説明

RAGEのリガンド結合部位及びその使用

【課題】後生的グリケーション最終産物(RAGE)受容体Vドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する単離されたペプチドを提供すると共にそれを用いた治療方法を提供する。
【解決手段】アミノ酸配列A-Q-N-I-T-A-R-I-G-E-P-L-V-L-K-C-K-G-A-P-K-K-P-P-Q-R-L-E-W-Kを有する単離されたペプチドを調製する。これはRAGEのVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する。前記ペプチド又は物質が、後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドとの相互作用を阻害することができ、治療組成物としては、前記ペプチド又は物質が、後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドの相互作用を阻害するのに有効な量を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国出願番号第08/948,131号の優先権を主張するものであり、その内容は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】
ここで開示する本発明は、保健社会福祉省からのUSPHSグラントAG00690、AG00603、HL56881の下で政府の支援により行われた。従って、米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
本出願を通して、著者および日付により幾つかの刊行物が参照されている。これら刊行物の完全な引用は、明細書の末尾、すなわち実験操作の部の直前であり、請求の範囲の直前に、アルファベット順で掲載されている。これら刊行物の開示内容の全ては、参照により本明細書の開示内容の一部とされ、本明細書に記載されクレームされた発明の日付において当業者に公知なものとして、当該技術状況をより完全に説明している。
【0004】
虚血性心疾患は、総人口、とりわけ糖尿病の患者における罹患および死亡の主原因である。成人の糖尿病患者における冠状動脈疾患の罹患率は、55%もの高さである(Robertson and Strong, 1986)。実際、フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study)のデータより、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)における心臓血管疾患に由来する死亡率は、非糖尿病のコントロール患者と比較して、糖尿病男性では2倍以上であり、糖尿病女性では4倍以上であることが実証されている(Kannel and McGee, 1979)。糖尿病患者におけるアテローム性動脈硬化症は、罹患率の高さに加えて、明らかに進行が早く且つ広範囲にわたることが研究により示された。ある一連の検死において、例えば、糖尿病の患者は、左前下降冠状動脈の重い疾患を有する率が高いこと(Wallerら, 1980)、二および三血管(two and three-vessel)疾患の発生率が高いこと(Crall and Roberts, 1978)、そしてアテローム性動脈硬化症病変の分布範囲が広いこと(Hambyら, 1976)が見出された。これらの発見は、症候性患者における冠状血管造影撮影により確認された(Pyoralaら, 1978)。
【0005】
糖尿病の状態(setting)における加速性アテローム性動脈硬化症の理由は、幾つもある。しかし、異常脂血症、高血圧および肥満を治癒した後でも、糖尿病患者は、非糖尿病患者と比べて心臓血管疾患に過度のリスクを有することが、多変量解析研究により示された(Kannel and McGee, 1979)。例えば、トータルで115,000人の女性のうち1,500人の糖尿病患者のナースの健康研究(Nurses’ Health Study)において、心臓血管疾患の発症は、コレステロールのレベルに関係なく糖尿病患者では5倍高かった(Mansonら, 1991)。これらのデータは、糖尿病患者に特異的な要素が重要な役割を果たすことを示唆している。
【0006】
アルツハイマー病(AD)の病理的な特徴は、細胞内及び細胞外へのタンパク質の蓄積であり、その進行は、終局的な神経系の機能不全及び臨床的な痴呆と密接に相関している(レビューには、Goedert, 1993; Haass et al., 1994; Kosik, 1994; Trojanowski et al., 1994; Wischik, 1989を参照されたい)。ADにおける細胞外沈着物の主成分であって、老人/散在斑と脳血管系の何れにもみられるアミロイド-βタンパク質(Aβ)は、幾つかの証拠によって示されるように、細胞の機能に活発に影響を与える。Aβは、軸索の成長を促進し、反応性酸素中間体(ROI)を産生し、細胞の酸化的ストレスを引き起こし、神経への細胞毒性を生じせしめ、ミクログリアの活性化を促進することが示された(Behl et al., 1994; Davis et al., 1992; Hensley ,et al., 1994; Kon, et al., 1990; Koo et al., 1993; Loo et al., 1993; Meda et al., 1995; Pike et al., 1993; Yankner et al., 1990; Meda et al., 1995; Pike et al., 1993; Yankner et al., 1990;)。Aβがこれらの多彩な細胞への効果を誘導するために、細胞表面は、Aβを繋ぎ止める結合タンパク質を含有しているのかもしれない。このような状況の下、幾つかの細胞関連タンパク質と硫酸化されたプレテオグリカンが、Aβと相互作用し得る。これらには、サブスタンスP受容体、セルピン−酵素複合体(SEC)受容体、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質J(クラステリン)、トランスチレチン、α-1抗キモトリプシン、β-アミロイド前駆体タンパク質、スルフォネート/ヘパリンサルフェート(Abraham et al., 1988; Fraser et al., 1992; Fraser et al., 1993; Ghisc et al., 1993, Joslin et al., 1991; Kimura et al., 1993; Kisilevsky et al, 1995; Strittmatter et al., 1993a; Strittmatter et al., 1993b; Schwarzman et al, 1994; Snow et al., 1994; Yankner et al., 1990)。これらのうち、サブスタンスP受容体とSEC受容体は、Aβのための神経細胞表面受容体として機能しているかもしれないが、これを直接実証する証拠はない(Fraser et al., 1993; Joslin et al., 1991; Kimura et al., 1993; Yankner et al., 1990)。事実、サブスタンスP受容体の役割には議論があり、Aβ単独で受容体と相互作用するのか、あるいは共同刺激因子も必要なのかどうかは知られておらず(Calligaro et al., 1993; Kimura et al., 1993; Mitsuhasi et al., 1991)。SEC受容体は、まだ完全に特性決定されていない。アミロイドβペプチド(Aβ)は、主として、細胞への酸化的ストレスの誘導に関与する神経毒性効果のために、アルツハイマー病(AD)の病理の中心を成している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、後生的グリケーション最終産物(RAGE;advanced glycation endproduct)受容体のVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する単離されたペプチドを提供する。本発明は、アミノ酸配列A-Q-N-I-T-A-R-I-G-E-P-L-V-L-K-C-K-G-A-P-K-K-P-P-Q-R-L-E-W-K(配列番号1)を有する単離されたペプチドも提供する。本発明は、治療的有効量の、RAGEのVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する単離されたペプチドと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。本発明は、細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドとの相互作用を阻害する方法であって、細胞をペプチド又は機能的に等価な物質と接触させることを含み、前記ペプチド又は物質が後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドとの相互作用を阻害することができ、前記ペプチド又は物質は、後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドとの相互作用を阻害するのに有効な量で存在する方法を提供する。
【0008】
本発明は、細胞上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドとの相互作用を伴う症状を有する患者を治療する方法であって、後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドとの相互作用を阻害し得るペプチド又は機能的に等価な物質を患者に投与することを含み、前記ペプチド又は物質が、前記受容体とアミロイドβペプチドとの相互作用を阻害するのに有効な量で存在することによって、前記患者を治療する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】sRAGEで処置したマウスにおける歯槽の骨喪失の測定を示す図(実験操作の例2を参照。統計学的分析=グループI vs. グループ2−p=0.002;グループI vs.グループIII-p=0.005;グループIII vs.グループIV:p=0.009)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、後生的グリケーション最主産物受容体のVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する単離されたペプチドを提供する。本発明は、疾病を伴った患者の症状を治療又は改善する方法であって、前記疾病が、アテローム性動脈硬化症、高血圧、創傷治癒の不良、歯周病、男性の不能、網膜障害、糖尿病、及び糖尿病の合併症であり、ある量の本発明の単離されたペプチド、又はアミロイドβペプチドとRAGEの相互作用を阻害することができ、該相互作用を有効に阻害して前記患者の疾病又は症状を治療又は改善する物質を前記患者に投与することを備えた方法も提供する。該方法は、患者にこのような症状が発症することも防ぎ得る。
【0011】
本発明の幾つかの態様では、RAGE又は可溶性RAGEのVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するペプチドは、例えば、以下のアミノ酸配列である。
【0012】
A-Q-N-I-T-A-R-I-G-E-P-L-V-L-K-C-K-G-A-P-K-K-P-P-Q-R-L-E-W-K
(配列番号1);
G-Q-N-I-T-A-R-I-G-E-P-L-V-L-S-C-K-G-A-P-K-K-P-P-Q-Q-L-E-W-K
(配列番号2);
G-Q-N-I-T-A-R-I-G-E-P-L-M-L-S-C-K-A-A-P-K-K-P-T-Q-K-L-E-W-K
(配列番号3);
D-Q-N-I-T-A-R-I-G-K-P-L-V-L-N-C-K-G-A-P-K-K-P-P-Q-Q-L-E-W-K
(配列番号4)
本発明は、ヒトRAGEの最初の1-112のアミノ酸のアミノ酸配列(ヒトRAGEのVドメインである)に相当する、又はヒトRAGEのVドメインのアミノ酸5-35、又はヒトRAGEのVドメインの他の任意のより小さい部分に相当するアミノ酸配列を有する単離されたペプチドを提供する。
【0013】
本発明の代表的なペプチドには、ヒトsRAGEタンパク質のアミノ酸番号(2-30)、(5-35)、(10-40)、(15-45)、(20-50)、(25-55)、(30-60)、(30-65)、(10-60)、(8-100)、(14-75)、(24-80)、(33-75)、(45-110)に相当するアミノ酸配列を有するペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
【0014】
アミノ酸に対して本明細書で使用する略号は、慣用的に用いられているものである:A=Ala=アラニン;R=Arg=アルギニン;N=Asn=アスパラギン;D=Asp=アスパラギン酸;C=Cys=システイン;Q=Gln=グルタミン;E=Glu=グルタミン酸;G=Gly=グリシン;H=His=ヒスチジン;I=Ile=イソロイシン;L=Leu=ロイシン;K=Lys=リシン;M=Met=メチオニン;F=Phe=フェニルアラニン;P=Pro=プロリン;S=Ser=セリン;T=Thr=トレオニン;W=Trp=トリプトファン;Y=Tyr=チロシン;V=Val=バリン。アミノ酸は、L又はDアミノ酸であり得る。アミノ酸は、ペプチドの半減期が増加するように、又はペプチドの効力が増大するように、又はペプチド生物利用度が増大するように改変された合成アミノ酸によって置換してもよい。
【0015】
治療的有効量の、後生的グリケーション最終産物受容体(RAGE)のVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するペプチドと薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物も本発明に属する。担体は、賦形剤、エアロゾル、局所担体、水溶液、非水溶液、又は固相担体であり得る。担体は、ポリマー又は歯磨き粉であり得る。薬学的組成物は、第二のペプチドに結合されたRAGEのVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するペプチドを含み得る。前記第二のペプチドは、アルブミン、グロブリン、又は一群のペプチドから選択されるペプチドであり得る。該群の各ペプチドは、異なる長さのペプチドを含み、各ペプチドの配列が、ヒトsRAGEタンパク質のアミノ酸番号31〜アミノ酸番号281の中から取られた任意のアミノ酸の配列に相当する。
【0016】
治療的有効量の、抗体又はその一部に結合された後生的グリケーション最終産物受容体のVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するペプチドを含む薬学的組成物も本発明に属する。ある態様では、前記抗体は、後生的グリケーション最終産物受容体に特異的に結合し得る。前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体であり得る。前記抗体の一部又は断片は、Fab断片又はFc断片が含まれ得る。前記抗体の一部又は断片には、相補性決定領域又は可変領域が含まれ得る。
【0017】
本発明は、受容体が細胞の表面上に存在するときに、アミロイドβペプチドの後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害する方法であって、ある量の、アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害するのに有効な前記相互作用の阻害剤を前記細胞と接触せしめることを備えた方法も提供する。
【0018】
前記細胞は、真核細胞であり得る。前記細胞は、患者の細胞であり得る。前記患者は、ヒトであり得る。前記細胞は、神経細胞、内皮細胞、グリア細胞、ミクログリア細胞、平滑筋細胞、体細胞、骨髄細胞、肝細胞、腸細胞、生殖細胞、筋細胞、単核貪食細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、リンパ球細胞、糸球体間質細胞、網膜上皮細胞、網膜血管細胞、神経節細胞、又は幹細胞であり得る。前記細胞は、本明細書において、明示されていない他の種類の細胞でもあり得る。前記細胞は、任意のヒトの細胞であり得る。前記細胞は、正常な細胞、活性化された細胞、新生物細胞、病気を持った細胞、又は感染した細胞であり得る。
【0019】
ある態様では、前記阻害剤は、ペプチド、ペプチド模倣化合物(peptidomimetic compound)、核酸分子、小分子、有機化合物、無機化合物、又は抗体若しくはその断片を含む。前記阻害剤は、後生的グリケーション最終産物受容体のVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する単離されたペプチドであり得る。前記阻害剤は、本明細書に記載されている任意の化合物又は組成物であり得る。
【0020】
前記阻害剤は、後生的グリケーション最終産物受容体の可溶性Vドメインであり得る。前記阻害剤は、抗体又はその断片を含み得る。前記抗体は、後生的グリケーション最終産物受容体に特異的に結合し得る。前記抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体又は抗体の断片であり得る。抗体断片には、Fab又はFc断片が含まれ得る。前記抗体の断片には、相補性決定領域が含まれ得る。
【0021】
ある態様では、前記阻害剤は、アミロイドβペプチドに特異的に結合することができる。
【0022】
本発明は、神経細胞の変性を阻害する方法であって、細胞をアミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用の阻害剤と接触せしめて、前記相互作用を阻害することによって、前記神経細胞の変性を阻害することを備えた方法も提供する。
【0023】
別の態様では、本発明は、細胞上にアミロイドβペプチドの原繊維が形成されるのを阻害する方法であって、細胞をアミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用の阻害剤と接触せしめて、前記相互作用を阻害することによって、細胞上に前記アミロイドβペプチドの原繊維が形成されるのを阻害する方法を提供する。
【0024】
別の態様では、本発明は、細胞外でアミロイドβペプチドが集合して原繊維に
なるのを阻害する方法であって、あるアミロイドβペプチドと別のアミロイドβペプチドとの相互作用を阻害する阻害剤に前記アミロイドβペプチドを接触させて、前記相互作用を阻害することにより、アミロイドβペプチドが細胞外で集合して原繊維になるのを阻害することを備えた方法を提供する。
【0025】
別の態様では、本発明は、アミロイドβペプチドが細胞の表面上に凝集するのを阻害する方法であって、前記アミロイドβペプチドを、前記アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害する阻害剤と接触させて前記相互作用を阻害することによって、細胞の表面上にアミロイドβペプチドが凝集するのを阻害することを備えた方法を提供する。
【0026】
