説明

Snめっき条及びその製造方法

【課題】各種コネクタ、特に嵌合型コネクタ端子として好適な、高温条件下又は長期使用下でも低い接触電気抵抗性を維持する銅又は銅合金のSnめっき条を提供する。
【解決手段】表面にSnめっき皮膜を有し、リフロー処理後の前記Snめっき皮膜の最表面にZnが0.1〜10質量%の濃度で存在し、かつ最表面から0.1μm(SiO2換算)以上の深さでZn濃度が0.01質量%以下である銅又は銅合金のSnめっき条であり、銅合金をSnめっきした後、めっき表面に亜鉛イオンの存在する溶液を接触させる表面処理を行い、次にリフロー処理を行って製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種コネクタ、特に嵌合型コネクタ端子として好適な、はんだ濡れ性が良好で、高温条件下又は長期使用下でも低い接触電気抵抗を維持する銅又は銅合金のSnめっき条に関する。
【背景技術】
【0002】
端子、コネクタ等に使用される電子材料用銅合金には、高い強度、高い電気伝導性、熱伝導性以外にも、曲げ加工性、耐応力緩和特性、耐熱性、めっきとの密着性、はんだ濡れ性、エッチング加工性、プレス打ち抜き性、耐食性等が求められる。
そして、電子部品の各種コネクタ、特に嵌合型コネクタ端子に使用される銅又は銅合金のSnめっき材では、経時的に表面に酸化スズが形成される一方、母材や下地めっきの成分がSn層に拡散して合金層を形成することにより純Sn層が消失し、接触電気抵抗が上昇することが知られている。特性の経時劣化は、高温ほど促進され、自動車のエンジン回り等では特に顕著になる。自動車部品の規格を決定しているUSCARにおいて、最も厳しい使用条件では、常時の使用温度が155℃、最高使用温度が175℃でのコネクタ材の接触電気抵抗が劣化しない特性(耐熱性)が要求されている。
更に、コネクタ端子用材料がSnめっきされた後、酸化スズ等を除去する為の表面処理が行われているが、表面処理後、次の作業工程までの輸送、保存中に酸化スズが形成される可能性があり、長期間放置しても接触電気抵抗が上昇しない材料が求められてきている。ここで、高温下での接触電気抵抗上昇が少ない材料は長期間保存しても接触電気抵抗が上昇しない材料と言い換えることができる。
【0003】
一般的にSnめっきの接触電気抵抗及びはんだ付け性については、残留純Sn層の厚さと良い相関を示すことが知られている。しかし、Snめっきを厚くすると、コストアップ、挿抜に必要な力の増大等の問題があった。
そこで、Cu又はCu合金の周囲にSn及び/又はSn−Cu合金めっきである第1めっき層を設け、その外側表面にZn等の第3元素とSnとの合金で構成され、最表面での第3元素の濃度を0.01〜80wt%とした第2めっき層を設けためっきが提案されている(特許文献1)。
【0004】
又、電子部品の表面に、第1のSnめっき膜と第2のスズより卑な金属を含むめっき膜を形成することも提案されている(特許文献2)。この第2のめっき膜は好ましくはZn又はZn−Sn合金からなり、厚さ50nm以下でSn濃度は60wt%未満である。
【特許文献1】特開2005−216749号公報
【特許文献2】特開2006−22345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の発明はフラットケーブルにおける耐ウィスカー性の向上を目的とするものであり、第3元素(Zn等)をめっきして熱処理により合金化させて製造されている。従って、ウィスカー発生を阻止するためには第2めっき層をめっきして熱処理により合金化する必要があるから、第2めっき層のめっき工程のための特別な設備が必要であり、製造費用が増大しかつ比較的多量の亜鉛を使用する問題があった。
又、特許文献1に例示された製造方法は不活性雰囲気において第1、第2のめっき膜を形成するものである。従って、特許文献2の発明は特許文献1と同様の問題があり、不活性雰囲気で好ましく行う場合、更に設備費用及び製造費用が必要になるものであった。
上記のとおり、特別な設備を必要とせずに経済的に製造でき、長期及び/又は高温条件下でも接触電気抵抗が上昇しない銅又は銅合金のSnめっき条が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記銅合金Snめっき条及びその製造方法に関する。
