説明

RFIDタグ、およびRFIDタグ製造方法

【課題】構成が簡単で簡易な技術で作製される、複数の電子素子を備えたRFIDタグ、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】凹部を有するベースシートと、上記凹部を跨いで上記ベースシート上に設けられた第1素子と、上記第1素子と上記ベースシートとの間に設けられ該第1素子と電気的に接続された第2素子と、上記ベースシート上に設けられた、上記第1素子と上記第2素子とのうち少なくともいずれかの素子に接続された通信用のアンテナとを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で外部機器と情報のやり取りを行なうRFID(Radio_Frequency_IDentification)タグに関する。なお、本願技術分野における当業者間では、本願明細書で使用する「RFIDタグ」のことを、「無線ICタグ」と称する場合もある。
【背景技術】
【0002】
従来より、電波を利用してリーダライタといった外部機器と非接触で情報のやり取りを行う種々のRFID(Radio_Frequency_IDentification)タグが知られている。このRFIDタグの一種として、ベースシート上に電波通信用の導体パターン(アンテナパターン)とICチップが搭載された構成のものが提案されており、このようなタイプのRFIDタグについては、電子機器に貼り付けられてその電子機器に関する情報を外部機器とやり取りすることで電子機器同士の識別を行うなどといった利用形態が考えられている。最近では、通信機能を有するICチップと、電波により伝えられる情報を解析する解析機能を有するICチップとが、一方向にのみ導電性を有する導電体(異方性導電体)を介して貼り付けられたRFIDタグ(例えば、特許文献1参照)のように、積層された複数のICチップを有するRFIDタグが提案されている。
【特許文献1】特開平10−193848号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
RFIDタグには、小型軽量化や低コスト化が強く求められており、このため、構成が簡単で簡易な技術で作製されることが望ましい。特許文献1のRFIDタグでは、2つのICチップを積層するにあたり、2つのICチップの間に異方性導電体を介在させる必要があり、このため、RFIDタグ全体の厚みが大きくなるという欠点がある。また、特許文献1のRFIDタグでは、2つのICチップを、異方性導電体という特殊な部材を介して電気的に接続することが必要であり、所望の導通状態を実現するのはそれほど簡単ではない。
このため、特許文献1のRFIDタグでは、小型軽量化や低コスト化の実現が難しい。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑み、構成が簡単で簡易な技術で作製される、複数の電子素子を備えたRFIDタグ、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための本発明のRFIDタグは、
凹部を有するベースシートと、
上記凹部を跨いで上記ベースシート上に設けられた第1素子と、
上記第1素子と上記ベースシートとの間に設けられ該第1素子と電気的に接続された第2素子と、
上記ベースシート上に設けられた、上記第1素子と上記第2素子とのうち少なくともいずれかの素子に接続された通信用のアンテナとを備えたことを特徴とする。
【0006】
本発明のRFIDタグでは、ベースシートの凹部を跨いで第1の素子が配置され、この第1素子と上記ベースシートとの間に第2の素子が配置されており、通信用のアンテナは、第1素子と第2素子とのうち少なくともいずれかの素子に接続されている。本発明のRFIDでは、このようにベースシートの凹部で2つの素子が重ねて配置され、RFIDタグの厚み方向について2つの素子の間に余計な導電体などといった部材が不要なため、RFIDタグの厚みが薄くなっており、本発明のRFIDは、小型化に適したRFIDタグとなっている。しかも、本発明のRFIDタグの構成は、きわめて簡単な構成であるため、簡易な技術で作製でき、低コスト化も実現される。
【0007】
また、本発明のRFIDタグにおいて、「上記第2素子が、上記第1素子と物理的に固定されたものである」という形態は好ましい形態である。
【0008】
第1素子と第2素子とが物理的に1つに組み合わされることで第1素子と第2素子とをひとまとめにして扱うことが可能となり、RFIDタグの作製が簡単になる。
【0009】
また、本発明のRFIDタグ、および、第2素子が第1素子と物理的に固定された本発明のRFIDタグにおいて、「上記第2素子が、上記第1素子に対して直接に電気的に接続されたものである」という形態も好ましい形態である。
