Tナット
【課題】高い密封性が得られ、ガイドピンやボルトの当接による密封部材のずれや抜け落ちを抑制して、溶融樹脂や塗料等がTナットの軸部内に侵入することを抑制できるTナットを提供する。
【解決手段】Tナット1は、筒状の軸部4と軸部4の第1の端部から外方に延出するフランジ部5とを有し、軸部4は、両端が開口し内周面に雌ねじ4cが設けられ、軸部4の第1の端部側開口を密封する弾性樹脂製の密封部材3とを備え、密封部材3は、軸部4の内周面に密着し、第1の端部側が開口する円筒部3aと、円筒部3aの第2の端部側端縁に連続し、頂点を第2の端部側に向けたドーム状の蓋部3bとを有し、円筒部3aは、外周面に雌ねじ4cの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部3cを含み、第1の端部側を上側として、密封部材3の上側端縁は、フランジ部5の上側端面5aと同一面上に、又は端面5aより下側に位置する。
【解決手段】Tナット1は、筒状の軸部4と軸部4の第1の端部から外方に延出するフランジ部5とを有し、軸部4は、両端が開口し内周面に雌ねじ4cが設けられ、軸部4の第1の端部側開口を密封する弾性樹脂製の密封部材3とを備え、密封部材3は、軸部4の内周面に密着し、第1の端部側が開口する円筒部3aと、円筒部3aの第2の端部側端縁に連続し、頂点を第2の端部側に向けたドーム状の蓋部3bとを有し、円筒部3aは、外周面に雌ねじ4cの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部3cを含み、第1の端部側を上側として、密封部材3の上側端縁は、フランジ部5の上側端面5aと同一面上に、又は端面5aより下側に位置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸部内へ塗料や油、溶融樹脂、異物等が侵入することを防止する密封部材を備えたTナットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板材等にTナットを打ち込んだ後、板材上にポリウレタンフォームを形成したり、この板材等を塗装や表面処理のために油や塗料に浸漬したりする場合、溶融樹脂や塗料、油等がTナットの軸部内に侵入して雌ねじに付着すると、これらの侵入物がねじの間に噛みこまれ、ボルトを螺入する障害となるため、軸部内に溶融樹脂等が侵入しないよう各種の工夫がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、Tナットの第1の端部側開口部を粘着テープで閉塞するテープドTナットが提案されており、特許文献2では、第1の端部側開口部を閉塞する内側フランジ部を軸部やフランジ部と同じ金属材料で一体的に形成するTナットが提案されている。また、特許文献3では、図23に示すように、樹脂等により略円板状に形成した中実の封止部材10aにより第1の端部側開口部を封止するTナット10が提案されている。
【0004】
一方、従来Tナットを板やテーブル等の板材に打ち込む場合、図4に示したような打ち込み装置が用いられる。この種の打ち込み装置では、Tナットを打ち込む際にTナットの横ずれを防止するため、Tナットを打ち込むプッシュバー101の先端にガイドピン102が設けられており、このガイドピン102をTナットの一端側開口から軸部に挿入することでTナットの横ずれを防止するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−17250号公報
【特許文献2】特開2006−183798号公報
【特許文献3】特開2010−101372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1や特許文献3のTナットは、ガイドピンが設けられた打ち込み機で打ち込むと、粘着テープや封止部材がガイドピンに突かれて破れたり軸部内へ入り込んでしまったりする。また、特許文献2のTナットでは、Tナットの内側フランジ部がガイドピンに突かれて変形したり、ガイドピンが金属製の内側フランジ部に当たって損傷したりするおそれがある。
【0007】
従って、特許文献1から特許文献3で提案されたTナットを打ち込むためには、ガイドピンがなく、ガイドピンの代わりにTナットの横ずれを防止する手段が別途講じられた打ち込み装置を用いる必要があり、かかる装置を従来のガイドピンを備えた打ち込み装置に加えて別途導入することは、Tナットの打ち込みを行う業者には負担が大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、一体の金属材料により成型した筒状の軸部と前記軸部の第1の端部から外方に延出するフランジ部とを有し、前記軸部は、第1の端部及び第1の端部と逆側の第2の端部が開口し、内周面に雌ねじが設けられるTナットであって、前記軸部の第1の端部側開口を密封する弾性樹脂製の密封部材を備え、前記密封部材は、前記軸部の内周面に密着し、前記第1の端部側が開口する円筒部と、前記第2の端部側において前記円筒部の端縁に連続し、頂点を前記第2の端部側に向けたドーム状の蓋部とを有し、前記円筒部は、外周面に前記雌ねじの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部を含み、前記軸部の第1の端部側のフランジ部を上側とし、かつ前記軸部の第2の端部側を下側とした際に、前記密封部材の上側の端縁は、前記フランジ部の上側の端面と同一面上に、又は前記フランジ部の上側の端面より下側に位置することを特徴とする。
【0009】
このように、本発明のTナットは、密封部材が、第1の端部側に開口を備える円筒部及びドーム状の蓋部を備え、これにより、第1の端部側に開口を有する内部空間を備えることとなるため、打ち込み機で板材等に打ち込む際に、軸部の横ずれを防止するためのガイドピンをこの内部空間に収容することができ、ガイドピンを備えた打ち込み機を用いて、板材等に打ち込むことができる。
【0010】
また、本発明のTナットは、密封部材が弾性樹脂製であるから、ガイドピンが長くて密封部材の内面に当接するような場合でも、密封部材がガイドピンに押されて弾性変形することにより、内部空間を広げてガイドピンを収容することができる。さらに、本発明のTナットは、第2の端部側から軸部に螺入したボルトの先端が密封部材に当接しても、密封部材が弾性変形することで、密封部材が軸部から抜け落ちたり位置ずれを起こしたりすることを抑制することができる。
【0011】
また、本発明のTナットは、円筒部の外周面に雄ねじ状の凸条部を備え、この凸条部が軸部内周面の雌ねじの谷間に嵌り込むことで、密封部材が軸部の軸芯方向にずれることを抑制することができ、雄ねじ状の凸条部が雌ねじの谷間の空間を密封することで、当該密封部材の密封性を高め、第1の端部方向の開口部からの溶融樹脂等の侵入を抑制することができる。
【0012】
また、本発明のTナットは、軸部の第1の端部側を上側とし、かつ第2の端部側を下側とした際に、密封部材の上側の端縁が、フランジ部の上側の端面と同一面上に、又はフランジ部の上側の端面より下側に位置するとともに、密封部材の上側が開口している。これにより、当該Tナットを打ち込み装置の搬送シュートにより搬送する際、密封部材がシュートの内壁に接触する面積を無くすることができるか、又は極めて少なくできるため、当該Tナットと搬送シュート内壁との摩擦を格段に少なくして、当該Tナットをスムーズに搬送することができるとともに、搬送中に密封部材がシュート内壁との摩擦により位置ずれを起こし、Tナットの密封性が損なわれることを抑制することができる。
【0013】
また、前記密封部材は、前記円筒部の前記第2の端部側端縁から前記第2の端部側に延出し前記蓋部の外周を囲む外筒部を備え、前記外筒部が、外周面に前記雌ねじの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部を有し、前記軸部の第2の端部側開口からボルトを螺入した際に、前記外筒部を前記雌ねじと前記ボルトの間に噛み込ませることができるように構成されていることが好ましい。
密封部材がこのような外筒部を備え、外筒部の外周面に雌ねじの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部を有することで、より密封部材の密封性を高めることができる。また、外筒部が軸部の雌ねじとボルトの間に噛み込まれることにより、ボルトの緩みを抑制することができる。
【0014】
また、前記密封部材は、内面に突起を備えることが好ましい。これにより、密封部材が位置ずれを起こした際に、この突起に指の先端を当てて密封部材のずれを直すことができる。
【0015】
また、前記密封部材は、前記蓋部の外面に突起を備えることが好ましい。こうすることで蓋部外面に設けた突起をボルトの先端に当接させ、突起とボルト先端との間に生じる摩擦力によりボルトの緩みを抑制することができる。
【0016】
また、本発明は、一体の金属材料により成型した筒状の軸部と、前記軸部の第1の端部から外方に延出するフランジ部とを有し、前記軸部は、第1の端部及び第1の端部と逆側の第2の端部が開口し、内周面に雌ねじが設けられるTナットであって、弾性樹脂製の薄膜からなり前記軸部の第1の端部側開口を密封する密封部材を備え、
被打ち込み部材に打ち込まれる際の前記軸部の横ずれを防止するために前記第1の端部側から前記軸部に挿入される外部部材を、前記軸部内に収容するよう前記密封部材が弾性変形可能なことを特徴としてもよい。
密封部材が、弾性樹脂製の薄膜からなり、被打ち込み部材に打ち込まれる際の軸部の(Tナットの)横ずれを防止するために第1の端部側から前記軸部に挿入されるガイドピン等の外部部材を、前記軸部内に収容するよう弾性変形可能であることで、密封部材がガイドピン等に衝突して損傷したり、密封部材とTナットのフランジ部や軸部との接着部分が外れたりすることを抑制し、Tナットの密封性が損なわれることを抑制することができる。
【0017】
また、前記薄幕からなる前記密封部材は、前記第1の端部側を上側とし、かつ前記第2の端部側を下側とした際に、前記フランジ部の上側の端面に接着することにより前記軸部の第1の端部側開口を密封することが好ましい。こうすることで、密封部材の形状を簡素化できるとともに、容易に密封部材をTナットに接着することができる。
【0018】
また、前記薄幕からなる密封部材が、前記軸部の内周面に接着することにより前記軸部の第1の端部側開口を密封してもよい。こうすることで、密封部材を軸部内に収めることが可能となり、密封部材が搬送シュートの内壁に接触することを回避し、スムーズにTナットを搬送することができるとともに、搬送中に密封部材が搬送シュート内壁との摩擦により位置ずれを起こしてTナットの密封性が損なわれることを抑制することができる。
【0019】
また、前記軸部は、外周面に前記雌ねじの一部を不整化するための凹部を備えることが好ましい。こうすることで、雌ねじの不整化された部分に、当該Tナットに螺入されるボルトの雄ねじを乗り上げさせて、ボルトの緩みを抑制することができる。
【0020】
また、本発明のTナットは、前記フランジ部が、前記第1の端部から前記第2の端部に向けた爪又は突起を備えるTナットを含む。
【0021】
また、本発明のTナットは、前記フランジ部が、前記第1の端部側から見て、外周縁の少なくとも一部が直線で構成されているTナット、正方形又は長方形をなすTナット、及び円形又は楕円形をなすTナットを含む。
【0022】
また、本発明のTナットは、前記フランジ部が、前記第1の端部側から見て、略八角形の中央部と、前記中央部の前記軸部を挟んで前記軸部の第1の径方向に対向する一対の端辺から、それぞれ外方へ張り出す一対の張出し部とを備え、前記張出し部が、前記第1の端部側から見て、前記端辺の両端から外方へそれぞれ延出する一対の直線状の辺と、前記一対の直線状の辺の外側の端点を結ぶ直線又は内方へ湾曲する湾曲辺とを有し、前記フランジ部は、各張り出し部に一対ずつ計2対で4本の爪を備え、前記一対の爪は、前記フランジ部の外周縁を切り起こして前記一対の直線状の辺から前記第2の端部側に延びるよう設けられており、前記4本の爪は、前記軸部を挟んで、前記第1の径方向及び前記第1の径方向と直交する第2の径方向について対称に配設されているTナットを含む。
【0023】
また、本発明は、前記2対で4本の爪が、前記第2の端部側から見て、幅方向を前記第1の径方向に略平行にして、2本ずつ2列に配設されてもよい。本発明は、前記軸部が、被打ち込み部材に対してかしめ予定されたかしめ予定部を第2の端部側に含み、前記かしめ予定部は、前記軸部の内周面に雌ねじが形成される部分よりも肉薄であるTナットを含む。
【0024】
