説明

S1P受容体調節因子の使用

脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現に依存する疾患あるいは症状の処置または予防におけるS1P受容体調節因子の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現に依存する疾患あるいは症状の処置または予防におけるS1P受容体調節因子の使用に関連する。
【背景技術】
【0002】
神経栄養因子の1つである脳由来神経栄養因子(以下、頻繁にBDNFと記載する)は、生体中の標的細胞、つまりニューロンおよびグリア細胞やシュワン細胞に由来するタンパク質で、ニューロンの生存および分化を維持するための活性を示す。
【発明の概要】
【0003】
驚くべきことに本発明において、S1P受容体調節因子はBDNFの産生を誘導しうることが示された。
【0004】
BDNFは、神経変性疾患(例:ALS)または糖尿病性末梢神経障害の処置のための治療薬として知られてきた。BDNFはまた、糖尿病の処置のための治療薬としても有益であると説明されてきた。
【0005】
それ故、BDNFによって影響を受けたこのような症状、すなわちBDNFの発現増加によって処置、遅延または予防が可能な症状を処置するために、BDNFの産生を誘導(またはBDNFの発現を刺激)することで、S1P受容体調節因子を使用することができる。
【0006】
S1P受容体調節因子は、典型的には、2置換2-アミノ-プロパン-1,3-ジオールまたは2-アミノ-プロパノール誘導体、例えば式Yの群を含む化合物などのスフィンゴシン類似体である。
【0007】
スフィンゴシン-1リン酸(以下「S1P」)は天然の血清脂質である。現時点では、8つの既知のS1P受容体、つまりS1P1〜S1P8が存在する。S1P受容体調節因子は、典型的には、2置換2-アミノ-プロパン-1,3-ジオールまたは2-アミノ-プロパノール誘導体、例えば式Y
【化1】

〔式中、Zは水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、フェニル、OHにより置換されたフェニル、ハロゲン、C3-8シクロアルキル、フェニルおよびOHにより置換されたフェニルから構成される群から選定される、1〜3個の置換基により置換されたC1-6アルキルまたはCH2-R4zであり、ここでR4ZはOH、アシルオキシまたは式(a)
【化2】

{ここで、Z1は直接結合またはO、好ましくはOであり、
R5zおよびR6zは各々、独立的に水素、または所望により1、2もしくは3個のハロゲン原子により置換されていてもよいC1-4アルキルである}
の残基であり、
R1ZはOH、アシルオキシまたは式(a)の残基であり、R2zおよびR3zは各々、独立的に水素、C1-4アルキルまたはアシルである〕
の基を含む化合物などのスフィンゴシン類似体である。
【0008】
式Yの基は、親水性または疎水性であり得る分子であって、少なくともZおよびR1zの1つが式(a)の残基であるかまたはそれを含む得られた分子が1種以上のスフィンゴシン-1-リン酸受容体において拮抗剤として信号伝達する程度に、1個以上の脂肪族、脂環式、芳香族および/または複素環残基を含む分子に、末端基として結合している官能基である。
【0009】
S1P受容体調節因子は、1つまたはそれ以上のスフィンゴシン-1リン酸受容体、例えばS1P1〜S1P8において拮抗薬として信号伝達する化合物である。S1P受容体に結合する拮抗薬は、例えば細胞内ヘテロ三量体G-タンパク質のGα-GTPおよびGβγ-GTPへの解離、および/または拮抗薬が占める受容体のリン酸化増加および下流シグナル伝達経路/キナーゼの活性化を結果的に生む場合がある。
【0010】
S1P受容体調節因子の個々のヒトS1P受容体に対する結合親和性は、下記のアッセイによって決定され得る:
化合物のS1P受容体調節因子活性は、ヒトS1P受容体、S1P1、S1P2、S1P3、S1P4およびS1P5で試験する。機能的受容体の活性化は、適切なヒトS1P受容体を安定的に発現する形質転換したCHO細胞またはRH7777細胞から調製される膜タンパク質に結合する化合物により誘導されたGTP [γ-35S]を定量することで評価される。使用されるアッセイ技術は、SPA(シンチレーション近接アッセイ)である。手短に言えば、DMSOに溶解した化合物を連続希釈し、50 mM Hepes、100 mM NaCl、10 mM MgCl2、10 μM GDP、0.1%無脂肪BSAおよび0.2 nM GTP [γ-35S](1200 Ci/mmol)の存在下で、膜タンパク質(10〜20μg/ウェル)を発現するSPAビーズ(Amersham-Pharmacia)固定化S1P受容体に添加する。96ウェルマイクロタイタープレートで、室温で120分培養した後、未結合のGTP [γ-35S]は遠心分離手順により分離される。膜に結合されたGTP [γ-35S]により誘発されたSPAビーズの発光は、TOPcountプレート読み取り機(Packard)により定量化される。EC50は、標準の曲線適合ソフトウェアを用いて計算される。このアッセイにおいて、S1P受容体調節因子は、好ましくはS1P受容体に対して<50 nMの結合親和性を有する。
好適なS1P受容体調節因子は、例えばS1Pの結合特性に加えて加速的なリンパ球ホーミング特性も有する化合物や、全身的な免疫抑制を惹起することなく、二次リンパ組織への循環からのリンパ球の好ましくは可逆的な再分配によるリンパ球減少症を引き出す化合物である。ナイーブ細胞は隔離され、血液からのCD4およびCD8のT細胞およびB細胞を刺激してリンパノード(LN)およびパイエル板(PP)に移動される。
【0011】
リンパ球ホーミング特性は、下記の血液リンパ球枯渇アッセイにおいて測定され得る:
S1P受容体調節因子または賦形剤が、ラットに強制経口投与される。血液学的監視のための尾部分の血液は-1日目に採取され、ベースラインならびに塗布から2、6、24、48および72時間後の個々の値が得られる。このアッセイにおいて、S1P受容体拮抗薬または修飾因子は、例えば<20 mg/kgの用量で投与される場合、末梢血リンパ球を例えば50%枯渇させる。
【0012】
適切なS1P受容体調節因子の例は、例えば次のものである:
式I
【化3】

