説明

RFIDリーダライタ用アンテナ装置及びアンテナ調整装置

【課題】搬送路上を移動する物品に貼付されたRFIDタグとの通信不能の問題を解消し、RFIDタグを漏れなく識別できるようにする。
【解決手段】RFIDリーダライタ用アンテナ装置において、物品の搬送路の上空に、搬送路に交叉する方向に複数組のアンテナ群を備え、それら複数組のアンテナ群によって形成される少なくとも2つの通信可能領域が互いに重なり合う部分を、物品に貼付されたRFIDタグが通過するように、それら複数組のアンテナ群間の間隔または前記通信可能領域の方向、もしくはその両者を調整する調整手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency Identification)タグとRFIDリーダライタ間で通信を行うためにRFIDリーダライタに接続される、RFIDリーダライタ用アンテナ装置、及びその調整を行うためのアンテナ調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
物流センタや工場での物品管理などに、無線方式で通信可能なRFIDタグが利用される事例が多くなっている。特に、電池を内蔵しないことから低価格化が期待できるパッシブタグは、UHF(Ultra-High Frequency)帯を利用することで最大10m程度の通信距離を確保できるため、従来にも増して利用範囲が拡大していくものと見られている。
【0003】
ところで、従来物品管理などに利用されているRFIDシステムの多くは、RFIDタグからの信号を受信するためのアンテナが取り付けられたゲートを、物品の移動経路の途中に設置し、物品がゲートを通過するときにRFIDタグとの通信を行う、ゲート方式を採用している。
【0004】
しかしながら、RFIDタグからの信号が指向性を有するなどの理由で、単一のゲートだけを用いた場合には、RFIDタグの姿勢によっては、ゲートアンテナのすぐ近くを通過したときでも通信が行えず、物品が識別不能となってしまうという問題があった。特に、パッシブタグは、アンテナから照射される電磁波のエネルギーによって駆動され、出力も微弱であるため、ある程度指向性を持たせないと通信距離を伸ばすことが難しく、この問題が発生し易い特性を有している。
【0005】
従来技術として、特許文献1には、アンテナをゲートの両側だけではなく上下にも設置することで、遮蔽物の影響などによる通信不能の問題を回避する技術が開示されている。また、特許文献2には、ゲートの入口と出口の両側に斜めに向けたアンテナを付加することで、通信可能な領域を拡大する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−112227号公報
【特許文献2】特開2007−88937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術によっても、例えば、シート状のRFIDタグに内蔵されるアンテナ(以下、「タグアンテナ」という。)のアンテナ面が物品の搬送方向を向いたままゲートを横切った場合には、やはり通信不能となってしまう。また、特許文献2に開示されている技術によっても、同様に、タグアンテナのアンテナ面が地面に平行な状態でゲートを通過した場合には、やはり通信不能となってしまう。
【0008】
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、搬送路上を移動する物品に貼付されたRFIDタグとの通信不能の問題を解消し、RFIDタグを漏れなく識別できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は、RFIDタグから放射される電磁波信号を受信してRFIDリーダライタに中継するRFIDリーダライタ用アンテナ装置において、物品の搬送路の上空に、前記搬送路に交叉する方向に複数組のアンテナ群を備え、それら複数組のアンテナ群によって形成される少なくとも2つの通信可能領域が互いに重なり合う部分(以下、「双通信可能領域」という。)を、前記搬送路上を搬送される物品に貼付されたRFIDタグが通過するように、前記複数組のアンテナ群間の間隔または前記通信可能領域の方向、もしくはその両者を調整する調整手段を備えた。