【0010】
このような形態によれば、第2素子が第1素子に直接に電気的に接続されることで、第1素子と第2素子の間の電気的導通がより確実に維持される。
【0011】
また、本発明のRFIDタグ、および、第2素子が第1素子と物理的に固定された本発明のRFIDタグにおいて、「上記凹部に設けられた、上記第2素子を上記第1素子に電気的に接続する導体パターンを備えた」という形態は好ましい形態である。
【0012】
このような形態によれば、第1素子と第2素子とが互いに電気的に接続されている状態が簡単に実現する。
【0013】
上記目的を達成するための本発明の第1のRFIDタグ製造方法は、
表面に通信用のアンテナが設けられているとともに、第1素子と該第1素子よりも小さい第2素子を電気的に接続する導体パターンも設けられている、加熱により軟化するベースシートの該導体パターン上に該第2素子を搭載して該導体パターンと接続する第1搭載過程と、
上記第2素子が搭載されたベースシートを加熱して、該第2素子が搭載された箇所を凹ませて凹部を形成する凹部形成過程と、
上記ベースシートの上記凹部と上記第2素子を跨いで、上記導体パターン上に上記第1素子を搭載して該導体パターンと接続する第2搭載過程とを有し、
上記第1搭載過程と上記第2搭載過程とのうち少なくともいずれかの過程が、上記ベースシート上のアンテナに対して上記第1素子と上記第2素子とのうち少なくともいずれかの素子を搭載して接続する過程であることを特徴とする。
【0014】
本発明の第1のRFIDタグ製造方法では、加熱により、ベースシートの、第2素子が搭載された箇所を凹ませて凹部を形成し、さらに第1素子をベースシートの凹部を跨いで配置するだけで、厚みの薄いRFIDタグが製造される。本発明の第1のRFIDタグ製造方法は、このように簡易な技術で実行される製造方法であるため、本発明の第1のRFIDタグ製造方法は、低コスト化に適している。
【0015】
上記目的を達成するための本発明の第2のRFIDタグ製造方法は、
素子との接続端を有する通信用のアンテナが表面に設けられた、加熱により軟化するベースシートを加熱して、該接続端の箇所を凹ませて凹部を形成する凹部形成過程と、
第1素子と、該第1素子よりも小さい第2素子とを相互に物理的に固定する固定過程と、
相互に固定された第1素子および第2素子を上記ベースシート上に、該第2素子が上記凹部に収まるように搭載し、該ベースシート上のアンテナに対して該第1素子と該第2素子とのうち少なくともいずれかの素子を接続する搭載過程と、
上記第1素子および上記第2素子を互いに電気的に接続する接続過程とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の第2のRFIDタグ製造方法では、加熱によりベースシートを凹ませて凹部を形成し、この凹部に、相互に物理的に固定された第1素子および第2素子を電気的に接続するだけで厚みの薄いRFIDタグが製造される。本発明の第2のRFIDタグ製造方法は、このように簡易な技術で実行される製造方法であるため、本発明の第2のRFIDタグ製造方法も、低コスト化に適している。
【0017】
また、本発明の第2のRFIDタグ製造方法において、「上記ベースシートが、上記第1素子と上記第2素子とを電気的に接続する導体パターンも設けられているものであり、上記接続過程が、相互に固定された第1素子および第2素子を上記ベースシート上の上記導体パターン上に搭載することで該第1素子および該第2素子を互いに電気的に接続する、上記搭載過程を兼ねた過程である」という形態は好ましい形態である。
【0018】
このような形態によれば、導体パターン上に、第1素子および第2素子を搭載するだけで、第1素子および該第2素子が互いに電気的に接続されるので、RFIDタグの製造が簡単化される。
【0019】
また、本発明の第2のRFIDタグ製造方法において、「上記接続過程が、上記第1素子および上記第2素子を互いに電気的に接続するとともに物理的に固定する、上記固定過程を兼ねた過程である」という形態は好ましい形態である。
【0020】
このような形態によれば、接続過程において第1素子および第2素子が互いに電気的に接続されるとともに物理的に固定されることで、第1素子および第2素子をひとまとめの素子として扱うことが可能となり、RFIDタグの製造が簡単化される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、構成が簡単で簡易な技術で作製される、複数の電子素子を備えたRFIDタグが実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明のRFIDタグの一実施形態であるRFIDタグ10の概略的な構成を表した図であり、図2は、このRFIDタグ10における配線の様子を表した図である。
