説明

SCAPのRNAi調節およびその治療的使用

本発明は、SCAP遺伝子(ヒトSCAP遺伝子)の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)であって、長さ30ヌクレオチド未満、一般には長さ19〜25ヌクレオチドで、SCAP遺伝子の少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を有するアンチセンス鎖を含むdsRNAに関する。本発明は、dsRNAを薬学的に許容される担体と共に含む薬学的組成物;ヒトSCAP発現およびSCAP遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を薬学的組成物を用いて治療する方法;ならびに細胞においてSCAP遺伝子の発現を阻害する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、遺伝子SREPB切断活性化タンパク質(SCAP)の調節因子を用いての治療法に関する。具体的には、本発明は、望ましくないSCAP活性に関連する障害の治療法であって、SCAPの発現をダウンレギュレートする短鎖干渉RNAを投与することによる方法、およびそれにおいて有用な物質に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
脂質ホメオスタシスは、すべての動物およびヒトを含む、細胞の重要な機能を環境から分離することを脂質膜に頼るすべての生物にとって不可欠である。さらに、脂質は多くの生物によってエネルギー貯蔵庫として用いられる。例えば、リン脂質、トリグリセリド、脂肪酸、およびステロールを含む、莫大な数の異なる脂質物質が細胞において多様な不可欠の機能を行う。要するに、脂質ホメオスタシスは、本質的にすべての高等生物における相互依存プロセスの緊密に調節され、多岐にわたる、複雑な網である。
【0003】
当然、システムが複雑であるほど、つまづくことも多くなりうる。例えば、ヒトにおける多くの疾患および状態が、全体または部分的に、脂質ホメオスタシス機能不全の結果であることが知られている。これらは、脂質ホメオスタシスに関与する多くの遺伝子の1つまたはいくつかがその機能を完全もしくは部分的に失う、または誤調節される遺伝性疾患、ならびに体内の遺伝子機能または遺伝子調節が物質の1つまたは組み合わせとの1回または反復接触後に変化する後天的疾患の両方を含む。
【0004】
ヒトを含む多くの種で、体の脂質への要求は部分的には食事摂取により、また前駆体からの脂質の合成により満たされる。肝臓は、一連の食事脂質摂取、脂質合成、ならびに血流への脂質放出および血流からの再吸収を担う単一の臓器として抜きんでている。結果として、肝臓はすべてではないとしても多くの脂質代謝障害に関与している。
【0005】
多くのそのような障害は、体のすべて、または一部における特定の脂質過多が、過剰摂取、分解もしくは輸送の欠陥、または過度の新たな合成のいずれからくるものであろうと、そのような状態によって引き起こされるか、またはそのような状態を伴う。
【0006】
例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は過剰のトリグリセリドが肝臓に蓄積する状態で、様々な薬物、栄養因子、エネルギー代謝における多くの遺伝的異常、および最も顕著にはインスリン抵抗性に関連している(Browning JD and Horton JD, J. Clin. Investigation 2004, 114:147(非特許文献1))。これに対して、アテローム性動脈硬化症の際だった特徴はいわゆる泡沫細胞、すなわち過剰のコレステロールおよびコレステロールエステルが充満したマクロファージの出現である(Kruth HS, Front Biosci 2001, 6:D429(非特許文献2))。体内の過剰な脂質レベルに関連する障害の他の非限定例は以下のとおりである:非アルコール性肝疾患、脂肪肝、脂肪過剰血症、高脂血症、高リポタンパク血症、高コレステロール血症および/または高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、膵炎、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、冠動脈性心疾患、肥満、代謝症候群、末梢動脈疾患、ならびに脳血管疾患。この型の障害の治療は体自身の脂質合成を減弱することにより助けられる可能性がある。
【0007】
ヒト肝臓における脂質生合成調節の中心となる要素は、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)と命名された転写因子群である。SREBP-1a、SREBP-1cおよびSREBP-2と呼ばれる3つのSREBPイソ型がある。これらは小胞体(ER)内に前駆体型で位置し(Yokoyama C. et al., Cell 1993, 75:187(非特許文献3);Hua X. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 1993, 90: 11603(非特許文献4))、コレステロール存在下でコレステロールならびに2つの他のタンパク質:SCAP(SREBP-切断活性化タンパク質)およびInsig1(インスリン誘導性遺伝子1)に結合している。コレステロールレベルが低下すると、Insig-1はSREBP-SCAP複合体から解離して、複合体をゴルジ体へと移動させ、そこでSREBPはSCAPによって活性化される2つの酵素、S1PおよびS2P(サイト1/2プロテアーゼ;Sakai J et al, Mol. Cell 1998, 2:505(非特許文献5);Rawson R. B. et al, Mol. Cell 1997, 1:47(非特許文献6))によって切断される。次いで、切断されたSREBPは核へと移動し、いくつかの遺伝子のSRE(ステロール調節エレメント)に結合し、それらの転写を刺激することにより、転写因子として作用する(Briggs M. R. et al., J. Biol. Chcm. 1993, 268:14490(非特許文献7))。転写される遺伝子の中には、そのアップレギュレーションが血流からのコレステロールの流入増大を引き起こすLDL-受容体、新たなコレステロール合成の律速酵素であるHMG-CoAレダクターゼ(Anderson et al, Trends Cell Biol 2003, 13:534(非特許文献8))、ならびに脂肪酸合成に関与するいくつかの遺伝子がある。
【0008】
体自身の脂質生成を低減する試みにおいて、1つの魅力的な選択肢はしたがってSREBP活性化の阻止であると思われる。SCAP結合は3つのSREBPイソ型すべての輸送および活性化にとって必須であるため、SCAPの活性の阻害は細胞の脂質合成および取り込みの全般的ダウンレギュレーションを引き起こしうる。例えば、SCAP活性は、SCAPのステロールセンシングドメイン(SSD)にコレステロールよりも高い親和性で、好ましくは非可逆的様式で結合し、それによりSREBP輸送および活性化を妨げる物質によって阻害されうる。または、SCAPをコードする遺伝子の翻訳および/または転写を阻害することにより、ER膜に存在し、SREBP結合および活性化に利用可能なSCAPのレベルを引き下げることができる。
【0009】
最近、二本鎖RNA分子(dsRNA)はRNA干渉(RNAi)として公知の高度に保存された調節メカニズムにおいて遺伝子発現を阻止することが明らかにされている。国際公開公報第99/32619号(Fire et al.)(特許文献1)は、C.エレガンス(C. elegans)における遺伝子の発現を阻害するために長さが少なくとも25ヌクレオチドのdsRNAの使用を開示している。dsRNAは植物(例えば、国際公開公報第99/53050号(特許文献2)、Waterhouseら;および国際公開公報第99/61631号(特許文献3)、Heifetzら参照)、ショウジョウバエ(Drosophila)(例えば、Yang, D., et al., Curr. Biol. (2000) 10:1191-1200(非特許文献9)参照)、および哺乳動物(国際公開公報第00/44895号(特許文献4)、Limmer;およびDE 101 00 586.5(特許文献5)、Kreutzerら参照)を含む他の生物において標的RNAを分解することも明らかにされている。この自然のメカニズムは今や、異常または望まれない遺伝子調節によって引き起こされる障害を治療するための新しいクラスの薬剤開発の焦点となっている。
【0010】
RNAiの分野における顕著な進歩および過剰なレベルの脂質によって仲介される病的過程の治療における進歩にもかかわらず、例えば、細胞自身のRNAi機構を用いてSCAPと、それによりSREBP活性を阻害することにより、体自身の脂質生合成を選択的かつ有効に減弱させうる物質がいまだに必要とされている。そのような物質は高い生物活性およびインビボでの安定性の両方を有し、SCAP発現によって直接または間接的に仲介される病的過程の治療において用いるための、ヒトSCAPなどの標的SCAP遺伝子の発現を有効に阻害するであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開公報第99/32619号
【特許文献2】国際公開公報第99/53050号
【特許文献3】国際公開公報第99/61631号
【特許文献4】国際公開公報第00/44895号
【特許文献5】DE 101 00 586.5号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Browning JD and Horton JD, J. Clin. Investigation 2004, 114:147
【非特許文献2】Kruth HS, Front Biosci 2001, 6:D429
【非特許文献3】Yokoyama C. et al., Cell 1993
【非特許文献4】Hua X. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 1993, 90: 11603
【非特許文献5】Sakai J et al, Mol. Cell 1998, 2:505
【非特許文献6】Rawson R. B. et al, Mol. Cell 1997, 1:47
【非特許文献7】Briggs M. R. et al., J. Biol. Chcm. 1993, 268:14490
【非特許文献8】Anderson et al, Trends Cell Biol 2003, 13:534
【非特許文献9】Yang, D., et al., Curr. Biol. (2000) 10:1191-1200
【発明の概要】
【0013】
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、ならびにそのようなdsRNAを用いて細胞または哺乳動物におけるSCAP遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法を提供する。本発明は、過剰なレベルの脂質および/または望ましくない脂質生合成に関連する状態および疾患などの、SCAP遺伝子の発現によって仲介される病的状態および疾患を治療するための組成物および方法も提供する。本発明のdsRNAは、長さ30ヌクレオチド未満、一般には長さ19〜24ヌクレオチドで、SCAP遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的な領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含む。SCAP遺伝子は好ましくはヒトSCAP遺伝子、より好ましくはホモサピエンス(Homo sapiens)SCAP遺伝子である。
【0014】
一つの態様において、本発明は、SCAP遺伝子の発現を阻害するための、二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子を提供する。dsRNAは、互いに相補的な少なくとも2つの配列を含む。dsRNAは第一の配列を含むセンス鎖および第二の配列を含むアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖はSCAP遺伝子をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的なヌクレオチド配列を含み、相補性の領域は長さ30ヌクレオチド未満、一般には長さ19〜24ヌクレオチドである。dsRNAは、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子を発現する細胞に接触すると、SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%、または少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、85%、90%もしくは95%阻害する。
【0015】
例えば、本発明のdsRNA分子は、RNAi物質AD-9490〜AD-9513のセンス鎖配列(配列番号:1〜48の群の奇数番号、表1)からなる群より選択されるdsRNAの第一の配列で構成されてもよく、第二の配列はAD-9490〜AD-9513のアンチセンス鎖配列(配列番号:1〜48の群の偶数番号、表1)からなる群より選択される。本発明のdsRNA分子は、天然ヌクレオチドで構成されてもよく、または2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、5'-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体に連結された末端ヌクレオチドなどの、少なくとも一つの修飾ヌクレオチドで構成されてもよい。または、修飾ヌクレオチドは以下の群より選択されてもよい:2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ-修飾ヌクレオチド、ロックされたヌクレオチド、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ-修飾ヌクレオチド、2'-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミデート、および非天然塩基を含むヌクレオチド。一般に、そのような修飾配列は、AD-9490〜AD-9513のセンス配列(表1)からなる群より選択される前記dsRNAの第一の配列およびAD-9490〜AD-9513のアンチセンス配列(表1)からなる群より選択される第二の配列に基づくことになる。
【0016】
表1:ホモサピエンス(NM_012235.2)、ハツカネズミ(mus musculus)(NM_001001144.1)およびクロハラハムスター(Cricetus cricetus)(U67060)SCAPのダウンレギュレーション、ならびにヒトにおける最小限のオフターゲット相互作用のために選択されたRNAi物質

大文字=デスオキシリボヌクレオチド;小文字=リボヌクレオチド;下線:ヌクレオシドチオホスフェート
【0017】
好ましい態様において、dsRNAは

の群より選択され、細胞、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%阻害する。
【0018】
より好ましくは、dsRNAは

の群より選択され、細胞、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子の発現を少なくとも30%阻害する。
【0019】
さらにより好ましくは、dsRNAは

の群より選択され、細胞、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子の発現を少なくとも40%阻害する。
【0020】
さらにより好ましくは、dsRNAは

の群より選択され、細胞、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子の発現を少なくとも50%阻害する。
【0021】
さらにより好ましくは、dsRNAはAD-9505、AD-9498、AD-9512、AD-9490、AD-9495、AD-9503、AD-9494、AD-9500、AD-9492、AD-9499、AD-9496、AD-9510、AD-9511の群より選択され、細胞、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子の発現を少なくとも60%阻害する。
【0022】
さらにより好ましくは、dsRNAはAD-9505、AD-9498、AD-9512、AD-9490、AD-9495、AD-9503、AD-9494、AD-9500の群より選択され、細胞、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子の発現を少なくとも70%阻害する。
【0023】
最も好ましくは、dsRNAはAD-9505、AD-9498、AD-9512の群より選択され、細胞、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子の発現を少なくとも75%阻害する。
【0024】
もう一つの態様において、本発明は、本発明のdsRNAの1つを含む細胞を提供する。細胞は一般には、ヒト細胞などの哺乳動物細胞である。
【0025】
もう一つの態様において、本発明は、生物、一般にはヒト被験者において、SCAP遺伝子、例えば、ヒトまたはホモサピエンスSCAP遺伝子の発現を阻害するための薬学的組成物であって、本発明のdsRNAの1つまたは複数および薬学的に許容される担体または送達媒体を含む組成物を提供する。ここで、dsRNAは好ましくは

の群より選択され、細胞、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%阻害する。薬学的組成物のさらに好ましい態様のために、dsRNAは前述の群より選択される。
【0026】
もう一つの態様において、本発明は、細胞において、SCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAP遺伝子、好ましくはホモサピエンスのSCAP遺伝子の発現を阻害する方法であって、以下の段階を含む方法を提供する:
(a)細胞に二本鎖リボ核酸(dsRNA)を導入する段階、ここでdsRNは互いに相補的な少なくとも2つの配列を含む。dsRNAは第一の配列を含むセンス鎖および第二の配列を含むアンチセンス鎖を含む。アンチセンス鎖はSCAP遺伝子をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的な相補性の領域を含み、ここで相補性の領域は長さ30ヌクレオチド未満、一般には長さ19〜24ヌクレオチドであり、かつここでdsRNAは、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子を発現する細胞に接触すると、SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%、または少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、85%、90%もしくは95%阻害する;および
(b)段階(a)で生成した細胞を、SCAP遺伝子のmRNA転写物を分解するのに十分な時間維持し、それにより細胞におけるSCAP遺伝子の発現を阻害する段階。
【0027】
ここで、dsRNAは好ましくは

の群より選択され、細胞、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%阻害する。前述の方法のさらに好ましい態様のために、dsRNAは前述の群より選択される。
【0028】
もう一つの態様において、本発明は、SCAP発現によって仲介される病的過程、例えば、脂質代謝、脂質ホメオスタシス、および/または脂質分布の障害、例えば、非アルコール性肝疾患、脂肪肝、脂肪過剰血症、高脂血症、高リポタンパク血症、高コレステロール血症および/または高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、膵炎、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、冠動脈性心疾患、肥満、代謝症候群、末梢動脈疾患、ならびに脳血管疾患を治療、予防または管理する方法であって、そのような治療、予防または管理を必要としている患者に、本発明のdsRNAの1つまたは複数の治療上または予防上有効な量を投与する段階を含む方法を提供する。ここで、dsRNAは好ましくは

