説明

RI化合物合成装置

【課題】試薬を補充する際の放射線の漏れを防止し、短時間で繰り返し合成を行うことができるRI化合物合成装置を提供する。
【解決手段】RI及び複数の試薬を反応器3に導入してFDGを得るRI化合物合成装置において、反応器3を有すると共に、ホットセル11を開閉するホットセル扉15の内面側に取り付けられた装置本体部5と、試薬を収容する試薬容器7A,7B,7C,7Dを保持すると共に、ホットセル扉15の外面側に取り付けられた試薬ホルダ部9と、ホットセル扉15を貫通すると共に、試薬容器7A,7B,7C,7Dと反応器3とを接続する試薬チューブ21と、を備える。試薬を補充する場合には、ホットセル扉15を開けずに試薬容器7A,7B,7C,7Dに試薬を補充できるため、反応器3などに残留するRI/RI化合物からの放射線の漏れを防止し、短時間で繰り返し合成を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性同位元素及び複数の試薬から放射性同位元素標識化合物を合成するRI化合物合成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、PET検査(ポジトロン断層撮影検査)等に使用される放射性同位元素標識化合物(RI化合物)は、放射性同位元素(RI)を所定の原料試薬と化学反応させるRI化合物合成装置で合成される。このRI化合物合成装置としては、装置外部から供給されるRIと、作業者によって適宜補充される原料試薬及び洗浄試薬などの各種試薬とを、弁などで制御し、管路を通して反応器に導入してRI化合物を得るものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このようなRI化合物合成装置は、RIやRI化合物から放出される放射線の漏れを防止するため、鉛、タングステン等の放射線遮蔽物で構成されたホットセル内に収容されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−21696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のRI化合物合成装置では、1回の合成で得られるRI化合物の量には上限があり、より多くの量を得るためには限られた時間内に繰り返し作業者がホットセルの扉を開閉する必要がある。しかしながら、この扉の開閉の際にRI化合物合成装置に残留したRI及びRI化合物からの放射線が漏れるといった虞があるため、RIの放射能量が低減するまで待たなければならず、短時間で繰り返し合成を行うことは難しい状況であった。
【0006】
本発明は、以上の課題を解決することを目的としており、試薬を補充する際の放射線の漏れを防止し、短時間で繰り返し合成を行うことができるRI化合物合成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、放射性同位元素及び複数の試薬をホットセル内に収容された反応器に導入して放射性同位元素標識化合物を得るRI化合物合成装置において、反応器を有すると共に、ホットセルを開閉するホットセル扉の内面側に取り付けられた装置本体部と、試薬を収容する試薬容器を保持すると共に、ホットセル扉の外面側に取り付けられた試薬ホルダ部と、ホットセル扉を貫通すると共に、試薬容器と反応器とを接続する試薬移送管と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このRI化合物合成装置では、ホットセル扉を閉じると、反応器を有する装置本体部がホットセル内に収容される。この状態で放射性同位元素標識化合物の合成は行われ、放射性同位元素や放射性同位元素標識化合物からの放射線はホットセルによって遮蔽される。試薬を補充する場合には、試薬ホルダ部で保持されている試薬容器に試薬を補充したり、試薬容器を交換したりする。この場合、試薬ホルダ部は、ホットセル扉の外面側に取り付けられているので、ホットセル扉を開ける必要はなく、装置本体部に残留する放射性同位元素や放射性同位元素標識化合物からの放射線の漏れは防止され、短時間で繰り返し合成を行うことができる。
【0009】
さらに、ホットセル扉には、補助扉部が設けられ、補助扉部の内面側に設けられると共に、反応器によって得られた放射性同位元素標識化合物に含まれる不純物を除去するカラム部を更に備えると好適である。この構成では、ホットセル扉を開閉することなく、補助扉部の開閉によってカラム部を交換できるため、カラム部を交換する際の放射線の漏れを軽減できる。
【0010】
さらに、試薬移送管は、ホットセル扉の内部を蛇行貫通すると好適である。この構成では、試薬移送管がホットセル扉の内部を直線状に貫通する場合に比べて、試薬移送管を介して放射線が漏れ出る可能性は低くなる。
