説明

RFIDタグ及び該タグを備えるコンクリート試験片

【課題】コンクリート試験片に埋設して使用することができるRFID用タグ及び該タグが埋設されたコンクリート試験片の提供。
【解決手段】プラスチックフィルム上の圧延銅箔を渦巻き状にエッチングして形成されたアンテナコイル2aを備え、アンテナコイル2aの内側領域に、タグの平均密度をコンクリートの密度よりも大きくするための重錐9を設けたタグ2を用い、型枠6にコンクリートを突き固めながら注入した後タグ2を設置し、その上にベースとなるコンクリート5aよりも圧縮強度の弱いキャッピングコンクリート5bを流し込んでコンクリート試験片を形成することにより、突き棒によりタグ2を破損することなく、コンクリート試験片上部の所定の位置にタグ2を埋設することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装されたICチップに対して非接触でデータの読み書きを行うRFID(Radio Frequency Identification)システムに関し、特に、コンクリート試験片に埋め込むRFIDタグ及び該タグが埋め込まれたコンクリート試験片に関する。
【背景技術】
【0002】
建築材料として広く用いられるコンクリートは、コンクリート敷設時に同一材料で形成されたコンクリートブロックの試験片を用いてJISに基づく圧縮強度試験が実施され、その品質が確認される。例えば、JIS1132では、コンクリート強度試験用供試体(以下、コンクリート試験片と称する。)の作り方が定められており、コンクリート試験片や型枠の寸法、精度、表面の平面度、キャッピング方法等について詳細に規定されている。
【0003】
具体的には、コンクリート試験片の高さは直径の2倍以上、直径は粗骨材の最大寸法の3倍以上とされ、径の標準寸法は10cm、12.5cm、15cmでその寸法差は径は0.5%以内、高さは5%以内、角度は90°±0.5°以内と定められている。また、コンクリートは2層以上に分けて入れ、突き棒を用いて10cmに1回以上の割合で突き固め、コンクリート試験片の上面は研削又はキャッピングを行うと定められている。
【0004】
このキャッピングの方法としては、セメントペーストキャッピングとアンボンドキャッピングとがあり、セメントペーストキャッピングは、ベースとなるコンクリート上部に所定の水セメント比のセメントペーストを盛り、その上に薄紙やプラスチックの薄板を挟んで厚さ6mm以上のガラスを押しつける方法であり、アンボンドキャッピングは、こて仕上げしたままの状態の試験片にゴムパッドを挿入した鋼製キャップを被せる方法である。従来はセメントペーストキャッピングが広く用いられていたが、アンボンドキャッピングでは、鋼製キャップを被せるだけでセメントペーストキャッピングと同等の圧縮強度試験結果が得られることから近年使用されるようになってきている。
【0005】
このようにJISに基づいて製作されたコンクリート試験片を用いて圧縮強度試験を行う場合、所定の期間養生した後、養生槽からコンクリート試験片を取り出して圧縮強度試験が行われるため、コンクリート試験片を容易に識別できるように、従来はコンクリート試験片の表面にペンキ等でマークを付けていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ペンキ等のマークで表示可能な情報は資料No等に限られ、コンクリートの品質や圧縮強度試験に関連する多くの情報を記載することはできない。また、コンクリート試験片の表面にマーキングする方法では、養生中に剥げてしまったり、汚染等により読み取りが困難となる場合もある。
【0007】
一方、近年、ICチップを備えたタグとリーダ/ライタ(又はリーダ)との間でデータの交信を行うRFIDシステムが普及している。このRFIDシステムは、タグ及びリーダ/ライタの各々に備えたアンテナを用いてデータの交信を行うため、タグをリーダ/ライタから数cm乃至数十cm離しても通信可能であり、汚れ等に強いという特徴から様々な分野に利用されるようになってきており、上記コンクリート試験片の管理に用いることもできる。例えば、タグをコンクリート試験片の表面に張り付ければタグのICチップに豊富な情報を記録することはできるが、単にコンクリート試験片にタグを張り付けるだけでは、取り扱い中にタグが破損してしまったり、剥がれてしまう可能性がある。
【0008】
