説明

TEMの回折平面における使用のためのブロッキング部材

【課題】TEMの回折平面における使用のためのブロッキング部材を提供する。
【解決手段】発明は、TEMの回折平面に置かれるものであるブロッキング部材に関係する。それは、シングルサイドバンドのイメージングのために使用されたナイフエッジに似るが、しかし小さい角度にわたって偏向させられた電子のみをブロックする。結果として、この発明に従ったTEMのコントラスト伝達関数は、低い周波数でシングルサイドバンドの顕微鏡のもの及び高い周波数については正常な顕微鏡のものに等しいことになる。好ましいことは、ブロッキング部材によってブロックされた最も高い周波数が、ブロッキング部材無しの顕微鏡が0.5のCTFを示すと思われるようなものであることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
当該発明は、試料をイメージングするための透過電子顕微鏡に関係するが、透過電子顕微鏡が、試料の回折パターンが形成される回折平面を示すと共に、回折パターンが、フーリエ(Fourier)ドメインにおける試料のイメージを表すと共に、透過電子顕微鏡が、回折平面又はそれのイメージに位置決めされたブロッキング部材を具備すると共に、ブロッキング部材が、フーリエドメインの一部分をブロックすると共に、少なくとも一つの方向におけるフーリエドメインのブロックされた部分が、低い空間周波数から高い空間周波数まで延びる。
【背景技術】
【0002】
そのような透過電子顕微鏡(TEM)は、K.Downing et al.,Optik 42(1975),page 155−175の“Discrimination of heavy and light components in electron microscopy using single−sideband holographic techniques”から知られたものであると共に、シングルサイドバンドイメージングとして知られたものである。
【0003】
透過電子顕微鏡(TEM)において、試料は、電子のビームで試料を照射することによってイメージングされる。しばしば、この電子のビームは、平行なビームである。典型的には、試料は、試料を通過するために電子の大部分について十分に薄いものである。いくつかの電子は、試料によって弾性散乱させられると共に、それらは、試料に入ったものと比べて別の方向において試料を去る。これらの散乱させられた電子は、対物系のレンズによって集束させられると共に、回折平面としてもまた知られた、上記の対物系のレンズのバックフォーカスの平面に回折パターンを形成する。
【0004】
回折平面における各々の位置が、電子が試料を去る特定の角度と対応することは、留意されることである。従って、回折平面に形成されたパターンは、フーリエの平面へのイメージの平面の(フーリエ)変換を表す。
【0005】
試料をイメージングするために、二つのコントラストの機構、位相コントラスト及び吸収コントラストが、存在する。位相コントラストは、弾性散乱させられた電子で妨げられてない試料を通過する電子の干渉の結果として生ずる。位相コントラストは、典型的には、試料が、少量の重い原子及び炭素、水素、等のような多数の軽い原子を具備するとき、生ずる。位相コントラストにおいては、電子のエネルギーは、ほとんど変化させられないと共に、従って、それが、弾性的な偏向ともまた称されることは、留意されることである。
【0006】
他方のコントラストの機構、吸収においては、電子は、はるかにより大きい角度にわたって散乱させられるが、それの結果として、それらは、例えば、回折平面における開口によって遮られる。電子のいくつかは、一様に反射させられるが、後方散乱させられた電子に帰着する。さらにいくつかの電子は、例.イオン化する事象によってエネルギーを失う、及び/又は、もはや回折平面に集束されない。全てこれは、これらの電子が、イメージングに寄与するものではないと共に、一般的に非弾性的な偏向と称されることに帰着する。
【0007】
生物学的な試料、ポリマー等が、しばしば位相コントラスト及び少量の吸収コントラストを示すことは、留意されることである。
【0008】