〔式中、XはO、S、SOまたはSO2であり、
R1はハロゲン、トリハロメチル、OH、C1-7アルキル、C1-4アルコキシ、トリフルオロメトキシ、フェノキシ、シクロヘキシルメチルオキシ、ピリジルメトキシ、シンナミルオキシ、ナフチルメトキシ、フェノキシメチル、CH2-OH、CH2-CH2-OH、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル、C1-4アルキルスルホニル、ベンジルチオ、アセチル、ニトロまたはシアノ、またはフェニル、フェニルC1-4アルキルまたはフェニル-C1-4アルコキシであり、該フェニル基は各々、所望によりハロゲン、CF3、C1-4アルキルまたはC1-4アルコキシで置換されていてもよく、
R2は水素、ハロゲン、トリハロメチル、C1-4アルコキシ、C1-7アルキル、フェネチルまたはベンジルオキシであり、
R3は水素、ハロゲン、CF3、OH、C1-7アルキル、C1-4アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルまたはC1-4アルコキシメチルであり、
R4 およびR5は各々、独立的に水素または式(a)
【化4】

{式中、R8およびR9は各々、独立的に水素または所望によりハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキルである}
の残基であり、
nは1〜4の整数である〕
アミノアルコール化合物またはその医薬品として容認できる塩、
【0013】
または式II
【化5】

〔式中、
R1aはハロゲン、トリハロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルキルチオ、C1-4アルキルスルフィニル、C1-4アルキル-スルホニル、アラルキル、所望により置換されたフェノキシまたはアラルキルオキシであり、
R2aは水素、ハロゲン、トリハロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、アラルキルまたはアラルキルオキシであり、
R3aは水素、ハロゲン、CF3、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、C1-4アルキルチオまたはベンジルオキシであり、
R4aは水素、C1-4アルキル、フェニル、所望により置換されたベンジルまたはベンゾイル、または低級脂肪族C1-5アシルであり、
R5aは水素、モノハロメチル、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ-メチル、C1-4アルキル-チオメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、フェニル、アラルキル、C2-4アルケニルまたは-アルキニルであり、
R6aは水素またはC1-4アルキルであり、
R7aは水素、C1-4アルキルまたは上記で定義されるとおりの式(a)の残基であり、
XaはO、S、SOまたはSO2であり、
naは1〜4の整数である〕
の化合物またはその医薬品として容認できる塩。
【0014】
式(I)および(II)の化合物に関して、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含む。「トリハロメチル基」という用語は、トリフルオロメチルおよびトリクロロメチルを含む。「C1-7アルキル」は、直鎖または分岐アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはヘプチルを含む。「置換または非置換フェノキシ基」という語句は、そのベンゼン環の任意の位置において、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などのハロゲン原子、トリフルオロメチル、C1-4アルキルまたはC1-4アルコキシを有するものを含む。「アラルキル基」または「アラルキルオキシ基」などに見られる「アラルキル基」という用語は、ベンジル、ジフェニルメチル、フェネチルおよびフェニルプロピルを含む。「C1-4アルコキシ」、「C1-4アルキルチオ」、「C1-4アルキルスルフィニル」または「C1-4アルキルスルホニル」に存在する場合のアルキル部分は、直鎖または分岐C1-4アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルまたはブチルを含む。「置換または非置換アラルキル基」という語句は、そのベンゼン環の任意の位置において、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などのハロゲン原子、トリフルオロメチル、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル、または1〜4個の炭素原子を有する低級アルコキシを有するものを含む。
【0015】
式Iの別の化合物は式Ia
【化6】

〔式中、
R2、R3、R4、R5およびnは上記で定義されるとおりであり、また、
R6は水素、ハロゲン、C1-7アルキル、C1-4アルコキシまたはトリフルオロメチルである〕
の化合物である。
【0016】
さらに好適な式(Ia)の化合物は、R3が塩素(例:2-アミノ-2-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]-2-エチル-プロパン-1,3-ジオール、2-アミノ-2-[4-(3-ベンジルオキシフェノキシ)-2-クロロフェニル]プロピル-1,3-プロパン-ジオールまたは2-アミノ-2-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]プロピル-1,3-プロパン-ジオール)または薬理学的な塩またはその水和物、およびその対応するリン酸誘導体であるものである。さらに例示されるものとしては、リン酸モノ-2-アミノ-2-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]エチル-プロピル]エステルがある。リン酸モノ-2-アミノ-2-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]エチル-プロピル]エステルは、WO 2005/021503に記載されている手順により鏡像異性的に純粋な形で調製することができる。
【0017】
式IIの別の化合物は式(IIa)、
【化7】

