説明

Phanerochaetechrysosporium由来のピラノゾン脱水酵素

【課題】ピラノゾン脱水素酵素に関する配列情報の用途の提供。
【解決手段】本発明は、さらに、AFのAPPおよびミクロセシンへの転換およびグルコースのコルタルセロンへの転換におけるピラノゾン脱水素酵素の使用に関する。本願は、配列番号1のポリペプチドを含み、このポリペプチドは、以下:(i)配列番号1のヌクレオチド配列またはその相補体を含むポリヌクレオチド;(ii)配列番号1のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列、またはそのフラグメントを含むポリヌクレオチド;(iii)配列番号1のヌクレオチド配列の相補体とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;および(iv)配列番号1のポリヌクレオチドに対する遺伝コードの結果として縮重するポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、から選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、配列に関する。詳細には、本発明は、ピラノゾン脱水酵素のアミノ酸配列およびこれをコードする核酸配列に関する。
【背景技術】
【0002】
(技術背景および先行技術)
グルコースを、ピラノース2−オキシダーゼ(EC1.1.3.10、P2O)で酸化してグルコソン(D−アラビノ−ヘキソス−2−ウロース)を形成し、次いでピラノゾン脱水酵素(PD)によってコルタルセロンに転換することができることが文献で十分に報告されている(非特許文献1;非特許文献2)。P2OおよびPDは共に真菌から精製されており、P2Oがクローニングされている。PDは、Kothsら(1992)によってPolyporus obtususから、およびGabrielら(1993)によってPhanerochaete chrysosporiumから精製されている。しかし、現在まで、PDのアミノ酸配列もヌクレオチド配列も特徴付けられていない。
【0003】
デンプンを1,5−アンヒドロ−D−フルクトース(AF)に転換することができることが当該技術分野で確立されている(非特許文献3)。いくつかの真菌および紅藻抽出物がおそらく酵素によりAFをミクロセシンに転換することができることがさらに示されたが、関連する酵素は単離も、精製も、特徴付けもされていない(非特許文献4;非特許文献5)。現在まで、PDが、AFのミクロセシンへの転換において役割を果たし得ることは示唆されていない。
AFからアスコピロンP(APP)を生成することができることも報告されている(非特許文献6)。同様に、このプロセスにおけるPDの関与を示唆する証拠は存在しなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Koths,K.;Halenbeck,R.;Moreland,M.,1992,Carbohydr.Res.Vol.232 No.1,PP.59−75
【非特許文献2】Gabriel,J.;Volc,J;Sedmera,P;Daniel,G.;Kubatova,E.,1993,Arch.Microbi.,160:27−34
【非特許文献3】S.Yu and J.Marcussen, Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering;Gilbert,H.J.;Davies,G.J.;Henrissat B.;Svensson,B.,Eds.;Royal Society of Chemistry(RS.C)Press,1999, 242−250
【非特許文献4】Baute, M−A.;Deffieux,G.;Baute,R.,1986,Phytochemistry (Oxf) vol. 25:1472−1473
【非特許文献5】Broberg,A.,Kenne,L.,and Pedersen,M.(1996)Phytochemistry(Oxf),41:151−154
【非特許文献6】Baute,M−A.;Deffieux,G.;Vercauteren,J.;Baute,R.;Badoc,A.,1993,Phytochemistry(Oxf)vol.33 no.1,41−45
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
広範な局面では、本発明は、ピラノゾン脱水酵素をコードするアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の特徴付けに関する。
【0006】
本発明のさらなる局面は、AFのミクロセシンおよびAPPへの転換およびグルコソンのコルタルセロンへの転換を含む、ピラノゾン脱水酵素の以前に開示されていない使用に関する。
【0007】
本発明の局面を、特許請求の範囲および以下の解説で示す。
【0008】
簡単に述べれば、本発明のいくつかの局面は、以下に関する。
1.新規のアミノ酸配列
2.新規のヌクレオチド配列
3.上記アミノ酸配列を調製する方法
4.上記ヌクレオチドの配列を調製する方法
5.上記ヌクレオチド配列を含む発現系
6.上記ヌクレオチド配列を発現させる方法
7.上記ヌクレオチド配列を含む形質転換宿主/宿主細胞
8.上記アミノ酸配列の使用
9.上記ヌクレオチド配列の使用。
【0009】
本発明に関して使用される、用語「発現」、「発現する」、「発現された」、および「発現可能な」は、各用語「転写」、「転写する」、「転写された」、および「転写可能な」と同義である。
【0010】
本発明のヌクレオチド配列に関する他の局面には、以下が含まれる:本発明の配列を含む構築物;本発明の配列を含むベクター;本発明の配列を含むプラスミド;本発明の配列を含む形質転換細胞;本発明の配列を含む形質転換組織;本発明の配列を含む形質転換器官;本発明の配列を含む形質転換宿主;本発明の配列を含む形質転換生物。本発明はまた、本発明の配列を移入する方法を含む、宿主植物細胞における発現などの本発明の配列を使用したヌクレオチド配列を発現させる方法を含む。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(1) 以下:
【0011】
【化101】

【0012】
から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド、またはその変異体、ホモログ、もしくは誘導体であって、ここで、Xは未知のアミノ酸残基である、単離されたポリペプチド。
(2) 項目1から選択される少なくとも1つの配列を含む、項目1記載のポリペプチド。
(3) ピラノゾン(pyranosone)脱水酵素活性を有する、項目1または項目2に記載のポリペプチド。
(4) 項目1〜項目3のいずれか1項に記載の精製されたポリペプチドに対して惹起される抗体に免疫反応性である、ポリペプチド。
(5) 項目1〜項目4のいずれか1項に記載のポリペプチド、またはその変異体、ホモログ、フラグメント、もしくは誘導体をコードする、単離されたポリヌクレオチド。
(6) 以下:
(i)配列番号1のヌクレオチド配列またはその相補体を含むポリヌクレオチド;
(ii)配列番号1のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列、またはそのフラグメントを含むポリヌクレオチド;
(iii)配列番号1のヌクレオチド配列の相補体とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;および
(iv)配列番号1のポリヌクレオチドに対する遺伝コードの結果として縮重するポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
から選択される、項目5記載の単離されたポリヌクレオチド。
(7) 前記ヌクレオチド配列は、Phanerochaete chrysosporium、Polyporus obtusus、またはCorticium caeruleumから得られ得る、項目5、項目6、または項目7のいずれか1項記載のヌクレオチド配列。
(8) 前記ヌクレオチド配列は、Pezizales目、Auriculariales目、Aphyllophorales目、Agaricales目、またはGracilariales目から得られ得る、項目5、項目6、または項目7のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列。
(9) 前記ヌクレオチド配列は、Aleuria aurantia、Peziza badia、P.succosa、Sarcophaera eximia、Morchella conica、M.costata、M.elata、M.esculenta、M.esculenta var.rotunda、M.hortensis、Gyromitra infula、Auricularia mesenterica、Pulcherricium caeruleum、Peniophora quercina、Phanerochaete sordida、Vuilleminia comedens、Stereum gausapatum、S.sanguinolentum、Lopharia spadicea、Sparassis laminosa、Boletolpsis subsquamosa、Bjerkandera adusta、Trichaptum biformis、Cerrena unicolor、Pycnoporus cinnabarinus、P.sanguineus、Junghunia nitida、Ramaria flava、Clavulinopsis
helvola、C.helvola var.geoglossoides、V.pulchra、Clitocybe cyathiformis、C.dicolor、C.gibba、C.odora、Lepista caespitosa、L.inversa、L.luscina、L.nebularis、Mycena seynii、Pleurocybella porrigens、Marasmius oreales、Inocybe pyriodora、Gracilaria varrucosa、Gracilaria tenuistipitata、Gracilariopsis sp.、またはGracilariopsis lemaneiformisから得られ得る、項目5、項目6、または項目7のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列。(10) 以下:
(i)配列番号1のヌクレオチド配列またはその相補体を含むポリヌクレオチド;
(ii)配列番号1のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列、またはそのフラグメントを含むポリヌクレオチド;
(iii)配列番号1のヌクレオチド配列の相補体とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;および
(iv)配列番号1のポリヌクレオチドに対する遺伝コードの結果として縮重するポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
から選択される単離されたポリヌクレオチド。
(11) 項目5〜項目10のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列を含む、構築物。(12) 項目5〜項目10のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列を含む、ベクター。
(13) 宿主細胞中での前記ポリヌクレオチドの発現を指示することができる調節配列に作動可能に連結した項目5〜項目10のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
(14) 項目5〜項目10のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列が組み込まれた、宿主細胞。
(15) 配列番号1のポリヌクレオチド配列、またはその変異体、ホモログ、フラグメント、もしくは誘導体によってコードされる単離されたポリペプチド。
(16) 7個までのアミノ酸がN末端から除去されている、項目15に記載の単離されたポリペプチド。
(17) 配列番号1によってコードされるポリペプチド配列と少なくとも75%の同一性を有する、項目15または項目16に記載の単離されたポリペプチド。
(18) 項目1〜項目4または項目15〜項目17のいずれか1項に記載のポリペプチドに結合し得る抗体。
(19) 項目5〜項目10のいずれか1項に記載のヌクレオチド配列を発現する工程、ならびに必要に応じて、該ヌクレオチド配列を単離および/または精製する工程を包含する、項目1〜項目4または項目15〜項目17のいずれか1項に記載のポリペプチドを調製するプロセス。
(20) 項目1〜項目4または項目15〜項目17のいずれか1項に記載のポリペプチドを使用する、ミクロセシン(microthecin)を調製するためのプロセス。
(21) 項目1〜項目4または項目15〜項目17のいずれか1項記載のポリペプチドを使用する、アスコピロン(ascopyrone)Pを調製するためのプロセス。
(22) 前記ポリペプチドと、1,5−アンヒドロ−D−フルクトースとを反応させる工程を包含する、項目20または項目21に記載のプロセス。
(23) アスコピロンPの調製におけるAPPシンターゼの使用をさらに包含する、項目21記載のプロセス。
(24) APPシンターゼおよび前記ポリペプチドと、1,5−アンヒドロ−D−フルクトースとを反応させる工程を包含する、項目23記載のプロセス。
(25) 前記ポリペプチドと、グルカンリアーゼおよびデキストリンデンプンとを接触させる工程を包含する、項目20に記載のプロセス。
(26) 項目1〜項目4または項目15〜項目17のいずれか1項に記載のポリペプチドを使用する、コルタルセロン(cortalcerone)を調製するプロセス。
(27) 前記ポリペプチドとグルコソン(glucosone)とを反応させる工程を包含する、項目26に記載のプロセス。
(28) 前記ポリペプチドと、グルコースおよびピラノース2−オキシダーゼとを反応させる工程を包含する、項目26に記載のプロセス。
(29) ピラノゾン脱水酵素と、1,5−アンヒドロ−D−フルクトースとを反応させる工程を包含する、ミクロセシンを調製するためのプロセス。
(30) ピラノゾン脱水酵素と、グルコースおよびデキストリンデンプンとを反応させる工程を包含する、ミクロセシンを調製するためのプロセス。
(31) ピラノゾン脱水酵素およびAPPシンターゼと、1,5−アヒドロ−D−フルクトースとを反応させる工程を包含する、アスコピロンPを調製するためのプロセス。
(32) ピラノゾン脱水酵素と、グルコソンを反応させる工程を包含する、コルタルセロンを調製するためのプロセス。
(33) ピラノゾン脱水酵素と、グルコソンおよびピラノース2−オキシダーゼとを反応させる工程を包含する、コルタルセロンを調製するためのプロセス。
(34) 病原体Aphanomycesの増殖の阻止および/または阻害、および/または死滅におけるミクロセシン、コルタルセロン(cortalcerone)、またはその誘導体もしくは異性体の使用。
(35) 前記病原体は、Aphanomyces cochlioidesである、項目34記載の使用。
(36) 前記ミクロセシンの誘導体は、2−フリル−ヒドロキシメチル−ケトンまたは4−デオキシ−グリセロ−ヘキソ−2,3−ジルオースである、項目34または項目35に記載の使用。
(37) 前記コルタルセロンの誘導体は、2−フリルグリオキサールである、項目34または項目35記載の使用。
(38) 植物または植物の種子の処置における、項目34〜項目37のいずれか1項に記載の使用。
(39) 植物または種子の保護剤としての、ミクロセシン、コルタルセロン、またはその誘導体もしくは異性体の使用。
(40) サトウダイコンの種子の処置における、項目34〜項目39のいずれか1項に記載の使用。
(41) 実質的に本明細書に記載され、添付の実施例に関連するピラノゾン脱水酵素活性を有する酵素。
(42) 実質的に本明細書に記載され、添付の実施例に関連するピラノゾン脱水酵素活性を有する酵素をコードするヌクレオチド配列。
(43) 実質的に本明細書に記載され、添付の実施例に関連するアスコピロンPを調製するためのプロセス。
(44) 実質的に本明細書に記載され、添付の実施例に関連するミクロセシンを調製するためのプロセス。
(45) 実質的に本明細書に記載され、添付の実施例に関連するコルタルセロンを調製するためのプロセス。
(46) 実質的に本明細書に記載され、添付の実施例に関連する病原体Aphanomycesの成長を阻止および/または阻害し、かつ/または該病原体Aphanomycesを死滅させるための方法。
参照を容易にするために、本発明のこれらおよびさらなる局面を、ここでは適切な見出しをつけた節によって考察する。しかし、各節の教示は、必ずしもそれぞれの特定の節に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1A】図1は、8〜25%の勾配ゲルでのPD1(ピラノゾン脱水素酵素アイソフォーム1)の電気泳動を示す。より詳細には、図1Aは、SDS−PAGEを示す:レーン1および2(左から)、それぞれNovexおよびPharmaciaのタンパク質マーカー;レーン3、4、および5、精製PD1。図1Bは、NativePAGEを示す:レーン1、2、3、精製PD1;レーン4、Pharmaciaのタンパク質マーカー、レーン5、部分精製されたPharmaciaのタンパク質マーカー。ゲルを、PharmaciaのPhastGel Blue Rで染色した。
【図1B】図1は、8〜25%の勾配ゲルでのPD1(ピラノゾン脱水素酵素アイソフォーム1)の電気泳動を示す。より詳細には、図1Aは、SDS−PAGEを示す:レーン1および2(左から)、それぞれNovexおよびPharmaciaのタンパク質マーカー;レーン3、4、および5、精製PD1。図1Bは、NativePAGEを示す:レーン1、2、3、精製PD1;レーン4、Pharmaciaのタンパク質マーカー、レーン5、部分精製されたPharmaciaのタンパク質マーカー。ゲルを、PharmaciaのPhastGel Blue Rで染色した。
【図2】図2は、ピラノゾン脱水素酵素の部分アミノ酸配列を示す。
【図3】図3Aは、ミクロセシン産生のための1,5−アンヒドロ−D−フルクトースおよびPDの使用を示す。反応混合物は、1,5−アンヒドロ−D−フルクトース5μl(3.0%)、PD調製物5μl、65μlのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)、および最終容量0.7mlへの水からなっていた。350〜190nmの間のスキャニングによって反応をモニターした。反応時間0分は、ブランクとして使用した。230nm付近の吸収ピークは、ミクロセシンの形成を示す。265nmの吸収は、ミクロセシンに転換する前のAF由来の中間体の第1の形成を示す。図3Bは、ミクロセシンおよびその中間体の産生を示す。反応混合物は、10μlの部分精製PD(Phanerochaete chrysosporium由来の無細胞抽出物の25〜50%飽和での硫酸アンモニウム画分)、25μlのAF(3.0%、重量/容量)、100μlのリン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH6.5)、および0.84mlの水からなっていた。基質AFの添加によって反応を開始させた。22℃で反応を行った。ミクロセシンおよびその中間体の形成を、230nmおよび260nmそれぞれでモニターした。中間体が最初に形成され、約20分後に停止することが認められる。ミクロセシン形成は遅延するが、反応混合物中のほとんど全てのAFが消費されるまでその形成が継続された。
【図4−1】図4は、配列番号1(上流調節領域(−1〜−288)、コード領域(1〜3146)、および下流領域(3147〜3444)を含む真菌Phanerochaete chrysosporium由来のピラノゾン脱水素酵素(PD)をコードする遺伝子)を示す。推定デンプンコドンは、ATG(太字)であり、終止コドンはTGA TAG(太字)である。太字のコドンATGから翻訳を開始すると予想される場合、精製した機能的PDは、N末端の7−アミノ酸トランケートPDに相当する。
【図4−2】図4は、配列番号1(上流調節領域(−1〜−288)、コード領域(1〜3146)、および下流領域(3147〜3444)を含む真菌Phanerochaete chrysosporium由来のピラノゾン脱水素酵素(PD)をコードする遺伝子)を示す。推定デンプンコドンは、ATG(太字)であり、終止コドンはTGA TAG(太字)である。太字のコドンATGから翻訳を開始すると予想される場合、精製した機能的PDは、N末端の7−アミノ酸トランケートPDに相当する。
【図5−1】図5は、 真菌Phanerochaete chrysosporium由来のピラノゾン脱水素酵素(PD)遺伝子の上流領域、コード領域、および下流領域を示す。DNA配列は、理論的に、異なるアミノ酸配列を有する3つのタンパク質をコードすることができる。太字のアミノ酸は、精製した機能的PDのアミノ酸配列決定によって見出されたものである。同定されたイントロンに下線を引く。
【図5−2】図5は、 真菌Phanerochaete chrysosporium由来のピラノゾン脱水素酵素(PD)遺伝子の上流領域、コード領域、および下流領域を示す。DNA配列は、理論的に、異なるアミノ酸配列を有する3つのタンパク質をコードすることができる。太字のアミノ酸は、精製した機能的PDのアミノ酸配列決定によって見出されたものである。同定されたイントロンに下線を引く。
