説明

SOFCインターコネクタのための保護酸化物皮膜

CuMn1.8のような密度がありそして良く付着されるスピネル皮膜は、電気泳動堆積によってステンレス鋼基板上に堆積されるとき、昇温でコーティングされていない鋼に比べて鋼の酸化速度を著しく減らす。保護酸化物スピネル皮膜は800℃で長期間の安定性をもつ固体酸化物型燃料電池インターコネクタを提供するために有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連申請の相互参照)
この申請は優先権のある「SOFCインターコネクタのための保護酸化物皮膜」の名称で2007年8月2日に申請されたUS予備申請番号60/963,042をここに参照して組み入れられる。
【0002】
(発明の背景)
固体酸化物型燃料電池(SOFS)は高エネルギー変換効率、低汚染物放出、および高燃料融通性により顕著な関心を集めている。SOFSに関する最近の研究は650−850℃に操作温度を下げることを目的としている。これは高温(〜1000℃)のSOFSスタックで使用される従来のセラミックインターコネクタ材料の代わりに耐酸化合金の使用を可能とする(文献1−9)。金属インターコネクタは低材料価格、優れた機械的性質、高熱伝導度および広面積に適用できる容易な製造工程を含む多くの利点をもっている。しかしながら、これらの寿命は表面に形成される酸化物のスケール、特にCr(クロミア)の電導度によって制約される。クロミアは電気的に絶縁材であり、燃料電池の性能に有害な高接触抵抗を導く。付け加えると、揮発性のCrの種類が温度およびHOおよびOの分圧に依存して、Crのスケールから放出される(文献10)。SOFCのカソードで揮発性Crの種類、特にCrO(OH)の存在がカソード゛および/あるいはカソード/電解質表面の急速な被毒および性能退化を引き起こすことが知られている(文献11)。
【0003】
インターコネクタは燃料電池スタックの極めて重要な部品でありそして電池のアノードを隣接電池のカソードに接続する。これは600〜800℃の範囲の高温で厳しい環境、すなわちカソード側で大変な酸化条件そしてアノード側で還元条件に曝される。クロムおよびニッケルベースの合金は現在インターコネクタ材料として使用されるが、しかしこれらはこれらの条件、特にカソード側で、低い導電性の酸化物スケールを形成する。以前に提案されている保護皮膜層はSrを注入したランタンマンガナイト、フェライトおよびクロマイトのような導電性のペロブスカイト組成物の皮膜を含んでおり、これらはSOFCのカソードおよびインターコネクタ材料としてしばしば使用される(文献6、13)。保護スピネル皮膜はまた研究されてきた。ステンレス鋼上のスピネル層の以前の研究は(Mn、Co)スピネル皮膜層がクロム移動に期待のできる障壁であることを示した(文献14−16)。銅−マンガンスピネルは高い電気導電性および燃料電池操作温度で釣り合う熱膨脹導係数を示す(文献17、18)。
【0004】
このように、必要性は電気導電性がありそして酸化物層成長速度を抑制する酸化物皮膜組成物に対して存在する。
【0005】
(発明の概要)
本発明はステンレス鋼のようなフェライト合金上に電気泳動堆積によって製造される電気導電性保護皮膜を提供する。皮膜はCu(x)Mn(y)(z)のようなスピネル化合物、ここでx=1、1.6≦y≦2.4そしてz=4を含む。望ましい実施態様において、保護皮膜はCuMn1.8を含む。
【0006】
本発明の他の観点は固体酸化物型燃料電池のための電気インターコネクタデバイスである。インターコネクタデバイスはステンレス鋼基板そして基板上に堆積される保護酸化物皮膜を含む。保護皮膜はCu(x)Mn(y)(z)のようなスピネル化合物、ここでx=1、1.6≦y≦2.4そしてz=4を含む。望ましい実施態様において、保護皮膜はCuMn1.8を含みそしてステンレス鋼基板はCrofer 22 APUである。
【0007】
本発明のなお他の観点はフェライト合金上に電気導電性保護膜を堆積する方法である。方法はスピネル化合物の液体の懸濁液に浸漬されるフェライト合金基板の提供を含む。望ましい実施態様において、スピネル化合物は式Cu(x)Mn(y)(z)をもち、ここでx=1、1.6≦y≦2.4そしてz=4である。スピネル化合物は液体懸濁液に浸漬された基板および電極間の直流電圧を供給することにとよって基板上に電気泳動で堆積される。得られたコーティングされた基板は固体酸化物型燃料電池インターコネクタとして利用される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