また、本発明は、前記軸部が、前記第1の端部側において、外周面及び/又は内周面が拡径する拡径部を備えてもよく、前記軸部が、内周面の全長にわたって雌めじが形成されていてもよい。
【0025】
ここで「円筒」とは、軸芯に垂直な断面が円形を有する筒をいい、断面の外径及び内径が一定のものだけでなく、軸方向に外径及び/又は内径が変化するものも含むものとする。「雄ねじ状の凸条部」とは、前記軸部の雌ねじの谷間の空間を密封する機能を持つ凸条であれば、雌ねじに螺合する機能を有するものでも、有さないものでもよい。「軸部内」とは、軸部を貫通する孔の内部をいい、この孔に連続してフランジ部を貫通する孔の内部を含むものとする。「軸部の内周面」とは、軸部を貫通する孔の内周面をいうものとし、この孔に連続してフランジ部を貫通する孔の内周面を含むものとする。また、「直線」とは、加工のひずみ等により真の直線からやや変形した線を含むものとする。爪の「幅方向」とは、爪の厚み方向及び突出方向に垂直な方向をいう。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明のTナットによれば、高い密封性が得られるとともに、ガイドピンやボルトの当接による密封部材のずれや抜け落ちを抑制することができるため、溶融樹脂や塗料等がTナットの軸部内に侵入することを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係るTナットの縦断面図、(c)は斜視図、(e)は底面図である。(b)は、別のTナットの縦断面図、(d)は斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るTナットであって、図1とは別のTナットを示したものである。
【図3】(a)は、図1に示したTナットの密封部材の側面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【図4】(a)は、本発明のTナットの打ち込みに使用する打ち込み装置の一例を示す正面図、(b)は側面図である。
【図5】図4に示した打ち込み装置の搬送シュートにより搬送中のTナットを示した説明図である。
【図6】図4に示した打ち込み装置で、本発明のTナットを打ち込む様子を示した模式図である。
【図7】図1のTナットを板材に固定した状態を示した模式的断面図である。
【図8】図1のTナットを事務用椅子に取付けた状態を示す模式的断面図である。
【図9】図1のTナットにボルトを羅入した状態を示す模式的断面図である。
【図10】(a)は、本発明の第2実施形態に係るTナットの縦断面図、(b)は別のTナットの縦断面図である。
【図11】(a)は、図10に示したTナットの密封部材の側面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【図12】図10のTナットにボルトを羅入した状態を示す模式的断面図である。
【図13】(a)は、本発明の第3実施形態に係るTナットの縦断面図、(c)は、斜視図、(b)は別のTナットの縦断面図、(d)は、斜視図である。
【図14】(a)は、図13に示したTナットの密封部材の側面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【図15】(a)は、本発明の第4実施形態に係るTナットの縦断面図、(b)は別のTナットの縦断面図である。
【図16】(a)は、図15に示したTナットの密封部材の側面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【図17】(a)は、本発明の第5実施形態に係るTナットの縦断面図、(c)は、斜視図、(b)は別のTナットの縦断面図、(d)は斜視図である。
【図18】(a)は、本発明の第6実施形態に係るTナットの縦断面図、(b)は別のTナットの縦断面図である。
【図19】(a)は、本発明の第7実施形態に係るTナットの縦断面図、(c)は、斜視図、(b)は別のTナットの縦断面図、(d)は斜視図である。
【図20】(a)は、本発明の第8の実施形態に係るTナットの縦断面図、(b)は
【図21】本発明のTナットに用い得るフランジの他の形態を示した平面図と側面図である。
【図22】(a)は、本発明の第9実施形態に係るTナットの縦断面図、(b)は斜視図である。(c)及び(d)は、図4に示した打ち込み装置で(a)のTナットを打ち込む様子を示した模式図である。
【図23】従来の密封部材を備えるTナットの縦断面図である。
【図24】図3に示した密封部材の変形例である。
【図25】本発明のTナットに用い得る爪の例を示した部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。ただし、本願発明は以下の実施の形態に限られるものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るTナット1である。図1に示すように、Tナット1は、金属より一体に成型されるTナット本体2と、Tナット本体2とは別途形成される密封部材3とを備えている。
Tナット本体2は、金属材料を鍛造加工することにより、又は金属板をプレス加工することにより一体に得られ、筒状の軸部4と、軸部4の第1の端部から外方に延出するフランジ部5とを有している。
【0029】
軸部4は、両端が開口した中空の筒状をなし、第1の端部側(以下「上側」ともいう)の雌ねじ形成部4aと、第1の端部側と逆側の第2の端部側(以下「下側」ともいう)のかしめ予定部4bとからなる。雌ねじ形成部4aの内周面には、雌ねじ4cが形成される。かしめ予定部4bは、雌ねじ形成部4aより肉薄に成型され、内周面に雌ねじが設けられていない。尚、図中4g及び4hは、それぞれ軸部4の第1の端部側の端縁及び第2の端部側の端縁を表している。
【0030】
軸部4の外周面は、フランジ部5の下側端面との境界部において第1の端部側に向かい徐々に拡径する他は、段差のない直管状に形成されている。また、軸部4の内周面は、フランジ部5の上側端面5aとの境界部において、端面5a側に向かって徐々に拡径するよう設けられている。ただし、このような拡径部を設けず、端面5aと軸部内周面とが、略垂直に交わるよう形成されていてもよい。
【0031】
図1(b)、(d)に示すように、雌ねじ形成部4aの外周部に、その一部を内方へ押しつぶして略矩形の凹部4dを設けてもよい。凹部4dを設けることで、その内周面の雌ねじの一部を内方へ膨出させて、不整部4eが形成される。こうすることで、軸部4にボルトを螺入した際に、ボルトの雄ねじを不整部4eに乗り上げさせて、ボルトの緩みを抑制することができる。
【0032】
フランジ部5は、図1(c)、(e)に示すように、底面視で、概八角形の中央部5bと、中央部5bの軸部4を挟んで軸部4の第1の径方向に対向する一対の端辺5f,5fからそれぞれ外方へ張り出す一対の張出し部5c,5cとを備えている。フランジ部5は、縦方向の全幅bが、一対の張出し部5c,5cを含めた横方向の全幅aより大きくなるよう設けられている。
張出し部5cは、前記端辺の両端から外方へそれぞれ延出する一対の直線状の辺5d,5dと、前記一対の直線状の辺の外側の端点5g,5gを結ぶ線5eとで囲まれており、一対の直線状の辺5d,5dから第2の端部側に延びる一対の爪6,6を備えている。爪6は、外方を向く端面がギザギザの形状に形成されており、一対の張出し部5c,5cにそれぞれ一対ずつ、計2対で4本設けられている。
爪6は、Tナット本体2に形成される金属板において、直線状の辺5d,5dの外側部分を切り起こすことにより形成される。2対で4本の爪6,…は、軸部4を挟んで、第1の径方向及び第1の径方向と直交する第2の径方向について対称に配設され、幅方向が軸部4側から外側に向かってやや放射状に広がるように設けられている。ただし、図21(f)に示すように、2対で4本の爪6,…は第2の端部側から見て、幅方向を第1の径方向に略平行にして、2本ずつ2列に設けられていてもよい。
【0033】
フランジ部5の端点5g、5gを結ぶ線5eは、図1(c)、(e)及び(d)に示すように直線であってもよいし、図2(a)及び(b)に示すように、内側に湾曲する湾曲線でもよい。また、フランジ部5は、図2(c)に示すように、一対の爪6,6の間に、フランジ部5の外側部分を切り起こして設けた爪7有してもよいし、図2(d)に示すように、フランジ部5を外側から押圧して変形させて設けた爪8を有してもよい。
このように、線5eを内側に湾曲する湾曲線に形成したり、一対の爪6,6間に爪7や爪8を設けたりすることで、Tナット1が搬送シュート104で搬送される際に、前後して搬送されるTナット1のフランジ部5が重なることを抑制することができる。
尚、一対の端辺5f,5fは、説明の便宜上仮想した辺であって、フランジ部5に実際に設けられるものではない。
【0034】
密封部材3は、図1(a)、図3に示すように、第1の端部側が開口する円筒部3aと円筒部3aの第2の端部側端縁から延出し、頂点を前記第2の端部側に向けたドーム状の蓋部3bとを備えている。円筒部3aは、外周面に雄ねじ状の凸条部3cを有している。凸条部3cと雌ねじ4cとは、互いの尾根部と谷部とを嵌め合いにして、雌ねじ4cの谷間の空間を密封しており、このようにして軸部4の内周面と円筒部3aの外周面とが密着している。
【0035】
密封部材3は、図1(a)とは逆に、軸部4の第1の端部側のフランジ部5を上側とし、かつ前記第2の端部側を下側とした際に、上側の端縁が、フランジ部5の上側の端面5aと同一面上に、又は端面5aより下側に位置するよう設けられる。また、密封部材3の上側の端縁は、端面5a側に向かって、軸部4と端面5aとの境界部の内周面に倣って徐々に拡径しながら肉薄となり、外周面が先端まで軸部内壁に密着するよう設けられている。
【0036】
蓋部3bの内周面は、図24(a)に示すように、突起3dを備えることが好ましい。こうすることで、密封部材3aが位置ズレを起こしたとき。この突起3dに指を当てて密封部材3の位置ズレを修正することができる。
【0037】
また、蓋部3bは、図24(b)、(c)に示すように外面に突起3e,3fを備えることが好ましい。こうすることで、突起3e,3fをボルトAの先端面に当接させて、ボルトAの緩みを抑制することができる。また、(b)のように、外周部に突起3eを備えることでTナット1にボルトAを螺入させた際、雌ねじ4cとボルトAの間に突起3eを噛みこませることができ、ボルトAの緩みを抑制することができる。
尚、後述する第2実施形態から第8実施形態においても、蓋部に3d、3e及び3fと同様の突起を設けることができる。
【0038】
密封部材3を形成する弾性樹脂としては、特に限定されないが、ゴム又は熱可塑性エラストマーが用いられる。このゴムとしては、例えば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリクロロプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、シリコーンゴム等が用いられる、熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等が用いられる他、これらを混合して得られたものを用いることもできる。
尚、後述する実施形態2〜実施形態8の密封部材を形成する弾性樹脂として、実施形態1の密封部材3を形成する弾性樹脂を好適に用いることができる。
【0039】
次に、図4〜図9を用いてTナット1の使用方法について説明する。
図4は、本実施形態のTナット1の打ち込みに使用する打ち込み装置100である。Tナット1は、整列供給部103において整列され、搬送シュート104によりTナット打ち込み部105に搬送される。
【0040】
搬送シュート104は、図5に示すように帯状部材の幅方向の両端に一対の側壁を設けて形成されている。搬送シュート104は、この一対の側壁から内側に延出する一対の鍔部104a,104aを形成することにより、側壁の内面側の一対の角溝104b,104bと、搬送シュート104の長手方向の両端に連続する帯状の開口部104cとを設けている。
【0041】
Tナット1は、搬送シュート104の一対の角溝104b,104bにフランジ部5の縦方向の両端部を挿入し、4本の爪6,…を帯状の開口部104cから突出させた状態で搬送される。Tナット1の4本の爪6,…は、帯状の開口部104cを倣うガイドとなるよう構成されている。Tナット1は、密封部材3の第1の端部側端縁が、フランジ部5の上側端面5aと同一面上、又は端面5aより下側に位置するよう、換言すると密封部材3の第1の端部側端縁が、端面5aから上側へ突出しないよう設けられているため、密封部材5が搬送シュート104の内壁に接触することがほとんどなく、密封部材がTナット1の搬送を妨げることがない。また、4本の爪6,…を帯状の開口部104cを倣うガイドとなるよう構成することで、フランジ部5の形状を異なる形状とすることが可能である。
