説明

SCR触媒用β型ゼオライト及びそれを用いた窒素酸化物の浄化方法

【課題】Nox還元性が高く、処理排ガス中にアンモニアの残存を抑制可能なSCR触媒及び、それに用いるβ型ゼオライトを提供する。
【解決手段】SiO/Alのモル比が20以上40未満、SEM粒径が0.35μm以上、X線結晶回折(302)面の半値幅(FWHM)が0.30°未満、なおかつNH吸着量が1mmol/g以上のSCR触媒用β型ゼオライト、或いはそれに加えて水熱耐久処理後のNH吸着量が0.4mmol/g以上のSCR触媒用β型ゼオライトを用いたSCR触媒。水熱耐久処理後における低温NOx還元性が高く、排ガスへの刺激性のアンモニア排出を小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能なSCR触媒及びそれに用いるβ型ゼオライトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
β型ゼオライトは、NOx還元触媒、特にアンモニアを還元剤として用いるNOx還元触媒(一般にSCR触媒といわれる選択的接触還元“Selective catalytic reduction”の略)に用いられるゼオライトとして知られている。(特許文献1参照)
β型ゼオライトを用いたSCR触媒は、高温水蒸気雰囲気下での耐久処理(以下、「水熱耐久処理」という)後において、NOx還元性能が低下し、特に300℃以下の低温での性能低下が著しく、使用することができなかった。このようなβ型ゼオライトを用いたSCR触媒の水熱耐久処理後における性能低下は、β型ゼオライトの耐熱性が不十分であることが主な原因と考えられるが、特に低温での性能が著しい原因はこれまで十分に解明されていなかった。従来の文献報告、及び市販されて入手可能なβ型ゼオライトを用いたSCR触媒性能は、いずれも、水熱耐久処理後の200℃におけるNOx還元率が30%未満でしかなかった。
【0003】
β型ゼオライトは触媒或いは吸着剤に用いられるゼオライトとしてよく知られており、その耐熱性を向上するためにはシリカ/アルミナ比を高めること、或いは結晶径を大きくすること等が知られている。(特許文献2、3参照)しかし、シリカ/アルミナ比を大きくしたり、大結晶化した場合には、SCR触媒性能、特に低温での性能向上はできなかった。
【0004】
これまでβ型ゼオライトを用いたSCR触媒の性能向上についていくつかの提案がなされている。例えば、使用前に水熱処理して脱アルミ処理をする方法が提案されている。(特許文献4)しかし、水熱耐久処理後における性能はまだ十分なものではなかった。また触媒の担持金属として通常用いられる鉄以外に、希土類元素を添加することによって耐熱性を向上する方法が報告されている。(特許文献5)しかし当該方法によっても200℃におけるNOx還元率は30%未満であり、さらに高価な希土類が必要であった。
【0005】
また従来のSCR触媒では、還元剤としてアンモニアを用いているため、未反応のアンモニアが排出され、刺激性、毒性を有するガスが排出されるという問題も未解決であった。(特許文献5)
これまでβ型ゼオライトの製造法としては種々の方法が報告されている。(特許文献5〜9参照)しかし、SCR触媒として用いるβ型ゼオライトについて、水熱耐久処理後のNOx還元率の高いβ型ゼオライト、特に低温でNOx還元率の高いβ型ゼオライトについて提案されたものはない。
【0006】
【特許文献1】特許第2904862号
【特許文献2】特開平9−38485
【特許文献3】特開平11−228128
【特許文献4】特表2004−536756
【特許文献5】特開2005−177570
【特許文献6】特開昭61−136910
【特許文献7】特開昭61−281015
【特許文献8】特開平5−201722
【特許文献9】特開平6−287015
【特許文献10】特開平7−247114
【特許文献11】特開平9−175818
