説明

SpondiasmombinL.の抽出物および抽出方法およびその抽出物の使用

【課題】本発明は、COX−2の阻害方法、NF−KappaB活性化の阻害方法、炎症の処置方法、癌の処置方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明により、治療有効量のSpondias mombin L.の抽出物を患者に投与することを含む、COX−2の阻害方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年8月1日に出願された米国仮出願No.60/953,322、および2008年2月18日に出願された米国特許出願No.12/032,987の優先権を主張し、これらの出願の開示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本出願は概して、炎症および癌の処置のための植物抽出物に関する。
【背景技術】
【0003】
関節リュウマチは慢性炎症性疾患であり、複数の組織に影響を及ぼすが、典型的には関節において最も顕著な症状を生じさせる。当該疾患は進行性であり、変形性であり、最終的には衰弱性である。関節での慢性炎症により、軟組織、滑膜および軟骨の破壊、ならびに骨の関節面の浸食が引き起こされる。当該疾患には、米国、欧州および日本において320万人以上の人々が罹患しているものと算定されている。当該疾患は女性に多く、疾患者の過半数を占めると見積もられている。
【0004】
炎症は、外部の物質やけがに対して生体を防御するための自然防御であるが、特定の疾患において問題を生じさせる場合がある。不適切な炎症は、グルココルチコイドであるコルチゾールのような従来のステロイド、組み換えDNA技術により製造される治療用タンパク質、および/または非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)により処置されうる。
【0005】
プロスタグランジンは、生体の細胞により生産され、疼痛、炎症および発熱の促進を含む多くの主要な機能に関与している。さらに、いくつかのプロスタグランジンは、血液凝固に必要な血小板の機能をサポートし、酸のダメージ効果から胃の内面を保護している。プロスタグランジンは酵素シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)により生体の細胞内で生産される。
【0006】
COX−2は、限定はされないが例えば疼痛を含む多くの機能に関与する酵素である。COX−2は具体的には、炎症に応答する生体領域に特異的に存在するが、胃には存在しない。COX−2は我々の生体内で、理想的には限られた理由により活性となるが、食習慣、ストレスおよび怪我などの要因によりCOX−2活性は増加しうる。継続的な理由によりCOX−2が活性であるとき、継続的な疼痛が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
具体的な作用機作は完全には理解されていないが、COX−2の阻害が癌細胞のアポトーシスを生じさせることが見出されている。Johnsenら、「Cyclooxygenase−2 Is Expressed in Neuroblastoma, and Nonsteroidal Anti−Inflammatory Drugs Induce Apoptosis and Inhibit Tumor Growth In Vivo」、Cancer Research;64巻、7210〜7215頁(2004年10月15日);およびLauら、「Cyclooxygenase inhibitors modulate the p53/hdm2 pathway and enhance chemotherapy−induced apoptosis in neuroblastoma」、Oncogene,26巻、1920−1931頁(2007年)を参照されたい。
【0008】
したがって、COX−2を阻害する植物抽出物は、限定はされないが例えば炎症、関節炎、筋肉痛および癌などの種々の疾患を処置しうる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
COX−2を阻害する方法、NF−KappaB活性化を阻害する方法、炎症の処置方法、または癌の処置方法は、患者への、治療有効量のSpondias mombin L.(スポンディアス モンビンL.)の抽出物の投与を含みうる。本明細書に記載する医薬は、医薬として許容な賦形剤、および賦形剤中に懸濁させた治療有効量のSpondias mombin L.の抽出物を含んでいてもよい。Spondias mombin L.の抽出物の製造方法は、Spondias mombin L.材料をエクストラクターおよび溶媒で処理することにより成分溶液(成分ソリューション、component solution)を作ること、および成分溶液から少なくとも一部の液体を除去することにより抽出物を製造することを含みうる。Spondias mombin L.の抽出物は、種々の溶媒を使用して抽出される成分を含みうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、9μg/mlの濃度における、4つの異なる溶媒を使用して抽出したSpondias mombin L.の抽出物による、in vitroでのCOX−2の阻害を試験する実験結果を示すグラフである。図1のグラフは、ヒト組み換えCOX−2の阻害パーセンテージをy軸に、Spondias mombin L.の材料由来成分の抽出に使用した溶媒をx軸に示す。
【0011】
【図2】図2は、図1の実験の反復の結果を示すグラフである。図2のグラフは、ヒト組み換えCOX−2の阻害パーセンテージをy軸に、Spondias mombin L.の材料由来成分の抽出に使用した溶媒をx軸に示す。
【0012】
【図3】図3は、図1の実験の別の反復の結果を示すグラフである。図3のグラフは、ヒト組み換えCOX−2の阻害パーセンテージをy軸に、Spondias mombin L.の材料由来成分の抽出に使用した溶媒をx軸に示す。
【0013】
【図4】図4は、図1の実験のさらに別の反復の結果を示すグラフである。図4のグラフは、ヒト組み換えCOX−2の阻害パーセンテージをy軸に、Spondias mombin L.の材料由来成分の抽出に使用した溶媒をx軸に示す。
【0014】
【図5】図5は、種々の濃度における、Spondias mombin L.のメタノール抽出物による、in vitroでのCOX−2の阻害を試験する実験結果を示すグラフである。図5のグラフは、ヒト組み換えCOX−2の阻害パーセンテージをy軸に、Spondias mombin L.のメタノール抽出物の濃度をx軸に示す。
【0015】
【図6】図6は、図5の実験の反復の結果を示すグラフである。図6のグラフは、ヒト組み換えCOX−2の阻害パーセンテージをy軸に、Spondias mombin L.のメタノール抽出物の濃度をx軸に示す。
【0016】
【図7】図7は、種々の濃度における、Spondias mombin L.のメタノール抽出物により生じる血清を含む培地中で培養されたSK−Mel28ヒトメラノーマ細胞の細胞増殖の抑制を試験する実験結果を示すグラフである。図7のグラフは、細胞増殖の抑制のパーセンテージをy軸に、Spondias mombin L.のメタノール抽出物の濃度をx軸に示す。