尚、本発明のTナットは、図5に示したような搬送シュート104で搬送できないようなTナットを含むことは言うまでもない。
【0042】
図6は、打ち込み機100でTナット1を板材Bに打ち込む様子を示したものである。図6(a)は、Tナット1を打ち込む前の状態を、図6(b)は、打ち込んだ後の状態を示している。図6(b)に示すように、フランジ部5をプッシュバー101で押圧してTナット1を板材Bに設けられた下孔に打ち込む。このとき、プッシュバー101の先端に設けられたガイドピン102が、Tナット1の軸部4に挿入されてTナット1の横ずれを防止する。
【0043】
このとき、ガイドピン102は、密封部材3の第1の端部側の開口から、密封部材3の内部の空間に収容される。また、ガイドピン102が長いためにガイドピン102の先端が密封部材3の内面に衝突する場合でも、密封部材3は、弾性樹脂により形成されているため、図6(b)に示すように、軸方向に伸長して内部空間を広げることができ、ガイドピン102を内部に収容することができる。
【0044】
Tナット1が、板材Bに打ち込まれると同時に、かしめ予定部4bが、図6(b)に示すように板材Bの下側に設置されたガイドチップ106によって外方に押し広げられ、板材Bの下孔の下端周縁に食い込む。図7に示すように、このかしめられた部分と、フランジ部5とによって、Tナット1は、板材Bを挟み込んで板材Bに固定される。
【0045】
図8は、Tナット1が事務椅子Cの着座部C1のシートフレームC2に上方から打ち込まれた状態を示している。シートフレームC2の上側には、合成ゴム、ウレタンゴム、ポリエチレン等の樹脂系発泡材が溶融状態にて流し込こまれて発砲形成される。
Tナット1の密封部材3は、充分な密封性を有するため、溶融樹脂が軸部4内に侵入することを防ぐことができる。
【0046】
図9は、Tナット1にボルトAを螺入した状態を示したものである。図9(a)は、ボルトAの先端が、蓋部3bの先端を少し押圧して変形させる程度に、ボルトAを軸部4内に螺入させた場合を示している。変形した蓋部3bが、弾性による反発力でボルトAの先端を押し返すことにより、蓋部3bとボルトの先端に摩擦力が生じ、ボルトAの緩みが抑制される。また、図9(b)は、ボルトAの先端周縁が密封部材の周縁に当接するまで軸部4に入り込む場合を示している。このように、ボルトA先端が充分に深く軸部4内に入り込むことで、蓋部3bとボルトAの先端部の当接面積が増大すると共に、ボルトA先端と軸部4の内周面との間に、密封部材3の外周部分が噛み込まれ、ボルトAの緩みをさらに効果的に抑制する。
【0047】
また、図9に示したように、密封部材3は、ボルトAに押圧されても弾性変形可能であるとともに凸条部3cが雌ねじ4cにしっかりと係止しているため、位置ずれを起こしたり、抜け落ちたりしにくい。
【0048】
(第2実施形態)
次に、図10〜図12を用いて本発明の第2実施形態を詳述する。尚、本実施形態において、Tナット本体2は第1実施形態と共通するため、Tナット本体2及びその各部には第1実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
図10及び図11に示すように、本実施形態に係るTナット11の密封部材13は、第1の端部側が開口する円筒部13aと円筒部13aの第2の端部側端縁から延出し、頂点を前記第2の端部側に向けたドーム状の蓋部13bと、同じく円筒部13aの第2の端部側端縁から、蓋部13bの外側に延出し蓋部13bの外周を囲む外筒部13gとを備えている。
【0050】
外筒部13gの外周面には、円筒部13aの雄ねじ状の凸条部13cから連続して設けられる雄ねじ状の凸条部13hが設けられている。凸条部13c,13hと雌ねじ4cとが、互いの尾根部と谷部とを嵌め合いにして、雌ねじ4cの谷間の空間を密封しており、このようにして軸部4の内周面と円筒部13a及び外筒部13gの外周面とが密着している。ただし、円筒部13a外周面の凸条部13cと外筒部13g外周面の凸条部13hは、連続していなくともよい。
尚、円筒部13aのその他の構成は、第1実施形態の密封部材3aと概ね共通するため説明を省略する。
【0051】
図12は、Tナット11の第2の端部側開口から軸部4内にボルトを螺入した様子を示している。図12(a)は、ボルトAの先端が、蓋部13bの先端を少し押圧して変形させる程度にボルトAを軸部4に螺入させた場合を示している。外筒部13gは雌ねじ4cとボルトAの間に噛み込ませることができるように構成されており、この程度ボルトAを軸部4に螺入させると、外筒部13gの先端部分が少し雌ねじ4aとボルトの先端部分の外周の間に噛み込まれる。このように、蓋部13bの先端がボルトAの先端を押し返すことによる摩擦力に加え、外筒部13gの先端部が雌ねじ4cとボルトの間に噛みこまれることにより、ボルトAの緩みが効果的に抑制される。
【0052】
また、図12(b)は、ボルトAを図12(a)よりさらに深く軸部4内に螺入させた場合を示している。ボルトA先端がさらにいっそう深く軸部4内に入り込むと、蓋部13bの先端部が押しつぶされて蓋部3bが裏返るように変形し、ボルトA先端と軸部4の内周面との間の奥深くまで、外筒部材13gが潰されながら巻き込まれる。これにより、ボルトAの緩みが、さらに効果的に抑制される。
また、ボルトAが密封部材13を押圧しても、密封部材13は弾性変形可能であるため、位置ずれをおこしたり抜け落ちたりしにくい。
【0053】
(第3実施形態)
次に、図13及び図14を用いて本発明の第3実施形態について詳述する。
【0054】
本実施形態に係るTナット21は、いわゆるステップバレル式のTナットである。図13に示すように、Tナット21は、金属により一体に成型されるTナット本体22と、Tナット本体22とは別途形成される密封部材23とを備えている。
Tナット本体22は、前記2つの実施形態と同様、金属材料を鍛造加工することにより、又は金属板をプレス加工することにより一体に得られ、筒状の軸部24と、軸部24の第1の端部から外方に延出するフランジ部5とを有している。尚、本実施形態のフランジ部5は、爪の形状がやや前記2つの実施形態と異なるが、前記2つの実施形態と概ね構成が共通するので各部に共通の符号を付して説明を省略する。
【0055】
軸部24は、両端が開口した中空の筒状をなし、第1の端部側に位置する拡径部24fと、軸芯方向の中間部に位置する雌ねじ形成部24aと、第2の端部側のかしめ予定部24bとからなる。雌ねじ形成部24aの内周面には、雌ねじ24cが形成される。かしめ予定部24bは、雌ねじ形成部24a及び拡径部24fより肉薄に成型されている。かしめ予定部24b及び拡径部24fの内周面には、雌ねじが設けられていない。軸部24の外径及び内径は、雌ねじ形成部24aと拡径部24fの境界部において第1の端部側に向かって、徐々に拡径し、拡径部24fは、雌ねじ形成部24aよりも内径及び外径が大きくなるよう設けられている。
また、本実施形態においても、図13(b)、(d)に示すように、雌ねじ形成部24aの外周部の一部を内方へ押しつぶして凹部24dを設けることにより、内周面に不整部24eを設けることができる。
尚、図中24g及び24hは、それぞれ軸部24の第1の端部側の端縁及び第2の端部側の端縁を表している。
【0056】
密封部材23は、図13及び図14に示すように、第1の端部側が開口する円筒部23aと円筒部23aの第2の端部側端縁から延出し、頂点を第2の端部側に向けたドーム状の蓋部23bとを備えている。円筒部23aは、第2の端部側の雌ねじ24cに密着する雌ねじ密着部分23iと、第1の端部側の拡径部24fの内周面に沿うよう拡径する拡径部分23jとを備えており、雌ねじ密着部分23iは、外周面に雄ねじ状の凸条部23cを有している。凸条部23cと雌ねじ24cとは、互いの尾根部と谷部とを嵌め合いにして、雌ねじ24cの谷間の空間を密封しており、このようにして軸部24の内周面と雌ねじ密着部分23iの外周面とが密着している。
【0057】
また、密封部材23は、フランジ部を上側とすると、上側の端縁が、フランジ部5の上側の端面5aと同一面上に、又は、端面5aより下側に位置するよう軸部24の第1の端部側開口に嵌まり込んでいる。また、密封部材23は、上側端縁に向かって、軸部24とフランジ部5の上側端面5aとの境界部の内周面に倣って徐々に拡径しながら肉薄となり、外周面が先端まで軸部内壁に密着するよう設けられている。
【0058】
(第4実施形態)
図15及び図16を用いて、本発明の第4実施形態について詳述する。尚、本実施形態においては、Tナット本体22が第3実施形態と共通するため、Tナット本体22及びその各部に同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図15及び図16に示すように、本実施形態に係るTナット31の密封部材33は、第1の端部側が開口する円筒部33aと円筒部33aの第2の端部側端縁から延出し、頂点を前記第2の端部側に向けたドーム状の蓋部33bと、同じく円筒部33aの第2の端部側端縁から、蓋部33bの外側に延出し蓋部33bの外周を囲む外筒部33gとを備えている。
【0060】
外筒部33gの外周面には、円筒部33aの雄ねじ状の凸条部33cから連続して設けられる雄ねじ状の凸条部33hが設けられている。凸条部33c,33hと雌ねじ24cとが、互いの尾根部と谷部とを嵌め合いにして、雌ねじ24cの谷間の空間を密封しており、このようにして軸部24の内周面と円筒部33a及び外筒部33gの外周面とが密着している。ただし、円筒部33a外周面の凸条部33cと外筒部33g外周面の凸条部33hは、連続していなくともよい。
尚、円筒部33aのその他の構成については、第3実施形態の円筒部23aと概ね構成が共通するため説明を省略する。
【0061】
(第5実施形態)
次に、図17を用いて本発明の第5実施形態について詳述する。尚、本実施形態の密封部材23は、第3実施形態と共通するため、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施形態に係るTナット41も、第3、第4実施形態と同様ステップバレル式のTナットである。図17に示すように、Tナット41は、金属により一体に成型されるTナット本体42と、Tナット本体42とは別途形成される密封部材23とを備えている。
Tナット本体42は、前記各実施形態と同様、金属材料を鍛造加工することにより、又は金属板をプレス加工することにより一体に得られ、筒状の軸部44と、軸部44の第1の端部から外方に延出するフランジ部5とを有している。尚、本実施形態のフランジ部5は、前記各実施形態と概ね構成が共通するので各部に共通の符号を付して説明を省略する。
【0063】
軸部44は、両端が開口した中空の筒状をなし、第1の端部側に位置する拡径部44fと、第2の端部側に位置する雌ねじ形成部44aとからなり、前記各実施形態と異なり、かしめ予定部が設けられていない。雌ねじ形成部44aの第2の端部の内周縁の角部は、面取りが施されテーパー状に形成されている。雌ねじ形成部44aの内周面には、雌ねじ44cが形成されている。拡径部44fは、雌ねじ形成部44aよりも内径及び外径が大きく、軸部44の外径及び内径は、雌ねじ形成部44aと拡径部44fの境界部において第1の端部側に向かって、徐々に拡径するよう設けられている。
また、本実施形態においても、図17(b)、(d)に示すように、雌ねじ形成部44aの外周部の一部を内方へ押しつぶして凹部44dを設けることにより内周面に不整部44eを設けることができる。
尚、図中44g及び44hは、それぞれ軸部44の第1の端部側の端縁及び第2の端部側の端縁を表している。
【0064】
(第6実施形態)
図18は、本発明の第6実施形態に係るTナット51を示したものである。本実施形態のTナット51は、Tナット本体が第5実施形態と、密封部材が第3実施形態と共通するものである。
【0065】
(第7実施形態)
次に、図19を用いて本発明の第7実施形態について詳述する。尚、本実施形態の密封部材3は、第1実施形態と共通するため、同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
図19に示すように、本実施形態に係るTナット61は、金属により一体に成型されるTナット本体62とTナット本体62とは別途形成される密封部材3とを備えている。
