式(II)のものが含まれる。
【0034】
【化7】

(式中、Aは式(III)または(IV)の基
【0035】
【化8】

であり、並びに
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、独立して、H、ハロゲン、例えば、F、Cl、BrもしくはI、SOM、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐C−C10−アルキルもしくはC−C10−シクロアルキル基または置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐C−C10−アルケニルもしくはC−C10−シクロアルケニル基、アリール、アリールオキシ、アリール(C−C)アルキル、ヘタリール、ヘタリールオキシ、ヘタリール(C−C)アルキルもしくはC−C10−アルコキシであり、
R10はH、COOM、COO(C−C10)アルキル、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐C−C10−アルキルもしくはC−C10−シクロアルキル基であり、並びに
MはH、一価金属カチオン、等価の多価カチオン、NH、二級、三級もしくは四級アンモニウムイオンであり、
ただし、2つのフェニル環のうちの少なくとも1つは少なくとも1つのスルホン酸基で置換されている)
【0036】
「アリール」は、ここでは、および以下の定義においても、好ましくは6から15個の炭素原子を含む、芳香族基である。これらの例は、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリルである。
【0037】
「ヘタリール」は、ここでは、および以下の定義においても、1から10個の炭素原子に加えて、好ましくは、O、N、SおよびPからなる群より選択される1、2、3もしくは4個のヘテロ原子を含む芳香族基を指す。これらの例は、ピロリル、フリル、チオフェニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、キノリニル、イソキノリニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニルおよびトリアジニルである。
【0038】
本発明の好ましい実施形態は式(V)の顔料分散剤を用いる。
【0039】
【化9】

【0040】
ジスアゾ顔料から誘導される顔料分散剤は、特には、式(VI)のものである。
【0041】
【化10】

(式中、Aは上述の通りであり、並びに
R11およびR12は、独立して、H、ハロゲン、例えば、F、Cl、BrもしくはI、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐C−C10アルキルもしくはC−C10−シクロアルキル基または置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐C−C10−アルケニルもしくはC−C10−シクロアルケニル基またはC−C10−アルコキシであり、並びに
nは1もしくは2、好ましくは、2であり、
ただし、A基における2つの末端フェニル環のうちの少なくとも1つは少なくとも1つのスルホン酸基で置換されている)
【0042】
アンモニウム塩は、好ましくは、6個を上回る炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖飽和ヒドロカルビル鎖、特には、各々12個を上回る炭素原子の2つの直鎖飽和ヒドロカルビル鎖を有する四級アンモニウムイオン、例えば、ステアリルベンジル−もしくはココアルキルジメチルベンジルアンモニウムもしくは−2,4−ジクロロベンジルアンモニウム、ヘキサデシル−、ステアリル−、ドデシル−、オクタデシル−もしくはセチルトリメチルアンモニウム、二水素化獣脂アルキル−、ジココアルキル−、ジオクタデシル−もしくはジステアリルジメチルアンモニウム、オレイル−もしくはココジ(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、水素化ポリオキシエチレン(15)タロウメチルアンモニウム、N,N,N’,N’,N’−ペンタ−メチル−N−タロウ−1,3−プロパンジアンモニウム、過メチル化N−ステアリルジエチレン−トリアミン、過メチル化N−ステアリルトリエチレンテトラミン、N−(3−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシ−プロピル)オクタデシルジメチルアンモニウム、メチルトリ(2−オクチル)アンモニウム、N,N−ジ(ベータ−ステアロイルエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム、ラウリルピリジニウム、2−ヒドロキシ[5−クロロ−、5−イソオクチル−、5−t−ブチル−もしくはn−ノニル]1,3−キシレンビスピリジニウム、2−メトキシ−5−イソオクチル−1,3−キシレンビスピリジニウム、2−ヒドロキシ−5−イソオクチル−1,3−キシレンビスキノリニウム、2−ヒドロキシ−5−イソオクチル−1,3−キシレンビスイソキノリニウムまたはベヘニルトリメチルアンモニウムによって形成される。
【0043】
ジスアゾ顔料から誘導される顔料分散剤は公知であり、例えば、US−A−4,461,647に記載されている。
【0044】
式(VII)の顔料分散剤が特に好ましい。
【0045】
【化11】