【0017】
【図8】図8は、SK−Mel28ヒトメラノーマ細胞を血清を含まない培地にて培養したこと以外は、図7の実験と同様の実験の結果を示すグラフである。図8のグラフは、細胞増殖の抑制のパーセンテージをy軸に、Spondias mombin L.のメタノール抽出物の濃度をx軸に示す。
【0018】
【図9】図9は、10μg/mlの濃度における、Spondias mombin L.のメタノール抽出物のフラクションによる、in vitroでのCOX−2の阻害を試験する実験結果を示すグラフであり、ヒト組み換えCOX−2の阻害パーセンテージをy軸に、溶出時間(分)により特定されるフラクションをx軸に示す。
【0019】
【図10A】図10A〜10Dは、Spondias mombin L.のメタノール抽出物の図9におけるフラクション1および2に関係する液体クロマトグラフィー−質量分析と質量検出に基づく高速液体クロマトグラフィープロファイルである。
【図10B】図10A〜10Dは、Spondias mombin L.のメタノール抽出物の図9におけるフラクション1および2に関係する液体クロマトグラフィー−質量分析と質量検出に基づく高速液体クロマトグラフィープロファイルである。
【図10C】図10A〜10Dは、Spondias mombin L.のメタノール抽出物の図9におけるフラクション1および2に関係する液体クロマトグラフィー−質量分析と質量検出に基づく高速液体クロマトグラフィープロファイルである。
【図10D】図10A〜10Dは、Spondias mombin L.のメタノール抽出物の図9におけるフラクション1および2に関係する液体クロマトグラフィー−質量分析と質量検出に基づく高速液体クロマトグラフィープロファイルである。
【0020】
【図11】図11は、Spondias mombin L.の酢酸エチル抽出物により処理した3つの乳癌細胞系の細胞コロニー数を試験する実験結果の示すグラフである。図11のグラフは、細胞系をx軸に、対照を100%として標準化した細胞コロニー数パーセントをy軸に示す。
【0021】
【図12】図12は、8mg/mlの濃度で腹腔内投与したSpondias mombin L.の酢酸エチル抽出物による、ヌードマウスでの腫瘍増殖(MCF−7細胞)の抑制を試験する実験結果を示すグラフである。図12のグラフは、標準化した腫瘍体積をy軸に、MCF−7細胞の注入後日数をx軸に示す。
【0022】
【図13】図13は、種々の濃度のSpondias mombin L.のメタノール抽出物、および既知のNF−KappaB活性化剤、すなわちPMAにさらしたヒト胎児腎臓293細胞でのNF−KappaB活性化を試験する実験結果を示すグラフである。図13のグラフは、処置群をx軸とし、対照(メタノール抽出物を加えない)を100%に標準化したNF−KappaB活性化を示す。
【0023】
【図14】図14は、種々の濃度のSpondias mombin L.のメタノール抽出物、および既知のNF−KappaB活性化剤、すなわちTNFにさらしたヒト胎児腎臓293細胞でのNF−KappaB活性化を試験する実験結果を示すグラフである。図14のグラフは、処置群をx軸とし、対照(メタノール抽出物を加えない)を100%に標準化したNF−KappaB活性化を示す。
【0024】
【図15】図15は、種々の濃度のSpondias mombin L.の水抽出物、および既知のNF−KappaB活性化剤、すなわちPMAにさらしたヒト胎児腎臓293細胞でのNF−KappaB活性化を試験する実験結果を示すグラフである。図15のグラフは、処置群をx軸とし、対照(水抽出物を加えない)を100%に標準化したNF−KappaB活性化を示す。
【0025】
【図16】図16は、種々の濃度のSpondias mombin L.の水抽出物、および既知のNF−KappaB活性化剤、すなわちTNFにさらしたヒト胎児腎臓293細胞でのNF−KappaB活性化を試験する実験結果を示すグラフである。図16のグラフは、処置群をx軸とし、対照(水抽出物を加えない)を100%に標準化したNF−KappaB活性化を示す。
【0026】
【図17】図17は、種々の濃度のSpondias mombin L.のヘキサン抽出物、および既知のNF−KappaB活性化剤、すなわちTNFにさらしたヒト胎児腎臓293細胞でのNF−KappaB活性化を試験する実験結果を示すグラフである。図17のグラフは、処置群をx軸とし、対照(ヘキサン抽出物を加えない)を100%に標準化したNF−KappaB活性化を示す。
【0027】
【図18】図18は、種々の濃度のSpondias mombin L.のヘキサン抽出物、および既知のNF−KappaB活性化剤、すなわちPMAにさらしたヒト胎児腎臓293細胞でのNF−KappaB活性化を試験する実験結果を示すグラフである。図18のグラフは、処置群をx軸とし、対照(ヘキサン抽出物を加えない)を100%に標準化したNF−KappaB活性化を示す。
【0028】
【図19】図19は、図14の反復実験、すなわち種々の濃度のSpondias mombin L.のメタノール抽出物、および既知のNF−KappaB活性化剤、すなわちTNFにさらしたヒト胎児腎臓293細胞でのNF−KappaB活性化を試験する実験結果を示すグラフである。図19のグラフは、処置群をx軸とし、対照(メタノール抽出物を加えない)を100%に標準化したNF−KappaB活性化を示す。
【0029】
【図20】図20は、図13の反復実験、すなわち種々の濃度のSpondias mombin L.のメタノール抽出物、および既知のNF−KappaB活性化剤、すなわちPMAにさらしたヒト胎児腎臓293細胞でのNF−KappaB活性化を試験する実験結果を示すグラフである。図20のグラフは、処置群をx軸とし、対照(メタノール抽出物を加えない)を100%に標準化したNF−KappaB活性化を示す。
【0030】
【図21】図21は、8mg/mlの濃度で腹腔内投与したSpondias mombin L.の酢酸エチル抽出物による、ヌードマウスでの腫瘍増殖(MDA−MB−231細胞)の抑制を試験する実験結果を示すグラフである。図21のグラフは、標準化した腫瘍体積をy軸に、MDA−MB−231細胞の注入後日数をx軸に示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書において、以下の用語は次に定義された意味を有する。
【0032】
項目が「a」または「an」により導入される場合、1またはそれ以上の項目を意味すると解されるべきである。
【0033】
「成分」は、単独の分子、化学物質、大分子、化合物、元素またはそれらの組み合わせの気体、液体または固体を意味する。
【0034】
「成分ソリューション」は、液体、固体、または気体中に含有、懸濁、保持または分散させた1以上の成分の混合物を意味する。
【0035】
「含む(comprises)」は「含有する(includes)」を意味するが、限定はされない。
【0036】
「含む(comprising)」は「含有する(including)」を意味するが、限定はされない。
【0037】
