説明

RF無線エネルギー伝送を利用したバイオ分子結合検出装置及びその方法

【課題】 バイオ分子の形成されるレクテナを含むセンサーモジュールに伝送されるエネルギーが充電されるRF無線エネルギーの充電時間の差を測定してバイオ分子結合を検出するRF無線エネルギーを利用したバイオ分子結合検出装置及びその方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、固定された1つまたは複数のプローブバイオ分子を有し、RFエネルギーを受信するレクテナを備えるセンサーモジュールと、前記RFエネルギーを前記レクテナへ伝送するアンテナを有し、1つまたは複数のプローブバイオ分子と1つまたは複数の試料バイオ分子との結合前後に、前記伝送されたRFエネルギーにより前記センサーモジュールの充電時間の差を決定することによってバイオ分子結合の発生を検出する本体と、を含む構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ分子結合検出装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオチップとは、ガラス、シリコン、またはナイロンなどの材質から構成された小さい固形の基板上にその序列が知られたDNA、DNA欠片、RNAなどのバイオ分子(biomolecules)を数百個から数十万個まで一定間隔で配列し付着することで、遺伝子の発現方式、分布の様相及び突然変異などを分析できる生物学的マイクロチップを言う。バイオチップ技術は、狭義では遺伝子分析の先端技術として認められているDNAマイクロアレイ技術を指しているが、広義では生体物質と既存の物理、化学、及び光変換機とを組み合せたバイオセンサー(biosensor)、DNA探針の内蔵されたDNAマイクロアレイ、酵素や抗体抗原などのようなタンパク質が用いられたタンパク質チップ、植物細胞を用いたセルチップ(cell chip)、神経細胞を直接用いたニューロンチップ(neuron chip)などを指す。
【0003】
バイオチップ上には試料に含まれた特定遺伝情報の探索を可能にするプローブ(probe)の役割を果たす物質をチップの表面に固定させる。バイオチップに分析する試料を反応させると、試料に含有されている物質とバイオチップ表面に固定されたプローブとは互いに結合され混成化(hybridization)状態をなし、これを検出/解析することで試料が含有している物質に関する情報を同時に得られる。
【0004】
バイオチップと関連する技術としてプローブの付着及び固定技術、信号検出技術、及び情報処理技術などがある。現在、使用されている信号検出方法は、光学的バイオ結合検出法、化学的変化を利用したバイオ結合検出法、機械的変化を利用したバイオ結合検出法などがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光学的バイオ分子結合検出方法は、試料に蛍光物質を結合させ、試料とプローブバイオ分子との結合反応後に蛍光検出機器でその結果を判読することで、光学的にプローブバイオ分子との結合の有無を区別する方法である。しかし、この方法はプローブバイオ分子と試料バイオ分子との結合の反応前に、試料バイオ分子に蛍光物質を結合させる前処理反応を必要とするので、試料の損失や汚染が生じる恐れがある。また、プローブバイオ分子と試料バイオ分子との結合反応後にこれを判別するための光学判読計が複雑であり、高価な計測装備を必要とする。しかも、光学的検出法は小型化を図るのが困難であり、デジタル化した出力が見られない問題がある。
【0006】
機械的変化を利用したバイオ分子結合検出方法は、カンチレバー(cantilever)を用いる場合、SAW(Surrace Acoustic Wave)バイオセンサーを用いる場合、そして、SPM(Scanning Probe Microscope)を用いる場合がある。
カンチレバーを用いる方法は、プローブバイオ分子と試料バイオ分子との結合の前後の分子間の結合力を測定してバイオ結合の有無を検出する。しかし、この方法はカンチレバービーム(beam)の屈折を、極めて精密に測定しなければならないためレーザなどの付随的な装備が必要となる。
【0007】