【0046】
本発明の方法によって製造される顔料調製品は通例の方法を用いて、例えば、濾過、デカントもしくは遠心によって単離することができる。濾過もしくは蒸気蒸留が好ましい。溶媒は洗浄によって除去することもできる。本発明の顔料調製品は、好ましくは、水性圧縮ケークとして用いることができるが、一般には、自由流動性微粉構成の乾燥固体系を含み、もしくは顆粒を含む。
【0047】
粗製顔料の合成後、仕上げの前後、さもなければ乾燥後、さらなる助剤を添加することができ、この例は表面活性剤、顔料および非顔料分散剤、充填剤、標準化剤(standardizers)、樹脂、ワックス、消泡剤、静電防止剤、防塵剤、増量剤、濃淡着色剤(shading colorants)、保存剤、乾燥抑制剤、レオロジー制御添加剤、湿潤剤、酸化防止剤、UV吸収剤、光安定化剤、もしくはこれらの組合せである。
【0048】
有用な表面活性剤にはアニオン性もしくはアニオン活性、カチオン性もしくはカチオン活性および非イオン性もしくは両性物質またはこれらの活性物質の混合物が含まれる。有用なアニオン活性物質には、例えば、脂肪酸タウライド、脂肪酸N−メチルタウライド、脂肪酸イセチオネート、アルキルフェニルスルホネート、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルフェノールポリグリコールエーテルスルフェート、脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルフェート、脂肪酸アミドポリグリコールエーテルスルフェート、アルキルスルホスクシナメート、アルケニルコハク酸モノエステル、脂肪アルコールポリグリコールエーテルスルホスクシネート、アルカンスルホネート、脂肪酸グルタメート、アルキルスルホスクシネート、脂肪酸サルコシド;脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸およびオレイン酸;これらのアニオン性物質の塩および石けん、例えば、脂肪酸、ナフテン酸および樹脂酸、例えば、アビエチン酸のアルカリ金属塩、アルカリ可溶性樹脂、例えば、ロジン修飾マレイン酸樹脂並びにシアヌル酸塩化物、タウリン、N.N’−ジエチルアミノプロピルアミンおよびp−フェニレンジアミンに基づく縮合生成物が含まれる。樹脂石けん、すなわち、樹脂酸のアルカリ金属塩が好ましい。
【0049】
有用なカチオン活性物質には、例えば、四級アンモニウム塩、脂肪アミンオキサルキレート、ポリオキシアルキレンアミン、オキサルキル化ポリアミン、脂肪アミンポリグリコールエーテル、一級、二級もしくは三級アミン、例えば、アルキル−、シクロアルキルもしくは環化アルキルアミン、特には、脂肪アミン、脂肪アミンもしくは脂肪アルコールから誘導されるジ−およびポリアミン並びにジ−およびポリアミンのオキサルキレート、脂肪酸誘導イミダゾリン、ポリアミノアミドもしくはポリアミノ化合物、またはポリアミノアミドもしくはポリアミノ化合物のgあたり100から800gmのKOHのアミン指数を有する字氏、並びにこれらのカチオン活性物質の塩、例えば、酢酸塩もしくは塩化物が含まれる。
【0050】
有用な非イオノゲン性および両性物質には、例えば、脂肪アミンカルボキシグリシネート、酸化アミン、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエステル、ベタイン、例えば、脂肪酸アミドN−プロピルベタイン、脂肪族および芳香族アルコール、脂肪アルコールもしくは脂肪アルコールポリグリコールエーテルのリン酸エステル、脂肪酸アミドエトキシレート、脂肪アルコール−アルキレンオキシド付加物およびアルキルフェノールポリグリコールエーテルが含まれる。
【0051】
非顔料分散剤は構造的に有機顔料から誘導されるものではない物質を指す。これらは分散剤として顔料の製造過程において添加されるが、しばしば、着色しようとする適用媒体への顔料の組み込み中、例えば、対応する結合剤中に顔料を分散することによるコーティングもしくは印刷インクの製造の過程でも添加される。これらはポリマー性物質であってもよく、これらの例はポリオレフィン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミン、ポリアクリレート、ポリイソシアネート、これらのブロック共重合体、別のクラスの幾つかのモノマーで修飾される、あるクラスの対応するモノマーもしくはポリマーの共重合体である。これらのポリマー性物質は極性アンカー基、例えば、ヒドロキシル、アミノ、イミノおよびアンモニウム基、カルボン酸およびカルボキシレート基、スルホン酸およびスルホネート基もしくはリン酸およびホスホネート基を坦持し、芳香族非顔料物質で修飾されていてもよい。非顔料分散剤は、官能基で化学的に修飾され、および有機顔料からは誘導されない、芳香族物質であってもよい。このような非顔料分散剤は当分野における熟練者に公知であり、幾つかの場合には、商業的に入手可能である(これらの例は、Solsperse(登録商標)、Avecia;Disperbyk(登録商標)、Byk−Chemie、Efka(登録商標)、Efka、SMA(登録商標)、Sartomerである)。ここで説明として幾つかのタイプに言及するが、原理的に記載される他の物質も用いることができ、これらの例はイソシアネートおよびアルコール、ジ−もしくはポリオール、アミノアルコールまたはジ−もしくはポリアミンの縮合生成物、ヒドロキシカルボン酸のポリマー、オレフィンモノマーもしくはビニルモノマーおよびエチレン性不飽和カルボン酸およびエステルの共重合体、エチレン性不飽和モノマーのウレタン含有ポリマー、ウレタン修飾ポリエステル、シアヌル酸ハロゲン化物に基づく縮合生成物、ニトロキシル含有ポリマー、ポリエステルアミド、修飾ポリアミド、修飾アクリルポリマー、ポリエステルおよびアクリルポリマーから形成される、櫛様構造を有する分散剤、リン酸エステル、トリアジン誘導ポリマー、修飾ポリエーテル、または芳香族非顔料物質から誘導される分散剤である。これらの基本構造は、頻繁に、例えば、官能基を坦持するさらなる物質との化学反応により、もしくは塩形成により、さらに修飾される。
【0052】
充填剤および増量剤はDIN 55943およびDIN EN 971−1による様々な物質、例えば、様々なタイプのタルカム、カオリン、雲母、苦灰石、石灰、硫酸バリウムもしくは二酸化チタンを指す。
【0053】
本発明の顔料調製品は天然もしくは合成起源の高分子有機材料、例えば、プラスチック、樹脂、コーティング、塗料、電子写真トナーおよび現像材、エレクトレット材料、カラーフィルターおよびまた、液体インク、印刷インクおよび種の着色に有用である。
【0054】
本発明の顔料調製品を用いる着色に有用な高分子有機材料には、個々に、もしくは混合物として、例えば、セルロース化合物、例えば、セルロースエーテルおよびエステル、例えば、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロースもしくは絡酸セルロース、天然結合剤、例えば、脂肪酸、脂肪油、樹脂およびこれらの変換生成物、または合成樹脂、例えば、重縮合体、重付加物、付加ポリマーおよび付加共重合体、例えば、アミノ樹脂、特には、尿素−およびメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、フェノプラストおよびフェノール樹脂、例えば、ノボラックもしくはレゾール、尿素樹脂、ポリビニル、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテートもしくはポリビニルエーテル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、例えば、ポリスチレン、塩化ポリビニル、ポリエチレンもしくはポリプロピレン、ポリ(メタ)アクリレートおよびこれらの共重合体、例えば、ポリアクリルエステルもしくはポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、クマロン−インデンおよび炭化水素樹脂、エポキシ樹脂、異なる硬化機構を有する不飽和合成樹脂(ポリエステル、アクリレート)、ワックス、アルデヒドおよびケトン樹脂、生ゴム、ゴムおよびこの誘導体並びにラテックス、カゼイン、シリコーンおよびシリコーン樹脂が含まれる。
【0055】
ここでは、上記高分子有機化合物が可塑的に変形可能な塊の形態、溶融物、または紡糸液、分散体、ワニス、塗料もしくは印刷インクの形態にあるかどうかは重要ではない。目的とする用途に依存して、本発明の顔料調製品を混合物として、または配合物もしくは分散体の形態で用いることが有利である。
【0056】
本発明は、彩色的に有効な量の本発明による顔料調製品を含む高分子有機材料をも提供する。
【0057】
着色しようとする高分子有機材料に基づき、本発明の顔料調製品は、通常、0.01重量%から30重量%、好ましくは、0.1重量%から15重量%の量で用いられる。
【0058】
本発明の顔料調製品は電子写真トナーおよび現像剤、例えば、1もしくは2成分粉末トナー(別名、1もしくは2成分現像剤)、磁気式トナー、液体トナー、付加重合トナーおよびまた、特殊トナーにおける着色剤としても有用である。典型的なトナー結合剤は付加重合、重付加および重縮合樹脂、例えば、個別に、もしくは組合せでの、スチレン、スチレン−アクリレート、スチレン−ブタジエン、アクリレート、ポリエステル、フェノール−エポキシ樹脂、ポリスルホン、ポリウレタン、およびまた、ポリエチレンおよびポリプロピレンであり、これらはさらなる成分、例えば、電荷制御剤、ワックスもしくは流動補助剤を含んでいてもよく、またはこれらの添加で引き続き改変されてもよい。
【0059】
本発明の顔料調製品は、さらに、粉末および粉末コーティング、特には、例えば金属、木材、プラスチック、ガラス、セラミック、コンクリート、テキスタイル材料、紙もしくはゴムで構成される、表面コーティング物品に用いられる摩擦電気的もしくは動電学的に噴霧可能な粉末コーティングにおける着色剤として有用である。
【0060】
本発明の顔料調製品は、水性および非水性系の両者のインクジェットインクおよびまた、ホットメルトタイプの液体インクにおける着色剤としても有用である。
【0061】
インクジェットインクにおいて、本発明の顔料調製品は他の着色剤、例えば、有機もしくは無機顔料および/または染料で濃淡をつけることもできる。この場合、これらは、顔料および/または染料を着色剤として含有する黄、マジェンタ、シアンおよび黒インクからなるインクセットにおいて用いられる。これらは、さらに、1つ以上の「スポットカラー」、例えば、オレンジ、緑、青、金および銀をさらに含むインクセットにおいて用いることができる。
【0062】
黒色配合物が、好ましくは、カーボンブラック、特には、ガスもしくはファーネスブラックを着色剤として含み;シアン配合物が、好ましくは、フタロシアニン、インダントロンもしくはトリアリールカルボニウム顔料の群からの顔料、特には、色指数顔料ピグメントブルー15、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー16、ピグメントブルー56、ピグメントブルー60もしくはピグメントブルー61を含み;マジェンタ配合物が、好ましくは、モノアゾ、ジスアゾ、β−ナフトール、Naphthol AS、レーキ化アゾ、金属錯体、ベンズイミダゾロン、アントアントロン、アントラキノン、キナクリドン、ジオキサジン、ペリレン、チオインディゴ、トリアリールカルボニウムもしくはジケトピロロピロール顔料の群からの顔料、特には、色指数顔料ピグメントレッド2、ピグメントレッド3、ピグメントレッド4、ピグメントレッド5、ピグメントレッド9、ピグメントレッド12、ピグメントレッド14、ピグメントレッド38、ピグメントレッド48:2、ピグメントレッド48:3、ピグメントレッド48:4、ピグメントレッド53:1、ピグメントレッド57:1、ピグメントレッド112、ピグメントレッド122、ピグメントレッド144、ピグメントレッド146、ピグメントレッド147、ピグメントレッド149、ピグメントレッド168、ピグメントレッド169、ピグメントレッド170、ピグメントレッド175、ピグメントレッド176、ピグメントレッド177、ピグメントレッド179、ピグメントレッド181、ピグメントレッド184、ピグメントレッド185、ピグメントレッド187、ピグメントレッド188、ピグメントレッド207、ピグメントレッド208、ピグメントレッド209、ピグメントレッド210、ピグメントレッド214、ピグメントレッド242、ピグメントレッド247、ピグメントレッド253、ピグメントレッド254、ピグメントレッド255、ピグメントレッド256、ピグメントレッド257、ピグメントレッド262、ピグメントレッド263、ピグメントレッド264、ピグメントレッド266、ピグメントレッド269、ピグメントレッド270、ピグメントレッド272、ピグメントレッド274、ピグメントバイオレット19、ピグメントバイオレット23もしくはピグメントバイオレット32を含み;黄色配合物が、好ましくは、モノアゾ、ジスアゾ、ベンズイミダゾリン、イソインドリノン、イソインドリンもしくはペリノン顔料の群からの顔料、特には、色指数顔料ピグメントイエロー1、ピグメントイエロー3、ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー16、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー73、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー81、ピグメントイエロー83、ピグメントイエロー87、ピグメントイエロー97、ピグメントイエロー111、ピグメントイエロー120、ピグメントイエロー126、ピグメントイエロー127、ピグメントイエロー128、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー154、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー173、ピグメントイエロー174、ピグメントイエロー175、ピグメントイエロー176、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー181、ピグメントイエロー191、ピグメントイエロー194、ピグメントイエロー196、ピグメントイエロー213もしくはピグメントイエロー219を含み;オレンジ配合物が、好ましくは、ジスアゾ、β−ナフトール、Naphthol