【0010】
また、前記複数組のアンテナ群の天井面からの高さを調整する高さ調整手段を備えた。
【0011】
また、前記複数組のアンテナ群全体を前記搬送路の上流から下流に向けて首振り動作させる首振り制御手段、または、前記搬送路の上流方向への指向性を有する第3のアンテナ群を備えた。
【0012】
さらに、アンテナ調整装置に、前記アンテナ装置の直下における前記RFIDタグの通過範囲を指定するだけで、指定された前記通過範囲が前記双通信可能領域に包含されるように、前記複数組のアンテナ群間の間隔、前記通信可能領域の方向、及び前記天井面からの高さのうちの少なくとも一つを制御する制御手段を備えた。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、搬送路上を移動する物品に貼付されたRFIDタグとの通信不能の問題を解消でき、RFIDタグを漏れなく識別できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一実施形態に係るアンテナ装置の模式図である。
【図2】第一実施形態に係るアンテナ装置の首振り動作についての説明図である。
【図3】第一実施形態に係るアンテナ装置の機器構成及び他装置との接続形態を示すブロック図である。
【図4】タグの姿勢とアンテナ装置からの見え方との関係を示す説明図である。
【図5】タグが移動するときのアンテナ装置からの見え方を示す説明図である。
【図6】アンテナ調整プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】アンテナ調整用のパラメータ入力画面の表示例である。
【図8】アンテナ調整用のパラメータと調整動作についての説明図である。
【図9】アンテナ調整用のツールであるテスト用ポールを例示したものである。
【図10】アンテナ調整時に表示される案内メッセージの例である。
【図11】第二実施形態に係るアンテナ装置の模式図である。
【図12】第二実施形態に係るアンテナ装置の機器構成及び他装置との接続形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための2つの形態を、図面を参照しながら順に説明する。
【0016】
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係るRFIDリーダライタ用アンテナ装置(以下、「アンテナ装置」と略記。)1が搬送路に跨る形で天井面Cに設置されたときの様子を、搬送路の上流側から見た模式図であり、通信可能領域A1などは、アンテナ装置1の直下における断面の形状が図示されている。
【0017】
図1において、不図示の搬送路は、アンテナ装置1の直下の床面F上に、図の手前から奥の方向に設けられているものとする。また、RFIDタグ(以下、「タグ」とも略記。)2が貼付された不図示の物品は、不図示の台車などに不規則に積み重ねられて搬送路上を搬送され、タグ2は、図1に例示したように、タグ通過範囲A3(破線で描かれた長方形の内部)を、様々な姿勢と高さで図の手前から奥の方向に並行移動していく。そして、アンテナ装置1は、タグ通過範囲A3を通過するこれらすべてのタグ2と漏れなく通信可能であることが要求される。
【0018】
アンテナ装置1は、左右2つのアンテナ群16を両端に備えた伸縮可能かつ回動可能な水平アーム12を、伸縮可能な垂直アーム13と天井固定部11とによって、天井面Cから吊り下げることができる構造となっている。垂直アーム13の代わりに伸縮可能なケーブルを用いてもよい。
【0019】
図1では、左右それぞれのアンテナ群16は、アンテナ取付軸14によって2つの平面アンテナ15が水平アーム12の長手方向に連結されているが、平面アンテナ15の数や連結手段はこれに限らず、隣接する2つの平面アンテナ15の通信可能領域A1(一点鎖線で描かれた台形の内部)間に隙間ができないように、それぞれの平面アンテナ15の角度が変更できるようになっていればよい。それによって、左右それぞれのアンテナ群16としてのビーム幅の調整を適切に行うことができる。
【0020】