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、NOx還元性、特に水熱耐久処理後における低温NOx還元性能が高く、なおかつ処理排ガス中に刺激性、有毒性のあるアンモニアの残存が少ないSCR触媒及びそれに用いるβ型ゼオライトを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、β型ゼオライトを用いたSCR触媒、特に水熱耐久処理後における低温で用いられるSCR触媒について鋭意検討を重ねた結果、特定のβ型ゼオライトを用いたSCR触媒では、水熱耐久処理後における低温特性、特に250℃以下でのNOx還元性能が高く、なおかつ処理排出ガス中のアンモニアも低減できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
前述した通り、従来、β型ゼオライトの耐熱性を向上させる方法としては、SiO/Alのモル比を向上させること、或いは結晶径を大きくすることが知られているが、SiO/Alのモル比を高める、或いは結晶径を大きくする、またそれら両方を満足するだけでは低温活性の高いSCR触媒は得らない。
【0010】
本発明のSCR用β型ゼオライトは、高いSiO/Alのモル比や、特に大きな結晶径を用いるものではないが、特定のSiO/Alのモル比、粒子径、XRDによる結晶性を満足するβ型ゼオライトの中で、特定のNH吸着性、特に水熱耐久処理前後のNH吸着量が一定範囲を示すβ型ゼオライトでは、鉄や銅などの金属を担持したCR触媒として用いた場合、水熱耐久処理後において高い低温NOx還元性を発揮することを見出したものである。
【0011】
本発明のSCR触媒用β型ゼオライトは、SiO/Alのモル比は20以上40未満、SEM粒径が0.35μm以上、X線結晶回折(302)面の半値幅(FWHM)が0.30°未満、なおかつ水熱耐久前のNH吸着量が1mmol/g以上であるSCR触媒用β型ゼオライトからなるものである。
【0012】
本発明のSCR触媒用β型ゼオライトのSiO/Alのモル比は20以上40未満、特に22以上30未満、さらに23以上29未満であることが好ましい。20未満では耐熱性が十分でないが、一般的に耐熱性が高くなる40を越える場合には、本発明の低温でのNOx還元性を発揮することができない。
【0013】
本発明のSCR触媒用β型ゼオライトの粒子径は、SEM粒径で0.35μm以上、特にSEM径が0.4μm以上であることが好ましい。上限は特に制限されるものではないが、SCR触媒の動的性能、製造し易さの観点から2μm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明のSCR触媒用β型ゼオライトのX線結晶回折(302)面の半値幅(FWHM)はフレッシュな状態において0.30°未満であり、特に0.25°以下であることが好ましい。さらに水熱耐久処理後のX線結晶回折(302)面の半値幅(FWHM)は0.35°未満、特に0.30°未満であることが好ましい。それぞれの条件下において上記のX線結晶回折半値幅(FWHM)を越えるものでは、SCR触媒、特に低温のNOx還元性が低下する。
【0015】
いずれの条件下におけるX線結晶回折(302)面の半値幅(FWHM)の下限値は、本発明のSiO/Alのモル比においては約0.15°までである。
【0016】
本発明におけるX線結晶回折は、通常用いられるCu−Kα線源を用いる粉末X線結晶回折により測定でき、2θ=22.4°付近に現れるメインピークのものであり、SEM径は電子顕微鏡観察によって見られる粒子をランダムに30個測定し、その平均として求められるものをさす。
【0017】
本発明のSCR触媒用β型ゼオライトは、フレッシュな状態(水熱耐久処理前)でのNH吸着量が1mmol/g以上であり、特に1.2mmol/g以上であることが好ましい。フレッシュな状態でのNH吸着量が1mmol/g未満では、耐熱性が高くても、本発明のNOx還元性を発揮しない。フレッシュな状態(水熱耐久処理前)でのNH吸着量の上限値は特に制限されるものではないが、本発明のSiO/Alのモル比において1.5mmol/gを超えるNH吸着量を示すものは、熱的な安定性に欠け、本発明のSCR性能を発揮し難い。