「状態」は、限定はされないが、不調のまたは正常に機能しない、身体の器官、部分、構造またはシステム、疾患、疾病、病気、病、身体的または精神的苦痛、身体的または精神的ストレス、身体的または精神的感覚、身体的または精神的苦悩、身体的または精神的痛みなどの特定の健康状態を意味する。状態は癌または炎症を含みうる。
【0038】
「COX−2」はシクロオキシゲナーゼ−2を意味する。
【0039】
「エクストレーター(抽出器)」は、溶媒または溶液を包含しうる少なくとも1つのフラスコ、材料を包含しうる少なくとも1つのチャンバー、およびチャンバーとフラスコに流体連結する少なくとも1つのコンデンサーを有する、装置、機械、器具、道具、またはその組み合わせを意味する。エクストラクターは、抽出プロセスのある時点で溶媒を回収することが可能な漏斗を有していてもよい。エクストラクターの連結にシンブルが使用されてもよい。エクストラクターの連結にフィルターが使用されてもよい。エクストラクターは、エクストラクターの完全性を低下させずに加熱に付すことが可能であってもよい。限定はされないが、エクストラクターとしては、Franz von Soxhletにより1879年頃に発明されたソックスレー抽出器、および限定はされないが、Gerhardt GmbH製のSoxthermTM抽出器、FOSSTM製のオートマチックまたはセミオートマチック抽出器であるSoxtec SystemTMなどが挙げられる。
【0040】
「グラインド(すりつぶし)」は、対象の細粉化、打撃による粉砕、切断、粉砕、すり下ろし、激しい研磨、削り、のこぎりでの切断、刈り落とし、溶解、またはそれらの組合せを意味する。
【0041】
「有する(having)」は含むことを意味するが、限定はされない。
【0042】
「IC50」は、化合物または処方について、COX−2の50%阻害を生み出す化合物または処方の濃度を意味する。
【0043】
「阻害」は、酵素の活性を少なくとも部分的に減少させることを意味する。
【0044】
「材料(原料、material)」は、限定はされないが、皮、幹、葉、芽、茎、根、花、花粉、枝、若枝、果実、スリップ、野菜、種、またはそれらの組み合わせを意味する。
【0045】
「非経口(parenteral)」は、求められる効果が全身性である患者への成分の投与経路のタイプである。限定はされないが、非経口としては、注射または注入(ここで、当該注射または注入は、静脈内、動脈内、筋肉内、心臓内、皮下、骨内、皮内、腹膜内である)、経皮、経粘膜、吸入、またはその組み合わせにより、患者に成分を投与することが挙げられる。
【0046】
「患者」は、ヒトまたはその他の如何なる哺乳類をも意味する。
【0047】
「医薬として許容な賦形剤」は、患者へ成分を投与するのに伴う、担体、希釈剤、アジュバント、添加剤、またはそれらの組合せを意味する。医薬として許容な賦形剤としては、限定はされないが、ポリエチレングリコール;ワックス;ラクトース;グルコース;スクロース;ステアリン酸マグネシウム;ケイ素誘導体;硫酸カルシウム;リン酸ジカルシウム;デンプン;セルロース誘導体;ゼラチン;天然および合成ゴム、例えば、限定はされないが、アルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、およびワックス;好適なオイル;生理食塩水;糖溶液、限定はされないが、例えば、デキストロース水溶液またはグルコース水溶液;DMSO;グリコール、限定はされないが、例えば、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコール;滑沢剤、限定はされないが、例えば、オレイン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、安息香酸ナトリウム、タルク、およびステアリン酸マグネシウム;崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、寒天、デンプン、およびキサンタンガム);および吸収性担体、限定はされないが、例えば、ベントナイトおよびクロニンが挙げられうる。
【0048】
「溶媒」は、溶液(ソリューション)を形成するために、1以上の成分を懸濁させる、取り出す、引き出す、分離する、または引き込む能力を有する、液体またはガスである。
【0049】
「治療有効量」は、患者に投与した際に、状態の処置のための少なくとも部分的な効果に十分な成分量を意味する。治療有効量は、状態、成分の投与経路、および処置される患者の年齢、体重などに依存して変動しうる。
【0050】
「処置(治療、treat)」は、状態について、患者によって認識されなくても、状態の任意の症状を少なくとも部分的に抑制、低減、緩和すること、状態または状態の症状の発現を遅延させること、状態の任意の症状を少なくとも部分的に治癒させること、または状態若しくは状態の症状を少なくとも部分的に予防または阻害すること、またはその組み合わせを意味する。
【0051】
Spondias mombin L.は、Anacardiaceae Lindley科の植物であり、限定はされないが、中央アメリカの熱帯地域およびカリブ海の島々などの中央アメリカに典型的には生育している。Spondias mombin L.の慣用名としては、限定はされないが、イエローモンビン、カジャフルーツ、ジョボ、およびイエロースパニッシュプラムが挙げられる。COX−2を阻害するSpondias mombin L.の抽出物は、本明細書に記載した方法を使用して製造される。抽出方法には、少なくとも部分的にCOX−2を阻害するSpondias mombin L.の成分を抽出するための溶媒の使用が含まれる。本明細書に記載した抽出物は患者における炎症の処置に使用されうる。あるいは、本明細書に記載した抽出物は、患者における癌の処置に使用されうる。COX−2の阻害は、ヒトにおいて炎症を低減させ、癌細胞のアポトーシスおよび増殖低減に貢献することは、当該技術分野における当業者によく理解されている。
【0052】
Spondias mombin L.の抽出物は、以下のように製造されうる。Spondias mombin L.の材料は、入手し、乾燥し、細かくしてもしてもよい。あるいは、Spondias mombin L.の材料は、小片にしてその後乾燥してもよい。材料は、材料由来の液体の残留のほとんどを除去するために、限定はされないが、乾燥オーブンなどのオーブンにおいて、約45℃、または46〜65℃の範囲の温度で乾燥させてもよい。乾燥材料は、抽出プロセスの次の段階の前に、約−20℃で、または約4℃で、または−70〜−80℃で貯蔵してもよい。あるいは、抽出プロセスの次の段階を直ぐに始めてもよい。もちろん、その他の適当な乾燥温度を使用してもよい。
【0053】
乾燥の前後いずれかにおいて、Spondias mombin L.の材料は、より小さい粒子サイズとなるように粉砕してもよい。約20〜50ミクロンの粒子サイズを得るために、Spondias mombin L.の材料は、例えば、Wileyミル回転粉砕機などの好適なグラインダーまたは粉砕機を使用して粉砕してもよい。さらに、分離および約20〜50ミクロンの粒子サイズを得るために、フィルターを使用してもよい。抽出プロセスの段階の後または間に、Spondias mombin L.の材料を、実質的に気密性のプラスチックバッグまたはその他の容器内で、−20℃、または約4℃または−70〜−80℃またはその他の好適な温度で貯蔵してもよい。