そこで、コンクリートブロック内部にRFID用タグを埋め込んでコンクリート試験片を識別する方法が考えられる。しかしながら、上述したようにコンクリートブロックは突き棒で突き固めながら製作されるため、タグをコンクリート本体に入れると、突き固め中に破損してしまったり、設置位置がずれて良好な通信状態が保てなくなってしまうという問題が生じる。また、コンクリートは強アルカリ溶液を含んでいるため、タグはアルカリ耐性の高い構造としなければならず、更に圧縮強度試験に誤差が生じないようなタグの構造やコンクリート試験片への埋設方法を案出しなければならない。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、コンクリート試験片に埋設して使用することができるRFID用タグ及び該タグが埋設されたコンクリート試験片を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明のRFIDタグは、アンテナコイル及びコンデンサからなる共振回路とICチップとを備える平板状のRFIDタグであって、前記アンテナコイルは、絶縁性フィルム上の圧延銅箔をエッチングして形成されたものであり、前記RFIDタグは、コンクリートブロックに埋設して使用され、前記アンテナコイルの内側領域に、前記RFIDタグ全体の平均密度が、該RFIDタグを埋設するコンクリートの密度よりも大となるように設定された重量の重錐を有するものである。
【0011】
本発明においては、前記重錐は、前記アンテナコイルの内周に並行してリング状に形成され、少なくともリングの一部において、該リングの径方向に設けたスリットにより分断されている構成とすることができる。
【0012】
また、本発明の圧縮強度試験用コンクリート試験片は、上記記載のRFIDタグが、内部に埋設されてなるものである。
【0013】
本発明においては、前記RFIDタグは、前記コンクリート試験片の上面と略平行、かつ、上面から所定の深さ位置に埋設されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明においては、前記コンクリート試験片は、前記RFIDタグ下層のベースとなるコンクリートと、該RFIDタグ上層のキャップとなるコンクリートで構成され、前記キャップとなるコンクリートは、前記ベースとなるコンクリートよりも圧縮強度の弱い材料で構成されるものとすることができる。
【0015】
このように、本発明は、プラスチックフィルム等の絶縁性フィルムの外周部分に、コンクリート中の強アルカリ溶液に耐性のある圧延銅箔等からなる渦巻き状のアンテナコイルが形成され、アンテナコイルの内側部分に重錐を設けた平板状のタグを用い、型枠にコンクリートの大部分を入れて突き固めた後、平板状のタグをコンクリート上面に置き、更に残りのコンクリートやキャッピングコンクリートを型枠に流し込むことにより、コンクリート試験片内部にタグを埋設することができ、タグによりコンクリート試験片を確実に識別することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のRFIDタグ及び該タグを埋設したコンクリート試験片によれば下記記載の効果を奏する。
【0017】
本発明の第1の効果は、コンクリート試験片を確実に識別することができるということである。
【0018】
その理由は、タグのアンテナコイルをプラスチックフィルム上に形成した圧延銅箔をエッチングして形成することにより、タグをコンクリート中に動作させることができるからである。
【0019】
また、本発明の第2の効果は、タグを破損させることなく、確実にコンクリートブロック試験片に埋設することができるということである。
【0020】
その理由は、タグのアンテナコイル内側に所定の重量の重錐を設け、タグの浮き上がりを防止しているからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係るRFIDタグは、その好ましい一実施の形態において、プラスチックフィルム等の絶縁性フィルム上の圧延銅箔等を渦巻き状にエッチングして形成されたアンテナコイルを備え、アンテナコイルの内側領域に、タグの平均密度をコンクリートの密度よりも大きくして浮き上がりを防止するための重錐を設けたものであり、型枠にコンクリートを突き固めながら注入したのち、上記タグを設置し、その上にベースとなるコンクリートよりも圧縮強度の弱いキャッピングコンクリートを流し込んでコンクリート試験片を形成することにより、突き棒によりタグを破損することなく、コンクリート試験片上部の所定の位置にタグを埋設することができ、これによりコンクリート試験片を確実に識別することができる。
【実施例1】
【0022】
