説明

R(+)プラミペキソールを用いた神経回復

【課題】R(+)プラミペキソールを用いた神経回復を提供すること。
【解決手段】神経変性運動障害および運動失調、痙攣障害、運動神経疾患、および炎症性脱髄鞘障害のような慢性の神経変性疾患を罹患した子供および成人における神経、筋肉(心臓および横紋筋)および/または網膜組織機能を回復するための処方物およびその使用の方法が、本明細書中に記載される。障害の例は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む。上記組成物は、即時および/または改変された放出のために処方され得る。改変された放出は、延長放出、遅延放出、および/または拍動性放出を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
2005年8月15日に米国特許商標庁に出願された米国特許出願番号第60/708,213号への米国特許法第119条による優先権が主張されている。
【0002】
米国政府は、James Bennettへの国立衛生研究所助成金番号NS35325、AG14373、NS39788およびNS39005のために、本発明において特定の権利を有し得る。
【0003】
(発明の分野)
本発明は、プラミペキソール(2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−6−プロピルアミノベンザチアゾール)、ならびにそのアナログおよび誘導体の、神経、筋肉(心臓および横紋筋)および/または網膜組織機能を回復するための使用に関する。より特定すれば、本発明は、実質的に純粋な立体異性体R−(+)−2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−6−プロピルアミノベンザチアゾール、ならびにその薬学的に受容可能な塩の、神経、筋肉(心臓および横紋筋)および/または網膜組織機能を回復するための使用、ならびにその処方物に関する。
【背景技術】
【0004】
(発明の背景)
子供および成人における多くの変性性脳疾患は、脆弱な神経の未成熟死滅から発症し、種々の臨床症状および表現型を生じる。これら神経変性性プロセスを遅延するために治療を開発することに実質的な努力がささげられているが、単に機能の衰えを遅延することとは反対に、神経回復を提供し、それ故、臨床症状における改善を提供する治療はほとんど開発されていない。
【0005】
アルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病(PD)のような神経変性疾患(NDD)は、脳中のニューロンの特定の集団の加速された損失から生じる。PDおよびADは、通常、何ら明らかなメンデルの遺伝パターンなくして散発的に出現するが、母系の偏り(bias)を示し得る。成人NDDの稀な、または一般的でない遺伝した形態が存在するけれども、かなりより一般的に生じる散在性形態に対する、これらの常染色体遺伝子改変体における病因の関連性は、重大な討論の主題である。
【0006】
蓄積する証拠は、散在性成人NDDの主要な病因となる構成要素は、実際、ミトコンドリア機能不全であり、そして生じる増加した細胞の酸化ストレスであることを示唆している。PDおよびAD脳ならびに非CNS組織は、ミトコンドリアの電子伝達鎖(ETC)活性における減少を示す。細胞質ハイブリッド(「サイブリッド(cybrid)」)細胞モデルで選択的に増幅されるとき、PD(非特許文献1)およびAD(非特許文献2)被験体からのミトコンドリア遺伝子は、ETC欠損を繰り返し、増加した酸化ストレスを生成し、そして種々のその他の顕著なミトコンドリア機能不全および細胞機能不全を示す。これらの研究は、酸素フリーラジカルを取り除くことによる酸化ストレスを軽減する化合物が、これら疾患の神経保護薬剤としての能力を有し得ることを示唆する(非特許文献3)。
【0007】
酸化ストレスはまた、致死的な神経変性障害である筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連している。ルー・ゲーリグ病としても知られるALSはまた、皮質、脳幹、および脊髄の運動神経を含む、進行性の致死的な神経変性障害である。それは、随意筋の進行性衰弱を生じ、そして最終的には死に至る上部および下部運動神経の変性疾患である。疾患の発症は、通常、寿命の40代または50代にあり、そして罹患した個体は、疾患の発症の2〜5年以内に死ぬ。ALSは、散発性形態および家族性形態の両方で生じる。
【0008】
すべてのALS患者の約10%は家族性の症例であり、そのうち20%は、スーパーオキシジスムターゼ1(SOD1)遺伝子(以前にはCu、Zn−SODとして知られた)に変異を有し、異常に機能するCu、Zn−SOD酵素が、家族性筋萎縮性側索硬化症(FALS)の病因および進行で中心的な役割を演じ得ることを示唆している。変異体SOD1による酸素フリーラジカル、特にヒドロキシルラジカルの増加した発生が、FALSにおける運動神経死に至る事象のシークエンスを開始すると考えられる。この仮説は、変異体SOD1での神経前駆体細胞のトランスフェクションが、ヒドロキシラジカルの増加した産生、およびアポトーシスによる細胞死の速度の増大を生じるという最近の報告によって支持される。酸化ストレスが、同様にALSの散発性形態における運動神経死の原因であることもまた示唆されている。
最近の研究は、ALSに付随する未成熟ニューロン死における可能な刺激事象は、変異したミトコンドリア遺伝子(ミトコンドリアDNA、mtDNA)の存在であることを示した。これらのmtDNAの変異は、ミトコンドリア中のエネルギー産生経路における異常に至り、「酸素フリーラジカル」と呼ばれる種を含む、「反応性酸素種」(「ROS」)として知られる損傷性酸素誘導体の過剰発生を生じる。ROSの産生が、ROSを除去/不活性化する細胞機構の能力を超えるとき、「酸化ストレス」として知られる状態が生じる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Swerdlowら、Exp Neurol.(1998)153:135〜42