つまり、図1のように、各平面アンテナ15の通信可能領域A1が所定のビーム幅(例えば30度)をもつのであれば、平面アンテナ15を2つ連結することによって、アンテナ群16としてのビーム幅を所定のビーム幅のおよそ1〜2倍の範囲(例えば約30〜60度の範囲)で調整することができる。また、通信距離を伸ばすためにもっと指向性を高めたい場合には、例えば、ビーム幅15度の平面アンテナ15を4つ連結すれば、およそ15度から60度の範囲でアンテナ群16としてのビーム幅を調整することができる。
【0021】
なお、アンテナ群16としてのビーム幅を調整するときには、始めに、最も外側(搬送路から遠い側)の平面アンテナ15を、その通信可能領域A1の外側端部がほぼ真下を向くように設定し、それを基準として順次内側の平面アンテナ15の角度を設定していくとよい。
【0022】
このビーム幅の調整が可能な左右2つのアンテナ群16によって形成される通信可能領域A1同士が重なる部分(図1で斜線が施されている部分)A2は、左右双方のアンテナ群16との通信が可能な領域であるので、これを「双通信可能領域」と呼ぶ。
【0023】
本実施形態に係るアンテナ装置1を設置するときには、与えられたタグ通過範囲A3(破線で描かれた長方形の内部)がこの双通信可能領域A2内に包含されるように、水平アーム12及び垂直アーム13の長さと、各平面アンテナ15の角度の調整を行う。この調整方法については後記にて詳しく説明する。
【0024】
次に、本実施形態に係るアンテナ装置1の首振り動作について説明する。図2は、アンテナ装置1の首振り動作を示した模式図であり、タグ2が貼付された不図示の物品は、図の左から右方向に台車などに積まれて所定以上の間隔を置いて搬送されるものとする。
【0025】
アンテナ装置1は、水平アーム12を軸回りに回転させることによって、搬送される物品を自動的に追尾するようにアンテナ群16を左位置P1(図では16(P1)と標記。)から右位置P2(図では16(P2)と標記。)まで移動させる首振り運動を行う。それによって、上下の破線で示したタグ通過範囲A3内を左から右方向に平行移動するタグ2が双通信可能領域A2(斜線が施されている部分)内に入っている状態を、長時間にわたって維持する。
【0026】
この首振り運動の制御方法としては、例えば、アンテナ群16が左位置P1にある初期状態から通信可能なタグ2の数を監視し、通信可能なタグ2の数が増えるか変化しないときにはそのままの位置を保ち、通信可能なタグ2の数が減ったらその数が増えるように、つまり、通信可能なタグ2の検出数が極大となるように右位置P2の方向にアンテナ群16を回転させる方法や、搬送路上の物品の位置を検出するための赤外線センサやイメージセンサの出力に連動してアンテナ群16を回転させる方法がある。また、ベルトコンベアなどのように一定の速度で物品が搬送される場合には、物品の到来を検知するためのスイッチを設け、物品の到来を検知した時点から所定のパターンで首振り動作をさせてもよい。逆に、首振り動作のパターンに、物品の動きを同期させてもよい。
【0027】
次に、図3を参照してアンテナ装置1の機器構成を説明する。図3は、アンテナ装置1の機器構成と他装置との接続形態を示したブロック図である。
【0028】
アンテナ装置1は、タグ2との通信を行うRFIDリーダライタ3に接続され、RFIDリーダライタ3からの指令にしたがって平面アンテナ15からデータ送信用の電磁波を照射し、タグ2から送信される信号をキャッチしてRFIDリーダライタ3に中継する。このとき、各平面アンテナ15は、アンテナ切替スイッチ5によって、一定時間毎(例えば100ミリ秒毎)にサイクリックに作動するように、時分割制御が行われる。それにより、同時には1つの平面アンテナ15しか作動しないので、複数の平面アンテナ15間での電磁波の相互干渉は発生しない。
【0029】
なお、タグ2には公知のアンチコリージョン機能を備えることが望ましく、それによって近接するタグ2から放射される電磁波間の相互干渉を回避することができるので、仮にタグ2同士が重なり合っていたとしても、それぞれのタグ2と順次通信を行うことが可能となる。
【0030】
