説明

SARSウイルスおよび他の感染因子を検出するための方法および組成物

本発明は、一般に、ウイルス検出の分野に関する。特に本発明は、SARS−CoVヌクレオチド配列を増幅および検出するためのチップ、プローブ、プライマー、キットおよび方法を提供する。本発明のチップ、プローブ、プライマー、キットおよび方法の臨床的使用および他の使用もまた企図される。患者の症状のみに基づくSARSの診断には問題がある。本発明の目的の1つは、SARSウイルスおよびSARS様症状を引き起こす他の病原体の同時検出のためのバイオチップを提供することである。本発明の他の目的は、SARSウイルスおよびSARSの症状を悪化させる他の病原体を同時に検出するための核酸マイクロアレイを提供することである。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
2002年11月以来、世界の22ヵ国において、重症急性呼吸器症候群(SARS)と呼ばれる疾病が報告されている。2003年5月2日時点で、6,054件のSARS累積症例および感染者中、417名の死亡が、WHOにより報告されている。同じ期間中、中国では3,788件のSARS累積症例および感染者中、181名の死亡が報告されている。
【0002】
SARS患者の主な症状としては、発熱(38℃を超える)、頭痛、体痛が挙げられる。罹病2〜7日後、患者は、呼吸困難を伴うことのある乾性の非増殖性の咳を発症し得る。
【0003】
香港、カナダおよび米国の発見に基づき、以前認識されなかったコロナウイルスがSARSの原因であることが確認された。SARSコロナウイルスは、DNA介在ステップなしで複製し、標準的なコドンを用いる正鎖RNAウイルスであることが、研究者により見出されている(Marraら、Science 2003年5月1日;(印刷前の電子出版)およびRotaら、Science 2003年5月1日、(印刷前の電子出版))。
【0004】
SARSコロナウイルスは、これまでにヒトおよび哺乳動物で検出されていなかった、新たに発見されたウイルスである。SARSコロナウイルスのゲノム構造は、他のコロナウイルスと極めて類似している。SARSコロナウイルスのゲノムは、長さが30K塩基対であり、このゲノムは、ウイルスとしては極めて大型であると考えられる。SARSコロナウイルスのゲノムはRNAポリメラーゼ(ポリメラーゼ1aおよび1b)、Sタンパク質(スパイクタンパク質)、Mタンパク質(膜タンパク質)およびNタンパク質(ヌクレオカプシドタンパク質)などをコードする。
【0005】
現在、SARSコロナウイルスの検出法には、3つのタイプがある。すなわち、免疫学的方法(例えば、ELISA)、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)試験および細胞培養法である
上記の3つの検出法には大きな欠点がある。例えばELISAは、SARS患者血清からの抗体を高い信頼性で検出することができるが、それらの抗体が検出できるのは、症状発現の21日後になってからである。細胞培養法は比較的長期の検出周期を有しており、限定された条件に対してのみ適用できる。また、細胞培養法によって検出できるのは生存ウイルスの存在のみである。
【0006】
SARSコロナウイルスの伝播を防ぐ重要な段階は、早期診断ならびに早期隔離および早期治療である。RT−PCRはSARSコロナウイルスの核酸検出を可能にする既存の唯一の方法である。しかし、RT−PCRは、SARSウイルス発現前の感染患者を除去できず、また、RT−PCRの検出率は低い。この検出法には、高価なリアルタイムPCR装置が必要である。したがって、RT−PCRは、早期臨床スクリーニングと早期診断の必要性を満足させることができない。重症急性呼吸器症候群(SARS)の迅速、高感度および正確な診断に対する必要性が当該分野に存在している。本発明は、当該分野におけるこの必要性および他の関連した必要性に取り組んでいる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在の臨床的診断法は、主に、発熱、患者の肺における影、乾性咳および患者の腕や脚の脱力感などの症状に基づいている。しかし、これらの症状は、SARSに特異的なものではなく、他の病原体が同一の、または類似の症状を引き起こし得る。例えば、クラミジア肺炎病原体および肺炎マイコプラスマによって生じる通常の肺炎も患者の肺に影を生じさせ;発熱や咳はインフルエンザにも伴い;また、同様な症状は、ヒトコロナウイルス229EおよびOC43によって生じる上気道感染にも伴う。したがって、患者の症状のみに基づくSARSの診断には問題がある。
【0008】
SARSを疑われた症例の多くが、実際には、SARSウイルスによる感染を有さず、他の病原体による感染を有したことを、現在の臨床データは示している。したがって、SARS病原体およびSARSと同様な症状を生じさせる他の病原体を同時に検出するための方法を開発する必要性が存在している。このような方法は、診断を誤る可能性を減少させ、時宜を得た適切な治療を可能にし、また、不必要なパニックおよび医療上の無駄を避けるために、疑わしい症例の迅速なスクリーニングを提供する。SARSウイルスに感染した患者は、SARSウイルスによって生じる免疫低下により、他の病原体に、より感受性となる。SARSの患者は、SARSと同様な症状を生じる他の病原体にも感染している可能性がある。例えば、患者が、SARSと肺炎マイコプラスマの双方に感染しているならば、SARSのみに対する薬剤による治療では、症状はすぐに消失しない。この状況では、双方の病原体による感染を同時に検出することにより、双方の病原体に関する患者の即時的で効果的な治療が可能になる。バイオチップに基づく診断は、複数サンプルのハイスループット同時スクリーニングのための迅速で低コストの方法である。したがって、本発明の目的の1つは、SARSウイルスおよびSARS様症状を引き起こす他の病原体の同時検出のためのバイオチップを提供することである。
【0009】
他の病源体(免疫に重度に干渉し、それを妨害するB型肝炎およびHIVなどの病原体)に感染したSARS患者は、症状を悪化させ、他を感染させる可能性が高い(これらの患者は「スーパースプレダー」と呼ばれる)ことも、臨床データにより示されている。このような患者の適切な検出により、適切な治療および時宜を得た患者の隔離が可能になる。したがって、本発明の他の目的は、SARSウイルスおよびSARSの症状を悪化させる他の病原体を同時に検出するための核酸マイクロアレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
一態様において、本発明は、重症急性呼吸器症候群を引き起こすコロナウイルス(SARS−CoV)および非SARS−CoV感染生物をアッセイするためのチップに関し、該チップは、SARS−CoVゲノムの少なくとも10個のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、および以下のオリゴヌクレオチドプローブ(1つまたは複数):a)SARS様症状を引き起こす非SARS−CoV感染生物のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブであって、上記ヌクレオチド配列が少なくとも10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプローブ;b)感染宿主の免疫系を損傷している非SARS−CoV感染生物のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブであって、上記ヌクレオチド配列が、少なくとも10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプローブ;またはc)非SARS−Covコロナウイルス科ウイルスのヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブであって、上記ヌクレオチド配列が、少なくとも10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプローブを支持体上に固定化させた核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切な該支持体を含んでなる。
【0011】
幾つかの実施形態において、本発明のチップは、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを支持体上に固定化させた、核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切な該支持体を含んでなり、上記2つの異なるヌクレオチド配列の各々は、少なくとも10個のヌクレオチドを含む。
【0012】
幾つかの実施形態において、SARS様症状を引き起こす非SARS−CoV感染生物は、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスOC43,ヒト腸内コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルスからなる群より選択される。
【0013】
幾つかの実施形態において、感染宿主の免疫系に損傷を与える非SARS−CoV感染生物は、肝炎ウイルス、輸血媒介ウイルス(TTV)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、パルボウイルス、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)および梅毒トレポネーマからなる群より選択される。
【0014】
別の態様において、本発明は、サンプル中のSARS−CoVおよび非SARS−CoV感染生物に対するアッセイを行う方法に関し、上記方法は:a)上記のチップを提供すること;b)核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で、上記チップを、SARS−CoVおよび非SARS−CoV感染生物のヌクレオチド配列を含有するか、含有する疑いのあるサンプルと接触させること;およびc)上記サンプルに存在する場合、上記SARS−CoVまたは上記非SARS−CoV感染生物の上記ヌクレオチド配列と上記SARS−CoVゲノムのヌクレオチド配列に相補的な上記オリゴヌクレオチドプローブまたは上記非SARS−CoV感染生物ゲノムのヌクレオチド配列に相補的な上記オリゴヌクレオチドプローブとの間に形成されたハイブリッドを評価することを含んでなり、これにより、上記ハイブリッドの一方または両方の検出が、上記サンプル中の上記SARS−CoVおよび/または上記非SARS−CoV感染生物存在を示す。
【0015】
幾つかの実施形態において、SARS−CoVを:a)SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを支持体上に固定化させた、核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切な該支持体を含んでなるチップであって、上記2つの異なるヌクレオチド配列の各々が、少なくとも10個のヌクレオチドを含むチップを提供すること;b)核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で、上記チップを、SARS−CoVのヌクレオチド配列を含有するか、含有する疑いのあるサンプルと接触させること;およびc)上記サンプルに存在する場合、上記SARS−CoVの上記ヌクレオチド配列とSARS−CoVゲノムの2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な上記少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブそれぞれとの間に形成されたハイブリッドを評価して、上記サンプル中の上記SARS−CoVの有無、または量を決定することにより、アッセイし、これにより、上記ハイブリッドの一方または両方の検出が、上記サンプル中の上記SARS−CoVの存在を示す。
【0016】
複数のハイブリダイゼーション標的の同時変異の機会は、単一のハイブリダイゼーション標的における変異の機会よりはるかに少ないため、当該方法は、複数のハイブリダイゼーションプローブを用いることにより、単一のハイブリダイゼーションプローブに基づく試験に比べて、誤った陰性結果の発生を減少させる。他の好ましい実施形態、例えば、該チップ上に、ネガティブコントロールプローブおよびブランクスポットが用いられる場合、陽性結果の機会もまた減少させることができる。より好ましい実施形態、例えば、該チップ上に、固定化コントロールプローブおよびポジティブコントロールプローブを含めることによって、アッセイ結果のさらなる確証を提供することができる。好ましいサンプル調製法、RNA抽出法、および増幅法を用いることにより、当該方法の感度を、さらに高めることができる。
【0017】
さらに別の態様において、本発明はA型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229E,ヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーに関し、上記オリゴヌクレオチドプライマーは:a)A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229E,ヒトコロナウイルスOC43の、表1〜6に記載される標的ヌクレオチド配列、またはその相補鎖と、高ストリンジェンシー下でハイブリダイズする;またはb)A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスOC43の表1〜表6に記載されるヌクレオチド配列、またはその相補鎖を含む標的ヌクレオチド配列に、少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなる。
【0018】
(表1.例示的なA型インフルエンザウイルスプライマー)
【0019】
【表1】

(表2.例示的なB型インフルエンザウイルスプライマー)
【0020】
【表2−1】

【0021】
【表2−2】

(表3.例示的なヒトメタニューモウイルスプライマー)
【0022】
【表3】

(表4.例示的なヒトアデノウイルスプライマー)
【0023】
【表4−1】

【0024】
【表4−2】

【0025】
【表4−3】

(表5.例示的なHCoV−OC229Eプライマー)
【0026】
【表5】

(表6.例示的なHCoV−OC43プライマー)
【0027】
【表6】


【0028】
さらに別の態様において、本発明は、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229E,またはヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列を増幅するキットに関し、上記キットは、a)上記のプライマー;およびb)上記プライマーを用いて、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニュウモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229E,ヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列を増幅できる核酸ポリメラーゼを含んでなる。
【0029】
別の態様において、本発明は、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229E、またはヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブに関し、上記オリゴヌクレオチドプローブは:a)A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229E,またはヒトコロナウイルスOC43の、表7〜12に記載された標的ヌクレオチド配列、またはその相補鎖と、高ストリンジェンシー下でハイブリダイズする;またはb)A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229E,ヒトコロナウイルスOC43の、表7〜12に記載された標的ヌクレオチド配列、またはその相補鎖に、少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなる。
【0030】
(表7.例示的なA型インフルエンザウイルスプローブ)
【0031】
【表7−1】

