説明

RFIDタグ付き表示媒体、および表示媒体へのRFIDタグ取り付け手法

【課題】 RFIDタグ付き表示媒体(紙製品)に関して、タグ本体とアンテナ部分を切り放して、それぞれ個別に表示媒体上に形成する。
【解決手段】 RFIDのアンテナと本体部分は別途作製され、別途専用の貼り付け装置で用紙に貼り付けられる。RFIDのアンテナとRFIDの本体部分は別途用紙に形成される。本体部分は、専用貼り付け装置で貼り付ける。アンテナ部分は、印刷で描画する。アンテナを後着けすることにより、伝達距離をあらかじめ指定されず、汎用性を持たすことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ネットワークに接続されたどこの端末からでもアクセス可能で、印刷可能なようにコンテンツを共有することのできるセキュリティに優れたコンテンツ共有システムに関し、特に、紙等の表示媒体上に印刷されたコンテンツ情報の共有も可能であり、機密性の高いコンテンツの印刷物や著作物等の印刷物の発行を管理することもできるRFIDタグ付き表示媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷システムでは、例えば、パーソナルコンピュータ等によって生成された印刷データをプリンタに送信することにより、所定のドキュメントを複数印刷することができるようになっている。即ち、ある印刷物を発行する場合には、ドキュメント作成用プログラム等によって所定の印刷内容を生成し、この印刷内容に基づいた印刷データをプリンタに送信する。プリンタは、受信した印刷データを解釈して印刷出力用のイメージデータを生成する。このイメージデータは、給紙カセット等に供給された印刷記録媒体に印刷され、これにより、印刷物が発行される。
【0003】
紙情報の電子化に関しては、特許文献1において、ICチップ入りペーパを情報伝達方法に用いることが開示されている。これは、ICチップに情報の電子データを蓄積し、紙上に情報を印刷することで、紙を電子記憶媒体として用いて情報を配布・授受・保存する方法である。
【0004】
また、印刷物発行管理システムとしては、特許文献2において不正な印刷物の発行を防止するシステムが提案されている。例えば、有価証券や著作物等の印刷物の発行管理に使われる。これは、識別情報を有する表示媒体において、正当な識別情報であると認識した場合にのみ要求されたコンテンツをプリントするというもので、正当な識別情報をもつ印刷物を管理することができる。ここでは、「識別情報」としては、例えば、文字や記号等の印字情報、磁気情報、バーコード等の光学的検出情報、透かし等が開示されている。
【0005】
特許文献3では、印刷物の真贋判定を行なう印刷物発行管理システムにおいてICチップを用いることで、高いセキュリティを実現している。このシステムの特徴は、印刷物検証装置がオフラインであり、あらかじめICチップの認証キーと暗号化キーを用いて暗号化したデータを複合化できる複合化キーを記憶しておくことで、実現している。
【0006】
RF-ID読み込み/書き込み装置付きプリンタとしては、特許文献4において、RF-IDタグから読み取られたデータに基づいて、ラベル上に視認可能なバーコード、可読文字等を印刷することで、RF-IDタグへの書き込みが失敗しても作業者が認識でき、リトライできるという効果が示されている。
【0007】
特許文献5には、用紙に近接無線交信を行う無線交信素子が取り付けられおり、その近傍に書き込み領域が指定されている紙製品に関して記載されている。
【0008】
特許文献6には、紙材料でアンテナ領域の表面を被覆することが記載されている。
【特許文献1】特開2000-285203号公報
【特許文献2】特開平11-78176号公報
【特許文献3】特開2001-134672号公報
【特許文献4】特開2001-96814号公報
【特許文献5】特開2000-120475号公報
【特許文献6】特開2000-174532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した従来技術に示すように、IDタグ付の表示媒体(紙(用紙)など)の使用に関しては、いくつもの記載があるが、その取り付け方法・方式については、詳細な記述が少ない。
【0010】
しかし、紙へのRFIDタグの取り付けの方法・方式によっては、更なる効果を生むことになる。
【0011】
通常のRF-IDタグの付いていない表示媒体(紙(用紙)など)は、ある程度の用途限定はあるが、特定の1つの目的のためということは無い。たとえば、コピー用紙は、コピー機にも使えるし、プリンター用紙にも使用できる。しかし、RF-IDタグがついた途端、その使用目的は、大幅に固定されることになる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