別の態様では、本発明は、ミクログリア細胞が老人斑の中に浸潤するのを阻害する方法であって、前記ミクログリア細胞を、アミロイドβペプチドとミクログリア細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害する阻害剤と接触させて前記相互作用を阻害することによって、老人斑の中にミクログリア細胞が浸潤するのを阻害することを備えた方法を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、アミロイドβペプチドによってミクログリア細胞が活性化するのを阻害する方法であって、前記ミクログリア細胞を、アミロイドβペプチドとミクログリア細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害する阻害剤と接触させて前記相互作用を阻害することによって、ミクログリア細胞が活性化することを備えた方法を提供する。
【0028】
別の態様では、本発明は、細胞上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドとの相互作用に伴う症状を有する患者を治療する方法であって、アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る阻害剤を前記患者に投与することを備え、前記阻害剤が、前記アミロイドβペプチドと前記受容体との相互作用を阻害するのに有効な量で存在することによって、前記患者を治療する方法を提供する。
【0029】
別の態様では、前記症状は、糖尿病、アルツハイマー病、老化、腎不全、高脂質アテローム性動脈硬化症、神経細胞毒性、ダウン症候群、頭部外傷に伴う痴呆、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アミロイドーシス、自己免疫疾患、炎症、腫瘍、癌、男性の不能、創傷治癒、歯周病、ニュロパシー(neuopathy)、網膜症、ネフロパシー、又は神経の変性である。前記患者は、哺乳動物であり得る。前記哺乳動物は、ヒトであり得る。
【0030】
前記投与には、病変部位内、腹腔内、筋肉内、又は静脈内注射;注入;リポソームを介した輸送;局所、鼻腔、経口、肛門、皮下、膣、舌下、尿道、経皮、鞘内、眼、又は耳への投与が含まれ得る。前記症状は、前記患者の神経細胞の変性を伴い得る。前記症状は、アミロイドβペプチド原繊維の形成を伴い得る。前記症状は、アミロイドβペプチドの凝集、ミクログリア細胞の老人斑の中への浸潤、又はアミロイドβペプチドによるミクログリア細胞の活性化を伴い得る。
【0031】
前記阻害剤は、実質的に、後生的グリケーション最終産物受容体のVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するペプチドの一部からなり得る。
【0032】
前記阻害剤は、後生的グリケーション最終産物受容体のVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するペプチドと担体とを含む薬学的組成物を含み得る。
【0033】
本発明は、ある物質が、アミロイドβペプチドが細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体のVドメインと結合するのを阻害する能力を評価する方法であって、
(a)前記細胞を前記物質とアミロイドβペプチドに接触させることと;
(b)前記細胞に結合したアミロイドβペプチドの量を決定することと;
(c)ステップ(b)で決定した、結合したアミロイドβペプチドの量と前記物質の
非存在下で決定した量を比較して、前記物質が、アミロイドβペプチドが前
記細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体のVド
メインに結合するのを阻害する能力を評価することと;
を備えた方法を提供する。
【0034】
ある態様では、前記細胞は、前記物質とアミロイドβペプチドは同時に接触される。別の態様では、前記細胞は、アミロイドβペプチド及び前記物質と接触される。前記細胞は、神経細胞、内皮細胞、グリア細胞、ミクログリア細胞、平滑筋細胞、体細胞、骨髄細胞、肝細胞、腸細胞、生殖細胞、筋細胞、単核貪食細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、リンパ球細胞、糸球体間質細胞、網膜上皮細胞、網膜血管細胞、神経節細胞、又は幹細胞であり得る。
【0035】
前記物質には、ペプチド、ペプチド模倣化合物、核酸分子、小分子、有機化合物、無機化合物、又は抗体若しくはその断片が含まれ得る。前記物質は、後生的グリケーション最終産物受容体のVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する単離されたペプチドであり得る。ある実施態様では、前記物質は、アミノ酸配列A-Q-N-I-T-A-R-I-G-E-P-L-V-L-K-C-K-G-A-P-K-K-P-P-Q-R-L-E-W-K(配列番号1)を有するペプチドである。
【0036】
別の態様では、前記物質は、アミノ酸配列A-Q-N-I-T-A-R-I-G-E(配列番号5)を有するペプチドである。別の態様では、前記物質は、後生的グリケーション最終産物受容体の可溶性Vドメインであり得る。前記物質は、後生的グリケーション最終産物受容体の可溶性細胞外部分でもあり得る。前記物質は、抗体若しくはその断片であり得、又は抗体若しくはその断片に連結され得る。前記抗体は、後生的グリケーション最終産物受容体に特異的に結合することができてもよい。前記抗体は、モノクローナル抗体であり得る。前記抗体は、ポリクローナル抗体であり得る。抗体断片には、Fab又はFc断片が含まれ得る。前記抗体の断片には、相補性決定領域が含まれ得る。
【0037】
ある態様では、前記物質は、アミロイドβペプチドに特異的に結合できる。別の態様では、前記物質は、固相支持体に結合される。別の態様では、前記物質は、細胞の表面上に発現される。
【0038】
本発明は、細胞中のNF-kB遺伝子の活性化を阻害する方法であって、前記細胞を、アミロイドβペプチドと細胞上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害する阻害剤に接触させて前記相互作用を阻害することにより、前記細胞中のNF-kBの活性化を阻害することを備えた方法を提供する。
【0039】
本発明は、患者の歯周病を抑制する方法であって、創傷治癒を促進するのに有効な量のsRAGEを含む薬学的組成物を、前記患者に局所投与することにより、歯周病を抑制することを備えた方法も提供する。前記薬学的組成物は、歯磨き粉の中にsRAGEを含み得る。
【0040】
本発明は、後生的グリケーション最終産物受容体が細胞の表面上に存在するときに、後生的グリケーション最終産物と前記受容体との相互作用を阻害する方法であって、前記後生的グリケーション最終産物と前記後生的グリケーションの受容体との相互作用を阻害するのに有効な量の、前記相互作用の阻害剤に、前記細胞を接触させることを備えた方法も提供する。前記細胞は、内皮細胞、血管平滑筋細胞、神経細胞、マクロファージ、リンパ球、網膜血管細胞、網膜神経細胞、歯肉に付随した細胞、皮膚に付随した細胞、糸球体間質細胞、又は結合組織細胞であり得る。後生的グリケーション最終産物(AGE)は、ペントシジン、カルボキシメチルリシン、カルボキシエチルリシン、ピラルリンズ(pyrallines)、イミジザロン(imidizalone)、メチルグリオキサール、エチルグリオキサールであり得る。
【0041】
本発明は、細胞上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体と後生的グリケーション最終産物との相互作用を伴う症状を有する患者を治療する方法であって、前記後生的グリケーション最終産物受容体と前記後生的グリケーション最終産物との相互作用を阻害し得る阻害剤を患者に投与することを備え、前記阻害剤が、前記受容体と前記後生的グリケーション最終産物との相互作用を阻害するのに有効な量で存在することによって、前記患者を治療する方法も提供する。
【0042】
前記症状は、糖尿病に伴い得る。前記症状は、糖尿病、糖尿病に伴う腎不全、高脂質アテローム性動脈硬化症、神経細胞毒性、ダウン症候群、頭部外傷に伴う痴呆、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アミロイドーシス、自己免疫疾患、炎症、腫瘍、癌、男性の不能、創傷治癒、歯周病、ニュロパシー(neuopathy)、網膜症、ネフロパシー、又は神経の変性であり得る。後生的グリケーション最終産物(AGE)は、ペントシジン、カルボキシメチルリシン、カルボキシエチルリシン、ピラルリンズ(pyrallines)、イミジザロン(imidizalone)、メチルグリオキサール、エチルグリオキサールであり得る。
【0043】
本発明の前記物質又は阻害剤には、(後生的グリケーション最終産物の可溶性受容体)sRAGEのVドメインのアミノ酸番号1-30に相当するアミノ酸配列を有するペプチドが含まれ得る。sRAGEは、ヒト、マウス、ラット、又はウシのsRAGEであり得る。本発明の前記物質は、阻害剤であり得る。前記物質は、sRAGEのVドメインのアミノ酸番号1-30からなり得る。前記物質は、RAGEタンパク質のVドメインを具備するアミノ酸番号1-112からなり得る。前記物質は、第二のペプチドに結合されたsRAGEのVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するペプチドを含み得る。前記第二のペプチドは、アルブミン、グロブリン、又は一群のペプチドから選択されるペプチドであり得る。該群の各ペプチドは、異なる長さのペプチドを含み、前記各ペプチドの配列は、ヒト、ウシ、マウス、又はラットsRAGEタンパク質のアミノ酸番号31〜アミノ酸番号281の中から取られた任意のアミノ酸の配列に相当する。
【0044】
本発明では、前記細胞は、神経細胞、内皮細胞、グリア細胞、ミクログリア細胞、平滑筋細胞、体細胞、骨髄細胞、肝細胞、腸細胞、生殖細胞、筋細胞、単核貪食細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、又は幹細胞であり得る。本発明は、ここに明記されていない他の種類の細胞も含み得る。前記細胞は、患者の中の任意の細胞であり得る。前記細胞は、酸化的ストレスの下にあり得る。
【0045】
前記物質は、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸、又は小分子であり得る。「ペプチド」及び「ポリペプチド」という用語は、本明細書を通じて、互換的に使用する。前記ペプチドは、sRAGEのアミノ酸1からアミノ酸30の配列の少なくとも一部であり得る。前記ペプチドは、実質的に、配列番号1、2、3、4、又は5のアミノ酸配列からなるペプチドであり得る。前記ペプチドは、sRAGEの結合部位を模倣するのに必要なアミノ酸領域を保持した、配列番号1又は2より小さいものであり得る。前記ペプチドは、RAGEタンパク質のアミノ酸1-112を含み得る。前記ペプチドは、実質的に、RAGEタンパク質のVドメインからなり得る。
【0046】
前記物質は、担体に結合させ得る。特異的に標的化された輸送を行うために、
前記ペプチド又は物質は、Fab又はFc断片のような抗体に連結させ得る。
【0047】
前記物質は、後生的グリケーション最主産物受容体の可溶性Vドメインであり得る。前記物質は、アミロイドβペプチドに特異的に結合することができてもよい。前記物質は、前記後生的グリケーション最終産物受容体が相互作用するアミロイドβペプチドの部位に結合し得る。前記物質は、後生的グリケーション最終産物受容体の可溶性細胞外部分、後生的グリケーション最終産物受容体に特異的に結合できる抗体又はその断片であり得る。前記抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体であり得る。抗体の一部は、Fab、又は相補性決定領域、又は可変領域であり得る。
【0048】
本発明のある態様では、前記ペプチドは、天然に存在する後生的グリケーション最終産物の可溶性受容体の少なくとも一部を含み得る。前記ペプチドは、天然に存在する後生的グリケーション最終産物の可溶性受容体の「V」ドメインのアミノ酸1-30、又はVドメインの任意のアミノ酸配列を含み得る。前記ペプチドは、sRAGEの可溶性Vドメインであり得る。前記ペプチドは、sRAGEの可溶性Vドメインであり得る。
【0049】
前記ポリペプチドは、ペプチド模倣物、合成ポリペプチド、又はポリペプチド類縁体であり得る。前記ポリペプチドは、天然には見出されない旋光性を有する非天然ポリペプチド、すなわちDアミノ酸(D-amino acids)又はLアミノ酸(L-amino acids)であり得る。
【0050】
前記ポリペプチドは、天然のポリペプチドの誘導体、修飾ポリペプチド、標識ポリペプチド、非天然ペプチドを含むポリペプチドであり得る。前記ペプチド模倣物は、アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る化合物を決定するために、ペプチド模倣物である様々な化合物の大規模なライブラリーをスクリーニングすることによって同定し得る。
【0051】
本発明のペプチド又はポリペプチドは、配列番号1-5で表される配列に変化を有していてもよい。本発明のペプチドは、ペプチドの機能にマイナス方向の影響を与えず、ペプチド機能をプラス方向に増加させ得る(例えば、ペプチドの効力を増加させる)変化を配列中に含み得る。sRAGEのVドメインの最初の30アミノ酸(1-30)のヒトの配列(配列番号1)へのこのような変化の例を以下に列記して例示する。
【0052】
(a)6番目のLアラニンをDアラニンに置換する;
(b)15番目のLリシンをDリシンに置換する;
(c)6番目のLアラニンをDアラニンに置換し、且つ15番目のLリシンをDリシンに置換する;
(d)Vドメインの1-5番目のアミノ酸を省略して、N−アミノ末端基をLアラニ
ンにする;
(e)Vドメインの1-5番目のアミノ酸を省略して、N−アミノ酸をDアラニンに
する;
(f)配列番号1のVドメインのアミノ酸番号「30」位をLリシンからDリシンに
置換する;
(g)Vドメインの30位のLリシンをLアルギニンに置換する;
(h)Vドメインの30位のLリシンをLアルギニンに置換し、カルボキシ末端基
としてグリシンを付加して、31アミノ酸からなるペプチドを作成する;
(i)sRAGEのVドメインの前記6-30のアミノ酸配列を含有するアミノ酸ペプチ
ドの30位のLリシンをLアルギニンに置換する;
(j)sRAGEのVドメインの前記6-30のアミノ酸配列を含有するアミノ酸ペプチ
ドの30位のLリシンをLアルギニンに置換し、カルボキシ末端基としてグリ
シンを付加し、25アミノ酸配列のペプチドを作成する;
(k)Vドメインの前記6-30アミノ酸配列の30位のLリシンをDリシンに置換す
る;
(l)Vドメインの前記6-30のアミノ酸配列の30位のLリシンをDリシンに置換
し、新しい26アミノ酸ペプチドのC末端にLアラニンを付加する;
(m)Vドメインの30アミノ酸ペプチド、sRAGEのVドメインの前記6-30の13
位のLバリンをDバリンに置換する;
(n)sRAGEのVドメインの前記6-30である、25アミノ酸ペプチドの13位のL
バリンをDバリンに置換する;
(o)30アミノ酸ペプチドの6位のLアラニンをDアラニンに置換し、Vドメイン
の30アミノ酸の13位のLバリンをDバリンに置換する;
(p)sRAGEのVドメインの前記6-30である、25アミノ酸ペプチドの6位のLア
ラニンをDアラニンに置換し、13位のLバリンをDバリンに置換する;
(q)30位のカルボン酸を介して、アルブミン、グロブリン、又はヒト、マウス、
ラット、又はウシsRAGEタンパク質の31〜281位の中に含まれるアミノ酸か
ら構成された種々の長さのペプチドで誘導化された上記(a)-(p)にリストさ
れたペプチド。
【0053】
sRAGEに由来するポリペプチドの天然に存在する形態に加えて、本発明は、配列番号1のペプチドの機能と同等、又はより強力な、又はよりプラスの機能を有するsRAGEのポリペプチド類縁体のような他のポリペプチドも含む。このような類縁体には、sRAGEの断片が含まれる。Altonら(WO 83/04053)の公開された出願の操作に従えば、1以上の残基の同一性又は位置の点で、本明細書に明記されているものと異なる一次構造(primary conformation)(例えば、置換、末端及び中間への付加、及び欠失)を有するポリペプチドをコードする微生物発現用の遺伝子を容易にデザインし、製造することができるであろう。あるいは、cDNA及びゲノム遺伝子の修飾は、周知の位置指定突然変異誘発手法によって、容易に達成することができ、sRGEポリペプチドの類縁体及び誘導体を作成するために利用し得る。このような産物は、sRAGEの生物学的特性の少なくとも一つを共有するが、他の特性については異なっていてもよい。例として、本発明の産物には、例えば欠失によって短縮されたもの、又は加水分解に対してより安定なもの(それ故、天然のものよりも顕著な、又は長期の効果を有し得る);又は一以上の潜在的なOグリコシル化及び/又はNグリコシル化部位を除去又は付加するように改変されたもの、又は、例えば、欠失された、あるいはアラニン若しくはセリン残基によって置換された一以上のシステイン残基を有し、微生物系から活性な型として、より容易に単離され得るもの;又は一以上のチロシン残基がフェニルアラニンで置換され、標的細胞上の標的タンパク質又は受容体に、より結合し易く、又はし難いものが含まれる。sRAGE中の連続したアミノ酸配列又は二次コンフォメーションの一部のみが重複したポリペプチド断片であって、sRAGEのある特性を有するが、他の特性を有さなくてもよい断片も含まれる。治療的な有用性又はsRAGE拮抗アッセイ等、その他の有用性を有するために、本発明の一以上のポリペプチドの何れもが活性を必要とするわけではないということを銘記しなければならない。競合的なアンタゴニストは、例えば、sRAGEの過剰生産の場合に極めて有用であり得る。
【0054】
本発明のポリペプチド類縁体への適用性には、天然のタンパク質、糖タンパク質、及び核タンパク質中のアミノ酸配列が、実質的に重複した合成ペプチドの免疫特性の報告がある。より具体的には、比較的低分子量のポリペプチドが、ウイルス抗原、ポリペプチドホルモン等のような生理学的に重要なタンパク質の免疫反応と持続時間及び程度が類似した免疫反応に参加することが示された。このようなポリペプチドの免疫反応の中には、ペプチドホルモンの二次構造を概ね共有するが、それらの一次構造コンフォメーションは共有しなくてもよい合成ペプチドの生物学的及び免疫学的特性に関係して、免疫学的に活性な動物に、特異的な抗体の形成を刺激する[Lerner et al., 1981; Ross et al., 1981; Walter et al., 1981; Wong et al., 1982; Baron et al., 1982; Dressman et al., 1982; and Lerner, Scientific American, 1983. Kaiser et al., 1984も参照]ことが含まれる。
【0055】
本発明のポリペプチドは、少なくとも一部分が天然でなくてもよいペプチド模倣化合物であり得る。ペプチド模倣化合物は、sRAGEのアミノ酸配列の一部を模倣した小分子であり得る。前記化合物は、模倣のために、増加した安定性、効力、効果(potency)、生物利用性を有し得る。さらに、前記化合物は、減少した毒性を有し得る。前記ペプチド模倣化合物は、増大した腸粘膜透過性を有し得る。前記化合物は、合成的に調製し得る。本発明の化合物には、L、D、DL、又は非天然アミノ酸、α、α二置換アミノ酸、Nアルキルアミノ酸、乳酸(アラニンの糖電子的類縁体)が含まれ得る。前記化合物のペプチド骨格は、PSI-[CH=CH]で置換された少なくとも一つの結合を有してもよい(Kempf et al. 1991)。さらに、前記化合物には、トリフルオロチロシン、p-Cl-フェニルアラニン、p-Br-フェニルアラニン、ポリ-L-プロパルギルグリシン、ポリ-D,L-アリルグリシン、又はポリ-L-アリルグリシンが含まれ得る。
