TER部位およびTER結合タンパク質
【課題】分子生物学的応用における、複製終結配列(Ter部位)とその結合タンパク質との特異的な相互作用を利用するための材料および方法を提供する。
【解決手段】Ter結合タンパク質によって結合されることが可能な、少なくとも2つのTer部位の全てまたは一部を含むように操作される単離された核酸分子、修飾されたTer結合タンパク質、Ter部位の全てまたは一部を含有する少なくとも一つのオリゴヌクレオチドを含む、もしくはさらにTer結合タンパク質を含む固体支持体。
【解決手段】Ter結合タンパク質によって結合されることが可能な、少なくとも2つのTer部位の全てまたは一部を含むように操作される単離された核酸分子、修飾されたTer結合タンパク質、Ter部位の全てまたは一部を含有する少なくとも一つのオリゴヌクレオチドを含む、もしくはさらにTer結合タンパク質を含む固体支持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、分子生物学の分野におけるものである。本発明は、ポリヌクレオチド、およびそのポリヌクレオチドと特異的に相互作用するポリペプチド、ならびにそれらの使用方法に広く関連する。具体的には、本発明は、ポリヌクレオチド、終結配列、および、終結配列に結合する核酸結合タンパク質、ならびに、使用の中でもとりわけ、クローニングのため、関心対象の核酸を選択するため、関心対象のポリヌクレオチドを精製するため、単鎖DNAを作製するため、ポリヌクレオチドの少なくとも2つの部位を並列させるため、核酸分子の形態を維持するため、標的配列および他の生体分子を検出するため、固体支持体上にポリヌクレオチドを固定化するために、これらのうち1つまたは複数を使用する方法を提供する。本発明はまた、これらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの断片または誘導体、ならびに、そのようなポリヌクレオチドを含む、または、そのようなポリペプチドをコードするベクター、そのようなベクターを含む宿主細胞、およびその断片または誘導体にも関連する。本発明は、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/または組成物を含むキットにも関与する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
細菌系においては、ゲノムおよびプラスミドの複製は、複製起点(ori)と呼ばれる、ゲノムまたはプラスミド上の特定の部位にて始まる。複製は、複製起点にて開始され、起点から、複製複合体が停止されて複製が終結する、終結配列(Ter部位)と呼ばれる、ゲノムまたはプラスミドの適切な(特定の複製単位について適切な)部分に位置する規定された配列まで、一方向または双方向のいずれかに進む。
【0003】
Ter部位において複製を正しく終結させるために、生物体は機能的な複製終結タンパク質(RTP)を発現しなければならない。RTPは、Ter部位に結合し、RTP-Ter複合体を形成する核酸結合タンパク質である。結合されたRTPは、複製複合体のヘリカーゼ活性がTer部位を巻き戻すのを阻害することによって、複製終結において機能すると考えられる。この活性は、反ヘリカーゼ(contrahelicase)活性と呼ばれる。RTPおよびTer部位は、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)および大腸菌を含む、広範な種類のグラム陽性微生物およびグラム陰性微生物において同定されている(Bussiereら、Mol.Micro. 31(6):1611〜1618(1999)(非特許文献1)およびGriffithsら、J.Bacteriology 180(13):3360〜3367(1998)(非特許文献2)を参照のこと)。
【0004】
ほとんどのRTP-Ter複合体の、複製を停止させる能力は、一方向性のものである;一方の方向(非許容方向)から進行する複製複合体は停止する一方、反対の方向(許容方向)から進行する複製複合体は通過する。いくつかの修飾RTPについては、複製を停止する能力は双方向性であり、これらのRTPはいずれの方向からの複製も停止することができる。通常の(一方向性の)条件下においては、複製の正しい終結を達成するために、一般に、各ゲノムまたはプラスミド上に、少なくとも2つのTer部位が存在する。Ter部位は、いずれかの方向からの複製フォークのTer部位間の領域への通過を許容するように、しかしその領域からの複製フォークの退出を妨げるように配置される。ある複製複合体は、第一のTer部位を通過し、第二のTer部位において停止される一方、反対方向から進行する複製複合体は、第二の部位を通過し、第一の部位において停止される。これは、図1において模式的に示される。
【0005】
RTPは、Ter部位に著しく強固に結合し、その結果、長い半減期を有する、非常に安定なRTP-Ter複合体をもたらすことが見出された。RTPのTer部位に対する高度の親和性、および、Ter部位の方向性は、本発明において説明される方法およびキットにおける使用のために利用することができる。
【非特許文献1】Bussiereら、Mol.Micro. 31(6):1611〜1618(1999)
【非特許文献2】Griffithsら、J.Bacteriology 180(13):3360〜3367(1998)
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、分子生物学での応用において特に有用な材料および方法を提供する。一般に、本発明は、インビトロ(例えば細胞外における)、インビボ(例えば細胞内における)、またはその組み合わせにおける、1つもしくは複数のTer部位、および/または、1つもしくは複数のTer結合タンパク質もしくはRTPの使用に関連する。ある態様において、本発明は、少なくとも1つのTer部位および/またはその一部を含む、1つまたは複数の(単離されることが可能である)核酸分子に関連する。そのような核酸分子は、線状、環状、超らせん、単鎖、二重鎖、1つまたは複数の単鎖領域(例えば、分子の1つまたは複数の末端における、少なくとも1つの単鎖突出部)を有する二重鎖等のような、任意の形態または種類の核酸分子であることが可能であり、単離されることが可能である、または、1つもしくは複数の宿主もしくは宿主細胞に含まれ得る。本発明の好ましい核酸分子は、ベクター、組み込み配列(例えばトランスポゾン)、プラスミド、コスミド、人工染色体(例えば、BACおよびYAC)、およびファージミドなどを含む。そのようなTer部位および/またはその一部は、分子内の1つまたは複数の部位、および/または、そのような分子の1つまたは複数の末端もしくはその近辺を含む、本発明の核酸分子において任意の位置、および任意の方向にて位置することが可能である。いくつかの態様において、本発明の核酸分子は、選択的に、1つまたは複数の検出可能な原子または基、例えば、1つまたは複数の放射性同位体、発色団、蛍光団、酵素、エピトープ、ハプテン、抗原および/またはその組み合わせを含み得る。ある局面において、本発明の核酸分子は、1つまたは複数のTer結合タンパク質に結合させることが可能である。
【0007】
本発明はまた、本発明の核酸分子の1つまたは複数を含む、組成物または反応混合物をも含む。そのような組成物または反応混合物は、本発明の方法を実行するために、1つまたは複数の他の成分をも含み得る。そのような他の成分は、1つまたは複数のTer部位またはその一部に結合されていることが可能な、および/または結合されていないことが可能な1つまたは複数のTer結合タンパク質、1つまたは複数のリガーゼ、1つまたは複数のポリメラーゼ、1つまたは複数のトポイソメラーゼ、1つまたは複数の組換えタンパク質、1つまたは複数の宿主細胞(核酸分子を取り込むコンピテント細胞でありうる)、1つまたは複数の固体支持体(そのような支持体に直接的にもしくは間接的に結合された、1つもしくは複数のTer結合タンパク質、および/または、1つもしくは複数のTer部位もしくはその一部を含む核酸分子を有し得る)などを含み得る。
【0008】
別の局面において、本発明は、Ter結合タンパク質および1つまたは複数の修飾を含む修飾タンパク質に関連する。いくつかの局面において、修飾基はTer結合タンパク質に化学的に付着されることが可能である。いくつかの態様において、修飾は、Ter結合部分および1つまたは複数の付加的なポリペプチド部分を含む、融合タンパク質を作製するものであり得る。付加的なポリペプチド部分は、1つまたは複数の酵素、結合ポリペプチド、即ち、抗体、Fabなど、エピトープ、抗原、ハプテンなど、およびその組み合わせでありうる。融合タンパク質は選択的に、例えばTer結合部分と酵素部分との間のような2つの部分の間に、リンカーを含み得る。リンカーは選択的に、1つまたは複数の切断部位、例えば、1つもしくは複数のタンパク質分解酵素のための切断部位、および/または、1つもしくは複数の、化学的切断に対して感受性の部位を含み得る。
【0009】
別の局面において、本発明は、本発明の核酸および/またはタンパク質が共有結合によって、または非共有結合によって付着する、固体支持体を提供する。いくつかの態様において、本発明の固体支持体は、1つまたは複数のTer部位の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含み得る。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ヘアピンまたはステムループの形態にあることが可能である。いくつかの態様において、本発明の固体支持体は、1つまたは複数のTer結合タンパク質の全てまたは一部を含み得る。別の局面において、本発明は、本発明の固体支持体を含有する組成物を含む。
【0010】
より具体的には、本発明は、インビトロおよび/またはインビボのクローニング(好ましくは定方向クローニング)において使用するための、1つまたは複数の核酸分子における、少なくとも1つのTer配列の使用に関連する。したがって、ある局面において、本発明は、関心対象の核酸分子(好ましくは望ましい方向においてクローニングされたもの)について正の選択を可能にする。
【0011】
ある局面において、本発明は、Ter部位の全てまたは一部を含む、少なくとも1つの本発明の核酸分子、および、少なくとも1つのベクターを提供する段階、少なくとも1つの該核酸分子の全てまたは一部を、少なくとも1つの該ベクターに挿入またはクローニングする段階、ならびに、望ましい方向にある、少なくとも1つの該核酸分子の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのベクターを選択する段階による、クローニングの方法を提供する。
【0012】
別の局面において、本発明は、少なくとも1つのTer部位の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのベクター、および少なくとも1つの核酸分子を提供する段階、少なくとも1つの核酸分子の全てまたは一部を、少なくとも1つのベクターに挿入またはクローニングする段階、ならびに、好ましくは望ましい方向にある、少なくとも1つの核酸分子の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのベクターを選択する段階による、クローニングの方法を提供する(図2)。
【0013】
別の局面において、本発明は、少なくとも1つのTer部位の全てまたは一部を含む、関心対象の、少なくとも1つの核酸分子を提供する段階、少なくとも1つのTer部位の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのベクターを提供する段階、少なくとも1つの核酸分子の全てまたは一部を、少なくとも1つのベクターに挿入またはクローニングする段階、および、望ましい方向にある、少なくとも1つの核酸分子の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのベクターを選択する段階による、クローニングの方法を提供する(図3)。
【0014】
いくつかの態様において、本発明の方法は、望ましくない核酸分子(ベクターを含む)を選択しない(select against)段階も含み得る。そのような選択は、選択可能な高次構造もしくは方向にあるTer部位の全てもしくは一部を有する分子を選択しない段階、および/または、選択可能な高次構造もしくは方向にあるTer部位の全てもしくは一部を有する分子について選択する段階に関与し得る。いくつかの態様において、選択段階は、(例えば、形質転換またはトランスフェクションによって)ベクター分子を宿主細胞に導入する段階であり、宿主細胞が少なくとも1つのTer結合タンパク質を発現するような段階を含む。
【0015】
したがって、ある局面において、本発明は、1つまたは複数のTer配列またはその一部を用いた、核酸分子の定方向挿入または定方向クローニングの方法を提供する。いくつかの態様において、ベクターにおける核酸分子の望ましい方向は、核酸分子におけるTer部位がベクターにおけるTer部位と同じ方向における複製を許容するような方向である。この態様において、核酸分子が望ましくない方向にある場合、少なくとも1つのTer部位が、ベクターの複製を妨げる(図3)。別の態様において、ベクターにおける核酸分子の望ましい方向は、機能的なTer部位が作製されないようにするものである。望ましくない方向においては、ベクターの複製を妨げる、少なくとも1つの機能的Ter部位が生じる。したがって、例えば、核酸分子におけるTer部位およびベクターにおけるTer部位が部分的なTer部位である場合は、例えば方向に依存して、核酸分子の挿入によって機能的なTer部位を作製することが可能である、または可能ではない。この場合、望ましい方向では機能的なTer部位が生じないため、組換えベクターの複製が行われる。
【0016】
本発明はまた、望ましくない核酸分子を選択しないための、少なくとも1つのTer配列またはその一部の使用にも関連する(図4)。本発明の正の選択法のように、そのような方法は、望ましい核酸分子のインビトロおよび/またはインビボのクローニングを用いて達成することができる。ある局面において、本発明は、インビトロまたはインビボのクローニング中、望ましくない開始分子および/または産物分子を選択しないことを可能にする。例えば、本発明は、望ましい挿入配列を受け取らなかった開始ベクター分子を選択しないことを提供する。別の局面において、本発明は、核酸分子のクローニングまたは挿入の際に生じる可能性がある中間体を選択しないことを提供する。さらに、本発明は、クローニング反応中に生み出された、望ましくない産物分子を選択しないことを提供する。
【0017】
別の局面において、本発明は、トランスポゾンのような核酸挿入配列の、その挿入配列が導入される核酸への望ましい方向を確証する段階に関連する。方向を制御することにより、全核酸構築物は複製を許容される、または複製を妨げられる。例えば、1つまたは複数の挿入配列、例えばトランスポゾンを、例えばプラスミド、BAC、YAC、染色体等のような核酸と接触させることができる。挿入配列の1つまたは複数が望ましい方向にある場合、複製は、許容方向にある部位を通って進む。しかし、挿入配列が、1つまたは複数のTer部位が非許容方向にあるように配向されている場合、複製は達成されない。そのような方法は、例えば1つまたは複数のトランスポゾンの方向付けのような挿入の方向付けが望ましい場合は常に有用であり、ノックアウトベクターの作製においては、特に有効となり得る。
【0018】
別の局面において、本発明は、1つまたは複数の核酸分子または核酸分子集団を、1つまたは複数の固体支持体に付着する方法に関連する(図5)。そのような方法は、1つまたは複数のTer結合タンパク質を1つまたは複数の固体支持体に結合する段階、および、Ter結合タンパク質を、1つまたは複数のTer部位を含む1つまたは複数の核酸分子と接触させる段階であり、1つまたは複数のTer部位(またはその一部)における相互作用を通して、1つまたは複数のTer結合タンパク質が1つまたは複数の核酸分子に結合する段階を含み得る。結合された核酸分子はその後、例えば1つまたは複数のオリゴヌクレオチド(例えばプライマーまたはプローブ)との相互作用(例えばハイブリダイゼーション)によって、またはペプチドもしくはタンパク質との相互作用によって、さらなる操作のために使用することができる。本発明では、関心対象の核酸分子を、支持体に1つまたは複数の特異的部位において結合させる(Ter部位(もしくはその一部)の部位に依存する)ため、そのような操作は、他の結合法が用いられる操作と比較して、より可変性の、および/または、効率的なものでありうる。したがって、関心対象の核酸は、固体支持体に関して任意の方向で、即ち、支持体に近接して5'側、3'側、または内部の部分にて、付着することができる。本発明の核酸は、核酸の結合部分の片側もしくは両側に、二重鎖領域、単鎖領域、および/または、一部二重鎖、一部単鎖の領域を有し得る。さらに、本発明の核酸は、核酸の複数の部位において、固体支持体に付着することができる。これによって、核酸が、規定された(選択的に厳密な)高次構造において、固体支持体上に固定されることが可能である。先行技術の非特異的な結合法(例えば、ポリリシン被覆支持体の使用によるような、多くの定められていない部位における核酸分子)では、定められた方向での固体支持体への付着を達成することができない。したがって、本発明の本局面は、核酸を単離するために、核酸アレイを調製するために、および、ナノデバイスを構築するために、有利に使用することができる。
【0019】
別の局面において、本発明は、1つまたは複数のTer結合タンパク質、修飾Ter結合タンパク質、Ter結合部位を含む融合タンパク質、またはそのようなタンパク質の集団を、1つまたは複数の固体支持体に付着する方法に関連する。そのような方法は、1つもしくは複数のTer配列(もしくはその一部)を含む、1つもしくは複数の核酸分子を、1つもしくは複数の固体支持体に結合させる段階、ならびに/または、1つもしくは複数のTer結合タンパク質および/もしくはTer結合部位を含む融合タンパク質と核酸を接触させる段階を含み得る。1つまたは複数のTer結合タンパク質および/または融合タンパク質は、1つまたは複数のTer部位(またはその一部)における相互作用を通して、1つまたは複数の該核酸分子と結合することが可能である。融合タンパク質のTer結合部分は、例えば、融合タンパク質の望ましい成分の濃縮、収集、単離等を行うために、使用することができる。結合されたTer結合タンパク質および/または融合タンパク質はその後、さらに加工することが可能である。さらなる加工段階には、例えば、溶出および/または、1つもしくは複数の切断部位における切断が含まれ得る。いくつかの態様において、結合されたそのようなTer結合タンパク質および/または融合タンパク質は、固体支持体に結合されたままで、1つもしくは複数の核酸分子と、または他のペプチドもしくはタンパク質と相互作用させることが可能である。他の態様において、そのようなTer結合タンパク質および/または融合タンパク質は、さらなる相互作用前に、固体支持体から溶出することができる。したがって、本発明の本局面は、生物学的試料のような任意の試料から、Ter結合タンパク質および/または融合タンパク質を単離または精製するために、有利に使用することができる。
【0020】
別の局面において、本発明は、核酸においてTer部位を提供する段階、および、Ter結合タンパク質と核酸を接触させる段階を含む、1つまたは複数の核酸分子のトランスフェクション効率を改善する方法に関連する。いくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、修飾Ter結合タンパク質でありうる。いくつかの態様において、修飾タンパク質は、1つまたは複数の受容体結合リガンドを含み得る。いくつかの局面において、本発明は、1つまたは複数の細胞標的化配列を含む、変化したTer結合タンパク質を提供する。いくつかの好ましい態様において、細胞標的化配列の1つまたは複数は核局在化配列であり得る。
【0021】
別の局面において、本発明は、その末端の一方または双方にTer部位(またはその一部)を含むような線状核酸分子を提供する段階、Ter結合タンパク質と核酸を接触させて、安定な核酸-タンパク質複合体を形成させる段階、ならびに、安定な核酸-タンパク質複合体を宿主細胞にトランスフェクションさせる段階であり、単独でトランスフェクションされた核酸よりも、複合体の方がより安定であり、および/または、より容易にトランスフェクションされるような段階を含む、インビボにおける線状核酸分子の安定性を増強する方法に関連する。いくつかの態様において、線状核酸は、コード配列を含む。
【0022】
別の局面において、本発明は、Ter部位を含む核酸を提供する段階、固体支持体に付着されたTer結合タンパク質を含む組成物と核酸を接触させる段階であり、Ter結合タンパク質がTer部位に結合するような段階、および、核酸を単離または精製する段階を含む、核酸を単離する方法に関連する(図6Aおよび図6Bおよび図7)。その他のさらなる態様において、本発明は、核酸、特に核酸ライブラリの精製のための、改善された方法を提供する。一般に、Ter部位を含む核酸は、本発明の方法によって、他の核酸から分離することができる。そのようなある態様は、スタッファー(stuffer)断片を有するストックベクターを示す図6Aにおいて表される。ライブラリの作製のためのベクター試薬を調製するために、スタッファー断片は効率的に取り除かれるべきである。本発明は、調製されたベクター試薬をスタッファー断片から単離する方法を提供する。例えば、ストックベクターは、スタッファー断片においてTer部位を含むように構築することができる。制限酵素による分解後、1つまたは複数の制限酵素による2つの切断によって、調製された試薬からのスタッファーの切断がおこる。1部位のみにおける切断、または切断が行われない場合、スタッファー断片はなおもベクターに付着されたままである。Ter結合タンパク質は、スタッファー断片、未切断のベクター、および、スタッファー断片をなおも含む、一部位のみ切断されたベクターの、調製されたベクター試薬からの分離を達成するために、固体支持体に結合させることができる。Ter結合タンパク質を、ベクター分解によって反応させる前に、反応と同時に、または反応の後に、任意の固体支持体に結合させることができる。別の態様において、図6Bにおいて示されるように、未切断のプラスミドまたは一部位のみ切断されたプラスミド、および、関心対象の望ましい配列を含まない、望ましくないプラスミド材料のような、Ter部位を含む核酸を、除去することができる。
【0023】
別の態様において、図7において示されるように、例えばPCR反応のような増幅反応の完了後に鋳型核酸を除去するために、鋳型核酸におけるTer部位の存在を使用することができる。関心対象の増幅配列は、鋳型のものと同じでありうる、または、例えば、部位特異的突然変異誘発によって突然変異した遺伝子のような、その誘導体でありうる。関連局面において、固体支持体に融合されたTer結合タンパク質を含む組成物は、例えば、スライド、チップ、フィルム、ビーズ、クロマトグラフィー媒体、またはフィルターを含み得る。
【0024】
別の局面において、本発明は、好ましくは少なくとも1つのTer部位を含む核酸部分、および、生物学的分子と特異的複合体を形成する部分を含有する試薬と、生物学的分子を接触させる段階、ならびに、選択的に検出分子を含むTer結合タンパク質と複合体を接触させる段階であり、Ter結合タンパク質が試薬の核酸部分に結合するような段階、ならびに、結合されたTer結合タンパク質を検出する段階であり、Ter結合タンパク質の存在が生物学的分子の存在と相関するような段階を含む、生物学的分子を検出する方法に関連する(図8)。いくつかの態様において、検出分子は、放射性同位体、発色団、蛍光団、酵素、抗原、ハプテン、エピトープおよびその組み合わせからなる群より選択することができる。
【0025】
別の局面において、生物学的分子を、Ter結合タンパク質を用いて標識することができる。生物学的分子は、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類、脂質、またはリン脂質でありうる。生物学的分子はその後、Ter結合タンパク質が結合可能なTer部位を含むポリヌクレオチドを用いて検出することができる。本検出法は、例えばELISAアッセイ法またはウエスタンブロット解析法において、関心対象の分子を検出するためのシグナルを増幅するために使用することができる。
【0026】
さらに別の局面において、本発明は、所望の断片を作製する方法に関連する。本方法は、二重鎖DNA上のTer部位にTer結合タンパク質を結合させる段階、DNAの1つの鎖をエキソヌクレアーゼを用いて分解する段階であり、結合されたTer結合タンパク質によって、一方の鎖の酵素による分解が阻害されるような段階を含む。選択的に、残った非分解単鎖DNAを精製することができる。これは、Ter部位を含む二重鎖(ds)DNAから単鎖(ss)DNA断片を作製するために使用することができる(図9)。選択的に、単鎖DNAは、二重鎖DNAに転換することができる、または、RNAを作製するために使用することができる。RNA収量は、約90%を上回るまで、約95%まで、事実上100%に近づくまで、開始効率を改善することによって増加させることができる。
【0027】
さらに別の局面において、本発明は、プロモーターに近接したTer部位を含む核酸を提供する段階、ポリメラーゼと機能的に会合しているTer結合タンパク質と核酸を接触させる段階、および、重合反応を行う段階を含む、1つの核酸分子において2つの部位を並列させる方法に関連する。図10において示されるように、1つまたは複数のプロモーターの近接に1つまたは複数のTer部位またはその一部を含む核酸分子を、機能的なポリメラーゼ酵素が付着されたTer結合タンパク質と接触させることができる。1つまたは複数のTer結合部位は、ポリメラーゼ酵素がプロモーターに機能的に結合し、適切な補因子の存在下において重合反応を行い得るように、配置することができる。Ter結合タンパク質は、好ましくは、重合反応中Ter部位に結合したままであるため、ポリメラーゼ反応の結果、核酸分子上の選択された部位の近位にTer部位が引き寄せられる。
【0028】
さらに別の局面において、本発明は、2つまたはそれ以上のTer部位を含む核酸分子の形態を維持する方法に関連する。いくつかの局面において、本発明は、2つまたはそれ以上のTer部位を含む核酸を、多価Ter結合タンパク質と接触させる段階を含む、核酸分子の超らせん性を維持する方法を提供する。いくつかの態様において、核酸は、例えば、線状化後に超らせんのままであることが望ましいセグメントの各末端に1つずつ、2つのTer部位を含む、超らせん二重鎖DNAでありうる(図11)。双方のTer部位が結合できるように二価Ter結合タンパク質のような多価Ter結合タンパク質を加えて、その結果、一方のドメインが他方とは独立して回転できるように一方のトポロジカルなドメインが他方から隔離される。DNA断片が一旦線状化されれば、Ter部位が結合したドメインは、Ter結合部位の一方が多価Ter結合タンパク質によって解離されるまで、または、そのドメインが切断されるまで、その切断前の形態(超らせん)を維持する。本方法は、超らせん化が有益であるような適用のために有用である。いくつかの態様において、本発明は、2つまたはそれ以上のTer部位を含む断片を多価Ter結合タンパク質と接触させ、複合体を形成させる段階、および、トポイソメラーゼが断片を超らせん化するような条件下において、その複合体をトポイソメラーゼと接触させる段階を含む、線状断片を超らせん化する方法を提供する。
【0029】
さらに別の局面において、本発明は、変性条件下において、二重鎖DNA二本鎖を保持する方法に関連する。これは、環状または熱安定性のTer結合タンパク質により認識されるTer部位を、二本鎖DNAに導入することによって行うことができる。そのような熱安定性Ter結合タンパク質は、好ましくは、好熱生物体から単離することができる、または、中温性Ter結合タンパク質を環化もしくはさもなくば安定化することによって得ることができる。