TEMの位相コントラストは、しばしばコントラスト伝達関数(CTF)によって表現されるが、それは、空間周波数の関数としてコントラストを表現する。順番にCTFは、二つのサブ関数、エンベロープ関数及び位相コントラスト伝達関数の積として記載されることができると共に、これらの関数の両方は、また空間周波数の関数である。これらの関数及びそれらの相互依存性の詳述された記載は、R.M.Glaeser et al.“Electron Crystallography of Biological Macromolecules”Oxford University Press(2007)(ISBN978−0−19−508871−7)に見出されるが、これにより参照によって組み込まれる。より具体的には、第67頁から第72頁までの段落3.8及び3.9において、位相コントラストの伝達関数は、数ある中で、試料をイメージングするレンズのデフォーカスの、及び、このように試料からレンズのフォーカスの平面までの距離の、関数である。相対的な幅広い空間周波数帯域にわたってコントラストを達成するために、TEMのユーザーは、しばしばいわゆるシェルツァー(Scherzer)のデフォーカスで操作する。Glaeserは、周知のシェルツァーのデフォーカス(上記の刊行物の図3.4をもまた参照のこと)及び結果として生じる位相コントラスト伝達関数(上記の刊行物の、例.図3.5を参照のこと)を記載する。第69頁から第72頁までの段落3.9に記載されたようなエンベロープの関数との位相コントラスト伝達関数の乗算は、CTFに帰着する。
【0009】
高い周波数について、位相コントラスト伝達関数が、+1及び−1の間における振動を示すと共に、従ってCTFが、類似の振動を示すことは、留意されることである。それにおいて、第一のゼロ交差をすることが生ずる周波数は、数ある中で、イメージングレンズのフォーカスの平面までの試料の距離に依存する。シェルツァーのデフォーカスは、それが、CTFが連続的に正である(ゼロより上にある)大きい周波数帯域を示すため、しばしば使用される。現代のTEMの及び生物学的な試料については、PCTF、シェルツァーのデフォーカスで第一のゼロ交差をすることは、典型的には、0.3nm(3オングストローム)のイメージにおける解像度と対応する3nm−1より上の空間周波数におけるものである。そのような解像度は、典型的には、生物学的なイメージングについては十分なものであると考えられる。
【0010】
当業者に周知なように、及び、前に述べた文献に示されるように、CTFは、低い空間周波数については低いものである。これは、位相コントラストを示す試料のイメージにおいては大きい構造が、検出することが難しいものであることを暗示する。
【0011】
Downingによって記載されたような、シングルサイドバンドのイメージングの知られた方法においては、回折平面の半分は、回折平面にナイフエッジを置くことによってブロックされる(取り除かれる)が、回折パターンの50%をカバーするものである。電子のこの半分の結果として、それらがナイフエッジによって妨げられるように散乱される電子は、回折させられてない電子の中央のビームと干渉することはできない。
【0012】
シングルサイドバンドのイメージングが、R.M.Glaeser等の“Electron Crystallography of Biological Macromolecules”Oxford University Press(2007)(ISBN978−0−19−508871−7)に、より具体的には第74頁の段落3.11の‘Single sideband images: blocking half of the diffraction pattern produces images whose transfer functions has unit gain at all spatial frequencies’にもまた記載されたものであることは、留意されることである。
【0013】
SSBのイメージングにおいては、フーリエの空間の半分は、回折平面にナイフエッジを置くことによって取り除かれるが、回折パターンの50%を覆うものである。電子の半分を捨てることによって、コントラストは、エンベロープ関数のみによって支配される。しかしながら、電子の半分が捨てられるため、実現されたコントラストは、エンベロープ関数の50%‘のみ’である。
【0014】
シングルサイドバンドの方法の不都合は、達成されたコントラストが、最良でもエンベロープ関数の50%であるというものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】K.Downing et al.,Optik 42(1975),page 155−175
