説明

SOCにおける電極材料としての使用に適した複合材料

本発明は、固体酸化物セルにおける電極材料としての使用に適した複合材料であって、少なくとも2つの非混和性の混合イオン電子伝導体からなる複合材料に関する。また、固体酸化物セルにおける電極材料としての使用に適した複合材料であって、(Gd1−xSr1−sFe1−yCo3−δ又は(Ln1−xSr1−sFe1−yCo3−δ1(sは0.05以上)[式中、Lnはランタニド元素、Sc又はYである]に基づいており、非混和性である少なくとも2つの相を含み、グリシン硝酸塩燃焼方法によって得ることができる複合材料も提供する。前記複合材料を用いて、少なくとも二相系の形態の電極材料が約600℃において約0.1Ωcmの非常に低い面積比抵抗を示すことを証明することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、固体酸化物セル(SOC)、特に固体酸化物燃料電池(SOFC)又は固体酸化物電解槽セル(SOEC)における電極材料としての使用に適した複合材料に関する。SOFC又はSOECは固体酸化物電解質及び2つの電極からできており、当該電極のうち少なくとも1つは前記複合材料を含む。
【0002】
[背景技術]
固体酸化物セルとして、一般には、種々の用途のために設計されたセル、例えば、固体酸化物燃料電池又は固体酸化物電解槽セルが挙げられる。これらのタイプのセルは当該技術分野で公知である。典型的には、固体酸化物セルは2つの電極層に挟まれた電解質層を含む。動作の間、約400℃〜約1100℃の温度が用いられる。一方の電極は空気と接触しており、他方の電極は燃料ガスと接触している。
【0003】
費用の理由から、セルの支持構造にはステンレス鋼などの安価な材料を使用することが望まれる。しかし、そのような材料は、800℃未満でのみ長時間安定である。そのような温度では、LSM(ストロンチウム置換ランタンマンガナイト)から形成される最も一般的なカソードが十分な活性を有さないため、他の材料が必要とされている。W.G.Wang、R.Barfod、P.H.Larsen、K.Kammer、J.J.Bentzen、P.V.Hendriksen、M.Mogensen、2003年4月27日〜5月2日、パリでの固体酸化物燃料電池(SOFC−VIII)についての第8回国際シンポジウムの声明、S.C.Singhal、M.Dokiya(編)、p.400−408(The Electrochemical Society、Pennington、NJ)(Proceedings volume PV 2003−07)を参照のこと。
【0004】
LSMより高い活性を有する他の電極材料が知られている。そのようなカソードの例は、La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.23−δとセリウムガドリニウム酸化物(CGO)の複合体である。そのようなカソードの面積比抵抗(ASR)は、600℃で約0.3Ωcmである。E.P.Murray、M.J.Sever、S.A.Barnett、Solid State Ionics、148 27(2002)を参照のこと。La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.23−δの円錐形電極について測定すると、ASRは、600℃で約100Ωcmである。K.Kammer、Solid State Ionics、177 1047(2006)を参照のこと。
【0005】
Gd0.8Sr0.2Co1−yFe3−δ(0≦y≦1.0)系の組成物では、安定な二相ペロブスカイト系を示すこともあり得る−前記材料は、固体酸化物燃料電池用に提案されている。C.R.Dyck、R.C.Peterson、Z.B.Yu、V.D.Krstic、Solid State Ionics、176 103−108(2005)を参照のこと。
【0006】
Yuan Ji、Jiang Liu、Tianmin He、Ligong Cong、Jinxia Wang、Wenhui Su、Journal of Alloys and Compounds、353 257−262(2003)は、単一の中温用SOFCに関する。燃焼合成法であるグリセリン−硝酸塩プロセスを用いて、単一SOFCで用いられる全てのナノサイズの材料を調製した。
【0007】
CGO電解質において600℃で0.19Ωcm及び700℃で0.026ΩcmのRが得られる高性能のLSCF/CGO複合体カソードが製造されてきた。Wei Guo Wang、Mogens Mogensen、Solid State Ionics、176 457−462(2005)を参照のこと。
【0008】
G.Ch.Kostogloudis、G.Tsiniarakis、Ch.Ftikos、Solid State Ionics、135 529−535(2000)は、ペロブスカイト酸化物であるSOFCカソードとイットリア安定化ジルコニアとの化学反応性に関する。
【0009】