【図5−3】図5は、 真菌Phanerochaete chrysosporium由来のピラノゾン脱水素酵素(PD)遺伝子の上流領域、コード領域、および下流領域を示す。DNA配列は、理論的に、異なるアミノ酸配列を有する3つのタンパク質をコードすることができる。太字のアミノ酸は、精製した機能的PDのアミノ酸配列決定によって見出されたものである。同定されたイントロンに下線を引く。
【図5−4】図5は、 真菌Phanerochaete chrysosporium由来のピラノゾン脱水素酵素(PD)遺伝子の上流領域、コード領域、および下流領域を示す。DNA配列は、理論的に、異なるアミノ酸配列を有する3つのタンパク質をコードすることができる。太字のアミノ酸は、精製した機能的PDのアミノ酸配列決定によって見出されたものである。同定されたイントロンに下線を引く。
【図6】図6は、実施例3に従って処置したサトウダイコン種子の最終の出現を示す。
【図7】図7は、サトウダイコンを根腐れさせる病原体Aphanomyces cochlioidesに対する種々の濃度のミクロセシンの効果のスクリーニングを示す。
【図8】図8は、サトウダイコンを根腐れさせる病原体Pythium ultinumおよびRhizoctonia solaniそれぞれに対する種々の濃度でのミクロセシンの効果のスクリーニングを示す。
【図9】図9は、サトウダイコンを根腐れさせる病原体Pythium ultinumおよびRhizoctonia solaniそれぞれに対する種々の濃度でのミクロセシンの効果のスクリーニングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(発明の詳細な開示)
本発明の1つの局面は、以下:
【0015】
【化2】

【0016】
から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列(ここで、Xは未知のアミノ酸残基である)を含む、単離ポリペプチド、またはその変異体、ホモログ、もしくは誘導体に関する。
【0017】
なおさらなる局面では、本発明は、以下から選択されるヌクレオチド配列に関する:
(a)上記アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;
(b)(a)のヌクレオチド配列の変異体、ホモログ、誘導体、またはフラグメントであるヌクレオチド配列;
(c)(a)のヌクレオチド配列の相補体であるヌクレオチド配列;
(d)(a)のヌクレオチド配列の変異体、ホモログ、誘導体、またはフラグメントの相補体であるヌクレオチド配列;
(e)(a)のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列;
(f)(a)のヌクレオチド配列の変異体、ホモログ、誘導体、またはフラグメントとハイブリダイズし得るヌクレオチド配列;
(g)(a)のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列の相補体であるヌクレオチド配列;
(h)(a)のヌクレオチド配列の変異体、ホモログ、誘導体、またはフラグメントとハイブリダイズし得るヌクレオチド配列の相補体であるヌクレオチド配列;
(i)(a)のヌクレオチド配列の相補体とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列;
(j)(a)のヌクレオチド配列の変異体、ホモログ、誘導体、またはフラグメントの相補体とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列;
(k)(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、および/または(j)のいずれか1つを含むヌクレオチド配列。
【0018】
本発明の別の局面には、本発明の単離されたヌクレオチド配列が含まれる。
【0019】
(好ましい局面)
好ましい1つの実施形態では、本発明は、以下の(i)〜(xiii):
【0020】
【化3】

【0021】
から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列(ここで、Xは未知のアミノ酸残基である)を含む、単離ポリペプチド、またはその変異体、ホモログ、もしくは誘導体に関する。
【0022】
1つの好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される1つの配列を含む。
【0023】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される2つの配列を含む。
【0024】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される3つの配列を含む。
【0025】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される4つの配列を含む。
【0026】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される5つの配列を含む。
【0027】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される6つの配列を含む。
【0028】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される7つの配列を含む。
【0029】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される8つの配列を含む。
【0030】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される9つの配列を含む。
【0031】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される10の配列を含む。
【0032】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される11の配列を含む。
【0033】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される12の配列を含む。
【0034】
別の好ましい実施形態では、上記ポリペプチドは、上記配列(i)〜(xiii)から選択される13の配列を含む。
【0035】
好ましくは、本発明のポリペプチドは、ピラノゾン脱水酵素活性を有する。
【0036】
1つの好ましい実施形態は、本発明の精製されたアミノ酸配列に対して惹起される抗体に免疫反応を示すポリペプチドに関する。
【0037】
別の局面は、本発明のポリペプチド、またはその変異体、ホモログ、フラグメント、もしくは誘導体をコードする単離されたポリヌクレオチド配列に関する。
【0038】
好ましくは、単離ポリヌクレオチドは、以下;
(i)配列番号1のヌクレオチド配列またはその相補体を含むポリヌクレオチド;
(ii)配列番号1のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含むポリヌクレオチド;
(iii)配列番号1のヌクレオチド配列の相補体とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;および
(iv)配列番号1のポリヌクレオチドに対する遺伝コードの結果として縮重するポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
から選択される。
【0039】
好ましくは、ヌクレオチド配列は、Phanerochaete chrysosporium、Polyporus obtusus、またはCorticium caeruleumから得ることができる。
【0040】
1つの好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列は、Pezizales目、より好ましくは、Aleuria aurantia、Peziza badia、P.succosa、Sarcophaera eximia、Morchella conica、M.costata、M.elata、M.esculenta、M.esculenta var.rotunda、M.hortensis、またはGyromitra infulaから得ることができる。
【0041】
別の好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列は、Auriculariales、より好ましくはAuricularia mesentericaから得ることができる。
【0042】
別の好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列は、Aphyllophorales目、より好ましくは、Pulcherricium caeruleum、Peniophora quercina、Phanerochaete sordida、Vuilleminia comedens、Stereum gausapatum、S.sanguinolentum、Lopharia spadicea、Sparassis laminosa、Boletopsis subquamosa、Bjerkandera adusta、Trichaptum biformis、Cerrena unicolor、Pycnoporus cinnabarinus、P.sanguineus、Junghunia nitida、Ramaria flava、Clavulinopsis helvola、C.helvola var.geoglossoides、またはV.pulchraから得ることができる。
【0043】
別の好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列は、Agaricales目、より好ましくは、Clitocybe cyathiformis、C.dicolor、C.gibba、C.odora、Lepista caespitosa、L.inversa、L.luscina、L.nebularis、Mycena seynii、Pleurocybella porrigens、Marasmius oreales、またはInocybe pyriodoraから得ることができる。
【0044】
別の好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列は、Gracilariales目、より好ましくは、Gracilaria varrucosa、Gracilaria tenuistipitata、Gracilariopsis sp.、またはGracilariopsis lemaneiformisから得ることができる。
【0045】
別の好ましい実施形態では、ヌクレオチド配列は、Melanosporaceae目、より好ましくは、Melanospora ornata、Microthecium
compressum、Microthecium sobeliiから得ることができる。
【0046】
本発明の別の局面は、以下:
(i)配列番号1のヌクレオチド配列またはその相補体を含むポリヌクレオチド;
(ii)配列番号1のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列またはそのフラグメントを含むポリヌクレオチド;
(iii)配列番号1のヌクレオチド配列の相補体とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド;および
(iv)配列番号1のポリヌクレオチドに対する遺伝コードの結果として縮重するポリヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、
から選択される単離されたヌクレオチドに関する。
【0047】
好ましくは、ヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結されている。
【0048】
本発明の別の局面は、上記ポリヌクレオチド配列を含む構築物に関する。
【0049】
さらに別の局面は、上記ポリヌクレオチド配列を含むベクターに関する。
【0050】
さらなる局面は、本発明のポリヌクレオチド配列が組み込まれた宿主細胞に関する。
【0051】
別の局面は、宿主細胞中での上記ポリヌクレオチド発現を指示することができる調節配列に作動可能に連結された本発明のポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターに関する。
【0052】
さらなる局面は、配列番号1のポリヌクレオチド配列、またはその変異体、ホモログ、フラグメント、もしくは誘導体によってコードされる単離ポリペプチドに関する。
【0053】
好ましい実施形態では、単離ポリペプチドは、7個までのアミノ酸がN末端から除去されている。
【0054】
より好ましくは、単離されたポリペプチドは、配列番号1によってコードされるポリペプチド配列と少なくとも75%同一性を有する。
【0055】
さらに別の局面は、本発明のポリペプチドに結合することができる抗体に関する。
【0056】
別の局面は、本発明のヌクレオチド配列を発現すること、および任意に該ヌクレオチド配列を単離および/または精製する工程を包含する、本発明のアミノ酸配列を調製する方法に関する。好ましくは、本発明のヌクレオチド配列は、発現酵素の基質を含まない環境下(例えば、1,5−アンヒドロフルクトースが存在しない環境下)で発現される。
【0057】
さらなる局面は、本発明のアミノ酸配列または本発明のヌクレオチド配列の発現産物を使用してミクロセシンを調製するプロセスに関する。
【0058】
さらなる別の局面は、本発明のアミノ酸配列または本発明のヌクレオチド配列の発現産物を使用するアスコピロンPを調製するプロセスに関する。
【0059】
好ましくは、プロセスは、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の上記発現産物と1,5−アンヒドロ−D−フルクトースを反応させる工程を包含する。
【0060】
さらにより好ましくは、プロセスは、APPシンターゼの使用をさらに含む。
【0061】
特に好ましい局面では、プロセスは、APPシンターゼおよび上記アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の上記発現産物と1,5−アンヒドロ−D−フルクトースとを反応させる工程を包含する。
【0062】
別の好ましい実施形態では、ミクロセシンを作製する上記プロセスは、本発明のポリペプチドと、グルカンリガーゼおよびデキストリンデンプンとを接触させる工程を包含する。
【0063】
本発明のさらなる局面は、本発明のアミノ酸配列または本発明のヌクレオチド配列の発現産物を使用するミクロセシンを調製するプロセスに関する。
【0064】
好ましくは、上記プロセスは、アミノ酸配列またはヌクレオチド配列の発現産物と、グルコソンとを反応させる工程を包含する。
【0065】
別の好ましい実施形態では、ミクロセシンを作製する上記プロセスは、本発明のポリペプチドと、グルコースおよびピラノース2−オキシダーゼとを反応させる工程を包含する。
【0066】
本発明の別の局面は、ピラノゾン脱水酵素と、1,5−アンヒドロ−D−フルクトースとを反応させる工程を包含する、ミクロセシンを調製するプロセスに関する。
【0067】
本発明のさらに別の局面は、ピラノゾン脱水酵素およびAPPシンターゼと、1,5−アンヒドロ−D−フルクトースとを反応させる工程を包含する、アスコピロンPを調製するプロセスに関する。
【0068】
本発明の1つの局面は、ピラノゾン脱水酵素とグルコースおよびデキストリンデンプンを反応させる工程を包含する、ミクロセシンを調製するプロセスに関する。
【0069】
本発明の別の局面は、ピラノゾン脱水酵素とグルコソンとを反応させる工程を包含する、コルタルセロンを調製するプロセスに関する。
【0070】
本発明のさらに別の局面は、ピラノゾン脱水酵素とグルコースおよびピラノース2−オキシダーゼを反応させる工程を包含する、コルタルセロンを調製するプロセスに関する。
【0071】
本発明の別の局面は、物質中の微生物の増殖の阻止および/または阻害および/または死滅のためのミクロセシンの使用に関する。
【0072】
本発明の別の局面は、物質中の微生物の増殖の阻止および/または阻害および/または死滅のためのコルタルセロンの使用に関する。
【0073】
本発明はまた、物質中の微生物の増殖の阻止および/または阻害および/または死滅のための1つまたは複数のミクロセシン、コルタルセロン、またはその誘導体もしくは異性体の使用に関する。
【0074】
好ましくは、物質は食品である。
【0075】
好ましくは、コルタルセロンおよび/またはミクロセシンが活性を示す微生物は、植物真菌性病原体(plant fungal pathogen)である。
【0076】
好ましくは、コルタルセロンおよび/またはミクロセシンが活性を示す微生物は、Rhizoctonia目、Pythium目、Aphanomyces目、およびCercospora目から選択される微生物から選択される。
【0077】
好ましくは、コルタルセロンおよび/またはミクロセシンが活性を示す微生物は、Rhizoctonia solani、Pythium Ultimum、Aphanomyces cochlioides、およびCercospora beticolaから選択される微生物から選択される。
【0078】
本発明のさらなる局面は、病原体Aphanomycesの増殖の阻止および/または阻害および/または死滅のためのミクロセシン、コルタルセロン、またはその誘導体もしくは異性体の使用に関する。
【0079】
好ましくは、病原体は、Aphanomyces cochlioidesである。
【0080】
好ましい実施形態では、ミクロセシンの誘導体は、2−フリル−ヒドロキシメチル−ケトンまたは4−デオキシ−グリセロ−ヘキソ−2,3−ジルオースである。
【0081】
好ましい実施形態では、コルタルセロン誘導体は、2−フリルグリオキサールである。
【0082】
特に好ましい実施形態では、ミクロセシン、コルタルセロン、またはその誘導体もしくは異性体を、植物または植物種子の処置、さらにより好ましくは、サトウダイコン、エンドウマメ植物、またはエンドウマメ植物の種子の処置で使用する。
【0083】
別の局面では、本発明は、植物または種子の保護剤としての、ミクロセシン、コルタルセロン、またはその誘導体もしくは異性体の使用に関する。
【0084】
本発明のさらに別の局面は、植物成長調節因子としての、ミクロセシン、コルタルセロン、またはその誘導体もしくは異性体の使用に関する。
【0085】
(利点)
本発明は、ピラノゾン脱水酵素に関して以前に開示されていないアミノ酸配列およびヌクレオチド配列の情報を提供する。
【0086】
本発明は、さらに、AFのAPPおよびミクロセシンへの転換およびコルタルセロンの生成におけるピラノゾン脱水酵素の使用に関する。現在まで、PDがこれらのいずれかの転換に関与するか、この転換をもたらすことができることは当該技術分野で教示も示唆もされていなかった。
【0087】
従って、本発明は、ミクロセシン、APP、およびコルタルセロンの大規模生成を容易にすることができる。本発明は、さらに、ミクロセシンおよびコルタルセロンが抗菌薬、より詳細には食品における抗菌薬としての適用に有用であることを教示する。
【0088】
(アッセイ)
以下のアッセイを使用して、本発明の実際および推定のアミノ酸配列を特徴付けおよび同定することができる。
【0089】
(単離)
1つの局面では、配列は単離された形態であることが好ましい。用語「単離された」は、配列がその天然の環境下にない(すなわち、天然では見出されない)ことを意味する。典型的には、用語「単離された」は、配列が天然に会合し、天然に見出される少なくとも1つの他の構成要素(compnent)を少なくとも実質的に含まないことを意味する。ここで、配列は、天然に会合した少なくとも1つの他の構成要素から分離され得る。
【0090】
(精製)
1つの局面では、配列は精製された形態であることが好ましい。用語「精製された」はまた、配列がその天然の環境下にない(すなわち、天然では見出されない)ことを意味する。典型的には、用語「精製された」は、配列が天然に会合し、天然に見出される少なくとも1つの他の構成要素から少なくとも実質的に分離されていることを意味する。
【0091】
(ヌクレオチド配列)
本発明は、本明細書中に定義される特定の性質を有する酵素をコードするヌクレオチド配列を含む。本明細書中で使用される、用語「ヌクレオチド配列」は、オリゴヌクレオチド配列またはポリヌクレオチド配列ならびにその変異体、ホモログ、フラグメント、および誘導体(その一部など)をいう。ヌクレオチド配列は、センス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかを示す二本鎖または一本鎖であり得る、ゲノム起源、合成起源、または組換え起源であり得る。
【0092】
本発明に関する用語「ヌクレオチド配列」は、ゲノムDNA、cDNA、合成DNA、およびRNAを含む。好ましくは、これは、DNA、より好ましくは、本発明のコード配列のcDNAを意味する。
【0093】
好ましい実施形態では、本発明のヌクレオチド配列自体は、天然の環境下にも存在するその天然に会合した配列に作動可能に連結した場合、天然の環境にある本発明の天然のヌクレオチド配列を包含しない。参照を簡単にするために、本発明者らは、この好ましい実施形態を、「非天然ヌクレオチド配列」と呼ぶ。これに関して、用語「天然のヌクレオチド配列」は、天然に会合するプロモーター全体に作動可能に連結し、プロモーターもまた天然の環境下に存在する場合、天然の環境下に存在するヌクレオチド配列全体を意味する。しかし、本発明のアミノ酸配列を、その天然の生物におけるヌクレオチド配列の発現後に単離および/または精製することができる。しかし、好ましくは、本発明のアミノ酸配列を、天然の生物においてヌクレオチド配列によって発現することができるが、それは、このヌクレオチド配列は、その生物内で天然に会合するプロモーターの制御下にはない場合である。