【非特許文献2】R.M.Glaeser et al.“Electron Crystallography of Biological Macromolecules”Oxford University Press(2007)(ISBN978−0−19−508871−7)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、大きい周波数帯域におけるCTFがエンベロープ関数の50%、及び大きい周波数帯域についてエンベロープ関数の実質的に50%と比べてより多いもの、に等しい方法を与える。
【0017】
そのために、当該発明に従ったTEMは、ブロッキング部材によってブロックされた高い空間周波数が、ブロッキング部材無しにイメージングされた上記の回折平面のイメージがおおよそ50%のコントラスト伝達関数を示すところの最も低い空間周波数と比べてより低いもの又はそれに等しいものであるということで特徴付けられたものである。
【0018】
フーリエ平面の半分をブロックするものではなく半円のもののような一部分のみをブロックする、回折平面におけるブロッキング部材を有することによって、ブロッキング部材は、大きい角度にわたって偏向させられる/散乱させられる電子(高い空間周波数に寄与する電子)をブロックするものではない。これは、上記の高い空間周波数より上の空間周波数について、CTFが、0.5と比べてより大きい値までの最初の上昇をするところで、それに正常な挙動を示す(このようにSSBのイメージングにおいて利用可能なものと比べてより多いコントラストを示す)と共に、その次にそれの振動をスタートさせることを暗示する。このように当該発明は、例.シェルツァーのデフォーカスにおける、他の空間周波数について利用可能なより高いコントラストと低い空間周波数での良好なコントラストを組み合わせる。
【0019】
低い周波数におけるCTFの改善が、また、例.Hitachiへの米国特許第5,814,815号及びJEOLへの米国特許第6,674,078号に記載されたような、いわゆる位相板を使用することで達成されることができることは、留意されることである。ここで、位相板は、光学顕微鏡におけるゼルニケ(Zernike)の位相板の働きに類似の、回折させられた電子に対する回折させられてない電子の位相のシフトを実現するために使用される。これが、上記の低い周波数におけるCTFの改善に帰着するとはいえ、それは、また、CTFにおける第一のゼロが生ずる周波数を低下させる。さらに、本解決手段においては追加の電気的な電圧が印加されることを必要とするものではない、又は、脆弱な炭素のホイルの必要性がない一方で、それは、(Hitachiへの米国特許第5,814,815号の事例においては)小さい構造へ電圧を印加すること又は(JEOLへの米国特許第6,674,078号の事例においては)脆弱な及び汚染する薄い炭素のフィルムを扱うことを伴う。
【0020】
ブロッキング部材が、それに突き当たる電子を停止させる(吸収する)、又は、大きい角度で電子を散乱させることを必要とすることは、さらに留意されることである。従って、ブロッキング部材は、典型的には、電子を停止させる/散乱させる/吸収するための重金属を具備する。
【0021】
ある実施形態において、ブロッキング部材は、一つの又はより多い支持アームへ接続される。
【0022】
一つの又はより多い支持アームは、ブロッキング部材を支持すると共に、それが、例えば、TEMにおける開口に使用されるような位置決めするシステムで位置決めされることができるように、それをより巨視的な構造へ接続する。
【0023】
一つの又はより多い支持アームは、十分に剛性のものであるべきであるが、しかし他方では、それは、可能な限り少ない電子を遮るものであるべきである。使用される支持体は、また電子を遮るが、それによってその方向及び周波数におけるより低いコントラストに帰着する。従って、支持アームは、可能な限り回折平面における少ない空間をカバーするべきである。
【0024】
別の実施形態において、ブロッキング部材は、薄いフィルムによって支持されるが、上記のフィルムは、突き当たる電子に対して透明なものである。
【0025】
炭素のフィルム、グラフェンのフィルム、又は薄いシリコンのフィルムのような、そのような支持するフィルムは、当業者に知られたものである。
【0026】
フィルムが、さもなければ帯電することが生ずるため、好ましくは電気的に伝導性のものであることは、留意されることである。
【0027】
ある実施形態において、ブロッキング部材は、矩形のものに似る。
【0028】