【0032】
【表7−2】

(表8.例示的なB型インフルエンザウイルスプローブ)
【0033】
【表8】

(表9.例示的なヒトメタニューモウイルスプローブ)
【0034】
【表9−1】

【0035】
【表9−2】

(表10.例示的なヒトアデノウイルスプローブ)
【0036】
【表10−1】

【0037】
【表10−2】

(表11.例示的なHCoV−OC229Eプローブ)
【0038】
【表11】

(表12.例示的なHCoV−OC43プローブ)
【0039】
【表12】


【0040】
さらに別の態様において、本発明は、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229E、またはヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列のハイブリダイゼーション分析のためのキットに関し、上記キットは:a)上記プローブ;およびb)A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229E、またはヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列と上記キットとの間に形成されたハイブリッドを評価する手段を含んでなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(発明の詳細な説明)
限定する目的ではなく、開示を明快にするために、本発明の詳細な説明は、以下の小節に分けられる。
【0042】
(A. 定義)
別に定義されない限り、本明細書に用いられる全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に解釈される意味と同様の意味を有する。本明細書に引用された全ての特許、特許出願、出願公開および他の刊行物は、参照として、それらの全体が参考として援用される。本節に記載された定義が、参考として本明細書に援用されている特許、特許出願、出願公開および他の刊行物に記載された定義に反するか、または矛盾する場合は、本節に記載された定義が、参考として本明細書に援用されている定義に優先する。
【0043】
本明細書に用いられる「1つ」(「a」または「an」)は、「少なくとも1つ(「at least one」)」または「1つ以上(one or more)」を意味する。
【0044】
本明細書に用いられる「コロナウイルス科」は、呼吸器疾患の原因となる一本鎖RNAウイルスの科をいう。ウイルスの外側のエンベロープは、外方に伸びるこん棒形の突起物を有し、染色陰性のビリオンに特徴的な冠状の外観を与えている。
【0045】
本明細書に用いられる「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)」は、DNAインビトロ増幅のためのシステムをいう。過剰のデオキシヌクレオチド類および熱安定性DNAポリメラーゼ、例えば、TaqDNAポリメラーゼの存在下、増幅される標的DNA(各鎖に対し1つ)の2つの領域に相補的な2つの合成オリゴヌクレオチドプライマーが、標的DNA(純粋でなくてもよい)に加えられる。一連の、例えば30回の温度サイクルにおいて、標的DNAを、(例えば、90℃付近で)繰り返して変性させ、プライマーに(例えば、50℃〜60℃で)アニールさせ、娘鎖を(例えば、72℃で)上記プライマーから伸長させる。娘鎖自体が、引き続くサイクルのテンプレートとして働くため、双方のプライマーに対応するDNA断片は、線形的ではなく、指数関数的に増幅される。したがって、もとのDNAは、純粋である必要もなく、大量である必要もないため、PCR反応は、研究のみならず、臨床診断および法科学において、幅広く用いられるようになった。
【0046】
本明細書に用いられる「ネステッド(nested)PCR」は、プライマーの2つのセットを連続して用いることにより、特異性が改善されるPCRをいう。最初のPCRを、「外側」のプライマー対により実施し、次いで、少量のアリコートを、「内側」のプライマー対による2回目のPCRのテンプレートとして用いる。
【0047】
本明細書に用いられる「逆転写PCRまたはRT−PCR」は、出発テンプレートがRNAであるPCRをいい、DNAテンプレートを作成するために、最初に逆転写ステップが必要であることを含意している。いくつかの熱安定性ポリメラーゼは、かなり大きな逆転写活性を有しているが、明示的な逆転写を実施し、逆転写酵素を不活性化するか、または生成物を精製して、別個の従来のPCRに進めることがより一般的である。
【0048】
本明細書に用いられる「プライマー」は、典型的には、増幅工程において核酸をプライムするために、標的配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをいう。
【0049】
本明細書に用いられる「プローブ」は、典型的には、標的配列の検出を容易にするために、標的配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをいう。用語の「標的配列」は、プローブが特異的に結合する核酸配列をいう。増幅工程において、標的核酸をプライムするために用いられるプライマーとは違って、ポリメラーゼ酵素を用いて標的核酸を増幅させるためにプローブを伸長させる必要はない。しかし、多くの場合、プローブとプライマーは、構造的に類似しているか、または同一であることは、当業者に明白であろう。
【0050】
本明細書に用いられる「5’および3’特異的プライマーそれぞれの濃度に等しいか、またはそれより高い5’および3’ユニバーサルプライマーの濃度」とは、5’特異的プライマーの濃度に等しいかまたはそれより高い5’ユニバーサルプライマーの濃度、および3’特異的プライマーの濃度に等しいかまたはそれより高い3’ユニバーサルプライマーの濃度を意味する。
【0051】
本明細書に用いられる「ヘアピン構造」は、二本鎖ステムセグメントと一本鎖ループセグメントを含有し、この二本鎖ステムセグメントを形成している2つのポリヌクレオチドまたは核酸の鎖が、ループセグメントを形成している1つのポリヌクレオチドまたは核酸の鎖により結合および分離される、ポリヌクレオチドまたは核酸をいう。上記「ヘアピン構造」は、二本鎖ステムセグメントから伸長している3’および/または5’一本鎖領域(1つまたは複数)をさらに含むことができる。
【0052】
本明細書に用いられる「核酸(1つまたは複数)」は、特に、一本鎖、二重鎖、三重鎖、線状、および環状形態を含む任意の形態におけるデオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)をいう。それはまた、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸のキメラおよびそれらのアナログも含む。本明細書に記載される核酸は、塩基のアデノシン、シトシン、グアニン、チミジン、およびウリジンからなるか、または、これらの塩基のアナログまたは誘導体から構成され得る周知のデオキシリボヌクレオチド類およびリボヌクレオチド類から構成され得る。また、ホスホトリエステル、ポリヌクレオチドペプチド(PNA)、メチルホスホネート、ホスホロチオエート、ポリヌクレオチドプライマー、ロックド核酸(LNA)などの非従来的なホスホジエステル骨格を有する種々の他のオリゴヌクレオチド誘導体もまた本明細書に含まれる。
【0053】
本明細書に用いられる「相補的な、またはマッチした」とは、2つの核酸配列が、少なくとも50%の配列同一性を有することを意味する。2つの核酸配列は、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有することが好ましい。また、「相補的な、またはマッチした」は、2つの核酸配列が、低く、中程度に、および/または高くストリンジェントな条件下でハイブリダイズできることも意味する。
【0054】
本明細書に用いられる「実質的に相補的な、または実質的にマッチした」とは、2つの核酸配列が、少なくとも90%の配列同一性を有することを意味する。2つの核酸配列は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有することが好ましい。あるいは、「実質的に相補的な、または実質的にマッチした」とは、2つの核酸配列が、高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズできることを意味する。
【0055】
本明細書に用いられる「2つの完全にマッチしたヌクレオチド配列」は、ワトソンークリック塩基対原理、すなわち、DNA:DNA二重鎖におけるA−T対およびC−G対ならびに、DNA−RNA二重鎖またはRNA−RNA二重鎖におけるA−U対およびC−G対によって、2つのヌクレオチド鎖がマッチし、二本の鎖の各々に、欠失も付加もない核酸二重鎖をいう。
【0056】
本明細書に用いられる「ミスマッチのパーセンテージ決定における「ハイブリダイゼーションのストリンジェンシー」は、以下のとおりである:
1)高ストリンジェンシー:0.1×SSPE(または0.1×SSC)、0.1%SDS、65℃;
2)中程度(medium)ストリンジェンシー:0.2×SSPE(または1.0×SSC)、0.1%SDS、50℃(中(moderate)ストリンジェンシーともいう);および
3)低ストリンジェンシー:1.0×SSPE(または5.0×SSC)、0.1%SDS、50℃。
【0057】
代替的な緩衝液、塩類および温度を用いて、等しいストリンジェンシーを達成し得ることが、理解される。
【0058】
本明細書に用いられる「遺伝子」は、染色体上に特定の座を占め、その存在が、種々の対立形態の発生により確認することのできる遺伝の単位をいう。分断化遺伝子の発生を考慮し、遺伝子はまた、単一のポリペプチドを生成させるために必要とされるDNA配列のセット(エキソン)も包含する。
【0059】
本明細書に用いられる「融解温度」(「Tm」)は、核酸二重鎖、すなわち、DNA:DNA、DNA:RNA、RNA:RNA、PNA:DNA、LNA:RNAおよびLNA:DNAなどが変性される温度範囲の中心点をいう。
【0060】
本明細書に用いられる「サンプル」は、本発明のチップ、プライマー、プローブ、キットおよび方法によりアッセイ、または増幅される標的SARS−CoVを含有し得る任意のものをいう。サンプルは、生物学的流体または生物学的組織などの生物学的サンプルでありうる。生物学的流体の例としては、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、糞便、痰、脳脊髄液、涙液、粘液、羊水などが挙げられる。生物学的組織は、通常、ヒト、動物、植物、細菌、真菌またはウイルス構造の構造材料の1つを形成するそれらの細胞間物質と一緒になった特定の種類の細胞凝集体である(結合組織、上皮組織、筋肉組織および神経組織などを含む)。また、生物学的組織の例としては、器官、腫瘍、リンパ節、動脈および個々の細胞(1つまたは複数)が挙げられる。生物学的組織は、細胞懸濁サンプルを得るために処理できる。また、サンプルは、インビトロで調製された細胞の混合物であり得る。また、サンプルは、培養細胞懸濁液であり得る。生物学的サンプルの場合、サンプルは、粗製サンプルであってもよいし、また、元のサンプルを種々に処理、または調製した後に得られる処理サンプルでもよい。例えば、血液などの体液サンプルから標的細胞を分離、または濃縮するために、種々の細胞分離法(例えば、磁気作動式細胞選別(magnetically activated cell sorting))が適用できる。本発明に用いられるサンプルには、そのような標的細胞濃縮化細胞調製法が含まれる。
【0061】
本明細書に用いられる「液体(流体)サンプル」は、液体または流体、例えば、生物学的液体として天然に存在するサンプルをいう。また、「液体サンプル」は、非液体状態、例えば、固体、または気体として天然に存在するが、その固体、または気体サンプル物質を含有する液体、流体、溶液または懸濁液として調製されるサンプルもいう。例えば、液体サンプルは、生物学的組織を含有する液体、流体、溶液または懸濁液を包含することができる。
【0062】
本明細書に用いられる「PCR産物の評価」は、PCR産物、ならびにPCR産物のレベルを示す指数、比率、パーセンテージ、視覚的または他の値を獲得する、定量的および/または定性的決定をいう。評価は、直接的でも間接的でもよく、実際に検出される化学種は、当然、PCR産物それ自体である必要はなく、例えば、その誘導体、またはさらに他の物質であってもよい。
【0063】
(B.SARS−CoVおよび非SARS−CoV感染性生物のアッセイ用チップ)
一態様において、本発明は、重症急性呼吸器症候群を引き起こすコロナウイルス(SARS−CoV)および非SARS−CoV感染生物をアッセイするためのチップに関し、該チップは、その上にSARS−CoVゲノムの少なくとも10個のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、および以下のオリゴヌクレオチドプローブ(1つまたは複数):a)SARS様症状を引き起こす非SARS−CoV感染生物のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブであって、上記ヌクレオチド配列が少なくとも10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプローブ;b)感染宿主の免疫系を損傷している非SARS−CoV感染生物のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブであって、上記ヌクレオチド配列が、少なくとも10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプローブ;または,c)非SARS−Covコロナウイルス科ウイルスのヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブであって、上記ヌクレオチド配列が、少なくとも10個のヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドプローブを支持体上に固定化させた核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切な該支持体を含んでなる。
【0064】
いくつかの実施形態において、該チップは、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブをその上に固定化させた、核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切な支持体を含んでなり、上記2つの異なるヌクレオチド配列の各々は、少なくとも10個のヌクレオチドを含む。
【0065】
上記少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列は、任意の適切な組み合わせであり得る。例えば、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列は、SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列、およびSARS−CoVゲノムの可変領域内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み得る。他の例において、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列は、SARS−CoVゲノムの構造タンパク質コード遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列、およびSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質コード遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含み得る。
【0066】
所望の場合、本チップは、他のタイプのプローブまたは他の特徴を含み得る。例えば、該チップは、:a)以下の3つのオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つ:SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物を含有するか、含有する疑いのあるサンプルを該チップに接触させる場合に、いずれのハイブリダイゼーション反応にも関与しない標識化された固定化コントロールプローブ、いずれのSARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物の配列にも相補的ではないが、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物中には見られないサンプル中に含まれた配列に相補的であるポジティブコントロールプローブ、およびサンプル中に含まれたいずれのヌクレオチド配列にも相補的でないネガティブコントロールプローブ;ならびに、b)ブランクスポット、をさらに含み得る。
【0067】
特定の一実施形態において、本チップは、SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置するか、SARS−CoVゲノムの構造タンパク質コード遺伝子内に位置する、または、SARS−CoVゲノムの非構造タンパク質コード遺伝子内に位置する、各々少なくとも10個のヌクレオチドの2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを含み得る。
【0068】
SARS−CoVゲノムの任意の保存領域を、アッセイ標的として用いることができる。例えば、SARS−CoVゲノムの保存領域は、SARS−CoVのレプリカーゼ1A、1B遺伝子またはヌクレオカプシド(N)遺伝子内に位置する領域であり得る。
【0069】
SARS−CoVゲノムの任意の可変領域を、アッセイ標的として用いることができる。例えば、SARS−CoVゲノムの可変領域は、SARS−CoVのスパイク糖タンパク質(S)遺伝子内に位置する領域であり得る。
【0070】
SARS−CoVゲノムの任意の構造タンパク質コード遺伝子を、アッセイ標的として用いることができる。例えば、SARS−CoVゲノムの構造タンパク質コード遺伝子は、スパイク糖タンパク質(S)、小型エンベロープタンパク質(E)またはヌクレオカプシドタンパク質(N)をコードする遺伝子であり得る。
【0071】
SARS−CoVゲノムの任意の非構造タンパク質コード遺伝子を、アッセイ標的として用いることができる。例えば、SARS−CoVゲノムの非構造タンパク質コード遺伝子は、レプリカーゼ1Aまたは1Bをコードする遺伝子であり得る。
【0072】
別の特定の実施形態において、本チップは、以下の4つのオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも2つを含み得る:SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドの2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのN遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、およびSARS−CoVのS遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ。
【0073】
好ましくは、SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する異なるヌクレオチド配列の一方または双方は:a)表13に記載されるレプリカーゼ1Aまたは1Bヌクレオチド配列、またはその相補鎖と、高ストリンジェンシー下でハイブリダイズする;またはb)表13に記載されるヌクレオチド配列を含んでなるレプリカーゼ1Aまたは1Bヌクレオチド配列、またはその相補鎖に、少なくとも90%同一性を有するヌクレオチド配列を含み得る。
【0074】
(表13.例示的なSARS−CoVプローブ)
【0075】
【表13−1】

【0076】
【表13−2】


【0077】
また、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列は:a)高ストリンジェンシー下で、表13に記載されるNヌクレオチド配列、またはその相補鎖とハイブリダイズする;またはb)表13に記載されるNヌクレオチド配列、またはその相補鎖を含むNヌクレオチド配列に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み得ることが好ましい。より好ましくは、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列は表13に記載されるヌクレオチド配列を含む。
【0078】
また、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列は:a)高ストリンジェンシー下で、表13に記載されるSヌクレオチド配列、またはその相補鎖とハイブリダイズする;またはb)表13に記載されるヌクレオチド配列、またはその相補鎖を含むSヌクレオチド配列に少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含み得ることが好ましい。より好ましくは、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列は表13に記載されるヌクレオチド配列を含む。
【0079】
任意の適切な標識、例えば、化学的、酵素的、免疫原性、放射性、蛍光、発光またはFRET標識を、固定化コントロールプローブに使用できる。
【0080】
任意の適切な非SARS−CoV配列を使用することができる。例えば、非SARS−CoV配列は、アッセイすべきサンプルの内在成分であり得る。あるいは、非SARS−CoV配列は、アッセイすべきサンプル内にスパイクされる。別の例において、スパイクされた非SARS−CoV配列は、Arabidopsis起原の配列であり得る。
【0081】
さらに別の特定の実施形態において、本チップは、SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物を含有するか、含有する疑いのあるサンプルを本チップに接触させても、いずれのハイブリダイゼーション反応にも関与しない標識化された固定化コントロールプローブ、いずれのSARS−CoV配列にも相補的でないが、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物においては見られないサンプル内に含有されたいずれかの配列に相補的なポジティブコントロールプローブ、およびサンプル内に含有されたいずれのヌクレオチド配列にも相補的でないネガティブコントロールプローブを含み得る。
【0082】
本チップは、記載されたプローブの複数のスポット、例えば、SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、固定化コントロールプローブ、ポジティブコントロールプローブおよびネガティブコントロールプローブの複数のスポットを含んでなることが好ましい。
【0083】
本チップは、SARS−CoVに関連しないコロナウイルスのヌクレオチドド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブをさらに含み得る。例えば、SARSに関連しないコロナウイルスは、I群、II群またはIII群コロナウイルスであり得るか、または鳥類種に感染するコロナウイルス、例えば、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥伝染性喉頭気管炎ウイルス、ウマ種に感染するコロナウイルス、例えば、ウマコロナウイルス、イヌ種に感染するコロナウイルス、例えば、イヌコロナウイルス、ネコ種に感染するコロナウイルス、例えば、ネココロナウイルスおよびネコ感染性腹膜炎ウイルス、ブタ種に感染するコロナウイルス、例えば、ブタ流行性下痢ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルスおよびブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス、子ウシ種に感染するコロナウイルス、例えば、新生子ウシ下痢コロナウイルス、ウシ種に感染するコロナウイルス、例えば、ウシコロナウイルス、マウス種に感染するコロナウイルス、例えば、マウス肝炎ウイルス、パフィノシス(puffinosis)種に感染するコロナウイルス、例えば、パフィノシス(puffinosis)ウイルス、ラット種に感染するコロナウイルス、例えば、ラットコロナウイルスおよびラットの唾液腺炎ウイルス、シチメンチョウ種に感染するコロナウイルス、例えば、シチメンチョウコロナウイルス、またはヒト種に感染するコロナウイルス、例えば、ヒト腸内コロナウイルスである。本チップは、他のタイプのウイルスまたは病原体のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブをさらに含み得る。本チップを用いてアッセイできるウイルスまたは病原体の代表的なリストは表14に記載してある。
【0084】
(表14.例示的なウイルスおよび病原体)
【0085】
【表14】


【0086】
種々のプローブ、例えば、SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVゲノムの可変領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、固定化コントロールプローブ、またはネガティブコントロールプローブ、SARS様症状を引き起こす非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、感染宿主の免疫系を損傷する非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、および非SARS−CoVコロナウイルス科ウイルスのヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブは、その5’端に、支持体に対するその固定化を増強させるポリdT領域を含み得る。
【0087】
特定の一実施形態において、オリゴヌクレオチドプローブの少なくとも1つは、SARS−CoVゲノムの高発現ヌクレオチド配列に相補的である。このようなチップは、早期SARS−CoV感染の検出に特に有用である。
【0088】
いくつかの実施形態において、非SARS−CoV感染性生物は、SARS様症状を引き起こす感染性生物である。このような生物としては、限定はしないが、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスOC43、ヒト腸内コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス(respiratory sncytical virus)、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、肺炎マイコプラスマ、肺炎クラミジア病原体、麻疹ウイルスおよび風疹ウイルスが挙げられる。インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスまたはB型インフルエンザウイルスであり得る。パラインフルエンザウイルスは、パラインフルエンザウイルス1、パラインフルエンザウイルス2、パラインフルエンザウイルス3、またはパラインフルエンザウイルス4であり得る。これらの生物に対する例示的プローブは、表15に記載される。
【0089】
(表15. SARS様症状を引き起こす非SARS−CoV感染性生物に対する例示的プローブ)
【0090】
【表15−1】

【0091】
【表15−2】

【0092】
【表15−3】

【0093】
【表15−4】

【0094】
【表15−5】

【0095】
【表15−6】

【0096】
【表15−7】

【0097】
【表15−8】

【0098】
【表15−9】

【0099】
【表15−10】

【0100】
【表15−11】


【0101】
いくつかの実施形態において、非SARS−CoV感染性生物は、感染宿主の免疫系を損傷する感染性生物である。このような生物としては、限定はしないが、肝炎ウイルス、輸血媒介ウイルス(transfusion transmitting virus)(TTV),ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パルボウイルス、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV),エプスタイン−バーウイルス(EBV)および梅毒トレポネーマが挙げられる。肝炎ウイルスは、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、G型肝炎ウイルス(HGV)であり得る。HIVは、HIV Iであり得る。パルボウイルスは、パルボウイルスB19であり得る。例示的プローブは、表16に記載される。
【0102】
(表16.宿主の免疫系を損傷する非SARS−CoV感染性生物に対する例示的プローブ)
【0103】
【表16−1】