AS、ベンズイミダゾロンもしくはペリノン顔料の群からの顔料、特には、色指数顔料ピグメントオレンジ5、ピグメントオレンジ13、ピグメントオレンジ34、ピグメントオレンジ36、ピグメントオレンジ38、ピグメントオレンジ43、ピグメントオレンジ62、ピグメントオレンジ68、ピグメントオレンジ70、ピグメントオレンジ71、ピグメントオレンジ72、ピグメントオレンジ73、ピグメントオレンジ74もしくはピグメントオレンジ81を含み;緑色配合物が、好ましくは、フタロシアニン顔料の群からの顔料、特には、色指数顔料ピグメントグリーン7もしくはピグメントグリーン36を含む液体印刷インクのセットが好ましい。
【0063】
これらの液体インクセットは、さらに、濃淡付け染料、好ましくは、C.I.アシッドイエロー17およびC.I.アシッドイエロー23;C.I.ダイレクトイエロー86、C.I.ダイレクトイエロー98およびC.I.ダイレクトイエロー132;C.I.リアクティブイエロー37;C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155およびC.I.ピグメントイエロー180;C.I.ダイレクトレッド1、C.I.ダイレクトレッド11、C.I.ダイレクトレッド37、C.I.ダイレクトレッド62、C.I.ダイレクトレッド75、C.I.ダイレクトレッド81、C.I.ダイレクトレッド87、C.I.ダイレクトレッド89、C.I.ダイレクトレッド95およびC.I.ダイレクトレッド227;C.I.アシッドレッド1、C.I.アシッドレッド8、C.I.アシッドレッド80、C.I.アシッドレッド81、C.I.アシッドレッド82、C.I.アシッドレッド87、C.I.アシッドレッド94、C.I.アシッドレッド115、C.I.アシッドレッド131、C.I.アシッドレッド144、C.I.アシッドレッド152、C.I.アシッドレッド154、C.I.アシッドレッド186、C.I.アシッドレッド245、C.I.アシッドレッド249およびC.I.アシッドレッド289;C.I.リアクティブレッド21、C.I.リアクティブレッド22、C.I.リアクティブレッド23、C.I.リアクティブレッド35、C.I.リアクティブレッド63、C.I.リアクティブレッド106、C.I.リアクティブレッド107、C.I.リアクティブレッド112、C.I.リアクティブレッド113、C.I.リアクティブレッド114、C.I.リアクティブレッド126、C.I.リアクティブレッド127、C.I.リアクティブレッド128、C.I.リアクティブレッド129、C.I.リアクティブレッド130、C.I.リアクティブレッド131、C.I.リアクティブレッド137、C.I.リアクティブレッド160、C.I.リアクティブレッド161、C.I.リアクティブレッド174、C.I.リアクティブレッド180およびC.I.リアクティブレッド241の群からのものを含むことができる。
【0064】
インクジェットインクは、一般には、合計で0.5重量%から15重量%、好ましくは、1.5重量%から8重量%(乾燥とみなす)の本発明の顔料調製品を含む。マイクロエマルジョンインクは有機溶媒、水および、適切であるならば、さらなる屈水性物質(相溶化剤)に基づく。マイクロエマルジョンインクは、一般には、0.5重量%から15重量%、好ましくは、1.5重量%から8重量%の本発明の顔料調製品、5重量%から99重量%の水および0.5重量%から94.5重量%の有機溶媒および/または屈水性化合物を含む。溶媒系インクジェットインクは、好ましくは、0.5重量%から15重量%の本発明の顔料調製品、85重量%から99.5重量%の有機溶媒および/または屈水性化合物を含む。
【0065】
ホットメルトインクは、通常、室温で固体であり、および加熱で液体になるワックス、脂肪酸、脂肪アルコールもしくはスルホンアミドに基づき、好ましい溶融範囲は約60℃から約140℃である。ホットメルトインクジェットインクは、例えば、本質的には、20重量%から90重量%のワックスおよび1重量%から10重量%の本発明の顔料調製品からなる。ホットメルトインクジェットインクは、さらに、0重量%から20重量%の(「染料溶解剤」としての)追加ポリマー、0重量%から5重量%の分散助剤、0重量%から20重量%の粘度改変剤、0重量%から20重量%の可塑剤、0重量%から10重量%の粘性添加物、0重量%から10重量%の(例えば、ワックスの結晶化を防止する)透明性安定化剤およびまた、0重量%から2重量%の酸化防止剤を含むことができる。
【0066】
本発明の顔料調製品は、さらに、加法だけではなく減法色生成用のカラーフィルターの着色剤として、例えば、電気光学的システム、例えば、テレビ画面、液晶ディスプレイ(LCD)、電荷結合装置、プラズマディスプレイもしくは電界発光ディスプレイにおいて有用であり、これらは同様に能動型(ツィステッド・ネマティック)もしくは受動型(スーパツィステッド・ネマティック)強誘電性ディスプレイもしくは発光ダイオードであり得、およびまた、電子インク(「e−インク」)もしくは電子ペーパー(「e−ペーパー」)用の着色剤として有用である。
【0067】
反射型および透過型カラーフィルターの両者のカラーフィルターを製造するには、顔料をペーストの形態で、もしくは適切な結合剤(アクリレート、アクリルエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エポキシド、ポリエステル、メラミン、ゼラチン、カゼイン)中の着色フォトレジストとして、それぞれのLCD構成要素(例えば、TFT−LCD=薄膜トランジスタ液晶ディスプレイもしくは、例えば、(S)TN−LCD=(スーパー)ツィステッド・ネマティック−LCD)に塗布する。高い熱安定性に加えて、安定なペーストもしくは着色フォトレジストは高い顔料純度も必要条件として有する。加えて、着色カラーフィルターはインクジェット印刷法もしくは他の適切な印刷法によって塗布することもできる。
【0068】
本発明の顔料調製品は、これらの非常に良好な彩色およびレオロジー特性、特には、高いフロキュレーション安定性、容易な分散性、良好なレオロジー、高い色強度、透明性および飽和度(彩度)で注目に値する。これらは多くの適用媒体、例えば、溶媒含有もしくは水系コーティングにおいて非常に細かい細分状態まで容易に分散可能である。インクジェット用途において、これらは高い色強度および透明性、コート紙を印刷するときの強い光沢およびまた、良好な保存安定性を低粘性と組合せてインクジェットインクにもたらし、ノズルの目詰まりを生じることがない。
【実施例】
【0069】
以下の例において、パーセンテージおよび部は、他に述べられない限り、重量基準である。
【0070】
比較例1:
式(I)のジスアゾ顔料を、GB−A−2239254の例に記載される通り、ジアゾ化ジメチル2−アミノテレフタレートを1,4−ビス(アセトアセチルアミノ)ベンゼンとカップリングさせた後、生じる粗製顔料をジメチルホルムアミド中、150℃で2時間加熱することによって調製した。
【0071】
実施例1:
式(I)の粗製顔料を、GB−A−2239254に記載される通りにジアゾ化ジメチル2−アミノテレフタレートをビス(アセトアセチルアミノ)−ベンゼンとカップリングさせるが、引き続くジメチルホルムアミド中での加熱はなしに調製する。
【0072】
6.25部のスチレン−無水マレイン酸共重合体(SMA3000HNa(登録商標) Sartomer)および6.25部の式(VII)の顔料分散剤を1350部の水でスラリー化する。この混合物を数時間攪拌する。この後、38.4部の水酸化ナトリウムおよび250部の粗製顔料を添加し、この混合物を均一なスラリーが形成されるまで攪拌する。続いて、150部のo−ジクロロベンゼンを添加し、スラリーを還流下で1時間攪拌する。仕上げ操作全体を通して10.5を上回るpHを維持する。次に、溶媒を混合物から蒸気蒸留によって除去する。濾過後、圧縮ケークを脱イオン水でpH中性まで洗浄し、乾燥させた後、ローラーミルで粉砕する。
【0073】
実施例2:
2.5部の式(VII)の顔料分散体を用い、SMA3000HNa(登録商標)((Sartomer)を用いないことを除いて、実施例1を反復する。
【0074】
実施例3:
12.5部の式(VII)の顔料分散体を用いることを除いて、実施例2を反復する。
【0075】
実施例4:
式(VII)の顔料分散体の代わりに2.5重量部の式(V)の顔料分散体を用いることを除いて、実施例2を反復する。
【0076】
実施例5:
12.5部の式(V)の顔料分散体を用いることを除いて、実施例4を反復する。
【0077】
アルキド−メラミン焼き付け仕上げにおける顔料調製品の彩色特性の試験:
水非含有溶媒系コーティング系における顔料調製品の特性を評価するのにアルキド−メラミン(AM)ワニスを選択した。
【0078】
透明度の決定:
透明度を決定するため、各々の場合において6部の顔料調製品および19部の粉砕ワニスを混合した後、分散させた。この後、50部のアルキド−メラミン・レットダウン(letdown)混合物を導入して均一化し、生じるアルキド−メラミン(AM)コーティングを試験カード上に引き落とした。
【0079】
用いた粉砕ワニスは以下の組成を有している:
50.0部のVialkyd AC451n/70SNB(UCB樹脂および添加物)
50.0部のSolvent Naphtha、1e
100部の粉砕ワニス
【0080】
アルキド−メラミン・レットダウン混合物は以下の組成を有する:
26.4部のVialkyd AC451n/70SNB(UCB樹脂および添加物)
29.4部のVialkyd AC451/60SNA(UCB樹脂および添加物)
35.8部のMaprenal MF600/55BIB(UCB樹脂および添加物)
2.17部のn−ブタノール
2.17部のDepanoll
1.86部のブチルジグリコール
2.2部のSolvent Naphtha、1e
100部のアルキド−メラミン・レットダウン混合物
【0081】
次に、透明度を視認で以下のように評価する:
−VI 有意に(significantly)より隠蔽
−V 実質的に(substantially)より隠蔽
−IV 明瞭に(distinctly)より隠蔽
−III 顕著に(markedly)より隠蔽
−II 幾らか(somewhat)より隠蔽
−I 微かに(by a trace)より隠蔽
/=/ ほぼ等しい
+I 微かにより透明
+II 幾らかより透明
+III 顕著により透明
+IV 明瞭により透明
+V 実質的により透明
+VI 有意により透明
比較例1の顔料を透明度標準として用いた。
【0082】
色強度およびCIELAB値の決定:
色強度およびCIELAB値を決定するため、各々の場合において16部の上で得られたアルキド−メラミンコーティングを3部の白色塗料と共に均一化し、試験カード上に引き落とした。140℃で20分間焼き付けた後、彩色特性(色強度およびCIELAB値L、a、b、Cおよびh)をMinolta製のCM−3700d分光光度計を用いて決定する。
【0083】
白色塗料は以下の組成を有する:
52.63部の白色ペースト(Standox GmbH、Article 256013)
24.13部のVialkyd AC451/60SNIA(UCB樹脂および添加物)
15.15部のMaprenal MF600/55BIB(UCB樹脂および添加物)
0.7部のBYK−331、Solvent Naphtha、1e中1%
0.7部のブチルジグリコール
1.4部のジアセトンアルコール
2.8部のDepanoll
2.49部のSolvent Naphtha、1e
100部の白色塗料
比較例1の顔料を色強度標準として用いた。
【0084】
これらの結果を下記表1にまとめる:
【0085】
【表1】

