説明

RFIDラベル

【課題】 被着体からラベルを剥がそうとすると、確実に通信機能を失わせることにある。
【解決手段】 ラベル基材2上に少なくとも光学的な効果を発揮する機能を有するOVD層5、アンテナ7及びICチップ8が配置され、さらに被着体11に貼り付ける第1の接着層9を配置してなり、外部装置と非接触でデータの送受信を行うRFIDラベルであって、ラベル基材とOVD層との間に剥離層3または第2の接着層12と溶媒反応性導電層4とを施し、前記第1の接着層を通して貼り付けられたRFIDラベルを被着体から剥がす際、ラベル基材から剥離層または第2の接着層が剥れてOVD層を破損させ、かつアンテナを断線させ、またRFIDラベルを剥がす際に溶媒が作用されているときに前記溶媒反応性導電層が導電性を示すことで通信機能を失わせるRFIDラベルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的な効果を呈するOVD(Optically Variable Device:光学的可変デバイスの略)の機能を備え、外部装置との間で非接触でデータの授受を行うことが可能なRFIDタグの機能を有するRFIDラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
小売店やレンタル店においては、商品の入出庫・在庫、商品の貸し出し・返却等を管理するために、RFID用のICチップとアンテナを備えたRFIDタグが利用されている。RFIDは、Radio Frequency IDentificationの略であって、高周波の無線を用いてRFID用ICチップの固有情報を非接触で読み書きできるようにした方式の総称である。
【0003】
RFIDタグに組み込まれているICチップには、各々のRFIDタグと区別するための固有情報であるID情報が書き込まれているが、場合によっては、ID情報を書き込む固有情報記憶領域の他、汎用の記憶領域が設けられ、商品に関連した情報などを読み書きすることもができるタイプもある。
【0004】
このICチップにはコイル状のアンテナが繋がっており、ID情報の読み込みや汎用記憶領域の情報の読み込み・書き込みは、専用のデータ読み書き装置(以下、RW(Reader Writer)装置と呼ぶ)からの電磁界や電波などを用いた近距離の無線通信によってアンテナに誘導起電力を生じさせる。そして、ICチップを駆動し、RW装置から送られてくるデータを受信し、さらには自己の記憶領域に格納されている情報を無線にて送信する。
【0005】
従って、以上のようなRFIDタグを商品に取り付け、RW装置にてIDチップ内のID情報を読み込んでコンピュータシステムに伝送するようにすれば、商品の入出庫管理、在庫管理、商品の貸し出し管理等に利用できる。
【0006】
さらに、RW装置を用いて、ICチップの汎用記憶領に商品コード、入荷日、担当者などの商品に関連する情報を書き込めば、該情報を別のコンピュータシステムに接続されたRW装置で読み込むことで、RFIDタグの取り付けられた商品の情報をコンピュータシステム間で伝達することも可能となる。
【0007】
従って、以上のようなRFIDタグに接着層などを施し、商品等に貼り付けてラベルとして使用すれば、当該RFIDタグの機能を有するRFIDラベルとなる。
【0008】
ところで、RFIDタグの普及とともに、当該RFIDタグにOVD機能を付加したOVD一体型RFIDタグの実用化が期待されている。
【0009】
ここで、OVDとは、見る角度、または測定する角度によって色の変化や画像の変化を呈する光学的な効果を発現させることのできる手段の総称である。そこで、OVDは、ユーザの要望する光学的な効果を発現させるために、ホログラムなどの光の干渉を用いて立体画像や特殊な装飾画像を表現できる層や回折格子からなる層、更には光学特性の異なる薄膜層などを適宜選択して組合せて成る多層薄膜構造をとることが多い。
【0010】
このOVDは、立体画像や色の変化といった独特な効果を与えることができることから、優れた装飾効果を発揮でき、各種の包装材,絵本,カタログ等の一般的な印刷物に利用されている。また、OVDは、高度な製造技術を要し、見る方向によって色が複雑に変化するために偽造しようとする者に高度な専門知識を必要とすることから、クレジットカード、有価証券、証明書類等の重要な書類の偽造防止手段として適用されている。
【0011】
さらに、OVDには光学的読み取り装置により読み取り可能な光学情報としてのコード化された商品情報を記録しておくことも可能である。これにより、例えば、OVDを更に高度な偽造防止媒体として利用することができる。
【0012】