の群より選択され、細胞、例えば、プライマリハムスター肝細胞において、SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%阻害する。薬学的組成物のさらに好ましい態様のために、dsRNAは前述の群より選択される。
【0029】
もう一つの態様において、本発明は、細胞においてSCAP遺伝子の発現を阻害するためのベクターであって、本発明のdsRNAの1つの少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含むベクターを提供する。
【0030】
もう一つの態様において、本発明は、細胞においてSCAP遺伝子の発現を阻害するためのベクターを含む細胞を提供する。ベクターは本発明のdsRNAの1つの少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図はない。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、二本鎖リボ核酸(dsRNA)、ならびにdsRNAを用いて細胞または哺乳動物におけるSCAP遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法を提供する。本発明は、dsRNAを用いてSCAP遺伝子の発現によって引き起こされる哺乳動物の病的状態および疾患を治療するための組成物および方法も提供する。dsRNAはRNA干渉(RNAi)として公知のプロセスによるmRNAの配列特異的分解を目的とする。
【0033】
本発明のdsRNAは、長さ30ヌクレオチド未満、一般には長さ19〜24ヌクレオチドで、SCAP遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的な領域を有するRNA鎖(アンチセンス鎖)を含む。これらのdsRNAを用いれば、脂質代謝、脂質ホメオスタシス、および/または脂質分布の障害、例えば、非アルコール性肝疾患、脂肪肝、または様々な型の異脂肪血症の調節欠陥に関与する疾患に関係があるとされている遺伝子のmRNAを標的とする分解が可能になる。細胞および動物アッセイを用いて、発明者らはこれらのdsRNAは非常に低い用量で特異的かつ効率的にRNAiを仲介することができ、その結果、SCAP遺伝子の発現を顕著に阻害することを明らかにした。したがって、これらのdsRNAを含む本発明の方法および組成物は、脂質代謝、脂質ホメオスタシス、および/または脂質分布の調節に関与する遺伝子を標的とすることにより、SCAP発現によって仲介される病的過程、例えば、脂質代謝、脂質ホメオスタシス、および/または脂質分布の障害、例えば、非アルコール性肝疾患、脂肪肝、または様々な型の異脂肪血症を治療するために有用である。
【0034】
以下の詳細な説明は、SCAP遺伝子の発現を阻害するためのdsRNAおよびdsRNAを含む組成物をいかにして調製および使用するか、ならびに非アルコール性肝疾患、脂肪肝、または様々な型の異脂肪血症などの、SCAP遺伝子の発現によって引き起こされる疾患および障害を治療するための組成物および方法を開示する。本発明の薬学的組成物は、長さ30ヌクレオチド未満、一般には長さ19〜24ヌクレオチドで、SCAP遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的な相補性の領域を含むアンチセンス鎖を有するdsRNAを、薬学的に許容される担体と共に含む。
【0035】
したがって、本発明の特定の局面は、本発明のdsRNAを薬学的に許容される担体と共に含む薬学的組成物、SCAP遺伝子の発現を阻害するための組成物の使用法、SCAP遺伝子の発現によって引き起こされる疾患を治療するための薬学的組成物の使用法、本発明のdsRNAをコードするベクター、および本発明のそのようなdsRNAまたはベクターを含む細胞を提供する。
【0036】
I. 定義
便宜上、本明細書、実施例、および添付の特許請求の範囲において用いられる特定の用語および語句の意味を以下に示す。本明細書の他の部分における用語の用法とこの項に提供するその定義との間に明らかな矛盾がある場合、この項の定義が優先される。
【0037】
「G」、「C」、「A」、「T」および「U」(大文字または小文字のいずれで書かれているかには無関係に)はそれぞれ一般に、塩基としてグアニン、シトシン、アデニン、チミン、およびウラシルをそれぞれ含むヌクレオチドを表す。しかし、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」なる用語は、以下にさらに詳細に示すとおり、修飾ヌクレオチド、または代用置き換え部分も意味しうることが理解されるであろう。当業者であれば、そのような置き換え部分を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変えることなく、グアニン、シトシン、アデニン、チミン、およびウラシルを他の部分で置き換えうることを十分に承知している。例えば、その塩基としてイノシンを含むヌクレオチドはアデニン、シトシン、またはウラシルを含むヌクレオチドと塩基対形成しうるが、それらに限定されるわけではない。したがって、ウラシル、グアニン、またはアデニンを含むヌクレオチドは本発明のヌクレオチド配列において、例えば、イノシンを含むヌクレオチドで置き換えうる。そのような置き換え部分を含む配列は本発明の態様である。
【0038】
本明細書において用いられる「SCAP」または「SCAP遺伝子」とは、SREBP活性化タンパク質をコードする遺伝子を意味し、その非網羅的例はGenBankアクセッション番号NM_012235.2(ホモサピエンス)、NM_001001144.1(ハツカネズミ)およびU67060(クロハラハムスター)の下で見いだされる。
【0039】
本明細書において用いられる「標的配列」とは、一次転写生成物のRNA処理生成物であるmRNAを含む、SCAP遺伝子の転写中に生成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の近接部分を意味する。本発明の任意の所与のRNAi物質の標的配列は、そのような配列へのRNAi物質のアンチセンス鎖の相補性によって、RNAi物質により標的とされるXヌクレオチドのmRNA配列を意味し、mRNAと接触させると、それに対してアンチセンス鎖がハイブリダイズしてもよく、ここでXはアンチセンス鎖中のヌクレオチドの数およびセンス鎖の一本鎖突出部があれば、その中のヌクレオチドの数を足したものである。
【0040】
本明細書において用いられる「配列を含む鎖」なる用語は、標準のヌクレオチド命名法を用いて言及される配列によって記載される、ヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0041】
本明細書において用いられ、特に記載がないかぎり、「相補的」なる用語は、当業者には理解されるであろうとおり、第一のヌクレオチド配列を第二のヌクレオチド配列に関連して記載するために用いる場合、第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの、第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと、特定の条件下でハイブリダイズして二重鎖構造を形成する能力を意味する。そのような条件は、例えば、ストリンジェントな条件でありえ、ここでストリンジェントな条件は以下を含みうる:400mM NaCl、40mM PIPES pH6.4、1mM EDTA、50℃または70℃で12〜16時間の後、洗浄。生物の内部で遭遇しうる、生理学的に関連する条件などの、他の条件を適用することもできる。当業者であれば、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終的な適用に従い、2つの配列の相補性を試験するために最も適した条件群を決定することができるであろう。
【0042】
これは第一のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの、第二のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドへの、第一および第二のヌクレオチド配列の全長にわたっての塩基対形成を含む。そのような配列は、本明細書において、互いに「完全に相補的」と言うことができる。しかし、第一の配列が本明細書における第二の配列に関して「実質的に相補的」と言う場合、2つの配列は完全に相補的であることもあり、またはこれらはハイブリダイゼーション後に1つまたは複数であるが、一般には4、3、もしくは2つ以下のミスマッチ塩基対を形成するが、それらの最終的な適用に最も関連している条件下でハイブリダイズする能力を保持していることもある。しかし、2つのオリゴヌクレオチドがハイブリダイゼーション後に1つまたは複数の一本鎖突出部を形成するよう設計されている場合、そのような突出部は、相補性の評価に関して、ミスマッチとは見なされない。例えば、dsRNAが1つの長さ21ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドおよびもう1つの長さ23ヌクレオチドのオリゴヌクレオチドを含み、ここで長い方のオリゴヌクレオチドは短い方のオリゴヌクレオチドに完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含む場合、このdsRNAは本発明の目的のために「完全に相補的」と言ってもよい。
【0043】
本明細書において用いられる「相補的」配列は、それらのハイブリダイズする能力に関する前述の条件が満たされているかぎり、非ワトソン-クリック塩基対ならびに/または非天然および修飾ヌクレオチドから形成される塩基対を含んでいてもよく、またはすべてそれらから形成されていてもよい。
【0044】
本明細書における「相補的」、「完全に相補的」および「実質的に相補的」なる用語は、それらの使用の文脈から理解されるとおり、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖との間、またはdsRNAのアンチセンス鎖と標的配列との間の塩基マッチングに関して用いうる。
【0045】
本明細書において用いられる、メッセンジャーRNA(mRNA)の「少なくとも一部に実質的に相補的」なポリヌクレオチドとは、興味対象の(例えば、SCAP遺伝子をコードする)mRNAの近接部分に実質的に相補的なポリヌクレオチドを意味する。例えば、ポリヌクレオチドは、その配列がSCAP遺伝子をコードするmRNAの非分断部分に実質的に相補的である場合、SCAP遺伝子mRNAの少なくとも一部に相補的である。
【0046】
本明細書において用いられる「二本鎖RNA」または「dsRNA」なる用語は、上で定義したとおり、2つの逆平行で実質的に相補的な核酸鎖を含む二重鎖構造を有する、リボ核酸分子の複合体を意味する。二重鎖構造を形成する2つの鎖は、1つの大きいRNA分子の異なる部分であってもよく、または別のRNA分子であってもよい。2つの鎖が1つの大きい分子の部分であり、したがって二重鎖構造を形成している一方の鎖の3'末端と他方の鎖の5'末端との間のヌクレオチドの非分断鎖によって連結されている場合、連結しているRNA鎖は「ヘアピンループ」と呼ばれる。2つの鎖が二重鎖構造を形成している一方の鎖の3'末端と他方の鎖の5'末端との間のヌクレオチドの非分断鎖以外の手段で共有結合している場合、連結している構造は「リンカー」と呼ばれる。RNA鎖は同じまたは異なる数のヌクレオチドを有していてもよい。塩基対の最大数は、dsRNAの最も短い鎖のヌクレオチドの数から二重鎖に存在する任意の突出部を差し引いたものである。二重鎖構造に加えて、dsRNAは1つまたは複数のヌクレオチド突出部を含んでいてもよい。
【0047】
本明細書において用いられる「ヌクレオチド突出部」とは、dsRNAの一方の鎖の3'末端が他方の鎖の5'末端を越えて伸びている場合、またはその逆の場合、dsRNAの二重鎖構造から突き出た1つまたは複数の対形成していないヌクレオチドを意味する。「平滑」または「平滑末端」とは、dsRNAのその末端に対形成していないヌクレオチドがない、すなわち、ヌクレオチド突出部がないことを意味する。「平滑末端」dsRNAは、分子のいずれの末端にもヌクレオチド突出部を有していないdsRNAである。
【0048】
「アンチセンス鎖」なる用語は、標的配列に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を意味する。本明細書において用いられる「相補性の領域」なる用語は、本明細書において定義する配列、例えば標的配列に実質的に相補的なアンチセンス鎖上の領域を意味する。相補性の領域が標的配列に完全に相補的でない場合、ミスマッチは末端領域で最も耐容され、ミスマッチが存在する場合、一般には1つまたは複数の末端領域、例えば、5'および/または3'末端の6、5、4、3、または2ヌクレオチド以内にある。最も好ましくは、ミスマッチはアンチセンス鎖の5'末端および/またはセンス鎖の3'末端の6、5、4、3、または2ヌクレオチド以内に位置する。
【0049】
本明細書において用いられる「センス鎖」なる用語は、アンチセンス鎖の領域に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を意味する。
【0050】
dsRNAに言及する場合の「細胞に導入する」とは、当業者には理解されるとおり、細胞への取り込みまたは吸収を促進することを意味する。dsRNAの吸収または取り込みは、補助を受けない拡散もしくは能動的な細胞プロセスを通して、または補助物質もしくは装置によって起こりうる。この単語の意味はインビトロでの細胞に限定されるものではなく;dsRNAは細胞が生きている生物の一部である場合にも「細胞に導入」されうる。そのような場合、細胞への導入は生物への送達も含むことになる。例えば、インビボでの送達のために、dsRNAを組織部位に注射することもでき、または全身投与することもできる。インビトロでの細胞への導入には、電気穿孔法およびリポフェクションなどの当技術分野において公知の方法が含まれる。
【0051】
「サイレンス」および「発現を阻害する」なる用語は、それらがSCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAP遺伝子に言及するかぎり、本明細書において、その中でSCAP遺伝子が転写され、SCAP遺伝子の発現が阻害されるように処置されている第一の細胞または細胞群から単離されうる、SCAP遺伝子から転写されたmRNAの量の、第一の細胞または細胞群と実質的に同じであるが、そのように処置されていない第二の細胞または細胞群(対照細胞)に比べての減少によって明らかにされる、SCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAP遺伝子の発現の少なくとも部分的な抑制を意味する。好ましくは、細胞はプライマリハムスター肝細胞である。阻害の程度は通常は以下で表される