SAWバイオセンサーを用いる方法は、特定周波数の信号を入力しSAWフィルタ上に形成されたプローブバイオ分子と試料バイオ分子との反応によるSAWフィルタのフィルタリングの変化を利用してバイオ結合の有無を検出する。
そして、SPMを用いるバイオ分子結合検出方法は、レーザ装備とフォトダイオード(photodiode)などの付随的な装備を必要とする問題がある。
【0008】
化学的変化を利用したバイオ分子結合検出方法は、プローブバイオ分子と試料バイオ分子との結合が起こった電極上で他の化学物質の電気化学反応、すなわち、反応の度合いを利用してプローブバイオ分子の結合の有無を検出する方法である。しかし、この方法は光学的バイオ結合検出法に比べて検出力が落ちる問題がある。
電気的変化を利用したバイオ分子結合検出方法は、トレンチ型キャパシタンス素子を用いる場合、及び平面型キャパシタンス素子を用いる場合がある。
【0009】
キャパシタンス素子の特性変化を利用する場合において、小型キャパシタンス素子を形成するのに問題がある。キャパシタンスは断面積に比例し厚さに反比例するため、断面積を大きくしながらバイオ処理が容易に施されるよう設計しなければならないが、このように設計することは困難である。
トレンチ型キャパシタンスを用いたバイオ結合検出方法は、トレンチを深く形成して厚さを薄くし断面積を大きくする方法を利用したことで、実際、ギャップ(gap:隙間)が非常に小さくてバイオ処理を施すのは困難である。
【0010】
平面でコーム(comb)状にキャパシタンス素子を形成したキャパシタを用いたバイオ分子結合検出方法は、金属膜の厚さが非常に薄くて少数のキャパシタンス素子しか形成することがでない。そのため、バイオ分子結合検出感度が良くない問題がある。
本発明は、前記のような問題を鑑みてなされたものであって、その目的は、構造が簡単で製造が容易なバイオ分子結合検出装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本願第1発明に係るRF(Radio Frequency)無線エネルギー伝送を利用したバイオ分子結合検出方法は、1つまたは複数のプローブバイオ分子の固定されたセンサーモジュールにRFエネルギーを伝送するステップと、1つまたは複数のプローブバイオ分子と1つまたは複数の試料バイオ分子とを結合する前に、前記伝送されたRFエネルギーにより前記センサーモジュールが完全に充電される時間量を表示する前記センサーモジュールの一番目のエネルギー充電時間を決定するステップと、1つまたは複数のプローブバイオ分子と1つまたは複数の試料バイオ分子とを結合した後に、前記伝送されたRFエネルギーにより前記センサーモジュールが完全に充電される時間量を表示する前記センサーモジュールの二番目のエネルギー充電時間を決定するステップと、前記一番目のエネルギー充電時間と前記二番目のエネルギー充電時間の変化に基づいてバイオ分子結合が発生したか決定するステップと、を含む。
【0012】
上記のようなRFエネルギーを用いたバイオ分子結合検出方法は、バイオ結合の前後におけるRFエネルギーの充電時間の差により検出を行う。よって、試料バイオ分子に蛍光物質を結合する処理が不要、蛍光を検出するための高価な装置が不要、感知レバービームの屈折を測定するなどの精密度が不要、トレンチキャパシタを作成するなど複雑な工程が不要である。また、例えば、化学物質の反応度の測定等と比較して検出能力が高い。以上のように、本発明の方法によれば、簡単な構成でバイオ結合の有無を簡単に検出することができ、また装置の小型化が可能である。
【0013】
第2発明は、第1発明において、前記センサーモジュールに伝送された前記RFエネルギーは前記センサーモジュールに備えられたレクテナにより受信され、前記RFエネルギーは直流電流に整流され前記センサーモジュールの駆動電力として使用される。
第3発明は、第1発明において、前記RFエネルギーは前記センサーモジュールを含むバイオ分子結合検出装置の本体に備えられたアンテナによりレクテナへ伝送される。
【0014】
第4発明は、第3発明において、前記本体は、前記センサーモジュールにエネルギー伝送が開始される時間を保存し、前記センサーモジュールの充電が完了した時前記センサーモジュールにより送られた充電完了信号を受信し、前記充電完了信号が受信された時間を記録する。
第5発明は、第4発明において、前記一番目のエネルギー充電時間と二番目のエネルギー充電時間は、それぞれエネルギー伝送時間と充電完了時間に基づいて求められる。