【0018】
本発明のSCR触媒用β型ゼオライトは、フレッシュな状態で高いNH吸着量を有していればよいというだけでなく、水熱耐久処理後のNH吸着量が0.4mmol/g以上、特に0.5mmol/g以上であることが好ましい。水熱耐久処理後のNH吸着量が0.4mmol/gを下回るものでは、水熱耐久処理後において低温でのSCR触媒性能が十分に発揮されにくいからである。
【0019】
水熱耐久処理後のNH吸着量の上限値は特に制限されるものではないが、本発明のSiO/Alのモル比においては約0.7mmol/gである。
【0020】
SCR触媒は、β型ゼオライトに鉄や銅の活性金属を担持することによってNOx分解性能を発揮するが、これらの金属が十分に担持されていても、本発明のNH吸着量を満足しないものでは本発明のSCR性能が発揮されない。
【0021】
本発明でいう水熱耐久処理とは、水蒸気を10容量%含む空気流通下における加熱処理、さらに具体的には以下に示す条件で処理することをいう。SCR触媒は水熱耐久処理後の性能で評価されることが一般的であるが、その水熱耐久処理条件として特に規格化されたものはない。本発明での水熱耐久処理条件、即ち大気中水分濃度10容量%700℃での耐久試験はSCR触媒の水熱耐久処理条件として一般的な条件の範疇であり、特に特殊なものではない。なお、β型ゼオライトに限らず、600℃以上におけるゼオライトに対する熱的なダメージは指数関数的に増大し、700℃で20時間の水熱耐久処理は、650℃であれば100〜200時間以上、800℃であれば数時間の処理に相当するものである。
【0022】
本発明における水熱耐久処理条件:
温度 :700℃
時間 :20時間
ガス中水分濃度 :10容量%
ガス流量/ゼオライト容量比 :100倍/分
β型ゼオライトのNH吸着量は、アンモニアを吸着させたβ型ゼオライトから脱着したアンモニアを定量分析することにより求められ、市販の自動昇温脱離分析装置を用いて測定することができる。
【0023】
本発明におけるNH吸着量は、以下の方法で測定することができる。
【0024】
β型ゼオライト(500μm〜840μmに整粒した0.1g程度を使用)を500℃、不活性ガス(ヘリウム)中で吸着成分を除去し、不活性ガス(ヘリウム)90%、アンモニア10%の混合気体を25℃でアンモニアを飽和吸着させ、次に700℃まで昇温し、昇温の過程で脱離したアンモニア量(但し、25〜100℃の温度範囲で脱着するものを除く)を質量分析計にて定量することによってNH吸着量とする。
【0025】
次に本発明のSCR触媒は、水熱耐久処理後において、200℃でのNOx還元率が30%以上のものであり、特に35%以上であることが好ましい。200℃におけるNOx還元率が30%未満では、触媒活性が低く、実用には不十分である。上限は特に限定されるものではなく、担持される金属種によっても異なると考えられるが、水熱耐久処理後で約50%程度である。
【0026】
本発明のSCR触媒は、さらに250℃でのNOx還元率が75%以上であることが好ましい。SCR触媒のNOx還元率は高温ほど高くなるが、低温になるほど水熱耐久処理後の性能が低下し易い。本発明のSCR触媒は水熱耐久処理後の250℃におけるNOx分解率が75%以上であり、特に耐久性に優れている。上限は特に限定されるものではなく、水熱耐久処理後で約90%程度である。
【0027】
本発明におけるSCR触媒のNOx還元率とは、以下の条件のガスを所定の温度で接触させた場合の窒素酸化物の還元によって定義することができる。SCR触媒は一般的に還元分解するNOガスと還元剤のアンモニアを1:1で含有するガスを用いて評価することが一般的である。本発明で用いたNOx還元条件は、通常SCR触媒のNOx還元性を評価する一般的な条件の範疇に入るものであり、特に特殊なものではない。
【0028】
本発明におけるSCR触媒のNOx還元評価条件:
処理ガス組成 NO 200ppm
NH 200ppm
10vol%
O 3vol%
残り バランス