【0052】
または、阻害の程度はSCAP遺伝子転写に機能的に関連するパラメーター、例えば、細胞により分泌されるか、もしくはそのような細胞の溶解後に溶液中で検出される、SCAP遺伝子によりコードされるタンパク質の量、または特定の表現型、例えば、LDL受容体の表面発現、もしくは脂質合成を示す細胞の数の低下で示してもよい。原則として、SCAP遺伝子サイレンシングは、構成的またはゲノム操作のいずれでも、標的を発現する任意の細胞において、任意の適当なアッセイにより評価しうる。しかし、所与のdsRNAがSCAP遺伝子の発現を特定の程度阻害するかどうかを調べるために基準が必要であり、したがって本発明に含まれる場合、以下の実施例において示すアッセイはそのような基準として役立つことになる。
【0053】
一般に、SCAP遺伝子の発現は、基本的に無作為な効果に起因する、処置細胞および対照細胞から得たSCAP mRNA含有量の測定結果、または他の機能的パラメーターにおける相違の確率が5%未満である場合に、少なくとも部分的に抑制されていると考えられる。すなわち、SCAP遺伝子の発現は、前記相違が統計学的に有意である場合に、少なくとも部分的に抑制されていると考えられる。
【0054】
例えば、特定の場合において、SCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAP遺伝子の発現は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって、少なくとも20%、25%、35%、40%、45%、または50%抑制される。いくつかの態様において、SCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAP遺伝子は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、または80%抑制される。いくつかの態様において、SCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAP遺伝子は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって、少なくとも85%、90%、または95%抑制される。
【0055】
表5に、本発明の様々なdsRNA分子を用いての、SCAP発現の阻害の値を示す。
【0056】
SCAP発現、例えば、ヒトSCAP発現の文脈で本明細書において用いられる「治療する」、「治療」などの用語は、SCAP発現によって仲介される病的過程の軽減または緩和を意味する。本発明の文脈において、本明細書において以下に挙げる任意の他の状態(SCAP発現によって仲介される病的過程以外)に関するかぎり、「治療する」、「治療」などの用語は、そのような状態に関連する少なくとも1つの症状を軽減もしくは緩和する、またはそのような状態の進行を遅延もしくは逆転させることを意味する。
【0057】
本明細書において用いられる「治療上有効な量」および「予防上有効な量」なる語句は、SCAP発現によって仲介される病的過程、またはSCAP発現によって仲介される病的過程の顕性症状の治療、予防、または管理において治療上の利益を提供する量を意味する。治療上有効である具体的な量は当業者であれば容易にもとめることができ、例えば、SCAP発現によって仲介される病的過程のタイプ、患者の既往歴および年齢、SCAP発現によって仲介される病的過程の病期、ならびに他の抗SCAP発現剤の投与などの、当技術分野において公知の因子に応じて変動しうる。
【0058】
本明細書において用いられる「薬学的組成物」は、dsRNAの薬理学的に有効な量および薬学的に許容される担体を含む。本明細書において用いられる「薬理学的に有効な量」、「治療上有効な量」または単に「有効量」とは、所期の薬理学的、治療的、または予防的結果を生ずるのに有効なRNAの量を意味する。例えば、疾患または障害に関連する測定可能なパラメーターにおいて少なくとも25%の低下があるときに、所与の臨床治療を有効と考える場合、その疾患または障害を治療するための薬物の治療上有効な量は、そのパラメーターにおいて少なくとも25%の低下を得るのに必要な量である。
【0059】
「薬学的に許容される担体」なる用語は、治療薬の投与のための担体を意味する。そのような担体には、食塩水、緩衝化食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびその組み合わせが含まれるが、それらに限定されるわけではない。この用語は特に細胞培養培地を除外する。経口投与する薬物のために、薬学的に許容される担体には不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、着香料、着色料、および保存剤などの薬学的に許容される賦形剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。適当な不活性希釈剤には、炭酸ナトリウムおよびカルシウム、リン酸ナトリウムおよびカルシウム、ならびに乳糖が含まれる一方で、トウモロコシデンプンおよびアルギン酸が適当な崩壊剤である。結合剤には、デンプンおよびゼラチンが含まれうる一方、滑沢剤は、存在する場合には、一般にステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクである。望まれる場合には、錠剤をモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料でコーティングして、胃腸管での吸収を遅延させてもよい。
【0060】
本明細書において用いられる「形質転換細胞」とは、dsRNA分子が発現されうるベクターが導入されている細胞である。
【0061】
II. 二本鎖リボ核酸(dsRNA)
一つの態様において、本発明は、細胞または哺乳動物においてSCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAP遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)分子であって、SCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAP遺伝子の発現において生成されるmRNAの少なくとも一部に相補的な相補性の領域を含むアンチセンス鎖を含み、ここで相補性の領域は長さ30ヌクレオチド未満、一般には長さ19〜24ヌクレオチドであり、かつ該SCAP遺伝子を発現する細胞に接触すると、該SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%阻害するdsRNA分子を提供する。dsRNAは、ハイブリダイズして二重鎖構造を形成するのに十分相補的な2つのRNA鎖を含む。dsRNAの一方の鎖(アンチセンス鎖)は、SCAP遺伝子の発現中に生成されるmRNAの配列由来の標的配列に実質的に相補的、一般には完全に相補的な相補性の領域を含み、他方の鎖(センス鎖)は、適当な条件下で混合すると、2つの鎖がハイブリダイズして二重鎖構造を形成するような、アンチセンス鎖に相補的な領域を含む。一般には、二重鎖構造は長さ15から30塩基対の間、より一般には18から25塩基対の間、さらにより一般には19から24塩基対の間、および最も一般には19から21塩基対の間である。同様に、標的配列に対する相補性の領域は長さ15から30ヌクレオチドの間、より一般には18から25ヌクレオチドの間、さらにより一般には19から24ヌクレオチドの間、および最も一般には19から21ヌクレオチドの間である。本発明のdsRNAは1つまたは複数の一本鎖ヌクレオチド突出部をさらに含んでいてもよい。
【0062】
dsRNAは、以下に詳細に論じるとおり、当技術分野において公知の標準的方法により、例えば、Biosearch、Applied Biosystems、Inc.から市販されているものなどの、例えば、自動DNA合成機の使用により合成することができる。好ましい態様において、SCAP遺伝子はヒトSCAP遺伝子である。具体的態様において、dsRNAの第一の鎖は、RNAi物質AD-9490〜AD-9513のセンス鎖配列(配列番号:1〜48の群の奇数番号、表1)を含み、第二の配列はAD-9490〜AD-9513のアンチセンス鎖配列(配列番号:1〜48の群の偶数番号、表1)からなる群より選択される。
【0063】
さらなる態様において、dsRNAはRNAi物質AD-9490〜AD-9513について上で示した配列(表1)の群より選択される少なくとも1つのヌクレオチド配列を含む。他の態様において、dsRNAはこの群より選択される少なくとも2つの配列を含み、ここで少なくとも2つの配列の1つが少なくとも2つの配列のもう1つに相補的であり、少なくとも2つの配列の1つがSCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAP遺伝子の発現において生成されるmRNAの配列に実質的に相補的である。一般に、dsRNAは2つのオリゴヌクレオチドを含み、ここで1つのオリゴヌクレオチドはRNAi物質AD-9490〜AD-9513(表1)の1つにおけるセンス鎖として記載され、第二のオリゴヌクレオチドはRNAi物質AD-9490〜AD-9513(表1)の1つにおけるアンチセンス鎖として記載される。
【0064】
当業者であれば、20から23の間であるが、具体的には21塩基対の二重鎖構造を含むdsRNAが、RNA干渉を誘導する際に特に有効であると認められていることを十分に承知している(Elbashir et al., EMBO 2001, 20:6877-6888)。しかし、他の研究者らはこれよりも短い、または長いdsRNAも同様に有効でありうることを明らかにしている。前述の態様において、RNAi物質AD-9490〜AD-9513(表1)について示したオリゴヌクレオチド配列の性質によって、本発明のdsRNAは最低21ヌクレオチドの長さの少なくとも1つの鎖を含むことができる。RNAi物質AD-9490〜AD-9513(表1)について本明細書において示す配列の1つを含む短いdsRNAから、一方または両方の末端のほんの数個のヌクレオチドを引いても、前述のdsRNAと比べて同様に有効でありうることは、合理的に予想することができる。したがって、RNAi物質AD-9490〜AD-9513(表1)の配列の1つからの少なくとも15、16、17、18、19、20またはそれ以上の近接ヌクレオチドの部分配列を含み、かつ本明細書において以下に記載するアッセイで、SCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAP遺伝子の発現を阻害する能力において、全配列を含むdsRNAから5、10、15、20、25、または30%以下の阻害だけ異なっているdsRNAが本発明によって企図される。さらに、RNAi物質AD-9490〜AD-9513(表1)の標的配列内で切断するdsRNAを、SCAP mRNA配列、例えば、ヒトSCAP mRNA配列、例えば、GeneBankアクセッション番号NM_012235.2、およびそれぞれの標的配列を用いて、容易に調製することができる。
【0065】
加えて、表1に示すRNAi物質は、RNAiによる切断に感受性のSCAP mRNA内の部位を特定する。したがって、本発明は、本発明の物質の1つによって標的とされる配列内を標的とするRNAi物質をさらに含む。本明細書において用いられる第二のRNAi物質は、第二のRNAi物質が第一のRNAi物質のアンチセンス鎖に相補的なmRNA内の任意の場所でメッセージを切断する場合、第一のRNAi物質の配列内を標的とすると言われる。そのような第二の物質は一般に、SCAP遺伝子において選択された配列に近接する領域から取った追加のヌクレオチド配列に結合された、表1に示す配列の1つからの少なくとも15の近接ヌクレオチドからなる。例えば、AD-9509の標的配列の3'末端の15ヌクレオチドを標的SCAP遺伝子からの次の6ヌクレオチドと組み合わせると、表1に示す配列の1つに基づく21ヌクレオチドの一本鎖物質が生じる。
【0066】
本発明のdsRNAは、標的配列に対して1つまたは複数のミスマッチを含むことができる。好ましい態様において、本発明のdsRNAは3つ以下のミスマッチを含む。dsRNAのアンチセンス鎖が標的配列に対するミスマッチを含む場合、ミスマッチの部位は相補性の領域の中心には位置しないことが好ましい。dsRNAのアンチセンス鎖が標的配列に対するミスマッチを含む場合、ミスマッチはいずれかの末端から5ヌクレオチド、例えば、相補性の領域の5'または3'末端いずれかから、好ましくは5'末端から、5、4、3、2、または1ヌクレオチドに限局されることが好ましい。例えば、SCAP遺伝子の領域に相補的な23ヌクレオチドのdsRNA鎖について、dsRNAは一般に中心の13ヌクレオチド内にいかなるミスマッチも含まない。もう一つの態様において、dsRNAのアンチセンス鎖は、その1または2位から9、10、11、または12位まで(5'-3'へと数える)の領域にいかなるミスマッチも含まない。これらの位置はそれぞれ一般にシード領域(1または2位から9または10位)およびmRNA切断部位(11および12位)と考えられ、ミスマッチに最も敏感であると思われる。本発明内に記載する方法を用いて、標的配列に対してミスマッチを含むdsRNAがSCAP遺伝子の発現を阻害する際に有効であるかどうかを調べることができる。SCAP遺伝子発現を阻害する際のミスマッチを含むdsRNAの有効性を考慮することは、特に、SCAP遺伝子の相補性の領域が集団内で多型配列変動を有することが公知である場合には重要である。
【0067】
一つの態様において、dsRNAの少なくとも1つの末端が1から4、一般には1から2ヌクレオチドの一本鎖ヌクレオチド突出部を有する。少なくとも1つのヌクレオチド突出部を有するdsRNAは、それらの平滑末端のものよりも、予想外にすぐれた阻害特性を有する。さらに、発明者らは1つだけのヌクレオチド突出部の存在は、その全体の安定性に影響することなく、dsRNAの干渉活性を強化することを明らかにした。1つだけの突出部を有するdsRNAは、インビボ、ならびに様々な細胞、細胞培養培地、血液、および血清中で特に安定かつ有効であることが判明した。一般に、一本鎖の突出部はアンチセンス鎖の3'末端に、またはセンス鎖の3'末端に位置する。dsRNAは、一般にアンチセンス鎖の5'末端に位置する平滑末端も有しうる。そのようなdsRNAは安定性および阻害活性が改善されており、したがって低用量、すなわち1日に受容者の体重1kgあたり5mg未満での投与が可能となる。一般に、dsRNAのアンチセンス鎖は3'末端にヌクレオチド突出部を有し、5'末端は平滑である。もう一つの態様において、突出部のヌクレオチドの1つまたは複数はヌクレオシドチオホスフェートで置き換えられている。
【0068】
さらにもう一つの態様において、dsRNAを化学的に修飾して安定性を増強する。本発明の核酸は、''Current protocols in nucleic acid chemistry'', Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載のものなどの、当技術分野において十分に確立されている方法によって合成および/または修飾してもよく、前記文献の内容は参照により本明細書に組み入れられる。本発明において有用な好ましいdsRNA化合物の具体例には、修飾主鎖を含む、または天然のヌクレオシド間連結を含まないdsRNAが含まれる。本明細書において定義するとおり、修飾主鎖を有するdsRNAには、主鎖内にリン原子を保持するもの、および主鎖内にリン原子を持たないものが含まれる。本明細書の目的のために、時には当技術分野において言及されるとおり、そのヌクレオシド間主鎖内にリン原子を持たない修飾dsRNAもオリゴヌクレオシドと考えることができる。
【0069】
好ましい修飾dsRNA主鎖には、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、3'-アルキレンホスホネートおよびキラルホスホネートを含むメチルおよび他のアルキルホスホネート、ホスフィネート、3'-アミノホスホロアミデートおよびアミノアルキルホスホロアミデートを含むホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステルや、通常の3'-5'連結を有するボラノホスフェート、これらの2'-5'連結類縁体、ならびに隣接するヌクレオシド単位の対が3'-5'から5'-3'または2'-5'から5'-2'に連結されている極性が逆転したものが含まれる。様々な塩、混合塩および遊離酸型も含まれる。
【0070】
前述のリン含有連結の調製を教示する代表的な米国特許には、米国特許第3,687,808号;第4,469,863号;第4,476,301号;第5,023,243号;第5,177,195号;第5,188,897号;第5,264,423号;第5,276,019号;第5,278,302号;第5,286,717号;第5,321,131 号;第5,399,676号;第5,405,939号;第5,453,496号;第5,455,233号;第5,466,677号;第5,476,925号;第5,519,126号;第5,536,821号;第5,541,316号;第5,550,111号;第5,563,253号;第5,571,799号;第5,587,361号;および第5,625,050号が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0071】
リン原子を含まない好ましい修飾dsRNA主鎖は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間連結、混合ヘテロ原子およびアルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間連結、または1つもしくは複数の短鎖ヘテロ原子もしくは複素環ヌクレオシド間連結によって形成される主鎖を有する。これらには、モルホリノ連結(部分的にはヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン主鎖;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン主鎖;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル主鎖;アルケン含有主鎖;スルファメート主鎖;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ主鎖;スルホネートおよびスルホンアミド主鎖;アミド主鎖;ならびに混合N、O、SおよびCH2成分の部分を有するその他を有するものが含まれる。
【0072】
前述のオリゴヌクレオシドの調製を教示する代表的な米国特許には、米国特許第5,034,506号;第5,166,315号;第5,185,444号;第5,214,134号;第5,216,141号;第5,235,033号;第5,64,562号;第5,264,564号;第5,405,938号;第5,434,257号;第5,466,677号;第5,470,967号;第5,489,677号;第5,541,307号;第5,561,225号;第5,596,086号;第5,602,240号;第5,608,046号;第5,610,289号;第5,618,704号;第5,623,070号;第5,663,312号;第5,633,360号;第5,677,437号;および第5,677,439号が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0073】
他の好ましいdsRNA様物質において、ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオシド間結合の両方、すなわち主鎖が新しい基で置き換えられている。適当な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために、塩基単位は維持されている。1つのそのようなオリゴマー化合物である、すぐれたハイブリダイゼーション特性を有することが明らかにされているdsRNA様物質はペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、dsRNAの糖主鎖がアミド含有主鎖、特にアミノエチルグリシン主鎖で置き換えられている。核酸塩基は保持されており、主鎖のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合している。PNA化合物の調製を教示する代表的な米国特許には、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み入れられる。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsen et al., Science, 1991, 254, 1497-1500において見いだすことができる。
【0074】
本発明の最も好ましい態様は、ホスホロチオエート主鎖およびヘテロ原子を含むオリゴヌクレオチド主鎖、特に上で引用した米国特許第5,489,677号の-CH2-NH-CH2-、-CH2-N(CH3)-O-CH2-[メチレン(メチルイミノ)またはMMI主鎖として公知である]、-CH2-O-N(CH3)-CH2-、-CH2-N(CH3)-N(CH3)-CH2-および-N(CH3)-CH2-CH2-[ここで、天然ホスホジエステル主鎖は-O-P-O-CH2-と表す]、ならびに上で引用した米国特許第5,602,240号のアミド主鎖を含むdsRNAである。同様に好ましいものは、上で引用した米国特許第5,034,506号のモルホリノ主鎖構造を有するdsRNAである。
【0075】
修飾dsRNAは1つまたは複数の置換糖部分を含んでいてもよい。好ましいdsRNAは2'位に以下の1つを含む:OH;F;O-、S-、もしくはN-アルキル;O-、S-、もしくはN-アルケニル;O-、S-もしくはN-アルキニル;またはO-アルキル-O-アルキル、ここでアルキル、アルケニルおよびアルキニルは置換または無置換C1からC10アルキルまたはC2からC10アルケニルおよびアルキニルでありうる。特に好ましいのはO[(CH2)nO]mCH3、O(CH2)nOCH3、O(CH2)nNH2、O(CH2)nCH3、O(CH2)nONH2、およびO(CH2)nON[(CH2)nCH3)]2で、ここでnおよびmは1から約10である。他の好ましいdsRNAは2'位に以下の1つを含む:C1からC10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O-アルカリールもしくはO-アラルキル、SH、SCH3、OCN、Cl、Br、CN、CF3、OCF3、SOCH3、SO2CH3、ONO2、NO2、N3、NH2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、dsRNAの薬物動態特性を改善するための基、またはdsRNAの薬物動態学的特性を改善する基、および同様の特性を有する他の置換基。好ましい修飾には2'-メトキシエトキシ(2'-OCH2CH2OCH3、これは2'-O-(2-メトキシエチル)または2'-MOEとしても公知である)(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486-504)、すなわちアルコキシ-アルコキシ基が含まれる。さらに好ましい修飾には、本明細書において以下に記載する2'-ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち2'-DMAOEとしても公知のO(CH2)2ON(CH3)2基、および同じく本明細書において以下に記載する2'-ジメチルアミノエトキシエトキシ(当技術分野において2'-O-ジメチルアミノエトキシエチルまたは2'-DMAEOEとしても公知である)、すなわち2'-O-CH2-O-CH2-N(CH2)2が含まれる。
【0076】
他の好ましい修飾には2'-メトキシ(2'-OCH3)、2'-アミノプロポキシ(2'-OCH2CH2CH2NH2)および2'-フルオロ(2'-F)が含まれる。同様の修飾をdsRNAの他の位置、特に3'末端ヌクレオチドまたは2'-5'連結dsRNAにおける糖の3'位および5'末端ヌクレオチドの5'位で行ってもよい。dsRNAはペントフラノシル糖の代わりのシクロブチル部分などの糖類似物を有していてもよい。そのような修飾糖構造の調製を教示する代表的米国特許には、米国特許第4,981,957号;第5,118,800号;第5,319,080号;第5,359,044号;第5,393,878号;第5,446,137号;第5,466,786号;第5,514,785号;第5,519,134号;第5,567,811号;第5,576,427号;第5,591,722号;第5,597,909号;第5,610,300号;第5,627,053号;第5,639,873号;第5,646,265号;第5,658,873号;第5,670,633号;および第5,700,920号が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、その特定のものは本出願と協同で所有され、それぞれその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0077】
dsRNAは核酸塩基(当技術分野において単に「塩基」と呼ぶことが多い)修飾または置換を含んでいてもよい。本明細書において用いられる「非修飾」または「天然」核酸塩基には、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、ならびにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)が含まれる。修飾核酸塩基には、5-メチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよび他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミンおよび2-チオシトシン、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(プソイドウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオール、8-チオアルキル、8-ヒドロキシルおよび他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチルおよび他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニンおよび7-メチルアデニン、8-アザグアニンおよび8-アザアデニン、7-デアザグアニンおよび7-デアザアデニンならびに3-デアザグアニンおよび3-デアザアデニンなどの他の合成および天然核酸塩基が含まれる。さらなる核酸塩基には、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、The Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. L, ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されるもの、Englisch et al., Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613によって開示されるもの、およびSanghvi, Y S., Chapter 15, DsRNA Research and Applications, pages 289-302, Crooke, S. T. and Lebleu, B., Ed., CRC Press, 1993によって開示されるものが含まれる。これらの核酸塩基の特定のものは本発明のオリゴマー化合物の結合親和性を高めるために特に有用である。これらには、2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含む、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンならびにN-2、N-6およびO-6置換プリンが含まれ、5-メチルシトシン置換は核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2度C高めることが明らかにされており(Sanghvi, Y. S., Crooke, S. T. and Lebleu, B., Eds., DsRNA Research and Applications, CRC Press, Boca Raton, 1993, pp. 276-278)、現在のところ、特に2'-O-メトキシエチル糖修飾と組み合わせた場合に好ましい塩基置換である。
【0078】
前述の修飾核酸塩基ならびに他の修飾核酸塩基の特定のものの調製を教示する代表的米国特許には、前述の米国特許第3,687,808号、ならびに米国特許第4,845,205号;第5,130,30号;第5,134,066号;第5,175,273号;第5,367,066号;第5,432,272号;第5,457,187号;第5,459,255号;第5,484,908号;第5,502,177号;第5,525,711号;第5,552,540号;第5,587,469号;第5,594,121号、第5,596,091号;第5,614,617号;および第5,681,941号が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、それぞれ参照により本明細書に組み入れられ、かつ米国特許第5,750,692号も含まれ、参照により本明細書に組み入れられる。
【0079】
本発明のdsRNAのもう一つの修飾は、dsRNAの活性、細胞分布または細胞取り込みを増強する1つまたは複数の部分または結合体のdsRNAへの化学的連結を含む。そのような部分には、コレステロール部分(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 199, 86, 6553-6556)、コール酸(Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1994 4 1053-1060)、チオエーテル、例えば、ベリル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660, 306-309;Manoharan et al., Biorg. Med. Chem. Let., 1993, 3, 2765-2770)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20, 533-538)、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J, 1991, 10, 1111-1118;Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259, 327-330;Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75, 49-54)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくは1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホン酸トリエチル-アンモニウム(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654;Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18, 3777-3783)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14, 969-973)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36, 3651-3654)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264, 229-237)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニルオキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277, 923-937)などの脂質部分が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0080】
そのようなdsRNA結合体の調製を教示する代表的米国特許には、米国特許第4,828,979号;第4,948,882号;第5,218,105号;第5,525,465号;第5,541,313号;第5,545,730号;第5,552,538号;第5,578,717号、第5,580,731号;第5,591,584号;第5,109,124号;第5,118,802号;第5,138,045号;第5,414,077号;第5,486,603号;第5,512,439号;第5,578,718号;第5,608,046号;第4,587,044号;第4,605,735号;第4,667,025号;第4,762,779号;第4,789,737号;第4,824,941号;第4,835,263号;第4,876,335号;第4,904,582号;第4,958,013号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,082,830号;第5,112,963号;第5,214,136号;第5,245,022号;第5,254,469号;第5,258,506号;第5,262,536号;第5,272,250号;第5,292,873号;第5,317,098号;第5,371,241号、第5,391,723号;第5,416,203号、第5,451,463号;第5,510,475号;第5,512,667号;第5,514,785号;第5,565,552号;第5,567,810号;第5,574,142号;第5,585,481号;第5,587,371号;第5,595,726号;第5,597,696号;第5,599,923号;第5,599,928号および第5,688,941号が含まれるが、それらに限定されるわけではなく、それぞれ参照により本明細書に組み入れられる。
【0081】
所与の化合物のすべての位置が均一に修飾される必要はなく、事実、前述の修飾の複数が単一の化合物またさらにはdsRNA内の単一のヌクレオシドに組み込まれていてもよい。本発明は、キメラ化合物であるdsRNA化合物も含む。本発明の文脈における「キメラ(の)」dsRNA化合物または「キメラ」は、それぞれ少なくとも1つのモノマー単位、すなわち、dsRNA化合物の場合にはヌクレオチドからなる、2つ以上の化学的に異なる領域を含むdsRNA化合物、特にdsRNAである。これらのdsRNAは、典型的には、dsRNAにヌクレアーゼ分解に対する抵抗性増大、細胞取り込み増大、および/または標的核酸への結合親和性増大を付与するようにdsRNAが修飾されている、少なくとも1つの領域を含む。dsRNAのその他の領域は、RNA:DNAまたはRNA:RNAハイブリッドを切断可能な酵素の基質として役立ちうる。RNA標的の切断は、ゲル電気泳動および必要がある場合には当技術分野において公知の関連する核酸ハイブリダイゼーション技術によって日常的に検出することができる。
【0082】
特定の場合に、dsRNAを非リガンド基によって修飾してもよい。dsRNAの活性、細胞分布または細胞取り込みを増強するために、いくつかの非リガンド分子がdsRNAに結合されており、そのような結合を行うための方法は科学文献中に見ることができる。そのような非リガンド部分は、コレステロール(Letsinger et al., Proc. Natl. Acid. Sci. USA, 1989, 86:6553)、コール酸(Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 1994, 4:1053)、チオエーテル、例えば、ヘキシル-S-トリチルチオール(Manoharan et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 1992, 660:306;Manoharan et al., Bioorg. Med. Chem. Let., 1993, 3:2765)、チオコレステロール(Oberhauser et al., Nucl. Acids Res., 1992, 20:533)、脂肪鎖、例えば、ドデカンジオールもしくはウンデシル残基(Saison-Behmoaras et al., EMBO J., 1991, 10:1111;Kabanov et al., FEBS Lett., 1990, 259:327;Svinarchuk et al., Biochimie, 1993, 75:49)、リン脂質、例えば、ジ-ヘキサデシル-rac-グリセロールもしくは1,2-ジ-O-ヘキサデシル-rac-グリセロ-3-H-ホスホン酸トリエチル-アンモニウム(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651;Shea et al., Nucl. Acids Res., 1990, 18:3777)、ポリアミンもしくはポリエチレングリコール鎖(Manoharan et al., Nucleosides & Nucleotides, 1995, 14:969)、またはアダマンタン酢酸(Manoharan et al., Tetrahedron Lett., 1995, 36:3651)、パルミチル部分(Mishra et al., Biochim. Biophys. Acta, 1995, 1264:229)、またはオクタデシルアミンもしくはヘキシルアミノ-カルボニル-オキシコレステロール部分(Crooke et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1996, 277:923)などの脂質部分を含んでいた。そのようなdsRNA結合体の調製を教示する代表的米国特許は上に列挙している。典型的な結合プロトコルは、配列の1つまたは複数の位置にアミノリンカーを有するdsRNの合成を含む。次いでアミノ基を、適当なカップリングまたは活性化試薬を用いて、結合させる分子と反応させる。結合反応はdsRNAが固体支持体に結合したまま、またはdsRNAの切断後に溶液相のいずれで実施してもよい。dsRNA結合体のHPLC精製により、典型的に純粋な結合体を得る。
【0083】
ベクターがコードするRNAi物質
本発明のdsRNAは、インビボでの細胞内で組換えウイルスベクターからも発現されうる。本発明の組換えウイルスベクターは、本発明のdsRNAをコードする配列およびdsRNA配列を発現するための任意の適当なプロモーターを含む。適当なプロモーターには、例えば、U6またはH1 RNA pol IIIプロモーター配列およびサイトメガロウイルスプロモーターが含まれる。他の適当なプロモーターの選択は当分野における技術の範囲内である。本発明の組換えウイルスベクターは、特定の組織または特定の細胞内環境におけるdsRNA発現のための誘導性または調節性プロモーターも含みうる。インビボで本発明のdsRNAを細胞に送達するための組換えウイルスベクターの使用を、以下により詳細に論じる。
【0084】
本発明のdsRNAは組換えウイルスベクターから、2つの別々の相補的RNA分子として、または2つの相補的領域を有する1つのRNA分子としてのいずれかで発現されうる。
【0085】
dsRNA分子が発現されるためのコード配列を受容可能な任意のウイルスベクター、例えば、アデノウイルス(AV);アデノ関連ウイルス(AAV);レトロウイルス(例えば、レンチウイルス(LV)、ラブドウイルス、ネズミ白血病ウイルス);ヘルペスウイルスなど由来のベクターを用いることができる。ウイルスベクターの向性を、他のウイルスからのエンベロープタンパク質もしくは他の表面抗原でベクターを偽型化することにより、または異なるウイルスキャプシドタンパク質を適宜置換することにより、修飾することができる。
【0086】
例えば、本発明のレンチウイルスベクターは、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、狂犬病、エボラ、モコラなどからの表面タンパク質で偽型化することができる。本発明のAAVベクターは、異なるキャプシドタンパク質血清型を発現するようベクターを操作することにより、異なる細胞を標的とさせることができる。例えば、血清型2ゲノム上で血清型2キャプシドを発現するAAVベクターはAAV 2/2と呼ぶ。AAV 2/2ベクター中のこの血清型2キャプシド遺伝子を血清型5キャプシド遺伝子と置き換えてAAV 2/5ベクターを生成することができる。異なるキャプシドタンパク質血清型を発現するAAVベクターを構築するための技術は当分野における技術の範囲内である;例えば、Rabinowitz J E et al. (2002), J Virol 76:791-801を参照されたく、その全開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0087】
本発明において用いるのに適した組換えウイルスベクターの選択、dsRNAを発現するための核酸配列をベクターに挿入する方法、およびウイルスベクターを興味対象の細胞に送達する方法は、当分野における技術の範囲内である。例えば、Dornburg R (1995), Gene Therap. 2: 301-310;Eglitis M A (1988), Biotechniques 6: 608-614;Miller A D (1990), Hum Gene Therap. 1: 5-14;Anderson W F (1998), Nature 392: 25-30;およびRubinson D A et al., Nat. Genet. 33: 401-406を参照されたく、その全開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0088】
好ましいウイルスベクターはAVおよびAAV由来のものである。特に好ましい態様において、本発明のdsRNAは、2つの別々の相補的一本鎖RNA分子として、例えば、U6もしくはH1 RNAプロモーターのいずれか、またはサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含む組換えAAVベクターから発現される。
【0089】
本発明のdsRNAを発現するのに適したAVベクター、組換えAVベクターを構築する方法、およびベクターを標的細胞に送達する方法は、Xia H et al. (2002), Nat. Biotech. 20: 1006-1010に記載されている。
【0090】
本発明のdsRNAを発現するのに適したAAVベクター、組換えAVベクターを構築する方法、およびベクターを標的細胞に送達する方法は、Samulski R et al. (1987), J. Virol. 61: 3096-3101;Fisher K J et al. (1996), J. Virol, 70: 520-532;Samulski R et al. (1989), J. Virol. 63: 3822-3826;米国特許第5,252,479号;米国特許第5,139,941号;国際特許出願WO 94/13788号;および国際特許出願WO 93/24641号に記載されており、その全開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0091】
III. dsRNAを含む薬学的組成物
一つの態様において、本発明は、本明細書に記載のdsRNA、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。dsRNAを含む薬学的組成物は、ヒトSCAP発現によって仲介される病的過程などのSCAP遺伝子の発現もしくは活性に関連する疾患もしくは障害、またはSCAP発現のダウンレギュレーションによって治療しうる疾患もしくは障害を治療するために有用である。そのような薬学的組成物を送達の様式に基づいて製剤する。一例は非経口送達による全身投与のために製剤されている組成物である。
【0092】
本発明の薬学的組成物を、SCAP遺伝子の発現を阻害するのに十分な用量で投与する。発明者らは、本発明のdsRNAを含む組成物は有効性が改善されているため、驚くほど低い用量で投与しうることを見いだした。SCAP遺伝子の発現を阻害または完全に抑制するために、1日に受容者の体重1キログラムあたりdsRNA 5mgの最大用量で十分である。
【0093】
一般に、dsRNAの適当な用量は1日に受容者の体重1キログラムあたり0.01マイクログラムから5.0ミリグラム、一般には1日に体重1キログラムあたり1マイクログラムから1mgの範囲となる。薬学的組成物は1日1回投与してもよく、あるいはdsRNAは1日を通して適当な間隔で2、3、もしくはそれ以上の部分用量で、または持続注入もしくは制御放出製剤による送達を用いて投与してもよい。その場合、各部分用量に含まれるdsRNAは、1日合計用量に達するために、対応して少ない用量でなければならない。例えば、数日間にわたってdsRNAの持続放出を提供する通常の持続放出製剤を用いての、数日にわたる送達のために、用量単位を配合することもできる。持続放出製剤は当技術分野において周知で、本発明の薬剤で用いうるような、薬剤の経膣送達のために特に有用である。本態様において、用量単位は1日用量の対応する倍数を含む。
【0094】
当業者であれば、疾患または障害の重症度、過去の治療、被験者の全身の健康および/または年齢、ならびに存在する他の疾患を含むが、それらに限定されるわけではない、特定の因子が被験者を有効に治療するために必要とされる用量およびタイミングに影響しうることを理解するであろう。さらに、治療上有効な量の組成物による被験者の治療は、1回の治療および一連の治療を含みうる。本発明に含まれる個々のdsRNAについての有効な用量およびインビボでの半減期の推定は、通常の方法を用いて、または本明細書の他所に記載のとおり、適当な動物モデルを用いてのインビボ試験に基づいて行うことができる。
【0095】
遺伝学の進歩は、SCAP発現によって仲介される病的過程などの、様々なヒト疾患を試験するためのいくつかの実験動物モデルを生み出した。そのようなモデルをdsRNAのインビボ試験、ならびに治療上有効な用量決定のために用いる。
【0096】
本発明は、本発明のdsRNA化合物を含む薬学的組成物および製剤も含む。本発明の薬学的組成物は、局所治療または全身治療のいずれが望まれるかに応じてや、治療する領域に応じて、いくつかの様式で投与してもよい。投与は局所、例えば、ネブライザーを含む、粉末もしくはエアロゾルの吸入もしくは通気による肺;気管内、鼻内、表皮および経皮、経口または非経口であってもよい。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注射もしくは注入;または頭蓋内、例えば、クモ膜下もしくは脳室内投与が含まれる。
【0097】
局所投与用の薬学的組成物および製剤には、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴剤、坐剤、噴霧剤、液剤および散剤が含まれうる。通常の薬学的担体、水性、粉末または油状基剤、増粘剤などが必要または望ましいこともある。コーティングしたコンドーム、手袋なども有用でありうる。好ましい局所製剤には、本発明のdsRNAが脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化剤および界面活性剤などの局所送達物質との混合物であるものが含まれる。好ましい脂質およびリポソームには、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン=DOPE、ジミリストイルホスファチジルコリン=DMPC、ジステアロイルホスファチジルコリン)負(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール=DMPG)およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピル=DOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミン=DOTMA)が含まれる。本発明のdsRNAはリポソーム中に封入されていてもよく、またはリポソーム、特にカチオン性リポソームへの複合体を形成してもよい。または、dsRNAは脂質、特にカチオン性脂質に複合していてもよい。好ましい脂肪酸およびエステルには、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、1-モノカプリン酸グリセリン、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(1-dodecylazacycloheptan-2-one)、アシルカルニチン、アシルコリン、またはC1-10アルキルエステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピルIPM)、モノグリセリド、ジグリセリドまたはその薬学的に許容される塩が含まれるが、それらに限定されるわけではない。局所製剤は1999年5月20日提出の米国特許出願第09/315,298号に詳細に記載されており、その内容は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0098】
経口投与用の組成物および製剤には、粉末もしくは顆粒、微小粒子、ナノ粒子、水もしくは非水性媒質中の懸濁液もしくは溶液、カプセル剤、ゲルカプセル剤、サシェ、錠剤またはミニ錠剤が含まれる。増粘剤、着香剤、希釈剤、乳化剤、分散補助剤または結合剤が望ましいこともある。好ましい経口製剤は、本発明のdsRNAを1つまたは複数の浸透増強剤、界面活性剤、およびキレート化剤と共に投与するものである。好ましい界面活性剤には、脂肪酸および/もしくはエステルまたはその塩、胆汁酸および/またはその塩が含まれる。好ましい胆汁酸/塩には、ケノデオキシコール酸(CDCA)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ-24,25-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウムおよびグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが含まれる。好ましい脂肪酸には、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン、ジラウリン、1-モノカプリン酸グリセリン、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、もしくはモノグリセリド、ジグリセリドまたはその薬学的に許容される塩(例えば、ナトリウム)が含まれる。同様に好ましいのは、浸透増強剤の組み合わせ、例えば、胆汁酸/塩と組み合わせての脂肪酸/塩である。特に好ましい組み合わせは、ラウリン酸、カプリン酸およびUDCAのナトリウム塩である。さらなる浸透増強剤には、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテルが含まれる。本発明のdsRNAは、噴霧乾燥粒子を含む顆粒型で、または微小もしくはナノ粒子を形成するために複合して、経口送達してもよい。dsRNA複合化剤には、ポリ-アミノ酸;ポリイミン;ポリアクリレート;ポリアルキルアクリレート、ポリオキセタン、ポリアルキルシアノアクリレート;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリレート、ポリエチレングリコール(PEG)およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリレート;DEAE-誘導体化ポリイミン、ポルラン(pollulans)、セルロースおよびデンプンが含まれる。特に好ましい複合化剤には、キトサン、N-トリメチルキトサン、ポリ-L-リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノメチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p-アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリレート)、ポリ(エチルシアノアクリレート)、ポリ(ブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソブチルシアノアクリレート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリレート)、DEAE-メタクリレート、DEAE-ヘキシルアクリレート、DEAE-アクリルアミド、DEAE-アルブミンおよびDEAE-デキストラン、ポリメチルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリ(D,L-乳酸)、ポリ(DL-乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、アルギネート、ならびにポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。dsRNAの経口製剤およびそれらの調製は米国特許出願第08/886,829号(1997年7月1日提出)、第09/108,673(1998年7月1日提出)、第09/256,515号(1999年2月23日提出)、第09/082,624号(1998年5月21日提出)、および第09/315,298号(1999年5月20日提出)に詳細に記載されており、それぞれ全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0099】
非経口、クモ膜下または脳室内投与用の組成物および製剤には、緩衝化剤、希釈剤ならびに浸透増強剤、担体化合物および他の薬学的に許容される担体または賦形剤などであるが、それらに限定されるわけではない、他の適当な添加物も含みうる、滅菌水性溶液も含まれうる。
【0100】
本発明の薬学的組成物には、溶液、乳剤、およびリポソーム含有製剤が含まれるが、それらに限定されるわけではない。これらの組成物は、既製の液体、自己乳化固体および自己乳化半固体が含まれるが、それらに限定されるわけではない、様々な成分から生成されうる。
【0101】
単位用量剤形で都合よく提供されうる、本発明の薬学的製剤は、薬学産業において周知の通常の技術に従って調製してもよい。そのような技術は、活性成分を薬学的担体または賦形剤と混合する段階を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体もしくは微粒子固体担体または両方と均質かつ密接に混合し、次いで必要があれば、生成物を成形することにより調製する。
【0102】
本発明の組成物は、錠剤、カプセル剤、ゲルカプセル剤、液体シロップ、ソフトゲル、坐剤、および浣腸剤などであるが、それらに限定されるわけではない、多くの可能な剤形のいずれかに製剤してもよい。本発明の組成物は、水性、非水性または混合媒質中の懸濁剤として製剤してもよい。水性懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む、懸濁剤の粘度を高める物質をさらに含んでいてもよい。懸濁剤は安定化剤を含んでいてもよい。
【0103】
本発明の一つの態様において、薬学的組成物は発泡体として製剤し、使用してもよい。薬学的発泡体には、乳剤、マイクロエマルジョン、クリーム、ゼリーおよびリポソームなどであるが、それらに限定されるわけではない、製剤が含まれる。性質は基本的に類似しているが、これらの製剤は成分および最終生成物の堅さが異なる。そのような組成物および製剤の調製は一般に、薬学および製剤の分野の技術者には公知で、本発明の組成物の製剤に適用してもよい。
【0104】
乳剤
本発明の組成物は、乳剤として調製し、製剤してもよい。乳剤は典型的には、1つの液体がもう1つの液体中に、通常は直径0.1μmを超える液滴の形で分散した不均質系である(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N. Y., volume 1, p. 199;Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N. Y., Volume 1, p. 245;Block in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 2, p. 335;Higuchi et al., in Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p. 301)。乳剤は、密接に混合し、互いに分散した、2つの不混和性液相を含む二相系であることが多い。一般に、乳剤は油中水(w/o)または水中油(o/w)いずれかの種でありうる。水相が大量の油相中に微粒化し、微小液滴として分散している場合、得られる組成物は油中水(w/o)乳剤と呼ぶ。または、油相が大量の水相中に微粒化し、微小液滴として分散している場合、得られる組成物は水中油(o/w)乳剤と呼ぶ。乳剤は分散相および水相中、油相中いずれかの溶液として、またはそれ自体が別の相として存在しうる活性薬物に加えて、追加の成分を含んでいてもよい。乳化剤、安定化剤、色素、および抗酸化剤などの薬学的賦形剤も、必要に応じて乳剤中に含まれていてもよい。薬学的乳剤は、例えば、油中水中油(o/w/o)および水中油中水(w/o/w)乳剤の場合などの3相以上からなる多相乳剤であってもよい。そのような複合製剤はしばしば、単純な二相乳剤では得られない特定の利点を提供する。o/w乳剤の個々の油滴が小さい水滴を封入する多相乳剤は、w/o/w乳剤を構成する。同様に、油性連続相中に安定化された水の小滴中に封入された油滴の系はo/w/o乳剤を提供する。
【0105】