【0094】
典型的には、本発明のヌクレオチド配列を、組換えDNA技法(すなわち、組換えDNA)を使用して調製する。しかし、本発明の別の実施形態では、ヌクレオチド配列を、当該技術分野で周知の化学的方法を使用して全体的または部分的に合成することができる(Caruthers MH et al (1980) Nuc Acids Res Symp Ser 215−233およびHorn T et al (1980) Nuc Acids Res Symp Ser 225−232を参照のこと)。
【0095】
(ヌクレオチド配列の調製)
本明細書中に定義される特定の性質を有する酵素または改変に適した酵素のいずれかをコードするヌクレオチド配列を、上記酵素を産生する任意の細胞または生物から同定および/または単離および/または精製することができる。ヌクレオチド配列の同定および/または単離および/または精製についての種々の方法は、当該技術分野で周知である。例として、一旦適切な配列が同定および/または単離および/または精製されると、多数の配列を調製するために、PCR増幅技術を使用することができる。
【0096】
さらなる例として、ゲノムDNAおよび/またはcDNAライブラリーを、酵素を産生する生物由来の染色体DNAまたはメッセンジャーDNAを使用して構築することができる。酵素のアミノ酸配列が既知である場合、標識オリゴヌクレオチドプローブを合成し、これを使用して生物から調製したゲノムライブラリー由来の酵素コードクローンを同定することができる。あるいは、別の既知の酵素遺伝子に対して相同な配列を含む標識オリゴヌクレオチドプローブを使用して、酵素コードクローンを同定することができる。後者の場合、低ストリンジェンシーのハイブリッド形成および洗浄条件を使用する。
【0097】
あるいは、酵素コードクローンを、プラスミドなどの発現ベクターへゲノムDNAフラグメントを挿入し、得られたゲノムDNAライブラリーで酵素陰性細菌を形質転換し、その後、形質転換細菌を酵素の基質(すなわち、マルトース)を含む寒天へプレーティングし、それにより酵素発現クローンを同定することによって同定することができる。
【0098】
なおさらに別の局面では、酵素をコードするヌクレオチド配列を、確立された標準的方法(例えば、Beucage S. L. et al (1981) Tetrahedron Letters 22, p 1859−1869に記載のホスホルアミダイド法またはMatthes et al (1984) EMBO J. 3, p 801−805に記載の方法)によって合成的に調製することができる。ホスホロアミダイト法では、オリゴヌクレオチドを、例えば自動DNA合成機で合成し、精製、アニーリング、ライゲーション、および適切なベクター中でクローニングする。
【0099】
ヌクレオチド配列は、標準的技術により、合成DNA、ゲノムDNA、またはcDNA起源(必要に応じて)のフラグメントのライゲーションによって調製した、ゲノム起源および合成起源の混合、合成起源およびcDNA起源の混合、またはゲノム起源およびcDNA起源の混合であり得る。ライゲーションした各フラグメントは、ヌクレオチド配列全体の種々の部分に対応する。DNA配列を、例えば、米国特許第4,683,202号またはSaiki R K et al(Science (1988) 239, pp
487−491)に記載の特定のプライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって調製することもできる。
【0100】
(アミノ酸配列)
本発明はまた、本明細書中に定義される特定の特性を有する酵素のアミノ酸配列を含む。
【0101】
本明細書中で使用される、用語「アミノ酸配列」は、用語「ポリペプチド」および/または用語「タンパク質」と同義である。いくつかの例では、用語「アミノ酸配列」は、用語「ペプチド」と同義である。いくつかの例では、用語「アミノ酸配列」は、用語「酵素」と同義である。
【0102】
アミノ酸配列は、適切な供給源から調製/単離してもよく、合成してもよく、組換えDNA技術の使用によって調製してもよい。
【0103】
本発明の酵素は、他の酵素と組み合わせて使用してもよい。従って、本発明はまた、本発明の酵素および本発明の別の酵素であり得る別の酵素を含む酵素の組み合わせを包含する。この局面を、以下の節で考察する。
【0104】
好ましくは、酵素は、天然の酵素ではない。これに関して、用語「天然の酵素」は、その天然の環境下に存在し、その天然のヌクレオチド配列によって発現した場合の酵素全体を意味する。
【0105】
(変異体/ホモログ/誘導体)
本発明はまた、本発明の酵素の任意のアミノ酸配列の変異体、ホモログ、および誘導体またはこのような酵素をコードする任意のヌクレオチド配列の使用を含む。本明細書中の用語「ホモログ」は、本発明のアミノ酸配列および本発明のヌクレオチド配列と一定の相同性を有する実体を意味する。本明細書中の用語「相同性」は、「同一性」と同等であり得る。
【0106】
本発明の状況では、相同配列には、本発明の配列と少なくとも75%、80%、85%、または90%同一、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であり得るアミノ酸が含まれるとみなされる。典型的には、ホモログは、本発明のアミノ酸配列と同一の活性部位などを含む。相同性は、類似性(すなわち、類似の化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)とみなすこともできるが、本発明の状況では、配列同一性に関しては相同性と表現することが好ましい。
【0107】
本発明の状況では、相同配列には、本発明の酵素をコードするヌクレオチド配列(本発明の配列)と少なくとも40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、または90%同一、好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であり得るヌクレオチド配列が含まれるとみなされる。典型的には、ホモログは、本発明の配列と同一の活性部位をコードする配列などを含む。相同性はまた、類似性(すなわち、類似の化学的性質/機能を有するアミノ酸残基)とみなすことができるが、本発明の状況では、配列同一性に関しては相同性と表現することが好ましい。
【0108】
相同性の比較を、目視によって、またはより通常には容易に利用可能な配列比較プログラムの支援によって行うことができる。これらの市販のコンピュータプログラムにより、2つ以上の配列間の相同性%を計算することができる。
【0109】
連続した配列の相同性%を計算することができる(すなわち、一方の配列を他方の配列と整列させ、一方の配列中の各アミノ酸を他方の配列中の対応するアミノ酸と一度に1残基ずつ直接比較する)。これを、「非ギャップ(ungapped)」アラインメントと呼ぶ。典型的には、このような非ギャップアラインメントを、比較的少数の残基でのみ行う。
【0110】
これは非常に単純且つ一貫した方法であるにもかかわらず、例えば、他の点では同一の配列対に1つの挿入または欠失があることにより、それ以降のアミノ酸残基がアラインメントから除外されることを考慮できないので、アラインメント全体で行った場合相同性%は大きく減少する可能性がある。従って、ほとんどの配列比較法は、全体の相同性スコアに過度にペナルティーを科すことなく考えられる挿入および欠失を考慮する最適なアラインメントが得られるように設計されている。局所相同性を最大にしようとするために配列アラインメントに「ギャップ」を挿入することによってこれを行う。
【0111】
しかし、これらのより複雑な方法では、同数の同一のアミノ酸について、可能な限り少数のギャップ(2つの比較配列間でより高い関連性を反映する)を含む配列アラインメントが多数のギャップを含む配列アラインメントよりも高いスコアを得るように、アラインメント中に生じる各ギャップに「ギャップペナルティー」を割り当てる。典型的には、ギャップの存在に比較的高いコストを課し、ギャップ中のその後の各残基のペナルティーをより小さくする「アフィン(Affine)ギャップコスト」を使用する。これは、最も一般的に使用されているギャップスコアリングシステムである。勿論、高いギャップペナルティーにより、より少ないギャップを含む最適化されたアラインメントが得られる。ほとんどのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティーを修正可能である。しかし、配列比較のためにこのようなソフトウェアを使用する場合、デフォルト値を使用することが好ましい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージを使用した場合、アミノ酸配列のデフォルトギャップペナルティーは、ギャップについては−12であり、各伸長については−4である。
【0112】
従って、最大相同性%の計算には、最初にギャップペナルティーを考慮した最適なアラインメントの作製が必要である。このようなアラインメントを実行するための適切なコンピュータプログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(Devereux et al 1984 Nuc. Acids Research 12
p387)である。配列比較を実施できる他のソフトウェアの例には、比較ツールのBLASTパッケージ(Ausubel et al 1999 Short Protocols in Molecular Biology, 4th Ed − Chapter 18を参照のこと)、FASTA(Altschul et al 1990 J. Mol. Biol. 403−410)、およびGENEWORKS統合ソフトウェア(suite)が含まれるが、これらに限定されない。BLASTおよびFASTAは共にオフラインおよびオンライン検索で利用可能である(Ausubel et al 1999, pages 7−58 to 7−60を参照のこと)。しかし、いくつかの適用については、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST2 Sequencesと呼ばれる新規のツールも、タンパク質およびヌクレオチド配列の比較に利用可能である(FEMS Microbiol Lett 1999 174(2): 247−50、FEMS Microbiol Lett 1999 177(1): 187−8およびtatiana@ncbi.nlm.nih.govを参照のこと)。
【0113】
最終相同性%を同一性に関して測定することができるが、アラインメントプロセス自体は、典型的には、全か無かの対形式の比較に基づかない。その代わり、一般に、スコアを化学的類似性または進化距離に基づいた各対比較に割り当てるスケール変換(scaled)類似性スコア行列を使用する。一般的に使用されるこのような行列の例は、BLOSUM62行列(プログラムのBLAST統合ソフトウェア用のデフォルト行列)である。GCG Wisconsinプログラムは、一般に、公的なデフォルト値または供給されている場合にはカスタムシンボル比較テーブルのいずれかを使用する(さらなる詳細についてはユーザーマニュアルを参照のこと)。いくつかの適用については、GCGパッケージについては公的なデフォルト値を使用し、他のソフトウェアの場合は、デフォルト行列(BLOSUM62など)を使用することが好ましい。
【0114】
あるいは、相同性%を、CLUSTAL(Higgins DG & Sharp PM (1988), Gene 73 (1), 237−244)に類似する、アルゴリズムに基づくDNASIS(商標)(Hitachi Software)のマルチプルアラインメント機能を使用して計算することができる。
【0115】
一旦ソフトウェアによって最適なアラインメントが得られると、相同性%、好ましくは配列同一性%を計算することが可能である。ソフトウェアは、典型的には、配列比較の一部としてこれを計算し、数値で結果が得られる。
【0116】
配列はまた、サイレント変化をもたらし機能的に等価な物質が得られるアミノ酸残基の欠失、挿入、または置換を有し得る。物質の二次結合活性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質に基づいて意図的なアミノ酸置換を行うことができる。例えば、負電荷のアミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ、正電荷のアミノ酸にはリジンおよびアルギニンが含まれ、類似の親水性値を有する非荷電極性ヘッド基を有するアミノ酸には、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが含まれる。
【0117】
例えば以下の表に従って、保存的置換を行うことができる。2列目中の同一のブロックおよび好ましくは3列目中の同一の行中のアミノ酸を互いに置換することができる。
【0118】
【化111】

【0119】
本発明はまた、起こり得る相同的置換(置換(substitution)および置換(replacement)は共に既存のアミノ酸残基の別の残基との交換、すなわち、類似物同士の置換(塩基性と塩基性、酸性と酸性、極性と極性など)を意味するために本明細書中で使用される)を含む。非相同的置換(すなわち、あるクラスの残基から別のクラスの残基への置換、または非天然アミノ酸(オルニチン(以後Zという)、ジアミノ酪酸オルニチン(以後Bという)、ノルロイシンオルニチン(以後Oという)、ピリルアラニン、チエニルアラニン、ナフチルアラニン、およびフェニルグリシンなど)の封入を含む置換)もまた起こり得る。
【0120】
以下の非天然アミノ酸によってこの置換を行うこともできる:αおよびα二置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸、天然アミノ酸のハライド誘導体(トリフルオロチロシンなど)、p−Cl−フェニルアラニン、p−Br−フェニルアラニン、p−I−フェニルアラニン、L−アリル−グリシン、β−アラニン、L−α−アミノ酪酸、L−γ−アミノ酪酸、L−α−アミノイソ酪酸、L−ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、L−メチオニンスルホン#*、L−ノルロイシン、L−ノルバリン、p−ニトロ−L−フェニルアラニン、L−ヒドロキシプロリン、L−チオプロリン、フェニルアラニン(Phe)のメチル誘導体(4−メチル−Phe、ペンタメチル−Phe、L−Phe(4−アミノ)、L−Tyr(メチル)など)、L−Phe(4−イソプロピル)、L−Tic(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸)、L−ジアミノプロピオン酸、およびL−Phe(4−ベンジル)。記号は誘導体の疎水性を示すために(相同性または非相同性置換に関する)上記の説明に使用し、は誘導体の親水性を示すために使用し、#*は両親媒性を示す。
【0121】
変異アミノ酸配列は、配列の任意の2つのアミノ酸残基の間に挿入することができる適切なスペーサー基を含むことができ、これらには、アミノ酸スペーサー(グリシンまたはβアラニン残基など)に加えてアルキル基(メチル、エチル、またはプロピル基など)が含まれる。さらなる変異形態は、ペプトイド形態の1以上のアミノ酸残基の存在に関連し、これは当業者には十分に理解されている。疑問を避けるために、「ペプトイド形態」は、α炭素置換基がα炭素ではなく残基の窒素原子上に存在する、変異アミノ酸残基をいうために使用される。ペプトイド形態のペプチドを調製するプロセスは、当該技術分野で公知である(例えば、Simon RJ et al., PNAS (1992) 89(20), 9367−9371およびHorwell DC, Trends Biotechnol. (1995) 13(4), 132−134)。
【0122】
本発明で使用するヌクレオチド配列には、ヌクレオチド配列内に合成または改変ヌクレオチドを含み得る。オリゴヌクレオチドに対するいくつかの異なる改変型が当該技術分野で既知である。これらには、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート骨格、ならびに/あるいは分子の3’および/もしくは5’末端でのアクリジンまたはポリリジン鎖の付加が含まれる。本発明の目的のために、本明細書中に記載のヌクレオチド配列を当該技術分野で利用可能な任意の方法によって改変することができると理解すべきである。本発明のヌクレオチド配列のインビボ活性の増大または寿命の延長のためにこのような改変を行うことができる。
【0123】
本発明はまた、本明細書中に記載の配列、または任意のその誘導体、フラグメント、あるいは誘導体と相補的なヌクレオチド配列の使用を含む。配列がそのフラグメントと相補的である場合、配列を、他の生物などにおける類似のコード配列を同定するためのプローブとして使用することができる。
【0124】
本発明の配列に100%相同ではないが本発明の範囲内に含まれるポリヌクレオチドを、多くの方法で得ることができる。本明細書中に記載の配列の他の変異体を、例えば、一定範囲の個体(例えば、異なる集団由来の個体)から作製したDNAライブラリーの探索によって得ることができる。さらに、他のウイルス/細菌または細胞ホモログ、特に哺乳動物細胞(例えば、ラット、マウス、ウシ、および霊長類細胞)中に見出される細胞ホモログを得ることができ、このようなホモログおよびそのフラグメントは、一般に、本明細書中の配列表に示す配列と選択的にハイブリダイズし得る。このような配列を、他の動物種から作製したcDNAライブラリーまたはゲノムDNAライブラリーを探索すること、およびこのようなライブラリーを中程度から高程度のストリンジェンシー条件下で、添付の配列表の配列のいずれか1つの全てまたは一部を含むプローブで探索することによって得ることができる。類似の検討材料を適用して、本発明のポリペプチド配列またはヌクレオチド配列の種ホモログおよび対立遺伝子変異体を得る。
【0125】
変異体および株/種ホモログを、本発明の配列内の保存アミノ酸配列をコードする変異体およびホモログ内の配列を標的するように設計したプライマーを使用する縮重PCRを使用して得ることもできる。保存配列を、例えば、いくつかの変異体/ホモログ由来のアミノ酸配列のアラインメントによって推定することができる。当該技術分野で公知のコンピュータソフトウェアを使用して配列アラインメントを行ってもよい。例えば、GCG Wisconsin PileUpプログラムが広く使用されている。
【0126】
縮重PCRで使用したプライマーは、1つ以上の縮重位置を含み、既知の配列に対して1つの配列プライマーを使用する配列のクローニングに使用した条件よりも低いストリンジェンシー条件で使用する。
【0127】
あるいは、このようなポリヌクレオチドを、特徴付けた配列の部位特異的変異誘発によって得ることができる。これは、例えば、ポリヌクレオチド配列が発現している特定の宿主細胞のコドン優先度を最適化するためにサイレントなコドン配列の変化を必要とする場合に有用であり得る。制限酵素認識部位を導入するためまたはポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの性質または機能を変化させるために、他の配列の変化が所望される得る。
【0128】
本発明はまた、無作為なプロセス、選択変異誘発、またはインビトロ組換えによって分子進化を受けたポリヌクレオチドを含む。非限定的な例として、インビボまたはインビトロのいずれかで、ヌクレオチド配列への多くの部位特異的またはランダムな変異を行い、その後種々の手段によってコードされたポリペプチドの改良された機能性をスクリーニングすることが可能である。さらに、ポリヌクレオチド配列の変異または天然の変異体を、野生型または他の変異もしくは天然の変異体のいずれかで組換えて新規の変異体を産生することができる。このような新規の変異体を、コードされたポリペプチドの改良された機能性についてスクリーニングすることもできる。当該技術分野で十分に確立された種々の方法(例えば、エラー閾値変異誘発(Error Threshold Mutagenesis)(WO92/18645)、オリゴヌクレオチド媒介ランダム変異誘発(米国特許第5,723,323号)、DNAシャフリング(米国特許第5,605,793号)、エクソ媒介遺伝子アセンブリ(WO00/58517))によって、新規の好ましい変異体を産生することができる。これらおよび類似のランダム指向性分子進化法(random directed molecular evolution method)の適用により、タンパク質の構造または機能のいかなる予備知識がなくても、好ましい特徴を有する本発明の酵素の変異体を同定および選択することが可能であり、予想不可能であるが有利な変異または変異体を産生可能である。酵素活性の最適化または変更のための当該技術分野の分子進化の適用例は多数存在し、このような例には、以下の1以上が含まれるが、これらに限定されない:宿主細胞中またはインビトロでの発現および/または活性の最適化、酵素活性の増大、基質特異性および/または産生物特異性の最適化、酵素安定性または構造安定性の増化もしくは減少、好ましい環境条件下(例えば、温度、pH、基質)での酵素活性/特異性の変更。
【0129】