【0030】
同様の局面において、本発明は、PCR産物におけるクローンのまたは「付着末端」を維持する方法であり、プライマーが「突出する」Ter部位を含むような方法を提供する(図12)。そのような二重鎖Ter部位は、プライマーの遺伝子特異的部分に関して、増幅された領域に対し遠位にあることが可能である。Ter部位は、熱安定性であるTer結合タンパク質に結合する。PCR反応が一旦完了し、除タンパク質を行えば、二重鎖DNA産物ではTer部位突出部が保持される。
【0031】
別の局面において、本発明は、物質の互いの近接度を検出または測定する方法を提供する。例えば、本発明は、関心対象の2つの分子の間の距離を測定するために、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)と組み合わせて使用することができる。本方法においては、Ter結合タンパク質を、例えばIgG分子のような、測定される物質と結合する分子と複合体化することができる。複合体化Ter結合タンパク質は、望ましい長さの核酸分子上のTer部位に結合されることが可能である。Ter部位を含む核酸分子は、分子の非Ter結合末端上において標識される。標識は、2つの核酸分子がきわめて近接にある場合、例えば、標識が増幅される、または、標識が消光されるように、標識の強度の変化が検出されるようなものが可能である。上記に説明される複合体化されたTer結合タンパク質によって、物質が結合される場合、物質の距離は、使用された標識によって生み出されたシグナルを検出した後に、核酸分子によって占有された距離を知ることによって、決定することができる。本方法は、細胞表面の受容体のクラスタリングを検出するために使用することができる。
【0032】
好ましい態様の詳細な説明
定義
以下の説明においては、組換えDNA技術において使用される多くの用語が広く利用される。そのような用語によって与えられるような範囲を含む、本明細書および特許請求の範囲の、明らかな、および、一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。ある種類の分子について言及される場合、文脈によって禁じられない限り、その用語は、言及される種類の分子、ならびに、その断片および誘導体を含むものと見なされる。
【0033】
ベクター
例えば、挿入配列、コード領域等のように、関心対象の核酸配列に有用な生物学的特性または生化学的特性を提供する核酸。例には、プラスミド、ファージ、および、インビトロもしくは宿主細胞において複製すること、もしくは、複製されることが可能な、または、望ましい核酸セグメントを宿主細胞内の望ましい部位に運搬できるような、他の核酸配列が含まれる。ベクターは、様々な配列、例えば、ベクターの本質的な生物学的機能を喪失せずに、決定可能な様式でベクター配列を操作できるような部位であり、例えば、その複製および/またはクローニングを成し遂げるために核酸断片を挿入することができるような、1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位および/または組換え部位を含み得る。ベクターは、例えばPCRのためのプライマー部位、転写および/または翻訳開始および/または調節部位、組換えシグナル、複製単位、選択可能なマーカー、ならびに当業者には既知の他の配列をさらに提供し得る。
【0034】
クローニングベクター
プラスミド、コスミド、ウイルス、またはファージのDNA、もしくは宿主細胞において自己複製することができる他のDNA分子であり、その複製およびクローニングを成し遂げるために、ベクターの本質的な生物学的機能を喪失せずにDNAがスプライシングできるようなDNA分子。クローニングベクターは、クローニングベクターによって形質転換された細胞の同定における使用に適したマーカーをさらに含み得る。マーカーは、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が可能である。
【0035】
発現ベクター
クローニングベクターと類似しているが、宿主を形質転換した後に、それにクローニングされた遺伝子の発現を増強できるようなベクター。クローニングされた遺伝子は通常、プロモーター配列のような、ある制御配列の制御下に配置される(即ち、機能的に連結される)。
【0036】
断片
断片とは、より大きな分子の切断によって得られる分子である。本発明の断片は、本発明のより大きな分子の少なくとも1つの部分を含み得る。断片は、適切に並列された場合、複合体またはより大きな分子を形成するような、一連の断片でありうる。好ましくは、一連の断片は、より大きな分子の1つまたは複数の機能を示す。
【0037】
組換え宿主
発現ベクター、クローニングベクターまたは任意のDNA分子において、クローニングされた望ましい遺伝子を含む、任意の原核生物または真核生物。「組換え宿主」という用語はまた、宿主の染色体またはゲノム上に望ましい遺伝子を含むように遺伝子操作された宿主細胞を含むことも意図される。
【0038】
宿主
複製可能な発現ベクター、クローニングベクターまたは任意のDNA分子のレシピエントである、任意の原核生物または真核生物。DNA分子は、これに限定されるわけではないが、構造遺伝子、プロモーターおよび/または複製起点を含み得る。
【0039】
プロモーター
特定の転写開始のために、RNAポリメラーゼによって認識されるDNA配列。
【0040】
遺伝子
ポリペプチド、タンパク質またはRNAのような、生物学的分子を作るのに必要な情報を含む核酸配列。これは、プロモーターおよび/または構造遺伝子、ならびに、分子の発現に関与する他の配列を含み得る。
【0041】
ポリペプチド
本明細書において使用される「ポリペプチド」という用語は、任意の長さの、連続するアミノ酸の配列を指す。「ペプチド」、「オリゴペプチド」または「タンパク質」という用語は、本明細書においては、「ポリペプチド」という用語と交換可能なように使用することができる。
【0042】
誘導体
ポリヌクレオチドの誘導体は、それが由来する、本発明のポリヌクレオチドの1つまたは複数と同一の配列中に、少なくとも7個、8個もしくは9個、またはより好ましくは少なくとも10個、11個、12個、13個、14個もしくは15個、またはさらにより好ましくは17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、もしくは25個を有する分子である。本発明のポリヌクレオチドの1つまたは複数の個々のヌクレオチドは、1つまたは複数の挿入、欠失または置換によって置き換え、誘導体を形成することができる。置き換えは、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも1つの機能を妨げないものである。置き換えは、ポリヌクレオチドの任意の部位、即ち、末端または内部のどの部位においても可能である。置き換えによって、例えば、由来するポリヌクレオチドと比較した、ポリヌクレオチドの、本発明の1つもしくは複数のタンパク質からの解離定数、および/または、ポリヌクレオチド誘導体の分解率(の増加または減少)のような、ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特徴を改変することが可能である。置き換えに適したヌクレオチドは、当業者には知られており、これに限定されるわけではないが、下記に開示されるものを含む。
【0043】
ポリペプチドの誘導体は、それが由来する本発明のポリペプチドの1つまたは複数と同一の配列中に、少なくとも4個、5個、または6個、好ましくは、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、または15個、より好ましくは25個、50個、75個、100個、125個、150個、175個、200個、または250個のアミノ酸を有する分子である。誘導体を形成するために、本発明のポリペプチドの、個々のアミノ酸の1つまたは複数を、1つまたは複数の挿入、欠失または置換によって置き換えることが可能である。置き換えは、好ましくは、本発明のポリペプチドの少なくとも1つの機能を妨げないようなものである。置き換えは、ポリペプチドの任意の部位、即ち、末端または内部のどの部位においても可能である。いくつかの態様において、1つまたは複数のモチーフ、領域またはドメインの全てまたは実質的に全てを欠失させることができる。例えば、1つまたは複数のループ(TusのL1ループのようなもの)を欠失させることができる。誘導体は、1つまたは複数のアミノ酸()天然アミノ酸および合成アミノ酸の双方)の、1つまたは複数の挿入または置換を取り込むことが可能である。
【0044】
誘導体は、それが由来する分子と同じまたは異なる特徴を有し得る。例えば、ポリヌクレオチド誘導体は、野生型Ter結合タンパク質に結合する能力を保持し得る。ポリヌクレオチド誘導体が結合される親和性は、それが由来するポリヌクレオチドが結合される親和性と同じである、より大きい、またはより小さいことが可能である。誘導体は、本発明の分子(ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)の多量体でありうる。例えば、誘導体は、本発明の分子の二量体、三量体、四量体等でありうる。多量体は、同じまたは異なる種類のものであり得る、同一の、または異なる単量体単位からなり得る。例えば、多量体は、2つの異なるポリペプチド、あるポリペプチドの2つの同じポリペプチド、およびポリヌクレオチドからなるものが可能である。
【0045】
機能的に連結された
機能的に連結されたとは、タンパク質または核酸の要素が、別のタンパク質または核酸の要素に影響する、または、影響されるように配置されることを意味する。要素は、同じまたは異なる分子上にあることが可能である。
【0046】
発現
発現とは、遺伝子がポリペプチド、タンパク質またはRNAを生産する過程である。これは、遺伝子のRNA(メッセンジャーRNA(mRNA)であり得る)への転写を含み、そのようなmRNAの1つまたは複数のポリペプチドへの翻訳を含み得る。当業者には、例えばリボゾームRNAのように、全てのRNA分子がタンパク質に翻訳されるわけではないこと、および、これらの場合における発現は、翻訳を含まないことが理解される。
【0047】
実質的に純粋
本明細書において使用される「実質的に純粋」とは、望ましい生体分子が、天然において、または、その生体分子が生産される組換え宿主において、望ましい生体分子に関連する、混在する細胞混入物を本質的に含まないことを意味する。混入細胞成分は、これに限定されるわけではないが、望ましくない核酸、タンパク質、脂質および糖質を含み得る。
【0048】
プライマー
本明細書において使用される「プライマー」とは、核酸分子の増幅または重合の間に、ヌクレオチド単量体の共有結合によって伸長される単鎖オリゴヌクレオチドを指す。
【0049】
鋳型
本明細書において使用される「鋳型」という用語は、例えば、増幅、合成または配列決定のように操作される核酸分子(単鎖、二重鎖のDNAまたはRNA)を指す。二重鎖核酸分子の場合、第一および第二の鎖を形成するためのその鎖の変性を、さらなる操作が行われる以前に行うことができる。鋳型の一部に相補的なプライマーは、適切な条件下においてハイブリダイズすることができ、その後、核酸ポリメラーゼによって鋳型の全てまたは一部に相補的な核酸分子を合成することができる。本発明に従って新たに合成された分子は、元の鋳型と比べて長さがより長い、等しい、またはより短いことが可能である。新たに合成された核酸分子の合成または伸長の期間中におけるミスマッチの取り込みは、1つまたは多くのミスマッチ塩基対をもたらす可能性がある。さらに、使用されるプライマーは、それがハイブリダイズする鋳型配列と厳密に一致する必要はない。プライマーにおけるミスマッチの塩基は、配列における部位特異的突然変異をもたらすために使用されうる。したがって、合成された核酸分子は、鋳型に対して厳密に相補的である必要はない。
【0050】
取り込み
本明細書において使用される「取り込み」という用語は、核酸分子またはプライマーの一部となることを意味する。
【0051】
増幅
本明細書において使用される「増幅」とは、例えばDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、および/または逆転写酵素のような核酸ポリメラーゼの使用によって、ヌクレオチド配列のコピー数を増加させるための、任意のインビトロ法を指す。核酸の増幅は、核酸分子またはプライマーへのヌクレオチドの取り込みをもたらし、それにより、核酸鋳型に対して相補的な(または、実質的に相補的な)、新しい核酸分子が形成される。新たに形成された核酸分子およびその鋳型は、さらなる核酸分子を合成するための鋳型として使用することができる。本明細書において使用されるように、ある増幅反応は、多くの核酸複製サイクルからなることが可能である。DNA増幅反応は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。あるPCR反応は、例えば、5「サイクル」〜100「サイクル」の、DNA分子の変性および合成からなることが可能である。
【0052】
オリゴヌクレオチド
「オリゴヌクレオチド」とは、1つのヌクレオチドのペントースの3'部位と、隣接ヌクレオチドのペントースの5'部位との間のホスホジエステル結合によって結合可能なヌクレオチドの共有結合配列を含む、合成分子または天然分子を指す。
【0053】
ヌクレオチド
本明細書において使用される「ヌクレオチド」とは、塩基-糖-リン酸の組み合わせを指す。ヌクレオチドは、核酸配列(DNAおよびRNA)の単量体単位である。ヌクレオチドという用語は、dATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTPのようなデオキシリボヌクレオシド三リン酸、またはその誘導体を含む。そのような誘導体は、例えば、[α-S]dATP、7-デアザ-dGTPおよび7-デアザ-dATPを含む。本明細書において使用されるようなヌクレオチドという用語はまた、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)およびその誘導体も指す。ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の実例となる例は、これに限定されるわけではないが、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITP、およびddTTPを含む。本発明によると、「ヌクレオチド」は、非標識であってもよく、または、公知の技術によって検出可能なように標識されてもよい。検出可能な標識には、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識および酵素標識が含まれる。
【0054】
熱安定性(thermostable)
本明細書において使用される「熱安定性」とは、熱による不活性化に対して耐性のTer結合タンパク質を指す。Ter結合タンパク質は、核酸分子上のTer部位に結合する。中温性Ter結合タンパク質については、熱処理によって結合が低減される(一過的にまたは永続的に)可能性がある。本明細書において使用されるように、熱安定性Ter結合活性は、中温性Ter結合タンパク質よりも、熱不活性化に対してより耐性がある。しかし、熱安定性Ter結合タンパク質とは、熱不活性化に対して完全に耐性のタンパク質を指すことを意図するものではなく、したがって、熱処理によってTer結合活性がある程度まで低減される可能性がある。
【0055】
ハイブリダイゼーション
「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリダイズする」という用語は、2つの相補的な単鎖核酸分子(RNAおよび/またはDNA)が対合し、二重鎖分子を与えることを指す。本明細書において使用されるように、塩基対合が完全に相補的ではないにも関わらず、2つの核酸分子はハイブリダイズすることができる。したがって、ミスマッチの塩基は、当技術分野において既知の適切な条件が使用されるという条件で、2つの核酸分子のハイブリダイゼーションを妨げるものではない。
【0056】
ライゲーション
第一ヌクレオチド配列と第二ヌクレオチド配列の間における、共有結合による接着。
【0057】
標的ポリヌクレオチド配列
同定されるべきヌクレオチド配列の全てまたは一部であり、それに相補的でありハイブリダイズする結合ポリヌクレオチド配列を調製させるのに充分な範囲で知られているようなポリヌクレオチド配列。標的ポリヌクレオチド配列は通常、約12個〜1,000個またはそれ以上のヌクレオチド、好ましくは15個〜50個のヌクレオチドを含むと考えられる。標的ポリヌクレオチド配列はより大きな分子の一部であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0058】
終結配列
終結配列は、1つまたは複数のTer結合タンパク質またはペプチド、および/または複製終結タンパク質またはペプチドによって認識されることが可能な(即ち結合されることが可能な)ヌクレオチドの配列を含む核酸分子である。
【0059】
Ter部位
本発明に従うTer部位は、真核生物および原核生物(グラム陽性微生物およびグラム陰性微生物を含む)内で見出されるものを含む、任意の提供源に由来する任意の複製終結配列である。本発明ではまた、複製終結タンパク質またはペプチドのような、1つまたは複数のTer結合タンパク質によって認識および結合されることが可能であるような、Ter部位の任意の一部が意図される。Ter部位の一部は、Ter部位の約6個、7個、8個またはそれ以上のヌクレオチドからなり得るが、全部位よりも少ない。いくつかの局面において、Ter部位は、二重鎖核酸組成物、例えば、その一方の鎖が表1において挙げられる配列を含み、もう一方の鎖が第一の鎖に対して相補的な配列を有するような二重鎖分子、または、表1からの配列を含む単鎖核酸、または、表1における配列に対して相補的な配列を含む単鎖分子を含み得る。本発明はまた、そのようなTer結合タンパク質またはペプチドが結合する能力が増加したまたは減少した、突然変異Ter部位または誘導Ter部位(ならびにその一部および組み合わせ)をも意図する。本発明における使用のための突然変異Ter部位もしくは誘導Ter部位を、(関心対象の配列において欠失、置換および挿入を作製するための)標準の突然変異誘発技術によって作製することができる、または、望ましい誘導Ter部位を、標準の化学合成技術(例えば、オリゴヌクレオチド合成)によって作製することができる。本発明において使用するためのTer部位は、様々な生物体およびプラスミドにおいて同定されている。表1は、大腸菌および関連種、およびプラスミドおよび多くのバチルス(Bacillus)種に由来する代表的な数の部位のヌクレオチド配列を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1において示される様々なTer部位のヌクレオチド配列は、ある部位が高度に保存されていることを示す。大腸菌においては、残基6におけるG、および、部位8から始まり部位19で終結する11塩基は、TerF配列の部位18におけるT/G修飾を唯一例外として、全てのTer部位において保存されている。バチルスにおいては、表1における配列のヌクレオチド3〜5、7、13、15、16〜20、および22〜25が高度に保存されている。
【0062】
本発明は、任意の提供源に由来するTer部位およびTer結合タンパク質の使用を意図する。いくつかの態様において、Ter部位およびTer結合タンパク質は、例えば、例としてバチルス・ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)のような好熱生物のような原核生物に由来することが可能である。他の提供源には、腸内細菌(Enterobacteriae)または真核生物が含まれる。
【0063】
配列の一部の除去によって、または置換もしくは突然変異によって改変され、かつ(1)Ter結合タンパク質への結合能を保持するTer部位は、本発明の一部として含まれる、および/または、(2)方向性を保持するTer部位は、本発明の一部として含まれる。適切な機能のために必要な、Ter部位の機能的なドメインおよび領域は、Coskun-AriおよびHill、J. Biol.Chem. 17 272:26448〜26456(1997)において説明されている。Ter結合タンパク質がより低い親和性で結合するように改変されたTer部位は、例えば、複製終結の操作が望ましいような反応において同様に有用である(Coskun-AriおよびHill、1997;SharmaおよびHill、Mol.Microbiol. 18:45〜61(1995))。
【0064】
本発明のTer部位を含む核酸は、例えばホスホロアミダイト法を用いた化学合成、または増幅技術、即ちPCRなどの、任意の従来的な技術を用いて調製することができる。選択的に、検出可能な分子を、Ter部位を含む核酸に付着させることができる。適切な検出分子は当業者に知られており、これに限定されるわけではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-グルクロニダーゼのような酵素、蛍光部分、発色団、抗体によって認識されるハプテンおよび/またはエピトープを含む。検出分子は、例えば、化学的に修飾された(例えば、蛍光標識された)ヌクレオチドを増幅反応中に使用することにより、合成中に付着することができる。いくつかの例においては、例えば検出分子を核酸に化学的に結合させることにより、核酸の合成後に検出分子を導入することが望ましい可能性がある。
【0065】
Ter部位を含むオリゴヌクレオチドは、単鎖または二重鎖でありうる。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドのある部分がオリゴヌクレオチドの別の部分にハイブリダイズして、Ter部位の全てまたは一部を含むオリゴヌクレオチドの二重鎖部分を形成するように、オリゴヌクレオチドは、ヘアピンまたはステムループの形態でありうる。
【0066】
Ter結合タンパク質
Ter結合タンパク質の一例は、複製終結タンパク質(RTP)である。RTPは、二重鎖終結配列に結合した場合に複製を停止させる、配列特異的DNA結合タンパク質である。大腸菌に由来するRTPは、Tusと(tauとも)呼ばれる36,000 Daのタンパク質である。Tusタンパク質は、単量体としてTer部位に結合する。Tusは、インビトロにおいて3×10-13Mまで(緩衝液条件に依存する)の解離定数で、TerB部位に著しく強固に結合する。Tusの他のTer部位への結合は、10-10〜10-11Mの桁数の解離定数で、幾分強固さが劣る。本発明の好ましいTer結合タンパク質は、Ter部位から、約10-9〜約10-15M、約10-10〜約10-14M、または約10-11〜約10-13Mの解離定数を有する可能性がある。
【0067】
Tus-TerB複合体は、最大550分の半減期を有し、非常に安定である。Tus遺伝子のDNA配列は周知である(Hidaka, M.ら、Purification of a DNA replication terminus (ter) site-binding protein in Escherichia coli and identification of the structural gene、J.Biol.Chem. 264(35):21031〜21037(1989)、およびHill, T.M.ら、Tus, the trans-acting gene required for termination of DNA replication in Escherichia coli, encodes a DNA-binding protein、Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A. 86(5):1593〜1597(1989)を参照のこと)。機能的なTusタンパク質を欠く大腸菌株は周知である。Ter部位との複合体における本タンパク質の結晶構造が作製されている(Bussiereら、Molecular Microbiology 31(6):1611〜1618(1999))。
【0068】
ある適用における使用について、結合する能力を有したままであるまたは改変された結合能を有する、Ter結合タンパク質の変異体および変種は、本発明の一部である。そのような変異体は、特に、E49、H50、K89、T136、K175、I177、R198、R232、V234、K235、Q237、Q252、A254、R288、K290などの、DNA結合ドメインにおいて突然変異を有するものを含む(Skokotasら、J.Biol.Chem. 270:30941〜30948(1995))。いくつかのTer結合タンパク質の機能的ドメインが規定されており、Terへのその結合能を増加または減少するように改変されうるが、これらは例えば、とりわけ、H31、K32、L33、L34、V35、A36、R37、L62、V97、L98、C99、Y100、Q101、V102、D103、N104、S106、Q107、L110、V161、L162、H136、D164、P165、A166、T167、L168、R169、F170、R241、V242、W243、Y244、K245、G246、D247、Q248、L259、I260、A261、L262、N264、R265、D266、N267、G268、A269、G270、V271、P272、D273、V274、G275を含む複製フォーク阻害ドメインにおける変異体である(Dugginら、J.Mol.Biol. 286:1325〜1335(1999))。例えば、化学物質による変性に対して耐性のある、環化Ter結合タンパク質は、そのような条件の際に二本鎖DNAが変性するのを阻害するために使用することができる。環化タンパク質はさらに、二重鎖核酸を検出するために、標識されることができる。
【0069】
熱安定性生物に由来するTer結合タンパク質、および、好低温菌または好冷菌に由来するものもまた含まれる。
【0070】
本発明は、修飾Ter結合タンパク質をも含む。修飾Ter結合タンパク質は、全長Ter結合タンパク質、または、Ter部位への結合能を保持するTer結合タンパク質の一部でありうる。修飾部分は、例えば当業者に既知の結合試薬を用いて結合することによるように、共有結合によってTer結合タンパク質に付着されることが可能である。適切な結合試薬は、例えばPierce Chemical Co.、Rockford、ILから、商品として入手可能である。
【0071】
いくつかの態様において、修飾部分はポリペプチドであることが可能であり、ポリペプチドのペプチド骨格は、Ter結合タンパク質のペプチド骨格と隣接し、Ter結合タンパク質と修飾ポリペプチドとの間において融合タンパク質を形成することができる。融合タンパク質の構築は、当技術分野においては日常的に行われる。任意の適したポリペプチドを、Ter結合タンパク質の全てまたは一部と融合することができる。ポリペプチドは、Ter結合タンパク質のN末端、Ter結合タンパク質のC末端、またはTer結合タンパク質の内部の部位において融合することができる。Ter結合タンパク質の結合能が実質的に低減されない限り、融合体の任意の部位を使用することができる。本文脈において、実質的に低減されたとは、修飾Ter結合タンパク質が、修飾Ter結合タンパク質を検出させるのに十分な親和性でTer部位に結合しないことを示す。
【0072】