乳剤は熱力学的安定性がほとんど、またはまったくないことによって特徴づけられる。しばしば、乳剤の分散または不連続相は外部または連続相中によく分散し、乳化剤または製剤の粘性によってこの形に維持される。乳剤型軟膏基剤およびクリームの場合と同様、乳剤の相のいずれかは半固体または固体であってもよい。乳剤を安定化する他の手段は、乳剤のいずれかの相に組み込まれていてもよい乳化剤の使用を伴う。乳化剤は次の4つの範疇に大きく分類しうる:合成界面活性剤、天然乳化剤、吸収基剤、および微細分散固体(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
【0106】
表面活性剤としても公知の合成界面活性剤は、乳剤の製剤において広い適用性が見いだされており、文献に総説が掲載されている(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, volume 1, p. 199)。界面活性剤は典型的には両親媒性で、親水性および疎水性部分を含む。界面活性剤の疎水性に対する親水性の比は親水親油バランス(HLB)と命名され、製剤の調製において界面活性剤を分類し、選択する際に価値あるツールである。界面活性剤は、親水性基の性質に基づき次の異なるクラスに分類してもよい:非イオン性、アニオン性、カチオン性および両性(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 285)。
【0107】
乳剤製剤において用いる天然乳化剤には、ラノリン、蜜蝋、ホスファチド、レシチン、およびアカシアが含まれる。無水ラノリンおよび親水性ワセリンなどの吸収基剤は、それらが水を吸収してw/o乳剤を形成し、なおそれらの半固体の堅さを保持しうるような親水特性を有する。微粒子固体も、特に界面活性剤との組み合わせ、および粘性製剤で、良好な乳化剤として用いられてきた。これらには、重金属の水酸化物などの極性無機固体;ベントナイト、アタパルガイト、ヘクトライト、カオリン、モンモリロナイト、コロイド状ケイ酸アルミニウムおよびコロイド状ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどの非膨潤クレー、色素ならびに炭素またはトリステアリン酸グリセリンなどの非極性固体が含まれる。
【0108】
多様な非乳化材料も乳剤製剤に含まれ、乳剤の性質に貢献している。これらには、脂肪、油、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪エステル、湿潤薬、親水性コロイド、保存剤および抗酸化剤が含まれる(Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 335;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。
【0109】
親水性コロイドまたはハイドロコロイドには、多糖(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、カラゲナン、ガーゴム、カラヤゴム、およびトラガカント)、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシプロピルセルロース)、および合成ポリマー(例えば、カルボマー、セルロースエーテル、およびカルボキシビニルポリマー)などの天然ゴムおよび合成ポリマーが含まれる。これらは水に分散または膨潤して、分散相液滴の周囲に強い界面フィルムを形成することにより、および外部相の粘性を高めることにより乳剤を安定化するコロイド状溶液を生成する。
【0110】
乳剤は、微生物の成長を容易に支えうる、炭水化物、タンパク質、ステロールおよびホスファチドなどのいくつかの成分を含むことが多いため、これらの製剤は保存剤を組み込むことが多い。乳剤製剤に含まれる一般に用いられる保存剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、4級アンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、p-ヒドロキシ安息香酸のエステル、およびホウ酸が含まれる。抗酸化剤も一般に乳剤製剤に加えられて、製剤の劣化を防止する。用いる抗酸化剤は、トコフェロール、没食子酸アルキル、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなどのフリーラジカル捕捉剤、またはアスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムなどの還元剤、ならびにクエン酸、酒石酸、およびレシチンなどの抗酸化剤相乗剤でありえる。
【0111】
乳剤製剤の皮膚、経口および非経口経路による適用、ならびにそれらの製造法は文献に総説が掲載されている(Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。経口送達用の乳剤製剤は、製剤が容易で、かつ吸収およびバイオアベイラビリティの見地から有効であるため、非常に広く用いられている(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245;Idson, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 199)。鉱油系の緩下剤、脂溶性ビタミンおよび高脂肪栄養製剤は一般にo/w乳剤として経口投与されてきた材料に含まれる。
【0112】
本発明の一つの態様において、dsRNAおよび核酸の組成物はマイクロエマルジョンとして製剤する。マイクロエマルジョンは、単一の光学的に等方性で熱力学的に安定な溶液である、水、油および両親媒性物質の系と定義されうる(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245)。典型的にはマイクロエマルジョンは、まず油を水性界面活性剤溶液に分散し、次いで十分な量の第4の成分、一般には中鎖アルコールを加えて透明な系を形成することにより調製される系である。したがって、マイクロエマルジョンは、表面活性分子の界面フィルムによって安定化されている2つの不混和性液体の熱力学的に安定で等方的に澄明な分散液とも記載されている(Leung and Shah, in: Controlled Release of Drugs: Polymers and Aggregate Systems, Rosoff, M., Ed., 1989, VCH Publishers, New York, pages 185-215)。マイクロエマルジョンは一般には、油、水、界面活性剤、コサーファクタントおよび電解質を含む3から5つの成分の組み合わせによって調製する。マイクロエマルジョンが油中水(w/o)または水中油(o/w)型のいずれであるかは、用いる油および界面活性剤の性質、ならびに界面活性剤分子の極性頭部および炭化水素尾部の構造および幾何学的充填に依存する(Schott, in Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1985, p. 271)。
【0113】
相ダイアグラムを用いての現象学的アプローチが広く試験されており、当業者にはマイクロエマルジョンをいかにして製剤するかの包括的知識が得られている(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245;Block, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 335)。通常の乳剤と比べて、マイクロエマルジョンは水不溶性薬物を自然に形成される熱力学的に安定な液滴の製剤中に可溶化するという利点を提供する。
【0114】
マイクロエマルジョンの調製に用いる界面活性剤には、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ブリッジ96、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリグリセロール脂肪酸エステル、テトラグリセロールモノラウレート(ML310)、テトラグリセロールモノオレエート(MO310)、ヘキサグリセロールモノオレエート(PO310)、ヘキサグリセロールペンタオレエート(PO500)、デカグリセロールモノカプレート(MCA750)、デカグリセロールモノオレエート(MO750)、デカグリセロールセスキオレエート(SO750)、デカグリセロールデカオレエート(DAO750)が単独またはコサーファクタントとの組み合わせで含まれるが、それらに限定されるわけではない。コサーファクタントは、通常はエタノール、1-プロパノール、および1-ブタノールなどの短鎖アルコールで、界面活性剤フィルム中に浸透し、その結果、界面活性剤分子の間に生じる空間のために無秩序なフィルムを生成することにより、界面の流動性を高めるのに役立つ。しかし、マイクロエマルジョンはコサーファクタントを用いずに調製してもよく、アルコールを含まない自己乳化マイクロエマルジョン系が当技術分野において公知である。水相は典型的には水、薬物の水溶液、グリセロール、PEG300、PEG400、ポリグリセロール、プロピレングリコール、およびエチレングリコールの誘導体でありうるが、それらに限定されるわけではない。油相には、Captex 300、Captex 355、Capmul MCM、脂肪酸エステル、中鎖(C8-C12)モノ、ジ、およびトリグリセリド、ポリオキシエチル化グリセリル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ポリグリコール化グリセリド、飽和ポリグリコール化C8-C10グリセリド、植物油ならびにシリコーン油などの材料が含まれうるが、それらに限定されるわけではない。
【0115】
マイクロエマルジョンは特に薬物可溶化および薬物の吸収増強の見地から興味深い。脂質性マイクロエマルジョン(o/wおよびw/oの両方)はペプチドを含む薬物の経口バイオアベイラビリティを増強すると提唱されている(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385-1390;Ritschel, Meth. Find. Exp. Clin. Pharmacol., 1993, 13, 205)。マイクロエマルジョンは薬物の可溶化改善、酵素加水分解からの薬物の保護、界面活性剤による膜の流動性および透過性変化による薬物吸収の増強の可能性、調製が容易であること、固体剤形よりも経口投与が容易であること、臨床効力の改善、および毒性低減という利点を提供する(Constantinides et al., Pharmaceutical Research, 1994, 11, 1385;Ho et al., J. Pharm. Sci., 1996, 85, 138-143)。しばしば、マイクロエマルジョンはその成分が周囲温度で一緒になったときに自然に生成することがある。これは、熱に不安定な薬物、ペプチドまたはdsRNAを製剤する際に特に有利でありうる。マイクロエマルジョンは、美容および薬学的適用の両方で、活性成分の経皮送達においても有効であった。本発明のマイクロエマルジョン組成物および製剤は、dsRNAおよび核酸の胃腸管からの全身吸収増大を促進し、同様に胃腸管、膣、口腔および他の投与領域内でのdsRNAおよび核酸の局所細胞取り込みを改善する。
【0116】
本発明のマイクロエマルジョンは、製剤の性質を改善するため、ならびに本発明のdsRNAおよび核酸の吸収を増強するために、ソルビタンモノステアレート(Grill 3)、Labrasol、および浸透増強剤などの追加の成分および添加物を含んでいてもよい。本発明のマイクロエマルジョンにおいて用いる浸透増強剤は5つの大きい範疇-界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤、および非キレート化非界面活性剤の1つに属するとして分類しうる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p. 92)。これらのクラスはそれぞれ上で論じている。
【0117】
リポソーム
薬物の製剤のために試験され、用いられている、マイクロエマルジョン以外の多くの組織化された界面活性剤構造がある。これらには、単分子層、ミセル、二分子層、および小胞が含まれる。リポソームなどの小胞は、薬物送達の見地から、それらの特異性およびそれらが提供する作用の持続期間のゆえに、多大なる興味を引きつけている。本発明において用いられる「リポソーム」なる用語は、球状の1つまたは複数の二層に配列された両親媒性脂質からなる小胞を意味する。
【0118】
リポソームは、親油性材料で形成される膜と水性の内部を有する単層または多重膜小胞である。水性部分は送達する組成物を含む。カチオン性リポソームは細胞壁に融合しうるという利点を有している。非カチオン性リポソームは、細胞壁にそれほど効率的に融合することはできないが、インビボでマクロファージによって取り込まれる。
【0119】
無傷の哺乳動物の皮膚を通過するために、脂質小胞は直径がそれぞれ50nm未満の一連の微孔を適当な経皮勾配の影響下で通過しなければならない。したがって、高度に変形可能で、そのような微孔を通過しうるリポソームを用いることが望ましい。
【0120】
リポソームのさらなる利点には以下が含まれる;天然リン脂質から得られるリポソームは生体適合性かつ生分解性である;リポソームは広範な水溶性および脂溶性薬物を取り込むことができる;リポソームはそれらの内部区画に封入された薬物を代謝および分解から保護することができる(Rosoff, in Pharmaceutical Dosage Forms, Lieberman, Rieger and Banker (Eds.), 1988, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., volume 1, p. 245)。リポソーム製剤の調製における重要な考察は脂質の表面電荷、小胞サイズおよびリポソームの水性体積である。
【0121】
リポソームは活性成分の作用部位への移動および送達のために有用である。リポソーム膜は生体膜に構造的に類似であるため、リポソームを組織に適用する場合、リポソームは細胞膜と併合し始め、リポソームと細胞との併合が進むにつれて、リポソーム内容物は活性物質が作用しうる細胞内へと出て行く。
【0122】
リポソーム製剤は多くの薬物の送達様式として大規模な研究の焦点であった。局所投与のために、リポソームは他の製剤と比べていくつかの利点を提供するという証拠が増えつつある。そのような利点には、投与薬物の高い全身吸収に関連する副作用低減、投与薬物の所望の標的における蓄積増大、ならびに親水性および疎水性両方の多様な薬物を皮膚に投与する能力が含まれる。
【0123】
いくつかの報告が、高分子量DNAを含む薬剤を皮膚に送達するリポソームの能力を詳細に記載している。鎮痛剤、抗体、ホルモンおよび高分子量DNAを含む化合物が皮膚に投与されている。適用の大多数は上部表皮を標的とする結果となった。
【0124】
リポソームは2つの大きいクラスに分かれる。カチオン性リポソームは、負に荷電したDNA分子と相互作用して安定な複合体を形成する、正に荷電したリポソームである。正に荷電したDNA/リポソーム複合体は負に荷電した細胞表面に結合し、エンドソームの内部に取り入れられる。エンドソーム内の酸性pHのため、リポソームは破裂し、それらの内容物を細胞質へと放出する(Wang et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 1987, 147, 980-985)。
【0125】
pH感受性または負に荷電したリポソームは、DNAと複合するよりもこれを捕捉する。DNAおよび脂質はいずれも同様に荷電しているため、複合体形成よりも反発が起こる。それにもかかわらず、いくつかのDNAはこれらのリポソームの水性内部に捕捉される。pH感受性リポソームはチミジンキナーゼ遺伝子をコードするDNAを培養中の細胞単層に送達するために用いられている。外来遺伝子の発現が標的細胞内で検出された(Zhou et al., Journal of Controlled Release, 1992, 19, 269-274)。
【0126】
リポソームの1つの主要な型には、天然ホスファチジルコリン以外のリン脂質が含まれる。例えば、天然リポソーム組成物は、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)またはジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から生成することができる。アニオン性リポソーム組成物は一般に、ジミリストイルホスファチジルグリセロールから生成されるが、アニオン性膜融合性リポソームは主にジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から生成される。もう一つの型のリポソーム組成物は、例えば、ダイズPC、および卵PCなどのホスファチジルコリン(PC)から生成される。もう一つの型はリン脂質および/またはホスファチジルコリンおよび/またはコレステロールの混合物から生成される。
【0127】
いくつかの試験はリポソーム薬物製剤の皮膚への局所送達を評価している。インターフェロンを含むリポソームのモルモット皮膚への適用は、皮膚ヘルペス潰瘍を軽減する結果となったが、インターフェロンを他の手段(例えば、溶液または乳剤として)で送達しても無効であった(Weiner et al., Journal of Drug Targeting, 1992, 2, 405-410)。さらに、別の試験はリポソーム製剤の一部として投与したインターフェロンの有効性を、水性系を用いてのインターフェロンの投与に対して試験し、リポソーム製剤は水性投与よりもすぐれていると結論づけた(du Plessis et al., Antiviral Research, 1992, 18, 259-265)。
【0128】
非イオン性リポソーム系、特に非イオン性界面活性剤およびコレステロールを含む系も、薬物の皮膚への送達における有用性を評価するために試験された。シクロスポリン-Aをマウス皮膚の真皮に送達するために、Novasome(商標)I(グリセリルジラウレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)およびNovasome(商標)II(グリセリルジステアレート/コレステロール/ポリオキシエチレン-10-ステアリルエーテル)を含む非イオン性リポソーム製剤を用いた。結果から、そのような非イオン性リポソーム系は、シクロスポリン-Aの皮膚の異なる層への沈着を促進する上で有効であることが判明した(Hu et al. S.T.P.Pharma. Sci., 1994, 4, 6, 466)。
【0129】
リポソームには「立体的に安定化された」リポソームも含まれ、この用語は、本明細書において用いられるとおり、リポソーム中に組み込まれると、そのような特殊な脂質を含まないリポソームと比べて循環半減期を延長する、1つまたは複数の特殊な脂質を含むリポソームを意味する。立体的に安定化されたリポソームの例は、リポソームの小胞形成脂質部分の一部が(A)モノシアロガングリオシドGm1などの1つまたは複数の糖脂質を含む、または(B)ポリエチレングリコール(PEG)部分などの1つまたは複数の親水性ポリマーで誘導体化されているものである。いかなる特定の理論にも縛られたくはないが、当技術分野において、少なくともガングリオシド、スフィンゴミエリン、またはPEG-誘導体化脂質を含む立体的に安定化されたリポソームについて、これらの立体的に安定化されたリポソームの循環半減期の延長は、細網内皮系(RES)の細胞への取り込み低減に由来すると考えられる(Allen et al., FEBS Letters, 1987, 223, 42;Wu et al., Cancer Research, 1993, 53, 3765)。
【0130】
1つまたは複数の糖脂質を含む様々なリポソームが当技術分野において公知である。Papahadjopoulosら(Ann. N.Y. Acad. Sci., 1987, 507, 64)は、モノシアロガングリオシドGm1、硫酸ガラクトセレブロシドおよびホスファチジルイノシトールのリポソームの血中半減期を改善する能力を報告した。これらの知見はGabizonら(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1988, 85, 6949)によって詳しく説明された。いずれもAllenらへの米国特許第4,837,028号および国際公開公報第88/04924号は、(1)スフィンゴミエリンおよび(2)ガングリオシドGm1またはガラクトセレブロシド硫酸エステルを含むリポソームを開示している。米国特許第5,543,152号(Webbら)は、スフィンゴミエリンを含むリポソームを開示している。1,2-sn-ジミリストイルホスファチジルコリンを含むリポソームは国際公開公報第97/13499号(Limら)に開示されている。
【0131】
1つまたは複数の親水性ポリマーで誘導体化された脂質を含む多くのリポソームおよびその調製法は当技術分野において公知である。Sunamotoら(Bull. Chem. Soc. Jpn., 1980, 53, 2778)は、PEG部分を含む、非イオン性界面活性剤、2C1215Gを含むリポソームを記載した。Illumら(FEBS Lett., 1984, 167, 79)は、ポリスチレン粒子のポリマーグリコールによる親水性コーティングが血中半減期の著しい延長を引き起こすことに気づいた。ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)のカルボキシル基の結合により修飾された合成リン脂質が、Sears(米国特許第4,426,330号および第4,534,899号)によって記載されている。Klibanovら(FEBS Lett., 1990, 268, 235)は、PEGまたはPEGステアレートで誘導体化されたホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリポソームで血中循環半減期が延長していることを示す実験を記載した。Blumeら(Biochimica et Biophysica Acta, 1990, 1029, 91)は、そのような知見をジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)およびPEGの組み合わせから生成された他のPEG誘導体化リン脂質、例えば、DSPE-PEGに拡大した。その外部表面に共有結合したPEG部分を有するリポソームがFisherへの欧州特許EP 0 445 131 B1および国際公開公報第90/04384号に記載されている。1〜20モルパーセントのPEGで誘導体化されたPEを含むリポソーム組成物、およびその使用法が、Woodleら(米国特許第5,013,556号および第5,356,633号)およびMartinら(米国特許第5,213,804号および欧州特許EP 0 496 813 B1)によって記載されている。いくつかの他の脂質-ポリマー結合体を含むリポソームが、国際公開公報第91/05545号および米国特許第5,225,212号(両方Martinら)ならびに国際公開公報第94/20073号(Zalipskyら)に記載されている。PEG-修飾セラミド脂質を含むリポソームが国際公開公報第96/10391号(Choiら)に記載されている。米国特許第5,540,935号(Miyazakiら)および米国特許第5,556,948号(Tagawaら)は、それらの表面で官能性部分によってさらに誘導体化することができるPEG含有リポソームを記載している。
【0132】
核酸を含む限定された数のリポソームが当技術分野において公知である。Thierryらへの国際公開公報第96/40062号は、高分子量核酸のリポソーム中への封入法を開示している。Tagawaらへの米国特許第5,264,221号は、タンパク質結合リポソームを開示しており、そのようなリポソームの内容物はdsRNAを含みうると主張している。Rahmanらへの米国特許第5,665,710号は、オリゴデオキシヌクレオチドのリポソーム中への特定の封入法を記載している。Loveらへの国際公開公報第97/04787号は、raf遺伝子を標的とするdsRNAを含むリポソームを開示している。
【0133】
トランスファーソーム(Transfersome)はさらにもう一つの型のリポソームで、薬物送達媒体の魅力的な候補である高度に変形可能な脂質凝集体である。トランスファーソームは、非常に高度に変形可能であるため、液滴よりも小さい孔を容易に通過することができる、脂質液滴として記載されうる。トランスファーソームはそれらを用いる環境に適応可能で、例えば、これらは自己最適化し(皮膚の孔の形状に適応性がある)、自己修復し、しばしばそれらの標的に断片化することなく到達し、かつしばしば自己ローディングする。トランスファーソームを調製するために、表面境界(edge)活性剤、通常は界面活性剤を標準のリポソーム組成物に加えることができる。トランスファーソームは血清アルブミンを皮膚に送達するために用いられてきた。血清アルブミンのトランスファーソーム仲介送達は血清アルブミンを含む溶液の皮下注射と同等に有効であることが明らかにされている。
【0134】
界面活性剤は乳剤(マイクロエマルジョンを含む)およびリポソームなどの製剤において広く適用されている。天然および合成両方の多くの異なる型の界面活性剤の性質を分類し、格付けする最も一般的な方法は、親水/親油バランス(HLB)の使用による。親水性基(「頭部」としても公知)の性質は、製剤において用いる異なる界面活性剤を分類するための最も有用な手段となる(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p. 285)。
【0135】
界面活性剤分子がイオン化されていない場合、これは非イオン性界面活性剤と分類される。非イオン性界面活性剤は薬学的および美容的生成物において広く適用され、広い範囲のpH値で使用可能である。一般に、それらのHLB値はそれらの構造に応じて2から約18の範囲である。非イオン性界面活性剤には、エチレングリコールエステル、プロピレングリコールエステル、グリセリルエステル、ポリグリセリルエステル、ソルビタンエステル、スクロースエステル、およびエトキシル化エステルなどの非イオン性エステルが含まれる。脂肪アルコールエトキシレート、プロポキシル化アルコール、およびエトキシル化/プロポキシル化ブロックポリマーなどの非イオン性アルカノールアミドおよびエーテルもこのクラスに含まれる。ポリオキシエチレン界面活性剤は非イオン性界面活性剤クラスの最も一般的なメンバーである。
【0136】
界面活性剤分子が水に溶解または分散したときに負の電荷を有する場合、その界面活性剤はアニオン性と分類される。アニオン性界面活性剤には、セッケンなどのカルボキシレート、アシルラクチレート、アミノ酸のアシルアミド、硫酸アルキルおよび硫酸エトキシル化アルキルなどの硫酸のエステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのスルホン酸塩、アシルイセチオネート、アシルタウレートおよびスルホスクシネート、ならびにホスフェートが含まれる。アニオン性界面活性剤クラスの最も重要なメンバーは硫酸アルキルおよびセッケンである。
【0137】
界面活性剤分子が水に溶解または分散したときに正の電荷を有する場合、その界面活性剤はカチオン性と分類される。カチオン性界面活性剤には、4級アンモニウム塩およびエトキシル化アミンが含まれる。4級アンモニウム塩はこのクラスで最も用いられるメンバーである。
【0138】
界面活性剤分子に正または負のいずれかの電荷を有する能力がある場合、その界面活性剤は両性と分類される。両性界面活性剤には、アクリル酸誘導体、置換アルキルアミド、N-アルキルベタインおよびホスファチドが含まれる。
【0139】
薬物生成物、製剤および乳剤における界面活性剤の使用は総説に記載されている(Rieger, in Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Dekker, Inc., New York, N.Y., 1988, p. 285)。
【0140】
浸透増強剤
一つの態様において、本発明は動物の皮膚への核酸、特にdsRNAの効率的送達を行うために、様々な浸透増強剤を用いる。ほとんどの薬物は溶液中にイオン化および非イオン化型の両方で存在する。しかし、通常は脂質溶解性または親油性薬物だけが容易に細胞膜を通過する。非親油性薬物でも、通過する膜を浸透増強剤で処理すれば、細胞膜を通過しうることが明らかにされている。細胞膜を通過しての非親油性薬物の拡散を補助するのに加えて、浸透増強剤は親油性薬物の透過性も増強する。
【0141】
浸透増強剤は5つの大きい範疇、すなわち界面活性剤、脂肪酸、胆汁酸塩、キレート化剤、および非キレート化非界面活性剤の1つに属するとして分類しうる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92)。前述の浸透増強剤の各クラスについて以下に詳細に記載する。
【0142】
界面活性剤:本発明に関連して、界面活性剤(または「表面活性剤」)は、水性溶液中に溶解すると、溶液の表面張力または水性溶液ともう一つの液体との間の界面張力を低下させ、その結果dsRNAの粘膜を通過しての吸収が増強される、化学的実体である。胆汁酸塩および脂肪酸に加えて、これらの浸透増強剤には、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテルおよびポリオキシエチレン-20-セチルエーテル)(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, p.92);およびFC-43などの過フルオロ化合物乳剤(Takahashi et al., J. Pharm. Pharmacol., 1988, 40, 252)が含まれる。
【0143】
脂肪酸:浸透増強剤として作用する様々な脂肪酸およびそれらの誘導体には、例えば、オレイン酸、ラウリン酸、カプリン酸(n-デカン酸)、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプレート、トリカプレート、モノオレイン(1-モノオレオイル-rac-グリセロール)、ジラウリン、カプリル酸、アラキドン酸、グリセロール1-モノカプレート、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、アシルカルニチン、アシルコリン、そのC1-C10アルキルエステル(例えば、メチル、イソプロピルおよびt-ブチル)、ならびにそのモノ-およびジ-グリセリド(すなわち、オレエート、ラウレート、カプレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、リノリエートなど)が含まれる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carryier Systems, 1991, p.92;Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33;El Hariri et al., J. Pharm. Pharmacol., 1992, 44, 651-654)。
【0144】
胆汁酸塩:胆汁の生理的役割には、脂質および脂溶性ビタミンの分散および吸収の促進が含まれる(Brunton, Chapter 38 in: Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 9th Ed., Hardman et al. Eds., McGraw-Hill, New York, 1996, pp. 934-935)。様々な天然胆汁酸塩、およびそれらの合成誘導体は、浸透増強剤として作用する。したがって、「胆汁酸塩」なる用語には、胆汁の任意の天然成分ならびにそれらの任意の合成誘導体が含まれる。本発明の胆汁酸塩には、例えば、コール酸(またはその薬学的に許容されるナトリウム塩、コール酸ナトリウム)、デヒドロコール酸(デヒドロコール酸ナトリウム)、デオキシコール酸(デオキシコール酸ナトリウム)、グルコール酸(グルコール酸ナトリウム)、グリコール酸(グリコール酸ナトリウム)、グリコデオキシコール酸(グリコデオキシコール酸ナトリウム)、タウロコール酸(タウロコール酸ナトリウム)、タウロデオキシコール酸(タウロデオキシコール酸ナトリウム)、ケノデオキシコール酸(ケノデオキシコール酸ナトリウム)、ウルソデオキシコール酸(UDCA)、タウロ-24,25-ジヒドロ-フシジン酸ナトリウム(STDHF)、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル(POE)が含まれる(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92;Swinyard, Chapter 39 In: Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Gennaro, ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1990, pages 782-783;Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33;Yamamoto et al., J. Pharm. Exp. Ther., 1992, 263, 25;Yamashita et al., J. Pharm. Sci., 1990, 79, 579-583)。
【0145】
キレート化剤:本発明に関連して用いられるキレート化剤は、金属イオンを、それとの錯体を形成することにより溶液から除去し、その結果dsRNAの粘膜を通過しての吸収が増強される、化合物と定義することができる。ほとんどの特徴づけられたDNAヌクレアーゼは触媒のために二価の金属イオンを必要とし、したがって、キレート化剤によって阻害されるため、本発明における浸透増強剤としてのそれらの使用に関して、キレート化剤はDNアーゼ阻害剤としても役立つという追加の利点を有する(Jarrett, J. Chromatogr., 1993, 618, 315-339)。本発明のキレート化剤には、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)、クエン酸、サリチレート(例えば、サリチル酸ナトリウム、5-メトキシサリチレートおよびホモバニレート)、コラーゲンのN-アシル誘導体、ラウレス-9およびベータ-ジケトンのN-アミノアシル誘導体(エナミン)が含まれるが、それらに限定されるわけではない(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92;Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33;Buur et al., J. Control Rel., 1990, 14, 43-51)。
【0146】
非キレート化非界面活性剤:本明細書において用いられる非キレート化非界面活性剤浸透増強化合物は、キレート化剤または界面活性剤としてはわずかな活性しか示さないが、それにもかかわらずdsRNAの消化器粘膜を通過しての吸収を増強する化合物と定義することができる(Muranishi, Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1990, 7, 1-33)。このクラスの浸透増強剤には、例えば、不飽和環状尿素、1-アルキル-および1-アルケニルアザシクロ-アルカノン誘導体(Lee et al., Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, 1991, page 92);ならびにジクロフェナクナトリウム、インドメタシンおよびフェニルブタゾンなどの非ステロイド性抗炎症薬(Yamashita et al., J. Pharm. Pharmacol., 1987, 39, 621-626)が含まれる。
【0147】
細胞レベルでdsRNAの取り込みを増強する物質を、本発明の薬学的および他の組成物に加えてもよい。例えば、リポフェクチン(Junichiら、米国特許第5,705,188号)などのカチオン性脂質、カチオン性グリセロール誘導体、およびポリリジン(Lolloら、PCT出願WO 97/30731号)などのポリカチオン性分子もdsRNAの細胞取り込みを増強することが公知である。
【0148】
エチレングリコールおよびプロピレングリコールなどのグリコール、2-ピロールなどのピロール、アゾン(azones)、ならびにリモネンおよびメントンなどのテルペンを含む、投与した核酸の浸透を増強する他の物質を用いてもよい。
【0149】
担体
本発明の特定の組成物は、製剤中の担体化合物を組み込む。本明細書において用いられる「担体化合物」または「担体」は、不活性(すなわち、それ自体は生物活性を持たない)であるが、例えば、生物活性核酸を分解するか、またはその循環からの除去を促進することにより生物活性を有する核酸のバイオアベイラビリティを低減するインビボプロセスによって核酸と認識される、核酸またはその類縁体を意味しうる。核酸および担体化合物の、典型的には後者の物質を過剰に用いての同時投与は、肝臓、腎臓または他の循環外貯蔵所において回収される核酸の量を実質的に減少させることができ、これはおそらくは担体化合物と核酸との間の共通の受容体に対する競合による。例えば、肝組織における部分的ホスホロチオエートdsRNAの回収は、ポリイノシン酸、デキストラン硫酸、ポリシチジン酸または4-アセトアミド-4'イソチオシアノ-スチルベン-2,2'-ジスルホン酸と同時投与した場合に減少させることができる(Miyao et al., Antisense Res. Dev., 1995, 5, 115-121;Takakura et al., Antisense & Nucl. Acid Drug Dev., 1996, 6, 177-183。
【0150】
賦形剤:
担体化合物とは対照的に、「薬学的担体」または「賦形剤」は、1つまたは複数の核酸を動物に送達するための、薬学的に許容される溶媒、懸濁化剤または任意の他の薬理学的に不活性な媒体である。賦形剤は液体または固体であってもよく、計画した投与様式を念頭に置いて、所与の薬学的組成物の核酸および他の成分と混合したときに、所望の嵩、堅さなどを提供するよう選択する。典型的な薬学的担体には、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなど);充填剤(例えば、乳糖および他の糖類、微結晶セルロース、ペクチン、ゼラチン、硫酸カルシウム、エチルセルロース、ポリアクリレートまたはリン酸水素カルシウムなど);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、シリカ、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、ステアリン酸金属、硬化植物油、トウモロコシデンプン、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなど);崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウムなど);および湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウムなど)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0151】
本発明の組成物を製剤するために、核酸と有害な反応をしない、非腸管外投与に適した薬学的に許容される有機または無機賦形剤を用いることもできる。適当な薬学的に許容される担体には、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0152】
核酸の局所投与用の製剤には、滅菌および非滅菌の水性溶液、アルコールなどの一般的溶媒中の非水性溶液、または液体もしくは固体油性基剤中の核酸の溶液が含まれうる。溶液は緩衝剤、希釈剤および他の適当な添加物を含んでいてもよい。核酸と有害な反応をしない、非腸管外投与に適した薬学的に許容される有機または無機賦形剤を用いることができる。
【0153】
適当な薬学的に許容される賦形剤には、水、塩溶液、アルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが含まれるが、それらに限定されるわけではない。
【0154】
気道への送達用の薬学的組成物
本発明のもう一つの局面は、IRNA物質の気道への送達を提供する。気道は中咽頭および咽頭を含む上気道と、それに続く下気道を含み、下気道は気管とそれに続く気管支および細気管支への分岐部を含む。上気道および下気道は誘導気管支と呼ばれる。次いで、終末細気管支は呼吸細気管支へと分かれ、これは最終の呼吸領域である肺胞または深肺へと続く。深肺または肺胞は、iRNA物質の全身送達のために吸入した治療用エアロゾルの第一の標的である。
【0155】
肺送達組成物を、分散物内の組成物、好ましくはiRNA物質が肺に到達することができ、そこで例えば、肺胞領域から血液循環中に直接容易に吸収されうるように、患者による分散物の吸入によって送達することができる。肺送達は、肺の疾患を治療するための全身送達および局所送達両方のために有効でありうる。
【0156】
肺送達は、噴霧、エアロゾル、ミセルおよびドライパウダー製剤の使用を含む、異なるアプローチによって達成することができ;吸入による投与は経口および/または鼻内でありうる。送達は液体噴霧器、エアロゾル吸入器、およびドライパウダー分散装置を用いて達成することができる。定量噴霧装置が好ましい。アトマイザーまたは吸入器使用の利点の一つは、装置が自己完結型であるため、汚染の可能性が最小限に抑えられることである。例えば、ドライパウダー分散装置は、ドライパウダーとして容易に製剤されうる薬物を送達する。iRNA組成物は凍結乾燥または噴霧ドライパウダーとしてそれ自体または適当な粉末担体との組み合わせで安定に保存しうる。吸入のための組成物の送達は、装置に組み込めばエアロゾル薬剤の投与中に患者に用量追跡、コンプライアンス監視、および/または投与誘発を可能にする、タイマー、用量カウンター、時間測定装置、または時間指示器を含みうる投与時間調節エレメントによって仲介することができる。
【0157】
エアロゾル送達用の薬学的装置の例には、定量噴霧吸入器(MDI)、ドライパウダー吸入器(DPI)、およびエアジェット噴霧器が含まれる。本発明のiRNA物質送達用に容易に適合させうる、吸入による例示的送達システムは、例えば、米国特許第5,756,353号;第5,858,784号;およびPCT出願WO98/31346号;WO98/10796号;WO00/27359号;WO01/54664号;WO02/060412号に記載されている。iRNA物質を送達するために用いうる他のエアロゾル製剤は、米国特許第6,294,153号;第6,344,194号;第6,071,497号、およびPCT出願WO02/066078号;WO02/053190号;WO01/60420号;WO00/66206号に記載されている。さらに、iRNA物質の送達法を、Templin et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev, 2000, 10:359-68;Sandrasagra et al., Expert Opin Biol Ther, 2001, 1:979-83;Sandrasagra et al., Antisense Nucleic Acid Drug Dev, 2002, 12:177-81に記載されているものなどの、吸入により他のオリゴヌクレオチド(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)を送達する際に用いられるものから適合させることができる。
【0158】
本発明の物質の送達は、いわゆる「プロドラッグ」、すなわち治療物質を、好ましくはその作用が望まれる部位で放出するための、対象生物に生得的なシステムによるある型の処理または輸送を必要とする、治療物質の製剤または化学的改変物の投与を含んでいてもよく;この後者の態様は気道の送達と共に用いてもよいが、同様に本発明の他の態様と一緒に用いてもよい。例えば、ヒト肺は加水分解により切断可能な沈着エアロゾルを数分から数時間の範囲の間に除去または速やかに分解することができる。上気道において、繊毛上皮はそれにより粒子が気道から口腔へと掃引される「粘膜繊毛エスカレーター」に貢献している。Pavia, D., ''Lung Mucociliary Clearance,'' in Aerosols and the Lung: Clinical and Experimental Aspects, Clarke, S. W. and Pavia, D., Eds., Butterworths, London, 1984。深肺において、肺胞マクロファージは粒子の沈着直後にこれらを貪食することができる。Warheit et al. Microscopy Res. Tech., 26: 412-422 (1993);およびBrain, J. D., ''Physiology and Pathophysiology of Pulmonary Macrophages,'' in The Reticuloendothelial System, S. M. Reichard and J. Filkins, Eds., Plenum, New. York., pp. 315-327, 1985。
【0159】
好ましい態様において、特にiRNA物質の全身投与が望まれる場合、エアロゾル化したiRNA物質を微粒子として製剤する。0.5から10ミクロンの間の直径を有する微粒子は、自然の障壁のほとんどを通過して肺に浸透することができる。喉を迂回するためには10ミクロン未満の直径が必要とされ;吐出を避けるためには0.5ミクロン以上の直径が必要とされる。
【0160】
他の成分
本発明の組成物は、薬学的組成物中に通常見いだされる他の補助成分を、それらの当技術分野において確立されている用法レベルでさらに含んでいてもよい。したがって、例えば、組成物は、例えば、止痒剤、収斂剤、局所麻酔薬もしくは抗炎症剤などの追加の適合性薬学的活性材料を含んでいてもよく、または色素、着香剤、保存剤、抗酸化剤、乳白剤、増粘剤および安定化剤などの、本発明の組成物の物理的に製剤する様々な剤形において有用な追加の材料を含んでいてもよい。しかし、そのような材料は、加えたときに、本発明の組成物の成分の生物活性を過度に妨害すべきではない。製剤は滅菌することができ、望まれる場合には、製剤の核酸と有害な相互作用をしない補助物質、例えば、滑沢剤、保存剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響をおよぼすための塩、緩衝剤、着色剤、着香剤および/または芳香物質などと混合することもできる。
【0161】
水性懸濁液は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む懸濁液の粘性を高める物質を含んでいてもよい。懸濁液は安定化剤も含んでいてもよい。
【0162】
本発明の特定の態様は、(a)1つまたは複数のdsRNA物質および(b)非RNA干渉メカニズムによって機能する、1つまたは複数の他の化学療法剤を含む薬学的組成物を提供する。そのような化学療法剤の例には、ダウノルビシン、ダウノマイシン、ダクチノマイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、エソルビシン、ブレオマイシン、マフォスファミド、イフォスファミド、シトシンアラビノシド、ビス-クロロエチルニトロソウレア、ブスルファン、マイトマイシンC、アクチノマイシンD、ミトラマイシン、プレドニゾン、ヒドロキシプロゲステロン、テストステロン、タモキシフェン、ダカルバジン、プロカルバジン、ヘキサメチルメラミン、ペンタメチルメラミン、ミトキサントロン、アムサクリン、クロラムブシル、メチルシクロヘキシルニトロソウレア、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、シクロホスファミド、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、5-アザシチジン、ヒドロキシウレア、デオキシコホルマイシン、4-ヒドロキシペルオキシシクロホスホラミド、5-フルオロウラシル(5-FU)、5-フルオロデオキシウリジン(5-FUdR)、メトトレキセート(MTX)、コルヒチン、タキソール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド(VP-16)、トリメトレキセート、イリノテカン、トポテカン、ゲムシタビン、テニポシド、シスプラチンおよびジエチルスチルベストロール(DES)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。一般には、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 15th Ed. 1987, pp. 1206-1228, Berkow et al., eds., Rahway, N.J.を参照されたい。本発明の化合物とともに使用する場合、そのような化学療法剤を個別に(例えば、5-FUおよびオリゴヌクレオチド)、逐次(例えば、ある期間5-FUおよびオリゴヌクレオチド、その後MTXおよびオリゴヌクレオチド)、または1つもしくは複数の他のそのような化学療法剤(例えば、5-FU、MTXおよびオリゴヌクレオチド、または5-FU、放射線療法およびオリゴヌクレオチド)と組み合わせて用いてもよい。非ステロイド性抗炎症薬およびコルチコステロイドを含むが、それらに限定されるわけではない抗炎症薬、およびリビビリン、ビダラビン、アシクロビル、およびガンシクロビルを含むが、それらに限定されるわけではない抗ウィルス薬を、本発明の組成物中で組み合わせてもよい。一般には、それぞれ、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 15th Ed., Berkow et al., eds., 1987, Rahway, N.J., pages 2499-2506および46-49を参照されたい)。他の非dsRNA化学療法剤もまた、本発明の範囲内である。複数の組み合わせ化合物を、一緒にまたは逐次用いてもよい。
【0163】
そのような化合物の毒性および治療上の有効性を、例えば、LD50(集団の50%に致死的である用量)およびED50(集団の50%で治療上有効な用量)をもとめるための、細胞培養物または実験動物における標準の薬学的方法により評価することができる。毒性と治療上の効果との間の用量比が治療指数であり、LD50/ED50の比で表すことができる。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0164】
細胞培養アッセイおよび動物試験から得たデータを、ヒトにおいて用いるための一連の用量を製剤するために用いることができる。本発明の組成物の用量は一般に、毒性がほとんどまたは全くなく、ED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、用いる剤形および用いる投与経路に応じて、この範囲内で変動してもよい。本発明の方法において用いる任意の化合物のために、治療上有効な用量はまず細胞培養アッセイから推定することができる。細胞培養でもとめたIC50(すなわち、症状の最大阻害の1/2を達成する試験化合物の濃度)を含む、化合物または適当な場合には標的配列のポリペプチド生成物の循環血漿濃度範囲を達成する(例えば、ポリペプチドの濃度低下を達成する)ために、用量を動物モデルにおいて製剤してもよい。ヒトにおける有用な用量をより正確に決定するために、そのような情報を用いることができる。血漿中のレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィによって測定してもよい。
【0165】
前述のとおり、個別または複数でのそれらの投与に加えて、本発明のdsRNAをSCAP発現によって仲介される病的過程の治療において有効な他の公知の物質と組み合わせて投与することもできる。任意の事象において、投与を行う医師は、当技術分野において公知または本明細書に記載の有効性の標準的尺度を用いて観察された結果に基づき、dsRNA投与の量およびタイミングを調節することができる。
【0166】
SCAP遺伝子の発現によって引き起こされる疾患の治療法
本発明は特に、dsRNAまたはそれから調製した薬学的組成物の、脂質代謝、脂質ホメオスタシス、および/または脂質分布の障害、例えば、非アルコール性肝疾患、脂肪肝、脂肪過剰血症、高脂血症、高リポタンパク血症、高コレステロール血症および/または高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、膵炎、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、冠動脈性心疾患、肥満、代謝症候群、末梢動脈疾患、ならびに脳血管疾患を治療するための使用に関する。SCAP発現に対する阻害効果により、本発明のdsRNAまたはそれから調製した薬学的組成物はそのような疾患または障害を有する患者の生活の質を高めることができる。
【0167】
本発明はさらに、dsRNAまたはそれから調製した薬学的組成物の、他の薬剤および/または他の治療法、例えば、脂質代謝、脂質ホメオスタシス、および/または脂質分布の疾患または障害、例えば、非アルコール性肝疾患、脂肪肝、脂肪過剰血症、高脂血症、高リポタンパク血症、高コレステロール血症および/または高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、膵炎、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、冠動脈性心疾患、肥満、代謝症候群、末梢動脈疾患、ならびに脳血管疾患を治療するために現在用いられているものなどの、公知の薬剤および/または公知の治療法と組み合わせての使用に関する。薬学的組成物が脂質代謝、脂質ホメオスタシス、および/または脂質分布の疾患または障害の治療を目的とする場合、脂質低下薬、例えば、スタチン、糖尿病のためのインスリン、および肝疾患用の薬剤との組み合わせが優先される。
【0168】
SCAP遺伝子の発現を阻害する方法
さらにもう一つの局面において、本発明は哺乳動物においてSCAP遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。この方法は、本発明の組成物を哺乳動物に、標的SCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAPの発現が抑制されるように投与する段階を含む。それらの高い特異性ゆえに、本発明のdsRNAは標的SCAP遺伝子のRNA(一次または処理済み)を特異的に標的とする。dsRNAを用いてこれらのSCAP遺伝子の発現を阻害するための組成物および方法を、本明細書の他所に記載のとおりに実施することができる。
【0169】
一つの態様において、この方法はdsRNAを含む組成物を投与する段階を含み、ここでdsRNAは治療する哺乳動物のSCAP遺伝子、例えば、ヒトSCAPのRNA転写物の少なくとも一部に相補的なヌクレオチド配列を含む。治療する生物がヒトなどの哺乳動物である場合、組成物を経口、または静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、鼻内、直腸内、腟内および局所(口腔内および舌下を含む)投与を含む非経口経路を含むが、それらに限定されるわけではない、当技術分野において公知の任意の手段によって投与してもよい。好ましい態様において、組成物を静脈内注入または注射によって投与する。
【0170】
特に記載がないかぎり、本明細書において用いられるすべての技術および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価の方法および材料を本発明の実施または試験において用いることができるが、適当な方法および材料を以下に記載する。本明細書において言及されるすべての出版物、特許出願、特許、および他の参照文献はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。矛盾がある場合、定義を含む本明細書が支配することになる。加えて、材料、方法、および例は例示にすぎず、限定を意図するものではない。
【0171】
実施例
siRNAの設計
siRNA設計を、ハムスター、マウス、および/またはヒトSCAPを標的とするsiRNAを特定するために実施した。まず、ハツカネズミ(NM_001001144.1)およびクロハラハムスター(U67060;Hua et al., Cell. 1996, 87:415)SCAPのmRNA配列をコンピューター分析で調べて、これら2つの種の間で交差反応性のRNAi物質を生じる19ヌクレオチドの相同配列を特定した。
【0172】
マウスとハムスターとの間で交差反応性の物質を特定する上で、選択は、http://jura.wi.mit.edu/bioc/siRNAext/においてWhitehead Instituteにより提供される2005年5月18日版のソフトウェアを用いて、マウスゲノムにおける任意の他の配列に対して少なくとも3つのミスマッチを有する19量体配列に限定した。このように特定された配列は、表2に示すiRNA物質の合成の基礎を形成し、これらは修飾ヌクレオチドを含む。その中で、センス鎖中のすべてのピリミジン塩基を有するヌクレオチド、ならびにアンチセンス鎖中の配列構成5'-ca-3'において出現するすべてのシチジンおよび配列構成5'-ua-3'において出現するすべてのウリジンは、2'-O-メチル-修飾ヌクレオチドおよび3'-末端デオキシチミジンである。
【0173】
表2:ハツカネズミ(NM_001001144.1)およびクロハラハムスター(U67060)SCAPのダウンレギュレーション、ならびにマウスにおける最小限のオフターゲット相互作用のために選択されたRNAi物質