矩形の形態にブロッキング部材を形成することによって、真っ直ぐなエッジを備えたブロッキング部材が、形成される。真っ直ぐなエッジのちょうどそばに回折させられてない(偏向させられてない)電子のビームを、このビームがそれに突き当たることがないように、位置決めすることによって、フーリエの空間の一部分は、ブロックされるが、部分的なSSBのイメージングに帰着する。
【0029】
ブロッキングの構造が、矩形のものであると、ブロックされた空間が、全ての方向において同一のものではないことは、留意されることである。そのことは、外径が、回折させられてないビームから一定の距離に形成される構造における場合のみである。
【0030】
別の実施形態において、ブロッキング部材は、変動する幅を備えた台形のものに似るが、それにおいては、回折パターンが、回折させられてない電子のスポットを示すと共に、ブロックされた空間周波数の区間は、適当な幅を備えたブロッキング部材の一部分の近くに、回折させられてない電子のビームを位置決めすることによって、選ばれる。
【0031】
台形のものの先細りになる幅のおかげで、回折させられてない電子のビーム近くの幅は、選択されることができる。
【0032】
回折パターンのサイズが、試料に突き当たる電子のエネルギーに依存することは、留意されることである:より高いエネルギーは、回折パターンのより小さいサイズに帰着する。また、使用されるデフォーカスは、CTFが0.5の値に到達する空間周波数に影響する。これは、ブランクにされる回折平面のエリアのサイズが、好ましくは、同様に調整可能なものであるべきであることを暗示する。
【0033】
別の実施形態において、ブロッキング部材は、各々が異なる幅を備えた、不連続な数のステップを備えたビームを示す。ここで、例、使用される電子のエネルギーについての適当な幅が、不連続な値で選択されることができる。
【0034】
別の実施形態において、ブロッキング部材は、半円のものに似る。
【0035】
回折させられてないビームが円の中心で集束されることを仮定すると、この実施形態は、全ての方向において等しいものである高い周波数を有する。
【0036】
さらなる実施形態において、半円形のものは、真っ直ぐなエッジを示すと共に、支持アームは、上記の真っ直ぐなエッジに対して垂直に又は平行に延びる。
【0037】
光学的な視点からいずれの方向についても優先性のあるものではないとはいえ、リソグラフィーの技術が、そのような構造を生産するために使用されるとき、これらの方向は、好適なものである。
【0038】
別の実施形態において、ブロッキング部材は、回折平面のイメージである平面に置かれると共に、そこでは回折平面のアナモルフィックなイメージが、形成される。
【0039】
例えば、四重極を使用することで、アナモルフィックなイメージが形成される平面は、回折パターンが、点の代わりに、ある数のストライプとしてイメージングされる平面に帰着する。これは、より低いピーク電流密度に帰着する。これは、汚染、損傷、又は他の電流密度に関係させられた問題点を回避するとき、好ましいことであることがある。
【0040】
なおも別の実施形態において、ブロッキング部材は、回折平面のイメージである平面に置かれると共に、上記の平面への回折平面のイメージングは、補正器光学部品の一部分である伝達光学部品によって少なくとも部分的には実現されるが、補正器光学部品は、回折パターンを形成するレンズの収差を補正するためのものである。
【0041】
当業者に知られるように、補正器は、典型的には、伝達光学部品が備え付けられる。補正器に使用される伝達光学部品と回折平面をイメージングする伝達光学部品を組み合わせることによって、コンパクトな設計が、実現される。
【0042】
なおも別の実施形態において、ブロッキング部材の少なくとも一部分は、アースから電気的に絶縁させられると共に、ブロッキング部材の少なくとも一部分に突き当たる電流を測定するための電流測定ユニットへ電気的に接続される。
【0043】
なおも別の実施形態において、電流の測定は、ブロッキング部材に関して回折させられてない電子のビームを位置決めするために使用される。
【0044】
なおも別の実施形態において、透過電子顕微鏡は、ブロッキング部材を加熱するための手段をさらに具備する。
【0045】
ブロッキング部材を加熱することは、汚染を回避する及び/又は汚染が起こったときブロッキング部材をクリーニングするために、使用される。これにより、例.ブロッキング部材の帯電をすることは、最小限に保たれる。
【0046】
なおも別の実施形態において、回折パターンは、回折させられてない電子のスポットを示すと共に、ブロッキング部材は、回折させられてない電子のビームがブロッキング部材に最も近いものである場所でへこみを示すが、それの結果としてブロッキング部材の汚染は、低減される。