その結果、以上のような特徴を有するOVDをRFIDタグと一体化すれば、次のような利点を得ることが考えられる。
【0013】
(イ) 例えば、現在までOVDとRFIDタグを商品等に別々に取り付けられているが、これらOVD及びRFIDタグを一体化して商品等に取り付ければ、総合的なコストダウンが可能となる。
【0014】
(ロ) OVDは、様々なデザインが可能であり、当該OVDとRFIDタグを一体化すれば、RFIDタグ自体に、OVDの光学的な効果が加わり、意匠性、高級感、偽造防止機能などを持たせることができる。
【0015】
偽造防止機能の例としては、例えば、OVDとRFIDタグを一体化させることにより、RFIDタグのRW装置による情報と目視を含む光学的な読み取り情報との何れかを用いたRFIDタグの真偽判定が可能となる。このことは、例えば、RFID用のRW装置が無い場合でも、目視などの光学的読み取り手段によってRFIDタグの真偽判定を行うことができる。すなわち、何らかの理由で高周波を使った情報の読み取りが困難な場合、光学的読み取り手段により読み取ることもできる。従って、低コストを実現でき、RFIDタグの真偽判定の利便性,信頼性を高めることができ、RFIDタグに対する市場適用範囲を広げることができる。
【0016】
(ハ) さらに、高度な偽造防止媒体として利用する場合、OVDに光学情報としてのコード化された商品情報を記憶しておき、当該光学情報を光学的読み取り装置で読み取り、RW装置で読み込んだRFID用のICチップの商品情報とを比較することができる。これにより、例えば、OVDもしくはICチップのどちらかが偽造されたかの真偽判定を行うことも可能となる(特許文献1)。
【0017】
従って、RFIDタグにOVDを組合せれば、様々なメリットを有することから、既に一体化して商品に貼り付けるOVD一体型のRFIDラベルが考えられている。
【0018】
さらに、RFIDタグにOVDを組合せたものでないが、既にRFIDタグに接着層などを施し、商品等に貼り付け可能にしたRFIDラベル(非接触式ICラベル)が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2004−227435号公報
【特許文献2】特許第3854124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、以上のようなRFIDラベルでは、エタノールなどの溶剤を利用して、正規の商品に貼り付けられているものを綺麗に剥がすことが可能であり、いわゆる“使いまわし”ができることから、特許文献2に記載するように、正規の商品からラベルを剥がし、偽造商品にOVD一体型のRFIDラベルを転用できるといった新たな問題も出てくる。
【0021】
また、RFIDラベルからICタグのみを取り外すことも可能なことから、偽造したラベルにその取り外したICタグを貼り付けることも可能であり、ICタグの使い回しが容易にできてしまう問題がある。
【0022】
そのため、以上のような偽造防止機能を持つラベルを使用したとしても、精度の高い真偽判定が期待できない。
【0023】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、OVDの光学的な効果による装飾性や意匠性の向上の効果及び光学情報の記録等の機能を制限することがなく、被着体から悪意にラベルを剥がそうとしたとき、確実に通信機能を失わせて再使用を不能にするOVDとの一体型のRFIDラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ラベル基材上に少なくともOVD層、アンテナ及び当該アンテナと電気的に接続されるICチップが配置され、さらに被着体に貼り付けるための第1の接着層を配置してなり、外部装置と非接触でデータの送受信を行うRFIDラベルにおいて、
前記ラベル基材と前記OVD層との間に当該ラベル基材から剥離し易い材料の剥離層または第2の接着層と溶媒反応性導電層とを施すとともに、前記OVD層としては導電性を示さないが光学的な効果を呈する機能を有し、
前記第1の接着層を通して貼り付けられた前記RFIDラベルを前記被着体から剥がす際、前記ラベル基材から前記剥離層または第2の接着層が剥れて前記OVD層を破損させ、かつ前記アンテナを断線させ、また前記RFIDラベルを剥がす際に溶媒が作用されているときに前記溶媒反応性導電層が導電性を示すことで通信機能を失わせることを特徴とするRFIDラベルである。
【0025】
上記課題を解決するために、請求項2に記載の発明は、前記剥離層が前記ラベル基材の面部にパターン状に印刷され、さらに前記溶媒反応性導電層が前記剥離層と同じパターン状に印刷されることを特徴とする請求項1に記載のRFIDラベルである。