【0024】
図1に示すRFIDタグ10は、図示しないリーダライタと、電波を利用して非接触で情報のやり取りを行う電子装置である。なお、本願技術分野における当業者間では、本願明細書で使用する「RFIDタグ」のことを、「RFIDタグ」用の内部構成部材(インレイ;inlay)であるとして「RFIDタグ用インレイ」と称する場合もある。あるいは、この「RFIDタグ」のことを「無線ICタグ」と称する場合もある。また、この「RFIDタグ」には、非接触型ICカードも含まれる。
【0025】
図1には、RFIDタグ10の側面側から見たときのRFIDタグ10の概略的な構成が表されている。RFIDタグ10は、樹脂性のフィルム111上に金属製のアンテナパターン112が形成されてなる基体11を備えており、この基体11の上に、2つのICチップ12a,12bがこの順番で重なっている。これら2つのICチップ12a,12bには、電子回路が形成されている回路面120a,120bが備えられている。ここで、2つのICチップ12a,12bのうち、図1の下側のICチップ12aは、図1の上側のICチップ12bよりも小さいICチップであり、以下では、2つのICチップ12a,12bを区別するため、図1の下側のICチップ12aを小チップ12aと呼び、図1の上側のICチップ12bを大チップ12bと呼ぶ。
【0026】
上記の樹脂性のフィルム111が、本発明にいうベースシートの一例に相当し、大チップ12bが本発明にいう第1素子の一例に相当し、小チップ12aが本発明にいう第2素子の一例に相当する。
【0027】
図1に示すように、基体11は、図1の下側に凹んだ形状を備えており、小チップ12aはこの凹んだ部分(凹部)に、小チップ12aの回路面120aが基体11側に向いた状態で配置されている。図1に示すように、アンテナパターン112は、基体11の表面に沿って凹部の凹面にまで延びており、凹面のアンテナパターン112は、小チップ12aの回路面120aに設けられたバンプ121aと接続されている。これにより、アンテナパターン112と小チップ12aとが導通している。
【0028】
一方、大チップ12bは、図1に示すように、凹部を跨いで基体11上に配置されており、この状態では、大チップ12bの回路面120bに設けられた2つのバンプ121bは、基体11の凹部の縁にそれぞれ位置している。なお、この図では不図示であるが、大チップ12bは、小チップ12aと電気的に接続されている。
【0029】
また、小チップ12aは、接着剤13により基体11に接着されており、大チップ12bも、接着剤13により、小チップ12aを間に挟んで基体11に接着されている。ここで、この接着剤13は、熱が加えられて硬化する接着剤であり、後述するように、RFIDタグ10の製造工程においては、液状の接着剤13を加熱することでの接着剤13の硬化が行われる。
【0030】
図2には、小チップ12a、大チップ12b、および、アンテナパターン112との間の配線の様子が、図1の左右方向の面内で表されている。図2に示すように、図の左右方向に延びた2本のアンテナパターン112は、小チップ12aの4つのバンプ121aのうち、図の左下のバンプ121aと、図の右下のバンプ121aとにそれぞれ接続されている。また、残りの図の左上のバンプ121aと、図の右上のバンプ121aとは、接続配線113によってそれぞれ大チップ12bのバンプ121bと接続されている。このような構成により、アンテナパターン112と小チップ12aとの間の電気的導通、および、大チップ12bと小チップ12aとの間の電気的導通の双方が実現する。ここで、接続配線113が、本発明にいう導体パターンの一例に相当する。
【0031】
このRFIDタグ10では、リーダライタが発生する電波をアンテナパターン112で受け、その電波に基づき大チップ12bと小チップ12aが駆動される。大チップ12bと小チップ12aの駆動源となる電力も電波から得られ、このRFIDタグ10は、電池などといった内蔵電源が不要で小型軽量化に適したRFIDタグとなっている。
【0032】
以上説明したRFIDタグ10では、基体11の凹んだ部分に小チップ12aがぴったり収まるように配置され、さらにこの小チップ12aに重ねて大チップ12bが、凹部を跨いで基体上に配置されている。本発明のRFIDでは、このように基体11の凹んだ部分で小チップ12aおよび大チップ12bが重ねて配置され、RFIDタグの厚み方向について2つのチップの間に余計な導電体などといった部材が不要なため、RFIDタグ全体の厚みが薄くなっており、本発明のRFIDは、小型化に適したRFIDタグとなっている。
【0033】
以下、このRFIDタグ10の製造方法について説明する。
【0034】