【非特許文献2】Swerdlowら、Exp Neurol.(1997)153:135〜42
【非特許文献3】Beal、Exp Neurol.(2000)153:135〜42
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記に記載される状態において細胞回復を広く行きわたらせ得る治療薬は、現在存在していない。ALSのような神経変性疾患をもつ患者における神経学的および運動機能を回復するために有用な組成物および方法に対する必要性が存在する。
【0011】
従って、本発明の目的は、神経変性疾患を患う患者における神経学的および運動機能を回復するために有用な組成物、およびそれを用いる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
神経変性運動障害および運動失調、痙攣障害、運動神経疾患、および炎症性脱髄鞘障害のような慢性の神経変性疾患を罹患した子供および成人における神経、筋肉(心臓および横紋筋)および/または網膜組織機能を回復するための処方物およびその使用の方法が、本明細書中に記載される。障害の例は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む。
【0013】
この方法は、以下:
【0014】
【化3】

で示され、ここで、R、R、R、およびRが、H、C−Cアルキル、およびC−Cアルケニルからなる群から独立に選択される式を有するテトラヒドロベンザチアゾールの有効量を含む薬学的組成物を投与する工程を包含する。1つの実施形態では、このテトラヒドロベンザチアゾールは、プラミペキソールのS(−)エナンチオマーと組み合わせたプラミペキソールのR(+)エナンチオマーである。別の実施形態では、このテトラヒドロベンザチアゾールは、R(+)プラミペキソールの実質的に純粋な処方物であるか、またはその生物学的に活性なアナログ、誘導体、およびホモログ、またはその薬学的に受容可能な塩である。なお別の実施形態では、このテトラヒドロベンザチアゾールは、S(−)エナンチオマーが実質的にない、プラミペキソールのR(+)エナンチオマーであるか、またはその生物学的に活性なアナログ、誘導体、およびホモログ、またはその薬学的に受容可能な塩である。プラミペキソールのR(+)およびS(−)エナンチオマーの構造式は以下に示される。
【0015】
【化4】

上記組成物は、即時および/または改変された放出のために処方され得る。改変された放出は、延長放出、遅延放出、および/または拍動性放出を含む。上記組成物は、局所、経皮、経腸、および非経口(すなわち、静脈内、皮下または筋肉内)投与を含む、種々の経路によって投与され得る。適切な経口投薬形態は、ゼラチンおよび非ゼラチンカプセル、錠剤、キャプレット、粉末、ロゼンジ、カシュ剤、トローチ、シロップ、溶液、懸濁物、およびエマルジョンを含む。上記組成物はまた、即時および/または改変放出のために移植され得る。
【0016】
R(+)プラミペキソールは、経口投与には、ほぼ0.1〜300mg/kg/日、好ましくは0.5〜50mg/kg/日、そして最も好ましくは1〜10mg/kg/日の用量で投与される。経口的に投与される毎日の総用量は、代表的には、10mgと500mgとの間である。あるいは、R(+)プラミペキソールは、急性の脳損傷をもつヒトに、10mgと100mgとの間の単回用量で、および/または10mg/日と500mg/日との間の連続静脈内注入により非経口投与され得る。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
以下:
【化1】


で示される化学式を有するテトラヒドロベンザチアゾールを含む薬学的組成物を投与する工程を包含する、神経機能を改善するための方法であって、ここで、R、R、R、およびRが、H、C−Cアルキル、およびC−Cアルケニルからなる群から独立に選択され、
ここで、該テトラヒドロベンザチアゾールが、改善を必要とする患者に、神経、筋肉(心臓および横紋筋)および/または網膜組織機能を回復するための治療的に有効な量で存在する、方法。
(項目2)
前記テトラヒドロベンザチアゾールが、プラミペキソールのR(+)エナンチオマーから本質的になる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記組成物が、プラミペキソールのS(−)エナンチオマーを実質的に含まないプラミペキソールのR(+)エナンチオマーを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記テトラヒドロベンザチアゾールが、局所的、経皮的、経腸的、または非経口的に投与される、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記組成物が、0.1〜300mg/kg/日、好ましくは0.5〜50mg/kg/日、そして最も好ましくは1〜10mg/kg/日の用量、または1日に10mgと500mgとの間、そして最も好ましくは、1日に30mg、ヒトに経口投与される、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記組成物が、10mgと100mgとの間の単回用量で、または10mg/日と500mg/日との間の連続静脈内注入によって急性脳損傷を有するヒトに非経口投与される、項目1に記載の方法。
(項目7)
以下:
【化2】


で示される、化学式を有するテトラヒドロベンザチアゾールを含む、神経機能を改善するための処方物であって、
ここで、R、R、R、およびRが、H、C−Cアルキル、およびC−Cアルケニルからなる群から独立に選択され、