【0011】
さらに、ホットセル扉には、試薬移送管が挿通する貫通孔が形成されており、貫通孔の外側の開口を覆うと共に、貫通孔を透過した放射線を遮るシールド部を更に備えると好適である。シールド部によって、貫通孔を透過する放射線を遮ることができ、放射線の漏れを軽減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、試薬を補充する際の放射線の漏れを防止し、短時間で繰り返し合成を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明によるRI化合物合成装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1、図2及び図4は、本発明の実施形態に係るFDG合成装置が取り付けられたホットセルの斜視図であり、図3はホットセル扉を中心に示す断面図である。また、図5は、FDG合成装置の配管系統図である。なお、図面の説明において、同一または相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1、図2、図4及び図5に示されるように、FDG合成装置1は、例えば、病院等のPET検査等に使用される放射性薬剤としての18F−FDG(フルオロデオキシグルコース)を合成反応により生成する装置である。
【0015】
このFDG合成装置1(図5参照)は、放射性同位元素(RI)や放射性同位元素標識化合物(RI化合物)が通る部品及びこれらの部品の近傍に配置すべき部品、すなわち、反応器3を主体とした装置本体部5と、反応器3に導入する各種の試薬を収容する各試薬容器7A,7B,7C,7Dと、各試薬容器7A,7B,7C,7Dを保持する試薬ホルダ部9と、を備えている。
【0016】
装置本体部5(図1参照)は、放射線遮蔽物により密閉可能な構造とされたホットセル11内に収容される。ホットセル11は、矩形状の箱型を成すホットセル本体13と、ホットセル本体13の側面に形成された矩形の開口Aを開閉するホットセル扉15とを備える。ホットセル扉15は、ヒンジ部16を介してホットセル本体13に揺動自在に取り付けられている。ホットセル本体13及びホットセル扉15は、例えば鉛、鉄、タングステン、アルミニウム等の放射線遮蔽物を用いて放射線を遮蔽可能な適切な厚さとされている。また、ホットセル本体13とホットセル扉15との間の隙間を塞ぐように例えばパッキン(不図示)等の密封部材が装着され、ホットセル本体13の周面には、密閉状態を維持するようにして、ホットセル11内の部品とホットセル11外とを接続する配管が通されている。
【0017】
ホットセル扉15(図2参照)の裏面(内面)15aには、矩形の台座部17が張り出しており、台座部17上には、装置本体部5が取り付けられている。一方、ホットセル扉15(図1参照)の表面(外面)15b側には、試薬ホルダ部9が設けられており、試薬ホルダ部9には、無機物系の試薬が充填される第1の試薬容器7A及び第2の試薬容器7Bと、有機物系の試薬が充填される第3の試薬容器7C及び第4の試薬容器7Dとが保持されている。
【0018】
無機物系の試薬が充填される第1の試薬容器7A及び第2の試薬容器7Bのうち、第1の試薬容器7Aには、洗浄試薬である水が充填され、第2の試薬容器7Bには酸加水分解を行う塩酸(アルカリ加水分解の場合には例えば水酸化ナトリウム)が充填されている。また、有機物系の試薬が充填される第3の試薬容器7C及び第4の試薬容器7Dのうち、第3の試薬容器7CにはFDG原料であるトリフレート溶液が充填されている。第4の試薬容器7Dにはアセトニトリル溶液が充填されている。さらに、第1の試薬容器7Aには、洗浄試薬を補充するための充填口19(図5参照)が設けられている。同様に、第2の試薬容器7B、第3の試薬容器7C及び第4の試薬容器7Dにもそれぞれ試薬を補充するための充填口19が設けられている。
【0019】
図3に示されるように、第1の試薬容器7Aと反応器3とは、洗浄試薬を移送するための試薬チューブ(試薬移送管)21を介して接続されている。同様に、第2の試薬容器7B(図5参照)、第3の試薬容器7C及び第4の試薬容器と反応器3とは、それぞれ試薬を移送するための試薬チューブ21によって接続されている。
【0020】
ホットセル扉15には、試薬ホルダ部9の上方に、四本の各試薬チューブ21がそれぞれ挿通する貫通孔Hが形成されている。貫通孔Hは、ホットセル扉15の内側と外側とを連通すると共に、ホットセル扉15の内部を蛇行しながら貫通しており、四本の試薬チューブ21はそれぞれ貫通孔Hに沿って屈曲している。貫通孔Hが蛇行し、その貫通孔Hに沿って試薬チューブ21を設けることで、試薬チューブ21がホットセル扉15の内部で直線的に貫通している場合に比べて、試薬チューブ21を介して放射線が漏れ出る可能性が低くなる。
