説明

RFIDタグ製造用紙、RFIDタグの製造方法

【課題】RFIDタグを容易に製造できるRFIDタグ製造用紙を提供する。
【解決手段】下層側から順に被剥離層70と、前記被剥離層70に仮着されているとともに該被剥離層70を容易に剥離できる剥離層60と、RFID機能を有する通信層40と、印刷が可能な印刷層20とが積層され、規格化されたシート形状を有し、最も上層側に積層された最上層から前記剥離層を貫通する態様で平面視タグ形状の切込Cが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグ製造用紙に関する。また同RFIDタグ製造用紙を用いたRFIDタグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency IDentification)タグの用途が拡大し、カード(例えば、特許文献1、参照。)、名刺(例えば、特許文献2、参照。)、狭義のタグ(例えば、特許文献3、参照。)、はがき等の形態で広く使用されている。以後、本明細書においてRFIDタグの語は、カード・名刺・狭義のタグ・はがき等の形態を有するものを含んだ広義の概念で用いる。またタグ形状というときは、カード・名刺・狭義のタグ・はがきの形状を含む。一方、貼り付けるための貼付面を備えるとともに被貼付物に貼り付けて使用するRFIDラベルやRFIDシールはRFIDタグに含まれない。
【0003】
一般に、RFIDタグを製造するためには、専用の製造装置が必要であるため、個人や、中小企業が小規模に製造することは困難である。具体的には、例えば、カード形態のRFIDタグを製造するためには、部材をカード形状に形成する形成工程、RFIDに情報を入力する入力工程、カード表面に必要な印刷を行なう印刷工程が必要となる。ここで、入力工程は、低価格のRFIDライターを用いて小規模に行なうことができる。一方、形成工程は小規模に行なうことは、困難である。また、印刷工程は、カードに対応した専用の印刷機を用いれば可能であるが、係る印刷機は一般に高価である。また、入力とカードへの印刷とを同時に行なう印刷機能付きカードライターも存在するが、一般に高価であるとともに、対応できるカードの大きさも限られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−225025号公報
【特許文献2】特開2002−183693号公報
【特許文献3】特開2010−44683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は係る状況を鑑みなされたもので、上記形成工程、印刷工程を容易にすることによりRFIDタグを容易に製造できるRFIDタグ製造用紙を提供することを目的とする。また、同RFIDタグ製造用紙を用いたRFIDタグの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のRFIDタグ製造用紙は、厚み方向において下層側から順に被剥離層と、前記被剥離層に仮着されているとともに該被剥離層を容易に剥離できる剥離層と、RFID機能を有する通信層と、印刷が可能な印刷層とが積層され、規格化されたシート形状を有し、最も上層側に積層された最上層から前記剥離層を貫通する態様で平面視タグ形状の切込が形成される。
【0007】
上記構成によると、RFIDタグ製造用紙が、印刷が可能な印刷層を備えるとともに規格化されたシート形状を有しているため、例えば、家庭用のインクジェットプリンタや、オフィス用のページプリンタ等で容易に印刷することができる。なお、規格化されたシート形状とは、A0,A1等のA列や、B0,B1等のB列、ハトロン判、四六判、菊判等のJIS規格のみならず、国際判(レターサイズ)、はがき版、キャビネ判等の実質的なスタンダートとなっている形状も含む概念である。これらの形状についても汎用のプリンタが対応しているからである。
【0008】
また、同RFIDタグ製造用紙は、平面視カード形状の切込が最上層から剥離層を貫通する態様で形成されている。また、剥離層は被剥離層に仮着されているとともに同被剥離層を容易に剥離できる。従って、表面層から剥離層によって形成された平面視タグ形状の部材から被剥離層を使用者が容易に剥離させることができる。この剥離のみにより、使用者はRFIDタグを容易に形成することができる。
【0009】
