説明

RCコンクリート仮枠用バイブスコップ

【課題】簡単な構造で、生コンクリートの表面の気泡を容易に抜き取る事が出来る気泡抜取り装置を提供する。
【解決手段】コンクリートバイブレーターの棒形振動体25を挿入して固定するための受け部と、その受け部と一体となるように構成した平板状で台形形状をした生コンクリート挿入板12と、その生コンクリート挿入板12を、仮枠内の生コンクリートに挿入、抜き取りする為のコの字形の取っ手部で構成した事により、コンクリートバイブレーターの棒形振動体25の振動が生コンクリート挿入板12に伝達され、仮枠内の生コンクリートへの押込み、引抜きが容易に行う事が可能となり、生コンクリートの表面の気泡を容易に抜取る事が出来るようになった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RCコンクリートの建物の外壁仮枠に打設された生コンクリートの表面の気泡を取る際に使用する気泡取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生コンクリートには、通常、3〜6%の空気が含まれている為、コンクリート仮枠に生コンクリートを打設して、そのまま硬化させた場合には、コンクリートの表面に無数の気泡痕(空気あばた)が残る。その為、従来においては、生コンクリートの打設後に振動式の空気抜き取り装置を仮枠の外側に押し当て、生コンクリートの表面側の気泡を抜き取る方法(特許文献1参照)や、コンクリート仮枠の内面に沿って櫛歯(特許文献2参照)を挿入して生コンクリートの表面側の気泡を除去してきた。
【0003】
また、基礎仮枠に生コンクリートを打設する際に基礎コンクリートの表面に発生する気泡に関しては、気泡除去装置(特許文献3参照)を基礎仮枠の内面に沿って挿入して気泡を除去してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
前記、振動式の空気抜き取り装置は、振動源と振動体を備え、振動体をコンクリート仮枠の外側に押し付けてコンクリート仮枠を振動させ、気泡を抜き取るように構成されている。
【特許文献1】特開2002―295019
【0005】
また、櫛歯の空気抜き取り装置は、櫛状の櫛歯をコンクリート仮枠の内面に沿って挿入して生コンクリートの表面の気泡を抜き取るためのものである。
【特許文献2】特開2004―197443
【0006】
さらに、基礎仮枠に使用する気泡除去装置は、モーターの回転によって振動部を振動させる把手付モーターに、アルミニウム製で長方形状の薄板に複数の小孔を設けた振動版を取付け、基礎仮枠の内面に沿って挿入して気泡を除去してきた。
【特許文献3】特開2007―327226
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記、振動式の空気抜き取り装置においては、振動体をコンクリート仮枠の外側に押し付けて振動させる為、作業者の体力が非常に消耗すると共に、気泡の抜き取りにバラツキが生じ易いといった問題があった。
【0008】
さらに、櫛歯の空気抜き取り装置においては、櫛歯をコンクリート仮枠の内面にそって挿入する際に、生コンクリートからの摩擦抵抗を直接受けるため、作業者の体力を消耗するといった問題があった。
【0009】
さらに、基礎仮枠に生コンクリートを打設する際に気泡を除去するために使用される気泡除去装置においては、基礎仮枠の気泡除去専用に作られているため、RCコンクリートの建物外壁の気泡を取除くためには、装置が重く嵩張り、さらに振動板の長さが短い為、基礎と比べて階上高さがある建物の外壁仮枠の内面に使用する事は困難であった。
【0010】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、簡単な構造で簡便に使用する事が出来ると共に、本発明のRCコンクリート仮枠用バイブスコップを仮枠内の生コンクリートに挿入、抜取りする際にも作業者の体力疲労を最小限に抑える事を可能とし、生コンクリートの表面の気泡を容易に抜取る事が出来る気泡抜取り装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決する為、請求項1に記載の発明は、コンクリート仮枠の内面に沿って挿入して生コンクリートの表面側の気泡を取るための気泡取り装置であり、コンクリートバイブレーターの棒形振動体を挿入して固定するための受け部と、その受け部と一体となるように構成した平板状で台形形状をした生コンクリート挿入板と、その生コンクリート挿入板を、仮枠内の生コンクリートに挿入、抜き取りするためのコの字形の取っ手部で構成した事を特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、コンクリートバイブレーターの棒形振動体を取外し可能にした事を特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構造に加え、コンクリートバイブレーターの棒形振動体の振動が、生コンクリート挿入板に伝達されるように構成された事により、生コンクリート挿入板が生コンクリートを周囲に押し退け、生コンクリートへの押込み、引抜きが補助されるようになった事を特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、従来から、一般に広く普及しているコンクリートバイブレーターの棒形振動体の振動を利用して、コンクリート仮枠の内面に沿って挿入して生コンクリートの表面側の気泡を取るための気泡取り装置であり、コンクリートバイブレーターの棒形振動体を挿入して固定するための受け部と、その受け部と一体となるように構成した平板状で台形形状をした生コンクリート挿入板と、その生コンクリート挿入板を、仮枠内の生コンクリートに挿入、抜き取りするためのコの字形の取手部で構成される為、コンクリートバイブレーターの棒形振動体の振動が生コンクリート挿入板に伝わり、軽量で安価な気泡取り装置を提供する事が可能となった。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、従来から、生コンクリートは打ち込まれる際に、エントラップドエアーと呼ぶコンクリートにとって不要な空気を巻き込む為、その内部に径の大きな空げきを有している。その為、仮枠に生コンクリートを打ち込みした後に、生コンクリートの締め固めを行っている。その際、壁仮枠の生コンクリートの締め固めには、棒形振動機と仮枠振動機を利用している。仮枠振動機はせき板を介して振動を生コンクリートに伝えるので、振動が作用する範囲は表面部分に限られる。したがって、コンクリートの内部を締め固めるのには適していない。従って、一般的には生コンクリートに直接、振動を加えるほうが効果的なことから棒形振動機が広く普及している。このように生コンクリートの締め固めに使用される棒形振動機(コンクリートバイブレーター)の振動体を、生コンクリートの表面の気泡を容易に抜取る事が出来る気泡抜取り装置に応用する事により、一台の棒形振動機(コンクリートバイブレーター)を仮枠内部の生コンクリートの締め固めと、仮枠表面側の気泡を取る為に併用して使用する事が可能となり、経費の削減につながる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、コンクリートバイブレーターの棒形振動体の振動が、生コンクリート挿入板に伝達されるように構成された事により、生コンクリート挿入板が生コンクリートを周囲に押し退け、生コンクリートへの押込み、引抜きが補助されるようになった事により、作業者の体力の消耗を軽減する事が可能となり、同時に作業のスピードが上がり、コストの低減につながる。
【実施例】
【0017】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態]
【0018】
図1及至図3には、この発明の実施の形態を示す。
【0019】
図1は、本発明のRCコンクリート仮枠用バイブスコップの部品展開図(図1a)と、コンクリートバイブレーターの棒形振動体を挿入して固定するための受け部の分解立体図(図1b)である。バイブ組込部9は2枚の挟込材13、挟込材14で構成され、挟込材13は、図2で説明するコンクリートバイブレーター26の棒形振動体25を挟み込む事が出来るように、中央が円弧状に形成されると共に、下部18が斜めに閉塞状態に成形され、さらに、その円弧状の左右に挟込材13を固定するため、左右に固定穴15が3箇所づつ開けられたプレート状の固定板21で構成される。
【0020】
同様に、挟込材14も、図2で説明するコンクリートバイブレーター26の棒形振動体25を挟み込む事が出来るように、中央が円弧状に形成されると共に、下部17が斜めに閉塞状態に成形され、さらに、その円弧状の左右に挟込材14を固定するため、左右に固定穴22が3箇所づつ開けられたプレート状の固定板23で構成される。
【0021】
また、生コンクリート挿入板12は薄板状の鋼板を上下を逆さにした台形形状に構成され、台形状の底辺(この場合は上部にあたる)と挟込材14の下部が溶接により固定される。
【0022】
さらに、コの字形の取っ手部20は、鋼管の取っ手1の両端を、取っ手下部3が板状に潰れた鋼管の取っ手2と、取っ手下部5が板状に潰れた鋼管の取っ手4の上端部を溶接して固定し、さらに、取っ手1の中間下部にフック6を取付ける。
【0023】
このように構成した取っ手部20の、取っ手下部3と、取って下部5を生コンクリート挿入板12の台形状の底辺(この場合は上部にあたる)と溶接して固定する。
【0024】
さらに、取っ手部20と、バイブ組込部9と生コンクリート挿入板12を強固に固定する為に、三角形状をした平鋼の補強材8、補強材10を挟込材14の左右の固定板23と、生コンクリート挿入板12の台形状の底辺(この場合は上部にあたる)と溶接して固定する。また、概三角形の形状をした平鋼の補強材7を取っ手下部3と生コンクリート挿入板12の台形状の底辺(この場合は上部にあたる)と溶接して固定する。同様に、概三角形の形状をした平鋼の補強材11を取っ手下部5と生コンクリート挿入板12の台形状の底辺(この場合は上部にあたる)と溶接して固定する。
【0025】