また、アンテナ装置1は、各平面アンテナ15の位置や角度を調整するためのアーム長制御モータ7、8とアンテナ角制御モータ9とを備え、アンテナ調整装置4からの指令にしたがって、水平アーム12及び垂直アーム13の長さと、アンテナ取付軸14に対する平面アンテナ15の角度の制御を行う。また、アンテナ装置1はさらに、首振り制御モータ6を備え、RFIDリーダライタ3からの指令にしたがって水平アーム12を回転させる首振り動作の制御を行う。
【0031】
続いて、図4及び図5を参照して、タグ2の姿勢の変化によってアンテナ装置1との通信が不能となる問題の原理と本発明によるその解決方法を説明する。
【0032】
図4は、アンテナ装置1が真下を向いている状態における双通信可能領域A2を物品の搬送方向上流から見た模式図(図1を簡略化したもの)と、そのときの左アンテナ群中心及び右アンテナ群中心から見たタグ2の見え方との関係を示したものである。
【0033】
また、図5は、アンテナ装置1の首振り動作に伴って移動する双通信可能領域A2の軌跡を物品搬送方向の右側から見た模式図(図2を簡略化したもの)と、そのときの左アンテナ群中心及び右アンテナ群中心から見たタグ2の見え方との関係を示したものである。
【0034】
図4及び図5に黒丸印で表されている左右のアンテナ群中心とは、左右それぞれのアンテナ群16によって形成されるビーム幅θの通信可能領域(図4の一点鎖線で描かれた三角形の内部)を形成する仮想的な照射点であり、各平面アンテナ15から見たタグ2の見え方は、これらアンテナ群中心から見たタグ2の見え方によって近似することができる。
【0035】
一般に、タグ2には指向性がある。例えば、物品管理などに利用されているシート状のタグは、シート面にタグアンテナが配置されるため、シート面に対して垂直な方向に指向性をもち、シート面との角度が小さくなるほど電波が弱まり、ついにはほとんど通信不能となってしまう。
【0036】
したがって、例えば、図4のタグ2aは、右アンテナ群中心からはシート面が真横を向いて見えるので、右アンテナ群16とは通信不能となってしまう。しかし、左アンテナ群中心からはシート面がほぼ正対して見えるので、左アンテナ群16とは通信可能である。また、タグ2bは、右アンテナ群中心と左アンテナ群中心から見たシート面の角度がほぼ等しく、双方のアンテナ群16との通信が可能である。
【0037】
ところが、タグ2cのように、シート面が物品の搬送方向に対して垂直となっているときには、図4の表の最下段に示すように、左アンテナ群中心から見ても右アンテナ群中心から見てもシート面が真横を向くので、左右いずれのアンテナ群16とも通信不能となってしまう。
【0038】
このタグ2cのように、アンテナ装置1の直下では、左右いずれのアンテナ群16とも通信不能となる場合の対策として有効なのが、前記した首振り動作である。
【0039】
図5において、図4の状態では左右いずれのアンテナ群16とも通信不能なタグ2cが貼付された物品が、左から右方向にそのままの姿勢で搬送され、アンテナ装置1はアンテナ群16が常にその物品の方向を向くように首振り制御されるものと仮定する。このとき、タグ2cの位置は、図5の2c−1、2c−2、2c−3の順に変化する。これを、首振り動作を行っているアンテナ装置1の左アンテナ群中心及び右アンテナ群中心から見ると、図5の表のようになる。
【0040】
つまり、2c−2の位置ではいずれもシート面が真横に向いてしまう場合であっても、2c-1及び2c−3の位置ではシート面を一定以上の角度で見通すことができ、それらの位置は双通信可能領域A2に入っているので、いずれも通信が可能となる。
【0041】
以上説明したように、第一実施形態に係るアンテナ装置1によれば、タグの姿勢に起因する通信不能の問題を解消でき、搬送路上を搬送される物品に貼付されたすべてのタグとの間で確実に通信を行うことができる。
さらに、従来のゲート方式では、搬送される物品や台車などがゲートに衝突する危険性があったり、ゲートを設置することにより設備のレイアウトに制約が生じたりするという不都合もあったが、第一実施形態に係るアンテナ装置1によれば、物品を搬送するときに障害となるゲートを床面に設置する必要がないので、これらの不都合をも解消することができる。
【0042】