〔式中、
YはOまたはSであり、また、
R2a、R3a、R5a、R7aおよびnaは上記で定義されるとおりである〕
の化合物である。
【0018】
好適な式(IIa)の化合物は、R3が塩素(例:2-アミノ-4-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]-2-メチルブタン-1-オール)、対応するリン酸モノ-2-アミノ-4-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]-2-メチルブチル]エステル、2-アミノ-4-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]-2-エチルブタン-1-オール、および対応するリン酸モノ-2-アミノ-4-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]-2-エチルブチル]エステルであるものである。
【0019】
式IおよびIIの化合物は既知であり、例えばそれぞれWO 03/029205、WO 03/029184およびWO04/026817に開示されており、リン酸化誘導体は例えばWO 04/074297に開示されており、その内容の全体を参照により本明細書に組み込む。式IおよびIIの化合物は、上記で引用した参考文献で開示されているとおりに調製され得る。
【0020】
式(I)の化合物のリン酸化誘導体(例:リン酸モノ-2-アミノ-2-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]エチル-プロピル]エステル)は、WO 2005/021503(例えば11〜12ページを参照)に記載されているリン酸化化合物の合成手順を用いて調製することができる。構造式(I)の光学活性な化合物およびそのリン酸化誘導体、特に式(Ia)のものは、例えば『Hinterding et al., Synthesis, Vol. 11, pp.1667-1670(2003)』に記載される手順を用いて純度の高い形で調製することができる。例として、構造式(Ia)の光学活性な化合物、リン酸モノ-2-アミノ-2-[4-(3-ベンジルオキシフェニルチオ)-2-クロロフェニル]エチル-プロピル]エステルは、前記の『Hinterding et al. (2003)』の手順を用いて、下記の図式に記載されているとおり調製することができる。
【0021】
また、EP627406A1に開示されている化合物、例えば式III
【化8】

〔式中、R1は直鎖または分岐鎖(C12-22)であり、
- これは鎖中に二重結合、三重結合、O、S、NR6から選定される結合またはヘテロ原子を有してもよく、ここでR6は水素、C1-4アルキル、アリル-C1-4アルキル、アシルまたは(C1-4アルコキシ)カルボニル、およびカルボニルであり、および/または
これは置換基としてC1-4アルコキシ、C2-4アルケニルオキシ、C2-4アルキニルオキシ、アリルC1-4アルキル-オキシ、アシル、C1-4アルキルアミノ、C1-4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1-4アルコキシ)カルボニル、(C1-4アルコキシ)-カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1-4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシイミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有してもよく、または
R1は、
- アルキルが直線または分岐(C6-20)炭素鎖であるフェニルアルキルであり、または
- フェニルアルキルであり、ここでアルキルは直線または分岐(C1-30)炭素鎖であり、上記フェニルアルキルは下記により置換される
- ハロゲンにより随意に置換される直線または分岐(C6-20)炭素鎖、
- ハロゲンにより随意に置換される直線または分岐(C6-20)アルコキシ鎖、
- 直線または分岐(C6-20)アルケニルオキシ、
- フェニル-C1-14アルコキシ、ハロフェニル-C1-4アルコキシ、フェニル-C1-14アルコキシ-C1-14アルキル、フェノキシ-C1-4アルコキシまたはフェノキシ-C1-4アルキル、
- C6-20アルキルにより置換されたシクロアルキルアルキル、
- C6-20アルキルにより置換されたヘテロアリルアルキル、
- 複素環C6-20アルキルまたは
- C2-20アルキルにより置換された複素環アルキル、
またここで、
アルキル部分は
- 炭素鎖中に、二重結合、三重結合、O、S、スルフィニル、スルホニル、またはNR6から選定される結合またはヘテロ原子を有し、ここでR6は上記で定義されるとおりであり、また、
- 置換基としてのC1-4アルコキシ、C2-4アルケニルオキシ、C2-4アルキニルオキシ、アリルC1-4アルキル-オキシ、アシル、C1-4アルキルアミノ、C1-4アルキルチオ、アシルアミノ、(C1-4アルコキシ)カルボニル、(C1-4アルコキシ)-カルボニルアミノ、アシルオキシ、(C1-4アルキル)カルバモイル、ニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシを有していてもよく、
R2、R3、R4およびR5の各々は、独立的に水素、C1-4アルキルまたはアシルである〕
の化合物またはその医薬品として容認できる塩あるいはその水和物、
【0022】
- EP 1002792A1で開示されている化合物、例えば式IV
【化9】

〔式中、mは1〜9であり、R’2、R’3、R’4およびR’5の各々は、独立的に水素、C1-6アルキルまたはアシルである〕
の化合物またはその医薬品として容認できる塩あるいはその水和物、
- EP0778263 A1で開示されている化合物、例えば式V
【化10】

