説明

RFIDシステム

【課題】リーダ・ライタが素速く交信可能なタグを見つけ出すことができ、且つタグで消費する電力を最小限に抑えることが可能なRFIDシステムを提供する。
【解決手段】本発明に係るRFIDシステムにおいては、リーダ・ライタが最初に最大送信出力でタグが交信可能な範囲に存在するか否かを調査し、存在が確認された場合は、送信出力を交信可能な最低レベルまで一気に下げるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ・ライタとタグとの間で交信を行なうRFIDシステムに関し、特にタグにおける発熱を最小限にすることが可能なRFIDシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFIDタグ(以下、タグと表記する)の小型化と低価格化が著しく進み、更に、バーコードに比べ圧倒的に多くの情報量を扱えるため、多くの製品や商品などに取り付けられ利用されるようになってきた。
【0003】
例えば、商店に陳列されている商品の内容や流通履歴などの情報が、商品に取り付けられているタグのメモリに格納されており、消費者はリーダ・ライタを目的の商品に近づけるだけで商品の情報を確認することができる。
【0004】
更に、タグは近距離通信手段としての機能を備えているため、各種センサと組み合わせてセンサで検出した情報をタグからリーダ・ライタに送信することで、様々な情報を収集することができる。なお、センサの検出する情報としては、温度、圧力、光量、磁場などどのようなものでもかまわない。
【0005】
タグとセンサとを組み合わせ、センサが検出した信号をデータとしてリーダ・ライタに送信するような用途の場合、タグの影響がセンサの出力に及ばないようにする必要がある。例えば、温度センサと組み合わせる場合、タグの動作時における発熱が多ければ、タグの発熱が温度センサの検出温度に影響を与える可能性がある。温度以外のセンサの場合についても、タグの発熱によりセンサの検出値が影響を受ける虞があるため、タグにおける発熱を最小限に抑える必要がある。
【0006】
受動タイプのタグの場合、タグの動作エネルギーは、タグ側アンテナに誘起する起電力が大きい程大きくなるため、必要以上に大きな起電力が発生すると余分なエネルギーは熱となってしまいタグの温度を上昇させてしまう。そのため、タグがリーダ・ライタと交信を行なう場合は、タグ側アンテナに誘起する起電力はタグの動作が可能な最小限の電力になっていることが望ましい。
【0007】
特許文献1に開示される無線タグ情報通信装置では、リーダ・ライタの出力を段階的に増加させて、タグとの読み取り、または書き込みが可能な限りにおいて極力小さい送信出力で交信を実行する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される無線タグ情報通信装置では、リーダ・ライタの出力を段階的に増加させているので、タグがリーダ・ライタから離れている場合は、送信出力が大きくなるまで交信できないという問題がある。
【0009】
特に、タグの位置が不明であり、当初タグが交信可能な範囲内にあるかどうかが分からない場合、若しくは、リーダ・ライタを移動してタグと交信可能な位置まで近づける必要がある場合等では、まず、タグが交信可能な範囲内にあることを検出する必要がある。しかし、従来のように送信出力を小さい方から段階的に大きくしていたのでは、タグが交信可能な範囲に入ってきたにもかかわらず、交信可能となる前にリーダ・ライタを移動してしまい、タグとの交信ができない可能性がある。
【0010】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたものであって、リーダ・ライタが素速く交信可能なタグを見つけ出すことができ、しかもタグで消費する電力を最小限に抑えることが可能なRFIDシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するために為されたものである。本発明に係るRFIDシステムは、
リーダ・ライタとタグとの間で交信を行なうRFIDシステムであって、
前記リーダ・ライタは、
前記タグとの間で電波を送受信するR/W側アンテナと、
前記R/W側アンテナに電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部が供給する電力を切換える電力切換部と、
前記R/W側アンテナのインピーダンス変移を判定するインピーダンス変移判定部と、
前記R/W側アンテナで受信した受信データを検出するデータ受信部と、