従来技術によって得ることができる複合体La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.23−δ/CGOのASR値は常套のLSMカソードの値の1/3未満であるが、600℃でのASRは多くの用途にとって依然として高すぎるため、より低いASR値を有する新規の電極を開発することが強く望まれる。
【0010】
[発明の概要]
本発明は、SOCにおける電極材料として適した複合材料に関する。複合材料は、少なくとも2つの非混和性の混合イオン電子伝導体(MIEC)からなる。
【0011】
本発明は、さらに、固体酸化物セルにおける電極材料としての使用に適した複合材料であって、(Gd1−xSr1−sFe1−yCo3−δ又は(Ln1−xSr1−sFe1−yCo3−δ(sは0.05以上)[式中、Lnはランタニド元素、Sc又はYである]に基づいており、非混和性である少なくとも2つの相を含み、グリシン硝酸塩燃焼方法によって得ることができる複合材料に関する。
【0012】
本発明は、第2の態様において、前記複合材料を含む、SOCでの使用に適した電極に関する。
【0013】
第3の態様において、本発明は、SOCにおける電極材料のための前記複合材料の使用に関する。
【0014】
第4の態様において、本発明は、前記複合材料の電極材料を含むSOCに関する。
【0015】
好ましい実施形態は、下位請求項及び以下の詳細な説明に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による二相(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δ系複合電極の微細構造を示す。
【図2】円錐形電極の(Gd1−xSr0.99Fe0.8Co0.23−δ系カソードのASR値を600℃において空気中で測定したxの関数として示す。
【図3】600℃において空気中で円錐形電極について測定した二相(Gd0.6Sr0.41−sFe0.8Co0.23−δカソードのASRに対するA部位の非化学量論量の効果を示す。
【図4】600℃において空気中で円錐形電極について測定した二相(La0.6Sr0.41−sFe0.8Co0.23−δカソードのASRに対するA部位の非化学量論量の効果を示す。0.05以上のsを有する化合物は、少なくとも二相の化合物である。
【図5】600℃において空気中で測定した(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δ/CGO複合カソードの電気化学インピーダンススペクトルの例を示す。ASRは非常に低いことが分かる。
【図6】粒子状ペロブスカイト相(P)及び粒子状電解質相(I)を含む構造を模式的に示す。三相境界を追加の線によって示す。
【図7】2つの相の混合イオン電子伝導体(P1及びP2)を含む粒子状ペロブスカイトを含む本発明による構造を模式的に示す。三相境界を追加の線によって示す。
【0017】
[発明の詳細な説明]
本発明は、固体酸化物セルにおける電極材料としての使用に適した複合材料であって、少なくとも2つの非混和性の混合イオン電子伝導体(MIEC)からなる複合材料に関する。本発明において、MIECは、SOFC電極動作条件下で10−3S/cm以上の比イオン伝導率及び10−2S/cm以上の比電子伝導率の両方を有する材料を意味する。
【0018】
本発明の複合材料は、有利にも、約0.1Ωcmの非常に低い面積比抵抗を有し、約600℃の低い動作温度でのSOCにおける電極材料としての使用に特に適している。
【0019】
したがって、本発明の複合材料の性能は従来技術から現在まで知られている材料の性能よりも優れており、また、有利にもSOCの動作温度の低下を可能にするため、結果として長寿命のSOCをもたらす。さらに、温度抵抗の要件が低くなるため、より多数の材料をSOCに用いることができる。
【0020】
本発明の複合材料は、当業者に周知されているグリシン硝酸塩燃焼方法によって得ることができる。一般に、前記方法において、前駆体溶液を各々の金属硝酸塩及びグリシンから調製し、次いで自己発火点まで加熱する。グリシンは燃焼用燃料及び錯化剤として機能して、燃焼前の個々の成分の不均一な沈殿を防止する。
【0021】
グリシン硝酸塩燃焼方法についての詳細は、とりわけ、L.A.Chick、L.R.Pederson、G.D.Maupin、J.L.Bates、L.E.Thomas、G.J.Exarhos、Materials Letters、10 6(1990);及びL.R.Pederson、G.D.Maupin、W.J.Weber、D.J.McReady、R.W.Stephens、Materials Letters、10 437(1991)に見出すことができる。
【0022】
有利にも、本発明の複合材料において、少なくとも2つの相のうち第1の相が相対的に大きい粒径を有し、少なくとも2つの相のうち第2の相が相対的に小さい粒径を有することが見出された。第2の相のより小さい粒子は、第1の相の相対的により大きい粒子の表面に位置する。より具体的には、少なくとも2つの相のうち第1の相の粒径は、約0.5〜60μm、好ましくは約1〜50μm、より好ましくは約2〜40μmの粒径を有する。少なくとも2つの相のうち第2の相は0.5μm未満の粒径を有し、ここで、第2の相の粒子は第1の相の粒子の表面に位置する。