【0026】
上記課題を解決するために、請求項3に記載の発明は、前記溶媒反応性導電層が前記ラベル基材と前記剥離層との間に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のRFIDラベルである。
【0027】
上記課題を解決するために、請求項4に記載の発明では、前記溶媒反応性導電層としては、ナノサイズの金属ナノ粒子あるいは金属塩を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のRFIDラベルである。
【0028】
上記課題を解決するために、請求項5に記載の発明では、前記溶媒反応性導電層としては、溶媒の作用を受けたときに有色に変化することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載のRFIDラベルである。
【0029】
上記課題を解決するために、請求項6に記載の発明では、前記アンテナとしては、導電性のインクを噴射させてアンテナ配線パターンを印刷することを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載のRFIDラベルである。
【0030】
上記課題を解決するために、請求項7に記載の発明では、前記OVD層による光学的な効果としては可視光領域で発現することを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載のRFIDラベルである。
【発明の効果】
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、RFIDラベルを被着体から剥がす際、剥離層や第2の接着層がラベル基材から剥れてOVD層を破損させる結果、RFIDラベルが破壊され、再利用ができなくなり、偽造防止となる。また、剥離層やOVD層の破損により、アンテナが断線することから、RFIDラベルの情報を外部に取り出すことができなくすることができる。
【0032】
さらに、被着体に貼り付ける際の媒体となった前記第1の接着層に溶媒を作用させて剥がそうとしたとき、溶媒反応性導電層が導電性を示すようになるため、再貼付された場合でもアンテナの通信機能を遮断して通信機能の再生が不可能にすることができる。よって、RFIDラベルの使い回しによる不正行為を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るRFIDラベルの一実施形態を示す構成断面図であって、同図(a)はラベル作製時の状態図、同図(b)は被着体からラベルを剥がした際の状態図。
【図2】本発明に係るRFIDラベルを説明するための平面図。
【図3】本発明に係るRFIDラベルの一構成要素であるアンテナの他のパターン配置例を説明するための平面図。
【図4】本発明に係るRFIDラベルの一構成要素である剥離層に代えて接着層を設けた他の実施形態を示す構成断面図であって、同図(a)はラベル作製時の状態図、同図(b)は被着体からラベルを剥がした際の状態図。
【図5】本発明に係るRFIDラベルの一構成要素である剥離層に代えて接着層を施したときの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係るRFIDラベルについて図面を参照してその一実施形態を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
図1は本発明に係るRFIDラベル1の一実施形態を示す構成断面図であって、同図(a)はラベル作製時の状態を表す断面図、同図(b)は被着体から剥がした際の状態を表す断面図である。
【0035】
RFIDラベル1は、ラベル基材2の面部に例えば剥離層3と溶媒反応性導電層4が同じパターン状に配置され、これら剥離層3及び溶媒反応性導電層4の外周囲を囲むようにラベル基材2の面部にOVD層5が設けられ、さらにOVD層5の上側に隠蔽層6が配置される。
【0036】
また、隠蔽層6の上面部にアンテナ7及びICチップ8が配置される。アンテナ7は、ICチップ8の電極端子に電気的に接続される。
【0037】
さらに、以上のような多層構成のRFIDラベルの外側に面する隠蔽層6,アンテナ7及びICチップ8を覆うように接着層9が配置される。10は接着層9の面部に容易に剥離可能に仮粘着される離型シート、11は被着体である。
【0038】
次に、RFIDラベル1の個別構成体について詳細に説明する。
【0039】
ラベル基材2は、絶縁性材料であれば特に限定されるものではなく、例えばPET、PVC、ABS、紙等を用いることができる。本発明は、ここに挙げる材料に限定されるものではない。