【0047】
当該発明のある態様において、透過電子顕微鏡においてブロッキング部材の使用をすることの方法は、その方法が、透過電子顕微鏡の回折平面にブロッキング部材を提供すること、ブロッキング部材が回折平面の一部分をブロックすることを具備するが、ブロックされた部分は、少なくとも一つの方向において低い周波数から高い周波数までの空間周波数をブロックすると共に、高い空間周波数が、ブロッキング部材無しでイメージングされた上記の回折平面のイメージがおおよそ50%のコントラスト伝達関数(1000)を示す最も低い空間周波数と比べてより低い又はそれに等しいものであるということで特徴付けられたものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は、概略的にTEMを示す。
【図2】図2は、回折パターンを示す。
【図3】図3は、概略的にブロキング部材無しのTEMのコントラスト伝達関数を示す。
【図4】図4は、オーバーレイされたブロッキング部材と共に、図2の回折パターンを示す。
【図5】図5は、概略的にブロッキング部材有りのTEMのコントラスト伝達関数を示す。
【図6a】図6aは、概略的にブロッキング部材の異なる実施形態を示す。
【図6b】図6bは、概略的にブロッキング部材の異なる実施形態を示す。
【図6c】図6cは、概略的にブロッキング部材の異なる実施形態を示す。
【図6d】図6dは、概略的にブロッキング部材の異なる実施形態を示す。
【図6e】図6eは、概略的にブロッキング部材の異なる実施形態を示す。
【図6f】図6fは、概略的にブロッキング部材の異なる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
発明は、今、図の援助で解明されたものであるが、そこでは同一の参照数字は、対応する特徴に参照する。
【0050】
ここで、
図1は、概略的にTEMを示す
図2は、回折パターンを示す
図3は、概略的にブロキング部材無しのTEMのコントラスト伝達関数を示す
図4は、オーバーレイされたブロッキング部材と共に、図2の回折パターンを示す
図5は、概略的にブロッキング部材有りのTEMのコントラスト伝達関数を示す
図6A−6Fは、概略的にブロッキング部材の異なる実施形態を示す。
【0051】
図1は、概略的にTEMを示す。
【0052】
TEMは、光軸104を囲んで電子のビーム102を生じさせる電子源100を具備する。源から受け入れられる電子の量は、開口106によって支配される。その次にコンデンサーレンズ108及び110は、電子の平行なビームを形成するが、それから開口111が、一部分を受け入れる。これで電子の平行なビームは、形成される。このビームは、試料112を照射するが、それは、位置決めするユニット114において位置決めされる。位置決めするユニットは、試料が、x軸を囲んで回転するのみならず、x、y、及びz方向において移動させられることを可能とする。その次に、対物系のレンズ116は、第一のイメージの平面119で対象の拡大されたイメージを形成するが、その拡大されたイメージは、レンズ120及び122によってさらに拡大されると共に、センサー124に投射される。センサー124は、カメラであることがあるが、しかし、蛍光性のスクリーンが、また使用される。対物系のレンズは、また、回折平面118において回折パターンを形成する。
【0053】
この記載が、平行なビームが試料を照明すると共に試料がイメージングされるTEMモードで、TEMの動作をすることを示すことは、留意されることである。当業者に知られるように、TEMは、典型的には、試料が収束性の又は発散性のビームで照明されると共にビームが試料に集束させられると共にそれにわたって走査させられると共にセンサーにおける回折平面のイメージング等がされるモードを含む、多数の他のモードにおいて同様にして作動するように備え付けられる。
【0054】
図2は、回折パターンを示す。
【0055】
ここに示された回折パターンは、示されたスポットで明白なことであるように、結晶質の材料のものである。それは、回折させられた電子によって形成された大きい数のスポットによって囲まれた、回折させられてない電子によって形成された、強い中央のスポットを示す。ここに使用された試料の結晶質の性質のおかげで、特定の方向に散乱させられる電子について強い優先性があるものである。非晶質の試料が(大部分の生物学的な試料がそのようなものであるが)中央のピークを囲む電子の拡散性の分布を示すと思われることは、留意されることである。
【0056】
図3は、概略的に対物系のレンズのコントラスト伝達関数を示す。
【0057】
図3は、いわゆるシェルツァーのフォーカスにおけるCTF301のグラフを示す。それは、1nm−1と比べてより少ないものの空間周波数について、関数が、0.5より少ないものであると共に、ゼロの空間周波数まで行くときゼロまで落ちることを示す。従って、大きい構造、この事例においては、例.1nmと比べてより大きいものは、あまり可視のものではないものになる。例.生物学者のために、これは、彼/彼女らが、高い解像度を備えたイメージを作ることができるとはいえ、細胞小器官と同様のより巨視的な構造と高い解像度の観察を関係付けることは、困難なことであることを意味する。
【0058】
さらには、高い周波数、ここでは3.5nm−1より上の周波数での振動は、エンベロープ関数302による最大の振幅の減少であるように、明りょうに可視のものである。
【0059】
関数がx軸と交差する周波数及び周波数の関数としてのエンベロープ関数の振幅が、レンズの質に依存性のあるものであることは、留意されることである。
【0060】
CTFが、ここではシェルツァーのデフォーカスについて示されるとはいえ、類似のCTFが、他の(デ)フォーカスの距離について導出されることができることは、さらに留意されることである。
【0061】
図4は、概略的にブロッキング部材とオーバーレイされた図2の回折パターンを示す。
【0062】
図4は、図2に示された回折パターンを示すが、それにブロッキング部材401が投影されたものである。ブロッキング部材は、支持アーム402によってより巨視的な構造(及びついにはTEM)へ接続される。
【0063】
ブロッキング部材が、ここでは真っ直ぐなエッジ403を備えた半円のものとして形成されることは、留意されることである。円形のものの中央において、へこみが、形成されるが、そこでは回折させられてないビームは、これらの電子が、ブロッキング部材に突き当たることがないように、通ることができる。このへこみは、全ての方向において同一のものである低い周波数についてブロッキング部材の低い周波数の挙動を保証する。
【0064】
図5は、概略的にブロッキング部材を備えたTEMのコントラスト伝達関数を示す。
【0065】
ブロッキング部材401による電子のブロッキングのおかげで、周波数501までの全ての周波数についてのCTFは、このエリアにおいて弾性散乱させられた電子の50%が、捨てられるため、有効にエンベロープ関数の50%である。ブロッキング部材を回避するには十分に大きい角度にわたって散乱させられる電子は、ブロッキング部材無しのTEMにおける事例であると思われるものと同じ様式で、イメージを形成することができる。従って、CTFは、それの正常な挙動のおかげで、それが、周波数502と比べてより高い周波数について50%より下の値まで落ちるまで、上昇する。
【0066】
結果は、大きい対象(低い周波数)が正常なものと比べてはるかにより高いコントラストで示されるイメージであると共に、高い解像度は、正常に達成されると思われるものと同じコントラストで達成される。例えば、生物学(0.3nmの解像度)の関心のある領域について、これは、互いに有利な状況である。
【0067】
図6aから6hまでは、ブロッキング部材の異なる実施を与える。
【0068】
図6aは、外側のエッジ610を備えた、例.シリコンの正方形のチップ600を示す。好ましくは、外側のエッジは、それが、例.TEMの開口の機構に含有されるように、寸法がとられるが、その結果、それは、機械的に位置決めされることができる。チップにおいて、直径608を備えた丸い穴601は、エッチングされたものである。穴の直径は、非弾性的に偏向させられる(と共にこのように大きい角度にわたって散乱させられる又はエネルギーを失った)電子が、シリコンによって妨げられるように、選ばれる。外側のエッジ610及び穴601の直径の間においてシリコンへ接続されるものは、支持アーム606である。穴の中央に近い遠位の末端で、支持アームは、この事例においては半円のようなものに形成されるブロッキング部材604に接続する。半円のものは、真っ直ぐなエッジを示すと共に、回折パターンの中央のビーム612は、このエッジの付近に位置決めされるが、しかし、ブロッキング部材が中央のビームにおける電子(の多くのもの)を妨げることがないように十分に取り除かれる。
【0069】
小さいへこみが、中央のビームを通らせることをより簡単なものとするために使用されることがあることは、留意されることである。発明者は、他の顕微鏡及び他の加速電圧では、異なる値が見出されることができるとはいえ、半円のものの半径が、300kVの高い電圧について、例えば10−15μmの間にあるものであることを算出した。支持アームは、好ましくは、可能な限り細いものであると共に、実験は、支持アームが3μmの幅を有するものであった構造に帰着した。
【0070】
構造が、金メッキされる、又はさもなければ、帯電することを回避するために高度に伝導性の材料でメッキされることができることは、留意されることである。基体は、与えられた表面のコーティングに従って、伝導性のもの又は絶縁するものであることができる。基体の材料及びコーティングの両方は、真空の保全性、熱的な挙動、機械加工性、等に関する需要に適応するために帯電させられることができる。
【0071】
図6Bは、矩形のブロッキング部材を備えた類似のチップを示す。中央のビームを囲んで半円状のものではないブロッキング部材は、それの働きが、全ての方向において同一のものではないこと、及び、SSBのイメージングが‘正常な’CFTの挙動へとブレンドする周波数が、それらの方向で異なることを、暗示する。これは、一つの方向において可視の(与えられたコントラストで)最も低い解像度が、別の方向における可視の最も低い解像度とは異なるという点でアーチファクトに至ることがある。
【0072】
図6Cは、図6Aのブロッキング部材を示すが、しかし今、支持アームは、半円のものの真っ直ぐなエッジに対して平行なものである。
【0073】
図6Dは、変動する幅を備えたブロッキング部材を示す。それぞれ、位置620、621、又は622の近くに中央のスポットを置くことによって、スポットに近いブロッキング部材の異なる幅は、実現されることができる。
【0074】
図6Eは、図6Dにおける事例であるもののように、支持アーム606によって支持されるものだけではなく、第二の支持アーム630によってもまた支持される、ブロッキング部材604を示す。これにより、構造は、はるかにより堅いものになるが、例えば、あまり振動しやすいものではない構造に帰着する。
【0075】
図6Fは、絶縁体が基体に使用されると共にブロッキング部材がチップの大部分で電気的に絶縁されるところの構造を示す。電気的な接続は、パッド640でなされることができるが、それによって電流の測定は、どのくらい多くの電流がブロッキング部材に突き当たるかを決定するためになされることができる。同様にして構造の他の側面を使用することがある又は使用しないことがあるブロッキング部材への二つの又はより多い電気的な接続を備えた変形は、予見されるものである。
【0076】
電流を測定することによって、中央のビームがブロッキング部材のエッジに対してどのくらい近くであるかということが、決定されることができる。
【0077】
それ自体では電子に対して透明なものである薄い伝導性のホイルにブロッキング部材を置くことはまた可能性のあることであることは、留意されることである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料をイメージングするための透過電子顕微鏡であって、
前記透過電子顕微鏡は、前記試料の回折パターンが形成される回折平面を示すと共に、
前記回折平面は、フーリエドメインにおける前記試料のイメージを表すと共に、
前記透過電子顕微鏡は、前記回折平面又はそれのイメージに位置決めされたブロッキング部材を具備すると共に、
前記ブロッキング部材は、前記フーリエドメインの一部分をブロックすると共に、
少なくとも一つの方向における前記フーリエドメインのブロックされた部分は、低い空間周波数から高い空間周波数まで延びる、
透過電子顕微鏡において、
前記ブロッキング部材によってブロックされた最も高い空間周波数は、前記ブロッキング部材無しにイメージングされた上記の回折平面のイメージがおおよそ0.5のコントラストの伝達を示す空間周波数と比べてより低い又はそれに等しいものである
ことを特徴とする、透過電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1の透過電子顕微鏡において、
前記ブロッキング部材は、支持するアームへ接続されたものである、
透過電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1の透過電子顕微鏡において、
前記ブロッキング部材は、薄いフィルムによって支持されたものであると共に、