前記リーダ・ライタ全体の機能を制御するR/W側送受信制御部を備え、
前記タグは、
前記リーダ・ライタとの間で電波を送受信するタグ側アンテナと、
前記タグ側アンテナの負荷インピーダンスを変調する負荷変調部と、
前記タグ側アンテナに誘起された電圧レベルを検出するレベル検出部と、
前記タグ全体の機能を制御するタグ側送受信制御部と、
前記タグ側送受信制御部の出力に応じて前記負荷変調部を制御するインピーダンス変移制御部を備え、
前記リーダ・ライタと前記タグとの交信に先立って、
前記リーダ・ライタは、無変調の搬送波を最大出力で送信する第1工程を実行し、
前記タグは、前記タグ側アンテナに誘起された電圧レベルを前記レベル検出部で検出し、前記電圧レベルが前記リーダ・ライタと交信可能な電圧レベル以上であれば、前記インピーダンス変移制御部は、前記電圧レベルを示すコマンドで負荷変調を行ない、前記リーダ・ライタに前記コマンドを送信する第2工程を実行し、
前記リーダ・ライタは、前記タグ側から送られてきた前記電圧レベルを示すコマンドに応じて、前記電力切換部により、前記R/W側アンテナの送信出力を所定のレベルに変更する第3工程を実行し、
前記タグは、前記第2工程の後、前記リーダ・ライタが前記第3工程を実行するために要する時間以上経過した後に、前記タグ側アンテナに誘起する電圧レベルが、前記リーダ・ライタと交信可能な最低電圧レベル以上であれば、前記インピーダンス変移制御部は、前記電圧レベルを示すコマンドで負荷変調を行ない、前記リーダ・ライタに前記送信する第4工程を実行する
ことを特徴とする。
【0012】
前記リーダ・ライタは、前記第1工程の後、前記タグが前記第2工程を実行するために要する時間以上経過しても、前記タグから前記電圧レベルを示すコマンドを受信しない場合は、前記第1工程を繰り返し行なってもよい。
【0013】
前記リーダ・ライタは、前記第3工程の後、前記タグが前記第4工程を実行するために要する時間以上経過しても、前記タグから前記電圧レベルを示すコマンドを受信しない場合は、受信するまで前記送信出力を段階的にアップする第5工程を実行してもよい。
【0014】
前記リーダ・ライタは、前記第5工程の中で、前記送信出力をアップする前に、前記送信出力が最大になっていることを検出した場合は、前記第1工程に戻ることが、好ましい。
【0015】
前記タグは、前記第2工程の後、前記リーダ・ライタが前記第3工程を実行するために要する時間及び前記第5工程を実行するために要する時間以上経過しても、前記タグ側アンテナに交信可能なレベルの誘起電圧が発生しない場合は、前記第2工程の最初に戻ることが、好ましい。
【0016】
前記電力切換部は、前記第3工程において、前記電圧レベルを示すコマンドに応じて、前記タグ側アンテナに誘起する電圧レベルが交信可能な最低レベルになると予測される送信出力に変更してもよい。
【0017】
前記タグ側送受信制御部は、前記電圧レベルに応じて、前記電圧レベルを示すコマンドを選択し、
前記インピーダンス変移制御部は、選択されたコマンドに基づいて前記負荷変調部の制御を行なってもよい。
【0018】
前記電力供給部は、前記R/W側アンテナに供給する電流を、前記電力切換部の出力に応じて変更してもよい。
【0019】
前記電力供給部は、前記R/W側アンテナと電源との間に接続された可変抵抗の抵抗値を、前記電力切換部の出力に応じて変更してもよい。
【0020】
前記電力供給部は、前記R/W側アンテナのQ値を、前記電力切換部の出力に応じて変更してもよい。
【0021】
前記電力供給部は、前記R/W側アンテナの共振周波数を、前記電力切換部の出力に応じて変更してもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るRFIDシステムにおいては、リーダ・ライタが最初に最大送信出力でタグが交信可能な範囲に存在するか否かを調査し、存在が確認された場合は、送信出力を交信可能な最低レベルまで一気に下げるようにしたので、タグをすばやく見つけることができ、しかもタグで消費するエネルギーを短時間で最小値に設定することができる。
【0023】
また、交信時にはタグ側の受信レベルは交信可能な最小値となっているため、タグで発生する電力損失を最小にすることができ、その結果タグの温度上昇を最小にすることが可能である。
【0024】