【0040】
剥離層3は、ラベル基材2の面部に部分的に設けることが好ましい。剥離層3に使用する材料は、ラベル基材2から容易に剥がれる材料が好ましく、ラベル基材2の材料に基づいて適宜選択的に使用される。
【0041】
なお、剥離層3としては、ラベル基材2全面に設けるよりも、パターン状で部分的に配置するのが好ましい。剥離層3をパターン状に配置すれば、ラベル基材2の面部各個所の間で剥離強度に差ができるため、被着体11に貼り付けた後に剥がそうとすると、図1(b)のように剥離層3のパターンに沿ってOVD層5が破壊すると同時にアンテナ7を断線させることが期待できる為である。
【0042】
特に、アンテナ7やICチップ8の下部周辺に剥離層3やOVD層5を配置いることで、RFIDラベルを離型シート10から剥がす際には壊れることがないが、被着体11に貼り付けた後に剥がそうとした場合のみ、アンテナ7を断線させることができ、通信機能を不能にすることができる。
【0043】
また、レーザ―等でラベル全層もしくは一部の層をカットして切り込みを設けることにより、より確実にRFIDラベルを破断させることができる。このとき、剥離層3が存在する部分と存在しない部分との境界部に切り込みを設けると、より高い破断効果が得られる。
【0044】
溶媒反応性導電層4は、通常の使用状態では導電性を示さないが、例えばアルコールなどの極性溶媒に浸漬させたり、あるいは極性溶媒を吹き付けたとき、室温下において10〜300秒程度で分子膜が崩壊(金属ナノ粒子と分子膜との結合よりも、分子膜が剥離し、かつ、剥離した分散溶媒が極性溶媒に溶解)し、金属ナノ粒子が凝集することから、光沢のある金属色を呈するようになり、電気抵抗値が10-4〜10-5Ω・cm程度まで下がって導電性を示すようになる。
【0045】
溶媒反応性導電層4の構成材料としては、ナノメートルサイズの金属ナノ粒子や金属塩が分散されている金属ナノペーストが用いられる。
【0046】
金属ナノペーストとしては、例えば銀,銅,金,白金などの金属ナノ粒子のまわりを分散剤(保護物質)で被覆したものを含有するものを用いることができる。また、分散剤(保護物質)としては、有機系の分散剤など公知のものを用いることができる。なお、金属ナノ粒子のまわりを分散剤(保護物質)で被覆する方法としては、公知の方法を適宜用いることができる。
【0047】
このような金属ナノペーストは、常温下ではナノメートルサイズの非常に細かい金属ナノ粒子が分散している状態にあり、その金属ナノ粒子の回りにはそれと固く結合する有機分子が存在していることから、金属ナノ粒子は結合しないで透明性を有し、導電性を示さない。しかし、アルコールなどの極性溶媒を作用させることによって、金属ナノ粒子の周囲にある有機分子が分解して金属ナノ粒子同士が結合してバルク金属に変化するため、その色相が金属色になり、かつ導電性を示すようになる。
【0048】
金属ナノペースト中の金属ナノ粒子は、平均粒子径が1〜100nm程度の範囲にある微粒子が好ましく用いられるが、さらに成膜性などを考慮すると、1〜50nm程度であることがより好ましい。
【0049】
また、金属ナノペーストとしては、より具体的には、5nm程度の金属ナノ粒子に保護物質としてドデシルアミンなどのアミン系高分子膜を被覆したものを溶媒に溶解させたものを用いることができる。
【0050】
従って、溶媒反応性導電層4としては、かかる金属ナノペーストを使用し、スクリーン印刷などを用いて、厚みが0.3〜5μm程度に作製することができる。すなわち、溶媒反応性導電層4としては、前述したように金属ナノペーストを用い、その薄膜を、スクリーン印刷だけでなく、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、あるいはインクジェット印刷などを用いて、少なくとも非接触IC媒体の積層されている部分を覆うように設ければよい。溶媒反応性導電層4の厚みとしては、1〜5μm程度であることが好ましい。このような厚みの溶媒反応性導電層4であれば、溶媒を作用させることによって効率よく導電性を発現させることができる。
【0051】
以上のような金属ナノペーストからなる溶媒反応性導電層4は、通常の使用状態では導電性を示さないので、通常の運用・管理の段階には、ICチップ8に記録される情報の読み取りが妨げられることはないが、被着体11からエタノールなどの溶媒を作用させて剥がそうとした場合、溶媒反応性導電層4が導電性を示すことにより、それまで有していた通信機能を失わせることが可能となる。また、溶媒反応性導電層4として、例えば、金属ナノペーストを用いて形成すれば、溶媒を作用させることで金属色に変化し、溶媒を作用させた痕跡を目視でも確認することができる。