本発明のRFIDタグ製造用紙は、前記剥離層がグラシン紙を備え、前記被剥離層のうち前記剥離層に接する面が低密度ポリエチレンで形成されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によると、剥離層がグラシン紙を備え、被剥離層のうち剥離層に接する面が低密度ポリエチレンで形成されているため、剥離層に被剥離層が仮着されているとともに同被剥離層を剥離層から容易に剥離できる構成が汎用部材により構成される。
【0011】
本発明のRFIDタグ製造用紙は、前記剥離層を形成する前記グラシン紙の前記被剥離層に接する面がポリビニルアルコールで目止めされていることが好ましい。
【0012】
上記構成によると、グラシン紙の被剥離層に接する面がポリビニルアルコールで目止めされているため、剥離層に被剥離層が仮着されているとともに同被剥離層を剥離層から一層容易に剥離できる構成となる。また、ポリビニルアルコールも汎用部材であるため、係る構成を取ることが容易にできる。
【0013】
本発明のRFIDタグ製造用紙は、前記印刷層が、表面印刷可能な部材で形成されていることが好ましい。
【0014】
上記構成によると、印刷層が、表面印刷可能な部材で形成されているため、ページプリンタ、インクジッェトプリンタまたはドットインパクトプリンタ等で表面印刷することによりRFIDタグ製造用紙に印刷することが容易にできる。ここで表面印刷とは、外部からインクなどの着色剤を用いて部材表面を着色して行なう印刷である。顔料系着色剤を使用した場合のように、着色剤が部材表面にとどまる場合も、染料系着色剤を使用した場合のように、着色剤が部材に染み込む場合も、両方が複合的に起こる場合も含まれる。
【0015】
本発明のRFIDタグ製造用紙は、前記印刷層が、加熱されることにより発色する感熱発色剤を備えていることが好ましい。
【0016】
上記構成によると、加熱されることにより発色する感熱発色剤が印刷層に含まれているため、被印刷物を加熱することにより印刷するサーマルプリンタ等を用いて感熱発色剤を発色させることで、RFIDタグ製造用紙に印刷することが容易にできる。
【0017】
本発明のRFIDタグ製造用紙は、最下層が、紙部材で形成されていることが好ましい。
【0018】
上記構成によると、最下層が紙部材で形成されているため、紙に印刷することを前提として設計されているプリンタを用いて印刷することが容易となる。
【0019】
本発明のRFIDタグ製造用紙は、前記平面視タグ形状がカードの形態を有しており、前記規格化されたシート形状が、はがき形状であることが好ましい。
【0020】
上記構成によると、シート形状がはがき形状であるため、印刷工程および入力工程の後にそのまま郵送することが可能である。また、平面視タグ形状がカードの形態を有しているため、被剥離層を剥離させることにより、カードの形態のRFIDタグを容易に形成できる。つまり、印刷および入力を終えたRFIDタグ製造用紙を例えば、案内状として顧客に郵送し、顧客がカードの形態のRFIDタグを形成する等の使用が可能である。
【0021】
本発明のRFIDタグ製造用紙は、最も薄い部分の厚みが310μm以下であることが好ましい。
【0022】
上記構成によると、最も薄い部分、即ち、通信機能を担保する通信層が積層されていない部分の厚みが310μm以下であるため、汎用の印刷機により容易に印刷することができる。
【0023】
本発明のRFIDタグ製造用紙は、最も薄い部分の厚みが260μm以上であるあることが好ましい。
【0024】
上記構成によると、最も薄い部分の厚みが260μm以上であるため、RFIDタグ製造用紙が十分な強度を容易に有することができる。そのため、RFIDタグ製造用紙を用いて製造されたRFIDタグをカードとして用いることが容易となる。
【0025】
本発明のRFIDタグの製造方法は、上記の本発明のRFIDタグ製造用紙を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、形成工程、印刷工程を容易にすることによりRFIDタグを容易に製造できるRFIDタグ製造用紙を提供することができる。また、同RFIDタグ製造用紙を用いたRFIDタグの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の1実施形態に係るRFIDタグ製造用紙の斜視図である。
【図2】本発明の1実施形態に係るRFIDタグ製造用紙のA−A断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るRFIDタグ製造用紙の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るRFIDタグ製造用紙のB−B断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るRFIDタグ製造用紙の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[第1の実施形態]