【0104】
【表16−2】

【0105】
【表16−3】

【0106】
【表16−4】

【0107】
【表16−5】


【0108】
いくつかの実施形態において、非SARS−CoV感染性生物は、非SARS−CoVコロナウイルス科のウイルスである。このようなウイルスとしては、限定はしないが、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥伝染性喉頭気管炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、ウマコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネココロナウイルス、ブタ流行性下痢ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、ウシコロナウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、ラットコロナウイルス、新生子ウシ下痢コロナウイルス、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス、パフィノシス(puffinosis)ウイルス、シチメンチョウコロナウイルスおよびラットの唾液腺炎ウイルスが挙げられる。これらのウイルスに対する例示的プローブは、表17に記載される。
【0109】
(表17.非SARS−CoVコロナウイルス科のウイルスに対する例示的プローブ)
【0110】
【表17】


【0111】
上記オリゴヌクレオチドプローブおよび標的SARS−CoVならびに任意の非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列は、任意の適切な長さであり得る。該オリゴヌクレオチドプローブおよび標的SARS−CoVならびに任意の非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列は、少なくとも、7、10、20、30、40、50、60、80、90、100個のヌクレオチドまたは100ヌクレオチドをこえる長さを有することが好ましい。
【0112】
上記オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーは、任意の適切な方法、例えば、化学的合成、組み換え法、および/または双方により調製できる(一般的に、Ausubelら(編集者)、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons Inc.(2000)を参照)。
【0113】
本チップには、任意の適切な支持体が使用できる。例えば、該支持体は、シリコン、プラスチック、ガラス、セラミック、ゴム、およびポリマー表面からなる群より選択される表面を含み得る。
【0114】
(C.SARS−CoVおよび非SARS−CoV感染性生物に関するアッセイ法)
別の態様において、本発明は、サンプル内のSARS−CoVおよび非SARS−CoV感染性生物に関するアッセイ法に関し、上記方法は:a)上記のチップを提供すること;b)核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で、上記チップを、SARS−CoVおよび非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列を含有するか、含有する疑いのあるサンプルと接触させること;および、c)上記サンプルに存在する場合、上記SARS−CoVまたは上記非SARS−CoV感染性生物の上記ヌクレオチド配列と上記SARS−CoVゲノムのヌクレオチド配列に相補的な上記オリゴヌクレオチドプローブまたは上記非SARS−CoV感染性生物ゲノムのヌクレオチド配列に相補的な上記オリゴヌクレオチドプローブとの間に形成されたハイブリッドを評価することを含んでなり、これにより、上記ハイブリッドの一方または両方の検出が、上記サンプル内の上記SARS−CoVおよび/または上記非SARS−CoV感染性生物の存在を示す。
【0115】
いくつかの実施形態において:a)SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを支持体上に固定化させた、核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切な該支持体であって、上記2つの異なるヌクレオチド配列の各々が、少なくとも10個のヌクレオチドを含む支持体を含んでなるチップを提供すること;b)核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で、上記チップを、SARS−CoVヌクレオチド配列を含有するか、含有する疑いのあるサンプルと接触させること;およびc)上記サンプルに存在する場合、上記SARS−CoVヌクレオチド配列とSARS−CoVゲノムの2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な上記少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブそれぞれとの間に形成されたハイブリッドを評価して、上記サンプル中の上記SARS−CoVの有無、または、量を決定することにより、SARS−CoVをアッセイし、これにより、上記ハイブリッドの一方または両方の検出が、上記サンプル中の上記SARS−CoVの存在を示す。
【0116】
特定の一実施形態において、当該方法はa)SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列およびSARS−CoVゲノムの可変領域内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列、またはSARS−CoVゲノムの構造タンパク質コード遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列およびSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質コード遺伝子に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列を含んでなるチップを提供すること;b)核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で、上記チップを、SARS−CoVヌクレオチド配列を含有するか、含有する疑いのあるサンプルと接触させること;およびc)上記サンプルに存在する場合、上記SARS−CoVヌクレオチド配列と、i)SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的な上記オリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVゲノムの可変領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブそれぞれ;またはii)SARS−CoVゲノムの構造タンパク質コード遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な上記オリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質コード遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な上記オリゴヌクレオチドプローブとの間に形成されたハイブリッドを評価して、上記サンプル中の上記SARS−CoVの有無、または、量を決定し、これにより、上記ハイブリッドの一方または両方の検出が上記サンプル中の上記SARS−CoVの存在を示す。
【0117】
別の特定の実施形態において、当該方法は:a)SARS−CoVゲノムの保存領域内のクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVゲノムの可変領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、以下の3つのオリゴヌクレオチドプローブ:SARS−CoVを含有するか、含有する疑いのあるサンプルを該チップに接触させる時、いずれのハイブリダイゼーション反応に関与しない標識された固定化コントロールプローブ、SARS−CoVのいずれの配列にも相補的ではないが、サンプル中に含まれた非SAQRS−CoV配列に相補的であるポジティブコントロールプローブ、およびサンプル中に含まれたいずれのヌクレオチド配列にも相補的でないネガティブコントロールプローブおよびブランクスポットのうちの少なくとも1つを含んでなるチップを提供すること;b)核酸ハイブリダイゼーションに適切な条件下で、上記チップを、SARS−CoVヌクレオチド配列を含有するか、含有する疑いのあるサンプルと接触させること;およびc)(i)上記サンプルに存在する場合、上記SARS−CoVヌクレオチド配列と、SARS−CoVゲノムの保存領域内のヌクレオチド配列に相補的な上記オリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVゲノムの可変領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブそれぞれとの間に形成されたハイブリッド;(ii)固定化コントロールプローブに含まれる標識、またはポジティブコントロールプローブおよび/またはネガティブコントロールプローブを含むハイブリッド(1つまたは複数);および(iii)上記ブランクスポットにおけるシグナルを評価して、サンプル中の上記SARS−CoVの有無、または、量を決定することを含んでなる。
【0118】
当該チップは、SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、固定化コントロールプローブ、ポジティブコントロールプローブおよびネガティブコントロールプローブを含んでなることが好ましく、SARS−CoVの存在は:a)SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列の少なくとも1つ、SARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出される;b)固定化コントロールプローブから陽性シグナルが検出される;c)ポジティブコントロールプローブを用いて、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出される;d)ネガティブコントロールプローブを用いて、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出されない;およびe)ブランクスポットにおいて、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出されない場合に、SARS−CoVの存在が決定される。
【0119】
SARS−CoVの可変領域における標的配列を含むことで、SARS−CoVの可能な変異の評価ができる。例えば、SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列の少なくとも1つ、またはSARS−CoVのN遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出されるが、SARS−CoVのS遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを用いて、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出されなければ、SARS−CoVの変異が示される。
【0120】
本方法は、任意の適切な予後判定および診断の目的に用いることができる。一例において、本方法は、SARS様症状、例えば、発熱または高熱、非増殖性咳、筋痛、呼吸困難、高乳酸デヒドロゲナーゼ、低カルシウム血症、およびリンパ球減少症(Boothら、JAMA、2003年5月6日;[印刷前の電子出版])を有する患者の集団からSARS−CoV感染患者を同定するために用いられる。本発明のチップ、方法およびキットは、高乳酸デヒドロゲナーゼ、低カルシウム血症、およびリンパ球減少症などについてのアッセイをさらに含み得る。
【0121】
別の例において、SARS−CoVに関連しないコロナウイルスのヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオイドプローブをさらに含んでなるチップが用いられ、SARSに関連しないコロナウイルス:例えば、鳥類種を感染させるコロナウイルス、例えば、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥伝染性喉頭気管炎ウイルス、ウマ種を感染させるコロナウイルス、例えば、ウマコロナウイルス、イヌ種を感染させるコロナウイルス、例えば、イヌコロナウイルス、ネコ種を感染させるコロナウイルス、例えば、ネココロナウイルスおよびネコ感染性腹膜炎ウイルス、ブタ種を感染させるコロナウイルス、例えば、ブタ流行性下痢ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルスおよびブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス、子ウシ種を感染させるコロナウイルス、例えば、新生子ウシ下痢コロナウイルス、ウシ種を感染させるコロナウイルス、例えば、ウシコロナウイルス、マウス種を感染させるコロナウイルス、例えば、マウス肝炎ウイルス、パフィノシス(puffinosis)種を感染させるコロナウイルス、例えば、パフィノシス(puffinosis)ウイルス、ラット種を感染させるコロナウイルス、例えば、ラットコロナウイルスおよびラットの唾液腺炎ウイルス、シチメンチョウ種を感染させるコロナウイルス、例えば、シチメンチョウコロナウイルス、またはヒト種を感染させるコロナウイルス、例えば、ヒト腸内コロナウイルス、に感染している患者からSARS−CoV感染患者を陽性に同定するために、該方法が用いられる。
【0122】
さらに別の例において、SARS−CoVゲノムの高発現ヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオイドプローブを含んでなるチップが用いられ、早期SARS患者(例えば、SARS−CoVに感染して約1日未満から約3日たっているSARS患者)を診断するために、この方法が用いられる。
【0123】
さらに別の例において、SARSの治療、例えば、インターフェロンまたは種々のRNAウイルスの複製を阻害するリバビリンなどの薬剤による治療をモニターするために本方法が用いられる。また本方法は、薬物スクリーニングアッセイにおいて、可能性のある抗SARS−CoV剤を評価するためにも用いることができる。
【0124】
本発明の方法は、被験体が、SARS様症状を引き起こすSARS−CoVおよび/または非SARS−CoV感染性生物に感染しているかどうかを決定するために用いることができる。SARS様症状を引き起こす非SARS−CoV感染性生物としては、限定はしないが、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスOC43、ヒト腸内コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス(respiratory sncygtical virus)、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、肺炎マイコプラスマ、肺炎クラミジア病原体、麻疹ウイルスおよび風疹ウイルスが挙げられる。インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルスまたはB型インフルエンザウイルスであり得る。パラインフルエンザウイルスは、パラインフルエンザウイルス1、パラインフルエンザウイルス2、パラインフルエンザウイルス3、またはパラインフルエンザウイルス4であり得る。
【0125】
また、本発明の方法は、被験体が、被験体の免疫系を損傷するSARS−CoVおよび/または非SARS−CoV感染性生物に感染しているかどうかを決定するために用いることができる。被験体の免疫系を損傷する非SARS−CoV感染性生物としては、限定はしないが、肝炎ウイルス、輸血媒介ウイルス(TTV),ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、パルボウイルス、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV),エプスタイン−バーウイルス(EBV)および梅毒トレポネーマが挙げられる。肝炎ウイルスは、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、またはG型肝炎ウイルス(HGV)であり得る。HIVは、HIV Iであり得る。パルボウイルスは、パルボウイルスB19であり得る。
【0126】
また、本発明の方法は、被験体が、SARS−CoVおよび/または非SARS−CoVコロナウイルス科のウイルスに感染しているかどうかを決定するために用いることができる。非SARS−CoVコロナウイルス科のウイルスとしては、限定はしないが、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥伝染性喉頭気管炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、ウマコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネココロナウイルス、ブタ流行性下痢ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、ウシコロナウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、ラットコロナウイルス、新生子ウシ下痢コロナウイルス、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス、パフィノシス(puffinosis)ウイルス、シチメンチョウコロナウイルスおよびラットの唾液腺炎ウイルスが挙げられる。
【0127】
任意の適切なSARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列をアッセイすることができる。例えば、アッセイすべきSARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列は、SARS−CoV RNAまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列、または抽出されたSARS−CoV RNAまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列から増幅されたDNA配列であり得る。
【0128】
SARS−CoV RNAまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列は、任意の適切な方法により調製できる。例えば、SARS−CoV RNAまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列は、SARS−CoV RNAまたは非SARS−CoV感染性生物に感染した細胞または他の材料から、QIAamp ウイルスRNAキット、Chomczynski−Sacchi法またはTRIzolを用いて抽出できる。(DePaulaら、J.Virol.Methods、98(2):119−25頁(2001))。SARS−CoV RNAまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列は、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物に感染した細胞または他の材料から、QIAamp ウイルスRNAキットを用いて抽出されることが好ましい。SARS−CoV RNAまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列は、任意の適切な供給源から抽出できる。例えば、SARS−CoV RNAまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列は、痰または唾液のサンプルから抽出できる。別の例において、SARS−CoV RNAまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列は、血液サンプルのリンパ球から抽出できる。
【0129】
SARS−CoV RNAまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列は、任意の適切な方法、例えば、PCRにより増幅できる。PCRの間、標識を増幅DNA配列に組み込むことが好ましい。任意の適切なPCR、例えば、従来のPCR、マルチプレックスPCR,ネステッドPCRまたはRT−PCRが使用できる。一例において、PCRは、第一のステップがRT−PCRであり、第二のステップが従来のPCRである2ステップネステッドPCRを含み得る。別の例において、PCRは、複数の5’および3’特異的プライマーを用いる1ステップマルチプレックスRT−PCRを含んでなることができ、上記特異的プライマーの各々は、増幅すべき標的配列に相補的な特異的配列、および共通配列、ならびに5’および3’ユニバーサルプライマーを含んでなり、上記5’ユニバーサルプライマーは、5’特異的プライマーの共通配列に相補的であり、上記3’ユニバーサルプライマーは、3’特異的プライマーの共通配列に相補的であり、上記PCRにおいて、5’および3’ユニバーサルプライマーの濃度は、各々、5’および3’特異的プライマーの濃度に等しいか、またはそれより高い。3’ユニバーサルプライマーおよび/または5’ユニバーサルプライマーは、標識化、例えば、蛍光標識化されることが好ましい。さらに別の例において、上記PCRは、複数ステップのネステッドPCRまたはRT−PCRを含んでなる。さらに別の例において、上記PCRは、表18に記載されたSARS−CoVに対する以下のプライマー対の少なくとも1つを用いて行われる。
【0130】
(表18.例示的なSARS−CoVプライマー)
【0131】
【表18−1】

【0132】
【表18−2】

【0133】
【表18−3】

【0134】
【表18−4】

【0135】
【表18−5】


【0136】
さらに別の例において、上記PCRは、表19に記載されたSARS様症状を引き起こす非SARS−CoV感染性生物に対する以下のプライマー対の少なくとも1つを用いて行われる。
【0137】
(表19.SARS様症状を引き起こす非SARS−CoV感染性生物に対する例示的プライマー)
【0138】
【表19−1】

【0139】
【表19−2】

【0140】
【表19−3】

【0141】
【表19−4】

【0142】
【表19−5】

【0143】
【表19−6】

【0144】
【表19−7】

【0145】
【表19−8】


【0146】
さらに別の例において、上記PCRは、表20に記載された被験体の免疫系を損傷する非SARS−CoV感染性生物に対する以下のプライマー対の少なくとも1つを用いて行われる。
【0147】
(表20.被験体の免疫系を損傷する非SARS−CoV感染性生物に対する例示的プライマー)
【0148】
【表20−1】

【0149】
【表20−2】

【0150】
【表20−3】

【0151】
【表20−4】

【0152】
【表20−5】

【0153】
【表20−6】


【0154】
さらに別の例において、上記PCRは、表21に記載された非SARS−CoVコロナウイルス科のウイルスに対する以下のプライマー対の少なくとも1つを用いて行われる。
【0155】
(表21.非SARS−CoVコロナウイルス科のウイルスに対する例示的プライマー)
【0156】
【表21−1】