【0052】
なお、溶媒反応性導電層4は、図1(a)に示すように剥離層3のパターンに合わせて同一のパターンが印刷される。その結果、溶媒を用いて被着体11からRFIDラベルを剥がす際、ラベル基材2から最も剥がれ易い剥離層3が剥がれ、また溶媒の回り込みが確実となって溶媒反応性導電層4に当該溶媒が確実に回り込み、導電性を示すことができる。これにより、図2に示すように、アンテナ7をショートさせることができるので、例えば被着体11から剥がした後に再貼付しても通信機能が確実に阻害されている。また、パターンが変色して浮き出るので、溶媒が作用されたことを目視で明確に確認できる。
【0053】
OVD層5は、例えば、剥離層3及び溶媒反応性導電層4の周囲を囲むようにラベル基材2に蒸着法によりアルミや金などの金属薄膜層を施し、かつ当該金属薄膜層に適宜な加工を施すことにより形成される。すなわち、金属薄膜層に、ホログラムや回折格子のような光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型や体積方向に干渉縞を記録する体積型などに加工することにより、OVD層5が形成される。
【0054】
なお、OVD層5としては、アンテナ7の電波通信機能を阻害しないように、導電性を示さないことが必要である。従って、例えばアルミ蒸着膜でホログラムを作製した後、エッチング法を用いて格子状に蒸着膜を切る方法がとられる。この場合、ホログラムの光学的機能を失わないように、10μm以下のラインで切ることが好ましい。他にも、導電性を示さない方法であれば適宜使用できる。例えば、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じさせる方法として、光学特性の異なるセラミックスの薄膜を多層に積層して多層薄膜構造とさせる方法を用いることもできる。
【0055】
隠蔽層6は、例えば、所望とする色のエポキシ樹脂ベースのインキを、スクリーン印刷にてOVD層5の面部に全面塗布し、乾燥を得て形成される。
【0056】
次に、アンテナ7の形成方法としては、導電性ペーストを印刷によってパターン状に塗布して形成する。導電性ペーストの導電性材料としては、銀系が好ましい。一例としては、バインダーとしての樹脂と溶剤と微細な銀粒子とを含む銀ペーストなどがあげられる。
【0057】
前記銀ペーストは、例えばスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷などの印刷方法で印刷してパターンを形成する。その後、加熱して溶剤を蒸発させることで、塗膜が形成される。この塗膜に含まれる銀粒子間の接触により、導体としての機能を有し、アンテナを形成することができるが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0058】
また、アンテナ7の形成方法としては、導電性のインクをインクジェットプリンタにて噴射させて配線パターンを印刷してもよい。この形成方法は、アンテナ7の厚みを薄く均一に形成でき、よりアンテナ7を破断し易い構造とすることができる。さらに、RFIDラベル全体の厚さをより薄く平滑とすることができる。
【0059】
アンテナ7の配線パターンは、例えば図2に示すようにメアンダ状に形成される。この配線パターンとしては、ICチップ8の接続端子を考慮したデザインとして配置してよいが、被着体11からラベルを剥がそうとした際、アンテナ7が断線し易く、かつ溶媒反応性導電層4の溶媒反応によってアンテナ7がショートし易いように、複雑な形状とするのが好ましい。
【0060】
また、アンテナ7の配線パターンは、図3に示すように帯状であっても有効である。このような構成のものは、アンテナ7に形成されるスリット部21がアンテナ7とICチップ8とのインピーダンスマッチング条件を設定するのに重要な役割を持っている。その結果、スリット部21をショートさせることによっても通信機能を破壊することができる。従って、このような構成のアンテナ7に対して溶媒反応性導電層4を、そのICチップ8と当該スリット部21にかかるように設けることにより、より効率的に、かつ確実に通信機能を破壊する効果が期待できる。
【0061】
アンテナ7は、ICチップ8の接続端子と接続される。接合部分は、ACP(Anisotropic Conductive Paste:異方導電性ペースト)やACF(Anisotropic Conductive Film:異方導電性フィルム)などのような異方性導電材料やNCP(Non- Conductive Paste)、NCF(Non- Conductive Film)などのような接合用の材料などを適宜選択して用いることができる。また、超音波などにより、直接接合してもよい。