【0056】
本発明のある態様は、患者の加速されたアテローム性動脈硬化を抑制する生物学的活性を有するペプチド模倣化合物であり、該化合物は、適切な模倣で置換された結合、ペプチド骨格、又はアミノ酸成分を有する。適切なアミノ酸模倣物であり得る非天然アミノ酸の例には、βアラニン、L-α-アミノ酪酸、L-v-アミノ酪酸、L-α-アミノイソ酪酸、L-ε-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、システイン(acetamindomethyl)、N-ε-Boc-N-α-CBZ-L-リシン、N-ε-Boc-N-α-Fmoc-L-リシン、L-メチオニンスルフォン、L-ノルロイシン、L-ノルバリン、N-α-Boc-N-δCBZ-L-オルニチン、N-δ-Boc-N-α-CBZ-L-オルニチン、Boc-p-ニトロ-L-フェニルアラニン、Boc-ヒドロキシプロリン、Boc-L-チオプロリンが含まれる(Blondelle, et al. 1994;Pinilla, et al. 1995)。
【0057】
本発明の方法において、前記物質は、ペプチド、ペプチド模倣物、有機分子、糖質、脂質、抗体、又は核酸を含み得る。本発明のペプチドは、後生的グリケーション最終産物ペプチド又はその一部、後生的グリケーション最終産物ペプチドの可溶性受容体又はその一部を含み得る。本発明のペプチドは、sRAGEタンパク質の最初の112アミノ酸の任意の一部を含み得る。本発明のペプチドは、可溶性RAGEタンパク質のVドメインを含み得る。本発明のペプチドは、可溶性RAGEタンパク質のVドメインのより小さな部分であり得る。本発明のペプチドは、ヒトRAGE、マウスRAGE、ラットRAGE、ウシRAGE、又は魚のRAGEのVドメインに相当するペプチドであり得る。
【0058】
本発明の方法において、前記物質は、ペプチド(ポリペプチド)、ペプチド模倣物、有機分子、糖質、脂質、抗体、又は核酸であり得る。ポリペプチドの場合、前記ポリペプチドは、後生的グリケーション最終産物(AGE)ポリペプチド又はその一部、後生的グリケーション最終産物ポリペプチドの受容体又はその一部、後生的グリケーション最主産物ポリペプチドの可溶性受容体又はその一部、例えば可溶性RAGE又は組換えポリペプチドであり得る。前記ポリペプチドは、sRAGEのVドメイン、又はsRAGEのVドメインのアミノ酸1-30であり得る。本発明のポリペプチドは、後生的グリケーションポリペプチド又はその一部、後生的グリケーション最終産物ポリペプチドの受容体又はその一部、後生的グリケーション最主産物ポリペプチドの可溶性受容体又はその一部を含み得る。本発明のポリペプチドは、sRAGEタンパク質の最初の112アミノ酸の任意の一部を含み得る。本発明のポリペプチドは、可溶性RAGEタンパク質のVドメインを含み得る。本発明のポリペプチドは、可溶性RAGEタンパク質のVドメインのより小さい部分であり得る。本発明のポリペプチドは、ヒトRAGE、マウスRAGE、ラットRAGE、ウシRAGE、又は魚のRAGEのVドメインに相当するポリペプチドであり得る。前記ポリペプチドは、化学的に合成してもよく、又は標準的な組換えDNA法によって製造してもよい。抗体の場合には、前記抗体は、抗RAGE抗体又は抗RAGE F(ab’)2断片であり得る。
【0059】
本発明のある態様では、神経細胞の変性を抑制する方法であって、sRAGEのVドメイン又はその一部を含む物質であって、前記神経細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドの相互作用を阻害し得る物質に前記細胞を接触させることを備えた方法である。
【0060】
本発明の別の態様は、細胞上にアミロイドβペプチドの原繊維が形成されるのを阻害する方法であって、前記細胞を、アミロイドβペプチドと前記細胞の表面に存在する後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る物質と接触せしめることを備えた方法である。ある態様では、前記物質は、sRAGEのVドメインのアミノ酸番号1-30を含む。
【0061】
本発明の別の態様は、細胞外でアミロイドβペプチドが集合して原繊維になるのを阻害する方法であって、あるアミロイドβペプチドと別のアミロイドβペプチドとの相互作用を阻害し得る物質に前記アミロイドβペプチドを接触させることを備えた方法である。
【0062】
本発明の別の態様は、アミロイドβペプチドが細胞の表面上に凝集するのを阻害する方法であって、前記アミロイドβペプチドを、アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る物質と接触させることを備えた方法である。
【0063】
本発明の別の態様は、アミロイドβペプチドが細胞の表面上に凝集するのを阻害する方法であって、後生的グリケーション最終産物受容体を、アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る物質と接触させることを備えた方法である。
【0064】
本発明の別の態様は、ミクログリア細胞が老人斑の中に浸潤するのを阻害する方法であって、前記ミクログリア細胞を、アミロイドβペプチドとミクログリア細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る物質と接触させることを備えた方法である。
【0065】
本発明の別の態様は、アミロイドβペプチドによってミクログリア細胞が活性化するのを阻害する方法であって、前記ミクログリア細胞を、アミロイドβペプチドとミクログリア細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る物質と接触させることを備えた方法である。活性化の阻害には、ミクログリア細胞によるサイトカインの産生の減少が含まれ得る。前記相互作用は、細胞表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体へのアミロイドβペプチドの結合であり得る。
【0066】
本発明のある態様は、細胞上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドとの相互作用に伴う症状を有する患者を治療する方法であって、アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る物質を前記患者に投与することを備え、前記物質が、前記アミロイドβペプチドと細胞上に存在する前記後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害するのに有効な量で存在することによって、前記患者を治療する方法である。本態様の症状は、糖尿病、アルツハイマー病、老化、腎不全、高脂質アテローム性動脈硬化症、神経細胞毒性、ダウン症候群、頭部外傷に伴う痴呆、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アミロイドーシス、自己免疫疾患、炎症、癌又は神経の変性であり得る。
【0067】
前記患者は、哺乳動物又は非哺乳動物であり得る。前記患者は、哺乳動物又はヒトであり得る。前記患者は、マウス、ウシ、サル、ウマ、ブタ、又はイヌであり得る。前記患者は、糖尿病患者であり得る。前記患者は、アポリポタンパク質欠損、又は高脂血症に罹患した者であり得る。前記高脂血症は、高コレステロール血症又は高トリグリセロール血症であり得る。前記患者は、グルコース代謝疾患を有し得る。前記患者は、肥満患者であり得る。前記患者は、遺伝的な高脂血症又は食物に起因した高脂血症を有し得る。AGEは、脂質に富む環境で形成され、正常血糖値でさえも形成される。前記患者は、酸化的ストレスを患う者であり得る。前記患者は、神経の変性又は神経細胞毒性を患う者であり得る。
【0068】
本発明の別の態様では、前記方法は、前記物質の投与中に、薬学的に許容される担体を患者に投与することをさらに備え得る。該投与には、病変部位内、腹腔内、筋肉内、又は静脈内注射;注入;リポソームを介した輸送;又は局所、鼻腔、経口、眼、又は耳への投与が含まれ得る。前記物質は、薬学的に許容される担体に連結させてもよい。
【0069】
前記物質は、毎時間、毎日、毎週、毎月、毎年(例えば、時間放出形態(time release form)で)で与えてもよく、又は一回のデリバリーとして与えてもよい。該デリバリーは、一定期間の連続したデリバリー、例えば静脈内デリバリーであり得る。本発明の物質又は薬学的組成物は、頭蓋内、又は脊髄液中に与えてもよい。
【0070】
前記物質の有効量は、約0.000001mg/kg体重から約100mg/kg体重であり得る。ある態様では、前記有効量は、約0.001mg/kg体重から約50mg/kg体重であり得る。別の態様では、前記有効量は、約0.01mg/kg体重から約10mg/kg体重であり得る。実際の有効量は、物質のサイズ、物質の生分解性、物質の生物活性、及び物質の生体利用性に基づくであろう。前記物質は、クリーム又は軟膏担体で、局所的に与えてもよい。必要に応じて、前記担体の肌、又は粘膜、又は創傷への吸収度に基づいて再適用してもよい。前記物質が素早く分解せず、生体利用可能であり、極めて活性であれば、有効であるために必要な量は、より少量となろう。前記有効量は、当業者に公知であろう。有効量は、前記物質の形態、前記物質のサイズ、前記物質の生物活性にも依存するであろう。当業者であれば、バイオアッセイで生物活性を決定するために、物質に対して経験的な活性試験を型通りに行い、これにより有効量を決めることができるであろう。
【0071】
該態様では、前記症状は、患者の神経細胞の変性、アミロイドβペプチド原繊維の形成、アミロイドβペプチドの凝集、老人斑へのミクログリア細胞の浸潤、又はアミロイドβペプチドによるミクログリア細胞の活性化を伴い得、該活性化は、ミクログリア細胞によるサイトカインの産生を含む。
【0072】
本発明の別の態様は、ある物質が、アミロイドβペプチドが細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体と結合するのを阻害する能力を評価する方法であって、
(a)前記細胞を前記物質とアミロイドβペプチドに接触させることと;
(b)前記細胞に結合したアミロイドβペプチドの量を決定することと;
(c)ステップ(b)で決定した、結合したアミロイドβペプチドの量と前記物質の
非存在下で決定した量を比較して、前記物質が、アミロイドβペプチドが前
記細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体のVド
メインに結合するのを阻害する能力を評価することと;
を備えた方法である。
【0073】
該態様において、前記細胞は、前記物質及びアミロイドβペプチドと同時に接触させてもよく、又はアミロイドβペプチド及び前記物質と接触させてもよい。前記物質は、アミロイドβペプチドに特異的に結合することができてもよい。前記物質は、後生的グリケーション最終産物受容体が相互作用するアミロイドβペプチドの部位に結合する。前記物質は、後生的グリケーション最終産物受容体の可溶性細胞外部分であり得る。前記物質は、固相支持体に結合してもよい。前記物質は、細胞の表面上に発現されてもよい。
【0074】
本発明の別の態様は、細胞中のNF-kB遺伝子の活性化を阻害する方法であって、前記細胞を、アミロイドβペプチドと細胞上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る物質に接触させ、これにより前記細胞中のNF-kBの活性化を阻害することを備えた方法である。
【0075】
本発明は、アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る物質と薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物を提供する。前記担体は、賦形剤、エアロゾル、局所担体、水溶液、非水溶液、又は固相担体であり得る。
【0076】
本明細書において使用する、「酸化的ストレス」なる用語には、酸化剤の毒性効果を改善し得る細胞の能力を擾乱することが含まれる。酸化剤には、DNAを含む細胞中の塩基と反応し得る過酸化水素又は酸素ラジカルが含まれ得る。「酸化的ストレス」下にある細胞は、このような酸化剤の導入に反撃するために、生化学的、代謝的、生理的、及び/又は化学的修飾を行い得る。このような修飾には、脂質の過酸化、NF-kBの活性化、ヘムオキシゲナーゼI型の誘導、及びDNAの突然変異誘発が含まれ得る。グルタチオンのような抗酸化剤も酸化剤の影響を低減させることができる。本発明は、細胞への酸化的ストレスの影響を抑制し得る物質及び薬学的組成物を提供する。本発明は、患者の酸化的ストレスの症状を改善させる方法であって、酸化的ストレスを抑制するのに有効な量の物質又は薬学的組成物を前記患者に投与することによって、患者の酸化的ストレスの症状を改善することを備えた方法も提供する。
【0077】
本明細書において使用する「神経毒性」なる語には、神経細胞の機能に衰弱をもたらし得る、神経細胞への負の代謝的、生化学的、及び生理学的影響が含まれる。このような機能には、記憶、学習、知覚、神経の電気生理(すなわち、活動電位、分極、及びシナプス)、シナプス形成、化学的及び電気的チャネル機能、神経伝達物質の放出、及び検出、及び神経運動機能が含まれ得る。神経毒性には、神経細胞毒性が含まれ得る。
【0078】
本明細書で使用する「神経変性(neuronal degeneration)」なる語には、神経細胞の正常な機能の衰退が含まれる。このような衰退には、記憶、学習、知覚、神経の電気生理(すなわち、活動電位、分極、及びシナプス)、シナプス形成、化学的及び電気的チャネル機能、神経伝達物質の放出、及び検出、及び神経運動機能の衰退が含まれ得る。
【0079】
本発明の方法の何れかの実施又は薬学的組成物の何れかの調製において、「治療的有効量」とは、アミロイドβペプチドが、後生的グリケーション最終産物受容体に結合するのを阻害し得る量である。従って、有効量は、治療すべき患者、及び治療すべき症状に応じて変化するであろう。
【0080】
本明細書において使用する「適切な薬学的に許容される担体」なる語には、ホスフェートで緩衝化した生理的食塩水溶液、アセテートで緩衝化した生理的食塩水溶液(非経口投与に適したビークル)、水、油/水エマルジョン又はトリグリセリドエマルジョンのようなエマルジョン、様々な種類の湿潤剤、錠剤、コーティング錠、及びカプセルのような任意の標準的な薬学的に許容される任意の担体が含まれる。化合物を静脈内及び腹腔内投与するのに有用な許容されるトリグリセリドエマルジョンの例は、商業的にはイントラリピッドTMとして知られているトリグリセリドエマルジョンである。
【0081】
経口投与又は局所投与するときは、このような物質及び薬学的組成物は、様々な担体を用いて与えられるであろう。典型的には、このような担体は、デンプン、ミルク、糖、ある種の粘土、ゼラチン、ステアリン酸、タルク、植物脂肪又は植物油、ゴム質、グリコール、又は他の公知の賦形剤のようなある種の賦形剤を含有する。このような担体は、香料及び着色料又は他の添加物を含んでもよい。所望の供給方法に基づいて、特異的な担体を選択することが必要であろう。例えば、静脈内又は全身投与にはPBSを使用することができ、局所投与には植物脂肪、クリーム、軟膏、膏薬、又はゲルを使用し得る。
【0082】
本発明は、適切な賦形剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/又は担体とともに、アミロイドβペプチドが患者の後生的グリケーション最終産物受容体に結合するのを阻害し得る本発明のタンパク質組成物及び/又は物質を治療的有効量含む、老化、学習障害、又は神経疾患による神経変性の治療に有効な薬学的組成物も提供する。このような組成物は、液体又は凍結乾燥若しくはその他の方法で乾燥した調合物であり、様々な緩衝液成分(例えば、Tris-HCl、アセテート、ホスフェート)、pH、及びイオン強度の賦形剤、表面への吸収を阻止するためのアルブミン又はゼラチンのような添加物、界面活性剤(例えば、Tween 20、Tween 80、プルロニックF68(Pluronic F68)、胆汁酸塩)、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、二亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、バルク物質又は張度調節物質(ラクトース、マンニトール)、前記物質へのポリエチレングリコール等のポリマーの共有結合、金属イオンとの錯体化、又はポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル等のようなポリマー物質の粒状調製物中若しくは粒状調製物上、又はリポソーム、ミクロエマルジョン、ミセル、単層又は複層の小胞、赤血球のゴースト、又はスフェロプラスト上への前記物質の取り込みを含む。このような組成物は、前記物質又は組成物の物理的状態、溶解度、安定性、インビボでの放出速度、及びインビボでのクリアランス速度に影響を与えるであろう。組成物の選択は、患者の記憶認知障害又は学習障害の症状を緩和し得る物質の物理的及び化学的特性に依存するであろう。
【0083】
本発明の物質は、前記物質又はペプチドを持続的に放出させ得るカプセルを介して、一定の時間にわたって、局所的に与え得る。コントロールされた又は持続的放出組成物には、親油性デポ剤(例えば、脂肪酸、ろう、オイル)中の調合物が含まれる。ポリマー(例えば、ポロクサマー又はポロクサミン)でコートされた粒状組成物、及び組織特異的な受容体に対して誘導された抗体、リガンド、又は抗原に結合された物質、又は組織特異的な受容体のリガンドに結合された物質も本発明に含まれる。本発明の組成物の他の態様は、粒状形態の保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤、又は非経口、肺、鼻腔、経口を含む様々な投与経路用の透過増強物質を取り込む。
【0084】
(例えば、125Iで放射能ラベルされ、又はビオチン化された)検出可能なマーカー物質に会合させることによって、本発明の物質の一部を「ラベル」して、化合物、又はその受容体を有する細胞、又は固相組織中にあるその誘導体、及び血液、脳脊髄液、又は尿のような液体試料の検出及び定量に有用な試薬を与えてもよい。
【0085】
投与されると、(sRAGEのVドメインを含むペプチドのような)物質は、しばしば循環から迅速に除去され、それ故、比較的短時間の薬理学的活性を表し得る。その結果、治療的な効力を維持するために、生物活性のある物質を比較的大量且つ頻繁に投与することが必要とされ得る。ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールの共重合体、及びポリプロピレングリコール、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、又はポリプロリンのような水溶性ポリマーの共有結合によって修飾された物質は、対応する未修飾の物質と比べて、静脈内投与後の血中で相当長い半減期を示すことが知られている(Abuchowski et al., 1981; Newmark et al., 1982; and Katre et al., 1987)。このような修飾は、水溶液への物質の溶解度を増大させ、凝集を阻止し、物質の物理的及び化学的安定性を増大させ、物質の免疫原性及び反応性も著しく減少させ得る。その結果、未修飾の物質に比べてより少ない頻度で、又はより少ない用量で、このようなポリマー−物質付加物を投与することによって、所望のインビボ生物活性を達成し得る。
【0086】