(図面の簡単な説明)
本発明の他の特徴および利点は、付帯する図面と結びつけられ、これらの望ましい実施態様の明細書および請求項から明らかになる。
図1A−1Cは本発明に従う保護酸化物皮膜でSOFCインターコネクタの異なる実施態様の断面図である;
図2は本発明に従う保護酸化物皮膜を製造する工程の図式表示である;
図3は堆積されたとき(トレース(a))、空気中で800℃で100hr焼きなまされた後(トレース(b))、800℃で空気中で200hr焼きなまされた後(トレース(c))および800℃で空気中で200hr等温酸化の後、コーティングされていないCrofer 22 APUステンレス鋼(トレース(d))の電気泳動堆積CuMn1.8のX線回折研究の結果を示す;
図4Aおよび4Bは低い(図4A)および高い(図4B)拡大でCrofer 22 APUステンレス鋼上のスピネル皮膜の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示す;
図5Aおよび5Bは800℃(図4A)および750℃(図4B)で等温酸化の期間、コーティングされていないCrofer 22 APU(白抜き)およびCuMn1.8でコーティングされた同じ材料(塗りつぶし)の重量取得を示す;
図6A−6Eは800℃で120hr等温酸化後、非保護Crofer 22 APUの元素分布マップを示す;図6Aは参考としてSEMを示し、そして残りの図はFe(図6B)、Cr(図6C)、Mn(図6D)およびO(図6E)の分布を示す;
図7A−7Fは800℃で100hr焼きなまし後、CuMn1.8−保護Crofer 22 APUの元素分布マップを示す;図7Aは参考としてSEMを示し、そして残りの図はFe(図7B)、Cr(図7C)、Cu(図7D)、Mn(図7E)およびO(図7F)の分布を示す;
図8A−8Fは800℃で120hrの酸化のさらなる期間後、図7のCuMn1.8−保護Crofer 22 APUの元素分布マップを示す;図8Aは参考としてSEMを示し、そして残りの図はFe(図8B)、Cr(図8C)、Cu(図8D)、Mn(図8E)およびO(図8F)の分布を示す;
図9Aおよび9Bは非保護の酸化層(図9A)および酸化の120hr後、CuMn1.8−保護(図9B)Crofer 22 APUの図式表示を示す。
図10は示されるように800℃で処理後、非処理のCrofer 22 APUあるいはCuMn1.8−保護のいずれかのCrofer 22 APUの面比抵抗(ARP)を示す。
【0009】
(詳細説明)
SOFCインターコネクタのための保護酸化物皮膜の名称で2007年8月2日に申請されたシリーズNo.60/963,042をもつUS予備申請がその全部を参照としてここに組み込まれる。
【0010】
本発明は固体酸化物型燃料電池のインターコネクタ材料に使用される金属合金に適用される保護酸化物皮膜を提供する。皮膜は電気泳動堆積技術を使用して金属合金上に適用されそして酸化物層形成の動力学を抑え、かくしてインターコネクタ材料および燃料電池スタックの寿命を延ばす。本発明はまた固体酸化物型燃料電池インターコネクタとして低費用のステンレス鋼の使用を可能とし、それにより全体のスタック費用を低減する。本発明の保護酸化物皮膜はカソード内へのクロム拡散を抑制することを期待される。
【0011】
図1を参照して、SOFCインターコネクタ10は異なる構造の保護酸化物皮膜でコーティングされた。図1Aはフェライト合金からなる基板が保護酸化皮膜30で片側あるいは片面上にコーティングされた。例えば、基板は燃料電池スタック内でカソード表面と接触する側、あるいはアノード表面と接触する側、あるいは電極を含む区画と接触する側上にのみコーティングされた。図1Bは基板20が保護酸化物皮膜30で2つの面上にコーティングされた実施態様を示す。例えば、この実施態様において、基板20はアノード表面と接触する側、あるいは電極を含む区画と接触する側、あるいはこれらの如何なる対の組み合わせも同様に燃料電池スタック内でカソード表面と接触する側にコーティングされた。図1Cは基板20が基板、これはインターコネクタである、の全ての曝露表面上に保護酸化物皮膜30で取り囲まれる望ましい実施態様を示す。望ましくは、膜は基板を空気に曝露したりあるいはインターコネクタ表面の導電度を制限する隙間が残らないように堆積される。