ここで、該テトラヒドロベンザチアゾールが、改善を必要とする患者に投与される場合に、神経、筋肉(心臓および横紋筋)および/または網膜組織機能を回復するための治療的に有効な量の投薬量で存在する、処方物。
(項目8)
神経機能を回復するために、本質的にR(+)エナンチオマーからなるプラミペキソールの有効量を含む、項目7に記載の処方物。
(項目9)
前記プラミペキソールが、少なくとも80重量%のR(+)エナンチオマーである、項目8に記載の処方物。
(項目10)
前記プラミペキソールが、少なくとも90重量%のR(+)エナンチオマーである、項目8に記載の処方物。
(項目11)
前記プラミペキソールが、少なくとも95重量%のR(+)エナンチオマーである、項目8に記載の処方物。
(項目12)
前記プラミペキソールが、少なくとも98重量%のR(+)エナンチオマーである、項目8に記載の処方物。
(項目13)
10mgと100mgとの間の単回投薬量の経腸投与のための投薬処方物である、項目7に記載の処方物。
(項目14)
10mg/日と500mg/日との間の連続静脈内注入の単回投薬量の非経口投与のための投薬処方物である、項目7に記載の処方物。
(項目15)
30mgのプラミペキソールを含む、項目13に記載の処方物。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
本明細書で用いられるとき、「神経回復」は、神経欠損、網膜機能、および/または運動機能における改善をいう。
【0018】
本明細書で用いられるとき、化合物の「アナログ」は、例示によると、構造においてもう1つに類似しているが、必ずしも異性体でない化合物である(例えば、5−フルオロウラシルは、チミンのアナログである)。
【0019】
本明細書で用いられるとき、化合物の「誘導体」は、1つ以上のステップで類似の構造の別の化合物から産生され得る化合物をいう。誘導体は、一般に、親化合物上の1つ以上の官能基の付加および/または改変を含む。
【0020】
本明細書で用いられるとき、「パッケージ挿入物」は、本明細書に記載された種々の疾患または障害の緩和を行うためのキット中の本発明の組成物の有用性を伝達するために用いられる得る刊行物、記録、ダイアグラム、または任意のその他の表現の媒体をいう。必要に応じて、またはそれに代わって、指示書資料が、哺乳動物の細胞または組織中の疾患または障害を緩和する1つ以上の方法を記載し得る。キットのこの指示書資料は、例えば、同定された化合物を含むコンテナに添付され得るか、または同定された化合物を含むコンテナとともに収められる。あるいは、上記指示書材料は、この指示書材料および上記化合物がレシピエントによっと協働して用いられることを意図してコンテナとは別個に収められる。
【0021】
本明細書で用いられるとき、用語「神経保護剤」は、神経変性の進行を防ぐかまたは遅延し、そして/または神経細胞死を防ぐ薬剤をいう。
【0022】
本明細書で用いられるとき、用語「実質的に含まない」は、80%より多い、好ましくは90%より多い、より好ましくは95%より多い、そして最も好ましくは98%より多いエナンチオマー過剰をいう。
【0023】
本明細書で用いられるとき、用語「ハロゲン」または「ハロ」は、臭素、塩素、フッ素、およびヨウ素をいう。
【0024】
本明細書で用いられるとき、用語「ハロアルキル」は、少なくとも1つのハロゲン置換基をもつアルキルラジカル、例えば、塩化メチル、フッ化エチルまたはトリフルオロメチルなどをいう。
【0025】
本明細書で用いられるとき、nが整数である「C−Cアルキル」は、1〜特定された数の炭素原子を有する分岐または直鎖アルキル基を表す。代表的には、C−Cアルキル基は、制限されないで、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどを含む。
【0026】
本明細書で用いられるとき、nが整数である「C−Cアルケニル」は、2〜特定された数の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を有するオレフィン性不飽和分岐または直鎖基を表す。このような基の例は、制限されないで、1−プロペニル、2−プロペニル、1,3−ブタンジエニル、1−ブテニル、ヘキセニル、ペンテニルなどを含む。
【0027】
用語「C−Cシクロアルキル」は、環状アルカンをいう。例示の環状アルカンは、制限されないで、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルを含む。
【0028】
本明細書で用いられるとき、用語「必要に応じて置換され」は、0から4つの置換基をいい、ここで、これら置換基は、各々独立して選択される。独立に選択される置換基の各々は、他の置換基と同じか、または異なり得る。
【0029】
本明細書で用いられるとき、用語「立体異性体」は、同じ結合によって結合された同じ原子で構成されるが、交換可能でない異なる空間的構造を有する化合物をいう。三次元構造は、立体配座と呼ばれる。本明細書で用いられるとき、用語「エナンチオマー」は、それらの分子が互いに重ね合わされない鏡像である2つの立体異性体をいう。本明細書で用いられるとき、用語「光学異性体」は、用語「エナンチオマー」と等価である。用語「ラセミ体」、「ラセミ混合物」または「ラセミ改変」は、エナンチオマーの等しい部の混合物をいう。用語「キラル中心」は、プロキラル中心から区別されるように、4つの異なる基に結合された炭素原子をいう。本明細書で用いられるとき、用語「エナンチオマー濃縮」は、他方に比べて1つのエナンチオマーの量における増加をいう。エナンチオマー濃縮は、キラルカラムを備えたガスクロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーのような、標準的な技法および手順を用いて当業者によって容易に決定される。エナンチオマーペアの分離を行うために必要な、適切なキラルカラム、溶出液および条件の選択は、J.Jacquesら、「Enantomers、Racemates、and Resolutions」、John Wiley and Sons、Inc.、1981に記載される技法のような、当該技術分野で周知の標準的な技法を用いて、当業者の知識内に十分ある。分割の例は、ジアステレオマー塩/誘導体の再結晶化、および/または調製キラルクロマトグフィーを含む。