【0157】
【表21−2】

【0158】
【表21−3】


【0159】
(D. SARS−CoVおよび非SARS−CoV感染性生物のプライマー、プローブ、キットならびにそれらの使用)
さらに別の態様において、本発明は、SARS−CoVおよび/または非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列を増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーに関し、上記オリゴヌクレオチドプライマーは:a)表18または表19〜表21に記載される、標的SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列またはその相補鎖と、高ストリンジェンシー下でハイブリダイズするか;またはb)表18または表19〜表21に記載されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでなる標的SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列に、少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなる。
【0160】
本発明のプライマーは、任意の適切なタイプの核酸、例えば、DNA,RNA,PNAまたはそれらの誘導体を含み得る。該プライマーは、表18または表19〜表21に記載されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでなることが好ましい。
【0161】
特定の一実施形態において、本発明は、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列を増幅するためのキットに関し、上記キットは:a)上記のプライマー;およびb)プローブを用いて、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオトチド配列を増幅できる核酸ポリメラーゼを含んでなる。該核酸ポリメラーゼは、逆転写酵素であることが好ましい。
【0162】
さらに別の態様において、本発明は、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオトチド配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブに関し、上記オリゴヌクレオチドプローブは:a)表13または表15〜表17に記載される標的SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列またはその相補鎖と、高ストリンジェンシー下でハイブリダイズするか;またはb)表13または表15〜表17に記載されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでなる標的SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列に、少なくとも90%の同一性を有するヌクレオチド配列を含んでなる。
【0163】
本発明のプローブは、任意の適切なタイプの核酸、例えば、DNA,RNA,PNAまたはそれらの誘導体を含み得る。該プローブは、表13または表15〜表17に記載されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでなることが好ましい。また、該プローブは、標識(例えば、化学標識、酵素標識、免疫標識、放射性標識、蛍光標識、発光標識およびFRET標識)されることが好ましい。
【0164】
特定の一実施形態において、本発明は、SARS−CoVおよび/または非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列をハイブリダイゼーション分析するためのキットに関し、上記キットは:a)上記プローブ;およびb)SARS−CoVおよび/または非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列と上記プローブとの間に形成されたハイブリッドを評価する手段を含んでなる。
【0165】
該オリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブは、任意の適切な方法により作製できる。例えば、該プローブは、化学合成され得る(一般的には、Ausubel(編)Current Protocols in Molecular Biology、2.11.Synthesis and purification of oligonucleotides、John Wiley & Sons,Inc.(2000)を参照)か、天然の供給源から分離できるか、組み換え法により作製できるか、またはそれらの組み合わせにより作製できる。また、合成オリゴヌクレオチドは、Matteucciら、J.Am.Chem.Soc.、3:3185−3191頁(1981)のトリエステル法を用いて調製することもできる。あるいは、例えば、ホスホラミダイト化学を用いる、Applied Biosynthesis DNA合成機での自動合成が好ましい。該プローブおよび該プライマーは、化学合成されることが好ましい。
【0166】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーの調製に適切な塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、およびチミンなどの天然に存在するヌクレオチド塩基から選択できる。また、8−オキソ−グアニン、6−メルカプトグアニン、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシエチル)ウリジン、2’−O−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノ−メチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノメチルウリジン、ジヒドロウリジン、2’−O−メチルプソイドウリジン、ベータ−D−ガラクトシルクエオシン、2’−Oメチルグアノシン、イノシン、N6−イソペンテニルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルプソイドウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、ベータ−D−マンノシルクエオシン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、5−メトキシウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、N−((9−ベータ−D−リボフラノシル−2−メチルチオプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、N−((9−ベータ−D−リボフラノシルプリン−6−イル)N−メチルカルバモイル)トレオニン、ウリジン−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウリジン−5−オキシ酢酸、ウィブトキソシン、プソイドウリジン、クエオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、2−チオウリジン、5−メチルウリジン、N−((9−ベータ−D−リボフラノシルプリン−6−イル)カルバモイル)トレオニン、2’−O−メチル−5−メチルウリジン、2’−O−メチルウリジン、ウィブトシン、および3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウリジンなどの非天然または「合成」ヌクレオチド塩基からも選択できる。
【0167】
同様に、オリゴヌクレオチドの化学的アナログ(例えば、ホスホジエステル結合が、たとえば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、またはホスホラミデートに改変されているオリゴヌクレオチド)もまた使用できる。分解からの保護は、オリゴヌクレオチドの3’端におけるホスホジエステル結合の代わりに、耐ヌクレアーゼ結合が置換される「3’端キャップ」法により達成される(Shawら、Nucleic Acids Res.、19:747頁(1991))。ホスホルアミデート類、ホスホロチオエート類、およびメチルホスホネート結合の全ては、この様式で適切に機能する。ホスホジエステル骨格の修飾を拡大することにより、安定性が付与されることが示されており、親和性の増強およびオリゴヌクレオチド類の細胞透過性の増大を考慮に入れることができる(Milliganら、J.Med.Chem.、36:1923頁(1993))。多くの異なる化学的方法が、全ホスホジエステル骨格を新規な結合と置き換えるために使用されている。骨格アナログとしては、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ボラノホスフェート、ホスホトリエステル、ホルムアセタール、3’−チオホルムアセタール、5’−チオホルムアセタール、5’−チオエーテル、カーボネート、5’−N−カルバメート、サルフェート、スルホネート、スルファメート、スルホンアミド、スルホン、スルフィット、スルホキシド、スルフィド、ヒドロキシルアミン、メチレン(メチルイミノ)(MMI)またはメチレンオキシ(メチルイミノ)(MOMI)結合が挙げられる。ホスホロチオエートおよびメチルホスホネート−修飾オリゴヌクレオチド類は、自動化オリゴヌクレオチド合成を介するそれらの利用可能性のため、特に好ましい。該オリゴヌクレオチドは、(Milliganら、J.Med.Chem.、36:1923頁(1993))により記載されるような「ペプチド核酸」であり得る。この唯一必要なことは、オリゴヌクレオチドプローブが、その配列の一部に標的SARS−CoV配列の一部に結合できる配列を有する必要があることである。
【0168】
ハイブリダイゼーションプローブまたは増幅プライマーは、任意の適切な長さであり得る。該プローブが、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物の標的核酸にハイブリダイズし、プローブまたはプライマーとして有効に機能する(例えば、検出または増幅を促進する)限り、プローブまたはプライマーの長さに下限または上限はない。本発明の該プローブまたはプライマーは、50、40、30、20、15、または10個の短さのヌクレオチド、またはそれ以下で短さであり得る。同様に、該プローブまたはプライマーは、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物の標的配列の完全長に対して20、40、50、60、75、100または200個の長さのヌクレオチド、またはそれ以上の長さであり得る。一般に、プローブは、相補的標的核酸鎖の少なくとも14個のヌクレオチド、好ましくは、少なくとも18個のヌクレオチド、より好ましくは、少なくとも20個から30個までのいずれかのヌクレオチドを有し、ヘアピン第二次構造は含有しない。特定の実施形態において、該プローブは、少なくとも30個のヌクレオチド、または少なくとも50個のヌクレオチドの長さを有することができる。完全な相補性がある場合、すなわち、該鎖が、プローブの鎖と等しい配列を含有する場合、この二重鎖は、ストリンジェンシー下でも比較的安定であり、該プローブは短くてもよく、すなわち約10〜30の塩基対の範囲内でもよい。ある程度のミスマッチが、プローブ内で予想される場合、すなわち、該プローブが、可変領域、または特定の属内の全ての種などの配列群にハイブリダイズする疑いがある場合、該プローブは、ミスマッチ(1つまたは複数)の作用を相殺するためにより大きな長さ(すなわち、15〜40の塩基)であり得る。
【0169】
該プローブは、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物の標的遺伝子に及ぶ必要はない。SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物の標的または対立遺伝子を、具体的に同定する可能性を有する標的領域の任意のサブセットを使用することができる。その結果、核酸プローブは、標的領域の8個と少ないヌクレオチド類にハイブリダイズできる。さらに、プローブの断片が、分類されるSARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物の標的遺伝子に十分に特徴的である限り使用できる。
【0170】
該プローブまたはプライマーは、長さが少なくとも8個のヌクレオチドであるSARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物の標的ヌクレオチド配列と低ストリンジェンシー下でハイブリダイズできるはずである。該プローブまたはプライマーは、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物の標的ヌクレオチド配列と中程度または高ストリンジェンシー下でハイブリダイズすることが好ましい。
【0171】
さらに別の態様において、本発明は、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物の標的遺伝子を分類するために、支持体上に固定化されたオリゴヌクレオチドのアレイ関するものであり、このアレイは、核酸のハイブリダイゼーションの使用に適切な支持体を含んでなり、複数のオリゴヌクレオチドプローブが支持体上に固定化されており、上記プローブの少なくとも1つは:a)高ストリンジェンシー下、表13または表15〜17に記載される、標的SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列、またはその相補鎖とハイブリダイズするか;またはb)表13または表15〜17に記載される、ヌクレオチド配列、またはその相補鎖を含んでなる標的SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、ヌクレオチド配列を含んでなる。
【0172】
複数のプローブが、DNA、RNA、PNAまたはそれらの誘導体を含むことができる。該プローブの少なくとも1つまたは幾つかは、表13または表15〜17に記載される、ヌクレオチド配列、またはその相補鎖を含むことができる。プローブアレイは、表13または表15〜17に記載される、全てのヌクレオチド配列、またはそれらの相補鎖を含んでなることが好ましい。該プローブの少なくとも1つ、幾つかまたは全てを標識することができる。代表的標識としては、化学標識、酵素標識、免疫標識、放射性標識、蛍光標識、発光標識およびFRET標識が挙げられる。任意の適切な支持体、例えば、シリコン、プラスチック、ガラス、セラミック、ゴム、およびポリマー表面を使用することができる。
【0173】
(E. アッセイ様式)
(プローブの固定化)
本法、プローブおよびプローブアレイは溶液中で使用できる。それは、例えば、固体支持体上に固定化されたプローブ(1つまたは複数)を用いることにより、チップ様式で実施するのが好ましい。
【0174】
プローブは、任意の適切な表面、好ましくは、シリコン、プラスチック、ガラス、セラミック、ゴム、およびポリマー表面などの固体支持体上に固定化できる。プローブはまた、3次元多孔性ゲル基材、例えば、Packard HydroGelチップに固定化できる(Broudeら、Nucleic Acids Res.、29(19):E92頁(2001))。
【0175】
アレイベースアッセイについては、プローブは、「バイオチップ」などの固体支持体に固定化することが好ましい。この固体支持体は、粒子、繊維、沈殿物、ゲル、シート、チューブ、球体、容器、キャピラリ、パッド、スライス、フィルム、プレート、スライドとして存在する、生物学的、非生物学的、有機、無機、またはこれらの任意の組み合わせであり得る。
【0176】
プローブのライブラリーを含有するマイクロアレイバイオチップは、例えば、米国特許第5,143,854号、米国特許第5,384,261号または米国特許第5,561,071号に記載されるVLSIPS(商標);米国特許第5,541,061号に記載されるようなビーズベース法;および米国特許第5,288,514号に詳述されているようなピンベース法などの光有向法を含む多くの周知のアプローチにより調製できる。VLSIPS(商標)を用いてマイクロアレイとして異なる二重鎖プローブのライブラリー調製を詳述する米国特許第5,556,752号もまた、マイクロアレイにおけるヘアピンプローブのライブラリー調製に適している。
【0177】
米国特許第5,677,195号および米国特許第5,384,261号に記載されるようなフローチャネル法は、種々の異なるプローブを有するマイクロアレイバイオチップを調製するために使用できる。この場合、プローブが、フローチャネルから支持体へ送達されると、基材のある一定の活性化領域が機械的に分離される。フローチャネル法の詳細な記載は、指定されたフローパスを通って液体の有向チャネリングを増強するための保護コーティング湿潤促進剤の使用を含めて、米国特許第5,556,752号に見ることができる。
【0178】
種々のプローブをその上に固定化させたマイクロアレイバイオチップを調製するためにスポッティング法を使用することもできる。この場合、反応物は、支持体の選択された領域に比較的少量を直接付着させることにより送達される。もちろん幾つかのステップにおいて、支持体表面全体を、特定の溶液によりスプレーあるいはコーティングできる。特定の様式において、ディスペンサーを領域ごとに移動させて、各停止箇所において必要なだけのプローブまたは他の試薬を付着させる。溶液または他の流体を含有するプローブを支持体に送達するための、典型的なディスペンサーとしては、マイクロピペット、ナノピペット、インクジェット型カートリッジおよびピンが挙げられ、任意に、支持体に関してこれらの送達装置の位置をコントロールするためのロボットシステムが挙げられる。他の様式において、種々の試薬が、反応領域に同時に送達できるようなディスペンサーとしては、一連のチューブまたは複数ウェルトレー、分岐管、および送達装置のアレイが挙げられる。スポッティング法は、当該分野で周知であり、例えば、米国特許第5,288,514号、米国特許第5,312,233号および米国特許第6,024,138号に記載されたものが挙げられる。幾つかの場合において、固定化プローブを有するマイクロアレイバイオチップを調製するために、支持体の予め規定された領域上のフローチャネルおよび「スポッティング」の組合せもまた使用できる。
【0179】
プローブを固定化するための固体支持体は、平坦であることが好ましいが、代わりの表面形状をとってもよい。例えば、固体支持体は、プローブ合成が行われるか、またはプローブが結合する隆起領域または窪み領域を含有してもよい。幾つかの実施形態において、固体支持体は、適切な光吸収特性を提供するために選択できる。例えば、該支持体は、重合化ラングミュア・ブロジェット膜、ガラスまたは機能化ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO、SiN、修飾シリコン、または種々のゲル、あるいは(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)ビニリデンジフルオリド、ポリスチレン、ポリカーボネートなどのポリマーのうちいずれか1種、またはそれらの組合せであってもよい。他の適切な個体支持体材料は、当業者にとって容易に明らかであろう。
【0180】
固体支持体の表面は、反応性基を含有することができ、それらとしては、オリゴヌクレオチドまたは核酸と結合した反応性基に共役するのに適切なカルボキシル、アミノ、ヒドロキシル、チオールなどが挙げられる。該表面は、好ましくは、光学的に透明であり、シリカ表面に見られるものなど、Si−OH官能化表面を有する。
【0181】
該プローブは、当該分野で周知のイオン力、共有力または他の力によるなど化学的または物理的手段により、支持体に結合できる。核酸およびオリゴヌクレオチド類の固定化は、当該分野で周知の任意の手段により達成できる(例えば、Dattaguptaら、Analytical Biochemistry、177:85−89頁(1989);Saikiら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、86:6230−6234(1989);およびGravittら、J.Clin.Micro.、36:3020−3027頁(1998)を参照)。
【0182】
該プローブは、Lockhartらに対する米国特許第5,556,752号に記載されるとおり、ハイブリダイゼーションアッセイに役立ち得るプローブの二重鎖部分間のスペースを提供できるスペーサー分子により支持体に結合できる。スペーサー分子は、典型的に長さが6個から50個の間の原子を含んでなり、支持体に結合する表面結合部分を含む。支持体に対する結合は、例えば、(ポリ)トリフルオロクロロエチレン表面を用いて炭素−炭素結合により、または好ましくないシロキサン結合(例えば、固体支持体としてガラスまたは酸化シリコンを用いて)により達成できる。シロキサン結合は、支持体をスペーサーのトリクロロシリル基またはトリアルコキシシリル基と反応させることにより形成できる。アミノアルキルシラン類およびヒドロキシアルキルシラン類、ビス(2−ヒドロキシエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランまたはヒドロキシプロピルトリエトキシシランは、表面結合基で有用である。
【0183】
該スペーサーはまた、プローブの表面結合部分に結合している拡張部分または長鎖部分を含むことができる。例えば、アミン類、ヒドロキシル、チオール、およびカルボキシル基は、スペーサーの拡張部分を表面結合部分に結合させるのに適切である。スペーサーの拡張部分は、ポリマー合成のためのその後の条件に対しても不活性である任意の種々の分子であり得る。これらの長鎖部分は、典型的にはアリールアセチレン、2〜14のモノマー単位を有するエチレングリコールオリゴマー類、ジアミン類、ジ酸類、アミノ酸類、ペプチド類、またはそれらの組合せである。