【0012】
本発明に従う保護酸化物皮膜は電気泳動堆積(EPD)によって適用されるスピネル皮膜である。スピネルは一般構造ABの鉱物組成物であり、ここでAおよびBは二価、三価あるいは四価の陽イオンであり、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、クロム、チタンおよびシリコンを含む。望まし実施態様において、スピネル皮膜はCu(x)Mn(y)(z)に相当する組成物をもち、ここでx=1、1.6≦y≦2.4そしてz=4である。さらに望ましくは、スピネル皮膜はCu(x)Mn(y)(z)に相当する組成物をもち、ここでx=1、1.8≦y≦2.0そしてz=4である。望ましい実施態様において、スピネル皮膜は式CuMn1.8をもつ。組成物同族Cu(x)Mn(y)(z)の他の変形はx=1、z=4そしてy=1.7、1.9、2.1、2.2あるいは2.3である。本発明の保護酸化物皮膜に使用される他のスピネル化合物の実施例はMnCo、Mn1.5Co1.5、LaCrO、NiCrO、La0.8Sr0.2MnO、La0.8Sr0.2CrO、La0.8Sr0.2FeO、La0.67Sr0.33MnO、(La0.8Sr0.150.9MnO、La0.9Sr0.1CrO、La0.6Sr0.4CoO、La0.6Sr0.4CrO、およびYCa1−xMnO(ここで0.1<x<0.4)を含む。
【0013】
皮膜は堆積技術の範囲を使用するインターコネクタとして利用される合金の表面上に堆積される。望ましい堆積技術は電気泳動堆積(EDP)である。熱溶射、焼結を伴うスクリーン印刷、焼結を伴う空気溶射あるいはスパッタリングのような他の堆積技術が、Cu(x)Mn(y)(z) に相当するスピネル化合物、ここでx=1、1.6≦y≦2.4そしてz=4であるような保護スピネル層を堆積するために使用される。
【0014】
SOFCインターコネクタに適用される保護皮膜層はクロム移動をクロムを含む金属基板から防ぐために障壁として作用することを目指しており、一方、カソードとインターコネクタの間の面比抵抗に対する中間面接触の寄与を最小にすることを目指している(文献12)。
【0015】
本発明に従う保護酸化皮膜の堆積用の基板として採用するフェライト合金はステンレス鋼のようないかなるフェライト合金でもある。SOFCインターコネクタとして使用するために、フェライト合金は、望ましくは、800℃の桁の高温で酸化に耐性で、安定であり、そしてSOFCスタックの他の材料と同様の熱膨脹係数をもつ。望ましくは、フェライト合金はステンレス鋼430、444、および446型のような400系ステンレス鋼のようなフェライトステンレス鋼である。特にThyssenKrupp VDM GmbH(ドイツ)によって製造されたCrofer 22 APU(UNSS44535)、日立金属株式会社(日本)によって製造されたZMG232、Allegheny Ludlum Corp.(USA)によって製造されたEbrite(UNS44627)が望ましい;これらはSOFCインターコネクタとして使用のために特に設計された高温合金である。
【0016】
本発明の保護酸化物皮膜で使用する基板あるいは方法は保護皮膜が適用された後、引き続く使用のために要求される何らかの形状あるいは幾何的模様をもっている。もし、例えば、コーティングされた基板がSOFCインターコネクタとしての利用を意図するならば、平板、電解用溶液、燃料あるいは酸化剤のために片側あるいは両側に溝をもつ板、あるいは与えられる燃料電池スタックの幾何的模様によって要求されるどのような形状をも含む適用と一致するいかなる形状をももつ。
【0017】
フェライト合金の酸化保護を要求する応用は原理的に本発明に従う保護皮膜を採用する。特に、本発明に従う保護酸化皮膜層は腐食抵抗そして同時に電気導電表面の維持を要求するいかなる応用にも使用されることができる。例えば、本発明の皮膜および方法は高熱のような極端な条件に曝露される機械あるいは電子部品を準備し、そして電気導電表面、酸化抵抗、基板からCrのような元素の移動に対する抵抗を要求するために使用される。
【0018】