以下、本発明を適用したRFIDタグ製造用紙の実施形態およびRFIDタグの製造方法を図1および図2を用いて説明する。なお、以下の説明において、方向および向きについては、図1および図2に記載した方向および向きを用いる。
【0029】
[RFIDタグ製造用紙の実施形態]
図1に示すように、RFIDタグ製造用紙は、全体としてA4サイズのシート形状を有している。また、厚み方向における最も上層側は通常の紙素材で形成されたコート紙層20が形成されている。そのため、通常の印刷機、家庭用のインクジェットプリンタや、オフィス用のページプリンタ等で容易に印刷することができる。
【0030】
また、このシート形状に切込Cが形成されており、この切込Cによって、平面視カード型のタグ形状が複数形成されている。
【0031】
図1のA−A断面図である図2に示すように、このRFIDタグ製造用紙は多層構造からなっている。厚み方向における最も下層側には、上質紙層73が積層されている。そのため、下層側の表面荒さは通常の紙と同等となっている。
【0032】
一般に、家庭用のプリンタやオフィス用プリンタの内部において被印刷物の搬送はローラーと被搬送物との間に生ずる摩擦力を利用して行なわれる。従って、この摩擦力が設計された値と異なると、被印刷物がうまく搬送されない可能性がある。このRFIDタグ製造用紙の最も下層側には、上質紙層73が積層されているため、紙を前提として設計される家庭用のプリンタやオフィス用プリンタにおいて、搬送不良が生じることを抑制する。
【0033】
上質紙層73の上層側にはアクリル系粘着剤層72を介して低密度ポリエチレン層71が積層されている。この低密度ポリエチレン層71、アクリル系粘着剤層72、上質紙層73によって被剥離層70が形成されている。
【0034】
低密度ポリエチレン層71の上層側にはポリビニルアルコール層62により下層側を目止めされたグラシン紙層61が積層されている。つまり、グラシン紙層61とポリビニルアルコール層62とにより剥離層60が形成されている。この剥離層60に上記の被剥離層70が加圧により仮着されている。そのため、被剥離層70は剥離層60から容易に剥離することができる。
【0035】
剥離層60の上層側には、アクリル系粘着剤層50を介してRFID機能を有する通信層40が形成されている。より具体的には、情報の記録および発信を行なうインレイ41に、アクリル系粘着剤層42によってポリエチレンテレフタラートフィルム層43を積層した構造を通信層40は有している。なお、通信層40はアクリル系粘着剤層50の上層側全面を覆うように積層されているわけではなく、図1にも示したように、一部のみに積層されている。
【0036】
この通信層40の上層側には、アクリル系粘着剤層30を介して印刷層として機能するコート紙層20が形成されている。本実施例においてはコート紙層20がRFIDタグ製造用紙を用いて製造されたRFIDタグの強度も担保している。
【0037】
このコート紙層20から剥離層60を貫通する態様で上述した切込Cが形成されている。そのため、切込Cによってタグ形状に形成された剥離層60から上層にあるタグ形成部10から、被剥離層70を剥離させることにより、使用者は容易にRFIDタグを形成することができる。
【0038】
なお、図2はRFIDタグ製造用紙の構成を説明するための模式断面図であるため、各層の厚みや横方向と厚み方向との比率は現実に即している訳ではない。また、各層は柔軟性を有しているため、各層の界面が必ずしも直線状となっているわけではない。例えば、アクリル系粘着剤層50の上層側において通信層40が積層されていない部分については、図2のように、空隙があるわけではなく、コート紙層20が積層されている。
【0039】
より具体的には、被剥離層70の厚みは95μmである。また、RFIDタグ製造用紙全体の厚みは最も厚い部分で645μm、最も薄い部分で285μmである。上述のように、RFIDタグ製造用紙は、その一部に通信層40が積層されているため、他の部分に比して厚い部分が存在する。この部分が上記の最も厚い部分に該当する。また逆に通信層40が積層されていない部分は、通信層40が積層されている部分に比して厚みが小さくなる。通信層40が積層されている部分は、RFIDタグ製造用紙のごく一部であるため、RFIDタグ製造用の平均的な厚みは、上記の最も薄い部分の厚みに略等しい。