【0184】
幾つかの実施形態において、スペーサーの拡張部分は、ポリヌクレオチドであるか、またはスペーサー全体が、ポリヌクレオチドであり得る。スペーサーの拡張部分はまた、ポリエチレングリコール類、ポリヌクレオチド類、アルキレン、ポリアルコール、ポリエステル、ポリアミン、ポリホスホジエステルおよびそれらの組合せから構築できる。さらに、プローブ合成に使用するため、スペーサーは、スペーサーの遠位端または末端(固体支持体の反対側)に官能基(例えば、ヒドロキシル、アミノ酸またはカルボン酸)に結合した保護基を有することができる。脱保護とカップリング後、上記遠位端は、オリゴマーまたはプローブに共有結合できる。
【0185】
本法は、一度に単一プローブにより単一サンプルを分析するために使用できる。本法は、ハイスループット様式で実施されることが好ましい。例えば、複数のサンプルを、単一プローブにより同時に分析できるか、または単一サンプルを、複数のプローブを用いて同時に分析できる。複数のサンプルを、複数のプローブを用いて同時に分析できることがより好ましい。
【0186】
(ハイブリダイゼーション条件)
ハイブリダイゼーションは、当該分野で公知の任意の適切な方法のもとで実施できる。ハイブリダイゼーション条件は、ハイブリダイゼーションの程度、ハイブリダイゼーションの特異性のレベル、および非特異的結合のバックグラウンドレベルを増加させるか、または減少させるために変えることができること(すなわち、ハイブリダイゼーションまたは洗浄塩の濃度または温度を変えることによって)は当業者にとって明らかであろう。プローブと標的ヌクレオチド配列との間のハイブリダイゼーションは、高、中程度または低ストリンジェンシーを含めて、任意の適切な緊縮下で実施できる。典型的には、ハイブリダイゼーションは、高ストリンジェンシー条件下で実施される。
【0187】
プローブと標的核酸との間のハイブリダイゼーションは、同種、例えば分子ビーコン(Tyagi S.ら、Nature Biotechnology、14:303−308頁(1996);および米国特許第6,150,097号)およびハイブリダイゼーション保護アッセイ(Gen−Probe社)(米国特許第6,004,745号)に用いられている典型的な条件、または異種(異なるタイプのニトロセルロースベースのハイブリダイゼーションに用いられている典型的な条件および磁気ビーズベースのハイブリダイゼーションに用いられているもの)であり得る。
【0188】
標的ポリヌクレオチド配列は、高ストリンジェンシーから低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションおよび洗浄条件下で標的配列の配列と安定なハイブリッドを形成するオリゴヌクレオチドプローブによるハイブリダイゼーションによって検出できる。ハイブリダイゼーションによる検出の利点は、使用されるプローブに依って、さらなる特異性が可能なことである。プローブが、標的配列に対して完全に相補的(すなわち、約99%以上)であることが予想される場合、高ストリンジェントな条件が用いられる。幾つかの誤対合が予想される場合、例えば、プローブが、完全相補的ではない結果、変株が予想される場合、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを低下させることができる。しかしながら、非特異的なハイブリダイゼーションを最少にするか、または排除する条件が選択される。
【0189】
ハイブリダイゼーションに影響を与える条件、および非特異的ハイブリダイゼーションに対して選択する条件は、当該分野で公知である(Molecular Cloning A Laboratory Mannual、第2版、J.Sambrook、E.Fritsch、T.Maniatis、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年)。一般に、低塩濃度および高温で、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加させる。例えば、一般にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、凡そ0.1×SSC、0.1%SDSを含有する溶液中、約65℃の温置/洗浄温度での温置が挙げられる。中程度ストリンジェントな条件は、凡そ1〜2×SSC、0.1%SDSを含有する溶液中、約50℃〜65℃の温置/洗浄温度での温置である。低ストリンジェントな条件は、約30℃〜50℃で2×SSCである。
【0190】
ハイブリダイゼーションおよび洗浄の代替法は、先ず低緊縮ハイブリダイゼーション(5×SSPE、0.5%SDS)の実施に次いで、3M塩化テトラメチルアンモニウム(TMAC)の存在下、高ストリンジェントな洗浄を実施することである。TMACの効果は、所与の温度でのハイブリダイゼーションの効率が、ポリヌクレオチドの長さに、より密接に対応するように、A−TおよびG−C塩基対の相対的結合を均一にすることである。TMACを用いて、所望のストリンジェントなレベルを達成するために、洗浄温度を変えることは可能である(Woodら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:1585−1588頁(1985))。
【0191】
ハイブリダイゼーション溶液は、25%ホルムアミド、5×SSC、5×Denhardt溶液、100μg/mlの一本鎖DNA、5%硫酸デキストラン、またはプローブハイブリダイゼーションに有用な公知の他の試薬を含有し得る。
【0192】
(ハイブリッドの検出)
プローブと標的SARS−CoV核酸との間のハイブリダイゼーションの検出は、当該分野で公知の任意の方法、例えば、プローブの標識、第2のプローブ、標的核酸またはそれらの組合せにより実施でき、本発明の目的に適切である。あるいは、ハイブリッドは、検出可能な標識の不在下、質量分析法により検出できる(米国特許第6,300,076号)。
【0193】
検出可能な標識は、ハイブリダイゼーション後、直接または間接のいずれかで検出できる部分である。言い換えれば、検出可能な標識は、測定可能な物性(例えば、蛍光または吸収)を有するか、酵素反応に関与する。直接標識を用いて、標的ヌクレオチド配列またはプローブを標識し、ハイブリッド中の標識を検出することによりハイブリッド形成を評価する。間接標識を用いて、第2のプローブを標識し、第2のプローブと元のハイブリッドとの間で形成された第2のハイブリッドの検出によりハイブリッド形成を評価する。
【0194】
プローブまたは核酸を標識する方法は、当該分野で周知である。適切な標識としては、蛍光体、発色団、発光団、放射性同位元素、高電子密度試薬、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)、特異的結合パートナーを有する酵素およびリガンドが挙げられる。特に有用な標識は、酵素などの酵素的活性基(Wisdom、CLIN.CHEM.、22:1243(1976));酵素基質(英国特許第1,548,741号);補酵素(米国特許第4,230,797号および米国特許第4,238,565号)および酵素阻害剤(米国特許第4,134,792号);蛍光剤(SoiniおよびHemmila、Clin.Chem.、25:353頁(1979)および同文献、1531頁);特異的結合の可能なリガンド類、すなわち、タンパク質結合リガンド類;抗原;およびH、35S、32P、125Iおよび14Cなどの放射性同位元素を含んでなる残基である。このような標識は、それら自体の物性(例えば、蛍光剤、発色団および放射性同位元素)またはそれらの反応性または結合性(例えば、抗体、酵素、基質、補酵素および阻害剤)に基づいて検出される。リガンド標識はまた、オリゴヌクレオチドプローブの固相捕捉(すなわち、捕捉プローブ)に有用である。代表的な標識としては、ビオチン(標識されたアビジンまたはストレプトアビジンに結合することにより検出可能)および西洋わさびペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素(着色反応生成物を生成する酵素基質の添加により検出可能)が挙げられる。
【0195】
例えば、放射性同位元素で標識したプローブまたは標的核酸は、オートラジオグラフィにより検出できる。あるいは、蛍光部分により標識されたプローブまたは標的核酸は、当該分野で公知の蛍光測定法により検出できる。ハプテンまたはリガンド(例えば、ビオチン)標識核酸は、標識リガンド(例えば、アビジン)を結合するハプテンまたはタンパク質に、抗体または抗体色素を添加することにより検出できる。
【0196】
さらなる代替として、プローブまたは核酸は、ハイブリダイゼーションを検出するためにさらなる試薬を必要とする部分によって標識できる。この標識が酵素である場合、標識された核酸、例えば、DNAを最終的に適切な媒体に入れて触媒作用の範囲を決定する。例えば、補因子標識核酸は、標識が、酵素に関する補因子および基質である酵素を添加することにより検出できる。したがって、酵素がホスファターゼである場合、媒体は、リン酸ニトロフェニルを含有でき、色を観察することにより発生したニトロフェノール量をモニタリングすることができる。酵素が、ベータ−ガラクトシダーゼである場合、媒体は、ニトロフェノールも遊離するo−ニトロ−フェニル−D−ガラクト−ピラノシドを含有することができる。後者の代表例としては、限定はしないが、ベータ−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼ、パパインおよびペルオキシダーゼが挙げられる。インサイチュハイブリダイゼーション試験に関して、基質の最終生成物は、水不溶性であることが好ましい。他の標識、例えば、色素は、通常の当業者にとって明らかであろう。
【0197】
該標識は、共有結合を伴うなどの直接的化学結合によるか、またはマイクロカプセルまたはリポソームへの標識の組み込み、次いで結合リガンドへの結合によるなどの間接的結合により、DNA結合リガンド、例えば、アクリジン染料、フェナントリジン類、フェナジン類、フロクマリン類、フェノチアジン類およびキノリン類に直接結合できる。標識を、インターカレーター化合物などのDNA結合リガンドに結合する方法は、当該分野で周知であり、任意の便利な方法を使用できる。代表的なインターカレーティング剤としては、モノ−またはビス−アジドアミノアルキルメチジウムまたはエチジウム化合物、エチジウムモノアジドエチジウムジアジド、エチジウムダイマーアジド(Mitchellら、J.Am.Chem.Soc.、104:4265頁(1982)))、4−アジド−7−クロロキノリン、2−アジドフルオレン、4’−アミノメチル−4,5’−ジメチルアンゲリシン、4’−アミノメチル−トリオキサレン(4’アミノメチル−4,5’,8−トリメチル−プソラレン)、3−カルボキシ−5−または−8−アミノ−または−ヒドロキシ−プソラレンが挙げられる。特異的核酸結合アジド化合物は、Forsterら、Nucleic Acid Res.、13:745頁(1985)により記載される。他の有用な光反応性インターカレーターは、ピリミジン残基と(2+2)環付加物を形成するフロクマリン類である。アルキル化剤もまた、DNA結合リガンドとして用いることができ、例えば、ビス−クロロエチルアミン類およびエポキシド類またはアジリジン類、例えば、アフラトキシン類、多環式炭化水素エポキシド類、マイトマイシンおよびノルフィリンAが挙げられる。特に有用な光反応性形態のインターカレーティング剤は、アジドインターカレーター類である。それらの反応性ニトレン類は、長波長紫外線または可視光線で容易に生成し、アリールアジドのニトレン類が、それらの転移生成物よりも挿入反応に好ましい(Whiteら、Meth.Enzymol.、46:644頁(1977))。
【0198】
プローブはまた、逆ドットブロットのための10〜100T残基の付加またはウシ血清アルブミンへの共役あるいは磁気ビーズ上への固定化など特異的様式における使用のために修飾し得る。
【0199】
間接的検出法によるハイブリダイゼーションを検出する際、検出可能に標識された第2のプローブ(1つまたは複数)を、プローブと標的との間の最初のハイブリダイゼーション後、またはプローブと標的のハイブリダイゼーション時に添加できる。第2のプローブの添加後、任意に、ハイブリダイゼーション条件を変更できる。ハイブリダイゼーション後、例えば、最初のプローブが、固体支持体上に固定化されている場合、ハイブリダイズされなかった第2のプローブは、洗浄することにより最初のプローブから分離することができる。固体支持体の場合、支持体上の位置に結合した標識の検出により、サンプル中の標的ヌクレオチド配列がプローブへハイブリダイゼーションしたことを示している。
【0200】
検出可能に標識されたプローブは、特異的プローブであり得る。あるいは、検出可能に標識されたプローブは、変性プローブ、例えば、米国特許第5,348,855号に本質的に記載される、ゲノムDNA全体などの配列の混合物であり得る。後者の場合の標識は、第2のプローブが二重鎖DNAを含有する場合、インターカレーティング染色により達成できる。好ましいDNA結合リガンドは、上記のものなど、インターカレーター化合物である。
【0201】
第2のプローブはまた、無作為ヌクレオチドプローブ配列のライブラリーであり得る。第2のプローブの長さは、第2のプローブにより検出すべき固体支持体上の第1のプローブまたは標的ヌクレオチド配列の長さおよび組成を考慮して決定すべきである。このようなプローブライブラリーは、光活性可能な試薬で標識された3’または5’末端および蛍光体、酵素、色素、発光体、または他の検出可能な公知の部分などの検出試薬を担持した他の末端により提供されることが好ましい。
【0202】
標識核酸の作製に用いられる特定の配列は、変えることができる。したがって、例えば、アミノ置換プソラレンは、先ず、標識に結合できるペンダントアミノ基を有する生成物の核酸と光化学的に結合できる。すなわち、標識は、DNA結合リガンドを試験サンプル中の核酸と光化学的に反応させることにより実施される。あるいは、プソラレンを、最初に酵素のような標識と結合させ、次いで核酸と結合できる。
【0203】
有利な点は、DNA結合リガンドを、最初に標識と化学的に結合させ、その後、核酸プローブと結合させることである。例えば、ビオチンは、カルボキシル基を有しているので、フロクマリンの光化学活性またはビオチン生物学的活性を妨害することなく、アミドまたはエステル形成によりフロクマリンと結合できる。アミノメチルアンゲリシン、プソラレンおよびフェナントリジウム誘導体は、同様に塩化アミノプロピルメチジウムなどのハロゲン化フェナントリジウムおよびその誘導体の標識に結合できる(Hertzbergら、J.Amer.Chem.Soc.、104:313頁(1982))。あるいは、ジチオビススクシンイミジルプロピオネートまたは1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなどの二官能試薬は、溶媒、比率および反応条件に関してやはり公知の様式で、反応物がアルキルアミノ残基を有する標識にDNA結合リガンドを直接結合させるために用いることができる。ある二官能試薬、可能性としてグルタルアルデヒドは、適切とはいえないであろう。というのは、それらは、結合する時に核酸を修飾し、したがってアッセイを妨害する可能性があるからである。このような問題点を防ぐために、慣例的な注意を払うことができる。
【0204】
また有利な点は、DNA結合リガンドは、限定はしないが、炭素、酸素、窒素および硫黄など、約40個までの原子、好ましくは約2個から20個までの原子の鎖を含むスペーサーにより標識に結合できることである。このようなスペーサーは、限定はしないが、ペプチド、炭化水素、ポリアルコール、ポリエーテル、ポリアミン、ポリイミンおよび炭水化物、例えば、−グリシル−グリシル−グリシル−または他のオリゴペプチド、カルボニルジペプチド類、およびオメガ−アミノ−アルカン−カルボニル基などを含むメンバーの多官能基であり得る。糖、ポリエチレンオキシド基、グリセリル、ペンタエリトリトールなどの基は、スペーサーとして寄与できる。スペーサーは、核酸結合リガンドおよび/または標識に直接結合させることができるか、またはこの結合が、ジチオビススクシンイミジルプロピオネート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジイソシアネート、カルボジイミド、グリオキサール、グルタルアルデヒドなどのカップラーの二価の基を含むことができる。
【0205】
ハイブリダイゼーションの間接的検出用の第2のプローブは、TyagiおよびKramer、Nature Biotech.、14:303−309頁(1996)またはLizardiらに対する米国特許第5,119,801号および米国特許第5,312,728号により記載された「ビーコンプローブ」法のようなエネルギー移動によっても検出できる。当該分野で公知の任意のFRET検出システムを、本法に用いることができる。例えば、680nmでのレーザー光による照射の際、ドナービーズにおける光増感剤は、周囲の酸素を一重項状態の酸素に変換する。励起一重項状態の酸素分子は、凡そ250nm(1個のビーズ径)を拡散してから、急速に減衰する。受容体ビーズが、ドナービーズに密に近接している場合、生物学的相互作用の理由で、一重項状態の酸素分子は、受容体ビーズにおける化学発光基と反応し、エネルギーを直ちに同じビーズの蛍光受容体に移動させる。これらの蛍光受容体は、発光波長を520〜620nmにシフトさせる。反応全体は、0.3秒の減衰半減期を有することから、測定は、時間分解モードで行うことができる。他の代表的なFRETドナー/受容体ペアとしては、55Åの有効距離を有するフルオレセイン(ドナー)およびテトラメチルローダミン(受容体);44Åの有効距離を有するIAEDANS(ドナー)とフルオレセイン(受容体);および61Åの有効距離を有するフルオレセイン(ドナー)とQSY−7色素(受容体)(Molecular Probes)が挙げられる。
【0206】
また、核酸検出に関する定量アッセイを本発明により実施できる。マイクロアレイスポットに結合された第2のプローブ量は、測定でき、サンプル中の核酸量に関連づけることができる。サンプルの希釈は、既知量の標的核酸を含有するコントロールと共に使用することができる。これらのステップを実施するための正確な条件は、当業者に明らかであろう。マイクロアレイ分析において、検出可能な標識は、プローブが結合している部位を確認するために、X線フィルムまたはホスホ画像に隣接してプローブアレイを置くことにより視覚化または評価できる。蛍光は、電荷結合デバイス(CCD)またはレーザー走査により検出できる。
【0207】
(試験サンプル)
ヒト、動物、または環境(例えば、土壌または水)起源のサンプルを含む任意の適切なサンプルが、本法を用いて分析できる。試験サンプルとしては、尿、血液、精液、髄液、膿、羊水、涙液などの体液または半固体または液体排泄物、例えば、痰、唾液、肺吸引液、膣または尿道排泄物、便または生検または絨毛膜絨毛標本などの固体組織サンプルを挙げることができる。試験サンプルはまた、皮膚、性器、または喉からのかき出しにより採取されたサンプルを含む。
【0208】
試験サンプルは、当該分野で周知の種々の手段により、核酸を単離するために処理できる(一般に、Ausubel(編集者)Current Protocols in Molecular Biology、2.Preparation and Analysis of DNA and 4.Preparation and Analysis of RNA、John Wiley & Sons社(2000)を参照)。標的の核酸が、直接サンプルまたは精製核酸またはアンプリコンの形態であってもよいRNAまたはDNAであり得ることは、当業者にとって明らであろう。
【0209】
精製核酸は、前述のサンプルから精製でき、分光学的にまたは純度に関する他の装置により測定できる。核酸増幅分野の当業者において、アンプリコンは、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応法、米国特許第4,683,195号、米国特許第4,683,202号、米国特許第4,800,159号および米国特許第4,965,188号)NASBA(核酸配列ベースの増幅、米国特許第5,130,238号)、TMA(転写媒介増幅)(Kwohら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、86:1173−1177頁(1989))、SDA(Walkerら、米国特許第5,270,184号に記載された鎖置換増幅)、tSDA(高温性鎖置換増幅(米国特許第5,648,211号および欧州特許出願公開第0 684315号)、SSSR(自己保持配列複製)(米国特許第6,156,508号)などの種々の増幅法により、最終生成物として得られる。
【0210】
特定の実施形態において、ヒト起源のサンプルがアッセイされる。さらに他の特定の実施形態において、痰、尿、血液、組織切片、食物、土壌または水サンプルがアッセイされる。
【0211】
(キット)
当該プローブは、標的遺伝子を検出するためにキット様式で、好ましくは、プローブ使用に関する取り扱い説明書と共に包装することができる。キットの構成要素は、典型的には本明細書に開示されている方法の選択された特定の実施形態を実施するための取り扱い説明書を含めて、通常の容器内に共に包装される。本明細書に記載される検出法に関する構成要素、例えば、第2のプローブ、および/または試薬および標識検出を実施するための手段(例えば、放射性標識、酵素基質、抗体など)をキットの中に任意に含んでもよい。
【実施例】
【0212】
(F.実施例)
(実施例1. プローブ設計)
SARS−CoVの種々のゲノム配列は入手できる(例えば、表22を参照)。
【0213】
(表22: 現在(2003年5月2日時点)得られているSARSコロナウイルスのゲノム配列)
【0214】
【表22】