図3は、図1に示すRFIDタグ10を製造する製造方法を説明する図である。
【0035】
図3に示す製造方法は、本発明の第1のRFIDタグ製造方法の一実施形態であり、この図には、RFIDタグ10を製造するための各工程がパート(a)からパート(g)まで順に示されている。
【0036】
RFIDタグ10を製造するには、まず、図3のパート(a)に示す付着工程で、樹脂製のフィルム111にアンテナパターン112および図2の接続配線113(図3では不図示)が形成された基体11を用意し、基体11の、アンテナパターン112が形成された側の面に、液状の接着剤13aを付着させる。この接着剤13aは、熱が加えられると硬化する熱硬化接着剤である。なお、図3のパート(a)の接着剤13aは、図1の接着剤13と同じものであるが、RFIDタグ10の製造工程では、後述するように接着剤13を付着させる工程が2回あるため、これら2回の工程を区別するため接着剤の符号を使い分けて用いる。
【0037】
次に、図3のパート(b)およびパート(c)に示す小チップ搭載工程で、基体11上の接着剤13aが付着した部分に、小チップ12aが、小チップ12aの回路面120aが基体11側に向いた姿勢で載せられる。このとき、小チップ12aの回路面120aに設けられたバンプ121aの位置が、基体11のアンテナパターン112および図2の接続配線113(図3では不図示、図2参照)の位置に合うように、小チップ12aの位置が決められる。
【0038】
次に、図3のパート(d)に示す第1密着工程で、小チップ12aが載せられた基体11を加熱ステージ220上にセットし、ヒータを内蔵している第1加熱ヘッド210により、基体11上の小チップ12aを加熱ステージ220側に向かって押さえながら加熱する。この加熱により、小チップ12aの下の接着剤13aが硬化して小チップ12aが基体11上に固定される。また、このときの加熱により、基体11を構成するフィルム111の軟化が起きる。
【0039】
次に、図3のパート(e)に示す凹部形状形成工程で、基体11に凹部形状を与えるための、型となる凹部形状の段差がある段差ステージ320上に、上述の第1密着工程(図3のパート(d)参照)でフィルム111が軟化した基体11が、基体11の、小チップ12aを載せた部分が段差ステージ320の凹部内に収まるようにセットされる。そして、この状態で、段差ステージ320に設けられた吸引孔から空気の吸引が行われることで、セットされた基体11が段差ステージ320にぴったり貼り付く。所定時間経過後には、フィルム111が冷えて硬化し、基体11に凹部が設けられる。
【0040】
次に、図3のパート(f)に示す大チップ搭載工程で、凹部が設けられた基体11の上に、基体11の上の小チップ12aを取り巻くように液状の接着剤13bが付着され、接着剤13bが付着した部分に、基体11の凹部を跨いで大チップ12bが搭載される。この接着剤13bは、熱が加えられると硬化する熱硬化接着剤であり、図1の接着剤13と同じものである。ここで、大チップ12bが搭載される際には、図2の接続配線113に、大チップ12bの回路面120b上のバンプ121bが接続されるように、大チップ12bの位置が決められる。
【0041】
次に、図3のパート(g)に示す第2密着工程で、基体11上に搭載された大チップ12bを、ヒータを内蔵している第2加熱ヘッド310を用いて段差ステージ320側に向かって押さえながら加熱する。この加熱により、大チップ12bの下の接着剤13bが硬化して大チップ12bが基体11上に固定され、図1のRFIDタグ10が完成する。
【0042】
以上説明した、図3の、RFIDタグ製造方法では、加熱により、基体11の、小チップ12aが搭載された箇所を凹ませて凹部が形成し、さらに大チップ12bを、この凹部を跨いで配置するだけで、厚みの薄いRFIDタグが製造される。図3の、RFIDタグ製造方法は、このように簡易な技術で実行される製造方法であるため、低コスト化に適した製造方法となっている。
【0043】
以上は、小チップ12aを基体11上に固定した後に、大チップ12bを、小チップ12aに重ねて基体11上に固定する製造方法であるが、このRFIDタグ10は、大チップ12bを小チップ12aに重ねて固定させた後に、これら2つのICチップをまとめて基体11上に固定する製造方法によっても製造可能である。以下では、このような製造方法について説明する。
【0044】
図4は、図1に示すRFIDタグ10について、図3の製造方法とは別の製造方法を説明する図である。
【0045】
図4に示す製造方法は、本発明の第2のRFIDタグ製造方法の一実施形態であり、この図には、図3のRFIDタグ10の製造方法とは異なる製造方法についての各工程がパート(a)からパート(e)まで順に示されている。
【0046】