1大文字=デスオキシリボヌクレオチド;小文字=リボヌクレオチド:下線:ヌクレオシドチオホスフェート;cm=2'-O-メチル-シチジン;um=2'-O-メチル-ウリジン
【0174】
ヒトSCAPの発現を阻害するために有用な物質をさらに特定するために、第二段階でホモサピエンス(NM_012235.2)、ハツカネズミ(NM_001001144.1)およびクロハラハムスター(U67060)SCAPの配列を比較し、これら3つの種の間で交差反応性のRNAi物質を生じる19ヌクレオチドの相同配列を特定した。ヒトにおける非特異的効果を最小限に抑えるために、選択はヒトRefSeqデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/RefSeq/から利用可能)、Rev. 17における遺伝子配列とのfastA比較によりさらに制限した。表1におけるRNAi物質で、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方について、ヒトRefSeqデータベースにおける任意の他の遺伝子に対して少なくとも2つのミスマッチを有する、24の19量体配列を特定し、ここで最も近いマッチする遺伝子について、これらのミスマッチの少なくとも1つは「シード領域」(5'から3'へと数えて2から10位)にあり、この領域はミスマッチに特に感受性で、かつマウスRefSeqデータベースにおける任意の他の遺伝子に対して少なくとも2つのミスマッチ、または少なくとも1つのシード領域ミスマッチを有していた。
【0175】
dsRNA合成
試薬の供給元
試薬の供給元が本明細書において具体的に示されていない場合、そのような試薬は分子生物学用の試薬の任意の供給者から、分子生物学における適用のために標準的な品質/純度で入手しうる。
【0176】
siRNA合成
一本鎖RNAを、Expedite 8909合成機(Applied Biosystems, Applera Deutschland GmbH, Darmstadt, Germany)および固体支持体として多孔性ガラス(CPG、500Å、Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)を用い、1μmoleのスケールでの固相合成により生成した。RNAおよび2'-O-メチルヌクレオチドを含むRNAは、それぞれ対応するホスホラミダイトおよび2'-O-メチルホスホラミダイト(Proligo Biochemie GmbH, Hamburg, Germany)を用いての固相合成により生成した。これらの構築ブロックを、Current protocols in nucleic acid chemistry, Beaucage, S.L. et al. (Edrs.), John Wiley & Sons, Inc., New York, NY, USAに記載のものなどの、標準的ヌクレオシドホスホラミダイト化学を用い、オリゴリボヌクレオチド鎖の配列内の選択した部位で組み込んだ。ホスホロチオエート連結を、ヨウ素酸化剤溶液をアセトニトリル中のBeaucage試薬(Chruachem Ltd, Glasgow, UK)の溶液(1%)で置き換えることにより導入した。さらなる補助試薬はMallinckrodt Baker(Griesheim, Germany)から入手した。
【0177】
粗製オリゴヌクレオチドのアニオン交換HPLCによる脱保護および精製を、確立された方法に従って実施した。収率および濃度は、分光計(DU 640B, Beckman Coulter GmbH, Unterschleiβheim, Germany)を用い、それぞれのRNA溶液の波長260nmでのUV吸収によりもとめた。二本鎖RNAを、アニーリング緩衝液(20mMリン酸ナトリウム、pH6.8;100mM塩化ナトリウム)中、相補鎖の等モル溶液を混合し、水浴中85〜90℃で3分間加熱し、室温に冷却して3〜4時間反応させることにより生成した。アニーリングしたRNA溶液を使用まで-20℃で保存した。
【0178】
3'-コレステロール結合siRNA(本明細書において-Chol-3'と呼ぶ)の合成のために、RNA合成用の適当な改変固体支持体を用いた。改変固体支持体は以下のとおりに調製した:
【0179】
2-アザブタン-1,4-ジカルボン酸ジエチルAA(Diethyl-2-azabutane-1,4-dicarboxylate AA))