【0021】
ホットセル扉15には、貫通孔Hの外側の開口Haを覆うようにして外側シールド部(シールド部)23が設けられている。外側シールド部23は、外側の開口Haよりも僅かに上の位置から張り出した矩形の外側カバー部23aと、外側カバー部23aの縁に沿って試薬ホルダ部9側、すなわち下側に設けられた外側周壁部23bとを有する。外側周壁部23bの下端23cは、外側の開口Haよりも下方の位置になるように設けられている。四本の試薬チューブ21は、外側シールド部23内で折れ曲がり、下方に配置された試薬容器7A,7B,7C,7Dにそれぞれ接続されている。外側周壁部23bが外側の開口Haに被さるように設けられているため、貫通孔Hを透過した放射線の少なくとも一部を遮ることができ、放射線の漏れを軽減できる。
【0022】
また、ホットセル扉15には、貫通孔Hの内側の開口Hbを覆うように内側シールド部25が設けられている。内側シールド部25は、内側の開口Hbよりも僅かに上の位置から張り出した矩形の内側カバー部25aと、内側カバー部25bの縁に沿って反応器3側、すなわち下側に設けられた内側周壁部25bとを有する。内側周壁部25bの下端25cは、外側の開口Haよりも下方の位置になるように設けられている。四本の試薬チューブ21は、内側シールド部25内で折れ曲がり、下方に配置された反応器3にそれぞれ接続されている。
【0023】
ホットセル扉15には、外側シールド部23及び内側シールド部25の上方において複数の通気孔Dが形成されている。ホットセル扉15の内側には、通気孔Dを囲むようにしてダクトボックス27が設けられている。ダクトボックス27は、放射線遮蔽物により密閉された構造になっている。ダクトボックス27には、撓み易く柔軟性のあるダクト管29が接続されている。
【0024】
図2及び図3に示されるように、ダクト管29はダクトボックス27内に連通し、ホットセル本体13の天井に設けられた第1のブロワ31に接続されている。第1のブロワ31は、空気清浄機能を有する例えばHEPAフィルタ等を備える。第1のブロワ31には第1給気管33が接続されている。第1のブロワ31によって第1給気管33から導入された空気は、HEPAフィルタにより異物が除去されてダクト管29に給気され、ダクトボックス27及び通気孔Dを通ってホットセル11外に流出する。
【0025】
ホットセル扉15の外側には、通気孔Dから流出する空気を試薬ホルダ部9側、すなわち下方に向けて案内するガイド部35が設けられている。ガイド部35は、通気孔Dを囲むように設けられた矩形のボックス状であり、下側が開放されている。さらに、ガイド部35の左右の側壁部35aは、試薬ホルダ部9を挟むようにして平行に延在する。ガイド部35に案内された空気は、試薬ホルダ部9に保持されている試薬容器7A〜7Dの周囲を流動し、試薬容器7A〜7Dの周囲を換気する。
【0026】
ホットセル本体13には、空気清浄機能を有する例えばHEPAフィルタ等を備えた第2のブロワ37が設けられている。第2のブロワ37には第2給気管39が接続されている。第2のブロワ37によって第2給気管39から導入された空気は、HEPAフィルタにより異物が除去されてホットセル11内に給気され、ホットセル11内のガスは、ホットセル11に接続された排気管41を通り系外に排気される。第2のブロワ37、第2給気管39及び排気管41により、ホットセル11の給排気手段が構成されている。この給排気手段は、その排気風量が給気量+αとされ、一時的にホットセル扉15を開閉してもホットセル11内部のRI化合物が外部に漏れ出さない機構とされている。このため、排気管41から第2給気管39へのリターンは発生しない。
【0027】
図4に示されるように、ホットセル扉15には、開閉自在に取り付けられた補助扉部43が設けられている。補助扉部43の裏面(内面)側には、反応器3によって合成されたFDGから不純物を取り除く精製カラム(カラム部)45が固定されている。精製カラム45は、撓みやすく柔軟性の高いフレキシブル管47を介して、反応器3及びFDGを回収する製品回収容器49(図5参照)に接続されている。ホットセル扉15を閉じたまま、補助扉部43を開くことで精製カラム45を取り替えることができるため、精製カラム45を交換する際の放射線の漏れを軽減できる。
【0028】