【0086】
本発明の顔料調製品は、非常に高い色強度、明色およびより緑の色相、特には、比較例1において得られる顔料と比較して有意に高い純度で注目に値する。実施例1、3および4の本発明の顔料調製品は比較例1と比較して有意に高い透明度をも有する。
水系ワニス系における顔料調製品の彩色特性の試験:
【0087】
色強度およびCIELAB値の決定:
色強度およびCIELAB値を決定するため、各々の場合において1部の顔料調製品を9部の水系ワニス系と混合した後、分散させて粉砕混合物を形成する。白色減力(white reduction)のため、各々の場合においてこの粉砕混合物2部を100部の標準白色分散体(Weissdispersionsfarbe 236/14E、Esser)と共に均一化し、試験カード上に引き落とす。次に、彩色特性(色強度およびCIELAB値L、a、b、Cおよびh)をMinolta製のCM−3700d分光光度計を用いて決定する。
【0088】
水系ワニス系は以下の組成を有する:
56.54部のエチレングリコール
19.83部のイオン非含有水
7.46部の(登録商標)Igepal CO−630
12.67部の(登録商標)Geropon WS−251
3.2部の(登録商標)Tamol 731A
0.3部のBvk−019消泡剤
100部の水系ワニス系
【0089】
透明度の決定:
透明度を決定するため、各々の場合において4部の粉砕混合物を9部の蒸留水および7部のアクリレートワニス((登録商標)Viacryl SC 175W/40)と共に均一化し、試験カード上に引き落とす。比較例1の顔料を色強度および透明度標準として用いた。透明度はアルキド−メラミン焼き付け仕上げのものと同様に評価した。
【0090】
これらの結果を下記表2にまとめる:
【0091】
【表2】


