説明

T細胞応答の増強方法

本明細書中に開示される本発明の実施形態は、当該技術分野で基礎となるものを上回るクラスI MHC CD8+T細胞応答の抗原刺激を指数的に増大するための方法及び組成物に関する。いくつかの実施形態は、被検体における免疫応答を増強する免疫原性組成物に関する。いくつかの実施形態では、免疫原性組成物は、免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤(BRM)と組合せて抗原を含む。総体的に、本明細書中に開示される本発明は、抗原の用量と無関係のやり方で抗原刺激を増大することが免疫原性を増強する、ということを実証する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、免疫学及びワクチン開発の分野に関する。本明細書中に開示される発明の実施形態は、免疫感作及びワクチン接種を増強するための方法及び組成物に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、T細胞応答の刺激を改善する方法に関する。本発明のいくつかの実施形態は、感染性疾患又は癌のような疾患を治療する場合のワクチン接種戦略としてさらなる有用性を有する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国仮出願第60/901,980号(2007年2月15日出願)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)からの優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
生弱毒化ワクチンは通常は、1回注射後の強力な且つ長時間持続する免疫応答を誘導し、そしてこの型の多数のウイルスワクチンは90%より高い効率を有する(非特許文献1)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。それに対して、死微生物、毒素、ペプチドワクチンを含めたサブユニットワクチン、又は裸DNAワクチンから成るワクチンは効能がかなり低く、そして追加免疫が不可欠である。生ワクチンは強力な免疫応答を要する漸増抗原用量を生じるが、一方、非複製ワクチンは、本明細書中の実施例で実証されるように、T細胞に対してむしろ弱い刺激である漸減抗原プロファイルを生じる。
【0004】
感染性疾患又は癌(これらに限定されない)のような疾患に対するT細胞応答を増強する免疫感作モデルを開発することの、継続的必要性が存在する。したがって本明細書中に開示される本発明の実施形態は、免疫原性を増強するために、累積的総抗原用量とは無関係に、免疫感作の経過全体にわたって抗原刺激を増大することを包含する免疫療法アプローチに関する。したがって本明細書中に開示される本発明の実施形態は、最新免疫感作モデルの改訂を、そしてワクチン及び免疫療法の設計及び使用のための方法及び組成物を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nossal, G. Vaccines in Fundamental Immunology (ed., Paul, W.E.)1387-1425; Lippincot-Raven Publishers, Philadelphia, 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書中に開示される本発明の実施形態は、CD8+T細胞応答を最適化するための方法及び組成物に関する。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、哺乳類におけるクラスI MHC制限T細胞応答を刺激する方法であって、複数回の順次用量の免疫原性組成物を哺乳類に投与することを包含する方法であり、初回用量後の各用量が直前用量より多い方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態では、順次用量が初回用量の線形関数として増大する。さらに別の実施形態では、順次用量が初回用量の指数関数として増大する。指数関数が指数因子≧2n-1により定義される。さらなる実施形態では、指数因子が5n-1である。
【0008】
いくつかの実施形態では、免疫原性組成物が免疫原+免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む。免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤がサイトカイン、ケモカイン、PAMP、TLR−リガンド、免疫刺激配列、CpG含有DNA、dsRNA、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、LPS、キラヤ・サポニン及びツカレゾル等であり得るが、これらに限定されない。
【0009】
複数回の用量は、2回以上の用量であり得る。いくつかの実施形態では、複数回の用量は、2〜6回用量を含む。他の実施形態では、複数回の用量は、6回より多くの用量を含む。本発明のいくつかの実施形態では、複数回の用量は、免疫原の半減期(t1/2)により影響を及ぼされ得る。例えば相対的に短い半減期を有する免疫原は、同様の結果を達成するために、相対的に長い半減期を有する免疫原より高頻度の投与を、したがってより多数回の用量を必要とし得る。
【0010】
いくつかの実施形態では、最終回用量が初回用量の6日以内に投与され得る。いくつかの実施形態では、最終回用量が初回用量の7、8、9、10日以内又はそれ以上の以内に投与される。
【0011】
本発明の実施形態は、長時間にわたる投与量の線形又は指数的増大を伴わずに同一累積用量を利用する免疫感作と比較した場合に、増強された応答が得られる方法に関する。増強応答は応答T細胞の数増大を包含し得る。いくつかの実施形態では、増強応答が免疫刺激性サイトカインの産生増大を包含し得る。該サイトカインは例えばIL−2又はIFN−γであり得る。いくつかの実施形態では、増強応答が細胞溶解活性における増大を包含し得る。いくつかの実施形態では、増強応答が免疫抑制性サイトカインのピーク産生における遅延を包含し得る。免疫抑制性サイトカインは例えばIL−10であり得る。
【0012】
本発明の実施形態は、リンパ系への直接送達により哺乳類に免疫原性組成物を投与する方法に関する。例えば哺乳類に免疫原性組成物を投与する方法は、節内送達により得る。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態では、免疫原性組成物は皮下、筋肉内、皮内、経皮、経粘膜、鼻、気管支、経口又は直腸投与等で哺乳類に投与され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、免疫原がタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、裸DNAワクチン、RNAワクチン、合成エピトープ、ミモトープ等として提供され得るが、好ましくはこれらに限定されない。
【0015】
免疫原は、治療又は防御されるべき疾患に関連した抗原に対する応答を刺激する。抗原は、例えばウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、分化抗原、腫瘍抗原、胎児性抗原、癌遺伝子及び突然変異化腫瘍抑制遺伝子の抗原、染色体転座に起因する独自腫瘍抗原等、及び/又はその誘導体であり得るが、これらに限定されない。抗原は自己抗原であり得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、免疫賦活剤はTLR−リガンドであり得る。TLR−リガンドは、CpG含有DNAであり得る。いくつかの実施形態では、免疫賦活剤は二本鎖RNA、例えばポリICであり得る。
【0017】
本明細書に開示される本発明のいくつかの実施形態は、免疫原+免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む一組の免疫原性組成物であって、該一組の個々の成員の投与量が指数級数として関連づけられる組に関する。いくつかの実施形態では、投与量の指数級数が指数因子≧2n-1により定義される。いくつかの実施形態では、投与量の指数級数が5n-1の指数因子により定義される。
【0018】
本発明の他の実施形態は、抗原及び免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む免疫原性組成物の組、並びにそれを必要とする被検体に組成物を投与するための使用説明書を含むキットに関する。
【0019】
免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤は、例えばサイトカイン、ケモカイン、PAMP、TLR−リガンド、免疫刺激配列、CpG含有DNA、dsRNA、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、LPS、キラヤ・サポニン、ツカレゾル等であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、免疫原並びに免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤が各々別個の容器又は同一容器中に含入され得る。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態では、キットは2回以上の用量の免疫原性組成物を各々別個の適切な容器中に含み得る。適切な容器は例えば注射器、アンプル、バイアル等、又はそれらの組合せであり得る。
【0021】
順次増大用量の免疫原性組成物を含む注射器の一組であって、初回用量後の各用量が注射器の一組の各注射器中の直前用量より多く、そして被検体におけるT細胞応答を増強するために免疫原性組成物が免疫原並びに免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む一組に関する。
【0022】
他の実施形態では、免疫原性組成物は、細胞を含む。細胞は、腫瘍細胞又は抗原提示細胞であり得るが、このようなものに限定されない。他の実施形態では、抗原提示細胞は樹状細胞であり得る。さらに他の実施形態では、免疫原性組成物は細胞を含む。
【0023】
他の実施形態では、より多い用量がより多数の細胞を含む。さらに別の実施形態では、より多い用量が細胞表面のより多数のエピトープ−MHC複合体を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、順次増大用量の免疫原性組成物を含むバイアルの一組であって、初回用量後の各用量がバイアルの一組の各バイアル中の直前用量より多く、そして被検体におけるT細胞応答を増強するために免疫原性組成物が免疫原並びに免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む一組に関する。
【0025】
いくつかの実施形態では、クラスI MHC制限T細胞応答を刺激するための免疫原性組成物の複数回の順次用量の使用であって、初回用量後の各用量が直前用量より多い使用に関する。いくつかの実施形態では、クラスI MHC制限T細胞応答を刺激することは、新生物性疾患の治療のため、又は感染性疾患の治療のため、又はその両方のためである。いくつかの実施形態では、クラスI MHC制限T細胞応答を刺激することは、新生物性疾患の予防のため、又は感染性疾患の予防のため、又はその両方のための刺激である。
【0026】
いくつかの実施形態では、薬剤の製造における免疫原並びに免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む免疫原性組成物の複数回の順次用量の使用であって、初回用量後の各用量が直前用量より多い使用に関する。いくつかの実施形態では、薬剤の製造における、免疫原+免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む免疫原性組成物の一組の使用であって、組の個々の成員の投与量が指数級数として関連づけられる使用に関する。好ましくは薬剤は、哺乳類におけるクラスI MHC制限T細胞応答を刺激する。したがって薬剤は、新生物性疾患の治療のため、又は感染性疾患の治療のため、又はその両方のためであり得る。いくつかの実施形態では、薬剤は、新生物性疾患の予防のため、又は感染性疾患の予防のため、又はその両方のための薬剤である。
【0027】
他の目的及び特徴は、本明細書の以下で一部は明らかになり、一部は指し示される。
【0028】
以下の図面は、本明細書の一部を構成し、そして本明細書中に開示される本発明の実施形態の或る態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書中に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組合せてこれらの図面のうちの1つ又は複数を参照することにより、より良好に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】gp33及びCpGの両方の指数的漸増用量がCD8+T細胞応答を増強することを示すデータを例示する図である。
【図2】CD8+T細胞応答の増強がT細胞ヘルプと無関係であることを示す棒グラフである。
【図3】4日の抗原刺激がCD8+T細胞誘導のために最適であることを示すデータを示す図である。
【図4】gp33及びCpGの両方の指数的漸増用量が抗ウイルス性CD8+T細胞応答を増強することを示すデータを例示する図である。
【図5】抗原動態がDC活性化に影響を及ぼさないことを示すデータを示す図である。
【図6A】指数的免疫感作が持続性T細胞増殖に好都合であることを示すフローサイトメトリーデータを例示する図である。
【図6B】指数的免疫感作が持続性T細胞増殖に好都合であることを示すフローサイトメトリーデータを例示する図である。
【図7】ペプチド負荷樹状細胞による指数的免疫感作が強力なT細胞及び抗腫瘍応答を誘導することを示すデータを示す図である。
【図8】CD8+T細胞の指数的in vitro刺激がIL−2産生及び細胞傷害性を増強することを示すデータを例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[発明の詳細な説明]
免疫系は、病原体に最適に応答するよう進化してきた(Janeway, C.A., Jr. Approaching the asymptote? Evolution and revolution in immunology. Cold Spring Harb Symp Quant Biol 54 Pt 1, 1-13, 1989;Zinkernagel, R.M., Science 271, 173-8, 1996;Germain, R.N., Nat Med 10, 1307-20, 2004)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。病原体の特質を採択することにより、免疫感作は最適化され得るし、ワクチンの効能は増強され得る。例えば貪食作用及び抗原提示を増強するために、乳濁液、微小粒子、免疫刺激複合体、リポソーム、ビロソーム及びウイルス様粒子のような病原体に匹敵する寸法を有する微粒子形態でワクチンが送達されて、貪食作用及び抗原提示を増強し得る(O'Hagan, D.T. & Valiante, N.M. Nat Rev Drug Discov 2, 727-35, 2003)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。さらに、パターン認識受容体(PRP)、例えばトール様受容体(TLR)により免疫系を刺激する病原体関連分子パターン(PAMP)は、抗原提示細胞を活性化するための、そしてワクチンに対する免疫応答を増強するためのアジュバントとして用いられ得る(Johansen, P., et al., Clin Exp Allergy 35, 1591-1598, 2005b;O'Hagan, D.T. & Valiante,
N.M. Nat Rev Drug Discov 2, 727-35, 2003;Krieg, A.M., Annu Rev Immunol 20, 709-60, 2002)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。病原体の重要な一特徴は、複製である。病原体複製は、免疫系を長時間にわたって漸増量の抗原及び免疫刺激性PAMPに曝露する。
【0031】
免疫学における一般的パラダイムは、T細胞応答の強度及び質は、抗原の用量及び局在化により、並びに同時刺激シグナルにより支配され得る、というものである。ワクチン接種の効率を改善するための戦略は、抗原提示の持続時間を増大することに向けられ得る(Lofthouse, S. Adv Drug Deliv Rev 54, 863-70, 2002;Ehrenhofer, C. & Opdebeeck, J
.P., Vet Parasitol 59, 263-73, 1995;Guery, J.C., et al. J Exp Med 183, 485-97, 1996;Zhu, G., et al., Nat Biotechnol 18, 52-7, 2000;Borbulevych, O.Y., et al.,
J Immunol 174, 4812-20, 2005;Levitsky, V., et al., J Exp Med 183, 915-26, 1996;van der Burg, S.H., et al., J Immuno 156, 3308-14, 1996;Chen, J.L., et al., J