数多くの試みがインターコネクタおよび皮膜材料上に保護層を適用するために使用される。これらは、例えば、プラズマ溶射(文献19)、電子ビーム物理蒸着(EB−PVD)(文献20)、および高周波マグネトロンスパッタリング(文献21)を含む。しかしながら、これらの工程は一般的に高い資本装置費のために高価である。これに対して、コロイド堆積ルートは簡単でそして費用の掛からない方法で、そして、例えば、先進セラミックス加工に使用されてきている(文献22)。電気泳動堆積方法(EPD)は液体媒体に分散した荷電粒子が直流電場の適用で導電性でそして反対荷電電極上に引き付けられそして堆積するコロイドの製造工程である。EPDは短い堆積時間、基板の形状に制約なく、簡単な堆積装置および大量生産による容易な拡大性の利点をもつ。特にEDPは堆積時間および適用電圧の簡単な調節により堆積膜の厚みおよび組織の容易な制御を提供する(文献23)。例えば、膜厚みを増すために、電場強度が増やされるかあるいは電気泳動堆積時間が増やされるか、あるいは両方が増やされる。水溶液懸濁がもつともしばしば使用されるが、しかし有機物懸濁もまた利用される(文献24−25)。
【0019】
本発明の方法に従って、薄く、高密度、導電性のスピネル皮膜が、EPD方法に使用するフェライトステンレス鋼のようなフェライト合金を含むあるいはフェライト合金から全部作られる基板上に堆積される。本発明に従う皮膜手順は図2に示される。保護皮膜のスピネル化合物は、例えば、約0.01μmから1.0μmの粒子直径範囲、望ましくは、約0.1μmの平均直径範囲をもつ微粒子材料を得るために組成物を▲か▼焼あるいは製粉することに従って要求される割合で適当な混合成分を乾燥混合することによって準備される。粉末化されたスピネル組成物はEPDを実施するために適当な液体あるいは溶液に懸濁される。例えば、液体はアセトン/エタノール(容積で3/1)のような極性有機溶媒と0.6g/Lのヨウ素(I)との混合物である。望ましい有機溶媒は、セラミックス粒子に電気泳動堆積のための電荷を与えるためにセラミックス粒子に付着する陽子を遊離するためヨウ素と反応する溶媒である。任意に、懸濁液は均一性を確実にするために混合され(例えば、超音波で)、いかなる凝集した材料をも分散させ、そしてそれから残りの凝集物が除去されるように沈澱をさせる。スピネル化合物は約0.1g/Lから約5g/Lの範囲の濃度、望ましくは、約1.2g/Lの濃度で分散されなければならない。もし濃度が非常に低ければ、EPDは大変遅くそしてもし濃度が非常に高ければ、著しい量のスピネル化合物が懸濁液に残るよりもむしろ沈澱物を形成する。スピネル化合物の高いあるいは低い濃度の使用はEPD電圧あるいは時間のいずれかを減らすあるいは増やすことによって補償されることができる。EPDを実施する前に、基板は例えば、1200gritまでのSiC紙を使用して任意に研磨される。
【0020】
コーティングされたスピネルは、スピネル懸濁液に、例えば、基板から約1.5cm離して設置されるカソードおよび他の電極(アノード)としてフェライト合金基板間に一定電圧を確立することによって基板上に堆積される。約1から約200Vの範囲、望ましくは約1から50Vの範囲の電圧が使用される;さらに望ましくは、電圧は約20Vである。EPDは約0.1minと約10minの間、望ましくは、5minと100minの間、さらに望ましくは、例えば、約10minのような約5minから30minの間の時間で実施される。電圧および時間は、均一な厚みおよび高密度の皮膜を維持し、望ましくは局部的に皮膜の腐食抵抗を減らす薄いあるいは裸の区域を残す状況を避ける一方、望ましい皮膜を提供するために選ばれるべきである。一般的に、約1μmから約500μmの範囲の厚みが使用される。
【0021】
EPDの段階に続いて、皮膜は任意に高温での焼き鈍しに続いて機械的圧力に掛けられる。焼きなましは少なくとも500℃で少なくとも1hr行われるべきである。例えば、皮膜は850℃で2hr焼きなまされる。焼きなましに続いて、さらに任意の段階が機械的圧力および空気中で高温で延ばされた時間(例えば、800℃、100hr)焼結することを含む。
【0022】
次の実施例は本発明の利点を説明しそして同じものを作りそして使用で通常の技能者を補助するために提供される。これらの実施例は開示の範囲をどのような別な方法でも制約することを意図しない。
【0023】
(実施例1)