PEGは、哺乳動物中で極めて低い毒性を有するので、ポリエチレングリコール(PEG)に物質を付着させるのは、特に有用である(Carpenter et al., 1971)。例えば、アデノシンデアミナーゼのPEG付加物は、重篤な複合免疫不全症候群を治療するためにヒトに使用することが米国で認可された。PEGを付着することによってもたらされる第二の利点は、異種性化合物の免疫原性及び抗原性を効果的に減少させることである。例えば、ヒトタンパク質のPEG付加物は、重篤な免疫応答を引き起こすリスクなしに、他の哺乳動物種の疾病を治療するのに有用であり得る。記憶又は学習認知障害の症状を緩和し得る本発明の化合物は、該化合物を産生し得る物質又は細胞に対する宿主の免疫応答を減少又は阻止するために、ミクロカプセル装置の中に入れて与えてもよい。本発明の物質は、リポソームのような膜中にミクロカプセル化して与えてもよい。
【0087】
PEGのようなポリマーは、アミノ末端のアミノ酸のαアミノ基、リシン側鎖のεアミノ基、システイン側鎖のスルフヒドリル基、アスパラギン酸又はグルタミン酸側鎖のカルボキシル基、カルボキシ末端のアミノ酸のαカルボキシル基、チロシン側鎖のようなタンパク質中に存在する一以上の反応性アミノ酸残基に、又はある種のアスパラギン、セリン又はトレオニン残基に付着したグリコシル鎖の活性化された誘導体に、簡便に付着させ得る。
【0088】
タンパク質との直接的な反応に適した多くの活性化された形態のPEGが記載されている。タンパク質のアミノ基と反応させるのに有用なPEG試薬には、カルボン酸、カルボネート誘導体の活性エステル、特に、脱離基がN-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェノール、イミダゾール、又は1-ヒドロキシ-2-ニトロベンゼン-4-スルフォネートであるものが含まれる。マレイミド又はハロアセチル基を含有するPEG誘導体は、タンパク質の遊離スルフヒドリル基を修飾するのに有用な試薬である。同様に、アミノヒドラジン又はヒドラジド基を含有するPEG試薬は、タンパク質中の糖質基の過ヨウ素酸酸化によって生成したアルデヒドとの反応に有用である。
【0089】
[創傷治癒]
本発明のペプチド及び物質は、患者の創傷を治療するために使用し得る。創傷治癒は、様々な疾病又は症状と関連し得る。該疾病又は症状は、正常な創傷治癒を損ない、又は治癒を必要とする創傷の存続に寄与し得る。患者は、遅延した治癒、難治性の歯周病、糖尿病による創傷治癒の損傷、及び自己免疫疾患による創傷治癒の損傷を治療するために、本発明のペプチド又は物質又は薬学的組成物で治療され得る。本発明は、老化から生じた創傷治癒の損傷を治療するのに有用な化合物及び薬学的組成物を提供する。該物質の局所投与の効果は、薬学的に許容される投薬形態で活性成分を非経口投与することによって増強され得る。
【0090】
[神経疾患]
アルツハイマー病(AD)の病理的な特徴は、細胞内及び細胞外への繊維タンパク質の蓄積であり、これは、終局的な神経系の機能不全及び臨床的な痴呆と密接に相関している(レビューには、Goedert, 1993; Haass et al., 1994; Kosik, 1994; Trojanowski et al., 1994; Wischik, 1989を参照されたい)。アミロイド-βペプチド(Aβ)は、ADにおける老人/散在斑と脳血管系の細胞外沈着物の主成分である。
【0091】
Aβは、軸索の成長を促進し、反応性酸素中間体(ROI)を産生し、細胞の酸化的ストレスを引き起こし、神経への細胞毒性を生じせしめ、ミクログリアの活性化を促進することが示された(Behl et al., 1994; Davis et al., 1992; Hensley ,et al., 1994; Koh, et al., 1990; Koo et al., 1993; Loo et al., 1993; Meda et al., 1995; Pike et al., 1993; Yankner et al., 1990; Meda et al., 1995; Pike et al., 1993; Yankner et al., 1990;)。
【0092】
Aβがこれらの多彩な細胞への効果を誘導するために、細胞膜はAβを繋ぎ止める結合タンパク質を提示しているのかもしれない。
【0093】
このような状況の下、幾つかの細胞関連タンパク質及び硫酸化されたプレテオグリカンが、Aβと相互作用し得る。これらには、
サブスタンスP受容体、セルピン−酵素複合体(SEC)受容体、アポリポタンパク質E、アポリポタンパク質J(クラステリン)、トランスチレチン、α-1抗キモトリプシン、β-アミロイド前駆体タンパク質、スルフォネート/ヘパランサルフェート(Abraham et al., 1988; Fraser et al., 1992; Fraser et al., 1993; Ghiso et al., 1993, Joslin et al., 1991; Kimura et al., 1993; Kisilevsky et al, 1995; Strittmatter et al., 1993a; Strittmatter et al., 1993b; Schwarzman et al, 1994; Snow et al., 1994; Yankner et al., 1990)。これらのうち、サブスタンスP受容体とSEC受容体は、Aβのための神経細胞表面受容体として機能しているかもしれないが、これを直接実証する証拠はない(Fraser et al., 1993; Joslin et al., 1991; Kimura et al., 1993; Yankner et al., 1990)。事実、サブスタンスP受容体の役割には議論があり、Aβ単独で受容体と相互作用するのか、あるいは共同刺激因子も必要なのかどうかは知られておらず(Calligaro et al., 1993; Kimura et al., 1993; Mitsuhasi et al., 1991)。SEC受容体は、まだ完全に特性決定されていない。
【0094】
[臨床的な側面]
本発明のある態様では、患者は、以下に記載された、さらにハーパーの生化学(Harper’s Biochemistry, R.K. Murray et al. (Editors) 21st Edition, (1988) Appelton & Lange, East Norwalk, CT.)に記載された臨床症状を患う者であり得る。このような臨床症状は、患者をアテローム性動脈硬化症に罹りやすくし、又はアテローム性動脈硬化症の進行を早めやすくする。このため、効果的な期間にわたって、有効量のsRAGE由来のポリペプチドを投与することによって、このような患者は、恩恵を受けるであろう。
【0095】
本発明の対象は、アテローム性動脈硬化症、高コレステロール血症、又は以下に論述されているような他の疾患の臨床的な徴候を示してもよい。
【0096】
臨床的には、高コレステロール血症は、胆汁酸の腸肝循環を遮断することによって治療し得る。この操作によって、血漿コレステロールが顕著に減少され得ることが報告されており、これは、コレスチラミン樹脂の使用、又は回腸除去手術によって外科的に達成され得る。両操作は、胆汁酸の再吸収のブロックを引き起こす。その後、通常は胆汁酸によって行われるフィードバック制御から開放されるので、胆汁酸のプールを維持するために、コレステロールの胆汁酸への転換が非常に増大される。肝臓中のLDL(低密度リポタンパク質)受容体は、アップレギュレートされ、LDLの摂取が増加し、その結果、血漿コレステロール低下がする。
【0097】
[コレステロール、アテローム性動脈硬化症、及び冠心臓疾患]
本発明のペプチド、物質、及び薬学的組成物は、コレステロール代謝、アテローム性動脈硬化症、又は冠心臓疾患に伴う患者の疾病の症状を抑制するための治療剤として使用し得る。本発明の物質及び薬学的組成物を投与することによって、抑制、又は改善、又は阻止し得る、このような疾病の症状のうちの幾つかは、以下で論述されている。例えば、本発明の物質及び薬学的組成物は、患者の内皮細胞の完全性を守ることによって冠心臓疾患の症状を抑制するために、冠心臓疾患の症状を患う患者に投与し得る。
【0098】
多くの調査者が、ヒトにおける冠心臓疾患とアテローム性動脈硬化の発症と血清脂質レベルの増加との間の相関を実証してきた。血清脂質のうち、コレステロールは、この関係に主に関与しているとして、最も頻繁に選ばれたものである。しかしながら、血清トリアシルグリセロール濃度のような他のパラメーターも同様の相関を示す。動脈疾患を有する患者は、以下の何れかの異常:(1)正常濃度のLDLと上昇したVLDL濃度(very low density lipoprotein);(2)正常なVLDLと上昇したLDL;(3)両リポタンパク質画分の上昇の一つを有し得る。HDL(high density lipoprotein)濃度と冠心臓疾患との間には逆の関係があり、最も予測可能な関係は、LDL:HDLコレステロールの比であると考える者もいる。この関係は、想定されている、組織へコレステロールを輸送するというLDLの役割及びコレステロールのスカベンジャーとして働くというHDLの役割の見地から説明できる。
【0099】
アテローム性動脈硬化は、動脈壁の結合組織中のアポB100を含有するリポタンパク質のコレステロール及びコレステロールエステルの沈着によって特徴づけられる。血中のVLDL、IDL、又はLDLのレベルが持続的に上昇する疾病(例えば、糖尿病、脂質ネフローゼ(lipid nephrosis)、甲状腺機能低下、及び高脂血症の他の症状)は、多くの場合、前段階又はさらに進行したアテローム性動脈硬化症を伴う。
【0100】
動物にアテローム性動脈硬化を誘導する実験は、感受性に関して、種間に広い
変動があることを示している。ウサギ、ブタ、サル、及びヒトは、コレステロールを与えることによって、アテローム性動脈硬化を誘導させ得る種である。ラット、イヌ、マウス、及びネコは耐性がある。甲状腺切除又はチオウラシル剤による処理は、イヌ及びラットにアテローム性動脈硬化を誘導させ得る。低血中コレステロールは、高甲状腺機能亢進症の特徴である。
【0101】
遺伝的な因子は、個人の血中コレステロール濃度を決定する上で最も大きな役割を果たしているが、血中コレステロールを低下させる食物及び環境因子も役割を果たしており、飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸の食物中での交換が、最も熱心に研究されている。
【0102】
リノール酸を高い割合で含有する天然のオイルは、血漿コレステロールを低下させるのに有益であり、ピーナッツ、綿の種子、トウモロコシ、及び大豆油が含まれるが、これに対して、飽和脂肪酸を高い割合で含有するバター油、ビーフ油、及びココナツオイルは、レベルを上げる。ショ糖とフルクトースは、他の糖質に比べて、血中脂質、特にトリアシルグリセロールを増加させる上でより大きな効果を有している。
【0103】
多価不飽和脂肪酸のコレステロール低下作用の理由は、未だ明らかでない。しかしながら、この効果を説明するために、コレステロールの腸への排出の刺激、及びコレステロールの胆汁酸への酸化の刺激を含む幾つかの仮説が提出されてきた。多価不飽和脂肪酸のコレステロールエステルは、肝臓及び他の組織によって、より迅速に代謝されることもあり得、これによって、それらのターンオーバーと排出速度が増大するのかもしれない。前記効果は、主として、LDLの異化速度の増大によって、血漿から組織の中へコレステロールの分配がシフトするためであるという別の証拠も存在する。飽和脂肪酸は、相対的にコレステロールをより多く含有する、より小さなVLDL粒子を形成せしめ、それらは、より大きな粒子に比べて、より遅い速度で肝臓外の組織によって利用される。これらの傾向は全て、アテローム原性であると看做され得る。
【0104】
冠心臓疾患において役割を果たすと考えられているさらなる因子には、高血圧、喫煙、肥満、運動不足、硬水に対して軟水を飲用することが含まれる。血漿の遊離脂肪酸の上昇は、循環中への余分なトリアシルグリセロールとコレステロールの排出を含む、肝臓によるVLDL分泌の増大をもたらすであろう。より高いレベル又は変動するレベルの遊離脂肪酸をもたらす因子には、感情的なストレス、喫煙からのニコチン、コーヒーの飲用、より連続的な摂食でなく、むしろ大量の食事を数少なく摂取することが含まれる。閉経前の女性は、おそらくは、男性及び閉経後の女性に比べてHDLの濃度がより高いために、これらの有害な因子の多くから保護されているようである。
【0105】
[低脂血薬]
食餌による措置では、血清脂質レベルの減少を達成できないときには、低脂血薬の使用に頼ることになり得る。このような薬物は、本発明の薬物及び薬学的組成物と合わせて使用し得る。すなわち、このような薬物は、本発明の物質とともに患者に投与され得る。幾つかの薬物は、生合成経路の様々な段階で、コレステロールの形成をブロックすることが知られている。これらの薬物の多くは、有害な効果を有しているが、真菌のHMG-CoAリダクターゼ阻害剤、コンパクチン及びメビノリンは、殆ど悪影響なく、LDLコレステロールレベルを減少させる。シトステロール(Sitosterol)は、消化管でのコレステロールの吸収をブロックすることによって作用する低コレステロール血物質(hypocholesterolemic agent)である。コレスチポール及びコレスチラミン(Questran)のような樹脂は、それらを結合することによって胆汁酸の再吸収を阻止して、糞便中への喪失を増大せしめる。ネオマイシンも胆汁酸の再吸収を阻害する。クロフィブレート及びゲンビブロジル(gembivrozil)は、肝臓の遊離脂肪酸のフローをエステル化経路から酸化経路に逸らせることによって、それらの低脂血効果の少なくとも一部を発揮し、これにより、肝臓によるトリアシルグリセロール及びコレステロール含有VLDLの分泌を減少させる。さらに、それらは、リポタンパク質リパーゼによるVLDLトリアシルグリセロールの加水分解を促進する。プロブコールは、受容体非依存性経路を介してLDL異化佐用を増加させるようである。ニコチン酸は、脂肪組織の脂肪分解を阻害することによって、FFAの流れを減少して、肝臓によるVLDL産生を阻害する。
【0106】
[血漿リポタンパク質の疾患(異常リポタンパク血症(Dyslipoproteinemia))]
集団中の少数の個体は、それらのリポタンパク質に遺伝的な欠陥を示し、低又は高リポタンパク血症の何れかの症状をもたらす。糖尿病、甲状腺機能不全、及びアテローム性動脈硬化のような障害を有する他の多くの者は、一又は他の一次遺伝的症状に極めて類似した異常なリポタンパク質パターンを示す。これらの一次症状のほぼ全ては、リポタンパク質の形成、輸送、又は分解の間の一又は他の段階における欠陥によるものである。全ての異常が有害であるわけではない。
【0107】
[低リポタンパク血症]
1.無β−リポタンパク血症−これは、血漿中にβリポタンパク質(LDL)が存在しないことを特徴とする希な遺伝病である。キロミクロン又はVLDLが全く形成されないので、血中脂質は、低濃度で存在し、特にアシルグリセロールは殆ど存在しない。腸と肝臓は、共にアシルグリセロールを蓄積する。無β−リポタンパク質血症は、アポタンパク質B合成の欠陥によるものである。
【0108】
2.家族性低βリポタンパク血症−低βリポタンパク血症では、LDL濃度は、正常の10〜50%の間にあるが、キロミクロンの形成は起こらない。トリアシルグリセロールの輸送には、アポBが不可欠であると結論付けねばならない。多くの者は、健康で長生きする。
【0109】
3.家族性αリポタンパク欠損(タンジアー病)−ホモ接合の個体では、血症HDLが殆ど存在せず、組織中にコレステロールエステルが殆ど蓄積しない。肝臓によるキロミクロン形成又はVLDLの分泌には異常はない。しかし、電気泳動を行うと、プレβリポタンパクがなく、内在性のトリアシルグリセロールを含有する幅の広いβバンドが見出される。これは、正常なプレβバンドは、本来HDLによって供給される他のアポタンパク質を含有しているからである。本来リポタンパク質リパーゼを活性化するアポC-IIが欠損している結果、患者は、高トリアシルグリセロール血症を発症する傾向がある。
【0110】
[高リポタンパク血症]
1.家族性リポタンパクリパーゼ欠損(I型)−この症状は、循環からのキロミクロンの除去が極めて遅く、その結果キロミクロンのレベルが異常に上昇することを特徴とする。VLDLは上昇し得るが、LDLとHDLは減少する。このように、この症状は、脂肪によって誘発される。食物中の脂肪の量を減らし、複合糖質の割合を増加させることによって矯正し得る。この疾病の類型は、リポタンパク質リパーゼの補因子として必要とされるアポC-IIの欠損によって引き起こされる。
【0111】
2.家族性高コレステロール血症(II型)−患者は、高βリポタンパク血症(LDL)によって特徴づけられ、これは、血漿総コレステロールの増加を伴う。IIb型では、VLDLが上昇する傾向もあり得る。それ故、患者は、トリアシルグリセロールのレベルが幾分上昇し得るが、他の型の高リポタンパク血症とは異なり、血漿は清澄である。組織に脂質が沈着する(例えば、キサントーマ、アテローム)のが一般的である。II型パターンは、甲状腺機能不全の二次的な結果としても起こり得る。該疾患は、欠陥のあるLDL受容体のために、循環からLDLが除去される速度が遅く、アテローム性動脈硬化の発症率が増大するようである。治療には、食物中のコレステロール及び飽和脂肪を減らすことが有用であり得る。異なる原因によって、高コレステロール血症を生じる疾病が、ウォルマン病(コレステロールエステル貯蔵病)。これは、本来LDLを代謝する繊維芽細胞のような細胞のリソゾームが、コレステロールエステルヒドロラーゼを欠損しているためである。
【0112】
3.家族性III型高リポタンパク血症(ブロードβ病(broad beta disiease)、レムナント除去病(remnant removal disease)、家族性異常βリポタンパク血症)−この症状は、キロミクロンとVLDLレムナントが共に増加することを特徴とする;これらは、密度1.019未満のリポタンパク質であるが、電気泳動上では、ブロードなβバンド(β-VLDL)として現れる。それらは、高コレステロール血症と高トリアシルグリセロール血症を引き起こす。末梢及び冠動脈の何れにもキサントーマとアテローム性動脈硬化が存在する。減量及び複合糖質、不飽和脂肪を含有し、コレステロールを殆ど含まない食物による治療が推奨される。該疾病は、本来は3つのイソフォームE2、E3、及びE4として存在するアポEの異常によって引き起こされる、肝臓によるレムナント代謝の欠損に起因する。III型高リポタンパク血症の患者は、E2のみを有し、これはE受容体と反応しない。
【0113】
4.家族性高トリアシルグリセロール血症(IV型)−この症状は、体内で産生された高レベルのトリアシルグリセロール(VLDL)を特徴とする。コレステロールレベルは、高トリアシルグリセロール血症に比例して上昇し、しばしばグルコース不耐症が存在する。LDL及びHDLともに、量は正常以下である。このリポタンパク質パターンは、冠心臓疾患、II型非インシュリン依存性糖尿病、肥満、及びアルコール中毒、プロゲステロンホルモンの摂取を含む他の症状にも一般的に伴う。原発性IV型高リポタンパク血症の治療は、減量;可溶性食物糖質の複合糖質、不飽和脂肪、低コレステロール食への置換;及び低脂血剤である。
【0114】
5.家族性V型高リポタンパク血症−キロミクロンとVLDLが共に上昇し、トリアシルグリセロール血症とコレステロール血症の両者を引き起こすので、リポタンパクパターンは複雑である。LDLとHDLの濃度は低い。キサントーマが、しばしば存在するが、アテローム性動脈硬化の発生は、顕著でないようである。グルコース耐性が異常であり、しばしば肥満と糖尿病を伴う。家族性である該症状の理由は明確でない。治療は、減量の後に、糖質又は脂肪の何れかが高すぎない食物を与えることからなる。