処理ガス流量 1.5リットル/分
処理ガス/触媒容量比 1000/分
本発明のSCR触媒は、β型ゼオライトに周期律表のVIII族、IB族の元素群から少なくとも一種の金属を担持したもの、特に鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金の群から選ばれる一種以上であり、更に好ましくは鉄、パラジウム、白金、銅、銀の一種以上、さらには鉄又は銅を担持したものであることが好ましい。
【0029】
さらに希土類金属、チタン、ジルコニアなどの助触媒成分を付加的に加えることもできる。活性金属種を担持させる場合の担持方法は特に限定されない。担持方法として、イオン交換法、含浸担持法、蒸発乾固法、沈殿担持法、物理混合法等の方法が採用することができる。金属担持に用いる原料も硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、錯塩、酸化物、複合酸化物など可溶性/不溶性のものがいずれも使用できる。
【0030】
金属の担持量は限定されないが、特に0.1〜10重量%、特に2〜7%の範囲が好ましい。
【0031】
本発明のSCR触媒は、シリカ、アルミナ及び粘土鉱物等のバインダーと混合し成形して使用することもできる。成形する際に用いられる粘土鉱物として、カオリン、アタパルガイト、モンモリロナイト、ベントナイト、アロフェン、セピオライトが例示できる。
【0032】
本発明のSCR触媒は、窒素酸化物を含む該排ガスを接触させることにより、排ガス浄化することができる。
【0033】
本発明で浄化される窒素酸化物は、例えば一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素、一酸化二窒素、及びそれらの混合物が例示される。好ましくは一酸化窒素、二酸化窒素、一酸化二窒素である。ここで本発明が処理可能な排ガスの窒素酸化物濃度は限定されるものではない。
【0034】
また該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていても良い。具体的には、本発明の方法ではディーゼル自動車、ガソリン自動車、ボイラー、ガスタービン等の多種多様の排ガスから窒素酸化物を浄化することができる。
【0035】
本発明のSCR触媒は還元剤の存在下で窒素酸化物を浄化するものである。
【0036】
還元剤としては該排ガス中に含まれる炭化水素、一酸化炭素、水素等を還元剤として利用することができ、更に適当な還元剤を排ガスに添加して共存させて用いられる。排ガスに添加される還元剤は特に限定されないが、アンモニア、尿素、有機アミン類、炭化水素、アルコール類、ケトン類、一酸化炭素、水素等が挙げられ、特に窒素酸化物の浄化効率をより高めるためには、特にアンモニア、尿素、有機アミン類が用いられる。
【0037】
これらの還元剤の添加方法は特に限定されず、還元成分をガス状で直接添加する方法、水溶液などの液状を噴霧し気化させる方法、噴霧熱分解させる方法等を採用することができる。これらの還元剤の添加量は、十分に窒素酸化物が浄化できるように任意に設定することができる。
【0038】
本発明の窒素酸化物の浄化方法において、SCR触媒と排ガスを接触させる際の空間速度は特に限定されないが、好ましい空間速度は体積基準で500〜50万hr−1、更に好ましくは2000〜30万hr−1である。
【0039】
本発明のSCR触媒では、単にNOx浄化活性が高いだけでなく、SCR触媒として用いた際の、排ガス中に含まれる刺激性、毒性のガスの排出が小さいものである。
【0040】
アンモニアを還元剤として用いた場合、従来は触媒活性が低かったため、刺激性、毒性のあるアンモニアが多く排出されるという問題があり、SCR触媒の下流側においてさらに別の触媒系でアンモニアを処理することが必要であった。
【0041】
本発明のSCR触媒では、低温でも触媒活性が高いため、還元剤として用いられるアンモニアが効率的に消費され、アンモニア排出量が少なく、悪臭の問題が小さい、或いは未反応アンモニアを処理する触媒系の負荷が著しく小さいものである。