図4に示す製造方法では、まず、図4のパート(a)に示すチップ接着工程で、大チップ12bの回路面120bに付着した液状の接着剤13bの上に、小チップ12bが、小チップ12bの回路面120aとは反対側の面を大チップ12bの回路面120b側に向けた状態で配置される。
【0047】
次に、図4のパート(b)に示す第1密着工程で、接着剤13bを介して小チップ12bを載せた大チップ12bを、大チップ12の回路面120aとは反対側の面が加熱ステージ220側になるように、加熱ステージ220上にセットし、第1加熱ヘッド210により、大チップ12の回路面120a上の小チップ12aを加熱ステージ220側に向かって押さえながら加熱する。この加熱により、小チップ12aの下の接着剤13aが硬化して小チップ12aが大チップ12の回路面120a上に固定される。
【0048】
次に、図4のパート(c)に示す凹部形状形成工程で、フィルム111にアンテナパターン112および図2の接続配線113(図3では不図示、図2参照)が形成された基体11を用意し、フィルム111を加熱させて軟化させ、フィルム111が軟化した基体11を、凹部形状の段差がある段差ステージ320上にセットする。このセットの際には、図4のパート(c)に示すように基体11のフィルム側が段差ステージ320と接するようにセットされる。そして、この状態で、段差ステージ320に設けられた吸引孔から空気の吸引が行われることで、基体11が段差ステージ320にぴったり貼り付く。所定時間経過後には、フィルム111が冷えて硬化し、基体11に凹部が設けられる。その後、基体11の凹部に液状の接着剤13を付着させる。
【0049】
次に、図4のパート(d)に示すチップ搭載工程で、基体11上の接着剤13aが付着した部分に、図4のパート(a)のチップ接着工程および図4のパート(b)の第1密着工程で互いに接着された大チップ12bおよび小チップ12aが、段差ステージ320の上に、大チップ12bの回路面120bおよび小チップ12aの回路面120aが段差ステージ320側に向いた姿勢で載せられる。このとき、小チップ12aの回路面120aに設けられたバンプ121aの位置が、基体11のアンテナパターン112および図2の接続配線113(図3では不図示)の位置に合うとともに、大チップ12bの回路面120bに設けられたバンプ121bの位置が接続配線113の位置に合うように、大チップ12bおよび小チップ12aの位置が決められる。
【0050】
次に、図4のパート(e)に示す第2密着工程で、基体11上に搭載された大チップ12bおよび小チップ12aを、ヒータを内蔵している第2加熱ヘッド310を用いて段差ステージ320側に向かって押さえながら加熱する。この加熱により、大チップ12bおよび小チップ12aと、基体11との間の接着剤13が硬化して大チップ12bおよび小チップ12aが基体11上に固定され、図1のRFIDタグ10が完成する。
【0051】
以上の、図4に示すRFIDタグ製造方法では、加熱により基体11を凹ませて凹部を形成し、この凹部に、相互に物理的に固定された大チップ12bおよび小チップ12aを、接続配線113を介して電気的に接続するだけで厚みの薄いRFIDタグが製造される。図4に示すRFIDタグ製造方法は、このように簡易な技術で実行される製造方法であるため、低コスト化に適した製造方法となっている。
【0052】
以上説明したRFIDタグ10では、アンテナパターン112は、図1および図2に示すように、基体11の凹部の凹面にまで延びて凹部内の小チップ12aに接続されていたが、本発明のRFIDタグは、アンテナパターンが、基体の凹部の開口まで延びて大チップ12bに接続されているRFIDタグでもよい。このようにアンテナパターンが大チップに接続されているRFIDタグは、アンテナパターンが、基体の凹部の開口まで延びて大チップ12bに接続されている点を除き、図1のRFIDタグ10と同じ構成を備えている。ここでは、RFIDタグの概略構成については説明を省略し、以下では、アンテナパターンが大チップ12bに接続されているRFIDタグの配線について説明する。
【0053】
図5は、アンテナパターンが大チップ12bに接続されているRFIDタグの配線の様子を表した図である。
【0054】
図5に示すRFIDタグ10’では、フィルム111上のアンテナパターン112’は、大チップ12b’のバンプ121b’を介して大チップ12b’に接続されており、小チップ12a’とは接続されていない。一方、小チップ12aのバンプ121a’と、大チップ12bの図の右下のバンプ121b’および左下のバンプ121b’とは、接続配線113’によって接続されており、この接続配線113’により、小チップ12aと大チップ12bとの間に電気的導通が存在する状態となっている。このようにアンテナパターン112’が大チップ12bに接続されているRFIDタグ10’は、本発明のRFIDタグの別の実施形態である。このRFIDタグ10’は、基体上のアンテナパターン112’や配線パターン113’が、図2のRFIDタグ10のアンテナパターン112や配線パターン113とはパターン形状が異なる点を除き、図3および図4で説明したのと同様の製造方法で作製される。