水(50mL)中のエチルグリシネート塩酸塩(32.19g、0.23mole)の溶液を撹拌し、氷冷しながら、これに4.7Mの水酸化ナトリウム水溶液(50mL)を加えた。次いで、アクリル酸エチル(23.1g、0.23mole)を加え、混合物を室温でTLCにより反応完了が確認されるまで撹拌した。19時間後、溶液をジクロロメタン(3×100mL)で分配した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して蒸発させた。残渣を蒸留して、AAを得た(28.8g、61%)。
【0180】
3-{エトキシカルボニルメチル-[6-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル-アミノ)-ヘキサノイル]-アミノ}-プロピオン酸エチルエステルAB

Fmoc-6-アミノ-ヘキサン酸(9.12g、25.83mmol)をジクロロメタン(50mL)に溶解し、氷で冷却した。ジイソプロピルカルボジイミド(3.25g、3.99mL、25.83mmol)を溶液に0℃で加えた。次いで、アザブタン-1,4-ジカルボン酸ジエチル(5g、24.6mmol)およびジメチルアミノピリジン(0.305g、2.5mmol)を加えた。溶液を室温に戻し、さらに6時間撹拌した。反応の完了をTLCで確認した。反応混合物を減圧下で濃縮し、酢酸エチルを加えてジイソプロピル尿素を沈澱させた。懸濁液をろ過した。ろ液を5%塩酸水溶液、5%炭酸水素ナトリウムおよび水で洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、粗生成物を得、これをカラムクロマトグラフィ(50%EtOAC/ヘキサン)で精製して、11.87g(88%)のABを得た。
【0181】
3-[(6-アミノ-ヘキサノイル)-エトキシカルボニルメチル-アミノ]-プロピオン酸エチルエステルAC