更に、送信出力を交信可能な最低レベルまで一気に下げた結果、タグとの交信が不能になった場合には、交信可能になるまで段階的に送信出力をアップさせるようにしたので、確実にタグとの交信が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の好適な実施形態に係るRFIDシステムのブロック図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係るRFIDシステムにおいて、リーダ・ライタがタグとデータ交信を開始する前までの、リーダ・ライタとタグとの動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る電力供給部の第1の実施形態を示す回路図である。
【図4】本発明に係る電力供給部の第2の実施形態を示す回路図である。
【図5】本発明に係る電力供給部の第3の実施形態を示す回路図である。
【図6】本発明に係る電力供給部の第4の実施形態を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明に係る好適な実施形態を説明する。
【0027】
[1.RFIDシステムの構成]
図1は、本発明の好適な実施形態に係るRFIDシステムのブロック図である。RFIDシステムは、タグ100とリーダ・ライタ200とで構成されている。
【0028】
タグ100は、タグ側アンテナ110、負荷変調部120、インピーダンス変移制御部130、レベル検出部140、及び、タグ側送受信制御部150を備えている。
【0029】
リーダ・ライタ200は、R/W(リーダ・ライタ)側アンテナ210、電力供給部220、電力切換部230、インピーダンス変移判定部240、データ受信部250、R/W(リーダ・ライタ)側送受信制御部260、及び、表示部270を備えている。
【0030】
[1.1.タグの構成]
タグ側アンテナ110は、リーダ・ライタ200との間で電波の送受信を行なう。
【0031】
負荷変調部120は、インピーダンス変移制御部130の出力に応じて、タグ側アンテナ110の負荷インピーダンスの変調を行なう。
【0032】
インピーダンス変移制御部130は、タグ側送受信制御部150で選択された送信コマンド、あるいは送信デーダに基づいて前記負荷変調部120を制御する。
【0033】
レベル検出部140は、タグ側アンテナ110に誘起した電圧レベルをAD(交流/直流)変換して、その結果をタグ側送受信制御部150に出力する。
【0034】
タグ側送受信制御部150は、レベル検出部140で検出された電圧レベルに応じて、その電圧レベルを示すコマンドを選択してインピーダンス変移制御部130に出力する。また、タグ側送受信制御部150は、リーダ・ライタ200から送信されたコマンドに応じて、リーダ・ライタ200へ送信するデータをインピーダンス変移制御部130に出力する。
【0035】
[1.2.リーダ・ライタの構成]
R/W側アンテナ210は、タグ100との間で電波の送受信を行なう。
【0036】
電力供給部220は、R/W側アンテナ210に供給する複数の電力レベルを備えている。電力切換部230により切り換えられた電力レベルをR/W側アンテナ210に供給する。
【0037】
電力切換部230は、R/W側送受信制御部260の出力に応じて電力供給部220がR/W側アンテナ210へ供給する電力の切換を行なう。
【0038】
インピーダンス変移判定部240は、タグ100とのデータ交信前において、R/W側アンテナ210から無変調の搬送波を出力しているときに、R/W側アンテナ210のインピーダンス変移を検出し、タグ100から送信された電圧レベルを示すコマンドを抽出してR/W側送受信制御部260に出力する。
【0039】
データ受信部250は、タグ100との交信時にタグ100から送られてきてR/W側アンテナ210で受信した受信データ、及びコマンドを検出し、R/W側送受信制御部260へ出力する。
【0040】
R/W側送受信制御部260は、送受信に関わる全ての制御を行なう。例えば、インピーダンス変移判定部240から出力された電圧レベルを示すコマンドに応じて、電力切換部230に最適な送信出力データを出力する。また、R/W側送受信制御部260は、データ受信部250から送られてきたデータやコマンドの処理を行なう。更に、R/W側送受信制御部260は、交信可能なタグ100の有無や、データ受信部250から送られてきたデータについて、使用者に有用な情報を表示部270を介して表示する。
【0041】
[2.RFIDシステムの動作]