22.8Cr、0.45Mn、0.08Ti、0.06La、0.005C、≦0.03P、≦0.03S、残量Fe(重量で)の化学組成物である市販のフェライトステンレス鋼、Crofer 22 APUは皮膜のための基板として使用される。25mm×20mm×0.5mmの寸法のCrofer 22 APU基板は1200gritまでの種々の等級のSiC紙で機械研磨された。皮膜堆積の前に、基板はアセトン中で超音波で清浄化された。
【0024】
推奨の組成物CuMn1.8の粉末は固相反応方法によって準備された。前駆体CuO(99.99%)およびMn(99.9%)の比例する量が完全に混合されそして1000℃で▲か▼焼された。▲か▼焼された粉末は破砕されそしてボールミルされ、その後、手順が繰り返された。この実験で使用された粉末の平均粒子寸法は約0.1μmであった。この研究で使用されたCuMn1.8スピネル懸濁液はヨウ素とアセトン/エタノール(3/1容積比)混合物にスピネル粉末を混合することによって準備された。懸濁液中のCuMn1.8の濃度は1.2g/Lで一定に維持された。CuMn1.8粒子のEPDの前に、懸濁液は20min超音波的に分散され、そしてそれから10min沈澱させられた。電気泳動堆積が一定の電圧20Vで10min行われた。堆積後、皮膜は機械的にプレスされそして800℃で10hr焼結された。
【0025】
(実施例2)
実施例1で製造された皮膜はCu Kα 放射をもつBruker D8 Adovanced XRD システムを使用してX線回折(XRD)によって特徴付けられた。皮膜の均一性は走査電子顕微鏡(SEM)を使用して解析された。酸化はTA Q600熱天秤を使用して熱重量法によって連続的に監視された。
【0026】
図3はEPDによって堆積された皮膜および空気中で800℃で100hr焼結された後の皮膜からの代表的なXRDスペクトルを示す。XRDの結果は堆積された皮膜および空気中で800℃で100hr焼結された皮膜の両方が相−純粋CuMn1.8スピネルに指数化される。XRDピークの位置から、CuMn1.8スピネル相の格子パラメーターは化学量論的に8.305Å(0.8305nm)をもつCuMnのパラメーターより僅かに小さい8.299Å(0.8299nm)であると計算された。
【0027】
800℃で100hr焼結されたCrofer 22 APU基板上のCuMn1.8スピネル皮膜の断面図が図4に示される。試料は走査電子顕微鏡によって可視化するためにエポキシに埋め込まれ、切断されそして研磨された。スピネル皮膜の厚みは約15μmでありそして基板を横断して均一であった。焼結された皮膜は比較的高密度であり、そして界面に積層の剥がれあるいは割れはなく、基板への皮膜の付着は大変良かったことを示している。
【0028】
(実施例3)
実施例1のCuMn1.8をコーティングされたCrofer 22基板上に対する酸化研究の結果が図5に示される。酸化の熱力学測定はTA Q600熱天秤を使用して熱重量法により空気中で750℃あるいは800℃で行われた。コーティングされた鋼の重量取得は非皮膜鋼に比べて大変著しく減少された。コーティングされていない鋼およびコーティングされた鋼の重量取得は時間と近似の放物線状関係に適合される。これは、酸化物スケールの成長が高密度のスケールを通るイオンおよび電子/正孔の結合された拡散によって制御されているとき、予測される関係である。酸化の結果として、重量取得速度d△/dtを特徴付ける速度恒数kは(△W)=ktによって定義される。得られた速度恒数は表1に与えられる。形成されたスケールがCrであると仮定し、そして塊のCrの密度を使用して、重量取得によって得られた放物線状速度恒数は厚さ変化に変換された(文献26)。これらの速度恒数(表1)は750℃および800℃で、コーティングされた鋼がコーティングされていない鋼と比べて実質的に減った酸化をもつことを示す。800℃で50,000hr後、コーティングされたCrofer 22 APUの断定された酸化物の厚みは6.4μmであり、それはコーティングされていないCrofer 22 APU上に形成される酸化物の厚みの1/4の減少に相当する。さらに、皮膜の高密度の性質はCrスケールの蒸発を実質的に減らすと期待され、この皮膜システムを高温SOFCの金属インターコネクタ上の酸化耐性層用に優れた候補物とする。
【0029】
表1 コーティングされていないおよびコーティングされたCrofer 22 APUに対する酸化速度パラメーター