本発明のポリヌクレオチド(ヌクレオチド配列)を使用して、プライマー(例えば、PCRプライマー(別の増幅反応用のプライマー))、プローブ(例えば、放射性または非放射性標識を使用した従来の手段によって明らかな標識を使用して標識する)を作製してもよく、またはポリヌクレオチドをベクターにクローニングしてもよい。このようなプライマー、プローブ、および他のフラグメントは、少なくとも15、好ましくは少なくとも20、例えば少なくとも25、30、または40ヌクレオチド長であり、これらもまた本明細書中で使用される本発明の用語「ポリヌクレオチド」に含まれる。
【0130】
本発明によるDNAポリヌクレオチドなどのポリヌクレオチドおよびプローブを、組換え、合成、または当業者が利用可能な任意の手段によって作製することができる。これらを、標準的な技術によってクローニングすることもできる。
【0131】
一般に、プライマーを、所望の核酸配列の一度に1ヌクレオチドの段階的製造を含む合成手段によって産生する。自動化技術を使用してこれを行う技術は、当該技術分野で容易に利用可能である。
【0132】
一般に、組換え手段を使用して、例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技術を使用して、より長いポリヌクレオチドを産生する。これは、クローニングを所望する脂質標的配列領域に隣接するプライマー対(例えば、約15〜30ヌクレオチド)を作製すること、プライマーを動物またはヒト細胞から得たmRNAまたはcDNAと接触させること、所望の領域を増幅する条件下でポリメラーゼ連鎖反応を行うこと、増幅フラグメントを単離すること(例えば、アガロースゲルでの反応混合物の精製による)、および増幅DNAを回収する工程を包含する。プライマーを、増幅DNAを適切なクローニングベクターにクローニングすることができるように、適切な制限酵素認識部位を含むように設計してもよい。
【0133】
(生物学的に活性な)
好ましくは、変異配列などは、本明細書中に記載の配列と少なくとも同等に生物学的に活性である。
【0134】
本明細書中で使用される、「生物学的に活性な」は、天然に存在する配列と類似の構造機能(必ずしも同程度とは限らない)および/または類似の調節機能(必ずしも同程度とは限らない)、および/または類似の生化学的機能(必ずしも同程度とは限らない)を有する配列をいう。
【0135】
(アイソザイム)
本発明のポリペプチドは、1以上の異なるアイソザイムの形態で存在し得る。本明細書中で使用される、用語「アイソザイム」は、同一の反応を触媒するが、基質親和性および酵素―基質反応の最大速度などの特性が互いに異なるポリペプチドの変異体を含む。アミノ酸配列の相違により、電気泳動または等電点電気泳動などの技術によってアイソザイムを区別することができる。組織が異なれば、しばしばアイソザイムも異なる。一般に、配列の相違により、特定のアイソザイムが見出される細胞型の特定の要件に対する微調整と解釈することができる異なる酵素速度パラメータが付与される。
【0136】
(アイソフォーム)
本発明はまた、本明細書中に記載のポリペプチドの異なるアイソフォームを含む。用語「アイソフォーム」は、類似または同一のアミノ酸配列を有するが異なる遺伝子産物である、同一の機能(すなわち、ピラノゾン脱水酵素活性)を有するタンパク質をいう。
【0137】
(ハイブリダイゼーション)
本発明はまた、本発明の配列と相補的な配列、または本発明の配列もしくは本発明の配列と相補的な配列のいずれかとハイブリダイズし得る配列を含む。
【0138】
本明細書中で使用される、用語「ハイブリダイゼーション」は、「核酸の鎖が塩基対合によって相補鎖と連結するプロセス」ならびにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術で実施される増幅プロセスを含む。
【0139】
本発明はまた、本明細書中に記載の配列、またはその任意の誘導体、フラグメント、もしくは誘導体と相補的な配列とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列の使用を含む。
【0140】
用語「変異体」はまた、本明細書中に記載のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得る配列と相補的な配列を含む。
【0141】
好ましくは、用語「変異体」は、ストリンジェントな条件下(例えば、50℃および0.2×SSC{1×SSC=0.15M NaCl、0.015Mクエン酸ナトリウム(pH7.0)})で本明細書中に記載のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得る配列と相補的な配列を含む。
【0142】
より好ましくは、用語「変異体」は、高ストリンジェントな条件下(例えば、65℃および0.1×SSC{1×SSC=0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム(pH7.0)})で本明細書中に記載のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得る配列と相補的な配列を含む。
【0143】
本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列(本明細書中に記載のヌクレオチド配列の相補配列を含む)とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列に関する。
【0144】
本発明はまた、本発明のヌクレオチド配列(本明細書中に記載のヌクレオチド配列の相補配列を含む)とハイブリダイズし得る配列と相補的なヌクレオチド配列に関する。
【0145】
中程度から最大のストリンジェンシー条件下で本明細書中に記載のヌクレオチド配列とハイブリダイズし得るポリヌクレオチド配列もまた、本発明の範囲内である。
【0146】
好ましい局面では、本発明は、ストリンジェントな条件下(例えば、50℃および0.2×SSC)で本発明のヌクレオチド配列またはその相補体とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を包含する。
【0147】
より好ましい局面では、本発明は、高ストリンジェントな条件下(例えば、65℃および0.1xSSC)で本発明のヌクレオチド配列またはその相補体とハイブリダイズし得るヌクレオチド配列を包含する。
【0148】
(部位特異的変異誘発)
一旦酵素コードヌクレオチド配列が単離されるか、または推定酵素コードヌクレオチド配列が同定されると、本発明の酵素を調製するために配列を変異させることが望ましい。
【0149】
合成オリゴヌクレオチドを使用して、変異を導入することができる。これらのオリゴヌクレオチドは、所望の変異部位に隣接するヌクレオチド配列を含む。
【0150】
酵素遺伝子を保有するベクター中でDNA(酵素コード配列)の一本鎖ギャップを作製する適切な方法が、Morinagaら(Biotechnoogy (1984) 2, p646−649)に開示されている。次いで、所望の変異を有する合成ヌクレオチドを、一本鎖DNAの相同部分にアニーリングする。次いで、残存するギャップにDNAポリメラーゼI(クレノウフラグメント)を充填し、T4リガーゼを使用して構築物にライゲーションする。
【0151】
米国特許第4,760,025号は、カセットの小さな変更を行うことによる、複数の変異をコードするオリゴヌクレオチドの導入を開示する。しかし、種々の長さの多数のオリゴヌクレオチドを導入することができるので、上記のMorinagaの方法によっていつでもさらに多様な変異を導入することができる。
【0152】
酵素コードヌクレオチド配列への変異の別の導入方法は、Nelson and Long(Analytical Biochemistry (1989), 180, p 147−151)に記載されている。この方法は、PCR反応におけるプライマーの1つとして化学合成DNA鎖を使用することによって導入された所望の変異を含むPCRフラグメントの3工程作製を含む。PCR作製フラグメントから、制限エンドヌクレアーゼでの切断によって変異を保有するDNAフラグメントを単離し、発現プラスミドに再挿入することができる。
【0153】
例として、Sierksら(Protein Eng (1989) 2, 621−625およびProtein Eng (1990) 3, 193−198)は、Aspergillusグルコアミラーゼにおける部位特異的変異誘発を記載している。
【0154】
(組換え)
本発明の1つの局面では、配列は、組換え配列(すなわち、組換えDNA技法を使用して調製された配列)である。
【0155】
(合成)
本発明の1つの局面では、配列は、合成配列(すなわち、インビトロ化学または酵素合成によって調製された配列)である。これには、メチロトローフ酵母PichiaおよびHansenulaなどの宿主生物についての最適なコドン使用法を使用して作製した配列が含まれるが、これらに限定されない。
【0156】
(酵素の発現)
本発明で使用するヌクレオチド配列を、組換え複製可能なベクターに組み込むことができる。このベクターを使用して、酵素形態で、適合可能な宿主細胞中でおよび/または宿主細胞からヌクレオチド配列を複製および発現することができる。同種および異種発現の両方が含まれる。
【0157】
同種発現のために、好ましくは、目的の遺伝子または目的のヌクレオチド配列は、天然に存在する遺伝的状況下にない。目的の遺伝子または目的のヌクレオチド配列が天然に存在する遺伝的状況下にある場合、好ましくは、発現は、その天然に存在する発現機構以外またはそれに加えた手段(例えば、遺伝子介入による目的の遺伝子の過剰発現)によって駆動される。
【0158】
プロモーター/エンハンサーおよび他の発現調節シグナルを含む制御配列を使用して、発現を制御することができる。原核細胞プロモーターおよび真核細胞で機能的なプロモーターを使用することができる。組織特異的または刺激特異的プロモーターを使用することができる。2つ以上の本明細書中に記載の異なるプロモーター由来の配列エレメントを含むキメラプロモーターも使用することができる。
【0159】
ヌクレオチド配列の発現による宿主組換え細胞によって産生された酵素を分泌してもよいし、使用した配列および/またはベクターに応じて細胞内に含めてもよい。特定の原核細胞膜および真核細胞膜を介した本発明のコード配列の分泌を指示するシグナル配列を使用して、コード配列を設計することができる。
【0160】
(発現ベクター)
用語「発現ベクター」は、インビボまたはインビトロ発現が可能な構築物を意味する。
【0161】
好ましくは、発現ベクターを、適切な宿主生物のゲノムに組み込む。用語「組み込まれた」は、好ましくは、ゲノムへの安定な組込みを包含する。
【0162】
宿主生物は、目的の供給源生物の遺伝子と同一であっても異なっていてもよく、同種および異種それぞれの発現を引き起こす。
【0163】
好ましくは、本発明のベクターは、本発明の構築物を含む。あるいは、本発明の発現されるヌクレオチドは、好ましくはベクター中に存在し、調節配列が適切な宿主生物によってヌクレオチド配列を発現することができるように、ヌクレオチド配列が調節配列に作動可能に連結されている(すなわち、ベクターは発現ベクターである)
本発明のベクターを、以下に記載のように適切な宿主細胞に形質転換して、本発明のポリペプチドを発現させることができる。従って、さらなる局面では、本発明は、ポリペプチドをコードするコード配列のベクターによって発現するための条件下で、発現ベクターで形質転換またはトランスフェクトした宿主細胞を培養すること、および発現したポリペプチドを回収する工程を包含する、本発明によるその後に使用するためにポリペプチドを調製するプロセスを提供する。
【0164】
ベクターは、例えば、複製起点、任意に上記ポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、および必要に応じてプロモーターのレギュレーターを備えるプラスミドベクター、ウイルスベクター、またはファージベクターであり得る。ベクターの選択は、しばしばベクターが導入される宿主細胞に依存する。
【0165】
本発明のベクターは、1つ以上の選択マーカー遺伝子を含み得る。産業用微生物に最も適した選択系は、宿主生物において変異を必要としない選択マーカー群によって形成される系である。適切な選択マーカーは、B.subtilisまたはB.licheniformis由来のdal遺伝子、あるいはアンピシリン耐性、カナマイシン耐性、クロラムフェニコール耐性、またはテトラサイクリン耐性などの抗生物質耐性を付与するマーカーであり得る。別の選択マーカーは、amdS、argB、niaD、およびsCなどのAspergillus選択マーカーまたはハイグロマイシン耐性が得られるマーカーであり得る。他の真菌選択マーカーの例は、ATPシンターゼ、サブユニット9(oliC)、オロチジン−5’−リン酸デカルボキシラーゼ(pvrA)、フレオマイシン、およびベノミル耐性(benA)の遺伝子である。非真菌選択マーカーの例は、細菌G418耐性遺伝子(これは、酵母でも使用することができるが、糸状菌で使用することはできない)、アンピシリン耐性遺伝子(E.coli)、ネオマイシン耐性遺伝子(Bacillus)、およびβ−グルクロニダーゼ(GUS)をコードするE.coli uidA遺伝子である。さらに適切な選択マーカーには、B.subtilisまたはB.licheniformis由来のdal遺伝子が含まれる。あるいは、同時形質転換(WO91/17243に記載)によって選択することができる。
【0166】
ベクターを、例えば、RNAの産生のためにインビトロで使用するか、宿主細胞をトランスフェクトまたは形質転換するために使用することができる。
【0167】
従って、本発明で使用するヌクレオチド配列を、組換えベクター(典型的には、複製可能なベクター)、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターに組み込むことができる。ベクターを使用して、適合可能な宿主細胞中で核酸を複製させることができる。従って、さらなる実施形態では、本発明は、複製可能なベクターへの本発明のヌクレオチド配列の導入、適合可能な宿主細胞へのベクターの導入、およびベクターの複製をもたらす条件下での宿主細胞の増殖による、本発明のヌクレオチド配列を作製する方法を提供する。宿主細胞からベクターを回収することができる。適切な宿主細胞を、発現ベクターと共に以下に記載する。
【0168】
本明細書中に定義される特定の特性を有する酵素をコードする本発明のDNA構築物および調節配列をライゲーションし、これらを複製に必要な情報を含む適切なベクターに挿入するために使用する手順は、当業者に周知である(例えば、Sambrook et al Molecular Cloning: A laboratory Manual, 2nd Ed. (1989)を参照のこと)。
【0169】
ベクターはさらに、該当する宿主細胞でベクターを複製させることができるヌクレオチド配列を含み得る。このような配列の例は、プラスミドpUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、およびpIJ702の複製起点である。
【0170】
発現ベクターは、典型的には、例えば、選択した宿主生物中でベクターを自律複製させるエレメント、および選択のために1つ以上の表現型を検出可能なマーカーなどのクローニングベクター成分を含む。発現ベクターは、通常、プロモーター、オペレーター、リボゾーム結合部位、翻訳開始シグナル、および必要に応じて、リプレッサー遺伝子あるいは1つ以上のアクチベーター遺伝子をコードする制御ヌクレオチド配列を含む。さらに、発現ベクターは、ペルオキシソームなどの宿主細胞オルガネラまたは特定の宿主細胞区画にアミノ酸配列をターゲティングすることができるアミノ酸配列をコードする配列を含み得る。本発明の状況では、用語「発現シグナル」には、任意の上記制御配列、リプレッサー配列、またはアクチベーター配列が含まれる。制御配列の指示下での発現のために、ヌクレオチド配列は、発現に関して適切な様式で制御配列に作動可能に連結される。
【0171】
(調節配列)
いくつかの提供では、本発明で使用するヌクレオチド配列は、選択された宿主細胞などによってヌクレオチド配列を発現させることができる調節配列に作動可能に連結されている。例として、本発明は、このような調節配列に作動可能に連結された本発明のヌクレオチド配列を含むベクター(すなわち、ベクターは、発現ベクターである)を包含する。
【0172】
用語「作動可能に連結された」は、記載の成分が意図する様式で機能することができる関係にある近位の位置をいう。コード配列に「作動可能に連結された」調節配列は、制御配列と適合する条件下でコード配列が発現するような方法でライゲーションされている。
【0173】
用語「調節配列」には、プロモーターおよびエンハンサーならびに他の発現調節シグナルが含まれる。
【0174】
用語「プロモーター」は、当該技術分野における通常の意味で使用される(例えば、RNAポリメラーゼ結合部位)。
【0175】
発現、および所望ならば選択した発現宿主からの目的のタンパク質の分泌レベルを増大させ、かつ/または本発明の酵素発現を誘導的に制御する役目を果たす異種調節領域(例えば、プロモーター領域、分泌リーダー領域、および終結領域)の選択によって、本発明の酵素をコードするヌクレオチド配列発現を増強することもできる。真核生物では、ポリアデニル化配列を、酵素をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結させることができる。
【0176】
好ましくは、本発明のヌクレオチド配列を、少なくともプロモーターに作動可能に連結させることができる。
【0177】
本発明のヌクレオチド配列をコードする遺伝子に対してネイティブのプロモーターのほかに、他のプロモーターを使用して、本発明のポリペプチド発現を指示することができる。プロモーターを、所望の発現宿主における本発明のヌクレオチド配列の発現を指示する効率について選択することができる。
【0178】
別の実施形態では、本発明の所望のヌクレオチド配列の発現を指示するために構成性プロモーターを選択することができる。このような発現構築物は、誘導基質を含む培地で発現宿主を培養する必要性が回避されるので、さらなる利点を提供し得る。
【0179】
細菌宿主中でのヌクレオチド配列の転写を指示するのに適したプロモーターの例には、E.coliのlacオペロンのプロモーター、Streptomyces coelicolorアガラーゼ遺伝子dagAプロモーター、Bacillus licheniformisのα−アミラーゼ遺伝子(amyL)のプロモーター、Bacillus stearothermophilusマルトース産生(maltogenic)アミラーゼ遺伝子(amyM)のプロモーター、Bacillus amyloliquefaciensのαアミラーゼ遺伝子(amyQ)のプロモーター、Bacillus subtilis xylAおよびxylB遺伝子のプロモーター、およびP170プロモーターを含むLactococcus sp.由来のプロモーター由来のプロモーターが含まれる。ヌクレオチド配列がE.coliなどの細菌種で発現する場合、例えば、T7プロモーターおよびλファージプロモーターを含むバクテリオファージプロモーターから適切なプロモーターを選択することができる。
【0180】
真菌種での転写のために、有用なプロモーターの例は、Aspergillus oryzae TAKAアミラーゼ、Rhizomucor mieheiアスパラギン酸プロテイナーゼ、Aspergillus niger中性α−アミラーゼ、A.niger酸安定性α−アミラーゼ、A.nigerグルコアミラーゼ、Rhizomucor mieheiリパーゼ、Aspergillus oryzaeアルカリプロテアーゼ、Aspergillus oryzaeトリオースリン酸イソメラーゼまたはAspergillus nidulansアセトアミダーゼをコードする遺伝子由来のプロモーターである。
【0181】
真菌発現宿主での使用に好ましい強力な構成性および/または誘導性プロモーターの例は、キシラナーゼ(xlnA)、フィターゼ、ATP−シンセターゼ、サブユニット9(oliC)、トリオースリン酸イソメラーゼ(tpi)、アルコールデヒドロゲナーゼ(AdhA)、α−アミラーゼ(amy)、アミログルコシダーゼ(AG−glaA遺伝子由来)、アセトアミダーゼ(amdS)、およびグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(gpd)のプロモーターの真菌遺伝子から得ることができるプロモーターである。真菌宿主での転写に有用なプロモーターの他の例は、A.oryzae TAKAアミラーゼ、S.cerevisiae由来のTPI(トリオースリン酸イソメラーゼ)プロモーター(Alber et al (1982) J. Mol. Appl. Genet. 1, p419−434)、Rhizomucor mieheiアスパラギン酸プロテイナーゼ、A.nigerの中性α−アミラーゼ、A.niger酸安定性α−アミラーゼ、A.nigerグルコアミラーゼ、Rhizomucor mieheiリパーゼ、A.oryzaeアルカリプロテアーゼ、A.oryzaeトリオースリン酸イソメラーゼ、またはA.nidulansアセトアミダーゼをコードする遺伝子由来のプロモーターである。
【0182】
酵母種での発現に適したプロモーターの例には、Saccharomyces cerevisiaeのGal1およびGal10プロモーターならびにPichia pastorisのAOX1またはAOX2プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0183】
ハイブリッドプロモーターを使用して、発現構築物の誘導調節を改良することもできる。
【0184】