【0054】
約10〜100グラムのSpondias mombin L.の材料は、エクストラクターを使用して抽出に付されうる。成分の極性または溶解性に基づいて、Spondias mombin L.の材料から種々の成分を抽出し分離するために、エクストラクターに関連して異なる極性の溶媒を使用してもよい。最初に、Spondias mombin L.の材料を、濾紙から作成された「シンブル(thimble)」の内側に配置してよい。シンブルは如何なる好適な透過性材料から作成されてもよい。Spondias mombin L.の材料を伴うシンブルは、エクストラクターに導入されうる。エクストラクターは、溶媒を含むフラスコとコンデンサーを有しうる。溶媒は加熱されてもよく、加熱により溶媒を蒸発させてもよい。熱せられた溶媒の蒸気はコンデンサーにたどり着き、そこで冷却され、チャンバー内およびSpondias mombin L.の材料上に滴下する。エクストラクター内で、Spondias mombin L.の材料を含むチャンバーは温められた溶媒でゆっくりと満たされる。その時、材料からの成分が材料から抽出され、溶媒により成分の溶液が形成する。チャンバーがほぼ満たされるとき、成分の溶液はサイフォン作用により空になり、フラスコに戻り落ちる。各サイクルの間に、Spondias mombin L.の材料からの成分は溶媒に抽出され、成分の溶液が得られる。このサイクルは各溶媒を用いて多数回繰り返してもよい。抽出プロセスの間に、シンブル中のSpondias mombin L.の材料からの成分を抽出するために、きれいで温かい溶媒が使用されうる。
【0055】
エクストラクターに関して使用されうる溶媒について、例えばヘキサン−1(「ヘキサン」)などの非極性溶媒または、限定はされないが例えば、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素、ジイソプロピルエーテルまたはトルエンなどのその他の非極性溶媒が使用されうる。例えばエチルアセテート−2(「酢酸エチル」)などの中程度の極性溶媒、または特定はされないが例えば、キシレン、メチルブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、n−ブタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、ブチルアセテート、クロロホルム、n−プロパノール、またはメチルエチルケトンなどのその他の中程度の極性溶媒が使用されうる。メタノール−3(「メタノール」)などの極性溶媒、または例えば限定はされないが、アセトン、エタノール、アセトニトリル、酢酸、ジメチルホルムアミド、またはジメチルスルホキシド(DMSO)などのその他の極性溶媒が使用されうる。非極性溶媒、中程度の極性溶媒、または極性溶媒を用いての抽出は、45℃、または限定はされないが約26℃〜約60℃などのその他の好適な温度において行われうる。比較的純粋な水(「水性溶媒」)が、約12時間、または約4時間〜12時間、またはその他の好適な時間、Spondias mombin L.の材料を浸漬することによる成分の抽出に使用されうる。当該材料は、極性溶媒、中程度の極性溶媒または非極性溶媒のいずれかを使用し、固体成分を濾別して成分溶液を得た後に残留する。あるいは、Spondias mombin L.の材料は、抽出方法の間のいずれかの時点でまたはいずれかの溶媒による材料の処理から独立して、比較的純粋な水に浸漬させてもよい。対照として、抽出にさらす時間の効果を評価するために、定期的にサンプルを抜き出し分析してもよい。
【0056】
上記プロセスの後に、Spondias mombin L.の種々の成分を含む溶媒、成分溶液がエクストラクターのフラスコに存在する。ロータリーエバポレーター、またはその他の好適なエバポレーター、例えば限定はされないが、減圧乾燥機、減圧オーブン、窒素ガス、サーモフエル(thermofuel)濃縮機、遠心分離およびスプレードライヤーなど、またはその他の好適な乾燥プロセスを使用しての成分溶液の乾燥により、液体は少なくとも部分的に除去されうる。この乾燥プロセスにより、成分溶液から実質的に全ての液体を除去してもよい。得られた抽出物は冷凍してもフリーズドライしてもよい。抽出物は少なくとも部分的に乾燥した粉末の形態で貯蔵してもよい。抽出物は、あらかじめ秤量されたシンチレーションバイアルに移してもよく、−20℃で、または約4℃で冷蔵庫に、または−70〜−80℃で、またはその他の好適な温度で貯蔵してもよい。
【0057】
ヘキサン、酢酸エチル、メタノールおよび水を使用した場合、上記方法の結果として4つのSpondias mombin L.の抽出物が得られ、各抽出物は使用された溶媒により抽出された成分を含む。これらの抽出物は、ヘキサン抽出物、酢酸エチル抽出物、メタノール抽出物、および水抽出物(集合的に、「4つの抽出物」)と称せられる。
【0058】
実験結果
【0059】
実験結果は、Spondias mombin L.の抽出物がCOX−2を阻害するために使用されうることを示す。本明細書に記載された結果は、Spondias mombin L.の抽出物がNF−KappaB活性化を抑制することを示す。本明細書に記載された結果はまた、Spondias mombin L.の抽出物がSK−Mel28細胞、ヒトメラノーマ細胞系の増殖を抑制すること、およびヒト乳癌細胞系において細胞コロニー数を減少させることを示す。さらに、Spondias mombin L.の抽出物は、哺乳類脂肪体に移植されたMCF−7ヒト乳癌細胞から生じる腫瘍を有するヌードマウスにおいて腫瘍容積の増殖抑制をもたらす。
【0060】
Spondias mombin L.の抽出物およびCOX−2阻害
【0061】
ヒト組み換えCOX−2のペルオキシダーゼ活性をアッセイすることによる、Spondias mombin L.の抽出物が少なくとも部分的にCOX−2を阻害するかを確認するための実験が行われた(「COX−2阻害アッセイ」)。COX−2阻害アッセイは、4つの抽出物の各々において実施された。
【0062】
COX−2阻害アッセイは水浴の使用により約37℃で維持および実施された。要するに、反応バッファー(0.1M Tris−HCl(pH8.0)、5mM EDTAおよび2mM フェノールを含有)中のヒト組み換えCOX−2、ヘム、およびアラキドン酸を4つの抽出物のそれぞれとともに2分間インキュベートした。酸化されたテトラメチル−p−フェニルジアミンの出現により、比色分析的にペルオキシダーゼ活性の存在が示された。
【0063】
COX−2阻害アッセイの準備において、乾燥抽出物をメタノール、ジメチルスルホキシド(「DMSO」)、またはエタノールに溶解させ、その後反応バッファーで希釈した。抽出物の最終の濃度は9μg/mlであった。2分間のインキュベーションの後、COX−2の活性を停止するために1M塩酸を加えた。COX−2阻害剤として知られるDUP−679を内部標準として使用し、予想通り約200nMのIC50でCOX−2を阻害した。COX−2の阻害パーセンテージは、抽出物を含む反応で定量されたCOX−2活性を、何らCOX−2阻害剤を含まない反応で定量されたCOX−2活性から差し引き、その結果を抽出物を含まない反応で定量されたCOX−2活性で割ることにより算出した。抽出物によるCOX−2の阻害パーセンテージは5%〜83%の範囲であった。この結果により、メタノール抽出物がCOX−2の阻害において酢酸エチル抽出物、ヘキサン抽出物および水抽出物と比してこの濃度でより効果的でありうることが示された。酢酸エチル抽出物、ヘキサン抽出物または水抽出物が別の濃度でCOX−2阻害においてより効果的である可能性がある。COX−2阻害アッセイは同じ可変条件で少なくとも4回行った。上記COX−2阻害アッセイの結果を図1〜4に示す。COX−2の相対的阻害はIC50値の取得に関与しうる。