【0062】
接着層9の材料としては、アクリル系の熱接着剤、ホットメルト樹脂(例えば、ポリアミド、ウレタン、EVA等)、あるいは粘着剤等を用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。また、接着層9の表面に容易に剥離できるような離型シート10が仮粘着される。
【0063】
離型シート10としては、紙製またはプラスチック製のシートにシリコン樹脂などの離型剤層がコーティングなどによって積層されているセパレータを用いることができる。
【0064】
従って、以上のように構成されたアンテナ7を備えたRFIDラベル1の作用について説明する。
【0065】
外部装置である例えばRW装置(図示せず)から例えば情報読み取り指示を表す電磁波や高周波の電波を送信すると、RFIDラベル1のアンテナ7に起電力が誘起され、そのアンテナ7長手方向に電位差が生じ、その電位差を伴った電力がICチップ8に供給される。
【0066】
ICチップ8は、固有のID情報を記憶する固有情報記憶領域及び商品に係る情報を読み書きする汎用記憶領域を有し、外形的には例えば正方形状に形成され、その辺部の長さ寸法が0.4mm程度、高さ寸法が0.1mm程度のものが使用される。なお、辺部の長さ及び高さは、これら記載寸法に限定されるものではなく、適宜な寸法のものが用いられる。
【0067】
ICチップ8は、電力の供給を受けると稼動状態となり、RW装置からの電波に重畳されて送られてくるタイミング信号やコマンドに応じて、チップ内部の記憶領域に記憶される情報をRW装置に返送する。
【0068】
このRW装置は、ICチップ8から返送されてくる再放射の強度などを測定することにより、ICチップ8に格納されている情報を読み出す。
【0069】
なお、RW装置とRFIDラベル1との交信に使用する周波数は、2.45GHz帯(2.400〜2.482MHz)および/または900MHz帯(850〜950MHz)が望ましいが、本発明はこれに限定されない。
【0070】
本発明によるRFIDラベルは、ラベル基材2上に剥離層3及び溶媒反応性導電層4を同じパターン状にて配置するとともに、これら剥離層3及び溶媒反応性導電層4を覆うようにOVD層5及び遮蔽層6を施した後、当該遮蔽層6の上側にアンテナ7を施した構成となっている。
【0071】
その結果、ラベル基材2の面部にパターン状に部分的に剥離層3を設けることで、ラベル基材2の面部各個所ごとに剥離強度に差ができ、離型シート10から剥がす際には壊れることがないが、被着体11に貼り付けた後に剥がそうとした場合、図1(b)に示すように剥離層3のパターンに沿ってOVD層5を破壊し、同時にアンテナ7を断線させることが容易、かつ確実となる。そして、アンテナ7が断線すれば、通信機能を不能にすることができる。
【0072】
また、溶媒反応性導電層4については、剥離層3のパターンに合わせてパターン印刷されていることから、被着体11に貼り付けた後に溶媒を用いてラベルを剥がそうとしたとき、ラベル基材2から最も剥がれ易い剥離層3が剥れて溶媒の回り込みが促進され、これによって溶媒反応性導電層4が導電性を示すことになる。ここで、溶媒反応性導電層4が導電性を示すと、RW装置からの電波を受けられなくなり、通信機能を失わせることができる。その結果、ICチップ8の稼動が停止したり、ICチップ8からの情報読み出しが正常に行われなくなる。
【0073】
さらに、アンテナ7の形成方法としては、OVD層5上に導電性ペーストを印刷によってパターン状に塗布して形成するか、各種の印刷方法で形成することにより、アンテナ7の厚みを薄く均一に形成でき、被着体11からRFIDラベルを剥がそうとした際、確実にアンテナ7まで断線させることができる。
【0074】
さらに、溶媒反応性導電層4は、溶媒反応によって例えば金属色に変化することから、溶媒を作用させた痕跡を目視確認できる。すなわち、RFIDラベル1の破壊や剥離を試みようとした履歴、破壊や剥離を試みようとした行為を確実に確認できるように残すことが可能となる。このとき、剥がされたOVD層5を再度貼り付けて、元の状態を再現することは不可能であり、また被着体11に残ったICチップ8、アンテナ7を綺麗に剥がすことも難しいため、RFIDラベルを使い回して使用する不正行為を有効に防止することができる。
【0075】
なお、本発明に係るRFIDラベル1としては、上記実施形態に限定されるものではない。
【0076】
(1) 上記実施形態では、ラベル基材2の全面にわたって溶媒反応性導電層4をパターン状に配置したが、必ずしも全面にわたって配置する必要がなく、必ずアンテナ7の一部を覆うように配置すればよい。