【0023】
図6及び7に示すように、本発明の複合材料の特有の微細構造は三相境界の面積を増大させて、電極の電気化学性能の向上をもたらす。三相境界は、2つの固体混合イオン電子伝導体が互い及び気相に接する境界として定義される。また、酸素の還元に利用可能な活動面積は、第2の相の小さい粒径により増大する。
【0024】
本発明をいずれの特定の理論にも限定することなく、本発明のカソードが少なくとも2つの相の混合伝導体を含む材料からなると考えられており、ここで、前記相のいずれも電子及びイオンの両方を伝導することができ、前記相の少なくとも2つは、プロトン又は酸化物イオンなどのイオン及び電子の優れた伝導体であり、また、微細構造が大きな三相接触表面及びより大きな表面積を与える。図6には、粒子状ペロブスカイト相(P)及び粒子状電解質相(I)を含む構造が示されており、また活性ペロブスカイト粒子の三相境界領域長さ及び幅も示している。
【0025】
図7には、2つの相の混合伝導体(P1及びP2)を含む粒子状ペロブスカイトを含む構造が示されており、ここで、前記相のいずれも電子及びイオンの両方を伝導することができ、前記相の少なくとも2つは、プロトン又は酸化物イオンなどのイオン及び電子の優れた伝導体であり、また、活性ペロブスカイト粒子の三相境界領域長さ及び幅が図6に示す実施形態の三相接触表面より明らかに大きいことも示している。
【0026】
好ましくは、少なくとも2つの非混和性の混合イオン電子伝導体のうち少なくとも2つが組成式(Gd1−xSr1−sFe1−yCo3−δを有する材料を含む。式中、xは好ましくは約0〜1、より好ましくは約0.1〜0.5、最も好ましくは02.〜0.3である。Yは、好ましくは約0〜1、より好ましくは約0.1〜0.5、最も好ましくは02.〜0.3である。
【0027】
また、好ましくは、少なくとも2つの非混和性の混合イオン電子伝導体のうち少なくとも2つが組成式(Ln1−xSr1−sFe1−yCo3−δ[式中、Lnはランタニド元素、Sc又はYである]を有する材料を含む。式中、xは好ましくは約0〜1、より好ましくは約0.1〜0.5、最も好ましくは02.〜0.3である。Yは、好ましくは約0〜1、より好ましくは約0.1〜0.5、最も好ましくは02.〜0.3である。
【0028】
本発明はまた、固体酸化物セルにおける電極材料としての使用に適した複合材料であって、(Gd1−xSr1−sFe1−yCo3−δ又は(Ln1−xSr1−sFe1−yCo3−δ(sは0.05以上)[式中、Lnはランタニド元素、Sc又はYである]に基づいており、非混和性である少なくとも2つの相を含み、グリシン硝酸塩燃焼方法によって得ることができる複合材料も提供する。式中、xは好ましくは約0〜1、より好ましくは約0.1〜0.5、最も好ましくは02.〜0.3である。Yは、好ましくは約0〜1、より好ましくは約0.1〜0.5、最も好ましくは02.〜0.3である。
【0029】
本発明の複合体を得るためにグリシン硝酸塩燃焼方法を使用することにより、上記に概説した特有の構造が得られる。
【0030】
さらに好ましい実施形態において、複合材料は、(Gd1−xSr1−sFe1−yCo3−δ、より好ましくは(Gd0.6Sr4.41−sFe0.8Co0.23−δに基づいている。
【0031】
本発明による複合材料は、さらに好ましくは多孔質材料であってよい。このことは、高性能が望まれる場合に特に有利である。
【0032】
また、複合材料が、ドープセリウムガドリニウム酸化物などの粒子状固体電解質材料をさらに含むことが好ましい。特に好ましい材料は、Ce0.9Gd0.11.95(CGO10、ローディア(Rhodia))である。
【0033】
第2の態様において、本発明は、SOC用電極として使用するための電極に関し、ここで、当該電極は、上記複合材料を含む。電極に複合材料を用いることにより、SOCの動作温度を600℃又はさらに低い動作温度にまで低下させることができる。
【0034】
また、本発明の特定の複合材料により、電極が、有利にも、各々2つ(又はそれより多く)の単相ペロブスカイトと比較して優れた電気化学性能を有する。したがって、本発明の複合材料の特有の微細構造は、SOCにおける酸素の還元又は水素の酸化に関して高い電気化学性能を達成するのに必須である。
【0035】
別の態様において、本発明は、SOC、特にSOFC用の電極材料としての前記複合材料の使用に関する。
【0036】
本発明はまた、前記複合材料を含む電極を含むSOCにも関する。有利なことに、本発明の複合材料を電極用材料として用いるとき、動作温度を低下させることができる。結果として、高温による材料の変性を低減することができる。さらに、複合材料は、他の要素のための材料の選択をより自由にし、低コスト材料の使用を容易にし、さらにセルの全体としてのコスト低減に寄与する。
【0037】