【0042】
本発明のSCR触媒用β型ゼオライトの製造法は特に限定されるものではないが、本発明のSiO/Alのモル比、SEM径、結晶性を満足する条件を選択して製造する。これまで本発明の特性を満足するβ型ゼオライトを製造すれば本発明のSCR触媒の特性、即ち水熱耐久処理後における低温NOx還元性を満足することを示された例はない。
【0043】
β型ゼオライトは、通常、シリカ源、アルミ源、アルカリ、有機指向剤、水の存在下、必要に応じてフッ素化剤の存在下、水熱合成によって製造することができ、本発明のSCR触媒用β型ゼオライトの製造に用いる条件としては例えば以下の範囲が例示できる。
【0044】
SiO/Alモル比 20〜40
アルカリ/SiOモル比 0〜0.1
O/SiOモル比 7〜15
SDA/SiOモル比 0.10〜0.30
F原料を用いる場合には
F/SiOモル比 0.1〜5
上記の製造条件によって本発明のSiO/Alのモル比、SEM径を制御するには、例えば本発明の出願人によって開示された特許文献8等に記載された方法によって調整してもよい。
【0045】
本発明のSCR触媒用ゼオライトは、上記の条件を満足すれば、そのほかに一般的な有機指向剤(SDAという)、或いはフッ素化合物を用いてもよい。
【0046】
SDA原料としてはテトラエチルアンモニウムカチオンを有するテトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、更にはオクタメチレンビスキヌクリジウム、α,α’−ジキヌクリジウム−p−キシレン、α,α’−ジキヌクリジウム−m−キシレン、α,α’−ジキヌクリジウム−o−キシレン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,3,3,N,N−ペンタメチル−6−アゾニウムビシクロ[3,2,1]オクタン又はN,N−ジエチル−1,3,3−トリメチル−6−アゾニウムビシクロ[3,2,1]オクタンカチオン等が例示される。
【0047】
フッ素化合物原料としては、フッ酸、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化珪素、フルオロ珪酸アンモニウム、フルオロ珪酸ナトリウム等を使用することができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明のSCR触媒用β型ゼオライトは、水熱耐久処理後のSCR触媒性能、特に低温NOx還元性に優れ、なおかつアンモニアを還元剤として用いた場合、排ガス中に刺激性、毒性のあるアンモニア排出の問題がないSCR触媒を提供する。
【実施例】
【0049】
以下本発明を実施例で説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
実施例1
珪酸ソーダ水溶液、硫酸アルミニウム水溶液を用いスラリー状生成物の組成がSiO:0.05Alとなるように攪拌下で反応させ、スラリー状生成物とし、脱水した後、洗浄して粒状無定型アルミノ珪酸塩とした。
【0051】
次に反応混合物の組成が、SiO:0.05Al:0.67TEAF:11.0HOとなるように混合し、さらに当該組成物100部に対して0.36部の種晶(東ソー製HSZ940NHA)を加え、オートクレーブ中、155℃で72時間水熱合成により結晶化した。結晶化後のスラリーは、洗浄し、110℃で乾燥した。(TEAF:水酸化テトラエチルフルオライド50%)当該乾燥粉末を、600℃で焼成し、SiO/Alのモル比が25のβ型ゼオライトを得た。
【0052】
得られたβ型ゼオライトのSiO/Alのモル比、SEM径、X線結晶回折における主要回折ピーク(2θ=22.4°)の半値幅、水熱処理後のアンモニア吸着量を表1に示した。
【0053】
実施例2
珪酸ソーダ水溶液、硫酸アルミニウム水溶液を用いた原料スラリーの組成をSiO:0.034Alとし、反応混合物の組成を、