本発明における使用のために、任意の望ましい修飾基を、融合タンパク質の化学的結合、および/または、調製によって、Ter結合タンパク質に付着することができる。いくつかの態様において、修飾基は、受容体のためのリガンドでありうる。本発明における使用のためのリガンドは、これに限定されるわけではないが、トランスフェリン受容体、血清アルブミン受容体、アシアロ糖タンパク質受容体、アデノウイルス受容体、レトロウイルス受容体、CD4、リポタンパク質受容体、免疫グロブリンFc受容体、α-フェトタンパク質受容体、LDLR様タンパク質(LRP)受容体、アセチル化LDL受容体、マンノース受容体、またはマンノース-6-リン酸受容体を含む、細胞表面受容体のためのリガンドでありうる。多くの他の細胞表面受容体およびそれらの関連リガンドは、当業者には既知であり、これらのリガンドを含む修飾Ter結合タンパク質は本発明の範囲内にある。受容体およびリガンドの詳細なリスト、および、分子を細胞に輸送するためのそれらの使用については、Klavenessらに公布された、米国特許第6,331,289号、および、Heartleinらに発行された同第6,262,026号を参照のこと。細胞表面受容体のためのリガンドを含む修飾Ter結合タンパク質は、Ter部位を含む核酸を細胞に輸送することが可能な手段として使用することができる。核酸-Ter結合タンパク質-リガンドの複合体を形成するために、Ter結合タンパク質、および、1つまたは複数の受容体のためのリガンドを含むタンパク質を、Ter部位を含む核酸と接触させることができる。複合体はその後、適切な受容体を発現する細胞との接触を行わせ、結果的に複合体を標的細胞に取り込ませることができる。適切な受容体は、広範な種類の異なる細胞型上に存在し、Ter部位を含む核酸が広範な種類の細胞型に取り込まれるのを可能にする。
【0073】
いくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、検出分子を含み得る。適切な検出分子は、当業者に知られており、これに限定されるわけではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-グルクロニダーゼのような、検出可能な活性を有する酵素、蛍光部分、発色団、抗体によって認識されるハプテンおよび/またはエピトープを含む。いくつかの好ましい態様において、検出分子は、蛍光部分、発色団、酵素、ハプテンおよび/またはエピトープなどの組み合わせを含み得る。検出分子は、化学的結合によって、および/または、融合タンパク質の構築によって、共有結合的にTer結合タンパク質に付着することが可能である。
【0074】
いくつかの態様において、本発明の修飾Ter結合タンパク質は、細胞標的化配列を含み得る。そのような配列は、Ter結合タンパク質、および、そのタンパク質に結合された任意の核酸を、ある生物体または細胞における、1つまたは複数の特定の部位に指向させる。いくつかの態様において、細胞標的化配列は核局在化配列であり、Ter結合タンパク質および結合された核酸は標的細胞の核に指向することが可能である。細胞標的化配列はまた、例えば、エンドソームおよび/.またはリソソームにおいて生じる分解のような、核酸分子の分解を低減するのを、または妨げるのを助ける可能性がある。適切な細胞標的化配列が当業者には知られており、任意の提供源、例えばウイルスタンパク質に由来することが可能である。適切な細胞標的化配列の例について、ならびに、本発明のTer結合タンパク質を修飾するために使用することができる適切なリガンドおよび他のポリペプチド部分の例については、Wooらに発行された米国特許第6,177,554号を参照のこと。
【0075】
いくつかの態様において、本発明は、Ter結合タンパク質および関心対象のポリペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質を提供する。Ter結合タンパク質の存在によって、Ter部位を含むオリゴヌクレオチドを用いた、関心対象のポリペプチドまたはタンパク質の検出および/または親和性精製が許容される。例えば、Ter部位を含むオリゴヌクレオチドは、例えばビーズ、クロマトグラフィー支持体などのような、固体支持体に付着することができる。Ter結合部分および関心対象のポリペプチドを含む融合タンパク質はその後、融合タンパク質のTer結合部分のオリゴヌクレオチドへの結合を許容するような条件(pH、イオン強度、温度など)下において固体支持体と接触させることができる。任意の混在分子を固体支持体から洗浄し、結合された融合タンパク質を溶出することができる。本発明の融合タンパク質は、選択的に、タンパク質分解酵素のための1つまたは複数の切断部位を含み得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の切断部位は、融合タンパク質のTer結合部分と1つまたは複数の付加的なポリペプチド部分との間に位置することが可能である。切断部位を含む融合タンパク質の構築は、当技術分野においてはよく知られており、例えば、Riggsら、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons, Inc.、第16章、16.4.1〜16.4.4、1997を参照のこと。
【0076】
いくつかの態様において、本発明の修飾Ter結合タンパク質は、複数のTer結合部分を含み得る。2つまたはそれ以上のTer結合部分が連結される場合、それらは同じまたは異なるTer結合タンパク質に由来し、Ter部位に対して同じまたは異なる親和性を有することが可能である。Ter結合タンパク質を化学的に結合することによって、または、融合タンパク質を作製することによって、複数のTer結合タンパク質を連結することができる。多価Ter結合タンパク質は、例えば、Ter結合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームの直列反復配列をクローニングすること(リンカーを用いて、または用いずに)によって、または、2つの分子を架橋させることによって作製することができる。複数のTer結合部分を含む修飾Ter結合タンパク質はまた、例えば検出分子、リガンドおよび他の修飾のような、付加的な修飾をさらに含むことも可能である。
【0077】
いくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、複数の修飾を含み得る。例えば、あるTer結合タンパク質は、細胞表面受容体のためのリガンドおよび検出分子を含み得る。この種の形状は、修飾Ter結合タンパク質の取り込みを検出させるものであり、好ましくは、修飾Ter結合タンパク質とそれが結合される核酸との複合体の検出能を提供するものである。
【0078】
固体支持体およびアレイ
本発明に従って使用するための支持体は、1つもしくは複数のTer部位もしくはその一部を含む核酸分子、および/または、Ter結合タンパク質の全てもしくは一部を含む分子を付着するのに適した任意の支持体またはマトリクスでありうる。そのような分子は、当技術分野においては既知の任意の技術、または任意の技術の組み合わせによって、本発明の支持体に加えるまたは(共有結合的または非共有結合的に)結合させることができる。本発明の支持体は、シリコン、バイオチップ、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、ポリスチレン(マイクロタイタープレートを含む)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、デキストラン、セファロース、寒天、デンプンおよびナイロンを含み得る。本発明の支持体は、ビーズ、フィルター、膜、シート、フリット、プラグ、カラムなどを含む、任意の形態または形状にあることが可能である。固体支持体はまた、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、96ウェルプレート、および384ウェルプレートのような、(マイクロタイタープレートのような)マルチウェルチューブをも含み得る。好ましいビーズは、ガラス、ラテックスまたは磁気材料(磁気ビーズ、常磁性ビーズまたは超常磁性ビーズ)から作製される。
【0079】
分子の固体支持体への付着は、当技術分野においてはよく知られている。例えば、米国特許第5,384,261号は、基質上にポリマーの大アレイを形成する方法および装置を意図するものであり、それが開示する全てについてその全体を参照として本明細書に組み入れられる。本発明の好ましい局面に従い、基質を、それにチャンネルを有するチャンネルブロックに接触させる。選択した試薬をチャンネルに流し、回転段階によって基質を回転させ、その工程を繰り返し、基質上にポリマーのアレイを形成させる。本方法は、light-directed法と組み合わせることができる。
【0080】
米国特許第5,744,305号は、例えば、選択的に除去することができる保護基によって、異なる反応性を有する基質表面の十分に規定された領域が作製されることを示す、別の典型例となる開示である。保護基は、特定の波長および強度の電磁放射のような、特定の活性化因子を適用することによって、表面から選択的に除去することができる。曝露された領域における保護基を取り除くために、表面の選択された領域を、特定の活性化因子に曝露することができる。
【0081】
保護基は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸を用いたペプチド合成、デオキシリボ核酸およびリボ核酸を用いたヌクレオチド合成、ならびにオリゴ糖合成など、固相オリゴマー合成に関連して使用される。保護基は、望ましくない反応から基質表面を保護することに加え、単量体の反応性末端を阻害し、自己重合を妨げる。例えば、アミノ酸のN-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルのような、活性化されたアミノ酸のアミノ末端への保護基の付着によって、ペプチド合成中、ある単量体のアミノ末端が、別の単量体の活性化エステル部分と反応することが妨げられる。または、保護基は、あるアミノ酸のカルボキシル基に付着され、この部位における反応を妨げることが可能である。ほとんどの保護基は、あるアミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかに付着することができ、化学合成の性質によって、どの反応基が保護基を必要とするかが決定される。同様に、例えばリン酸-トリエステル結合化学法を用いた合成期間中における、ヌクレオシドの5'-ヒドロキシル基への保護基の付着によって、あるヌクレオシドの5'-ヒドロキシル基が別のヌクレオシドの3'活性化リン酸-トリエステルと反応することが妨げられる。
【0082】
特定の使用に関わらず、保護基は、別の試薬との反応から分子上の部分を保護するために使用される。本発明の保護基は以下の特徴を有する:選択された試薬が、保護基が付着される基を修飾することを妨げる;合成反応条件に対して安定である(即ち、分子に付着されたままである);残りの構造に有害に影響を及ぼさない条件下において取り除かれることが可能である;および、一旦取り除かれれば、表面または表面結合オリゴマーとは、評価できるほど反応しない。適切な保護基の選択は、当然のことながら、単量体単位およびオリゴマーの化学的な性質、ならびに、それに対して保護をすべき特定の試薬に依存する。
【0083】
保護基は光活性化可能である場合がある。光化学反応性の保護化合物の特性および使用については概説されている。参照として本明細書に組み入れられる、McCrayら、Ann.Rev. of Biophys. and Biophys. Chem.(1989) 18:239〜270を参照のこと。光感受性の保護基は、電磁波スペクトルの紫外部(UV)または可視部における照射によって除去可能なものであり得る。保護基は、スペクトルの近紫外部または可視部における照射によって除去可能なものであり得る。活性化はまた、局所的な加熱、電子ビームリソグラフィー、レーザー励起、微小電極を用いた酸化または還元などのような、他の方法によって行うこともできる。スルフォニル化合物は、電子ビームリソグラフィーに適した反応基である。酸化または還元による除去は、好ましくは、活性化のために望ましい、事前に規定された表面領域に指向させた微小電極を用いた、電流源に対する保護基の曝露によって達成される。他の方法は、本開示の観点から使用することができる。全てではないが多くの光除去可能な保護基は、近紫外部および可視部における照射を吸収する芳香族化合物となる。適した光除去可能な保護基については、例えば、参照として本明細書に組み入れられる、McCrayら、Patchornik、J.Amer.Chem.Soc. (1970) 92:6333、および、Amitら、J.Org.Chem.(1974) 39:192において説明されている。
【0084】
好ましい局面において、本発明の方法は、タンパク質および/もしくは核酸分子(RNAまたはDNA)のアレイ、または、他の分子、化合物、および/もしくは基質のアレイを調製するために使用することができる。そのようなアレイは、マイクロプレート、スライドガラス、または標準のブロット膜上にて形成することができ、アレイのフォーマットおよびデザインによって、マイクロアレイまたは遺伝子チップと呼ぶことができる。そのようなアレイの使用には、遺伝子の発見、遺伝子発現プロフィール決定、遺伝子型決定(SNP解析、薬理ゲノミクス、毒物遺伝学)、および、ナノテクノロジーデバイスの調製が含まれる。
【0085】
核酸アレイの合成および使用、ならびに、一般的に、核酸の支持体への付着については説明されている(例えば、米国特許第5,436,327号、同第5,800,992号、同第5,445,934号、同第5,763,170号、同第5,599,695号および同第5,837,832号を参照のこと)。様々な試薬を基質上の位置的に規定された部位に付着させるための自動化工程は、Pirrungら、米国特許第5,143,854号、および、Barrettら、同第5,252,743号において提供されている。例えば、ジスルフィド修飾オリゴヌクレオチドは、ジスルフィド結合を用いて、固体支持体に共有結合的に付着することができる(Rogersら、Anal.Biochem. 266:23〜30(1990)を参照のこと)。さらに、ジスルフィド修飾オリゴヌクレオチドは、固相合成法を用いたペプチド核酸(PNA)でありうる(Aldrian-Herradaら、J.Pept.Sci. 4:266〜281(1998)を参照のこと)。したがって、1つまたは複数のTer部位またはその一部を含む核酸分子を、1つまたは複数の支持体に加えることができる(または、そのような支持体上のアレイにおいて加えることができる)。
【0086】
固体支持体へのポリペプチドの付着は、当技術分野においてよく知られている。例えば、Deutschら、米国特許第4,615,985号では、ナイロン支持体へのタンパク質の付着について説明している。Ikedaら、米国特許第4,582,622号では、磁気粒子へのタンパク質の付着について説明しており、Burtonら、米国特許第5,998,155号では、固体支持体へのビオチン結合タンパク質の付着について説明しており、ならびに、Wagner、米国特許第6,120,992号では、固体支持体への核酸結合タンパク質の付着、および、核酸を結合するためのそれらの後の使用について説明している。本発明のTer結合タンパク質は、固体支持体に付着させ、後に、Ter部位を含む核酸分子を結合させるために使用することができる。
【0087】
本質的に、本発明においては、任意の考え得る支持体を使用することができる。支持体は、粒子、鎖、沈殿物、ゲル、シート、管類、球体、容器、毛管、パッド、薄片、フィルム、プレート、スライド等として存在する、生物学的、非生物学的、有機、無機、またはそれらの任意のものの組み合わせでありうる。支持体は、ディスク、四角、球状、環状等のような、任意の好都合な形状を有し得る。支持体は好ましくは平らなものであるが、様々な代替の表面形状を取ることが可能である。例えば、支持体は、合成または他の反応のために使用することができる、突起させたまたは窪ませた領域を含み得る。支持体およびその表面は、好ましくは、本明細書において説明される反応をその上で実行するための強固な支持体を形成する。支持体およびその表面はまた、適切な光吸収特性を提供するように選択される。例えば支持体は、重合ラングミュアー-ブロジェット膜、機能性ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO2、SIN4、修飾シリコン、または、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)フッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、またはその組み合わせのような、広範な種類のゲルもしくはポリマーのうち任意のものでありうる。他の支持体材料は、本開示の概説により当業者には容易に明らかとなる。好ましい態様において、支持体は板ガラスまたは単結晶シリコンである。
【0088】
したがって、本発明は、支持体に付着された核酸分子のアレイを調製する方法を提供する。いくつかの態様において、これらの核酸分子は、核酸分子における1つまたは複数の(例えば、1個、2個、3個、または4個の)部位において、1つまたは複数のTer部位を有する。いくつかの付加的な態様において、ある核酸分子を直接支持体に、または支持体の特定の部分に付着することができ、1つまたは複数の付加的な核酸分子が、支持体に直接付着された核酸分子への付着を介して、支持体に間接的に付着される。そのような場合には、支持体に直接付着される核酸分子が、その周りに核酸アレイを構築することができるような核形成部位を提供する。
【0089】
ある局面において、本発明は、Ter部位を含有する核酸分子を含む支持体を提供する。いくつかの態様において、これらの支持体の核酸分子は、少なくとも1つのTer部位を含むと考えられる。これらの結合された核酸分子は、例えば、他の核酸分子(例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において結合された核酸分子にハイブリダイズする核酸分子)、および、結合された核酸分子に対する結合親和性を有するタンパク質を同定するために有用である。Ter部位は、2つの別々のオリゴヌクレオチドから構成されることが可能である、または、ステムループもしくはヘアピンの形状にある、単一のヌクレオチドでありうる。ステムループオリゴヌクレオチドおよびヘアピンオリゴヌクレオチドは、Ter部位の全てまたは一部を含むオリゴヌクレオチドの相補的領域のハイブリダイゼーションを行わせるような条件下において、機能的なTer部位を形成することができる。これは、Ter結合タンパク質を含む分子の可逆的結合のために、特に有用である。Ter結合タンパク質を含む分子は、Ter部位の全てまたは一部を含む、ステムループオリゴヌクレオチドまたはヘアピンオリゴヌクレオチドの二重鎖部分に結合させることが可能であり、その後、Ter結合タンパク質がTer部位に結合することのないように、オリゴヌクレオチドのハイブリダイズされた部分が全てまたは部分的に単鎖となるように、条件(pH、塩イオン強度、温度等)を改変することによって、オリゴヌクレオチドから溶出させることが可能である。
【0090】
いくつかの態様において、核酸分子が支持体に結合されたままで、これらの結合された核酸分子から発現産物を生産することもできる。したがって、本発明の組成物および方法は、発現産物およびこれらの発現産物によって生産された産物を同定するために使用することができる。
【0091】
さらに、支持体に付着された核酸分子を、これらの支持体から解離させることができる。核酸分子を解離する方法は、制限酵素による分解、組換え、および、結合された核酸分子にハイブリダイズした核酸分子の解離を誘導するために条件(例えば、温度、塩濃度等)を改変する段階を含む。したがって、本発明の方法は、核酸分子の単離のために、核酸分子が結合された支持体を使用することを含む。
【0092】
核酸分子を支持体に結合することによって形成することができる組成物の例は、当技術分野においてはしばしば「DNAマイクロアレイ」または「ゲノムチップ」と呼ばれる、「遺伝子チップ」である(その開示がその全体を参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,412,087号および同第5,889,165号、およびPCT刊行物国際公開公報第97/02357号、同第97/43450号、同第98/20967号、同第99/05574号、同第99/05591号、および同第99/40105号を参照のこと)。本発明の様々な態様において、これらの遺伝子チップは、本明細書において説明される二次元および三次元の核酸アレイを含み得る。
【0093】
本発明の核酸アレイの指向可能性とは、特定のヌクレオチド配列に結合する分子または化合物がアレイに付着できることを意味する。したがって、タンパク質および他の核酸のような成分を、本発明の核酸アレイにおける特定の場所/部位に付着することができる。
【0094】
選択法
ベクターおよび/または関心対象の核酸へのTer部位の全てまたは一部の取り込みによって、Ter部位を含まない(負の選択)か、または関心対象の配列を含む(正の選択)、望ましい核酸の選択がなされることが可能である。図2に関して、機能的Ter部位(黒い菱形と結び付けられた黒い丸として示される)を含むベクターを調製する。そのようなベクターは、許容宿主、即ち、プラスミドの複製を阻害することができるRTPを発現しない宿主において複製されることが可能である。望ましい核酸セグメント(矢印として示される)が、ベクターに挿入されるものである。核酸セグメントの挿入および/または除去を容易にするため、ベクターは選択的に、ある部位(制限部位、組換え部位など)を含み得る(例えば、図2におけるRS1およびRS2)セグメントをベクターに挿入するために、1つまたは複数の反応(組換え反応および/または分解およびライゲーション反応)を行った後、分子集団が作製される。図2において表される組換え反応の場合、集団は、望ましい産物、および、未反応の開始ベクター、および、挿入配列を含有する部分的に反応したベクターを含む。未反応のベクターおよび別々に反応したベクターは双方とも、機能的なTer部位を含むことに留意されたい。反応混合物で制限宿主(ベクターの複製を阻害することができるRTPを発現したもの)を形質転換する場合、望ましい(機能的Ter部位を欠く)産物を受け取った細胞のみがベクターを複製し、生き残ることができる。これは、負の選択、即ち、Ter部位の存在を選択しないことの一例である。
【0095】
図3および図4に関しては、選択的に望ましい方向にある、挿入配列の存在についての正の選択が示される。図3においては、関心対象の遺伝子が、Ter部位の一部の配列(黒丸として示される)を含むように修飾される。ベクターは、Ter部位の残りの部分を含むように調製される。残りの部分は、(図3において示されるように)真中で切断することができるような、完全なTer部位として提供することができる、または、単に残りの配列として提供することができる。ベクターはその後、線状ベクターを生じるように切断される。挿入配列がベクターに連結(ライゲーション)される場合、それは、いずれかの方向ではたらきうる。一方の方向においては、機能的なTer部位が生み出され(プラスミドB)、もう一方では、Ter部位は生じない(プラスミドA)。反応混合物がRTPを発現する宿主細胞に導入される場合、機能的なTer部位を含まないベクター(プラスミドA)を受け取る細胞のみが、ベクターを複製し、成長することができる。これは、挿入配列の特定の方向についての正の選択の一例である。
【0096】
図4に関して、切断することができる機能的なTer部位を含むベクターが調製される。関心対象の遺伝子を、切断されたベクターに連結し、RTPを発現している細胞を形質転換するために反応混合物を使用する。挿入配列を含む(および、したがって、Ter部位を欠く)ベクターを受け取る細胞のみが、RTP+宿主において(プラスミドAおよびBを)複製することができる。これは、挿入配列についての正の選択の一例である。自己連結するプラスミド(プラスミドC)は、RTP+宿主においては複製しない。
【0097】
検出法
1つのTer結合部位を含む、Ter結合タンパク質および/または融合タンパク質の、Ter部位に対する高親和性は、Ter部位を含む分子、および/または、Ter結合タンパク質を含む分子を検出するために、有利に使用されうる。検出可能な分子を、Ter部位を含む分子に、Ter結合タンパク質を含む分子に、またはその両方に付着させることができることは、当業者には理解される。本発明のある検出法の一例は、図8において提供される。関心対象の核酸(NA)は、例えば、ノーザンブロット法またはサザンブロット法におけるように、固体支持体に付着することができる。Ter部位(黒い四角)、および、関心対象の配列に特異的にハイブリダイズする配列を含むプローブは、標的配列にハイブリダイズされることが可能である。プローブは選択的に、プローブの二重鎖部分にTer部位が含まれるような、ステムループ構造および/またはヘアピンを形成する配列を含み得る。ハイブリダイゼーション後に、プローブおよび標的配列を含む複合体を、Ter結合タンパク質(TBP)と接触させる。Ter結合タンパク質は選択的に、例えば、蛍光団、発色団、または酵素などの検出分子(X)を含み得る。選択的に、Ter結合タンパク質は、検出分子を含み得ず、代わりに、Ter結合タンパク質に対する抗体(選択的に標識される)を用いて検出することができる。
【0098】
本発明の検出法は、これに限定されるわけではないが、サザンブロット法、ノーザンブロット法、ウエスタンブロット法、およびインサイチューハイブリダイゼーションを含む、様々な適用において使用することができる。
【0099】
精製法
1つのTer結合部位を含むTer結合タンパク質および/または融合タンパク質の、Ter部位に対する高親和性を、様々な精製方法論において有利に使用することができる。Ter部位を含む核酸を含有する分子は、固体支持体に結合されることが可能であり、溶液から、Ter結合タンパク質の全てまたは一部を含む分子を結合させるために使用することができる。または、Ter結合タンパク質の全てまたは一部を含む分子は、固体支持体に付着されることが可能であり、Ter部位の全てまたは一部を含む分子を結合させるために使用することができる。
【0100】
いくつかの態様において、Ter部位を含む核酸(例えばプラスミド)を、ベクターとして使用することができる。この種の態様において、ベクターにおけるTer部位の存在を、核酸の操作を容易にするために使用することができる。例えば、図6Aに関して、プラスミドのスタッファー断片(波線)上にTer部位(黒い四角)を含む核酸を、制限酵素部位(RE)において、制限酵素によって分解し、Ter結合タンパク質を通して固体支持体に結合させることによって、反応混合物から非分解プラスミドおよび部分的に分解されたプラスミドを除去することができる。Ter部位を有さない核酸(図6Aにおいて、正しく分解されたプラスミド)は結合されないため、ライブラリの構築のようなさらなる使用のために、容易に利用することができる。
【0101】
図6Bは、Ter部位(黒い四角)を含むベクターが、制限部位および/または組換え部位(図6BにおけるRE)に隣接する関心対象の配列(プロモーター、遺伝子等)を含み得る、関連局面を示す。核酸を適切な酵素(制限酵素および/またはリコンビナーゼ)と接触させた後、Ter結合部位を含む固定化タンパク質と溶液を接触させることによって、未反応のベクター、または部分的に反応したベクターを、溶液から取り除くことができる。これによって、Ter結合部位を含まない産物分子の精製が容易になる。産物分子(即ち挿入配列)は後に、必要に応じてさらに操作することができる。
【0102】
さらなる態様は、図7において提供される。本態様において、関心対象の配列を、Ter部位(黒い四角)を含む鋳型から増幅、またはコピーする。鋳型分子は、例えば関心対象の配列を含むプラスミドまたは断片のような、任意の種類の核酸でありうる。十分な数のコピーが調製された後、Ter結合部位を含む固定化タンパク質(TBP)と混合物を接触させることによって、反応混合物から鋳型分子を除去することができる。
【0103】
したがって、ある局面において、本発明は、(1)1つまたは複数のTer結合タンパク質が結合される支持体を提供する段階、(2)支持体に結合されたTer結合タンパク質への、分子または化合物の結合を容易にする条件下において、支持体に結合されたTer結合タンパク質に対する結合親和性を有する分子または化合物を含む組成物と支持体を接触させる段階、(3)結合された分子または化合物の解離を容易にするために、条件を改変する段階、および、(4)解離された分子または化合物を収集する段階を含む、親和性精製法を提供する。