以下、本発明を実施例によって説明するが、本発明がこれらに限定されることを意図していない。
【0038】
材料及び方法
実施例1
本発明による「(Gd0.6Sr0.99Fe0.8Co0.23−δ」ペロブスカイトの調製
組成(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δを有する鉄コバルト系ペロブスカイトの粉末を、L.A.Chick、L.R.Pederson、G.D.Maupin、J.L.Bates、L.E.Thomas、G.J.ExarhosによってMaterials Letters、10 6(1990)に開示されているグリシン硝酸塩燃焼経路を用いて調製した。
【0039】
出発材料として金属硝酸塩の水溶液を用いた。用いた全ての硝酸塩は、99%以上の純度を有した。適切な金属硝酸塩溶液を適切な比でビーカーにおいて混合し、次いで当該溶液にグリシンを添加した。次いで溶液が発火するまで溶液をホットプレート上で加熱した。最後に、得られた粉末を1100℃/12時間で焼成した。粉末XRDを実施して、CuKα放射によるStoe粉末回折計を用いて合成化合物の純度を検証した。
【0040】
円錐形電極の調製
錐体の製造のために、10mmの直径を有するシリンダを、適切なダイを用いて単軸方向に押した。シリンダを60〜65トンの圧力で平衡に押した。その後シリンダを1250℃/12時間で焼結した後、ダイヤモンド工具を用いることにより機械加工して錐体にした。焼結後のシリンダの密度をアルキメデスの方法によって決定した。シリンダの密度はXRDから測定した値の90%を超えた。
【0041】
電気化学測定用の錐体を、ダイヤモンド工具でシリンダを機械加工することによって作製した。
【0042】
電解質として、Ce0.9Gd0.11.95(CGO10、ローディア)のペレットを用いた。CGO10ペレットを以下のように製造した:CGO10粉末をボールミルにおいてエタノールを用いてステアリン酸及びグリセリンと共に一晩混合した。混合物を乾燥させた後にダイで押した。ペレットを1500℃/2時間で焼結させた。
【0043】
対/参照電極として銀電極を用いた。電気化学測定には、ソーラートロン(Solartron)1260ゲインフェーズアナライザを用いた。
【0044】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)により1MHz〜0.05Hzの周波数範囲で10進ごとに5点を測定して記録した。測定を、最も高い温度から始めて800、700及び600℃で実施した。データの記録の前に、サンプルを所定の温度で24時間平衡化した。EISにより得られたデータをPC−DOSプログラムequivcrt(B.A.Boukamp、「equivcrt」、University of Twente(1996))において処理した。高周波での切片から、接触面積をニューマン(Newman)式(J.Newman、J.Electrochem.Soc.、113 501(1966)):
【数1】


(式中、Rは高周波での実軸との切片であり、σは、電解質の比伝導率である)を用いて決定した。円錐形電極の微細構造を、JEOL JSM−840走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて調べた。
【0045】
組成物の粉末X線回折(XRD)を行い、(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δ化合物が少なくとも二相系であり、一方が斜方晶相、一方が立方ペロブスカイト相であることを示した。
【0046】
この複合カソードの電気化学性能は、単相材料(La0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δの約100Ωcmと比較して非常に高い、すなわち円錐形電極について空気中600℃で測定して約0.89Ωcmであることが見出された。
【0047】
組成(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δを有する錐体のSEM写真を図1に示す。得られた錐体は特有の微細構造を有しており、一方の相は相対的に大きい粒径を有し、他方の相は相対的に小さい粒径を有し、第2の相のより小さい粒子は、第1の相の相対的により大きい粒子の表面に位置する。2つの相はよく分離していることが分かる。
【0048】
エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて2つの相の組成を決定した。2つの相の組成は、それぞれ以下の通りであった:Gd0.49Sr0.51Fe0.79Co0.243−δ及びGd0.76Sr0.24Fe0.75Co0.223−δ
【0049】
2つの個々の相の電気化学性能を評価するために、純相を合成した。得られた2つの相は粉末XRDによって検証されるように単相材料であった。これら2つの相を合成した後、2つの相の電気化学性能を、ASRの決定により円錐形電極技術を用いて評価した。これら2つの相及び個々の組成を有する錐体の電気化学性能は、以下の表1に記載のASR値から明らかであるように、複合カソードの性能よりもかなり低かった。