【0040】
なお、最も厚い部分の厚みが、一般的な印刷機が許容する紙厚を超えていても、実際には問題とならない。上述のように、最も厚い部分、即ち、通信層40が積層されている部分は、RFIDタグ製造用紙全体から見れば極限定された一部であるため、印刷機による印刷時に特に問題となる用紙のコシや、ローラー追随性にほとんど影響を与えないからである。
【0041】
[RFIDタグの製造方法]
次にRFIDタグ製造用紙を用いたRFIDタグの製造方法を説明する。
【0042】
(入力工程)
RFIDに所望の情報を入力する入力工程に、特段に制限はない。例えば、小規模生産を行なうためには低価格のRFIDライターにより個別に入力を行なっても良い。この場合、RFIDタグ製造用紙によって製造されるRFIDカード全体に同一情報を入力しても良いし、RFIDカード毎に異なる情報を入力しても良い。また、同一情報の入力されたRFIDカードを多量に製造する場合は、必要な情報があらかじめ入力された通信層40を備えたRFIDタグ製造用紙を用いてもよい。
【0043】
(印刷工程)
カード表面に必要な印刷を行なう印刷工程は、家庭用または事務用として汎用されているプリンタで容易に行なうことができる。上述のように、RFIDタグ製造用紙は、全体としてA4サイズのシート形状であるため、特殊なプリンタを用いる必要もない。また印字形式も、ページプリンタ、インクジェットプリンタ、ドットインパクトプリンタ、熱転写プリンタ等、通常の紙に印字するプリンタ形式であれば、特に限定されない。部材表面にとどまるインクであっても、部材に染み込むインクであっても、問題は生じない。また、RFIDタグ製造用紙の最上層および最下層はいずれも紙素材であるため、通常の紙用の印刷機であれば、搬送用ローラーで搬送できないため生じる紙詰まりなどの問題が発生する可能性は小さい。
【0044】
(形成工程)
部材をカード形状に形成する形成工程は、上述したように、RFIDタグ製造用紙のカード形状のタグ形成部10から被剥離層70を剥離させるのみで完了する。切込Cによって、平面視カード型のタグ形状が複数形成されているため、被剥離層70を剥離させることにより、切込Cで囲まれた複数の部材の各々がRFIDカードとなる。
【0045】
以上に説明した本実施形態によれば、上記した以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、RFIDタグ製造用紙は、印刷が可能なコート紙層20を備えるとともにA4サイズのシート形状を有しているため、家庭用のインクジェットプリンタや、オフィス用のページプリンタ等で容易に印刷することができる。
【0046】
(2)また、同RFIDタグ製造用紙は、平面視カード形状の切込Cが最上層であるコート紙層20から剥離層60を貫通する態様で形成されている。また、剥離層60は被剥離層70に仮着されているとともに被剥離層70を容易に剥離できる。従って、コート紙層20から剥離層60によって形成された平面視カード形状の部材から被剥離層70を使用者が容易に剥離させることができる。係る剥離のみにより、使用者はカード形状のRFIDタグを容易に形成することができる。
【0047】
(3)本実施形態においては、剥離層60がグラシン紙を構成要素としているとともに、被剥離層70のうち剥離層60に接する面が低密度ポリエチレンで形成された低密度ポリエチレン層71である。従って、剥離層60に被剥離層70が仮着されているとともに被剥離層70を剥離層60から容易に剥離できる構成が汎用部材により構成される。
【0048】
(4)本実施形態においては、グラシン紙層61の被剥離層70に接する面がポリビニルアルコール層62で目止めされているため、剥離層60に被剥離層70が仮着されているとともに被剥離層70を剥離層60から容易に剥離できる。また、グラシン紙およびポリビニルアルコールも汎用部材であるため、係る構成は容易に可能である。
【0049】
(5)本実施形態においては、印刷層であるコート紙層20が、表面印刷可能な部材であるアート紙で形成されているため、ページプリンタ、インクジッェトプリンタまたはドットインパクトプリンタ等で表面印刷することによりRFIDタグ製造用紙に印刷することが容易にできる。
【0050】
(6)本実施形態においては、最下層が紙部材である上質紙層73で形成されているため、紙に印刷することを前提として設計されているプリンタを用いて印刷することが容易である。
【0051】
[第2の実施形態]