【0115】
低リポタンパク血症のさらなる原因は、VLDLとLDLの血漿濃度に影響を与え得るアポBの生産過剰であることが示唆されている。
【0116】
6.家族性高αリポタンパク血症−これは、健康に有益であると思われるHDL濃度の増加を伴う希な症状である。
【0117】
家族性レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)欠損:
患者では、コレステロールエステルとリゾレシチンの血漿濃度は低いのに対して、コレステロールとレシチンの濃度は上昇している。血漿は濁りがちである。異常は、リポタンパクにも見出される。あるHDL画分は、LCATが存在しないためにコレステロールを摂取し得ない明らかに発生したばかりのHDLである、層状又は棒状の円盤型構造を含有する。異常なLDL亜画分として、これ以外には胆汁鬱血患者にしか見られない、リポタンパク質Xも存在する。VLDLも異常であり、電気泳動(β-VLDL)上でβリポタンパク質として移動する。実質肝疾患の患者は、LCAT活性の減少、及び血清脂質とリポタンパクの異常も示す。
【0118】
薬学的担体
ある好ましい態様では、薬学的担体は、液体であり得、薬学的組成物は、溶液の形態である。他の同様に好ましい態様では、薬学的に許容される担体は、個体であり、組成物は、粉末又は錠剤の形態である。さらなる態様では、薬学的担体はゲルであり、組成物は、座薬又はクリームの形態である。さらなる態様では、活性成分は、薬学的に許容される経皮パッチの一部として調合され得る。
【0119】
固相担体は、香料、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、充填剤、潤滑剤、圧縮補助剤、バインダー、又は錠剤−崩壊剤としても作用し得る一以上の物質を含み得る;これは、カプセル化物質でもあり得る。粉末では、担体は、細かく分割された活性成分と混合された細かく分割された固体である。錠剤では、活性成分は、適切な割合で必要な圧縮特性を有する担体と混合され、所望の形及びサイズに固められる。粉末及び錠剤には、好ましくは、99%まで活性成分を含有する。適切な固相担体には、例えば、リン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシム、タルク、糖、ラクトース、デキストリン、デンプン、ゼラチン、セルロース、ポリビニルピロリジン、低融解ワックス、及びイオン交換樹脂が含まれる。
【0120】
液状担体は、溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エリキシル、及び加圧された組成物を調製するのに使用される。活性成分は、水、有機溶媒、両者の混合物、又は薬学的に許容されるオイル若しくは脂肪のような薬学的に許容される液状担体に溶解又は懸濁され得る。液状担体は、可溶化剤、乳化剤、緩衝液、防腐剤、甘味剤、着香剤、懸濁化剤、濃稠化剤、着色剤、粘度調製剤、安定化剤、又は浸透圧調製剤のような他の適切な薬学的添加物を含有し得る。経口及び非経口投与用の液状担体の適切な例には、水(一部、上述の添加物、例えば、セルロース誘導体、好ましくはカルボキシメチルセルロースナトリウム溶液を含有する)、アルコール(一価アルコール及び多価アルコール、例えばグリコール)、及びそれらの誘導体、並びにオイル(例えば、分画されたココナツオイル及びピーナツオイル)を含む。非経口投与には、担体は、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルのようなオイル状エステルであってもよい。滅菌液状担体は、非経口投与用の滅菌液状形態組成物に使用できる。加圧された組成物用の液状担体は、ハロゲン化された炭化水素又は他の薬学的に許容されるプロペラントであり得る。
【0121】
滅菌溶液又は懸濁液である液状薬学的組成物は、例えば、筋肉内、鞘内、硬膜上、腹腔内、又は皮下注射によって使用できる。滅菌溶液は、静脈内投与してもよい。活性成分は、投与時に、滅菌水、生理的食塩水、又は他の適切な滅菌注射用媒体を用いて、溶解又は懸濁し得る滅菌固体組成物として調製してもよい。担体には、必要な不活性バインダー、懸濁化剤、滑沢剤、着香剤、甘味剤、防腐剤、色素、及びコーティングが含有されることが予定される。
【0122】
本発明の活性成分は(例えば、sRAGE由来のVドメインポリペプチド、又はその組成物)、例えば、溶液を等張にするのに十分な生理的食塩水又はグルコース、胆汁酸塩、アラビアゴム、ゼラチン、モノオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート80(ソルビトールのオレイン酸エステル、及びエチレンオキサイドと共重合したその無水物)等の他の溶質又は懸濁化剤を含有する滅菌溶液又は懸濁液の形態で経口投与してもよい。
【0123】
活性成分は、液体又は固体のうち何れかの組成物形態で、経口投与してもよい。経口投与に適した組成物には、ピル、カプセル、顆粒、錠剤、及び粉末のような固体形態と、溶液、シロップ、エリキシル、及び懸濁物のような液状形態が含まれる。非経口投与に有用な形態には、滅菌溶液、エマルジョン、及び懸濁液が含まれる。
【0124】
アテローム性動脈硬化
本発明のある態様では、対象は、アテローム性動脈硬化に罹患傾向のある者であり得る。このような罹患傾向には、遺伝的な罹患傾向、環境的な罹患傾向、代謝的な罹患傾向、又は物理的な罹患傾向が含まれ得る。アテローム性動脈硬化と心血管疾患に関する最近のレビューがある。例えば、「Keating and Sanguinetti, (May 1996) Molecular Genetic Insights into Cardiovascular Disease, Science 272 : 681-685は、参考文献として、本願にその全体が援用される。この著者は、不整脈、心筋症、及び血管疾患のような遺伝的な形態の心血管疾患に対する分子ツールの応用を概説している。この参考文献の表1には、心臓病及び各疾病に伴う異常タンパク質が含まれている。列記されている疾病は、LQT病、家族性肥大性心筋症;ドゥシェンヌ及びベッカー筋ジストロフィー;バース症候群アシルCoA脱水素酵素欠損症;ミトコンドリアの疾患;家族性高コレステロール血症;低βリポタンパク血症;ホモシスチン尿症;III型高リポタンパク血症;大動脈弁上部狭窄症;エーレルス−ダンロー症候群IV;マルファン症候群(Marfa syndrome);遺伝性出血性毛細管拡張症である。これらの症状は、対象がアテローム性動脈硬化への罹患傾向を有し得るものに含まれる。
【0125】
さらに、アテローム性動脈硬化のマウスモデルは、”Breslow (1996) Mouse Models of Atherosclerosis, Science 272:685”に概説されている。この参考文献も、参考文献としてその全体を本発明に援用する。ブレスローにも、様々なマウスモデル及びアテローム産生(atherogenic)刺激を記載した表が含まれている(表1)。例えば、マウスモデルには、C57BL/6;アポE欠損;アポE病変;アポE R142C;LDL受容体欠損;及びHuBTgが含まれる。本発明のある態様において、対象は、ブレスローの文献に記載されたマウスモデルによって示されているようなアテローム性動脈硬化への罹患傾向を有している。
【0126】
ギボンスとドゥザウ(Gibbons and Dzau)は、「Molecular Therapies for Vascular Disease, Science Vol.272, pages 689-693」で、血管疾患を概説している。本発明のある態様では、対象は、ギボンスとドゥザウの文献の表1に記載されているような病理的な現象を示していてもよい。例えば、対象は、内皮の機能不全、内皮傷害、細胞の活性化、及び表現型の変化、細胞増殖の制御異常、アポトーシスの制御異常、血栓、プラーク裂傷(plaque rupture)、異常な細胞移動、又は細胞外若しくは細胞内マトリックスの変化を有し得る。
【0127】
本発明の別の態様では、対象は、糖尿病を有し得る。対象は、糖尿病に伴う合併症を呈し得る。このような合併症の例には、内皮及びマクロファージAGE受容体の活性化、変化したリポタンパク質、マトリックス、及び基底膜タンパク質(basement membrane protein);血管平滑筋の変化した収縮性及びホルモン応答性;変化した内皮細胞の透過性;ソルビトールの蓄積;神経のミオイノシトールの枯渇又は変化したNa-K ATPase活性が含まれる。このような合併症は、ポルトとシュワルツによる最近の文献「Diabetes Complications: Why is Glucose potentially Toxic?, Science, Vol. 272. pages 699-700」で論述されている。
【0128】
本発明は、以下の実験の詳細の部で説明される。これらの部は、本発明の理解を助けるために記載したものであって、如何なる意味においても、その後ろにあるクレーム中に記載された本発明を限定することを意図したものでなく、またそのように解してはならない。
【0129】
実験の詳細
例1:細胞外可溶性(sRAGE)のV型ドメインの最初の30アミノ酸が、後生的グリケーション最終産物(AGE)とアミロイドβペプチドとの相互作用を媒介する
RAGE(後生的グリケーション最終産物受容体)の細胞外ドメインは、その後ろに2つの「C」型免疫グロブリンドメインが続く「V」型ドメインを1つ含有する。可溶性すなわちsRAGEと称される該分子のこの部分は、後生的グリケーション最終産物(AGE)及びアミロイドβペプチドと細胞表面受容体との相互作用を媒介する。sRAGEは、AGE又はアミロイドβペプチドを結合し、これらのリガンドが種々の細胞種上の細胞性RAGEと相互作用し、活性化する能力を妨害する。sRAGEのインビボは、無アポリポタンパクEマウス中の加速された糖尿病性血管疾患のマウスモデルにおける加速されたアテローム性動脈硬化を抑制し、遺伝的に糖尿病のdb+/db+マウスの創傷治癒障害を改善する。sRAGEのどの部位がAGE又はアミロイドβペプチドの何れかとのこれらの相互作用を媒介するかを描出するために、3つのドメイン全体にわたる配列を示す一連のペプチドとともに、一連のDNA構築物(Vドメイン、C1ドメイン、又はC2ドメインをコードするDNAを含む)を作成した。本明細書のデータは、sRAGE中のAGE及びアミロイドβペプチドの両者に対するリガンド結合ドメインが、Vドメインの最初の30アミノ酸の中にあることを示している。さらに、該データは、C1ドメイン又はC2ドメイン又はそれらのドメイン内部のペプチド配列が、sRAGEとこれらのリガンドとの相互作用を媒介しないことを示している。これらのデータは、sRAGEの最初の30アミノ酸が、糖尿病の合併症、アルツハイマー病のようなAGEが蓄積する疾病を治療するための薬物を同定し、スクリーニングし、開発するための重要なターゲットとなり得ることを示している。
【0130】
RAGE(AGEの受容体)は、まず、タンパク質/脂質の不可逆的非酵素的グリケーションと酸化の産物であり、正常な老化、糖尿病、並びに腎不全、及びアミロイドーシス(Ruderman et al., 1992; Baynes, 1991; Sell et al., 1989; Brownlee et al., 1988; Hicks et al., 1988)の間に蓄積する後生的グリケーション最終産物(AGE)が相互作用する細胞の相互作用部位として同定された。RAGE(Schmidt et al., 1992; Neeper et al, 1992)は、その細胞外部分に、2つの「C」型免疫グロブリンドメインが続く1つの「V」型ドメインを含有する細胞表面分子の免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。さらに、一般に信じられているハイドロパチープロットは、この細胞外部分の前に約22アミノ酸からなるリーダーペプチドがあり、推定疎水性膜貫通ドメインが続き、最後に高度に帯電した細胞質ドメインが続いていることを予言している(Neeper et al., 1992)。これまでに調べられた種(ウシ、ヒト、マウス、及びラット)の間では(Neeper et al., 1992)、RAGEは、極めて保存されており、核酸とアミノ酸の両レベルで90%を超える相同性が観察されている。
【0131】
後生的グリケーション最終産物(AGE)受容体としてのRAGE
以前の研究によって、RAGEは、糖尿病の合併症の発症の特異的標的である細胞種、具体的には、内皮細胞、平滑筋細胞、マクロファージ、糸球体間質細胞、網膜の血管及び神経細胞、並びに(中枢神経及び抹消神経系の)神経細胞(Brett et al, 1993)の上存在することが示されている。このため、AGEがRAGEと相互作用すれば、血管及び炎症細胞表現型が多数変化し、これら全てが、糖尿病及び老化の合併症の発症において重要なようである(Schmidt et al., 1993; Schmidt et al., 1994; Schmidt et al., 1995; Wautier et al., 1996; Yan et al., 1994; Miyata et al., 1996; Lander et al., 1997)。例えば、AGE-RAGEの相互作用は、マクロファージの遊走及び活性化の増強(Schmidt et al., 1993)、AGE処理したマウスのリバーにおけるIL-6発現の増加(Schmidt et al., 1994)、血管内皮による血管細胞接着分子-1の発現の増加(Schmidt et al., 1995)、血管の透過性亢進(Wautier et al., 1996)及び細胞の酸化的ストレスの増大(Yan et al.,1994, Miyata et al, 1996)をもたらす。AGE-RAGE相互作用がこれらの効果を与える中心的な手段は、p21ras及びMAPキナーゼを含む酸化剤感受性経路の活性化を介することである(Lander et al., 1997)。
【0132】
AGE-RAGE相互作用の効果は、「V」ドメインと2つの「C」型ドメインから構成される抗RAGE化合物で細胞培養系又は生きたマウスを前処理することによって、大部分がブロックされる(Schmidt et al., 1993; Schmidt et al., 1994; Schmidt et al., 1995; Wautier et al., 1996; Yan et al., 1994; Miyata et al., 1996; Lander et al., 1997)。さらに、近年の研究では、糖尿病マウスをsRAGEで処置すると、完全厚切除モデル(full-thickness excisional model)において、創傷治癒障害が改善され、ストレプトゾトシンで糖尿病にした無アポリポタンパクEマウスの加速された糖尿病アテローム性動脈硬化が抑制された(Park et al., 1997)。
【0133】
アミロイドβペプチドに対する受容体としてのRAGE
アミロイドβペプチドは、アルツハイマー病の神経毒性の進行において重要な発症分子種である(yan et al., 1996)。RAGEは、ニューロンにおけるアミロイドβペプチドの中心的な相互作用部位として同定された。その相互作用によって、酸化的ストレスの増大、神経細胞毒性、及びマクロファージコロニー刺激因子の発現がもたらされる(Yan et al., 1996; Yan et al., 1997)。AGEの場合と同じように、これらの効果は、細胞培養モデルにおいて、抗RAGE IgG又はsRAGEの何れかの存在下でブロックされる(Yan et al., 1996; Yan et al, 1997)。
【0134】
それ故、以下で概説されている研究の目的は、sRAGEが、如何にしてその有益な効果を与えるかを理解するための手段として、AGE及びアミロイドβペプチドとsRAGEとの正確な相互作用部位を描出することである。最終的には、これらの研究の結果は、糖尿病の合併症、並びにアルツハイマー病のようなAGEが蓄積する疾患を治療するためにデザインされた薬物を開発する上で最も有用である。
【0135】
物質 後生的グリケーション最終産物(AGE)は、SIGMATMから入手した物質を用いて、以前記載したように調製した(Schmidt et al., 1992; Neeper et al., 1992)。アミロイドβペプチド(1-42)は、クオリティー・コントロール・バイオケミカルスから購入した。全てのペプチドは、クオリティー・コントロール・バイオケミカルスにより、ヒトの配列(Neeper et al., 1992)に従って調製した。
【0136】
構築物 製造者の指示(PHARMACIATM)に従って、可溶性Vドメイン、並びに可溶性C1及びC2ドメインを調製するために、GST-融合タンパク系を利用した。
【0137】
結合アッセイ 炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)中のNUNCTMマキシソーププレートのウェルに、AGEウシ血清アルブミン(5μg)を4℃で一晩ロードした。翌朝、ウェルを吸引し、37℃で2時間、ウシ血清アルブミン(1%)を含有するリン酸緩衝化生理的食塩水(カルシウム/マグネシウムあり)を用いてブロックした。次に、トゥイーンTM20(20%)を含有するリン酸緩衝化生理的食塩水(カルシウム/マグネシウムなし);0.150mL/ウェルを用いて、ウェルを一度洗浄した。次に、0.2%ウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝化生理的食塩水中にて、37℃で2時間、放射性結合アッセイを行った。未標識の可溶性RAGE(50×モル過剰)又は表記のモル過剰のドメイン又はペプチドの存在下又は非存在下で、放射能ラベルされた(125I;Iodogen(PIERCETM)を用いた)完全長の可溶性RAGE(100nM;比活性7.000-8,000cpm/ng)を利用した。上述の如く洗浄した後、次に、NP-40(1%)とNaCl(0.15M)を含有する緩衝液を用いて、ウェルを溶出した。続いて、回収した物質をγカウンター(LKBTM)でカウントした。アミロイドβペプチドを用いた実験では、炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.8)中のNUNCTMマキシソーププレートのウェルに、アミロイドβペプチド1-42(5μg)を4℃で一晩ロードした。翌朝、ウェルを吸引し、37℃で2時間、ウシ血清アルブミン(1%)を含有するリン酸緩衝化生理的食塩水(カルシウム/マグネシウムなし)を用いてブロックした。次に、未標識の可溶性RAGE(如何に示したモル過剰)又は表記のモル過剰のドメイン又はペプチドの存在下又は非存在下で、放射能ラベルされた(125I;Iodogen(PIERCETM)を用いた)完全長の可溶性RAGE(950nM;比活性7.000-8,000cpm/ng)を利用して、0.2%ウシ血清アルブミンを含有するリン酸緩衝化生理的食塩水中にて、37℃で2時間、結合アッセイを行った。上述の如く洗浄した後、次に、NP-40(1%)とNaCl(0.15M)を含有する緩衝液を用いて、ウェルを溶出した。続いて、回収した物質を上述のようにγカウンターでカウントした。
【0138】
結果
AGEとsRAGEとの相互作用 第一の実験では、sRAGEを含む3つの細胞外ドメインの何れがAGEと相互作用するかを決定することを目的とした。、放射性リガンド結合アッセイによって、全ての未標識拮抗物質を50倍モル過剰で利用すると、未標識可溶性RAGE(完全長)は、固定化されたAGEと放射能ラベルされたsRAGEとの結合を83%拮抗し、未標識のVドメインは89%拮抗するのに対して、C1及びC2ドメインは効果がないことが明らかとなった(それぞれ、30%及び19%の拮抗)(表1)。
【表1】