【0030】
(実施例4)
実施例の分布解析はSEM/EDX(SEMエネルギー分光X線解析)によって行われた。図6は800℃で120hr等温酸化の後、非保護Crofer 22 APUの元素分布マップを示す。図6Aは比較目的のためのSEMであり、そしてFe(図6B)、Cr(図6C)、Mn(図6D)及ぶFe(図6E)の分布を示す。表面でMnの多いスピネル酸化物層およびMnの多いスピネル酸化物層の下のCuの多い酸化物層を現すCrofer 22 APUは図3に示されるXRD結果と一致する。
【0031】
図7は800℃で100hr焼結の後、CuMn1.8保護Crofer 22 APUの元素分布マップを示す。図7Aは比較のためのSEMであり、そして図7の残りの部分はFe(図7B)、Cr(図7C)、Cu(図7D)、Mn(図7E)およびO(図7F)の分布を示す。CrおよびMnCrの薄い層が焼結工程の間に鋼およびCuMn1.8皮膜の間に形成された。この混合酸化物層の厚さは約2.1μmであった。以前に提出されたXRDの結果はCuMn1.8の皮膜層による遮蔽のためにこれらの層を示さなかったことに注目せよ。
【0032】
図8は800℃で120hrの酸化のさらなる期間後、図7のCuMn1.8保護Crofer 22 APUの元素分布マップを示す。図8Aは比較のためのSEMでありそして図8の残りの部分はFe(図8B)、Cr(図8C)、Cu(図8D)、Mn(図8E)およびO(図8F)の分布を示す。CrおよびMnCrの層の混合酸化物層がなお存在し、そして図7に示される結果と比較して僅かな厚みの増加を示した。CuMn1.8保護層にCrの存在がなく、保護層が合金から出るCr拡散に効果的な障壁を形成することを示していることに注目せよ。そこにはCr内へのCuの拡散あるいはFeのどのような外への拡散もまたない。
【0033】
(実施例5)
フェライト鋼の熱酸化の本発明に従う保護皮膜の効果が評価された。前に議論したデータに基づいて、熱酸化後、コーティングされたおよびコーティングされていないCrofer 22 APUの構造が図9のように図式に示される。熱酸化後のコーティングされていないCrofer 22 APU(図9A)に対して、酸化物スケールは、MnCrが酸化物スケールの外側表面にあり、そしてCrがMnCrおよび基板の間に形成する。コーティングされたCrofer 22 APUに対して、試料の構造が図9Bに示される。スピネル皮膜(例えば、CuMn1.8)はコーティングされた基板の外側表面にあり、そして熱的に成長した酸化物スケールは皮膜と基板の間にある。
【0034】