プロモーターは、さらに、適切な宿主での発現を確実にするか増大させる特徴を含み得る。例えば、特徴は、PribnowボックスまたはTATAボックスなどの保存領域であり得る。プロモーターは、さらに、本発明のヌクレオチド配列の発現レベルに影響を与える(維持する、増強する、減少させるなど)他の配列を含み得る。例えば、適切な他の配列には、Sh1−イントロンまたはADHイントロンが含まれる。他の配列には、誘導エレメント(温度、化学薬品、光、ストレスで誘導可能なエレメント)が含まれる。また、転写または翻訳の増強に適したエレメントが存在し得る。後者のエレメントの例は、TMV5’シグナル配列である(Sleat 1987 Gene 217, 217−225およびDawson 1993 Plant Mol. Biol. 23: 97を参照のこと)。
【0185】
(構築物)
用語「構築物」(「結合体」、「カセット」、および「ハイブリッド」などの用語と同義である)には、プロモーターに直接または間接的に結合する本発明で使用されるヌクレオチド配列が含まれる。間接的結合の例は、Sh1イントロンまたはADHイントロンなどのイントロン配列などの適切なスペーサー群の供給であり、本発明のプロモーターとヌクレオチド配列の間に入る。これは、直接または間接的な結合を含む本発明に関する用語「融合した」にも当てはまる。場合によっては、この用語は、通常の状態で野生型遺伝子プロモーターと会合したタンパク質をコードするヌクレオチド配列、およびこれらが共に天然の環境下に存在する場合の天然の組み合わせを対象としない。
【0186】
構築物は、例えば、移入された細菌、好ましくはBacillus属(Bacillus subtilisなど)または植物で遺伝子構築物が選択されることを可能にするマーカーを含むか発現することができる。例えば、マンノース−6−リン酸イソメラーゼをコードするマーカー(特に、植物用)または抗生物質耐性(例えば、G418、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、およびゲンタマイシンに対する耐性)を示すマーカーなど、使用することができる種々のマーカーが存在する。
【0187】
いくつかの用途のために、好ましくは、本発明の構築物は、プロモーターに作動可能に連結された本発明のヌクレオチド配列を少なくとも含む。
【0188】
(宿主細胞)
本発明に関する用語「宿主細胞」には、上記のヌクレオチド配列または発現ベクター、および本明細書中で定義される特定の特性を有する酵素の組換え産生で使用されるヌクレオチド配列または発現ベクターのいずれかを含む任意の細胞が含まれる。目的のヌクレオチドは、宿主細胞に対して同種であっても異種であってもよい。
【0189】
従って、本発明のさらなる実施形態は、本発明の酵素を発現するヌクレオチド配列で形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を提供することである。好ましくは、ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の複製および発現のためのベクター中に含まれる。細胞は、ベクターと適合可能であるように選択され、例えば、原核細胞(例えば、細菌)、真菌細胞、酵母細胞、または植物細胞であり得る。
【0190】
適切な細菌宿主生物の例は、Bacillus subtilis、Bacilluslicheniformis、Bacillus lentus、Bacillus brevis、Bacillus stearothermophilus、Bacillus alkalophilus、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus coagulans、Bacillus lautus、Bacillus megaterium、およびBacillus thuringiensisを含むBacillaceae科、Streptomyces murinusなどのStreptomyces種、Lactococcus lactisなどのLactococcus spp.、Lactobacillus reuteriを含むLactobacillus spp.、Leuconostoc spp、Pediococcus spp.、およびStreptococcus spp.を含む乳酸細菌類などのグラム陽性細菌種である。あるいは、E.coliを含むEnterobacteriaceaeまたはPseudomonadaceaeに属するグラム陰性細菌種の株を、宿主生物として選択することができる。
【0191】
グラム陰性細菌E.coliは、異種遺伝子発現の宿主として広範に使用されている。しかし、細胞内に大量の異種タンパク質が蓄積される傾向がある。大量のE.coliの細胞内タンパク質からその後所望のタンパク質を精製することは、しばしば困難であり得る。
【0192】
E.coliと対照的に、Bacillus属由来のグラム陽性細菌(B. subtilis、B.licheniformis、B. lentus、B. brevis、B. stearothermophilus、B. alkalophilus、B. amyloliquefaciens、B. coagulans、B.circulans、B. lautus、B. megaterium、B. thuringiensisなど)、Streptomyces lividans、またはS.murinusは、培養培地にタンパク質を分泌する能力により、異種宿主として非常に適切であり得る。宿主として適切であり得る他の細菌は、Streptomyces属およびPseudomonas属由来のものである。
【0193】
本発明の酵素をコードするヌクレオチド配列の性質および/または発現するタンパク質のさらなるプロセシングの望ましさに応じて、酵母または他の真菌などの真核生物宿主が好ましい。一般に、操作が容易であるので、真菌細胞よりも酵母細胞が好ましい。しかし、いくつかのタンパク質は、酵母細胞からあまり分泌されないか、場合によっては適切にプロセシングされない(例えば、酵母における過剰グリコシル化)。これらの場合、異なる真菌宿主生物を選択すべきである。
【0194】
典型的な真菌発現宿主を、Aspergillus niger、Aspergillus niger var.tubigenis、Aspergilus niger var.awamori、Aspergillus aculeatis、Aspergillus nidulans、Aspergillus oryzae、Trichoderma reesei、Bacillus subtilis、Bacillus licheniformis、Bacillus amyloliquefaciens、Kluyveromyces lactis、およびSaccharomyces cerevisiaeから選択することができる。
【0195】
適切な糸状菌は、例えば、Aspergillus oryzaeまたはAspergillus nigerなどのAspergillus種に属する株、またはFusarium oxysporium、Fusarium graminearum(完全な状態では、Gribberella zeae、以前にはSphaeria zeaeと呼ばれ、Gibberella roseumおよびGibberella roseum
f.sp.Cerealisと同義)、またはFusarium sulphureum(完全な状態では、Gibberella puricarisと呼ばれ、Fusarium trichothercioides、Fusarium bactridioides、Fusarium sambucium、Fusarium roseum、およびFusarium roseum var.graminearumと同義)、Fusarium cerealis(Fusarium crokkwellnseと同義)、またはFusarium venenatumの株であり得る。
【0196】
適切な酵母生物を、Kluyveromyces、Saccharomyces、またはSchizosaccharomyces(例えば、Saccharomyces cerevisiae)、またはHansenula類から選択することができる(英国特許出願第9927801.2に開示)。
【0197】
適切な宿主細胞(酵母、真菌、および植物宿主細胞など)の使用により、本発明の組換え発現産物に最適な生物活性を付与するのに必要であり得る翻訳後修飾(例えば、ミリストイル化、グリコシル化、トランケーション、脂質化(lapidation)、およびチロシン、セリン、またはトレオニンのリン酸化)を行うことができる。
【0198】
宿主細胞は、プロテアーゼ欠損またはプロテアーゼ欠乏(minus)株であり得る。これは、例えば、「alp」と呼ばれるアルカリプロテアーゼ遺伝子が欠失したプロテアーゼ欠損株Aspergillus oryzae JaL125であり得る。この株は、WO97/35956に記載されている。
【0199】
(生物)
本発明に関する用語、「生物」には、本発明の酵素をコードするヌクレオチド配列および/またはこれから得られる産物を含み得、かつ/またはプロモーターが生物中に存在する場合、プロモーターにより本発明のヌクレオチド配列を発現することができる任意の生物が含まれる。
【0200】
適切な生物は、原核生物、真菌、酵母、または植物を含み得る。
【0201】
本発明に関する用語「トランスジェニック生物」には、本発明の酵素をコードするヌクレオチド配列および/またはこれから得られる産物を含み、かつ/またはプロモーターにより生物内で本発明のヌクレオチド配列を発現することができる任意の生物が含まれる。好ましくは、ヌクレオチド配列を、生物のゲノムに組み込む。
【0202】
用語「トランスジェニック生物」は、天然環境下でも存在する天然のプロモーターの制御下に存在する場合、天然の環境下での天然のヌクレオチドコード配列は対象としない。
【0203】
従って、本発明のトランスジェニック生物には、本発明の酵素をコードするヌクレオチド配列、本発明の構築物、本発明のベクター、本発明のプラスミド、本発明の細胞、本発明の組織、またはその産物の任意の1つまたは組み合わせを含む生物が含まれる。例えば、トランスジェニック生物はまた、異種プロモーターの制御下で本発明の酵素をコードするヌクレオチド配列を含み得る。
【0204】
(宿主細胞/生物の形質転換)
先に示したように、宿主生物は、原核生物または真核生物であり得る。適切な原核生物宿主の例には、E.coliおよびBacillus subtilisが含まれる。
【0205】
原核生物宿主の形質転換に関する教示は、当該技術分野で十分に報告されており、例えば、Sambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press)およびAusubel et
al., Current Protocols in Molecular Biology (1995), John Wiley & Sons, Inc.を参照のこと。原核生物宿主を使用する場合、ヌクレオチド配列は、形質転換前にイントロンの除去などによって適切に改変される必要があり得る。
【0206】
プロトプラストの形成およびプロトプラストの形質転換、その後の公知の様式での細胞壁の再生を含むプロセスによって、糸状菌細胞を形質転換することができる。宿主微生物としてのAspergillusの使用は、EP 0238023に記載されている。
【0207】
別の宿主生物は、植物であり得る。遺伝子改変植物の構築の基本的原理は、植物ゲノムに遺伝情報を挿入して、挿入された遺伝物質を安定に維持することである。遺伝情報の挿入のためのいくつかの技法が存在し、2つの主な原理は、遺伝情報の直接導入およびベクター系の使用による遺伝情報の導入である。一般的技術の概説を、Potrykus(Annu Rev Plant Physiolo Plant Mol Biol [1991] 42: 205−225)およびChristou(Agro−Food−Industry Hi−Tech March/April 1994 17−27)の論文に見出すことができる。植物形質転換に関するさらなる教示を、EP−A−0449375号に見出すことができる。
【0208】
真菌、酵母、および植物の形質転換についての一般的教示を、以下の節に示す。
【0209】
(形質転換真菌)
宿主生物は、真菌(カビなど)であり得る。適切なこのような宿主の例には、Phanerochaete属、Thermomyces属、Acremonium属、Aspergillus属、Penicillium属、Mucor属、Neurospora属、Trichoderma属などに属する任意のメンバー(Thermomyces lanuginosis、Acremonium chrysogenum、Aspergillus niger、Aspergillus oryzae、Apergillus awamori、Penicillinum chrysogenem、Mucor
javanious、Neurospora crassa、Trichoderma
viridae、Phanerochaete chrysosporiumなど)が含まれる。
【0210】
1つの実施形態では、宿主生物は、糸状菌であり得る。
【0211】
ほぼ1世紀の間、有機化合物および酵素を生産する多くのタイプの産業で糸状菌が広範に使用されてきた。例えば、伝統的な日本のコウジおよびダイズ発酵では、Aspergillus spが使用されてきた。また、本世紀では、産業で使用される有機酸(特に、クエン酸)の生産および種々の酵素の生産にAspergillus nigerが使用されている。
【0212】
なぜ糸状菌が産業で非常に広範に使用されているのかについては2つの主な理由が存在する。第1に、糸状菌は、大量の菌体外産物(例えば、酵素および抗生物質または有機酸などの有機化合物)を産生することができる。第2に、糸状菌は、穀類、ふすま、ビートパルプなどの低コストの基質で増殖することができる。同一の理由が、糸状菌を本発明の異種発現用宿主として魅力的な生物にしている。
【0213】
トランスジェニックAspergillusを調製するために、糸状菌での発現のために設計した構築物への本発明のヌクレオチド配列の挿入によって発現構築物を調製する。
【0214】
異種発現に使用されるいくつかの型の構築物が開発されている。これらの構築物は、好ましくは、1つ以上の典型的には真菌起源の分泌すべきアミノ酸配列を指示するシグナル配列および発現系を終結させるターミネーター(典型的には、真菌で活性)を含む。
【0215】
本発明のヌクレオチド配列を安定なタンパク質をコードする真菌遺伝子の小部分または大部分に融合することができる別の型の発現系が真菌で開発されている。これにより、アミノ酸配列を安定化することができる。このような系では、特定のプロテアーゼによって認識される切断部位を、真菌タンパク質とアミノ酸配列との間に導入することができ、それにより、産生された融合タンパク質を、この位置で特定のプロテアーゼで切断して、アミノ酸配列を遊離させることができる。例として、少なくともいくつかのAspergillusで見出されるKEX−2様ペプチダーゼによって認識される部位を導入することができる。このような融合よってインビボで切断されて、発現産物が産生されるが、より大きな融合タンパク質は産生されない。
【0216】
細菌、真菌、脊椎生物、および植物のタンパク質をコードするいくつかの遺伝子についてのAspergillusにおける異種発現が報告されている。本発明のヌクレオチド配列がシグナル配列と融合していない場合、細胞内にタンパク質が沈積し得る。このようなタンパク質は、細胞質に蓄積し、通常、グリコシル化されず、これはいくつかの細菌タンパク質で有利であり得る。本発明のヌクレオチド配列がシグナル配列を備えている場合、タンパク質は細胞外に蓄積する。
【0217】
産物安定性および宿主株の改変に関して、いくつかの異種タンパク質は、真菌の培養液に分泌された場合にあまり安定ではない。ほとんどの真菌は、異種タンパク質を分解するいくつかの細胞外プロテアーゼを産生する。この問題を回避するために、プロテアーゼ産生が減少した特別な新規株を異種産生の宿主として使用した。
【0218】
糸状菌の形質転換についての教示は、米国特許第5741665号に概説されており、糸状菌の標準的な形質転換技法および真菌の培養が当該技術分野で周知であることが記載されている。N.crassaに適用した技法の広範な概説は、例えば、Davis and de Serres, Methods Enzymol(1971)17A:79−143で見出される。一般に、株の維持および分生子の調製には標準的手順が使用される。Lambowitz et al. J. Cell Biol (1979) 82:17−31に記載のように、菌糸体は、典型的には、約14時間(25℃)の液体培養で増殖する。宿主株は、一般に、適切な栄養素(例えば、任意の1つ以上のhis、arg、phe、tyr、trp、p−アミノ安息香酸、およびイノシトールなど)を補充したフォーゲル最少培地またはフリース最少培地のいずれかで増殖することができる。
【0219】
糸状菌の形質転換についてのさらなる教示は、米国特許第5674707号に概説されており、一旦構築物が得られると、DNA媒介形質転換、エレクトロポレーション、遺伝子銃撃ち込み(particle gun bombardment)、およびプロトプラスト融合などの技法を使用して、選択された糸状菌宿主に線状形態またはプラスミド形態(例えば、pUCベースのベクターまたは他のベクター)のいずれかで導入することができることが記載されている。さらに、Ballance、1991(同節)は、形質転換真菌の調製のための形質転換プロトコールは、プロトプラストの調製およびPEGおよびCa2+イオンを使用したプロトプラストへのDNAの導入に基づくことを記載している。次いで、形質転換プロトプラストを再生し、種々の選択マーカーを使用して形質転換真菌を選択する。
【0220】
得られた形質転換体を選択するために、形質転換は、典型的には、遺伝子マーカーが選択可能な宿主株に、同一ベクター上または同時形質転換によってのいずれかで発現カセットを導入された選択可能な遺伝子マーカーを含む。種々のマーカー/宿主系が利用可能であり、Aspergillus nidulansの栄養要求性株との使用のためのpyrG、argB、およびniaD遺伝子;Aspergillus oryzae栄養要求性株のpyrGおよびargB遺伝子;Penicillium chrysogenum栄養要求性株のpyrG、trpC、およびniaD遺伝子;ならびにTrichoderma reesei栄養要求性株のargB遺伝子が含まれる。amdS、oliC、hyg、およびphleoを含む優性選択可能マーカーもまた、A.niger、A.oryzae、A.ficuum、P.chrysogenum、Cephalosporium acremonium、Cochliobolus heterostrophus、Glomerella cingulata、Fulvia fulva、およびLeptosphaeria maculans(概説として、Ward in Modern Microbial Genetics, 1991, Wiley−Liss,Inc., 455−495を参照のこと)などの糸状菌との使用に利用可能である。一般的に使用されている形質転換マーカーは、唯一の窒素源としてアクリルアミドを使用して高コピー数の真菌を増殖させることができるA.nidulansのamdS遺伝子である。
【0221】
糸状菌の形質転換のために、多数の糸状菌のためのいくつかの形質転換プロトコールが開発されている。マーカーのうち、argB、trpC、niaD、およびpyrGなどの多くの栄養要求性マーカー、ベノミル耐性、ハイグロマイシン耐性、およびフレオマイシン耐性などの抗生物質耐性マーカーを形質転換に使用する。
【0222】
1つの局面では、宿主生物は、Aspergillus nigerなどのAspergillus属の宿主生物であり得る。
【0223】
本発明のトランスジェニックAspergillusを、以下の教示によって調製することもできる:Rambosek J. and Leach,J. 1987(Recombinant DNA in filamentous fungi: Progress and Prospects. CRC Crit. Rev. Biotechnol. 6:357−393)、Davis R. W. 1994(Heterologous gene expression and protein secretion in Aspergillus. In: Martinelli S.D.,Kinghorn J. R. (Editors) Aspergillus: 50 years on. Progress in industrial microbiology vol 29. Elsevier Amsterdam, 1994. pp 525−560)、Ballance, D. J. 1991(Transformation systems for Filamentous Fungi and an Overview of Fungal Gene structure. In: Leong, S.A., Berka R.M. (Editors) Molecular Industrial Mycology. Systems and Applications for Filamentous Fungi. Marcel Dekker Inc. New York 1991. pp 1−29)、およびTurner G. 1994(Vectors for genetic manipulation. In: Martinelli S. D. Kinghorn J. R. (Editors) Aspergillus: 50 years on. Progress in industrial microbiology vol 29. Elsevier Amsterdam 1994. pp.641−666)。