表22に示された9つのゲノムサイズは、極めて類似している。中国により提供された5つのゲノムは、未確認のヌクレオチド(N)の種々の濃度を含む。
【0215】
以下の表23は、SARSコロナウイルスの9つのゲノム間の類似性または相同性を示す。
【0216】
(表23. SARSコロナウイルスの9つのゲノム間の類似性の比較)
【0217】
【表23】

SARSコロナウイルスの9つのゲノム間の類似性を比較した。表23に示されたメンバーは、2つのゲノム間の類似性のパーセンテージを表している。表23における各数値は、比較された全塩基数(約30,000の塩基)で割り、次いで100倍した2つのゲノムにおける同一塩基の数に等しい。
【0218】
種々のSARSコロナウイルスが、BJ04を除いて互いに高い類似性があることを表23は示している。99%よりも低い類似性は、ヌクレオチド配列におけるNの存在により生じる。BJ01〜BJ04およびGZ01のヌクレオチド配列における全てのN数が、他のゲノムと同じと考えられる場合(この仮定は、ゲノムの他の部分の比較に基づいて妥当である)、9つのゲノムは、互いに99%類似している。
【0219】
SARSコロナウイルスは、表22および表23に示されるように保存的であるので、核酸ベースの検出法が合理的である。図1Bは、SARSコロナウイルスゲノムの異なる部分の同時検出が、該検出法の感度と特異性を有意に増大することを示している。
【0220】
本発明者らは、2つの全体的な設計を有する。1つの設計では、SARSコロナウイルスゲノムの異なる部分に関してマルチプレックスPCRを実施し、検出用プローブとしてPCR産物を使用する。第2の設計では、SARSコロナウイルスゲノムの異なる部分に関してマルチプレックスPCRを実施し、検出用プローブとして70マーのオリゴヌクレオチドを使用する。
【0221】
(標的遺伝子の選択)
SARSコロナウイルスゲノムの分析に基づいて、我々は、標的遺伝子として3つの遺伝子を選択した。これら3つの遺伝子は、orf1Aおよび1Bのポリメラーゼタンパク質、スパイクタンパク質、およびヌクレオカプシドタンパク質である。我々は、RNA単離用ポジティブコントロールとしてヒトハウスキーピング遺伝子GAPD(グリセルアルデヒド3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)(GenBank番号:NM_002046)を選択した。我々は、組み入れるポジティブコントロールとして、ヒトおよび共通の病原体のヌクレオチド配列に対して相同性を有さない遺伝子(Arabidopsis)(GenBank番号:GenBank番号:AJ441252)を選択した。
【0222】
(プライマーおよびプローブの設計)
SARSコロナウイルスの3つのタンパク質を分析し、それらの保存配列を比較した。マルチプレックスPCRの要件に従って、同様のTm値を有し、距離が1.5kBあり、200BPから900BPの間の増幅産物を有する複数のプライマー対を、種々のゲノム間で保存配列に基づいて設計した。さらに、複数の非重なりオリゴヌクレオチド(70マー)を、プライマー各対の増幅産物に基づいて設計した。BLASTNを用いてこれらのプライマーおよびプローブを最新のNCBI核酸非重複ヌクレオチドデータベースと比較し、プローブとプライマーの特異性を確認した。
【0223】
(実施例2. 血液サンプルの前処理法)
血液サンプルの前処理は、比較的複雑な過程を含む。しかしながら、血清中、SARSウイルスは比較的低濃度であることが報告されていることを考慮すると、本明細書に記載された前処理は、検出機会を増加させるために、約2mlの全血から効果的にリンパ球の濃度を高めることができる。
【0224】
(1. サンプル採取と移動)
1) 病室の患者から採取されたサンプルを、第1の移動窓に入れる。次いで
該窓のドアを閉めてロックする。
2) 次にサンプルを、第2の移動窓に移す。サンプルをノートに記録し、3つのバーコード標識を印刷する。サンプルを通常の検出のために試験し、前処理移動窓に移す。
【0225】
(2. バイオセーフキャビネットの使用)
1) 前処理過程を実施する病院従業員は、前処理室に入り、ドアを閉める。次いでバイオセーフキャビネットを開ける。キャビネットファンおよびライトは自動的につく。
2) 電源スイッチ、風速スイッチ、および作業ライトスイッチに関する表示ライトを、標準的操作でチェックする。風速選択スイッチの表示ライトがオフ状態であることをチェックする。異常または異例の操作は記録する。
3) アラームスイッチの表示ライトは、自動試験後のバイオセーフキャビネットの標準状態示すアラーム音を立てる。15分後、アラームスイッチの表示ライトからのアラーム音が停止し、バイオセーフキャビネットにおける処理を開始できる。
4) アラーム音が続く場合、キャビネットの処理を開始できないか、または処理中にアラーム音があれば、この処理を中止しなければならない。事故を直ちに記録しなければならない。
5) バイオセーフキャビネットが正常に操作したら、サンプルを、第2の移動窓からとり、キャビネットに入れる。移動窓の上部を、75%アルコールで拭き、0.5%過酢酸でスプレーすることにより清浄にする。次いで移動窓のドアを閉めてロックする、
6) 次に、サンプル前処理の完全処理をバイオセーフキャビネット内で実施する。
【0226】
(3. 血清の単離)
1) 抗凝血剤と共に血液(1.8ml)を、3,500rpmで10分間遠心分離する。上層をマーカーペンでマークする。
2) 次に上層血清(約1.0ml)を採取し、1.5mlの滅菌エッペンドルフ遠心管に入れる。
3) エッペンドルフ遠心管に、バーコード(「P」としてマーク)を標識し、配列番号を標識する。
4) 次にサンプルを、ノートに記録する。
5) 血清サンプルを含む遠心管を、専用サンプルボックスに入れて−80℃で保存する。サンプルボックスの外側に、SARS、血清およびサンプル番号の範囲を標識する。
【0227】
(4. 血液細胞の単離)
1) リンパ球の単離溶液(3.6ml)を、10mlの遠心管に加える。
2) 滅菌生理食塩水(上記の遠心管に取られた血清に等しい容量)を、血液細胞を含む遠心管に加える。血液細胞を、パスツールピペットを用いて生理食塩水に再懸濁する。
3) 再懸濁された血液細胞を、リンパ球単離溶液の上部に徐々に載せ、1,500rpmで20分間遠心分離する。
4) 層間に位置する細胞を採取し、1.5mlの滅菌エッペンドルフ遠心管に入れてから、細胞を遠心沈殿させるために10,000で5分間遠心分離する。上澄み液を取り出す。
5) 次いで細胞ペレットを含有する管に、バーコード(「C」とマーク)を標識し、配列番号で標識する。
6) サンプルをノートに記録する。
7) 血液細胞サンプルを含む遠心管を、専用サンプルボックスに入れて−80℃で保存する。細胞ボックスの外側に、SARS、血清およびサンプル番号の範囲を標識する。
8) 次にバイオセーフキャビネットのガラス面プレートを開ける。次いでバイオセーフキャビネットにおけるベンチ面および他の表面を、70%アルコールで拭き、0.5%過酢酸でスプレーすることにより滅菌する。
9) 清浄後、ガラス面プレートを閉じる。紫外光をキャビネット内に当て15分間つける。
10) バイオセーフキャビネットの電源スイッチを切ってから、サンプル前処理室を離れる。
【0228】
(5. 注意を必要とする事項)
1) リンパ球単離溶液を、冷蔵庫から取り出した直後に使用してはいけない。該溶液は、その温度が室温に到達し、溶液がよく混合されてから使用すべきである。
2) 単離処理全体を、18〜28℃で実施する必要がある。高すぎたりまたは低すぎたりする温度は、単離処理の性質に影響を与え得る。
3) ピペットチップ、エッペンドルフ遠心管、手袋、および処理済み試薬または液体は、廃液タンク(0.5%過酢酸を含有)中に廃棄すべきである。廃棄タンク中の全てのものを、実験後、高圧で処理してから廃棄すべきである。
4) 0.5%過酢酸は、、32mlの16%過酢酸をHO中に希釈し、1,000mlの最終容量を作製することにより調製する。
【0229】
(実施例3. AampウイルスRNAキットを用いてRNAを抽出する方法)
以下の方法を、RNA調製に用いる:
1. Carrier RNAを含有する調製された緩衝液AVLの560μlをピペットにより1.5ml遠心管に入れる。サンプル容量が140μl以上である場合、緩衝液AVL/Carrier RNAの量を比例して増加させる(例えば、280μlのサンプルは、1120μlの緩衝液AVL/Carrier RNAを必要とする)。
2. 140μlの血漿、血清、尿、細胞培養上澄み液、または細胞無しの体液を、マイクロ遠心管の緩衝液AVL/Carrier RNAに加える。パルスボルテックシングにより15秒間混合する。効率的な溶解を保証するために、サンプルを、緩衝液AVLにより完全に混合して均一溶液を生成することが必要である。一度だけ解凍した凍結サンプルもまた使用できる。
3. 室温(15〜25℃)で10分間温置する。ウイルス粒子溶解は、室温で10分間溶解後完全である。より長い時間温置しても、精製RNAの収量または性質に影響を与えない。潜在的病原菌およびRNアーゼは、緩衝液AVL中で不活化される。
4. 1.5mlのマイクロ遠心管を、蓋の内側からの滴を除くために簡単に遠心分離する。
5. 560μlのエタノール(96〜100%)をサンプルに加え、パルスボルテクシングにより15秒間混合する。混合後、1.5mlのマイクロ遠心管を手短に遠心分離して、蓋の内側の滴を除く。他のアルコールは、RNAの収量および純度の減少をもたらすため、エタノールのみが好ましい。サンプルの容量が140μl超である場合は、比例して、エタノールの量を増やす(例えば、280μlのサンプルは、1120μlのエタノールを必要とする)。効率的な結合を保証するためには、サンプルをエタノールと完全に混合して、均一な溶液を得ることが必要である。
6. ステップ5の溶液630μlを、縁を濡らさないように注意して、QIAampスピンカラム(2mlの採集管中)に入れる。キャップを閉め、6000×g(8000rpm)で1分間、遠心分離する。QIAampスピンカラムを清浄な2mlの採集管に入れ、ろ液を含有する上記管を引き抜く。遠心分離時のクロス汚染を避けるために、各スピンカラムを閉じる。マイクロ遠心分離ノイズを制限するために、6,000×g(8000rpm)で遠心分離を行う。フルスピードで遠心分離しても、ウイルスRNAの収量または純度に影響しない。上記溶液が、上記膜を完全に通過しなかった場合は、全ての溶液が通過するまで、より高スピードで、再度遠心分離する。
7. QIAampスピンカラムを注意して開き、ステップ6を繰り返す。サンプル容量が140μl超の場合は、全てのライセートがスピンカラム上に装入されるまで、このステップを繰り返す。
8. QIAampスピンカラムを注意して開き、500mlの緩衝液AW1を加える。キャップを閉じ、6,000×g(8000rpm)で1分間、遠心分離する。QIAampスピンカラムを2mlの採集管(備え付けの)に入れ、ろ液を含有する上記管を引き抜く。元のサンプル容量が140μl超であっても、緩衝液AW1の容量を増加させる必要はない。
9. QIAampスピンカラムを注意して開き、500mlの緩衝液AW2を加える。キャップを閉じ、フルスピード(20,000×g;14,000rpm)で3分間遠心分離する。すぐステップ10に続けるか、または緩衝液AW2のキャリーオーバー可能性の機会を排除するために、ステップ9aを実施してから、ステップ10に続ける。注意:溶出液中の残留緩衝液AW2は、下流の適用において問題を起こし得る。いくつかの遠心分離ローターは、減速時に振動して、流動を生じ、緩衝液AW2を含有して、QIAampスピンカラムに接触し得る。
上記ローターからのQIAampスピンカラムおよび採集管の除去によってもまた流動が生じて、QIAampスピンカラムに接触し得る。これらの場合は、任意のステップ9aを実施すべきである。
9a. (任意):QIAampスピンカラムを新たな2mlの採集管(備え付けでない)に入れ、ろ液を有する古いほうの採集管を引き抜く。フルスピードで1分間、遠心分離する。
10. QIAampスピンカラムを清浄な1.5mlのマイクロ遠心管(備え付けでない)に入れ、ろ液を含有する古いほうの採集管を引き抜く。QIAampスピンカラムを2mlの採集管(備え付けの)に入れ、ろ液を含有する上記管を引き抜く。QIAampスピンカラムを注意して開き、室温に平衡化した60μlの緩衝液AVEを加える。キャップを閉じ、室温で1分間温置する。6,000×g(8000rpm)で1分間遠心分離する。QIAampスピンカラムから少なくとも90%のウイルスRNAを溶出させる上で、60μlの緩衝液AVEによる1回の溶出で十分である。2×40μlの緩衝液AVEを用いて2回の溶出を実施すれば、収率の10%増加までが生じる。30μl未満の容量での溶出は収率の減少をもたらし、溶出液中のRNA最終濃度を増加させない。ウイルスRNAは、−20℃または−70℃で保存した場合、1年まで安定である。
【0230】
以下は、上記手順に関するさらなる情報である:
・ サンプルを室温(15℃〜25℃)に平衡化する。
・ ステップ10の溶出では、緩衝液AVEを室温に平衡化する。
・ 緩衝液AW1、緩衝液AW2、およびキャリアRNAが、14〜15頁の指示にしたがって調製されたかどうかをチェックする。
・ 必要ならば、緩衝液AVL/キャリアRNAにおける沈殿物を、加熱によって再溶解し、使用前に室温まで冷却する。
・ 遠心分離ステップは全て、室温で実施する。
【0231】
(実施例4.SARS−CoV検出チップの例示的なアレイ形式)
図5はSARS−CoV検出チップの例示的なアレイ形式を示している。
【0232】
固定化コントロールは、その末端が蛍光色素HEXにより標識化されているオリゴプローブであり、SARS−CoVを含有するか、含有する疑いのあるサンプルをチップに接触させた場合、いずれのハイブリダイゼーション反応にも関与しない。
【0233】
ポジティブコントロール(Arabidopsis)は、Arabidopsis(モデル生物の一種)によってデザインされたオリゴプローブであり、SARS−CoVを含有するか、または含有する疑いのあるサンプルをチップに接触させた場合、いずれのハイブリダイゼーション反応にも関与しない。ハイブリダイゼーション反応の間、このポジティブコントロールに完全にハイブリダイズできる標的プローブを、ハイブリダイゼーション溶液に加える。ハイブリダイゼーション反応をモニターするために、ポジティブコントロールのシグナルを適用することができる。
【0234】
ネガティブコントロールは、SARS−CoVを含有するか、含有する疑いのあるサンプルをチップに接触させた場合、いずれのハイブリダイゼーション反応にも関与しないオリゴプローブである。
【0235】
ブランクコントロールは、DMSO溶液のスポットである。これは、アレイの品質のモニタリング用に用いられる。
【0236】
SARSプローブは、011、024、040および044プローブである。
【0237】
(実施例5.SARS患者血液サンプル(サンプル番号3)からのSARS−CoV検出)
図6Aおよび図6Bは、SARS患者血液サンプル(サンプル番号3)からのSARS−CoV検出を示す。3#SARS患者血液サンプルからリンパ球を単離した。リンパ球からのRNAをQIAampキットを用いて抽出した。テンプレートとして、上記抽出されたRNAを用いて、RT−ネステッドPCRを実施した。044のRT−ネステッドPCR結果は良好であり、ハイブリダイゼーション結果も良好であった。040のRT−ネステッドPCR結果は不良であったが、ハイブリダイゼーション結果は良好であった。これは、このチップハイブリダイゼーション法が高感度で特異的であることを示している。
【0238】
(実施例6.SARS患者血液サンプル(サンプル番号4)からのSARS−CoV検出)
図7Aおよび図7Bは、SARS患者血液サンプル(サンプル番号4)からのSARS−CoV検出を示す。4#SARS患者血液サンプルからリンパ球を単離した。リンパ球からのRNAをQIAampキットを用いて抽出した。テンプレートとして、上記抽出されたRNAを用いて、RT−ネステッドPCRを実施した。024、040および044のRT−ネステッドPCR結果は良好であり、ハイブリダイゼーション結果も良好であった。
【0239】
(実施例7.SARS患者痰サンプル(サンプル番号5)からのSARS−CoV検出)
図8は、SARS患者痰サンプル(サンプル番号5)からのSARS−CoV検出を示す。QIAampキットにより、5#SARS患者痰サンプルからRNAを抽出した。テンプレートとして、上記抽出されたRNAを用いて、RT−ネステッドPCRを実施した。040のRT−ネステッドPCR結果は良好であり、ハイブリダイゼーション結果も良好であった。
【0240】
(実施例8.SARS患者痰サンプル(サンプル番号6)からのSARS−CoV検出)
図9は、SARS患者痰サンプル(サンプル番号6)からのSARS−CoV検出を示す。QIAampキットにより、6#SARS患者痰サンプルからRNAを抽出した。テンプレートとして、上記抽出されたRNAを用いて、RT−ネステッドPCRを実施した。全プローブのRT−ネステッドPCR結果は良好であり、ハイブリダイゼーション結果も良好であった。
【0241】
(実施例9.SARS−CoV検出チップの他の例示的アレイ形式)
図10はSARS−CoV検出チップの別の例示的なアレイ形式を示している。
【0242】
固定化コントロールは、その末端が蛍光色素HEXにより標識化されているオリゴプローブであり、SARS−CoVを含有するか、含有する疑いのあるサンプルをチップに接触させた場合、いずれのハイブリダイゼーション反応にも関与しない。
【0243】
ポジティブコントロール(Arabidopsis)は、Arabidopsis(モデル生物の一種)によってデザインされたオリゴプローブであり、SARS−CoVを含有するか、含有する疑いのあるサンプルをチップに接触させた場合、いずれのハイブリダイゼーション反応にも関与しない。ハイブリダイゼーション反応の間、このポジティブコントロールに完全にハイブリダイズできる標的プローブを、ハイブリダイゼーション溶液に加える。ハイブリダイゼーション反応をモニターするために、ポジティブコントロールのシグナルを適用することができる。
【0244】
ネガティブコントロールは、SARS−CoVを含有するか、含有する疑いのあるサンプルを該チップに接触させた場合、いずれのハイブリダイゼーション反応にも関与しないオリゴプローブである。
【0245】
ブランクコントロールは、DMSO溶液のスポットである。これは、アレイの品質のモニタリング用に用いられる。
【0246】
SARSプローブは、011、024、040および044プローブである。
【0247】
(実施例10.図10に示されたSARS−CoV検出チップの可能性のある陽性結果)
図11は、図10に示されたSARS−CoV検出チップの、可能性のある陽性結果の全てを示す。
【0248】
SARSウイルスを検出するためのチップ上には、4セットのプローブ:プローブ011、プローブ024、プローブ040およびプローブ044が存在する。
【0249】
第一のラインは、4セット全てのプローブ:011+024+040+044上に現れるシグナルによる、陽性結果(1つ)を示している。
【0250】
第二のラインは、3セットのプローブ:011+024+044、024+040+044、011+040+044、011+024+040上に現れるシグナルによる、可能性のある全ての陽性結果(4つ)を示している。
【0251】
第三のラインは、2セットのプローブ:011+040、024+044、011+044、040+044、011+024、024+040上に現れるシグナルによる、可能性のある全ての陽性結果(6つ)を示している
第四のラインは、ただ1セットのプローブ:011,024,040,044上に現れるシグナルによる、可能性のある全ての陽性結果(4つ)を示している
(実施例11.図12に示されたSARS−CoV検出チップの可能性のある陽性結果)
図13は、図12に示されたSARS−CoV検出チップの可能性のある全ての陽性結果を示す。
【0252】
SARSウイルスを検出するためのチップ上には、4セットのプローブ:プローブ011、プローブ024、プローブ040およびプローブ044が存在する。
【0253】
可能性のある陽性結果および陰性結果は、図14にも示されている。陽性結果の組み合わせとしては、以下が挙げられる:
・ 011+127;
・ 040+127;
・ 011+127+024;
・ 011+127+044;
・ 024+127+044;