上記のフィルムは、突き当たる電子に対して透明なものである、
透過電子顕微鏡。
【請求項4】
先行する請求項のいずれかの透過電子顕微鏡であって、
前記ブロッキング部材は、矩形に似るものである、
透過電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項1の透過電子顕微鏡において、
前記ブロッキング部材は、変動する幅を備えた台形に似るものであると共に、
前記回折パターンは、回折させられてない電子のスポットを示すと共に、
前記ブロックされた空間周波数の区間は、適当な幅を備えた前記ブロッキング部材の一部分の近くに回折させられてない電子のビームを位置決めすることによって選ばれたものである、
透過電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項1の透過電子顕微鏡において、
前記ブロッキング部材は、不連続の数の階段を示すと共に、
各々のものは、異なる幅を備えたものである、
透過電子顕微鏡。
【請求項7】
請求項1の透過電子顕微鏡において、
前記ブロッキング部材は、半円形に似るものである、
透過電子顕微鏡。
【請求項8】
請求項7の透過電子顕微鏡であって、
前記半円形は、支持のアームへ接続された真っ直ぐなエッジを示すと共に、
前記支持のアームは、上記の真っ直ぐなエッジに対して垂直な又は平行なもののいずれかの方向に延びる、
透過電子顕微鏡。
【請求項9】
先行する請求項のいずれかの透過電子顕微鏡であって、
前記ブロッキング部材は、前記回折平面のイメージである平面に置かれたものであると共に、
前記回折平面のアナモルフィックなイメージは、形成される、
透過電子顕微鏡。
【請求項10】
先行する請求項のいずれかの透過電子顕微鏡であって、
前記ブロッキング部材は、前記回折平面のイメージである平面に置かれたものであると共に、
上記の平面への前記回折平面のイメージングは、補正器光学部品の部分である伝達光学部品によって少なくとも部分的に実現されたものであると共に、
前記補正器光学部品が前記回折パターンを形成するレンズの収差を補正するためのものである、
透過電子顕微鏡。
【請求項11】
先行する請求項のいずれかの透過電子顕微鏡であって、
前記ブロッキング部材の少なくとも一部分は、アースから電気的に絶縁させられたものであると共に、
前記ブロッキング部材の少なくとも一部分に突き当たる電流を測定するための電流の測定ユニットへ電気的に接続させられたものである、
透過電子顕微鏡。
【請求項12】
請求項11の透過電子顕微鏡であって、
前記電流の測定は、前記ブロッキング部材に関して回折させられてない電子のビームを位置決めするために使用される、
透過電子顕微鏡。
【請求項13】
先行する請求項のいずれかの透過電子顕微鏡であって、
さらに前記ブロッキング部材を加熱するための手段を具備する、
透過電子顕微鏡。
【請求項14】
先行する請求項のいずれかの透過電子顕微鏡において、
前記回折パターンは、回折させられてない電子のスポットを示すと共に、
前記ブロッキング部材は、前記回折させられてない電子のビームが前記ブロッキング部材に最も近いものである場所におけるへこみを示すと共に、
その結果として前記ブロッキング部材の汚染は、低減される、
透過電子顕微鏡。
【請求項15】
透過電子顕微鏡においてブロッキング部材の使用をするための方法であって、
前記方法は、
前記透過電子顕微鏡の回折平面にブロッキング部材を提供すること、
前記ブロッキング部材が前記回折平面の一部分をブロックすること
を具備する、
方法において、
前記ブロックされた部分は、少なくとも一つの方向において低い周波数から高い周波数までの空間周波数をブロックすると共に、
前記高い空間周波数は、前記ブロッキング部材無しにイメージングされた上記の回折平面のイメージがおおよそ50%のコントラスト伝達関数を示す最も低い空間周波数と比べてより低い又はそれに等しいものである
ことを特徴とする、方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図6f】
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【公開番号】特開2012−9439(P2012−9439A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139664(P2011−139664)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】