【0224】
(形質転換酵母)
別の実施形態では、トランスジェニック生物は、酵母であり得る。
【0225】
これに関して、異種遺伝子発現用の媒体として酵母もまた広範に使用されている。
【0226】
例として、種Saccharomyces cerevisiaeは、異種遺伝子発現での使用を含む工業的用途の長い歴史がある。Saccharomyces cerevisiaeでの異種遺伝子の発現は、Goodeyら(1987, Yeast Biotechnology, D R Berry et al, eds, pp 401−429, Allen and Unwin, London)およびKingら(1989, Molecular and Cell Biology of Yeasts, E. F. Walton and G. T. Yarronton, eds, pp 107−133, Blackie, Glasgow)によって概説されている。
【0227】
いくつかの理由のために、Saccharomyces cerevisiaeは、異種遺伝子発現に十分に適している。第1に、ヒトに対して病原性がなく、一定の内毒素を産生することができない。第2に、種々の目的のための商業的開発後の長期にわたって安全に使用されている歴史がある。これにより、広範に公的に承認されている。第3に、生物の幅広い商業的使用および研究により、Saccharomyces cerevisiaeの遺伝学および生理学ならびに大規模発酵特性についての豊富な知識が得られている。
【0228】
Saccharomyces cerevisiaeにおける異種遺伝子発現および遺伝子産物分泌の原理の概説は、E. Hinchcliffe E Kenny(1993, ”Yeast as a vehicle for the expression of heterologous genes”, Yeasts, Vol 5,
Anthony H Rose and J Stuart Harrison, eds, 2nd edition, Academic Press Ltd.)によって記載されている。
【0229】
いくつかの酵母ベクター型が利用可能であり、その維持のために宿主ゲノムとの組換えを必要とする組み込みベクターおよび自律複製プラスミドベクターが含まれる。
【0230】
トランスジェニックSaccharomycesを調製するために、酵母での発現のために設計された構築物への本発明のヌクレオチド配列の挿入によって発現構築物を調製する。異種発現で使用するいくつかの構築物型が開発されている。構築物は、酵母起源のプロモーターなどの酵母で活性なプロモーターを含み、GAL1プロモーターなどを使用する。通常、SUC2シグナルペプチドをコードする配列などの酵母起源のシグナル配列を使用する。酵母で活性なターミネーターは、発現系を停止させる。
【0231】
酵母の形質転換のために、いくつかの形質転換プロトコールが開発されている。例えば、本発明のトランスジェニックSaccharomycesを、以下のHinnenら(1978, Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA 75, 1929); Beggs, J D (1978, Nature, London, 275, 104);およびIto, Hら(1983, J. Bacteriology 153, 163−168)の教示によって調製することができる。
【0232】
種々の選択マーカーを使用して、形質転換酵母細胞を選択することができる。マーカーのうち、LEU2、HIS4、およびTRP1などのいくつかの栄養要求性マーカーならびにアミノグリコシド抗生物質マーカー(例えば、G418)などの優性抗生物質耐性マーカーを形質転換に使用する。
【0233】
(形質転換植物/植物細胞)
本発明に適切な好ましい宿主生物は、植物である。
【0234】
この局面では、遺伝子改変植物の構築物における基本的原理は、植物ゲノムに遺伝情報を挿入して、挿入遺伝物質を安定に維持することである。
【0235】
遺伝情報の挿入のためのいくつかの技法が存在し、2つの主な原理は、遺伝情報の直接導入およびベクター系の使用による遺伝情報の導入である。一般的技法の概説を、Potrykus (Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol [1991] 42:205−225)およびChristou (Agro−Food−Industry Hi−Tech March/April, 1994, 17−27)の論文に見出すことができる。
【0236】
本発明のプロモーターは、EP−B−0470145およびCA−A−2006454で開示されていないとしても、これら2つの文献は、本発明のトランスジェニック植物の調製で使用することができる技法のタイプについてのいくつかの有用なバックグラウンドを解説している。これらのバックグラウンドの教示のいくつかは、以下の解説に含まれる。
【0237】
遺伝子改変植物構築の基本的原理は、植物ゲノムに遺伝情報を挿入して、挿入された遺伝物質を安定に維持することである。
【0238】
従って、1つの局面では、本発明は、本発明のヌクレオチド配列または構築物を含み、植物などの生物のゲノムにヌクレオチド配列または構築物を導入することができるベクター系に関する。
【0239】
ベクター系は、1つのベクターを含み得るが、2つのベクターを含んでいてもよい。2つのベクターの場合、通常ベクター系はバイナリベクター系と呼ばれる。バイナリベクター系は、Gynheung An et al. (1980), Binary Vectors, Plant Molecular Biology Manual A3, 1−19にさらに詳述されている。
【0240】
所与のプロモーターもしくはヌクレオチド配列または構築物を使用した1つの広範に使用されている植物細胞の形質転換系は、Agrobacterium tumefaciens由来のTiプラスミドまたはAgrobacterium rhizogenes由来のRiプラスミドの使用に基づく(An et al. (1986), Plant Physiol. 81, 301−305およびButcher D. N. et al. (1980) Tissue Culture Methods for Plant Pathologists, eds.: D. S. Ingrams and J. P. Helgeson, 203−208)。
【0241】
上記の植物または植物細胞構築物の構築に適したいくつかの異なるTiおよびRiプラスミドが構築されている。このようなTiプラスミドの非限定的な例は、pGV3850である。
【0242】
少なくとも1つのこれらの領域が植物ゲノムへの改変T−DNAの挿入に不可欠であるようなので、T−DNA境界のすぐ周囲の配列の崩壊を回避するために、本発明のヌクレオチド配列または構築物を、好ましくはT−DNAの末端配列の間の、またはT−DNA配列に隣接したTi−プラスミドに挿入すべきである。
【0243】
上記説明から理解されるように、生物が植物である場合、本発明のベクター系は、好ましくは、植物の感染に必要な配列(例えば、vir領域)およびT−DNA配列の少なくとも1つの境界部分(境界部分は、遺伝子構築物と同一のベクター上に存在する)を含むものである。好ましくは、ベクター系は、Agrobacterium tumefaciens Ti−プラスミドまたはAgrobacterium rhizogenesRi−プラスミドまたはその誘導体であるが、それは、これらのプラスミドが周知であり、且つトランスジェニック植物の構築で広範に使用されており、これらのプラスミドまたはその誘導体に基づいた多数のベクター系が存在するからである。
【0244】
トランスジェニック植物の構築では、本発明のヌクレオチド配列または構築物を、ベクターを複製することができ、且つ植物への挿入前の操作が容易な微生物中で最初に構築することができる。有用な微生物の例はE.coliであるが、上記性質を有する他の微生物を使用することができる。上記定義のベクター系のベクターがE.coli中に構築されている場合、必要に応じて、これを適切なAgrobacterium株(例えば、Agrobacterium tumefaciens)に移入する。従って、本発明のヌクレオチド配列または構築物を有するTi−プラスミドを、好ましくは、適切なAgrobacterium株(例えば、A.tumefaciens)に移入して、本発明のヌクレオチド配列または構築物を有するAgrobacterium細胞を得て、その後そのDNAを改変すべき植物細胞に移入する。
【0245】
CA−A−2006454号で報告されているように、E.coli中の複製系および形質転換細胞の選択が可能なマーカーを含む、大量のクローニングベクターが利用可能である。ベクターは、例えば、pBR322、pUCシリーズ、M13mpシリーズ、pACYC184などを含む。
【0246】
このように、本発明のヌクレオチドまたは構築物を、ベクター中の適切な制限部位に導入することができる。含まれるプラスミドを、E.coliでの形質転換に使用する。E.coli細胞を、適切な栄養培地中で培養し、回収および溶菌する。次いで、プラスミドを回収する。分析法として、一般的に使用される配列分析、制限分析、電気泳動、およびさらに生化学的分子生物学法が存在する。各操作の後、使用したDNA配列を制限消化し、次のDNA配列に連結することができる。各配列を、同一または異なるプラスミドにクローニングすることができる。
【0247】
植物における本発明の所望のプロモーター、構築物、またはヌクレオチド配列の各導入法の後に、さらなるDNA配列の存在および/または挿入が必要であり得る。例えば、形質転換のために、植物細胞のTi−プラスミドまたはRi−プラスミドを使用する場合、導入遺伝子領域が隣接しているのでTi−プラスミドおよびRi−プラスミドのT−DNAの右の境界、しかし多くの場合は左右の境界を連結することができる。植物細胞の形質転換のためのT−DNAの使用が広く研究されており、EP−A−第120516; Hoekema, in: The Binary Plant Vector System Offset−drukkerij Kanters B.B., Alblasserdam, 1985, Chapter V;Fraley et al., Crit. Rev. Plant Sci., 4:1−46;およびAn et al., EMBO J. (1985) 4:277−284に記載されている。
【0248】
Agrobacteriumによる植物組織の直接感染は、広範に使用され、Butcher D. N. et al. (1980), Tissue Culture Methods for Plant Pathologists, eds.: D.
S. Ingrams and J. P. Helgeson, 203−208に記載されている簡単な技法である。この主題に関するさらなる教示については、Potrykus (Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol [1991] 42:205−225)およびChristou (Agro−Food−Industry Hi−Tech March/April 1994 17−27)を参照のこと。この技法を使用して、植物の一定の部分または組織(すなわち、葉、根、幹の一部または植物の別の部分)に対して植物を感染させることができる。
【0249】
典型的には、プロモーターおよび/またはGOIを保有するAgrobacteriumによる植物組織の直接感染を使用して、例えば、カミソリでの植物の切断、ニードルでの植物の穿刺、または研磨材での植物の摩擦によって、感染させるべき植物に傷をつける。次いで、傷にAgrobacteriumを接種する。次いで、接種された植物または植物部分を、適切な培養培地で増殖させ、成熟植物に成長させる。
【0250】
植物細胞が構築された場合、これらの細胞を、アミノ酸、植物ホルモン、ビタミンなどの必要な成長因子を供給した適切な培養培地での細胞の培養などの周知の組織培養法に従って成長させ、維持することができる。細胞または組織培養から植物を再生する公知の方法(例えば、抗生物質を使用した形質転換シュートの選択および適切な栄養素、植物ホルモンなどを含む培地でのシュートの継代培養による)を使用して、形質転換細胞を遺伝子改変植物に再生することができる。
【0251】
他の植物の形質転換技法には、弾道的(ballistic)形質転換、シリコンウィスカーカーバイド(silicon whisker carbide)技法(Frame BR, Drayton PR, Bagnaall SV, Lewnau CJ, Bullock WP, Wilson HM, Dunwell JM, Thompson JA & Wang K (1994) Production of fertile transgenic maize plants by silicon carbide whiske−mediated transformation, The Plant Journal 6:941−948を参照のこと)およびウイルス形質転換技法(例えば、Meyer P, Heidmann I & Niedenhof I (1992) The use of cassava mosaic
virus as a vector system for plants, Gene, 110:213−217を参照のこと)が含まれる。弾道的形質転換技法は、以下の節に示す。
【0252】
さらなる植物形質転換技法を、EP−A−0449375に見出すことができる。
植物および植物組織の弾道的形質転換
示唆するように、トランスジェニック植物の産生技法は、当該技術分野で周知である。典型的には、植物全体、細胞、またはプロトプラストのいずれかを、ジンクフィンガー分子または標的DNA(例えば、上記の核酸構築物を参照のこと)をコードする適切な核酸構築物で形質転換することができる。多数の形質転換DNA構築物の細胞への導入方法が存在するが、全てが植物細胞へのDNAの送達に適しているわけではない。適切な方法には、Agrobacterium感染(特に、Turpen et al., 1993, J. Virol. Methods, 42:227−239を参照のこと)または例えば、PEG媒介形質転換、エレクトロポレーション、またはDNA被覆粒子の加速などの直接DNA送達が含まれる。一般に加速法が好ましく、例えば、微粒子銃が含まれる。
【0253】
Agrobacterium tumefaciensによる形質転換に抵抗する植物種の安定な形質転換体の産生のために最初に開発された、金属粒子の表面上の細胞にDNAを導入する植物組織の弾道的形質転換は、一過性発現における遺伝子構築物の性能の試験に有用性がある。この方法では、目的の遺伝子を安定に組み込むことなく一過的に形質転換した細胞における遺伝子発現を研究することができるので、時間のかかる安定な形質転換体の作製が必要ない。
【0254】
より詳細には、弾道的形質転換技法(遺伝子銃技法としても既知)は、Kleinら(1987)、Sanfordら(1987)、およびKleinら(1988)によって最初に記載され、簡単な取り扱いおよび目的の細胞または組織の前処理の不要により広まった。
【0255】
遺伝子銃技法の原理は、駆動力(例えば、放電または圧縮空気)によるインタクトな植物細胞へのDNA被覆微粒子(microprojectile)の直接的送達である。小さな損傷のみで微粒子が細胞壁および細胞膜を貫通し、その後に形質転換細胞がプロモーター構築物を発現する。
【0256】
実施することができる1つの遺伝子銃技法は、Finerら(1992)およびVainら(1993)によって開発および記載されているParticle Inflow Gun(PIG)を使用する。PIGは、不完全真空によってヘリウム流中で微粒子を植物細胞中に加速させる。
【0257】
PIGの1つの利点は、微粒子の加速をタイマー中継ソレノイドおよび供給されるヘリウム圧の調節によって制御することができることである。駆動力としての加圧ヘリウムの使用は、不活性であり、残渣が生じず、再現性のある加速を与えるという利点を有する。真空によって粒子の吸い込みが減少し、衝突前のヘリウムガスの拡散によって組織の損傷が減少する(Finer et al. 1992)。
【0258】
場合によっては、PIGシステムの有効性および容易さにより、一過性形質転換グアール組織の作製のための良好な選択が行われ、プロモーター/レポーター遺伝子融合物の一過性発現について試験した。
【0259】
米国特許第5,874,265号から得た典型的なトランスジェニック植物(特に、単子葉植物)の産生プロトコールを以下に記載する。
【0260】
植物細胞への形質転換DNAセグメントの送達方法の例は、微粒子銃である。この方法では、非生物学的粒子を核酸で被覆して、推進力によって細胞に送達させることができる。粒子の例には、タングステン、金、および白金などから構成される粒子が含まれる。
【0261】
遺伝子銃の特定の利点は、双子葉植物および単子葉植物の両方を再生可能に安定に形質転換する有効な手段であることに加えて、プロトプラストの単離もAgrobacterium感染に対する感受性も必要ないことである。加速による植物細胞へのDNAの送達方法の例示的実施形態は、ステンレス鋼またはNytexスクリーンなどのスクリーンを介して、DNAで被覆した粒子を懸濁液中で培養した植物細胞で被覆したフィルター表面上に推進するため使用することができるBiolistics Particle Delivery Systemである。スクリーンにより、タングステン−DNA粒子が巨大な凝集物としてレシピエント細胞に送達されないように分散される。発射装置と撃ち込まれる細胞との間に介在するスクリーンを使用しないと、発射物が凝集し、高頻度の形質転換の達成には大きすぎると考えられる。これは、大きすぎる発射物によるレシピエント細胞の損傷に起因し得る。
【0262】
撃ち込みのために、懸濁液中の細胞を、フィルターで濃縮することが好ましい。撃ち込まれる細胞を含むフィルターを、微粒子ストッピングプレート下に適切な距離で置く。所望ならば、1つまたは複数のスクリーンを、銃と撃ち込まれる細胞との間にも置く。本明細書中に記載の技法の使用により、撃ち込まれたフィルター上にマーカー遺伝子(「フォーカス」)を一過的に発現する1000個以上の細胞クラスターを得ることができる。撃ち込みから48時間後に外因性遺伝子産物を発現するフォーカス中の細胞数は、しばしば1から10個および平均2から3個の範囲である。
【0263】
上記で考察された任意の方法によるレシピエント細胞への外因性DNAの送達後、好ましい工程は、さらなる培養および植物再生のための形質転換細胞の同定である。この工程は、スクリーニング可能な形質について培養物を直接アッセイすること、または選択薬へ撃ち込んだ培養物を曝露することによりアッセイすることを含み得る。
【0264】
スクリーニング可能なマーカー形質の例は、トウモロコシのR遺伝子座の制御下で産生される赤色の色素である。この色素を、この段階の成長を補助することができる栄養培地を含む固体支持体での細胞の培養、例えば18℃で180μEm−2−1を超えて細胞のインキュベーション、および着色したコロニー(視覚可能な細胞の凝集体)からの細胞の選択によって検出することができる。これらの細胞を、さらに懸濁液または固体培地のいずれかで培養することができる。
【0265】
形質転換細胞を同定する方法の例示的実施形態は、撃ち込んだ培養物の選択薬(代謝インヒビター、抗生物質、除草剤など)への曝露を含む。形質転換されて使用した選択薬への耐性を付与するマーカー遺伝子を安定に組み込んだ細胞が培地中で増殖し、分裂する。感受性細胞は、さらなる培養に供さない。
【0266】
bar−ビアラホス選択系を使用するために、フィルター上に撃ち込んだ細胞を非選択液体培地に再懸濁し、培養し(例えば、1〜2週間)、1〜3mg/lのビアラホスを含む固体培地を重層したフィルターに移した。典型的には1〜3mg/lの範囲が好ましいが、本発明の実施において0.1〜50mg/lの範囲が有用であることが提唱される。撃ち込み用のフィルターのタイプは、特に重大ではないと考えられるが、任意の固体で多孔質の不活性支持体を含み得る。
【0267】
選択薬への曝露で生存した細胞を、植物の再生を補助する培地で培養することができる。組織を、ホルモンを含む基本培地で約2〜4週間維持し、その後ホルモンを含まない培地に移す。2〜4週間後、シュートの成長が別の培地へ移す時間の合図となる。
【0268】
再生は、典型的には、形質転換カルスからより成熟した植物への連続的な成長段階で適切な栄養素およびホルモンシグナルが得られるようにその組成が改変された培地に順次移していくことが必要である。成長途上の小植物を、例えば、約85%の相対湿度、600ppmのCO、および250μEm−2−1の光で環境を制御されたチャンバー内で土壌に移し、土壌を固める。好ましくは、植物を、成長チャンバーまたは温室のいずれかで成熟させる。典型的には、再生には、約3〜12週間を要する。再生中に、細胞を、組織培養容器中の固体培地で成長させる。このような容器の例示的な実施形態は、ペトリ皿である。再生植物を、好ましくは、約19℃〜28℃で成長させる。再生後、植物がシュートおよび根の発達段階に達し、さらなる成長および試験のために温室に移すことができる。
【0269】
PCRおよび/またはサザンブロッティングなどの当業者に周知の技法の使用によって外因性遺伝子の存在を決定するために、ゲノムDNAをカルス細胞株および植物から単離することができる。
【0270】
遺伝情報の挿入のためのいくつかの技法が存在し、2つの主な原理は、遺伝情報の直接導入およびベクター系の使用による遺伝情報の導入である。一般的技法の概説は、Potrykus (Annu Rev Plant Physiol Plant Mol.