上記した本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の第1の実施例に係るコンクリート試験片に埋設するRFIDタグ及びコンクリート試験片の製造方法について、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本発明のRFIDシステムの構成を示す図であり、図2及び図3は、本実施例のRFIDタグの構造を模式的に示す図である。また、図4は、コンクリート試験片にタグを埋設する方法を示す工程図である。
【0023】
図1に示すように、本実施例のRFIDシステム1は、リーダ/ライタ用アンテナ4を用いてデータの交信を行うリーダ/ライタ3と、コンクリートの敷設時に同時に形成されるコンクリート試験片5と、コンクリート試験片5の上部に上面と略平行に埋め込まれる平板状のタグ2とからなり、リーダ/ライタ3には、送受信信号を変換するための受信回路3a及び送信回路3bと、送受信信号をデコードするためのCPU3cとを備え、タグ2の共振周波数とリーダ/ライタ用アンテナ4の共振周波数をキャリア周波数に合わせることによりデータの交信が行われる。
【0024】
また、図2に示すように、本実施例のタグ2は、例えば、プラスチックフィルム等のベース2bに接着された圧延銅箔を渦巻き状にエッチングして形成したアンテナコイル2aと、ベース2bの所定の位置に形成されるコンデンサ(図示せず)とで共振回路を構成し、共振回路にはデータの記憶、演算処理を行うICチップ(図示せず)が接続されている。
【0025】
ここで、コンクリートには強アルカリ溶液が含まれており、タグ2をプラスチックの膜で覆ったり塗布する等の方法で表面を保護するとしてもコンクリートの強アルカリ溶液の浸透を完全に防止することは困難であり、アンテナコイル2aが腐食される恐れがある。そこで、本実施例では、強アルカリに対する耐久性の高い圧延銅箔を用いている。なお、アンテナコイル2aの材料は圧延銅箔に限定されず、コンクリート中で腐食されにくい材料であればよく、アンテナコイル2aの形成方法は、ベース2bに接着された導体をエッチングする方法に限らず、ベース2b上に1又は複数巻のアンテナパターンを形成できる方法であればよい。
【0026】
また、コンクリート試験片5を用いた圧縮強度試験はタグ2が埋設された状態で行われるため、タグ2の介在により圧縮強度が変化しないようにすることが望ましい。そのためにはタグ2の径を小さくしたり、図3に示すように、アンテナコイル2a内側の略中心部にベース2bを貫通する所定の大きさの孔2cを設け、タグ2の面積を極力小さくしてタグ2の影響を小さくすればよい。
【0027】
なお、図2及び図3では、円板状のベース2bの外周部分に導体を配置してリング状のアンテナコイル2aを形成しているが、タグ2の形状は図の構成に限定されず、例えば、ベース2bやアンテナコイル2aを矩形状等にしてもよい。
【0028】
そして、上記構造のタグ2をコンクリート試験片5上部の所定の位置に埋設するが、その際、コンクリート試験片5の内部に空気が混入するとコンクリートの強度が変化してしまうため、突き棒でつき固めながら型枠中にコンクリートを流し込む。従って、単に型枠中にタグ2を挿入しただけでは、突き棒によってタグ2が破損したり、設置位置がずれてしまう。そこで、本実施例では、以下に示すような方法でタグ2を埋設している。
【0029】
図4はアンボンドキャッピングを用いる場合のタグ2の埋設方法の一部を示す工程図であり、左は斜視図、右は断面図である。まず、図4(a)に示すように、型枠6内の所定の位置まで突き棒でつき固めながらベースとなるコンクリート5aを流し込む。このコンクリート5aは1回で流し込んでも複数回に分けて流し込んでも良い。また、圧縮強度を正確に測定する観点から、ベースとなるコンクリート5aの量を多くすることが好ましいが、量が多すぎると後の工程でタグ2を覆いきれなくなりタグ2が露出する恐れがあるため、流し込むコンクリート5aの量はタグ2の形状や厚さ等を勘案して調整することが好ましい。
【0030】
次に、図4(b)に示すように、ベースとなるコンクリート5aの上に、図2又は図3の構造のタグ2を配置する。その際、タグ2の位置が中心からずれると圧縮強度試験の結果に誤差が生じることが考えられるため、極力中心に設置することが好ましい。次に、図4(c)に示すように、その上に残りのコンクリート5aを流し込んでタグ2をコンクリート試験片5内に埋設する。そして、図4(d)に示すように、コンクリート5aの表面をこて等を用いて平坦にした後、コンクリート5a上部にゴムパッド7を介して鋼製キャップ8を被せてコンクリート試験片5が形成される。
【0031】