【0064】
さらに、1.56μg/ml〜100μg/mlの範囲の異なる濃度においてCOX−2阻害アッセイでメタノール抽出物を使用した。2つの同一の実験結果を図5および図6に示す。メタノール抽出物は図5では8.9μg/mlのIC50を示し、図6では9.0μg/mlを示した。COX−2のより強い阻害は、メタノール抽出物のより高い濃度に相関しうる。
【0065】
ヒト癌細胞の増殖におけるメタノール抽出物の効果を判断するためにさらなるアッセイを行った。ヒトメラノーマ細胞系、SK−Mel28を2つの独立した実験に使用した。メタノール抽出物を1.6μg/ml〜100μg/mlの範囲の異なる濃度でSK−Mel28細胞に投与した。通常種々の増殖因子を含む血清はSK−Mel28細胞増殖の阻害の妨げとなりうるので、メタノール抽出物をヒト増殖血清の存在下または非存在下にSK−Mel28細胞に投与した。細胞増殖を示す比色変化を発生させるテトラゾリウム化合物(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内塩、または「MTS」)を電子カップリング試薬(フェナジンエトスルフェート、または「PES」)と組み合わせて使用するCellTiter96 Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega Corporation、Madison、Wisconsin)により細胞増殖を測定した。490nmでの吸収を記録することにより、メタノール抽出物によるSK−Mel28の増殖の抑制を測定した。アッセイの結果を図7および8に示す。図7は、メタノール抽出物が100μg/mlで、血清が補充された増殖培地中でのヒトメラノーマ細胞系SK−Mel28の増殖を約40%抑制し、IC50が100μg/ml以上であることを示す。メタノール抽出物によるSK−Mel28の増殖抑制はまた、血清を含まない増殖培地中でのSK−Mel28細胞についてもアッセイされており、その結果を図8に示す。図8に示すとおり、IC50が75μg/mlであるメタノール抽出物によるSK−Mel28細胞増殖の顕著な抑制が観察された。また、図7〜8には、SK−Mel28の増殖をメタノール抽出物が濃度依存的に抑制したことを示す結果が説明されている。
【0066】
COX−2の阻害の原因となるメタノール抽出物の成分を同定するために、Spondias mombin L.のメタノール抽出物をセミ分取カラムにおいて分画した。メタノール抽出物を、50μlのインジェクション量で、CTC AnalyticsTMPALTMインジェクター(液体クロマトグラフィー自動インジェクター)を使用するAgilentTMZorbaxTMXDB C18 21.2×100mmカラムにロードした。メタノール抽出物をShimadzuTMLC−6TMバイナリー高圧システムを使用して溶出した。第1の移動相は0.05%のトリフルオロ酢酸(「TFA」)を含む水であり、第2の移動相は0.05%のTFAを含むメタノールであった。15cmの長さのリストリクションキャピラリーによる、30μmの内径(「id」)で、約500:1のスプリット比となる2つのValco Yフィッティングを有するカラム後の分割(post−column split)を使用した。フラクションコレクターはAdvantecで、0.8分で画分を開始し、0.20分ごとの回収ステップに基づく時間設定を用いた。もちろん、その他の可変事項は同じまたは類似の分画を行うために用いられ得る。異なる時間に溶出するフラクションを回収し、窒素下またはフリーズドライにより乾燥し、比較的純粋なフラクションを得ることができる。乾燥したフラクションは、当該技術分野で知られた方法にしたがって、限定はされないが、炎症または癌に関連する疾患などの、COX−2を阻害することにより処置されうる任意の疾患または病気を処置するための医薬に導入することができる。
【0067】
Spondias mombin L.のメタノール抽出物のフラクションによるCOX−2の阻害をCOX−2阻害アッセイにより試験した。COX−2阻害アッセイのための乾燥フラクションを調製するために、乾燥したフラクションを0.5%DMSOの濃度となるように100%DMSOおよび水に懸濁させた。0.5%DMSOのみの対照をCOX−2阻害アッセイに含めてもよい。フラクションを、限定はされないが例えば、1.56〜100μg/mlの異なる濃度で試験した。10μg/mlでの、Spondias mombin L.メタノール抽出物のフラクションを使用したCOX−2阻害アッセイの結果を図9に示す。図9は、x軸に溶出時間(分)によるフラクションナンバーを示し(以後、溶出時間(分)は各フラクションの特定番号とする)、y軸にヒト組み換えCOX−2の阻害パーセンテージを示す。図9において確認されるように、それぞれ1分および2分で溶出したフラクション1および2は最大のCOX−2阻害を示し、フラクション8、9および10もまた顕著なCOX−2阻害を示した。フラクション3、4、5、6、7、11および12はいくらかの阻害を示した。
【0068】
最もCOX−2阻害を示したフラクション、特にフラクション1および2は、0.6ml/分の流速での水−アセトニトリルグラジエントによる溶出で、hypersil C18逆相カラム(100×2.1mm、5mm)での分析用液体クロマトグラフィー−質量分析(「LC−MS」)を使用して構造のプロファイリングを行った。図10A〜10Dは、フラクション1および2の質量分析を示す。図10A〜10Dに示されるとおり、フラクション1および2に存在しうる成分として、アナカルド酸誘導体またはジヒドロキシフェニルトリカルボン酸誘導体が挙げられる。
【0069】
Spondias mombin L.の抽出物およびNF−KappaBアッセイ
【0070】
NF−KappaBアッセイにより、Spondias mombin L.のメタノール抽出物、Spondias mombin L.の水抽出物、Spondias mombin L.のヘキサン抽出物が、ヒト胎児腎臓293細胞においてインビトロで炎症応答を抑制することが示された。ヒト胎児腎臓293細胞においてインビトロでの炎症応答を試験するための、Spondias mombin L.の酢酸エチル抽出物によるNF−KappaBアッセイの結果は結論に至らなかった(inconclusive)。NF−KappaBは転写因子である。NF−KappaB活性化/発現は多くの初期炎症応答の1つであり、炎症の指標であることは、当該技術分野の当業者により理解されるであろう。NF−KappaB活性化の阻害は、対応する炎症の阻害に関与しうる。よって、NF−KappaB活性化を阻害する抽出物は患者における炎症を処置しうる。図13〜20は、NF−KappaBの活性化における、Spondias mombin L.のメタノール抽出物、Spondias mombin L.の水抽出物、Spondias mombin L.のヘキサン抽出物の効果を試験するためのNF−KappaBレポーター遺伝子アッセイの結果を示す。ヒト胎児腎臓293細胞を、ホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流にNF−KappaB応答エレメントを含むDNAプラスミドによりトランスフェクションした。NF−KappaBが活性化した場合、ルシフェラーゼの発現が増加する。ルシフェラーゼの発現はルシフェラーゼが光を産出する酵素反応により測定される。高度の光はNF−KappaB活性化の増加に対応する。ヒト胎児腎臓293細胞はプレートに播種し、活性炭処理済み培地中に一晩おいた。