RF-IDタグにID情報のみを記録させておく場合には、IDタグに印刷した情報等の書き込みや読み出しを行う必要が無く、単にIDの読み出しが行われればよい。印刷情報との関連付けは、net上の別の場所にある管理システムに任せることになる。この場合、事前に一体型のRF-IDを取り付けておき、固定された目的の物しか使えなくするよりは、共通に使用する部分(たとえば、ID情報の記録してある本体部分)のみを事前に一括して取り付けておき、その後読み出し装置の種類等、使用環境によりアンテナ等を別途付加することにより、IDタグ付き表示媒体の共通化(共通作製化とも言うべきか)が図られる。
【0013】
ここで、RFIDタグ付き表示媒体とは、ICチップに内蔵されたID番号を無線方式によりリーダーと通信可能なタグが、表示媒体の表面、または裏面に取れないように接着等されているか、または表示媒体の中に折込まれていたり、2枚以上の表示媒体により挟まれるように形成されている媒体のことである。表示媒体とは、一般的にいうところの紙、表面がコートされている紙、写真等の印画紙、感熱紙、ジアゾ感光紙、オーバー・ヘッド・プロジェクタ用PETフィルムやポリエチレン、プラスチック等の樹脂膜等々、印刷可能な紙状の媒体であれば何でも良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、共通に使用する部分(たとえば、ID情報の記録してある本体部分)のみを事前に一括して取り付けておき、その後読み出し装置の種類等、使用環境によりアンテナ等を別途付加することにより、IDタグ付き表示媒体の共通化(共通作製化とも言うべきか)が図られる。
【0015】
また、アンテナを後着けすることの利点として、伝達距離をあらかじめ指定されず、汎用性を持たすことができる。
【0016】
また、印刷方式の利点として、アンテナを印刷方式にすることにより、多種多様のアンテナを別途作製しておくことの無駄を排除できる。その使用用途に適合した大きさ形、あるいは印刷媒体(本明細書では、表示媒体)の大きさ、アンテナ形成可能領域の大きさ・形等によって、アンテナ形成時に選択できる。
【0017】
更には、印刷方式にすることにより、その厚さをほとんど無視できるので、その後の取り扱いに支障が生じない。例えば、裏面全面にアンテナを形成してもその厚さを無視できるので、表に手書きしたり、再度プリンターへ通したり、ID読取装置へ通したりすることへの支障は無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施例1)
図1に表面の印字可能領域外にアンテナ部分まで形成した表示媒体の例を示す。印字領域外にあるので、印字内容や用途を特に指定することなく汎用的に使用できる。
【0019】
図2にアンテナ取り付け装置によってアンテナ部分のみを後で形成する例を示す。アンテナは、貼り付け、印刷等によって形成できる。
【0020】
図3にRFID取り付けおよび読み取り内蔵印刷装置によって、印刷とアンテナ部分の形成を一括して行う例を示す。ここでは図示しないが、図4に示すように、印刷装置内には、読み取り部もあるので、元々取り付けられていたRFIDの情報を読み取りネットワークを通じてデータ管理装置にて、IDと印字情報とのリンクを管理できる。
【0021】
事前に、用紙100枚にRFID本体を専用の「IDタグ貼り付け装置」により貼り付ける。貼り付け位置は、プリント範囲外の用紙の端が好ましい。更には、裏面であることが好ましい。最近の縁無し印刷によって表面は印字可能領域が狭くなる傾向になるため、表に形成しておくと汎用性が狭まる。ここまででは、単にRFID本体が紙に物理的に引っ付いている状態に過ぎなく、機能的な役割を果たすことはできない。この後、この紙の使用の前にアンテナを形成する。
【0022】
アンテナは、例えば専用装置で貼り付けられる。あるいは、インクジェットのような方式で描画される。どのような大きさにするかは、その使用目的にも大きく依存する。例えば、プリンター、コピー機のような表示装置によって表示情報を表示媒体に表示させる場合、その表示装置にID読み取り機能を持たせることができる。この場合は、RFIDタグと読み取り機構は非常に接近させることができるので、アンテナは小さくて構わない。また、保管書類にするためにIDタグをつける場合、その在り処を大きな読み取り装置で検索することを想定すると大きなアンテナを形成しておくことが好ましい。
【0023】
IDの着いた用紙を「ID読み取り機能付プリンター」にセットし、電子ファイル(例えば、ファイル名:canon_111.doc)から印刷する。各用紙のRFIDを読み取って、データ管理へ情報を転送する。IDとファイル名、印刷ページ等の情報がデータ管理へ書き込まれる。
【0024】
