説明

RFIDタグ

【課題】複数のRFIDタグから所望のRFIDタグを容易に探索することが可能なRFIDタグを提供することを目的とする。
【解決手段】リーダライタは、所望の書籍を探索するために、当該書籍に貼付されているRFIDタグに記憶されている固有IDを指定した信号をRFIDタグに対して送信する。RFIDタグは、固有ID指定信号を受信した場合(S31:YES、S32:YES)、固有ID返答信号を返信する(S33)。リーダライタは、固有ID返答信号を受信した場合に、電波の放射圏内に所望の書籍が存在すると判断し、RFIDタグが備える有機EL素子に所望の図柄を表示させるために、識別コード信号を送信する。固有ID指定信号を受信したRFIDタグは、次いで識別コード信号を受信した場合(S35:YES)、識別コードに対応する図柄を選択して有機EL素子に表示させる(S37)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はRFIDタグに関する。そしてより詳細には、有機EL発光素子を備えたRFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency IDentification)タグを物品に貼り付け、これをリーダライタにて読み取ることにより、物品の流通管理が行われている。また、RFIDタグにLEDやブザーを付加し、リーダライタにて特定のRFIDタグのLEDやブザーを反応させて報知を実行させることにより、複数のRFIDタグの中から所望のRFIDタグを見つけ出すことが可能なRFIDタグ及び当該RFIDタグを使用した物品検索システム、物品収納システムが提案されている。
【特許文献1】特開2006−24018号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上述のシステムでは、RFIDタグが有するLEDやブザーからの報知態様は共通であるため、複数のリーダライタより、それぞれ所望のRFIDタグに付加されたLEDやブザーを同時に反応させ報知を実行させた場合に、報知を行ったRFIDタグどうしで区別ができない。そのためユーザは、所望のRFIDタグを特定することができなくなってしまうという問題点があった。
【0004】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、複数のRFIDタグから所望のRFIDタグを容易に探索することが可能なRFIDタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明のRFIDタグは、アンテナと、前記アンテナに対して電波が照射された場合に発生する電気信号により駆動して発光する有機EL(Electroluminescence)発光素子と、IDを記憶する記憶手段と、前記アンテナに発生した電気信号を復調して受信する受信手段と、前記受信手段にて復調し受信した情報に含まれているIDと、前記記憶手段に記憶されているIDとが所定の関係を満たす場合に、前記有機EL発光素子を制御して像を表示させる表示制御手段と
を備えている。
【0006】
また、請求項2に係る発明のRFIDタグは、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記有機EL発光素子は、前記RFIDタグの製造工程において、前記アンテナ、前記記憶手段、前記受信手段、及び前記表示制御手段と同時に基材上に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明のRFIDタグでは、RFIDタグが発光素子として有機EL発光素子を備えることにより、RFIDタグより複数の異なる報知を実行させることが可能となる。これにより、複数のRFIDタグのなかから所望のRFIDタグを探索することが可能となる。
【0008】
また、請求項2に係る発明のRFIDタグでは、請求項1に記載の発明の効果に加えて、有機EL発光素子の製造プロセスと、アンテナ、記憶手段、受信手段、及び表示制御手段の製造プロセスとを共通化することにより、容易かつ安価に有機EL発光素子を基材上に形成させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を具体化したRFIDタグ1の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、これらの図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載されている装置の構成、各種処理のフローチャートなどは、特に特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。