【0092】
本発明の顔料調製品は、比較例1において得られる顔料と比較して、非常に高い色強度、有意に高い純度および明瞭から実質的に高い透明度で注目に値する。
【0093】
着色剤配合物の製造:
粉末もしくは圧縮ケークのいずれかとしての顔料調製品を脱イオン水中で上記分散剤、有機溶媒および他の添加物と共にペースト化した後、溶解剤を用いて均一化および予備分散させる。次の微細分散はビーズミルを冷却しながら3時間用いて達成する。続いて、この分散体を脱イオン水で望ましい顔料最終濃度に調整する。
【0094】
以下の例において記載される着色剤配合物は、上記方法により、100部のそれぞれの着色剤配合物が形成されるように以下の成分を記述される量で用いて製造した(部は重量基準である):
【0095】
比較例A:
20部の、比較例1に従って製造される式(I)の顔料
2.5部のアクリレート樹脂、ナトリウム塩(分散剤)
1.2部のポリエチレングリコールアルキルエーテル、ナトリウム塩(分散剤)
7.5部のプロピレングリコール
0.2部の保存剤
残部 水
【0096】
実施例A:
比較例1に従って製造される式(I)の顔料の代わりに実施例1の本発明の顔料調製品を用い、比較例Aと同様にして着色剤配合物を製造した。
【0097】
実施例B:
比較例1に従って製造される式(I)の顔料の代わりに実施例3の本発明の顔料調製品を用い、比較例Aと同様にして着色剤配合物を製造した。
【0098】
実施例C:
比較例1に従って製造される式(I)の顔料の代わりに実施例5の本発明の顔料調製品を用い、比較例Aと同様にして着色剤配合物を製造した。
【0099】
着色剤配合物の物理的特性の試験:
インクジェット印刷に適する着色剤配合物は一連の物理特性全体を満たさなければならず、そこでは、例えば、メジアン粒径D50は150nm、好ましくは、100nmの値を超えてはならず、粒径分布は可能な限り狭くなければならない。実施例AからCおよび比較例Aの着色剤配合物の粒径D25、D50およびD75を、キャピラリ水力学的分画(CHDF)法を用いて決定した。
【0100】
これらの結果を下記表3にまとめる:
【0101】
【表3】