【0035】
それで

【0036】
ここで、Rは気体常数であり、Tは温度、pO(空気)は0.21atmでありそしてpO(Cr/alloy)は1.5×10−28atmであり、これはCr+Crの共存に対する既知の熱力学的平衡酸素分圧に近い。以前のデータに従って、800℃で非皮膜および皮膜Crofer 22 APUに対するk値はそれぞれおおよそ10.51×10−2および2.87×10−1/2μmh−1/2である。非皮膜および皮膜Crofer 22 APUに対するK値はそれぞれ4.46×10および1.22×10と評価された。非皮膜Crofer 22 APUに対するK値は必須的にMnCrおよびCr混合層の有効拡散係数である。そして皮膜Crofer 22 APUに対するK値は必須的にスピネル皮膜層そしてMnCrおよびCr混合酸化物スケールの組み合わせ有効拡散係数である。
【0037】
2層システムに対して、K値は直列抵抗として処理される。かくして、これらは次の関係式をもつ。

ここで、δおよびδはそれぞれ皮膜および酸化物の厚みであり、δ+δは皮膜および酸化物の合計の厚みである。Kcoating(皮膜)およびKoxidee(酸化物)はそれぞれ皮膜および酸化物の有効拡散係数である。Kcombined(組み合わせ)は皮膜および酸化物の組み合わせ有効拡散係数である。図8Bに示されるように、皮膜層の厚みは約15μmであり、そしてMnCr+Cr酸化層の厚みは以前のデータに従う約2μmである。皮膜層の有効拡散係数(Kcoating)はおおよそ1.1×10と評価され、これは単にKoxidesの1/4である。これはスピネル皮膜が基板の合金の酸化防止で酸化物スケールよりも著しくもっと効果的であることを意味している。
【0038】
(実施例6)
非皮膜およびCuMn1.8皮膜Crofer 22 APU基板の面比抵抗が研究された。面比抵抗(ASR)はHuangに従って測定された(文献27)。基板の抵抗は熱成長スケールあるいは合金基板の表面上の電気泳動堆積皮膜の抵抗と比較して無視できると考えられた。かくして、測定されたASRはスケールあるいはスケール+皮膜層、およびこれの基板そしてPt電極との界面のASRを含む。使用された電流(0.1A)は比較的小さかったので、界面の分極は無視できた。測定されたASRは、それ故、スケールあるいはスケール+皮膜層の値と考えられた。
【0039】
図10は指示された酸化あるいは焼きなまし/酸化条件後、コーティングされていないおよびCuMn1.8コーティングされたCrofer 22 APU基板に対するASR/T対1000/Tのlogプロットを示す。ASRは温度の上昇と共に減少し、そして直線関係が全ての試料に対しlog(ASR/T)および1000/Tの間に発見され、酸化物スケールあるいはスケール+皮膜が試料のそれぞれに対し導電性が優れていることを示した。試料の活性化エネルギー(AST/T=Aexp(E/kT)から得られた)は0.78と0.84eVの間であり、Huang等によるCrに対して報告された0.9eVの活性化エネルギーに近い(文献27)。
【0040】
図10に示される結果は、800℃で200hr後、コーティングされていない鋼上に形成された酸化物スケールは比較的高い抵抗をもつことを示している。しかしながら、電気泳動堆積によって皮膜するCuMn1.8の適用後、同じ熱処理後の電気抵抗は裸の基板の電気抵抗よりも大変低かった。これはスピネル皮膜が基板を酸化から保護しそしてインターコネクタ材料の抵抗を減らすに効果的であることを顕著に示している。
【0041】
実施例5に従う計算を使用し、そしてCrofer 22 APU基板上のCuMn1.8スピネル皮膜下のCr酸化物層の時間に対する放物線状の増加を仮定して、800℃で50000hr後形成された酸化物の厚みは6.4μmであると見積もられた。800℃で約18ΩcmのCrに対する電気抵抗を与えると(文献28)、Crofer 22 APU基板上のCuMn1.8スピネル皮膜のASRはSOFCインターコネクタ材料に対して材料の期待される寿命を越して0.1Ωcm未満の許容される値を提供することを期待される。
【0042】
本発明が1つあるいはそれ以上の望ましい実施態様と連結して記載したけれども、通常の当業者は、前記の明細書を読んだ後、ここに発表された種々の変形、同等物の置換、そして他の組成物および方法の変更を行うことができる。それ故、これに関する特許文章により承諾された保護はこの付帯する請求項およびこれらの同等のものに含まれる定義によってのみ制約されることが意図される。
【0043】
[引用文献]
I. B. C. H. Steele and A. Heinzel, Nature 414, 345 (2001).
2. M. Dokiya, Solid State Ionics 383,152 (2002).
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4. H. Ishihara, H. Matsuda and Y. Takita, J. Am. Chem. Soc. 116, 3801 (1994).
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12. Z.G Yang, G. Xia, S.P. Simner, J. W. Stevenson, J. Electrochem. Soc. 152 (9), Al 896 (2005).
13. W. J. Quaddakers, H. Greiner, M. Hansel, A. Pattanaik, A. S. Khanna, and W. Mallener, Solid State Ionics, 91, 55 (1996).
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【図1A】