【0015】
第2発明は、第3発明において、前記本体は、前記センサーモジュールにエネルギー伝送が開始される時間に前記RFエネルギーに応じて伝送し、前記センサーモジュールが完全に充電される時前記センサーモジュールにより送られた充電完了信号に応じて前記センサーモジュールから前記エネルギー伝送復帰時間を受信し、前記充電完了信号が受信された時間を記録する。
【0016】
第7発明は、第6発明において、前記一番目のエネルギー充電時間と二番目のエネルギー充電時間は、それぞれエネルギー伝送時間と充電完了時間に基づいて求められる。
また、本願第8発明の他の目的に応じるバイオ分子結合検出装置は、固定された1つまたは複数のプローブバイオ分子を有し、RFエネルギーを受信するレクテナを備えるセンサーモジュールと、前記RFエネルギーを前記レクテナへ伝送するアンテナを有し、1つまたは複数のプローブバイオ分子と1つまたは複数の試料バイオ分子との結合前後に、前記伝送されたRFエネルギーにより前記センサーモジュールの充電時間の差を決定することによってバイオ分子結合の発生を検出する本体と、を含む。
【0017】
第9発明は、第8発明において、前記センサーモジュールは、前記センサーモジュールが充電されれば充電完了信号を生成する生成部と、前記充電完了信号を前記本体のアンテナに伝送するレクテナと、前記RFエネルギーを前記センサーモジュールの駆動電源として使用可能にする電源部と、を含む。
第10発明は、第9発明において、前記電源部は、前記RFエネルギーを直流電流に整流する整流器を含む。
【0018】
第11発明は、第9発明において、前記レクテナは、前記アンテナからエネルギー伝送時間情報を受信し、前記アンテナに充電完了信号を伝送する際、前記受信したエネルギー伝送時間情報の返信を前記アンテナに伝送する。
第12発明は、第9発明において、前記本体の前記アンテナは、前記エネルギーを前記レクテナへ伝送したり、前記レクテナから前記充電完了信号を受信するよう構成され、前記本体は、前記エネルギーが前記レクテナに一番目に伝送される場合、内部に初期保存された前記エネルギー伝送時間情報に基づいて前記センサーモジュールの充電時間の差を分析する分析部を備え、前記分析部は、前記レクテナから受信した前記充電完了信号の時間を利用する。
【0019】
第13発明は、第9発明において、前記本体のアンテナは、前記RFエネルギーと前記エネルギー伝送時間を前記レクテナへ伝送したり、前記レクテナから前記充電完了信号と前記エネルギー伝送時間情報の返信を受信するよう構成され、前記本体の分析部は、前記レクテナからの前記エネルギー伝送時間と、前記レクテナから前記充電完了信号の受信した時間とに基づいて前記センサーモジュールの充電時間の差を分析する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、プローブバイオ分子が形成されるレクテナを用いてエネルギーを送受信し、バイオ分子結合前後のエネルギー充電時間の変化を測定してバイオ結合の有無を検出することでバイオ分子結合を容易に検出することができる。これにより、バイオ分子結合検出のための装置の製造及び構造が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付した図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
図1は本発明の一実施形態によるRF無線エネルギー伝送を利用したバイオ分子結合検出装置を示す図である。
同図に示すように、本発明に係るRF無線エネルギー伝送を利用したバイオ分子結合検出装置は、プローブバイオ分子の形成されるレクテナ(rectenna)200を含み、エネルギーを送受信できるセンサーモジュール800(sensor module)と、センサーモジュール800にエネルギーを伝送し、センサーモジュール800のエネルギー充電時間を分析する本体850とを含む。このときのエネルギーとしては、RF無線エネルギーを利用する。ここで、センサーモジュール800は、発生部100と、レクテナ200と、整流器550(rectifier)を含む電源部500と、を備え、本体850はアンテナ300と分析部400とを備える。
【0023】