【0102】
本発明の顔料調製品から製造される実施例AからCの着色剤配合物は、比較例Aの着色剤配合物と比較して、明瞭に小さい粒径を有する。
【0103】
着色剤配合物の印刷特性の試験:
印刷特性の評価:
印刷特性を評価するため、実施例AからCおよび非各例Aの着色剤配合物から試験インクを調整し、サーマルジェットインクプリンタを用いてこれらの印刷性を試験した。
【0104】
試験インクを調製するため、まず着色剤配合物を1μmフィルターを通して濾過して粉砕媒体アトリタスおよびあらゆる粗画分を除去した。この後、濾過した着色剤配合物を水で希釈し、さらなる低分子量アルコールおよびポリオールと混合して顔料含有率を、インク(100重量%)を基準にして、5重量%に調整した。
【0105】
試験インクの物理特性の評価:
インクジェット印刷インクは一連の物理特性全体を有していなければならない。例えば、ノズルの目詰まりを防止し、および高い透明度および光沢のインクジェット印刷物を得るため、粒径は狭い粒径分布と対になって可能な限り小さく(多くの系について、D50は、好ましくは、<100nmである)なければならない。さらに、インクは非常に低い粘度(好ましくは、<5mPa)を有していなければならず、これは室温より高温もしくは低温での保存で著しく変化することがない。
【0106】
粘度:
粘度は、Haake製のコーンプレート粘度計(Roto Visco 1)(チタンコーン:60mm径、1°)を用いて、0から700s−1の範囲の剪断速度への粘度の依存を調べることによって決定した。表4に報告される粘度値は400s−1の剪断速度で測定した。試験インクの保存安定性を評価するため、(1)試験インクの調製直後、(2)60℃で1週間の保存の後および(3)60℃で4週間の保存の後に粘度を測定した。
【0107】
試験インクの粒径D25、D50およびD75は着色剤配合物と同様に測定した。
【0108】
これらの結果を下記表4にまとめる:
【0109】
【表4】