Biol [1991] 42:205−225)およびChristou (Agro−Food−Industry Hi−Tech March/April 1994
17−27)の論文に見出すことができる。
【0271】
(培養および産生)
ヌクレオチド配列で形質導入した宿主細胞を、コードされた酵素の産生に有益であり、細胞および/または培養培地からの酵素の回収が容易になる条件下で培養することができる。
【0272】
細胞培養で使用した培地は、該当する宿主細胞の増殖および酵素の発現に適した任意の従来の培地であり得る。適切な培地は、市販されているか、公開されたレシピ(例えば、American Type Culture Collectionのカタログに記載)に従って調製することができる。
【0273】
組換え細胞によって産生されたタンパク質を、細胞表面にディスプレイすることができる。所望ならば、当業者に理解されるように、コード配列を含む発現ベクターを、特定の原核細胞膜または真核細胞膜によるコード配列の分泌を指示するシグナル配列を使用して設計することができる。他の組換え構築物は、コード配列を可溶性タンパク質の精製を容易にするポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に連結することができる(Kroll DJ et al (1993) DNA Cell Biol 12:441−53)。
【0274】
宿主細胞から酵素を分泌することができ、遠心分離または濾過による培地からの細胞の分離、および硫酸アンモニウムなどの塩による培地のタンパク質成分の沈殿、およびその後のイオン交換クロマトグラフィまたはアフィニティクロマトグラフィなどのクロマトグラフ手順の使用を含む周知の手順によって培養培地から都合よく回収することができる。
【0275】
(分泌)
しばしば、酵素をより容易に回収することができる培養培地に発現宿主から酵素を分泌させることが望ましい。本発明によれば、所望の発現宿主に基づいて、分泌リーダー配列を選択することができる。本発明の状況によってハイブリッドシグナル配列を使用することもできる。
【0276】
異種分泌リーダー配列の典型的な例は、真菌アミログルコシダーゼ(AG)遺伝子(glaA−例えば、Aspergillus由来の18アミノ酸および24アミノ酸のバージョン)、a因子遺伝子(酵母、例えば、Saccharomyces、Kluyveromyces、およびHansenula)、またはα−アミラーゼ遺伝子(Bacillus)由来の配列である。
【0277】
(検出)
アミノ酸配列発現の種々の検出および測定プロトコールが当該技術分野で既知である。例には、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射免疫アッセイ(RIA)、および蛍光標示式細胞分取法(FACS)が含まれる。POI上の2つの非妨害エピトープに反応性を示すモノクローナル抗体を使用する2部位モノクローナルベースの免疫アッセイを使用するか、競合結合アッセイを使用することができる。これらおよび他のアッセイはとりわけ、Hampton Rら(1990, Serological Methods, A Laboratory Manual, APS Press, St Paul MN)およびMaddox DEら(1983, J Exp Med 15, 8:121 1)中に記載されている。
【0278】
広範な種々の標識および結合技法は当業者に既知であり、種々の核酸およびアミノ酸アッセイで使用することができる。アミノ酸配列検出用の標識ハイブリッド形成またはPCRプローブの産生手段には、標識ヌクレオチドを使用したオリゴ標識、ニック翻訳、末端標識、またはPCR増幅が含まれる。あるいは、NOIまたはその任意の部分を、mRNAプローブの産生のためにベクターにクローニングすることができる。このようなベクターは当該技術分野で既知であり、市販されており、T7、T3、またはSP6などの適切なRNAポリメラーゼおよび標識ヌクレオチドの付加によるインビトロでのRNAプローブの合成に使用することができる。
【0279】
多数の企業(Pharmacia Biotech (Piscataway, NJ)、Promega (Madison, WI)、およびUS Biochemical Corp (Cleveland, OH)など)が市販のキットおよびこれらの手順についてのプロトコールを提供している。適切なレポーター分子またはラベルには、放射性核種、酵素、蛍光、化学発光剤、または発色剤、ならびに基質、補因子、インヒビター、および磁性粒子などが含まれる。このような標識の使用を教示する特許には、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号、および同第4,366,241号が含まれる。また、組換え免疫グロブリンを、米国特許第4,186,567号に記載のように産生することができる。
【0280】
アミノ酸配列のさらなる発現定量法には、放射性標識(Melby PC et al
1993 J Immunol Methods 159:235−44)またはビオチン処理(Duplaa C et al 1993 Anal Biochem 229−36)ヌクレオチド、制御核酸の同時増幅、および実験結果を補間した検量線が含まれる。複数のサンプルの定量を、目的のオリゴマーを種々の希釈度で提供して分光光度計または熱量応答によって迅速に定量するELISA形式でのアッセイの実施によって高速化することができる。
【0281】
マーカー遺伝子発現の有無によりヌクレチド配列も存在することが示唆されるが、その存在および発現を確認しなければならない。例えば、ヌクレオチド配列をマーカー遺伝子配列内に挿入する場合、ヌクレオチド配列を含む組換え細胞をマーカー遺伝子機能の非存在によって同定することができる。あるいは、マーカー遺伝子を、本発明のプロモーターまたは別のプロモーター(好ましくは、本発明の同一のプロモーター)の制御下でヌクレオチド配列と共に縦列に置くことができる。誘導または選択に応答するマーカー遺伝子の発現は、同様に通常アミノ酸配列の発現を示す。
【0282】
あるいは、ヌクレオチド配列を含む宿主細胞を、当業者に既知の種々の手順によって同定することができる。これらの手順には、DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリッド形成、ならびに核酸またはタンパク質の検出および/または定量のための膜ベース、溶液ベース、またはチップベースのテクノロジーが含まれるタンパク質バイオアッセイまたは免疫アッセイ技法が含まれるが、これらに限定されない。
【0283】
(融合タンパク質)
本発明のアミノ酸配列を、例えば、抽出および精製を補助するために融合タンパク質として産生することができる。融合タンパク質パートナーの例には、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、6xHis、GAL4(DNA結合および/または転写活性化ドメイン)、およびβ−ガラクトシダーゼが含まれる。融合タンパク質配列を除去するため、融合タンパク質パートナーと目的のタンパク質配列との間のタンパク質分解性切断部位を含むことも便利であり得る。好ましくは、融合タンパク質は、タンパク質配列の活性を妨害しない。
【0284】
融合タンパク質は、本発明の物質と融合した抗原または抗原決定基を含み得る。この実施形態では、融合タンパク質は、免疫系の全身刺激の提供という意味でアジュバントとして作用することができる物質を含む天然に存在しない融合タンパク質であり得る。抗原または抗原決定基を、物質のアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかに結合することができる。
【0285】
本発明の別の実施形態では、融合タンパク質をコードするために、アミノ酸配列を異種配列にライゲーションすることができる。例えば、物質活性に影響を与えることができる作用因子についてのペプチドライブラリーのスクリーニングのために、市販の抗体によって認識される異種エピトープを発現するキメラ物質をコードすることが有用であり得る。
【0286】
(さらなるPOI)
本発明の配列を、1つまたは複数のさらなる目的のタンパク質(POI)または目的のヌクレオチド配列(NOI)と組み合わせて使用することができる。
【0287】
POIの非限定的な例には、デンプン代謝に関連するタンパク質もしくは酵素、グリコーゲン代謝に関与するタンパク質もしくは酵素、アセチルエステラーゼ、アミノペプチダーゼ、アミラーゼ、アラビナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、カルボキシペプチダーゼ、カタラーゼ、セルラーゼ、キチナーゼ、キモシン、クチナーゼ、デオキシリボヌクレアーゼ、エピメラーゼ、エステラーゼ、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、α−グルカナーゼ、グルカンリサーゼ(lysase)、エンド−β−グルカナーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースオキシダーゼ、α−グルコシダーゼ、β−グルコシダーゼ、グルクロニダーゼ、ヘミセルラーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、ヒドロラーゼ、インベルターゼ、イソメラーゼ、ラッカーゼ、リパーゼ、リアーゼ、マンノシダーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、ペクチン酸リアーゼ、ペクチンアセチルエステラーゼ、ペクチンデポリメラーゼ、ペクチンメチルエステラーゼ、ペクチン分解酵素、ペルオキシダーゼ、フェノールオキシダーゼ、フィターゼ、ポリガラクツロナーゼ、プロテアーゼ、ラムノガラクツロナーゼ、リボヌクレアーゼ、タウマチン、トランスフェラーゼ、輸送タンパク質、トランスグルタミナーゼ、キシラナーゼ、ヘキソースオキシダーゼ(D−ヘキソース:O−オキシドレダクターゼ、EC1.1.3.5)、またはその組み合わせが含まれる。NOIは、さらに、任意のこれらの配列のアンチセンス配列であってもよい。
【0288】
POIは、さらに、例えば、抽出および精製を補助するための融合タンパク質であってもよい。
【0289】
融合タンパク質パートナーの例には、マルトース結合タンパク質、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、6xHis、GAL4(DNA結合および/または転写活性化ドメイン)、およびβ−ガラクトシダーゼが含まれる。融合成分との間にタンパク質分解性切断部位を含むことも便利であり得る。
【0290】
POIを、さらに、分泌配列に融合することもできる。分泌リーダー配列の例は、アミログルコシダーゼ遺伝子、α因子遺伝子、α−アミラーゼ遺伝子、リパーゼA遺伝子、キシラナーゼA遺伝子由来のものである。
【0291】
他の配列もまた、分泌されたPOIの分泌を促進するか、または収量を増大させることができる。このような配列は、例えば、英国特許出願第9821198.0に記載のAspergillus niger cyp B遺伝子産物としてシャペロンタンパク質をコードすることができる。
【0292】
NOIを、多数の理由のためにその活性を変化させるように操作することができる(その発現産物のプロセシングおよび/または発現を改変する変化が含まれるが、これに限定されない)。例えば、新規の制限部位を挿入するためか、グリコシル化パターンを変化させるためか、コドン優先度を変化させるために当該技術分野で周知の技法(例えば、部位特異的変異誘発)を使用して、変異を導入することができる。さらなる例として、特定の宿主細胞での発現を最適化するためにNOIを改変することもできる。制限酵素認識部位を導入するために、他の配列の変化が望ましい場合もある。
【0293】
NOIは、合成または改変ヌクレオチドをその中に含むことができる。オリゴヌクレオチドに対する多数の異なる改変型が当該技術分野で既知である。これらには、ホスホン酸メチルおよびホスホロチオエート骨格、分子の3’および/または5’末端でのアクリジンまたはポリリジン鎖の付加が含まれる。本発明の目的のために、NOIを当該技術分野で利用可能な任意の方法によって改変することができると理解すべきである。NOIのインビボ活性の増大または寿命の延長のためにこのような改変を行うことができる。
【0294】
NOIを、細胞内の安定性および半減期の増大のために改変することができる。可能な改変には、分子の5’および/または3’末端の隣接配列の付加、あるいは分子の骨格内のホスホジエステラーゼ結合よりもむしろホスホロチオエートまたは2’O−メチルの使用が含まれるが、これらに限定されない。
【0295】
(抗体)
本発明の1つの局面は、請求項1に記載のアミノ酸配列のうちの1つまたは複数と免疫反応を示すアミノ酸配列に関する。
【0296】
標準的技法(本発明の物質での免疫化またはファージディスプレイライブラリーの使用など)によって、抗体を産生することができる。
【0297】
本発明の目的のために、用語「抗体」には、反対であることを特記しない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、単鎖抗体、Fabフラグメント、Fab発現ライブラリーによって産生されたフラグメント、ならびにその模倣物が含まれるが、これらに限定されない。このようなフラグメントには、標的物質に対する結合活性が保持されている完全な抗体のフラグメント(Fv、F(ab’)、およびF(ab’)フラグメント)ならびに抗体の抗原結合部位を含む単鎖抗体(scFv)、融合タンパク質、および他の合成タンパク質が含まれる。さらに、抗体およびそのフラグメントは、ヒト化抗体であり得る。中和抗体(すなわち、物質ポリペプチドの生物活性を阻害する抗体)は、診断および治療に特に好ましい。
【0298】
ポリクローナル抗体が望ましい場合、選択された哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマなど)を、本発明の配列(またはその免疫エピトープを含む配列)で免疫化する。宿主の種に依存して、種々のアジュバントを使用して、免疫応答を増大させることができる。このようなアジュバントには、フロイントのアジュバント、水酸化アルミニウムなどのミネラルゲル、およびリゾレシチンなどの界面活性剤、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性乳濁液、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノールが含まれるが、これらに限定されない。BCG(Bacilli Calmette−Guerin)およびCorynebacterium parvumは、物質を精製した場合にポリペプチドを全身防御の刺激のために免疫無防備個体に投与することを使用することができる潜在的に有用なヒトアジュバントである。
【0299】
免疫化動物由来の血清を回収し、既知の手順に従って処置する。本発明の配列(またはその免疫エピトープを含む配列)に対するポリクローナル抗体を含む血清が他の抗原に対する抗体を含む場合、ポリクローナル抗体を免疫親和性クロマトグラフィによって精製することができる。ポリクローナル抗血清の産生およびプロセシング技法は、当該技術分野で既知である。このような抗体を作製することができるように、本発明はまた、本発明のポリペプチド、あるいは動物またはヒトにおける免疫源として使用する別のポリペプチドにハプテン化した(haptenised)そのフラグメントを提供する。
【0300】
本発明の配列(またはその免疫エピトープを含む配列)に指向するモノクローナル抗体も、当業者は容易に産生することができる。ハイブリドーマによる一般的なモノクローナル抗体作製方法は、周知である。不死化抗体産生細胞株を、細胞融合、および発癌性DNAでのBリンパ球の直接形質転換またはエプスタイン−バーウイルスでのトランスフェクションなどの他の技法によってもまた作製することができる。オービット(orbit)エピトープに対して産生されたモノクローナル抗体のパネルを、種々の性質(すなわち、アイソフォームおよびエピトープ親和性)についてスクリーニングすることができる。
【0301】
本発明の配列(またはその免疫エピトープを含む配列)に対するモノクローナル抗体を、培養における連続細胞株によって抗体分子が産生される任意の技法を使用して調製することができる。これらには、Koehler and Milstein (1975 Nature 256:495−497)に最初に記載されたハイブリドーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosbor et al (1983) Immunol
Today 4:72; Cote et al (1983) Proc Natl
Acad Sci 80:2026−2030)、およびEBV−ハイブリドーマ技法(Cole et al (1985) Monoclonal Antibodies
and Cancer Therapy, Alan R Liss Inc, pp
77−96)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、「キメラ抗体」の産生のために開発された技法(適切な抗原特異性および生物活性を有する分子を得るためのヒト抗体遺伝子へのマウス抗体遺伝子のスプライシング)を使用することができる(Morrison et al (1984) Proc Natl Acad Sci 81:6851−6855; Neuberger et al (1984) Nature
312:604−608; Takeda et al (1985) Nature
314:452−454)。あるいは、単鎖抗体産生について記載した技法(米国特許第4,946,779号)を、物質特異的単鎖抗体の産生に適合させることができる。
【0302】
リンパ球集団におけるインビボ産生の誘導またはOrlandiら(1989, Proc Natl Acad Sci 86:3833−3837)に記載の組換え免疫グロブリンライブラリーまたは高度に特異的な結合試薬のパネルのスクリーニング、およびウィンターGおよびミルスタインC(1991;Nature 349:293−299)によって抗体を産生することもできる。
【0303】
物質の特異的結合部位を含む抗体フラグメントを、作製することもできる。例えば、このようなフラグメントには、抗体分子のペプシン消化によって産生することができるF(ab’)フラグメント、およびF(ab’)フラグメントのジスルフィド結合の還元によって作製することができるFabフラグメントが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、Fab発現ライブラリーを、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントが迅速且つ容易に同定されるように構築することができる(Huse WD et al (1989) Science 256:1275−1281)。
【0304】
(大規模適用)
本発明の1つの好ましい実施形態では、大規模適用のためにアミノ酸配列を使用する。
【0305】
好ましくは、宿主生物の培養後の1リットルの総細胞培養体積あたり1g〜約2gの量でアミノ酸配列を産生する。
【0306】
好ましくは、宿主生物の培養後の1リットルの総細胞培養体積あたり100mg〜約900mgの量でアミノ酸配列を産生する。
【0307】
好ましくは、宿主生物の培養後の1リットルの総細胞培養体積あたり250mg〜約500mgの量でアミノ酸配列を産生する。
【0308】
(まとめ)
まとめると、本発明は、アミノ酸配列およびヌクレオチド配列、またこれを含む構築物に関する。本発明はまた、既知の酵素の新規の使用に関する。
【0309】
本発明を、以下の非限定的な実施例において、以下の図面を参照してさらに説明する。
【実施例】
【0310】
(真菌Phanerochaete chrysosporiumから精製したピラノゾン脱水素酵素)
Phanerochaete chrysosporium(白色腐朽菌)は、その高い最適成長温度(40℃)および一定範囲の菌体外酸化酵素の産生能力により、生物工学的に重要な真菌である。従って、この真菌は、種々の廃棄物(爆発性汚染物質、殺虫剤、および有毒廃棄物が含まれる)の処理に使用されている。さらに、Phanerochaete chrysosporiumは、配列決定された最初のbasidiomyceteゲノムである(University of California and Department of Energy, USA)。
【0311】
アンヒドロフルクトース(AF)を代謝する酵素の研究では、P.chrysosporiumから精製された熱安定性ピラノゾン脱水素酵素(PD)が得られた。研究により、この精製PDは基質としてAFを使用するだけでなく、その天然の基質であるグルコソンよりもより有効に使用することが示された。さらに、生成物は、植物保護剤において有用な抗真菌剤ミクロセシンであることが示された。
【0312】
PDのN末端配列および2つのプロテイナーゼでの加水分解後のPDのエンド−N末端配列を解明した。これらは共に332アミノ酸、すなわち、Mrが97kDaであるという想定に基づいてPDタンパク質の全長の37%を占める。
【0313】
真菌ゲノムについて上記部分的アミノ酸配列を使用したデータベース検索によって、Scaffold62で全長PD遺伝子を同定した(図4)。共に3つのイントロンを含む転写開始および終止コドンが同定された(図4)。精製PDはN末端の7つのアミノ酸が短縮されているが、依然として機能的であるようである。培養培地中に酵素PDは見出されなかったので、シグナルペプチドを含み得ない。
【0314】
(アッセイ方法)
(PD活性の測定)
反応混合物は、25μlのアンヒドロフルクトース溶液(3.0%)、10μlのPD調製物、93μlの0.1Mリン酸ナトリウム(pH6.5)、および最終体積を1mlにする水からなっていた。反応物を混合し、5分毎または30分後にPerkin Elmer Lambda18uv/vis分光光度計にて室温(22℃)で190〜320nmをスキャンした。265nmおよび230nmの吸光度を記録した。PDの1活性単位を、22℃で1分あたり230nmでの0.01吸光単位の増加と定義する。
【0315】
Bio−Rad laboratoriesからの試薬および説明書を使用したBio−Rad法(Bradford法)を使用してタンパク質アッセイを行った(Peterson, GL: Determination of total protein,
Methods Enzymol. 91, 95−119 (1983))。
【0316】