以下、本発明の第2の実施形態に係るRFIDタグ製造用紙を図3および図4を用いて説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態における印刷層およびサイズを変更した形態であるため、同様の機能を備える部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
[RFIDタグ製造用紙の実施形態]
図3に示すように、RFIDタグ製造用紙は、全体としてB4サイズのシート形状を有している。また、厚み方向における最も上層側は、通常の印刷機、家庭用のインクジェットプリンタや、オフィス用のページプリンタ等で容易に印刷することができる公知の部材で形成された保護層21により形成されている。
【0053】
また、このシート形状に切込Cが形成されており、この切込Cによって、平面視はがき型のタグ形状が複数形成されている。
【0054】
図3のB−B断面図である図4に示すように、このRFIDタグ製造用紙は多層構造からなっている。厚み方向における最下層の上質紙層73から上層側に向かい通信層40までは第1の実施形態と同様に積層されている。この通信層40の上層側には、アクリル系粘着剤層30を介して加熱することにより発色する感熱発色剤を含んだ感熱紙により形成された感熱層22が積層されている。この感熱発色剤は特に限定されることはなく、汎用の物を使用して良い。例えば、ロイコ染料、顕色剤、分散剤および結着剤を含有する感熱発色剤が例示できる。
【0055】
この感熱層の更に上層には、感熱層22を保護するとともに、感熱層22を加熱するための加熱ヘッド(不図示)から感熱層22を保護する保護層21が積層されている。また、保護層21は通常の表面印刷が可能な公知の部材で形成されている。従って、第2の実施形態においては、印刷層は、感熱層22と保護層21とから形成されている。
【0056】
この保護層21から剥離層60を貫通する上述した切込Cが、形成されている。そのため、切込Cによってタグ形状に形成された剥離層60から上層にあるタグ形成部10から、被剥離層70を剥離させることにより、使用者は容易にRFIDタグを形成することができる。
【0057】
[RFIDタグの製造方法]
次にRFIDタグ製造用紙を用いたRFIDタグの製造方法を説明する。なお、「入力工程」については、第1の実施形態と特に違いはないため、その説明を省略する。
【0058】
(印刷工程)
カード表面に必要な印刷を行なう印刷工程は、汎用のサーマルプリンタで容易に行なうことができる。上述のように、RFIDタグ製造用紙は、全体としてB4サイズのシート形状であるため、特段に特殊なプリンタを用いる必要もない。また、RFIDタグ製造用紙の最上層および最下層はいずれも紙素材であるため、通常の紙用のサーマルプリンタであれば、搬送用ローラーで搬送できないための紙詰まりなどの問題が発生する可能性は小さい。
【0059】
必要があれば、サーマルプリンタによる印刷と併せて、家庭用または事務用として汎用されているプリンタで重ね印刷を行なうことができる。この場合も、RFIDタグ製造用紙は、全体としてB4サイズのシート形状であるため、特段に特殊なプリンタを用いる必要もない。また、上述したように、保護層21は通常の表面印刷が可能な公知の部材で形成されているため、印字形式にも特に制限はない。ページプリンタ、インクジェットプリンタ、ドットインパクトプリンタ等、通常の紙に印字するプリンタ形式を用いることができる。インクが、部材表面にとどまる場合も、部材に染み込む場合であっても問題が生じない。また、RFIDタグ製造用紙の最上層および最下層はいずれも紙素材であるため、通常の紙用の印刷機であれば、搬送用ローラーで搬送できないための紙詰まりなどの問題が発生する可能性は小さい。
【0060】
(形成工程)
部材をカード形状に形成する形成工程は、上述したように、RFIDタグ製造用紙のカード形状のタグ形成部10から被剥離層70を剥離させるのみで完了する。切込Cによって、平面視はがき型のタグ形状が複数形成されているため、被剥離層70を剥離させることにより、切込Cで囲まれた複数の部材の各々がRFIDはがきとなる。
【0061】
以上に説明した第2の実施形態によれば、第1の実施形態における(1)〜(6)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0062】