図2は、本発明の好適な実施形態に係るRFIDシステムにおいて、リーダ・ライタ200がタグ100とデータ交信を開始する前までの、リーダ・ライタ200とタグ100との動作を示すフローチャートである。中央の破線の左側にリーダ・ライタ200の動作を示し、右側にタグ100の動作を示す。各ステップの左に付したSn(nは整数)は以下の説明で用いるためのステップ番号である。図1および図2を参照しながら、本実施形態に係るRFIDシステムの動作説明を行なう。
【0042】
[2.1.第1工程]
まず、ステップS1にて、リーダ・ライタ200は、最大出力で搬送波だけを送信する。この工程を第1工程と称する。
【0043】
[2.2.第2工程]
続いて、ステップS2からS6までのタグ100側の動作を第2工程と称するものとする。
【0044】
リーダ・ライタ200の近くにタグ100がある場合は、ステップS2に示すように、タグ100のタグ側アンテナ110に誘起電圧が発生する。タグ100はこの誘起電圧を整流して、タグ100内の各回路に供給する。最初に誘起電圧が発生した場合は、ステップS3に示すように、タグ100内の回路を初期リセットする。
【0045】
次に、ステップS4に進み、レベル検出部140がタグ側アンテナ110に誘起した電圧をAD変換して、電圧レベルをタグ側送受信制御部150に出力する。
【0046】
ステップS5で、タグ側送受信制御部150は電圧レベルを評価して、リーダ・ライタ200と交信可能な電圧レベル以上であれば、電圧レベルを示すコマンドを選択してインピーダンス変移制御部130に出力する。ステップS6では、インピーダンス変移制御部130は、選択されたコマンドに応じて負荷変調部120を制御する。
【0047】
なお、ステップS5でタグ側アンテナ110の誘起電圧レベルが、リーダ・ライタ200と交信可能な電圧レベルに満たない場合は、ステップS2またはS3に戻りリーダ・ライタ200と交信可能な電圧レベルになるまでこのループを繰り返す。
【0048】
[2.3.第3工程]
続いて、ステップS7からS9までのリーダ・ライタ200側の動作を第3工程と称するものとする。
【0049】
ステップS6に於いて、タグ100側から電圧レベルを示すコマンドが送信されると、その影響でR/W側アンテナ210のインピーダンスが変化する。ステップS7で、インピーダンス変移判定部240はその変化を検出し、送られてきた電圧レベルを示すコマンドを抽出する。ステップS8で、R/W側送受信制御部260は電圧レベルを示すコマンドに応じて、タグ100の受信レベルが交信可能な最小の受信レベルになる送信出力を選択して、そのデータを電力切換部230へ出力する。
【0050】
交信可能な最小の受信レベルを求めるには、以下のようにする。例えば、送信出力を0から15までの16レベルに分け、ステップS1では、最大のレベル15で搬送波を送信する。
【0051】
タグ100は、タグ側アンテナ110に誘起した電圧について、レベル検出部140が有するAD変換器により、レベル(電圧レベル)分けする。タグ側の誘起電圧のレベル分けも、例えば0から15までの16段階からなる。
【0052】
電圧レベルが0の場合は、リーダ・ライタ200との交信は不可能である。1以上であれば交信可能である。すなわち、最低交信可能レベルは1であり、レベルの数字が大きいほど誘起電圧が大きくなる。
【0053】
例えば、レベル検出部140が、(第2工程・ステップS4にて)レベル4を検出したとする。このとき、インピーダンス変移制御部130は、レベル4を示すコマンドを送信する様に、負荷変調部120の制御を行なう。すると、(リーダ・ライタ200側の)R/W側アンテナ210は、このレベル4を示すコマンドに応じてインピーダンスが変化する。この変化をインピーダンス変移判定部240が検出し、インピーダンス変移判定部240は、タグ100での電圧レベルが4であることをR/W側送受信制御部260に出力する。
【0054】
これを受けて、R/W側送受信制御部260は、タグ100の電圧レベルがレベル1になると予測されるような送信出力を選択する。選択の手順は以下のようなものである。つまり、現在のタグ100での電圧レベルが(前述のように)4であり、まだ3レベル下げ得る余地があるから、リーダ・ライタ200側の送信出力を3レベル下げた“12”に設定(選択)する。つまり、R/W側送受信制御部260は、タグ100での電圧レベルを示すコマンド内の電圧レベルと、タグ側アンテナ110に誘起される電圧として最低交信可能レベルである電圧レベルとの差に応じて、電力切換部230の送信出力の切換を制御する。
【0055】
ステップS8で、電力切換部230は、電力供給部220の電力を切換える。ステップS9で電力供給部220は変更した送信出力で無変調の搬送波を送信する。
【0056】