〔式中、Wは水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニル、非置換またはOHで置換されたフェニル、R’’4O(CH2nであるか、またはハロゲン、C3-8シクロアルキル、フェニルおよびOHにより置換されたフェニルから構成される群より選定される1〜3の置換基により置換されたC1-6アルキルであり、
Xは、水素またはp個の炭素原子を有する非置換または置換された直鎖アルキル、または(p-1)個の炭素原子を有する非置換または置換された直鎖アルコキシ、例えばC1-6アルキル、OH、C1-6アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、C1-6アルキルアミノ、アシルアミノ、オキソ、ハロC1-6アルキル、ハロゲンから構成される群より選定される1〜3の置換基による置換、非置換フェニルおよびC1-6アルキル、OH、C1-6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1-6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1-6アルキルおよびハロゲンから構成される群より選定される1〜3の置換基により置換されるフェニルであり、Yは水素、C1-6アルキル、OH、C1-6アルコキシ、アシル、アシルオキシ、アミノ、C1-6アルキルアミノ、アシルアミノ、ハロC1-6アルキルまたはハロゲンであり、Z2は一重結合またはq個の炭素原子を有する直鎖アルキレンであり、
pおよびqは各々、独立的に1〜20の整数であり、6<p+q<23という条件で、m’は1、2または3、nは2または3であり、
R’’1、R’’2、R’’3 およびR’’4の各々は、独立的に水素、C1-4アルキルまたはアシルである〕
の化合物またはその医薬品として容認できる塩あるいはその水和物、
【0023】
- WO 02/18395で開示されている化合物、例えば式VIaまたはVIb
【化11】

〔式中、XaはO、S、NR1sまたは -(CH2na-基であり、その基は非置換または1〜4個のハロゲンにより置換され、naは1または2、R1sは水素または(C1-4)アルキルで、このアルキルは非置換またはハロゲンにより置換され、R1aは水素、OH、(C1-4)アルキルまたはO(C1-4)アルキルで、ここでアルキルは非置換または1〜3個のハロゲンにより置換され、R1bは水素、OHまたは(C1-4)アルキル、ここでアルキルは非置換またはハロゲンにより置換され、各々のR2aは独立的に水素または(C1-4)アルキルから選定され、このアルキルは非置換またはハロゲンにより置換され、R3aは水素、OH、ハロゲンまたはO(C1-4)アルキルであり、ここでアルキルは非置換またはハロゲンにより置換され、およびR3bは水素、OH、ハロゲン、(C1-4)アルキルであり、ここでアルキルは非置換またはヒドロキシ、またはO(C1-4)アルキルにより置換され、ここでアルキルは非置換またはハロゲンにより置換され、Yaは-CH2-、-C(O)-、-CH(OH)-、-C(=NOH)-、OまたはS、およびR4aは(C4-14)アルキルまたは(C4-14)アルケニルである〕
の化合物またはその医薬品として容認できる塩あるいはその水和物、
【0024】
- WO 02/06268AIで開示されている化合物、例えば式VII
【化12】

〔式中、R1dおよびR2dの各々は、独立的に水素またはアミノ保護基であり、
R3dは水素、ヒドロキシ保護基または式、
【化13】

{式中、R4dはC1-4アルキルである}
の基であり、
ndは1〜6の整数であり、
Xdはエチレン、ビニレン、エチニレン、式- D-CH2-(ここでDはカルボニル、- CH(OH)-、O、SまたはN)、アリルまたは本書以降で定義される基から選定される最高3つの置換基により置換されたアリルを有する基であり、
Ydは一重結合、C1-10アルキレン、aおよびbの群から選定される最高3つの置換基により置換されるC1-10アルキレン、炭素鎖の中間または端部にOまたはSを有するC1-10アルキレン、aおよびbの群から選定される最高3つの置換基により置換される炭素鎖の中間または端部にOまたはSを有するC1-10アルキレンであり、
R5dは水素、C3-6シクロアルキル、アリル、複素環基、aおよびbの群から選定される最高3つの置換基により置換されるC3-6シクロアルキル、aおよびbの群から選定される最高3つの置換基により置換されるアリル、またはaおよびbの群から選定される最高3つの置換基により置換される複素環基であり、
R6dおよびR7dの各々は、独立的に水素または群aから選定される置換基であり、
R8dおよびR9dは各々、独立的に水素または所望によりハロゲンによって置換されていてもよいC1-4アルキルであり、
<群a>はハロゲン、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル、ヒドロキシ、低級脂肪族アシル、アミノ、モノ-低級アルキルアミノ、ジ-C1-4アルキルアミノ、アシルアミノ、シアノまたはニトロであり、また、
<群b>はC3-6シクロアルキル、アリルまたは複素環基であり、各々は群aから選定される最高3つの置換基により随意に置換されている。
ただし、R5dが水素であるとき、Ydは一重結合または直鎖C1-10アルキレンである〕
の化合物、またはその薬理学的に容認できる塩、エステルまたは水和物
【0025】
- JP-14316985(JP2002316985)で開示されている化合物、例えば式VII
【化14】

〔式中、R1e、R2e、R3e、R4e、R5e、R6e、R7e、ne、XeおよびYeはJP-14316985で開示されているとおりのものである〕
の化合物、またはその薬理学的に容認できる塩、エステルまたは水和物、
【0026】
- WO03/062252A1で開示されている化合物、例えば式IX
【化15】

〔式中、
Arはフェニルまたはナフチルであり、mgおよびngの各々は独立的には0または1であり、AはCOOH、PO3H2、PO2H、SO3H、PO(C1-3アルキル)OHおよび1H-テトラゾール-5-イルから選定され、R1gおよびR2gの各々は独立的に水素、ハロゲン、OH、COOHまたは所望によりハロゲンによって置換されていてもよいC1-4アルキルであり、R3gは水素または所望によりハロゲンまたはOHにより置換されていてもよいC1-4アルキルであり、各々のR4gは独立的にハロゲン、または所望によりハロゲンで置換されていてもよいC1-4アルキルまたはC1-3アルコキシであり、RgおよびMの各々はWO 03/062252A1においてそれぞれBおよびCで示される意味の1つを有し〕
の化合物またはその薬学的に容認される塩、溶媒和物または水和物、
【0027】
- WO 03/062248A2で開示されている化合物、例えば式X
【化16】