【0104】
いくつかの態様において、本発明は、Ter結合タンパク質の全てまたは一部を含む分子を精製する方法を提供する。この種のある態様において、例えばオリゴヌクレオチドが付着される磁気ビーズのような、Ter部位を有する核酸を含む化合物と、融合タンパク質を含む溶液を接触させることによって、Ter結合タンパク質を含む融合タンパク質を精製することができる。結合後、化合物(ビーズ)を洗浄し、融合タンパク質を溶出することができる。
【0105】
したがって、別の局面において、本発明は、(1)少なくとも1つのTer部位を含む核酸分子が結合された支持体を提供する段階、(2)支持体に結合された核酸分子への分子または化合物の結合を容易にするような条件下において、支持体に結合された核酸分子に対する結合親和性を有する分子または化合物を含む組成物と支持体を接触させる段階、(3)結合された分子または化合物の解離を容易にするために、条件を改変する段階、および(4)解離された分子または化合物を収集する段階を含む、親和性精製法を提供する。
【0106】
核酸を操作する方法
Ter結合タンパク質のTer部位に対する高親和性によって、以前には可能でなかった、核酸分子の様々な操作が可能になる。例えば、図9に関して、Ter結合タンパク質のTer部位に対する親和性を、例えばエキソヌクレアーゼ分解から核酸分子の特定の一部を保護するために使用することができる。これにより、核酸の所望の断片の調製が許容される。図9においては、Ter部位(黒い四角)を含む核酸の断片をTer結合タンパク質(TBP)と接触させ、複合体を形成させる。断片をその後、例えば3'→5'エキソヌクレアーゼのようなエキソヌクレアーゼと接触させる。エキソヌクレアーゼが、分解が停止されるTer結合タンパク質に達するまで、断片は分解される。これによってより小さな断片の生産がもたらされ、この生産はTer部位にて終結する。図9において示されるように、Ter結合タンパク質を除去することができ、単鎖を作製するために、断片の重なった部分を変性させることができる。単鎖は選択的に、プライマー(例えば、Ter部位の配列を有するもの)をハイブリダイズさせ、ポリメラーゼ酵素およびヌクレオシド三リン酸によってプライマーを伸長させることによって、二重鎖に転換することができる。その結果、定まった末端を有する、より小さな断片が生産される。
【0107】
いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の核酸分子において、2つまたはそれ以上の部位を並列させる方法を提供する。その最も単純な形態においては、2つのTer部位を含む核酸分子を、多価Ter結合タンパク質(例えば二価Ter結合タンパク質)と接触させる。多価Ter結合タンパク質は、複数の部位にて核酸に結合し、それによって、その部位が並列される。いくつかの態様において、2つまたはそれ以上の核酸を並列させることができる。Ter部位を含む第一の核酸を、多価Ter結合タンパク質と接触させる。多価Ter結合タンパク質は、第一の核酸とTer部位にて結合する。第一の核酸とTer結合タンパク質との複合体は選択的に、結合していないTer結合タンパク質および核酸から精製されうる。複合体はその後、Ter部位を含む第二の核酸と接触させることができる。多価Ter結合タンパク質はその後、第二の核酸と結合し、それによって、その部位が並列される。本方法は、例えばライゲーションおよび/または組換え反応のような、次なる反応のために部位を集める目的で使用することができる。
【0108】
図10に関して、本発明を用いて、線状核酸分子の2つの末端を集めることができる。二重鎖DNAは、DNA/タンパク質の相互作用および転写が許容されるように適切に配置された、Ter部位を一方の末端「A」に、および、RNAポリメラーゼのためのプロモーター(矢印およびT7によって示される)をTer部位の近くに含む。Ter結合タンパク質(TBP)は、例えば融合タンパク質を構築することによって、または、Ter結合タンパク質をポリメラーゼに化学的に結合することによって、プロモーターを認識するRNAポリメラーゼ(T7)と機能的に会合している。Ter結合タンパク質-RNAポリメラーゼ複合体が線状二重鎖DNAに加えられる場合、Ter結合タンパク質はTerに結合し、RNAポリメラーゼは、近くのプロモーターに結合する。一定の条件下におけるヌクレオチドの添加によって、二重鎖DNAをもう一方の末端に向かって進むRNAポリメラーゼによる転写がもたらされる。結合されたTer結合タンパク質は、「A」末端を「B」末端に向かって引き寄せる。「A」と「B」がきわめて近接にある場合、2つの末端は、より効率的にアニールまたは連結することが可能である。約250 塩基対(bp)〜250,000 bp、好ましくは、1,000 bp〜100,000 bpの核酸分子の末端を並置することができる。ほんの二、三例を挙げると、大腸菌のRNAポリメラーゼホロ酵素、T7 RNAポリメラーゼ、または、SP6 RNAポリメラーゼのような、DNA鎖上の特定の部位に指向させることが可能なポリメラーゼを使用することができる。このようにして、線状DNAの末端における分子内結合を増加させ、キメラ分子の形成を減少させることができる。
【0109】
クローニングにおけるその使用に加え、核酸分子における部位を並列させる能力を、ナノデバイスの構築および使用において用いることが可能である。別のタンパク質(例えば、ポリメラーゼ)が特定の部位を核酸分子上のどこか遠位の地点まで引き寄せる間に、Ter結合タンパク質が、核酸分子上の特定の部位を保持する能力は、ナノデバイスの個々の鎖を望ましいように動かすために用いることができる。
【0110】
図11に関して、本発明は、核酸の形態を維持するために使用されうる。例えば、2つのTer部位(黒い四角)を有する超らせん核酸分子を、二価Ter結合タンパク質(TBP-TBP)と接触させることができる。Ter結合タンパク質は、核酸を強固に保持し、2つの部位間の領域の形態を維持する。図11において例証されるように、核酸は選択的に、切断し、分子を線状化することができる;しかし、分子のTer部位間の領域は、超らせん形態に維持される。いくつかの態様において、末端においてTer部位を有する線状分子は、最初に、2つの部位を結合するために、二価Ter結合タンパク質と分子を接触させ、次に核酸分子の超らせん化をもたらす条件下においてトポイソメラーゼと分子を接触させることによって、超らせん化することができる。これは、例えばPCR断片のような線状断片のトランスフェクションのために有用である。断片は、Ter部位を取り込むプライマーを用いて調製することができる。増幅後、断片を二価Ter結合タンパク質と、続いて、トポイソメラーゼおよび補因子と接触させ、その結果超らせんPCR断片の作製をもたらすことができる。
【0111】
図12に関して、本発明は、Ter部位を含む核酸分子において規定された突出部を作製するために使用されうる。Ter部位の一方の鎖を含む第一の単鎖核酸を、Ter部位の他方の鎖を含む第二の核酸と接触させる。2つの鎖がアニールした後、再構成されたTer部位に結合するTer結合タンパク質を加える。Ter部位に対して3'側の部位において第一の核酸にアニールするプライマーを用いたプライマー伸長反応を行う。伸長は、Ter結合タンパク質-Ter複合体においてニックを残して停止される。Ter結合タンパク質および第二の核酸は、定められた突出部を残して除去される。
【0112】
いくつかの態様において、本発明は、通常は二本鎖の変性をもたらすような条件下において、核酸を二本鎖で維持する方法を提供する。1つまたは複数のTer部位を含む核酸を、Ter部位を認識するTer結合タンパク質と接触させることができる。選択的に、Ter結合タンパク質は、熱安定性Ter結合タンパク質でありうる。熱安定性Ter結合タンパク質は、好熱菌から単離することができる、または、非好熱菌に由来するTer結合タンパク質を修飾することによって調製することができる。そのような修飾は、ジスルフィド架橋を形成するためにシステイン残基を導入するように、Ter結合タンパク質において点突然変異を導入する段階、二価性架橋試薬を用いてTer結合タンパク質を化学的に架橋する段階、Ter結合タンパク質を環化する段階などを含む。
【0113】
キット
別の局面において、本発明は、本発明に関連して使用することができるキットを提供する。本発明の本局面に従うキットは、1つまたは複数の本発明の核酸分子またはベクター、1つまたは複数のプライマー、1つまたは複数のTer結合タンパク質および/または本発明の修飾Ter結合タンパク質、本発明の支持体、1つまたは複数のポリメラーゼ、1つまたは複数の逆転写酵素、1つまたは複数の組換えタンパク質(または本発明の方法を実行するための他の酵素)、1つまたは複数の緩衝液、1つまたは複数の界面活性剤、1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼ、1つまたは複数のヌクレオチド、1つまたは複数の終結物質(例えばddNTP)、1つまたは複数のトランスフェクション試薬、ピロホスファターゼ、1つまたは複数のタンパク質分解酵素などからなる群より選択される、1つまたは複数の成分を含有し得る、1つまたは複数の容器を含み得る。
【0114】
広範な種類の本発明の核酸分子またはベクターを、本発明に関して使用することができる。さらに、本発明の調整可能性によって、これらの核酸分子およびベクターを、広範な方法において組み合わせることができる。本発明のキットにおいて提供することができる核酸分子の例は、1つまたは複数のTer部位の全てまたは一部を含むもの、および選択的に、1つまたは複数のプロモーター、シグナルペプチド、エンハンサー、リプレッサー、選択マーカー、転写シグナル、翻訳シグナル、(例えば、配列決定またはPCRのための)プライマーハイブリダイゼーション部位、組換え部位、制限部位およびポリリンカー、サプレッサーtRNAの存在下における翻訳の終結を抑制する部位、サプレッサーtRNAコード配列、融合タンパク質の調製のためのドメインおよび/または領域(例えば6 Hisタグ)をコードする配列、複製起点、テロメア、セントロメアなどを含む。同様に、本発明のキットにおいてライブラリを提供することができる。これらのライブラリは、複製可能な核酸分子の形態にあることが可能である、または、複製起点とは関連しない核酸分子を含み得る。当業者には認識されるように、複製起点とは関連しないライブラリの核酸分子、および他の核酸分子は、複製起点を有する他の核酸分子に挿入することができる、または、キットの消耗性の成分となると考えられる。
【0115】
本発明のキットにおいて提供されるベクターは著しく変化することが可能である。ほとんどの例においては、これらのベクターは、1つの複製起点、少なくとも1つの選択可能なマーカー、および少なくとも1つのTer部位を含むものであり、1つまたは複数の組換え部位を含み得る。例えば、本発明のキットにおいて提供されるベクターは、2つの異なる部位における核酸分子の挿入を可能にするような、4つの別々の組換え部位を有し得る。本発明のキットにおいて提供されるベクターの他の特質は、本明細書の他の部分において説明される。
【0116】
本発明のキットはまた、プライマーと共に提供されることが可能である。これらのプライマーは一般に、特定のヌクレオチド配列を有する分子にアニールするように設計される。例えば、これらのプライマーは、特定の核酸分子を増幅するためのPCRにおける使用のために設計することができる。さらに、本発明のキットと共に提供されるプライマーは、ベクター配列にハイブリダイズするように設計された配列決定プライマーでありうる。したがって、そのようなプライマーは一般に、ベクターに挿入された核酸分子を配列決定するためのキットの一部として提供される。
【0117】
1つまたは複数(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、8個、10個、15個)の緩衝液を、本発明のキットにおいて提供することができる。これらの緩衝液は、作用濃度にて提供することができる、または、濃縮された形態において提供し、後に作用濃度にまで希釈することができる。これらの緩衝液はしばしば、緩衝液自体または緩衝液中の分子のいずれかの活性の増強または安定化のために、塩、金属イオン、補因子、金属イオンキレート試薬等を含むと考えられる。さらに、これらの緩衝液は、乾燥形態または水性形態において提供することができる。緩衝液が乾燥形態で提供される場合、それらは一般に、使用前に水に溶解される。本発明のキットにおける使用に適した緩衝液の例は、以下の実施例において説明される。
【0118】
本発明との使用に適した支持体(例えば、上記にてより詳細を説明される、固体支持体、半固体支持体、ビーズ、マルチウェルチューブ等)も、本発明のキットと共に提供することができる。
【0119】
本発明のキットは、上記にて説明される、または、本明細書の他の部分で説明される成分の実質的に任意の組み合わせを含み得る。当業者には認識されるように、本発明のキットと共に提供される成分は、キットについて意図される使用によって異なる。したがって、キットは、本明細書において説明される様々な機能を行うように設計することができ、そのようなキットの成分はそれに応じて変化する。
【0120】
関連技術分野における当業者には、本明細書において説明される方法および適用への他の適切な改変および適応が、当業者に既知の情報を考慮して、本明細書において含まれる本発明の説明から容易に明らかとなること、ならびに、本発明または任意のその態様の範囲から逸脱せずに行い得ることが理解される。これで本発明は詳細に説明され、これによって例証のためにのみ含まれ、本発明を限定することを意図されない、以下の実施例を参照することにより、本発明はより明らかに理解される。
【0121】
実施例
実施例1
プラスミドにおけるRTP/Ter相互作用の使用
RTP/Ter相互作用による複製機能の終結を利用して、プラスミドにおけるTer配列の存在を選択しないことができる。例えば、2つのTer配列を、各Ter部位の非許容側が複製起点に対して近接して位置するように逆方向反復配列として配置された特定の核酸セグメントに挿入することができる。複製複合体は、Ter部位間のプラスミドのセグメントを複製することができない。したがって、プラスミドは、複製されず、失われる。複製は、起点から、複製複合体が終結配列に達するまで、双方向に進行し得る。機能的なRTPを生産する宿主細胞においては、プラスミドの複製はTer部位において停止され、プラスミドは複製されない。機能的なRTPを生産しない宿主細胞においては、プラスミドが複製される。
【0122】
望ましいならば、プラスミドは、例えば選択可能なマーカーをコードする、1つまたは複数の付加的な核酸セグメントを含み得る。選択可能なマーカーは、機能的なRTPを生産する宿主においては複製されないTer部位間の位置を含む、プラスミド上の任意の部位に配置することが可能である。プラスミドは、RTP-宿主株においては複製されることが可能であり、RTP+株においては複製されない。プラスミドの存在は、例えば選択可能なマーカーが抗生物質耐性を与える遺伝子である場合は、抗生物質のように、適切な負の選択を用いて、RTP-株において選択することができる。他のマーカー遺伝子は、例えば、栄養マーカー、重金属、ハロゲン化有機物、浸透ショック、pHショック、温度ショック、分離後宿主殺し、対立遺伝子付加、即ち、ccdB、ccdA、制限遺伝子セット、および条件致死sacBを含む。
【0123】
Ter部位を含むプラスミドのもう一つの適用は、組換えクローニング法におけるものである。本方法のためには、プラスミドに組換え部位(RS1およびRS2)を備えることが可能である。図2において示される、この種のプラスミドは、組換え反応においてRS1およびRS2と反応する、組換え部位を含む核酸と反応させることが可能である。その結果、Ter部位を含むセグメントの、核酸に由来するセグメントとの置き換えが生じる。得られる分子はTer部位を含まないため、RTP+宿主細胞において複製される。RS1およびRS2の前者または後者のみの反応から生じるいかなる中間体分子も、Ter部位をさらに含み、RTP+宿主においては複製されない。
【0124】
実施例2
固体支持体への核酸の付着
RTPまたはTer結合タンパク質によって認識されるTer部位を有する核酸は、Ter結合タンパク質を介して、固体支持体に付着することができる。例えば、Ter結合タンパク質は、共有結合によって固体支持体に付着することができる。いくつかの態様において、Ter結合タンパク質上の反応基を、タンパク質を固体支持体に付着するために利用することができる(図5を参照のこと)。例えば、固体支持体は、タンパク質上に存在するアミンに結合されるアルデヒド官能基を含むように調製することができる。Ter結合タンパク質の固体支持体への結合のために適した試薬および技術は、Hermanson、Bioconjugate Techniques、Academic Press Inc.、San Diego、CA、1996において見出すことができる。Ter結合タンパク質のTer部位への結合は、その後、Ter部位を含む分子を固体支持体に付着するために使用することができる。
【0125】
本方法は、例えばポリリシン被覆ガラスを使用する従来法のように複数点ではなく、1点において核酸が付着されるため、結合された核酸がプローブおよび操作に対してよりアクセス可能になるという点において、当技術分野において知られている標準法を超えた利点を示す。また、固体支持体環境に導入される以前に、標的核酸をTer部位を含む核酸にアクセス可能とすることもあり得る。その後、Ter結合タンパク質を、Ter部位を含む核酸の集団の一部または全体にでさえ結合させることが可能である。選択的に、Ter部位を含む核酸の標的核酸との相互作用が、Ter結合タンパク質への結合に必要となる可能性がある。
【0126】
実施例3
平滑末端断片の定方向クローニング
本発明は、平滑末端核酸断片の定方向クローニングのための材料および方法を提供する。平滑末端断片は、関心対象の核酸標的のPCR増幅によって作製することができる。いくつかの態様において、関心対象のDNA標的を増幅するために使用されるプライマーの1つが、終結配列の一部に相当する配列を取り込むような増幅反応を行うことができる。増幅反応産物は、一方の末端に終結配列の一部を有する平滑末端核酸断片となる。そのような断片を定方向クローニングするために、それ自体も終結部位の一部を含むようなベクターに断片を連結することができる。
【0127】
いくつかの好ましい態様において、ベクターによって含まれる終結部位の一部、および、PCR断片によって含まれる終結部位の一部を組み合わせ、1つの完全な終結部位を形成させることができる(図3を参照のこと)。この状況においては、平滑末端断片は、ベクターに一方向においてのみクローニングすることができる。得られるプラスミド上の完全な終結部位配列の存在によって、複製終結タンパク質の存在下におけるプラスミドの複製が著しく無効になると考えられる。プラスミドが挿入された宿主細胞の複製は、選択可能なマーカー、即ち、抗生物質耐性マーカーをコードする、プラスミドの存在に依存するため、完全な終結部位が再構成されたプラスミドを含む宿主細胞の複製は、終結部位が再構成されなかった細胞と比較して、激しく損なわれる(図3を参照のこと)。
【0128】
したがって、ライゲーション後、2つの種類のベクター、即ち、完全な終結部位配列を有するベクター、および、終結部位配列の2つの分断された部分を含むベクターが形成される。形質転換後、2つの宿主細胞集団が形成される。一方の集団は完全な終結部位配列を含有するベクターを含み、他方の集団は分断された終結部位配列を有するベクターを含む。選択培地上において成長させた後、分断された終結部位配列を含む細胞は、完全な終結部位配列を含むものを上回る成長を示す。
【0129】
ベクターを、組換え部位に近接するTer部位の一部を導入するように構築することができる。いくつかの好ましい態様において、上記に説明される終結部位の一部を、組換え部位の全てまたは一部と組み合わせることができる。この種の態様において、平滑末端断片のベクターへの挿入によって、機能的な組換え部位を含むベクターの生産がもたらされる。適切な方向において平滑末端断片を有するベクターを含むコロニーを同定した後、組換えクローニング技術を用いて、ベクターをさらに操作することができる。
【0130】
定方向クローニングは、関心対象のDNAセグメントのベクターにおける方向特異的な成立を与える。セグメントの方向によって、どの配列決定プライマーを使用するか、および、プラスミドが有する発現シグナルと相対的にどこにオープンリーディングフレーム核酸があるかなど、次なる反応のための情報が提供されるため、断片の方向が知られているということによって、与えられたクローン構築物の価値が著しく増加する。
【0131】
組換え体についての正の選択が望ましい状況においては、関心対象の遺伝子を、スタッファー断片が終結配列を中断するように、終結配列を含むベクターにクローニングすることができる。関心対象の遺伝子によるスタッファーの置き換えによって、終結配列が中断される。挿入配列を有さないクローニング部位の再ライゲーションによって、プラスミドを複製不可能に変える終結部位が再構成されるため、スタッファーを有さない非組換えベクターは、細胞への形質転換の際に成立しない(図4を参照のこと)。したがって、クローニングされた挿入配列の方向付け、および、挿入配列を含むベクターについての選択は、同じ配列要素によって、同じ段階において達成することができる。
【0132】
実施例4
選択ベクターの調製
望ましい方向にある挿入配列を有するベクターの選択におけるRTP/Ter相互作用の実用性を示すため、以下のようにベクターを構築した。pDONR201(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)の骨格を、双方のattLセグメントのコア近接点においてSpeI部位を導入したプライマーを用いたPCRによって増幅した。大腸菌に由来するTerBの5'配列および3'配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、β-ガラクトシダーゼ遺伝子の5'末端および3'末端に付け加えた。PCRにおいて使用されたプライマーは、前述のプラスミド骨格への単位複製配列のクローニング、およびその後の、構築物からのβ-ガラクトシダーゼの除去を可能にする、制限酵素部位を導入した。β-ガラクトシダーゼ遺伝子を切り出した後、得られた線状平滑末端ベクターをゲル精製した(図3および図14)。最終ベクターは、β-ガラクトシダーゼの切り出し後、分断されたTerB部位を含んでいた。TerB部位の5'末端(図3における菱形および線)は、表1におけるTerB配列のヌクレオチド1〜15を含んでいた一方、3'末端(図3における丸および線)は、ヌクレオチド16〜21を含んでいた。
【0133】
TerB要素の3'側部分をスペクチノマイシン遺伝子の3'末端に付け加えたプライマーを用いたPCRによって増幅された、スペクチノマイシン耐性をコードする遺伝子を用いて、被験挿入配列を構築した。表1のTerB配列のヌクレオチド16〜21の逆相補鎖を、スペクチノマイシン遺伝子の3'末端に加えた。さらに、平滑末端制限酵素部位を5'側の発現シグナルおよび3'側の逆向きTer配列に対して遠位に導入した。これらの制限酵素を用いて、単位複製配列を分解し、平滑末端断片を生じさせた。
【0134】
ライゲーション:
ベクター1μlまたは10μlのいずれかに、挿入DNA 5μlを加え、反応溶液20μl 中において16℃にて2.5時間連結させた。さらに、ベクター1μlまたは10μlのいずれかを、挿入DNAを加えずに、同じ反応条件に供した。フェノール/クロロホルムを用いて反応溶液を抽出し、エタノール沈殿し、10μl中にて再構築した。ライブラリ効率100μlのDH5a(Invitrogen、Carlsbad、CA)を、製造業者のプロトコールに従い、各ライゲーション液によって形質転換し、カナマイシンを含むLB培地上に播いた。
【0135】
2つの明確な別個のコロニー形態、大および小。結果は表2において示される。
【0136】
【表2】
【0137】
8個の「挿入配列なし」コロニー、12個の1:5(ベクター:挿入配列比)コロニー、および21個の10:5コロニーから、プラスミドDNAを調製した。いずれのコロニー形態をも、DNA調製のために選択した。挿入配列の存在および方向について診断的である制限酵素によるDNA分解を行った。コロニー形態を予測因子として用いると、93%(25/27)が望ましい方向を有していた。コピー数の減少か、成長速度の低下、またはその両方によって、望ましくない方向の83%(10/12)からのプラスミド収量は、比較的少量であった(図13Aおよび図13Bを参照のこと)。
【0138】
実施例5
トランスフェクション効率の改善および配列の標的化
別の局面において、本発明は、トランスフェクション効率を改善するための材料および方法を提供する。いくつかの好ましい態様において、1つまたは複数のTer部位を含む核酸は、核酸上に含まれる配列のトランスフェクション効率および/または発現を改善するために、Ter結合タンパク質と接触させることができる。いくつかの態様において、細胞の取り込み、細胞局在化、核酸の安定性、またはその組み合わせを改善する、1つまたは複数の修飾を含むように、Ter結合タンパク質を修飾することができる。いくつかの態様において、Ter結合タンパク質を、1つまたは複数の細胞の受容体によって認識される、1つまたは複数のリガンドを含むように修飾することができる。例えば、Ter結合タンパク質は、これに限定されるわけではないが、アミノ酸配列アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)を含有するタンパク質またはペプチドを含む、1つまたは複数のインテグリン結合リガンドを含むように誘導されることが可能である。そのようなタンパク質またはペプチドは、そのようなタンパク質またはペプチドとTer結合タンパク質の間の融合タンパク質の、主要配列の一部でありうる。他の態様において、そのようなタンパク質またはペプチドは、従来的なタンパク質-タンパク質リンカーを用いて、Ter結合タンパク質に付着させることができる。例えば、内在のアミノ基を介して1つのRGD配列を含むタンパク質またはペプチドは、グルタルアルデヒドのような架橋試薬を用いて連結することができる。他の態様において、1つのRGD配列を含むタンパク質またはペプチドは、チオール部分またはヒドロキシル部分のような、他の反応性の機能的部分を介して、Ter結合タンパク質に連結することができる。反応性の機能的部分の連結は、タンパク質化学の技術分野においては日常的に行われることが、当業者には理解される。
【0139】
この種のいくつかの態様において、核酸分子は、複数のTer部位を含み得る。例えば、線状核酸は、分子の各末端に1つのTer部位を有し得る。核酸は、1つまたは複数の修飾を有する、1つまたは複数のTer結合融合タンパク質と接触させることができる。いくつかの態様において、Ter結合融合タンパク質は、核酸の取り込みおよび細胞標的化を増強するように設計された、2つまたはそれ以上の異なる修飾を含み得る。例えば、あるTer結合融合タンパク質は、受容体リガンドを含むように修飾することができ、別のTer結合融合タンパク質は、核局在化配列を含むように修飾することができる。各種類のものが1つの核酸分子に結合するように、核酸を双方の修飾タンパク質と接触させることができる。分子の細胞へのトランスフェクションは、受容体リガンドの存在によって増強され、発現は、核局在化配列に仲介される、核への核酸の輸送によって増強される。
【0140】
実施例6
インビボにおいて線状DNA分子の末端を保護するためにTer結合タンパク質/Terを用いて、細胞における遺伝子ターゲティング/ノックアウトを改善する