【0030】
(II.組成物)
(A.テトラヒドロベンザチアゾール)
テトラヒドロベンザチアゾールは以下に示される化学式を有する。
【0031】
【化5】

ここで、R、R、R、およびRは、H、C−Cアルキル、およびC−Cアルケニルからなる群から独立に選択される。1つの実施形態では、NR基は6位にある。別の実施形態では、R、RおよびRはH、RはC−Cアルキル、そしてNR基は6位にある。別の実施形態では、上記化合物は、式Iの一般式を有し、ここで、RおよびRの各々はHであり、そしてRおよびRはHまたはC−Cアルキルである。プラミペキソールは、RおよびRの各々がHであり、そしてRおよびRの1つがHであり、そして他方がn−プロピルである。
【0032】
プラミペキソール(PPX、2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−6−プロピルアミノベンザチアゾール)は、2つの立体異性体:
【0033】
【化6】

として存在する。
【0034】
R(+)プラミペキソールは水溶性であり、そして水性溶液で安定である。
【0035】
1つの実施形態では、上記組成物は、プラミペキソールのR(+)エナンチオマーを、単独またはプラミペキソールのS(−)エナンチオマー、またはその薬学的に受容可能な塩と組み合わせて含む。別の実施形態では、R(+)エナンチオマーのエナンチオマー過剰は、80%より大きく、好ましくは90%より大きく、より好ましくは95%より大きく、そして最も好ましくは99%より大きい。
【0036】
このS(−)エナンチオマーは、ドーパミンレセプターのD2ファミリーの潜在的なアゴニストであり、そしてPDの症候に関する管理で広く用いられている。プラミペキソールの合成、処方、および投与は、Grissらによる米国特許第4,843,086号および同第4,886,812号、ならびにZierenbergらによる同第5,112,842号に記載されている。S(−)PPXは、いくつかのグループによって、ドーパミンニューロンへのMPTP毒性を含む、増加した酸化ストレスの細胞および動物モデルにおいて神経保護的であることが示されている(例えば、Hallらによる米国特許第5,650,420号および同第6,156,777号を参照のこと)。S(−)PPXはまた、パーキンソン病の神経毒素、およびETC複合体Iインヒビターであるメチルピリジニウム(MPP+)によって生成される酸化的ストレスを、インビトロおよびインビボの両方で低減し、そしてMPP+およびその他の刺激によって誘導されるミトコンドリア遷移ポア(MTP)の開放をブロックし得る(Cassarinoら、J.Neurochem.、Jul.、71(1)、295〜301(1998))。PPXの脂肪親和性のカチオン性構造が、ミトコンドリア中へ容易に横切り、しかもこの性質が、PPXの低還元ポテンシャル(320mV)と組み合わさってこれらの所望の神経保護的性質の原因となり得ると考えられる。
【0037】
S(−)PPXでの投薬は、その潜在的なドーパミンアゴニスト性質に起因してヒトにおいては制限され、そしてそれ故、脳における達成可能な薬物レベルを制限する。PPXのR(+)エナンチオマーは、ドーパミンアゴニスト活性をほとんど有していないが(SchneiderおよびMierau、J.Med.Chem.30:494〜498(1987))、S(−)PPXの所望の分子/抗酸化剤性質を保持し得るので、この化合物は、神経変性疾患で起こる細胞死カスケードの活性化および生存率の損失の有効なインヒビターとしての有用性を有し得る。
【0038】
これら化合物は、遊離塩基として投与され得る。しかし、これら化合物は、代表的には、薬学的に受容可能な酸付加塩として投与される。本明細書で用いられるとき、「薬学的に受容可能な塩」は、親化合物が、その酸付加塩を作製することによって改変されているこの化合物の誘導体をいう。薬学的に受容可能な酸付加塩の例は、制限されないで、アミンのような塩基性残基の鉱酸塩または有機酸塩を含む。上記薬学的に受容可能な塩は、例えば非毒性の無機酸または有機酸から生成される親化合物の従来の非毒性の塩、または、四級アンモニウム塩を含む。このような従来の非毒性の塩は、制限されないで、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、また硝酸のように無機酸由来の塩;および酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモ、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸のような有機酸から調製された塩、およびイセチオン酸の塩を含む。
【0039】
上記化合物の薬学的に受容可能な塩は、塩基部分を含む親化合物から、従来の化学的方法によって合成され得る。一般に、このような塩は、これら化合物の遊離の塩基形態を、水中または有機溶媒中、またはこれら2つの混合物中の適切な酸の化学量論量と反応することにより調製され得;一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルが好ましい。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、Lippincott Williams & Wilkins、Baltimore、MD、2000、704頁;および「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties、Selection、and Use」P.Heinrich StahlおよびCamille G.Wermuth編、Wiley−VCH、Weinheim、2002に見出される。