【0050】
結果は、複合ペロブスカイトを作製するときに形成される特有の微細構造がこのタイプのSOFCカソードの優れた電気化学性能に必須であることを示す。
【0051】
【表1】

【0052】
得られたカソードが少なくとも2つのペロブスカイト相からなること及び複合カソードが2つの個々の相よりもかなり優れた特性を有することを検証することができ、二相系の特有の微細構造が、SOFCにおける酸素の還元のための高い電気化学性能を得るのに必須であることを示している。
【0053】
実施例2
本発明による鉄コバルト系ペロブスカイトの調製
実施例1のグリシン硝酸塩燃焼経路を用いて、以下の組成を有するさらなるペロブスカイト粉末を調製及び試験した。
粉末2:(Gd1−xSr0.99Fe0.8Co0.23−δ(式中、x=0.2、0.3、0.4、0.5)
【0054】
全てのサンプルの相純度を、粉末XRDを用いて検証した。
(Gd1−xSr0.99Fe0.8Co0.23−δ系が二相系(2つのペロブスカイト相)であることが見出された。
【0055】
実施例1で説明したように、測定を円錐形電極について実施した。結果は図2で見ることができる。図2は、円錐形電極の(Gd1−xSr0.99Fe0.8Co0.23−δ系カソードのASR値を600℃において空気中で測定したxの関数として示す。ASR値は、全ての化合物について相対的に低い。
【0056】
実施例3
本発明による鉄コバルト系ペロブスカイトの調製
実施例1のグリシン硝酸塩燃焼経路を用いて、以下の組成を有するさらなるペロブスカイト粉末を調製及び試験した。
粉末3:(Gd0.6Sr0.41−sFe0.8Co0.23−δ(式中、s=0.01、0.05、0.1、0.15、0.20)
【0057】
全てのサンプルの相純度を、粉末XRDを用いて検証した。
(Gd0.6Sr0.41−sFe0.8Co0.23−δ系が二相系(2つのペロブスカイト相)であることが見出された。
【0058】
実施例1で説明したように、測定を円錐形電極について実施した。結果は図3で見ることができる。全ての組成物が、単相化合物(La0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δのASRをはるかに下回って低いASRを有することが観測される。しかしながら、強いA部位の不完全なペロブスカイトは、s=0.01を有するペロブスカイトより高いASRを有した。
【0059】
図3は、600℃において空気中で円錐形電極について測定した二相(Gd0.6Sr0.41−sFe0.8Co0.23−δカソードのASRに対するA部位の非化学量論量の効果を示す。ASRは当該材料のA部位の非化学量論量に非常に敏感であり、ASRはs=0.01を有する化合物について最も低い。しかしながら、全ての化合物のASR値は、単相化合物(La0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δのASR値より低い。
【0060】
実施例4
本発明による鉄コバルト系ペロブスカイトの調製
実施例1のグリシン硝酸塩燃焼経路を用いて、以下の組成を有するさらなるペロブスカイト粉末を調製及び試験した。
粉末4:(La0.6Sr0.41−sFe0.8Co0.23−δ(式中、s=0.01、0.05、0.10、0.15、0.20)
【0061】
全てのサンプルの相純度を、粉末XRDを用いて検証した。
(La0.6Sr0.41−sFe0.8Co0.23−δ系が、sが0.05以上の二相系(2つのペロブスカイト相)であることが見出された。
【0062】
実施例1で説明したように、測定を円錐形電極について実施した。結果は図4で見ることができる。全ての組成が、単相化合物(La0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δのASRをはるかに下回って低いASRを有することが観測される。しかしながら、強いA部位の不完全なペロブスカイトは、s=0.05を有するペロブスカイトより高いASRを有した。
【0063】
図4は、600℃において空気中で円錐形電極について測定した二相(La0.6Sr0.41−sFe0.8Co0.23−δカソードのASRに対するA部位の非化学量論量の効果を示す。sが0.05以上である化合物は、少なくとも二相の化合物である。これらの化合物は、単相化合物(La0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δのASR値より低いASR値を有することが分かる。
【0064】
実施例5
本発明による鉄コバルト系ペロブスカイトの調製
実施例1のグリシン硝酸塩燃焼経路を用いて、以下の組成を有するさらなるペロブスカイト粉末を調製及び試験した。
粉末5:(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δ
【0065】