なお、第2工程のステップS5で、タグ100での受信レベルが1未満の場合は、ステップ6でコマンド送信が行われないため、リーダ・ライタ200側のステップS7ではコマンドの受信ができない。その場合はステップS10に移行し、タグ100が第2工程を実行するために要する時間以上経過してもコマンドの受信ができない場合は、タグ100が交信可能範囲に存在しないということなので、ステップS1に戻り、第1工程である最大出力での送信を繰り返す。
【0057】
[2.4.第4工程]
続いて、ステップS12とS13のタグ100側の動作を第4工程と称するものとする。
【0058】
タグ100は、ステップS6で(誘起電圧の)電圧レベルを示すコマンドを送信した後、リーダ・ライタ200側が第3工程を実行する時間だけステップS11で待った後、ステップS12に移行する。ステップS12では、再びレベル検出部140が(誘起電圧の)電圧レベルを検出する。検出した電圧レベルがリーダ・ライタ200と交信可能なレベル、即ち1以上であれば、ステップS13でその電圧レベルを示すコマンドで負荷変調を行なう。
【0059】
なお、ステップS12で電圧レベルが1未満の場合は、リーダ・ライタ200が、ステップS8にて送信出力を下げすぎた可能性があるため、ステップS14に進みリーダ・ライタ200が後述する第5工程を完了する時間まで繰り返し電圧レベルの検出を行ない、電圧レベルが1以上になるのを待つ。しかし、第5工程を実行する時間以上経過した場合は、リーダ・ライタ200との距離が交信可能範囲外になっていると見なされうるので、第2工程の最初の状態に戻る。
【0060】
[2.5.リーダ・ライタとタグの実際のデータ交信の開始、及び、第5工程]
リーダ・ライタ200は、ステップS9で送信出力を変更した後、ステップS15にて再度タグ100から送信された(誘起電圧の)電圧レベルを示すコマンドを受信する。この結果タグ100の電圧レベルが1以上の場合は、最小電力での交信が可能と判断して、ステップS19にてR/W側送受信制御部260は表示部270を用いてその旨の表示を行ない、タグ100との実際のデータ交信を開始する。
【0061】
続いて、ステップS16からS18までのリーダ・ライタ200側の動作を第5工程と称するものとする。
【0062】
リーダ・ライタ200が、ステップS15で(誘起電圧の)電圧レベルを示すコマンドを受信しない場合は、ステップS16でタグ100が前述の第4工程を実行する時間以上経過したかどうかを調べ、経過している場合は、ステップS8でR/W側送受信制御部260が送信出力を下げ過ぎたと判断し、ステップ17に移行し、現在の送信出力が最大出力か否かを確認する。最大出力未満であれば、ステップS18でR/W側送受信制御部260は電力切換部230に対し送信出力を1レベル大きい送信出力に変更する。次に、ステップS9に戻って、再度変更した送信出力で搬送波を送信し、ステップS15で電圧レベルを示すコマンドが受信できるか確認する。確認できない場合はステップS16からS9のループを送信出力が最大になるまで繰り返す。
【0063】
なお、ステップS17で送信出力がすでに最大となっている場合は、これ以上出力を上げられないので、交信可能範囲にタグ100が存在しないと判断し、ステップS1に戻り最初からやり直す。
【0064】
以上のように、本実施形態に係るRFIDシステムのリーダ・ライタ200においては、最初に最大送信出力でタグ100が交信可能な範囲に存在するか否かを調査し、存在が確認された場合は、送信出力を交信可能な最低レベルまで一気に下げるようにしたので、タグ100をすばやく見つけることができ、しかもタグ100で消費するエネルギーを短時間で最小値に設定することができる。
【0065】
また、交信時にはタグ100側の受信レベルは交信可能な最小のものとなっているため、タグ100で発生する電力損失を最小にすることができ、その結果タグ100の温度上昇を最小にすることが可能である。
【0066】
さらに、送信出力を交信可能な最低レベルまで一気に下げた結果、タグ100との交信が不能になった場合は、交信可能になるまで段階的に送信出力をアップさせるようにしたので、確実にタグ100との交信が可能となる。
【0067】
[3.リーダ・ライタの電力供給部の実施形態]
本発明に係るリーダ・ライタ200に含まれる電力供給部220は、様々に構成され得る。次に、本発明に係る電力供給部220の実施形態を複数示すものとする。
【0068】
[3.1.電力供給部の第1の実施形態]