本発明のある態様において、Ter部位を含む核酸を、機能的Ter結合タンパク質と接触させ、安定な核酸-タンパク質複合体を形成させることができる。安定な複合体はその後、従来的な技術を用いて、レシピエント宿主細胞にトランスフェクションすることができる。この種の態様は、例えば、例として胚性幹細胞のような細胞におけるノックアウトを作製するためのように、遺伝子ターゲティング/ノックアウトの効率を改善するために有用となり得る。いくつかの好ましい態様において、核酸は、核酸の各末端上にあり得る1つまたは複数のTer部位と共に提供されうる。この種の分子を、Ter結合タンパク質および/またはTer結合融合タンパク質と接触させる場合、安定な複合体は、核酸の各末端に1つまたは複数のTer結合タンパク質を含み得る。核酸の末端におけるTer結合タンパク質の存在によって、細胞取り込み後の核酸分子の安定性が増強されうる。この種の態様における使用のためのTer結合タンパク質は、例えば核標的化配列のような、細胞内標的化配列を含み得る。
【0141】
ある態様において、2つのTer部位を有する核酸は、線状分子の形態を固定するように、多価Ter結合タンパク質と接触してもよい。選択的に、例えば1つまたは複数のトポイソメラーゼ酵素および適した補因子を用いて分子を処理することによって、形態を改変するために分子を処理することができる。
【0142】
実施例7
生物学的分子の検出において使用するための検出分子を有するTer結合融合体の使用
ある態様において、本発明は、生物学的分子の検出において使用するための材料および方法を含む。いくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、検出分子を含み得る。適切な検出分子には、これに限定されるわけではないが、発色団、蛍光団、および酵素などが含まれる。いくつかの好ましい態様において、検出分子は、その活性を測定することができる任意の酵素でありうる。適した酵素には、これに限定されるわけではないが、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、およびβ-グルクロニダーゼなどが含まれる。いくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、同じまたは異なることが可能である、複数の検出可能な部分を含み得る。
【0143】
ある態様において、検出される生物学的分子は核酸であり得る。いくつかの態様において、核酸を、フィルターおよび/またはアレイのような固体支持体に固定することができる。関心対象の核酸を検出するために、関心対象の核酸にハイブリダイズすることができる配列を含むプローブ核酸に、Ter部位を含む配列を備えることができる。Ter部位は、ヘアピン分子の形態において提供することができる、または、その代わりに、Ter部位の1つの鎖を、関心対象の核酸にハイブリダイズできる核酸に取り込むことができる、および、核酸に取り込まれたTer部位の鎖に相補的な配列を有する第二のオリゴヌクレオチドを別個の分子として提供することができる。この種の態様において、第二のオリゴヌクレオチドを、プローブ核酸の標的核酸へのハイブリダイゼーションの前または後のいずれかに提供することができる。Ter部位を含むプローブ分子の標的分子へのハイブリダイゼーション後、Ter部位を含むプローブ分子は、検出可能な部分を含むTer結合タンパク質を用いて検出することができる。本態様は図8において例示される。
【0144】
実施例8
Ter結合タンパク質で被覆した固体支持体の使用
1つまたは複数のTer結合タンパク質が付着された固体支持体は、混合物からTer部位を含む分子を精製するために使用することができる。混合物は、例えばPCR反応のような望ましい反応の結果でありうる。PCR産物または開始鋳型は、Ter部位を含み得る。反応完了後、Ter結合タンパク質を含む固体支持体(例えば、磁気ビーズ)と混合物を接触させることによって、反応混合物の残りから、Ter部位を含む分子を分離することができる。混合物の残りの成分をその後、ビーズから洗浄し、固体支持体からTer部位を含む分子を溶出させることができる。本態様は、様々な生物学的分子を、それらを含む混合物から分離するために使用することができる。他の態様は、これに限定されるわけではないが、ほんの二、三例を挙げると、挿入配列からベクターを分離する段階;反応成分から配列決定産物、例えばPCR反応またはエキソヌクレアーゼ反応におけるdNTPまたはdNMPからDNAを分離する段階;ミニプレップからプラスミドを分離する段階を含む。
【0145】
本発明のいくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、1つまたは複数の固体支持体に、共有結合によって付着することができる。固体支持体は、当技術分野において習慣的に使用される任意の形態のものが可能であり、例えば、フィルター、ファイバー、膜、スライドガラス、ビーズ、および/または96ウェルプレートの形態にあることが可能である。
【0146】
Ter部位を有する核酸を精製するために、固体支持体に付着されたTer結合タンパク質と核酸を含む溶液を接触させ、複合体を形成させる。Ter部位を含まない核酸は結合されず、結合された核酸から分離することができる(図6Aおよび図6Bを参照のこと)。本態様は、例えばミニプレップにおける、細胞溶解物からのプラスミドの精製において有用となる。
【0147】
実施例9
核酸分子における部位を並列させ、産物の合成を増大させるためのTer結合タンパク質/Terの使用
さらに別の局面において、本発明は、核酸分子における部位を並列させる方法に関連する。ある態様において、2つのTer部位を含む核酸を、多価の(即ち二価の)Ter結合タンパク質と接触させる。核酸分子上の各結合部位は、多価Ter結合タンパク質上の部位に結合し、その結果、2つの部位の並列がもたらされる。核酸は選択的に、例えば組換え反応、エンドヌクレアーゼ反応、ライゲーションなどのような、付加的な操作を受けることが可能である。
【0148】
別の態様において、本発明は、分子内の部位を望ましい空間関係に移動させるために使用することができる。例えば、本発明は、2つの部位(例えば線状核酸分子の2つの末端、「A」および「B」)を並列させるために使用することができる(図10を参照のこと)。図10は、核酸分子に沿って転位することができる酵素を用いた、本発明のある態様を表す。図10は、転位酵素としてポリメラーゼ酵素を示すものであるが、転位酵素として、例えばヘリカーゼのような他の酵素も使用できることは、当業者には理解される。
【0149】
二重鎖DNAは、DNA/タンパク質相互作用および転写が許容されるように適切に配置されたTer部位を一方の末端「A」に、および、RNAポリメラーゼのためのプロモーターをTer部位の近くに含む。Ter結合タンパク質は、例えば融合タンパク質を構築することによって、プロモーターを認識するRNAポリメラーゼと機能的に会合している。Ter結合タンパク質-RNAポリメラーゼ複合体を線状二重鎖DNAに加える場合、Ter結合タンパク質はTerに結合し、RNAポリメラーゼは近くのプロモーターに結合する。一定の条件下におけるヌクレオチドの添加により、二重鎖DNAを他方の末端に向かって進むRNAポリメラーゼによる転写がもたらされる。結合されたTer結合タンパク質は、「A」末端を「B」末端に向かって引き寄せる。「A」と「B」がきわめて近接にある場合、2つの末端は、より効率的にアニールまたは連結されることが可能である。約250 塩基対(bp)〜250,000 bp、好ましくは1,000 bp〜100,000 bpの核酸分子の末端を並置することができる。ほんの二、三例を挙げると、大腸菌RNAポリメラーゼホロ酵素、T7 RNAポリメラーゼ、またはSP6 RNAポリメラーゼのような、DNA鎖上の特定の部位に対して指向させることが可能なポリメラーゼを使用することができる。このようにして、線状DNAの末端における分子内の結合を増加させることができ、キメラ分子の形成を減少させることができる。
【0150】
この種の態様の別の局面は、Ter結合タンパク質-ポリメラーゼ融合体の相互作用の結果として観察される、再開始速度(およびそれによる、産物の合成)の増加である。第一産物の合成の完了後、融合タンパク質のポリメラーゼ部分は、鋳型分子を解離し得る。Ter結合部分は、鋳型を解離せず、その結果、次なる開始および重合のサイクルが始まり得るプロモーターにポリメラーゼが即時に配置されることになる。
【0151】
実施例10
単鎖核酸の産生をモニタリングするためのTer結合タンパク質の使用
Ter結合タンパク質が、単鎖Ter部位には結合できないということを、二重鎖DNAから単鎖DNAへの転換、またはその逆について、モニタリングまたは選択を行うために使用することができる。二重鎖DNAの形成をモニタリングする段階は、二重鎖PCR産物の形成を検出するために、または、二重鎖DNA産物の形成の、リアルタイムの検出および測定のために使用することができる。例えば、標的配列の増幅を、Ter配列を取り込むプライマーを用いて行うことができる。プライマーはまた、蛍光分子のような検出可能な標識をも含み得る。増幅は、検出可能な標識の蛍光を消光できる部分を選択的に含み得る、Ter結合タンパク質の存在下において行うことができる。Ter結合タンパク質はプライマーに結合しないため、開始時蛍光は、Ter結合タンパク質によって実質的に改変することができない。増幅が進むにつれ、二重鎖Ter部位が形成されてTer結合タンパク質が結合する。Ter結合タンパク質上の消光部分の存在によって、蛍光の減少が生じる。
【0152】
別の態様において、蛍光が消光されるように配置された蛍光団およびクエンチャー(消光剤)の双方を含むような、Ter部位を含むプライマーを用いて、増幅反応を行うことができる。エキソヌクレアーゼを含むように修飾されたTer結合タンパク質を、増幅反応に加える。増幅は二重鎖Ter部位を形成しながら進行し、Ter結合タンパク質は二重鎖部位に結合し、エキソヌクレアーゼを、二重鎖核酸からクエンチャーを取り除かせる定位置につかせ、それにより、二重鎖核酸の形成の機能として観察される蛍光を増加させる。
【0153】
別の態様において、少なくともTer部位部分を含む少なくとも部分的には単鎖の核酸を、固体支持体に結合することができる。結合された核酸は、同様に少なくとも部分的には単鎖の第二の核酸と接触させることができ、2つの核酸のハイブリダイゼーションによって、Ter結合タンパク質に結合されることが可能なTer部位の形成がもたらされるように、単鎖部分は、第一の核酸のものと相補的な配列を含む。Ter結合タンパク質は選択的に、例えば検出可能な標識を含み得るような、修飾Ter結合タンパク質でありうる。
【0154】
実施例11
単鎖核酸を作製するためのTer結合タンパク質の使用
さらに別の局面において、本発明は、Ter部位を含む二重鎖(ds)DNAから単鎖(ss)DNAを作製する方法に関連する(図9を参照のこと)。本方法は、二重鎖DNA上のTer部位にTer結合タンパク質を結合させる段階、結合されたTer結合タンパク質によって一方の鎖の酵素による分解が阻害されるような、エキソヌクレアーゼによってDNAの一方の鎖を分解する段階、および、残りの非分解単鎖DNAを精製する段階を含む。
【0155】
さらに別の局面において、本発明は、所望の断片を作製する方法に関連する。本方法は、二重鎖DNA上のTer部位にTer結合タンパク質を結合させる段階、エキソヌクレアーゼによってDNAの一方の鎖を分解する段階であり、結合されたTer結合タンパク質によって、一方の鎖の酵素による分解が阻害されるような段階を含む。選択的に、残りの非分解単鎖DNAを精製することができる。これは、Ter部位を含む二重鎖(ds)DNAから単鎖(ss)DNA断片を作製するために使用することができる(図9)。選択的に、単鎖DNAは、二重鎖DNAに転換することができる。
【0156】
実施例12
核酸の形態を調節するための、Ter結合タンパク質の使用
さらに別の局面において、本発明は、核酸分子の形態を調節する方法に関連する。ある局面において、本発明は、線状DNAの超らせん性を維持する方法であり、二重鎖、超らせんDNAが、線状化後に超らせんのままであることが望ましいセグメントの各末端に、2つのTer部位を1つずつ含むような方法を提供する(図11)。二価Ter結合タンパク質のような多価Ter結合タンパク質を、双方のTer部位が結合されることが可能であり、その結果、一方のドメインが他方とは独立して回転できるように、一方のトポロジカルなドメインが他方から隔離されるように加える。二価Ter結合タンパク質は、例えば、リンカーを用いて、または用いずに、Ter結合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームの直列反復配列をクローニングすることによって、または、2つの分子を架橋させることによって、作製することができる。DNA断片が一旦線状化されれば、Ter部位に含まれる非線状化ドメインは、Ter結合タンパク質の1つが解離されるまで超らせんのままである。本方法は、超らせん化が有益であるような反応のために有用である。
【0157】
別の局面において、2つのTer部位を有する線状核酸分子は、二価Ter結合タンパク質と線状核酸を接触させ、複合体を形成させる段階、および、分子の超らせん化をもたらすような条件下において、1つまたは複数のトポイソメラーゼ酵素と複合体を接触させる段階によって、2つのTer部位の間で超らせん化させることが可能である。
【0158】
実施例13
核酸分子上の規定された部位において重合反応を停止させるための、Ter結合タンパク質/Terの相互作用の使用
核酸分子におけるTer部位の存在を、重合反応、即ちPCR反応または転写反応において、全長未満の産物を作製するために使用することができる。例として、例えばT7プロモーターのようなプロモーター、および、プロモーターからの転写がTer部位に向かって行われるように配列されたTer部位を含む核酸を、T7ポリメラーゼおよび適切な補因子と接触させることができる。核酸が、Ter部位に結合されたTer結合タンパク質を有する場合、転写は、Ter結合タンパク質によってポリメラーゼが停止されるまで進められ、結果的に、定められた長さの転写産物の生産がもたらされる。
【0159】
別の局面において、本方法は、PCRを用いたクローニングにおいて利便のために、「付着末端」を有する二重鎖断片を作製するために使用することができる。図12に関して、単鎖の利用可能な配列A、二本鎖Ter部位の上鎖ter'、および、鋳型にアニールすることができるセグメントを含むような、オリゴヌクレオチド#1を作製する。オリゴヌクレオチド#2は、オリゴヌクレオチド#1のter'にハイブリダイズする二本鎖Ter部位の下鎖を含む。
【0160】
オリゴヌクレオチド#1とオリゴヌクレオチド#2がアニールされる場合、望ましい鋳型にハイブリダイズする配列に付着された、完全な二重鎖Ter部位が生じる。Ter部位を認識する熱安定性Ter結合タンパク質を、複合体に右から遭遇する複製フォークが停止されるように結合させる。
【0161】
PCR反応は、鋳型を導入することによって開始される。PCRの間、ポリメラーゼはTer結合タンパク質/Ter複合体の右側で停止され、その結果その遺伝子座においてニックが生じる。
【0162】
PCR後、二重鎖DNAを単離し、除タンパク質し、その結果、オリゴヌクレオチド#2を失い、望ましい突出部が生じる。
【0163】
実施例14
生物学的分子を検出する方法
別の局面において、本発明は、好ましくは、少なくとも1つのTer部位、および、その生物学的分子と特異的な複合体を形成する部分を含有する核酸部分を含む試薬と、生物学的分子を接触させる段階、検出分子に融合されたTer結合タンパク質と複合体を接触させる段階であり、Ter結合タンパク質が試薬の核酸部分に結合するような段階、および、検出分子を検出する段階であり、検出分子の存在が生物学的分子の存在と相関するような段階を含む、生物学的分子を検出する方法に関連する。いくつかの態様において、検出分子は、発色団、蛍光団、酵素、およびエピトープからなる群より選択することができる。
【0164】
ここまでで、理解を明らかにするための例示および実施例として、本発明のいくつかの詳細が完全に説明されたが、本発明の範囲または任意のその特定の態様に影響を与えずに、広いおよび同等の範囲の条件、明確な記述および他のパラメータ内において、本発明を改変または改変することによって、本発明が行われ得ること、ならびに、そのような改変または変化が、添付の特許請求の範囲内に包含されると意図されることが、当業者には明白であると考えられる。
【0165】
本明細書において言及される、全ての刊行物、特許および特許出願は、本発明が属する技術分野における当業者の技術のレベルを示すものであり、各個別の刊行物、特許および特許出願が具体的かつ別々に参照として組み入れられると示されるのと同程度に参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】Ter部位を含むプラスミドの複製の模式図である。
【図2】Ter配列を選択可能なマーカーとして使用する方法の模式図である。RS=制限部位または組換え部位、rep ori=複製起点、矢印は複製の方向を示す。
【図3】Ter配列を用いた、組換えプラスミドの正の選択方法の模式図である。GOI=関心対象のDNAまたは遺伝子、黒塗りの菱形=Ter断片の5'末端、黒塗りの丸=Ter断片の3'末端、rep ori=複製起点、矢印は複製の方向を示す。
【図4】Ter配列を用いた、望ましい核酸の挿入および組換えプラスミドについての正の選択方法の、模式図である。GOI=関心対象のDNAまたは遺伝子、黒塗りの菱形=Ter断片の5'末端、黒塗りの丸=Ter断片の3'末端、rep ori=複製起点、矢印は複製の方向を示す。
【図5】Ter配列を用いて核酸を固体支持体に付着させる方法の模式図である。
【図6A】図6Aおよび図6Bは、Ter配列を用いて核酸分子を精製する方法の模式図である。図6Aは、Ter部位(黒い四角)がプラスミド上のスタッファー断片(波線)上に存在し、固体支持体に付着させたTer結合タンパク質(TBP)を用いて、未反応のプラスミド、および、部分的に反応したプラスミドを除去させ、正しく反応したプラスミドを精製させるような態様を示す。RE=制限酵素、TBP=Ter結合タンパク質。
【図6B】図6Aおよび図6Bは、Ter配列を用いて核酸分子を精製する方法の模式図である。図6Bは、Ter部位(黒い四角)がプラスミド上に存在し、固体支持体に付着させたTer結合タンパク質(TBP)を用いて、反応混合物から未反応のプラスミド、および、部分的に反応したプラスミドを除去させ、関心対象の望ましい核酸を反応混合物から精製させるような態様を示す。RE=制限酵素、TBP=Ter結合タンパク質。
【図7】Ter配列を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応産物からTer部位(黒い四角)を含む鋳型を精製する方法についての模式図である。TBP=Ter結合タンパク質。
【図8】Ter配列を用いた、標的検出方法の模式図である。TBP=Ter結合タンパク質、X=存在する場合は、検出分子。
【図9】Ter配列を用いて単鎖核酸を作製する方法についての模式図である。TBP=Ter結合タンパク質。
【図10】Ter配列を用いて、同じ核酸の2つの末端を並置する方法についての模式図である。T7=T7 RNAポリメラーゼ、TBP=Ter結合タンパク質。
【図11】Ter配列を用いて、線状核酸のある領域の超らせん性を維持する方法についての模式図である。TBP=Ter結合タンパク質。
【図12】Ter配列を用いて突出「付着末端」を作製する方法についての模式図である。A=単鎖の利用可能な配列、ter'=二本鎖Ter配列の下鎖、アニーリング=鋳型にアニーリングできるセグメント、ter=ter'にハイブリダイズする二本鎖ter配列の上鎖。
【図13】図13Aおよび図13Bは、Ter部位を用いて定方向クローニングを使用した組換えベクターの解析の結果を示す。13Aにおいては、レーンは以下のように泳動された:M、1 kbマーカー、レーン1、3、5、7、9、11、13、および15、挿入配列なし;レーン2、4、6、8、10、12、14、16〜24、1μlベクター/5μl挿入配列。13Bにおいては、レーンは以下のように泳動された:M、1 kbマーカー、レーン1〜24、10μlベクター/5μl挿入配列。+=正しく配向された挿入配列、*=逆向きの挿入配列、-=挿入配列なし、0=DNAは検出されない。
【図14】実施例5において使用される構築物の模式図である。
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は、分子生物学の分野におけるものである。本発明は、ポリヌクレオチド、およびそのポリヌクレオチドと特異的に相互作用するポリペプチド、ならびにそれらの使用方法に広く関連する。具体的には、本発明は、ポリヌクレオチド、終結配列、および、終結配列に結合する核酸結合タンパク質、ならびに、使用の中でもとりわけ、クローニングのため、関心対象の核酸を選択するため、関心対象のポリヌクレオチドを精製するため、単鎖DNAを作製するため、ポリヌクレオチドの少なくとも2つの部位を並列させるため、核酸分子の形態を維持するため、標的配列および他の生体分子を検出するため、固体支持体上にポリヌクレオチドを固定化するために、これらのうち1つまたは複数を使用する方法を提供する。本発明はまた、これらのポリヌクレオチドおよびポリペプチドの断片または誘導体、ならびに、そのようなポリヌクレオチドを含む、または、そのようなポリペプチドをコードするベクター、そのようなベクターを含む宿主細胞、およびその断片または誘導体にも関連する。本発明は、本発明のポリヌクレオチド、ポリペプチドおよび/または組成物を含むキットにも関与する。
【背景技術】
【0002】
関連技術
細菌系においては、ゲノムおよびプラスミドの複製は、複製起点(ori)と呼ばれる、ゲノムまたはプラスミド上の特定の部位にて始まる。複製は、複製起点にて開始され、起点から、複製複合体が停止されて複製が終結する、終結配列(Ter部位)と呼ばれる、ゲノムまたはプラスミドの適切な(特定の複製単位について適切な)部分に位置する規定された配列まで、一方向または双方向のいずれかに進む。
【0003】
Ter部位において複製を正しく終結させるために、生物体は機能的な複製終結タンパク質(RTP)を発現しなければならない。RTPは、Ter部位に結合し、RTP-Ter複合体を形成する核酸結合タンパク質である。結合されたRTPは、複製複合体のヘリカーゼ活性がTer部位を巻き戻すのを阻害することによって、複製終結において機能すると考えられる。この活性は、反ヘリカーゼ(contrahelicase)活性と呼ばれる。RTPおよびTer部位は、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)および大腸菌を含む、広範な種類のグラム陽性微生物およびグラム陰性微生物において同定されている(Bussiereら、Mol.Micro. 31(6):1611〜1618(1999)(非特許文献1)およびGriffithsら、J.Bacteriology 180(13):3360〜3367(1998)(非特許文献2)を参照のこと)。
【0004】
ほとんどのRTP-Ter複合体の、複製を停止させる能力は、一方向性のものである;一方の方向(非許容方向)から進行する複製複合体は停止する一方、反対の方向(許容方向)から進行する複製複合体は通過する。いくつかの修飾RTPについては、複製を停止する能力は双方向性であり、これらのRTPはいずれの方向からの複製も停止することができる。通常の(一方向性の)条件下においては、複製の正しい終結を達成するために、一般に、各ゲノムまたはプラスミド上に、少なくとも2つのTer部位が存在する。Ter部位は、いずれかの方向からの複製フォークのTer部位間の領域への通過を許容するように、しかしその領域からの複製フォークの退出を妨げるように配置される。ある複製複合体は、第一のTer部位を通過し、第二のTer部位において停止される一方、反対方向から進行する複製複合体は、第二の部位を通過し、第一の部位において停止される。これは、図1において模式的に示される。
【0005】
RTPは、Ter部位に著しく強固に結合し、その結果、長い半減期を有する、非常に安定なRTP-Ter複合体をもたらすことが見出された。RTPのTer部位に対する高度の親和性、および、Ter部位の方向性は、本発明において説明される方法およびキットにおける使用のために利用することができる。
【非特許文献1】Bussiereら、Mol.Micro. 31(6):1611〜1618(1999)
【非特許文献2】Griffithsら、J.Bacteriology 180(13):3360〜3367(1998)
【発明の開示】
【0006】
発明の概要
本発明は、分子生物学での応用において特に有用な材料および方法を提供する。一般に、本発明は、インビトロ(例えば細胞外における)、インビボ(例えば細胞内における)、またはその組み合わせにおける、1つもしくは複数のTer部位、および/または、1つもしくは複数のTer結合タンパク質もしくはRTPの使用に関連する。ある態様において、本発明は、少なくとも1つのTer部位および/またはその一部を含む、1つまたは複数の(単離されることが可能である)核酸分子に関連する。そのような核酸分子は、線状、環状、超らせん、単鎖、二重鎖、1つまたは複数の単鎖領域(例えば、分子の1つまたは複数の末端における、少なくとも1つの単鎖突出部)を有する二重鎖等のような、任意の形態または種類の核酸分子であることが可能であり、単離されることが可能である、または、1つもしくは複数の宿主もしくは宿主細胞に含まれ得る。本発明の好ましい核酸分子は、ベクター、組み込み配列(例えばトランスポゾン)、プラスミド、コスミド、人工染色体(例えば、BACおよびYAC)、およびファージミドなどを含む。そのようなTer部位および/またはその一部は、分子内の1つまたは複数の部位、および/または、そのような分子の1つまたは複数の末端もしくはその近辺を含む、本発明の核酸分子において任意の位置、および任意の方向にて位置することが可能である。いくつかの態様において、本発明の核酸分子は、選択的に、1つまたは複数の検出可能な原子または基、例えば、1つまたは複数の放射性同位体、発色団、蛍光団、酵素、エピトープ、ハプテン、抗原および/またはその組み合わせを含み得る。ある局面において、本発明の核酸分子は、1つまたは複数のTer結合タンパク質に結合させることが可能である。
【0007】
本発明はまた、本発明の核酸分子の1つまたは複数を含む、組成物または反応混合物をも含む。そのような組成物または反応混合物は、本発明の方法を実行するために、1つまたは複数の他の成分をも含み得る。そのような他の成分は、1つまたは複数のTer部位またはその一部に結合されていることが可能な、および/または結合されていないことが可能な1つまたは複数のTer結合タンパク質、1つまたは複数のリガーゼ、1つまたは複数のポリメラーゼ、1つまたは複数のトポイソメラーゼ、1つまたは複数の組換えタンパク質、1つまたは複数の宿主細胞(核酸分子を取り込むコンピテント細胞でありうる)、1つまたは複数の固体支持体(そのような支持体に直接的にもしくは間接的に結合された、1つもしくは複数のTer結合タンパク質、および/または、1つもしくは複数のTer部位もしくはその一部を含む核酸分子を有し得る)などを含み得る。
【0008】
別の局面において、本発明は、Ter結合タンパク質および1つまたは複数の修飾を含む修飾タンパク質に関連する。いくつかの局面において、修飾基はTer結合タンパク質に化学的に付着されることが可能である。いくつかの態様において、修飾は、Ter結合部分および1つまたは複数の付加的なポリペプチド部分を含む、融合タンパク質を作製するものであり得る。付加的なポリペプチド部分は、1つまたは複数の酵素、結合ポリペプチド、即ち、抗体、Fabなど、エピトープ、抗原、ハプテンなど、およびその組み合わせでありうる。融合タンパク質は選択的に、例えばTer結合部分と酵素部分との間のような2つの部分の間に、リンカーを含み得る。リンカーは選択的に、1つまたは複数の切断部位、例えば、1つもしくは複数のタンパク質分解酵素のための切断部位、および/または、1つもしくは複数の、化学的切断に対して感受性の部位を含み得る。
【0009】