(7)第2の実施形態によれば、加熱されることにより発色する感熱発色剤が印刷層としての感熱層22に含まれているため、被印刷物を加熱することで発色させることにより印刷するプリンタ、例えばサーマルプリンタ等で感熱発色剤を発色させることで、RFIDタグ製造用紙に印刷することが容易にできる。
【0063】
[第3の実施形態]
以下、本発明の第3の実施形態に係るRFIDタグ製造用紙を図5を用いて説明する。なお、第3の実施形態は、第1の実施形態におけるRFIDタグ製造用紙のサイズおよび切込Cを変更した形態であるため、同様の機能を備える部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
[RFIDタグ製造用紙の実施形態]
図5に示すように、RFIDタグ製造用紙は、全体としてはがき形状のシート形状を有している。また、厚み方向における最も上層側は通常の紙素材で形成されたコート紙層20が形成されている。そのため、通常の印刷機、家庭用のインクジェットプリンタや、オフィス用のページプリンタ等で容易に印刷することができる。
【0065】
また、このシート形状に切込Cが形成されており、この切込Cによって、平面視カード型のタグ形状が1枚のみ形成されている。第1の実施形態と同様であるため図示は略すが、この切込Cが、コート紙層20から剥離層を貫通する態様で形成されている。そのため、切込Cによってタグ形状に形成された剥離層から上層にあるタグ形成部から、被剥離層を剥離させることにより、使用者は容易にRFIDタグを形成することができる。
【0066】
[RFIDタグの製造方法]
次にRFIDタグ製造用紙を用いたRFIDタグの製造方法を説明する。ここで、「入力工程」および「印刷工程」については第1の実施形態と同じであるため、説明を割愛する。
【0067】
(形成工程)
部材をカード形状に形成する形成工程は、RFIDタグ製造用紙のカード形状のタグ形成部から被剥離層を剥離させるのみで完了する。切込Cによって、平面視カード型のタグ形状が形成されているため、被剥離層を剥離させることにより、切込Cで囲まれた部材がRFIDカードとなる。
【0068】
ところで、本実施形態において、RFIDタグ製造用紙は、はがき形状であるため、「入力工程」および「印刷工程」終了後、そのまま、郵送することが可能である。この場合、受取人が、被剥離層を剥離させることにより、RFIDカードを形成する形成工程を受け持つこととなる。
【0069】
このRFIDタグ製造用紙は、例えば、RFIDタグ製造用紙を展示会の案内状として使用することが可能である。印刷工程として、RFIDタグとなる部分に受取人である顧客特定情報等を印刷するとともに、その他の部分に展示会の案内情報や郵送に必要な情報を印刷する。また、入力工程として、顧客特定情報等を入力する。その後、RFIDタグ製造用紙を直接顧客に郵送する。受け取った顧客は、案内状としてのRFIDタグ製造用紙から、被剥離紙層を剥離させ、RFIDタグを形成する。このRFIDタグには、顧客特定情報等が印刷および入力されているため、そのまま入場者章として使用することができる。この結果、顧客は入場に際して、案内状から剥がし取った入場者章を持参するのみで、展示会に入場することができるため、入場手続きが簡素化される。また、展示会の主催者側は展示会の入場口にRFIDタグの読み取り装置を設置するだけで、入場者の情報が得られるため、入場者層の把握等が容易に可能となる。
【0070】
以上に説明した第3の実施形態によれば、第1の実施形態における(1)〜(6)の効果、および第2の実施形態における(7)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0071】
(8)第3の実施形態によれば、シート形状がはがき形状であるため、印刷工程および入力工程の後にそのまま郵送することが可能である。また、平面視タグ形状がカードの形態を有しているため、被剥離層を剥離させることにより、カードの形態のRFIDタグを容易に形成できる。つまり、印刷および入力を終えたRFIDタグ製造用紙を、展示会などの案内状として顧客に郵送し、顧客が展示会の入場者章となるカードの形態のRFIDタグを形成する等の使用が可能である。
【0072】
なお、上記実施形態は以下のように変更しても良い。
【0073】
・上記第3の実施形態において、RFIDタグ製造用紙は、展示会の案内状に使用されているが、他の用途に用いても良い。例えば、美術会、講演会等入場管理が必要なものであれば、いずれにも使用することができる。また、入力情報も顧客特定情報に限られない。例えば、入場に金銭の支払いが必要な場合は、あらかじめ顧客からの金銭の支払いの有無を示す情報であっても良いし、あらかじめ登録された口座からの金銭の引き落としをするための情報であっても良い。