【図1B】

【図1C】

【図2】

【図3】

【図4A】

【図4B】

【図5A】

【図5B】

【図6A】

【図6B】

【図6C】

【図6D】

【図6E】

【図7A−7B】

【図7C】

【図7D】

【図7E】

【図7F】

【図8A】

【図8B】

【図8C】

【図8D】

【図8E】

【図8F】

【図9A】

【図9B】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト合金上に電気泳動堆積によって製造される電気導電性保護皮膜であって、皮膜がCu(x)Mn(y)(z)を含み、ここでx=1、1.6≦y≦2.4そしてz=4である。
【請求項2】
1.8≦y≦2.0である請求項1に記載の保護皮膜。
【請求項3】
y=1.8である請求項2に記載の保護皮膜。
【請求項4】
フェライト合金がクロムを含む請求項1に記載の保護皮膜。
【請求項5】
皮膜がフェライト合金の表面で電気絶縁性酸化物の形成を阻止する請求項1に記載の保護皮膜。
【請求項6】
皮膜がフェライト合金の表面にクロム移動を阻止する請求項1に記載の保護皮膜。
【請求項7】
保護皮膜なしのフェライト合金と比べてフェライト合金の面比抵抗を減らす請求項1に記載の保護皮膜。
【請求項8】
皮膜の厚みが1μmから500μmの範囲である請求項1に記載の保護皮膜。
【請求項9】
15μmの厚みをもつ請求項1に記載の保護皮膜。
【請求項10】
固体酸化物型燃料電池のための電気インターコネクタデバイスであって、前記インターコネクタデバイスがステンレス鋼基板および前記基板上に堆積された保護酸化物皮膜からなり、ここで保護皮膜がCu(x)Mn(y)(z)を含み、ここでx=1、1.6≦y≦2.4そしてz=4である。
【請求項11】
1.8≦y≦2.0である請求項10に記載のインターコネクタデバイス。
【請求項12】
y=1.8である請求項11に記載のインターコネクタデバイス。
【請求項13】
ステンレス鋼基板がステンレス鋼430、ステンレス鋼444、ステンレス鋼446、Crofer 22 APU(UNS S44535)、ZMG232およびEbrite(UNS 44627)からなる群から選ばれる材料からなる請求項10に記載のインターコネクタデバイス。
【請求項14】
ステンレス鋼基板がCrofer 22 APUである請求項13に記載のインターコネクタデバイス。
【請求項15】
保護酸化物皮膜の厚みが1μmから500μmの範囲である請求項10に記載のインターコネクタデバイス。
【請求項16】
保護酸化物皮膜の厚みが15μmである請求項15に記載のインターコネクタデバイス。
【請求項17】
フェライト合金上に電気導電性保護皮膜を堆積する方法であって、方法は
スピネル化合物の液体懸濁液に浸漬されたフェライト合金基板を準備し;そして
液体懸濁液に浸漬された基板および電極間に直流電圧を掛けることによって基板上にスピネル化合物を電気泳動堆積することからなる。
【請求項18】
さらに空気中で少なくとも500℃で少なくとも1hrの間、コーティングされた基板を加熱することによって保護皮膜を焼きなます段階からなる請求項17に記載の方法。
【請求項19】
スピネル化合物が式Cu(x)Mn(y)(z)をもち、ここでx=1、1.6≦y≦2.4そしてz=4である請求項17に記載の方法。
【請求項20】
1.8≦y≦2.0である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
y=1.8である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
直流電圧が1Vから50Vの範囲である請求項17に記載の方法。
【請求項23】
直流電圧が20Vである請求項22に記載の方法。
【請求項24】
直流電圧が5minから100min掛けられる請求項17に記載の方法。
【請求項25】
直流電圧が10min掛けられる請求項24に記載の方法。
【請求項26】
スピネル化合物が3/1の容積比のアセトン/エタノール混合物および0.6g/Lのヨウ素を含む液体中に懸濁される請求項17に記載の方法。
【請求項27】
液体懸濁液が1.2g/Lのスピネル化合物を含む請求項17に記載の方法。
【請求項28】
基板がスピネル化合物を電気泳動堆積する段階に先立ち研磨される請求項17に記載の方法。
【請求項29】
基板がステンレス鋼430、ステンレス鋼444、ステンレス鋼446、Crofer 22 APU(UNS S44535)、ZMG232およびEbrite(UNS 44627)からなる群から選ばれるステンレス鋼からなる請求項17に記載の方法。
【請求項30】
基板がCrofer 22 APUである請求項29に記載の方法。

【公表番号】特表2010−535290(P2010−535290A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519958(P2010−519958)
【出願日】平成20年8月4日(2008.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/009372
【国際公開番号】WO2009/017841
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(595094600)トラスティーズ オブ ボストン ユニバーシティ (37)
【Fターム(参考)】