Exp Med 201, 1243-55, 2005;Rivoltini, L. et al., Cancer Res 59, 301-6, 1999;Blanchet, J.S. et al., J Immunol 167, 5852-61, 2001;Brinckerhoff, L.H. et al., Int J Cancer 83, 326-34, 1999;Ayyoub, M. et al., J Biol Chem 274, 10227-34, 1999;Stemmer, C. et al., J Biol Chem 274, 5550-6, 1999;O'Hagan, D.T. & Valiante, N.M. Nat Rev Drug Discov 2, 727-35, 2003)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。
【0032】
T細胞誘導を最適化する方法は、当該技術分野においては依然として難題である。免疫感作の「デポー」理論(“depot”theory)は、当該技術分野でよく知られているように、長時間にわたって組織中に徐々に漏れ出す抗原はワクチンの免疫原性効力と相関する、と仮定する。一般に、この抗原デポー・パラダイムは、大半のアジュバント開発計画に対するバックボーンとして役立つ。しかしながら本発明の開示は、デポー剤処方物で又は1回のボーラスとしてよりむしろ、連続した数日又は密な間隔日にわたって、用量増大様式で、ワクチンを投与することがはるかに有益である、ということを実証する。1回ボーラス又は多数回非変更用量投与と比較した場合、CD8+T細胞応答を増強するために、指数的漸増用量での毎日抗原刺激が本明細書中で示される。本明細書中で用いる場合、クラスI MHC制限T細胞応答を刺激することは、応答を誘導すること、初回刺激すること(priming)、開始すること、延長すること、保持すること、増幅すること、増大すること、又は高めることを包含するが、これらに限定されない。
【0033】
生弱毒化ワクチンは通常は1回注射後に強力な且つ長時間持続する応答を誘導すること、そしてこの型の多数のウイルスワクチンが90%より高い効率を有するということが当該技術分野ではよく知られている(Nossal, G. Vaccines in Fundamental Immunology (ed., Paul, W.E.)1387-1425; Lippincot-Raven Publishers, Philadelphia, 1999)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。それに対して、死微生物、毒素、ペプチドワクチンを含めたサブユニットワクチン、又は裸DNAワクチンから成るワクチンは効能がかなり低く、そして追加免疫が不可欠である。生ワクチンは強力な免疫応答を要する漸増抗原用量を生じるが、一方、非複製ワクチンは、本明細書中の実施例で実証されるように、T細胞に対してむしろ弱い刺激である漸減抗原プロファイルを生じる。
【0034】
複製能力のないワクチンは生ワクチンより安全であるということは、良く知られている。本発明の実施形態は、抗原性刺激の用量−動態を考慮せずに複製不可能なワクチンを用いるワクチン開発における傾向に挑戦するのに役立つ。さらに、本発明の実施形態は、感染性疾患又は癌(これらに限定されない)のような疾患に対するT細胞応答を増強するための免疫療法アプローチを提供する。
【0035】
本明細書中に開示される本発明の実施形態は、免疫原性の重要な一パラメーターとして抗原性刺激の動態を操作することにより、ワクチン設計の業界における、そして免疫療法の実施における欠陥を取り扱うことに向けられる。本明細書中で開示されるように、線形又は指数的に増大される免疫原性刺激は、一定レベルで提供される刺激に比して有意により強いCD8+T細胞応答を誘導した。1回注射として又は多数回漸減用量として投与される免疫原は、最も弱い免疫応答を誘導した。本明細書中に開示された知見に関する進化的説明は、複製し、したがって漸増量の抗原を産生する病原体が最強CD8+T細胞応答を要する、というものであり得る。これに対して、均一な又は漸減量の抗原は、生得的な又はすでに進行中の後天性の免疫により良好に制御される非病原性刺激又は感染を示す。
【0036】
この理論に拘束されることを望まないが、危険に対する感受性増大を媒介するための有望な候補は、抗原提示細胞、特に、CD8+T細胞誘導のための、樹状細胞(DC)である。これは、異なるワクチン接種プロトコールは絶対DC数又はリンパ節におけるDC活性化のレベルは異ならなかったが、一方それらはDC活性化及び数のピークに達するのに要する時間が異なる、という点で以下の実施例で支持される。指数的漸増ワクチン接種モデルでは、DC活性化のピークは、ボーラスワクチン接種と比較して3日遅延された。両ワクチン接種レジメンに関して、DC活性化のピークは、最大ワクチン用量が投与された1日後に出現した。この観察は、ペプチドが最大活性化DC上に提示されるよう、最適ワクチン接種日程が1日のうちにペプチドの1回の注射に先立って1回のCpG注射を用いることを意味し得る。しかしながら提示されたデータは、このような免疫感作プロトコール、並びに指数的漸増用量のCpGとその後の1回用量のペプチドが、同時の指数的増大用量のCpG及びペプチドより有意に低免疫原性であった、ということを実証している。
【0037】
抗原の用量−動態が、治療の過程が終わるまでの全用量(累積用量)と関係なく、免疫原性の別個のパラメーターであるか否かを調べるために、固定累積用量の抗原性ペプチド、例えばgp33、並びに免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤(BRM)、例えばシトシン−グアニン・オリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)でマウスを免疫感作した。異なる動態、即ち、指数的漸増又は漸減用量での免疫感作、一定一日用量又は1回ボーラス免疫感作が実行された。その短いin vivo半減期が鋭敏な抗原動態の生成を可能にするため、MHCクラスI結合ペプチドが抗原として選択された(Falo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 8347-8350, 1992;Widmann et al., J Immunol. 147, 3745-3751, 1991)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。マウスは同一総用量のワクチンで免疫感作されたため、特異的T細胞誘導はペプチド及びBRM(CpG)投与の動態の相関としてモニタリングされ得る。
【0038】
本明細書中の実施例及び他の箇所に開示されるように、ペプチド及びBRM(CpG)の両方を含む固定累積ワクチン用量は、抗原性刺激の別個の用量−動態を生じるように異なる日程により投与された。指数的漸増抗原刺激は、均一若しくは一定の毎日抗原刺激或いは1回ボーラスとしてのワクチンの投与と比較して、CD8+T細胞に関する有意により強力な刺激を高め、そしてウイルス感染及び腫瘍に対する長期免疫を増強した。同一現象は、T細胞がin vitroで刺激された場合に観察された。
【0039】
したがっていくつかの実施形態は、当該技術分野で説明されたものを上回るクラスI MHC CD8+T細胞応答の線形又は指数的漸増抗原刺激のための方法及び組成物に関する。データは、抗原用量と無関係の漸増抗原刺激が免疫原性を増強したことを示す。したがって本発明は、免疫原性を増強し、それによりワクチン開発を改善するための新規の方法を提供する。
【0040】
本発明の実施形態は、免疫原+免疫賦活剤又はBRMを含む免疫原性組成物の組を提供する。いくつかの実施形態は、指数的漸増方式で抗原及び免疫賦活剤の両方を提供することにより増強免疫(CTL)応答を得るための抗原と免疫賦活剤との同時投与を包含する。
【0041】
抗原の免疫原性は、多数のパラメーター、例えば抗原用量(Mitchison, N.A., Proc R Soc Lond Biol Sci 161, 275-92, 1964;Weigle, W.O., Adv Immunol 16, 61-122, 1973;Nossal, G.J., Annu Rev Immunol 1, 33-62, 1983)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される);抗原の局在化(Zinkernagel, R.M., Semin
Immunol 12, 163-71; discussion 257-344, 2000;Zinkernagel, R.M. & Hengartner, H., Science 293, 251-3, 2001)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明
細書中で援用される);抗原の粒子性又は可溶性(O'Hagan, D.T. & Valiante, N.M. Nat
Rev Drug Discov 2, 727-35, 2003;Bachmann, M.F., et al., Science 262, 1448-51, 1993)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される);並びに抗原が同時刺激シグナルと一緒に提示されるか否か(Janeway, C.A., Jr. Approaching the asymptote? Evolution and revolution in immunology. Cold Spring Harb Symp Quant Biol 54 Pt 1, 1-13, 1989;Germain, R.N., Nat Med 10, 1307-20, 2004;Matzinger, P., Annu Rev Immunol 12, 991-1045, 1994;Schwartz, R.H., Cell 71, 1065-8, 1992)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)により確定され得る。
【0042】
さらに、免疫原及び免疫感作プロトコールが毒性病原体による感染と類似するほど、より免疫原性になる、と考えられる。高抗原用量及びリンパ性器官における抗原の存在(共に毒性病原体の広範な複製に対応する)は、強力な免疫応答を誘導する。ウイルス又は細菌の構造に類似する粒状抗原は、可溶性抗原より強力な免疫応答を誘導する。付加的には、抗原の提示は、病原体構成成分、例えば細菌DNA、リポ多糖又はウイルスRNAと共に、免疫応答を強力に増強する。本明細書中で教示されるように、指数的漸増性抗原刺激は、病原体と関連する一パターンとして免疫系により認識されて、強力な免疫応答を駆動し得る。
【0043】
したがって上記にかんがみて、本発明の実施形態における使用を意図される抗原は、その成長を抑制するか又はそれを排除するために腫瘍又は病原体を攻撃するために悪性腫瘍又は感染性疾患を有する被検体の免疫系を刺激し、それにより疾患を処置するか又は治癒するものである。抗原は、いくつかの場合には、CTL応答(細胞媒介性免疫応答とも呼ばれる)、即ち、標的細胞(例えば悪性腫瘍細胞又は病原体感染細胞)の溶解を生じる免疫系による細胞傷害性反応を誘導するために、治療されている動物に見出される特定疾患に適合し得る。当業者に理解されるように、細胞溶解活性増大は、免疫原性組成物の非存在下の場合に比して、免疫原性組成物の存在下で殺傷されるか又は溶解される標的細胞の数の測定値であり得る。殺害されるか又は溶解される標的細胞の数を確定するか又は測定するための方法は、当業者に既知の任意の方法、例えばクロム放出検定、四量体検定等(これらに限定されない)であり得る。
【0044】
本明細書中で用いる場合、クラスI MHC制限T細胞応答を刺激することは、応答を誘導すること、初回刺激すること、開始すること、延長すること、保持すること、増幅すること、増大すること、又は高めることを包含するが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書中に開示される方法に有用であるとして意図される抗原としては、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド及びその誘導体、並びに非ペプチド高分子が挙げられるが、これらに限定されない。このような誘導体は、当業者に既知の任意の方法により調製され得るし、当業者に既知の任意の手段により検定され得る。したがって、いくつかの実施形態では、本発明で用いるための抗原としては、腫瘍抗原、例えば分化抗原、胎児性抗原、癌−精巣抗原、癌遺伝子及び突然変異化腫瘍抑制遺伝子の抗原、染色体転座に起因する独自腫瘍抗原、ウイルス抗原、並びに、現在又は将来、当業者に明らかになり得る他の抗原が挙げられるが、これらに限定されない。開示された方法及び組成物に有用である抗原としては、感染性疾患生物体に見出されるもの、例えば構造及び非構造ウイルスタンパク質も挙げられる。開示された組成物及び方法に用いるよう意図される潜在的標的微生物としては、肝炎ウイルス(例えばB、C及びデルタ)、ヘルペスウイルス、HIV、HTLV、HPV、EBV等が挙げられるが、これらに限定されない。免疫応答により認識されるか又は標的化されるはずであるこれらの抗原に関する一般用語は、標的関連抗原(TAA)である。
【0046】
開示された方法及び組成物に用いられ得るタンパク質抗原としては、以下の:分化抗原、例えばMART−1/メランA(MART−1)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、及び腫瘍特異的多系統抗原、例えばMAGE−1、MAGE−3、BAGE、GAGE−1、GAGE−2、p15;過剰発現胎児性抗原、例えばCEA;過剰発現癌遺伝子及び突然変異化腫瘍抑制遺伝子、例えばp53、Ras、HER−2/neu;染色体転座に起因する独自腫瘍抗原、例えばBCR−ABL、E2A−PRL、H4−RET、IGH−IGK、MYL−RAR;並びにウイルス抗原、例えばエプスタイン・バーウイルス抗原EBVA、及びヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7が挙げられるが、これらに限定されない。他のタンパク質抗原としては、例えば以下の:TSP−180、MAGE−4、MAGE−5、MAGE−6、RAGE、NY−ESO、p185erbB2、p180erbB−3、c−met、nm−23HI、PSA、TAG−72、CA 19−9、CA 72−4、CAM 17.1、NuMa、K−ras、β−カテニン、CDK4、Mum−1、p15、p16、43−9F、5T4、791Tgp72、α−フェトタンパク質、β-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15−3\CA 27.29\BCAA、CA 195、CA 242、CA−50、CAM43、CD68\KP1、CO−029、FGF−5、G250、Ga733\EpCAM、HTgp−175、M344、MA−50、MG7−Ag、MOV18、NB/70K、NY−CO−1、RCAS1、SDCCAG16、PLA2、TA−90\Mac−2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質、TAAL6、TAG72、TLP及びTPSが挙げられ得る。これらのタンパク質ベースの抗原は、文献で又は商業的に、当業者に知られており、利用可能である。
【0047】
本発明の他の例では、8〜15アミノ酸長のペプチド抗原が意図される。このようなペプチドは、より大きな抗原のエピトープであり得る、即ち、それはMHC/HLA分子により提示されるより大きな分子上の部位に対応するアミノ酸配列を有するペプチドであり、そして、例えば抗原受容体又はT細胞受容体により認識され得る。これらのより小さなペプチドは当業者に利用可能であり、そして例えば米国特許第5,747,269号及び同第5,698,396号、並びにPCT出願PCT/EP95/02593号(国際公開第96/01429号として公開)(1995年7月4日出願、表題「抗原ペプチドの同定及び産生方法並びにワクチンとしてのその使用(METHOD OF IDENTIFYING AND PRODUCING ANTIGEN PEPTIDES AND USE THEREOF AS VACCINES)」)及びPCT出願PCT/DE96/00351号(国際公開第96/27008号として公開)(1996年2月26日出願、表題「腫瘍及びその他の過形成を治療するための作用物質(AGENT FOR TREATING
TUMOURS AND OTHER HYPERPLASIA)」)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)の教示に従って得られる。エピトープ発見への付加的アプローチは、米国特許第6,037,135号及び同第6,861,234号(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)に記載されている。
【0048】
概してT細胞による抗原特異的認識を最終的に確定する分子はペプチドであるが、抗原の形態が実際には免疫原性調製物で投与され、免疫原はそれ自体ペプチドである必要はない、ということが注目される。投与される場合、全長タンパク質抗原として、それが断片であれ、操作配列であれ、エピトープペプチド(複数可)はより長いポリペプチド内に存在し得る。このような操作配列に含まれるのは、抗体又はウイルスキャプシドタンパク質のようなキャリア配列中に組入れられるポリペプチド及びエピトープである。このようなより長いポリペプチドは、例えば米国特許出願第09/561,571号(2000年4月28日出願、表題「エピトープクラスター(EPITOPE CLUSTERS)」)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)に記載されているようなエピトープクラスターを包含し得る。エピトープペプチド、又はそれが含有されるより長いポリペプチドは、微生物(例えばウイルス、細菌、原生動物等)、又は哺乳類細胞(例えば腫瘍細胞又は抗原提示細胞)、又は上記いずれかの溶解物(全部又は一部精製)の一構成成分であり
得る。それらは、他のタンパク質、例えば熱ショックタンパク質との複合体として用いられ得る。エピトープペプチドは、例えば脂質化により共有結合的に修飾されるか、又は例えばデンドリマー、多重抗原ペプチド系(MAPS)及びポリオキシムのような合成化合物の一構成成分と成り得るし、又はリポソーム若しくは微小球等に組入れられ得る。本開示中で用いられる場合、「ポリペプチド抗原」という用語は、全てのこのような可能性及び組合せを包含する。本発明は、抗原が微生物又は哺乳類細胞の一ネイティブ構成成分であり得る、と理解する。抗原はさらにまた、組換えDNA技術を介して、又は特に抗原提示細胞の場合は、投与前にポリペプチド抗原又はエピトープペプチドで細胞をパルス標識することにより、微生物又は哺乳類細胞により発現され得る。付加的には、核酸によりコードされた抗原が投与され得るが、これはその後、APCにより発現される。最後に、古典的クラスI MHC分子がペプチド抗原を提示する一方で、非ペプチド高分子、特に微生物細胞壁の構成成分、例えば脂質及び糖脂質(これらに限定されない)を提示するように適合される付加的クラスI分子が存在する。本開示中で用いる場合、抗原、免疫原及びエピトープという用語は、同様にこのような高分子を包含し得る。さらに、核酸ベースのワクチンは、このような高分子の合成に必要な酵素をコードし、それによりAPC上の抗原発現を付与し得る。
【0049】
現在又は将来に当業者に明らかになり得る、米国特許出願第09/560,465号(2000年4月28日出願、表題「抗原提示細胞におけるエピトープ同期化(EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS)」)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)に開示された方法により同定される新規のペプチドは、本明細書中に開示される本発明の実施形態において有用である、ということも意図される。
【0050】
本明細書中に開示される本発明の実施形態に用いられ得る付加的ペプチド及びペプチド類似体は、例えば米国仮特許出願第60/581,001号(2004年6月17日出願)及び米国特許出願第11/156,253号(2005年6月17日出願)(共に表題「SSX−2ペプチド類似体(SSX-2 PEPTIDE ANALOGS)」);並びに米国仮出願第60/580,962号(2004年6月17日出願)及び米国特許出願第11/155,929号(2005年6月17日出願)(共に表題「NY−ESOペプチド類似体(NY-ESO
PEPTIDE ANALOGS)」);米国特許出願第09/999,186号(2001年11月7日出願、表題「抗原の商品化方法(METHODS OF COMMERCIALIZING AN ANTIGEN)」);米国特許出願第11/323,572号(米国特許出願公開第2006/0165711号として公開)(2005年12月29日出願、表題「予防的又は治療的目的のためにMHCクラスI制限エピトープに対する免疫応答を引き出し、増強し、持続するための方法(METHODS TO ELICIT, ENHANCE AND SUSTAIN IMMUNE RESPONSES AGAINST MHC CLASS 1-RESTRICTED EPITOPES, FOR PROPHYLACTIC OR THERAPEUTIC PURPOSES)」);並びに米国特許出願第11/323,520号(2005年12月29日出願、表題「免疫応答の誘導におけるCD4+細胞のバイパス方法(METHODS TO BYPASS CD4+ CELLS IN THE INDUCTION OF AN IMMUNE RESPONSE)」)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)に開示されている。免疫療法に関する有益なエピトープ選択原理は、例えば米国特許出願第09/560,465号(2000年4月28日出願)、米国特許出願第10/026,066号(米国特許出願公開第2003/0215425号として公開)(2001年12月7日出願)及び米国特許出願第10/005,905号(2001年11月7日出願)(全て、表題「抗原提示細胞におけるエピトープ同期化(EPITOPE SYNCHRONIZATION IN ANTIGEN PRESENTING CELLS)」);米国特許出願第09/561,571号(2000年4月28日出願、表題「エピトープ・クラスター(EPITOPE CLUSTERS)」);米国特許出願第10/094,699号(現在は米国特許第7,252,824号)(2002年3月7日出願、表題「癌のための新脈管構造調製物(NEOVASCULATURE
PREPARATIONS FOR CANCER)」);米国特許出願第10/117,937号(米国特許出願公開第2003/0220239号として公開)(2002年4月4日出願)、米国特
許出願第10/657,022号(米国特許出願公開第2004/0180354号として公開)(2003年9月5日出願)及びPCT出願PCT/US2003/027706号(国際公開第04/022709号として公開)(2003年9月5日出願、すべて表題「エピトープ配列(EPITOPE SEQUENCES)」);並びに米国特許第6,861,234号(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)に開示されている。
【0051】
本発明のいくつかの態様では、ワクチンプラスミドが用いられ得る。ワクチンプラスミドの全体的設計は、例えば米国特許出願第09/561,572号(2000年4月28日出願、表題「標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS)」);米国特許出願第10/292,413号(米国特許出願公開第2003/0228634号として公開)(2002年11月7日出願、表題「標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター及びそれらの設計のための方法(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS AND METHODS FOR THEIR DESIGN)」);米国特許出願第10/225,568号(米国特許出願公開第2003/0138808号として公開)(2002年8月20日出願)及びPCT出願PCT/US2003/026231号(国際公開第2004/018666として公開)(2003年8月19日出願、共に表題「標的関連抗原のエピトープをコードする発現ベクター(EXPRESSION VECTORS ENCODING EPITOPES OF TARGET-ASSOCIATED ANTIGENS)」);並びに米国特許第6,709,844号(表題「プラスミド増殖における望ましくない複製中間体の回避(AVOIDANCE OF UNDESIRABLE REPLICATION
INTERMEDIATES IN PLASMIND PROPAGATION)」)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)に開示されている。
【0052】
本発明の実施形態においてさらに意図されるのは、例えば米国仮出願第60/479,554号(2003年6月17日出願)及び米国特許出願第10/871,708号(米国特許出願公開第2005/0118186号として公開)(2004年6月17日出願)、米国特許出願第11/323,049号(米国特許出願公開第2006/0159694号として公開)(2005年12月29日出願)、及びPCT出願PCT/US2004/019571号(2004年6月17日出願)(全て、表題「種々の型の癌のためのワクチンにおける腫瘍関連抗原の組合せ(COMBINATIONS OF TUMOR-ASSOCIATED ANTIGENS IN VACCINES FOR VARIOUS TYPES OF CANCERS)」)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)に開示されているように、特定の癌に対する免疫応答を指図するのに特別な利益を有する特定の抗原組合せである。
【0053】
本明細書中で示されるような、そして当業者に良く知られているようなエピトープは、免疫系の抗原受容体と相互作用する抗原の一部;本発明の場合は、T細胞受容体(TCR)による認識のためにMHC分子により提示される抗原の部分、と定義される。免疫原は、免疫応答を刺激し得る分子である。本明細書中で開示される本発明において意図されるような免疫原としては、ポリペプチド又はポリペプチドをコードする核酸が挙げられるがこれらに限定されず、この場合、ポリペプチドは、免疫応答を刺激し得る。免疫原は、対応するTAA又はその断片と同一であり得るが、しかし必ずそうではない。免疫原としては細胞の表面に提示されるエピトープペプチド、並びにそれらがT細胞受容体(TCR)と相互作用し得るよう、クラスI MHCの結合溝と非共有結合的に結合される(複合体形成される)ペプチドが挙げられるが、これらに必ずしも限定されない。付加的には、免疫原は、エピトープ−MHC複合体又はそれらの表面にこのような複合体を発現する細胞を包含し得る。
【0054】
本明細書中で示されるような、そして当業者に良く知られているようなミモトープは、エピトープの構造を模倣し、そして同一の又は交差反応性の免疫応答を引き起こす化合物
と定義される。本明細書中で言及されるような、そして当業者によく知られているような合成エピトープは、化学的に合成された非天然エピトープ分子である。タンパク質、ペプチド等を合成するための方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0055】
免疫賦活剤及び生物学的応答修飾剤(BRM)
本明細書中に開示される本発明の実施形態は、免疫原+免疫賦活剤又は他の生物学的応答修飾剤(BRM)を含む免疫原性組成物の投与によりT細胞免疫応答を増強する方法を包含する。BRMは、例えばエフェクター応答を促進するか又はT調節応答を抑制することにより、免疫抑制又は免疫刺激的やり方で作用して、免疫応答を調整し得る。本明細書中で用いられるような免疫賦活剤又はBRMは、抗原受容体以外との相互作用により、免疫系又はその細胞の活性を調整する任意の分子を指し得る。本明細書中で用いられるようなBRMはさらに、生得免疫の経路を刺激することにより免疫調整作用を発揮する天然又は合成の低有機分子を包含し得る。
【0056】
本発明の実施形態で利用され得る好ましい免疫賦活性BRMは、サイトカイン又はケモカイン産生の引き金となる分子、例えばそれぞれTLR9及びTLR3等と結合するAPC及び生得免疫細胞上の、トール様受容体(TLR)に関するリガンド、ペプチドグリカン、LPS又は類似体、イミキモド、非メチル化CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)、dsRNA、例えば細菌dsDNA(CpGモチーフを含有する)及び合成dsRNA(ポリI:C)(これらに限定されない)である。これらのBRMは、全身送達される場合、安全性問題に関連した強力な免疫モジュレーターである、ということが注目される。CpGは特に(TLR−9リガンド)、抗原提示細胞の効率的成熟とその後の抗原特異的リンパ球の活性化を可能にすることにより、アジュバントとしての広範な実験的用途及び臨床的可能性を示している(Krieg, A.M., Annu Rev Immunol 20: 709-760, 2002;Weigel, B.J. et al., Clin. Cancer Res. 9: 3105-3114, 2003;Verthelyi, D. et al.,Aids 18: 1003-1008, 2004;Storni, T. et al., J Immunol 172: 1777-1785, 2004)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。これらの安全性問題の回避への一アプローチは、例えば米国特許出願第11/321,967号(米国特許出願公開第2006/0153844号として公開)(2005年12月29日出願、表題「リンパ性器官への生物学的応答修飾剤の標的化投与により免疫応答を誘発し、保持し、操作するための方法(METHODS TO TRIGGER, MAINTAIN, AND MANIPULATE
IMMUNE RESPONSES BY TARGETED ADMINISTRATION OF BIOLOGICAL RESPONSE MODIFIERS INTO LYMPHOID ORGANS)」)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)に開示されているようなリンパ内投与の使用である。
【0057】
本明細書中で用いる場合、BRMという用語は、抗原受容体以外との相互作用による免疫系又はその細胞の活性を調整する任意の分子を指し得る。BRMは、一般に、混合物の活性構成成分(複数可)が規定されていたか否かに関係なく、活性実体(単数又は複数)を含む複合生物学的調製物にも適用される。BRMとして用いられる複合生物学的調製物の例としては、OK432、PSK、AIL、レンチナン等が挙げられる。本発明のいくつかの実施形態では、このような混合物の活性構成成分(複数可)が規定される。本発明の他の実施形態では、複合生物学的調製物から供給されるBRMは、例えばOK−PSA(Okamoto et al., Journal of the National Cancer Institute, 95: 316-326, 2003)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)又はAILb−A(Okamoto et al., Clinical and Diagnostic Laboratory Immunology, 11: 483-495, 2004)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)のように、少なくとも部分的に精製されているか又は実質的に精製されている。好ましい実施形態では、BRMは規定された分子組成を有するものである。BRMとしては、pAPC又はT細胞を活性化する免疫賦活性アジュバント、例えば:TLRリガンド、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、キラヤ・サポニン、ツカレゾル、サイトカイン等が挙げ
られる。いくつかの好ましいアジュバントは、例えばMarciani, D.J. Drug Discovery Today 8: 934-943, 2003(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)に開示されている。
【0058】
免疫原としての細胞の投与を包含するいくつかの実施形態では、BRMは細胞により発現される分子であり得る。一態様では、BRM分子は、構成的に、又はいくつかの生物学的刺激に応答して、細胞により自然に発現され得る。別の態様では、発現は、組換えDNA又はその他の遺伝子操作技術によって変わる。
【0059】
BRMの一クラスとしては、主に、生得免疫の経路を刺激することにより免疫調整作用を発揮する低有機天然又は合成分子が挙げられる。マクロファージ、樹状細胞及び他の細胞は、微生物上の病原体関連分子パターン(PAMP)を認識するいわゆるトール様受容体(TLR)を保有する、ということも示されている(Thoma-Uszynski, S. et al., Science 291: 1544-1547, 2001;Akira, S., Curr. Opin. Immunol., 15: 5-11, 2003)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。さらに意図されるのは、TLRと結合する低分子、例えばTLR7及び8を結合することにより免疫の細胞経路を刺激することが示されている新世代の純合成抗ウイルス性イミダゾキノリン、例えばイミキモド及びレシキモドである(Hemmi, H. et al., Nat Immunol 3: 196-200, 2002;Dummer, R. et al., Dermatology 207: 116-118, 2003)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。
【0060】
微生物構成成分を検出する受容体と直接的に相互作用するBRMが、好ましい実施形態で用いられる。しかしながら、シグナル伝達経路の下流で作用する分子も用いられ得る。したがって共刺激性分子(例えば抗CD40、CTLA−4、抗OX40等)と結合する抗体が、本発明の実施形態においてBRMとして用いられ得る。同様に、さらなる実施形態では、本発明の実施形態で用いられるBRMとしては、例えばIL−2、IL−4、TGF−β、IL−10、IFN−γ等;或いはそれらの産生の引き金となる分子が挙げられ得る。さらに、本発明により本明細書中で意図されるような他のBRMとしては、サイトカイン、例えばIL−12、IL−18、GM−CSF、flt3リガンド(flt3L)、インターフェロン、TNF−α等;或いはケモカイン、例えばIL−8、MIP−3α、MIP−1α、MCP−1、MCP−3、RANTES等が挙げられ得る。
【0061】
アジュバントは、抗原の免疫原性を改善する分子及び調製物である。それらは上記のように免疫賦活活性を有し得るが、しかし、このような活性の代わりに、又はそのほかに、免疫原の物理的状態を変更するための特性も有し得る。アジュバントの作用は、抗原特異的でない。しかしながらそれらが精製抗原と一緒に投与される場合、それらは抗原に対する応答を選択的に促進するために用いられ得る。例えば免疫応答は、タンパク質抗原が明礬により沈殿されると、増大する。抗原の乳化も、抗原提示の持続時間を延長する。適切なアジュバントとしては、全ての許容可能な免疫刺激性化合物、例えばサイトカイン、毒素又は合成組成物が挙げられる。例示的な、しばしば好ましいアジュバントとしては、完全フロイントアジュバント(死結核菌を含有する免疫応答の非特異的刺激剤)、不完全フロイントアジュバント、及び水酸化アルミニウムアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
ペプチドをより免疫原性にさせるための一般的一手法は、樹状細胞(DC)のようなプロフェッショナル抗原提示細胞(APC)の状況でそれらを注射することである(Steinmann, R.M., Ann Rev Immunol 9, 271-96, 1991)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。DCは、免疫系の強力なAPCである。同様に用いられ得る他のアジュバントとしては、MDP化合物、例えばthur−MDP及びnor−MDP、CGP(MTP−PE)、脂質A及びモノホスホリル脂質A(MPL)が挙げられる。
細菌から抽出される3つの構成成分、すなわちMPL、トレハロースジミコレート(TDM)及び細胞壁骨格(CWS)を2%スクアレン/Tween80乳濁液中に含有するRIBIも意図される。両親媒性及び界面活性剤、例えばサポニン及び誘導体、例えばQS21(Cambridge Biotech)は、本発明の実施形態に用いるために意図されるアジュバントのさらに別の群を構成する。非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤(Rabinovich et al., 1994)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)も用いられ得る。
【0063】
本発明の免疫原性組成物の投与
本明細書中に開示される本発明の実施形態は、免疫原+免疫賦活剤又はBRMを含む免疫原性組成物を被検体に投与し、それにより抗原特異的T細胞応答を誘導するか又は増強する方法に関する。好ましい実施形態では、免疫原性組成物は、指数的漸増方式で被検体に提供される。さらなる実施形態では、免疫原性組成物は、線形漸増方式で被検体に提供される。
【0064】
本明細書中に開示される方法によれば、免疫原性組成物は、組成物を送達するための当業者に既知の任意の方法により被検体に送達され得る。したがって被検体への本発明の免疫原性組成物の投与は、皮内的、腹腔内的、筋肉内的、粘膜的、並びにリンパ性器官(例えばリンパ節)へ節内的になされ得るが、これらに限定されない。例えばいくつかの実施形態では、免疫原性組成物の投与は、経皮的、経粘膜的、鼻的、気管支的、経口的、直腸的及び/又は皮下的手段によるものであり得る。いくつかの実施形態では、免疫原性組成物の投与は、リンパ系への直接送達を包含し得る。他の実施形態では、免疫原性組成物の投与は、リンパ系への直接送達から成り得る。ヒトリンパ系は、当業者によく知られているように、リンパ、リンパ球、リンパ管、リンパ節、扁桃、脾臓、胸腺及び骨髄を包含する。
【0065】
いくつかの実施形態では、免疫原+免疫賦活剤又はBRMを含む有効量の免疫原性組成物は被検体に節内的に投与されるか又は送達され、それにより増強されたT細胞応答を引き出す、というのが望ましい。いくつかの実施形態では、増強応答としては、T細胞応答の線形増大刺激が挙げられる。いくつかの実施形態では、増強応答としては、T細胞応答の指数的増大刺激が挙げられる。節内投与は、例えば米国特許第6,994,851号及び同第6,977,074号;PCT特許公開第9902183号パンフレット;並びに米国特許出願公開第20050079152号(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)に開示されている。免疫感作の方法との免疫応答性を査定し、モニタリングするための診断技法の統合は、例えば米国特許出願第11/155,928号(2005年6月17日出願、表題「診断方法を治療方法と統合することによる能動免疫療法の効能改善(IMPROVED EFFICACY OF ACTIVE IMMUNOTHERAPY BY INTEGRATING DIAGNOSTIC WITH THERAPEUTIC METHODS)」)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)により詳細に考察されている。
【0066】
投与のための用具
本明細書中に開示される免疫原性組成物は、以下の実施例におけるような皮下注射器を用いて、又はワクチン接種のための当該技術分野で既知の他の同様の機能性の用具を用いて、ボーラス注射により送達され得る。送達/投与の他の方法としては、例えばポンプのような免疫原送達手段によるリンパ系への皮下的又は直接的な注入を包含し得る。好ましい実施形態では、送達手段は、動物にとって外部であるが、しかし身体中への、好ましくはリンパ系器官又は高リンパ流の領域へ抗原を送達するための手段(例えば針又はカテーテル)を含有する。免疫原送達手段の一利点は、それが多数回実施される注射を不要にする点である。
【0067】
患者の身体の外側に位置する送達用具/手段(外部用具)は、免疫原性組成物を保持するためのレザバー、レザバーから組成物を圧送するためのプログラム可能なポンプ、組成物を送達するための送達チャンネル又はライン、並びに患者の身体中に組成物を導入し、最終的にリンパ系に到達させるための手段で構成される。好ましい一実施形態では、所望の漸増免疫原濃度を提供するために、ポンプは注入される容積を増大するようプログラムされ得る。代替的実施形態では、ポンプのレザバーは、連続増大濃度の免疫原を含む組成物で充填される。好ましくは、免疫原性組成物のためのレザバーは、長時間にわたる所望量の免疫原の送達のために十分に大きく、そしてリンパ系に免疫原性組成物を導入するための手段を使用者が再挿入する必要なく容易に補充可能であるか又は取替え可能である。免疫感作のための外部ポンプ、例えば例示的ポンプの使用は、例えば米国特許第6,997,074号(表題「CTL応答の誘導方法(Method of Inducing a CTL Response)」)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)でさらに考察されている。
【0068】
治療及び投与量レジメン
概して、本発明の実施形態は、被検体の免疫系が疾患を攻撃するために疾患関連抗原に対する細胞媒介性応答を備える疾患を有する被検体を治療するために有用である。疾患の種類は、例えば悪性腫瘍、又は細胞内に進入し、例えば細胞傷害性Tリンパ球により攻撃される細菌、ウイルス、原生動物、蠕虫、もしくは任意の微生物病原体により引き起こされる感染性疾患であり得る。一治療様式において、本発明の方法は持続性又は慢性症状に良好に適しているが、しかし必ずしもこのようなものに限定されない。さらに、本発明は、感染性疾患又は腫瘍を発症する危険に曝されている被検体を免疫感作するために有用である。
【0069】
本発明により意図される疾患及び/又は症状を治療するに際しては、免疫原+免疫賦活剤又はBRMを含む免疫原性組成物の投与量レジメン及び投与日程が用いられ得る。いくつかの実施形態では、本明細書中に開示される免疫原性組成物は複数回の順次用量として投与され得るが、この場合、初回用量後の各用量は増大用量である。このような順次漸増用量は、線形又は指数的漸増用量として提供され得る。本明細書中で用いる場合、線形漸増用量は、ndi(ここで、diは初期用量であり、そしてnは一連の指数であって、したがって用量シリーズはdi、2di、3di、...ndiである)である一連の用量を指す。指数的漸増用量とは、xn-1i(ここで、x>1であり、したがって用量シリーズはdi、xdi、x2i、x3i、...xn-1iである)である一連の用量を意味する。したがって、x=2である場合、各用量はシリーズにおける直前用量の2倍である;x=5である場合、各用量はシリーズにおける直前用量の5倍である。したがって、好ましい一実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、各用量が初回用量のxn-1倍である指数因子で提供される複数回の順次用量として投与され得る。このような複数回の用量は、必要に応じて、2、3、4、5、6又はそれより多くの用量であり得る。投与される初回用量(複数可)が免疫応答を生じるためには低過ぎる用量である場合、より多数回の用量(すなわち7、8、9、10、12、15又はそれより多くの回の用量)が被検体に投与されて、より免疫学的に有効な用量応答を達成し得る。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態では、免疫原性組成物は、抗原又はその免疫原性部分を含む細胞を含む。これらの実施形態のうちのいくつかでは、細胞は抗原提示細胞として役立ち、抗原を発現し、プロセシングするか、或いは抗原又はエピトープペプチド或いは抗原の他の免疫原性部分でパルス標識される。細胞は抗原(又は免疫原)を自然に発現し得る、例えば癌細胞はTuAAを発現し、或いはそうするよう操作することができ、例えば、樹状細胞は、免疫原をコードするmRNAでトランスフェクトされる。例えば細胞は、癌又は腫瘍細胞、或いは抗原提示細胞であり得るが、しかしこれらに限定されない。腫瘍細胞は、膀胱細胞、乳房細胞、肺細胞、結腸細胞、前立腺細胞、肝臓細胞、膵臓細胞、胃細
胞、精巣細胞、脳細胞、卵巣細胞、リンパ球、皮膚細胞、脳細胞、骨細胞、柔組織細胞等であり得る。抗原提示細胞は、例えば樹状細胞であり得る。これらの実施形態における投与量は、直前用量のものに比して投与される細胞の数を順次増大することにより、或いは直前用量のものに比して細胞の表面上のエピトープ−MHC複合体の数を順次増大する(この場合、エピトープは標的抗原からのものである)ことにより、或いはその両方により、増大され得る。細胞表面上のエピトープ−MHC複合体の数は、異なる濃度のエピトープでパルス標識することにより、最も容易に操作され得る。
【0071】
したがって投与は、投薬処方と適合した任意のやり方で、そして治療的又は予防的に有効であるような量でなされる。本発明の免疫原性組成物の有効量又は用量は、治療されるべき被検体における所望の応答、例えば疾患又は症状、その進行或いはその症候の予防、縮小、逆転、安定化又はその他の改善(これらに限定されない)を提供するために必要とされる量である。免疫原性組成物の投与量及び投与日程は、例えば被検体の体重及び年齢、治療されている疾患及び/又は症状の種類、疾患又は症状の重症度、以前の又は同時進行の治療的介入、応答する個体の免疫系の能力、所望される防御の程度、投与方式等(これらは全て、開業医により容易に確定され得る)のような要因を考慮に入れることにより、被検体毎に変わり得る。
【0072】
本明細書中で用いられる組成物は、種々の「単位用量」を含み得る。単位用量は、その投与、即ち適切な経路及び治療レジメンと関連して所望の応答を生じるよう算定された治療用組成物の予定量を含有する、と定義される。投与されるべき量、並びに特定経路及び処方は、臨床分野の当業者の技量内である。治療されるべき被検体、特に被検体の状態及び所望される防御も重要である。単位用量は、1回注射として投与される必要はなく、規定時間にわたる連続注入を包含し得る。
【0073】
本発明のさらなる実施形態では、複数回の用量の免疫原性組成物は、互いの約24時間〜48時間以内に、互いの約12時間〜24時間以内に、最も好ましくは互いの約6時間〜12時間以内に投与され、用量間が約24時間の間隔であるのが最も好ましい、ということが意図される。いくつかの実施形態では、数日間隔で(この場合、その後の投与までに数日(例えば1、2、3、4、5、6又は7日)が経過する)、複数回の用量の本発明の免疫原性組成物を投与する、というのが望ましい。例えば初回用量は低投与量で投与され、その後、第2回の低用量又は高用量が投与され、そしてこのような第2回用量は初回用量後、1、2、3日目又はそれより後に投与され得る;次に第3回用量が第2回用量の1、2、3日後又はそれ以降に投与され、次に第4回用量が第3回用量の1、2、3日後又はそれ以降に投与され、その後も同様に投与され得る。いくつかの実施形態では、抗原の半減期に影響を及ぼされる間隔で、順次用量が提供され得る。抗原の半減期は、抗原の50%が被検体から正常な生物学的プロセスにより代謝されるか又は排除されるのに要する時間である。このように熟練開業医又は臨床医は、CD8+T細胞免疫応答を最適化するために、複数回の用量の免疫原性組成物を投与するための時間、並びにその後の投与までの時間経過を確定する。
【0074】
本発明の免疫原性組成物の投与間隔(複数可)は、投与量レジメン及び投与される用量の有効性によって、数分から数日の範囲であり得る。しかしながら、長時間にわたる用量の線形又は指数的増大に対応する応答T細胞の数を増強するために初回用量の或る日数以内に最終用量は投与されることが意図される。種々の実施形態では、初回用量と最終用量との間の時間間隔は7日未満であり、好ましくはそれは4又は5日であり、さらに好ましくは最終用量は初回用量の6日以内に投与され得る。このように投与されるべき最終用量は、投与される日及び初回用量の有効性によって変わるだけでなく、免疫応答を生じるためのT細胞の数の増強によっても確定される。時が経つに連れて、引き出される免疫応答は衰え、免疫を延長するか又は再確立するために当該手法が反復され得る。
【0075】
本発明の免疫原性組成物が一療法として投与され得る被検体としては、全ての年齢のヒト及び動物、例えばウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、並びに家庭ペット、例えばイヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、マウス、ラット等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の免疫原性組成物は、主に、癌又は感染性疾患のような疾患又は症状の治療において誘導され、持続され、又は指数的に刺激される特定の免疫学的応答を有する必要があるヒトを治療するのに利用され得る。
【0076】
キット
本明細書中に記載される組成物の何れもが、キット中に一緒に集められ得る。非限定な一例では、免疫原性組成物を送達するための1つ又は複数の作用物質又は試薬は、感染性疾患又は癌による疾患又は症状を治療するために、キット中に単独で、又は付加的作用物質と組合せて提供され得る。しかしながらこれらの構成成分は、限定的であるよう意図されない。キットは、作用物質又は試薬を保存及び分散するための適切な容器手段を提供する。
【0077】
キットは一般的に、適切な容器手段中に、被検体に投与するための免疫原+免疫賦活剤又はBRMの薬学的に許容可能な処方物を含む免疫原性組成物、並びに投与するための使用説明書を含有する。キットは単一容器手段を有してもよく、及び/又は感染性疾患又は癌による疾患又は症状を治療するための治療薬(複数可)の免疫学的/治療的に有効な処方物のような付加的化合物のための別個の容器手段を有し得る。キットはさらに、適切な容器手段中に、いくつかの用量の免疫原性組成物を各々別個の容器手段中に含有し得る。免疫原性組成物のいくつかの用量は、免疫原性組成物の2つ以上の順次漸増用量であり得るが、この場合、各々のその後の用量はその直前用量より大きい。いくつかの実施形態では、キットは、2つ以上の用量の免疫原性組成物を含有し、各用量は適切な別個の容器手段内にある。例えばキットは、2、3、4、5、6、7又はそれより多くの用量の免疫原性組成物を含有することができ、各用量は適切な別個の容器手段内にある。他の実施形態では、キットは、各々が別個の容器手段内にあるいくつかの用量の免疫原、或いは免疫賦活剤又はBRMを含み得る。
【0078】
キットの構成成分が1つ及び/又は複数の液体溶液中で提供される場合、液体溶液は水溶液であり、滅菌水溶液が特に好ましい。組成物は注射用組成物にも処方され得るが、この場合、容器手段それ自体が、注射器、ピペット、及び/又は他のこのような同様の装置であり、これらから処方物が被検体に送達又は注射され得るか、及び/又はキットの他の構成成分に適用又は混合されることさえある。いくつかの実施形態では、キットの構成成分は乾燥粉末(複数可)として提供され得る。構成成分(例えば試薬)が乾燥粉末として提供される場合、粉末は適切な溶媒の付加により再構成され得る。溶媒はさらにまた、別の容器手段に入れて提供され得ることが考えられる。
【0079】
本発明に従って用いられる漸増投与量は、同一濃度のより大きい容積を、より高濃度の同一容積を、又はそれらのいくつかの組合せを投与することにより、提供され得る。したがって、種々の実施形態では、キットは、以下の:個別に包装された用量;或いは、漸増容積を分配し、投与するための1つ又は複数の多用量容器;或いは、或る容積を分配し、順次低減希釈を施され、そして定容積を投与するための1つ又は複数の多用量容器;或いは、当業者が思いつくのと同様の組合せ及び利用を含み得る。
【0080】
容器手段は、一般的に、免疫原及び/又は免疫賦活剤又はBRMを含有する少なくとも1つのバイアル、アンプル、試験管、フラスコ、瓶、注射器及び/又はその他の容器手段を包含する。キットは、滅菌性の、薬学的に許容可能な緩衝剤及び/又はその他の希釈剤を含入するための第2の容器手段も包含し得る。本発明のキットは、典型的には、本発明
の方法を実行するための材料を含入するための手段、並びに市販の密閉状態の任意の他の試薬容器も包含し得る。このような容器は、所望のバイアルが保持される射出又は吹込み成形プラスチック容器を包含し得る。容器の数又は型とは関係なく、本発明のキット(複数可)は、被検体の身体内への免疫原+免疫賦活剤又はBRMを含む免疫原性組成物の注射/投与を手助けするための器具も含み得るか、或いはそれと共に包装され得る。このような器具は、注射器、ポンプ及び/又は任意のこのような医学的に認可された送達手段であり得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、漸増用量の免疫原性組成物を含有する一組の注射器が提供されるが、この場合、初回用量の後の各用量は直前用量より多い。いくつかの実施形態では、漸増用量の免疫原性組成物を含有する一組のバイアルが提供されるが、この場合、初回用量の後の各用量は直前用量より多い。漸増用量は、線形的手段により、又は指数的手段により、順次増大され得る。
【0082】
本発明を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲で定義された本発明の範囲を逸脱しない限り、修正、変更及び等価の実施形態がなされ得る、ということは明らかである。さらに、本発明の開示における実施例は全て、非限定例として提供される、と理解されるべきである。
【実施例】
【0083】
本発明をさらに例証するために、以下の非限定例を提示する。実施例に開示された技法は、本発明の実行において良好に機能することを本発明者らが見出した代表的アプローチに従い、したがってその実行のための方式の例を構成すると考えられ得る、と当業者に理解されるべきである。しかしながら、本発明の開示を鑑みて、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、開示されている特定の実施形態において多数の変更を行うことができ、同様の又は類似の結果を依然として得ることができる、と当業者は理解すべきである。
【0084】
実施例1
材料及び方法
マウス 6〜12週齢C57BL/6マウスを、Harlan(Horst, The Netherlands)から購入した。糖タンパク質中に位置するH−2bマウスにおけるリンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)の免疫優性エピトープを表すペプチドgp33(aa33〜41)に特異的なT細胞受容体を発現するTCR318トランスジェニックマウスは、Cytos Biotechnology AG(Schlieren, Switzerland)から入手した(Pircher, H., et al. 1989. Nature 342: 559-561;Pircher, H. et al., Nature 346, 629-633, 1990)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。HLA A2.1を発現するHHDトランスジェニックマウスは、MannKind Corporation(Valencia, CA; Pascolo, S. et al., J Exp Med 185, 2043-2051, 1997)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)から最初に得られた。スイスの獣医学機関のガイドラインに従って、チューリッヒ大学病院の特定の無病原体施設で、マウスを繁殖させ、保持した。
【0085】
ウイルス、ペプチド及びオリゴデオキシヌクレオチド LCMV単離物であるWEを、チューリッヒ大学病院・実験免疫学研究所(スイス)(Institute of Experimental Immunology, University Hospital, Zurich, Switzerland)から入手した。MC57繊維芽細胞に関するフォーカス形成検定を用いて、LCMV力価を確定した(Battegay, M. et al., J Virol Methods 33, 191-198; 1991)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。LCMV糖タンパク質(vacc−gp)を発現する組換えワクシニアウイルス(Bachmann, M.F. et al., Eur J Immunol 24, 2228-2236, 1994)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)を増殖させて、そしてBSC40細胞上にプラーク形成させた(Kundig, T.M. et al., J Virol 67, 3680-3683; 1993
)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。LCMV糖タンパク質ペプチドgp33(aa33〜41;KAVYNFATM、配列番号3)及びgp61(aa61〜80;GLNGPDIYKGVYQFKSVEFD、配列番号4)、並びにVSVペプチドnp52(SDLRGYVYQGLKSG、配列番号5)は、EMC Microcollections(Tubingen, Germany)から購入した。インフルエンザ・マトリックスペプチド(GILGFVFTL、配列番号6)は、Neosystems(Strasbourg, France)から入手した。用いられたHPV16 E7(aa49〜57;RAHYNIVTF、配列番号7)ペプチドは、MannKind Corporation(Valencia, CA)で99%超の純度に合成された。ホスホロチオエート修飾高CGオリゴデオキシヌクレオチド1668(5’−TCC ATG ACG TTC CTG AAT AAT−3’、配列番号8)は、Microsynth(Balgach, Switzerland)により合成された。
【0086】
免疫感作日程 固定累積用量の125μgのgp33(KAVYNFATM、配列番号3)ペプチド又はインフルエンザ・マトリックスペプチド(GILGFVFTL、配列番号6;Falk, K. et al., Immunology 82, 337-342, 1994)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)、及び12.5nmolのCpG1668を、1〜4日の時間枠の間送達するよう、異なる免疫感作日程(s1〜s6)を計画した(表1)。日程3(s3)及び4(s4)は、それぞれ5倍希釈工程で指数的漸減又は漸増パターンに従う、ということに留意されたい。インフルエンザ・マトリックスペプチドによる免疫感作を125μgの同一累積用量で実行した後、同一日程を続けた。
【0087】
養子免疫伝達実験 1×106TCRトランスジェニックT細胞を、250μlのPBS中に再懸濁し、前駆体T細胞頻度を増大し、免疫応答の査定を促すために、性別一致C57BL/6マウスの尾静脈に注射した。1日後、表1に示したようにシトシン−グアニンオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)と混合した種々の用量のgp33ペプチドを用いて、レシピエントの首領域に皮下ワクチン接種した。代替的には、LCMV−WE系統(250pfu)でマウスを静脈内感染させた。同一日程に従って、125μgの同一累積用量を用いて、インフルエンザ・マトリックスペプチドによる免疫感作を実行した。
【0088】
FACS分析 表面抗原のFACS分析のために、血液、脾臓又はリンパ節のRBC無含有単一細胞懸濁液を調製した。Fc−受容体遮断のために抗CD16/CD32と共に5分間、氷上で細胞をインキュベートし、37℃で15分間、PE標識gp33 MHCクラスI四量体(gp33/H−2Db)で染色した後、氷上で20分間、他の表面抗原に関して染色した。染色は全て、PBS/FCS2%(0.01%アジ化ナトリウム含有)中で実行した。IFN−γの細胞内染色のために、完全培地中の2×10-6Mのgp33ペプチド及び10μg/mlブレフェルジンA(Sigma, Buchs, Switzerland)を用いて、4時間、in vitroで単一細胞懸濁液を培養した。次にリンパ球を上記のように表面染色し、タンパク質無含有PBS/PFA1%中で10分間固定し、氷上で3分間、PBS/NP40 0.1%中に浸透させて、最後に氷上で35分間、PBS/FCS 2%中の抗IFN−γ抗体と共にインキュベートした。試料をFACSCaliburで獲得して、CellQuestソフトウエア(BD Biosciences, San Jose, CA)又はFlowJoソフトウエア(TreeStar Inc., Ashland, OR)を用いて分析した。他の抗体はすべて、BD Pharmingen(San Diego, CA)から購入した。
【0089】
in vivoでの抗ウイルス免疫の査定 ワクチン接種した雌C57BL/6マウスを、1.5×106pfu vacc−gpに腹腔内感染させた。5日後に、卵巣を単離し、Kundig, T.M. et al., J Virol 67, 3680-3; 1993(上記)に記載されたようにBSC 40細胞に関してワクシニア力価を確定した。代替的には、マウスを250pfu
LCMV−WEに感染させて、脾臓中のウイルス力価をMC57細胞に関して確定した
(Battegay et al., 1991、上記)。
【0090】
細胞傷害性検定及びサイトカイン分泌検定 1×105トランスジェニックgp33特異的T細胞を、同系照射支持細胞(2×106細胞/ウエル;2000rads)と一緒に24ウエルプレート中で6日間培養し、指示量のgp33ペプチドでパルス標識した。次にエフェクター細胞を300μlの新鮮な培地中に再懸濁して、3倍希釈液を作った。EL−4細胞を10-6Mのgp33ペプチドでパルス標識し、5時間51Cr放出検定における標的細胞として用いた(Bachmann, M.F. et al., Eur J Immunol 24, 2228-36, 1994、上記)。細胞培養上清中の放射能を、Cobra II計数器(Canberra Packard, Downers Growe, IL)で測定した。非放射性培養上清を、IFN−γ、IL−2及びIL−10濃度に関して毎日査定した。サイトカイン分析を、ビーズ・多重検定及びフローサイトメトリーを用いて実施した。
【0091】
ワクチン接種のための骨髄由来樹状細胞の調製 骨髄細胞を若いC57BL/6マウスの大腿骨から単離し、そして50ng/mlのrmGM−CSF及び25ng/mlのrmIL−4(R&D Systems, Minneapolis, MN)を有する100mm皿中の10mlの補足培地中に2×106細胞で植え付けた。7日目に、細胞を収穫し、そして抗CD11cマイクロビーズ(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany)を用いた陽性選択によりDCを精製した。精製細胞を6ウエルプレート中でプレート化し、2μMのCpG ODN 1668で一晩刺激した。CD80、CD86、CD40、CD11c及びマウス系統抗体カクテル(CD3e、Cd11b、CD45R/B220、Ly−76、Ly−6G、Ly−6C)に対する標識化mAbのパネルを用いて、フローサイトメトリーにより、DC表現型を査定した。抗体は全て、BD Pharmingenから入手した。その後、DCを、37℃で2時間、10μg/mlでHPV E7(aa49〜57)ペプチド(RAHYNIVTF、配列番号7)でパルス標識した。DCをPBSで3回洗浄した後、25μLのDCを麻酔したC57/B6マウスの鼠径リンパ節の両側に投与した(Johansen et al. 2005a. Eur J Immunol 35: 568-574)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。マウス10匹の群に、1日目にDC(1.11×105)の1回ボーラス注射(s1)を、或いは1、3及び6日目に指数的漸増数のDC(103、104及び105)の注射(s4)を施した。
【0092】
E7四量体分析 PBMCを17日目にマウス(n=10)から単離し、密度遠心分離(Lympholyte Mammal, Cedarlane Labs)後に単核細胞をRBCから分離した。H−2Db HPV16 E7(RAHYNIVTF、配列番号7)−PE MHC四量体(Beckman Coulter)及びFITC接合抗CD8a(Ly−2)(BD Pharmingen)mAbで、40℃で1時間、細胞を染色することにより、E74957特異的CTL応答を定量した。FACSCaliburを用いてデータを収集し、そしてCellQuestソフトウエアを用いて分析した。
【0093】
ELISPOT分析 IFN−γ産生細胞の定量のために、脾臓を21日目に単離し、単一細胞懸濁液を調製した(n=7)。単核細胞を密度遠心分離により単離し、そして非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン pen−strep、β−メルカプトエタノール及びHEPESを含有する無血清HL−1完全培地中に再懸濁した。三重の2.5×105個の脾臓細胞を、96ウエル・フィルター膜プレート(Multi-screen IP
membrane 96-well plate, Millipore)中で37℃で72時間、10μg/ウエルのHPV16 E7ペプチドと共にインキュベートした。コーティング及び検出IFN−γ抗体(U-Cytech biosciences, Utrecht, The Netherlands)を用いて24時間展開後、ELISpot読取器及びソフトウエア(AID, Strassberg, Germany)を用いてELISPOTを定量した。
【0094】
腫瘍防御試験 21日目(DCの最終注射の15日後)に、各ワクチン接種群からのマウス3匹並びにナイーブC57/B6マウス7匹を、HPV形質転換腫瘍細胞株C3.43の105細胞で攻撃誘発し(Feltkamp et al. 1993. Eur J Immunol 23: 2242-2249;Feltkamp et al. 1995. Eur J Immunol 25: 2638-2642)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)、DMEM、10%FBS、2mMのL−グルタミン及び50μMの2−メルカプトエタノール中で培養した。細胞を、左脇腹に皮下投与した。腫瘍進行を内径測定(mm)によりモニタリングし、腫瘍容積を算定した。
【0095】
統計学的分析 等分散性を想定するスチューデントt検定を実施し、データを、0.05より低い対応なし両端p値で有意とみなした。マン・ホイットニーU検定を用いて、又はクラスカル・ウォリスANOVAにより、非パラメーター的又は非正規分布データを分析した。対数順位検定を用いて、カプラン・マイヤー生存曲線の比較を実施した。
【0096】
実施例2
指数漸増的抗原刺激はCD8+T細胞応答を増強する
T細胞応答が漸増抗原刺激により増強され得るか否かを調べた。第一の実験では、1×106個のトランスジェニックgp33特異的T細胞をC57BL/6野生型レシピエントマウス中に移して、前駆体T細胞頻度を増大し、免疫応答の査定を促した。
【0097】
図1D及び表1に開示したような異なるワクチン接種プロトコールを用いて、CpG ODNと混合した同一累積用量のgp33ペプチド(全体で、125μgのgp33及び12.5nmolのCpG)で、全マウスを免疫感作した:s1)0日目にボーラス注射で1回用量;s2)4日間にわたって4等用量;s3)4日間にわたって漸減用量;そしてs4)4日間にわたって漸増用量。付加的に、マウスの群を1回用量のCpGで免疫感作し、その後、指数的漸増用量のgp33ペプチドで免疫感作する(s5)、又は1回用量のgp33で免疫感作し、その後、指数的漸増用量のCpGで免疫感作する(s6)。0日目に250pfuのLCMVウイルスに静脈内感染させたマウスを、陽性対照として役立てた。6日目(図1A)、12日目(図1B)及び8日目(図1C)に、in vitroでgp33ペプチドで再刺激した血中リンパ球の細胞内IFN−γ染色により、CD8+T細胞応答を定量した。図1Bは、12日目の分析の代表的FACS例を表す。
【0098】
CD8+T細胞応答を強力に増強するため、CpG ODNをアジュバントとして選択した(Krieg, A.M., Annu Rev Immunol 20, 709-60, 2002;Schwarz, K. et al., Eur J Immunol 33, 1465-70, 2003)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。ホスホロチオエート安定化ODNは、30分〜60分の半減期で血漿から除去された(Farman, C.A. & Kornbrust, D.J., Toxicol Pathol 31 Suppl, 119-22, 2003)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。しかしながら、組織中では、CpG ODNは相対的に安定しており、半減期は48時間であった(Mutwiri, G.K., et al., J Control Release 97, 1-17, 2004)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。さらに、60分以内に、血清プロテアーゼは検出レベルより低い値に遊離ペプチドを分解させる、ということが文献中で注目される(Falo, L.D., Jr., et al., Proc Natl Acad Sci USA 89, 8347-50, 1992;Widmann, C., et al., J Immunol 147, 3745-51, 1991、上記)。
【0099】
LCMV野生型による感染に匹敵する規模のCD8+T細胞応答をもたらす免疫感作は、gp33及びCpGが共に指数的漸増様式で投与されることを必要とした、ということをデータは示す。均一1日用量のgp33及びCpGを用いた免疫感作は、二次最強CD8+T細胞応答を誘導したが、しかしながらこれは用量段階的増大刺激より有意に弱かった(6日目にp=0.0001)。ワクチン構成成分のいずれか1つが1回用量として送達された場合、免疫感作の効力は有意に低減されるが、しかしナイーブ対照と比較して有
意であった(2.23±0.84%対0.19±0.12%、6日目にp=0.02)。
【0100】
同じような観察は、TCRトランスジェニック細胞を施されなかったナイーブ野生型マウスにおいてなされた(図1C)。指数的漸増ワクチン(gp33及びCpG)用量で免疫感作されたC57BL/6マウスは、かろうじて検出可能な頻度の特異的CD8+T細胞を誘導した他のワクチン接種プロトコールと比較して、CD8+T細胞の有意に増強された誘導(2.1±0.4%)を示した(p<0.008)。4日目に測定可能な免疫応答を示した試験群はなかった(データは示されていない)。これらの結果は、全体的用量とは関係なく、ワクチン接種の動態は免疫原性の重要な一パラメーターである、ということを実証する。
【0101】
試験群の何れもが、4日目に測定可能な免疫応答を示さなかった(データは示されていない)。全体的に、これらの結果は、全体的用量とは関係なく、抗原及びアジュバントの動態が免疫原性の重要なパラメーターである、ということを示した。
【0102】
図中の説明:s1:1回用量のgp33ペプチド及びCpG;s2:等用量のgp33ペプチド及びCpG;s3:指数的漸減用量のgp33ペプチド及びCpG;s4:指数的漸増用量のgp33ペプチド及びCpG;s5:指数的漸増用量のgp33ペプチド及び最初の1回用量のCpG;s6:最初の1回用量のgp33ペプチド及び指数的漸増用量のCpG;ナイーブ:未処置マウス;LCMV:0日目に250pfuのLCMVで静脈内免疫感作したマウス。値は、群当たり4匹のマウスの平均及びSEMを表わす。3つの類似の実験のうちの1つの代表的実験が示される。
【0103】
図1Bは、12日目の分析のFACSの代表的な例である。上方パネル:gp33ペプチドによる再刺激、下方パネル:gp33再刺激を伴わない対照染色(下方パネル)。
【0104】
【表1】

【0105】
実施例3
CD8+T細胞応答の増強はT細胞ヘルプとは無関係である
CD8+T細胞初回刺激に関するT−ヘルプの役割は、当該技術分野でよく知られている。Th−エピトープは、機能性CD8+T細胞免疫にきわめて重要であり得る(Johansen et al., Eur J Immunol., 34, 91-97, 2004;Shedlock and Shen, Science, 300, 337-339, 2003;Sun and Bevan, Science, 300, 339-342, 2003)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。他方で、前駆体頻度が高い状況では、特に強力な免疫原、例えばLCMV gp33を用いる場合、CD8+T細胞応答は低Th依存性である(Mintern et al., J Immunol., 168, 977-980, 2002)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。さらに、投与経路もT−ヘルプの要求に影響を与え得る(Bour et al., J Immunol., 160, 5522-5529, 1998)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。したがって、CTLのTh依存性は、実験設定によって大きく変わる。この仮説に基づいて、CD8+T細胞応答の増強が指数的漸増ワクチン用量でのワクチン接種によるT細胞ヘルプと無関係であるか否かを、本発明者らは調べた。
【0106】
クラスI LCMV gp33(aa33〜41)ペプチド及びLCMVのクラスII
LCMV gp61(aa61〜80)Th−エピトープの混合物を用いて、上記プロトコールの場合(表1参照)と同様に、指数的漸増ワクチン用量でマウスを免疫感作した。CD8+T細胞応答に及ぼす用量動態の同一作用が上記プロトコールで免疫感作されたマウスにおいて得られた(データは示されていない)ため、指数的漸増ワクチン用量での
ワクチン接種によるCD8+T細胞応答の増強は、T細胞ヘルプと無関係であることが観察された。
【0107】
上記で観察された指数的免疫感作が他のペプチドで達成され得るか否かを調べるために、ヒトHLA A2.1クラスI分子と結合するインフルエンザ・マトリックスタンパク質由来の別のペプチドに分析を拡大した(Falk, K. et al., Immunology: 82, 337-42, 1994、上記)。HLA A2.1を発現するトランスジェニックマウス(HHD;Pascolo, S. et al., J. Exp. Med. 185, 2043-51, 1997、上記)を、インフルエンザ・マトリックスペプチド(GILGFVFTL、配列番号1)及びCpG ODNで皮下免疫感作した。免疫感作日程は、表1(上記)に記載したとおりであった。ワクチンを、1回ボーラス(125μgペプチド及び12.5nmol CpG、s1)として与えるか、又は同一総用量を、用量段階的増大方式で4日にわたって(s4)投与した。抗原を徐々に放出する鉱油である不完全フロイントアジュバント(IFA)を、陽性対照として用いた(Miconnet, I. et al., J Immunol., 168, 1212-8, 2002;Speiser, D.E. et al., J Clin. Invest. 115, 739-46, 2005;Aichele, P., et al., J Exp. Med. 182, 261-6; 1995)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。8日後、CD8+T細胞を、ペプチドによる血中リンパ球のin vitro再刺激後のIFN−γ産生に関して分析した(平均±SEM;n=3〜4)。指数的漸増ワクチン用量は、1回用量のペプチド及びCpG(0.6%±0.2)又はIFA中で乳化されたペプチド及びCpGの処理(2.5%±1.9)より高頻度のIFN−γ産生細胞(6.2%±1.5)を生じる、ということが観察された(図2)。
【0108】
実施例4
4日以上の抗原投与は、最大CD8+T細胞応答を誘導する
上記実施例で示したように、4日間の期間にわたって指数的に増大した抗原は、ボーラス注射又は均一ワクチン用量の毎日注射より有意に強力なT細胞応答を誘導した。したがって、抗原提示のさらなる延長が応答をさらに増強するか否かを調べるために、実験を実行した。C57BL/6マウスの群を、同一総用量のgp33ペプチド及びCpG(125μgのp33及び12.5nmolのCpG)で、しかし異なる指数的動態に従って、ボーラスとしての用量を注射することにより、或いは4、6又は8日間にわたって(図3A)皮下免疫感作した(ピークは0日目(ボーラス)、3日目、5日目又は7日目)。
【0109】
最終注射後の異なる時点で、フローサイトメトリーによるCD44発現及び細胞内IFN−γの確定のために、血中リンパ球を単離し、gp33ペプチドでin vitroで再刺激した。図3Bに示したように、1回ボーラス注射との比較において、4、6又は8日にわたる注射は、免疫応答の高さでの特異的CD8+T細胞の比較可能な有意に増強された頻度を生じたが、これは最終注射の4〜7日後であった。FACS密度ブロットは、免疫応答のピークでFACSにより測定した場合のCD44hi及びIFN−γ産生CD8陽性リンパ球の頻度を表し、そして数字はIFN−γ産生CD44hi CD8+T細胞の平均パーセンテージを示す。2つの同様の実験のうちの1つを示す(n=3〜4)。
【0110】
IFN−γ産生CD44hi CD8+T細胞の平均パーセンテージは、時間の関数としても表わされる(図3C)。2つの同様の実験のうちの1つを示す(n=3〜4)。4日目にピークに達する抗原動態は、有意に弱い応答を誘導するより短い又はより長い抗原プロファイルと比較して、有意に強力なCTL応答を誘導した。さらに、最終注射の4週間後に測定した場合の休止した記憶細胞の数に統計学的差は認められなかった。これらの観察に関する生物学的理由は、エフェクター細胞へのCD8+T細胞の増殖及び分化は数日を要し、そして免疫系が1日又は2日以内に宿主に圧倒的に感染する病原体と競合することさえ難しい、というものであり得る。他方、長期間複製する病原体は、それらがCTLにより絶えず争われる場合、より多くの損害を引き起こす。
【0111】
実施例5
指数的漸増抗原刺激は防御的抗ウイルス応答を増強する
上記観察の機能的関連性をさらに解明するために、異なるレジメン(表1に示したようなs1〜s4)に従って固定累積用量のgp33ペプチド及びCpGで雌野生型C57BL/6マウスを免疫感作し、次に、T細胞応答がすでに収縮又は記憶期にある時点でLCMV又はLCMV糖タンパク質(vacc−gp)を発現する組換えワクシニアウイルスで攻撃誘発した(Kaech, S.M., et al., Nat Rev Immunol 2, 251-62, 2002)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。両ウイルスに対する防御は、専らCD8+T細胞によって変わる(Binder, D. and Kundig, T.M., J Immunol 146, 4301-7, 1991;Kundig, T.M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA: 93, 9716-23, 1996)(これらの記載内容は各々、参照によりその全体が本明細書中で援用される)。
【0112】
上記のように、指数的漸増量(s4)で、又はgp33ペプチド及びCpGのボーラス注射(s1)で、マウス(n=4)を免疫感作した(表1)。陰性対照マウスは未処置(ナイーブ)のままにし、そして陽性対照マウスはLCMV(250pfu)に感染させた。gp33−MHC四量体並びにフローサイトメトリーを用いたgp33特異的エフェクター又は記憶CTLの分析のために、10日目及び30日目に(図4A)、或いはgp33でのin vitroでの再刺激後のIFN−γ産生CD8+T細胞の分析のために30日目に(図4B)、マウスを採血した。図4Aは、10日目及び30日目の、そして左から右に、ナイーブ、s1、s4及びLCMVの、gp33−四量体陽性CD44hi発現を表す。上記結果と一致して、指数的漸増用量のペプチド(gp33)及びCpGは、1回注射ワクチン接種の場合より有意に高い頻度のIFN−γ産生エフェクター及び記憶細胞(図4B)並びにgp33−四量体陽性記憶(CD44hi)細胞(図4A)を誘導した。30日目に、250pfuのLCMVでの腹腔内注射により全マウスを攻撃誘発した。4日後に、脾臓でウイルス力価を測定した。30日目に、250pfuのLCMVでマウスを腹腔内攻撃誘発した。4又は5日後に、脾臓又は卵巣をLCMVの確定のために採取した。ボーラス(s1)ワクチン接種マウスはウイルス複製に対して有意に防御されなかった(図4C)が、一方、指数的漸増ワクチン接種は、ナイーブ又はボーラスワクチン接種マウスと比較して、約10〜20倍の有意の防御抑制LCMV力価を誘導した(p<0.01)。
【0113】
別の組の実験では、異なるレジメンを用いてC57BL/6マウスを免疫感作し、次に1.5×106pfuの組換えワクシニアウイルス(vacc−gp)で、8日目(図4D)又は24日目(図4E)に静脈内攻撃誘発した。その5日後に、vacc−gp複製を卵巣で確定した(図4D及び図4E)。さらにまた、用量段階的増大様式で免疫感作したマウスのみが、有意の防御的CD8+T細胞応答を備えて、他のペプチド免疫感作プロトコールよりも平均で2〜3オーダーの大きさでウイルス複製を抑制することができた。
【0114】
したがって、これらの結果は、免疫感作中の抗原提示の動態の生物学的関連性を証明した。
【0115】
実施例6
活性化APCの数は刺激動態の型に依存しない
免疫感作動態が活性化状態及び活性化APCの数に影響を及ぼすか否かを試験するために、図1〜図3に、並びに表1に記載したような免疫感作プロトコールs1(ボーラス注射)及びs4(指数的漸増用量)に従って、gp33ペプチド及びCpGでC57BL/6マウスを免疫感作した。ワクチンを鼠径部に皮下投与した。1、4、6及び8日後、鼠径リンパ節を除去し、そしてその単一細胞懸濁液を、DCマーカーCD11c、並びにCD86及びMHCクラスIIマーカーI−Abの発現に関してフローサイトメトリーによ
り分析した(図5A)。結果は、ナイーブ対照(0日目)に比して平均蛍光として表現される。結果は、異なる動態が流入領域リンパ節中のDCの数にも、MHC−クラスII(I−Ab)及びCD86発現によりモニタリングされるようなそれらの活性化状態にもきわめて重要な影響を及ぼさない、ということを示唆した(図5A)。しかしながら、DC数及び活性化のピークは比較可能であるが、しかしそれらは2〜3日隔てられた。DC活性化は、免疫感作動態の型とは関係なく、最大CpG用量の1日後にその最大に達した。
【0116】
したがって、単にDCが最も活性化される時点で抗原性ペプチドが送達されるため、指数的漸増ワクチン接種がCD8+T細胞誘導に最適である可能性を試験した。これが真実である場合、CpGのボーラス注射の1日後の、又は4日間にわたって指数的漸増パターンで投与されるCpGの最終用量の1日後の、ボーラスとしての高用量のペプチドの投与は、用量段階的増大様式でペプチド及びCpGの両方を投与した場合に匹敵するCD8+T細胞応答を生じるはずである。別個の実験では、示したような改変プロトコールに従って、gp33ペプチド及びCpGでマウスを免疫感作した(図5B)。一群には、3日目にCpGボーラスを、そして4日目にgp33ペプチドボーラスを施した。一群には、0〜3日目に指数的漸増CpG用量を、その後、4日目にgp33ペプチドボーラスを施した。最後の群には、上記のように1〜4日目に指数的漸増用量のgp33ペプチド及びCpGを施した(s4)。IFN−γ産生CD8+T細胞の頻度を、10日目に末梢血中で測定した。結果は、2つの比較可能な実験(n=3)からの1つの平均及びSEMを示す。図5Bから明らかなように、CpGによるAPCの前刺激は、gp33及びCpGを一緒に指数的漸増パターンで投与することにより生じる応答より有意に低いgp33特異的免疫応答を生じた(p=0.016)。
【0117】
実施例7
指数的漸増抗原刺激はT細胞刺激延長に好都合である
免疫感作の動態がCD8+T細胞の増殖にどのように影響を及ぼしたかを試験するために、上記のように、そして表1に記載されたように、gp33ペプチド及びCpGの1回用量(s1)で、均一1日用量(s2)で、又は指数的漸増用量(s4)をマウスに注射した。マウスの一群は、陰性対照として未処置のままであった。増殖をモニタリングするために、全てのマウスに、初回免疫感作の1日前に、トランスジェニックTCR318マウスからの107又は1.5×106個のCFSE標識脾臓細胞を静脈内投与した。異なる時点で、尾からの採血によりリンパ球を単離し、そしてフローサイトメトリーによりCD8発現及びCFSE染色に関して分析した。p値は、分裂に入ったCFSE標識CD8+T細胞のパーセンテージに関して、s1日程とs4日程との統計学的差を示す。結果は、2つの比較可能な実験のうちの1つを示す。gp33ペプチド及びCpGのボーラス注射は、免疫感作の3日後に分裂するようCFSE標識CD8+T細胞を誘発した(図6A及び図6B)。増殖は、2日後にすでに検出することができた(図6B)。5日目に、前駆体細胞は未だ分裂に入ったが、しかし3日目より低度であり、そして7日目までには、CFSE標識細胞は新規の分裂に入るのを止めていた。これに対して、指数的漸増刺激は、T細胞増殖を顕著に延長した。分裂に入っている細胞は、全免疫感作レジメンを未だ受けていないにも拘わらず、初回免疫の3日後という早くに確定され、分裂は5日目及び7日目に延長した(図6B)。9日目でさえ、増殖は依然として観察された(示されていない)。さらに、分裂指数、即ち受けた分裂の平均数は、s2よりs4に関して有意に高かった(p<0.05、マン・ホイットニーによる)。
【0118】
実施例8
指数的漸増数のペプチドパルス標識DCはCD8+T細胞応答を増強する
異なる数のAPCの寄与を調べるために、同一総数のペプチドパルス標識DCで、しかし異なる動態を用いて、C57BL/6マウスを免疫感作した。骨髄由来DCにHPV E7(aa49〜57、RAHYNIVTF、配列番号2)ペプチドを負荷し、総量1.
11×105細胞を、1日目にボーラスとして鼠径リンパ節中に注射し(s1)、或いは同一総量の細胞を、1日目(103細胞)、3日目(104細胞)及び6日目(105細胞)に漸増(s4)パターンで投与した。さらに、T細胞初回免疫に利用可能なDCの一定総数を保証するために、ワクチンをリンパ内投与した。ナイーブマウスを、陰性対照として用いた。17日目及び22日目に、末梢血中のE7四量体陽性CD8+T細胞の頻度(図7A(黒四角))をフローサイトメトリーにより分析した。値は、平均及びSEMを表わす(n=10)。IFN−γELISPOT(図7A(白四角))を、脾臓から分析した(n=7)。値は、平均及びSEMを表わす(n=7)。21日目に、3匹のワクチン接種マウス及び10匹のナイーブマウスを、HPV形質転換腫瘍細胞株C3.43で攻撃誘発した(図7B)。腫瘍進行を内径測定(mm)によりモニタリングし、これから、腫瘍容積を算定した。VSV np52ペプチドを負荷したDCの皮下注射により免疫感作したC57BL/6マウス(n=4)において、攻撃誘発後の生存を試験した(図7C)。カプラン・マイヤー曲線の対数順位検定:s4≠s2:p=0.0084;s2≠s1:p=0.0082;s1≠ナイーブ:p=0.401。
【0119】
指数的漸増用量(s4)はさらにまた、ワクチンのボーラス注射(s1)より多数の抗原特異的CD8+T細胞を誘導した。これは、それぞれ17日目及び22日目に測定されたMHC−E7四量体陽性(図7A(黒四角))及びIFN−γ産生(図7A(白四角))CD8+T細胞の頻度の両方に関して明らかであった。測定されたCD8+T細胞応答の強度と相関して、用量段階的増大プロトコールでワクチン接種されたマウスは、HPV形質転換腫瘍細胞株C3.43による攻撃誘発を拒絶した(図7B)。これに対して、1回ボーラスで単にワクチン接種されたマウスは、防御されなかった。
【0120】
同様に、VSV np52ペプチドを負荷したDCの(s4)プロトコールで免疫感作したマウスは、VSV核タンパク質を発現するようトランスフェクトされたマウスリンパ腫細胞EL−4による攻撃誘発後の生存改善を示した(図7C)。VSV np52ペプチドを負荷したDCの皮下注射により、C57BL/6マウスを免疫感作した(n=4)。1.11×105のDCを、1日目にボーラスとして(s1)、或いは1、3及び6日目に等用量として(s2)、又は用量段階的増大(s4)用量として、投与した。ナイーブマウスを、対照として用いた。14日目に、全マウスを用量106のEL−4 N.1細胞で腹腔内攻撃誘発した(Kundig, et al., J Immunol. 150, 4450-4456, 1993、上記)。(s4)免疫感作マウスの生存は、3日目に一定数で投与されたDCを用いて(s2)プロトコールに従って免疫感作されたマウスより有意に良好であった(p=0.084)、ということをデータは示している。
【0121】
したがって、指数的漸増ワクチン接種は、ボーラスワクチン接種よりも免疫原性であることを立証した。これらの実験は免疫感作全体を通してDC活性化を同一レベルに保持し、そしてDCの総数は同一であるので、これは、活性化ペプチド提示DCの出現の動態がCD8+T細胞応答の強度を確定する、ということを確証する。したがって本発明者らは、DC数と特異的T細胞の頻度との同時性がT細胞応答の最終バーストサイズを増強する、と結論づけた。早期応答中の特異的T細胞の低頻度は少数の抗原パルス標識化DCで効率的に刺激され得るが、一方、後期主要応答中の高頻度の特異的T細胞を多数のDCで再刺激することは重要であると思われる。
【0122】
実施例9
指数的漸増抗原性刺激はT細胞におけるIL−2産生を増強する:T細胞クローンのレベルでの抗原動態の影響
本発明者らは次に、上記実施例における観察がT細胞クローンのレベルで説明され得るか、或いはそれらが示差的親和性、結合力及び機能性を有するT細胞クローン型を包含するin vivoT細胞選択過程の結果であるか否かを調べた。
【0123】
1×105のTCRトランスジェニックT細胞を、支持細胞として役立つ2×106の照射同系脾臓細胞と共に共培養した。Dbの文脈でgp33を認識するトランスジェニックT細胞受容体を発現するT細胞を、同一総用量の、しかし種々のプロファイルに対応する抗原で、即ち、0日目に10-9Mのgp33のボーラスで(黒四角);4日間にわたってそれぞれ0、1、2及び3日目に10-12、10-11、10-10及び10-9Mの指数的漸増gp33用量で(黒ひし形);4日間毎日0.25×10-9Mの同一gp33用量で(黒三角);又はそれぞれ0、1、2及び3日目に10-9、10-10、10-11及び10-12Mの指数的漸減gp33用量で(黒丸)、in vitroで刺激した。gp33刺激を伴わない対照細胞は、(*)として示される。IL−2、IL−10及びIFN−γを上清中で毎日確定し(図8B)、そして6日後、CTL活性を5時間51Cr放出検定で確定した(図8A)。値は、二重反復実験(図8A)及び三重反復実験(図8B)培養の平均を表す。
【0124】
in vivo知見と同様に、指数的漸増免疫原用量は、その後の同一gp33用量を毎日投与すると、最強のCTL応答を誘導するが、一方、ボーラスとしての又は漸減用量プロファイルでの免疫原の投与は、より弱いCTL応答を生じた。差異は、細胞が10分の1のペプチド用量で刺激された場合、より大きかった。CTL活性は、IL−2の産生と相関した(図8B、上部パネル)。指数的漸増免疫原用量は最高量のIL−2を誘導したが、一方、一定の毎日免疫原用量ははるかに少ないIL−2を誘導した。一定抗原刺激は、指数的漸増抗原刺激と比較した場合、より早期の開始を伴う多量のIL−10を誘導した(図8B、中パネル)。IFN−γは、免疫原ボーラス又は指数的漸減量の免疫原で刺激された細胞において早期段階で一過性に産生された(図8B、底部パネル)。これに対して、一定又は指数的漸増用量による毎日刺激は、特異的T細胞によるより多量のIFN−γの分泌を誘導した。
【0125】
したがって、観察されたように、継続的及び十分な抗原刺激は、IFN−γ産生を維持するために必要であった。指数的漸増抗原刺激が一定の毎日用量より少ないIFN−γを産生するようであるという事実は、IFN−γの高in vitro安定性並びに早期IFN−γ産生のための連続的蓄積により説明され得る。
【0126】
総合的に考えると、指数的漸増免疫原用量によるクローン型T細胞のin vitro刺激は、全ての他の抗原プロファイルより多量のIL−2及びIFN−γを産生し、その後の時点でIL−10を刺激した。これらの観察は、漸増抗原刺激によりもたらされる免疫応答増強がクローン型レベルで働く、という結論と一致する。これらの現象は、より高いT細胞結合力を伴うことも示されており、これは、T細胞及び樹状細胞間の効率的相互作用にとって極めて重要である(Bousso and Robey. 2003. Nat Immunol 4: 579-585)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。
【0127】
IL−2の産生はCD4+及びCD8+T細胞活性化の証明であり、そしてT細胞応答のいくつかの段階を調節するに際して重要な役割を果たす。TCR(シグナル1)及び共刺激性分子(シグナル2)の結合は、T細胞の限定されたクローン展開のみを誘導する。T細胞の広範な増幅、並びに産生性T細胞応答を備えるためのエフェクター細胞への分化は、IL−2Rを介したシグナル伝達を必要とし(シグナル3;Malek, T.R. and Bayer, A.L., Nat. Rev. Immunol., 4, 665-74, 2004)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)、そしてCD8+T細胞による自己分泌IL−2産生はin vivoCD8+T細胞展開の重要な動因である(Malek, T.R. & Bayer, A.L., Nat. Rev. Immunol., 4, 665-74, 2004、上記;D'Souza, W.N., et al., J Immunol., 168, 5566-72, 2002(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される))。他方、IL−10は、普通は樹状細胞の調整を介したT細胞増殖の主要阻害剤である(Moore, K.W.,
et al., Annu. Rev. Immunol., 19, 683-765, 2001)(この記載内容は参照によりその全体が本明細書中で援用される)。したがって、本発明のin vivoデータは、クローンレベルで、T細胞が抗原曝露の動態を復号し得る、ということを示した。
【0128】
実施例10
線形的漸増抗原刺激はCD8+T細胞応答を増強する
T細胞応答が漸増抗原刺激により増強され得るか否かを確定するために、調査を実行した。一実験において、1×106個のトランスジェニックgp33特異的T細胞をC57BL/6野生型レシピエントマウス中に移して、前駆体T細胞頻度を増大し、免疫応答の査定を促した。
【0129】
以下のような異なるワクチン接種プロトコールを用いて、CpG ODN(総量で125μgのgp33及び12.5nmolのCpG)と混合した同一累積用量のgp33ペプチドで、全マウスを免疫感作する:s1)0日目にボーラス注射で単回用量;s2)4日間にわたって4等用量;s3)4日間にわたって線形的漸減用量;そしてs4)4日間にわたって線形的漸増用量。付加的に、マウスの群を1回用量のCpGで免疫感作し、その後、線形的漸増用量のgp33ペプチドで免疫感作する(s5)か、又は1回用量のgp33で免疫感作し、その後、線形的漸増用量のCpGで免疫感作する(s6)。0日目に250pfuのLCMVウイルスに静脈内感染させたマウスを、陽性対照として役立てる。6日目、12日目及び8日目に、in vitroでgp33ペプチドで再刺激した血中リンパ球の細胞内IFN−γ染色により、CD8+T細胞応答を定量した。
【0130】
CD8+T細胞応答を強力に増強するため、CpG ODNをアジュバントとして選択した(Krieg, A.M., Annu Rev Immunol 20, 709-60, 2002;Schwarz, K. et al., Eur J Immunol 33, 1465-70, 2003、上記)。ホスホロチオエート安定化ODNは、30分〜60分の半減期で血漿から除去される(Farman, C.A. & Kornbrust, D.J., Toxicol Pathol
31 Suppl, 119-22, 2003、上記)。しかしながら、組織中では、CpG ODNは相対的に安定しており、半減期は48時間であった(Mutwiri, G.K., et al., J Control Release 97, 1-17, 2004、上記)。さらに、60分以内に、血清プロテアーゼは検出レベルより低い値に遊離ペプチドを分解させる、ということが文献中で注目される(Falo, L.D., Jr., et al., Proc Natl Acad Sci USA 89, 8347-50, 1992;Widmann, C., et al., J Immunol 147, 3745-51, 1991、上記)。
【0131】
LCMV野生型による感染に匹敵する大きさのCD8+T細胞応答をもたらす免疫感作は、線形漸増様式でのgp33及びCpGの両方の投与により提供される、ということが観察される。gp33及びCpGの均一1日用量を用いた免疫感作は、強力なCD8+T細胞応答を誘導するが、しかし用量段階的増大刺激より有意に弱い、ということも観察される。さらに、ワクチン構成成分のうちのいずれか1つが1回用量として送達される場合、免疫感作の効力は有意に低減されるが、しかしナイーブ対照と比較して有意である、ということが観察される。
【0132】
同様の観察は、TCRトランスジェニック細胞を施されないナイーブ野生型マウスにおいてなされる。線形的漸増ワクチン(gp33及びCpG)用量で免疫感作されたC57BL/6マウスは、特異的CD8+T細胞のかろうじて検出可能な頻度を誘導する他のワクチン接種プロトコールと比較して、CD8+T細胞の有意に増強された誘導を示す。これらの結果は、全体的用量とは関係なく、ワクチン接種の動態は免疫原性の重要なパラメーターである、ということを示す。
【0133】
実施例11
線形的漸増抗原刺激は防御的抗ウイルス応答を増強する
漸増抗原刺激によって防御的抗ウイルス応答を増強することができるか否かを確定するために調査を実行した。一実験では、異なるレジメン(実施例10に記載したs1〜s4)に従って固定累積用量のgp33ペプチド及びCpG(総量で125μgのgp33及び12.5nmolのCpG)で雌野生型C57BL/6マウスを免疫感作し、次に、T細胞応答がすでに収縮又は記憶期にある時点でLCMV又はLCMV糖タンパク質(vacc−gp)を発現する組換えワクシニアウイルスで攻撃誘発した(Kaech, S.M., et al., Nat Rev Immunol 2, 251-62, 2002、上記)。両ウイルスに対する防御は、専らCD8+T細胞によって変わる(Binder, D. and Kundig, T.M., J Immunol 146, 4301-7, 1991;Kundig, T.M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA: 93, 9716-23, 1996、上記)。
【0134】
実施例10に記載のように、線形的漸増量(s4)で、又はgp33ペプチド及びCpGのボーラス注射(s1)で、マウス(n=4)を免疫感作した。陰性対照マウスは未処置(ナイーブ)のままにし、そして陽性対照マウスはLCMV(250pfu)に感染させた。gp33−MHC四量体並びにフローサイトメトリーを用いたgp33特異的エフェクター又は記憶CTLの分析のために、10日目及び30日目に、或いはgp33でのin vitroでの再刺激後のIFN−γ産生CD8+T細胞の分析のために30日目に、マウスを採血した。線形的漸増用量のペプチド(gp33)及びCpGは、1回注射ワクチン接種の場合より有意に高い頻度のIFN−γ産生エフェクター及び記憶細胞並びにgp33−四量体陽性記憶(CD44hi)細胞を誘導することが観察された。30日目に、250pfuのLCMVでの腹腔内注射により全マウスを攻撃誘発した。4日後に、脾臓でウイルス力価を測定した。30日目に、250pfuのLCMVでマウスを腹腔内攻撃誘発した。4又は5日後に、脾臓又は卵巣をLCMVの確定のために採取した。ボーラス(s1)ワクチン接種マウスはウイルス複製に対して有意に防御されなかったが、一方、線形的漸増ワクチン接種は、ナイーブ又はボーラスワクチン接種マウスと比較して、LCMV力価の抑制において有意の防御を誘導する(p<0.01)。
【0135】
別の組の実験では、異なるレジメンを用いてC57BL/6マウスを免疫感作し、次に1.5×106pfuの組換えワクシニアウイルス(vacc−gp)で、8日目又は24日目に静脈内攻撃誘発した。その5日後に、vacc−gp複製を卵巣で確定する。用量段階的増大様式で免疫感作したマウスのみが、有意の防御的CD8+T細胞応答を備えて、他のペプチド免疫感作プロトコールよりも数オーダーの大きさでウイルス複製を抑制することができることが観察された。
【0136】
実施例12
線形的漸増抗原刺激はT細胞刺激延長に好都合である
免疫感作の動態がCD8+T細胞の増殖にどのように影響を及ぼすかを試験するために、実施例10に記載したように、gp33ペプチド及びCpGの1回用量(s1)で、均一1日用量(s2)で、又は線形的漸増用量(s4)を、マウスに注射する。マウスの一群は、陰性対照として未処置のままである。増殖をモニタリングするために、全てのマウスに、初回免疫感作の1日前に、トランスジェニックTCR318マウスからの107個のCFSE標識脾臓細胞を静脈内投与する。異なる時点で、尾からの採血によりリンパ球を単離し、そしてフローサイトメトリーによりCD8発現及びCFSE染色に関して分析する。線形的漸増刺激は、1回ボーラス注射刺激プロトコールに比して、T細胞増殖を顕著に延長する、ということが観察される。
【0137】
実施例13
線形的漸増数のペプチドパルス標識DCはCD8+T細胞応答を増強する
異なる数のAPCの寄与を調べるために、同一総数のペプチドパルス標識DCで、しかし異なる動態を用いて、C57BL/6マウスを免疫感作した。骨髄由来DCにHPV E7(aa49〜57、RAHYNIVTF、配列番号2)ペプチドを負荷し、総量1.
2×105細胞を、1日目にボーラスとして鼠径リンパ節中に注射し(s1)、或いは同一総量の細胞を、1日目(2×104細胞)、3日目(4×104細胞)及び6日目(6×104細胞)に線形的漸増(s4)パターンで投与する。さらに、T細胞初回免疫に利用可能なDCの一定総数を保証するために、ワクチンをリンパ内投与する。ナイーブマウスを、陰性対照として用いる。17日目及び22日目に、末梢血中のE7四量体陽性CD8+T細胞の頻度をフローサイトメトリーにより分析し、IFN−γELISPOTを脾臓から分析する。21日目に、3匹のワクチン接種マウス及び10匹のナイーブマウスを、HPV形質転換腫瘍細胞株C3.43で攻撃誘発する。腫瘍進行を内径測定(mm)によりモニタリングし、これから、腫瘍容積を算定する。VSV np52ペプチドを負荷したDCの皮下注射により免疫感作したC57BL/6マウスにおいて、攻撃誘発後の生存を試験する。
【0138】
それぞれ17日目及び22日目に測定されるMHC−E7四量体陽性及びIFN−γ産生CD8+T細胞の頻度の両方により明らかにされるように、線形的漸増用量(s4)は、ワクチンのボーラス注射(s1)より多数の抗原特異的CD8+T細胞を誘導する、ということが観察される。用量段階的増大プロトコールでワクチン接種されたマウスは、HPV形質転換腫瘍細胞株C3.43による攻撃誘発を拒絶するが、一方、1回ボーラスで単にワクチン接種されたマウスは防御されない、ということも観察される。
【0139】
さらなる実験において、C57BL/6マウスを、VSV np52ペプチドを負荷したDCの皮下注射により免疫感作する。1.2×105のDCを、1日目にボーラスとして(s1)、或いは1、3及び6日目に等用量として(s2)、又は用量段階的増大(s4)用量として、投与する。ナイーブマウスを、対照として用いる。14日目に、全マウスを用量106のEL−4 N.1細胞で腹腔内攻撃誘発する(Kundig et al., J Immunol. 150, 4450-4456, 1993、上記)。VSV np52ペプチドを負荷されたDCの(s4)プロトコールで免疫感作されたマウスの生存は、3日目に一定数で投与されたDCを用いて(s1)又は(s2)プロトコールに従って免疫感作されたマウスより有意に良好である、ということが観察される。
【0140】
上記の種々の方法及び技術は、本発明を実行するための多数のやり方を提供する。もちろん、必ずしも全ての記載された目的又は利点が本明細書中に記載された任意の特定の実施形態に従って達成され得るわけではない、と理解されるべきである。したがって、例えば、該方法は、本明細書中に教示されるか又は示唆され得るような他の目的又は利点を必ずしも達成せずに、本明細書中に教示されるような一利点又は利点群を達成するか又は最適化するやり方で実施され得る、と当業者は認識する。種々の有益な及び不利益な代替物が、本明細書中で言及される。いくつかの好ましい実施形態は特に、1つの、別の又はいくつかの有益な特徴を包含するが、一方、他の実施形態は特に、1つの、別の又はいくつかの不利益な特徴を排除し、さらに他の実施形態は特に、1つの、別の又はいくつかの有益な特徴を含めることにより、本発明の不利益な特徴を軽減する、と理解されるべきである。
【0141】
さらに、異なる実施形態からの種々の特徴の適用可能性を当業者は認識するであろう。同様に、上記の種々の要素、特徴及び工程、並びに各々のこのような要素、特徴又は工程のその他の既知の均等物は、本明細書中に記載される原理に従って方法を実施するように当業者により組合わせられ、適合されることができる。種々の要素、特徴及び工程の中で、或るものは多様な実施形態に特定的に含まれ、そしてその他は特定的に排除される。
【0142】
本発明を或る実施形態及び実施例の文脈で開示してきたが、本発明は、特定的に開示された実施形態を越えて、他の代替的実施形態並びに/又はその使用及び修正及び均等物にまで及ぶ、と当業者により理解される。
【0143】
本発明の多数の変形及び代替的要素を開示してきた。さらなる変形及び代替的要素が当業者に明らかであろう。これらの変形の1つは、スクリーニングパネル中の又は治療製品により標的化される特定数の抗原、抗原の型、癌の型、及び明記される特定抗原(複数可)であるがこれらに限定されない。本発明の種々の実施形態は、これらの変形又は要素のいずれかを特定的に含むか又は排除し得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、本発明の或る実施形態を記載し、特許請求するために用いられる成分の量、特性、例えば分子量、反応条件等を表す数は、「およそ」という用語によりいくつかの場合に修正されるものであると理解されるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、明細書並びに添付の特許請求の範囲に記述された数値パラメーターは、特定の一実施形態により得ようとされる所望の特性によって変わり得る近似値である。いくつかの実施形態では、数値パラメーターは、報告された有効数字の数に鑑みて、そして普通の四捨五入技法を適用することにより、解釈されるべきである。広範囲の本発明のいくつかの実施形態を記述する数値範囲及びパラメーターは近似値であるにもかかわらず、特定実施例に記述される数値はできるだけ正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態に提示される数値は、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差に必然的に起因する或る種の誤差を含有し得る。
【0145】
いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を説明する文脈で(特に以下の特許請求の範囲のいくつかの文脈で)用いられる「1つの("a" and "an")」及び「前記(the)」並びに類似の指示語は、単数及び複数の両方を包含すると解釈され得る。本明細書中の値の範囲の記載は、単に、その範囲内に入る各々の別個の値に個別に言及する略記法として役立つよう意図される。本明細書中で別記しない限り、各々の個々の値は、それが本明細書中で個別に記載されるように、本明細書中に組入れられる。本明細書中に記載される方法は全て、本明細書中で別記しない限り、又は文脈により明らかに否認されない限り、任意の適切な順序で実施され得る。本明細書中の或る実施形態に関して提供される任意の及び全ての実施例、又は例示的用語(例えば「〜のような」)の使用は、単に本発明をより良好に例証するものであって、他に特許請求される本発明の範囲を限定しない。本明細書中の用語は何れも、本発明の実行に不可欠な任意の特許請求されない要素を示すものと解釈されるべきでない。
【0146】
本明細書中に開示される本発明の代替的要素又は実施形態の群分けは、限定されたものであると解釈されるべきでない。各群成員は、独立して、或いは本明細書中に見出される群の他の成員又は他の要素との任意の組合せで言及されるか又は特許請求され得る。群の1つ又は複数の成員は、便宜性及び/又は特許可能性の理由のために一群に包含されるか、或いはそれから削除され得る、と予測される。任意のこのような包含又は削除が起こる場合、本明細書は、修正され、添付の特許請求の範囲に用いられる全てのマーカッシュ群の記載要件を満たすような群を含むと思われる。
【0147】
本発明の好ましい実施形態は、本発明を実行するために本発明者らが最良のやり方であると分かっているものを含めて、本明細書中に記載されている。その好ましい実施形態に関する変更は、上記の説明を読めば、当業者には明らかになるであろう。当業者は適切な場合このような変更を用いることができ、そして本発明は、本明細書中に特定的に記載された以外の別のやり方で実行することができる、と意図される。したがって本発明の多数の実施形態は、準拠法により許されるように、添付された特許請求の範囲に記載された主題の全ての修正及び均等物を包含する。さらに、その全ての考え得る変更における上記の要素の任意の組合せは、別記しない限り、又は文脈により明らかに否認されない限り、本発明に包含される。
【0148】
さらに、本明細書全体を通して、特許及び印刷刊行物に対して多くの参照がなされてきた。上記引用参考文献及び印刷刊行物の各々は、独立して、参照によりその全体が本明細書中で援用される。
【0149】
最後に、本明細書中に開示された本発明の実施形態は、本発明の原理を例証するものである、と理解されるべきである。用いられ得るその他の修正が本発明の範囲内にあり得る。したがって例として、限定するものではなく、本発明の代替的構成を本明細書中の教示に従って利用することができる。したがって本発明は、まさに示されそして説明されたものに限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感染性又は新生物性疾患の治療又は予防におけるクラスI MHC制限T細胞応答を刺激するための免疫原性組成物の複数回の順次用量の使用であって、初回用量後の各用量が直前用量より多い使用。
【請求項2】
前記順次用量が前記初回用量の線形関数として増大する、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記順次用量が前記初回用量の指数関数として増大する、請求項1記載の使用。
【請求項4】
前記免疫原性組成物が免疫原+免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む、請求項1記載の使用。
【請求項5】
前記免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤がサイトカイン、ケモカイン、PAMP、TLR−リガンド、免疫刺激配列、CpG含有DNA、dsRNA、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、LPS、キラヤ・サポニン及びツカレゾルから成る群から選択される、請求項4記載の使用。
【請求項6】
前記指数関数が指数因子≧2n-1により定義される、請求項3記載の使用。
【請求項7】
前記指数因子が5n-1である、請求項6記載の使用。
【請求項8】
前記複数回の用量が2〜6回用量を含む、請求項1記載の使用。
【請求項9】
前記複数回の用量が2回より多くの用量を含む、請求項1記載の使用。
【請求項10】
前記複数回の用量が6回より多くの用量を含む、請求項9記載の使用。
【請求項11】
最終回用量が前記初回用量の6日以内に投与される、請求項1記載の使用。
【請求項12】
順次増大用量を伴わない同一累積用量を利用する免疫感作と比較して増強された応答が得られる、請求項1記載の使用。
【請求項13】
前記増強応答が応答T細胞の数増大を包含する、請求項12記載の使用。
【請求項14】
前記増強応答がサイトカインの産生増大を包含する、請求項12記載の使用。
【請求項15】
前記サイトカインがIL−2又はIFN−γである、請求項14記載の使用。
【請求項16】
前記増強応答が免疫抑制性サイトカインのピーク産生における遅延を包含する、請求項12記載の使用。
【請求項17】
前記免疫抑制性サイトカインがIL−10である、請求項16記載の使用。
【請求項18】
前記増強応答が細胞溶解活性における増大を包含する、請求項12記載の使用。
【請求項19】
前記免疫原性組成物を哺乳類に投与することがリンパ系への直接送達を包含する、請求項1記載の使用。
【請求項20】
前記リンパ系への前記直接送達が節内送達を包含する、請求項19記載の使用。
【請求項21】
前記免疫原性組成物を哺乳類に投与することが皮下、筋肉内、皮内、経皮、経粘膜、鼻、気管支、経口又は直腸投与を包含する、請求項1記載の使用。
【請求項22】
前記免疫原性組成物がタンパク質、ペプチド、ポリペプチド、裸DNAワクチン、RNAワクチン、合成エピトープ又はミモトープとして提供される免疫原を含む、請求項4記載の使用。
【請求項23】
前記免疫原がウイルス抗原、細菌抗原、真菌抗原、分化抗原、腫瘍抗原、胎児性抗原、癌遺伝子及び突然変異化腫瘍抑制遺伝子の抗原、染色体転座に起因する独自腫瘍抗原、並びにその誘導体から成る群から選択される抗原に対する応答を刺激する、請求項4記載の使用。
【請求項24】
前記抗原が自己抗原である、請求項23記載の使用。
【請求項25】
前記免疫賦活剤がTLR−リガンドである、請求項5記載の使用。
【請求項26】
前記TLR−リガンドがCpG−含有DNAである、請求項25記載の使用。
【請求項27】
前記免疫原性組成物が細胞を含む、請求項1記載の使用。
【請求項28】
前記細胞が腫瘍細胞である、請求項27記載の使用。
【請求項29】
前記細胞が抗原提示細胞である、請求項27記載の使用。
【請求項30】
前記抗原提示細胞が樹状細胞である、請求項29記載の使用。
【請求項31】
前記より多い用量がより多数の細胞を含む、請求項1記載の使用。
【請求項32】
前記より多い用量が前記細胞の表面のより多数のエピトープ−MHC複合体を含む、請求項31記載の使用。
【請求項33】
免疫原+免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む免疫原性組成物の一組であって、前記一組の個々の成員の投与量が指数級数として関連づけられる一組。
【請求項34】
前記投与量の指数級数が指数因子≧2n-1により定義される、請求項33記載の一組。
【請求項35】
前記投与量の指数級数が5n-1の指数因子により定義される、請求項33記載の一組。
【請求項36】
請求項35記載のような免疫原性組成物の一組及びそれを必要とする被療体に前記組成物を投与するための使用説明書を含むキット。
【請求項37】
前記免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤がサイトカイン、ケモカイン、PAMP、TLR−リガンド、免疫刺激配列、CpG含有DNA、dsRNA、エンドサイトーシスパターン認識受容体(PRR)リガンド、LPS、キラヤ・サポニン及びツカレゾルから成る群から選択される、請求項36記載のキット。
【請求項38】
前記免疫原及び前記免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤が各々別個の容器中に含入される、請求項36記載のキット。
【請求項39】
前記免疫原及び前記免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤が同一容器中に含入される、請求項36記載のキット。
【請求項40】
2回以上の用量の免疫原性組成物を各々別個の適切な容器中に含む、請求項36記載のキット。
【請求項41】
前記適切な容器が注射器、アンプル又はバイアルである、請求項40記載のキット。
【請求項42】
順次増大用量の免疫原性組成物を含む注射器の一組であって、初回用量後の各用量が該注射器の一組の各注射器中の直前用量より多く、そして被検体におけるT細胞応答を増強するために前記免疫原性組成物が免疫原及び免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む一組。
【請求項43】
順次増大用量の免疫原性組成物を含むバイアルの一組であって、初回用量後の各用量が該バイアルの一組の各バイアル中の直前用量より多く、そして被検体におけるT細胞応答を増強するために前記免疫原性組成物が免疫原及び免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む一組。
【請求項44】
薬剤の製造における免疫原及び免疫賦活剤又は生物学的応答修飾剤を含む免疫原性組成物の複数回の順次用量の使用であって、新生物性疾患又は感染性疾患の治療又は予防のために、初回用量後の各用量が直前用量より多い使用。
【請求項45】
哺乳類におけるクラスI MHC制限T細胞応答の刺激方法であって、複数回の順次用量の免疫原性組成物を前記哺乳類に投与することを包含する方法であり、初回用量後の各用量が直前用量より多い方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−519205(P2010−519205A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549627(P2009−549627)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/002044
【国際公開番号】WO2008/100598
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(503208552)マンカインド コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】