【0139】
これらのデータは、Vドメインのみが、AGEとの相互作用を媒介するようであるということを示していた。未標識Vドメインの該効果は、用量依存的であり;100倍モル過剰では80%であった。これは、12.5倍モル過剰では、53%に減少し、1.56倍モル過剰の未標識Vドメインでは、拮抗しなかった(表2)
【表2】

【0140】
次に、sRAGEのVドメインの様々な部分を含む一連のペプチドを調製した。これらのデータは、以下のペプチド(sRAGEのアミノ酸番号:1-13、18-28、31-60、及び46-60からなるペプチド;表3)を用いると、50倍モル過剰で、実質的に全く拮抗が得られないことを示した。全く影響を与えなかったC1及びC2ドメインからの対照ペプチド(sRAGEのアミノ酸番号:それぞれ、157-169及び270-281からなる)も利用した(表3)
【表3−1】

【表3−2】

【0141】
しかしながら、Vドメインのアミノ酸番号1-30及び16-30からなるペプチドは、放射能ラベルされたsRAGEの固定化されたAGEへの結合を阻害した。50倍モル過剰では、sRAGEのアミノ酸番号1-30からなるペプチドは、25倍モル過剰で、78%結合を阻害し、sRAGEのアミノ酸番号1-30からなるペプチドは、76%結合を阻害し、1倍モル過剰では、全く拮抗しなかった(表3)。
【0142】
50倍モル過剰では、sRAGEのアミノ酸番号16-30からなるペプチドは、放射能ラベルされたsRAGEの固定化されたAGEへの結合を73%阻害し、25%モル過剰では、sRAGEのアミノ酸16-30からなるペプチドは、結合を20%阻害し、1倍モル過剰では、全く拮抗しなかった(表3)。次に、さらに正確な結合部位を描出するために、より小さなペプチド(sRAGEのアミノ酸番号1-25及び10-25からなるペプチド)を調製した。50倍モル過剰でさえ、sRAGEのアミノ酸番号1-25からなる未標識ペプチドは、放射能ラベルされたsRAGEの固定化されたAGEへの結合を31%阻害しただけであり、sRAGEのアミノ酸番号10-25からなる未標識ペプチドは、26%の拮抗効果しか有していなかった(表3)。これらのデータは、sRAGEのアミノ酸番号1-30からなるペプチドは、sRAGEの固定化されたAGEへの結合の有効な拮抗物質であることを示唆している。
【0143】
アミロイドβペプチドのsRAGEとの相互作用 まず、sRAGEを含む3つの細胞外ドメインの何れが、アミロイドβペプチドと相互作用するかを決定した。放射性リガンド結合によって、全ての未標識拮抗物質を100倍モル過剰量で利用すると、可溶性RAGE(完全長)は、固定化されたアミロイドβペプチドと放射能ラベルされたsRAGEとの結合を80%拮抗し、未標識のVドメインは71.4%拮抗したのに対して、C1及びC2ドメインは効果がない(それぞれ、15.2%と21.4%)ことが明らかとなった(表4)。
【表4】