このような方法で形成したコンクリート試験片5の動作を確認するために、以下の実験を行った。タグ2として、プラスチックフィルム上に接着された圧延銅箔を渦巻き状にエッチングして、13.56MHzで作動する直径25mm、厚さ0.17mm、巻き数5回のアンテナコイル2aを形成し、そこにICを取り付けた。また、プラスチックフィルムは中央部に直径15mmの孔2cを形成した。このタグの重さは0.11gであり、見掛け密度は2.3g/cmであった。
【0032】
そして、直径125mm、高さ250mmのコンクリート試験片5に図4に示す方法によりタグ2を埋め込んだところタグ2は良好に動作した。これに対して、タグ2をコンクリート試験片5の上面に接着材で取り付けた試料(比較例1)では、取り扱い中にタグ2が破損した。また、タグ2を型枠6中に入れ、突き棒で突き固めながらコンクリート5aを入れた試料(比較例2)では、突き棒により破損したためと思われるが、タグ2の情報の読み取りはできなかった。
【0033】
以上の結果より、ベースとなるコンクリートを突き棒で突き固めた後、タグ2を配置して、その上に残りのコンクリートを流し込む方法を用いることにより、コンクリート試験片5の表面にタグ2が露出したり、コンクリートの突き固めの際にタグ2が破損することがなく、また、コンクリート試験片5上部の所定の深さにタグ2を埋設することができるため、リーダ/ライタ用アンテナ4との安定した交信を実現することができる。
【実施例2】
【0034】
次に、本発明の第2の実施例に係るコンクリート試験片の製造方法について、図5を参照して説明する。図5は、コンクリートブロック試験片にタグを埋設する方法を示す工程図である。
【0035】
前記した第1の実施例では、型枠6内に所定の位置までコンクリート5aを流し込んだ後、タグ2を設置し、その上から残りのコンクリート5aを流し込んでコンクリート試験片5を製造したが、コンクリートの圧縮強度試験はタグ2を埋設した状態で行うため、ベースとなるコンクリートとキャップとなるコンクリートの間にタグ2が介在することによって圧縮強度の測定値が変動することが考えられる。そこで、本実施例では、キャッピングコンクリートをベースとなるコンクリートよりも圧縮強度の弱い材料を用いることにより圧縮強度試験の精度を高めている。
【0036】
具体的には、第1の実施例と同様に、型枠6内の所定の位置まで、突き棒でつき固めながらコンクリート5aを流し込み(図5(a)参照)、その上にタグ2を配置する(図5(b)参照)。そして、図5(c)に示すように、その上に更にキャッピングコンクリート5b(例えば、セメントと粗骨材と水の配合を調整して圧縮強度を弱くしたコンクリート)を流し込んでタグ2をキャッピングコンクリート5bに埋設する。その後、表面を研削して所定の厚さのガラスを取り付けたり、ゴムパッド7を介して鋼製キャップ8を被せてコンクリート試験片5を形成する。
【0037】
このような方法を用いることにより、コンクリート試験片5の圧縮強度の値はベースとなるコンクリート5aの部分により決定されるため、タグ2が介在することによる圧縮強度の変動を防止することができる。
【実施例3】
【0038】
次に、本発明の第3の実施例に係るRFIDタグについて、図6を参照して説明する。図6は、本実施例のRFIDタグの構造を模式的に示す図である。
【0039】
前記した第1及び第2の実施例では、タグ2全体の平均密度は2.3g/cm程度であるのに対し、コンクリートの密度は2.4g/cmであり、タグ2を設置した状態でコンクリート5a又はキャッピングコンクリート5bを流し込むとタグ2が浮いてコンクリート試験片5の表面に露出してしまい、養生や圧縮強度試験の際にタグ2が破損してしまう場合がある。そこで、本実施例では、タグ2に重錐を取り付けてタグ2をコンクリート試験片5内部に確実に埋設できるようにしている。
【0040】
具体的は、本実施例のタグ2は、図6に示すように、図2又は図3の構造のタグ2に、外径18mm、内径15mm、厚さ0.3mm程度の鉄板等からなる重錐9を接着して取り付けたものであり、重錐9を設置することにより、鉄板を含むタグ2の重さを0.3g、見掛け密度を4.1g/cmとしてコンクリート5a又はキャッピングコンクリートよりも重くし、タグ2の浮き上がりを防止することができる。
【0041】
ここで、重錐9としては金属が適当であるが、重錐9の取り付け位置によってはタグ2の共振周波数が変化する恐れがある。そこで、本実施例では、プラスチックフィルムの外周部分に渦巻き状に形成したアンテナコイル2aの内側に、アンテナコイル2aよりも小さい径の重錐9を配置することにより金属の影響を緩和し、また、重錐9には、一ヶ所以上、外径から内径に至るスリットを設けてリング状の重錐9に流れる電流を抑制している。なお、重錐9の材料としては任意の金属を用いることができるが、前記したようにコンクリートは強アルカリ溶液を含んでおり、アルカリ溶液に対して耐性の高い金属を用いる必要があり、また、タグ2の価格を低減するためには安価であることも重要である。このような条件を満たす金属として鉄を用いることが好ましい。