Tナット本体62は、前記各実施形態と同様、金属材料を鍛造加工することにより、又は金属板をプレス加工することにより一体に得られ、筒状の軸部64と、軸部64の第1の端部から外方に延出するフランジ部5とを有している。尚、本実施形態の密封部材3は第1実施形態と、フランジ部5は前記各実施形態と、概ね構成が共通するので各部に共通の符号を付して説明を省略する。
【0067】
軸部64は、両端が開口した中空の筒状をなし、軸部64の外周面及び内周面は、フランジ部5との境界部において徐々に拡径する他は、全長に渡り直管状をなしている。内周面には、フランジ部5の端面5aに向かって徐々に拡径する部分を除き、全長に渡り雌ねじ64cが設けられている。即ち、軸部64には、かしめ予定部が設けられていない。
ただし、フランジ部5と軸部の内周面との境界部に拡径部を設ける必要はなく、軸部の内周面の全長に渡り雌ねじを設けてもよいのは、もちろんのことである。
また、本実施形態においても、図19(b)、(d)に示すように、軸部64の外周部の一部を内方へ押しつぶして凹部64dを設けることにより内周面に不整部64eを設けることができる。
尚、図中64g及び64hは、それぞれ軸部64の第1の端部側の端縁及び第2の端部側の端縁を表している。
【0068】
(第8実施形態)
図20は、本発明の第8実施形態に係るTナット71を示したものである。本実施形態のTナット71は、Tナット本体62が第7実施形態と、密封部材3が第2実施形態と共通するものである。
【0069】
上記の第1実施形態から第8実施形態において、フランジ部5や爪6は、上記の形状に限られず、公知の又は改良により得られる各種の形状を用いることができる。フランジ部の形状は、例えば、図21に示したような各種の形状を用いることができる他、第1の端部側から見て、外周縁の少なくとも一部が直線で構成されているもの、外周縁が直線と曲線で構成されたもの、正方形、長方形、その他の多角形など外周縁が直線のみで構成されたもの、円や楕円のように外周縁が曲線のみで構成されたもののいずれをも用いることができる。複数の爪6を図21の(a)、(b)及び(c)のように、フランジ部5の外周に略等角度間隔で設けてもよい。爪6の形状は図25(a)に示すような外側の端縁が、ギザギザやフックを有さない湾曲線状のもの、(b)のようにギザギザ状のもの、(c)のようにフック状のもの等を適宜選択できる。図21(e)に示したように、爪6のかわりにフランジ部の一部をプレスにより凸条に形成した突起を複数設けてもよい。爪6又は突起は1つでもよい。また、爪6又は突起を設けず、軸部に外径が角筒状となる部分を設けてこれを回り止めとすることもできる。
また、図21の側面図においては、軸部に拡径部を備えないものを記載しているが、実施形態3〜6では、この軸部が拡径部を備える軸部に置き換わることはいうまでもない。
【0070】
(第9実施形態)
次に、図22を用いて本発明の第9実施形態について説明する。
第9実施形態のTナット81は、Tナット本体2と密封部材83とを備えるが、Tナット本体2は、第1実施形態や第2実施形態のTナット2と共通するため同一符号を付して、説明を省略する。
【0071】
密封部材83は、図22(a)及び(b)に示すように、平面視で矩形をなす薄膜であり、弾性樹脂により形成されている。密封部材83は、フランジ部5の上側端面5aの全面を覆うように、フランジ部5の上側端面に密着している。端面5aと密封部材83との接着は、軸部4の第1の端部側の開口の周囲を隙間なく密封していれば、密封部材83と端面5aの接触する部分全面において接着されていてもよいし、一部が接着されていてもよい。また、密封部材83と端面5aとの接着は、接着剤による接着、高周波や加熱による融着(溶着)の他、公知の方法を適宜用いることができる。
【0072】
密封部材83を形成する材料としては、特に限定されないが、実施形態1の密封部材3に用い得る弾性樹脂を好適に用いることができ、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリクロロプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、シリコーンゴム等のゴムが好ましい。
【0073】
図22(c)及び(d)は、本実施形態のTナット81が打ち込み機100により板材(被打ち込み部材)Bに打ち込まれる様子を示したものである。図22(d)に示すように、本実施形態の密封部材83は、伸縮性に優れる弾性材料により形成されているため、板材等に打ち込まれる際の軸部4の横ずれを防止するために第1の端部側から軸部4に挿入されるガイドピン(外部部材)102を、軸部4内に収容するよう弾性変形可能に構成されている。詳細には、密封部材83の軸部4の第1の端部側開口を覆う部分が、ガイドピン102の先端部分により押圧されて、略有底円筒型にかつ軸部4の内部へ入り込むように弾性変形し、軸部4内にガイドピン102が軸部4内に入り込むことを可能にする。こうして、ガイドピン102は、軸部4が横ずれすることを防止する。
【0074】
尚、第9実施形態において、Tナット本体2は上述したものに限られず、第1実施形態から第8実施形態で示したTナット本体、図21に示したTナット本体、及び図25に示した爪から、任意に選択した軸部、フランジ部及び爪を組合わせて形成できる全てのTナット本体を適宜用いることができる他、それ以外の変形例や改良例を用いることができる。
【0075】
本発明のTナットは、上述した各実施形態に限られるものではなく、各種の変形例を含むものである。例えば、上記第1から第8実施形態において、密封部材の蓋部の外面にまで雄ねじ状の凸条部を設けることもできるし、第9実施形態のような薄膜状の密封部材の外周を軸部の内周面に密着させてもよい。第9実施形態のような薄膜状の密封部材において、軸部の第1の端部側開口を覆う部分が軸部に嵌り込むような有底円筒形に設けられていてもよい。また、本発明に係るTナットは、ガイドピンを備える打ち込み機で打ち込むことに適したものであるが、ガイドピンを備えない打ち込み機や打ち込み道具を用いて縁込み部材に打ち込むTナットを含むことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のTナットは、以上説明したように、高い密封性を備えるため、板材上にポリウレタンフォームを形成したり、塗装や表面処理のため油や塗料に浸漬したりする板材等に打ち込むTナットとして好適に用いることができる。また、本発明のTナットは、ガイドピンの当接による密封部材のずれや抜け落ちを抑制することができるため、ガイドピンの有無に拘わらずあらゆる打ち込み装置、打ち込み道具を用いて打ち込むTナットに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
1,11,21,31,41,51,61,71,81
Tナット
3,13,23,33,83
密封部材
3a,13a,23a,33a
円筒部
3b,13b,23b,33b
蓋部
3c,13c,13h,23c,33c,33h
凸条部
3d,3e,3f 突起
4,24,44,64 軸部
4a,24a,44a 雌ねじ形成部
4b,24b かしめ予定部
4c,24c,44c,64c
雌ねじ
4d,24d,44d,64d
凹部
4e,24e,44e,64e
不整部
24f,44f 拡径部
5 フランジ部
5a 第1の端部側端面
5b 中央部
5c 張出し部
5d 直線状の辺
5e 湾曲辺又は直線状の辺
5f 端辺
5g 直線状の辺の外側の端点
102 ガイドピン(外部部材)
A ボルト
B 板材(被打ち込み部材)
【技術分野】
【0001】
この発明は、軸部内へ塗料や油、溶融樹脂、異物等が侵入することを防止する密封部材を備えたTナットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板材等にTナットを打ち込んだ後、板材上にポリウレタンフォームを形成したり、この板材等を塗装や表面処理のために油や塗料に浸漬したりする場合、溶融樹脂や塗料、油等がTナットの軸部内に侵入して雌ねじに付着すると、これらの侵入物がねじの間に噛みこまれ、ボルトを螺入する障害となるため、軸部内に溶融樹脂等が侵入しないよう各種の工夫がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、Tナットの第1の端部側開口部を粘着テープで閉塞するテープドTナットが提案されており、特許文献2では、第1の端部側開口部を閉塞する内側フランジ部を軸部やフランジ部と同じ金属材料で一体的に形成するTナットが提案されている。また、特許文献3では、図23に示すように、樹脂等により略円板状に形成した中実の封止部材10aにより第1の端部側開口部を封止するTナット10が提案されている。
【0004】
一方、従来Tナットを板やテーブル等の板材に打ち込む場合、図4に示したような打ち込み装置が用いられる。この種の打ち込み装置では、Tナットを打ち込む際にTナットの横ずれを防止するため、Tナットを打ち込むプッシュバー101の先端にガイドピン102が設けられており、このガイドピン102をTナットの一端側開口から軸部に挿入することでTナットの横ずれを防止するよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−17250号公報
【特許文献2】特開2006−183798号公報
【特許文献3】特開2010−101372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1や特許文献3のTナットは、ガイドピンが設けられた打ち込み機で打ち込むと、粘着テープや封止部材がガイドピンに突かれて破れたり軸部内へ入り込んでしまったりする。また、特許文献2のTナットでは、Tナットの内側フランジ部がガイドピンに突かれて変形したり、ガイドピンが金属製の内側フランジ部に当たって損傷したりするおそれがある。
【0007】
従って、特許文献1から特許文献3で提案されたTナットを打ち込むためには、ガイドピンがなく、ガイドピンの代わりにTナットの横ずれを防止する手段が別途講じられた打ち込み装置を用いる必要があり、かかる装置を従来のガイドピンを備えた打ち込み装置に加えて別途導入することは、Tナットの打ち込みを行う業者には負担が大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、一体の金属材料により成型した筒状の軸部と前記軸部の第1の端部から外方に延出するフランジ部とを有し、前記軸部は、第1の端部及び第1の端部と逆側の第2の端部が開口し、内周面に雌ねじが設けられるTナットであって、前記軸部の第1の端部側開口を密封する弾性樹脂製の密封部材を備え、前記密封部材は、前記軸部の内周面に密着し、前記第1の端部側が開口する円筒部と、前記第2の端部側において前記円筒部の端縁に連続し、頂点を前記第2の端部側に向けたドーム状の蓋部とを有し、前記円筒部は、外周面に前記雌ねじの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部を含み、前記軸部の第1の端部側のフランジ部を上側とし、かつ前記軸部の第2の端部側を下側とした際に、前記密封部材の上側の端縁は、前記フランジ部の上側の端面と同一面上に、又は前記フランジ部の上側の端面より下側に位置することを特徴とする。
【0009】
このように、本発明のTナットは、密封部材が、第1の端部側に開口を備える円筒部及びドーム状の蓋部を備え、これにより、第1の端部側に開口を有する内部空間を備えることとなるため、打ち込み機で板材等に打ち込む際に、軸部の横ずれを防止するためのガイドピンをこの内部空間に収容することができ、ガイドピンを備えた打ち込み機を用いて、板材等に打ち込むことができる。
【0010】
また、本発明のTナットは、密封部材が弾性樹脂製であるから、ガイドピンが長くて密封部材の内面に当接するような場合でも、密封部材がガイドピンに押されて弾性変形することにより、内部空間を広げてガイドピンを収容することができる。さらに、本発明のTナットは、第2の端部側から軸部に螺入したボルトの先端が密封部材に当接しても、密封部材が弾性変形することで、密封部材が軸部から抜け落ちたり位置ずれを起こしたりすることを抑制することができる。
【0011】
また、本発明のTナットは、円筒部の外周面に雄ねじ状の凸条部を備え、この凸条部が軸部内周面の雌ねじの谷間に嵌り込むことで、密封部材が軸部の軸芯方向にずれることを抑制することができ、雄ねじ状の凸条部が雌ねじの谷間の空間を密封することで、当該密封部材の密封性を高め、第1の端部方向の開口部からの溶融樹脂等の侵入を抑制することができる。
【0012】