【0074】
・上記第3の実施形態において、印刷層として第1の各実施形態と同様にコート紙層20が積層されているが、第2の実施形態と同様に、感熱層22と保護層21とから印刷層が形成されていても良い。この場合は、第2の実施形態と同様に、被印刷物を加熱することで発色させることにより印刷するプリンタで感熱発色剤を発色させることにより、RFIDタグ製造用紙に印刷することができる。
【0075】
・上記第1の各実施形態において、印刷層としてコート紙層20が積層されているが、他の構成であっても良い。要は、汎用のプリンタによって印刷できれば良いのであるから、通常の紙素材を初めとして、プリンタが対応しているのであれば、樹脂等で形成された層であっても良い。
【0076】
・上記各実施形態において、RFIDタグの製造方法は、入力工程、印刷工程、形成工程を備えているが、全てを備えていなくとも良い。例えば、印刷機能付きカードライターを用いて入力工程と印刷工程を同時に行なっても良い。また、インレイ41として、あらかじめ必要な情報が入力されたタイプのインレイを用いるのであれば、入力工程は割愛することができる。また、印刷工程についても同様である。要は、RFIDタグ製造用紙を用いた製造方法であれば、他の工程の有無は特に限定されない。
【0077】
・上記各実施形態においては、最下層が、上質紙層73であるが、他の構成であってもよい。要は、紙に印刷することを前提として設計されているプリンタにより問題なく印刷されれば良いのであるから、他の汎用紙であっても良い。また、使用するプリンタが対応しているのであれば、樹脂フイルムなど、紙以外の部材であっても良い。
【0078】
・上記各実施形態においては、RFIDタグ製造用紙全体の厚みは最も厚い部分で645μm、最も薄い部分で285μmであるが、それぞれこの厚みでなくても良い。要は、一般的な印刷機による印刷に支障がなければ良いのであるから、例えば、RFIDタグ製造用紙全体の厚みは、最も厚い部分で670μm以下、最も薄い部分で310μm以下であっても良い。
【0079】
・また、RFIDタグ製造用紙の厚みをより薄くしてもよい。但し、カードとして使用する用途としては、カードとしての強度を維持することが好ましい。かかる観点から、例えば、RFIDタグ製造用紙全体の厚みは、最も厚い部分で620μm以上、最も薄い部分で260μm以上であることが好ましい。
【0080】
・上記各実施形態においては、被剥離層70の厚みは95μmであるが、この厚みでなくても良い。RFIDタグ製造用紙全体の厚みを上記の厚み以内にするためには、被剥離層70の厚みは110μm以下が好ましい。また剥離性を維持するために、被剥離層70の厚みは80μm以上であることが好ましい。
【0081】
・上記第2の実施形態においては、印刷層は、通常の表面印刷が可能な公知の部材で形成された保護層21と感熱層22とから形成されているが、他の構成であっても良い。例えば、印刷工程が、サーマルプリンタ等による加熱発色のみであれば、保護層21が通常の表面印刷が可能な公知の部材で形成されている必要はない。また、例えばサーマルプリンタの構造等により、感熱層22を保護する必要がないのであれば、保護層21そのものを割愛しても良い。また逆に、表面印刷のための層と、感熱層を保護するための層とを別段に備えていても良い。
【0082】
・上記各実施形態においては、グラシン紙層61の下層側がポリビニルアルコール層62により目止めされているが、必須ではない。被剥離層70からの剥離性に問題がなければ、ポリビニルアルコール層62による目止めを割愛することにより、コストを低減しても良い。
【0083】
・上記各実施形態においては、最上層であるコート紙層20または保護層21から剥離層60を貫通する態様で切込Cが形成されている。この切込Cは最上層から剥離層60までを貫通していれば良いのであるから、例えば、一部被剥離層70まで達していても良い。また、被剥離層70を剥離することによりタグ形状が形成できれば良いのであるから、切込Cの全ての部分が最上層から剥離層60まで達していなくても良い。
【0084】
・上記第1の実施形態において、切込Cは平面視カード形状であり、上記第2の実施形態において、切込Cは平面視はがき形状であるが、他の形状であっても良い。例えば、いずれの実施形態においても、物品に取り付ける狭義のタグ形状や名刺形状であっても良い。また、第1の実施形態の切込Cがはがき形状であっても良いし、第2の実施形態の切込Cがカード形状であっても良い。要は一般的なクレジットカード等の形状であるカード形状や、はがき形状、名刺形状などを含む広義のタグ形状であれば、いずれの形状であっても良い。