SiO:0.034Al:0.16TEAOH:9.9HOとし、水熱合成条件150℃、66時間、焼成温度600℃とした以外は実施例1と同様の処理をし、SiO/Alモル比が29のβ型ゼオライトを合成した。(TEAOH:水酸化テトラエチルアンモニウム35%水溶液)
得られたβ型ゼオライトのSiO/Alのモル比、SEM径、X線結晶回折における主要回折ピーク(2θ=22.4°)の半値幅、水熱処理後のアンモニア吸着量を表1に示した。
【0054】
実施例3
珪酸ソーダ水溶液、硫酸アルミニウム水溶液を用いた原料スラリーの組成をSiO:0.07Al(OH)とし、反応混合物の組成を、
SiO:0.07Al(OH):0.10KOH:0.30TEAOH:9.9H
とし、種晶に東ソー製HSZ930NHAを用い、水熱合成条件150℃、88時間、焼成温度600℃とした以外は実施例1と同様の処理をし、SiO/Alモル比が24のβ型ゼオライトを合成した。
【0055】
得られたβ型ゼオライトのSiO/Alのモル比、SEM径、X線結晶回折における主要回折ピーク(2θ=22.4°)の半値幅、水熱処理後のアンモニア吸着量を表1に示した。
【0056】
実施例4
珪酸ソーダ水溶液、硫酸アルミニウム水溶液を用いスラリー状生成物の組成がSiO:0.034Alとし、反応混合物の組成を、
SiO:0.034Al:0.05KOH:0.14TEAOH:9.9HOとし、種晶に東ソー製HSZ930NHAを用い、水熱合成条件150度、88時間、焼成温度600℃とした以外は実施例1と同様の処理をし、SiO/Alモル比が29のβ型ゼオライトを合成した。
【0057】
得られたβ型ゼオライトのSiO/Alのモル比、SEM径、X線結晶回折における主要回折ピーク(2θ=22.4°)の半値幅、水熱処理後のアンモニア吸着量を表1に示した。
【0058】
実施例5
珪酸ソーダ水溶液、硫酸アルミニウム水溶液を用いスラリー状生成物の組成がSiO:0.034Alとし、反応混合物の組成を、
SiO:0.034Al:0.07TEABr:0.13TEAOH:9.9HOとし、種晶に東ソー製HSZ930NHAを用い、水熱合成条件150℃、144時間、焼成温度600℃とした以外は実施例1と同様の処理をし、SiO/Alモル比が29のβ型ゼオライトを合成した。(TEABr:臭化テトラエチル5アンモニウム50%水溶液)
得られたβ型ゼオライトのSiO/Alのモル比、SEM径、X線結晶回折における主要回折ピーク(2θ=22.4°)の半値幅、水熱処理後のアンモニア吸着量を表1に示した。
【0059】
実施例6
東ソーシリカ製の無定形シリカ粉末(商品名:ニップシールVN−3)、水酸化アルミニウムを用い、反応混合物の組成を、
SiO:0.034Al:0.16TEAOH:9.9HOとし、種晶に東ソー製HSZ930NHAを用い、水熱合成条件150℃、120時間、焼成温度600℃とした以外は実施例1と同様の処理をし、SiO/Alモル比が29のβ型ゼオライトを合成した。
【0060】
得られたβ型ゼオライトのSiO/Alのモル比、SEM径、X線結晶回折における主要回折ピーク(2θ=22.4°)の半値幅、水熱処理後のアンモニア吸着量を表1に示した。
【0061】
実施例7
テトラエチルオルトシリケート、アルミニウムイソプロポキシド、TEAOHを混合し、室温で撹拌することでエタノールと水を蒸発させた。反応混合物の組成を、
SiO:0.034Al:0.16TEAOH:9.9HOとし、種晶に東ソー製HSZ930NHAを用い、水熱合成条件150℃、72時間、焼成温度600℃とした以外は実施例1と同様の処理をし、SiO/Alモル比が29のβ型ゼオライトを合成した。
【0062】
得られたβ型ゼオライトのSiO/Alのモル比、SEM径、X線結晶回折における主要回折ピーク(2θ=22.4°)の半値幅、水熱処理後のアンモニア吸着量を表1に示した。
【0063】
比較例1
珪酸ソーダ水溶液、硫酸アルミニウム水溶液を用いた原料スラリーの組成をSiO:0.08Al(OH)とし、反応混合物の組成を、
SiO:0.08Al(OH):0.05KOH:0.14TEAOH:9.9H