・ 011+127+024+040;
・ 024+127;
・ 044+127;
・ 011+127+040;
・ 024+127+040;
・ 044+127+040;
・ 011+127+044;
・ 011+127+024+044;
・ 011+127+024+040+044;および
・ 127+024+040+044。
【0254】
127のみ観察される場合は、陰性結果が示される。
【0255】
有効なアッセイ結果であるためには、陽性または陰性、固定化コントロールのシグナル(HEX)は、常に観察されるべきである。
【0256】
上記実施例は、例示のみを目的として挙げられており、本発明の範囲を限定することを意図しない。上記に対して、多くの変更が可能である。上記実施例に対する改変および変更は当業者に明らかであるので、本発明が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることが、意図される。
【図面の簡単な説明】
【0257】
【図1A】図1Aおよび1Bは、例示的なSARS−CoVゲノム構造を示す(Marraら、Science 2003年5月1日の図2を参照;[印刷前の電子出版];およびGenBank登録番号NC_004718)。
【図1B】図1Aおよび1Bは、代表的なSARS−CoVゲノム構造を示す(Marraら、Science 2003年5月1日の図2を参照;[印刷前の電子出版];およびGenBank登録番号NC_004718)。
【図2】図2は、例示的なサンプル調製手順を示す。
【図3】図3は、PCRに用いられる例示的なプローブ標識を示す。ユニバーサルプライマーの配列は、特異的プライマーの共通配列に相補的である。ユニバーサルプライマーおよび特異的プライマーは、増幅が行われる前にPCRマスターミックスに添加される。増幅の特異性は、特異的プライマーの特異的部分によって確保される。1回または2,3回の熱サイクル後、ユニバーサルプライマーをアンプリコンに効率的に組み込むことができる。次に、特異的プライマーの共通配列の相補的配列に、ユニバーサルプライマーがアニールできる。このPCRは、ユニバーサルプライマー内に組み込まれた蛍光色素とともにさらに進行する。1および6は、蛍光色素を示し、2は、上流ユニバーサルプライマーを示し、3は、共通配列を有する上流特異的プライマーを示し、4は、テンプレートを示し、5は、共通配列を有する下流特異的プライマーを示し、7は、下流ユニバーサルプライマーを示す。
【図4】図4は、アミノ基で修飾した、例えば、ポリ−L−リジン処理したガラススライド表面上のプローブ固定化を示す。アミン結合化学:アミン基質は、ガラス表面(長方形)に共有結合した第一級アミン基(NH3)を含有する。アミンは、中性PHにおいて、正電荷を保持し、負に荷電したリン酸骨格とのイオン結合形成を介して、負に荷電したDNA(二重らせん)の結合を可能にする(中央枠)。静電結合は、紫外光または熱による処理により補足され、第一級アミンとチミンとの間の共有結合を介して上記表面に対するDNAの共有結合を誘導する(右パネル)。静電結合と共有結合との組み合わせにより、DNAは、極めて安定な様式で、基質と結合する。
【図5】図5は、SARS−CoV検出チップの例示的なアレイ形式を示す。
【図6】図6Aおよび6Bは、SARS患者の血液サンプル(サンプル番号3)からのSARS−CoV検出を示す。
【図7】図7Aおよび7Bは、SARS患者の血液サンプル(サンプル番号4)からのSARS−CoV検出を示す。
【図8】図8Aおよび8Bは、SARS患者の血液サンプル(サンプル番号5)からのSARS−CoV検出を示す。
【図9】図9Aおよび9Bは、SARS患者の血液サンプル(サンプル番号6)からのSARS−CoV検出を示す。
【図10】図10は、SARS−CoV検出チップの別の例示的なアレイ形式を示す。
【図11】図11は、図10に示されたSARS−CoV検出チップについての可能性のある全ての陽性結果を示す。
【図12】図12は、SARS−CoV検出チップの別の例示的なアレイ形式を示す。
【図13】図13は、図12に示されたSARS−CoV検出チップについての可能性のある全ての陽性結果を示す。
【図14】図14は、図12に示されたSARS−CoV検出チップについての可能性のある全ての陽性結果および陰性結果を示す。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重症急性呼吸器症候群を引き起こすコロナウイルス(SARS−CoV)および非SARS−CoV感染性生物をアッセイするためのチップであって、前記チップは、支持体を備え、該支持体は、SARS−CoVゲノムの少なくとも10個のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブと、以下のオリゴヌクレオチドプローブ:
a) SARS様症状を引き起こす非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブであって、前記ヌクレオチド配列が少なくとも10個のヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドプローブ;
b) 感染宿主の免疫系に損傷を与える非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブであって、前記ヌクレオチド配列が、少なくとも10個のヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドプローブ;または、
c) 非SARS−Covコロナウイルス科ウイルスのヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブであって、前記ヌクレオチド配列が、少なくとも10個のヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドプローブ、
の1つ以上とが該支持体に固定化され、核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切である、チップ。
【請求項2】
前記チップは、支持体を備え、該支持体は、SARS−CoVゲノムの少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを支持体に固定化され、核酸ハイブリダイゼーションにおける使用に適切であり、前記2つの異なるヌクレオチド配列の各々が、少なくとも10個のヌクレオチドを含んでなる、請求項1に記載のチップ。
【請求項3】
SARS−CoVゲノムの前記少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列が、以下:
a) SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列およびSARS−CoVゲノムの可変領域内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列;または
b) SARS−CoVゲノムの構造タンパク質コード遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列およびSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質コード遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列、
を含んでなる、請求項2に記載のチップ。
【請求項4】
請求項2に記載のチップであって、以下:
a)以下の3つのオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも1つ:固定化コントロールプローブ、ポジティブコントロールプローブおよびネガティブコントロールプローブであって、該固定化コントロールプローブは、標識され、そしてSARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物を含有するか、または含有することが疑われるサンプルがチップに接触されるとき、いかなるハイブリダイゼーション反応にも関与せず、該ポジティブコントロールプローブは、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のいずれの配列にも相補的でないが、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物に見出されない、サンプルに含まれる配列に相補的であり、該ネガティブコントロールプローブは、サンプルに含まれるいずれのヌクレオチド配列にも相補的でない;および
b) ブランクスポット、
をさらに含んでなる、チップ。
【請求項5】
請求項2に記載のチップであって、少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブを備え、該プローブは、それぞれ、SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置するか、SARS−CoVゲノムの構造タンパク質コード遺伝子内に位置するか、またはSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質コード遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドの2つの異なるヌクレオチド配列に相補的である、チップ。
【請求項6】
請求項2に記載のチップであって、
a) SARS−CoVゲノムの前記保存領域が、SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子あるいはヌクレオカプシド(N)遺伝子内に位置する領域であるか;
b) SARS−CoVゲノムの前記構造タンパク質コード遺伝子が、スパイク糖タンパク質(S)、小型エンベロープタンパク質(E)またはヌクレオカプシドタンパク質(N)をコードする遺伝子であるか;あるいは
c) SARS−CoVゲノムの前記非構造タンパク質コード遺伝子が、レプリカーゼ1Aまたは1Bをコードする遺伝子である、
請求項2に記載のチップ。
【請求項7】
SARS−CoVゲノムの前記可変領域が、SARS−CoVのスパイク糖タンパク質(S)遺伝子内に位置する領域である、請求項2に記載のチップ。
【請求項8】
以下の4つのオリゴヌクレオチドプローブのうちの少なくとも2つを含んでなる、請求項2に記載のチップ:SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドの2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVのN遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列に相補的な1つのオリゴヌクレオチドプローブ、およびSARS−CoVのS遺伝子内に位置する少なくとも10個のヌクレオチドのヌクレオチド配列に相補的な1つのオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項9】
SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する前記2つの異なるヌクレオチド配列のうちの1つが、
a) 表13に記載される、レプリカーゼ1Aまたは1Bヌクレオチド配列、あるいはその相補鎖と高ストリンジェンシー下でハイブリダイズするか;あるいは
b) 表13に記載される、ヌクレオチド配列またはその相補鎖を含むレプリカーゼ1Aまたは1Bヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、
ヌクレオチド配列を含んでなる、請求項8に記載のチップ。
【請求項10】
SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する前記2つの異なるヌクレオチド配列のうちの1つが、表13に記載されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項9に記載のチップ。
【請求項11】
SARS−CoVの前記N遺伝子内に位置する前記ヌクレオチド配列が、
a) 表13に記載されるNヌクレオチド配列またはその相補鎖と高緊縮下でハイブリダイズするか;または
b) 表13に記載されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでなるNヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、
ヌクレオチド配列を含んでなる、請求項8に記載のチップ。
【請求項12】
SARS−CoVの前記N遺伝子内に位置する前記ヌクレオチド配列が、表13に記載されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項11に記載のチップ。
【請求項13】
SARS−CoVの前記S遺伝子内に位置する前記ヌクレオチド配列が、
a) 表13に記載されるSヌクレオチド配列またはその相補鎖と高ストリンジェンシー下でハイブリダイズするか;あるいは
b) 表13に記載されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでなるSヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、
ヌクレオチド配列を含んでなる、請求項8に記載のチップ。
【請求項14】
SARS−CoVの前記S遺伝子内に位置する前記ヌクレオチド配列が、表13に記載されるヌクレオチド配列を含んでなる、請求項13に記載のチップ。
【請求項15】
前記固定化コントロールプローブの標識が、化学標識、酵素標識、免疫標識、放射性標識、蛍光標識、発光標識およびFRET標識からなる群より選択される、請求項4に記載のチップ。
【請求項16】
前記非SARS−CoV配列が、アッセイすべきサンプル内にスパイクされる、請求項4に記載のチップ。
【請求項17】
前記スパイクされた非SARS−CoV配列が、Arabidopsis起源の配列である、請求項16に記載のチップ。
【請求項18】
SARS−CoVのレプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に対して相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVの前記N遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVの前記S遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物を含有するかまたは含有することが疑われるサンプルをチップと接触させても、いずれのハイブリダイゼーション反応にも関与しない標識される固定化コントロールプローブ、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のいずれの配列にも相補的でないが、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物に見出されず前記サンプルに含有される配列に相補的であるポジティブコントロールプローブ、および前記サンプルに含有されるいずれのヌクレオチド配列にも相補的でないネガティブコントロールプローブ、を含んでなる、請求項8に記載のチップ。
【請求項19】
SARS−CoVの前記レプリカーゼ1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に対して相補的な前記2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVの前記N遺伝子内に位置する前記ヌクレオチド配列に対して相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVの前記S遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に対して相補的な前記オリゴヌクレオチドプローブ、前記固定化コントロールプローブ、前記ポジティブコントロールプローブおよび前記ネガティブコントロールプローブのマルチプレックススポットを含んでなる、請求項18に記載のチップ。
【請求項20】
前記オリゴヌクレオチドプローブの少なくとも1つが、その5’末端に、前記支持体上におけるその固定化を増強するポリdT領域を含んでなる、請求項4に記載のチップ。
【請求項21】
前記オリゴヌクレオチドプローブの少なくとも1つが、SARS−CoVゲノムの高発現ヌクレオチド配列に対して相補的である、請求項2に記載のチップ。
【請求項22】
SARS様症状を引き起こす非SARS−CoV感染性生物が、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスOC43、ヒト腸内コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RS(respiratory sncytical)ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、肺炎マイコプラスマ、肺炎クラミジア、麻疹ウイルスおよび風疹ウイルスからなる群より選択される、請求項1に記載のチップ。
【請求項23】
前記インフルエンザウイルスが、A型インフルエンザウイルスまたはB型インフルエンザウイルスである、請求項22に記載のチップ。
【請求項24】
前記パラインフルエンザウイルスが、パラインフルエンザウイルス1、パラインフルエンザウイルス2、パラインフルエンザウイルス3およびパラインフルエンザウイルス4からなる群より選択される、請求項22に記載のチップ。
【請求項25】
感染宿主の免疫系に損傷を与える前記非SARS−CoV感染性生物が、肝炎ウイルス、輸血媒介ウイルス(TTV)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、パルボウイルス、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、エプスタイン−バーウイルス(EBV)および梅毒トレポネーマからなる群より選択される、請求項1に記載のチップ。
【請求項26】
前記肝炎ウイルスが、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)からなる群より選択される、請求項25に記載のチップ。
【請求項27】
HIVがHIV Iである、請求項25に記載のチップ。
【請求項28】
パルボウイルスが、パルボウイルスB19である、請求項25に記載のチップ。
【請求項29】
非SARS−CoVコロナウイルス科のウイルスが、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥伝染性喉頭気管炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、ウマコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネココロナウイルス、ブタ流行性下痢ウイルス、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、ウシコロナウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、ラットコロナウイルス、新生子ウシ下痢コロナウイルス、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス、ミズナギドリ病ウイルス(puffinosis virus)、シチメンチョウコロナウイルスおよびラットの唾液腺炎ウイルスからなる群より選択される、請求項1に記載のチップ。
【請求項30】
前記支持体が、シリコン、プラスチック、ガラス、セラミック、ゴムおよびポリマー表面からなる群より選択される、請求項1に記載のチップ。
【請求項31】
サンプル中のSARS−CoVおよび非SARS−CoV感染性生物をアッセイする方法であって、前記方法は、
a) 請求項1に記載のチップを提供すること;
b) 前記チップを、核酸のハイブリダイゼーションに適切な条件下で、SARS−CoVおよび非SARS−CoV感染性生物のヌクレオチド配列を含有するかまたは含有する疑いのあるサンプルと接触させること;ならびに