【0077】
(2) また、ラベル基材2の面部に剥離層3及び溶媒反応性導電層4の順序で設けたが、例えば剥離層3の代わりに、図4に示すようにラベル基材2の面部に配置されるOVD層5にラベル基材2から剥れ易い接着層12を部分的に設けてもよい。接着層12に用いる材料としては、ラベル基材2から容易に剥れるものを用いる。接着層12の材料は、ラベル基材2に使用される材料に基づいて適宜選択される。この場合には、溶媒反応性導電層4としては、図4及び図5のように、接着層12のない部分に合わせて印刷される。
【0078】
(3) さらに、上記実施形態では、溶媒反応性導電層4は剥離層3とOVD層5との間に配置したが、例えばラベル基材2と剥離層3との間に配置するように設けてもよい。
【実施例】
【0079】
次に、本発明に係るRFIDラベルの具体的な実施例について説明する。
【0080】
<実施例1>
(ホログラム用のラベル基材2の作製)
50μmの厚さのPETフイルムに、剥離層3をグラビア法にて部分的に0.5μmの厚みで塗布した。次に、剥離層3の塗布位置に合わせて溶媒反応性導電層4を設けた。溶媒反応性導電層4は、銀ナノペースト(ドデシルアミンで被覆保護された銀ナノ粒子とテトラデカンを含む銀ナノペースト:金属含有率60質量%、粘度30mPa・s)を用いて、スクリーン印刷にてパターン状に印刷(厚さ1μm)した。
【0081】
さらに、OVD層5をグラビア法にて5μm塗工し、ロールエンボス法でOVDレリーフパターンを形成した後、真空蒸着法を用いて膜厚80nmのアルミニウム反射層を設けた。このようなホログラム蒸着シートをアルカリエッチング法を用いて線幅10μmの格子状にパターニングし、ラベル基材2にホログラムを形成した。
【0082】
〔剥離層3〕
アクリル樹脂 …15部
メチルエチルケトン …60部
トルエン …25部
〔OVD層5〕
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体…15部
ウレタン樹脂 …10部
メチルエチルケトン …50部
トルエン …25部
(隠蔽層6の形成)
隠蔽層6は、被着体11と同色のエポキシ樹脂ベースのインキをラベル基材2のOVDであるホログラムの形成面側に、スクリーン印刷にて全面塗布し、乾燥することによって形成した。
【0083】
(RFIDタグの形成)
前述したラベル基材2の隠蔽層6側に、エボキシ樹脂に銀粉を分散させた銀ペーストをスクリーン印刷(350メッシュ)にて印刷し、70℃3分間温風乾燥機にて乾燥を行って5μm厚みのアンテナ7を形成した。
【0084】
このアンテナ7に0.4mm角のICチップ8の2つの端子をACP(異方導電性ペースト)により接合した。次に、クラフト紙の片面にポリエチレンをラミネートし、その上にシリコン処理を施した厚さ112μmの離型シート10にアクリル系の粘着剤を塗布し、これを前記RFIDラベル基材2に転写することで接着層を設け、光学機能付きRFIDラベルAを作製した。
【0085】
以上のようにして作製されたRFIDラベルAは、IC用RW装置でICチップ8に記憶される情報の読み取りが可能となった。
【0086】
<実施例2>
(ホログラム用のラベル基材2の作製)
50μmの厚さのPETフイルムに、接着層12をグラビア法にて部分的に0.5μmの厚みで塗布した。次に、接着層12の塗布位置以外の部分に合わせて、溶媒反応性導電層4を設けた。溶媒反応性導電層4は、銀ナノペースト(ドデシルアミンで被覆保護された銀ナノ粒子とテトラデカンを含む銀ナノペースト:金属含有率60質量%、粘度30mPa・s)を用いて、スクリーン印刷にてパターン状に印刷(厚さ1μm)した。
【0087】
さらに、OVD層5をグラビア法にて5μm塗工し、ロールエンボス法でOVDレリーフパターンを形成した後、真空蒸着法を用いて膜厚80nmのアルミニウム反射層を設けた。このようなホログラム蒸着シートをアルカリエッチング法を用いて線幅10μmの格子状にパターニングし、ラベル基材2にホログラムを形成した。
【0088】
以下、実施例1と同様にして光学機能付きRFIDラベルBを作製した。
【0089】
〔接着層12〕
ポリエステル樹脂 …15部
メチルエチルケトン …60部
トルエン …25部
〔OVD層5〕
アクリル樹脂 …15部
ウレタン樹脂 …10部
メチルエチルケトン …50部
トルエン …25部
以下、本発明の比較例について説明する。
<比較例>
38μm厚みのPETフイルム上に、アルミニウム薄膜のアンテナ7をエッチングにて形成し、RFID用のICチップ8を実装してRFIDインレットを得た。PETフイルム基材上にホログラム層を設け、その上にRFIDインレットを積層形成し、さらに接着層を設けることにより、RFIDラベルCを作製した。
