説明

TABテープキャリア及びその製造方法

【課題】感光性硬化型樹脂が硬化に必要なUV光エネルギーを得て、十分硬化していることを容易に判断可能とするTABテープキャリア及びその製造方法を提供する。
【解決手段】絶縁性基材2の片面に接着剤3を用いて貼り付けられた銅箔で形成された配線パターン4を有し、その配線パターン4の中央部表面を感光性硬化型樹脂rで保護したTABテープキャリア1において、感光性硬化型樹脂rで保護しない配線パターン4の周辺部上に、感光性硬化型樹脂rの硬化の有無を判定するための感光性変色材cを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性硬化型樹脂の表面が保護されたTABテープキャリア及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図4(a)および図4(b)示すように、従来のTABテープキャリア41は、ポリイミド等を用いた薄厚の絶縁性基材42の片面に、銅箔ラミネート用の接着剤43を塗布し、その接着剤43を用いて銅箔を貼り付け、配線パターン(銅配線、電気めっき給電用配線)44を形成すると共に半田ボールを搭載するボールパッド(はんだボール搭載パッド)45を形成し、そのボールパッド45の周辺となる配線パターン44の中央部表面を感光性硬化型樹脂rで保護したものである。
【0003】
TABテープキャリア41の中心には、ICやCPUなどのデバイスを搭載するためのデバイスホール46が形成され、そのデバイスホール46の周囲にデバイスとの導通を図るワイヤーボンディングパッドエリア47が形成される。ボールパッド45は、ワイヤーボンディングパッドエリア47の周囲に形成される。絶縁基材42の長さ方向両端には、TABテープキャリア41の搬送に用いるスプロケットホール48が形成される。
【0004】
TABテープキャリア41の製造方法は、まず図5(a)に示すように、絶縁性基材42の片面に接着剤43が塗布された長尺のテープを用意する。図5(b)示すように、テープ全面に銅箔51をラミネートし、図5(c)に示すようにフォトレジストを用いたエッチング法により配線パターン44を形成する。
【0005】
次に、図5(d)に示すように、配線パターン44の中央部表面に感光性硬化型樹脂rを塗布し、その感光性硬化型樹脂rに紫外線(UV)を照射し、UV光エネルギーで感光性硬化型樹脂rを硬化させ、銅配線保護膜を形成する。
【0006】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【0007】
【特許文献1】特開平11−186319号公報
【特許文献2】特開平5−3388号公報
【特許文献3】実開平7−34447号公報
【特許文献4】登録実用新案第3033538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のTABテープキャリア41では、感光性硬化型樹脂rは硬化に必要なUV光エネルギーを得ると硬化反応を示すものの、外観上では変化が見られないため、感光性硬化型樹脂rの硬化の有無が確認できないという問題がある。
【0009】
したがって、製品によっては感光性硬化型樹脂rの硬化不足等の問題が発生し、製品の信頼性が低下するという問題がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、感光性硬化型樹脂が硬化に必要なUV光エネルギーを得て、十分硬化していることを容易に判断可能とするTABテープキャリア及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は、絶縁性基材の片面に接着剤を用いて貼り付けられた銅箔で形成された配線パターンを有し、その配線パターンの中央部表面を感光性硬化型樹脂で保護したTABテープキャリアにおいて、上記感光性硬化型樹脂で保護しない上記配線パターンの周辺部上に、上記感光性硬化型樹脂の硬化の有無を判定するための感光性変色材を設けたTABテープキャリアである。
【0012】
請求項2の発明は、上記感光性硬化型樹脂は、紫外線光エネルギーを得ると硬化反応を示す請求項1記載のTABテープキャリアである。
【0013】
請求項3の発明は、上記感光性変色材は、紫外線光エネルギーを得ると変色反応を起こす請求項1または2記載のTABテープキャリアである。
【0014】
請求項4の発明は、絶縁性基材の片面に接着剤を用いて貼り付けられた銅箔で形成された配線パターンを有し、その配線パターンの中央部表面を感熱性硬化型樹脂で保護したTABテープキャリアにおいて、上記感熱性硬化型樹脂で保護しない上記配線パターンの周辺部上に、上記感熱性硬化型樹脂の硬化の有無を判定するための感熱性変色材を設けたTABテープキャリアである。
【0015】
請求項5の発明は、絶縁性基材の片面に接着剤を用いて貼り付けられた銅箔で形成された配線パターンを有し、その配線パターンの中央部表面を感光性硬化型樹脂で保護したTABテープキャリアの製造方法において、上記配線パターンを上記感光性硬化型樹脂で保護する前に、上記感光性硬化型樹脂で保護しない上記配線パターンの周辺部上に、上記感光性硬化型樹脂の硬化の有無を判定するための感光性変色材を設けるTABテープキャリアの製造方法である。
【0016】
請求項6の発明は、配線パターンの中央部表面を感光性硬化型樹脂で保護した後、テープを個片化する際に上記感光性変色材を切除する請求項5記載のTABテープキャリアの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、感光性硬化型樹脂が所定のUV光エネルギーを得て、十分硬化したことを容易に確認することが可能となり、感光性硬化型樹脂の硬化不足等の問題を解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面にしたがって説明する。
【0019】
図1(a)は、本発明の好適な実施形態を示すTABテープキャリアの平面図、図1(b)はその1B−1B線断面図である
図1(a)および図1(b)に示すように、本実施形態に係るTABテープキャリア1は、ポリイミド等の絶縁性のフィルムを用いた薄厚の絶縁性基材2の片面に、銅箔ラミネート用の接着剤3を塗布し、その接着剤3を用いて銅箔を貼り付け、配線パターン(銅配線、電気めっき給電用配線)4を形成すると共に半田ボールを搭載するボールパッド(はんだボール搭載パッド)5を形成し、そのボールパッド5の周辺となる配線パターン4の中央部表面を感光性硬化型樹脂rで保護している。
【0020】
感光性硬化型樹脂rは、UVが照射されてUV光エネルギーを得ると硬化反応を示すものを用いるとよい。
【0021】
TABテープキャリア1の中心には、ICやCPUなどのデバイスを搭載するためのデバイスホール6が形成され、そのデバイスホール6の周囲にデバイスとの導通を図るワイヤーボンディングパッドエリア7が形成される。ボールパッド5は、ワイヤーボンディングパッドエリア7の周囲に形成される。絶縁基材2の長さ方向両端には、TABテープキャリア1の搬送に用いるスプロケットホール8が形成される。
【0022】
本実施の形態では、TABテープキャリア1は、絶縁性基材2として厚さ25〜50μmのポリイミドを用い、配線パターン4として厚さ12〜25μmの電解銅箔を用い、感光性硬化型樹脂rとして厚さ20〜50μmのフォトソルダーレジストを用いた。
【0023】
さて、本実施形態に係るTABテープキャリア1は、感光性硬化型樹脂rで保護しない配線パターン4の周辺部上(図1(a)では2箇所)に、感光性硬化型樹脂rの硬化の有無を判定するための感光性変色材cを設けた点に特長がある。
【0024】
感光性変色材cは、感光性硬化型樹脂rが硬化に必要なUV光エネルギーを得ると目視で判断可能な変色を示す部材である。
【0025】
感光性変色材cは、UVが照射されてUV光エネルギーを得ると変色反応を起こすものを用いるとよい。
【0026】
また、感光性変色材cが変色に必要なUV光エネルギーは、感光性硬化型樹脂rが硬化するのに必要なUV光エネルギーよりも若干大きくなるようにしておく。これにより、感光性変色材cが変色すれば、感光性硬化型樹脂rが確実に硬化していることを判定できる。
【0027】
感光性変色材cの大きさとしては、配線パターン4の幅からはみ出さず、目視可能な大きさであればよく、1mm2程度が好ましい。感光性変色材cの厚さは、感光性硬化型樹脂rと同等がよいので、30μm前後がよい。
【0028】
感光性変色材cは、熱硬化性を有する樹脂にマイクロカプセル化された感光性変色物を含有させた材料である。具体的には、特許文献3、4に記載された材料を用いる。マイクロカプセルの粒径は0.1〜1.0μmが好ましい。
【0029】
次に、TABテープキャリア1の製造方法を図2で説明する。
【0030】
まず図2(a)に示すように、絶縁性基材2の片面に接着剤3が塗布された長尺のテープを用意する。図2(b)示すように、テープ全面に銅箔21をラミネートし、図2(c)に示すようにフォトレジストを用いたエッチング法により配線パターン4を形成する。図1に示したデバイスホール6やスプロケットホール8は、配線パターンを形成する前に、打ち抜き加工によって形成する。
【0031】
次に、図2(d)に示すように、配線パターン4上に熱硬化の特徴を有し、感光性硬化型樹脂rが硬化に必要なUV光エネルギーを得ると変色が目視で判断可能な感光性変色材cをディスペンサーでポッティングし、熱を加え、硬化させる。
【0032】
最後に、図2(e)に示すように、配線パターン4の中央部表面に感光性硬化型樹脂rを塗布し、その感光性硬化型樹脂rに紫外線(UV)を照射し、UV光エネルギーで感光性硬化型樹脂rを硬化させ、銅配線保護膜を形成する。感光性変色材cは、後述するように、TABテープキャリア1を個片化する際に切除される。
【0033】
以上のようにしてTABテープキャリア1が得られる。その後、後工程において、TABテープキャリア1のデバイスホール6にデバイスを搭載し、そのデバイスとワイヤーボンディングパッドエリア7をAu線でワイヤボンディングし、デバイスを樹脂封止すると、TCP(テープキャリアパッケージ)が得られ、製品として出荷される。
【0034】
ここで、感光性硬化型樹脂rを硬化させるには、図3に示すような樹脂硬化装置31を用いる。装置31は、リール支持具32で支持され、TABテープキャリア1を送り出すTABテープキャリア送り出しリール33と、そのリール33の下流側に設けられてTABテープキャリア1を搬送するTABテープキャリア搬送ローラー34と、ローラー34の下流側に設けられるUV露光装置35と、UV露光装置35の下流側に設けられてTABテープキャリア1を搬送するTABテープキャリア搬送ローラー36と、ローラー36の下流側に設けられてリール支持具37で支持され、TABテープキャリア1を巻き取るTABテープキャリア巻き取りリール38とを備える。UV露光装置35は、内部にUV照射光源39を備えている。
【0035】
この装置31を用いて、TABテープキャリア1はリール33から送り出され、ローラー34で搬送され、UV露光装置35内に進入する。そして、TABテープキャリア1はUV露光装置35内部でUV照射光源39を通過する際、UVが照射されて所定のUV光エネルギーを得る。このとき、感光性硬化型樹脂rはこのUV光エネルギーで硬化反応を示すと同時に感光性変色材cも変色反応を示すことになる。その後、TABテープキャリア1は再びローラー36を介してリール38にて巻き取られる。
【0036】
このとき、感光性変色材cが変色しているTABテープキャリア1は、感光性硬化型樹脂rが十分硬化しているため、個片化されて後工程(デバイス搭載工程)に送られる。個片化する際、感光性硬化型樹脂rで保護しない配線パターン4の周辺部を感光性変色材cごと切除する(図2(e))。
【0037】
感光性変色材cが変色していないTABテープキャリア1は、感光性硬化型樹脂rが硬化不足であるので、個片化された後、再びUV露光装置35などでまとめて感光性硬化型樹脂rを硬化させる。
【0038】
本実施形態の作用を説明する。
【0039】
本実施の形態に係るTABテープキャリア1は、配線パターン4上に、感光性硬化型樹脂rが硬化に必要とするUV光エネルギーと同等のUV光エネルギーを得ることによって、目視で判断可能な変色反応を示す感光性変色材cを設けている。
【0040】
このため、例えば、感光性変色材cが変色しているかどうかを目視で確認することにより、感光性硬化型樹脂rが所定のUV光エネルギーを得て、硬化したかどうか、あるいは十分硬化したことを容易に確認することが可能となり、硬化不足等の問題を解決することができる。したがって、TABテープキャリア1の製品の信頼性が向上する。
【0041】
もちろん、感光性変色材cの変色の有無を、半導体カラーセンサなどを用いて判定し、感光性硬化型樹脂rの硬化の有無を自動的に判定してもよい。
【0042】
感光性変色材cは、感光性硬化型樹脂rで保護しない配線パターン4の周辺部上に設けられており、TABテープキャリア1が個片化される際に切除されるため、最終製品に残らないという利点がある。これとは異なり、最終製品まで残る部分に感光性変色材cを設ける場合には、TABテープキャリアの厚さが増すので好ましくない。
【0043】
上記実施形態では、配線パターン4の中央部表面を感光性硬化型樹脂で保護した例で説明したが、配線パターン4の中央部表面を感熱性硬化型樹脂で保護する場合には、感熱性硬化型樹脂で保護しない配線パターン4の周辺部上に、感熱性硬化型樹脂の硬化の有無を判定するための感熱性変色材を設ければ、上述と同じ作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1(a)は本発明の好適な実施形態を示すTABテープキャリアの平面図、図1(b)はその1B−1B線断面図である。
【図2】図2(a)〜(e)は図1に示したTABテープキャリアの製造方法を説明する断面図である。
【図3】図1に示したTABテープキャリアの製造工程の一例を示す概略図である。
【図4】図4(a)は従来のTABテープキャリアの平面図、図4(b)はその4B−4B線断面図である。
【図5】図4に示したTABテープキャリアの製造方法を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 TABテープキャリア
2 絶縁性基材
3 接着剤
4 配線パターン
r 感光性硬化型樹脂
c 感光性変色材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性基材の片面に接着剤を用いて貼り付けられた銅箔で形成された配線パターンを有し、その配線パターンの中央部表面を感光性硬化型樹脂で保護したTABテープキャリアにおいて、上記感光性硬化型樹脂で保護しない上記配線パターンの周辺部上に、上記感光性硬化型樹脂の硬化の有無を判定するための感光性変色材を設けたことを特徴とするTABテープキャリア。
【請求項2】
上記感光性硬化型樹脂は、紫外線光エネルギーを得ると硬化反応を示す請求項1記載のTABテープキャリア。
【請求項3】
上記感光性変色材は、紫外線光エネルギーを得ると変色反応を起こす請求項1または2記載のTABテープキャリア。
【請求項4】
絶縁性基材の片面に接着剤を用いて貼り付けられた銅箔で形成された配線パターンを有し、その配線パターンの中央部表面を感熱性硬化型樹脂で保護したTABテープキャリアにおいて、上記感熱性硬化型樹脂で保護しない上記配線パターンの周辺部上に、上記感熱性硬化型樹脂の硬化の有無を判定するための感熱性変色材を設けたことを特徴とするTABテープキャリア。
【請求項5】
絶縁性基材の片面に接着剤を用いて貼り付けられた銅箔で形成された配線パターンを有し、その配線パターンの中央部表面を感光性硬化型樹脂で保護したTABテープキャリアの製造方法において、上記配線パターンを上記感光性硬化型樹脂で保護する前に、上記感光性硬化型樹脂で保護しない上記配線パターンの周辺部上に、上記感光性硬化型樹脂の硬化の有無を判定するための感光性変色材を設けることを特徴とするTABテープキャリアの製造方法。
【請求項6】
配線パターンの中央部表面を感光性硬化型樹脂で保護した後、テープを個片化する際に上記感光性変色材を切除する請求項5記載のTABテープキャリアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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