【0071】
TNF(腫瘍壊死因子)およびPMA(ホルボールエステル)の両方がNF−KappaBの強力な活性化剤として知られている。ヒト胎児腎臓293細胞をDMSOのみおよび20ng/mlの濃度のPMAに接触させ、第2の実験でDMSOのみおよび50ng/mlの濃度のTNFに接触させ、上記処理群のそれぞれに、DMSOに溶解させた、20μg/ml、2.0μg/mlまたは0.2μg/mlの用量範囲のSpondias mombin L.のメタノール抽出物、Spondias mombin L.の水抽出物およびSpondias mombin L.のヘキサン抽出物を加え、一晩インキュベートした。ルシフェラーゼアッセイのために翌日、細胞を回収し、溶解させた。各処理後に残存するNF−KappaBの活性化パーセントを観測した。NF−KappaBの活性化はDMSOおよび既知の活性化剤(TNFまたはPMA)を含む対照に対して100%に標準化した。Spondias mombin L.のメタノール抽出物を使用したNF−KappaBアッセイの結果を図13〜14および図19〜20に記載する。図13および20は、PMA20ng/mlおよびSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞におけるNF−KappaB活性化を試験するための2つの別々の実験の結果を示すグラフである。図13に示すとおり、PMA20ng/ml処置群において、20μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞においてNF−KappaBの活性化は約53%であり、2μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞において約77%であり、およびの0.2μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞において約63%であった。図20では、PMA20ng/ml処置群において、20μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞においてNF−KappaBの活性化は約44%であり、2μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞において約54%であり、0.2μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞において約53%であった。図14および19は、TNF50ng/mlおよびSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞におけるNF−KappaB活性化を試験するための2つの別々の実験の結果を示すグラフである。図14に示すとおり、TNF50ng/ml処置群において、20μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞においてNF−KappaBの活性化は約72%であり、2μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞において約71%であり、0.2μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞において約101%であった。図19では、TNF50ng/ml処理群において、20μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞においてNF−KappaBの活性化は約85%であり、2μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞において約102%であり、0.2μg/mlのSpondias mombin L.のメタノール抽出物で処理した細胞において約79%であった。
【0072】
Spondias mombin L.の水抽出物を使用したNF−KappaBアッセイの結果を図15および16に記載する。図15は、PMA20ng/mlおよびSpondias mombin L.の水抽出物で処理した細胞においてNF−KappaB活性化を試験するための実験の結果を示すグラフである。図15に示されるとおり、PMA20ng/ml処置群において、20μg/mlのSpondias mombin L.の水抽出物で処理した細胞においてNF−KappaBの活性化は約63%であり、2μg/mlのSpondias mombin L.の水抽出物で処理した細胞において約50%であり、0.2μg/mlのSpondias mombin L.の水抽出物で処理した細胞において約74%であった。図16は、TNF50ng/mlおよびSpondias mombin L.の水抽出物で処理した細胞においてNF−KappaB活性化を試験するための実験の結果を示すグラフである。TNF50ng/ml処置群において、20μg/mlのSpondias mombin L.の水抽出物で処理した細胞においてNF−KappaBの活性化は約94%であり、2μg/mlのSpondias mombin L.の水抽出物で処理した細胞において約78%であり、および0.2μg/mlのSpondias mombin L.の水抽出物で処理した細胞において約103%であった。
【0073】
Spondias mombin L.のヘキサン抽出物を使用したNF−KappaBアッセイの結果を図17および18に記載する。図17は、TNF50ng/mlおよびSpondias mombin L.のヘキサン抽出物で処理した細胞においてNF−KappaB活性化を試験するための実験の結果を示すグラフである。図17に示すとおり、TNF50ng/ml処理群において、20μg/mlのSpondias mombin L.のヘキサン抽出物で処理した細胞においてNF−KappaB活性は約99%であり、2μg/mlのSpondias mombin L.のヘキサン抽出物で処理した細胞において約80%であり、0.2μg/mlのSpondias mombin L.のヘキサン抽出物で処理した細胞において約103%であった。図18は、PMA20ng/mlおよびSpondias mombin L.のヘキサン抽出物で処理した細胞においてNF−KappaB活性化を試験するための実験の結果を示すグラフである。図18に示すとおり、PMA20ng/ml処理群において、20μg/mlのSpondias mombin L.のヘキサン抽出物で処理した細胞においてNF−KappaB活性は約27%であり、2μg/mlのSpondias mombin L.のヘキサン抽出物で処理した細胞において約68%であり、0.2μg/mlのSpondias mombin L.のヘキサン抽出物で処理した細胞において約80%であった。