【0042】
本実施例のコンクリート試験片5の動作を確認するために、上記構造のタグ2を第2の実施例で示す方法でコンクリート試験片5内に埋め込んだ。その結果、タグ2は正常に作動し、また、コンクリート試験片5表面にタグ2が露出することはなかった。これに対して、重錐9を設けないタグをキャッピング前のコンクリート試験片5の上面に配置してからキャッピングしたところ、タグは読み取り可能であったが、タグの表面がキャッピングコンクリート2bの表面に露出してしまう場合があった。
【0043】
以上の結果から、アンテナコイル2aよりも小さい径の鉄等の重錐9をアンテナコイル2a内側に設けることによって、キャッピング時にタグ2を確実にコンクリート中に埋設することができ、また、タグ2の浮き上がりがないため作業性を向上させることができる。
【実施例4】
【0044】
次に、本発明の第4の実施例に係るコンクリート品質管理用RFIDシステムについて、図7及び図8を参照して説明する。図7は、本実施例に係るコンクリート品質管理用RFIDシステムの構成を模式的に示す図であり、図8は、その管理手順を示すフローチャート図である。
【0045】
前記した第1乃至第3の実施例では、コンクリートブロック試験片5に埋設するタグ2の構造及びコンクリートブロック試験片5の製造方法について説明したが、本発明の構成では、タグ2のICチップに豊富な情報を書き込むことができ、また、リーダ/ライタ3で読み取った情報をそのまま通信ネットワークを介してサーバに記憶してデータベースとして利用することができる。そこで、本実施例では、本発明のタグ2を埋設したコンクリート試験片のデータを管理するシステムを構築し、コンクリートの品質管理を可能としている。
【0046】
具体的には、図7に示すように、本実施例のコンクリート品質管理システム10は、コンクリートの敷設及びコンクリート試験片5に本発明のタグ2を埋設するプラント11と、コンクリート試験片5を用いて圧縮強度試験を行う試験室12と、注文情報やコンクリート試験片の識別情報、圧縮強度試験データ等の情報を記憶する管理サーバ13と、該情報を利用する顧客14とが通信ネットワーク15を介して接続されている。また、プラント11及び試験室12にはリーダ/ライタ3を備えている。なお、リーダ/ライタ3で読み取ったタグ2の情報が自動的に管理サーバ13に送信され、管理サーバ13でこれらの情報を関連付けて記憶する構成としてもよい。
【0047】
このような構成のシステムを用いたコンクリートの品質管理手順について図8を参照して説明する。まず、プラント11は、納品書に印刷されているバーコードより受注番号を取得し、一方、リーダ/ライタ3を用いてタグ2からID番号を取得し、受注番号とタグIDとの対応付けを行い(ステップS101)、その情報をサーバ13に登録する(ステップS102)。その後、コンクリートの敷設を行う際に、前記した第1及び第3の実施例で示す構造のタグ2を第1及び第2の実施例で示す方法を用いてコンクリート試験片5の内部に埋設する(ステップS103)。
【0048】
次に、プラント11からコンクリート試験片5を回収した試験室12では、リーダ/ライタ3を用いてタグ2に記録されている情報を読み取った後(ステップS104)、現場Noや採取日、試験日等の情報をコンクリート試験片5に印刷する(ステップS105)。次に、JISで定められた期間養生した後(ステップS106)、印刷された情報を参照して養生槽からコンクリート試験片5を取り出し、タグ2に記録されている情報を読み取った後(ステップS107)、圧縮強度試験を実施する(ステップS108)。そして、圧縮強度試験データを通信ネットワーク15を介して管理サーバ13に送信する(ステップS109)。
【0049】
一方、顧客14は予め与えられたID、パスワードを用いて管理サーバ13にアクセスし、管理サーバ13内に記憶された注文情報、RFIDタグ情報、圧縮強度試験データ等を読み出し(ステップS110)、コンクリートの品質管理を行う。
【0050】