別の局面において、本発明は、本発明の核酸および/またはタンパク質が共有結合によって、または非共有結合によって付着する、固体支持体を提供する。いくつかの態様において、本発明の固体支持体は、1つまたは複数のTer部位の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含み得る。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドは、ヘアピンまたはステムループの形態にあることが可能である。いくつかの態様において、本発明の固体支持体は、1つまたは複数のTer結合タンパク質の全てまたは一部を含み得る。別の局面において、本発明は、本発明の固体支持体を含有する組成物を含む。
【0010】
より具体的には、本発明は、インビトロおよび/またはインビボのクローニング(好ましくは定方向クローニング)において使用するための、1つまたは複数の核酸分子における、少なくとも1つのTer配列の使用に関連する。したがって、ある局面において、本発明は、関心対象の核酸分子(好ましくは望ましい方向においてクローニングされたもの)について正の選択を可能にする。
【0011】
ある局面において、本発明は、Ter部位の全てまたは一部を含む、少なくとも1つの本発明の核酸分子、および、少なくとも1つのベクターを提供する段階、少なくとも1つの該核酸分子の全てまたは一部を、少なくとも1つの該ベクターに挿入またはクローニングする段階、ならびに、望ましい方向にある、少なくとも1つの該核酸分子の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのベクターを選択する段階による、クローニングの方法を提供する。
【0012】
別の局面において、本発明は、少なくとも1つのTer部位の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのベクター、および少なくとも1つの核酸分子を提供する段階、少なくとも1つの核酸分子の全てまたは一部を、少なくとも1つのベクターに挿入またはクローニングする段階、ならびに、好ましくは望ましい方向にある、少なくとも1つの核酸分子の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのベクターを選択する段階による、クローニングの方法を提供する(図2)。
【0013】
別の局面において、本発明は、少なくとも1つのTer部位の全てまたは一部を含む、関心対象の、少なくとも1つの核酸分子を提供する段階、少なくとも1つのTer部位の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのベクターを提供する段階、少なくとも1つの核酸分子の全てまたは一部を、少なくとも1つのベクターに挿入またはクローニングする段階、および、望ましい方向にある、少なくとも1つの核酸分子の全てまたは一部を含む、少なくとも1つのベクターを選択する段階による、クローニングの方法を提供する(図3)。
【0014】
いくつかの態様において、本発明の方法は、望ましくない核酸分子(ベクターを含む)を選択しない(select against)段階も含み得る。そのような選択は、選択可能な高次構造もしくは方向にあるTer部位の全てもしくは一部を有する分子を選択しない段階、および/または、選択可能な高次構造もしくは方向にあるTer部位の全てもしくは一部を有する分子について選択する段階に関与し得る。いくつかの態様において、選択段階は、(例えば、形質転換またはトランスフェクションによって)ベクター分子を宿主細胞に導入する段階であり、宿主細胞が少なくとも1つのTer結合タンパク質を発現するような段階を含む。
【0015】
したがって、ある局面において、本発明は、1つまたは複数のTer配列またはその一部を用いた、核酸分子の定方向挿入または定方向クローニングの方法を提供する。いくつかの態様において、ベクターにおける核酸分子の望ましい方向は、核酸分子におけるTer部位がベクターにおけるTer部位と同じ方向における複製を許容するような方向である。この態様において、核酸分子が望ましくない方向にある場合、少なくとも1つのTer部位が、ベクターの複製を妨げる(図3)。別の態様において、ベクターにおける核酸分子の望ましい方向は、機能的なTer部位が作製されないようにするものである。望ましくない方向においては、ベクターの複製を妨げる、少なくとも1つの機能的Ter部位が生じる。したがって、例えば、核酸分子におけるTer部位およびベクターにおけるTer部位が部分的なTer部位である場合は、例えば方向に依存して、核酸分子の挿入によって機能的なTer部位を作製することが可能である、または可能ではない。この場合、望ましい方向では機能的なTer部位が生じないため、組換えベクターの複製が行われる。
【0016】
本発明はまた、望ましくない核酸分子を選択しないための、少なくとも1つのTer配列またはその一部の使用にも関連する(図4)。本発明の正の選択法のように、そのような方法は、望ましい核酸分子のインビトロおよび/またはインビボのクローニングを用いて達成することができる。ある局面において、本発明は、インビトロまたはインビボのクローニング中、望ましくない開始分子および/または産物分子を選択しないことを可能にする。例えば、本発明は、望ましい挿入配列を受け取らなかった開始ベクター分子を選択しないことを提供する。別の局面において、本発明は、核酸分子のクローニングまたは挿入の際に生じる可能性がある中間体を選択しないことを提供する。さらに、本発明は、クローニング反応中に生み出された、望ましくない産物分子を選択しないことを提供する。
【0017】
別の局面において、本発明は、トランスポゾンのような核酸挿入配列の、その挿入配列が導入される核酸への望ましい方向を確証する段階に関連する。方向を制御することにより、全核酸構築物は複製を許容される、または複製を妨げられる。例えば、1つまたは複数の挿入配列、例えばトランスポゾンを、例えばプラスミド、BAC、YAC、染色体等のような核酸と接触させることができる。挿入配列の1つまたは複数が望ましい方向にある場合、複製は、許容方向にある部位を通って進む。しかし、挿入配列が、1つまたは複数のTer部位が非許容方向にあるように配向されている場合、複製は達成されない。そのような方法は、例えば1つまたは複数のトランスポゾンの方向付けのような挿入の方向付けが望ましい場合は常に有用であり、ノックアウトベクターの作製においては、特に有効となり得る。
【0018】
別の局面において、本発明は、1つまたは複数の核酸分子または核酸分子集団を、1つまたは複数の固体支持体に付着する方法に関連する(図5)。そのような方法は、1つまたは複数のTer結合タンパク質を1つまたは複数の固体支持体に結合する段階、および、Ter結合タンパク質を、1つまたは複数のTer部位を含む1つまたは複数の核酸分子と接触させる段階であり、1つまたは複数のTer部位(またはその一部)における相互作用を通して、1つまたは複数のTer結合タンパク質が1つまたは複数の核酸分子に結合する段階を含み得る。結合された核酸分子はその後、例えば1つまたは複数のオリゴヌクレオチド(例えばプライマーまたはプローブ)との相互作用(例えばハイブリダイゼーション)によって、またはペプチドもしくはタンパク質との相互作用によって、さらなる操作のために使用することができる。本発明では、関心対象の核酸分子を、支持体に1つまたは複数の特異的部位において結合させる(Ter部位(もしくはその一部)の部位に依存する)ため、そのような操作は、他の結合法が用いられる操作と比較して、より可変性の、および/または、効率的なものでありうる。したがって、関心対象の核酸は、固体支持体に関して任意の方向で、即ち、支持体に近接して5'側、3'側、または内部の部分にて、付着することができる。本発明の核酸は、核酸の結合部分の片側もしくは両側に、二重鎖領域、単鎖領域、および/または、一部二重鎖、一部単鎖の領域を有し得る。さらに、本発明の核酸は、核酸の複数の部位において、固体支持体に付着することができる。これによって、核酸が、規定された(選択的に厳密な)高次構造において、固体支持体上に固定されることが可能である。先行技術の非特異的な結合法(例えば、ポリリシン被覆支持体の使用によるような、多くの定められていない部位における核酸分子)では、定められた方向での固体支持体への付着を達成することができない。したがって、本発明の本局面は、核酸を単離するために、核酸アレイを調製するために、および、ナノデバイスを構築するために、有利に使用することができる。
【0019】
別の局面において、本発明は、1つまたは複数のTer結合タンパク質、修飾Ter結合タンパク質、Ter結合部位を含む融合タンパク質、またはそのようなタンパク質の集団を、1つまたは複数の固体支持体に付着する方法に関連する。そのような方法は、1つもしくは複数のTer配列(もしくはその一部)を含む、1つもしくは複数の核酸分子を、1つもしくは複数の固体支持体に結合させる段階、ならびに/または、1つもしくは複数のTer結合タンパク質および/もしくはTer結合部位を含む融合タンパク質と核酸を接触させる段階を含み得る。1つまたは複数のTer結合タンパク質および/または融合タンパク質は、1つまたは複数のTer部位(またはその一部)における相互作用を通して、1つまたは複数の該核酸分子と結合することが可能である。融合タンパク質のTer結合部分は、例えば、融合タンパク質の望ましい成分の濃縮、収集、単離等を行うために、使用することができる。結合されたTer結合タンパク質および/または融合タンパク質はその後、さらに加工することが可能である。さらなる加工段階には、例えば、溶出および/または、1つもしくは複数の切断部位における切断が含まれ得る。いくつかの態様において、結合されたそのようなTer結合タンパク質および/または融合タンパク質は、固体支持体に結合されたままで、1つもしくは複数の核酸分子と、または他のペプチドもしくはタンパク質と相互作用させることが可能である。他の態様において、そのようなTer結合タンパク質および/または融合タンパク質は、さらなる相互作用前に、固体支持体から溶出することができる。したがって、本発明の本局面は、生物学的試料のような任意の試料から、Ter結合タンパク質および/または融合タンパク質を単離または精製するために、有利に使用することができる。
【0020】
別の局面において、本発明は、核酸においてTer部位を提供する段階、および、Ter結合タンパク質と核酸を接触させる段階を含む、1つまたは複数の核酸分子のトランスフェクション効率を改善する方法に関連する。いくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、修飾Ter結合タンパク質でありうる。いくつかの態様において、修飾タンパク質は、1つまたは複数の受容体結合リガンドを含み得る。いくつかの局面において、本発明は、1つまたは複数の細胞標的化配列を含む、変化したTer結合タンパク質を提供する。いくつかの好ましい態様において、細胞標的化配列の1つまたは複数は核局在化配列であり得る。
【0021】
別の局面において、本発明は、その末端の一方または双方にTer部位(またはその一部)を含むような線状核酸分子を提供する段階、Ter結合タンパク質と核酸を接触させて、安定な核酸-タンパク質複合体を形成させる段階、ならびに、安定な核酸-タンパク質複合体を宿主細胞にトランスフェクションさせる段階であり、単独でトランスフェクションされた核酸よりも、複合体の方がより安定であり、および/または、より容易にトランスフェクションされるような段階を含む、インビボにおける線状核酸分子の安定性を増強する方法に関連する。いくつかの態様において、線状核酸は、コード配列を含む。
【0022】
別の局面において、本発明は、Ter部位を含む核酸を提供する段階、固体支持体に付着されたTer結合タンパク質を含む組成物と核酸を接触させる段階であり、Ter結合タンパク質がTer部位に結合するような段階、および、核酸を単離または精製する段階を含む、核酸を単離する方法に関連する(図6Aおよび図6Bおよび図7)。その他のさらなる態様において、本発明は、核酸、特に核酸ライブラリの精製のための、改善された方法を提供する。一般に、Ter部位を含む核酸は、本発明の方法によって、他の核酸から分離することができる。そのようなある態様は、スタッファー(stuffer)断片を有するストックベクターを示す図6Aにおいて表される。ライブラリの作製のためのベクター試薬を調製するために、スタッファー断片は効率的に取り除かれるべきである。本発明は、調製されたベクター試薬をスタッファー断片から単離する方法を提供する。例えば、ストックベクターは、スタッファー断片においてTer部位を含むように構築することができる。制限酵素による分解後、1つまたは複数の制限酵素による2つの切断によって、調製された試薬からのスタッファーの切断がおこる。1部位のみにおける切断、または切断が行われない場合、スタッファー断片はなおもベクターに付着されたままである。Ter結合タンパク質は、スタッファー断片、未切断のベクター、および、スタッファー断片をなおも含む、一部位のみ切断されたベクターの、調製されたベクター試薬からの分離を達成するために、固体支持体に結合させることができる。Ter結合タンパク質を、ベクター分解によって反応させる前に、反応と同時に、または反応の後に、任意の固体支持体に結合させることができる。別の態様において、図6Bにおいて示されるように、未切断のプラスミドまたは一部位のみ切断されたプラスミド、および、関心対象の望ましい配列を含まない、望ましくないプラスミド材料のような、Ter部位を含む核酸を、除去することができる。
【0023】
別の態様において、図7において示されるように、例えばPCR反応のような増幅反応の完了後に鋳型核酸を除去するために、鋳型核酸におけるTer部位の存在を使用することができる。関心対象の増幅配列は、鋳型のものと同じでありうる、または、例えば、部位特異的突然変異誘発によって突然変異した遺伝子のような、その誘導体でありうる。関連局面において、固体支持体に融合されたTer結合タンパク質を含む組成物は、例えば、スライド、チップ、フィルム、ビーズ、クロマトグラフィー媒体、またはフィルターを含み得る。
【0024】
別の局面において、本発明は、好ましくは少なくとも1つのTer部位を含む核酸部分、および、生物学的分子と特異的複合体を形成する部分を含有する試薬と、生物学的分子を接触させる段階、ならびに、選択的に検出分子を含むTer結合タンパク質と複合体を接触させる段階であり、Ter結合タンパク質が試薬の核酸部分に結合するような段階、ならびに、結合されたTer結合タンパク質を検出する段階であり、Ter結合タンパク質の存在が生物学的分子の存在と相関するような段階を含む、生物学的分子を検出する方法に関連する(図8)。いくつかの態様において、検出分子は、放射性同位体、発色団、蛍光団、酵素、抗原、ハプテン、エピトープおよびその組み合わせからなる群より選択することができる。
【0025】
別の局面において、生物学的分子を、Ter結合タンパク質を用いて標識することができる。生物学的分子は、例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖類、脂質、またはリン脂質でありうる。生物学的分子はその後、Ter結合タンパク質が結合可能なTer部位を含むポリヌクレオチドを用いて検出することができる。本検出法は、例えばELISAアッセイ法またはウエスタンブロット解析法において、関心対象の分子を検出するためのシグナルを増幅するために使用することができる。
【0026】
さらに別の局面において、本発明は、所望の断片を作製する方法に関連する。本方法は、二重鎖DNA上のTer部位にTer結合タンパク質を結合させる段階、DNAの1つの鎖をエキソヌクレアーゼを用いて分解する段階であり、結合されたTer結合タンパク質によって、一方の鎖の酵素による分解が阻害されるような段階を含む。選択的に、残った非分解単鎖DNAを精製することができる。これは、Ter部位を含む二重鎖(ds)DNAから単鎖(ss)DNA断片を作製するために使用することができる(図9)。選択的に、単鎖DNAは、二重鎖DNAに転換することができる、または、RNAを作製するために使用することができる。RNA収量は、約90%を上回るまで、約95%まで、事実上100%に近づくまで、開始効率を改善することによって増加させることができる。
【0027】
さらに別の局面において、本発明は、プロモーターに近接したTer部位を含む核酸を提供する段階、ポリメラーゼと機能的に会合しているTer結合タンパク質と核酸を接触させる段階、および、重合反応を行う段階を含む、1つの核酸分子において2つの部位を並列させる方法に関連する。図10において示されるように、1つまたは複数のプロモーターの近接に1つまたは複数のTer部位またはその一部を含む核酸分子を、機能的なポリメラーゼ酵素が付着されたTer結合タンパク質と接触させることができる。1つまたは複数のTer結合部位は、ポリメラーゼ酵素がプロモーターに機能的に結合し、適切な補因子の存在下において重合反応を行い得るように、配置することができる。Ter結合タンパク質は、好ましくは、重合反応中Ter部位に結合したままであるため、ポリメラーゼ反応の結果、核酸分子上の選択された部位の近位にTer部位が引き寄せられる。
【0028】
さらに別の局面において、本発明は、2つまたはそれ以上のTer部位を含む核酸分子の形態を維持する方法に関連する。いくつかの局面において、本発明は、2つまたはそれ以上のTer部位を含む核酸を、多価Ter結合タンパク質と接触させる段階を含む、核酸分子の超らせん性を維持する方法を提供する。いくつかの態様において、核酸は、例えば、線状化後に超らせんのままであることが望ましいセグメントの各末端に1つずつ、2つのTer部位を含む、超らせん二重鎖DNAでありうる(図11)。双方のTer部位が結合できるように二価Ter結合タンパク質のような多価Ter結合タンパク質を加えて、その結果、一方のドメインが他方とは独立して回転できるように一方のトポロジカルなドメインが他方から隔離される。DNA断片が一旦線状化されれば、Ter部位が結合したドメインは、Ter結合部位の一方が多価Ter結合タンパク質によって解離されるまで、または、そのドメインが切断されるまで、その切断前の形態(超らせん)を維持する。本方法は、超らせん化が有益であるような適用のために有用である。いくつかの態様において、本発明は、2つまたはそれ以上のTer部位を含む断片を多価Ter結合タンパク質と接触させ、複合体を形成させる段階、および、トポイソメラーゼが断片を超らせん化するような条件下において、その複合体をトポイソメラーゼと接触させる段階を含む、線状断片を超らせん化する方法を提供する。
【0029】
さらに別の局面において、本発明は、変性条件下において、二重鎖DNA二本鎖を保持する方法に関連する。これは、環状または熱安定性のTer結合タンパク質により認識されるTer部位を、二本鎖DNAに導入することによって行うことができる。そのような熱安定性Ter結合タンパク質は、好ましくは、好熱生物体から単離することができる、または、中温性Ter結合タンパク質を環化もしくはさもなくば安定化することによって得ることができる。
【0030】
同様の局面において、本発明は、PCR産物におけるクローンのまたは「付着末端」を維持する方法であり、プライマーが「突出する」Ter部位を含むような方法を提供する(図12)。そのような二重鎖Ter部位は、プライマーの遺伝子特異的部分に関して、増幅された領域に対し遠位にあることが可能である。Ter部位は、熱安定性であるTer結合タンパク質に結合する。PCR反応が一旦完了し、除タンパク質を行えば、二重鎖DNA産物ではTer部位突出部が保持される。
【0031】
別の局面において、本発明は、物質の互いの近接度を検出または測定する方法を提供する。例えば、本発明は、関心対象の2つの分子の間の距離を測定するために、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)と組み合わせて使用することができる。本方法においては、Ter結合タンパク質を、例えばIgG分子のような、測定される物質と結合する分子と複合体化することができる。複合体化Ter結合タンパク質は、望ましい長さの核酸分子上のTer部位に結合されることが可能である。Ter部位を含む核酸分子は、分子の非Ter結合末端上において標識される。標識は、2つの核酸分子がきわめて近接にある場合、例えば、標識が増幅される、または、標識が消光されるように、標識の強度の変化が検出されるようなものが可能である。上記に説明される複合体化されたTer結合タンパク質によって、物質が結合される場合、物質の距離は、使用された標識によって生み出されたシグナルを検出した後に、核酸分子によって占有された距離を知ることによって、決定することができる。本方法は、細胞表面の受容体のクラスタリングを検出するために使用することができる。
【0032】
好ましい態様の詳細な説明
定義
以下の説明においては、組換えDNA技術において使用される多くの用語が広く利用される。そのような用語によって与えられるような範囲を含む、本明細書および特許請求の範囲の、明らかな、および、一貫した理解を提供するために、以下の定義が提供される。ある種類の分子について言及される場合、文脈によって禁じられない限り、その用語は、言及される種類の分子、ならびに、その断片および誘導体を含むものと見なされる。
【0033】
ベクター
例えば、挿入配列、コード領域等のように、関心対象の核酸配列に有用な生物学的特性または生化学的特性を提供する核酸。例には、プラスミド、ファージ、および、インビトロもしくは宿主細胞において複製すること、もしくは、複製されることが可能な、または、望ましい核酸セグメントを宿主細胞内の望ましい部位に運搬できるような、他の核酸配列が含まれる。ベクターは、様々な配列、例えば、ベクターの本質的な生物学的機能を喪失せずに、決定可能な様式でベクター配列を操作できるような部位であり、例えば、その複製および/またはクローニングを成し遂げるために核酸断片を挿入することができるような、1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位および/または組換え部位を含み得る。ベクターは、例えばPCRのためのプライマー部位、転写および/または翻訳開始および/または調節部位、組換えシグナル、複製単位、選択可能なマーカー、ならびに当業者には既知の他の配列をさらに提供し得る。
【0034】
クローニングベクター
プラスミド、コスミド、ウイルス、またはファージのDNA、もしくは宿主細胞において自己複製することができる他のDNA分子であり、その複製およびクローニングを成し遂げるために、ベクターの本質的な生物学的機能を喪失せずにDNAがスプライシングできるようなDNA分子。クローニングベクターは、クローニングベクターによって形質転換された細胞の同定における使用に適したマーカーをさらに含み得る。マーカーは、例えば、抗生物質耐性遺伝子、例えば、テトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が可能である。
【0035】
発現ベクター
クローニングベクターと類似しているが、宿主を形質転換した後に、それにクローニングされた遺伝子の発現を増強できるようなベクター。クローニングされた遺伝子は通常、プロモーター配列のような、ある制御配列の制御下に配置される(即ち、機能的に連結される)。
【0036】
断片
断片とは、より大きな分子の切断によって得られる分子である。本発明の断片は、本発明のより大きな分子の少なくとも1つの部分を含み得る。断片は、適切に並列された場合、複合体またはより大きな分子を形成するような、一連の断片でありうる。好ましくは、一連の断片は、より大きな分子の1つまたは複数の機能を示す。
【0037】
組換え宿主
発現ベクター、クローニングベクターまたは任意のDNA分子において、クローニングされた望ましい遺伝子を含む、任意の原核生物または真核生物。「組換え宿主」という用語はまた、宿主の染色体またはゲノム上に望ましい遺伝子を含むように遺伝子操作された宿主細胞を含むことも意図される。
【0038】
宿主
複製可能な発現ベクター、クローニングベクターまたは任意のDNA分子のレシピエントである、任意の原核生物または真核生物。DNA分子は、これに限定されるわけではないが、構造遺伝子、プロモーターおよび/または複製起点を含み得る。
【0039】
プロモーター
特定の転写開始のために、RNAポリメラーゼによって認識されるDNA配列。
【0040】
遺伝子
ポリペプチド、タンパク質またはRNAのような、生物学的分子を作るのに必要な情報を含む核酸配列。これは、プロモーターおよび/または構造遺伝子、ならびに、分子の発現に関与する他の配列を含み得る。
【0041】
ポリペプチド
本明細書において使用される「ポリペプチド」という用語は、任意の長さの、連続するアミノ酸の配列を指す。「ペプチド」、「オリゴペプチド」または「タンパク質」という用語は、本明細書においては、「ポリペプチド」という用語と交換可能なように使用することができる。
【0042】
誘導体
ポリヌクレオチドの誘導体は、それが由来する、本発明のポリヌクレオチドの1つまたは複数と同一の配列中に、少なくとも7個、8個もしくは9個、またはより好ましくは少なくとも10個、11個、12個、13個、14個もしくは15個、またはさらにより好ましくは17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、もしくは25個を有する分子である。本発明のポリヌクレオチドの1つまたは複数の個々のヌクレオチドは、1つまたは複数の挿入、欠失または置換によって置き換え、誘導体を形成することができる。置き換えは、好ましくは、本発明のポリヌクレオチドの少なくとも1つの機能を妨げないものである。置き換えは、ポリヌクレオチドの任意の部位、即ち、末端または内部のどの部位においても可能である。置き換えによって、例えば、由来するポリヌクレオチドと比較した、ポリヌクレオチドの、本発明の1つもしくは複数のタンパク質からの解離定数、および/または、ポリヌクレオチド誘導体の分解率(の増加または減少)のような、ポリヌクレオチドの1つまたは複数の特徴を改変することが可能である。置き換えに適したヌクレオチドは、当業者には知られており、これに限定されるわけではないが、下記に開示されるものを含む。
【0043】
ポリペプチドの誘導体は、それが由来する本発明のポリペプチドの1つまたは複数と同一の配列中に、少なくとも4個、5個、または6個、好ましくは、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、または15個、より好ましくは25個、50個、75個、100個、125個、150個、175個、200個、または250個のアミノ酸を有する分子である。誘導体を形成するために、本発明のポリペプチドの、個々のアミノ酸の1つまたは複数を、1つまたは複数の挿入、欠失または置換によって置き換えることが可能である。置き換えは、好ましくは、本発明のポリペプチドの少なくとも1つの機能を妨げないようなものである。置き換えは、ポリペプチドの任意の部位、即ち、末端または内部のどの部位においても可能である。いくつかの態様において、1つまたは複数のモチーフ、領域またはドメインの全てまたは実質的に全てを欠失させることができる。例えば、1つまたは複数のループ(TusのL1ループのようなもの)を欠失させることができる。誘導体は、1つまたは複数のアミノ酸()天然アミノ酸および合成アミノ酸の双方)の、1つまたは複数の挿入または置換を取り込むことが可能である。
【0044】
誘導体は、それが由来する分子と同じまたは異なる特徴を有し得る。例えば、ポリヌクレオチド誘導体は、野生型Ter結合タンパク質に結合する能力を保持し得る。ポリヌクレオチド誘導体が結合される親和性は、それが由来するポリヌクレオチドが結合される親和性と同じである、より大きい、またはより小さいことが可能である。誘導体は、本発明の分子(ポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチド)の多量体でありうる。例えば、誘導体は、本発明の分子の二量体、三量体、四量体等でありうる。多量体は、同じまたは異なる種類のものであり得る、同一の、または異なる単量体単位からなり得る。例えば、多量体は、2つの異なるポリペプチド、あるポリペプチドの2つの同じポリペプチド、およびポリヌクレオチドからなるものが可能である。