【0074】
Spondias mombin L.の抽出物および癌の増殖
【0075】
インビトロ細胞培養アッセイにより、Spondias mombin L.の酢酸エチル抽出物が癌細胞系における細胞コロニー形成の増殖を抑制することが示された。Spondias mombin L.の水抽出物、Spondias mombin L.のヘキサン抽出物、およびSpondias mombin L.のメタノール抽出物を用いてのインビトロ細胞培養アッセイの結果は結論的ではなかった。図11は、3つの乳癌細胞系:MCF−7(エストロゲン受容体ポジティブヒト乳癌細胞系)、ヒト乳癌細胞系MDA−MB−231(ヒトの転移性乳管癌サンプル由来のエストロゲン非依存性癌細胞系)、およびMDA−MB−361(脳転移組織由来のエストロゲン受容体ポジティブヒト乳癌細胞系)を使用した結果を示す。
【0076】
ヒト乳癌細胞系MCF−7、MDA−MB−231、MDA−MB−361の細胞を、培養プレート上の血清を補填した培地に播種した。10μg/mlの濃度でDMSOに溶解させたSpondias mombin L.の酢酸エチル抽出物に細胞を接触させた。7〜10日の増殖アッセイを行った。50細胞が1コロニーに対応するように、染色して手動で計測することにより細胞コロニー数をカウントして細胞の増殖を観察した。図11のグラフにおける結果は、Spondias mombin L.の酢酸エチル抽出物への初期の暴露を生存し、目視可能なコロニーを形成するまでに増殖した細胞の数を示す。各細胞系のコロニーカウント(コロニー数)の生データを、処置群(100%)の対照により標準化した。Spondias mombin L.の酢酸エチル抽出物に接触させた各細胞系の標準化された細胞コロニーカウントを図11に示し、各バーはSpondias mombin L.の酢酸エチル抽出物に接触させた特定の細胞系における2度のサンプルの平均である。図11のグラフは、x軸に細胞系を、y軸に対照を100%として標準化した細胞コロニーカウントを示す。図11に示すとおり、Spondias mombin L.の酢酸エチル抽出物は、他の細胞系と比較して最大の程度でMDA−MB−231の増殖を阻害し、標準化した細胞コロニーカウントで12.7%であり、MCF−7の増殖は標準化した細胞コロニーカウントで約57.2%であり、MDA−MB−361は標準化した細胞コロニーカウントで約83%であった。
【0077】
実験結果は、Spondias mombin L.の酢酸エチル抽出物は、インビボでの乳癌腫瘍増殖を抑制しうることを示している。雌のヌードマウス10匹にReduced Growth Factor Matrigel(100μl、BD BiosciencesTM)および5×10MCF−7細胞(エストロゲン受容体ポジティブヒト乳癌細胞)を乳房脂肪体に注射し、雌のヌードマウス10匹にReduced Growth Factor Matrigel(100μl、BD BiosciencesTM)および5×10MDA−MB−231を皮下背面部位に注射し、上記の全ては50μlリン酸バッファー生理食塩水(「PBS」)に懸濁させた。MDA−MB−231細胞を注射したマウスについては注射後約10日で、MCF−7細胞を注射したマウスについては注射後約15日で腫瘍が形成し、その後、ヌードマウスを処置群に無作為に分けた。ヌードマウスの1群には、50μlのDMSO:PBS溶液に懸濁させたSpondias mombin L.の酢酸エチル抽出物(最終濃度が8mg/ml)を20mg/kg/マウスで毎日腹腔内に注射した。DMSO:PBS溶液に懸濁させる前に、乾燥した酢酸エチル抽出物を純エタノールに再懸濁させ、等分し、エタノールを蒸発させ、乾燥粉末が得られた。ヌードマウスの対照群は、1:5のDMSO:PBS溶液(「対照」)のみで処理した。ヌードマウスには、対照またはSpondias mombin L.の酢酸エチル抽出物のいずれかを投与した。腫瘍は一日おきに計測した。腫瘍容積は、腫瘍の短軸および長軸をキャリパーで計測し(mm)、4.19×(長軸/2)×(短軸/2)2の式を用いることにより腫瘍容積を算出し、立方ミリメートル(mm)の腫瘍容積を得た。腫瘍容積値は標準化した。
【0078】
上記方法を使用する2度の実験結果を、y軸にmmで標準化した腫瘍容積が表示され、x軸にはMDA−MB−231細胞またはMCF−7細胞の注射後日数が表示された図12および図21に示す。図12に示された実験においてマウスにMCF−7細胞を乳房脂肪体に注射し、対照群として5匹のマウスを、Spondias mombin L.の酢酸エチル抽出物を8mg/mlの最終濃度で連続する14日間のそれぞれで投与した群として5匹のマウスを用いた。腫瘍の計測を1日ごとに行い、注射後15日で開始した。折れ線グラフ10はSpondias mombin L.の酢酸エチル抽出物を投与した5匹のヌードマウスの結果を示し、折れ線グラフ12は、対照を投与した5匹のヌードマウスの結果を示す。図21に示された実験において、10匹の雌ヌードマウスには、2カ所の皮下背面部位にMDA−MB−231を注射した。折れ線グラフ14は最終濃度8mg/mlでSpondias mombin L.の酢酸エチル抽出物を投与した5匹のヌードマウスの結果を示し、折れ線グラフ16は、対照を投与した5匹のヌードマウスの結果を示し、それぞれは注射後10日に開始した。図12および21に示されるとおり、Spondias mombin L.の酢酸エチル抽出物は、対照と比較して腫瘍の増殖を抑制する。
【0079】
腹腔内注射により状態を処置する成分が、患者へ非経口的な投与された場合に状態を処置しうることは、当該技術分野の当業者には理解される。Spondias mombin L.の抽出物は、乳癌の処置のために非経口的に患者に投与されうる。
【0080】
Spondias mombin L.の抽出物は、本明細書に記載した方法を使用して製造されうる。メタノール、または限定はされないが、極性、非極性、中程度の極性または水性溶媒などのいくつかの他の溶媒が、少なくとも部分的にCOX−2を阻害するSpondias mombin L.の成分を抽出するために使用されうる。COX−2は一般的に炎症と呼ばれる免疫応答に寄与する酵素であるので、COX−2の阻害は炎症の抑制をもたらすことは、当該技術分野の当業者に理解される。COX−2の阻害が癌細胞のアポトーシスまたは癌細胞の増殖の抑制をもたらすこともまた、当該技術分野の当業者に理解される。よって、Spondias mombin L.の抽出物は医薬に導入してもよく、および癌細胞の増殖を抑制するか、または癌細胞のアポトーシスを誘導するかのいずれかによる癌の処置が期待されうる。当該抽出物はまた、濃縮または乾燥し、医薬に導入されうる。あるいは、COX−2を阻害する特定のフラクションをさらに単離するために、当該抽出物を分画してもよい。限定を伴わない例として、フラクション1〜2およびフラクション8、9および10は、その任意の組合せでまたは各々で、患者のCOX−2を少なくとも部分的に阻害する医薬に導入してもよい。
【0081】