【0110】
Canon i560プリンタを用いて試験画像を商業的に入手可能な標準紙(コピー用紙)および専用紙(プレミアム品質)に印刷した。画像品質は視認検査によって評価した。
【0111】
光沢測定:
光沢は、試験インクをEpsonプレミアム光沢紙上に全領域印刷でCanon i560プリンタを用いて印刷し、Byk Gardnerグロスメーターを20°および60°の角度で用いて測定することによって測定した。
【0112】
これらの結果を下記表5にまとめる:
【0113】
【表5】

【0114】
実施例AからCの本発明の着色剤配合物から調製される試験インクは、小粒径D50<100nm、低粘度<5mPaを有し、非常に良好な印刷特性を示す。これらの結果は印刷プロセスにおける特定の試験インクの部分に対する高い信頼性(非常に良好な印刷開始挙動、ノズル目詰まりなし)および用いられる様々な紙上での優れた品質の非常に均一な印刷画像である。普通紙上に実施例AからCの本発明の着色剤配合物から調製される試験インクで生成される印刷は、比較例Aの試験インクと比較して、高い光学密度を示し、およびプレミアム光沢紙上で非常に強い光沢を示す。
【0115】
したがって、実施例AからCの本発明の着色剤配合物から調製される試験インクはインクジェット印刷の必要条件を突出した方法で満たす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C.I.ピグメントイエロー155に基づく顔料調製品であって、C.I.ピグメントイエロー155の重量を基準にして0.1重量%から50重量%の、少なくとも1つのスルホン酸基で置換されるモノアゾもしくはジスアゾ顔料の群から選択される少なくとも1種類の顔料分散剤を含み、6.7重量%濃度の顔料調製品を含有する溶媒系アルキドメラミンワニスにおいてCIELAB系で53を上回る彩度Cを有し、および/または0.2重量%濃度の白色減力(white reduction)顔料調製品を含有する白色減力水系ワニス系においてCIELAB系で35を上回る彩度Cを有することを特徴とする、顔料調製品。
【請求項2】
0.5重量%から20重量%の顔料分散剤を含有する請求項1に記載の顔料調製品。
【請求項3】
溶媒系アルキドメラミンワニス中に55を上回り、および/または白色減力水系ワニス系において36を上回る彩度Cを特徴とする、請求項1または2に記載の顔料調製品。
【請求項4】
溶媒系アルキドメラミンワニスにおいて57を上回り、および/または白色減力水系ワニス系において37を上回る彩度Cを特徴とする、請求項1または2に記載の顔料調製品。
【請求項5】
顔料分散剤が式(II)の化合物
【化1】