【0010】
はじめに、図1を参照して、RFIDタグ1及びリーダライタ21(21A、21B)を使用したシステムの一例である、書籍探索システム50の概要について説明する。図1は、書籍探索システム50を示した模式図である。
【0011】
図1に示すように、背表紙にRFIDタグ1が貼付された状態の書籍100が、書棚に複数陳列されている。RFIDタグ1には、有機EL(Electroluminescence)素子7が設けられており、所望の像を表示させることが可能な状態となっている。そしてユーザは、リーダライタ21を使用し、所望の書籍に貼付された有機EL素子7より像を表示させることによって、当該書籍を探索する。
【0012】
書籍探索の具体的方法について説明する。ユーザ(甲)ははじめに、探索したい書籍(以下「探索書籍」という。)100Aの情報(表題(「○○○○」)、図書番号等、以下「書籍関連情報」という。)をリーダライタ21A(ID:A)の入力部27Aより入力する。そして、リーダライタ21Aにおける電波が放射する放射面(図1中リーダライタ21Aの紙面手奥行き側)を書棚側に向けた状態とし、探索を開始する。
【0013】
探索が開始されると、リーダライタ21Aのアンテナ(R/Wアンテナ25(図4参照))より、探索書籍100Aに貼付されているRFIDタグ1Aを指定した信号電波が放射される。この状態でユーザ(甲)は、リーダライタ21Aの向きを徐々に変化させながら、陳列されている状態の書籍100に対して順番に信号電波を照射させる。そして、書棚に陳列された書籍100のうち、探索書籍100Aの背表紙に貼付されているRFIDタグ1Aに信号電波が照射される。
【0014】
信号電波が照射されたRFIDタグ1Aは、信号電波を復調した信号を基に、自身がリーダライタ21Aより指定されているか否かを判断する。そして、指定されていると判断したRFIDタグ1Aは、リーダライタ21AのIDが特定できるような表示(例えば、リーダライタ21AのIDである「A」)を有機EL素子7Aより表示させる。これによりユーザ(甲)は、複数の書籍100のうち、「A」が表示されているRFIDタグ1Aが貼付された探索書籍100A(表題:「○○○○」)を所望の書籍として認識することが可能となる。
【0015】
また、他のユーザ(乙)が、ユーザ(甲)と同時に、別のリーダライタ21B(ID:B)を用いて異なる書籍100B(表題:「△△△△」)を探索するような場合を想定する。このような場合、リーダライタ21Bからの信号電波が照射されたRFIDタグ1Bは、リーダライタ21BのIDが特定できるような表示(例えば、リーダライタ21BのIDである「B」)を有機EL素子7より表示させる。これによりユーザ(乙)は、別のユーザ(甲)がリーダライタ21Aを使用して探索書籍100Aを探索している最中であっても、「B」が表示されているRFIDタグ1Bが貼付された書籍100B(表題:「△△△△」)を所望の書籍として認識することが可能となる。
【0016】
このようにRFIDタグ1は、信号電波を送信したリーダライタ21を特定できるように、表示内容の図柄を変えて有機EL素子7より表示させる。従って、複数のユーザが同時に書籍を探索するような場合であっても、ユーザは有機EL素子7を視認することにより、RFIDタグ1がどのリーダライタ21より探索されている状態であるかを確認することが可能となる。これによりユーザは、所望の書籍を探索することが可能となる。
【0017】
次に、RFIDタグ1及びリーダライタ21の電気的構成について、図2〜図4を参照して説明する。図2は、RFIDタグ1の電気的構成を示す模式図であり、図3は、RFIDタグ1の電源構成を示す模式図であり、図4は、リーダライタ21の電気的構成を示す模式図である。
【0018】
はじめに、図2を参照し、RFIDタグ1の電気的構成について説明する。図2に示すように、RFIDタグ1は、通信処理や判断処理、表示処理等、RFIDタグ1の全体の制御を司るタグ制御部2と、ループ形状を有するアンテナであるタグアンテナ5と、タグアンテナ5より送信可能な変調信号を生成するタグ変調部3と、タグアンテナ5より受信した電気信号を復調するタグ復調部4と、有機EL素子7と、不揮発性記憶素子であるタグ記憶部8と、タグ電源供給部6とから構成されている。
【0019】