【0055】
以上説明したRFIDタグ10、10’では、小チップは、回路面120aを基体側に向けて基体上の接続配線と接続され、この接続配線を介して大チップと電気的に接続されていたが、本発明のRFIDタグは、小チップが直接大チップと導通しているRFIDタグでもよい。以下では、小チップが直接大チップと導通しているRFIDタグについて説明する。このようなRFIDタグは、本発明のRFIDタグのさらに別の実施形態である。
【0056】
図6は、本発明のRFIDタグの別の実施形態であるRFIDタグ20の概略的な構成を表した図であり、図7は、このRFIDタグ20における大チップ22bおよび小チップ22aの配線の様子を表した図である。
【0057】
図6のRFIDタグ20は、樹脂性のフィルム211上に金属製のアンテナパターン212が形成されてなる基体21を備えており、この基体21の上に、互いに電気的に接続されている小チップ22aおよび大チップ22bの2つのICチップが、この順番で重なっている。
【0058】
図6に示すように、基体21は、図1の下側に凹んだ形状を備えており、小チップ12aはこの凹んだ部分(凹部)に、電子回路が形成されている回路面120aを大チップ22b側に向けた状態で配置されている。一方、大チップ22bも、電子回路が形成されている回路面120bを備えており、小チップ12aの回路面120aに設けられたバンプ121aは、大チップ22bの回路面120bに設けられたパッド(図6では不図示)と接続されている。
【0059】
一方、大チップ22bは、図6に示すように、大チップ22bの回路面220bに設けられた2つのバンプ221bが基体21の凹部の縁にそれぞれ配置されることで、凹部を跨いで基体21上に配置されている。基体21のアンテナパターン212は、基体21の表面に沿って凹部の開口まで延びており、開口近くのアンテナパターン212は、大チップ12bのバンプ221bと接続されている。
【0060】
小チップ12aと大チップ12bとの間、および大チップ12bと基体11との間には、熱が加えらて硬化した接着剤23が存在しており、この接着剤23により、小チップ12aは大チップ22bに接着され、大チップ22bは基体21に接着されている。
【0061】
図7には、大チップ22bの回路面220bと、小チップ22aの回路面220aにおけるの配線の様子が示されている。ここで、図7のパート(a)に示す大チップ22bの回路面220bにおける4つのバンプ221bのうち、図の左上のバンプ221bと右上のバンプ221bは、図6に示すアンテナパターン212に接続され、残りの、図の左下のバンプ221bと右下のバンプ221bは、図7のパート(a)に示すように、大チップ22bの回路面220bの中央付近の4つのパッド222bのうちの2つのパッド222bに接続線223bによって接続されている。
【0062】
一方、図7のパート(b)に示すように、小チップ22aの回路面220aには、4つのバンプ221aが設けられており、これらのバンプ221aは、図6の様態で、大チップ22bの4つのパッド222bにそれぞれ接続される。これにより、大チップ22bと小チップ12aとの間に電気的に導通が存在する状態が実現する。
【0063】
図6のRFIDタグ20は、小チップ22aが、図1のRFIDタグ20の小チップ12aとは、図の上下方向について逆向きの姿勢で大チップ22bに取り付けられる点を除き、図4の製造方法と同様の製造方法で作製される。特に、図6のRFIDタグ20の製造方法では、図4のパート(a)で小チップ22aが大チップ22bに取り付けられる際に、図7で説明したように、小チップ22aと大チップ22bとの間の電気的導通も同時に実現する。このため、以降の工程では、小チップ22aおよび大チップ22bをひとまとめのチップとして扱うことが可能となり、RFIDタグの製造が簡単化される。
【0064】
以上が本発明の実施形態の説明である。
【0065】
以上では、重なった2つのICチップを有するRFIDタグについて説明したが、本発明は、積層した3つ以上のICチップを有するRFIDタグでもよく、この場合、基体の凹部に収まるICチップは複数のICチップであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のRFIDタグの一実施形態であるRFIDタグの概略的な構成を表した図である。
【図2】図1のRFIDタグにおける配線の様子を表した図である。