まず、アンテナ300は、生成したエネルギーを、本体850の分析部400からセンサーモジュール800に伝送する。このとき、伝送されるエネルギーのセンサーモジュール800での充電時間を求めるため、生成したエネルギーの伝送時間は本体850に保存される。または、エネルギーの伝送時間は伝送されるエネルギーと共にセンサーモジュール800に伝送される。
【0024】
レクテナ200は、アンテナ300からエネルギーが伝送され、分析する試料に含まれた特定遺伝情報の探索を可能にするプローブバイオ分子が上部に形成される。アンテナ300からエネルギーの伝送時間が共に伝送される場合は、レクテナ200はエネルギーの伝送時間も受信する。レクテナ200は、アンテナ300からエネルギーの伝送時間を受信した場合、アンテナ300から伝送されたエネルギーの伝送時間を、伝送されたエネルギーのセンサーモジュール800での充電時に再びアンテナ300に伝送する。
【0025】
電源部500は、レクテナ200に伝送されたエネルギーをセンサーモジュール800の駆動電源として使用可能にする。このとき、電源部500はアンテナ300から伝送されたエネルギーを直流電流に整流する整流器550を含む。生成された電力は、電源部500から生成部100及びレクテナ200に伝送される。このとき、整流器550は電源部500に含まれてもよく、レクテナ200に含まれてもよい。
【0026】
発生部100は、レクテナ200を介して伝送されたエネルギーがセンサーモジュール800で充電された場合、充電完了信号を生成する。生成された充電完了信号は、レクテナ200を介して本体850のアンテナ300に伝送される。ここで、レクテナ200は、アンテナ300からエネルギーの伝送時間を受信している場合、充電完了信号をアンテナ300に伝送する際に、伝送されたエネルギーの伝送時間を再びアンテナ300に伝送する。
【0027】
分析部400は、センサーモジュール800に伝送されるエネルギーを生成し、アンテナ300を介して伝送されるエネルギーのセンサーモジュール800での充電時間を分析する。そして、エネルギーの充電時間を分析してバイオ分子結合の発生の有無を判断する。
ここで、エネルギーの充電時間は、エネルギーのセンサーモジュール800への伝送時間と、センサーモジュール800のレクテナ200からエネルギー充電完了信号が受信される時間とに基づいて分析することにより求められる。すなわち、センサーモジュール800からエネルギー充電完了信号が受信される時間と、センサーモジュール800にエネルギーが伝送される時間との差が、センサーモジュール800でのエネルギーの充電時間に該当する。
【0028】
このとき、センサーモジュール800にエネルギーが伝送される時間は、分析部400に保存されていても良い。そして、レクテナ200から伝送されるエネルギー充電完了信号を受信し、充電完了信号の受信時間と保存されている伝送時間とに基づいて充電時間を求める。または、エネルギー及びセンサーモジュール800へのエネルギーの伝送時間をレクテナ200に伝送しておき、その後、レクテナ200はエネルギー充電完了信号及びエネルギーの伝送時間を分析部400に伝送する。すなわち、エネルギーの伝送時間は、分析部400に保存されるか、あるいはレクテナ200に伝送された後、エネルギー充電時間を求める時に再びアンテナ300に伝送される。
【0029】
そして、分析部400は、レクテナ200に形成されたプローブ分子と分析する試料とのバイオ分子結合前に算出されたセンサーモジュール800のエネルギー充電時間と、バイオ分子結合後に算出されたセンサーモジュール800のエネルギー充電時間とを比較する。その結果、バイオ分子結合前後において、エネルギー充電時間における変化が検出される場合は、プローブ分子と試料とはバイオ結合が発生したと判断する。
【0030】
図2A〜2Cは図1を利用したバイオ分子結合検出方法を説明するための図である。図2Aはレクテナ200にプローブバイオ分子600が形成された場合であり、図2Bはレクテナ200に形成されたプローブバイオ分子600と試料バイオ分子700とがバイオ分子結合する場合である。また、図2Cはプローブバイオ分子600と結合していない試料バイオ分子700をクリーニングする場合である。
【0031】
図2Aに示すように、バイオ分子結合を検出するため、センサーモジュール800のレクテナ200上部にプローブバイオ分子600を形成する。まず、試料バイオ分子700と結合していないプローブバイオ分子600が形成されたレクテナ200を備えるセンサーモジュール800について、本体850から伝送されたエネルギーが充電される時間を求める。このとき、レクテナ200に受信されたエネルギーは、整流器550を備える電源部500によってセンサーモジュール800の駆動電源として利用される。エネルギーの充電が完了すればセンサーモジュール800は駆動する。
【0032】
図2Bに示すように、分析する試料バイオ分子700と、レクテナ200上部に形成されたプローブバイオ分子600とをバイオ結合させる。そして、図2Cに示すように、プローブバイオ分子600と結合していない試料バイオ分子700を取除く。
図2Cに示すようなバイオ分子結合後に、本体850からセンサーモジュール800に伝送されるエネルギーの充電時間を求めて、バイオ分子結合前に求められたエネルギーの充電時間と比較する。バイオ分子結合前後に求められたエネルギーの充電時間の変化が検出される場合は、バイオ分子結合が発生したと判断する。
【0033】
図3は本発明の一実施形態によるRF無線エネルギー伝送を利用したバイオ分子結合検出方法を説明するためのフローチャートである。RF無線エネルギー伝送を利用したバイオ分子結合検出方法は、プローブバイオ分子の形成されるレクテナ200を備えるセンサーモジュール800と、生成されるエネルギーをセンサーモジュール800に伝送するアンテナ300を備える本体850とを含むバイオ分子結合検出装置を例にとって説明する。
【0034】
同図に示すように、分析する試料に含まれた特定遺伝情報の探索を可能にするプローブバイオ分子600が無線エネルギーを送受信するレクテナ200上部に形成される。そして、生成されたエネルギーは、本体850の分析部400からアンテナ300を介してセンサーモジュール800のレクテナ200に伝送される(S901)。
次に、レクテナ200にエネルギーを伝送する際に、エネルギーの伝送時間は分析部400に保存される(S903)。伝送されるエネルギーのセンサーモジュール800での充電時間を求めるため、エネルギーの伝送時間は分析部400に保存される。このとき、エネルギーを伝送する際に、エネルギーの伝送時間もレクテナ200に伝送しても良い。この場合には、アンテナ300がレクテナ200から信号を受信する際に、再びエネルギーの伝送時間をレクテナ200から受信してエネルギーの充電時間を求める。
【0035】
次に、センサーモジュール800は、レクテナ200を介して伝送されたエネルギーの充電を完了した場合、充電完了信号を生成し本体850のアンテナ300に伝送する(S905)。具体的に、レクテナ200を介して伝送されたエネルギーをセンサーモジュール800で充電を完了した場合、電源部500は伝送されたエネルギーをセンサーモジュール800の駆動電源として利用可能にし、生成部100は充電完了信号を生成する。生成された充電完了信号はレクテナ200を介してアンテナ300に伝送される。
【0036】
このとき、レクテナ200にエネルギーを伝送する際に、エネルギーの伝送時間もレクテナ200に伝送された場合、充電完了信号とともに、伝送されたエネルギーの伝送時間もアンテナ300に伝送する。
次に、充電完了信号が伝送された分析部400は、センサーモジュール800がエネルギーを充電する時間を求める(S907)。エネルギーを充電する時間は、充電完了信号の伝送された時間とエネルギーが伝送された時間との差を検出することで求められる。このとき、エネルギーの伝送時間としては、分析部400に保存された時間を利用したり、センサーモジュール800から伝送された伝送時間を用いる。
【0037】
センサーモジュール800にエネルギーの伝送時間をセンサーモジュール800に伝送した後、エネルギー充電完了信号の受信時に再び本体850に伝送する場合、多数のセンサーモジュールの充電時間を求める時に利用できる。例えば、分析部400は多数のセンサーモジュールそれぞれのIDに対応したエネルギーの伝送時間をそれぞれ受信し、一元的にそれぞれのセンサーモジュールのエネルギー充電時間を求めることができる。IDとともにエネルギーの伝送時間を受信し、エネルギー充電完了信号の受信時間とエネルギーの伝送時間との差により、該当するIDにおける充電時間を算出する。なお、分析部400において、ID毎にエネルギーの伝送時間を記憶しておき、IDとともにエネルギー充電完了信号を受信することで、各IDの充電時間を算出することもできる。
【0038】
また、エネルギーの伝送時間を分析部400に保存した後、エネルギーの伝送時間をセンサーモジュール800に伝送してから再び分析部400が受信するようにしても良い。これにより、センサーモジュール800と本体850との間のエネルギー送受信動作の遂行有無を確認できる。
次に、レクテナ200の上部に形成されたプローブバイオ分子600と分析する試料バイオ分子700とをバイオ結合させ、プローブバイオ分子600と結合していない試料バイオ分子700を取除く。その後、センサーモジュール800のエネルギー充電時間を求める(S909)。バイオ分子結合後のエネルギー充電時間は、バイオ分子結合前にエネルギーの伝送時間及び充電完了信号の受信された時間に基づいて求めるのと同様である。
【0039】
次に、バイオ分子結合前後に求められたエネルギー充電時間の変化が検出される場合は、バイオ分子結合が発生したと判断する(S911)。
上記のようなRFエネルギーを用いたバイオ分子結合検出方法は、バイオ結合の前後におけるRFエネルギーの充電時間の差により検出を行う。よって、試料バイオ分子に蛍光物質を結合する処理が不要、蛍光を検出するための高価な装置が不要、感知レバービームの屈折を測定するなどの精密度が不要、トレンチキャパシタを作成するなど複雑な工程が不要である。また、例えば、化学物質の反応度の測定等と比較して検出能力が高い。以上のように、本発明の方法によれば、簡単な構成でバイオ結合の有無を簡単に検出することができ、またバイオ分子結合検出のための装置の製造及び構造が簡単になり、さらに小型化が可能となる。
【0040】
本発明は上述した特定の実施形態に限定されるものではない。実際、当業者であれば、上記の説明に基づき、特許請求の範囲に記載されている本発明の技術的範囲を逸脱することなく、本発明の実施形態に対し、種々の変更及び修正を施すことが可能であろう。従って、そのような変更及び修正は当然に、本発明の技術的範囲に含まれるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態によるRF無線エネルギー伝送を利用したバイオ分子結合検出装置を示す図である。
【図2A】図1を利用したバイオ分子結合検出方法を説明するための図である。
【図2B】図1を利用したバイオ分子結合検出方法を説明するための図である。
【図2C】図1を利用したバイオ分子結合検出方法を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態によるRF無線エネルギー伝送を利用したバイオ分子結合検出方法を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
100 生成部
200 レクテナ
300 アンテナ
400 分析部
500 電源部
550 整流器
600 プローブバイオ分子
700 試料バイオ分子
800 センサーモジュール
850 本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数のプローブバイオ分子が固定されたセンサーモジュールにRFエネルギーを伝送するステップと、
1つまたは複数のプローブバイオ分子と1または複数の試料バイオ分子とを結合する前に、前記伝送されたRFエネルギーにより前記センサーモジュールが完全に充電される時間量を表す、前記センサーモジュールの一番目のエネルギー充電時間を決定するステップと、
1または複数のプローブバイオ分子と1または複数の試料バイオ分子との結合後に、前記伝送されたRF(Radio Frequency)エネルギーにより前記センサーモジュールが完全に充電される時間量を表す前記センサーモジュールの二番目のエネルギー充電時間を決定するステップと、
前記一番目のエネルギー充電時間と前記二番目のエネルギー充電時間との変化に基づいてバイオ分子結合が生じたか決定するステップと、
を含むことを特徴とするバイオ分子結合検出方法。
【請求項2】
前記センサーモジュールに伝送された前記RFエネルギーは前記センサーモジュールに備えられたレクテナ(rectenna)により受信され、前記RFエネルギーは直流電流に整流され前記センサーモジュールの駆動電力として使用されることを特徴とする請求項1に記載のバイオ分子結合検出方法。