また、本発明のTナットは、軸部の第1の端部側を上側とし、かつ第2の端部側を下側とした際に、密封部材の上側の端縁が、フランジ部の上側の端面と同一面上に、又はフランジ部の上側の端面より下側に位置するとともに、密封部材の上側が開口している。これにより、当該Tナットを打ち込み装置の搬送シュートにより搬送する際、密封部材がシュートの内壁に接触する面積を無くすることができるか、又は極めて少なくできるため、当該Tナットと搬送シュート内壁との摩擦を格段に少なくして、当該Tナットをスムーズに搬送することができるとともに、搬送中に密封部材がシュート内壁との摩擦により位置ずれを起こし、Tナットの密封性が損なわれることを抑制することができる。
【0013】
また、前記密封部材は、前記円筒部の前記第2の端部側端縁から前記第2の端部側に延出し前記蓋部の外周を囲む外筒部を備え、前記外筒部が、外周面に前記雌ねじの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部を有し、前記軸部の第2の端部側開口からボルトを螺入した際に、前記外筒部を前記雌ねじと前記ボルトの間に噛み込ませることができるように構成されていることが好ましい。
密封部材がこのような外筒部を備え、外筒部の外周面に雌ねじの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部を有することで、より密封部材の密封性を高めることができる。また、外筒部が軸部の雌ねじとボルトの間に噛み込まれることにより、ボルトの緩みを抑制することができる。
【0014】
また、前記密封部材は、内面に突起を備えることが好ましい。これにより、密封部材が位置ずれを起こした際に、この突起に指の先端を当てて密封部材のずれを直すことができる。
【0015】
また、前記密封部材は、前記蓋部の外面に突起を備えることが好ましい。こうすることで蓋部外面に設けた突起をボルトの先端に当接させ、突起とボルト先端との間に生じる摩擦力によりボルトの緩みを抑制することができる。
【0016】
また、本発明は、一体の金属材料により成型した筒状の軸部と、前記軸部の第1の端部から外方に延出するフランジ部とを有し、前記軸部は、第1の端部及び第1の端部と逆側の第2の端部が開口し、内周面に雌ねじが設けられるTナットであって、弾性樹脂製の薄膜からなり前記軸部の第1の端部側開口を密封する密封部材を備え、
被打ち込み部材に打ち込まれる際の前記軸部の横ずれを防止するために前記第1の端部側から前記軸部に挿入される外部部材を、前記軸部内に収容するよう前記密封部材が弾性変形可能なことを特徴としてもよい。
密封部材が、弾性樹脂製の薄膜からなり、被打ち込み部材に打ち込まれる際の軸部の(Tナットの)横ずれを防止するために第1の端部側から前記軸部に挿入されるガイドピン等の外部部材を、前記軸部内に収容するよう弾性変形可能であることで、密封部材がガイドピン等に衝突して損傷したり、密封部材とTナットのフランジ部や軸部との接着部分が外れたりすることを抑制し、Tナットの密封性が損なわれることを抑制することができる。
【0017】
また、前記薄幕からなる前記密封部材は、前記第1の端部側を上側とし、かつ前記第2の端部側を下側とした際に、前記フランジ部の上側の端面に接着することにより前記軸部の第1の端部側開口を密封することが好ましい。こうすることで、密封部材の形状を簡素化できるとともに、容易に密封部材をTナットに接着することができる。
【0018】
また、前記薄幕からなる密封部材が、前記軸部の内周面に接着することにより前記軸部の第1の端部側開口を密封してもよい。こうすることで、密封部材を軸部内に収めることが可能となり、密封部材が搬送シュートの内壁に接触することを回避し、スムーズにTナットを搬送することができるとともに、搬送中に密封部材が搬送シュート内壁との摩擦により位置ずれを起こしてTナットの密封性が損なわれることを抑制することができる。
【0019】
また、前記軸部は、外周面に前記雌ねじの一部を不整化するための凹部を備えることが好ましい。こうすることで、雌ねじの不整化された部分に、当該Tナットに螺入されるボルトの雄ねじを乗り上げさせて、ボルトの緩みを抑制することができる。
【0020】
また、本発明のTナットは、前記フランジ部が、前記第1の端部から前記第2の端部に向けた爪又は突起を備えるTナットを含む。
【0021】
また、本発明のTナットは、前記フランジ部が、前記第1の端部側から見て、外周縁の少なくとも一部が直線で構成されているTナット、正方形又は長方形をなすTナット、及び円形又は楕円形をなすTナットを含む。
【0022】
また、本発明のTナットは、前記フランジ部が、前記第1の端部側から見て、略八角形の中央部と、前記中央部の前記軸部を挟んで前記軸部の第1の径方向に対向する一対の端辺から、それぞれ外方へ張り出す一対の張出し部とを備え、前記張出し部が、前記第1の端部側から見て、前記端辺の両端から外方へそれぞれ延出する一対の直線状の辺と、前記一対の直線状の辺の外側の端点を結ぶ直線又は内方へ湾曲する湾曲辺とを有し、前記フランジ部は、各張り出し部に一対ずつ計2対で4本の爪を備え、前記一対の爪は、前記フランジ部の外周縁を切り起こして前記一対の直線状の辺から前記第2の端部側に延びるよう設けられており、前記4本の爪は、前記軸部を挟んで、前記第1の径方向及び前記第1の径方向と直交する第2の径方向について対称に配設されているTナットを含む。
【0023】
また、本発明は、前記2対で4本の爪が、前記第2の端部側から見て、幅方向を前記第1の径方向に略平行にして、2本ずつ2列に配設されてもよい。本発明は、前記軸部が、被打ち込み部材に対してかしめ予定されたかしめ予定部を第2の端部側に含み、前記かしめ予定部は、前記軸部の内周面に雌ねじが形成される部分よりも肉薄であるTナットを含む。
【0024】
また、本発明は、前記軸部が、前記第1の端部側において、外周面及び/又は内周面が拡径する拡径部を備えてもよく、前記軸部が、内周面の全長にわたって雌めじが形成されていてもよい。
【0025】
ここで「円筒」とは、軸芯に垂直な断面が円形を有する筒をいい、断面の外径及び内径が一定のものだけでなく、軸方向に外径及び/又は内径が変化するものも含むものとする。「雄ねじ状の凸条部」とは、前記軸部の雌ねじの谷間の空間を密封する機能を持つ凸条であれば、雌ねじに螺合する機能を有するものでも、有さないものでもよい。「軸部内」とは、軸部を貫通する孔の内部をいい、この孔に連続してフランジ部を貫通する孔の内部を含むものとする。「軸部の内周面」とは、軸部を貫通する孔の内周面をいうものとし、この孔に連続してフランジ部を貫通する孔の内周面を含むものとする。また、「直線」とは、加工のひずみ等により真の直線からやや変形した線を含むものとする。爪の「幅方向」とは、爪の厚み方向及び突出方向に垂直な方向をいう。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明のTナットによれば、高い密封性が得られるとともに、ガイドピンやボルトの当接による密封部材のずれや抜け落ちを抑制することができるため、溶融樹脂や塗料等がTナットの軸部内に侵入することを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係るTナットの縦断面図、(c)は斜視図、(e)は底面図である。(b)は、別のTナットの縦断面図、(d)は斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るTナットであって、図1とは別のTナットを示したものである。
【図3】(a)は、図1に示したTナットの密封部材の側面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【図4】(a)は、本発明のTナットの打ち込みに使用する打ち込み装置の一例を示す正面図、(b)は側面図である。
【図5】図4に示した打ち込み装置の搬送シュートにより搬送中のTナットを示した説明図である。
【図6】図4に示した打ち込み装置で、本発明のTナットを打ち込む様子を示した模式図である。
【図7】図1のTナットを板材に固定した状態を示した模式的断面図である。
【図8】図1のTナットを事務用椅子に取付けた状態を示す模式的断面図である。
【図9】図1のTナットにボルトを羅入した状態を示す模式的断面図である。
【図10】(a)は、本発明の第2実施形態に係るTナットの縦断面図、(b)は別のTナットの縦断面図である。
【図11】(a)は、図10に示したTナットの密封部材の側面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【図12】図10のTナットにボルトを羅入した状態を示す模式的断面図である。
【図13】(a)は、本発明の第3実施形態に係るTナットの縦断面図、(c)は、斜視図、(b)は別のTナットの縦断面図、(d)は、斜視図である。
【図14】(a)は、図13に示したTナットの密封部材の側面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【図15】(a)は、本発明の第4実施形態に係るTナットの縦断面図、(b)は別のTナットの縦断面図である。
【図16】(a)は、図15に示したTナットの密封部材の側面図、(b)は断面図、(c)は斜視図である。
【図17】(a)は、本発明の第5実施形態に係るTナットの縦断面図、(c)は、斜視図、(b)は別のTナットの縦断面図、(d)は斜視図である。
【図18】(a)は、本発明の第6実施形態に係るTナットの縦断面図、(b)は別のTナットの縦断面図である。
【図19】(a)は、本発明の第7実施形態に係るTナットの縦断面図、(c)は、斜視図、(b)は別のTナットの縦断面図、(d)は斜視図である。
【図20】(a)は、本発明の第8の実施形態に係るTナットの縦断面図、(b)は
【図21】本発明のTナットに用い得るフランジの他の形態を示した平面図と側面図である。
【図22】(a)は、本発明の第9実施形態に係るTナットの縦断面図、(b)は斜視図である。(c)及び(d)は、図4に示した打ち込み装置で(a)のTナットを打ち込む様子を示した模式図である。
【図23】従来の密封部材を備えるTナットの縦断面図である。
【図24】図3に示した密封部材の変形例である。
【図25】本発明のTナットに用い得る爪の例を示した部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、適宜図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳述する。ただし、本願発明は以下の実施の形態に限られるものではない。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るTナット1である。図1に示すように、Tナット1は、金属より一体に成型されるTナット本体2と、Tナット本体2とは別途形成される密封部材3とを備えている。
Tナット本体2は、金属材料を鍛造加工することにより、又は金属板をプレス加工することにより一体に得られ、筒状の軸部4と、軸部4の第1の端部から外方に延出するフランジ部5とを有している。
【0029】
軸部4は、両端が開口した中空の筒状をなし、第1の端部側(以下「上側」ともいう)の雌ねじ形成部4aと、第1の端部側と逆側の第2の端部側(以下「下側」ともいう)のかしめ予定部4bとからなる。雌ねじ形成部4aの内周面には、雌ねじ4cが形成される。かしめ予定部4bは、雌ねじ形成部4aより肉薄に成型され、内周面に雌ねじが設けられていない。尚、図中4g及び4hは、それぞれ軸部4の第1の端部側の端縁及び第2の端部側の端縁を表している。
【0030】
軸部4の外周面は、フランジ部5の下側端面との境界部において第1の端部側に向かい徐々に拡径する他は、段差のない直管状に形成されている。また、軸部4の内周面は、フランジ部5の上側端面5aとの境界部において、端面5a側に向かって徐々に拡径するよう設けられている。ただし、このような拡径部を設けず、端面5aと軸部内周面とが、略垂直に交わるよう形成されていてもよい。
【0031】
図1(b)、(d)に示すように、雌ねじ形成部4aの外周部に、その一部を内方へ押しつぶして略矩形の凹部4dを設けてもよい。凹部4dを設けることで、その内周面の雌ねじの一部を内方へ膨出させて、不整部4eが形成される。こうすることで、軸部4にボルトを螺入した際に、ボルトの雄ねじを不整部4eに乗り上げさせて、ボルトの緩みを抑制することができる。
【0032】
フランジ部5は、図1(c)、(e)に示すように、底面視で、概八角形の中央部5bと、中央部5bの軸部4を挟んで軸部4の第1の径方向に対向する一対の端辺5f,5fからそれぞれ外方へ張り出す一対の張出し部5c,5cとを備えている。フランジ部5は、縦方向の全幅bが、一対の張出し部5c,5cを含めた横方向の全幅aより大きくなるよう設けられている。