とし、種晶に東ソー製HSZ930NHAを用い、水熱合成条件150℃、88時間とした以外は実施例1と同様の処理をし、SiO/Alモル比が22のβ型ゼオライトを合成した。
【0064】
得られたβ型ゼオライトのSiO/Alのモル比、SEM径、X線結晶回折における主要回折ピーク(2θ=22.4°)の半値幅、水熱処理後のアンモニア吸着量を表1に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
SCR触媒性能評価
実施例1〜7、比較例1及び市販のβ型ゼオライトそれぞれにFe(NO・9水和物の水溶液を用いてFe金属を3重量%担持したSCR触媒とした。市販のβ型ゼオライトとしてはSiO/Alモル比が40の東ソー製β型ゼオライト(商品名:HSZ−940NHA、表2中「従来製品1」)、及びSiO/Alモル比が30の東ソー製β型ゼオライト(商品名:HSZ−930NHA、表2中「従来製品2」)を600℃で空気焼成してH型にしたもの、さらに上記のモル比40のH型ゼオライトを通常の方法(無機酸で処理)によってSiO/Alモル比が491(表2中「従来品」)としたものを用いた。
【0067】
それぞれ、500℃で空気焼成した後、本発明の窒素還元条件におけるSCR触媒評価を行った。結果を表2に示す。
【0068】
市販のβ型ゼオライトは、アンモニア吸着量が本発明の範囲外であり、低温でのSCR触媒特性が小さかった。比較例1のβ型ゼオライトではアンモニア吸着量は満足したが、他の条件を満足せず、SCR触媒としたときの低温特性が不十分であった。
【0069】
本発明のβ型ゼオライトを用いたSCR触媒は、水熱耐久処理後においても低温でのNOx還元率が高く、従来品に比べて少なく見積もっても20%以上、最大約3倍の活性を示した。
【0070】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO/Alのモル比が20以上40未満、SEM粒径が0.35μm以上、X線結晶回折(302)面の半値幅(FWHM)が0.30°未満、なおかつNH吸着量が1mmol/g以上であるSCR触媒用β型ゼオライト。
【請求項2】
SiO/Alのモル比が22以上30未満、SEM粒径が0.35μm以上、X線結晶回折(302)面の半値幅(FWHM)が0.30°未満、なおかつNH吸着量が1.2mmol/g以上であるSCR触媒用β型ゼオライト。
【請求項3】
SiO/Alのモル比が22以上30未満、SEM粒径が0.5μm以上、X線結晶回折(302)面の半値幅(FWHM)が0.30°未満、なおかつNH吸着量が1.2mmol/g以上である請求項1〜2に記載のSCR触媒用β型ゼオライト。
【請求項4】
SiO/Alのモル比が23以上29未満、SEM粒径が0.5μm以上、X線結晶回折(302)面の半値幅(FWHM)が0.30°未満、なおかつNH吸着量が1.2mmol/g以上である請求項1〜3に記載のSCR触媒用β型ゼオライト。
【請求項5】
水熱耐久処理後のX線結晶回折(302)面の半値幅(FWHM)が0.35°未満、NH吸着量が0.4mmol/g以上である請求項1〜4に記載のSCR触媒用β型ゼオライト。
【請求項6】
水熱耐久処理後におけるNOx還元率が200℃で30%以上であるSCR還元触媒。
【請求項7】
水熱耐久処理後におけるNOx還元率が250℃で75%以上である請求項6に記載のSCR触媒。
【請求項8】
担持金属が周期律表のVIII族、IB族の元素群から少なくとも一種の金属である請求項6〜7に記載のSCR触媒。
【請求項9】
担持金属が鉄及び/又は銅を含んでなる請求項8に記載のSCR触媒。
【請求項10】
請求項6〜9のSCR触媒を用いてなる窒素酸化物の還元浄化方法。

【公開番号】特開2008−81348(P2008−81348A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−262303(P2006−262303)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】