〔式中、Arはフェニルまたはナフチルであり、nは2、3または4であり、AはCOOH、1H-テトラゾール-5-イル、PO3H2、PO2H2、-SO3HまたはPO(R5h)OHであり、ここでR5hはC1-4アルキル、ヒドロキシC1-4アルキル、フェニル、-CO-C1-3アルコキシおよび-CH(OH)-フェニルから選定され、ここで上記フェニルまたはフェニル部分は随意に置換され、R1hおよびR2hの各々は独立的に水素、ハロゲン、OH、COOH、または所望によりハロゲノ置換されたC1-6アルキルまたはフェニルであり、R3hは水素または所望によりハロゲンおよび/またはOHにより置換されていてもよいC1-4アルキルであり、各々のR4hは独立的にハロゲン、OH、COOH、C1-4アルキル、S(O)0,1 または2C1-3アルキル、C1-3アルコキシ、C3-6ヘテロアルコキシ、アリルまたはアラルコキシであり、ここでアルキルの部分は所望により1〜3個のハロゲンにより置換されていてもよく、RhおよびMの各々はWO03/062248A2においてそれぞれBおよびCで示される意味の1つを有する〕
の化合物または薬理学的に容認できる塩、溶媒和物またはその水和物、
【0028】
- WO 04/103306A、WO 05/000833、WO 05/103309またはWO 05/113330で開示されている化合物、例えば式XIaまたはXIb
【化17】

〔式中、
AkはCOOR5k、OPO(OR5k2、PO(OR5k2、SO2OR5k、POR5kOR5kまたは1H-テトラゾール-5-イルであり、R5kは水素またはC1-6アルキルであり、
Wkは結合、C1-3アルキレンまたはC2-3アルケニレンであり、
Ykはハロゲン、OH、NO2、C1-6アルキル、C1-6アルコキシから選定される1〜3のラジカルにより随意に置換されるC6-10アリルまたはC3-9ヘテロアリル、あるいはハロ置換されたC1-6アルキルおよびハロ置換されたC1-6アルコキシであり、
ZkはWO 04/103306Aで示される複素環基(例:アゼチジン)であり、
R1kはC1-6アルキル、C6-10アリル、C6-10アリルC1-4アルキル、C3-9ヘテロアリル、C3-9ヘテロアリルC1-4アルキル、C3-8シクロアルキル、C3-8シクロアルキルC1-4アルキルにより随意に置換されるC6-10アリルまたはC3-9ヘテロアリルであり、
C3-8ヘテロシクロアルキルまたはC3-8ヘテロシクロアルキルC1-4アルキルで、ここでR1kのアリル、ヘテロアリル、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルはハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシおよびハロ置換された-C1-6アルキルまたは-C1-6アルコキシから選定される1〜5個の基により置換でき、
R2kは水素、C1-6アルキル、ハロ置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニルまたはC2-6アルキニルであり、また、
R3kまたはR4kの各々は、独立的に水素、ハロゲン、OH、C1-6アルキル、C1-6アルコキシまたはハロ置換されたC1-6アルキルまたはC1-6アルコキシである〕
の化合物およびそのN-オキシド誘導体またはそのプロドラッグ、またはその薬理学的に容認できる塩、溶媒和物あるいは水和物である。
【0029】
式III〜XIbの化合物は、遊離型でも塩型でも存在し得る。式III〜VIIIの化合物の医薬品として容認できる塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩および硫酸などの無機酸との塩、酢酸、フマル酸、マレイン酸エステル、安息香酸エステル、クエン酸塩、リンゴ酸塩、メタンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩などの有機酸との塩、または適切な場合には、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびアルミニウムなどの金属との塩、トリエチルアミンなどのアミン類との塩および、リシンなどの二塩基性アミノ酸との塩が含まれる。本発明の組み合わせの化合物および塩には、水和物および溶媒和物の形態も含まれる。
【0030】
上記で示されたアシルは、RyがC1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、フェニルまたはフェニル-C1-4アルキルである残基Ry-CO-でもよい。別途記載されていない限り、アルキル、アルコキシ、アルケニルまたはアルキニルは直鎖直線でも分岐鎖でもよい。
【0031】
アリルは、フェニルまたはナフチル、好ましくはフェニルであり得る。
【0032】
式Iの化合物中でR1としての炭素鎖が置換される場合、ハロゲン、ニトロ、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシにより置換されることが好ましい。炭素鎖が随意に置換されたフェニレンにより中断される場合、炭素鎖は置換されないことが好ましい。フェニレン部分が置換されている場合は、ハロゲン、ニトロ、アミノ、メトキシ、ヒドロキシまたはカルボキシにより置換されることが好ましい。
【0033】
式IIIの好適な化合物は、R1がニトロ、ハロゲン、アミノ、ヒドロキシまたはカルボキシにより随意に置換されるC13-20アルキルであるもの、またより好ましくはR1がハロゲンにより随意に置換されるC6-14-アルキル鎖により置換されたフェニルアルキルであり、アルキル部分がヒドロキシにより随意に置換されるC1-6アルキルであるものである。より好ましくは、R1は直鎖または分岐鎖、好ましくは直鎖のC6-14アルキル鎖によりフェニル上で置換されたフェニル-C1-6アルキルである。C6-14アルキル鎖は、オルト、メタまたはパラでもよく、好ましくはパラである。
【0034】
好ましくは、R2〜R5は水素である。
【0035】
上記式VIIにおいて、「複素環基」はS、OおよびNから選定される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜7員の複素環基を示す。このような複素環基の例は、上記で示されたヘテロアリル基、および部分的または完全に水素化されたヘテロアリル基(例:フリル、チエニル、ピロリル、アゼピニル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、テトラヒドロピラニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ピロリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニルまたはピラゾリジニル)に対応する複素環化合物を含む。好適な複素環基は、5員または6員のヘテロアリル基であり、最も好適な複素環基はモルホリニル基、チオモルホリニル基またはピペリジニル基である。
【0036】
好適な式IIIの化合物は2-アミノ-2-テトラデシル-1,3-プロパンジオールである。式Iの特に好適なS1P受容体拮抗薬はFTY720、すなわち、以下に示されるような、遊離型または医薬品として容認できる塩型の2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオール(例:塩酸塩)(以下、化合物Aと記載)である。
【化18】