【0045】
機能的に連結された
機能的に連結されたとは、タンパク質または核酸の要素が、別のタンパク質または核酸の要素に影響する、または、影響されるように配置されることを意味する。要素は、同じまたは異なる分子上にあることが可能である。
【0046】
発現
発現とは、遺伝子がポリペプチド、タンパク質またはRNAを生産する過程である。これは、遺伝子のRNA(メッセンジャーRNA(mRNA)であり得る)への転写を含み、そのようなmRNAの1つまたは複数のポリペプチドへの翻訳を含み得る。当業者には、例えばリボゾームRNAのように、全てのRNA分子がタンパク質に翻訳されるわけではないこと、および、これらの場合における発現は、翻訳を含まないことが理解される。
【0047】
実質的に純粋
本明細書において使用される「実質的に純粋」とは、望ましい生体分子が、天然において、または、その生体分子が生産される組換え宿主において、望ましい生体分子に関連する、混在する細胞混入物を本質的に含まないことを意味する。混入細胞成分は、これに限定されるわけではないが、望ましくない核酸、タンパク質、脂質および糖質を含み得る。
【0048】
プライマー
本明細書において使用される「プライマー」とは、核酸分子の増幅または重合の間に、ヌクレオチド単量体の共有結合によって伸長される単鎖オリゴヌクレオチドを指す。
【0049】
鋳型
本明細書において使用される「鋳型」という用語は、例えば、増幅、合成または配列決定のように操作される核酸分子(単鎖、二重鎖のDNAまたはRNA)を指す。二重鎖核酸分子の場合、第一および第二の鎖を形成するためのその鎖の変性を、さらなる操作が行われる以前に行うことができる。鋳型の一部に相補的なプライマーは、適切な条件下においてハイブリダイズすることができ、その後、核酸ポリメラーゼによって鋳型の全てまたは一部に相補的な核酸分子を合成することができる。本発明に従って新たに合成された分子は、元の鋳型と比べて長さがより長い、等しい、またはより短いことが可能である。新たに合成された核酸分子の合成または伸長の期間中におけるミスマッチの取り込みは、1つまたは多くのミスマッチ塩基対をもたらす可能性がある。さらに、使用されるプライマーは、それがハイブリダイズする鋳型配列と厳密に一致する必要はない。プライマーにおけるミスマッチの塩基は、配列における部位特異的突然変異をもたらすために使用されうる。したがって、合成された核酸分子は、鋳型に対して厳密に相補的である必要はない。
【0050】
取り込み
本明細書において使用される「取り込み」という用語は、核酸分子またはプライマーの一部となることを意味する。
【0051】
増幅
本明細書において使用される「増幅」とは、例えばDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、および/または逆転写酵素のような核酸ポリメラーゼの使用によって、ヌクレオチド配列のコピー数を増加させるための、任意のインビトロ法を指す。核酸の増幅は、核酸分子またはプライマーへのヌクレオチドの取り込みをもたらし、それにより、核酸鋳型に対して相補的な(または、実質的に相補的な)、新しい核酸分子が形成される。新たに形成された核酸分子およびその鋳型は、さらなる核酸分子を合成するための鋳型として使用することができる。本明細書において使用されるように、ある増幅反応は、多くの核酸複製サイクルからなることが可能である。DNA増幅反応は、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む。あるPCR反応は、例えば、5「サイクル」〜100「サイクル」の、DNA分子の変性および合成からなることが可能である。
【0052】
オリゴヌクレオチド
「オリゴヌクレオチド」とは、1つのヌクレオチドのペントースの3'部位と、隣接ヌクレオチドのペントースの5'部位との間のホスホジエステル結合によって結合可能なヌクレオチドの共有結合配列を含む、合成分子または天然分子を指す。
【0053】
ヌクレオチド
本明細書において使用される「ヌクレオチド」とは、塩基-糖-リン酸の組み合わせを指す。ヌクレオチドは、核酸配列(DNAおよびRNA)の単量体単位である。ヌクレオチドという用語は、dATP、dCTP、dITP、dUTP、dGTP、dTTPのようなデオキシリボヌクレオシド三リン酸、またはその誘導体を含む。そのような誘導体は、例えば、[α-S]dATP、7-デアザ-dGTPおよび7-デアザ-dATPを含む。本明細書において使用されるようなヌクレオチドという用語はまた、ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸(ddNTP)およびその誘導体も指す。ジデオキシリボヌクレオシド三リン酸の実例となる例は、これに限定されるわけではないが、ddATP、ddCTP、ddGTP、ddITP、およびddTTPを含む。本発明によると、「ヌクレオチド」は、非標識であってもよく、または、公知の技術によって検出可能なように標識されてもよい。検出可能な標識には、例えば、放射性同位体、蛍光標識、化学発光標識、生物発光標識および酵素標識が含まれる。
【0054】
熱安定性(thermostable)
本明細書において使用される「熱安定性」とは、熱による不活性化に対して耐性のTer結合タンパク質を指す。Ter結合タンパク質は、核酸分子上のTer部位に結合する。中温性Ter結合タンパク質については、熱処理によって結合が低減される(一過的にまたは永続的に)可能性がある。本明細書において使用されるように、熱安定性Ter結合活性は、中温性Ter結合タンパク質よりも、熱不活性化に対してより耐性がある。しかし、熱安定性Ter結合タンパク質とは、熱不活性化に対して完全に耐性のタンパク質を指すことを意図するものではなく、したがって、熱処理によってTer結合活性がある程度まで低減される可能性がある。
【0055】
ハイブリダイゼーション
「ハイブリダイゼーション」および「ハイブリダイズする」という用語は、2つの相補的な単鎖核酸分子(RNAおよび/またはDNA)が対合し、二重鎖分子を与えることを指す。本明細書において使用されるように、塩基対合が完全に相補的ではないにも関わらず、2つの核酸分子はハイブリダイズすることができる。したがって、ミスマッチの塩基は、当技術分野において既知の適切な条件が使用されるという条件で、2つの核酸分子のハイブリダイゼーションを妨げるものではない。
【0056】
ライゲーション
第一ヌクレオチド配列と第二ヌクレオチド配列の間における、共有結合による接着。
【0057】
標的ポリヌクレオチド配列
同定されるべきヌクレオチド配列の全てまたは一部であり、それに相補的でありハイブリダイズする結合ポリヌクレオチド配列を調製させるのに充分な範囲で知られているようなポリヌクレオチド配列。標的ポリヌクレオチド配列は通常、約12個〜1,000個またはそれ以上のヌクレオチド、好ましくは15個〜50個のヌクレオチドを含むと考えられる。標的ポリヌクレオチド配列はより大きな分子の一部であってもよいし、そうでなくてもよい。
【0058】
終結配列
終結配列は、1つまたは複数のTer結合タンパク質またはペプチド、および/または複製終結タンパク質またはペプチドによって認識されることが可能な(即ち結合されることが可能な)ヌクレオチドの配列を含む核酸分子である。
【0059】
Ter部位
本発明に従うTer部位は、真核生物および原核生物(グラム陽性微生物およびグラム陰性微生物を含む)内で見出されるものを含む、任意の提供源に由来する任意の複製終結配列である。本発明ではまた、複製終結タンパク質またはペプチドのような、1つまたは複数のTer結合タンパク質によって認識および結合されることが可能であるような、Ter部位の任意の一部が意図される。Ter部位の一部は、Ter部位の約6個、7個、8個またはそれ以上のヌクレオチドからなり得るが、全部位よりも少ない。いくつかの局面において、Ter部位は、二重鎖核酸組成物、例えば、その一方の鎖が表1において挙げられる配列を含み、もう一方の鎖が第一の鎖に対して相補的な配列を有するような二重鎖分子、または、表1からの配列を含む単鎖核酸、または、表1における配列に対して相補的な配列を含む単鎖分子を含み得る。本発明はまた、そのようなTer結合タンパク質またはペプチドが結合する能力が増加したまたは減少した、突然変異Ter部位または誘導Ter部位(ならびにその一部および組み合わせ)をも意図する。本発明における使用のための突然変異Ter部位もしくは誘導Ter部位を、(関心対象の配列において欠失、置換および挿入を作製するための)標準の突然変異誘発技術によって作製することができる、または、望ましい誘導Ter部位を、標準の化学合成技術(例えば、オリゴヌクレオチド合成)によって作製することができる。本発明において使用するためのTer部位は、様々な生物体およびプラスミドにおいて同定されている。表1は、大腸菌および関連種、およびプラスミドおよび多くのバチルス(Bacillus)種に由来する代表的な数の部位のヌクレオチド配列を示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1において示される様々なTer部位のヌクレオチド配列は、ある部位が高度に保存されていることを示す。大腸菌においては、残基6におけるG、および、部位8から始まり部位19で終結する11塩基は、TerF配列の部位18におけるT/G修飾を唯一例外として、全てのTer部位において保存されている。バチルスにおいては、表1における配列のヌクレオチド3〜5、7、13、15、16〜20、および22〜25が高度に保存されている。
【0062】
本発明は、任意の提供源に由来するTer部位およびTer結合タンパク質の使用を意図する。いくつかの態様において、Ter部位およびTer結合タンパク質は、例えば、例としてバチルス・ステアロサーモフィラス(B.stearothermophilus)のような好熱生物のような原核生物に由来することが可能である。他の提供源には、腸内細菌(Enterobacteriae)または真核生物が含まれる。
【0063】
配列の一部の除去によって、または置換もしくは突然変異によって改変され、かつ(1)Ter結合タンパク質への結合能を保持するTer部位は、本発明の一部として含まれる、および/または、(2)方向性を保持するTer部位は、本発明の一部として含まれる。適切な機能のために必要な、Ter部位の機能的なドメインおよび領域は、Coskun-AriおよびHill、J. Biol.Chem. 17 272:26448〜26456(1997)において説明されている。Ter結合タンパク質がより低い親和性で結合するように改変されたTer部位は、例えば、複製終結の操作が望ましいような反応において同様に有用である(Coskun-AriおよびHill、1997;SharmaおよびHill、Mol.Microbiol. 18:45〜61(1995))。
【0064】
本発明のTer部位を含む核酸は、例えばホスホロアミダイト法を用いた化学合成、または増幅技術、即ちPCRなどの、任意の従来的な技術を用いて調製することができる。選択的に、検出可能な分子を、Ter部位を含む核酸に付着させることができる。適切な検出分子は当業者に知られており、これに限定されるわけではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-グルクロニダーゼのような酵素、蛍光部分、発色団、抗体によって認識されるハプテンおよび/またはエピトープを含む。検出分子は、例えば、化学的に修飾された(例えば、蛍光標識された)ヌクレオチドを増幅反応中に使用することにより、合成中に付着することができる。いくつかの例においては、例えば検出分子を核酸に化学的に結合させることにより、核酸の合成後に検出分子を導入することが望ましい可能性がある。
【0065】
Ter部位を含むオリゴヌクレオチドは、単鎖または二重鎖でありうる。いくつかの態様において、オリゴヌクレオチドのある部分がオリゴヌクレオチドの別の部分にハイブリダイズして、Ter部位の全てまたは一部を含むオリゴヌクレオチドの二重鎖部分を形成するように、オリゴヌクレオチドは、ヘアピンまたはステムループの形態でありうる。
【0066】
Ter結合タンパク質
Ter結合タンパク質の一例は、複製終結タンパク質(RTP)である。RTPは、二重鎖終結配列に結合した場合に複製を停止させる、配列特異的DNA結合タンパク質である。大腸菌に由来するRTPは、Tusと(tauとも)呼ばれる36,000 Daのタンパク質である。Tusタンパク質は、単量体としてTer部位に結合する。Tusは、インビトロにおいて3×10-13Mまで(緩衝液条件に依存する)の解離定数で、TerB部位に著しく強固に結合する。Tusの他のTer部位への結合は、10-10〜10-11Mの桁数の解離定数で、幾分強固さが劣る。本発明の好ましいTer結合タンパク質は、Ter部位から、約10-9〜約10-15M、約10-10〜約10-14M、または約10-11〜約10-13Mの解離定数を有する可能性がある。
【0067】
Tus-TerB複合体は、最大550分の半減期を有し、非常に安定である。Tus遺伝子のDNA配列は周知である(Hidaka, M.ら、Purification of a DNA replication terminus (ter) site-binding protein in Escherichia coli and identification of the structural gene、J.Biol.Chem. 264(35):21031〜21037(1989)、およびHill, T.M.ら、Tus, the trans-acting gene required for termination of DNA replication in Escherichia coli, encodes a DNA-binding protein、Proc.Natl.Acad.Sci. U.S.A. 86(5):1593〜1597(1989)を参照のこと)。機能的なTusタンパク質を欠く大腸菌株は周知である。Ter部位との複合体における本タンパク質の結晶構造が作製されている(Bussiereら、Molecular Microbiology 31(6):1611〜1618(1999))。
【0068】
ある適用における使用について、結合する能力を有したままであるまたは改変された結合能を有する、Ter結合タンパク質の変異体および変種は、本発明の一部である。そのような変異体は、特に、E49、H50、K89、T136、K175、I177、R198、R232、V234、K235、Q237、Q252、A254、R288、K290などの、DNA結合ドメインにおいて突然変異を有するものを含む(Skokotasら、J.Biol.Chem. 270:30941〜30948(1995))。いくつかのTer結合タンパク質の機能的ドメインが規定されており、Terへのその結合能を増加または減少するように改変されうるが、これらは例えば、とりわけ、H31、K32、L33、L34、V35、A36、R37、L62、V97、L98、C99、Y100、Q101、V102、D103、N104、S106、Q107、L110、V161、L162、H136、D164、P165、A166、T167、L168、R169、F170、R241、V242、W243、Y244、K245、G246、D247、Q248、L259、I260、A261、L262、N264、R265、D266、N267、G268、A269、G270、V271、P272、D273、V274、G275を含む複製フォーク阻害ドメインにおける変異体である(Dugginら、J.Mol.Biol. 286:1325〜1335(1999))。例えば、化学物質による変性に対して耐性のある、環化Ter結合タンパク質は、そのような条件の際に二本鎖DNAが変性するのを阻害するために使用することができる。環化タンパク質はさらに、二重鎖核酸を検出するために、標識されることができる。
【0069】
熱安定性生物に由来するTer結合タンパク質、および、好低温菌または好冷菌に由来するものもまた含まれる。
【0070】
本発明は、修飾Ter結合タンパク質をも含む。修飾Ter結合タンパク質は、全長Ter結合タンパク質、または、Ter部位への結合能を保持するTer結合タンパク質の一部でありうる。修飾部分は、例えば当業者に既知の結合試薬を用いて結合することによるように、共有結合によってTer結合タンパク質に付着されることが可能である。適切な結合試薬は、例えばPierce Chemical Co.、Rockford、ILから、商品として入手可能である。
【0071】
いくつかの態様において、修飾部分はポリペプチドであることが可能であり、ポリペプチドのペプチド骨格は、Ter結合タンパク質のペプチド骨格と隣接し、Ter結合タンパク質と修飾ポリペプチドとの間において融合タンパク質を形成することができる。融合タンパク質の構築は、当技術分野においては日常的に行われる。任意の適したポリペプチドを、Ter結合タンパク質の全てまたは一部と融合することができる。ポリペプチドは、Ter結合タンパク質のN末端、Ter結合タンパク質のC末端、またはTer結合タンパク質の内部の部位において融合することができる。Ter結合タンパク質の結合能が実質的に低減されない限り、融合体の任意の部位を使用することができる。本文脈において、実質的に低減されたとは、修飾Ter結合タンパク質が、修飾Ter結合タンパク質を検出させるのに十分な親和性でTer部位に結合しないことを示す。
【0072】
本発明における使用のために、任意の望ましい修飾基を、融合タンパク質の化学的結合、および/または、調製によって、Ter結合タンパク質に付着することができる。いくつかの態様において、修飾基は、受容体のためのリガンドでありうる。本発明における使用のためのリガンドは、これに限定されるわけではないが、トランスフェリン受容体、血清アルブミン受容体、アシアロ糖タンパク質受容体、アデノウイルス受容体、レトロウイルス受容体、CD4、リポタンパク質受容体、免疫グロブリンFc受容体、α-フェトタンパク質受容体、LDLR様タンパク質(LRP)受容体、アセチル化LDL受容体、マンノース受容体、またはマンノース-6-リン酸受容体を含む、細胞表面受容体のためのリガンドでありうる。多くの他の細胞表面受容体およびそれらの関連リガンドは、当業者には既知であり、これらのリガンドを含む修飾Ter結合タンパク質は本発明の範囲内にある。受容体およびリガンドの詳細なリスト、および、分子を細胞に輸送するためのそれらの使用については、Klavenessらに公布された、米国特許第6,331,289号、および、Heartleinらに発行された同第6,262,026号を参照のこと。細胞表面受容体のためのリガンドを含む修飾Ter結合タンパク質は、Ter部位を含む核酸を細胞に輸送することが可能な手段として使用することができる。核酸-Ter結合タンパク質-リガンドの複合体を形成するために、Ter結合タンパク質、および、1つまたは複数の受容体のためのリガンドを含むタンパク質を、Ter部位を含む核酸と接触させることができる。複合体はその後、適切な受容体を発現する細胞との接触を行わせ、結果的に複合体を標的細胞に取り込ませることができる。適切な受容体は、広範な種類の異なる細胞型上に存在し、Ter部位を含む核酸が広範な種類の細胞型に取り込まれるのを可能にする。
【0073】
いくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、検出分子を含み得る。適切な検出分子は、当業者に知られており、これに限定されるわけではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼおよびβ-グルクロニダーゼのような、検出可能な活性を有する酵素、蛍光部分、発色団、抗体によって認識されるハプテンおよび/またはエピトープを含む。いくつかの好ましい態様において、検出分子は、蛍光部分、発色団、酵素、ハプテンおよび/またはエピトープなどの組み合わせを含み得る。検出分子は、化学的結合によって、および/または、融合タンパク質の構築によって、共有結合的にTer結合タンパク質に付着することが可能である。
【0074】
いくつかの態様において、本発明の修飾Ter結合タンパク質は、細胞標的化配列を含み得る。そのような配列は、Ter結合タンパク質、および、そのタンパク質に結合された任意の核酸を、ある生物体または細胞における、1つまたは複数の特定の部位に指向させる。いくつかの態様において、細胞標的化配列は核局在化配列であり、Ter結合タンパク質および結合された核酸は標的細胞の核に指向することが可能である。細胞標的化配列はまた、例えば、エンドソームおよび/.またはリソソームにおいて生じる分解のような、核酸分子の分解を低減するのを、または妨げるのを助ける可能性がある。適切な細胞標的化配列が当業者には知られており、任意の提供源、例えばウイルスタンパク質に由来することが可能である。適切な細胞標的化配列の例について、ならびに、本発明のTer結合タンパク質を修飾するために使用することができる適切なリガンドおよび他のポリペプチド部分の例については、Wooらに発行された米国特許第6,177,554号を参照のこと。
【0075】
いくつかの態様において、本発明は、Ter結合タンパク質および関心対象のポリペプチドまたはタンパク質を含む融合タンパク質を提供する。Ter結合タンパク質の存在によって、Ter部位を含むオリゴヌクレオチドを用いた、関心対象のポリペプチドまたはタンパク質の検出および/または親和性精製が許容される。例えば、Ter部位を含むオリゴヌクレオチドは、例えばビーズ、クロマトグラフィー支持体などのような、固体支持体に付着することができる。Ter結合部分および関心対象のポリペプチドを含む融合タンパク質はその後、融合タンパク質のTer結合部分のオリゴヌクレオチドへの結合を許容するような条件(pH、イオン強度、温度など)下において固体支持体と接触させることができる。任意の混在分子を固体支持体から洗浄し、結合された融合タンパク質を溶出することができる。本発明の融合タンパク質は、選択的に、タンパク質分解酵素のための1つまたは複数の切断部位を含み得る。いくつかの態様において、1つまたは複数の切断部位は、融合タンパク質のTer結合部分と1つまたは複数の付加的なポリペプチド部分との間に位置することが可能である。切断部位を含む融合タンパク質の構築は、当技術分野においてはよく知られており、例えば、Riggsら、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons, Inc.、第16章、16.4.1〜16.4.4、1997を参照のこと。
【0076】
いくつかの態様において、本発明の修飾Ter結合タンパク質は、複数のTer結合部分を含み得る。2つまたはそれ以上のTer結合部分が連結される場合、それらは同じまたは異なるTer結合タンパク質に由来し、Ter部位に対して同じまたは異なる親和性を有することが可能である。Ter結合タンパク質を化学的に結合することによって、または、融合タンパク質を作製することによって、複数のTer結合タンパク質を連結することができる。多価Ter結合タンパク質は、例えば、Ter結合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームの直列反復配列をクローニングすること(リンカーを用いて、または用いずに)によって、または、2つの分子を架橋させることによって作製することができる。複数のTer結合部分を含む修飾Ter結合タンパク質はまた、例えば検出分子、リガンドおよび他の修飾のような、付加的な修飾をさらに含むことも可能である。
【0077】
いくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、複数の修飾を含み得る。例えば、あるTer結合タンパク質は、細胞表面受容体のためのリガンドおよび検出分子を含み得る。この種の形状は、修飾Ter結合タンパク質の取り込みを検出させるものであり、好ましくは、修飾Ter結合タンパク質とそれが結合される核酸との複合体の検出能を提供するものである。
【0078】
固体支持体およびアレイ
本発明に従って使用するための支持体は、1つもしくは複数のTer部位もしくはその一部を含む核酸分子、および/または、Ter結合タンパク質の全てもしくは一部を含む分子を付着するのに適した任意の支持体またはマトリクスでありうる。そのような分子は、当技術分野においては既知の任意の技術、または任意の技術の組み合わせによって、本発明の支持体に加えるまたは(共有結合的または非共有結合的に)結合させることができる。本発明の支持体は、シリコン、バイオチップ、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ガラス、ポリスチレン(マイクロタイタープレートを含む)、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、デキストラン、セファロース、寒天、デンプンおよびナイロンを含み得る。本発明の支持体は、ビーズ、フィルター、膜、シート、フリット、プラグ、カラムなどを含む、任意の形態または形状にあることが可能である。固体支持体はまた、12ウェルプレート、24ウェルプレート、48ウェルプレート、96ウェルプレート、および384ウェルプレートのような、(マイクロタイタープレートのような)マルチウェルチューブをも含み得る。好ましいビーズは、ガラス、ラテックスまたは磁気材料(磁気ビーズ、常磁性ビーズまたは超常磁性ビーズ)から作製される。
【0079】
分子の固体支持体への付着は、当技術分野においてはよく知られている。例えば、米国特許第5,384,261号は、基質上にポリマーの大アレイを形成する方法および装置を意図するものであり、それが開示する全てについてその全体を参照として本明細書に組み入れられる。本発明の好ましい局面に従い、基質を、それにチャンネルを有するチャンネルブロックに接触させる。選択した試薬をチャンネルに流し、回転段階によって基質を回転させ、その工程を繰り返し、基質上にポリマーのアレイを形成させる。本方法は、light-directed法と組み合わせることができる。
【0080】
米国特許第5,744,305号は、例えば、選択的に除去することができる保護基によって、異なる反応性を有する基質表面の十分に規定された領域が作製されることを示す、別の典型例となる開示である。保護基は、特定の波長および強度の電磁放射のような、特定の活性化因子を適用することによって、表面から選択的に除去することができる。曝露された領域における保護基を取り除くために、表面の選択された領域を、特定の活性化因子に曝露することができる。
【0081】
保護基は、天然アミノ酸または非天然アミノ酸を用いたペプチド合成、デオキシリボ核酸およびリボ核酸を用いたヌクレオチド合成、ならびにオリゴ糖合成など、固相オリゴマー合成に関連して使用される。保護基は、望ましくない反応から基質表面を保護することに加え、単量体の反応性末端を阻害し、自己重合を妨げる。例えば、アミノ酸のN-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルのような、活性化されたアミノ酸のアミノ末端への保護基の付着によって、ペプチド合成中、ある単量体のアミノ末端が、別の単量体の活性化エステル部分と反応することが妨げられる。または、保護基は、あるアミノ酸のカルボキシル基に付着され、この部位における反応を妨げることが可能である。ほとんどの保護基は、あるアミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかに付着することができ、化学合成の性質によって、どの反応基が保護基を必要とするかが決定される。同様に、例えばリン酸-トリエステル結合化学法を用いた合成期間中における、ヌクレオシドの5'-ヒドロキシル基への保護基の付着によって、あるヌクレオシドの5'-ヒドロキシル基が別のヌクレオシドの3'活性化リン酸-トリエステルと反応することが妨げられる。
【0082】