3-{エトキシカルボニルメチル-[6-(9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニルアミノ)-ヘキサノイル]-アミノ}-プロピオン酸エチルエステルAB(11.5g、21.3mmol)をジメチルホルムアミド中の20%ピペリジンに0℃で溶解した。溶液を1時間撹拌し続けた。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣に水を加え、生成物を酢酸エチルで抽出した。粗生成物をその塩酸塩への変換により精製した。
【0182】
3-({6-[17-(1,5-ジメチル-ヘキシル)-10,13-ジメチル-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルオキシカルボニルアミノ]-ヘキサノイル}エトキシカルボニルメチル-アミノ)-プロピオン酸エチルエステルAD

3-[(6-アミノ-ヘキサノイル)-エトキシカルボニルメチル-アミノ]-プロピオン酸エチルエステルAC(4.7g、14.8mmol)の塩酸塩をジクロロメタンに溶解した。懸濁液を氷上で0℃に冷却した。懸濁液にジイソプロピルエチルアミン(3.87g、5.2mL、30mmol)を加えた。得られた溶液にクロロギ酸コレステリル(6.675g、14.8mmol)を加えた。反応混合物を終夜撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、10%塩酸で洗浄した。生成物をフラッシュクロマトグラフィで精製した(10.3g、92%)。
【0183】
1-{6-[17-(1,5-ジメチル-ヘキシル)-10,13-ジメチル-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルオキシカルボニルアミノ]-ヘキサノイル}-4-オキソ-ピロリジン-3-カルボン酸エチルエステルAE

カリウムt-ブトキシド(1.1g、9.8mmol)を無水トルエン30mL中でスラリー化した。混合物を氷上で0℃に冷却し、ジエステルAD 5g(6.6mmol)を撹拌しながら20分以内にゆっくり加えた。温度を添加中は5℃未満に維持した。撹拌を0℃で30分間続け、氷酢酸1mLを加え、その直後に水40mL中のNaH2PO4・H2O 4gを加えた。得られた混合物をジクロロメタン各100mLで2回抽出し、合わせた有機抽出物をリン酸緩衝液各10mLで2回洗浄し、乾燥し、蒸発乾固させた。残渣をトルエン60mLに溶解し、0℃に冷却し、冷却したpH9.5の炭酸緩衝液50mLで3回抽出した。水性抽出物をリン酸でpH3に調節し、クロロホルム40mLで5回抽出し、これを合わせて乾燥し、蒸発乾固させた。残渣をカラムクロマトグラフィで25%酢酸エチル/ヘキサンを用いて精製し、b-ケトエステル1.9g(39%)を得た。
【0184】
[6-(3-ヒドロキシ-4-ヒドロキシメチル-ピロリジン-1-イル)-6-オキソ-ヘキシル]-カルバミン酸17-(1,5-ジメチル-ヘキシル)-10,13-ジメチル-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルエステルAF

テトラヒドロフラン(10mL)中のb-ケトエステルAE(1.5g、2.2mmol)および水素化ホウ素ナトリウム(0.226g、6mmol)の混合物を還流し、これにメタノール(2mL)を1時間かけて滴下した。撹拌を還流温度で1時間続けた。室温まで冷却した後、1N HCl(12.5mL)を加え、混合物を酢酸エチル(3×40mL)で抽出した。合わせた酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で濃縮して生成物を得、これをカラムクロマトグラフィ(10%MeOH/CHCl3)で精製した(89%)。
【0185】
(6-{3-[ビス-(4-メトキシ-フェニル)-フェニル-メトキシメチル]-4-ヒドロキシ-ピロリジン-1-イル}-6-オキソ-ヘキシル)-カルバミン酸17-(1,5-ジメチル-ヘキシル)-10,13-ジメチル-2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルエステルAG

ジオールAF(1.25g、1.994mmol)をピリジン(2×5mL)と共に減圧下で蒸発させて乾燥した。無水ピリジン(10mL)および塩化4,4'-ジメトキシトリチル(0.724g、2.13mmol)を撹拌しながら加えた。反応を室温で終夜実施した。メタノールを加えることにより反応を停止した。反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣にジクロロメタン(50mL)を加えた。有機層を1M炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過して濃縮した。残留ピリジンをトルエンと共に蒸発させることにより除去した。粗生成物をカラムクロマトグラフィ(2%MeOH/クロロホルム、5%MeOH/CHCl3中のRf=0.5)で精製した(1.75g、95%)。
【0186】
コハク酸モノ-(4-[ビス-(4-メトキシ-フェニル)-フェニル-メトキシメチル]-1-{6-[17-(1,5-ジメチル-ヘキシル)-10,13-ジメチル2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17-テトラデカヒドロ-1Hシクロペンタ[a]フェナントレン-3-イルオキシカルボニルアミノ]-ヘキサノイル}-ピロリジン-3-イル)エステルAH

化合物AG(1.0g、1.05mmol)を無水コハク酸(0.150g、1.5mmol)およびDMAP(0.073g、0.6mmol)と混合し、減圧下、40℃で終夜乾燥した。混合物を無水ジクロロメタン(3mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.318g、0.440mL、3.15mmol)を加え、溶液をアルゴン雰囲気下、室温で16時間撹拌した。次いで、ジクロロメタン(40mL)で希釈し、氷冷クエン酸水溶液(5重量%、30mL)および水(2×20mL)で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮乾固した。残渣をそのままで次の段階に用いた。
【0187】
コレステロール誘導体化CPG AI