【0037】
式IVの好適な化合物は、R’2〜R’5の各々が水素でありmが4であるもの、すなわち、遊離型または医薬品として容認できる塩型の2-アミノ-2-{2-[4-(1-オキソ-5-フェニルペンチル)フェニル]エチル}プロパン-1,3-ジオール(例:塩酸塩)(以下、化合物Bと記載)である。
【0038】
式Vの好適な化合物は、WがCH3であり、R’’1〜R’’3が水素、Z2はエチレン、XはヘプチルオキシおよびYが水素であるもの、すなわち、遊離型または医薬品として容認できる塩型の2-アミノ-4-(4-ヘプチルオキシフェニル)-2-メチル-ブタンオール(例:塩酸塩)(以下、化合物Cと記載)である。R-エナンチオマーが特に好ましい。
【0039】
式VIaの好適な化合物は、FTY720-リン酸(R2aは水素、R3aはOH、XaはO、R1aおよびR1bはOH)である。式VIbの好適な化合物は、化合物C-リン酸(R2aは水素、R3bはOH、XaはO、R1aおよびR1bはOH、YaはOおよびR4aはヘプチル)である。式Vの好適な化合物は化合物B-リン酸である。
【0040】
式VIIIの好適な化合物は、(2R)-2-アミノ-4-[3-(4-ヘテロヘキシルオキシブチル)-ベンゾ[b]チエン-6-イル]-2-メチルブタン-1-オールである。
【0041】
式XIaの好適な化合物は、例えば1-{4-[1-(4-ヘテロヘキシル-3-トリフルオロメチル-ベンジルオキシイモノ)-エチル]-2-エチル-ベンジル}-アゼチジン-3-カルボン酸、またはそのプロドラッグである。
【0042】
本明細書に記載される化合物は直接の活性物質、またはプロドラッグでもよいことが理解される。例えば化合物は、リン酸化型でもよい。
【0043】
現在までに、S1P受容体調節因子はBDNFのレベルに関連する、依存するまたは影響を受ける症状に対して阻害効果、予防効果または遅延効果を有することが判明している。
【0044】
本発明の1つの特定の態様では、例えば本明細書に記載される化合物がBDNFの産生を刺激するなどして、S1P受容体調節因子の属を代表する本明細書に記載される化合物はBDNFのレベルを高める。
【0045】
脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現を誘発する化合物は、神経系障害および疾患の処置、または糖尿病の処置に対する処置薬として使用することができる。
【0046】
特に創傷による神経系損傷、手術、虚血、感染、代謝疾患、栄養失調、悪性腫瘍、または毒薬などにとって有益である。特に、感覚ニューロンまたは網膜神経節細胞が損傷を受けた症状の処置に使用することができる。
【0047】
化合物は特に、先天的症状または神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病(パーキンソン病の症状はドーパミン作動性ニューロンの退化によって引き起こされる場合がある)、パーキンソンプラス症候群(例:進行性核上性麻痺(スティール・リチャードソン・オルゼウスキー症候群)、オリーブ橋小脳萎縮症(OPCA)、シャイ・ドレーガー症候群(多系統萎縮症)、およびグアム・パーキンソン痴呆複合)、ハンチントン病(ハンチントン舞踏病)、およびレット症候群の処置に使用することができるが、これに限定はされない。
【0048】
さらに、化合物は知覚神経機能不全および先天的疾患または網膜変性と関連する神経変性疾患の処置に使用することもできる。
【0049】
さらに、化合物は網膜変性に関連する遺伝性痙攣性対麻痺(チェリン(Kjellin)症候群およびバーナード・ショルツ症候群)、網膜色素変性症、スタルガルト病、アッシャー症候群(先天的聴力損失が伴う網膜色素変性症)およびレフスム症候群(網膜色素変性症、先天的聴力損失、および多発神経障害)の処置にも使用することができる。
【0050】
さらに、化合物は肥満の処置にも使用することができる。
【0051】
化合物はまた、認知障害および/または注意欠陥障害、例えば注意や警戒心、実行機能および記憶(例えば作業記憶やエピソード記憶)の欠如および異常の処置にも使用してよい。さらに、認知障害に関連する他の障害には、睡眠時呼吸障害(SRBD)、行動障害、情報処理能力欠如、加齢に伴う障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、小児ADHD、成人ADHD、昼間過剰傾眠、睡眠時無呼吸、外傷性脳損傷、記憶および認知の問題を伴う神経変性障害(アルツハイマー病、レビー小体型認知症、老人性痴呆症、血管性痴呆、パーキンソン病など)、慢性疲労症候群、断眠または長時間覚醒を伴う疲労、年齢関連性の記憶および認知機能の低下(軽度の認知障害など)、気分障害を伴う認知障害(うつ病など)および不安、精神分裂症、ナルコレプシーを伴う日中の眠気などがある。
【0052】
さらに化合物は、例えばナルコレプシー、原発性不眠症、睡眠覚醒リズム障害(例:勤務交代症候群、時間帯症候群(時差ぼけ))などの睡眠障害の処置に使用することもできる。
【0053】
さらに、化合物は抑鬱障害(例:躁鬱病)の処置に使用することもできる。
【0054】
さらなる使用において、化合物は患者の気分を向上させる可能性がある。
【0055】
一連のさらに具体的な、または別の実施例において、本発明は下記を提供する:
1.1 それを必要とする対象におけるBDNFの産生によって影響を受ける症状を予防、阻害または処置する方法で、上記対象への処置的に有効な量のS1P受容体調節因子(例:式I〜XIbの化合物)の投与を含む方法。
1.2 それを必要とする対象における肥満、睡眠障害または抑鬱障害の症状の進行を緩和または遅延させる方法で、該方法において上記疾患に関連するBDNF依存性因子は予防または阻害され、上記対象への処置的に有効な量のS1P受容体調節因子(例:式I〜XIbの化合物)の投与を含む方法。
1.3 それを必要とする対象におけるBDNFの産生を誘発する方法で、上記対象への処置的に有効な量のS1P受容体調節因子(例:式I〜XIbの化合物)の投与を含む方法。
1.4 対象における肥満、睡眠障害または抑鬱障害の進行を鈍化させる方法で、該方法において上記疾患に関連するBDNF依存性因子は予防または阻害され、上記対象への処置的に有効な量のS1P受容体調節因子(例:式I〜XIbの化合物)の投与を含む方法。
1.5 S1P受容体調節因子が断続的に投与される上述の方法。
例えばS1P受容体調節因子は、対象に2日ごと、または3日ごと、または週一回、投与してもよい。
2. S1P受容体調節因子(例:本書上文で定義される式I〜XIbの化合物)と1つまたはそれ以上の医薬品として容認できる希釈剤または担体を含む、方法1.1〜1.5の何れか1つにおいて使用される医薬組成物。
3. 方法1.1〜1.5の何れか1つで使用するためのS1P受容体調節因子(例:本書上文の式I〜XIbの化合物)。
4. 方法1.1〜1.5の何れか1つで使用する薬剤の調製に使用するためのS1P受容体調節因子(例:本書上文の式I〜XIbの化合物)。
【0056】
S1P受容体調節因子(例:本書上文で特定されるBDNFに関連する疾患の予防または処置において式Yの群を含むS1P受容体調節因子)の実用性は、例えば本書以降で記載される方法に従い、動物実験方法のほか、臨床試験でも実証され得る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】なし
【図2】なし
【図3】なし
【図4】なし
【図5】なし
【図6】なし
【実施例】
【0058】
例1:生体内:S1P受容体調節因子により誘発されるBDNFの産生
メスDAラットをFTY720の経口投与により9日間(5日間、2日間休止、4日間)処置した。
実験1:0.3 mg/kg/dと賦形剤の比較。
N=ラット3匹/群
最終処置から1日後、ラットに氷冷したPBSを灌流し、異なるCNS領域が単離された。
結果を図1に示す。
【0059】
例2:生体内:S1P受容体調節因子により誘発されるBDNFの産生
メスDAラットをFTY720の経口投与によりで9日間(5日間、2日間休止、4日間)処置した。
0.1、0.3または1 mg/kg/dと賦形剤の比較。
N=ラット3匹/群
最終処置から1日後、ラットに氷冷したPBSを灌流し、異なるCNS領域が単離された。
結果を図2に示す。
【0060】
例3:生体外:S1P受容体調節因子により誘発されるBDNFの産生
培養したCTX、STR、およびHIPニューロンにおけるBDNF発現に対するFTY720の効果が調査された。
【0061】
最後の6日間、ニューロンをリン酸化FTY720(FTY-p)(1 nMおよび10 nM)で処理した。
細胞溶解物を生体外で21日目に収集した。
Y軸は、対照のために正常化されたBDNFレベルを示す。
* DMSOと比してP<0.05
結果を図3A、BおよびCに示す。
【0062】
例4:生体外:S1P受容体調節因子により誘発されるBDNFの産生
培養したCTXおよびHIPのニューロンにおけるBDNF発現に対するFTY720の効果が調査された。
【0063】
最後の6日間、ニューロンをリン酸化FTY720(FTY-p)(0.01、0.1、1および10 nM)で処理した。
細胞溶解物を生体外で21日目に収集した。
Y軸は、対照のために正常化されたBDNFレベルを示す。
結果を図4に示す。
【0064】
例5:臨床試験:S1P受容体調節因子は気分を向上させる
再発性MSを患う患者281人が関与した6カ月間のプラシーボ対照第II相試験において、1日1回の1.25 mgおよび5 mg用量において、プラシーボと比較した場合、FTY720はガドリニウム増強磁気共鳴映像法(MRI)病変を最高で80%、年間再発率を50%以上も低下させた。3 MRIおよび再発の両方に対する結果的に生じる低い疾患活性は、FTY720で処置を受けた患者では、用量盲検の延長相で最高24カ月間、維持された。プラシーボを受けた患者にもまた、延長相でFTY720に切り替えた後には改善が見られた。
【0065】
この研究では、抑鬱症状はベック抑うつ評価尺度第二版(BDI-II)によって評価された。結果をここに示す。
【0066】
方法
再発性MS(再発寛解型または二次性進行型)を患う患者は無作為割付され、6カ月間、プラシーボまたはFTY720を1.25 mg/日または5 mg/日受け取った(中核研究)。この期間の終了時に、プラシーボで処置を受けた患者は2つのFTY720用量のうちの1つに無作為割り付けされ、その一方で本来FTY720に無作為割り付けされた患者は同一用量で引き続き処置を受けた。約18〜24カ月間後、より高い用量はより低い容量に比べて一切の有効性をもたらさないという証拠に鑑み、FTY720を5 mg受けた患者は1.25 mgに切り替えられた。