(1)表面にSnめっき皮膜を有し、リフロー処理後の前記Snめっき皮膜の最表面にZnが0.1〜10質量%の濃度で存在し、かつ最表面から0.1μm(SiO2換算)以上の深さでZn濃度が0.01質量%以下であることを特徴とする銅又は銅合金のSnめっき条。
(2)上記Snめっき皮膜のSn相の厚さが0.1〜1.5μmである上記(1)に記載のSnめっき条。
(3)表面から母材にかけて、Sn相、Sn−Cu合金相からなる各層によりめっき皮膜が構成され、Sn相の厚さが0.1〜1.5μm、Sn−Cu合金相の厚さが0.1〜1.5μmである上記(1)に記載のSnめっき条。
(4)表面から母材にかけて、Sn相、Ni相からなる各層によりめっき皮膜が構成され、Sn相の厚さが0.1〜1.5μm、Ni相の厚さが0.1〜2.0μmである上記(1)に記載のSnめっき条。
(5)表面から母材にかけて、Sn相、Sn−Cu合金相、Cu相、Ni相からなる各層によりめっき皮膜が構成され、Sn相の厚さが0.1〜1.5μm、Sn−Cu合金相の厚さが0.1〜1.5μm、Cu相の厚さが0〜1.5μm、Ni相の厚さが0.1〜2.0μmである上記(1)に記載のSnめっき条。
(6)母材をSnめっきした後、めっき表面に亜鉛イオンの存在する溶液を接触させる表面処理を行い、次にリフロー処理を行う上記(1)〜(5)いずれか1項記載のSnめっき条の製造方法。
(7)上記表面処理は、硫酸亜鉛を添加した溶液を備えた表面処理槽中で行われる上記(6)記載の製造方法。
(8)上記溶液の亜鉛濃度は、0.1〜10g/Lである上記(6)又は(7)記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の銅又は銅合金のSnめっき条は、本件では、薄いSnめっきであっても良好なはんだ付け性と、優れた耐熱性を発揮し、長期間及び/又は高温条件下でも接触電気抵抗が上昇しない。また、通常使用されている表面処理液である硫酸フラックス液にZnSO4を添加するだけで効果が得られるので、新たな設備投資等のコストはかからず、微量のZnで優れた効果を達成できる。即ち、本発明の製造方法では、母材のSnめっき表面に存在する酸化Sn膜を酸性溶液で除去する表面処理工程中において、Znを表面に配置することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
下記に本発明の銅又は銅合金のSnめっき条をその製造方法と共に説明する。
本発明のSnめっきは、銅又は銅合金条の表面に形成される。ここで、銅合金の組成は、電子部品の各種コネクタに使用されるものであればよく、例えば、黄銅(Cu−Zn合金、C2600、C2801、C3604等)、リン青銅(C5210、C5191等)、コルソン合金(C7025等)が挙げられる。
【0009】
本発明の銅又は銅合金条の表面上に形成されるめっき皮膜の構成の例示として、下記めっき皮膜が挙げられる。(1)合金条の表面にSnめっき層を直接形成しためっき皮膜。(2)合金条の表面にCuめっき層、次にSnめっき層を形成しためっき皮膜。(3)合金条の表面にNiめっき層、次にSnめっき層を形成しためっき皮膜。(4)合金条の表面にNiめっき層、Cuめっき層、Snめっき層の順で形成しためっき皮膜。
上記めっき皮膜は、母材上に、電気めっきにより適宜、Cuめっき層、Niめっき層、Snめっき層を適切な順序で形成する。
上記層の厚さは、下記リフロー処理を行う場合に目的の相厚さとなるようにめっき条件を適宜変更して調整される。
【0010】
本発明のリフロー処理後のSnめっき皮膜の最表面には、Znが0.1〜10質量%の濃度で存在し、かつ最表面から0.1μm(SiO2換算)以上の深さではZn濃度が0.01質量%以下である。最表面のZn濃度は0.1質量%未満であると良好な耐熱性を発現しない。一方、10質量%を超えても更なる効果は期待できない。又、最表面から0.1μm(SiO2換算)以上の深さでZn濃度が0.01質量%を超えても更なる効果は期待できない。