【0085】
・RFIDタグ製造用紙は、第1の実施形態においてA4サイズであり、第2の実施形態においてB4サイズであり、第3の実施形態においてはがきサイズであるが、他のサイズであってもよい。例えば、A0,A1,A2等のA列や、B0,B1,B2等のB列、ハトロン判、四六判、菊判等の他のJIS規格のサイズであっても良い。また、汎用のプリンタが対応している形態であれば良いのであるから、JIS規格でなくても、国際判(レターサイズ)、はがき版、キャビネ判等の実質的なスタンダートとなっている形状であっても良い。
【0086】
・また上記各実施形態において積層された層以外の層が、更に積層されていても良い。例えば、プリンタの印刷ヘッドとのなじみをよくするための別段の保護層を最上層として積層しても良いし、感熱層の下層側に、発色を良くするためのアンダーコート層を設けても良い。
【0087】
・また上記各実施形態において積層された層の全てが、必須であるわけではない。例えば、RFIDタグ製造用紙の製造工程上特に問題がなければ、ポリエチレンテレフタラートフィルム層43およびアクリル系粘着剤層42を割愛しても良い。また、感熱層22の保護が特に必要なければ、保護層21を割愛し、コストを低減しても良い。
【符号の説明】
【0088】
10…タグ形成部
20…コート紙層(印刷層、最上層)
21…保護層(印刷層、最上層)
22…感熱層(印刷層)
30…アクリル系粘着剤層
40…通信層
41…インレイ
42…アクリル系粘着剤層
43…ポリエチレンテレフタラートフィルム層
50…アクリル系粘着剤層
60…剥離層
61…グラシン紙層
62…ポリビニルアルコール層
70…被剥離層
71…低密度ポリエチレン層
72…アクリル系粘着剤層
72…上質紙層
73…上質紙層
C …切込


【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向において下層側から順に被剥離層と、
前記被剥離層に仮着されているとともに該被剥離層を容易に剥離できる剥離層と、
RFID機能を有する通信層と、
印刷が可能な印刷層とが積層され、
規格化されたシート形状を有し、
最も上層側に積層された最上層から前記剥離層を貫通する態様で平面視タグ形状の切込が形成されたRFIDタグ製造用紙。
【請求項2】
前記剥離層がグラシン紙を備え、前記被剥離層のうち前記剥離層に接する面が低密度ポリエチレンで形成されている請求項1に記載のRFIDタグ製造用紙。
【請求項3】
前記剥離層を形成する前記グラシン紙の前記被剥離層に接する面がポリビニルアルコールで目止めされている請求項1または2に記載のRFIDタグ製造用紙。
【請求項4】
前記印刷層が、表面印刷可能な部材で形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のRFIDタグ製造用紙。
【請求項5】
前記印刷層が、加熱されることにより発色する感熱発色剤を備えている請求項1〜4のいずれか1項に記載のRFIDタグ製造用紙。
【請求項6】
最下層が、紙部材で形成されている請求項1〜5のいずれか1項に記載のRFIDタグ製造用紙。
【請求項7】
前記平面視タグ形状がカードの形態を有しており、
前記規格化されたシート形状が、はがき形状である請求項1〜6のいずれか1項に記載のRFIDタグ製造用紙。
【請求項8】
最も薄い部分の厚みが310μm以下である請求項1〜7のいずれか1項に記載のRFIDタグ製造用紙。
【請求項9】
最も薄い部分の厚みが260μm以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載のRFIDタグ製造用紙。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のRFIDタグ製造用紙を用いることを特徴とするRFIDタグの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109434(P2013−109434A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252242(P2011−252242)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000205306)大阪シーリング印刷株式会社 (90)
【Fターム(参考)】