【0067】
BDI-IIは基準時点、中核研究の3カ月目および6カ月目で、また延長相の12カ月目および24カ月目(すなわち延長相の開始から6カ月後および18カ月後)で投与された。これは、うつ病に関連するさまざまな症状や態度を測定する、21項目の自己報告尺度である。回答者は、過去2週間において経験した抑鬱症状を、重症度が高い順に0〜3でコードされる4ポイント尺度で評価する。21項目全体にわたる合計スコアが集計され、合計スコアが低いことから抑鬱症状の全体的な重症度が低いことが示された。BDI-IIの合計スコアが14以上の場合は、臨床的うつ病を意味する。BDI-IIスコアにおけるNyの低下は、うつ病の改善を意味する。
【0068】
結果
患者
処置のために本来無作為割付された患者281人のうち、255人が中核研究を終了した。ベースラインおよび6カ月目でのBDI-IIスコアは、患者239人で得られた。
【0069】
中核研究中の平均BDI-IIスコアの変化。
中核研究中の平均BDI-IIスコアを図5に示し、中核研究中のベースラインでの上記スコアからの変化を図6に示す。BDI-IIスコアは、FTY720を1.25 mg/日受けた患者ではベースラインから低下し、FTY720を5.0 mg/日受けた患者では引き続き一定のままであり、プラシーボを服用する患者では上昇した。6カ月目に、1.25 mg/日のFTY720で処置を受けた患者における、ベースラインからのBDI-IIスコアの変化は、プラシーボで処置を受けた患者よりも有意に大きかった。FTY720の2つの用量間でのBDI-IIスコアの変化の差異は、5%レベルでは有意ではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BDNFの産生によって影響を受ける症状の予防、阻害または処置を必要とする患者においてそれらを行う方法であり、上記対象への処置的に有効な量のS1P受容体調節因子(例:本書上文で定義される式I〜XIbの化合物)の投与を含む方法。
【請求項2】
BDNF産生によって影響を受ける症状が1つまたはそれ以上の糖尿病、創傷による神経系損傷、先天的症状、神経変性疾患、知覚神経機能不全、肥満、認知障害、注意欠陥障害、睡眠障害または抑鬱障害から選定される、請求項1の方法。
【請求項3】
それを必要とする対象におけるBDNFの産生を誘発する方法で、上記対象への処置的に有効な量のS1P受容体調節因子(例:式I〜XIbの化合物)の投与を含む方法。
【請求項4】
患者の気分を向上させる(例:うつ病の症状を解消することで)方法で、上記対象への処置的に有効な量のS1P受容体調節因子(例:式I〜XIbの化合物)の投与を含む方法。
【請求項5】
S1P受容体調節因子が断続的に投与される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
S1P受容体調節因子(例:本書上文で定義される式I〜XIbの化合物、1つまたはそれ以上の医薬品として容認できる希釈剤またはそれに対する担体も伴う)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法において使用する医薬組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法での、S1P受容体調節因子(例:本書上文の式I〜XIbの化合物)の使用。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法において使用する薬物の調製における、S1P受容体調節因子(例:本書上文の式I〜XIbの化合物)の使用。
【請求項9】
毒性のない処置的に有効な量のS1P受容体調節因子および第二の処置物質の同時投与(例:併用的または連続的)を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
a)遊離型または医薬品として容認できる塩型のS1P受容体調節因子(本書上文に定義される式I〜XIbの化合物)である第一の薬剤、およびb)本書で記載されたBDNF関連の症状または疾患において使用する際の取扱説明書を含む、医薬上の組み合わせ(例:キット)。
【請求項11】
BDNF関連の症状または疾患が1つまたはそれ以上の糖尿病、創傷による神経系損傷、先天的症状、神経変性疾患、知覚神経機能不全、肥満、認知障害、注意欠陥障害、睡眠障害または抑鬱障害から選定される、請求項9の組み合わせ。
【請求項12】
S1P受容体調節因子が遊離型または医薬品として容認できる塩型の2-アミノ-2-[2-(4-オクチルフェニル)エチル]プロパン-1,3-ジオールである、請求項1〜11のいずれかに記載の方法、使用、医薬組成物または医薬上の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−526116(P2010−526116A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506902(P2010−506902)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055405
【国際公開番号】WO2008/135522
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】