c) 前記サンプルに存在する場合、前記SARS−CoVまたは前記非SARS−CoV感染性生物の前記ヌクレオチド配列と、前記SARS−CoVゲノムノヌクレオチド配列に相補的な前記オリゴヌクレオチドプローブまたは前記非SARS−CoV感染性生物ゲノムのヌクレオチド配列に相補的な前記オリゴヌクレオチドプローブとの間に形成されるハイブリッドを評価することを含んでなり、
これにより、前記ハイブリッドの一方または両方の検出が、前記サンプル中の前記SARS−CoVおよび/または前記非SARS−CoV感染性生物の存在を示す、方法。
【請求項32】
SARS−CoVが、
a) 請求項2に記載のチップを提供すること;
b) 前記チップを、核酸のハイブリダイゼーションに適切な条件下で、SARS−CoVのヌクレオチド配列を含有するかまたは含有する疑いのあるサンプルと接触させること;
c) 前記サンプルに存在する場合、前記サンプル中の前記SARS−CoVの有無または量を決定するために、前記SARS−CoVヌクレオチド配列と、SARS−CoVゲノムの2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な前記少なくとも2つのオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれとの間で形成されたハイブリッドを評価すること、
によりアッセイされ、
これにより、前記ハイブリッドの一方または両方の検出が、前記サンプル中の前記SARS−CoVの存在を示す、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
SARS−CoVが、
a) 請求項3に記載のチップを提供すること;
b) 前記チップを、核酸のハイブリダイゼーションに適切な条件下で、SARS−CoVのヌクレオチド配列を含有するかまたは含有する疑いのあるサンプルと接触させること;および
c) 前記サンプルに存在する場合、前記サンプル中の前記SARS−CoVの有無または量を決定するために、前記SARS−CoVのヌクレオチド配列と、
i) それぞれ、SARS−CoVゲノムの保存領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的な前記オリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVゲノムの可変領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ;または
ii)SARS−CoVゲノムの構造タンパク質コード遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な前記オリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVゲノムの非構造タンパク質コード遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ
との間で形成されたハイブリッドを評価すること、
によりアッセイされ、
これにより、前記ハイブリッドの一方または両方の検出が、前記サンプル中の前記SARS−CoVの存在を示す請求項31に記載の方法。
【請求項34】
SARS−CoVが、
a) 請求項4に記載のチップを提供すること;
b) 前記チップを、核酸のハイブリダイゼーションに適切な条件下で、SARS−CoVのヌクレオチド配列を含有するかまたは含有する疑いのあるサンプルと接触させること;
c) サンプル中の前記SARS−CoVの有無または量を決定するために、
(i)前記サンプルに存在する場合、前記SARS−CoVヌクレオチド配列と、SARS−CoVの保存領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブおよびSARS−CoVの可変領域内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれの間に形成されたハイブリッド;
(ii)前記固定化コントロールプローブに含まれる標識、またはポジティブコントロールプローブおよび/またはネガティブコントロールプローブを含むハイブリッド(1つまたは複数);および
(iii) 前記ブランクスポットにおけるシグナル、
を評価することによりアッセイされる、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記チップが、SARS−CoVの前記レプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な2つのオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVの前記N遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、SARS−CoVの前記S遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドプローブ、固定化コントロールプローブ、ポジティブコントロールプローブ、およびネガティブコントロールプローブを含んでなり、SARS−CoVの存在が、
a) SARS−CoVの前記レプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な前記2つのオリゴヌクレオチドプローブの少なくとも1つ、SARS−CoVの前記N遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な前記オリゴヌクレオチドプローブ、および/またはSARS−CoVの前記S遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な前記オリゴヌクレオチドプローブを用いて、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出される場合、
b) 前記固定化コントロールプローブから、ポジティブシグナルが検出される場合、
c) 前記ポジティブコントロールプローブを用いて、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出される場合、
d) 前記ネガティブコントロールプローブを用いて、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出されない場合、
e) 前記ブランクスポットにおいて、陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出されない場合
に、決定される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
SARS−CoVの前記レプリカーゼ1Aまたは1B遺伝子内に位置する2つの異なるヌクレオチド配列に相補的な前記2つのオリゴヌクレオチドプローブの少なくとも1つ、またはSARS−CoVの前記N遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な前記オリゴヌクレオチドプローブを用いて陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出される一方で、SARS−CoVの前記S遺伝子内に位置するヌクレオチド配列に相補的な前記オリゴヌクレオチドプローブを用いて陽性ハイブリダイゼーションシグナルが検出されなければ、SARS−CoVの変異が示される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
初期段階のSARS患者を診断するために、請求項21に記載のチップを用い、前記方法を用いる、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記初期段階のSARS患者とは、SARS−CoVに感染して約1日未満から約3日までである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
被験体が、SARS−CoVおよび/またはSARS様症状を引き起す非SARS−CoV感染性生物により感染しているかどうかを決定するために用いられる、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
SARS様症状が、ヒトコロナウイルス229E、ヒトコロナウイルスOC43、ヒト腸内コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、肺炎マイコプラスマ、肺炎クラミジア、麻疹ウイルスおよび風疹ウイルスからなる群より選択される非SARS−CoV感染性生物により引き起される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記インフルエンザウイルスが、A型インフルエンザウイルスまたはB型インフルエンザウイルスである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記パラインフルエンザウイルスが、パラインフルエンザウイルス1、パラインフルエンザウイルス2、パラインフルエンザウイルス3およびパラインフルエンザウイルス4からなる群より選択される、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
被験体が、被験体の免疫系に損傷を与えるSARS−CoVおよび/または非SARS−CoV感染性生物に感染しているかどうかを決定するために用いられる、請求項31に記載の方法。
【請求項44】
被験体の免疫系に損傷を与える非SARS−CoV感染性生物が、肝炎ウイルス、輸血媒介ウイルス(TTV),ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、パルボウイルス、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV),エプスタイン−バーウイルス(EBV)および梅毒トレポネーマからなる群より選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記肝炎ウイルスが、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)およびG型肝炎ウイルス(HGV)からなる群より選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
HIVがHIV Iである、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
パルボウイルスが、パルボウイルスB19である、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
被験体が、SARV−CoVおよび/または非SARV−CoVコロナウイルス科のウイルスに感染しているかどうかを決定するために用いられる、請求項31に記載の方法。
【請求項49】
非SARV−CoVコロナウイルス科ウイルスが、鳥伝染性気管支炎ウイルス、鳥伝染性喉頭気管炎ウイルス、マウス肝炎ウイルス、ウマコロナウイルス、イヌコロナウイルス、ネココロナウイルス、ブタ流行性下痢、ブタ伝染性胃腸炎ウイルス、ウシコロナウイルス、ネコ感染性腹膜炎ウイルス、ラットコロナウイルス、新生子ウシ下痢コロナウイルス、ブタ血球凝集性脳脊髄炎ウイルス、ミズナギドリ病ウイルス、シチメンチョウコロナウイルスおよびラットの唾液腺炎ウイルスからなる群より選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物の前記ヌクレオチド配列が、SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列、または抽出されたSARS−CoV RNAゲノム配列あるいは抽出された非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列から増幅されたDNA配列である、請求項31に記載の方法。
【請求項51】
前記SARS−CoV RNAゲノム配列が、QIAampウイルスRNAキット、Chomczynski−Sacchi法またはTRIzolを用いてSARS−CoV感染細胞から抽出される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記SARS−CoV RNAゲノム配列が、QIAampウイルスRNAキットを用いてSARS−CoV感染細胞から抽出される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列が、痰または唾液サンプル、血液サンプルのリンパ球から抽出される、請求項31に記載の方法。
【請求項54】
前記SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列が、ヒト、マウス、イヌ、ラット、ネコ、ウマ、鳥類の鼻咽頭、口咽頭、気管、気管支洗浄液、胸膜液、尿、便、結膜、組織、土壌、水、空気から抽出される、請求項31に記載の方法。
【請求項55】
前記SARS−CoVまたは非SARS−CoV感染性生物のゲノム配列が、PCRにより増幅される、請求項50に記載の方法。
【請求項56】
標識が、PCR中に増幅されたDNA配列に組み込まれる、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
PCRが、従来のPCR,マルチプレックスPCR、ネステッドPCRまたはRT−PCRを含んでなる、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
PCRが、2ステップ式のネステッドPCRを含んでなり、第1のステップが、RT−PCRであり、第2のステップが、従来のPCRである、請求項55に記載の方法。
【請求項59】
PCRが、複数の5’および3’特異的プライマーを用いる1ステップマルチプレックスRT−PCRを含んでなり、前記特異的プライマーの各々が、増幅すべき標的配列に相補的な特異的配列および共通配列、および5’および3’ユニバーサルプライマーを含んでなり、5’ユニバーサルプライマーが、5’特異的プライマーの共通配列に相補的であり、3’ユニバーサルプライマーが、3’特異的プライマーの共通配列に相補的であり、前記PCRにおいて、5’および3’ユニバーサルプライマーの濃度が、それぞれ、5’および3’特異的プライマーの濃度に等しいか、またはそれよりも高い、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記3’ユニバーサルプライマーおよび/または前記5’ユニバーサルプライマーが、標識される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記標識が、蛍光標識である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記PCRが、マルチプレックスネステッドPCRを含んでなる、請求項55に記載の方法。
【請求項63】
前記PCRが、表18または表19〜表21に記載されるプライマー対のうち、少なくとも1対を用いて行われる、請求項55に記載の方法。
【請求項64】
A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229EまたはヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列を増幅させるためのオリゴヌクレオチドプライマーであって、前記オリゴヌクレオチドプライマーが:
a) 高ストリンジェンシー下、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229EまたはヒトコロナウイルスOC43の表1〜6に記載される標的ヌクレオチド配列またはそれらの相補鎖とハイブリダイズするか;あるいは
b) 表1〜6に記載されるヌクレオチド配列またはそれらの相補鎖を含んでなるA型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229EまたはヒトコロナウイルスOC43の、標的ヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、
ヌクレオチド配列を含んでなるオリゴヌクレオチドプライマー。
【請求項65】
DNA、RNA、PNAまたはそれらの誘導体を含んでなる、請求項64に記載のプライマー。
【請求項66】
表1〜表6に記載されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでなる、請求項64に記載のプライマー。
【請求項67】
A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229EまたはヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列を増幅させるためのキットであって:
a) 請求項64に記載のプライマー;および
b) 請求項64に記載の前記プライマーを用いて、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229EまたはヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列を増幅できる核酸ポリメラーゼ、
を含んでなるキット。
【請求項68】
前記核酸ポリメラーゼが、逆転写酵素である、請求項67に記載のキット。
【請求項69】
A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229EまたはヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列にハイブリダイズするためのオリゴヌクレオチドプローブであって、前記オリゴヌクレオチドプローブが、:
a) 高ストリンジェンシー下、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229EまたはヒトコロナウイルスOC43の、表7〜表12に記載される標的ヌクレオチド配列またはそれらの相補鎖とハイブリダイズするか;あるいは
b) A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229EまたはヒトコロナウイルスOC43の、表7〜表12に記載される標的ヌクレオチド配列またはそれらの相補鎖に対して少なくとも90%の同一性を有する、
ヌクレオチド配列を含んでなるオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項70】
DNA、RNA、PNAまたはそれらの誘導体を含んでなる、請求項69に記載のプローブ。
【請求項71】
表7〜表12に記載されるヌクレオチド配列またはその相補鎖を含んでなる、請求項69に記載のプローブ。
【請求項72】
標識されている、請求項69に記載のプローブ。
【請求項73】
前記標識が、化学標識、酵素標識、免疫標識、放射性標識、蛍光標識、発光標識およびFRET標識からなる群より選択される、請求項72に記載のプローブ。
【請求項74】
A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229EまたはヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列のハイブリダイゼーション分析用キットであって:
a) 請求項69に記載のプライマー;および
b) A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトアデノウイルス、ヒトコロナウイルス229EまたはヒトコロナウイルスOC43のヌクレオチド配列と前記プローブとの間に形成されたハイブリッドを評価するための手段、
を含んでなる、キット。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2007−523594(P2007−523594A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503791(P2005−503791)
【出願日】平成15年7月14日(2003.7.14)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000561
【国際公開番号】WO2005/005658
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(504278260)キャピタルバイオ コーポレーション (10)
【出願人】(503012203)ツィンフア ユニバーシティ (10)
【Fターム(参考)】