張出し部5cは、前記端辺の両端から外方へそれぞれ延出する一対の直線状の辺5d,5dと、前記一対の直線状の辺の外側の端点5g,5gを結ぶ線5eとで囲まれており、一対の直線状の辺5d,5dから第2の端部側に延びる一対の爪6,6を備えている。爪6は、外方を向く端面がギザギザの形状に形成されており、一対の張出し部5c,5cにそれぞれ一対ずつ、計2対で4本設けられている。
爪6は、Tナット本体2に形成される金属板において、直線状の辺5d,5dの外側部分を切り起こすことにより形成される。2対で4本の爪6,…は、軸部4を挟んで、第1の径方向及び第1の径方向と直交する第2の径方向について対称に配設され、幅方向が軸部4側から外側に向かってやや放射状に広がるように設けられている。ただし、図21(f)に示すように、2対で4本の爪6,…は第2の端部側から見て、幅方向を第1の径方向に略平行にして、2本ずつ2列に設けられていてもよい。
【0033】
フランジ部5の端点5g、5gを結ぶ線5eは、図1(c)、(e)及び(d)に示すように直線であってもよいし、図2(a)及び(b)に示すように、内側に湾曲する湾曲線でもよい。また、フランジ部5は、図2(c)に示すように、一対の爪6,6の間に、フランジ部5の外側部分を切り起こして設けた爪7有してもよいし、図2(d)に示すように、フランジ部5を外側から押圧して変形させて設けた爪8を有してもよい。
このように、線5eを内側に湾曲する湾曲線に形成したり、一対の爪6,6間に爪7や爪8を設けたりすることで、Tナット1が搬送シュート104で搬送される際に、前後して搬送されるTナット1のフランジ部5が重なることを抑制することができる。
尚、一対の端辺5f,5fは、説明の便宜上仮想した辺であって、フランジ部5に実際に設けられるものではない。
【0034】
密封部材3は、図1(a)、図3に示すように、第1の端部側が開口する円筒部3aと円筒部3aの第2の端部側端縁から延出し、頂点を前記第2の端部側に向けたドーム状の蓋部3bとを備えている。円筒部3aは、外周面に雄ねじ状の凸条部3cを有している。凸条部3cと雌ねじ4cとは、互いの尾根部と谷部とを嵌め合いにして、雌ねじ4cの谷間の空間を密封しており、このようにして軸部4の内周面と円筒部3aの外周面とが密着している。
【0035】
密封部材3は、図1(a)とは逆に、軸部4の第1の端部側のフランジ部5を上側とし、かつ前記第2の端部側を下側とした際に、上側の端縁が、フランジ部5の上側の端面5aと同一面上に、又は端面5aより下側に位置するよう設けられる。また、密封部材3の上側の端縁は、端面5a側に向かって、軸部4と端面5aとの境界部の内周面に倣って徐々に拡径しながら肉薄となり、外周面が先端まで軸部内壁に密着するよう設けられている。
【0036】
蓋部3bの内周面は、図24(a)に示すように、突起3dを備えることが好ましい。こうすることで、密封部材3aが位置ズレを起こしたとき。この突起3dに指を当てて密封部材3の位置ズレを修正することができる。
【0037】
また、蓋部3bは、図24(b)、(c)に示すように外面に突起3e,3fを備えることが好ましい。こうすることで、突起3e,3fをボルトAの先端面に当接させて、ボルトAの緩みを抑制することができる。また、(b)のように、外周部に突起3eを備えることでTナット1にボルトAを螺入させた際、雌ねじ4cとボルトAの間に突起3eを噛みこませることができ、ボルトAの緩みを抑制することができる。
尚、後述する第2実施形態から第8実施形態においても、蓋部に3d、3e及び3fと同様の突起を設けることができる。
【0038】
密封部材3を形成する弾性樹脂としては、特に限定されないが、ゴム又は熱可塑性エラストマーが用いられる。このゴムとしては、例えば天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリクロロプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、シリコーンゴム等が用いられる、熱可塑性エラストマーとしては、例えばスチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等が用いられる他、これらを混合して得られたものを用いることもできる。
尚、後述する実施形態2〜実施形態8の密封部材を形成する弾性樹脂として、実施形態1の密封部材3を形成する弾性樹脂を好適に用いることができる。
【0039】
次に、図4〜図9を用いてTナット1の使用方法について説明する。
図4は、本実施形態のTナット1の打ち込みに使用する打ち込み装置100である。Tナット1は、整列供給部103において整列され、搬送シュート104によりTナット打ち込み部105に搬送される。
【0040】
搬送シュート104は、図5に示すように帯状部材の幅方向の両端に一対の側壁を設けて形成されている。搬送シュート104は、この一対の側壁から内側に延出する一対の鍔部104a,104aを形成することにより、側壁の内面側の一対の角溝104b,104bと、搬送シュート104の長手方向の両端に連続する帯状の開口部104cとを設けている。
【0041】
Tナット1は、搬送シュート104の一対の角溝104b,104bにフランジ部5の縦方向の両端部を挿入し、4本の爪6,…を帯状の開口部104cから突出させた状態で搬送される。Tナット1の4本の爪6,…は、帯状の開口部104cを倣うガイドとなるよう構成されている。Tナット1は、密封部材3の第1の端部側端縁が、フランジ部5の上側端面5aと同一面上、又は端面5aより下側に位置するよう、換言すると密封部材3の第1の端部側端縁が、端面5aから上側へ突出しないよう設けられているため、密封部材5が搬送シュート104の内壁に接触することがほとんどなく、密封部材がTナット1の搬送を妨げることがない。また、4本の爪6,…を帯状の開口部104cを倣うガイドとなるよう構成することで、フランジ部5の形状を異なる形状とすることが可能である。
尚、本発明のTナットは、図5に示したような搬送シュート104で搬送できないようなTナットを含むことは言うまでもない。
【0042】
図6は、打ち込み機100でTナット1を板材Bに打ち込む様子を示したものである。図6(a)は、Tナット1を打ち込む前の状態を、図6(b)は、打ち込んだ後の状態を示している。図6(b)に示すように、フランジ部5をプッシュバー101で押圧してTナット1を板材Bに設けられた下孔に打ち込む。このとき、プッシュバー101の先端に設けられたガイドピン102が、Tナット1の軸部4に挿入されてTナット1の横ずれを防止する。
【0043】
このとき、ガイドピン102は、密封部材3の第1の端部側の開口から、密封部材3の内部の空間に収容される。また、ガイドピン102が長いためにガイドピン102の先端が密封部材3の内面に衝突する場合でも、密封部材3は、弾性樹脂により形成されているため、図6(b)に示すように、軸方向に伸長して内部空間を広げることができ、ガイドピン102を内部に収容することができる。
【0044】
Tナット1が、板材Bに打ち込まれると同時に、かしめ予定部4bが、図6(b)に示すように板材Bの下側に設置されたガイドチップ106によって外方に押し広げられ、板材Bの下孔の下端周縁に食い込む。図7に示すように、このかしめられた部分と、フランジ部5とによって、Tナット1は、板材Bを挟み込んで板材Bに固定される。
【0045】
図8は、Tナット1が事務椅子Cの着座部C1のシートフレームC2に上方から打ち込まれた状態を示している。シートフレームC2の上側には、合成ゴム、ウレタンゴム、ポリエチレン等の樹脂系発泡材が溶融状態にて流し込こまれて発砲形成される。
Tナット1の密封部材3は、充分な密封性を有するため、溶融樹脂が軸部4内に侵入することを防ぐことができる。
【0046】
図9は、Tナット1にボルトAを螺入した状態を示したものである。図9(a)は、ボルトAの先端が、蓋部3bの先端を少し押圧して変形させる程度に、ボルトAを軸部4内に螺入させた場合を示している。変形した蓋部3bが、弾性による反発力でボルトAの先端を押し返すことにより、蓋部3bとボルトの先端に摩擦力が生じ、ボルトAの緩みが抑制される。また、図9(b)は、ボルトAの先端周縁が密封部材の周縁に当接するまで軸部4に入り込む場合を示している。このように、ボルトA先端が充分に深く軸部4内に入り込むことで、蓋部3bとボルトAの先端部の当接面積が増大すると共に、ボルトA先端と軸部4の内周面との間に、密封部材3の外周部分が噛み込まれ、ボルトAの緩みをさらに効果的に抑制する。
【0047】
また、図9に示したように、密封部材3は、ボルトAに押圧されても弾性変形可能であるとともに凸条部3cが雌ねじ4cにしっかりと係止しているため、位置ずれを起こしたり、抜け落ちたりしにくい。
【0048】
(第2実施形態)
次に、図10〜図12を用いて本発明の第2実施形態を詳述する。尚、本実施形態において、Tナット本体2は第1実施形態と共通するため、Tナット本体2及びその各部には第1実施形態と同一符号を付して説明を省略する。
【0049】
図10及び図11に示すように、本実施形態に係るTナット11の密封部材13は、第1の端部側が開口する円筒部13aと円筒部13aの第2の端部側端縁から延出し、頂点を前記第2の端部側に向けたドーム状の蓋部13bと、同じく円筒部13aの第2の端部側端縁から、蓋部13bの外側に延出し蓋部13bの外周を囲む外筒部13gとを備えている。
【0050】
外筒部13gの外周面には、円筒部13aの雄ねじ状の凸条部13cから連続して設けられる雄ねじ状の凸条部13hが設けられている。凸条部13c,13hと雌ねじ4cとが、互いの尾根部と谷部とを嵌め合いにして、雌ねじ4cの谷間の空間を密封しており、このようにして軸部4の内周面と円筒部13a及び外筒部13gの外周面とが密着している。ただし、円筒部13a外周面の凸条部13cと外筒部13g外周面の凸条部13hは、連続していなくともよい。
尚、円筒部13aのその他の構成は、第1実施形態の密封部材3aと概ね共通するため説明を省略する。
【0051】
図12は、Tナット11の第2の端部側開口から軸部4内にボルトを螺入した様子を示している。図12(a)は、ボルトAの先端が、蓋部13bの先端を少し押圧して変形させる程度にボルトAを軸部4に螺入させた場合を示している。外筒部13gは雌ねじ4cとボルトAの間に噛み込ませることができるように構成されており、この程度ボルトAを軸部4に螺入させると、外筒部13gの先端部分が少し雌ねじ4aとボルトの先端部分の外周の間に噛み込まれる。このように、蓋部13bの先端がボルトAの先端を押し返すことによる摩擦力に加え、外筒部13gの先端部が雌ねじ4cとボルトの間に噛みこまれることにより、ボルトAの緩みが効果的に抑制される。
【0052】
また、図12(b)は、ボルトAを図12(a)よりさらに深く軸部4内に螺入させた場合を示している。ボルトA先端がさらにいっそう深く軸部4内に入り込むと、蓋部13bの先端部が押しつぶされて蓋部3bが裏返るように変形し、ボルトA先端と軸部4の内周面との間の奥深くまで、外筒部材13gが潰されながら巻き込まれる。これにより、ボルトAの緩みが、さらに効果的に抑制される。
また、ボルトAが密封部材13を押圧しても、密封部材13は弾性変形可能であるため、位置ずれをおこしたり抜け落ちたりしにくい。
【0053】
(第3実施形態)
次に、図13及び図14を用いて本発明の第3実施形態について詳述する。
【0054】
本実施形態に係るTナット21は、いわゆるステップバレル式のTナットである。図13に示すように、Tナット21は、金属により一体に成型されるTナット本体22と、Tナット本体22とは別途形成される密封部材23とを備えている。
Tナット本体22は、前記2つの実施形態と同様、金属材料を鍛造加工することにより、又は金属板をプレス加工することにより一体に得られ、筒状の軸部24と、軸部24の第1の端部から外方に延出するフランジ部5とを有している。尚、本実施形態のフランジ部5は、爪の形状がやや前記2つの実施形態と異なるが、前記2つの実施形態と概ね構成が共通するので各部に共通の符号を付して説明を省略する。
【0055】
軸部24は、両端が開口した中空の筒状をなし、第1の端部側に位置する拡径部24fと、軸芯方向の中間部に位置する雌ねじ形成部24aと、第2の端部側のかしめ予定部24bとからなる。雌ねじ形成部24aの内周面には、雌ねじ24cが形成される。かしめ予定部24bは、雌ねじ形成部24a及び拡径部24fより肉薄に成型されている。かしめ予定部24b及び拡径部24fの内周面には、雌ねじが設けられていない。軸部24の外径及び内径は、雌ねじ形成部24aと拡径部24fの境界部において第1の端部側に向かって、徐々に拡径し、拡径部24fは、雌ねじ形成部24aよりも内径及び外径が大きくなるよう設けられている。