電子データの改訂・変更・複写・破棄等の履歴もその都度データ管理テーブルに書き込むことにより、紙のIDを再度別の読み取り装置で認識することにより、紙に印刷された元データの状況をたどる事ができる。
【0025】
また、タグつき紙も破棄する際に読み取り装置で読み取ってから破棄するとその破棄情報がデータ管理表へ記録され、元ファイルからの印刷履歴をも管理できるようになる。
【0026】
RFIDのアンテナは、印刷機能により直接描画されても良い。例えば、カーボン・金属等の電気伝導度の高い物質を含有する液体をインクジェットのような微細な印字が可能な装置で紙へ塗布し、アンテナとする。用紙への印刷あるいはコピーと同時でも別でも良い。
【0027】
導電性高分子材料(π共役系高分子または導電性フィラ―を含有する高分子)もインクジェット方式で印字可能である。π共役系高分子としては、直鎖共役系導電性高分子、芳香族共役系導電性高分子、ヘテロ環式共役系導電性高分子、含ヘテロ原子共役系導電性高分子、混合型共役系導電性高分子、縮合芳香環系導電性高分子、その他の導電性高分子がある。
【0028】
導電性フィラ―としては、カーボン系、金属系、その他がある。カーボン系は、カーボンブラックとして、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック他、炭素繊維として、PAN系、ピッチ系、黒鉛として天然物、人工物等がある。この場合、印刷後に過熱工程を通し、高分子化する必要がある。
【0029】
また、例えば、通常の複写装置のトナーにアンテナ材となる微粒子を混ぜ、印刷後導電性となるよう処理することにより可能である。
【0030】
複数個のIDタグを取りつけることにより、IDの差のみを利用し、表裏・転地の検出ができる。IDに表情報や転地情報を帰属させておく必要はない。
【0031】
図4に本発明であるRFIDタグ付き表示媒体を用いたコンテンツ共有システムについて、第1の実施例の構成図を示す。ネットワークに印刷装置100、データ管理装置200、PC(パーソナル・コンピュータ)300が接続されている。
【0032】
RFID取り付けおよび読み取り内蔵印刷装置は、ネットワーク・インターフェース101、制御部102、RFID読取機構部103、RFIDの一部取り付け機構部104、印刷部105、メモリ部106、操作部を107少なくとも備える。データ管理装置としては、ネットワーク・インターフェース201、データ保持部202、データ管理部203を少なくとも備える。
【0033】
RFIDタグ付き表示媒体400と該印刷装置100は、RFID読取機構部103とRFIDタグ401の間において無線でデータ通信を行う。
【0034】
図5に本発明であるRFIDタグ付き表示媒体を用いた印刷プロセスフローチャートを、図6にはそれに対応する各装置における処理ステップを示す。以下、図5、6について説明する。
【0035】
まず、PCからコンテンツの印刷命令が出た時、IDタグの本体の取り付けてある表示媒体にRFID取り付けおよび読み取り内蔵印刷装置により、アンテナ部分の取り付けを行う。次に印刷する表示媒体に付いたRFIDタグの確認を行なう。PCからの指示がRFID取り付けおよび読み取り内蔵印刷装置に送られ、表示媒体のRFIDを無線通信してID情報を取得する。このID情報はRFID取り付けおよび読み取り内蔵印刷装置からデータ管理装置へ送られ、あらかじめ格納されている許可されたID情報と比較して、表示媒体が許可されたIDを持つ場合、次のプロセスへ向かい、許可されていない場合、またはRFIDが応答しない場合、印刷を行なわない。
【0036】
次に、印刷命令されたコンテンツがデータ管理装置に登録されているかどうかを確認する。登録が無い場合は、印刷命令のファイルは少なくともPC上にあるため、それを印刷装置に送る。コンテンツがデータ管理装置に登録されている場合、印刷命令されているコンテンツと登録されているコンテンツが同一なのかどうか調べ、同一でない場合は、PC上のコンテンツを印刷装置へ送信し、同一の場合、データ管理装置内の登録コンテンツを印刷装置へ送る。
【0037】
印刷処理のための印刷装置へ送信されてきたコンテンツは、表示媒体上へ印刷されることになる。印刷終了を確認すると、印刷した紙のID番号、コンテンツ情報、コンテンツの管理情報を、データ管理装置へ送信し、登録する。この際、印刷命令されたコンテンツが未登録である場合(1)、印刷した紙のID番号、コンテンツ情報、コンテンツの管理情報について新規登録となる。印刷命令されたコンテンツが、既に登録されているが変更が加わっている場合(2)、印刷した紙のID番号、コンテンツ情報、コンテンツの管理情報について新規登録に加えて、既に登録されているID情報に係るコンテンツ管理情報に、新しく出力した表示媒体のID情報を追記しておく。また、印刷命令されたコンテンツが既に登録されており、その複製を作成した場合は新規登録は行なわず、コンテンツ管理情報に複製を作成したことに関する情報を追記する。