グルコース、AF、およびミクロセシンを分離するために、以前に記載のように、酢酸エチル、酢酸、メタノール、および水(12:3:3:2)の溶媒系を使用してTLCを行った(Yu S, Ahmad T, Pedersen M, Kenne L: α−1, 4−Glucan lyase, a new class of starch/glycogen degrading enzyme. III. Substrate specificity, mode of action, and cleavage mechanism, Biochim Biophys Acta 1244; 1−9 (1995))。厚さ0.15mmのMerckシリカゲル60(20×20cm)プレートを使用した。1,5−アンヒドロ−D−フルクトースを、DNS法によってアッセイした(Yu S, Olsen CE, Marcussen J:
Methods for the assay of 1, 5−anhydro−D−Fructose and α−1, 4−glucan lyase, Carbohydr. Res. 305:73−82 (1998))。
【0317】
(PDの精製)
使用した精製手順は、使用株が異なること以外は本質的にGabrielら(1993)に記載の手順と同一であった。さらに、過剰硫酸アンモニウム分画工程を含んでいた。本適用で使用した株は、American Type Culture CollectionのPhanerochaete chrysosporium(ATCC32629)および(ATCC24725)であり、Gabrielら(1993)が使用した株は、Czechish collection centreから入手したPhanerochaete chrysosporium k−3であった。
【0318】
Phanerochaete crysosporiumの無細胞抽出物を、55%までの飽和硫酸アンモニウムに供した。次いで、2時間穏やかにブレンドし、4℃にて10000×gで20分間遠心分離した。PD活性を有する沈殿物を、同体積の抽出緩衝液に溶解し、再度遠心分離し、上清を、Gabrielら(1993)に記載の手順を使用してPDの精製に使用した。
【0319】
PDの精製手順後に、製造者の説明書に従って、8〜25%の勾配ゲルを使用して、PhastSystem(Pharmacia)を使用してSDS−PAGEおよびnative−PAGEを行った。クーマシーブリリアントブルー染色(PhastGel Blue R)によってゲル上のタンパク質バンドを視覚化した。図1Aから、PD1は、分子量が97kDaを有すると推定され、タンパク質マーカーであるホスホリラーゼbと類似の移動度を有した(97.4kDa)。
【0320】
(アミノ酸配列決定)
アミノ酸配列決定に精製PDを使用した。PDのアミノ酸配列決定を、以前に記載のように行った(Yu. S.; Christensen TMIE, Kragh KM, Bojsen K, Marcussen J: Efficient purification, characterization and partial amino acid sequencing of two α−1, 4−glucan
lyases from fungi. Biochim. Biophys Acta 1339:311−320 (1997))。PDを、最初にプロテイナーゼで部分的に加水分解した。作製されたペプチドフラグメントを、HPLCで分離した。各ポリペプチドを回収し、質量分析器で分子量を決定し、パルス−液体ファーストサイクルを使用したApplied Biosystems476Aシークエンサーにて配列決定した。PDを、その最適pHおよび最適温度、活性についてのイオン要件、安定性、および他の動力学的特性についてもさらに特徴付けた。
【0321】
(真菌Phanerochaete chrysosporiumから精製したピラノゾン脱水素酵素から得たアミノ酸配列)
トリプシンまたはエンドプロテイナーゼLysC消化のいずれかによって、以下のアミノ酸配列を得る。逆相HPLCによってペプチドを精製し、MALDI−TOF質量分析によって分子量情報を得る。次いで、得られた配列を、University of Californiaで着手された白色腐朽ゲノム(Phanerochaete chrysosporium)プロジェクトで見出されたDNA配列と比較する。BLASTアルゴリズムを使用して、配列類似性アラインメントを行う。
【0322】
有意なアラインメントが得られた全てのペプチドは、Scaffold62で見出される。
【0323】
(LysCペプチド)
ペプチド27.3(N末端)
KPHCEPEQPAALPLFQPQLVQGGRPDXYWVEAFPFRSDSSK(Vは、異種可能性を示す)
このペプチドは、塩基対38620〜38742から見出される。塩基対38599に開始コドンが存在し、38317は、可能なシグナルペプチドを示す。タンパク質PD2(アイソザイム)の配列決定によって、これはタンパク質のN末端であるという独立した確認を行う。
【0324】
残基27のXは、データベースのGであり、これはMSデータと十分に適合する。
MSc+=4669.10 MSo+=4668.01−0.023%
N末端
ピラノゾン脱水素酵素アイソザイムI(PDI)のN末端は、以下であることを見出した。
KPHXEPEQPAALPLFQPQLVV(Q)GGRPDXY
(Xは未知であり、V(Q)はVまたはQまたはその両方であり得ることを意味する(異種性による))
上記のN末端配列(ペプチド27.3)は、アイソザイムII(PDII)であった。PDIおよびPDIIのN末端は、非常に類似しているか、同一である。
ペプチド31.4b
SDIQMFVNPYATTNNQSSXWTPVSLAKLDFPVAMHYADITK(Dは異種性可能性を示す)
このペプチドは、塩基対38788〜38963から見出される。データベースの配列は、塩基対38836〜38889由来のイントロンが介在している。残基28〜41の配列を、トリプシンペプチド8.4によって確認する。
【0325】
残基19のXは、データベース配列中のSであり、これは、MSデータと適合する。
MSc+=4591.22 MSo+=4591.55+0.007%
トリプシンペプチド
ペプチド6a
VSWLENPGELR
このペプチドは、塩基対39096〜39128から見出される。
MSc+=1300.44 MSo+=1300.45+0.001%
ペプチド5
DGVDCLWYDGAR
このペプチドは、塩基対39426〜39461から見出される。
MSc+=1427.48 MSo+=1427.48
LysCペプチド
ペプチド27.4a
PAGSPTGIVRAEWTRHVLDVFGXLXXK
このペプチドは、塩基対39673〜39753から見出される。
3つのX’は、データベース中のPNGであり、これはMSデータと十分に適合する。
MSc+=2876.27 MSo+=2876.80+0.021%
ペプチド29.4.8
HTGSIHQVVCADIDGDGEDEFLVAMMGADPPDFQRTGVWCYK
このペプチドは、塩基対39754〜39879から見出される。
MSc+=4727.13 MSo+=4727.70+0.012%
ペプチド13.11
TEMEFLDVAGK
このペプチドは、塩基対40244〜40276から見出される。
MSc+=1240.42 MSo+=1240.53+0.009%
ペプチド14.2
KLTLVVLPPFARLDVERNVSGVK
このペプチドは、塩基対40277〜40345から見出される。
MSc+=2552.08 MSo+=25551.35−0.029%
トリプシンペプチド
ペプチド10.5
SMDELVAHNLFPAYVPDSVR
このペプチドは、塩基対40526〜40585から見出される。
MSc+=2259.55 MSo+=2259.77+0.009%
LysCペプチド
ペプチド31.4a
NDATDGTPVLALLDLDGGPSPQAWNISHVPPGTDMYEIAHAK
このペプチドは、塩基対41293〜41469から見出され、塩基対41362〜41416からのイントロンを含有する。
MSc+=4289.73 MSo+=4289.45−0.007%
ペプチド2b
TGSLVCARWPPVK
このペプチドは、塩基対41470〜41508から見出される。
MSc+=1471.71 MSo+=1472.62+0.062%
ペプチド2a
NQRVAGTHSPAAMGLTSRWAVTK
このペプチドは、塩基対41509〜41577から見出される。
MSc+=2440.71 MSo+=2441.58+0.036%
ペプチド11.3
GQITFRLPEAPDHGPLFLSVSAIRHQ
このペプチドは、塩基対41641〜41718から見出される。
MSc+=2888.34 MSo+=2888.25−0.031%
このペプチドは、C末端の指標であるKで終結していない。この配列の後にも終止コドンが続く。
【0326】
このタンパク質の分子量は、約97KDである。アミノ酸の平均分子量が110との推定に基づいて、予想残基数は880であり、塩基対の総数は2640であろう。
【0327】
データベースから計算した塩基対数は、3100である。2つの既知のイントロンは、53および54塩基対から構成されるため、この数字が正常と推定される場合、データベースの配列は約8個のイントロンを含むと予想される。
【0328】
本発明で配列決定した総残基数は、332アミノ酸であり、タンパク質の37%を占める。
【0329】
(実施例1:ミクロセシン生成のための1,5−アンヒドロ−D−フルクトースおよびPDの使用)
反応混合物は、1,5−アンヒドロ−D−フルクトース5μl(3.0%)、PD調製物5μl、65μlのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)、および最終体積を0.7mlにする水からなっていた。反応物を、350〜190nmのスキャニングによってモニターした。反応時間0分を、ブランクとして使用した。約230nmの吸収ピークは、ミクロセシンの形成を示す。265nmの吸収は、ミクロセシンに転換する前のAFからの第1の中間体の形成を示す。
【0330】
形成されたミクロセシンを、TLCでの相対移動度、および275nmで典型的な吸収ピークを示す2−フリルヒドロキシメチルケトンの転換によってさらに確認した(Baute M.−A. et al., 1986)。
【0331】
より大規模なミクロセシンの生成では、使用したAFは、0.4%から20%であった。反応後、DNS法を使用して反応混合物からAFは消滅していた(Yu. S.; Christensen TMIE, Kragh KM, Bojsen K, Marcussen J, Biochim Biophys Acta 1339:311−320 (1997))。ミクロセシンの形成を、265nmでモニターし、これは230nmにシフトし、TLC法でさらにモニターした。
【0332】
1,5−アンヒドロ−D−フルクトースは、その天然の基質であるグルコソンよりも非常に良好なピラノゾン脱水素酵素(PD)の基質であることを見出した。AFのVmaxは、グルコソンの約4.7倍である(表1)。
【0333】
【表1】

【0334】
反応系は、AFまたはグルコソン1〜15μl、25μlのリン酸ナトリウム緩衝液(6.5、0.1M)、水、1.4μlのPD(最終体積200μl)からなっていた。22℃で5.5時間反応させた。AFからのミクロセシンの形成およびグルコソンからのコルタルセロンの形成を、226nmでモニターした。
【0335】
(実施例2:コルタルセロンの生成)
コルタルセロンは、デンプン型基質(デンプン、糊状(waxy)デンプン、デキストリンなど)のデンプン加水分解酵素(アミノグルコシダーゼおよび脱分岐酵素またはシクロデキストリントランスフェラーゼ、ピラノース2−オキシダーゼ、およびPDなど)とのインキュベーションによる1工程で生成することができる。インキュベーション後、カットオフ300〜30,000、好ましくは10,000のメンブレンを使用した限外濾過によって、コルタルセロンを反応混合物から分離することができる。
【0336】
(実施例3:APP生成のための1,5−アンヒドロ−D−フルクトース、PD、およびアスコピロンP合成酵素の使用)
反応混合物は、1,5−アンヒドロ−D−フルクトース50μl(3.0%)、PD調製物5μl、アスコピロンP合成酵素5μl、0.1mlのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)、および最終体積を0.8mlにする水からなっていた。反応を、分光学的に289nmでのAPPの形成によってモニターした。反応温度は、22℃であり、反応時間は24時間であった。終了時に、90%のAFがAPPに転換した。APPの構造を、以前に記載のNMRを使用して確認した(1999年3月19日提出の英国出願第9906457.8号の優先権を主張した2000年3月16日に提出したWO00/56838)。
【0337】
(PD遺伝子の発現)
当該技術分野で周知であり、本明細書中前記に参照した技法によって、Pichia pastoris、Aspergillus niger、およびHansenulla
polymorphなどの産生生物中でPD遺伝子を発現させることができる。
【0338】
(抗体産生)
N Harboe and A Ingild(「免疫グロブリンの免疫化、単離、抗体力価の評価」、Manual of Quantitative Immunoelectrophoresis、Methods and Applications, NH Axelsenら編、Unversitetsforlaget, Oslo, 1973)およびTG Cooper(「生化学ツール」、John Wiley & Sons, New York, 1977)に記載の手順にしたがった、ウサギへの精製酵素の注射および抗血清からの免疫グロブリンの単離によって、本発明のアミノ酸に対する抗体を惹起した。
【0339】
(抗真菌薬としてのミクロセシン)
植物中での真菌の成長により、多大な経済的打撃を受ける。例は、サトウダイコンの苗木およびその葉に対する被害である。サトウダイコンの種子は、土壌での発芽の直後に、Rhizoctonia solani、Pythium ultimum、Aphanomyces cochlioidesなどの種による真菌攻撃にあう。本発明では、ミクロセシンがこれらの病原菌の成長を阻害することができることが見出された。従って、経済的穀物(砂糖)の種子(サトウダイコンの種子など)を、50〜2000ppmのミクロセシンを含むペーストでコートし、植付けに使用する前に乾燥させる。あるいは、ミクロセシンの水溶液を、植物およびその葉に直接噴霧することができる。
【0340】
(実験)
ミクロセシン基本溶液:24mg/ml、バッチ番号Mic20011016
使用した希釈物
【0341】
【表1B】

【0342】
全ての溶液を、滅菌のために0.22μmのフィルターで濾過した。
【0343】
溶液を、以下の真菌に対して試験した。
【0344】
【表1C】

【0345】
新鮮な菌糸体の円形のプラグ(直径10mm)を、PDA培地を含むペトリ皿(直径9cm)の中央に置いた。(PDA=ポテトデキストロース寒天、Difco番号213400)。寒天プレートの周囲に沿って直径5mmのウェルを切り出した。各ウェルに、50μlの試験溶液を入れた。あるいは、20μlの各試験溶液を、プレート周囲に沿って寒天上に直接置いた。また、50μlの各試験溶液を、真菌の菌糸プラグ(plug)の上部に直接置いた。
【0346】
寒天プレートを、室温で日光の下に置くが、直射日光からは保護した。
【0347】
試験物質に対する真菌の反応(阻害域)を、以下のように判断した。
Rhizoctonia solani: 成長2〜3日後
Pythium ultimum: 成長1〜2日後
Aphanomyces cochlioides:成長3〜4日後
Cercospora beticola: 成長3〜4週後
(結果)
真菌成長調節因子としてのミクロセシンは、Rhizoctonia solani、Pythium ultimum、Aphanomyces cochlioides、およびCercospora beticolaに阻害性を示した。これらの真菌に対するミクロセシンの最少阻害濃度(mic)は、それぞれ、240、480、1200、および2400ppmであった。
【0348】
(実施例4:ペレット化サトウダイコン種子に対するミクロセシンの効果)
植物真菌病原体Pythium ultimum、Rhizoctonia solani、およびAphanomyces cochlioidesに対するインビトロでのミクロセシンの効果を、寒天プレート上での病原体の成長阻害についてのスクリーニングによって調査した(図6、図7、図8)。
【0349】
図7は、Aphanomyces cochlioidesに対する異なる濃度のミクロセシンのスクリーニング効果を示し、図8および図9はそれぞれ、Pythium ultimumおよびRhizoctonia solaniに対するスクリーニング効果を示す。それぞれの場合、ミクロセシンを水に溶解し、周囲のウェルに置いた。病原体を含む寒天ブロックを、中央に置いた。病原体を、PDA−寒天プレート上で3〜5日間成長させた。これらの調査は、非常に低濃度のミクロセシンでもAphanomycesの成長を減少させることができることを示した。
【0350】
他の微生物を使用した類似の試験は、ミクロセシンは、Cercosporaでは効果が無く、Pseudomonads(P.fluorescens DS96.578、P.mendocina DS98.124)ではわずかに効果があるが、Bacillus(B.Pumilus DS96.734、B.megaterium DS98.124)の成長に対する効果はないことを示した。
【0351】
これらの所見に基づいて、現場出現試験(field emergence trial)においてミクロセシンの有効性をさらに調査した。この試験は、比較的後期に種をまいて、試験現場における病原体Aphanomycesが存在する機会をより多くした。
【0352】
(材料と方法)
【0353】
【表1D】

【0354】
チラムを含む(1,2)または含まない(7,8)標準的なP1ペレット化量で種子をペレット化した。
標準的な種子コーティング
内部コーティング
0.5%水溶液としての0.3gai/Uミクロセシン
14.7gai/Uヒメキサゾール
60gai/Uイミダクロプリド
標準的なメタリックグリーンの種子のカバーフィルム
試験には以下の組み合わせが含まれた。
R FO 殺真菌薬なし
R FT チラウムあり(ペレット中)
R FH ヒメキサゾールあり
R FM ミクロセシンあり
R P1 STD チラウムあり(ペレット中)+ヒメキサゾール
R FTM チラウムあり(ペレット中)+ミクロセシン
試験場所 Bukkehave, DK.(4reps、200種子/プロット)
試験種まき 2002年5月21日
1.計数(Count) 2002年5月28日(高速)
2.計数 2002年5月29日(高速)
3.計数 2002年6月24日(最終)
(結果)
実験室および現場出現の数値を、表2に見出すことができる(試験FEHCP034、Aphanomyces)。最終の出現を図6に示す。
【0355】
【表2】

【0356】
実験室での研究結果は、ミクロセシンの含有によって実験室での発芽速度が減少することを示すが(4d)、これは4d>15mmの数字で反映されない。これは、低い4d>15mm発芽を有するヒメキサゾールの逆効果を示す。
【0357】
発芽速度に関して、現場出現試験は、ヒメキサゾールを含むペレット(単独またはチラウムとの組み合わせ)により発芽が比較的遅くなることを示す(4d>15mm実験室発芽から予想される)。ミクロセシンを含むペレットは、チラウムのみを含むペレットに匹敵する発芽速度を示す。
【0358】
チラウム含有ペレットでの発芽の速さと対照的に、ミクロセシンを含むペレットは、高い最終発芽を示す(ヒメキサゾール含有ペレットに匹敵する)。
【0359】
根腐れ病原体による実際の攻撃がむしろ制限されているにもかかわらず、ヒメキサゾールによって制御することができる病原体(最も好ましくは、Aphanomyces)による小植物の攻撃に起因するFT−プロットにおける小植物の喪失は4%(およそ)である。FT−プロットにおける小植物の最終数は、F0(殺真菌薬なし)プロットでの小植物数よりも少なかった。これを、他の微生物を制御するがAphanomycesを制御しないので小植物へのAphanomycesのアクセスがより容易になるチラウムの作用によって説明することができる。
【0360】
ミクロセシン含有ペレットは、早い発芽と高い最終発芽の両方を示す唯一のペレットである。従って、ミクロセシンは、少々高価な化学薬品ヒメキサゾールの代替物であり得ると考えられる。
【0361】
上記明細書に記載の全ての刊行物は、本明細書中で参考として援用される。本発明の記載の方法および系の種々の修正形態および変形形態が本発明の範囲および意図を逸脱することなく当業者に明らかとなろう。本発明は、特定の好ましい実施形態と共に説明しているが、このような特定の実施形態によって特許請求の範囲に記載の本発明が過度に制限されないことを理解すべきである。実際、分子生物学または関連分野の当業者に明らかな本発明を実施する実施形態の種々の記載される修正形態は、以下の特許請求項の範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病原体Aphanomycesの増殖の阻止および/または阻害、および/または死滅におけるミクロセシン、またはその異性体の使用。
【請求項2】
前記病原体は、Aphanomyces cochlioidesである、請求項記載の使用。
【請求項3】
植物または植物の種子の処置における、請求項または請求項に記載の使用。
【請求項4】
植物または種子の保護剤としての、ミクロセシンまたはその異性体の使用。
【請求項5】
サトウダイコンの種子の処置における、請求項〜請求項のいずれか1項に記載の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1A】
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【図1B】
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【公開番号】特開2013−56941(P2013−56941A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−281180(P2012−281180)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2003−540199(P2003−540199)の分割
【原出願日】平成14年10月30日(2002.10.30)
【出願人】(397060588)デュポン ニュートリション バイオサイエンシーズ エーピーエス (67)
【Fターム(参考)】