また、本実施形態においても、図13(b)、(d)に示すように、雌ねじ形成部24aの外周部の一部を内方へ押しつぶして凹部24dを設けることにより、内周面に不整部24eを設けることができる。
尚、図中24g及び24hは、それぞれ軸部24の第1の端部側の端縁及び第2の端部側の端縁を表している。
【0056】
密封部材23は、図13及び図14に示すように、第1の端部側が開口する円筒部23aと円筒部23aの第2の端部側端縁から延出し、頂点を第2の端部側に向けたドーム状の蓋部23bとを備えている。円筒部23aは、第2の端部側の雌ねじ24cに密着する雌ねじ密着部分23iと、第1の端部側の拡径部24fの内周面に沿うよう拡径する拡径部分23jとを備えており、雌ねじ密着部分23iは、外周面に雄ねじ状の凸条部23cを有している。凸条部23cと雌ねじ24cとは、互いの尾根部と谷部とを嵌め合いにして、雌ねじ24cの谷間の空間を密封しており、このようにして軸部24の内周面と雌ねじ密着部分23iの外周面とが密着している。
【0057】
また、密封部材23は、フランジ部を上側とすると、上側の端縁が、フランジ部5の上側の端面5aと同一面上に、又は、端面5aより下側に位置するよう軸部24の第1の端部側開口に嵌まり込んでいる。また、密封部材23は、上側端縁に向かって、軸部24とフランジ部5の上側端面5aとの境界部の内周面に倣って徐々に拡径しながら肉薄となり、外周面が先端まで軸部内壁に密着するよう設けられている。
【0058】
(第4実施形態)
図15及び図16を用いて、本発明の第4実施形態について詳述する。尚、本実施形態においては、Tナット本体22が第3実施形態と共通するため、Tナット本体22及びその各部に同一符号を付して説明を省略する。
【0059】
図15及び図16に示すように、本実施形態に係るTナット31の密封部材33は、第1の端部側が開口する円筒部33aと円筒部33aの第2の端部側端縁から延出し、頂点を前記第2の端部側に向けたドーム状の蓋部33bと、同じく円筒部33aの第2の端部側端縁から、蓋部33bの外側に延出し蓋部33bの外周を囲む外筒部33gとを備えている。
【0060】
外筒部33gの外周面には、円筒部33aの雄ねじ状の凸条部33cから連続して設けられる雄ねじ状の凸条部33hが設けられている。凸条部33c,33hと雌ねじ24cとが、互いの尾根部と谷部とを嵌め合いにして、雌ねじ24cの谷間の空間を密封しており、このようにして軸部24の内周面と円筒部33a及び外筒部33gの外周面とが密着している。ただし、円筒部33a外周面の凸条部33cと外筒部33g外周面の凸条部33hは、連続していなくともよい。
尚、円筒部33aのその他の構成については、第3実施形態の円筒部23aと概ね構成が共通するため説明を省略する。
【0061】
(第5実施形態)
次に、図17を用いて本発明の第5実施形態について詳述する。尚、本実施形態の密封部材23は、第3実施形態と共通するため、同一符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施形態に係るTナット41も、第3、第4実施形態と同様ステップバレル式のTナットである。図17に示すように、Tナット41は、金属により一体に成型されるTナット本体42と、Tナット本体42とは別途形成される密封部材23とを備えている。
Tナット本体42は、前記各実施形態と同様、金属材料を鍛造加工することにより、又は金属板をプレス加工することにより一体に得られ、筒状の軸部44と、軸部44の第1の端部から外方に延出するフランジ部5とを有している。尚、本実施形態のフランジ部5は、前記各実施形態と概ね構成が共通するので各部に共通の符号を付して説明を省略する。
【0063】
軸部44は、両端が開口した中空の筒状をなし、第1の端部側に位置する拡径部44fと、第2の端部側に位置する雌ねじ形成部44aとからなり、前記各実施形態と異なり、かしめ予定部が設けられていない。雌ねじ形成部44aの第2の端部の内周縁の角部は、面取りが施されテーパー状に形成されている。雌ねじ形成部44aの内周面には、雌ねじ44cが形成されている。拡径部44fは、雌ねじ形成部44aよりも内径及び外径が大きく、軸部44の外径及び内径は、雌ねじ形成部44aと拡径部44fの境界部において第1の端部側に向かって、徐々に拡径するよう設けられている。
また、本実施形態においても、図17(b)、(d)に示すように、雌ねじ形成部44aの外周部の一部を内方へ押しつぶして凹部44dを設けることにより内周面に不整部44eを設けることができる。
尚、図中44g及び44hは、それぞれ軸部44の第1の端部側の端縁及び第2の端部側の端縁を表している。
【0064】
(第6実施形態)
図18は、本発明の第6実施形態に係るTナット51を示したものである。本実施形態のTナット51は、Tナット本体が第5実施形態と、密封部材が第3実施形態と共通するものである。
【0065】
(第7実施形態)
次に、図19を用いて本発明の第7実施形態について詳述する。尚、本実施形態の密封部材3は、第1実施形態と共通するため、同一符号を付して説明を省略する。
【0066】
図19に示すように、本実施形態に係るTナット61は、金属により一体に成型されるTナット本体62とTナット本体62とは別途形成される密封部材3とを備えている。
Tナット本体62は、前記各実施形態と同様、金属材料を鍛造加工することにより、又は金属板をプレス加工することにより一体に得られ、筒状の軸部64と、軸部64の第1の端部から外方に延出するフランジ部5とを有している。尚、本実施形態の密封部材3は第1実施形態と、フランジ部5は前記各実施形態と、概ね構成が共通するので各部に共通の符号を付して説明を省略する。
【0067】
軸部64は、両端が開口した中空の筒状をなし、軸部64の外周面及び内周面は、フランジ部5との境界部において徐々に拡径する他は、全長に渡り直管状をなしている。内周面には、フランジ部5の端面5aに向かって徐々に拡径する部分を除き、全長に渡り雌ねじ64cが設けられている。即ち、軸部64には、かしめ予定部が設けられていない。
ただし、フランジ部5と軸部の内周面との境界部に拡径部を設ける必要はなく、軸部の内周面の全長に渡り雌ねじを設けてもよいのは、もちろんのことである。
また、本実施形態においても、図19(b)、(d)に示すように、軸部64の外周部の一部を内方へ押しつぶして凹部64dを設けることにより内周面に不整部64eを設けることができる。
尚、図中64g及び64hは、それぞれ軸部64の第1の端部側の端縁及び第2の端部側の端縁を表している。
【0068】
(第8実施形態)
図20は、本発明の第8実施形態に係るTナット71を示したものである。本実施形態のTナット71は、Tナット本体62が第7実施形態と、密封部材3が第2実施形態と共通するものである。
【0069】
上記の第1実施形態から第8実施形態において、フランジ部5や爪6は、上記の形状に限られず、公知の又は改良により得られる各種の形状を用いることができる。フランジ部の形状は、例えば、図21に示したような各種の形状を用いることができる他、第1の端部側から見て、外周縁の少なくとも一部が直線で構成されているもの、外周縁が直線と曲線で構成されたもの、正方形、長方形、その他の多角形など外周縁が直線のみで構成されたもの、円や楕円のように外周縁が曲線のみで構成されたもののいずれをも用いることができる。複数の爪6を図21の(a)、(b)及び(c)のように、フランジ部5の外周に略等角度間隔で設けてもよい。爪6の形状は図25(a)に示すような外側の端縁が、ギザギザやフックを有さない湾曲線状のもの、(b)のようにギザギザ状のもの、(c)のようにフック状のもの等を適宜選択できる。図21(e)に示したように、爪6のかわりにフランジ部の一部をプレスにより凸条に形成した突起を複数設けてもよい。爪6又は突起は1つでもよい。また、爪6又は突起を設けず、軸部に外径が角筒状となる部分を設けてこれを回り止めとすることもできる。
また、図21の側面図においては、軸部に拡径部を備えないものを記載しているが、実施形態3〜6では、この軸部が拡径部を備える軸部に置き換わることはいうまでもない。
【0070】
(第9実施形態)
次に、図22を用いて本発明の第9実施形態について説明する。
第9実施形態のTナット81は、Tナット本体2と密封部材83とを備えるが、Tナット本体2は、第1実施形態や第2実施形態のTナット2と共通するため同一符号を付して、説明を省略する。
【0071】
密封部材83は、図22(a)及び(b)に示すように、平面視で矩形をなす薄膜であり、弾性樹脂により形成されている。密封部材83は、フランジ部5の上側端面5aの全面を覆うように、フランジ部5の上側端面に密着している。端面5aと密封部材83との接着は、軸部4の第1の端部側の開口の周囲を隙間なく密封していれば、密封部材83と端面5aの接触する部分全面において接着されていてもよいし、一部が接着されていてもよい。また、密封部材83と端面5aとの接着は、接着剤による接着、高周波や加熱による融着(溶着)の他、公知の方法を適宜用いることができる。
【0072】
密封部材83を形成する材料としては、特に限定されないが、実施形態1の密封部材3に用い得る弾性樹脂を好適に用いることができ、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、ポリクロロプレン、イソブチレン−イソプレン共重合体、シリコーンゴム等のゴムが好ましい。
【0073】
図22(c)及び(d)は、本実施形態のTナット81が打ち込み機100により板材(被打ち込み部材)Bに打ち込まれる様子を示したものである。図22(d)に示すように、本実施形態の密封部材83は、伸縮性に優れる弾性材料により形成されているため、板材等に打ち込まれる際の軸部4の横ずれを防止するために第1の端部側から軸部4に挿入されるガイドピン(外部部材)102を、軸部4内に収容するよう弾性変形可能に構成されている。詳細には、密封部材83の軸部4の第1の端部側開口を覆う部分が、ガイドピン102の先端部分により押圧されて、略有底円筒型にかつ軸部4の内部へ入り込むように弾性変形し、軸部4内にガイドピン102が軸部4内に入り込むことを可能にする。こうして、ガイドピン102は、軸部4が横ずれすることを防止する。
【0074】
尚、第9実施形態において、Tナット本体2は上述したものに限られず、第1実施形態から第8実施形態で示したTナット本体、図21に示したTナット本体、及び図25に示した爪から、任意に選択した軸部、フランジ部及び爪を組合わせて形成できる全てのTナット本体を適宜用いることができる他、それ以外の変形例や改良例を用いることができる。
【0075】
本発明のTナットは、上述した各実施形態に限られるものではなく、各種の変形例を含むものである。例えば、上記第1から第8実施形態において、密封部材の蓋部の外面にまで雄ねじ状の凸条部を設けることもできるし、第9実施形態のような薄膜状の密封部材の外周を軸部の内周面に密着させてもよい。第9実施形態のような薄膜状の密封部材において、軸部の第1の端部側開口を覆う部分が軸部に嵌り込むような有底円筒形に設けられていてもよい。また、本発明に係るTナットは、ガイドピンを備える打ち込み機で打ち込むことに適したものであるが、ガイドピンを備えない打ち込み機や打ち込み道具を用いて縁込み部材に打ち込むTナットを含むことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のTナットは、以上説明したように、高い密封性を備えるため、板材上にポリウレタンフォームを形成したり、塗装や表面処理のため油や塗料に浸漬したりする板材等に打ち込むTナットとして好適に用いることができる。また、本発明のTナットは、ガイドピンの当接による密封部材のずれや抜け落ちを抑制することができるため、ガイドピンの有無に拘わらずあらゆる打ち込み装置、打ち込み道具を用いて打ち込むTナットに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
1,11,21,31,41,51,61,71,81
Tナット
3,13,23,33,83
密封部材
3a,13a,23a,33a
円筒部
3b,13b,23b,33b
蓋部
3c,13c,13h,23c,33c,33h
凸条部
3d,3e,3f 突起
4,24,44,64 軸部
4a,24a,44a 雌ねじ形成部
4b,24b かしめ予定部
4c,24c,44c,64c
雌ねじ
4d,24d,44d,64d