次に、図6から図8を参照して、アンテナ調整装置4(図3参照)を用いたアンテナ装置1の調整方法を説明する。アンテナ調整装置4は、不図示のアンテナ調整プログラムが実行される携帯型のコンピュータであり、キーボードなどの入力部と、液晶ディスプレイなどの表示部と、モータなど外部装置を制御するための入出力インタフェースとを有する。
【0043】
図6は、アンテナ調整装置4によって実行されるアンテナ調整プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。図7は、アンテナ調整用のパラメータ入力画面の表示例である。また、図8は、アンテナ調整用のパラメータと調整動作についての説明図である。
【0044】
アンテナ調整プログラムが起動されると、まず始めに、ステップS1において、図7に例示したようなアンテナ調整用のパラメータ入力画面を不図示の表示部に表示させる。このパラメータ入力画面では、タグ通過範囲A3の幅w(mm)、上端の高さhu(mm)、下端の高さhl(mm)、天井の高さhc(mm)、及びビーム幅θ(度)が入力される(図8参照)。なお、ビーム幅θ(度)については、平面アンテナ15のビーム幅と連結数とに対応して定められる調整可能範囲(図7の例では「30〜90」)を表示し、その範囲内の値のみを受け付ける。
【0045】
次に、ステップS2において、不図示のキーボードなどから入力されたこれら各パラメータ値を取り込み、ステップS3において、w、hu、hl及びθの値から、アンテナ群中心の高さha(mm)の値を計算する(図8参照)。
【0046】
次に、ステップS4において、w、ha及びhcの値から、必要となる水平アーム長と垂直アーム長とを計算し、ステップS5において、計算結果の妥当性を判定する。具体的には、求めた水平アーム長と垂直アーム長とがいずれも所定の調整可能な範囲内にあり、かつ、タグ通過範囲A3が双通信可能領域A2に含まれる、つまり、図8のdの値が平面アンテナ15の最大通信距離に対応して定められる所定値以下であれば妥当であると判定し、そうでなければ妥当ではないと判定する。
【0047】
そして、計算結果が妥当ではないと判定した場合は(ステップS5でNo)、ステップS7に分岐して、不図示の表示部にパラメータ値の再入力を促すエラーメッセージを表示した後、ステップS1に戻って前記の処理を繰り返す。
【0048】
また、計算結果が妥当であると判定した場合は(ステップS5でYes)、ステップS6に進んで、不図示の入出力インタフェースを介して図3の各制御モータ7、8、9を制御することによって、水平アーム長、垂直アーム長及び各アンテナ角の調整を実行し、処理を終了する。
【0049】
前記のアンテナ調整プログラムは、パラメータ入力画面にパラメータ値を入力してもらうものであったが、アンテナ調整用のツールを利用することによって、実際の搬送路上でタグ通過範囲A3の大きさを指定するようにしてもよい。
【0050】
図9は、アンテナ調整用のツールであるテスト用ポールを例示したものである。また、図10は、不図示の表示部に表示される案内メッセージの例である。
【0051】
図9(a)に示したテスト用ポール10aは、所定の位置検出用タグ2dが先端に貼付されている伸縮可能なポールである。また、図9(b)に示したスタンド式テスト用ポール10bは、伸縮可能なポールの上端に位置検出用タグ2eが貼付され、下部にもう1つの位置検出用タグ2fが上下に移動可能に取り付けられて、キャスター付きのスタンドにより床面を移動できるようになっている。
【0052】
図10(a)は、テスト用ポール10aを利用するときに表示される案内の例であり、このような案内にしたがって、人がテスト用ポール10aを支持して、順次タグ通過範囲A3の4隅の境界点に位置検出用タグ2dを配置し、アンテナ調整装置4が、平面アンテナ15の角度を変更しながら位置検出用タグ2dの読取可否を判別することによって、タグ通過範囲A3を把握することができる。
【0053】
また、図10(b)は、スタンド式テスト用ポール10bを利用してタグ通過範囲A3の大きさを指定するときに表示される案内の例であり、案内にしたがって、人がタグ通過範囲A3の上端と下端との高さにそれぞれ位置検出用タグ2eと2fとを合わせて、タグ通過範囲A3の左境界線と右境界線の2箇所にテスト用ポール10bを設置し、アンテナ調整装置4が、平面アンテナ15の角度を変更しながら位置検出用タグ2eと2fとの読取可否を判別するようにしてもよい。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係るアンテナ調整装置によれば、搬送される物品の大きさや搬送形態に応じてタグの通過範囲を指定するだけで、個々のアンテナ装置の設置条件に対応した調整が自動で行われるので、アンテナ装置の設置及び調整作業の能率を大きく向上させることができる。