Spondias mombin L.の抽出物を含有する医薬は、炎症の処置または癌の処置のために、患者へ治療有効量で投与してもよい。医薬はSpondias mombin L.の抽出物を含有するように調製してもよく、当該技術分野の当業者により知られた手法により、患者に投与するために製剤化してもよい。
【0082】
Spondias mombin L.の抽出物を含有する医薬は、化合物を混合し配合するために、当該技術分野の当業者に知られた慣用の手法により調製されうる。例えば、Spondias mombin L.のメタノール抽出物または酢酸エチル抽出物は、またはフラクション1〜2またはフラクション8、9および10の単独または組み合わせなどのSpondias mombin L.のメタノール抽出物または酢酸エチル抽出物のフラクションは、治療有効量で、患者を処置するための抽出物の経口投与または腸内投与を容易にするために、医薬として許容される賦形剤の使用により、溶液、懸濁液、粉剤、カプセル、錠剤、または液剤に製剤化されうる。あるいは、Spondias mombin L.の抽出物またはSpondias mombin L.の抽出物の特定のフラクションは、非経口投与を容易にするために、医薬として許容される賦形剤に導入してもよい。別の態様において、Spondias mombin L.の抽出物またはSpondias mombin L.の抽出物のフラクションの単独または組み合わせは、局所適用または経皮適用のために、医薬として許容な賦形剤を使用して、溶液、クリームまたはゲルに導入されうる。
【0083】
上述の具体的な詳細事項はこの発明の特定の態様を記載するが、当該技術分野の当業者であれば、添付の特許請求の範囲に記載した発明の要点および範囲からはずれることなく、また均等論を考慮することなく、この発明の細部において種々の変更がなされうることを認識するであろう。したがって、この発明は、本明細書に示されたおよび記載された具体的な詳細事項に限定されないことが了解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のSpondias mombin L.の抽出物を患者に投与することを含む、COX−2の阻害方法。
【請求項2】
前記抽出物が、メタノール抽出物;酢酸エチル抽出物;ヘキサン抽出物;および水抽出物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療有効量のSpondias mombin L.の抽出物を患者に投与することを含む、炎症の処置方法。
【請求項4】
前記抽出物が、メタノール抽出物;酢酸エチル抽出物;ヘキサン抽出物;および水抽出物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
治療有効量のSpondias mombin L.の抽出物を患者に投与することを含む、癌の処置方法。
【請求項6】
前記抽出物が、メタノール抽出物;酢酸エチル抽出物;ヘキサン抽出物;および水抽出物からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
医薬として許容な賦形剤;および当該賦形剤中に懸濁した治療有効量のSpondias mombin L.の抽出物を含む医薬。
【請求項8】
極性溶媒;非極性溶媒;中程度の極性溶媒;および水性溶媒からなる群から選択される溶媒を使用して抽出された成分を含む、Spondias mombin L.の抽出物。
【請求項9】
Spondias mombin L.の抽出物の製造方法であって、
エクストラクターおよび溶媒を用いてSpondias mombin L.材料を処理することにより成分溶液を作成すること;および
当該成分溶液から液体を少なくとも部分的に除去することにより抽出物を製造すること
を含む、前記方法。
【請求項10】
前記溶媒が、極性溶媒;非極性溶媒;中程度の極性溶媒;および水性溶媒からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒が、メタノール;酢酸エチル;ヘキサン;および水からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抽出物を分画することにより、前記抽出物の少なくとも1つのフラクションを得ることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
セミ分取カラムにおいて前記抽出物を分画することにより、前記抽出物の少なくとも1つのフラクションを得ることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記溶媒がメタノールを含み、前記の少なくとも1つのフラクションが、1分、2分、3分、4分、5分、6分、7分、8分、9分、10分、11分および12分からなる群から選択される溶出時間を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
Spondias mombin L.の抽出物の製造方法であって、
Spondias mombin L.材料を乾燥させること;
前記材料をすりつぶすこと;
エクストラクターおよび溶媒を用いて前記材料を処理することにより成分溶液を作成すること;および
当該成分溶液から液体を少なくとも部分的に除去することにより抽出物を製造すること
を含む、前記方法。
【請求項16】
治療有効量のSpondias mombin L.の抽出物を患者に投与することを含む、乳癌の処置方法。
【請求項17】
前記抽出物が、メタノール抽出物;酢酸エチル抽出物;ヘキサン抽出物;および水抽出物からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記治療有効量のSpondias mombin L.の前記抽出物が、医薬として許容な賦形剤中で、非経口で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
治療有効量のSpondias mombin L.の抽出物を患者に投与することを含む、NF−KappaB活性化の阻害方法。
【請求項20】
前記抽出物がヘキサン抽出物を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抽出物がメタノール抽出物を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記抽出物が水抽出物を含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図21】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2010−535236(P2010−535236A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520156(P2010−520156)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/071626
【国際公開番号】WO2009/018363
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(510006727)セルバメディカ・エルエルシー (3)
【Fターム(参考)】