【0090】
以上のようにして作製されたRFIDラベルA,B及びCを、商品が内蔵されたボックスに貼り付けた。その後、被着体11から各RFIDラベルA,B及びCを慎重に剥がした。
【0091】
このとき、実施例1,2のRFIDラベルA,Bでは、エタノールを用いて被着体11から剥がした際に、図1(b)及び図4(b)のように、パターン状にホログラムのアルミ蒸着膜が破壊されて剥離すると同時にアンテナ7も破壊し、通信機能を不可能にすることができた。
【0092】
さらに、剥離パターン部分では、溶媒反応性導電層4のナノ銀が溶媒であるエタノールに反応して導電性を示したため、アンテナ7がショートされ、完全にRFIDラベルと非接触で情報の読み書きの機能をできなくすることができた。さらに、エタノールに反応して、透明であった溶媒反応性導電層4が変色し、視覚的にも剥がした痕跡を残すことができた。
【0093】
一方、比較例で作製されたRFIDラベルCについては、エタノールを用いて被着体11から慎重に剥がしたところ、ラベル基材2が綺麗に剥がすことができ、RFIDインレットの通信も可能であった。
【0094】
さらに、RFIDインレットも分離可能であったため、容易に再利用することができ、“使い回し”が可能であることが確認できた。
【0095】
なお、本発明は、以上のような実施形態及び実施例に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【符号の説明】
【0096】
1…RFIDラベル、2…ラベル基材、3…剥離層、4…溶媒反応性導電層、5…OVD層、6…隠蔽層、7…アンテナ、8…ICチップ、9…接着層(第1の接着層)、10…離型シート、11…被着体、12…接着層(第2の接着層)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル基材上に少なくともOVD層、アンテナ及び当該アンテナと電気的に接続されるICチップが配置され、さらに被着体に貼り付けるための第1の接着層を配置してなり、外部装置と非接触でデータの送受信を行うRFIDラベルにおいて、
前記ラベル基材と前記OVD層との間に当該ラベル基材から剥離し易い材料の剥離層または第2の接着層と溶媒反応性導電層とを施すとともに、前記OVD層としては導電性を示さないが光学的な効果を発揮する機能を有し、
前記第1の接着層を通して貼り付けられた前記RFIDラベルを前記被着体から剥がす際、前記ラベル基材から前記剥離層または第2の接着層が剥れて前記OVD層を破損させ、かつ前記アンテナを断線させ、また前記RFIDラベルを剥がす際に溶媒が作用されているときに前記溶媒反応性導電層が導電性を示すことで通信機能を失わせることを特徴とするRFIDラベル。
【請求項2】
前記剥離層が前記ラベル基材の面部にパターン状に印刷され、さらに前記溶媒反応性導電層が前記剥離層と同じパターン状に印刷されることを特徴とする請求項1に記載のRFIDラベル。
【請求項3】
前記溶媒反応性導電層が前記ラベル基材と前記剥離層との間に設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のRFIDラベル。
【請求項4】
前記溶媒反応性導電層は、ナノサイズの金属ナノ粒子あるいは金属塩を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載のRFIDラベル。
【請求項5】
前記溶媒反応性導電層は、溶媒の作用を受けたときに有色に変化することを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項に記載のRFIDラベル。
【請求項6】
前記アンテナは、導電性のインクを噴射させてアンテナ配線パターンを形成することを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載のRFIDラベル。
【請求項7】
前記OVD層による光学的な効果は可視光領域で発現することを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載のRFIDラベル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−103895(P2012−103895A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251739(P2010−251739)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】