【0144】
これらのデータは、Vドメインのみが、アミロイドβペプチドとの相互作用を媒介するようであることを示した。未標識Vドメインのこれらの効果は、用量依存性であった;100倍モル過剰では、72.5%の拮抗が観察された。50倍のモル過剰では、41.4%の拮抗が観察された。これは、25倍モル過剰では、34%に減少し、10倍モル過剰の未標識Vドメインでは、僅かな拮抗に減少した(表5)
【表5】

【0145】
次に、sRAGEのVドメインの様々な部分を含む一連のペプチドを調製した。これらのデータは、100倍モル過剰で、以下のsRAGEのアミノ酸:1-13、18-28、31-60、及び46-60(表6)からなるペプチドを用いると、実質的に全く拮抗が得られないことが示された。
【表6】

【0146】
全く効果を有しなかったC1及びC2ドメインからの対照ペプチド(それぞれ、sRAGEのアミノ酸番号157-169及び270-281からなるペプチド)も使用した(表6)。しかしながら、Vドメインの1-30から構成されるペプチドは、放射能ラベルされたsRAGEの固定化されたAGEへの結合を29.7%阻害した(表6)。続いて、
さらに正確な結合部位を描出するために、より小さなペプチド(sRAGEのアミノ酸番号1-25及びsRAGEのアミノ酸番号1-25)を調製した。100倍モル過剰でさえ、sRAGEのアミノ酸番号1-25からなる未標識ペプチドは、放射能ラベルしたsRAGEの固定化されたアミロイドβペプチドへの結合を5%しか阻害せず、未標識の10-25は、18%の拮抗効果しか有していなかった(表6)。これらのデータは、sRAGEのアミノ酸番号1-30からなるペプチドは、sRAGEの固定化されたアミロイドβペプチドへの結合の有効な拮抗物質である。
【0147】
考察
細胞表面上のRAGEとAGE又はアミロイドβペプチドとの相互作用は、それぞれ、糖尿病、網膜症、末梢血管ニューロパシー、男性の不能、老人性の記憶低下、又はアルツハイマー病のようなAGEが蓄積する疾病における合併症の進行の重要な寄与因子と思われる。可溶性RAGE、すなわちsRAGEの細胞外の2/3は、インビトロ及びインビボモデルで、慢性糖尿病合併症を含むこれらの効果をブロックすることによって、これらの疾患の薬物を開発するためのターゲットとして重要な示唆を与え得る。
【0148】
sRAGEのVドメインは、用量依存性に、完全長のsRAGEとAGE又はアミロイドβペプチドとの相互作用を媒介することが示された。さらに、Vドメインの最初の30アミノ酸は、これらの相互作用を媒介するのに関与していた。しかしながら、sRAGEの1-30アミノ酸中に存在する全てのアミノ酸が、この結合に必要というわけではない。sRAGEの最初の30アミノ酸(すなわち、Vドメインの)以外のより少ない数のアミノ酸は、AGE又はアミロイドβリガンドの相互作用部位を含む。本発明は、先に論述したようなアミノ酸を含むポリペプチドを含んだ化合物及び組成物を提供する。
【0149】
ヒト、マウス、ラット、及びウシの間では、Vドメインの最初の30アミノ酸のGenBankから得られた配列を調べると、顕著な相同性が明らかとなる(表7)。
【表7】

【0150】
例えば、Vドメインの最初の10アミノ酸のうち、アミノ酸残基2-9(最初の10アミノ酸のうち8)には、種間で完全な同一性が存在する。Vドメインの次の10アミノ酸(11-20)のうち、アミノ酸11、12、14、16、17、19、及び20を含む、10アミノ酸のうち7つに、種間で同一性が存在する。Vドメインのアミノ酸21-30のうち、4つの種間で同一性は、アミノ酸21、22、23、25、27、28、29、及び30を含む、10アミノ酸のうち8に同一性が存在する。
【0151】
それ故、全体的には、これまでにテストされた4種の間で、76%のアミノ酸同一性が存在する。これらのデータは、AGE又はアミロイドβペプチドのsRAGEとの結合に不可欠な配列は、Vドメインの最初の30アミノ酸の中に含有されているかもしれないというコンセプトと一致する。
【0152】
総合すれば、これらのデータは、Vドメインの最初の30アミノ酸が、AGE又はアミロイドβペプチドの何れかとsRAGEの相互作用を介する上で重要なことを示している。これは、Vドメイン領域が、糖尿病の合併症、老化、腎不全、アミロイドーシス、網膜症、末梢血管ニューロパシー、男性の不能、老人性の記憶低下、及びアルツハイマー病のようなAGEが蓄積する疾患を治療するためにデザインされた薬物を開発するための重要なターゲットとなり得ることを示唆する。
【0153】
例2:sRAGEは、糖尿病マウスの加速された歯周病を抑制する 糖尿病マウスで加速された歯周病のモデル及びsRAGEの効果を調べた。sRAGEの効果は、糖尿病(ストレプトゾトシンC57BL6/Jマウス)に示されている。可溶性RAGE(約40Kdaの完全長細胞外型)の投与は、歯周病の特徴である加速された歯周の骨喪失を阻害する。
【0154】
可溶性RAGEの腹腔内投与は、糖尿病(db+/db+)の骨喪失を抑制する。
【0155】
可溶性(s)RAGEの投与は、糖尿病で加速された歯周病のマウスモデルにおいて、歯周の骨喪失を抑制する。
ストレプトゾトシンを投与することによって、C57BL6/Jマウスに糖尿病を誘発した。300mg/dL異常の血清グルコースが2回連続して測定されると、糖尿病と定義した。他に、同数のマウスには、ストレプトゾトシンの代わりに、リン酸緩衝化された生理的食塩水を処置した。糖尿病を誘発してから1月後に、経口/肛門投与により、ヒトの歯周病原体であるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis;Pg)、又はビークル、リン酸緩衝化された生理的食塩水で、連続した4日間で1日置きに、マウスを処置した。二ヶ月後に、マウスを屠殺して、断頭した。下顎骨を単離し、解剖用顕微鏡(オリンパス)の下で、曲がった微細解剖用鉗子(2 3/4インチ、幅0.6mm)と15Cの刃のメスを用いて、
を用いて、各四分円後部領域から舌側歯肉組織を解剖した。まず、後歯の歯肉縁を水平溝切開した後、メスの刃で歯肉(完全厚)を反転させた。垂直開裂切開を行い、組織を除去した(粘膜歯肉接合部の直下で、水平切開により組織を分離する)。続いて、さらなる分析のために、組織をホルマリン(10%)の中に置いた。
【0156】
上記操作の後、下顎骨を3日間KOH(2%)に接触させた後、機械的に、肉を除去した。次に、実験用パテの中に顎(各1/2下顎骨の舌側表面の露出)を置いた。角形成(angulation)を変数として除去するために、埋め込みの間に、前記1/2下顎骨中の後骨の頬側及び舌側咬頭を重ね、写真の前に、舌側表面から眺めた。拡大解剖用顕微鏡とEktachrome(登録商標)160Tフィルム(カラースライド)を用いて、肉を除去した顎の写真を撮った。
【0157】
40倍の倍率で、これらのスライドを拡大し、続いてさらに4倍拡大した。次に、標準的なトレーシングペーパー上でイメージをトレースした。各マウスについて、マッキントッシュ(登録商標)コンピューター/スキャナーへのトレーシングをスキャンし、(Adobe PhotoshopTM photography programが付いた)プログラムNIH Image 157(登録商標)を用いてイメージを分析することによって、総計6つの後歯に対して、全領域のセメント−エナメル・ジャンクション(CEJ)と歯槽骨稜(BC;bone crest)間の距離を測定した。図1に示されているように、各マウスについて(6つの歯)全領域(任意のピクセルユニット)を報告する。一元配置の分散分析を用いて、統計分析を行った。2ヶ月で、糖尿病でない対照に比べて、糖尿病マウスでは、歯槽骨喪失に有意な1.55倍の増加が観察された(以下の具体的データを参照)。糖尿病でない対照対照(m+/db+)と比べて、Pgに感染してから1ヶ月後に、db+/db+マウス(遺伝的糖尿病−インシュリン耐性)で同様の結果が観察された。
【0158】
sRAGEの投与がPg処置されたCt7BL6/Jマウスの歯肉骨喪失を改善するかどうかをテストするために、ある糖尿病のマウスをsRAGEで処置した(MSR;35μgIP/日を2ヶ月、又は3.5μg/日を2ヶ月の何れか)。対照糖尿病マウスは、同じモル濃度のマウス血清アルブミン(70μg IP/日を2ヶ月)で処置した。全てのマウスをPgで処置した。この期間の終わりに、歯槽骨喪失の測定を行った。結果を以下に示す。
【0159】
症状 歯槽骨喪失(CEJから歯槽BC)
(1)糖尿病/アルブミン 6,222±406ピクセル(SD)
(2)非糖尿病/アルブミン 4,018±501ピクセル(SD)
(3)糖尿病/MSR(35μg/日) 5,242±463ピクセル(SD)
(4)糖尿病/MSR(3.5μg/日) 6,198±427ピクセル(SD)
多くの糖尿病性合併症は、AGEがRAGEと相互作用して、細胞の擾乱を引起こすことから生じ得る。AGEは、RAGEのVドメインに対するリガンドとして作用し、このような細胞の擾乱を媒介する。本発明は、糖尿病症状を伴った患者における細胞の擾乱を阻害する方法であって、細胞の表面上にあるRAGEとAGEの相互作用を阻害するのに有効な、ある量の前記相互作用の阻害剤を患者に投与することによって、患者における細胞の擾乱を阻害し、糖尿病症状を治療することを備えた方法を提供する。
【0160】
AGE(後生的グリケーション最終産物)は、一群の異種化合物である。単一の又は特定の病原性AGE化合物が同定されている。AGEの例には、ペントシジン(単独、又はタンパク質に結合して修飾)、カルボキシメチルリシン(単独、又はタンパク質に結合して修飾)、カルボキシエチルリシン(単独、又はタンパク質に結合して修飾);ピラルリンズ(単独、又はタンパク質に結合して修飾);メチルグリオキサール(単独、又はタンパク質に結合して修飾);及びエチルグリオキサール(単独又はタンパク質に結合して修飾)が含まれるが、これらに限定されない。これらのAGEの一つは、AGEとRAGEのVドメインとの相互作用による特異的な細胞の擾乱に対する病原性リガンドであり得る。該相互作用は、糖尿病を伴う多くの合併症において、不可欠な寄与因子であり得る。本発明は、糖尿病の合併症を有する患者に投与し得る、このような相互作用の阻害剤を提供する。
【0161】
細胞表面上のRAGEへのAGEのこの結合によって影響を受ける細胞には、内皮細胞、血管平滑筋細胞、神経細胞、マクロファージ、リンパ球、網膜血管細胞、網膜神経細胞、糸球体間質細胞、結合組織細胞、及び歯肉及び肌に付着した細胞のような結合組織に付着した細胞が含まれる。AGEのRAGEへのこの結合によって影響を受け得る細胞は、このリストに限られず、ヒトの身体に存在する他の細胞も含まれ得る。本発明は、該相互作用を阻害することによって、細胞の擾乱を改善し、最終的に糖尿病を伴う症状を改善するのに有用であり得る化合物及び組成物を提供する。
【0162】
本発明によって、sRAGE、又は他のペプチド、又は物質が提供されるこれらの細胞における細胞の擾乱には、酸化的ストレス、透過性亢進、血管細胞接着分子-1のような接着分子の発現の増大;組織因子の発現の増大;サイトカイン及び増殖因子の産生のような、マクロファージケモタクシスと活性化の増大;平滑筋細胞の遊走の増大;平滑筋細胞の活性化;神経の酸化的ストレス、及びアポトーシスが含まれる。後生的グリケーション最終産物(AGE)は、非酵素的なグリケーションと酸化の不可逆的な結果生じる。これらのAGEは、老化、糖尿病、炎症、腎不全、アミロイドーシス、及び高脂血症のような多数の症状とともに形成する。AGEは、また、本明細書に明確に明記されていないが本発明に包含される他の病状及び異常な症状とともに形成する。
【0163】
例3:インビトロ手段で同定された治療剤は、糖尿病合併症に伴う症状の阻害にインビボで有効であることが示されている。
同定された治療剤は、創傷治癒に有効であることが示され得る。創傷治癒の実験では、遺伝的糖尿病マウスにおける二次過程創傷モデル(secondary intention wound moder)が使用できよう。物質(又はペプチド又は薬学的組成物)を創傷領域に局所的に適用し、創傷を閉じ(創傷領域の変化)、上皮形成と(コラーゲン産生、細胞外マトリックス産生、フィブリン等のような)他の組織学的指標を測定する。これらの各測定は、前記物質の創傷治癒増加に対する有効性の指標である。
【0164】
歯周病では、遺伝的糖尿病マウス及びストレプトゾトシン処置マウスが、配列番号1の配列を有するペプチドによる処置後の骨喪失を調べるための動物モデル系として利用される。骨喪失は、組織学的方法及び幾何学的な領域決定により、定量的に測定される。配列番号1のペプチド、Vドメインペプチド、物質又は組成物は、局所的に(例えば、物質に”塗り付ける”)、及び/又は全身に投与される。
【0165】
加速されたアテローム動脈硬化症では、通常の食餌を与えた、ストレプトゾトシン処理されたアポE”ノックアウト”マウスが、該疾病症状の動物モデルとして利用される。該物質は(又はペプチド又は薬学的組成物)は、全身投与され、処置後に、動物の病表領域を測定することによって、定量データが集められる。非処置対照に比べて、病変領域が小さいほど、物質は、より有効である。
【0166】
糖尿病性インポテンスでは、ストレプトゾトシン処置したラットモデル動物を利用し、アポモルフィンを投与した後に、勃起をモニターする。物質の存在下及び非存在下において、勃起の回数と頻度を測定し、このようなデータを比較し、インポテンスの症状を抑制する物質の有効性を評価する。
【0167】
糖尿病性網膜症では、糖尿病ラット及びマウスモデルを実験モデル動物系として使用して、血流と網膜の病理の変化を測定する。ここでも、物質(又はペプチド又は薬学的組成物)は全身投与され、処置後に、血流により定量データを集め、動物の網膜の病理を調べることによって、定性データを集める。
【0168】
糖尿病性ネフロパシーでは、糖尿病性ネフロパシーの動物モデルとして、糖尿病マウスとラットモデルを利用する。治療剤を与えた動物で、及びプラセボを与えた動物で、糸球体濾過率及び腎血流量の変化を測定する。さらに、尿中へのタンパクの出現、及び糸球体の組織学的変化を動物毎に調べる。糖尿病性ネフロパーシーの阻害における、物質の有効性は、これらの測定に基づいて評価される。
【0169】
糖尿病性ニューロパシーでは、本発明の物質の有効性を決定するための動物モデルとして遺伝的糖尿病マウスを利用する。化合物でマウスを全身的に処置する。次に、神経伝達速度の変化及びミエリン化された抹消神経繊維の数の変化を決定するために観察される。未処置動物で決定した同様の測定をこのようなデータと比較すれば、本発明の物質の有効性の指標が与えられるであろう。
【参考文献1】
【0170】