【0055】
<第二実施形態>
図11は、本発明の第二実施形態に係るアンテナ装置1aが搬送路に跨る形で天井面Cに設置されたときの様子を、搬送路の上流側から見た模式図、及び、物品搬送方向の右側から見た模式図である。また、図12は、第二実施形態に係るアンテナ装置1aの機器構成と他装置との接続形態を示したブロック図である。
【0056】
図11及び図12に示すように、第二実施形態に係るアンテナ装置1aは、図1〜図3に示した第一実施形態に係るアンテナ装置1における首振り動作に代わるものとして、搬送路上流方向に指向性を有する第3のアンテナ群17を備え、首振り制御モータ6の代わりに、アンテナ群取付ヒンジ19を回転させてアンテナ群17の俯角の制御を行うアンテナ群俯角制御モータ18を備えたものである。他の構成要素は、第一実施形態と同様であるので、共通する要素には同一の符号を付して説明を省略し、前記第一実施形態との差異を中心に説明する。
【0057】
アンテナ群17は、その通信可能領域A4が搬送路上流方向を向き、物品搬送方向に対する俯角γが調整可能なように、アンテナ群取付ヒンジ19によって水平アーム12aに取り付けられる。アンテナ群17を構成する平面アンテナ15aは、アンテナ群16を構成する平面アンテナ15より指向性を高め、通信可能距離を大きくする。それにより、図4のタグ2cのような姿勢で移動してくるために、図11の2c−2の位置では通信不能となる場合であっても、先に図5で説明したのと同様な原理によって、図11の2c−1の位置で、アンテナ群17を介して通信を行うことができる。なお、1つの平面アンテナ15aだけでもその通信可能領域A4が、搬送路上流において一定の俯角以下となるタグ通過範囲A3a(図11参照)を包含するのであれば、アンテナ群17は1つの平面アンテナ15aで構成してもよい。
【0058】
以上説明した第二実施形態に係るアンテナ装置1aによれば、首振り動作を行う必要がないので、物品が頻繁にもしくは連続的に搬送される場合であっても、タグの姿勢に起因する通信不能の問題を解消でき、搬送路上を搬送される物品に貼付されたすべてのタグとの間で確実に通信を行うことができる。
【0059】
以上で本発明を実施するための形態の説明を終えるが、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではなく、アンテナ装置の形状や構造などは適宜変更してもよいし、アンテナ調整装置の機能をRFIDリーダライタにもたせるようにしてもよい。例えば、アンテナ装置の天井面への取付位置をレールによって調整可能としてもよいし、あるいは、左右のアンテナ群を分離して、それぞれを天井面に取り付けるようにしてもよい。搬送路の幅が広い場合などには、左右1対のアンテナ群を複数組有する構成や、左右のアンテナ群の中間にビーム幅が大きい追加のアンテナ群を加える構成にして、通信範囲を分割するようにしてもよい。
【0060】
また、RFIDタグの形状はシート状に限らないし、パッシブタグでもアクティブタグでもよい。使用するアンテナは、一定の指向性を有するものであれば平面アンテナでなくてもよい。その他の構成要素についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1,1a アンテナ装置(RFIDリーダライタ用アンテナ装置)
2,2a,2b,2c,2d,2e,2f RFIDタグ
3 RFIDリーダライタ
4 アンテナ調整装置
5 アンテナ切替スイッチ
6 首振り制御モータ(首振り制御手段)
7,8 アーム長制御モータ(アーム長制御手段)
9 アンテナ角制御モータ(角度制御手段)
10a テスト用ポール
10b スタンド式テスト用ポール
11 天井固定部
12,12a 水平アーム
13 垂直アーム
14 アンテナ取付軸
15,15a 平面アンテナ(アンテナ)