上記Zn分布の分析は、例えば、アルバック・ファイ株式会社製X線光電子分光分析装置を使用してアルゴンイオンによるスパッタリングで、分析することができる。
【0011】
本発明のSnめっき皮膜表面のZn分布は従来知られていたSnめっき表面のZn膜(特許文献1、2)とは量的にも構造的にも非常に異なるものであり、従来のZn電解めっきではなく、表面がSnであるめっき皮膜を有する母材に対して、めっき表面に亜鉛イオンが存在する溶液を接触させる表面処理を行って製造できる。
接触させる溶液としては、硫酸亜鉛を溶解させた酸性溶液、リン酸亜鉛を溶解させた酸性溶液等が挙げられる。接触方法としては、溶液中への浸漬、溶液の塗布、流下、噴霧散布等、通常使用される方法が挙げられる。中でも、Snめっき膜表面の酸化スズの除去を目的としてSnめっき処理後の材料が浸漬される、表面処理槽中の硫酸酸性フラックス液に硫酸亜鉛を溶解させると、浸漬の際に亜鉛が表面に付着して本発明のSnめっき皮膜が製造されるため特別な設備を必要とせず好ましい。
【0012】
上記溶液の亜鉛濃度は、好ましくは0.1〜10g/L、更に好ましくは0.5〜5.0g/Lである。0.5g/L未満であると本発明の効果が得られず、5.0g/Lを超えても更なる効果は期待できない。
浸漬温度及び時間温度は相互に依存し、適宜変更できるが、例えば40〜60℃で1〜10秒間でもよい。また、酸性溶液のpHは、例えば1〜4である。
【0013】
本発明のSnめっき皮膜に対しては、リフロー処理が行われる。リフロー処理では電着したSnめっき皮膜を一旦加熱後急冷する操作を行い、めっき時の応力(歪み)を除き、ウィスカー発生を防止し、下地金属との拡散層を形成することで経時的変化を少なくする効果が得られる。リフロー処理により、Cuめっき層とSnめっき層が反応してSn−Cu合金相が形成される。Cu下地めっきは、リフロー時にSn−Cu合金相形成に消費され消失しても良い。すなわち、リフロー後のCu相厚さの下限値は規制されず、厚さがゼロになってもよい。Ni層は、リフロー後もほぼ電気めっき上がりの状態で残留する。
リフロー処理の条件は、目的の条の厚さ、Sn相、Cu相、Ni相の厚さ等に応じて採用され、例えば、230〜600℃、3〜30秒間の範囲の中の適当な条件でリフロー処理を行う。
【0014】
リフロー処理後のめっき層構造は、表面から母材にかけて、それぞれ(1)Sn相、(2)Sn相、Sn−Cu合金相、任意のCu相からなる各層、(3)Sn相、Ni相からなる各層、(4)Sn相、Sn−Cu合金相、任意のCu相、Ni相からなる各層、となる。上記(3)及び(4)では、Ni相の存在により母材CuのSn相中への拡散が抑制され、又Cu相若しくはCu−Sn合金相の存在によりNiのSn相中への拡散が抑制されるため、純Sn層の消失が遅れ、耐熱性が向上する。即ち、更に長期間及び/又は高温条件下でも接触電気抵抗が上昇しない。
表面Snが酸化されるおそれがあるので、リフロー処理は上記表面処理により亜鉛が表面に付着したSnめっき皮膜に対して行うことが好ましいが、場合によっては表面処理前にリフロー処理を行っても良い。
【0015】
本発明のめっき皮膜を構成するSn相の厚さは好ましくは0.1〜1.5μmである。Sn相が0.1μm未満でははんだ濡れ性が低下し、1.5μmを超えると加熱した際にめっき層内部に発生する熱応力が高くなり、めっき剥離が促進される。より好ましい範囲は0.2〜1.0μmである。
【0016】
本発明のSn−Cu合金相の厚さは好ましくは0.1〜1.5μmである。Sn−Cu合金相が0.1μm未満ではSn−Cu合金相の硬質性に由来する挿入力の低減が達成できない。一方、1.5μmを超えると、加熱した際にめっき層内部に発生する熱応力が高くなり、めっき剥離が促進される。より好ましい厚さは0.5〜1.2μmである。
本発明のCu相は、リフローによりCuが拡散してSn−Cu合金相となってもよく、Cu相として残っていても良い。残存するCu相の厚さは好ましくは0〜0.7μmである。0.7μmを超えると、加熱した際、Sn−Cu合金相の成長によりSn相を消費し、はんだ濡れ性、耐熱性を低下させる。