コハク酸エステルAH(0.254g、0.242mmol)をジクロロメタン/アセトニトリル(3:2、3mL)の混合物に溶解した。この溶液にアセトニトリル(1.25mL)中のDMAP(0.0296g、0.242mmol)、アセトニトリル/ジクロロエタン(3:1、1.25mL)中の2,2'-ジチオ-ビス(5-ニトロピリジン)(0.075g、0.242mmol)を逐次加えた。得られた溶液にアセトニトリル(0.6ml)中のトリフェニルホスフィン(0.064g、0.242mmol)を加えた。反応混合物は明橙色に変わった。溶液をリストアクション撹拌機を用いて短時間(5分間)撹拌した。長鎖アルキルアミン-CPG(LCAA-CPG)(1.5g、61mM)を加えた。懸濁液を2時間撹拌した。CPGをガラスフィルターを通してろ過し、アセトニトリル、ジクロロメタンおよびエーテルで逐次洗浄した。未反応のアミノ基を無水酢酸/ピリジンを用いてマスクした。達成したCPGのローディングをUV測定により調べた(37mM/g)。
【0188】
5'-12-ドデカン酸ビスデシルアミド基(本明細書において「5'-C32-」と呼ぶ)または5'-コレステリル誘導体基(本明細書において「5'-Chol-」と呼ぶ)を有するsiRNAの合成を、コレステリル誘導体について、酸化段階を核酸オリゴマーの5'-末端にホスホロチオエート連結を導入するためにBeaucage試薬を用いて実施した以外は、国際公開公報第2004/065601号に記載のとおりに実施した。
【0189】
核酸配列を、標準の命名法、および具体的には表2の略語を用いて以下に示す。
【0190】
表3:核酸配列表記において用いるヌクレオチド単量体の略語。これらの単量体は、オリゴヌクレオチド中に存在する場合、5'-3'-ホスホジエステル結合によって互いに連結されていることが理解されるであろう。

a大文字は2'-デオキシリボヌクレオチド(DNA)を意味し、小文字はリボヌクレオチド(RNA)を意味する。
【0191】
dsRNA発現ベクター
本発明のもう一つの局面において、ヒトSCAP遺伝子発現活性を調節するヒトSCAP特異的dsRNA分子がDNAまたはRNAベクターに挿入した転写ユニットから発現される(例えば、Couture, A, et al., TIG. (1996), 12:5-10;Skillern, A., et al.、国際PCT公報WO 00/22113号、Conrad、国際PCT公報WO 00/22114号、およびConrad、米国特許第6,054,299号参照)。これらの導入遺伝子は直鎖作成物、環状プラスミド、またはウイルスベクターとして導入することができ、これらは宿主ゲノムに統合される導入遺伝子として組み込まれ、遺伝することができる。導入遺伝子は染色体外プラスミドとして遺伝することが可能となるよう作成することもできる(Gassmann, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1995) 92:1292)。
【0192】
dsRNAの個々の鎖は2つの別々の発現ベクター上のプロモーターによって転写され、標的細胞中に同時形質移入されうる。または、dsRNAの個々の鎖はそれぞれ、両方が同じ発現プラスミド上に位置するプロモーターによって転写されうる。好ましい態様において、dsRNAはこれがステムおよびループを有するようにリンカーポリヌクレオチド配列によって連結された逆方向反復として発現される。
【0193】
組換えdsRNA発現ベクターは一般にはDNAプラスミドまたはウイルスベクターである。dsRNA発現ウイルスベクターは、アデノ関連ウイルス(総説については、Muzyczka, et al., Curr. Topics Micro. Immunol. (1992) 158:97-129)参照);アデノウイルス(例えば、Berkner, et al., BioTechniques (1998) 6:616)、Rosenfeld et al. (1991, Science 252:431-434)、およびRosenfeld et al. (1992), Cell 68:143-155)参照);またはアルファウイルスならびに当技術分野において公知の他のウイルスを基に作成しうるが、それらに限定されるわけではない。レトロウイルスは様々な遺伝子を、インビトロおよび/またはインビボで、上皮細胞を含む多くの異なる細胞型に導入するために用いられている(例えば、

米国特許第4,868,116号;米国特許第4,980,286号;PCT出願WO 89/07136号;PCT出願WO 89/02468号;PCT出願WO 89/05345号;およびPCT出願WO 92/07573号参照)。細胞のゲノムに挿入された遺伝子を形質導入および発現可能な組換えレトロウイルスベクターを、組換えレトロウイルスゲノムをPA317およびPsi-CRIPなどの適当なパッケージング細胞株に形質移入することにより生成することができる(Comette et al., 1991, Human Gene Therapy 2:5-10;Cone et al., 1984, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6349)。組換えアデノウイルスベクターは、感受性宿主(例えば、ハムスター、イヌ、およびチンパンジー)の多様な細胞および組織に感染させるために用いることができ(Hsu et al., 1992, J. Infectious Disease, 166:769)、感染のために有糸分裂的に活性な細胞を必要としないという利点も有する。
【0194】
本発明のDNAプラスミドまたはウイルスベクターのいずれかにおいてdsRNA発現を駆動するプロモーターは、発現プラスミドがT7プロモーターからの転写に必要とされるT7 RNAポリメラーゼもコードすることを条件として、真核生物RNAポリメラーゼI(例えば、リボソームRNAプロモーター)、RNAポリメラーゼII(例えば、CMV初期プロモーターまたはアクチンプロモーターまたはU1 snRNAプロモーター)もしくは一般にはRNAポリメラーゼIIIプロモーター(例えば、U6 snRNAまたは7SK RNAプロモーター)または原核生物プロモーター、例えば、T7プロモーターであってもよい。プロモーターは導入遺伝子発現を膵臓にも誘導することができる(例えば、膵臓のインスリン調節配列(Bucchini et al., 1986, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:2511-2515)参照)。
【0195】
加えて、導入遺伝子の発現は、例えば、特定の生理的調節因子、例えば、循環グルコースレベル、またはホルモンに感受性の調節配列などの、誘導性調節配列および発現システムを用いることにより、正確に調節することができる(Docherty et al., 1994, FASEB J. 8:20-24)。細胞または哺乳動物における導入遺伝子発現の制御に適した、そのような誘導性発現システムには、エクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、二量化の化学的誘導物質、およびイソプロピル-ベータ-D1-チオガラクトピラノシド(IPTG)による調節が含まれる。当業者であれば、dsRNA導入遺伝子の所期の使用に基づき、適当な調節/プロモーター配列を選択することができるであろう。
【0196】
一般に、dsRNA分子を発現することができる組換えベクターを以下に記載するとおりに送達し、標的細胞中に維持する。または、dsRNA分子の一時的発現を提供するウイルスベクターを用いることもできる。そのようなベクターを必要に応じて繰り返し投与することができる。いったん発現されれば、dsRNAは標的RNAに結合し、その機能または発現を調節する。dsRNA発現ベクターの送達は、静脈内もしくは筋肉内投与などの全身送達、患者から外植した標的細胞に投与した後の患者への再導入、または所望の標的細胞への導入を可能にする任意の他の手段によるものでありうる。
【0197】
dsRNA発現DNAプラスミドを、典型的にはカチオン性脂質担体(例えば、オリゴフェクタミン)または非カチオン性脂質担体(例えば、Transit-TKO(商標))との複合体として標的細胞に形質移入する。単一のヒトSCAP遺伝子または複数のヒトSCAP遺伝子の異なる領域を標的とするdsRNA仲介性ノックダウンのための、1週間以上にわたっての複数の脂質形質移入も、本発明によって企図される。本発明のベクターを宿主細胞にうまく導入できたかを様々な公知の方法を用いてモニターすることができる。例えば、一過的形質移入を、緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光マーカーなどのレポーターにより信号を送ることができる。エクスビボ細胞の安定な形質移入を、形質移入した細胞に、ハイグロマイシンB耐性などの特定の環境因子(例えば、抗生物質および薬物)に対する抵抗性を与えるマーカーを用いて確実に行うことができる。
【0198】
ヒトSCAP特異的dsRNA分子をベクターに挿入し、ヒト患者のための遺伝子療法ベクターとして用いることもできる。遺伝子療法ベクターは、例えば、静脈内注射、局所投与(米国特許第5,328,470号参照)または定位注射(例えば、Chen et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:3054-3057参照)によって被験者に送達することができる。遺伝子療法ベクターの薬学的製剤は、許容される希釈剤中に遺伝子療法ベクターを含むことができ、または遺伝子療法ベクターが埋め込まれた徐放性マトリックスを含むこともできる。または、例えば、レトロウイルスベクターなど、完全な遺伝子送達ベクターを組換え細胞から完全な状態で生成しうる場合は、薬学的製剤は、遺伝子送達システムを生成する1つまたは複数の細胞を含んでもよい。
【0199】
一次肝細胞およびインビボ実験からの肝臓における脂肪酸およびコレステロール合成に関与する遺伝子へのSCAP RNAiの効果
プライマリハムスター肝細胞における単一用量スクリーン
肝細胞をハムスターの肝臓から単離し、60mmの皿に1.2×106細胞/皿の密度で播種した。2時間の接着期間後、細胞にoligofectamineを用いて200nMの指定のsiRNAを形質移入した。形質移入の24時間後、全RNAを細胞からRNA STAT-60溶液(Tel-Test Inc., Friendswood, Texas, USA)を用いて単離した。各皿10μgのRNAをDNアーゼI(DNAを含まない;Ambion Inc., Austin, Texas, USA)で処理した。第一鎖cDNAを2μgのDNアーゼI処理した全RNAおよびランダム6量体プライマーからABI cDNA合成キット(N808-0234;PE Biosystems, Foster City, California, USA)を用いて合成した。各遺伝子のために以下の特異的プライマーをPrimer Expressソフトウェア(PE Biosystems)を用いて設計した:β-アクチン、5'プライマー、

、3'プライマー、

;SCAP、5'プライマー、

、3'プライマー、

β-アクチンを不変の対照として用いた。リアルタイムRT-PCR反応を、20ngの逆転写全RNA、167nMの順方向および逆方向プライマー、ならびに10μlの2×SYBR Green PCR Master Mix(4312704;PE Biosystems)を含む最終量20μlに設定した。PCR反応を384穴プレートで、ABI PRISM 7900HT Sequence Detection System(PE Biosystems)を用いて実施した。すべての反応を三重複で行った。すべてのmRNAの相対量を、比較Ct法を用いて算出した。ハムスターβ-アクチンmRNAを不変の対照として用いた。値は、非形質移入細胞に対するmRNAの量を表し、非形質移入細胞のmRNA量を1と定義する(n=1プレート)。
【0200】
表4:ハムスタープライマリ肝細胞におけるマウスおよびハムスターのSCAPの阻害に特異的なsiRNAのスクリーニング

【0201】
表5:ハムスタープライマリ肝細胞におけるSCAPの阻害に関して交差反応性のヒトsiRNAのスクリーニング

【0202】
インビボでのハムスターにおける脂肪酸およびコレステロール合成に関与する遺伝子へのSCAP RNAiの効果
インビボRNAi実験のために、リポソームにより製剤したAL-DP-6062を6匹のハムスターに頸静脈から注射した(4mg/kg)。注射から3日後、動物を屠殺し、確立された方法を用いて全RNAを肝臓から調製した。
【0203】
全RNAを肝細胞からQIAGEN(Valencia, CA)のRNeasyキットを用いて調製した。各ハムスターの肝臓からのRNA 10μgをDNアーゼI(DNAを含まない;Ambion Inc., Austin, Texas, USA)で処理した。第一鎖cDNAを2μgのDNアーゼI処理した全RNAおよびランダム6量体プライマーからABI cDNA合成キット(N808-0234;PE Biosystems, Foster City, California, USA)を用いて合成した。6匹のハムスターから等しい量のcDNAを集めた。各遺伝子のために以下の特異的プライマーをPrimer Expressソフトウェア(PE Biosystems)を用いて設計した:

リアルタイムRT-PCR反応を前述のとおりに設定した。ハムスターβ-アクチンを不変の対照として用いた。値は、食塩水を注射したハムスターの肝臓におけるmRNAの量を1と定義し、これに対するmRNAの量を表す。
【0204】
siRNAを注射したハムスターの肝臓におけるSCAPおよびSREBPのタンパク質発現
膜および核タンパク質を凍結した肝臓から以前に記載されてるとおりに調製した(Engelking et.al., J. Clin. Invest. 113: 1168-1175, 2004)。等しい量のタンパク質を8%ゲルのSDS-PAGEにかけ、Hybond ECL膜(Amersham)に転写した。免疫ブロット分析を、ポリクローナル抗ハムスターSREBP-1およびSREBP-2抗体を用いて実施した(Shimomura et al., PNAS, 94: 12354-12359, 1997)。抗体に結合したバンドをSuperSignal CL-HRP基質システム(Pierce Biotechnology Inc., Rockford, IL)を用いて検出した。抗-CREB(cAMP応答配列結合タンパク質)および抗-RAP(受容体関連タンパク質)をそれぞれ肝臓の核および膜タンパク質のローディング対照として用いた。シグナルをResearch Services Branch, National Institute of Mental Health(Bethesda, Maryland)から入手可能なImage Jプログラムを用いて定量し、値は食塩水を注射したハムスターの肝臓におけるタンパク質の量を1と定義し、これに対するタンパク質の量を表す。
【0205】
表6:4mg/kgのAL-DP-6062による処理から3日後のハムスターにおけるSCAPおよびSCAPの下流の他の遺伝子のmRNA発現(肝細胞:n=2、肝臓:6匹のハムスターからプールしたcDNA)

【0206】
表7:siRNAを注射したハムスターの肝臓におけるSCAPのmRNAおよびタンパク質発現(6匹のハムスターからプールしたcDNAまたはタンパク質)

【0207】
表8:siRNAを注射したハムスターの肝臓におけるSREBP-1のmRNAおよびタンパク質発現(6匹のハムスターからプールしたcDNAまたはタンパク質)

【0208】
表9:siRNAを注射したハムスターの肝臓におけるSREBP-2のmRNAおよびタンパク質発現(6匹のハムスターからプールしたcDNAまたはタンパク質)

【0209】
表10:血漿および肝臓におけるコレステロールおよびトリグリセリド濃度(n=6)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞においてSCAP遺伝子の発現を阻害するための二本鎖リボ核酸(dsRNA)であって、dsRNAが互いに相補的な少なくとも2つの配列を含み、センス鎖は第一の配列を含み、アンチセンス鎖は、SCAP遺伝子をコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的な相補性の領域を含む第二の配列を含み、該相補性の領域は長さ30ヌクレオチド未満であり、かつ該SCAPを発現する細胞に接触すると、dsRNAが該SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%阻害する、dsRNA。
【請求項2】
前記SCAP遺伝子がヒトSCAP遺伝子であり、好ましくはホモサピエンス(Homo sapiens)SCAP遺伝子である、請求項1記載のdsRNA。
【請求項3】
SCAP遺伝子の発現の少なくとも20%の前記阻害がプライマリハムスター肝細胞において行われる、請求項1および2記載のdsRNA。
【請求項4】
前記第一の配列および前記第二の配列がそれぞれ配列番号:1〜48からなる群の偶数番号および奇数番号から選択される、前記請求項のいずれか一項記載のdsRNA。
【請求項5】
dsRNAが

の群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載のdsRNA。
【請求項6】
前記dsRNAが少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、前記請求項のいずれか一項記載のdsRNA。
【請求項7】
前記修飾ヌクレオチドが以下の群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載のdsRNA:2'-O-メチル修飾ヌクレオチド、5'-ホスホロチオエート基を含むヌクレオチド、およびコレステリル誘導体またはドデカン酸ビスデシルアミド基(dodecanoic acid bisdecylamide group)に連結された末端ヌクレオチド。
【請求項8】
前記修飾ヌクレオチドが以下の群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載のdsRNA:2'-デオキシ-2'-フルオロ修飾ヌクレオチド、2'-デオキシ-修飾ヌクレオチド、ロックされたヌクレオチド(locked nucreotide)、脱塩基ヌクレオチド、2'-アミノ-修飾ヌクレオチド、2'-アルキル-修飾ヌクレオチド、モルホリノヌクレオチド、ホスホロアミデート(phosphoramidate)、および非天然塩基を含むヌクレオチド。
【請求項9】
前記第一の配列および前記第二の配列がそれぞれ配列番号:1〜48からなる群の偶数番号および奇数番号から選択される、前記請求項のいずれか一項記載のdsRNA。
【請求項10】
前記請求項のいずれか一項記載のdsRNAを含む細胞。
【請求項11】
生物においてSCAP遺伝子の発現を阻害するための、dsRNAおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物であって、dsRNAは互いに相補的な少なくとも2つの配列を含み、センス鎖は第一の配列を含み、アンチセンス鎖はSCAPをコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的な相補性の領域を含む第二の配列を含み、該相補性の領域は長さ30ヌクレオチド未満であり、該dsRNAは該ヒトSCAPを発現する細胞に接触すると、該ホモサピエンスSCAP遺伝子の発現を少なくとも20%阻害する、組成物。
【請求項12】
前記SCAP遺伝子がヒトSCAP遺伝子であり、好ましくはホモサピエンスSCAP遺伝子である、請求項11記載の薬学的組成物。
【請求項13】
SCAP遺伝子の発現の少なくとも20%の前記阻害がプライマリハムスター肝細胞において行われる、請求項11または12記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記第一の配列および前記第二の配列がそれぞれ配列番号:1〜48からなる群の偶数番号および奇数番号から選択される、請求項11から13のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項15】
dsRNAが

の群より選択される、請求項11から14のいずれか一項記載の薬学的組成物。
【請求項16】
以下の段階を含む、細胞においてSCAP遺伝子の発現を阻害する方法:
(a)細胞に二本鎖リボ核酸(dsRNA)を導入する段階であって、dsRNAは互いに相補的な少なくとも2つの配列を含み、センス鎖は第一の配列を含み、アンチセンス鎖はSCAPをコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的な相補性の領域を含む第二の配列を含み、該相補性の領域は長さ30ヌクレオチド未満であり、該dsRNAは該SCAP遺伝子を発現する細胞に接触すると、該SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%阻害する、段階;および
(b)段階(a)で生成した細胞を、SCAP遺伝子のmRNA転写物を分解するのに十分な時間維持し、それにより細胞におけるSCAP遺伝子の発現を阻害する段階。
【請求項17】
遺伝子がヒトSCAP遺伝子であり、好ましくはホモサピエンスSCAP遺伝子である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
SCAP発現によって仲介される病的過程を治療、予防または管理する方法であって、そのような治療、予防または管理を必要としている患者に、治療的または予防的有効量のdsRNAを投与する段階を含み、dsRNAは互いに相補的な少なくとも2つの配列を含み、センス鎖は第一の配列を含み、アンチセンス鎖はSCAPをコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的な相補性の領域を含む第二の配列を含み、該相補性の領域は長さ30ヌクレオチド未満であり、該dsRNAは該SCAP遺伝子を発現する細胞に接触すると、該SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%阻害する、方法。
【請求項19】
患者が非アルコール性肝疾患、脂肪肝、脂肪過剰血症、高脂血症、高リポタンパク血症、高コレステロール血症および/または高トリグリセリド血症、アテローム性動脈硬化症、膵炎、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)、冠動脈性心疾患、肥満、代謝症候群、末梢動脈疾患、ならびに脳血管疾患を患っている、請求項18記載の方法。
【請求項20】
細胞においてSCAP遺伝子の発現を阻害するための、dsRNAの少なくとも1つの鎖をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含むベクターであって、該dsRNAの鎖の1つはSCAPをコードするmRNAの少なくとも一部に実質的に相補的であり、該dsRNAは長さ30塩基対未満であり、該dsRNAは該SCAP遺伝子を発現する細胞に接触すると、該SCAP遺伝子の発現を少なくとも20%阻害する、ベクター。
【請求項21】
請求項20記載のベクターを含む細胞。

【公表番号】特表2010−503415(P2010−503415A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528526(P2009−528526)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/078740
【国際公開番号】WO2008/036638
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(505369158)アルナイラム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
【出願人】(507342308)ボード オブ リージェンツ ザ ユニバーシティー オブ テキサス システム (4)
【Fターム(参考)】