【0040】
本明細書で用いられるとき、「薬学的に受容可能」は、健全な医療判断の範囲内で、過剰の毒性、刺激、アレルギー応答、または合理的な利益/危険率と相応したその他の問題
または合併症を伴わず、ヒトおよび動物の組織と接触する使用に適切であるような化合物、材料、組成物、および/または投薬形態をいう。
【0041】
(B.その他の活性薬剤との組み合わせ)
テトラヒドロベンザチアゾールは、その他の活性化合物と付随して投与され得る。例は、鎮痛薬、抗炎症性薬物、抗ヒスタミン剤、抗酸化剤、ビタミン、抗ウイルス剤、抗生物質、抗血管形成剤、抗嘔吐剤、シアニドおよびシアネートスカベンジャーのようなスカベンジャー、および神経変性障害の処置のために有益であり得るその他の薬物を含む。
【0042】
付随投与により、同一投薬形態中の化合物の同時投与、別個の投薬形態中の同時投与、およびこれら化合物の別個の投与が意味される。
【0043】
(C.キャリア、添加物、および賦形剤)
処方物は、安全および有効と考えられる材料から構成される薬学的に受容可能な「キャリア」を用いて調製され、そして所望されない生物学的副作用または所望されない相互作用なくして個体に投与され得る。この「キャリア」は、活性成分(単数または複数)以外の上記薬学的処方物中に存在するすべての成分である。用語「キャリア」は、制限されないで、希釈剤、バインダー、潤滑剤、崩壊剤、充填剤、および被覆組成物を含む。
【0044】
本明細書で用いられるとき、「キャリア」はまた、可塑剤、色素、着色剤、安定化剤、および滑剤を含み得る被覆組成物のすべての成分を含む。
【0045】
適切な被覆材料の例は、制限されないで、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートのようなセルロースポリマー;ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、ならびに商標名Eudragit(Roth Pharma、Westerstadt、Germany)の名で市販され入手可能であるメタクリル樹脂、Zein、セラック、ならびに多糖を含む。さらに、上記被覆材料は、可塑剤、色素、着色剤、滑剤、安定化剤、ポア形成剤、および界面活性剤のような従来のキャリアを含み得る。
【0046】
上記組成物中に存在する必要に応じた薬学的に受容可能な賦形剤は、制限されないで、希釈剤、バインダー、潤滑剤、崩壊剤、着色剤、安定化剤、および界面活性剤を含む。
【0047】
「充填剤」とも称される希釈剤は、代表的には、実用的なサイズが、錠剤の圧縮またはビーズおよび顆粒の形成によって提供されるように、固形投薬形態の嵩を増加するために必要である。適切な希釈剤は、制限されないで、リン酸二カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥スターチ、加水分解スターチ、アルファ化デンプン、二酸化シリコーン、ケイ酸マグネシウムアルミニウムおよび粉末糖を含む。
【0048】
バインダーは、固形投薬処方物に粘着性質を与え、そしてそれ故、投薬形態の形成後、錠剤またはビーズまたは顆粒が無傷のままであることを確実にするために用いられる。適切なバインダー材料は、制限されないで、スターチ、アルファ化デンプン、ゼラチン、(シュクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースおよびソルビトール)糖、ポリエチレングリコール、ワックス、アラビアゴム、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ビドロキシプロピルセルロース、エチルセルロースを含むセルロスース、ならびにブイガム(veegum)、ならびにアクリル酸コポリマーおよびメタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸ならびにポリビニルピロリドンのような合成ポリマーを含む。
【0049】
潤滑剤は、錠剤製造を容易にするために用いられる。適切な潤滑剤の例は、制限されないで、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセロール、ポリエチレングリコール、タルク、および鉱物油を含む。
【0050】
崩壊剤は、投与の後、投薬形態の崩壊または「解体」を容易にするために用いられ、そして一般に、制限されないで、スターチ、グリコール酸ナトリウムスターチ、カルボキシメチルナトリウムスターチ、カルボキシメチルナトリウムセルロース、アルファ化デンプン、粘土、セルロース、アルギネート、架橋ポリビニルピロリドン(PVP)(GAF Chemical CorpからのPolyplasdone XL)のようなガムまたは架橋ポリマーを含む。
【0051】
安定化剤は、例えば、酸化反応を含む分解反応を阻害または遅延するために用いられる。