本発明のNi相の厚さは好ましくは0.1〜0.8μmである。Ni相が0.1μm未満ではめっきの耐食性や耐熱性が低下する。一方、0.8μmを超えると、加熱した際にめっき層内部に発生する熱応力が高くなり、めっき剥離が促進される。より好ましい厚さは0.1〜0.3μmである。
【実施例】
【0017】
本発明の実施例で採用しためっき方法、表面処理方法及び測定方法を以下に示す。
母材として、黄銅市販品、材料記号C2600、厚み0.32mmを予め脱脂、酸洗処理して使用した。
(Ni下地めっき条件)
めっき浴組成:硫酸ニッケル250g/L、塩化ニッケル45g/L、ホウ酸30g/L。
めっき浴温度:55℃。
電流密度:4A/dm2
Niめっき厚さは、電着時間により調整した。
(Cu下地めっき条件)
めっき浴組成:硫酸銅200g/L、硫酸60g/L。
めっき浴温度:30℃。
電流密度:2.5A/dm2
Cuめっき厚さは、電着時間により調整した。
【0018】
(Snめっき条件)
めっき浴組成:酸化第1錫41g/L、フェノールスルホン酸268g/L、界面活性剤5g/L。
めっき浴温度:45℃。
電流密度:4A/dm2
Snめっき厚さは、電着時間により調整した。
(Znめっき条件)
めっき浴組成:硫酸亜鉛200g/L、硫酸アルミニウム30g/L、塩化ナトリウム30g/L。
めっき浴温度:25℃。
電流密度:2A/dm2
Znめっき厚さは、電着時間により調整した。
【0019】
(表面処理条件)
表面処理液:1、4又は12g/L濃度で硫酸亜鉛を添加した硫酸1ml/L水溶液(0.5、1.5又は5.0g/lの亜鉛を含む硫酸1ml/L水溶液)。
浸漬時間:10秒
処理液温度:室温(25℃)
(リフロー処理条件)
温度を400℃、雰囲気ガスを窒素(酸素1vol%以下)に調整した加熱炉中に、試料を10秒間挿入し水冷した。
【0020】
このように作製した試料について、次の評価を行った。
(a)XPSによる表面分析
リフロー後の試料をアセトン中で超音波脱脂した後、X線光電子分光分析装置(XPS)により、Sn、Cu、Ni、Znの深さ方向の濃度プロファイルを求めた。測定条件は次の通りである。
試料の前処理:アセトン中で超音波脱脂。
装置:アルバック・ファイ株式会社製 5600MC型。
到達真空度:3.3×10-8Pa
励起源:単色化AlKα
出力:300W
検出面積:800μmφ
イオン種:Ar
加速電圧:3kV
スパッタリングレート:4.5nm/min(SiO2換算)
上記方法で測定した結果、下記表1で使用したSnめっき皮膜試料の相厚みは、表面から母材に向かって、全てSn相1.0/Ni相0.3μm/母材であり、下記表2で使用したSnめっき皮膜試料の相厚みは、表面から母材に向かって、全てSn相1.0μm/Cu相0.3μm/Ni相0.3μm/母材であった。
【0021】
(b)耐熱性(接触電気抵抗の変化)
大気中、155℃で400時間加熱した試料に対し、山崎精機製、接点シミュレータ(商品名CRS−1)を使用し、四端子法により接触電気抵抗を測定した。測定条件は次の通りである。
接触荷重:50g。
電流:200mA
摺動速度:1mm/分、摺動距離:1mm。
下記表中、◎は155℃、大気雰囲気で400時間加熱後も接触電気抵抗10mΩ以下、○は10〜20mΩ未満、△は20〜50mΩ、×は50mΩを超えたことを表す。
【0022】
(c)はんだ付け性
幅10mm、長さ21mmの短冊型試験片を採取し、10質量%硫酸水溶液中で洗浄した。ソルダーチェッカー(レスカ社製、商品名SAT−5000)を使用してメニスコグラフ法により、はんだ濡れ時間を測定した。測定条件は次の通りである。
フラックス:25%ロジン−エタノール。
はんだ組成:Sn−3Ag−0.5Cu、はんだ温度:250℃。
浸漬(引き出し)速さ:25mm/秒で10秒間、浸漬深さ:2mm。
下記表中、◎は濡れ時間1秒以下、○は1〜3秒、△は3〜5秒、×は5秒以上を表す。
(d)外観
母材めっき表面を目視にて判断した。
下記表中、○はくもりなし、△はややくもり、×はくもりを表す。
【0023】
図1に実施例2のSnめっき条の表面からの距離に対するSn濃度及びZn濃度のXPSによる測定結果を示す。最表面から0.025μmまでのZn量は約7質量%であるが、最表面からの距離0.05μm以上ではZn量は確認できない程度である。