【請求項3】
前記RFエネルギーは前記センサーモジュールを含むバイオ分子結合検出装置の本体に備えられたアンテナによりレクテナへ伝送されることを特徴とする請求項2に記載のバイオ分子結合検出方法。
【請求項4】
前記本体は、前記センサーモジュールにエネルギー伝送が開始される時間を保存し、前記センサーモジュールの充電が完了した時前記センサーモジュールにより送られた充電完了信号を受信し、前記充電完了信号が受信された時間を記録することを特徴とする請求項3に記載のバイオ分子結合検出方法。
【請求項5】
前記一番目のエネルギー充電時間と二番目のエネルギー充電時間は、それぞれエネルギー伝送時間と充電完了時間に基づいて求められることを特徴とする請求項4に記載のバイオ分子結合検出方法。
【請求項6】
前記本体は、前記センサーモジュールにエネルギー伝送が開始される時間に前記RFエネルギーに応じて伝送し、前記センサーモジュールが完全に充電される時前記センサーモジュールにより送られた充電完了信号に応じて前記センサーモジュールから前記エネルギー伝送復帰時間を受信し、前記充電完了信号が受信された時間を記録することを特徴とする請求項3に記載のバイオ分子結合検出方法。
【請求項7】
前記一番目のエネルギー充電時間と二番目のエネルギー充電時間は、それぞれエネルギー伝送時間と充電完了時間に基づいて求められることを特徴とする請求項6に記載のバイオ分子結合検出方法。
【請求項8】
固定された1または複数のプローブバイオ分子を有し、RFエネルギーを受信するレクテナを備えるセンサーモジュールと、
前記RFエネルギーを前記レクテナへ伝送するアンテナを有し、1または複数のプローブバイオ分子と1または複数の試料バイオ分子との結合前後に、前記伝送されたRFエネルギーにより前記センサーモジュールの充電時間の差を決定することによってバイオ分子結合の発生を検出する本体と、
を含むことを特徴とするバイオ分子結合検出装置。
【請求項9】
前記センサーモジュールは、
前記センサーモジュールが充電されれば充電完了信号を生成する生成部と、
前記充電完了信号を前記本体のアンテナに伝送するレクテナと、
前記RFエネルギーを前記センサーモジュールの駆動電源として使用可能にする電源部と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載のバイオ分子結合検出装置。
【請求項10】
前記電源部は、前記RFエネルギーを直流電流に整流する整流器を含むことを特徴とする請求項9に記載のバイオ分子結合検出装置。
【請求項11】
前記レクテナは、前記アンテナからエネルギー伝送時間情報を受信し、前記アンテナに充電完了信号を伝送する際、前記受信したエネルギー伝送時間情報の返信を前記アンテナに伝送することを特徴とする請求項9に記載のバイオ分子結合検出装置。
【請求項12】
前記本体の前記アンテナは、前記エネルギーを前記レクテナへ伝送したり、前記レクテナから前記充電完了信号を受信するよう構成され、前記本体は、前記エネルギーが前記レクテナに一番目に伝送される場合、内部に初期保存された前記エネルギー伝送時間情報に基づいて前記センサーモジュールの充電時間の差を分析する分析部を備え、前記分析部は、前記レクテナから受信した前記充電完了信号の時間を利用することを特徴とする請求項9に記載のバイオ分子結合検出装置。
【請求項13】
前記本体のアンテナは、前記RFエネルギーと前記エネルギー伝送時間を前記レクテナへ伝送したり、前記レクテナから前記充電完了信号と前記エネルギー伝送時間情報の返信を受信するよう構成され、前記本体の分析部は、前記レクテナからの前記エネルギー伝送時間と、前記レクテナから前記充電完了信号の受信した時間とに基づいて前記センサーモジュールの充電時間の差を分析することを特徴とする請求項9に記載のバイオ分子結合検出装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−208376(P2006−208376A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3191(P2006−3191)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【Fターム(参考)】