図5に示されるように、装置本体部5は、ホットセル扉15を閉めることによってホットセル11内に収容される。装置本体部5は、具体的には、FDGを合成する反応器3、系外から導入された18(RI)を反応器3へ供給する18供給配管L18供給配管Lに設置された三方弁V、三方弁Vに接続されると共に、相間移動触媒K222(クリプトフィックス222)を溶解させたKCO水・アセトニトリル溶液を18供給配管Lに供給する供給管L11、無機物系の各種試薬を反応器3へ供給する共通配管L、共通配管Lに設置された電磁弁V、有機物系の各種試薬を反応器3へ供給する共通配管L、共通配管Lに設置された電磁弁V、反応器3で合成されたFDGを精製する精製カラム45、この精製カラム45で精製されたFDGを回収する製品回収容器49、反応器3、精製カラム45及び製品回収容器49を連絡するフレキシブル管47、フレキシブル管47に設置された電磁弁V、反応器3内の蒸気を系外へ排出する排気配管L、この排気配管Lに設置された電磁弁V、反応器3の近傍に配置すべき部品である加温器51を有する。
【0029】
さらに、装置本体部5は、第1の試薬容器7A及び第2の試薬容器7Bに接続された各試薬チューブ21に接続されると共に、共通配管Lに接続されて管路の切り替えを行うロータリバルブV、第3の試薬容器7C及び第4の試薬容器7Dに接続された各試薬チューブ21に接続されると共に、共通配管Lに接続されて管路の切り替えを行うロータリバルブV、系外から導入されたHeをロータリバルブV,Vへ供給するHe供給配管L12、電気回路(不図示)及びこれらの部品等を固定する取付具(不図示)等の補助部品を有する。なお、ロータリバルブV,Vは、各試薬チューブ21,L12に接続される各入口、共通配管L,Lに接続される一出口を備え、ローター(不図示)が回動することでこれらの入口を選択的に切り換える切換弁である。
【0030】
次に、このように構成されたFDG合成装置1の作用について図1及び図2を参照しながら説明する。なお、RI化合物であるFDGを合成する際には、ホットセル扉15を閉めて装置本体部5をホットセル11内に収容した状態になっている。
【0031】
系外から供給された18は、相間移動触媒K222を溶解させたKCO水・アセトニトリル溶液と共に三方弁V18供給配管Lを介して反応器3へ導入される。さらに、加温器51により反応器3が加温されると共に、系外から供給されたHeがHe供給配管L12、ロータリバルブV,V、共通配管L,L、電磁弁V,Vを通り反応器3へ導入され、反応器3内のアセトニトリル及び水が蒸発し、この蒸発物は排気配管Lを通り系外に排出される。この加温処理により18/K222錯体が形成され、18Fが固定化及び乾燥される。
【0032】
次いで、第4の試薬容器7Dのアセトニトリル溶液が試薬チューブ21、ロータリバルブV、共通配管L、電磁弁Vを通り反応器3へ供給され、再び、加温器51により反応器3が加温されてこの反応器3内の水分が蒸発する。
【0033】
次いで、第3の試薬容器7CのFDG原料であるトリフレート溶液が試薬チューブ21、ロータリバルブV、共通配管L、電磁弁Vを通り反応器3へ供給され、弁V〜V,V及びVが閉じられて反応器3内は密閉状態とされ、さらに、加温器51により反応器3が加温されてこの反応器3内の18Fとトリフレートとが合成反応する。
【0034】
次いで、HeがHe供給配管L12を通って反応器3へ導入され、再び、加温器51により反応器3が加温されてこの反応器3内のアセトニトリルが蒸発する。
【0035】
この状態で、第2の試薬容器7Bの塩酸が試薬チューブ21、ロータリバルブV、共通配管L、電磁弁Vを通り反応器3へ導入され、弁V〜V,V及びVが閉じられて反応器3内は密閉状態とされ、さらに、加温器51により反応器3が加温されてこの反応器3内のFDG前駆体が加水分解される。
【0036】
次いで、HeがHe供給配管L12を通って反応器3へ導入され、反応器3に生成されている粗精製のFDGが製品回収配管Lを通ってフィルタを備える精製カラム45へ移送され、この精製カラム45で精製されたFDGが製品として製品回収容器49に回収される。
【0037】
次いで、第1の試薬容器7Aの水が試薬チューブ21、ロータリバルブV、共通配管L、電磁弁Vを通り反応器3へ導入され、反応器3に付着した残留するFDGを洗浄し洗い落とす。次いで、Heが反応器3に導入され、この反応器3に残留するFDGは水と共に、製品回収配管Lを通り製品回収容器49に回収される。これにより、1サイクルの工程が終了し、放射性薬剤としての18F−FDGが得られる。
【0038】
このようなFDG合成装置1では、1回の合成で得られる18F−FDGの量には上限があり、更なる量を得るためには限られた時間内に繰り返し合成反応を行う必要がある。このため、引き続き2回目以降の工程に進み、次の工程の前に作業者が試薬ホルダ部9に保持されている各試薬容器7A〜7Dの充填口19から各試薬を充填する。