このように、本発明のコンクリート品質管理システム10では、コンクリートブロック試験片5に埋設されたタグ2に豊富な情報を記録することができ、かつ、リーダ/ライタ3で読み取った情報をそのまま管理サーバ13に記憶することができるため、圧縮強度試験に関連する情報を簡単にデータベース化することができ、web上でこれらの情報を閲覧してコンクリートの品質管理に役立てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のRFIDシステムの構成を模式的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例に係るRFIDタグの構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はA−A′線における断面図である。
【図3】本発明の第1の実施例に係るRFIDタグの構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はB−B′線における断面図である。
【図4】本発明の第1の実施例に係るコンクリート試験片の製造手順の一部を示す工程図(アンボンドキャッピング)である。
【図5】本発明の第2の実施例に係るコンクリート試験片の製造手順の一部を示す工程図(セメントペーストキャッピング)である。
【図6】本発明の第3の実施例に係るRFIDタグの構造を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はC−C′線における断面図である。
【図7】本発明の第4の実施例に係るコンクリート試験片管理システムの構成を模式的に示す図である。
【図8】本発明の第4の実施例に係るコンクリート試験片管理手順を示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0052】
1 RFIDシステム
2 タグ
2a 導体
2b ベース
2c 貫通孔
2d 重錐
3 リーダ/ライタ
3a 受信回路
3b 送信回路
3c CPU
4 リーダ/ライタ用アンテナ
5 コンクリート試験片
5a コンクリート(ベース)
5b コンクリート(キャッピング)
6 型枠
7 ゴムパッド
8 鋼製キャップ
9 重錐
10 コンクリート試験片管理システム
11 プラント
12 試験室
13 管理サーバ
14 顧客
15 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイル及びコンデンサからなる共振回路とICチップとを備える平板状のRFIDタグであって、
前記アンテナコイルは、絶縁性フィルム上の圧延銅箔をエッチングして形成されたものであり、前記RFIDタグは、コンクリート試験片に埋設して使用され
前記アンテナコイルの内側領域に、前記RFIDタグ全体の平均密度が、該RFIDタグを埋設するコンクリートの密度よりも大となるように設定された重量の重錐を有することを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記重錐は、前記アンテナコイルの内周に並行してリング状に形成され、少なくともリングの一部において、該リングの径方向に設けたスリットにより分断されていることを特徴とする請求項記載のRFIDタグ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のRFIDタグが、内部に埋設されてなることを特徴とする圧縮強度試験用コンクリート試験片。
【請求項4】
前記RFIDタグは、前記コンクリート試験片の上面と略平行、かつ、上面から所定の深さ位置に埋設されていることを特徴とする請求項記載の圧縮強度試験用コンクリート試験片。
【請求項5】
前記コンクリート試験片は、前記RFIDタグ下層のベースとなるコンクリートと、該RFIDタグ上層のキャップとなるコンクリートで構成され、前記キャップとなるコンクリートは、前記ベースとなるコンクリートよりも圧縮強度の弱い材料で構成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の圧縮強度試験用コンクリート試験片

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−70392(P2008−70392A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314570(P2007−314570)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【分割の表示】特願2002−273446(P2002−273446)の分割
【原出願日】平成14年9月19日(2002.9.19)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】