【0052】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性の表面活性剤であり得る。適切なアニオン性界面活性剤は、制限されないで、カルボキシレート、スルホネートおよびサルフェートイオンを含む界面活性剤を含む。アニオン性界面活性剤の例は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような長鎖アルキルスルホネートおよびアルキルアリールスルホネートのナトリウム、カリウム、アンモニウム;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのような、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;ビス−(2−エチルチオキシル)−スルホコハク酸のようなジアルキルスルホコハク酸ナトリウム;およびラウリル硫酸ナトリウムのようなアルキルサルフェートを含む。カチオン性界面活性剤は、制限されないで、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウムのような四級アンモニウム化合物、ポリオキシエチレン、およびココナッツアミンを含む。非イオン性界面活性剤は、エチレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルステアレート、ポリグリセリル−4−オレエート、ソルビタンアシレート、スクロースアシレート、PEG−150ラウレート、PEG−400モノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG−1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエステル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、Poloxamer 401、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、およびポリオキシエチレン水素化タロウアミドを含む。両性界面活性剤の例は、N−ドデシル−アラニンナトリウム、N−ラウリル−.β.イミノジプロピオネート、ミリストアムフォアセテート、ラウリルベタインおよびラウリルスルホベタインを含む。
【0053】
所望であれば、上記組成物はまた、湿潤剤または乳化剤、色素、pH緩衝化剤、および保存剤のような少量の非毒性補助物質を含み得る。
【0054】
1つの実施形態では、上記テトラヒドロベンザチアゾールは、薬学的に受容可能なキャリアおよび0.1〜10%のアルブミンともに処方される。アルブミンは緩衝物として機能し、そしてこのテトラヒドロベンザチアゾールの溶解度を改善する。
【0055】
(D.改変された放出処方物)
本明細書に記載される組成物は、改変または持続放出のための処方物であり得る。改変放出組成物の例は、延長放出組成物、遅延放出組成物、および拍動性放出組成物を含む。
【0056】
(i.延長放出処方物)
延長放出処方物は、一般に、例えば、「Remington−−The Science and Practice of Pharmacy」(第20版、Lippincott & Wilins、Baltimore、Md.2000)に記載されるように、拡散または浸透圧システムとして調製される。拡散システムは、代表的には、2つのタイプのデバイス、リザーバーデバイスおよびマトリックスデバイスから構成され、これら両方は、当該技術分野で周知であり、そして記載されている。このマトリックスデバイスは、一般に、上記薬物をゆっくり溶解するポリマーキャリアで錠剤形態に圧縮することにより調製される。マトリックスデバイスの調製において用いられる3つの主要なタイプの材料は、不溶性プラスチック、疎水性ポリマー、および脂肪質化合物である。プラスチックマトリックスは、制限されないで、メチルアクリレート−コ−メチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、およびポリエチレンを含む。親水性ポリマーは、制限されないで、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびCARBOPOL(登録商標)934、およびポリエチレンオキシドを含む。脂肪質化合物は、制限されないで、カルバウナろう、およびグリセリルトリステアレートのような種々のワックスを含む。
【0057】
あるいは、延長放出処方物は、上記投薬形態に、浸透圧システムを用いるか、または半透過性被覆を付与することによって調製され得る。後者の場合には、所望の薬物放出プロフィールは、低透過性被覆材料および高透過性被覆材料を適切な比率で組み合わせることにより達成され得る。
【0058】
上記に記載の異なる薬物放出機構をもつデバイスは、単一ユニットまたは複数ユニットを備える最終形態で組み合わされ得る。複数ユニットの例は、錠剤、ビーズ、顆粒などを含む複数層の錠剤およびカプセルを含む。
【0059】
中間放出部分は、被覆もしくは圧縮プロセスを用いて延長放出コアの頂部上に中間放出層を付与するか、または延長ビーズおよび中間ビーズを含むカプセルのような複数ユニットシステム中のいずれかによって延長放出システムに付加され得る。
【0060】
親水性ポリマーを含む延長放出錠剤は、直接圧縮、湿潤顆粒化、または乾燥顆粒化プロセスのような当該技術分野で一般に公知の技法によって調製される。それらの処方物は、通常、ポリマー、希釈剤、バインダー、および潤滑剤、ならびに活性な薬学的成分を取り込む。この通常の希釈剤は、任意の多くの異なる種類のスターチ、粉末セルロース、特に結晶および微結晶セルロース、フラクトース、マンニトールおよびスクロース、穀物粉および類似の食用粉末のような糖のような不活性粉末化物質を含む。代表的な希釈剤は、例えば、種々のタイプのスターチ、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸または硫酸カルシウム、塩化ナトリウムのような無機塩および粉末化糖を含む。粉末化セルロース誘導体もまた、有用であり得る。代表的な錠剤バインダーは、スターチ、ゼラチン、および、ラクトース、フラクトース、およびグルコースのような糖などの物質を含む。アカシア、アルギネート、メチルセルロース、およびポリビニルピロリドンを含む天然および合成のガムがまた用いられ得る。ポリエチレングリコール、親水性ポリマー、エチルセルロレースおよびワックスがまた、バインダーとして供され得る。潤滑剤は、ダイ中で錠剤および打抜たがねが粘着することを防ぐために錠剤処方物中に必要である。この潤滑剤は、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびカルシウム、ステアリン酸および水素化植物油のようなよく滑る固形分から選択される。