全てのサンプルの相純度を、粉末XRDを用いて検証した。
(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δ系が二相系(2つのペロブスカイト相)であることが見出された。
【0066】
(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δとCGO10との混合物を含む対称セルを以下のように調製した。前記ペロブスカイト及びCGO10の粉末をボールミルにおいて溶媒及び有機化合物と混合した。得られたスラリーをCGO10テープの両側に噴霧し、加熱炉で焼結させた。
【0067】
得られたサンプルの測定を以下のように実施した。Ptペーストを集まった電流としてセルの両側に添加した。次いでセルを、Ptメッシュを有する装置(setup)に置き、ばねで荷重をかけた。次いで実施例1に説明したように測定を開始した。
【0068】
図5に、(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δ/CGO10複合カソードにおいて600℃で記録したインピーダンススペクトルを示す。ASRは約0.16Ωcmであり、さらにより低い値が他の組成の(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δ/CGO10複合カソードについて見られた。これは、La0.6Sr0.4Fe0.8Co0.23−δ/CGO10カソードのASRより低い。
【0069】
図5は、600℃において空気中で測定した(Gd0.6Sr0.40.99Fe0.8Co0.23−δ/CGO複合カソードの電気化学インピーダンススペクトルの例を示す。ASRが非常に低いことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物セルにおける電極材料としての使用に適した複合材料であって、少なくとも2つの非混和性の混合イオン電子伝導体からなる複合材料。
【請求項2】
少なくとも2つの非混和性の混合イオン電子伝導体のうち少なくとも2つが、組成式(Gd1−xSr1−sFe1−yCo3−δ(sは0.05以上)を有する材料を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
少なくとも2つの非混和性の混合イオン電子伝導体のうち少なくとも2つが、組成式(Ln1−xSr1−sFe1−yCo3−δ(sは0.05以上)[式中、Lnはランタニド元素、Sc又はYである]を有する材料を含む、請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
固体酸化物セルにおける電極材料としての使用に適した複合材料であって、(Gd1−xSr1−sFe1−yCo3−δ又は(Ln1−xSr1−sFe1−yCo3−δ(sは0.05以上)[式中、Lnはランタニド元素、Sc又はYである]に基づいており、非混和性である少なくとも2つの相を含み、グリシン硝酸塩燃焼方法によって得ることができる複合材料。
【請求項5】
少なくとも2つの相のうち第1の相が0.5〜60μmの粒径を有し、少なくとも2つの相のうち第2の相が0.5μm未満の粒径を有し、ここで、第2の相の粒子が第1の相の粒子の表面に位置する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項6】
粒子状固体電解質材料をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項7】
電解質材料が、ドープセリウムガドリニウム酸化物である、請求項6に記載の複合材料。
【請求項8】
多孔質である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合材料。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合材料を含む、固体酸化物セル用電極。
【請求項10】
固体酸化物セル用電極材料としての請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合材料の使用。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合材料を含む電極を含む固体酸化物燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−517246(P2010−517246A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547583(P2009−547583)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000598
【国際公開番号】WO2008/092608
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(507018838)テクニカル ユニヴァーシティー オブ デンマーク (11)
【Fターム(参考)】