16 アンテナ群
17 アンテナ群(第3のアンテナ群)
18 アンテナ群俯角制御モータ
19 アンテナ群取付ヒンジ
A1,A4 通信可能領域
A2 双通信可能領域
A3 タグ通過範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグから放射される電磁波信号を受信してRFIDリーダライタに中継するRFIDリーダライタ用アンテナ装置であって、
物品の搬送路の上空に、前記搬送路に交叉する方向に複数組のアンテナ群を備え、それら複数組のアンテナ群によって形成される少なくとも2つの通信可能領域が互いに重なり合う部分である双通信可能領域を、前記搬送路上を搬送される物品に貼付されたRFIDタグが通過するように、前記複数組のアンテナ群間の間隔または前記通信可能領域の方向、もしくはその両者を調整する調整手段
を備えたことを特徴とするRFIDリーダライタ用アンテナ装置。
【請求項2】
前記複数組のアンテナ群間の間隔を調整する調整手段は、
前記複数組のアンテナ群が取り付けられた伸縮可能な水平アームの長さを制御するアーム長制御手段である
ことを特徴とする請求項1に記載のRFIDリーダライタ用アンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ群は、指向性を有する2つ以上のアンテナが前記水平アームの長尺方向に連結され、
前記通信可能領域の方向を調整する調整手段は、
それぞれの前記アンテナの通信可能範囲の一部が隣接する前記アンテナの通信可能範囲の一部と互いに重なるように、前記各アンテナの角度を制御する角度制御手段である
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のRFIDリーダライタ用アンテナ装置。
【請求項4】
前記複数組のアンテナ群の天井面からの高さを調整する高さ調整手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のRFIDリーダライタ用アンテナ装置。
【請求項5】
前記高さ調整手段は、前記複数組のアンテナ群を吊り下げる伸縮可能な垂直アームまたはケーブルの長さを制御する手段である
ことを特徴とする請求項4に記載のRFIDリーダライタ用アンテナ装置。
【請求項6】
前記RFIDタグの検出数が最大となるように、前記複数組のアンテナ群を前記搬送路の上流から下流に向けて首振り動作させる首振り制御手段
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のRFIDリーダライタ用アンテナ装置。
【請求項7】
前記搬送路の上流方向への指向性を有し、その俯角を調整可能な第3のアンテナ群
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のRFIDリーダライタ用アンテナ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のRFIDリーダライタ用アンテナ装置に接続され、
前記アンテナ装置の直下における前記RFIDタグの通過範囲を指定する通過範囲指定手段を備え、指定された前記通過範囲が前記双通信可能領域に包含されるように、前記複数組のアンテナ群間の間隔、前記アンテナの角度、及び前記天井面からの高さのうちの少なくとも一つを制御する制御手段
を備えたことを特徴とするアンテナ調整装置。
【請求項9】
前記通過範囲指定手段は、前記通過範囲の幅と高さとを入力する入力手段である
ことを特徴とする請求項8に記載のアンテナ調整装置。
【請求項10】
前記通過範囲指定手段は、案内にしたがって前記通過範囲の境界を示す複数の位置に所定のRFIDタグを人が配置するものである
ことを特徴とする請求項8に記載のアンテナ調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−258846(P2010−258846A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107306(P2009−107306)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】