図2に比較例6、図3に比較例7の測定結果を示す。比較例6では最表面のZn濃度は約9質量%だが、深くなるにつれZn濃度は上昇し、深さ0.025μm程度で最高の約25質量%になり、更に深くなるとZn濃度は減少するが、0.10μm深さで約9質量%程度である。比較例7では最表面のZn濃度は約14質量%だが、深くなるにつれZn濃度は上昇し、深さ0.025μmで最高の約55質量%になり、更に深くなるとZn濃度は減少するが、それでも0.10μm深さで約16質量%である。
上記より、0.02μmの極薄層Znめっきでも、本発明のSnめっき条を製造することはできなかった。
尚、図1〜3に示す表面からの距離はスパッタリングした時間をもとにSiO2換算のスパッタリングレートから算出した値であり、実際の距離とは異なる。
【0024】
【表1】

【0025】
表1より、Sn相1.0μm/Ni相0.3μm/母材の構成を有するSnめっき条では、本発明でZn処理した実施例2〜4は、Zn処理をしない比較例1に比べ、高温加熱後の接触電気抵抗が良好で、はんだ付け性も良好だった。
Snめっき上にZnめっきを施した比較例5〜7は、はんだ濡れ性に劣り、厚みが厚くなると外観に劣り、高温加熱後に接触電気抵抗が上昇した。
【0026】
【表2】

【0027】
表2より、Sn相1.0μm/Cu相0.3μm/Ni相0.3μm/母材の構成を有するSnめっき条では、本発明でZn処理した実施例9〜11は、Zn処理をしない比較例8に比べ、高温加熱後の接触電気抵抗もはんだ付け性も非常に良好だった。
Snめっき上にZnめっきを施した比較例12及び13は、Znめっきの厚みが薄いと耐熱性及び外観に劣り(比較例13)、厚みが厚くなると高温加熱後に接触電気抵抗が上昇し外観も良好ではなかった。
以上より、本発明のSnめっき条は、Snめっき上にZnめっきを施した従来材より薄いSnめっき皮膜でも、長時間及び/又は高温条件下で接触電気抵抗を低く維持し、かつはんだ付け性、外観に優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例2のSnめっき条の表面からの距離に対するSn濃度及びZn濃度のXPSによる測定結果を示す。
【図2】比較例6のSnめっき条のXPSによる測定結果を示す。
【図3】比較例7のSnめっき条のXPSによる測定結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にSnめっき皮膜を有し、リフロー処理後の前記Snめっき皮膜の最表面にZnが0.1〜10質量%の濃度で存在し、かつ最表面から0.1μm(SiO2換算)以上の深さでZn濃度が0.01質量%以下であることを特徴とする銅又は銅合金のSnめっき条。
【請求項2】
上記Snめっき皮膜のSn相の厚さが0.1〜1.5μmである請求項1に記載のSnめっき条。
【請求項3】
表面から母材にかけて、Sn相、Sn−Cu合金相からなる各層によりめっき皮膜が構成され、Sn相の厚さが0.1〜1.5μm、Sn−Cu合金相の厚さが0.1〜1.5μmである請求項1に記載のSnめっき条。
【請求項4】
表面から母材にかけて、Sn相、Ni相からなる各層によりめっき皮膜が構成され、Sn相の厚さが0.1〜1.5μm、Ni相の厚さが0.1〜2.0μmである請求項1に記載のSnめっき条。
【請求項5】
表面から母材にかけて、Sn相、Sn−Cu合金相、Cu相、Ni相からなる各層によりめっき皮膜が構成され、Sn相の厚さが0.1〜1.5μm、Sn−Cu合金相の厚さが0.1〜1.5μm、Cu相の厚さが0〜1.5μm、Ni相の厚さが0.1〜2.0μmである請求項1に記載のSnめっき条。
【請求項6】
母材をSnめっきした後、めっき表面に亜鉛イオンの存在する溶液を接触させる表面処理を行い、次にリフロー処理を行う請求項1〜5いずれか1項記載のSnめっき条の製造方法。
【請求項7】
上記表面処理は、硫酸亜鉛を添加した溶液を備えた表面処理槽中で行われる請求項6記載の製造方法。
【請求項8】
上記溶液の亜鉛濃度は、0.1〜10g/Lである請求項6又は7記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate