説明

TAG−72に対するヒト化モノクローナル抗体

本発明は、癌特異抗原TAG−72(tumor-associated glycoprotein-72)に特異的なヒト化抗体及び前記抗体を含む組成物に関する。具体的に、本発明は、TAG−72に特異的なヒト化抗体AKA/HzKの重鎖を突然変異させて抗原に対する親和度を増加させたヒト化抗体、前記ヒト化抗体の軽鎖をヒト軽鎖で置換した抗体、及び前記抗体を含む抗癌組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、癌特異抗原TAG−72に特異的なヒト化抗体、及び前記ヒト化抗体を含む抗癌組成物に関する。
【0002】
〔背景技術〕
腫瘍特異糖タンパク質−72(tumor-associated glycoprotein-72、以下「TAG−72」という)は、一種のムチン(mucin)タンパク質であって、例えば大腸癌、胃癌、膵臓癌、乳癌、卵素癌などといった広範囲なヒト癌腫(humancarcinomas)に発現する癌特異抗原である。TAG−72に特異的な抗体としては、1980年代初め、米国NIH国立癌研究所(NIH National Cancer Institute)のJeffrey Schlom博士グループによって、ヒト乳癌組織の膜分画を免疫原として用いて製造したB72.3マウスモノクローナル抗体が最初報告された(Colcher et al., 1981, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78(5):3199-3203)。その後、B72.3より抗原結合親和度の高い2世代抗体であるCC49とCC82などが同研究グループによって開発された(Muraro et al., 1988, Cancer Res., 48(16):4588-4596)。
【0003】
CC49またはCC83は、80%以上の大腸癌と約50%の乳癌に結合したが、正常組織には殆ど結合しなかった。また、131Iで標識されたCC49またはCC83を用いて癌患者を対象として生体内イメージングを行った結果、原発性癌と転移した癌を検出した(Divgi et al.,1994, Nucl. Med. Biol.,21(1):9-15)。ところが、マウスモノクローナル抗体を人体に繰り返し投与したとき、人体免疫反応の誘発により、副作用が生じるか或いは治療効果が減少した。このような免疫反応を最小限に減らすために、マウス抗体の抗原結合部位であるCDR(complementarity determining region)とFR(framework region)の幾らかのアミノ酸残基をヒト抗体に移植させたヒト化抗体を製造してきた(Owens et al, 1994, J. Immunol. Methods, 168(2):149-65)。実際、このようなヒト化抗体を患者に繰り返し投与する場合、人体免疫反応が大幅減少することが報告された(Brown et al., 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:2663)。
【0004】
TAG−72抗体に対するヒト化抗体研究の一環として、マウス抗体のCDRがヒトモノクローナル抗体の軽鎖及び重鎖のFrに移植され且つ抗原結合−位置構造の保存に必要なマウスFr残基は保有する、マウスモノクローナル抗体CC49のヒト化抗体(HuCC49)が製造された(Kashmiri et al., Hybridoma 14:461-473, 1995)。
【0005】
米国特許第5,976,531号は、ヒトカッパーサブグループIV生殖系列遺伝子(human kappa subgroup IV germline gene:Hum4V)由来の軽鎖可変領域Vと、TAG−72との結合能を持つ3次構造を形成するために軽鎖可変領域に結合することが可能な重鎖可変領域VHとを有するTAG−72特異的抗体であるHum4V、V抗体について記述している。
【0006】
米国特許第6,495,137号は、CC49、CC83、CC46、CC92、CC30、CC11などのTAG−72に対するマウス抗体(murine anti-TAG-72 antibody)軽鎖CDRがHum4Vに移植されたCDR移植軽鎖(CDR-grafted light chain)を含む、TAG−72に対するヒト化抗体またはその断片について開示している。
【0007】
この他にも、多様なTAG−72に対するヒト化抗体が開発されたにも拘わらず、依然として、高い抗原結合性を持ちながらもヒトにおいて免疫反応を誘発させるおそれの低い抗体が必要であった。
【0008】
そこで、本発明者らは、先行発明において、TAG−72に対するマウス抗体CC49のCDR及びFR配列と最も類似したヒト遺伝子を検索し、このヒト遺伝子を対象としてヒト化抗体の軽鎖及び重鎖遺伝子を製造した後、これらを発現ベクターにクローニングして宿主細胞を形質転換し、しかる後に、これを培養してヒト化抗体AKA/HzKを開発した(韓国特許第0318761号)。ヒト化抗体AKA/HzKは、既存のヒト化抗体HuCC49に比べてCDR及びFRのアミノ酸残基がよりヒトに近く置換され、ヒトに対してさらに減少した免疫原性を持つが、抗原結合能は既存の抗体と実質的に殆ど類似である。それにも拘わらず、人体における免疫反応の誘発は減少させ且つ抗原結合能及び親和度はさらに増加させた、機能的に優れた抗体に対する必要性は依然として求められている。
【0009】
このような背景の下で、本発明者らは、TAG−72に対する結合能及び親和力に優れた抗体を製造するために、既存のヒト化抗体AKA/HzKの重鎖可変領域のCDR3領域を無作為に突然変異させてヒト化重鎖ライブラリ細胞を製作し、このライブラリ細胞を対象としてコロニーリフトアッセイ(colony lift assay)を施して抗原結合能の高い変異体クローンを選別した後、選別されたクローンを対象として競争的ELISAを行って各クローンの抗原結合能を分析する方法によって、TAG−72に対する抗原結合能と抗原結合親和度が増加した新規抗体を製造し、ひいては前記新規ヒト化抗体の軽鎖をヒト軽鎖で置換したヒト化抗体を製造することにより、本発明を完成した。
【0010】
〔発明の開示〕
本発明の目的は、(i)配列番号1のアミノ酸配列において100番〜103番のアミン酸残基の少なくとも一つが置換できる重鎖可変領域、及び(ii)配列番号21または配列番号22で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を有する、TAG−72(tumor-associated glycoprotein-72)に対するヒト化抗体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、前記重鎖可変領域及び軽鎖可変領域をコードする核酸配列を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、前記重鎖可変領域をコードする核酸配列、及び軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む組み換えベクターを提供することにある。
【0013】
本発明の別の目的は、前記組み換えベクターで形質転換された形質転換体を提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、前記形質転換体を培養して前記ヒト化抗体を製造する方法を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、前記抗体を含む抗癌組成物を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、前記抗体を投与して癌を治療または予防する方法を提供することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、前記抗体を投与して癌を診断する方法を提供することにある。
【0018】
本発明の前記および他の目的、特徴および他の利点は添付図面を参照する以降の詳細な説明からより明らかに理解可能であろう。
【0019】
〔発明を実施するための最良の様態〕
一つの様態として、本発明は、(i)配列番号1のアミノ酸配列において100番〜103番のアミノ酸残基が下記配列式1で表される配列を持つアミノ酸配列の重鎖可変領域、及び(ii)配列番号21または配列番号22で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を有する、TAG−72に対するヒト化抗体に関する。
【0020】
[配列式1]
−X100−X101−X102−X103−
式中、X100はロイシン(Leu)またはトリプトファン(Trp)アミノ酸残基であり、
X101はイソロイシン(Ile)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)またはアラニン(Ala)アミノ酸残基であり、
X102はメチオニン(Met)またはグルタミン(Gln)アミノ酸残基であり、
X103はアラニン(Ala)、グルタミン(Gln)またはグリシン(gly)アミノ酸残基である。
【0021】
マウス由来抗体は、人体内で抗原として作用し、これに対する新しい抗体(Human Anti-Mouse Antibody:HAMA、ヒト抗マウス抗体)が生成されるために好ましくない免疫反応を誘発する。このような点を克服するために、人体において非ヒト抗体の免疫原性を減少させるための提案が行われた。ヒト化(Humanization)技術と命名されたこの技術は、一般に、抗体分子のポリペプチド鎖を暗号化するDNA配列を操作する組み換えDNA技術を使用する。ヒト化抗体製造の初期方法は、非ヒト抗体の抗原結合部位全体からなる抗体結合部位と、ヒト抗体の不変領域とを連結させたキメラ抗体を生産するものである。国際公開特許第WO86/01533は、マウス抗体起源の可変性領域のみをヒト抗体不変領域と結合させてヒト化させたキメラ抗体を製造する方法を開示している。このようなキメラ抗体の場合、マウス抗体より免疫反応を少なく起こし且つ機能を増進させるという利点を示した。ところが、キメラ抗体は、マウスの可変領域、すなわち言い換えれば非ヒト可変性領域のアミノ酸配列を依然として含有しているので、ヒトに繰り返し投与する場合、依然としてHAMA反応を起こす。
【0022】
キメラ抗体をさらにヒト化させるために、抗原間の結合機能を示すマウスモノクローナル抗体のCDR部分をヒト抗体のFRと組み換えさせる試みが、マウス抗体の結合特異性と親和度を維持させながら人体には免疫反応を誘発しないという概念の下にあった(Jones et al., 1986, Nature, 4;321(6069):522-525)。前述したマウス抗体のCDRループ(loop)部分をヒト抗体に移植するCDR移植方法によって製造されたヒト化抗体は、非ヒトアミノ酸配列を一層小さい割合で含んでいるため、キメラ抗体よりHAMA反応を一層少なく起こるようにもするが、抗原結合親和度が低い可能性がある。抗体の結合能を維持するために、元抗体であるマウス抗体のFR領域が必要となる可能性もあるので、CDR構造に影響すると推定される幾つかのFR領域のアミノ酸残基をマウス抗体のもので置換して元来のマウス抗体と類似の水準に親和度を増進させることもできた(Riechmann et al., 1988, Nature, 332: 323-327; Queen et al., 1999, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 10023-10029; Tempest et al., 1991, Biol. Technology, 9:266-271; Co et al., 1991, Nature, 351:501-502)。
【0023】
本発明において、用語「ヒト化抗体(humanized antibody)」とは、以上述べたように、ヒトに対して免疫原性がないかまたは免疫原性が減少した抗体を総称する。ヒト化抗体はアミノ酸配列が変形された抗体(altered antibody)であり、抗体のアミノ酸配列は所望の目的に合わせて再構成することができる。このような数多くの変化は、一つまたは幾つかのアミノ酸を変化させることから、抗体の可変及び/または不変領域を安全に再構成することまで可能である。一般に可変領域の変形が抗原結合能と親和度を増大させるために行われるのに比べ、不変領域における変形は補体(complement)の固定、膜との相互作用及びその他の効果剤の機能といった細胞内作用を増大させるために行われる。
【0024】
本発明に関連したヒト化抗体は、マウス抗体CC49の軽鎖及び重鎖の配列と最も類似した遺伝子をジーンバンクデータベース(GeneBank data base)から選別し、これらの遺伝子それぞれをヒト軽鎖不変領域遺伝子Cκ及びヒト重鎖不変領域遺伝子Cγ1と組み換えさせて得た先行発明のヒト化抗体AKA/HzKの重鎖可変領域のCDR3部位を突然変異させて得た抗体であって、配列番号1で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域と配列番号21で表されるアミノ酸配列を持つ軽鎖可変領域とを有するAKA/HzKより抗原結合能及び親和度が増加した抗体である。
【0025】
前記において、用語「可変領域」とは、抗原と特異的に結合する機能を行いながら、配列上の多くの変異(variation)を示す抗体分子の部分を意味する。この可変領域には、CDR1、CDR2及びCDR3が存在する。相補性決定領域(complementarity determining regions:CDR)は、抗原の認識に関与する環状の部位であって、この部位の配列が変わるにつれて抗体の抗原に対する特異性が決定される重要な部位である。本発明は、具体的に、CDR3のアミノ酸配列変異によって、抗原結合親和度を増加させた抗体を製造した。CDRの間に適切な配向で存在する「フレームワーク領域(frame work:FR)」は、CDR環を支持する役割を果たし、具体的にFR1、FR2、FR3及びFR4を含む。本発明の抗体重鎖可変領域は、1番〜30番のFR1部位、31番〜35番のCDR1、36番〜49番のFR2、50番〜66番のCDR2、67番〜98番のFR3、99番〜104番のCDR3、及び105番〜115番のFR4からなっている。本発明の抗体軽鎖可変領域は、1番〜23番のFR1部位、24番〜40番のCDR1、41番〜55番のFR2、56番〜62番のCDR2、63番〜94番のFR3、95番〜103番のCDR3、及び104番〜113番のFR4からなっている。
【0026】
本発明者らは、配列番号1のアミノ酸配列において重鎖可変領域中のCDR3の101番(Kabat No:97番)のアスパラギン(Asn)残基が脂肪族(aliphatic)残基で置換されるとき、TAG−72に対する親和度が増加することが分かった。本発明において、脂肪族タンパク質は、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはアラニンを意味する。
【0027】
具体的な様態として、本発明は、(i)配列番号1のアミノ酸配列において101番(Kabat No:97番)のアスパラギン残基が脂肪族残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシンまたはアラニン残基で置換され、100番(Kabat No:96番)のロイシン残基がトリプトファン残基で置換され、及び/または102番(Kabat No:98)のメチオニン残基がグルタミン残基で置換され、及び/または103番(Kabat No:99)のアラニン残基がグルタミン残基、グリシンで置換されたアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び(ii)配列番号21で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体を提供する。
【0028】
より好ましくは、重鎖可変領域の101番のアスパラギン残基がバリン、102番のメチオニン残基がグルタミン、103番のアラニン残基がグリシンで置換されたものである。よって、配列番号2で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体3C4を提供する。また、より好ましくは、重鎖可変領域の101番のアスパラギン残基がイソロイシン、102番のメチオニン残基がグルタミン、103番のアラニン残基がグリシンで置換されたものである。よって、配列番号3で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体3D5を提供する。また、より好ましくは、重鎖可変領域の101番のアスパラギン残基がイソロイシン、100番のロイシン残基がトリプトファン、103番のアラニン残基がグルタミンで置換されたものである。よって、配列番号4で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体3E8を提供する。また、より好ましくは、重鎖可変領域の101番のアスパラギン残基がバリンで置換されたものである。よって、配列番号5で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体NVを提供する。また、より好ましくは、重鎖可変領域の101番のアスパラギン残基がイソロイシンで置換されたものである。よって、配列番号6で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体NIを提供する。
【0029】
前記の抗体はいずれも、既存の抗体AKA/HzKより親和度が大きく増加した抗体であって、全(whole)抗体3C4は1.33×10−9M、全抗体3D5は2.27×10−9M、全抗体3E8は0.65×10−9Mの抗原結合親和度(K)をそれぞれ有するが、これらの数値は、AKA/HzKの1.45×10−8Mよりそれぞれ約11倍、6倍及び22倍が増加した数値である。全抗体NVは1.66×10−9M、全抗体NIは3.38×10−9Mの抗原結合親和度(K)をそれぞれ有し、これらの数値は、AKA/HzKの1.45×10−8Mよりそれぞれ約8倍及び4倍が増加した数値である。
【0030】
本発明者らは、前記抗体の軽鎖をヒト軽鎖で代替しようとした。
【0031】
ヒト化軽鎖を代替して重軽可変領域と共に使用できるヒト軽鎖を選別するために、ヒトPBL(peripheral blood lymphocytes)からヒト軽鎖ライブラリを製作した後、ヒト軽鎖DNA断片を、最も優れた効果を示すヒト化抗体3EBのFab発現ベクターであるpC3−Q−3E8にヒト化軽鎖遺伝子の代わりに挿入し、抗原結合能の高い変異体クローンを選別するためにリフトアッセイを行った。細胞クローンの結合能が野性型3E8 Fabに比べて優れたクローンを分離した後、このクローンの軽鎖可変領域の塩基配列を確認したところ、配列番号22で表されるアミノ酸配列を持つことを確認することができた。前記の方法によって得た、配列番号22で表されるアミノ酸配列を持つヒト軽鎖可変領域は、通常の遺伝子組み換え方法によって前記ヒト化抗体の軽鎖可変領域で代替することができる。
【0032】
別の具体的な様態として、本発明は、101番(Kabat No:97番)のアスパラギン残基が脂肪族残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシンまたはアラニン残基で置換され、100番(Kabat No:96番)のロイシン残基がトリプトファン残基で置換され、及び/または102番(Kabat No:98)のメチオニン残基がグルタミン残基で置換され、及び/または103番(Kabat No:99)のアラニン残基がグルタミン残基、グリシンで置換されたアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び(ii)配列番号22で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体を提供する。
【0033】
好ましくは、配列番号2で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号22で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体を提供する。また、好ましくは、配列番号3で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号22で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体を提供する。また、好ましくは、配列番号4で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号22で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体を提供する。また、好ましくは、配列番号5で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号22で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体を提供する。また、好ましくは、配列番号6で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号22で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、TAG−72に対するヒト化抗体を提供する。
【0034】
前記の抗体はいずれも、既存の抗体AKA/HzKより親和度が大幅増加した抗体である。その中でも、配列番号4で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号22で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を含む、ヒト化抗体3E8/BSM22が最も好ましい。全3E8/BSM22抗体は、3E8抗体の0.65×10−9Mより約1.5倍が増加した0.45×10−9Mの抗原結合親和度(K)を有する。
【0035】
本発明において、「抗体」は、全抗体型だけでなく、抗体分子の機能的断片を含む。全抗体は2つの全長の軽鎖及び2つの全長の重鎖を持つ構造であり、それぞれの軽鎖は重鎖とジスルフィド結合によって連結されている。抗体分子の機能的断片とは、抗原結合機能を保有している断片を意味し、Fab、F(ab’)、F(ab’)2及びFvなどを含む。抗体断片のうち、Fabは、軽鎖及び重鎖の可変領域、軽鎖の不変領域、及び重鎖の第1不変領域CH1を持つ構造であって、1つの抗原結合部位を有する。Fab’は、重鎖CH1ドメインのC末端に少なくとも一つのシステイン残基を含むヒンジ領域を持つという点において、Fabと差異がある。F(ab’)2抗体は、Fab’のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合を成しながら生成される。Fvは、重鎖可変部位及び軽鎖可変部位のみを持っている最小の抗体断片である。Fv断片を生成する組み換え技術は、国際公開特許WO88/10649、WO88/106630、WO88/07085、WO88/07086及びWO88/09344に開示されている。二重鎖Fv(dsFv)は、ジスルフィド結合によって重鎖可変部位と軽鎖可変部位とが連結されており、単鎖Fv(scFv)は、一般に、ペプチドリンカーを介して重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とが共有結合によって連結されている。このような抗体断片は、タンパク質加水分解酵素を用いて得ることができ(例えば、全抗体をパパインで制限切断すると、Fabを得ることができ、全抗体をペプシンで切断すると、F(ab’)2断片を得ることができる)、好ましくは、遺伝子組み換え技術によって製作することができる。本発明において、抗体は、好ましくはFab型または全抗体型である。
【0036】
本発明で提供するヒト化抗体は、全種類の不変領域と組み換え的な方法によって結合できる。重鎖不変領域は、ガンマ(γ)、ミュー(μ)、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)タイプを持ち、サブクラスとしてガンマ1(γ1)、ガンマ2(γ2)、ガンマ3(γ3)、ガンマ4(γ4)、アルファ1(α1)及びアルファ2(α2)を持つ。軽鎖不変領域は、カッパー(κ)及びラムダ(λ)タイプを持つ(Coleman et al., Fundamental Immunology, 2nd Ed., 1989, 55-73)。好ましくは、重鎖不変領域はガンマ1及びガンマ3であり、最も好ましくは、重鎖不変領域はガンマ1イソタイプである。好ましくは、軽鎖不変領域はカッパータイプである。本発明において、好ましい抗体はカッパー(κ)軽鎖とガンマ1(γ1)重鎖を持つFab型またはIgG1型である。
【0037】
本発明の抗体の不変領域は、そのアミノ酸配列が変異された変異体を含む。好ましくは、免疫グロブリン不変領域変異体は、変異体のタンパク質配列がヒトのそれと相異しなくて免疫反応を誘発しない範囲内において、アミノ酸配列上の誘導と修飾によってタンパク質の熱、pHなどに対する構造的安定性または可溶性が増加し、或いは硫化結合形成、発現宿主との親和性、補体との結合、Fc受容体との結合、及び抗体依存性細胞毒性などが改善された変異体である。
【0038】
別の様態において、本発明は、前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域をコードする核酸配列に関する。
【0039】
重鎖可変領域をコードする核酸配列は、配列番号1のアミノ酸配列において101番のアスパラギン残基が脂肪族残基、例えばイソロイシン、バリン、ロイシンまたはアラニン残基で置換され、100番のロイシン残基がトリトプファン残基で置換され、及び/または102番のメチオニン残基がグルタミン残基で置換され、及び/または103番のアラニン残基がグルタミン残基、グリシンで置換されたアミノ酸配列をコードする。好ましくは、配列番号2、3、4、5または6で表されるアミノ酸配列をコードする配列である。
【0040】
より好ましくは、配列番号2で表されるアミノ酸配列をコードする核酸配列は配列番号16のヌクレオチド配列を持つ核酸配列であり、配列番号3で表されるアミノ酸配列をコードする核酸配列は配列番号17のヌクレオチド配列を持つ核酸配列であり、配列番号4で表されるアミノ酸配列をコードする核酸配列は配列番号18のヌクレオチド配列を持つ核酸配列であり、配列番号5で表されるアミノ酸配列をコードする核酸配列は配列番号19のヌクレオチド配列を持つ核酸配列であり、配列番号6で表されるアミノ酸配列をコードする核酸配列は配列番号20のヌクレオチド配列を持つ核酸配列である。
【0041】
軽鎖可変領域をコードする核酸配列は、配列番号22で表される軽鎖可変領域をコードする。好ましくは、配列番号23のヌクレオチド配列を持つ核酸配列である。
【0042】
前記抗体の不変領域及び可変領域をコードする核酸配列は、組み換え発現ベクターに挿入されて発現する。
【0043】
別の様態として、本発明は、前記重鎖可変領域をコードする核酸配列、及び軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む組み換えベクターに関する。
【0044】
好ましくは、配列番号2〜6で表されるアミノ酸配列からなるグループの中から選択される重鎖可変領域、及び配列番号21または22で表されるアミノ酸配列からなるグループの中から選択される軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む組み換えベクターに関する。具体的な例において、pC3−Q−3C4、pC3−Q−3D5、pC3−Q−3E8、pC3−Q−NV、pC3−Q−NIまたはpC3−Q−3E8/BSM22である組み換えベクターを提供する。また、pdCMV−dhfr−3C4、pdCMV−dhfr−3D5、pdCMV−dhfr−3E8、pdCMV−dhfr−NV、pdCMV−dhfr−NIまたはpdCMV−dhfrC−3E8/BSM22である組み換えベクターを提供する。
【0045】
本発明において、用語「組み換えベクター」とは、適当な宿主細胞で目的タンパク質を発現することが可能な発現ベクターであって、遺伝子挿入物が発現するように作動可能に連結された必須的な調節要素を含む遺伝子作製物をいう。
【0046】
本発明において、「作動可能に連結された(operably linked)」とは、一般的機能を行うように、核酸発現調節配列と、目的タンパク質をコードする核酸配列とが機能的に連結されていることをいう。組み換えベクターの作動的連結は、当該技術分野でよく知られている遺伝子組み換え技術を用いて製造することができ、部位特異的DNAの切断及び連結は、当該技術分野で一般に知られている酵素などを用いて容易に実現することができる。
【0047】
本発明の適切な発現ベクターは、例えばプロモータ、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーなどの発現調節エレメントの他にも、膜標的化または分泌のためのシグナル配列を含むことができる。開始コドン及び終結コドンは、一般に、免疫原性標的タンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部と見なされるもので、遺伝子作製物が投与されたとき、個体において必ず作用を示さなければならず、コーディング配列とインフレーム(in frame)にあるべきである。一般プロモータは、構成的または誘導性である。原核細胞にはlac、tac、T3及びT7のプロモータがあるが、前記例示に限定されるものではない。真核細胞には猿ウィルス40(SV40)、マウス乳腺腫ウィルス(MMTV)プロモータ、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、例えばHIVの長末端反復部(LTR)プロモータ、モロニーウィルス、サイトメガロウィルス(CMV)、エプスタインバーウィルス(EBV)、ラウス肉腫ウィルス(RSV)プロモータだけでなく、β−アクチンプロモータ、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、ヒトメタロチオネイン由来のプロモータがあるが、前記例示に限定されるものではない。
【0048】
発現ベクターは、ベクターを含有する宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含むことができる。選択マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別するためのもので、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性、または表面タンパク質の発現といった選択可能な表現型を与えるマーカーが使用できる。選択剤(selective agent)が処理された環境では選別マーカーを発現する細胞のみが生存するので、形質転換された細胞が選別可能である。また、ベクターは、複製可能な発現ベクターの場合、複製が開始される特定の核酸配列である複製起点(replication origin)を含むことができる。ウィルス(例えば、バキュロウィルス)またはファージベクター、及びレトロウィルスベクターのような、宿主細胞のゲノム内に挿入できるベクターも使用可能である。
【0049】
全抗体または抗体断片を発現するベクターは、軽鎖と重鎖を一つのベクターで同時に発現させるベクターシステム、または軽鎖と重鎖をそれぞれ別途のベクターで発現させるシステムが可能である。後者の場合、2つのベクターは同時形質転換(co-transformation)及び標的形質転換(targeted transformation)によって宿主細胞に導入し、軽鎖(または重鎖)を含有するベクターで形質転換された細胞を選別し、軽鎖を発現する選別された細胞を重鎖(または軽鎖)含有ベクターでさらに形質転換することにより、軽鎖及び重鎖の両方ともを発現する細胞を最終的に選別する。
【0050】
Fab型の抗体を作製するために、ヒト軽鎖の可変領域VLと不変領域CL及びヒト重鎖の可変領域VHと第1不変領域ドメインCH1のアミノ酸をコードする遺伝子が挿入されたベクターを利用する。本発明では、具体的には例えばpComb3HSSベクターを使用し、より好ましくは、重鎖の一番目のアミノ酸であるグルタミンを維持させるために、ベクターのxhoI位置の前にあるアミノ酸配列EVQL(グルタミン酸−バリン−グルタミン−ロイシン)をQVQL(グルタミン−バリン−グルタミン−ロイシン)に変形し、及び/または可溶性Fabを発現させるためにgeneIIIを除去したベクターpC3−Qを使用した。このベクターはlacZプロモータを有し、シグナルペプチドはOmpAとpelBを持つことを特徴とする。
【0051】
好ましい様態において、本発明は、配列番号2で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表される軽鎖可変領域を含むpC3−Q−3C4、配列番号3で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表される軽鎖可変領域を含むpC3−Q−3D5、配列番号4で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表される軽鎖可変領域を含むpC3−Q−3EB、配列番号5で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表される軽鎖可変領域を含むpC3−Q−NV、配列番号6で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表される軽鎖可変領域を含むpC3−Q−NI、並びに配列番号4で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号22で表される軽鎖可変領域を含むpC3−Q−3E8/BSM22などを提供する。
【0052】
全抗体を製作するために、ヒト軽鎖の可変領域VLと不変領域CL、及びヒト重鎖の可変領域VHと全不変領域ドメインCH1、CH2及びCH3をコードする遺伝子が挿入されたベクターを用いる。本発明の具体的な例では、pCMV−dhfr(KCTC 8671P:韓国登録特許第162021号)を用いて作った、2つの発現単位を持つpdCMV−dhfrを用いた。前記ベクターは、それぞれのプロモータにおいて、重鎖と軽鎖が発現する2つのCMVプロモータを有することを特徴とする。
【0053】
好ましい様態において、本発明は、配列番号2で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表される軽鎖可変領域を含むpdCMV−dhfr−3C4、配列番号3で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表される軽鎖可変領域を含むpdCMV−dhfr−3D5、配列番号4で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表される軽鎖可変領域を含むpdCMV−dhfr−3E8、配列番号5で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表される軽鎖可変領域を含むpdCMV−dhfr−NV、配列番号6で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号21で表される軽鎖可変領域を含むpdCMV−dhfr−NI、並びに配列番号4で表されるアミノ酸配列を持つ重鎖可変領域、及び配列番号22で表される軽鎖可変領域を含むpdCMV−dhfrC−3E8/BSM22などを提供する。
【0054】
その中でも、全抗体3E8を発現するpdCMV−dhfr−3E8ベクターは、KCTC(Korean Collection for Type Cultures、大韓民国大田市儒城区魚慇洞52)に2001年6月21日に第KCTC 1039BP号で寄託され、全抗体3E8/BSM22を発現するpdCMV−dhfrC−3E8/BSM22ベクターは、KCTCに2004年5月31日に第KCTC 10647BP号で寄託された。
【0055】
別の様態として、本発明は、前記組み換えベクターで形質転換された形質転換体に関する。
【0056】
前記ベクターの適切な宿主細胞は、例えばエシェリキアコリ(Escherichia coli)、バチルスサブチルス(Bacillus subtilis)、ストレプトミセス(Streptomyces)、シュードモナス(Pseudomonas)、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)、スタヒロコッカス(Staphylococcus)などの原核細胞であってもよい。また、アスペルギルス属(Aspergillus species)などの真菌、ピキア酵母(Pichia pastoris)、サッカロマイセスセレヴィジエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、アカバンカビ(Neurospora crassa)などの酵母、その他の下等真核細胞、及び昆虫からの細胞などの高等真核生物の細胞といった真核細胞であってもよい。また、植物、哺乳動物から由来してもよい。好ましくは、猿腎臓細胞7(COS7:monkey kidney cells)細胞、NSO細胞、SP2/0、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、W138、BHK(baby hamster kidney)細胞、MDCK、骨隋腫細胞株、HuT78細胞及び293細胞を含むが、これに限定されるものではない。好ましくは、CHO細胞である。本発明のpdCMV−dhfr−3E8ベクターが、CHO細胞としてリポフェクタミンを用いた方法で形質転換された、形質転換細胞株9E8を製造し、KCTCに2001年6月21日に第KCTC 1040BP号で寄託した。また、本発明のpdCMV−dhfrC−3E8/BSM22ベクターをCHO細胞に形質転換して形質転換細胞株4D12−B31を製造し、KCTCに2004年5月31日に第KCTC 10646BP号で寄託した。
【0057】
本発明において、宿主細胞への「形質転換」は、核酸を有機体、細胞、組織または器官に導入するいずれの方法も含み、当分野で公知になっているように、宿主細胞に応じて適切な標準技術を選択して行うことができる。このような方法は、電気衝撃遺伝子伝達法(electroporation)、原形質融合、リン酸カルシウム(CaPO)沈殿、塩化カルシウム(CaCl)沈殿、炭化ケイ素繊維を用いた攪拌、アグロバクテリア媒介形質転換、PEG、硫酸デキストラン、リポフェクタミン、及び乾燥/抑制媒介形質転換方法などを含むが、前記例示に限定されるものではない。
【0058】
別の様態として、本発明は、前記形質転換体を培養してヒト化抗体を製造する方法に関する。
【0059】
前記抗体の製造において、形質転換体の培養は、当業界に知られている適切な培地と培養条件に応じて行われ得る。このような培養過程は、当業者であれば選択される菌株に応じて容易に調整して使用することができる。
【0060】
形質転換体を培養して得た抗体は、精製していない状態で使用でき、さらに多様な通常の方法、例えば透析、塩沈殿、クロマトグラフィーなどを用いることができ、これらを単独でまたは組み合わせて用いることができる。その中でもクロマトグラフィーが最も多く用いられており、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィーなどがある。
【0061】
前記方法で製作された抗体は、抗原に対する親和度が増加した抗体である。用語「親和度」は、抗原の特定の部位を特異的に認識し結合する能力であって、このような抗体の抗原に対する特異性と共に高度の親和度は、免疫反応において重要な要素である。本発明では、重鎖可変領域を無作為に突然変異させてヒト化重鎖ライブラリ細胞を製作し、このライブラリ細胞を対象としてコロニーリフトアッセイを施して抗原結合能の高い変異体クローンをまず選別し、選別されたクローンを対象として競争的ELISAを行って各クローンの親和度を調査した。その他にも、抗原に対する親和度を測定するための多様な方法を使用することができるが、表面プラスモン共鳴技術(surface plasmon resonance technology:SRP)がその例である。
【0062】
本源に用いられる用語「K」は、特定抗体−抗原相互作用の解離定数を称し、抗体の抗原に対する親和度を測定する尺度として使用された。前記方法によって製作した本発明の抗体は、抗原TAG−72に結合可能な能力が元来の抗体AKA/HzKより著しかった。
【0063】
したがって、前記方法によって製作された親和度が増加した抗体は、癌の診断及び治療に有用に応用できる。抗体は、それ自体、または抗体を含む組成物として提供できる。
【0064】
別の様態として、本発明は、前記抗体を用いて癌を診断する方法に関する。
【0065】
本発明の抗体は、TAG−72に高い親和性で結合するので、TAG−72と前記抗体との結合体の形成を検出ラベル(detection label)のシグナルサイズを定性または定量的に測定することができ、これによって癌か否かを診断することができる。抗原−抗体複合体の形成を定性または定量的に測定することを可能にするラベルは、酵素、蛍光物、リガンド、発光物、微粒子、レドックス分子及び放射線同位元素などが例示されるが、これらに限定されるものではない。実際、免疫組織化学的染色(immunohistochemistry)結果、本発明の抗体が大腸癌に対して非常に強い反応性を示すことを確認した。
【0066】
また、本発明の抗体は、イメージングマーカー(imaging marker)に結合させて患者に投与し、これを確認することにより、ヒトの腫瘍またはそれらの転移を診断することができる。本発明の抗体は、既存の抗体より抗原に対する親和力が高く、よりヒト化された抗体なので、患者への投与に非常に適する。抗体−イメージングマーカー結合体(antibody-imaging marker conjugated)の投与及び確認と抗体のイメージングマーカーへの連結方法は、(Goldenberg et al., 1978, New England J. Med. 298, 1384-1388; Goldenberg et al., 1983,J. Amer. Med. Assoc. 280, 630-635; Goldengerg et al.,1983, Gastroenterol. 84, 524-532; Siccardi et al., 1986, Cancer Res. 46, 4817-4822; Epenetos et al., 1985, Cancer 55, 984-987; Philben et al., 1986, Cancer 57, 571-576; Chiou et al., 1986, Cancer Inst. 76, 849-855; Colcher et al., 1983, Cancer Res., 43, 736-742; Colcher, E. et al., Laboratory Research Methods in Biology and Medicine Immunodiagnostics. New York, Alan R. Liss. pp. 215-258(1983); Keenan, A.M. et al., 1984, J. Nucl. Med. 25, 1197-1203; Colcher D. et al., 1987, Cancer Res. 47, 1185-1189; Estaban, J.M. et al., 1987, Intl. J. Cancer 39, 50-59; Martin, D.T., et al., 1984, Curr. Surg. 41, 193-194; Martin, E.W. Jr. et al., 1986, Hybridoma 5, S97-S108; Martin, D.T. et al., 1985, Am. J. Surg. 150, 672-675; Meares et al., Anal. Biochem. 1984, 142, 68-78; and Krejcarek et al., 1977, Biochem. and Biophys. Res. Comm. 77, 581-585)などの文献に記述されている。投与量は、患者の年齢と体重に応じて変わり得る。抗体−イメージングマーカー結合体の投与量は、正常組織とは区別される腫瘍部位を可視化させるか或いは確認することができるように効果的な量でなければならない。
【0067】
抗体に結合することが可能なイメージングマーカーの例は、当分野の技術者に公知になっており、ガンマスキャナ(gamma scanner)または手動ガンマプローブ(hand held gamma probe)または陽性子放出断層撮影器(positron Emission Tomograpy)などを用いて診断画像(diagnostic imaging)によって確認することが可能な物質と、核磁気共鳴分光器(nuclear magnetic resonance spectrometer)などを用いた核磁気共鳴画像によって確認することが可能な物質とを含む。
【0068】
ガンマスキャナなどによって確認できる物質の適切な例としては、125I、131I、123I、11In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177LU、186Re、188Reおよび99mTcなどの放射性同位元素を含む。125I、123I、153Smおよび99mTCは、少ないエネルギーと広範囲な確認が適切なので好ましい。核磁気共鳴分光器などを用いて確認できる物質の例としては、ガドリニウム(Gadolinium:Gd)がある。
【0069】
別の様態として、本発明は、前記抗体を含む抗癌組成物に関する。
【0070】
本発明において、用語「抗癌」とは、「予防」及び「治療」を含む。ここで、「予防」とは、本発明の抗体を含む組成物の投与によって癌を抑制または遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、本発明の抗体投与によって癌の症状を好転させるか或いは有利に変更する全ての行為を意味する。
【0071】
本発明の抗体は、ヒト大腸癌を異種移植したマウスで既存のAKA/HzKより高く吸収され、血液における保有力も高かった。ヒト大腸癌を異腫移植したマウスを本発明の抗体に投与する場合、50%生存率は対照群のマウスより大幅増加した。
【0072】
本発明の組成物で治療することが可能な癌は、TAG−72が発現するすべての癌を含む。TAG−72はヒト癌腫において広範囲に発現するので、本発明の組成物はTAG−72発現のあるすべての癌、例えば大腸癌、卵素癌、胃癌、膵臓癌、乳癌などを治療することができる。
【0073】
治療用抗体として用いられる場合、その抗体は、既存の治療剤と直接またはリンカーなどを介して間接的にカップリング(例えば、共有結合)されて抗体−治療剤結合体の形で生体内に投入され、癌の治療に利用される。抗体−治療剤結合体において抗体との結合が可能な治療剤は、例えば化学治療剤、放射性核腫(radionuclide)、免疫治療剤、サイトカイン、ケモカイン、毒素、生物作用剤、酵素阻害物質、異形機能性抗体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない:(1)(Goldengerg et al., 1981, Cancer Res. 41, 4354-4360)などの文献に記述されている、131I、90Y、105Rh、47Sc、67Cu、212Bi、211At、67Ga、125I、186Re、188Re、177Lu、153Sm、123I、111Inなどの放射性核腫(radionuclide)に結合した抗体;(2)(Chabner et al., 1985, Cancer, Principles and Practice of Oncology, Philadelphia, PA, J.B. Lippincott Co. Vol. 1, pp. 290-328)などの文献に記述されている、メトトレキサート(methotrexate)、アドリアマイシン(adriamycin)、及び例えばインターフェロンなどのリンポカイン(lympokine)といった生物学的反応変形体または薬物に結合した抗体;(3)(Uhr et al., 1983, Monoclonal antibodies and Cancer, Academic Press, Inc., pp. 85-98)などの文献に記述されている、リシン、アブリン、ジフテリアなどの毒素に結合した抗体;(4)(Perez et al., 1986, J. Exper. Med. 163, 166-178; and Lau et al., 1985, Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 82, 8648-8652)などの文献に記述されている、他の抗体に結合してその複合体が癌細胞と効能細胞の両方ともに結合する異形機能性抗体(heterofunctional antibodies);(5)(Herlyn et al., 1982, Proc. Natl. Acad. Sci., (USA) 79, 4761-4765)などの文献に記述されている、自然的な、すなわち非−連関または非−複合された抗体。
【0074】
抗体組成物の場合、投与方式に応じて許容可能な担体を含んで適切な製剤に製造される。投与方式に適した製剤は、公知になっており、典型的に膜を通過した移動を容易にする界面活性剤を含む。このような界面活性剤は、ステロイドから誘導されたものであるか、或いはDOTMA(N-[1-(2,3-dioleyloxy)propyl]-N,N,N-trimetylammonium chloride)などの陽イオン性脂質、またはコレステロールヘミサクシネートやホスファチジルグリセロールなどの各種化合物などがある。
【0075】
別の様態として、本発明は、前記抗体を投与して癌を治療する方法に関する。
【0076】
前記組成物は、癌を治療するに十分な量で患者に投与されるが、その投与量は、癌の種類、患者の年齢、体重、症状の特性及び度合い、現治療法の種類、治療回数、投与形態及び経路などの多様な要因によって異なるうえ、当分野の専門家によって決定できる。本発明の組成物は、前記薬理学的または生理学的成分を共に投与または順次投与することができ、また、追加の従来の治療剤と併用して投与することができ、従来の治療剤とは順次または同時に投与することができる。このような投与は、単一投与または多重投与である。前記要素を全て考慮に入れて、副作用なしに最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定できる。
【0077】
本発明において、「投与」がいずれの適切な方法で患者に所定の物質を導入することを意味する場合、本発明の抗体を含む組成物の投与経路は、目的の組織に到達することができればいずれの一般的な経路であってもよい。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、胚内投与、および直腸内投与が可能であるが、前記例示に限定されるものではない。ところが、経口投与の際に、タンパク質は消化されるため、経口用組成物は、活性薬剤をコートするか、或いは胃での分解から保護されるように剤形化することが好ましい。また、製薬組成物は、活性物質が標的細胞へ移動することが可能な任意の装置によって投与できる。
【0078】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0079】
まず、本発明のTAG−72に特異的に結合する抗体の重鎖可変領域を製作した:
ヒト化抗体AKA/HzKの重鎖可変領域は、配列番号1で表されるアミノ酸配列から構成されており、1番〜30番のFR1部位、31番〜35番のCDR1、36番〜49番のFR2、50番〜66番のCDR2、67番〜98番のFR3、99番〜104番のCDR3、及び105番〜115番のFR4からなっている。その中でも、CDR3部位を任意の他のアミノ酸に突然変異させ、元来のAKA/HzK抗体よりTAG−72に対する抗原結合能に優れた新規抗体を製造した。
【0080】
配列番号1で表されるAKA/HzKヒト化抗体重鎖可変領域のアミノ酸配列のうち、CDR3部位を示す99番目のアミノ酸であるセリン(Ser)、100番目のロイシン(Leu)、101番目のアスパラギン(Asn)、102番目のメチオニン(Met)及び103番目のアラニン(Ala)を無作為に突然変異させた。具体的に、ヒト化抗体AKA/HzKの遺伝子発現ベクターpC3−Q−AKA/HzK(韓国特許登録第0318761号のpC3−Q−HzCC49Fab−1−dgIIIベクターの重鎖可変領域の97番トレオニン残基をアラニンで置換させたもの)を鋳型として、重鎖CDR3部位が突然変異された配列を含むプライマーを用いてPCRを行い、その結果、CDR3部位が突然変異されたDNA断片を得た(図1)。得られたDNA断片とpC3−Q−AKA/HzKベクターをそれぞれXhoIとApaIで切断した後、精製し、切断された2つのDNA断片を結合させた後、DNAをE.coli Electro−Ten blue(米国、Stratagene社製)に形質転換させた。
【0081】
TAG−72に対する抗原結合親和度が増加した新規抗体を製造するために、前記で製造したヒト化重鎖ライブラリを含んでいるE.coliに対して3回にわたってコロニーリフトアッセイ(J. Immunol. Meth. 272: 219-233, 2003)を行い、1、2、3回検索した後に得られたクローンの抗原結合能がAKA/HzK Fabに比べて優れるかを調べるために、ビオチン結合AKA/HzK Fabを用いた競争的ELISAを行った。前記検索過程で選択されたクローンの抗原結合能を確認した結果、97番のアスパラギン残基が非極性アミノ酸、好ましくはイソロイシンまたはバリンで置換された変異体が、AKA/HzKより高い抗原結合能を持つことが分かった。
【0082】
前記過程によって分離した変異体クローンをそれぞれ3C4、3D5、3E8、NV、NIと命名し、前記変異体クローンの重鎖可変領域の塩基配列を分析した結果、それぞれ配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6で表されるアミノ酸配列を持つことを確認した(図3)。
【0083】
Fab型の抗体を全IgG型に製造するために、重鎖及び軽鎖の可変領域を全IgG型の発現ベクターに挿入する一般的な組み換え方法を行った。まず、抗体遺伝子の信号配列と変異体の可変領域とを連結したDNA断片を組み換えPCR方法によって合成し、これをヒト化抗体AKA/HzKの全IgG型の発現ベクターpdCMV−dhfr−AKA/HzK(韓国特許第0318761号)内の重鎖遺伝子の同一制限酵素位置に挿入して全IgG型の抗体発現プラスミドを製造した。その中でも、pdCMV−dhfr−3E8は、KCTC(Korean Collection for Type Cultures、大韓民国大田市儒城区魚慇洞52)に2001年6月21日に第KCTC 1039BP号で寄託した。
【0084】
前記製造した発現ベクターを細胞内に形質転換させて形質転換体を製造した。dhfr欠乏CHO細胞を継代培養した後、前記全抗体発現ベクターでリポフェクタミンを用いて形質転換させ、その後、G418添加の選択培地とMTX添加の選択培地で生き残った細胞クローンを分離することにより、本発明の変異体抗体を発現するベクターで形質転換された細胞株を製造することができた。その中でも、pdCMV−dhfr−3E8で形質転換された形質転換細胞株9E8をKCTC(Korean Collection for Type Cultures、大韓民国大田市儒城区魚慇洞52)に2001年6月21日に第KCTC 1040BP号で寄託した。
【0085】
前記で製造した形質転換細胞株で発現する抗体が癌の診断及び治療に使用できるかを確認するために、抗体の抗原結合親和度を決定した。その結果、本発明の方法で製造された抗体はいずれも既存の抗体AKA/HzKより親和度が大きく増加した。変異体の抗原結合親和度をAKA/HzKと比較した結果、AKA/HzK抗体の親和度(K)は1.45×10−8Mであり、全抗体3C4は1.33×10−9M、全抗体3D5は2.27×10−9M、全抗体3E8は0.65×10−9Mの抗原結合親和度(K)を持ち、これらの数値はAKA/HzKの1.45×10−8Mよりそれぞれ11倍、6倍及び22倍が増加した数値である。全抗体NVは1.66×10−9M、全抗体NIは3.38×10−9Mの抗原結合親和度(K)を持ち、これらの数値はAKA/HzKの1.45×10−8Mよりそれぞれ約8倍及び4倍が増加した数値である。
【0086】
次いで、3E8のヒト化軽鎖を任意のヒト軽鎖で置換させ、3E8抗体よりヒトへの投与の際に免疫反応を誘発する可能性が減少し且つTAG−72に対する抗原結合能に優れた抗体を製造するために、配列番号21で表される軽鎖可変領域をヒト抗体の軽鎖で置換した新規抗体を製造した。
【0087】
本発明のヒト化抗体の軽鎖を代替することが可能なヒト軽鎖を選別するために、PBL(peripheral blood lymphocytes)からヒト軽鎖ライブラリを製造した。具体的に、ヒトPBLから総RNAを分離し、これを鋳型としてヒト軽鎖cDNAを選択的に合成した後、cDNAを鋳型としてヒト軽鎖(Kappa chain)可変領域(variable region)の5’特異プライマーとヒトカッパー軽鎖不変領域の3’末端特異プライマーを用いてヒト抗体軽鎖遺伝子をPCRを用いて選択的に増幅した。前記PCRから得たDNA断片とpC3−Q−3E8ベクターをそれぞれSacIとXbaIで切断した後、精製し、精製された2つのDNA断片を接合(ligation)させた後、E.coli Electro−Ten blueを形質転換させた。
【0088】
TAG−72に対する抗原結合親和度が増加した新規抗体を製造するために、前記で製造したヒト軽鎖ライブラリを含んでいるE.coliに対して3回にわたってコロニーリフトアッセイを行い、1、2、3回検索した後に得られたクローンの抗原結合能が3E8 Fabに比べて優れるかを調べるために、ビオチン結合3E8 Fabを用いた競争的ELISAを行った。
【0089】
前記検索過程で選別されたクローンの抗原結合能を確認して、3E8 Fabと類似の抗原結合能を持つクローンを分離し、精製されたFab抗体の抗原結合能を確認した結果、本発明の3E8 Fabより高い抗原結合能を持つことを確認した。このクローンをpC3−Q−3E8/BSM22と命名した。3E8/BSM22クローンの軽鎖可変領域塩基配列を確認した結果、配列番号22で表されるアミノ酸配列を持ち、これをコードする核酸配列は配列番号23のヌクレオチド配列を持った。
【0090】
前記ヒト軽鎖可変領域を含む全IgG型のヒト化抗体を製造するために、ヒト化抗体3E8の発現ベクターpdCMV−dhfr−3E8の軽鎖可変領域遺伝子のクローニング位置に、配列番号23の核酸配列を持つ軽鎖可変領域遺伝子をクローニングした。
【0091】
前記発現ベクターpdCMV−dhfr−3E8の軽鎖遺伝子内に可変領域遺伝子のみをクローニングし得るように、可変領域と不変領域の連結部位にBsiWI制限酵素認識配列を入れたカセットベクターpdCMV−dhfrC−3E8を製造した。その後、抗体遺伝子の信号配列と前記pC3−Q−3E8/BSM22内にあるヒト軽鎖可変領域配列を組み換えPCR方法で連結して合成し、HindIIIとBsiWI制限酵素を用いてpdCMV−dhfrC−3E8のHindIII−BsiWI位置にサブクローニングしてpdCMV−dhfrC−3E8/BSM22を製造した。pdCMV−dhfrC−3E8/BSM22は、KCTCに2004年5月31日に第KCTC 10647BP号で寄託した。
【0092】
リポフェクタミンを用いて前記で製造した本発明の発現プラスミドを動物細胞に導入して形質転換させ、これの動物細胞で全IgGを発現させた。
【0093】
前記で製造された動物細胞で発現する抗体の抗原結合親和度を競争的ELISA方法で測定し、本発明の3E8抗体の抗原結合親和度と比較した結果、3E8/BSM22抗体は、3E8抗体より抗原結合能にさらに優れることを確認した(図9)。具体的に、3E8/BSM22抗体の親和度(K)は約0.45×10−9Mであるが、3E8抗体のKは0.65×10−9Mと決定され、3E8/BSM22抗体が3E8抗体より約1.5倍さらに高い抗原結合親和度を持つことを確認した。
【0094】
前記で製造した本発明の発現プラスミドpdCMV−dhfrC−3E8/BSM22をdhfr欠乏CHO細胞にトランスフェクションさせた後、G418添加の選択培地とMTX添加の選択培地で生き残った細胞クローンを分離することにより、本発明のpdCMV−dhfrC−3E8/BSM22発現ベクターで形質転換された形質転換細胞株4D12−B31を製造し、KCTC(Korean Collection for Type Cultures、大韓民国大田市儒城区魚慇洞52)に2004年5月31日に第KCTC 10646BP号で寄託した。
【0095】
前記結果より確認されるように、本発明の新規な抗体は、抗原結合親和度に優れ且つ免疫誘発能の低いヒト化抗体なので、癌の診断及び治療に有用に使用できる。
【0096】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【0097】
実施例1-AKAヒト化重鎖CDR3のライブラリ製造
ヒト化抗体AKAより抗原結合親和度が増加した新規なヒト化抗体を製造するために、まず、配列番号1で表されるAKA抗体のヒト化重鎖HCDR3アミノ酸配列のうち、1番目の99番セリン(Ser)、2番目の100番ロイシン(Leu)、3番目の101番アスパラギン(Asn)、4番目の102番メチオニン(Met)及び5番目の103番アラニン(Ala)を無作為に突然変異させた(図1)。
【0098】
具体的に、ヒト化抗体AKAの遺伝子発現ベクターpC3−Q−AKA/HzK(韓国登録特許第318761号)を鋳型として、配列番号7で表されるプライマーVH135と配列番号8で表されるプライマーHCDR3BACKの対、及び配列番号9で表されるプライマーHCDR3FORWARDと配列番号10で表されるプライマーLHS11の対を用いてPCRを行った。PCR反応は、95℃で3分間予備変性した後、95℃で50秒間、55℃で50秒間、72℃で1分間Taq DNA重合酵素(polymerase)を用いて25回行った。プライマーVH135とHCDR3BACKの対を用いたPCRから得られた296bp DNA断片と、プライマーHCDR3FORWARDとLHS11の対を用いたPCRから得られた180bpサイズのDNA断片をアニーリングし、プライマーVH135とLHS11を用いて組み換えPCRを行い、458bpサイズのDNA断片を得た。組み換えPCR反応は、95℃で3分間予備変性した後、95℃で50秒間、55℃で50秒間、72℃で1分間Taq DNA重合酵素を用いて25回行った。前記組み換えPCRから得たDNA断片と、pC3−Q−AKA/HzKベクターをそれぞれ制限酵素XhoIとApaIで切断した後、精製し、切断された2つのDNA断片を16℃で一晩放置して接合させた後、70℃で10分間加熱して酵素を不活性化させた。その後、グリコゲンと3M酢酸ナトリウム(sodium acetate)を20μLずつ添加させ、−20℃でエタノールを加えてDNAを一晩沈殿させた。沈殿したDNAを70%のエタノールで洗浄した後、乾燥させて20μLの蒸留水に懸濁させ、前記ライブラリDNAをE.coli Electro−Ten Blueに電気衝撃遺伝子伝達法(electroporation)で形質転換させた。前記形質転換過程を具体的に説明すると、E.coli Electro−Ten Blue細胞を2×YT500mLで37℃におけるOD(Optical density)が0.5〜0.7程度となるまで振とう培養した後、氷上で30分間放置した。4℃、4000rpmで15分間遠心分離して上澄み液を除去した後、沈殿した細胞を10%グリセロール500mLに懸濁した。4℃、5000rpmで15分間さらに遠心分離して上澄み液を除去した後、沈殿した細胞を10%グリセロール250mLに懸濁し、4℃、5000rpmで15分間さらに遠心分離した。上澄み液を除去し、沈殿した細胞を10%グリセロール20mLに懸濁した後、4℃、4000rpmで15分間遠心分離して上澄み液を除去し、しかる後に、細胞を10%グリセロール1〜2mLに懸濁してコンピテント(competent)細胞を製造した。前記コンピテント細胞を1.5mLのチューブに300μLずつ分注し、使用するまで−70℃に保管した。
【0099】
実施例2−抗原結合能の高い変異体クローンの選別
TAG−72に結合する新規ヒト化抗体を探し出すために、前記実施例1で製造したライブラリ細胞をコロニーリフトアッセイ方法(Radosevic et al,. J. Immunol. Methods, 2003, 272(1-2), 219-233)で検索を行った(図2)。
【0100】
このために、まず、2×YTAプレートに直接ニトロセルロース膜(nitrocellulose membrane)を敷き、その上に約1,000,000個の細胞を塗抹した後、一晩培養させる。このときの膜をマスタ膜(master membrane)という。
【0101】
その間、抗原結合能の強い細胞を探すための捕獲膜(capture membrane)にTAG−72(+)抗原としてのBSM(bovine submaillary mucin、type−I−S、Sigma社製)を10μg/mLの濃度でPBS(phosphate buffered saline)と共に37℃で6時間放置してコートした。この膜をPBSで2回程度洗浄した後、5%脱脂乳(skim milk)を添加して37℃で2時間放置した。脱脂乳を除去した後、100μg/mLのアンピシリンと1mM IPTG(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)入りの2×YT培地に濡らした。この捕獲膜を100μg/mLのアンピシリンと1mM IPTG入りの2×YTプレート上にのせた後、その上に、ライブラリ細胞を塗抹したマスタ膜をのせて、常温で16〜24時間放置した。
【0102】
前記捕獲膜を0.05%Tween20入りのPBS(PBST)で5回洗浄した後、脱脂乳入りのPBSによって37℃で6時間放置した。抗原としてのBSMに結合したクローンを探すために、捕獲膜にホースラディシュペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)が付着している抗ヒトF(ab’)2抗体を1:1000で希釈して添加した後、37℃で1時間放置した。結合していない抗体を無くすために、PBSTで5回程度洗浄し、ECLで反応させて抗原結合能を確認した。
【0103】
このように抗原結合能を確認した細胞を同位置のマスタ膜から得て2×YTAを添加した後、37℃でODが約0.7となるまで成長させた後、前記と同様の過程によってコロニーリフトアッセイを行った。1、2及び3次スクリーニングの後に得られたFabクローンの結合能が野性型AKA/HzK Fabに比べて優れるかを調べるために、競争的ELISAを行った。
【0104】
競争的ELISAのために、3次スクリーニングの後に得られたE.coli Fabクローンを37℃で振とう培養しながら、600nmにおけるO.D値が0.5〜1.0となるように成長させた後、1mM IPTG溶液で30℃で一晩培養してFabの発現を誘導した。培養上澄み液のみを分離し、前記Fab抗体が野生型AKA/HzK Fabに比べて抗原結合能に優れるかを調べるために、ELISAプレートの各ウェルにBSM各1μgずつを一晩中コートし、2%BSAでブロックさせた後、TBS−Tで3回洗浄した。ビオチン結合野生型AKA/HzK Fab抗体(1mg/mLで1:2000の濃度で希釈して使用)と前記検索過程で得たFab抗体をそれぞれ25μLずつ一つのウェルに共に入れた後、37℃で1時間反応させ、TBS−Tによって抗原に結合していない抗体を除去した。TAG−72に結合するビオチン化AKA/HzK Fabの相対的な量を確認するために、ビオチンと結合することが可能なストレプトアビジン−アルカリホスファターゼ(Streptavidin-alkaline phosphatase)を1:1000の濃度で希釈して50μLずつ添加し、37℃で30分間反応した。結合していないストレプトアビジン−アルカリホスファターゼを除去するために、TBS−Tで3回洗浄し、パラ−ニトロフェニルスルフェニル(para-nitrophenylphosphate)溶液50μLで少なくとも20分間発色させ、405〜450nmで吸光度を測定した。この際、陽性対照群(positive control)は5μg/mLのAKA/HzK Fabと10μg/mLのAKA/HzK Fabを使用し、陰性対照群は2%BSAのみを使用した。競争的ELISAにおいて、対照群のAKA/HzK Fabを入れた値よりELISA値をさらに低く示す変異体クローンを選別し、次の実施例3と同様に各クローンの抗原結合能を分析した。
【0105】
実施例3−変異体クローンの抗原結合能の分析
前記検索過程で選択された各クローンFabの抗原結合能を分析するために、変異体クローンを37℃で振とう培養しながら600nmにおけるO.D値が0.5〜1.0となるように成長させた後、1mM IPTG溶液で30℃で一晩培養してFabの発現を誘導した。細胞を収去し、TES(0.2M Tris HCl、pH8.0、0.5mM EDTA、0.5M スクロース緩衝溶液)を用いて浸透圧衝撃(osmotic shock)を与え、ペリプラズム抽出物(periplasmic extract)に在る、溶解された変異体Fab抗体を確保した。
【0106】
変異体Fabの抗原結合特性と結合能を調べるために、ELISAプレートの各ウェルにBSMとBSAの各1μずつを一晩中コートし、2%BSAでブロックさせた後、TBS−Tで4回洗浄した。ペリプラズム抽出物に存在するFab抗体を添加して37℃で1時間反応させ、TBS−T緩衝溶液によって、抗原に結合していない抗体を除去した。2次抗体で抗ヒトF(ab’)IgG HRPをTBS−Tで希釈して結合させ、OPDとHで発色させて492nmで吸光度を測定した。
【0107】
その結果、野性型AKA/HzK Fabより著しく優れた抗原結合能を持つクローンを分離し、各変異体クローンのHCDR3部位塩基配列をT7 Sequenase V2.0 DNAシーケンシングキット(Amersham)で決定して全塩基配列を確認した結果、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6で表される相異なるアミノ酸配列をコードしていることを確認した(図3参照)。この変異体のFabをそれぞれ3C4、3D5、3E8、NV、NIと命名し、これらの発現ベクターをそれぞれpC3−Q−3C4、pC3−Q−3D5、pC3−Q−3E8、pC3−Q−NV、pC3−Q−NIと命名した。
【0108】
実施例4−ヒト化クローンの全IgG発現のための発現プラスミドの製造
抗原結合能に最も優れたFab変異体3E8から全IgG型の抗体を製造するために、抗体遺伝子の信号配列、前記Fab変異体の可変領域、ヒト抗体の不変領域を組み換えPCR方法を用いて合成した(図4)。
【0109】
具体的に、抗体遺伝子の信号配列を合成するために、全IgG型のヒト化抗体AKA/HzKの発現ベクターpdCMV−dhfr−AKA/HzKを鋳型とし、配列番号11で表されるプライマーLHS39と配列番号12で表されるプライマーLHS43の対を用いてPCRを行った。その結果、96bpサイズのDNA断片を合成した。
【0110】
また、前記Fab変異体の重鎖の可変領域遺伝子の前部分を合成するために、前記pC3−Q−3C4、pC3−Q−3D5、pC3−Q−3E8、pC3−Q−NV、pC3−Q−NIベクターを鋳型として、配列番号13で表されるプライマーLHS44と配列番号14で表されるtype C backプライマーを用いてPCRを行った結果、306bpサイズのDNA断片が合成された。しかも、前記可変領域遺伝子の後ろ部分を合成するために、pC3−Q−3C4、pC3−Q−3D5、pC3−Q−3E8、pC3−Q−NV、pC3−Q−NIベクターをそれぞれ鋳型として、前方プライマーとして、配列番号15で表されるtype C forwardプライマーを用い、後方プライマーとして、配列番号10で表されるLHS11プライマーを用いてPCRを行った。PCR反応は、95℃で3分間予備変性した後、94℃で50秒間、55℃で50秒間、72℃で1分間Taq DNA重合酵素を用いて25回行った。その結果、159bpサイズのDNA断片が合成されたことを確認した。前記3つのDNA断片(96bp、306bp、159bp)を鋳型とし、配列番号10で表されるプライマーLHS11と配列番号11で表されるプライマーLHS39でPCRを行ってこれらを互いに連結することにより、それぞれ531bpサイズのDNA断片を合成し、前記DNA断片の両端を制限酵素EcoRIとApaIで切断した後、既存のAKA/HzKヒト化抗体遺伝子がクローニングされている動物発現ベクターpdCMV−dhfr−AKA/HzKのEcoRI/ApaIの位置に挿入して本発明の発現プラスミドを製造し、pdCMV−dhfr−3C4、pdCMV−dhfr−3D5、pdCMV−dhfr−3E8、pdCMV−dhfr−NV、pdCMV−dhfr−NIと命名し、特にpdCMV−dhfr−3E8は2001年6月2日付けで生命工学研究院遺伝子銀行に寄託した(受託番号;KCTC 1039BP)。
【0111】
実施例5−ヒト化抗体の抗原結合親和度の決定
前記で製造された抗体の抗原結合能及び抗原結合親和度を決定するために、まず、前記実施例4で製造した本発明の発現プラスミドを動物細胞内に導入させて全IgG型の抗体を製造した。
【0112】
まず、COS7細胞を、牛胎児血清が10%添加されたDMEM培養培地(GIBCO)に接種し、37℃、5%CO恒温器で継代培養した。前記細胞を100mmの培養皿に1×106細胞/mLの濃度で接種し、37℃で一晩培養した後、OPTI−MEM I(GIBCO)溶液で3回洗浄した。一方、前記で製造した抗体発現ベクターpdCMV−dhfr−3C4、pdCMV−dhfr−3D5、pdCMV−dhfr−3E8、pdCMV−dhfr−NV、pdCVM−dhfr−NIを5μgずつ取ってOPTI−MEM I500μLで希釈し、25μLのリポフェクタミン(Lipofectamine、GIBCO)も同様にOPTI−MEM I500μLで希釈した。前記発現ベクターとリポフェクタミン希釈液を15mLのチューブに混合してDNA−リポフェクタミン混合物を製造した後、これを15分以上室温で放置した。前記それぞれのDNA−リポフェクタミン混合物に5mLのOPTI−MEM Iを添加し、これをきれいに洗浄されたCOS7細胞に均一に混合した後、37℃、5%CO恒温器で48時間培養することにより、本発明の3C4、3D5、3E8、NV及びNI抗体を発現させた。
【0113】
前記細胞の培養液から得た3C4、3D5、3E8、NV、NI抗体の抗原結合能と抗原結合親和度をELISAで測定した。まず、BSMをウェル当たり250ngずつ免疫プレート(immunoplate)に入れた後、4℃で一晩培養してプレートに結合させ、その後、2%BSAでブロックさせ、TBS−Tで4回洗浄した。前記で得た全IgG変異体が含まれたCOS7細胞培養液をPBSを用いて希釈した後、同一の濃度でプレートに添加して37℃で30分間反応させ、抗原に結合していない抗体をTBS−Tで除去した。2次抗体として用いられた抗ヒトIgG(Fc specific)−HRPをTBS−Tを用いて1:5000の濃度で希釈して前記1次抗体に結合させ、OPDとHで発色させて492nmで吸光度を測定した。
【0114】
3E8抗体の抗原結合親和度をAKA/HzKと比較、決定するために、本発明者らは、様々な濃度の競争抗原と亜飽和(submaximum)濃度の3C4、3D5、3E8、NV、NI或いはAKA/HzK抗体を混合して37℃で3時間静置した後、250ngの抗原を予め結合させたELISAプレートの各ウェルに加えて30分間結合させ、しかる後に、抗ヒトIgG(Fc specific)−HRPを結合させる競争的(competitive)ELISA方法によって発色の度合いを測定した。
【0115】
その結果、AKA/HzK抗体の親和度(K)は、1.45×10−8M、3C4は1.33×10−9M、3D5は2.27×10−9M、3E8は0.65×10−9M、NVは1.66×10−9M、NIは3.38×10−9Mの抗原結合親和度(K)を持つことが分かった。これは、各変異体抗体がAKA/HzKの1.45×10−8Mよりそれぞれ約11倍、6倍、22倍、8倍及び4倍が増加した抗体であることを意味する(図5a及び図5b)。
【0116】
実施例6−3E8抗体の発現細胞株の製造
前記3E8抗体を生産するために、3E8抗体の発現ベクターであるpdCMV−dhfr−3E8で形質転換されたCHO細胞株を製造した。
【0117】
まず、DHFR−minus CHO細胞株であるDG44細胞(ATCC CRL 9096)を、牛胎児血清が10%添加されたDMEM/F12培養培地(GIBCO)に接種し、37℃、5%CO恒温器で継代培養した。前記細胞を100mmの培養皿に1×10細胞/mLの濃度で接種し、37℃で一晩培養した後、OPTI−MEM I(GIBCO)溶液で3回洗浄した。一方、実施例4で製造した抗体発現ベクターpdCMV−dhfr−3E8を5μg取ってOPTI−MEM I500μLで希釈し、25μLのリポフェクタミン(GIBCO)も同様にOPTI−MEM I500μLで希釈した。前記抗体発現ベクターとリポフェクタミン希釈液を15mLのチューブに混合してDNA−リポフェクタミン混合物を製造した後、これを15分以上室温で放置した。前記それぞれのDNA−リポフェクタミン混合物に5mLのOPTI−MEM Iを添加し、これをきれいに洗浄されたDG44細胞に均一に混合した後、37℃、5%CO恒温器で6時間培養し、これに子牛血清20%含有DMEM/F12培地3mLを添加して同一の条件で48時間培養した。このように変異体発現ベクターが形質転換された形質転換細胞を、ヌクレオチドの添加されていないMEM−α培地に10%透析されたFBSと550μg/μL濃度のG418が添加されて製造された選択培地で1×10細胞/mLの濃度で懸濁し、96ウェルプレートに分注した。1週間以上培養した後、コロニーを形成する各細胞クローンが生成する抗体の量をELISA方法で測定して、高濃度で抗体を発現する細胞クローンを選別した。
【0118】
ELISAは、抗ヒトIgGをウェル当たり100ngずつ免疫プレートに入れた後、4℃で一晩培養してプレートに結合させた、その後2%BSAでブロックさせ、TBS−Tで4回洗浄した。前記で得た細胞培養液をPBSを用いて希釈した後、プレートに添加して37℃で1時間反応させ、抗原に結合していない抗体をTBS−Tで除去した。2次抗体として用いられた抗ヒトIgG(Fc specific)−HRPをTBS−Tを用いて1:5000の濃度で希釈して前記1次抗体と結合させ、OPDとHで発色させて492nmで吸光度を測定した。
【0119】
これらのクローンの中から、多量の抗体を分泌するクローンを選定し、20nM MTXを添加した培地で2週間培養した後、さらに80nM MTXが添加された選択培地で培養した。これらのクローンの中から、最も高い濃度で抗体を発現するクローンを選択して9E8細胞株と命名し、KCTC(Korean Collection for Type Cultures、大韓民国大田市儒城区魚慇洞52)に2001年6月21日に第KCTC 1040BP号で寄託した。
【0120】
実施例7−全IgG変異体の精製及び抗原結合親和度の確認
前記実施例6で製造した9E8細胞株を無血清培地(Gibco、CHO−S−SFMII)で培養した後、前記培養液をProtein G−Sepharose 4Bカラム(Pharmacia社製)を通過させ、カラムに結合した抗体を0.1Mグリシン溶液(pH7.0)で溶出させた後、1.0M Tris溶液(pH9.0)で中和させ、PBS緩衝溶液(pH7.0)で透析した。精製された3E8抗体を10%SDS−ポリアクリルアミドゲル相で電気泳動(SDS−PAGE)した。
【0121】
その結果、図6に示すように、この抗体を還元させたとき、重鎖及び軽鎖の分子量として知られている55kDa及び25kDaの分子量を示すタンパク質バンドが検出された(レイン1参照)。前記結果より、本発明の9E8細胞が四量体からなる全抗体を製造することを確認した。
【0122】
また、精製された3E8抗体の抗原結合親和度を前記実施例5と同様の方法で測定した結果、約0.65×10−9Mであることを確認した。
【0123】
実施例8−ヒト軽鎖ライブラリの製造
前記の3E8ヒト化抗体よりHAMA反応の可能性が少なく且つ抗原結合能はそのまま保有した、新規な抗体を製造しようとした。このために、3E8抗体のヒト化軽鎖をヒト軽鎖で代替するために、まず、Hofman等の方法(Hofman et al., 1982, Am. J. Clin. Pathol., 77(6):710-713)を用いて分離したヒトPBL(peripheral blood lymphocytes)からヒト軽鎖ライブラリを製作した。
【0124】
具体的に、ヒトPBLからRNAを分離し、これを鋳型として、逆転写酵素(SuperscriptII、Gibco BRL)と配列番号24で表されるプライマーCK1dを用いてヒト軽鎖cDNAを選択的に合成した。さらに、前記cDNAを鋳型とし、ヒト軽鎖のKappa可変領域の配列番号25〜配列番号29で表される5’特異プライマーVK1、VK2、VK3、VK4及びVK5とプライマーCK1dをそれぞれ対として用いて、ヒト抗体軽鎖遺伝子をPCRによって選択的に増幅した。
【0125】
この際、これらのPCR反応は、95℃で5分間予備変性した後、95℃で50秒間、55℃で50秒間、72℃で1分間Taq DNA重合酵素を使用し、ヒト抗体の多様性を高めるために20回行った。
【0126】
前記PCRから得たヒト軽鎖ライブラリのDNA断片をSacI−XbaIで切断した後、本発明のヒト化抗体3E8のFab発現ベクターであるpC3−Q−3E8のSacI−XbaI位置に挿入した。
【0127】
具体的に、pC3−Q−3E8ベクターをそれぞれ制限酵素SacIとXbaIで切断して精製し、前記PCRから得たDNA断片を16℃で一晩放置して接合させた後、70℃で10分間加熱して酵素を不活性化させた。その後、グリコゲンと3M酢酸ナトリウムを添加させ、−20℃でエタノールを加えてDNAを一晩沈殿させた。沈殿したDNAを70%エタノールで洗浄した後、乾燥させて20μLの蒸留水に懸濁し、前記ライブラリDNAをE.coli Electro−Ten blueに電気衝撃遺伝子伝達法によって導入した。
【0128】
実施例9−抗原結合能の高い3E8/BSM22変異体クローンの選別
実施例8で製造したライブラリ細胞からTAG−72に結合する新規抗体を探し出すために、前記実施例2と同様にコロニーリフトアッセイを行った。抗原結合能を示す細胞クローンの結合能が野性型3E8 Fabに比べて優れるかを調べるために、前記実施例2と同様に、ビオチン結合3E8 Fab抗体を用いて競争的ELISAを行った。その結果、対照群である3E8 Fabを入れた値よりELISA値をさらに低く示す変異体クローンを得た。
【0129】
実施例3と同様に、各クローンの抗原結合能を分析した結果、野性型である3E8 Fabより優れた抗原結合能を持つクローンを分離した。このクローンの軽鎖可変領域の塩基配列をT7 Sequenase V2.0 DNAシーケンシングキット(Amersham)で決定して確認した結果、配列番号22で表されるアミノ酸配列をコードしていることを確認した(図7)。この変異体のFabを3E8/BSM22と命名し、この発現ベクターをpC3−Q−3E8/BSM22と命名した。
【0130】
実施例10−全IgG型の3E8/BSM22抗体の発現プラスミドの製造
前記3E8/BSM22のヒト軽鎖を含む全IgG型の3E8/BSM22抗体を製造するために、本発明のヒト化抗体3E8の発現ベクターpdCMV−dhfr−3E8の軽鎖遺伝子のクローニング位置に前記ヒト軽鎖遺伝子をクローニングした。
【0131】
まず、本発明者らは、前記発現ベクターpdCMV−dhfr−3E8の軽鎖遺伝子内に可変領域遺伝子のみをクローニングし得るように、可変領域と不変領域との連結部位にBsiWI制限酵素認識配列を入れたカセットベクターpdCMV−dhfrC−3E8を製造した(図8)。具体的に、pdCMV−dhfr−3E8を鋳型として、配列番号30で表されるプライマーLHS42とKCBsiWIback、及び配列番号32で表されるプライマーKCBsiWIforとCK1dをそれぞれ対として用いてPCRを行った後、さらに、配列番号30で表されるプライマーLHS42とCK1dを用いて組み換えPCRを行った。これを制限酵素HindIIIとXbaIで切った後、元々のpdCMV−dhfr−3E8ベクターの軽鎖部位に置換してpdCMV−dhfrC−3E8を製作した(図8)。
【0132】
その後、本発明者らは、軽鎖遺伝子の信号配列と前記BSM22の可変領域配列とを組み換えPCR方法で連結して可変領域遺伝子を合成した。具体的に、抗体遺伝子の信号配列を合成するために、pdCMV−dhfr−AKA/HzKを鋳型とし、配列番号30及び配列番号33で表されるプライマーLHS42及びKCleaderBackを対としてPCRを行った。また、前記Fabのヒト軽鎖可変領域遺伝子を合成するために、pC3−Q−3E8/BSM22に配列番号34及び配列番号31で表されるプライマーKCfor及びKCBsiWIbackを用いてPCRを行い、さらに、信号配列とヒト軽鎖可変領域とを連結するために、配列番号30及び配列番号31で表されるプライマーLHS42及びKCBsiWIbackを用いて組み換えPCRを行った。この際、PCR反応は、95℃で5分間予備変性した後、94℃で50秒、55℃で50秒、72℃で1分間Taq DNA重合酵素を用いて30回行った。
【0133】
前記DNA断片の両端を制限酵素HindIIIとBsiWIで切断した後、前記動物発現ベクターであるpdCMV−dhfrC−3E8のHindIII−BsiWI位置に挿入して本発明の発現プラスミドを製造し、pdCMV−dhfrC−3E8/BSM22と命名した。このpdCMV−dhfrC−3E8/BSM22は、KCTC(Korean Collection for Type Cultures、大韓民国大田市儒城区魚慇洞52)に2004年5月31日に第KCTC 10647BP号で寄託した。
【0134】
実施例11−3E8/BSM22抗体の抗原結合親和度の決定
本発明の3E8/BSM22抗体の抗原結合親和度を決定するために、本発明の発現プラスミドpdCMV−dhfrC−3E8/BSM22を前記実施例5と同様にCOS7細胞に導入させて全IgGを製造した後、細胞培養液に存在する本発明の3E8/BSM22抗体の抗原結合親和度を競争的ELISAによって測定した。その結果、3E8/BSM22抗体のKは約4.5×10−10Mであるが、3E8抗体のKは6.5×10−10Mと決定され、3E8/BSM22抗体が3E8抗体より約1.5倍さらに高い抗原結合親和度を持つことを確認した(図9)。
【0135】
実施例12−3E8/BSM22抗体の発現細胞株の製造
前記3E8/BSM22抗体を生産するために、前記実施例6と同様に、発現ベクターであるpdCMV−dhfr−3E8/BSM22で形質転換されたCHO細胞株を製造した。
【0136】
このCHO細胞株の中から、高濃度で抗体を発現する成長速度の良い細胞株を選択して、4D12−B31細胞株と命名し、KCTC(Korean Collection for Type Cultures、大韓民国大田市儒城区魚慇洞52)に2004年5月31日に第KCTC 10646BP号で寄託した。
【0137】
実施例13−AKAと3E8抗体の生物学的分布(Biodistribution)及び癌ターゲッティング(tumor targeting)
ヒト大腸癌を異種移植した胸腺欠損マウス(athymic mice)の3E8及びAKA/HzK抗体の生体内分布及び癌ターゲッティング能力を研究した。精製された3E8及びAKA/HzKを125I−放射性同位元素で標識し、放射化学的(radiochemical)純度をTLC(Thin layer chromatography)を用いて測定した結果、99%以上であった。125Iで標識されたAKA/HzKまたは3E8をマウスモデルに静脈内注射し、125I−AKA/HzKまたは3E8の生体内分布を、注射4、24、48及び72時間後に調査した。各癌または分化された組織における%ID/gは、図10及び表1に示した。AKA/HzK(図10のA)及び3E8(図10のB)は、癌にターゲッティングすることを示し、24時間で最大を示し、全ての調査時点で、癌は3E8をAKA/HzKより高く吸収した。ところが、125I−3E8は、試験期間中に、癌において大抵には維持されるが、癌に蓄積された125I−AKA/HzKは、時間依存的方式で減少した。その結果、注射24、48または72時間後、癌の125I−3E8吸収は125I−AKA/HzKに比べてそれぞれ約167%、224%または236%であった。これは、3E8がAKA/HzKより親和度が高くて癌に対する結合力が高いことを意味する。
【0138】
【表1】

【0139】
実施例14−3E8の放射免疫治療効果
3E8抗体の抗癌効果を試験するために、2つの方法、すなわち癌成長阻害効果の分析と生存率の分析によって試験した。まず、癌成長阻害効果を分析するために、ヒト大腸癌を異種移植した8匹の胸腺欠損マウス(athymic mice)の静脈に131I−3E8(20mg/7.4MBq、200mCi)で週1回ずつ6回投与した。対照群のマウス(8匹)では、131I−3E8の代わりに3E8を使用した。その結果、131I−3E8で投与されたマウスは癌の成長が遅延することが分かった(図11)。治療したマウスにおける癌のTd(tumor doubling time)13.2日は、対照群マウス(unlabeled 3E8)5.6日より著しく長かった。対照群マウスの体重は時間経過に伴って102%程度であり、治療したマウスの体重は元体重の87%に減少したことからみて、体重の変化は激しくないことが分かった。
【0140】
131I−3E8で治療されたマウスの生存率を考察するために、胸腺欠損マウス(7匹)に6週間毎週131I−3E8 7.4MBqで投与した。治療を受けたマウスの50%生存率は、対照群マウスの42.5日から90.5日に延長され、対照群マウスより50%生存率が2.1倍高いことを示す(図12)。対照群マウスの体重は時間経過に伴ってあまり増加せず、治療したマウスの体重は10%程度減少したことからみて、体重の変化は激しくないことが分かった。
【0141】
〔産業上の利用可能性〕
本発明のAKA/HzKの重鎖を突然変異させ、抗原に対する親和度の増加したヒト化抗体、及び前記ヒト化抗体の軽鎖をヒト軽鎖で置換して抗原結合親和度が増加したヒト化抗体を提供することにより、このような抗体またはこれを含む抗癌組成物は、既存のAKA/HzK抗体よりTAG−72抗原に対する結合親和度が高く、既存のTAG−72に対するヒト化抗体より癌の診断及び治療に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、配列番号1で表される、癌特異抗原TAG−72に対するヒト化抗体AKA/HzKの重鎖HCDR3アミノ酸配列のうち、99番目から103番目までのアミノ酸を無作為に突然変異させ、突然変異された抗体の発現ベクターを製造する方法を示す概略図である。
【図2】図2は、抗原に対する親和度の高い変異体Fabクローンを選別するためのコロニーリフトアッセイを示す。
【図3】図3は、抗原に対する親和度の高い変異体クローンの重鎖可変領域アミノ酸配列を示す結果である。
【図4】図4は、抗原結合親和度の最も高い変異体3E8の全IgG発現のためのプラスミドを製造する方法を示す概略図である。
【図5a】図5aは、IgG型の3E8、3C4、3D5、NV及びNI抗体と既存のIgG型のAKA/HzK抗体の抗原結合能を比較して示すグラフである。
【図5b】図5bは、IgG型の3E8、3C4、3D5、NV及びNI抗体と既存のIgG型のAKA/HzK抗体の抗原結合能を比較して示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の抗体を還元した場合と還元していない場合の分子量を示す電気泳動写真である。
【0143】
レイン1:還元した場合、レイン2:還元していない場合
【図7】図7は、3E8/BSM22抗体のヒト軽鎖可変領域アミノ酸配列をAKA/HzKの軽鎖可変領域のアミノ酸配列と比較したものである。
【図8】図8は、3E8/BSM22抗体の全IgG発現のためのプラスミドを製造する方法を示す概略図である。
【図9】図9は、3E8と3E8/BSM22抗体の抗原結合親和度をAKA/HzKと比較した結果を示す(白丸は3EB、黒三角は3E8/BSM22、黒丸はAKA/HzKを示す)。
【図10】図10は、ヒト大腸癌を異種移植した胸腺欠損マウス(athymic mice)の3E8及びAKA/HzK抗体の生体内分布及び癌ターゲッティング能力を研究したものであって、125Iで標識されたAKA/HzKまたは3E8をマウスモデルに静脈内注射し、125I−AKA/HzK(A)または1253E8(B)生体内分布におけるAKAと3E8抗体の生物学的分布及び癌ターゲッティング能力を考察したものである。
【図11】図11は、癌成長阻害効果を分析するために3E8抗体の放射免疫治療効果を考察したものであって、125I−3E8(黒丸)、3E8(黒四角)が投与されたマウスにおける癌のTd(a)及び体重変化(b)を考察したものである。
【図12】図12は、癌成長阻害効果を分析するために3E8抗体の放射免疫治療効果を考察したものであって、125I−3E8(黒丸)、3E8(黒四角)が投与されたマウスにおける生存率(a)及び体重変化(b)を考察したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号1のアミノ酸配列において100番〜103番のアミノ酸残基が下記配列式1で表される配列を持つアミノ酸配列の重鎖可変領域、及び(ii)配列番号21または配列番号22で表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域を有する、TAG−72(tumor-associated glycoprotein-72)に対するヒト化抗体。
[配列式1]
−X100−X101−X102−X103−
(式中、X100はロイシン(Leu)またはトリプトファン(Trp)アミノ酸残基であり、
X101はイソロイシン(Ile)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)またはアラニン(Ala)アミノ酸残基であり、
X102はメチオニン(Met)またはグルタミン(Gln)アミノ酸残基であり、
X103はアラニン(Ala)、グルタミン(Gln)またはグリシン(gly)アミノ酸残基である。)
【請求項2】
X101がイソロイシン(Ile)、バリン(Val)またはロイシン(Leu)である、請求項1に記載のヒト化抗体。
【請求項3】
重鎖可変領域のアミノ酸配列が、配列番号2〜6で表されるアミノ酸配列よりなる群から選択される、請求項1に記載のヒト化抗体。
【請求項4】
請求項1に記載の重鎖可変領域をコードする核酸配列。
【請求項5】
配列番号22で表される軽鎖可変領域をコードする核酸配列。
【請求項6】
請求項1に記載の重鎖可変領域をコードする核酸配列及び軽鎖可変領域をコードする核酸配列を含む、組み換えベクター。
【請求項7】
プラスミドpC3−Q−3C4、pC3−Q−3D5、pC3−Q−3E8、pC3−Q−NV、pC3−Q−NIまたはpC3−Q−3E8/BSM22である、請求項6に記載の組み換えベクター。
【請求項8】
プラスミドpdCMV−dhfr−3C4、pdCMV−dhfr−3D5、pdCMV−dhfr−3E8、pdCMV−dhfr−NV、pdCMV−dhfr−NIまたはpdCMV−dhfrC−3E8/BSM22である、請求項6に記載の組み換えベクター。
【請求項9】
請求項6に記載の組み換えベクターで形質転換された形質転換体。
【請求項10】
KCTC 1040BPで寄託された、請求項9に記載の形質転換体。
【請求項11】
KCTC 10646BPで寄託された、請求項9に記載の形質転換体。
【請求項12】
請求項9に記載の形質転換体を培養して請求項1に記載のヒト化抗体を製造する方法。
【請求項13】
請求項1に記載の抗体及び薬剤学的に許容される担体を含む抗癌組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の抗体を用いて癌を治療する方法。
【請求項15】
請求項1に記載の抗体を用いて癌を診断する方法。

【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−509656(P2008−509656A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−514890(P2007−514890)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/KR2005/001322
【国際公開番号】WO2005/121180
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(505093367)コリア リサーチ インスティチュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー (13)
【Fターム(参考)】