【図3】図1に示すRFIDタグを製造する製造方法を説明する図である。
【図4】図1に示すRFIDタグについて、図3の製造方法とは別の製造方法を説明する図である。
【図5】アンテナパターンが大チップに接続されているRFIDタグの配線の様子を表した図である。
【図6】本発明のRFIDタグの別の実施形態であるRFIDタグの概略的な構成を表した図である。
【図7】図6のRFIDタグにおける大チップおよび小チップの配線の様子を表した図である。
【符号の説明】
【0067】
10,10’,20 RFIDタグ
11,21 基体
111 フィルム
112,112’,212 アンテナパターン
113,113’,213 接続配線
12a,12a’,22a 小チップ
12b,12b’,22b 大チップ
120a,120b,220a,220b 回路面
121a,121b,121a’,121b’,221a,221b バンプ
222b パッド
223b 接続線
210 第1加熱ヘッド
220 加熱ステージ
310 第2加熱ヘッド
320 段差ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部を有するベースシートと、
前記凹部を跨いで前記ベースシート上に設けられた第1素子と、
前記第1素子と前記ベースシートとの間に設けられ該第1素子と電気的に接続された第2素子と、
前記ベースシート上に設けられた、前記第1素子と前記第2素子とのうち少なくともいずれかの素子に接続された通信用のアンテナとを備えたことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記第2素子が、前記第1素子と物理的に固定されたものであることを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
前記第2素子が、前記第1素子に対して直接に電気的に接続されたものであることを特徴とする請求項1または2記載のRFIDタグ。
【請求項4】
前記凹部に設けられた、前記第2素子を前記第1素子に電気的に接続する導体パターンを備えたことを特徴とする請求項1または2記載のRFIDタグ。
【請求項5】
表面に通信用のアンテナが設けられているとともに、第1素子と該第1素子よりも小さい第2素子とを電気的に接続する導体パターンも設けられている、加熱により軟化するベースシートの該導体パターン上に該第2素子を搭載して該導体パターンと接続する第1搭載過程と、
前記第2素子が搭載されたベースシートを加熱して、該第2素子が搭載された箇所を凹ませて凹部を形成する凹部形成過程と、
前記ベースシートの前記凹部と前記第2素子とを跨いで、前記導体パターン上に前記第1素子を搭載して該導体パターンと接続する第2搭載過程とを有し、
前記第1搭載過程と前記第2搭載過程とのうち少なくともいずれかの過程が、前記ベースシート上のアンテナに対して前記第1素子と前記第2素子とのうち少なくともいずれかの素子を搭載して接続する過程であることを特徴とするRFIDタグ製造方法。
【請求項6】
素子との接続端を有する通信用のアンテナが表面に設けられた、加熱により軟化するベースシートを加熱して、該接続端の箇所を凹ませて凹部を形成する凹部形成過程と、
第1素子と、該第1素子よりも小さい第2素子とを相互に物理的に固定する固定過程と、
相互に固定された第1素子および第2素子を前記ベースシート上に、該第2素子が前記凹部に収まるように搭載し、該ベースシート上のアンテナに対して該第1素子と該第2素子とのうち少なくともいずれかの素子を接続する搭載過程と、
前記第1素子および前記第2素子を互いに電気的に接続する接続過程とを有することを特徴とするRFIDタグ製造方法。
【請求項7】
前記ベースシートが、前記第1素子と前記第2素子とを電気的に接続する導体パターンも設けられているものであり、
前記接続過程が、相互に固定された第1素子および第2素子を前記ベースシート上の前記導体パターン上に搭載することで該第1素子および該第2素子を互いに電気的に接続する、前記搭載過程を兼ねた過程であることを特徴とする請求項6記載のRFIDタグ製造方法。
【請求項8】
前記接続過程が、前記第1素子および前記第2素子を互いに電気的に接続するとともに物理的に固定する、前記固定過程を兼ねた過程であることを特徴とする請求項6記載のRFIDタグ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−110106(P2009−110106A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279346(P2007−279346)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】