凹部
4e,24e,44e,64e
不整部
24f,44f 拡径部
5 フランジ部
5a 第1の端部側端面
5b 中央部
5c 張出し部
5d 直線状の辺
5e 湾曲辺又は直線状の辺
5f 端辺
5g 直線状の辺の外側の端点
102 ガイドピン(外部部材)
A ボルト
B 板材(被打ち込み部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体の金属材料により成型した筒状の軸部と前記軸部の第1の端部から外方に延出するフランジ部とを有し、前記軸部は、第1の端部及び第1の端部と逆側の第2の端部が開口し、内周面に雌ねじが設けられるTナットであって、
前記軸部の第1の端部側開口を密封する弾性樹脂製の密封部材を備え、
前記密封部材は、前記軸部の内周面に密着し、前記第1の端部側が開口する円筒部と、前記第2の端部側において前記円筒部の端縁に連続し、頂点を前記第2の端部側に向けたドーム状の蓋部とを有し、前記円筒部は、外周面に前記雌ねじの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部を含み、
前記軸部の第1の端部側のフランジ部を上側とし、かつ前記軸部の第2の端部側を下側とした際に、前記密封部材の上側の端縁は、前記フランジ部の上側の端面と同一面上に、又は前記フランジ部の上側の端面より下側に位置することを特徴とするTナット。
【請求項2】
前記密封部材は、前記円筒部の前記第2の端部側端縁から前記第2の端部側に延出し前記蓋部の外周を囲む外筒部を有し、前記外筒部が、外周面に前記雌ねじの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部を含み、前記軸部の第2の端部側開口からボルトを螺入した際に、前記外筒部を前記雌ねじと前記ボルトの間に噛み込ませることができるように構成されている請求項1に記載のTナット。
【請求項3】
前記密封部材は、内面に突起を備えている請求項1又は請求項2に記載のTナット。
【請求項4】
前記密封部材は、前記蓋部の外面に突起を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項5】
一体の金属材料により成型した筒状の軸部と、前記軸部の第1の端部から外方に延出するフランジ部とを有し、前記軸部は、第1の端部及び第1の端部と逆側の第2の端部が開口し、内周面に雌ねじが設けられる含むTナットであって、
弾性樹脂製の薄膜からなり前記軸部の第1の端部側開口を密封する密封部材を備え、
被打ち込み部材に打ち込まれる際の前記軸部の横ずれを防止するために前記第1の端部側から前記軸部に挿入される外部部材を、前記軸部内に収容するよう前記密封部材が弾性変形可能なことを特徴とするTナット。
【請求項6】
前記密封部材は、前記第1の端部側を上側とし、かつ前記第2の端部側を下側とした際に、前記フランジ部の上側の端面に接着することにより前記軸部の第1の端部側開口を密封する請求項5に記載のTナット。
【請求項7】
前記密封部材は、前記軸部の内周面に接着することにより前記軸部の第1の端部側開口を密封する請求項5に記載のTナット。
【請求項8】
前記軸部は、外周面に前記雌ねじの一部を不整化するための凹部を備える請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項9】
前記フランジ部は、前記第1の端部から前記第2の端部に向けた爪又は突起を備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項10】
前記フランジ部は、前記第1の端部側から見て、外周縁の少なくとも一部が直線で構成されている請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項11】
前記フランジ部は、前記第1の端部側から見て、正方形又は長方形をなす請求項10に記載のTナット。
【請求項12】
前記フランジ部は、前記第1の端部側から見て、円形若しくは楕円形をなす請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項13】
前記フランジ部は、前記第1の端部側から見て、略八角形の中央部と、前記中央部の前記軸部を挟んで前記軸部の第1の径方向に対向する一対の端辺から、それぞれ外方へ張り出す一対の張出し部とを備え、
前記張出し部は、前記第1の端部側から見て、前記端辺の両端から外方へそれぞれ延出する一対の直線状の辺と、前記一対の直線状の辺の外側の端点を結ぶ直線又は内方へ湾曲する湾曲辺とを有し、
前記フランジ部は、各張り出し部に一対ずつ計2対で4本の爪を備え、
前記一対の爪は、前記フランジ部の外周縁を切り起こして前記一対の直線状の辺から前記第2の端部側に延びるよう設けられており、
前記4本の爪は、前記軸部を挟んで、前記第1の径方向及び前記第1の径方向と直交する第2の径方向について対称に配設されている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項14】
前記2対で4本の爪は、前記第2の端部側から見て、幅方向を前記第1の径方向に略平行にして、2本ずつ2列に配設される請求項13に記載のTナット。
【請求項15】
前記軸部は、被打ち込み部材に対してかしめ予定されたかしめ予定部を第2の端部側に含み、前記かしめ予定部は、前記軸部の内周面に雌ねじが形成される部分よりも肉薄である請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項16】
前記軸部は、前記第1の端部側において、外周面及び/又は内周面が拡径する拡径部を備える請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項17】
前記軸部は、内周面の全長にわたって雌めじが形成されている請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項1】
一体の金属材料により成型した筒状の軸部と前記軸部の第1の端部から外方に延出するフランジ部とを有し、前記軸部は、第1の端部及び第1の端部と逆側の第2の端部が開口し、内周面に雌ねじが設けられるTナットであって、
前記軸部の第1の端部側開口を密封する弾性樹脂製の密封部材を備え、
前記密封部材は、前記軸部の内周面に密着し、前記第1の端部側が開口する円筒部と、前記第2の端部側において前記円筒部の端縁に連続し、頂点を前記第2の端部側に向けたドーム状の蓋部とを有し、前記円筒部は、外周面に前記雌ねじの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部を含み、
前記軸部の第1の端部側のフランジ部を上側とし、かつ前記軸部の第2の端部側を下側とした際に、前記密封部材の上側の端縁は、前記フランジ部の上側の端面と同一面上に、又は前記フランジ部の上側の端面より下側に位置することを特徴とするTナット。
【請求項2】
前記密封部材は、前記円筒部の前記第2の端部側端縁から前記第2の端部側に延出し前記蓋部の外周を囲む外筒部を有し、前記外筒部が、外周面に前記雌ねじの谷間の空間を密封する雄ねじ状の凸条部を含み、前記軸部の第2の端部側開口からボルトを螺入した際に、前記外筒部を前記雌ねじと前記ボルトの間に噛み込ませることができるように構成されている請求項1に記載のTナット。
【請求項3】
前記密封部材は、内面に突起を備えている請求項1又は請求項2に記載のTナット。
【請求項4】
前記密封部材は、前記蓋部の外面に突起を備える請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項5】
一体の金属材料により成型した筒状の軸部と、前記軸部の第1の端部から外方に延出するフランジ部とを有し、前記軸部は、第1の端部及び第1の端部と逆側の第2の端部が開口し、内周面に雌ねじが設けられる含むTナットであって、
弾性樹脂製の薄膜からなり前記軸部の第1の端部側開口を密封する密封部材を備え、
被打ち込み部材に打ち込まれる際の前記軸部の横ずれを防止するために前記第1の端部側から前記軸部に挿入される外部部材を、前記軸部内に収容するよう前記密封部材が弾性変形可能なことを特徴とするTナット。
【請求項6】
前記密封部材は、前記第1の端部側を上側とし、かつ前記第2の端部側を下側とした際に、前記フランジ部の上側の端面に接着することにより前記軸部の第1の端部側開口を密封する請求項5に記載のTナット。
【請求項7】
前記密封部材は、前記軸部の内周面に接着することにより前記軸部の第1の端部側開口を密封する請求項5に記載のTナット。
【請求項8】
前記軸部は、外周面に前記雌ねじの一部を不整化するための凹部を備える請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項9】
前記フランジ部は、前記第1の端部から前記第2の端部に向けた爪又は突起を備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項10】
前記フランジ部は、前記第1の端部側から見て、外周縁の少なくとも一部が直線で構成されている請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項11】
前記フランジ部は、前記第1の端部側から見て、正方形又は長方形をなす請求項10に記載のTナット。
【請求項12】
前記フランジ部は、前記第1の端部側から見て、円形若しくは楕円形をなす請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項13】
前記フランジ部は、前記第1の端部側から見て、略八角形の中央部と、前記中央部の前記軸部を挟んで前記軸部の第1の径方向に対向する一対の端辺から、それぞれ外方へ張り出す一対の張出し部とを備え、
前記張出し部は、前記第1の端部側から見て、前記端辺の両端から外方へそれぞれ延出する一対の直線状の辺と、前記一対の直線状の辺の外側の端点を結ぶ直線又は内方へ湾曲する湾曲辺とを有し、
前記フランジ部は、各張り出し部に一対ずつ計2対で4本の爪を備え、
前記一対の爪は、前記フランジ部の外周縁を切り起こして前記一対の直線状の辺から前記第2の端部側に延びるよう設けられており、
前記4本の爪は、前記軸部を挟んで、前記第1の径方向及び前記第1の径方向と直交する第2の径方向について対称に配設されている請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項14】
前記2対で4本の爪は、前記第2の端部側から見て、幅方向を前記第1の径方向に略平行にして、2本ずつ2列に配設される請求項13に記載のTナット。
【請求項15】
前記軸部は、被打ち込み部材に対してかしめ予定されたかしめ予定部を第2の端部側に含み、前記かしめ予定部は、前記軸部の内周面に雌ねじが形成される部分よりも肉薄である請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項16】
前記軸部は、前記第1の端部側において、外周面及び/又は内周面が拡径する拡径部を備える請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のTナット。
【請求項17】
前記軸部は、内周面の全長にわたって雌めじが形成されている請求項1から請求項14のいずれか1項に記載のTナット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−237398(P2012−237398A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107387(P2011−107387)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【特許番号】特許第4820927号(P4820927)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(591101962)永山電子工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【特許番号】特許第4820927号(P4820927)
【特許公報発行日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(591101962)永山電子工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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