【0038】
本実施例では、PCからコンテンツの印刷命令が出て、アンテナ部分の形成が行われた後に、印刷する表示媒体に付いたRFIDタグの確認を行ない、許可を確認した後で、次に印刷命令されたコンテンツがデータ管理装置に登録されているかどうかを確認した。しかし、この2つの確認プロセスは、同時でも、逆でもよい。
【0039】
本発明により、印刷されたRFIDタグ付き表示媒体の情報がネットワーク上のデータ管理装置において蓄積された。
【0040】
本実施例では、RFIDタグ本体が裏面に形成された汎用の用紙を用いて、企業内において重要な会議で配布する説明用の機密資料を印刷した。これにより、機密情報の紙出力によりネットワークから出力された印刷物の情報も管理することが可能となった。
【0041】
本実施例のように、実際に使用する際にその用紙の用途が決まる場合がほとんどである。したがって、IDのみ記録されたタグ本体のみを汎用紙に形成しておき、使用する前(本実施例では、使用と同時)にアンテナを形成して使用することで、不要な在庫の用紙を多種類持たなくても良い。また、本実施例のように、機密情報であればなおさら、印刷後も特定の読取装置でのみ読み取ることになるので、不必要に通信距離を長くしておくことは無く微小なアンテナで十分である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】RFID付表示媒体(紙)。
【図2】アンテナ形成装置を通してRFID本体付表示媒体(紙)にアンテナを形成する例。
【図3】RFID取り付けおよび読み取り内蔵印刷装置を通してRFID本体付表示媒体(紙)にアンテナを形成する例。
【図4】本発明の第1の実施例のRFIDタグ付き表示媒体を用いたコンテンツ共有システムの構成図。
【図5】本発明の第1の実施例のRFIDタグ付き表示媒体を用いた印刷プロセスフローチャート図。
【図6】本発明の第1の実施例のRFIDタグ付き表示媒体を用いた印刷プロセスフロー図。
【符号の説明】
【0043】
100 印刷装置
101 ネットワーク・インターフェース
102 制御部
103 RFID読取機構部
104 RFIDの一部取り付け機構部
105 印刷部
106 メモリ部
107 操作部
200 データ管理装置
201 ネットワーク・インターフェース
202 データ保持部
203 データ管理部
300 PC(パーソナル・コンピュータ)
400 RFIDタグ付き表示媒体
401 RFIDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグ付き表示媒体を作製する際に、RFIDタグの少なくとも一部分をその他の部分とは、別工程で取り付けることを特徴とするRFIDタグ付き表示媒体の作製方法。
【請求項2】
請求項1において、アンテナ部分を別工程で取り付けることを特徴とするRFIDタグ付き表示媒体の作製方法。
【請求項3】
請求項2において、アンテナ部分を印刷方式により形成することを特徴とするRFIDタグ付き表示媒体の作製方法。
【請求項4】
請求項3において、印刷は、インクジェット方式により形成することを特徴とするRFIDタグ付き表示媒体の作製方法。
【請求項5】
請求項3において、印刷は、レーザービームプリンター方式により形成することを特徴とするRFIDタグ付き表示媒体の作製方法。
【請求項6】
請求項3において、印刷は、複写方式により形成することを特徴とするRFIDタグ付き表示媒体の作製方法。
【請求項7】
請求項1−6において、RFIDタグの少なくとも一部分の取り付けを、ネットワーク・インターフェース、制御部、RFID読取機構部、RFIDの一部取り付け機構部、印刷部、メモリ部、操作部を少なくとも備えるRFID取り付けおよび読み取り機構内蔵印刷装置によって行うことを特徴とするRFIDタグ付き表示媒体の作製方法。
【請求項8】
請求項7における印刷装置によって、
RFIDタグの少なくとも一部分の取り付け、
IDの読み取り、
表示媒体への表示情報の書き込みを一括して行うことを特徴とするRFIDタグ付き表示媒体の作製方法。
【請求項9】
請求項1−8によって作製されたRFIDタグ付き表示媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−48491(P2006−48491A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230688(P2004−230688)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】