【0061】
ワックス材料を含む延長放出錠剤は、一般に、直接ブレンド法、凝結法、および水分散法のような当該技術分野で公知の方法を用いて調製される。凝結法では、上記薬物は、ワックス材料と混合され、そしてスプレー凝結されるか、または凝結され、篩にかけられ、加工される。
【0062】
(ii.遅延放出投薬形態)
遅延放出投薬形態は、固形投薬形態を、胃の酸環境では不溶性であり、そして小腸の中性環境では可溶性であるポリマーの膜で被覆することにより生成される。
【0063】
遅延放出投薬単位は、例えば、薬物または薬物含有組成物を、選択された被覆材料で被覆することにより調製され得る。この薬物含有組成物は、例えば、カプセル中への取り込みのための錠剤、「被覆されたコア」投薬形態中の内部コアとしての使用のための錠剤、または錠剤もしくはカプセルいずれか中への取り込みのための複数の薬物含有ビーズ、粒子または顆粒であり得る。好ましい被覆材料は、生腐食性の、徐々に加水分解可能な、徐々に水溶性の、そして/または酵素的に分解可能なポリマーを含み、そして従来の「腸溶性」ポリマーであり得る。腸溶性ポリマーは、当業者によって認識されるように、下部胃腸管のより高いpH環境で可溶性になるか、またはこの投薬形態が胃腸管を通過するときゆっくりと腐食し、その一方、酵素によって分解可能なポリマーは、下部胃腸管、特に結腸中に存在する細菌の酵素によって分解される。遅延放出を行うために適切な被覆材料は、制限されないで、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテートおよびカルボシキメチルセルロースナトリウムのようなセルロースポリマー;好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレートおよび/またはメタクリレートから形成されるアクリル酸ポリマーおよびコポリマー、ならびにEudragit(登録商標)L30D−55およびL100−55(pH5.5以上で可溶性)、Eudragit(登録商標)L−100(pH6.0以上で可溶性)、Eudragit(登録商標)S(より高い程度のエステル化の結果としてpH7.0以上で可溶性)、ならびにEudragit(登録商標)NE、RLおよびRS(異なる程度の透過性および膨張性を有する水不溶性ポリマー)を含む、商標名Eudragit(登録商標)(Rohm Pharma;Westerstadt、Germany)の下で市販され入手可能なその他のメタクリル樹脂;ポリビニルピロリドン、ビニルアセテート、ビニルアセテートフタレート、ビニルアセテートクロトン酸コポリマー、およびエチレン−ビニルコポリマー;アゾポリマー、ペクチン、キトサン、アミロースおよびグアーガムのような酵素によって分解可能なポリマー;ゼインおよびセラックを含む。異なる被覆材料の組み合わせもまた、用いられ得る。異なるポリマーを用いる複数被覆もまた付与され得る。
【0064】
特定の被覆材料について好ましい被覆重量は、異なる量の種々の被覆材料で調製された錠剤、ビーズおよび顆粒について個々の放出プロフィールを評価することにより、当業者によって容易に決定され得る。臨床研究からのみ決定されるのは、所望の放出特徴を生成する適用の材料、方法および形態の組み合わせである。
【0065】
上記被覆組成物は、可塑剤、色素、着色剤、安定化剤、滑剤などのような従来の添加剤を含み得る。可塑剤は、通常、被覆の脆弱性を減少するために存在し、そして、一般に、上記ポリマーの乾燥重量に対して約10wt.%〜50wt.%に相当する。代表的な可塑剤の例は、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチン、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジブチルセバケート、トリエチルシトレート、トリエチルアセチルシトレート、ヒマシ油およびアセチル化モノグリセリドを含む。安定化剤は、好ましくは、分散物中の粒子を安定化するために用いられる。代表的には、安定化剤は、ソルビタンエステル、ポリソルベートおよびポリビニルピロリドンのような非イオン性乳化剤である。滑剤は、膜形成および乾燥の間の粘着効果を減少するために推奨され、そして一般に、被覆溶液中のポリマー重量のほぼ25wt.%〜100wt.%に相当する。1つの有効な滑剤はタルクである。ステアリン酸マグネシウムおよびグリセロールモノステアレートのようなその他の滑剤もまた用いられ得る。二酸化チタンのような色素がまた用いられ得る。少量のシリコーン(例えば、シメチコン)のような消泡剤がまた上記被覆組成物に添加され得る。
【0066】
(III.投与の方法)
処方物は、神経変性運動障害および運動失調、痙攣障害、運動神経疾患、ならびに炎症性脱髄障害のような、慢性神経変性疾患に罹患した子供および成人における神経、筋肉(心臓および横紋筋)および/または網膜組織機能を回復するために用いられ得る。障害の例は、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含む。
【0067】
多くの中枢神経系疾患および症状は神経損傷を生じ、そしてこれら症状の各々は、ある程度の機能の回復を提供するために有効量のテトラヒドロベンザチアゾール組成物で処置され得る。神経損傷に至り得る症状は:原発性神経変性疾患;ハンティングトン舞踏病;脳卒中およびその他の低酸素症または虚血プロセス;神経外傷;代謝的に誘導された神経学的損傷;大脳発作からの後遺症;出血性発作;二次的神経変性疾患(代謝的または毒性);パーキンソン病、アルツハイマー病、アルツハイマータイプの老年痴呆(SDAT);加齢関連認識機能不全;または血管性痴呆、多発性梗塞痴呆、レヴィー小体痴呆、または神経変性痴呆を含む。
【0068】