図3は、本発明に係る電力供給部220の第1の実施形態を示す回路図である。電力供給部220は、電流源I1〜I4、及び電流源I1〜I4に直列に接続されたスイッチ手段SW1〜SW4で構成されている。電流源とスイッチ手段の直列回路は、電源とR/W側アンテナ210の一端との間に接続されている。スイッチ手段SW1〜SW4の各々は、制御端子を備えており、制御端子は電力切換部230の出力により制御されている。
【0069】
R/W側アンテナ210に供給する電流をリニアに変えるのであれば、電流源I1〜I4の各々の電流値を、2のべき乗に設定すれば、スイッチ手段SW1〜SW4のオン/オフの組み合わせで16通りの電流値の設定が可能となる。
【0070】
また、R/W側アンテナ210に供給する電流を(2のべき乗などの)リニアでない電流値に設定する場合には、電流源I1、I2、I3、I4の電流値を、個々のレベルに合った電流値に設定して、スイッチ手段SW1〜SW4のどれか1つだけをオンするようにすればよい。なお、このようなやり方で16レベルの変化をさせる場合は電流源もレベル数と同じ16個用意する必要があるといえる。
【0071】
[3.2.電力供給部の第2の実施形態]
図4は、本発明に係る電力供給部220の第2の実施形態を示す回路図である。図3に示す回路との違いは、電流源I1〜I4を抵抗R1〜R4に変更したことである。この回路においても電源からR/W側アンテナ210に供給される電力は抵抗R1〜R4の値によって変化させることができる。スイッチ手段SW1〜SW4の制御については図3に示す回路と同様であり説明を省略する。
【0072】
[3.3.電力供給部の第3の実施形態]
図5は、本発明に係る電力供給部220の第3の実施形態を示す回路図である。図5に示す回路では、抵抗R1〜R4の各々に直列接続されたスイッチ手段SW1〜SW4の各々が、R/W側アンテナ210に並列に接続されている。図3、図4に示す回路との違いは、図3、図4に示す回路がR/W側アンテナ210に供給する電力を変更しているのに対し、図5に示す回路は、R/W側アンテナ210に並列接続された抵抗R1〜R4の値を変えて、R/W側アンテナ210のQ値を変更するようにしていることである。このことにより、R/W側アンテナ210の送信電力を変えることができる。スイッチ手段SW1〜SW4の制御については図3に示す回路と同様であり説明を省略する。
【0073】
[3.4.電力供給部の第4の実施形態]
図6は、本発明に係る電力供給部220の第4の実施形態を示す回路図である。この回路では、図5に示す回路における抵抗R1〜R4に変えて、コンデンサC1〜C4が設けられている。このため、スイッチ手段SW1〜SW4のオン/オフに応じて、R/W側アンテナ210の共振周波数が変化する。従って、図5に示す回路の場合と同様に、R/W側アンテナ210の送信電力を変えることができる。スイッチ手段SW1〜SW4の制御については図3に示す回路と同様であり説明を省略する。
【符号の説明】
【0074】
100・・・タグ、110・・・タグ側アンテナ、120・・・負荷変調部、130・・・インピーダンス変移制御部、140・・・レベル検出部、150・・・タグ側送受信制御部、200・・・リーダ・ライタ、210・・・R/W(リーダ・ライタ)側アンテナ、220・・・電力供給部、230・・・電力切換部、240・・・インピーダンス変移判定部、250・・・データ受信部、260・・・R/W(リーダ・ライタ)側送受信制御部、270・・・表示部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0075】
【特許文献1】特開2005−159653公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダ・ライタとタグとの間で交信を行なうRFIDシステムにおいて、
前記リーダ・ライタは、
前記タグとの間で電波を送受信するR/W側アンテナと、
前記R/W側アンテナに電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部が供給する電力を切換える電力切換部と、
前記R/W側アンテナのインピーダンス変移を判定するインピーダンス変移判定部と、
前記R/W側アンテナで受信した受信データを検出するデータ受信部と、
前記リーダ・ライタ全体の機能を制御するR/W側送受信制御部を備え、
前記タグは、
前記リーダ・ライタとの間で電波を送受信するタグ側アンテナと、
前記タグ側アンテナの負荷インピーダンスを変調する負荷変調部と、
前記タグ側アンテナに誘起された電圧レベルを検出するレベル検出部と、
前記タグ全体の機能を制御するタグ側送受信制御部と、