(式中、Aは式(III)または(IV)の基
【化2】

であり、並びに
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は、独立して、H、ハロゲン、SOM、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐C−C10−アルキルもしくはC−C10−シクロアルキル基または置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐C−C10−アルケニルもしくはC−C10−シクロアルケニル基、アリール、アリールオキシ、アリール(C−C)アルキル、ヘタリール、ヘタリールオキシ、ヘタリール(C−C)アルキルもしくはC−C10−アルコキシであり、R10はH、COOM、COO(C−C10)アルキル、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐C−C10−アルキルもしくはC−C10−シクロアルキル基であり、並びに
MはH、一価金属カチオン、等価の多価カチオン、NH、二級、三級もしくは四級アンモニウムイオンであり、
ただし、2つのフェニル環のうちの少なくとも1つは少なくとも1つのスルホン酸基で置換されている)
であることを特徴とする、請求項1から4の一項以上に記載の顔料調製品。
【請求項6】
顔料分散剤が式(V)の化合物
【化3】

であることを特徴とする、請求項1から5の一項以上に記載の顔料調製品。
【請求項7】
顔料分散剤が式(VI)の化合物
【化4】

(式中、Aは請求項5に記載の式(III)または(IV)の基であり、並びに
R11およびR12は、独立して、H、ハロゲン、置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐C−C10アルキルもしくはC−C10−シクロアルキル基または置換もしくは非置換、分岐もしくは非分岐C−C10−アルケニルもしくはC−C10−シクロアルケニル基またはC−C10−アルコキシであり、並びに
nは1もしくは2、好ましくは、2であり、
ただし、A基における2つの末端フェニル環のうちの少なくとも1つは少なくとも1つのスルホン酸基で置換されている)
であることを特徴とする、請求項1から4の一項以上に記載の顔料調製品。
【請求項8】
顔料分散剤が式(VII)の化合物
【化5】

であることを特徴とする、請求項7に記載の顔料調製品。
【請求項9】
PY155粗製顔料を水および100℃を上回る沸点を有する有機溶媒の混合液中、アルカリ性pHおよび、C.I.ピグメントイエロー155の重量を基準にして、0.1から50重量%の顔料分散剤の存在下で、60℃を上回る温度に加熱することを含む、請求項1から8の一項以上に記載の顔料調製品の製造方法。
【請求項10】
有機溶媒が芳香族溶媒である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
有機溶媒がクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼンおよびトリクロロベンゼンからなる群より選択される、請求項9もしくは10に記載の方法。
【請求項12】
加熱が90℃を上回る温度までである、請求項9から11の一項以上に記載の方法。
【請求項13】
pHが9以上である、請求項9から12の一項以上に記載の方法。
【請求項14】
請求項9から13の一項以上に記載の方法によって製造される、顔料調製品。
【請求項15】
高分子有機材料、例えば、プラスチック、樹脂、コーティング、塗料、電子写真トナーおよび現像剤、エレクトレット材料、カラーフィルターおよびまた、液体インク、印刷インクおよび種の着色のための、請求項1から8および14の一項以上に記載の顔料調整品の使用。
【請求項16】
液体インクがインクジェットインクである、請求項15に記載の使用。

【公開番号】特開2007−262382(P2007−262382A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−12221(P2007−12221)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(596081005)クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド (27)
【Fターム(参考)】