タグアンテナ5は、所謂ループアンテナにて構成されている。そして電波が照射された場合に、電磁誘導によりタグアンテナ5に電流を生じさせることが可能であるとともに、タグアンテナ5に電気信号が送信されることにより、所望の信号電波をタグアンテナ5より放射させることが可能となるように構成されている。なおタグアンテナ5は、所定の周波数にて共振現象が発生するようにタグアンテナ5のループ径が調整されている。これにより、リーダライタ21より放射された信号電波がタグアンテナ5に対して照射された場合に、効率よく電気信号を取り出すことが可能となっている。また、タグ変調部3より電気信号が送信された場合に、信号電波を効率よく放射させることが可能となっている。
【0020】
なお、タグアンテナ5にて送受信可能な電波の周波数としては、リーダライタ21と通信を行うことが可能であれば、特定の周波数に限定されず、さまざまな周波数が使用可能であることは勿論である。例えば、13.56MHz帯の周波数や、2.4GHz帯の周波数の電波が使用される。
【0021】
またタグ復調部4は、タグアンテナ5に信号電波が照射されることにより発生した電気信号を復調するために設けられており、タグアンテナ5と電気的に接続している。また、復調した電気信号をタグ制御部2に対して送信することが可能なように、タグ復調部4はタグ制御部2と電気的に接続している。またタグ変調部3は、タグ制御部2より送信された電気信号を、タグアンテナ5を介して送信させることが可能な変調信号に変調するために設けられており、タグ制御部2及びタグアンテナ5と電気的に接続している。
【0022】
なお、タグ変調部3における変調方式、及びタグ復調部4における復調方式は、特定の方式に限定されず、さまざまな従来公知の変復調方式が採用される。例えば、振幅変調(AM)方式、周波数変調(FM)方式、位相変調(PM)方式等が挙げられる。
【0023】
またタグ記憶部8には、固有ID記憶領域9が設けられており、固有IDが記憶されている。固有IDは、RFIDタグ1に固有のIDであり、RFIDタグを識別して特定するために使用されるIDである。またタグ記憶部8には、表示図柄情報記憶領域10が設けられており、表示図柄が記憶されている。表示図柄には識別コードが対応付けられて記憶されており、識別コードの情報から表示図柄を特定するために使用される。そして、タグ制御部2よりタグ記憶部8に記憶されている情報を参照することが可能なように、タグ記憶部8はタグ制御部2と電気的に接続している。
【0024】
また有機EL素子7は、タグ制御部2からの制御信号に基づいて図柄を表示させることが可能なように、タグ制御部2と電気的に接続している。またタグ電源供給部6は、タグアンテナ5に信号電波が照射されることにより発生した電流を蓄電する。そして蓄電された電力は、タグ制御部2、タグ変調部3、タグ復調部4、有機EL素子7、及びタグ記憶部8を駆動させる電力として使用される。
【0025】
図3を参照し、RFIDタグ1の電源構成について説明する。図3に示すように、タグ電源供給部6は、タグアンテナ5にて発生した電流を蓄電する。そして、タグ制御部2、タグ変調部3、タグ復調部4、有機EL素子7、及びタグ記憶部8を駆動させるために、これらの機能ブロックに電力を供給する。これによりRFIDタグ1の各機能ブロックは駆動し、各種処理を実行する。タグ電源供給部6は、電流を蓄電可能な従来公知のデバイスにより構成されており、例えばコンデンサ等が挙げられる。
【0026】
なお、上述のRFIDタグ1を構成する各機能ブロック(タグ制御部2、タグ変調部3、タグ復調部4、タグアンテナ5、タグ電源供給部6、有機EL素子7、タグ記憶部8)は、各々の基本構造は同一となる。従って、RFIDタグ1の製造時において、同一の製造プロセスにより同時に基材上に形成させることが可能となる。これにより、製造工程を簡略化して製造コストを抑制し、RFIDタグ1の製品コストを低く抑えることが可能となっている。
【0027】
なお、各機能ブロックを基材上に形成させる方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。機能ブロックの形成方法としては、例えば、印刷法(スクリーン印刷法)、真空蒸着法、ディップコート法等が挙げられる。また、材料として導電性有機高分子を使用し、マイクロコンタクトプリント法により各機能ブロックを基材上に形成させることによって、簡易に各機能ブロックを基材上に形成させることが可能となる。また、材料として導電性インクを使用し、インクジェット法により各機能ブロックを基材上に形成させることによって、簡易に各機能ブロックを基材上に形成させることが可能となる。
【0028】
なお、本実施の形態では、タグ制御部2、タグ変調部3、タグ復調部4、タグ電源供給部6、及びタグ記憶部8は、RFIDタグ1を構成する独立した機能ブロックとなっているが、この構成に限定されない。従って、これらの機能ブロックが1チップ化されたRFIDチップにより、上述の機能を実現する構成であってもよい。
【0029】
次に、図4を参照して、リーダライタ21の電気的構成について説明する。図4に示すように、リーダライタ21は、通信処理や判断処理等、リーダライタ21の全体の制御を司るR/W制御部22と、ループ形状を有するR/Wアンテナ25と、R/Wアンテナ25より送信可能な変調信号を生成するR/W変調部23と、タグアンテナ5より受信した信号を復調するR/W復調部24と、入力部27と、不揮発性記憶素子であるR/W記憶部28とから構成されている。
【0030】
R/Wアンテナ25は、所謂ループアンテナにて構成されている。そして電波が照射された場合に、電磁誘導によりR/Wアンテナ25に電流を生じさせることが可能であるとともに、R/Wアンテナ25に電気信号が送信されることにより、所望の信号電波をR/Wアンテナ25より放射させることが可能となるように構成されている。なおR/Wアンテナ25は、所定の周波数にて共振現象が発生するようにR/Wアンテナ25のループ径が調整されている。これにより、RFIDタグ1より放射された信号電波がR/Wアンテナ25に対して照射された場合に、効率よく電気信号を取り出すことが可能となっている。また、R/W変調部23より電気信号が送信された場合に、信号電波を効率よく放射させることが可能となっている。
【0031】
なお、R/Wアンテナ25にて送受信可能な電波の周波数は、RFIDタグ1と通信を行うことが可能な周波数であれば、特定の周波数に限定されず、さまざまな周波数が使用可能であることは勿論である。例えば、13.56MHz帯の周波数や、2.4GHz帯の周波数の電波が使用される。
【0032】
またR/W復調部24は、R/Wアンテナ25に電波が照射されることにより発生した電気信号を復調するために設けられており、R/Wアンテナ25と電気的に接続している。また、復調した電気信号をR/W制御部22に対して送信することが可能なように、R/W復調部24はR/W制御部22と電気的に接続している。またR/W変調部23は、R/W制御部22より送信された電気信号を、R/Wアンテナ25を介して送信させることが可能な変調信号に変調するために設けられている。そしてR/W変調部23は、R/W制御部22及びR/Wアンテナ25と電気的に接続している。
【0033】
なお、R/W変調部23における変調方式、及びR/W復調部24における復調方式は、特定の方式に限定されず、さまざまな従来公知の変復調方式が採用される。例えば、振幅変調(AM)方式、周波数変調(FM)方式、位相変調(PM)方式等が挙げられる。
【0034】
また入力部27は、ユーザが探索する書籍の書籍関連情報を入力するために設けられており、押ボタンやタッチセンサ等により構成されている。
【0035】
またR/W記憶部28には、固有ID割当情報記憶領域29が設けられており、固有ID割当情報が記憶されている。固有ID割当情報は、RFIDタグ1のタグ記憶部8(図2参照)に記憶された固有IDと、当該RFIDタグ1が貼付されている書籍の書籍関連情報とが対応付けられた情報である。またR/W記憶部28には、識別コード情報記憶領域30が設けられており、識別コード情報が記憶されている。識別コード情報は、RFIDタグ1の有機EL素子7に表示させる図柄と、当該図柄に対応する識別コードの情報である。
【0036】
固有ID割当情報は、入力部27を介してユーザにより探索書籍の書籍関連情報が入力された場合において、該当する書籍に貼付されているRFIDタグ1の固有IDを検索するために使用される。また、識別コード情報は、RFIDタグ1が備える有機EL素子7に図柄を表示させる場合において、図柄を特定するために使用される。そして、R/W制御部22よりR/W記憶部28に記憶されている各情報を参照することが可能なように、R/W記憶部28はR/W制御部22と電気的に接続している。
【0037】
次に、RFIDタグ1のタグ制御部2、及びリーダライタ21のR/W制御部22により実行される処理について、図5及び図6を参照して説明する。図5は、リーダライタ21のR/W制御部22にて実行されるRFIDタグ探索処理のフローチャートであり、図6は、RFIDタグ1のタグ制御部2にて実行される報知処理のフローチャートである。
【0038】
なお、リーダライタ21のR/W制御部22は、電源投入状態にて図5に示す処理を繰り返し実行する。また、RFIDタグ1のタグ制御部2は、リーダライタ21より放射された信号電波がタグアンテナ5に照射され、タグ電源供給部6(図3参照)にて駆動電力が生成されタグ制御部2に電力が供給された場合に、図6に示す処理を実行する。
【0039】
図5に示すように、リーダライタ21のR/W制御部22は、電源が投入されている状態で、入力部27を監視し、ユーザにより入力部27を介して入力操作がなされるまで待機している(S11:NO)。
【0040】
そして、入力部27を介してユーザにより探索書籍に関連する書籍関連情報の入力操作がなされ、これをR/W制御部22が検出した場合(S11:YES)、R/W制御部22は、R/W記憶部28の固有ID割当情報記憶領域29に記憶されている固有ID割当情報を参照し、入力された書籍関連情報に相当する書籍に貼付されているRFIDタグ1の固有IDを特定する(S12)。
【0041】
次いでユーザにより、リーダライタ21におけるR/Wアンテナ25が配置される電波放射面が、書棚側に向けられる。そしてこの状態で、信号電波の放射圏内に、探索書籍に貼付された状態のRFIDタグ(以下、「探索RFIDタグ」という。)が存在するか否かを確認するための信号電波を送信する。具体的には、リーダライタ21のR/W制御部22は、S12にて特定した固有IDを指定した信号である固有ID指定信号をR/Wアンテナ25より送信させるために、R/W変調部23に対して固有ID指定信号を送信する(S13)。
【0042】
R/W制御部22より送信された固有ID指定信号は、R/W変調部23において、R/Wアンテナ25より放射させることが可能な周波数に変調される。そして変調された固有ID指定信号が、R/Wアンテナ25より信号電波として放射される。
【0043】
一方、RFIDタグ1では、リーダライタ21より放射された信号電波がタグアンテナ5に照射された場合、タグ電源供給部6においてタグ制御部2等の駆動のために必要な電力が生成される。これによりタグ制御部2が起動し、図6における処理を開始する。
【0044】
図6に示すように、起動したRFIDタグ1のタグ制御部2は、はじめに、タグアンテナ5により受信し、タグ復調部4にて復調された結果の復調信号を受信するまで待機している。そして復調信号を受信し、受信した信号がリーダライタ21より送信された固有ID指定信号であると判断した場合には(S31:YES)、次いで、タグ記憶部8の固有ID記憶領域9に記憶されている固有IDを読み出し、受信した固有ID指定信号にて指定された固有IDと比較する。
【0045】
受信した固有ID指定信号にて指定された固有IDと、読みだした固有IDとが一致する場合には(S32:YES)、S13(図5参照)の処理に基づいてリーダライタ21より送信された固有ID指定信号であると判断する。この場合タグ制御部2は、リーダライタ21に対して返答信号を返信し、リーダライタ21に対して固有ID指定信号を受信した旨を通知する必要がある。そこでタグ制御部2は、読みだした固有IDの情報を含む固有ID返答信号をタグ変調部3に対して送信する(S33)。
【0046】
タグ制御部2より送信された固有ID返答信号は、タグ変調部3において、タグアンテナ5より放射させることが可能な周波数に変調される。そして、変調された固有ID返答信号が、タグアンテナ5より信号電波として放射される。
【0047】
一方タグ制御部2は、復調信号がリーダライタ21より送信された固有ID指定信号でない場合には(S31:NO)、S31に戻って引き続き継続して固有ID指定信号を受信するまで待機する。また、復調信号が固有ID指定信号である場合であっても(S31:YES)、受信した固有ID指定信号にて指定された固有IDと、タグ記憶部8の固有ID記憶領域9より読みだした固有IDとが一致しない場合には(S32:NO)、S31に戻って引き続き継続して固有ID指定信号を受信するまで待機する。
【0048】
図5に示すように、固有ID指定信号を送信した(S13参照)後のリーダライタ21のR/W制御部22は、RFIDタグ1より固有ID返答信号を受信するまで継続して固有ID指定信号の送信処理を繰り返す(S15:NO→S13)。そして、RFIDタグ1からの信号電波をR/Wアンテナ25が受け、タグ復調部4にて復調され、復調された結果の復調信号が、S33(図6参照)の処理に基づいてRFIDタグ1より送信された固有ID返答信号である場合には(S15:YES)、次いでR/W制御部22は、受信した固有ID返答信号に含まれている固有IDと、S12において特定した固有IDとを比較する(S17)。そして双方が一致する場合には(S17:YES)、リーダライタ21より放射された信号電波の放射圏内に、探索書籍及び探索RFIDタグが存在していると判断する。
【0049】
一方、復調された結果の復調信号が固有ID返答信号であっても(S15:YES)、含まれている固有IDが、S12において特定した固有IDと一致しない場合には(S17:NO)、リーダライタ21より放射されている信号電波の放射圏内に、探索書籍及び探索RFIDタグが存在しておらず、探索対象外の書籍に貼付されているRFIDタグより返信された固有ID返信信号であると判断する。このような場合には、ユーザによりリーダライタ21の向きが調整され、電波の放射方向が変更される。そして、S13に戻り、信号電波の放射圏内に探索書籍及び探索RFIDタグが存在する状態となるまで、上述の処理が繰り返し実行される。
【0050】
なお、上述の処理においては、受信した固有ID指定信号にて指定された固有IDと、S12において特定した固有IDとが一致するか否かを判断しているが、判断方法はこの方法に限定されない。従ってリーダライタ21のR/W制御部22は、受信した固有ID指定信号にて指定された固有IDと、S12にて特定した固有IDとの関係が、所定規則に則っている場合に、リーダライタ21より放射されている信号電波の放射圏内に、探索書籍及び探索RFIDタグが存在していると判断してもよい。
【0051】
S17において、リーダライタ21より放射されている電波の放射圏内に、探索書籍及び探索RFIDタグが存在していると判断された場合(S17:YES)、次いでリーダライタ21のR/W制御部22は、探索RFIDタグが備える有機EL素子7に表示させる図柄(例えは、リーダライタ21に割り当てられているID)を決定する。次いで、R/W記憶部28の識別コード情報記憶領域30に記憶されている識別コード情報を参照し、決定した図柄に相当する識別コードを特定する(なお以下においては、リーダライタ21にID「A」が割り当てられており、ID「A」の文字を、探索RFIDの有機EL素子7に表示させるものとする。また、「A」に割り当てられている識別コードは「A」であるとする。)。
【0052】
次いでリーダライタ21のR/W制御部22は、特定した識別コード「A」を含む識別コード信号をタグ変調部3に対して送信する(S19)。送信された識別コード信号は、タグ変調部3において、タグアンテナ5より放射させることが可能な周波数に変調される。そして、変調された識別コード信号が、タグアンテナ5より信号電波として放射される。その後R/W制御部22は、S11に戻って上述の処理を繰り返し実行する。
【0053】
一方、図6に示すように、RFIDタグ1のタグ制御部2は、固有ID返答信号を送信した(S33参照)後、タグアンテナ5により受信し、タグ復調部4にて復調された結果の復調信号を監視する。そして復調信号がリーダライタ21より送信された識別コード信号である場合には(S35:YES)、タグ制御部2は、S19(図5参照)の処理に基づいてリーダライタ21より有機EL素子7に図柄を表示させる旨の指示がなされたと判断する。そしてタグ制御部2は、タグ記憶部8の表示図柄情報記憶領域10に記憶されている表示図柄情報を参照し、受信した識別コード「A」に相当する図柄「A」を特定する。そして、特定した図柄「A」を有機EL素子7に表示させる(S37)。そして、RFIDタグ1のタグ制御部2は報知処理を終了する。
【0054】
一方、タグ制御部2は、固有ID返答信号を送信した後、リーダライタ21より識別コード信号を受信しなかった場合には(S35:NO)、有機EL素子7に図柄を表示する必要はないので、特段処理を行うことなく報知処理を終了する。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態のRFIDタグ1は、有機EL素子7を備えているので、識別コードを指定することにより所望の図柄を有機EL素子7に表示させることが可能になる。これにより、異なるリーダライタより同時にRFIDタグ1に対して信号電波が送信され、これを受けた複数のRFIDタグ1が、それぞれ有機EL素子7より表示を行う場合であっても、ユーザは、有機EL素子にて表示される図柄の内容を視認することによって、自身の探索した書籍に貼付されている探索RFIDタグを特定することが可能となる。
【0056】
なお、図2における有機EL素子7が、本発明の「有機EL発光素子」に該当し、タグ記憶部8が、本発明の「記憶手段」に相当する。また、図6のS31及びS35において、タグ復調部4より復調信号を受信する処理を行うタグ制御部2が、本発明の「受信手段」に相当し、S37において、有機EL素子7に図柄を表示させる処理を行うタグ制御部2が、本発明の「表示制御手段」に相当する。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0058】
上記実施の形態では、有機EL素子7に表示させる図柄の一例として、リーダライタ21に割り当てられているID「A」としたが、表示させる内容はリーダライタ21に割り当てられているIDに限定されない。従って、他の記号や文字、カラー表示等であってもよい。
【0059】
また、上記実施の形態では、探索RFIDタグ1の有機EL素子7より所定の図柄を表示させる場合において、リーダライタ21は、最初に固有ID指定信号をRFIDタグ1に対して送信し、固有ID返答信号を受信することにより、探索RFIDタグがリーダライタ21からの信号電波の放射圏内に存在することを確認していた。しかしながら、探索RFIDタグの有機EL素子7に所定の図柄を表示させる方法はこの方法に限定されない。従って、直接固有IDと識別コードを指定した固有ID−識別コード信号を送信することにより、探索RFIDタグに対して有機EL素子7より所定の図柄を表示させてもかまわない。
【0060】
また、上記実施の形態では、RFIDタグ1はタグアンテナ5を備えており、駆動電力の生成、及びリーダライタ21との通信の際に、当該タグアンテナ5を使用する構成となっていた。しかしながら本発明は、上述の構成に限定されず、複数のアンテナを備えた構成であってもよい。例えばRFIDタグ1は、リーダライタ21との通信を行う為の専用のアンテナと、駆動電力を生成する為の専用のアンテナを備えている構成であってもよいし、さらに、有機EL素子7を駆動させるために必要な電力を生成する為の専用のアンテナを備えている構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】書籍探索システム50の模式図である。
【図2】RFIDタグ1の電気的構成を示す模式図である。
【図3】RFIDタグ1の電源構成を示す模式図である。
【図4】リーダライタ21の電気的構成を示す模式図である。
【図5】リーダライタ21のR/W制御部22にて実行されるRFIDタグ探索処理のフローチャートである。
【図6】RFIDタグ1のタグ制御部2にて実行される報知処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
1 RFIDタグ
2 タグ制御部
3 タグ変調部
4 タグ復調部
5 タグアンテナ
6 タグ電源供給部
7 有機EL素子
8 タグ記憶部
21 リーダライタ
22 R/W制御部
23 R/W変調部
24 R/W復調部
25 R/Wアンテナ
27 入力部
28 R/W記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナと、
前記アンテナに対して電波が照射された場合に発生する電気信号により駆動して発光する有機EL(Electroluminescence)発光素子と、
IDを記憶する記憶手段と、
前記アンテナに発生した電気信号を復調して受信する受信手段と、
前記受信手段にて復調し受信した情報に含まれているIDと、前記記憶手段に記憶されているIDとが所定の関係を満たす場合に、前記有機EL発光素子を制御して像を表示させる表示制御手段と
を備えたRFIDタグ。
【請求項2】
前記有機EL発光素子は、前記RFIDタグの製造工程において、前記アンテナ、前記記憶手段、前記受信手段、及び前記表示制御手段と同時に基材上に形成されることを特徴とする請求項1に記載のRFIDタグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−301375(P2009−301375A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156160(P2008−156160)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】