前記タグ側送受信制御部の出力に応じて前記負荷変調部を制御するインピーダンス変移制御部を備え、
前記リーダ・ライタと前記タグとの交信に先立って、
前記リーダ・ライタは、無変調の搬送波を最大出力で送信する第1工程を実行し、
前記タグは、前記タグ側アンテナに誘起された電圧レベルを前記レベル検出部で検出し、前記電圧レベルが前記リーダ・ライタと交信可能な電圧レベル以上であれば、前記インピーダンス変移制御部は、前記電圧レベルを示すコマンドで負荷変調を行ない、前記リーダ・ライタに前記コマンドを送信する第2工程を実行し、
前記リーダ・ライタは、前記タグ側から送られてきた前記電圧レベルを示すコマンドに応じて、前記電力切換部により、前記R/W側アンテナの送信出力を所定のレベルに変更する第3工程を実行し、
前記タグは、前記第2工程の後、前記リーダ・ライタが前記第3工程を実行するために要する時間以上経過した後に、前記タグ側アンテナに誘起する電圧レベルが、前記リーダ・ライタと交信可能な最低電圧レベル以上であれば、前記インピーダンス変移制御部は、前記電圧レベルを示すコマンドで負荷変調を行ない、前記リーダ・ライタに前記送信する第4工程を実行する
ことを特徴とするRFIDシステム。
【請求項2】
前記リーダ・ライタは、前記第1工程の後、前記タグが前記第2工程を実行するために要する時間以上経過しても、前記タグから前記電圧レベルを示すコマンドを受信しない場合は、前記第1工程を繰り返し行なう
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項3】
前記リーダ・ライタは、前記第3工程の後、前記タグが前記第4工程を実行するために要する時間以上経過しても、前記タグから前記電圧レベルを示すコマンドを受信しない場合は、受信するまで前記送信出力を段階的にアップする第5工程を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項4】
前記リーダ・ライタは、前記第5工程の中で、前記送信出力をアップする前に、前記送信出力が最大になっていることを検出した場合は、前記第1工程に戻る
ことを特徴とする請求項3に記載のRFIDシステム。
【請求項5】
前記タグは、前記第2工程の後、前記リーダ・ライタが前記第3工程を実行するために要する時間及び前記第5工程を実行するために要する時間以上経過しても、前記タグ側アンテナに交信可能なレベルの誘起電圧が発生しない場合は、前記第2工程の最初に戻る
ことを特徴とする請求項3に記載のRFIDシステム。
【請求項6】
前記第3工程において、前記R/W側送受信制御部は、前記電圧レベルを示すコマンド内の電圧レベルと、タグ側アンテナに誘起される電圧として最低交信可能レベルである電圧レベルとの差に応じて、前記電力切換部の送信出力の切換を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項7】
前記タグ側送受信制御部は、前記電圧レベルに応じて、前記電圧レベルを示すコマンドを選択し、
前記インピーダンス変移制御部は、選択されたコマンドに基づいて前記負荷変調部の制御を行なう
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項8】
前記電力供給部は、前記R/W側アンテナに供給する電流を、前記電力切換部の出力に応じて変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項9】
前記電力供給部は、前記R/W側アンテナと電源との間に接続された可変抵抗の抵抗値を、前記電力切換部の出力に応じて変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項10】
前記電力供給部は、前記R/W側アンテナのQ値を、前記電力切換部の出力に応じて変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDシステム。
【請求項11】
前記電力供給部は、前記R/W側アンテナの共振周波数を、前記電力切換部の出力に応じて変更する
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−54093(P2011−54093A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204696(P2009−204696)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】