【0039】
この時、FDG合成装置1は、ホットセル扉15を開閉する必要が無いため、ホットセル11は放射線遮蔽物により密閉された状態が維持されている。その結果、ホットセル11外への放射線漏れが防止され、短時間で繰り返し合成を行うことができる。
【0040】
また、FDGを合成するたびに、試薬チューブ21などを洗浄する必要があるが、ホットセル扉15に装置本体部5と試薬容器7A〜7Cを保持する試薬ホルダ部9とが取り付けられているために、装置構造や配管系統が簡素化できる。特に、反応器3と試薬容器7A〜7Cとを接続する試薬チューブ21を短くできため、水などの洗浄用試薬を反応器3に導入するまでの時間は短縮される。その結果として、FDG合成装置1は、繰り返しFDGの合成を行う際の時間短縮につながる。
【0041】
また、ホットセル扉15を閉じると、装置本体部5をホットセル本体13の奥の所定位置にセットでき、ホットセル扉15を開くと、ホットセル本体13の奥から装置本体部5を引き出すことができる。従って、FDGを合成するための準備作業や準備が終了した後での装置本体部5の設置などが簡単になり、さらに、装置本体部5をホットセル本体13の奥から引き出すためのスライド機構などが不要になって構造が簡素化できる。
【0042】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0043】
上記実施形態では、RIを他の物質と化学反応させRI化合物を合成するRI化合物合成装置を、FDGを合成するFDG合成装置としているが、その他のRI化合物を合成するRI化合物合成装置としても良い。
【0044】
また、ホットセル扉15を観音開きとなるような構造にし、左右どちらか一方の扉の外側に試薬ホルダ部を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係るFDG合成装置が取り付けられているホットセルを示し、ホットセル扉が閉じている状態を示す斜視図である。
【図2】ホットセル扉が開いている状態を示すホットセルの斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】ガイド部内を示すホットセルの斜視図である。
【図5】本実施形態に係るFDG合成装置の配管系統図である。
【符号の説明】
【0046】
1…FDG合成装置(RI化合物合成装置)、3…反応器、5…装置本体部、7A,7B,7C,7C…試薬容器、9…試薬ホルダ部、11…ホットセル、15…ホットセル扉、21…試薬チューブ(試薬移送管)、23…外側シールド部(シールド部)、43…補助扉部、45…精製カラム(カラム部)、H…貫通孔、Ha…外側の開口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性同位元素及び複数の試薬をホットセル内に収容された反応器に導入して放射性同位元素標識化合物を得るRI化合物合成装置において、
前記反応器を有すると共に、前記ホットセルを開閉するホットセル扉の内面側に取り付けられた装置本体部と、
前記試薬を収容する試薬容器を保持すると共に、前記ホットセル扉の外面側に取り付けられた試薬ホルダ部と、
前記ホットセル扉を貫通すると共に、前記試薬容器と前記反応器とを接続する試薬移送管と、
を備えたことを特徴とするRI化合物合成装置。
【請求項2】
前記ホットセル扉には、補助扉部が設けられ、
前記補助扉部の内面側に取り付けられると共に、前記反応器によって得られた前記RI化合物に含まれる不純物を除去するカラム部を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のRI化合物合成装置。
【請求項3】
前記試薬移送管は、前記ホットセル扉の内部を蛇行貫通することを特徴とする請求項1または2記載のRI化合物合成装置。
【請求項4】
前記ホットセル扉には、前記試薬移送管が挿通した貫通孔が形成されており、
前記貫通孔の外側の開口を覆うと共に、前記貫通孔を透過した放射線を遮るシールド部を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のRI化合物合成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−47454(P2009−47454A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211419(P2007−211419)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】