【参考文献2】
【0171】

【参考文献3】
【0172】

【参考文献4】
【0173】

【参考文献5】
【0174】

【参考文献6】
【0175】

【参考文献7】
【0176】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
後生的グリケーション最終産物受容体のVドメインのアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有する単離されたペプチド。
【請求項2】
請求項1のペプチドであって、前記アミノ酸配列が、アミノ酸配列A-Q-N-I-T-A-R-I-G-E-P-L-V-L-K-C-K-G-A-P-K-K-P-P-Q-R-L-E-W-K(配列番号1)であるペプチド。
【請求項3】
請求項1のペプチドであって、前記アミノ酸配列が、G-Q-N-I-T-A-R-I-G-E-P-L-V-L-S-C-K-G-A-P-K-K-P-P-Q-Q-L-E-W-K(配列番号2)であるペプチド。
【請求項4】
請求項1に記載のペプチドであって、前記アミノ酸配列が、G-Q-N-I-T-A-R-I-G-E-P-L-M-L-S-C-K-A-A-P-K-K-P-T-Q-K-L-E-W-K(配列番号3)であるペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載のペプチドであって、前記アミノ酸配列が、D-Q-N-I-T-A-R-I-G-K-P-L-V-L-N-C-K-G-A-P-K-K-P-P-Q-Q-L-E-W-K(配列番号4)であるペプチド。
【請求項6】
治療的有効量の請求項1のペプチドと薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項7】
前記担体が、賦形剤、エアロゾル、局所担体、水溶液、非水溶液、又は固相担体である請求項6の薬学的組成物。
【請求項8】
前記担体が、ポリマー又は歯磨き粉である請求項6の薬学的組成物。
【請求項9】
抗体又はその一部に連結された治療的有効量の請求項1のペプチドを含む薬学的組成物。
【請求項10】
前記抗体が、後生的グリケーション最終産物受容体に特異的に結合することができる請求項9の薬学的組成物。
【請求項11】
前記抗体が、モノクローナル抗体である請求項9の薬学的組成物。
【請求項12】
前記抗体が、ポリクローナル抗体である請求項9の薬学的組成物。
【請求項13】
前記抗体の一部が、Fab又はFcを含む請求項9の薬学的組成物。
【請求項14】
前記抗体の一部が、相補性決定領域又は可変領域である請求項9の薬学的組成物。
【請求項15】
後生的グリケーション最終産物受容体が細胞の表面上に存在するときにアミロイドβペプチドと前記受容体の相互作用を阻害する方法であって、前記アミロイドβペプチドと前記後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害するのに有効な量の前記相互作用の阻害剤に、前記細胞を接触せしめることを備えた方法。
【請求項16】
前記細胞が真核細胞である請求項15の方法。
【請求項17】
前記細胞が患者の細胞である請求項16の方法。
【請求項18】
前記患者がヒト請求項15の方法。
【請求項19】
前記細胞が、神経細胞、内皮細胞、グリア細胞、ミクログリア細胞、平滑筋細胞、体細胞、骨髄細胞、肝細胞、腸細胞、生殖細胞、筋細胞、単核貪食細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、リンパ球細胞、糸球体間質細胞、網膜上皮細胞、網膜血管細胞、神経節細胞、又は幹細胞である請求項17の方法。
【請求項20】
前記細胞が、正常な細胞、活性化された細胞、新生物細胞、病気を持った細胞、又は感染した細胞である請求項15の方法。
【請求項21】
前記阻害剤が、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸分子、小分子、有機化合物、無機化合物、又は抗体若しくはその断片を含む請求項15の方法。
【請求項22】
前記阻害剤が、請求項1の単離されたペプチドである請求項15の方法。
【請求項23】
前記阻害剤が、後生的グリケーション最終産物受容体の可溶性Vドメインである請求項15の方法。
【請求項24】
前記阻害剤が、抗体又はその断片を含む請求項15の方法。
【請求項25】
前記抗体が、後生的グリケーション最終産物受容体に特異的に結合することができる請求項24の方法。
【請求項26】
前記抗体が、モノクローナル抗体である請求項24の方法。
【請求項27】
前記抗体が、ポリクローナル抗体である請求項24の方法。
【請求項28】
前記抗体断片が、Fab又はFc断片を含む請求項24の方法。
【請求項29】
前記抗体の断片が、相補性決定領域を含む請求項24の方法。
【請求項30】
前記阻害剤が、アミロイドβペプチドに特異的に結合することができる請求項15の方法。
【請求項31】
神経細胞の変性を阻害する方法であって、細胞をアミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用の阻害剤と接触せしめて、前記相互作用を阻害することによって、前記神経細胞の変性を阻害することを備えた方法。
【請求項32】
細胞上へのアミロイドβペプチド原繊維の形成を阻害する方法であって、アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用の阻害剤と前記細胞を接触させて前記相互作用を阻害することにより、アミロイドβペプチド原性が細胞上に形成するのとを阻害する方法。
【請求項33】
アミロイドβペプチドが細胞外で集合して原繊維になるのを阻害する方法であって、あるアミロイドβペプチドと別のアミロイドβペプチドとの相互作用を阻害する阻害剤に前記アミロイドβペプチドを接触させて、前記相互作用を阻害することにより、アミロイドβペプチドが細胞外で集合して原繊維になるのを阻害することを備えた方法。
【請求項34】
アミロイドβペプチドが細胞の表面上に凝集するのを阻害する方法であって、前記アミロイドβペプチドを、前記アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害する阻害剤と接触させて前記相互作用を阻害することによって、細胞の表面上にアミロイドβペプチドが凝集するのを阻害することを備えた方法。
【請求項35】
ミクログリア細胞が老人斑の中に浸潤するのを阻害する方法であって、前記ミクログリア細胞を、アミロイドβペプチドとミクログリア細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害する阻害剤と接触させて前記相互作用を阻害することによって、老人斑の中にミクログリア細胞が浸潤するのを阻害することを備えた方法。
【請求項36】
アミロイドβペプチドによってミクログリア細胞が活性化するのを阻害する方法であって、前記ミクログリア細胞を、アミロイドβペプチドとミクログリア細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害する阻害剤と接触させて前記相互作用を阻害することによって、ミクログリア細胞が活性化することを備えた方法。
【請求項37】
細胞上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体とアミロイドβペプチドとの相互作用に伴う症状を有する患者を治療する方法であって、アミロイドβペプチドと後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害し得る阻害剤を前記患者に投与することを備え、前記阻害剤が、前記アミロイドβペプチドと前記受容体との相互作用を阻害するのに有効な量で存在することによって、前記患者を治療する方法。
【請求項38】
前記症状が、糖尿病、アルツハイマー病、老化、腎不全、高脂質アテローム性動脈硬化症、神経細胞毒性、ダウン症候群、頭部外傷に伴う痴呆、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アミロイドーシス、自己免疫疾患、炎症、腫瘍、癌、男性の不能、創傷治癒、歯周病、ニュロパシー、網膜症、ネフロパシー、又は神経の変性である請求項37の方法。
【請求項39】
前記患者が哺乳動物である請求項37の方法。
【請求項40】
前記哺乳動物がヒトである請求項39の方法。
【請求項41】
前記投与が、病変部位内、腹腔内、筋肉内、又は静脈内注射;注入;リポソームを介した輸送;局所、鼻腔、経口、肛門、皮下、膣、舌下、尿道、経皮、鞘内、眼、又は耳への投与である請求項37の方法。
【請求項42】
前記症状が、患者の神経細胞の変性を伴う請求項37の方法。
【請求項43】
前記症状が、アミロイドβペプチド原繊維の形成を伴う請求項37の方法。
【請求項44】
前記症状が、アミロイドβペプチドの凝集を伴う請求項37の方法。
【請求項45】
前記症状が、ミクログリア細胞の老人班への浸潤を伴う請求項37の方法。
【請求項46】
前記症状が、アミロイドβペプチドによるミクログリア細胞の活性化を伴う請求項37の方法。
【請求項47】
前記阻害剤が、実質的に請求項1のペプチドの一部からなる請求項37の方法。
【請求項48】
前記阻害剤が、請求項6の薬学的組成物を含む請求項37の方法。
【請求項49】
ある物質が、アミロイドβペプチドが細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体のVドメインと結合するのを阻害する能力を評価する方法であって、
(a)前記細胞を前記物質とアミロイドβペプチドに接触させることと;
(b)前記細胞に結合したアミロイドβペプチドの量を決定することと;
(c)ステップ(b)で決定した、結合したアミロイドβペプチドの量と前記物質の
非存在下で決定した量を比較して、前記物質が、アミロイドβペプチドが前
記細胞の表面上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体のVド
メインに結合するのを阻害する能力を評価することと;
を備えた方法。
【請求項50】
前記細胞が、前記物質及び前記アミロイドβペプチドと同時に接触される請求項49の方法。
【請求項51】
前記細胞が、前記アミロイドβペプチド及び前記物質と接触される請求項49の方法。
【請求項52】
前記細胞が、神経細胞、内皮細胞、グリア細胞、ミクログリア細胞、平滑筋細胞、体細胞、骨髄細胞、肝細胞、腸細胞、生殖細胞、筋細胞、単核貪食細胞、内皮細胞、腫瘍細胞、リンパ球細胞、糸球体間質細胞、網膜上皮細胞、網膜血管細胞、神経節細胞、又は幹細胞である請求項49の方法。
【請求項53】
前記物質が、ペプチド、ペプチド模倣物、核酸分子、小分子、有機化合物、無機化合物、又は抗体若しくはその断片を含む請求項49の方法。
【請求項54】
前記物質が、アミノ酸配列A-Q-N-I-T-A-R-I-G-E-P-L-V-L-K-C-K-G-A-P-K-K-P-P-Q-R-L-E-W-K(配列番号1)を有するペプチドである請求項49の方法。
【請求項55】
前記物質が、アミノ酸配列A-Q-N-I-T-A-R-I-G-E(配列番号5)を有するペプチドである請求項49の方法。
【請求項56】
前記物質が、後生的グリケーション最終産物の可溶性Vドメインである請求項49の方法。
【請求項57】
前記物質が、後生的グリケーション最終産物の可溶性細胞外部分である請求項49の方法。
【請求項58】
前記物質が、抗体若しくはその断片であり、又は抗体若しくはその断片に連結されている請求項49の方法。
【請求項59】
前記抗体が、後生的グリケーション最終産物受容体を特異的に結合することができる請求項58の方法。
【請求項60】
前記抗体が、モノクローナル抗体である請求項58の方法。
【請求項61】
前記抗体が、ポリクローナル抗体である請求項58方法。
【請求項62】
前記抗体の断片が、Fab又はFcを含む請求項58の方法。
【請求項63】
前記抗体の断片が、相補性決定領域を含む請求項58の方法。
【請求項64】
前記物質が、アミロイドβペプチドに特異的に結合することができる請求項49の方法。
【請求項65】
前記物質が、固相支持体に結合されている請求項49の方法。
【請求項66】
前記物質が、細胞の表面上に発現されている請求項49の方法。
【請求項67】
細胞中のNF-kB遺伝子の活性化を阻害する方法であって、前記細胞を、アミロイドβペプチドと細胞上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体との相互作用を阻害する阻害剤に接触させて前記相互作用を阻害することにより、前記細胞中のNF-kBの活性化を阻害することを備えた方法。
【請求項68】
患者の歯周病を抑制する方法であって、創傷治癒を促進するのに有効な量のsRAGEを含む薬学的組成物を、前記患者に局所投与することにより、歯周病を抑制することを備えた方法
【請求項69】
前記薬学的組成物が、歯磨き粉中にsRAGEを含む請求項71の方法。
【請求項70】
後生的グリケーション最終産物受容体が細胞の表面上に存在するときに、後生的グリケーション最終産物と前記受容体との相互作用を阻害する方法であって、前記後生的グリケーション最終産物と前記後生的グリケーションの受容体との相互作用を阻害するのに有効な量の、前記相互作用の阻害剤に、前記細胞を接触させることを備えた方法。
【請求項71】
前記細胞が、内皮細胞、血管平滑筋細胞、神経細胞、マクロファージ、リンパ球、網膜血管細胞、網膜神経細胞、歯肉に付随した細胞、皮膚に付随した細胞、糸球体間質細胞、又は結合組織細胞である請求項70の方法。
【請求項72】
後生的グリケーション最終産物が、ペントシジン、カルボキシメチルリシン、カルボキシエチルリシン、ピラルリンズ、イミジザロン、メチルグリオキサール、エチルグリオキサールである請求項70の方法。
【請求項73】
細胞上に存在する後生的グリケーション最終産物受容体と後生的グリケーション最終産物との相互作用を伴う症状を有する患者を治療する方法であって、前記後生的グリケーション最終産物受容体と前記後生的グリケーション最終産物との相互作用を阻害し得る阻害剤を患者に投与することを備え、前記阻害剤が、前記受容体と前記後生的グリケーション最終産物との相互作用を阻害するのに有効な量で存在することによって、前記患者を治療する方法。
【請求項74】
前記症状が、糖尿病に伴い得る。前記症状は、糖尿病、糖尿病に伴う腎不全、高脂質アテローム性動脈硬化症、神経細胞毒性、ダウン症候群、頭部外傷に伴う痴呆、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、アミロイドーシス、自己免疫疾患、炎症、腫瘍、癌、男性の不能、創傷治癒、歯周病、ニュロパシー、網膜症、ネフロパシー、又は神経の変性である請求項73の方法。
【請求項75】
前記後生的グリケーション最終産物が、ペントシジン、カルボキシメチルリシン、カルボキシエチルリシン、ピラルリンズ、イミジザロン、メチルグリオキサール、エチルグリオキサールである請求項73の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−143932(P2010−143932A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−2870(P2010−2870)
【出願日】平成22年1月8日(2010.1.8)
【分割の表示】特願2000−515619(P2000−515619)の分割
【原出願日】平成10年10月9日(1998.10.9)
【出願人】(592104782)ザ・トラスティーズ・オブ・コランビア・ユニバーシティー・イン・ザ・シティー・オブ・ニューヨーク (21)
【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF COLUMBIA UNIVERSITY IN THE CITY OF NEW YORK
【Fターム(参考)】