このように構成したRCコンクリート仮枠用バイブスコップの挟込材14の円弧状の部分に、図2で説明するコンクリートバイブレーター26の棒形振動体25を挿入し、挟込材13の円弧状の部分を挟み込み、固定穴15、固定穴22にボルト16を差し込みナット19で固定する事により、コンクリートバイブレーター26の棒形振動体25はバイブ組込部9に組み込まれ固定される。このように、挟込材13は棒形振動体25を組込み、取外し可能に出来るようにする為、生コンクリート挿入板12と溶接等で接合しない。
【0026】
図2は、一般に市販されているコンクリートバイブレーター26と、図1の部品展開図で説明した、本発明のRCコンクリート仮枠用バイブスコップを組立てた状態を正面図と側面図で示す。なお、コンクリートバイブレーター26は、生コンクリートの中に挿入して使う、棒形振動機(内部振動機)の棒形振動体25と、棒形振動体25をON、OFFする為の電源スイッチ29と電源コード30、電源プラグ31から構成されている。
【0027】
図3は、図2で説明したコンクリートバイブレーター26を、本発明のRCコンクリート仮枠用バイブスコップに組み込んだ状態を示す。現場では、コンクリートバイブレーター26のホース27が作業の妨げにならないようにフック6に絡ませて使用する。
【0028】
操作方法は、壁仮枠に生コンクリートを打ち込みした後、このように構成されたRCコンクリート仮枠用バイブスコップのコンクリートバイブレーター26の電源をONさせ、取っ手2と、取って4を両手で掴み、生コンクリート挿入板12を壁仮枠の内面にそって挿入、抜き取りする事により、壁仮枠に張り付いた表面側の気泡を取り除く事が容易に可能となる。
【0029】
以上、実施の形態に基づいて、本発明に係るRCコンクリート仮枠用バイブスコップについて詳細に説明してきたが、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種の改変をなしても、本発明の技術的範囲に属するのはもちろんである。
【0030】
図1において、生コンクリート挿入板12は、薄板状の鋼板を上下を逆さにした台形形状で構成されているが、生コンクリート挿入板12は熊手のような形状や、先端が一直線ではなく波板形状に形成される事も可能である。
【0031】
図1において、補強材7、8、10、11の形状は、バイブ組込部9と生コンクリート挿入板12、取っ手部20を補強する為の最小限度の補強をしたのであり、この形状に拘わらず他形状の補強材を用いる事も、もちろん可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施の形態に係る、RCコンクリート仮枠用バイブスコップの部品展開図と、コンクリートバイブレーターの棒形振動体を挿入して固定するための受け部の分解立体図である。
【図2】同実施の形態に係る、コンクリートバイブレーターとRCコンクリート仮枠用バイブスコップの正面図と側面図である。
【図3】同実施の形態に係る、RCコンクリート仮枠用バイブスコップにコンクリートバイブレーターを組み込んだ正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 取っ手
2 取っ手
3 取っ手下部
4 取っ手
5 取っ手下部
6 フック
7 補強材
8 補強材
9 バイブ組込部
10 補強材
11 補強材
12 生コンクリート挿入板
13 挟込材
14 挟込材
15 固定穴
16 ボルト
17 下部
18 下部
19 ナット
20 取っ手部
21 固定板
25 棒形振動体
26 コンクリートバイブレーター
27 ホース
28 スイッチケース
29 電源スイッチ
30 電源コード
31 電源プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート仮枠の内面に沿って挿入して生コンクリートの表面側の気泡を取るための気泡取り装置であり、コンクリートバイブレーターの棒形振動体を挿入して固定するための受け部と、その受け部と一体となるように構成した平板状で台形形状をした生コンクリート挿入板と、その生コンクリート挿入板を、仮枠内の生コンクリートに挿入、抜き取りするためのコの字形の取っ手部で構成した事を特徴とするRCコンクリート仮枠用バイブスコップ。
【請求項2】
コンクリートバイブレーターの棒形振動体を取外し可能にした事を特徴とする請求項1記載のRCコンクリート仮枠用バイブスコップ。
【請求項3】
コンクリートバイブレーターの棒形振動体の振動が、生コンクリート挿入板に伝達されるように構成された事により、生コンクリート挿入板が生コンクリートを周囲に押し退け、生コンクリートへの押込み、引抜きが補助されるようになった事を特徴とする請求項1又は2に記載のRCコンクリート仮枠用バイブスコップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−26828(P2011−26828A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173234(P2009−173234)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(504196492)株式会社 ▲高▼▲橋▼監理 (33)
【Fターム(参考)】