Bennettによる米国特許出願公開第20055/0032856号は、プラミペキソールを含む組成物、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)のような神経変性疾患を処置するためのこのような組成物の使用を記載している。これら組成物は、種々の神経変性疾患に関する徴候を防ぎ、そして/もしくは遅延するか、または軽減するために用いられ得る。これら組成物は、プラミペキソールの2つの立体異性体の1つを含む。1つの実施形態では、これら組成物は、S(−)エナンチオマーを実質的に含まない、R(+)エナンチオマー、または薬学的に受容可能なその塩を含む。これら化合物の神経保護効果は、少なくとも部分的には、3つの機構の少なくとも1つによって神経細胞死滅を防ぐ活性化合物の能力に由来する。第1には、上記テトラヒドロベンザチアゾール類は、パーキンソン病を模倣し得る神経毒素で誘導される反応性酸素種(ROS)の形成を減少し得る(ラット脳においてインビボで、および損傷したミトコンドリアエネルギー産生をもつ細胞においてインビトロでの両方)。このようにして、上記テトラヒドロベンザチアゾール類は、「フリーラジカルスカベンジャー」として機能する。減少した血清ROSレベルは、サリチレートの2,3−ジヒドロキシ安息香酸(2,3DHB)への転換を測定することにより検出され得る(Floydら、J.Biochem.Biophys.Methods、10:221〜235(1984);Hallら、J.Neurochem.、Vol.60、588〜594(1993))。第2には、上記テトラヒドロベンザチアゾール類は、アルツハイマー病およびパーキンソン病のミトコンドリアと相関する減少したΔΨを部分的に回復し得る。第3には、上記テトラヒドロベンザチアゾール類は、アルツハイマー病およびパーキンソン病のミトコンドリア損傷の薬理学的モデルによって生成されるアポトーシス細胞死経路をブロックし得る。
【0069】
用いられるべき用量は、処置されるべき特定の障害、および年齢、体重、健康の全般的状態、症状の重篤度、処置の頻度およびさらなる活性薬剤がテトラヒドロベンザチアゾールと同時投与されるか否かに依存する。個々の活性化合物の量は、当業者に公知の慣用の手順によって容易に決定される。例えば、本明細書中に記載されるテトラヒドロベンザチアゾール類は、0.1〜300mg/kg/日、好ましくは0.5〜50mg/kg/日、そして最も好ましくは1〜10mg/kg/日または30mg/日の用量でNDDでヒトに経口的に投与され得る。経口的に投与される毎日の合計用量は、代表的には10mgと500mgとの間である。あるいは、上記テトラヒドロベンザチアゾール類は、急性の脳損傷をもつヒトに非経口的に10mgと100mgとの間の単回用量で、そして/または10mg/日と500mg/日との間の連続静脈内注入により投与され得る。
【0070】
上記組成物は、その必要のある個体に任意の数の経路によって投与され得、これには、制限なくして、局所的、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜下腔内、脳室内、経皮的、皮下、腹腔内、鼻内、腸、局所、舌下、または直腸手段が含まれる。上記組成物は、NDDにおける神経細胞損失を防ぐため(そしてより詳細には、ALS患者における酸化的ストレスを低減するために)慢性的ベースで経口的に投与され得るか、またはそれは、発作、クモ膜下出血、低酸素症−虚血脳損傷、てんかん重積持続状態、外傷性脳損傷、および低糖症脳損傷から生じるような、急性脳損傷における神経細胞損失の予防のために処方され、そして静脈内に投与される。
【0071】
プラミペキソールのR(+)エナンチオマーを含む薬学的組成物を含むキットが提供される。上記組成物は、即時および/または改変された放出のために処方され得る。パッケージング材料は、箱、瓶、ブリスターパッケージ、トレー、またはカードであり得る。このキットは、患者に、所定の時間に特定の用量、例えば、1日目に第1の用量、2日目に第2のより高い用量、3日目に第3のより高い用量など維持量が達成されるまで摂取するよう指示するパッケージ挿入物を含む。上記化合物は、単一投薬単位、または複数投薬単位でパッケージされ得る。
【実施例】
【0072】
(実施例1.R(+)プラミペキソールの臨床研究)
R(+)プラミペキソールを用いたフェーズIの臨床研究は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)(運動神経細胞の損失から生じる致死性の成人神経変性疾患)をもつ患者で実施された。研究の間に、8週までの間、30mg/日のR(+)プラミペキソールで処置された患者のほぼ半分が、運動機能における改善を報告した。これらの報告は、明瞭に話す能力、再び階段を登る能力を取り戻すこと、およびかれらの四肢、すなわち、手および/または指における改善された運動技能のようなことを含んだ。このデータは、単に機能の損失を遅延するのではなく、R(+)プラミペキソールが、そうでなければ急速に進行する神経変性疾患において、機能を改善し、そして回復することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2013−14629(P2013−14629A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−233610(P2012−233610)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【分割の表示】特願2008−527061(P2008−527061)の分割
【原出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(501149684)ユニバーシティ オブ バージニア パテント ファウンデーション (35)
【Fターム(参考)】