特定の使用に関わらず、保護基は、別の試薬との反応から分子上の部分を保護するために使用される。本発明の保護基は以下の特徴を有する:選択された試薬が、保護基が付着される基を修飾することを妨げる;合成反応条件に対して安定である(即ち、分子に付着されたままである);残りの構造に有害に影響を及ぼさない条件下において取り除かれることが可能である;および、一旦取り除かれれば、表面または表面結合オリゴマーとは、評価できるほど反応しない。適切な保護基の選択は、当然のことながら、単量体単位およびオリゴマーの化学的な性質、ならびに、それに対して保護をすべき特定の試薬に依存する。
【0083】
保護基は光活性化可能である場合がある。光化学反応性の保護化合物の特性および使用については概説されている。参照として本明細書に組み入れられる、McCrayら、Ann.Rev. of Biophys. and Biophys. Chem.(1989) 18:239〜270を参照のこと。光感受性の保護基は、電磁波スペクトルの紫外部(UV)または可視部における照射によって除去可能なものであり得る。保護基は、スペクトルの近紫外部または可視部における照射によって除去可能なものであり得る。活性化はまた、局所的な加熱、電子ビームリソグラフィー、レーザー励起、微小電極を用いた酸化または還元などのような、他の方法によって行うこともできる。スルフォニル化合物は、電子ビームリソグラフィーに適した反応基である。酸化または還元による除去は、好ましくは、活性化のために望ましい、事前に規定された表面領域に指向させた微小電極を用いた、電流源に対する保護基の曝露によって達成される。他の方法は、本開示の観点から使用することができる。全てではないが多くの光除去可能な保護基は、近紫外部および可視部における照射を吸収する芳香族化合物となる。適した光除去可能な保護基については、例えば、参照として本明細書に組み入れられる、McCrayら、Patchornik、J.Amer.Chem.Soc. (1970) 92:6333、および、Amitら、J.Org.Chem.(1974) 39:192において説明されている。
【0084】
好ましい局面において、本発明の方法は、タンパク質および/もしくは核酸分子(RNAまたはDNA)のアレイ、または、他の分子、化合物、および/もしくは基質のアレイを調製するために使用することができる。そのようなアレイは、マイクロプレート、スライドガラス、または標準のブロット膜上にて形成することができ、アレイのフォーマットおよびデザインによって、マイクロアレイまたは遺伝子チップと呼ぶことができる。そのようなアレイの使用には、遺伝子の発見、遺伝子発現プロフィール決定、遺伝子型決定(SNP解析、薬理ゲノミクス、毒物遺伝学)、および、ナノテクノロジーデバイスの調製が含まれる。
【0085】
核酸アレイの合成および使用、ならびに、一般的に、核酸の支持体への付着については説明されている(例えば、米国特許第5,436,327号、同第5,800,992号、同第5,445,934号、同第5,763,170号、同第5,599,695号および同第5,837,832号を参照のこと)。様々な試薬を基質上の位置的に規定された部位に付着させるための自動化工程は、Pirrungら、米国特許第5,143,854号、および、Barrettら、同第5,252,743号において提供されている。例えば、ジスルフィド修飾オリゴヌクレオチドは、ジスルフィド結合を用いて、固体支持体に共有結合的に付着することができる(Rogersら、Anal.Biochem. 266:23〜30(1990)を参照のこと)。さらに、ジスルフィド修飾オリゴヌクレオチドは、固相合成法を用いたペプチド核酸(PNA)でありうる(Aldrian-Herradaら、J.Pept.Sci. 4:266〜281(1998)を参照のこと)。したがって、1つまたは複数のTer部位またはその一部を含む核酸分子を、1つまたは複数の支持体に加えることができる(または、そのような支持体上のアレイにおいて加えることができる)。
【0086】
固体支持体へのポリペプチドの付着は、当技術分野においてよく知られている。例えば、Deutschら、米国特許第4,615,985号では、ナイロン支持体へのタンパク質の付着について説明している。Ikedaら、米国特許第4,582,622号では、磁気粒子へのタンパク質の付着について説明しており、Burtonら、米国特許第5,998,155号では、固体支持体へのビオチン結合タンパク質の付着について説明しており、ならびに、Wagner、米国特許第6,120,992号では、固体支持体への核酸結合タンパク質の付着、および、核酸を結合するためのそれらの後の使用について説明している。本発明のTer結合タンパク質は、固体支持体に付着させ、後に、Ter部位を含む核酸分子を結合させるために使用することができる。
【0087】
本質的に、本発明においては、任意の考え得る支持体を使用することができる。支持体は、粒子、鎖、沈殿物、ゲル、シート、管類、球体、容器、毛管、パッド、薄片、フィルム、プレート、スライド等として存在する、生物学的、非生物学的、有機、無機、またはそれらの任意のものの組み合わせでありうる。支持体は、ディスク、四角、球状、環状等のような、任意の好都合な形状を有し得る。支持体は好ましくは平らなものであるが、様々な代替の表面形状を取ることが可能である。例えば、支持体は、合成または他の反応のために使用することができる、突起させたまたは窪ませた領域を含み得る。支持体およびその表面は、好ましくは、本明細書において説明される反応をその上で実行するための強固な支持体を形成する。支持体およびその表面はまた、適切な光吸収特性を提供するように選択される。例えば支持体は、重合ラングミュアー-ブロジェット膜、機能性ガラス、Si、Ge、GaAs、GaP、SiO2、SIN4、修飾シリコン、または、(ポリ)テトラフルオロエチレン、(ポリ)フッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、またはその組み合わせのような、広範な種類のゲルもしくはポリマーのうち任意のものでありうる。他の支持体材料は、本開示の概説により当業者には容易に明らかとなる。好ましい態様において、支持体は板ガラスまたは単結晶シリコンである。
【0088】
したがって、本発明は、支持体に付着された核酸分子のアレイを調製する方法を提供する。いくつかの態様において、これらの核酸分子は、核酸分子における1つまたは複数の(例えば、1個、2個、3個、または4個の)部位において、1つまたは複数のTer部位を有する。いくつかの付加的な態様において、ある核酸分子を直接支持体に、または支持体の特定の部分に付着することができ、1つまたは複数の付加的な核酸分子が、支持体に直接付着された核酸分子への付着を介して、支持体に間接的に付着される。そのような場合には、支持体に直接付着される核酸分子が、その周りに核酸アレイを構築することができるような核形成部位を提供する。
【0089】
ある局面において、本発明は、Ter部位を含有する核酸分子を含む支持体を提供する。いくつかの態様において、これらの支持体の核酸分子は、少なくとも1つのTer部位を含むと考えられる。これらの結合された核酸分子は、例えば、他の核酸分子(例えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下において結合された核酸分子にハイブリダイズする核酸分子)、および、結合された核酸分子に対する結合親和性を有するタンパク質を同定するために有用である。Ter部位は、2つの別々のオリゴヌクレオチドから構成されることが可能である、または、ステムループもしくはヘアピンの形状にある、単一のヌクレオチドでありうる。ステムループオリゴヌクレオチドおよびヘアピンオリゴヌクレオチドは、Ter部位の全てまたは一部を含むオリゴヌクレオチドの相補的領域のハイブリダイゼーションを行わせるような条件下において、機能的なTer部位を形成することができる。これは、Ter結合タンパク質を含む分子の可逆的結合のために、特に有用である。Ter結合タンパク質を含む分子は、Ter部位の全てまたは一部を含む、ステムループオリゴヌクレオチドまたはヘアピンオリゴヌクレオチドの二重鎖部分に結合させることが可能であり、その後、Ter結合タンパク質がTer部位に結合することのないように、オリゴヌクレオチドのハイブリダイズされた部分が全てまたは部分的に単鎖となるように、条件(pH、塩イオン強度、温度等)を改変することによって、オリゴヌクレオチドから溶出させることが可能である。
【0090】
いくつかの態様において、核酸分子が支持体に結合されたままで、これらの結合された核酸分子から発現産物を生産することもできる。したがって、本発明の組成物および方法は、発現産物およびこれらの発現産物によって生産された産物を同定するために使用することができる。
【0091】
さらに、支持体に付着された核酸分子を、これらの支持体から解離させることができる。核酸分子を解離する方法は、制限酵素による分解、組換え、および、結合された核酸分子にハイブリダイズした核酸分子の解離を誘導するために条件(例えば、温度、塩濃度等)を改変する段階を含む。したがって、本発明の方法は、核酸分子の単離のために、核酸分子が結合された支持体を使用することを含む。
【0092】
核酸分子を支持体に結合することによって形成することができる組成物の例は、当技術分野においてはしばしば「DNAマイクロアレイ」または「ゲノムチップ」と呼ばれる、「遺伝子チップ」である(その開示がその全体を参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,412,087号および同第5,889,165号、およびPCT刊行物国際公開公報第97/02357号、同第97/43450号、同第98/20967号、同第99/05574号、同第99/05591号、および同第99/40105号を参照のこと)。本発明の様々な態様において、これらの遺伝子チップは、本明細書において説明される二次元および三次元の核酸アレイを含み得る。
【0093】
本発明の核酸アレイの指向可能性とは、特定のヌクレオチド配列に結合する分子または化合物がアレイに付着できることを意味する。したがって、タンパク質および他の核酸のような成分を、本発明の核酸アレイにおける特定の場所/部位に付着することができる。
【0094】
選択法
ベクターおよび/または関心対象の核酸へのTer部位の全てまたは一部の取り込みによって、Ter部位を含まない(負の選択)か、または関心対象の配列を含む(正の選択)、望ましい核酸の選択がなされることが可能である。図2に関して、機能的Ter部位(黒い菱形と結び付けられた黒い丸として示される)を含むベクターを調製する。そのようなベクターは、許容宿主、即ち、プラスミドの複製を阻害することができるRTPを発現しない宿主において複製されることが可能である。望ましい核酸セグメント(矢印として示される)が、ベクターに挿入されるものである。核酸セグメントの挿入および/または除去を容易にするため、ベクターは選択的に、ある部位(制限部位、組換え部位など)を含み得る(例えば、図2におけるRS1およびRS2)セグメントをベクターに挿入するために、1つまたは複数の反応(組換え反応および/または分解およびライゲーション反応)を行った後、分子集団が作製される。図2において表される組換え反応の場合、集団は、望ましい産物、および、未反応の開始ベクター、および、挿入配列を含有する部分的に反応したベクターを含む。未反応のベクターおよび別々に反応したベクターは双方とも、機能的なTer部位を含むことに留意されたい。反応混合物で制限宿主(ベクターの複製を阻害することができるRTPを発現したもの)を形質転換する場合、望ましい(機能的Ter部位を欠く)産物を受け取った細胞のみがベクターを複製し、生き残ることができる。これは、負の選択、即ち、Ter部位の存在を選択しないことの一例である。
【0095】
図3および図4に関しては、選択的に望ましい方向にある、挿入配列の存在についての正の選択が示される。図3においては、関心対象の遺伝子が、Ter部位の一部の配列(黒丸として示される)を含むように修飾される。ベクターは、Ter部位の残りの部分を含むように調製される。残りの部分は、(図3において示されるように)真中で切断することができるような、完全なTer部位として提供することができる、または、単に残りの配列として提供することができる。ベクターはその後、線状ベクターを生じるように切断される。挿入配列がベクターに連結(ライゲーション)される場合、それは、いずれかの方向ではたらきうる。一方の方向においては、機能的なTer部位が生み出され(プラスミドB)、もう一方では、Ter部位は生じない(プラスミドA)。反応混合物がRTPを発現する宿主細胞に導入される場合、機能的なTer部位を含まないベクター(プラスミドA)を受け取る細胞のみが、ベクターを複製し、成長することができる。これは、挿入配列の特定の方向についての正の選択の一例である。
【0096】
図4に関して、切断することができる機能的なTer部位を含むベクターが調製される。関心対象の遺伝子を、切断されたベクターに連結し、RTPを発現している細胞を形質転換するために反応混合物を使用する。挿入配列を含む(および、したがって、Ter部位を欠く)ベクターを受け取る細胞のみが、RTP+宿主において(プラスミドAおよびBを)複製することができる。これは、挿入配列についての正の選択の一例である。自己連結するプラスミド(プラスミドC)は、RTP+宿主においては複製しない。
【0097】
検出法
1つのTer結合部位を含む、Ter結合タンパク質および/または融合タンパク質の、Ter部位に対する高親和性は、Ter部位を含む分子、および/または、Ter結合タンパク質を含む分子を検出するために、有利に使用されうる。検出可能な分子を、Ter部位を含む分子に、Ter結合タンパク質を含む分子に、またはその両方に付着させることができることは、当業者には理解される。本発明のある検出法の一例は、図8において提供される。関心対象の核酸(NA)は、例えば、ノーザンブロット法またはサザンブロット法におけるように、固体支持体に付着することができる。Ter部位(黒い四角)、および、関心対象の配列に特異的にハイブリダイズする配列を含むプローブは、標的配列にハイブリダイズされることが可能である。プローブは選択的に、プローブの二重鎖部分にTer部位が含まれるような、ステムループ構造および/またはヘアピンを形成する配列を含み得る。ハイブリダイゼーション後に、プローブおよび標的配列を含む複合体を、Ter結合タンパク質(TBP)と接触させる。Ter結合タンパク質は選択的に、例えば、蛍光団、発色団、または酵素などの検出分子(X)を含み得る。選択的に、Ter結合タンパク質は、検出分子を含み得ず、代わりに、Ter結合タンパク質に対する抗体(選択的に標識される)を用いて検出することができる。
【0098】
本発明の検出法は、これに限定されるわけではないが、サザンブロット法、ノーザンブロット法、ウエスタンブロット法、およびインサイチューハイブリダイゼーションを含む、様々な適用において使用することができる。
【0099】
精製法
1つのTer結合部位を含むTer結合タンパク質および/または融合タンパク質の、Ter部位に対する高親和性を、様々な精製方法論において有利に使用することができる。Ter部位を含む核酸を含有する分子は、固体支持体に結合されることが可能であり、溶液から、Ter結合タンパク質の全てまたは一部を含む分子を結合させるために使用することができる。または、Ter結合タンパク質の全てまたは一部を含む分子は、固体支持体に付着されることが可能であり、Ter部位の全てまたは一部を含む分子を結合させるために使用することができる。
【0100】
いくつかの態様において、Ter部位を含む核酸(例えばプラスミド)を、ベクターとして使用することができる。この種の態様において、ベクターにおけるTer部位の存在を、核酸の操作を容易にするために使用することができる。例えば、図6Aに関して、プラスミドのスタッファー断片(波線)上にTer部位(黒い四角)を含む核酸を、制限酵素部位(RE)において、制限酵素によって分解し、Ter結合タンパク質を通して固体支持体に結合させることによって、反応混合物から非分解プラスミドおよび部分的に分解されたプラスミドを除去することができる。Ter部位を有さない核酸(図6Aにおいて、正しく分解されたプラスミド)は結合されないため、ライブラリの構築のようなさらなる使用のために、容易に利用することができる。
【0101】
図6Bは、Ter部位(黒い四角)を含むベクターが、制限部位および/または組換え部位(図6BにおけるRE)に隣接する関心対象の配列(プロモーター、遺伝子等)を含み得る、関連局面を示す。核酸を適切な酵素(制限酵素および/またはリコンビナーゼ)と接触させた後、Ter結合部位を含む固定化タンパク質と溶液を接触させることによって、未反応のベクター、または部分的に反応したベクターを、溶液から取り除くことができる。これによって、Ter結合部位を含まない産物分子の精製が容易になる。産物分子(即ち挿入配列)は後に、必要に応じてさらに操作することができる。
【0102】
さらなる態様は、図7において提供される。本態様において、関心対象の配列を、Ter部位(黒い四角)を含む鋳型から増幅、またはコピーする。鋳型分子は、例えば関心対象の配列を含むプラスミドまたは断片のような、任意の種類の核酸でありうる。十分な数のコピーが調製された後、Ter結合部位を含む固定化タンパク質(TBP)と混合物を接触させることによって、反応混合物から鋳型分子を除去することができる。
【0103】
したがって、ある局面において、本発明は、(1)1つまたは複数のTer結合タンパク質が結合される支持体を提供する段階、(2)支持体に結合されたTer結合タンパク質への、分子または化合物の結合を容易にする条件下において、支持体に結合されたTer結合タンパク質に対する結合親和性を有する分子または化合物を含む組成物と支持体を接触させる段階、(3)結合された分子または化合物の解離を容易にするために、条件を改変する段階、および、(4)解離された分子または化合物を収集する段階を含む、親和性精製法を提供する。
【0104】
いくつかの態様において、本発明は、Ter結合タンパク質の全てまたは一部を含む分子を精製する方法を提供する。この種のある態様において、例えばオリゴヌクレオチドが付着される磁気ビーズのような、Ter部位を有する核酸を含む化合物と、融合タンパク質を含む溶液を接触させることによって、Ter結合タンパク質を含む融合タンパク質を精製することができる。結合後、化合物(ビーズ)を洗浄し、融合タンパク質を溶出することができる。
【0105】
したがって、別の局面において、本発明は、(1)少なくとも1つのTer部位を含む核酸分子が結合された支持体を提供する段階、(2)支持体に結合された核酸分子への分子または化合物の結合を容易にするような条件下において、支持体に結合された核酸分子に対する結合親和性を有する分子または化合物を含む組成物と支持体を接触させる段階、(3)結合された分子または化合物の解離を容易にするために、条件を改変する段階、および(4)解離された分子または化合物を収集する段階を含む、親和性精製法を提供する。
【0106】
核酸を操作する方法
Ter結合タンパク質のTer部位に対する高親和性によって、以前には可能でなかった、核酸分子の様々な操作が可能になる。例えば、図9に関して、Ter結合タンパク質のTer部位に対する親和性を、例えばエキソヌクレアーゼ分解から核酸分子の特定の一部を保護するために使用することができる。これにより、核酸の所望の断片の調製が許容される。図9においては、Ter部位(黒い四角)を含む核酸の断片をTer結合タンパク質(TBP)と接触させ、複合体を形成させる。断片をその後、例えば3'→5'エキソヌクレアーゼのようなエキソヌクレアーゼと接触させる。エキソヌクレアーゼが、分解が停止されるTer結合タンパク質に達するまで、断片は分解される。これによってより小さな断片の生産がもたらされ、この生産はTer部位にて終結する。図9において示されるように、Ter結合タンパク質を除去することができ、単鎖を作製するために、断片の重なった部分を変性させることができる。単鎖は選択的に、プライマー(例えば、Ter部位の配列を有するもの)をハイブリダイズさせ、ポリメラーゼ酵素およびヌクレオシド三リン酸によってプライマーを伸長させることによって、二重鎖に転換することができる。その結果、定まった末端を有する、より小さな断片が生産される。
【0107】
いくつかの態様において、本発明は、1つまたは複数の核酸分子において、2つまたはそれ以上の部位を並列させる方法を提供する。その最も単純な形態においては、2つのTer部位を含む核酸分子を、多価Ter結合タンパク質(例えば二価Ter結合タンパク質)と接触させる。多価Ter結合タンパク質は、複数の部位にて核酸に結合し、それによって、その部位が並列される。いくつかの態様において、2つまたはそれ以上の核酸を並列させることができる。Ter部位を含む第一の核酸を、多価Ter結合タンパク質と接触させる。多価Ter結合タンパク質は、第一の核酸とTer部位にて結合する。第一の核酸とTer結合タンパク質との複合体は選択的に、結合していないTer結合タンパク質および核酸から精製されうる。複合体はその後、Ter部位を含む第二の核酸と接触させることができる。多価Ter結合タンパク質はその後、第二の核酸と結合し、それによって、その部位が並列される。本方法は、例えばライゲーションおよび/または組換え反応のような、次なる反応のために部位を集める目的で使用することができる。
【0108】
図10に関して、本発明を用いて、線状核酸分子の2つの末端を集めることができる。二重鎖DNAは、DNA/タンパク質の相互作用および転写が許容されるように適切に配置された、Ter部位を一方の末端「A」に、および、RNAポリメラーゼのためのプロモーター(矢印およびT7によって示される)をTer部位の近くに含む。Ter結合タンパク質(TBP)は、例えば融合タンパク質を構築することによって、または、Ter結合タンパク質をポリメラーゼに化学的に結合することによって、プロモーターを認識するRNAポリメラーゼ(T7)と機能的に会合している。Ter結合タンパク質-RNAポリメラーゼ複合体が線状二重鎖DNAに加えられる場合、Ter結合タンパク質はTerに結合し、RNAポリメラーゼは、近くのプロモーターに結合する。一定の条件下におけるヌクレオチドの添加によって、二重鎖DNAをもう一方の末端に向かって進むRNAポリメラーゼによる転写がもたらされる。結合されたTer結合タンパク質は、「A」末端を「B」末端に向かって引き寄せる。「A」と「B」がきわめて近接にある場合、2つの末端は、より効率的にアニールまたは連結することが可能である。約250 塩基対(bp)〜250,000 bp、好ましくは、1,000 bp〜100,000 bpの核酸分子の末端を並置することができる。ほんの二、三例を挙げると、大腸菌のRNAポリメラーゼホロ酵素、T7 RNAポリメラーゼ、または、SP6 RNAポリメラーゼのような、DNA鎖上の特定の部位に指向させることが可能なポリメラーゼを使用することができる。このようにして、線状DNAの末端における分子内結合を増加させ、キメラ分子の形成を減少させることができる。
【0109】
クローニングにおけるその使用に加え、核酸分子における部位を並列させる能力を、ナノデバイスの構築および使用において用いることが可能である。別のタンパク質(例えば、ポリメラーゼ)が特定の部位を核酸分子上のどこか遠位の地点まで引き寄せる間に、Ter結合タンパク質が、核酸分子上の特定の部位を保持する能力は、ナノデバイスの個々の鎖を望ましいように動かすために用いることができる。
【0110】
図11に関して、本発明は、核酸の形態を維持するために使用されうる。例えば、2つのTer部位(黒い四角)を有する超らせん核酸分子を、二価Ter結合タンパク質(TBP-TBP)と接触させることができる。Ter結合タンパク質は、核酸を強固に保持し、2つの部位間の領域の形態を維持する。図11において例証されるように、核酸は選択的に、切断し、分子を線状化することができる;しかし、分子のTer部位間の領域は、超らせん形態に維持される。いくつかの態様において、末端においてTer部位を有する線状分子は、最初に、2つの部位を結合するために、二価Ter結合タンパク質と分子を接触させ、次に核酸分子の超らせん化をもたらす条件下においてトポイソメラーゼと分子を接触させることによって、超らせん化することができる。これは、例えばPCR断片のような線状断片のトランスフェクションのために有用である。断片は、Ter部位を取り込むプライマーを用いて調製することができる。増幅後、断片を二価Ter結合タンパク質と、続いて、トポイソメラーゼおよび補因子と接触させ、その結果超らせんPCR断片の作製をもたらすことができる。
【0111】
図12に関して、本発明は、Ter部位を含む核酸分子において規定された突出部を作製するために使用されうる。Ter部位の一方の鎖を含む第一の単鎖核酸を、Ter部位の他方の鎖を含む第二の核酸と接触させる。2つの鎖がアニールした後、再構成されたTer部位に結合するTer結合タンパク質を加える。Ter部位に対して3'側の部位において第一の核酸にアニールするプライマーを用いたプライマー伸長反応を行う。伸長は、Ter結合タンパク質-Ter複合体においてニックを残して停止される。Ter結合タンパク質および第二の核酸は、定められた突出部を残して除去される。
【0112】
いくつかの態様において、本発明は、通常は二本鎖の変性をもたらすような条件下において、核酸を二本鎖で維持する方法を提供する。1つまたは複数のTer部位を含む核酸を、Ter部位を認識するTer結合タンパク質と接触させることができる。選択的に、Ter結合タンパク質は、熱安定性Ter結合タンパク質でありうる。熱安定性Ter結合タンパク質は、好熱菌から単離することができる、または、非好熱菌に由来するTer結合タンパク質を修飾することによって調製することができる。そのような修飾は、ジスルフィド架橋を形成するためにシステイン残基を導入するように、Ter結合タンパク質において点突然変異を導入する段階、二価性架橋試薬を用いてTer結合タンパク質を化学的に架橋する段階、Ter結合タンパク質を環化する段階などを含む。
【0113】
キット
別の局面において、本発明は、本発明に関連して使用することができるキットを提供する。本発明の本局面に従うキットは、1つまたは複数の本発明の核酸分子またはベクター、1つまたは複数のプライマー、1つまたは複数のTer結合タンパク質および/または本発明の修飾Ter結合タンパク質、本発明の支持体、1つまたは複数のポリメラーゼ、1つまたは複数の逆転写酵素、1つまたは複数の組換えタンパク質(または本発明の方法を実行するための他の酵素)、1つまたは複数の緩衝液、1つまたは複数の界面活性剤、1つまたは複数の制限エンドヌクレアーゼ、1つまたは複数のヌクレオチド、1つまたは複数の終結物質(例えばddNTP)、1つまたは複数のトランスフェクション試薬、ピロホスファターゼ、1つまたは複数のタンパク質分解酵素などからなる群より選択される、1つまたは複数の成分を含有し得る、1つまたは複数の容器を含み得る。
【0114】
広範な種類の本発明の核酸分子またはベクターを、本発明に関して使用することができる。さらに、本発明の調整可能性によって、これらの核酸分子およびベクターを、広範な方法において組み合わせることができる。本発明のキットにおいて提供することができる核酸分子の例は、1つまたは複数のTer部位の全てまたは一部を含むもの、および選択的に、1つまたは複数のプロモーター、シグナルペプチド、エンハンサー、リプレッサー、選択マーカー、転写シグナル、翻訳シグナル、(例えば、配列決定またはPCRのための)プライマーハイブリダイゼーション部位、組換え部位、制限部位およびポリリンカー、サプレッサーtRNAの存在下における翻訳の終結を抑制する部位、サプレッサーtRNAコード配列、融合タンパク質の調製のためのドメインおよび/または領域(例えば6 Hisタグ)をコードする配列、複製起点、テロメア、セントロメアなどを含む。同様に、本発明のキットにおいてライブラリを提供することができる。これらのライブラリは、複製可能な核酸分子の形態にあることが可能である、または、複製起点とは関連しない核酸分子を含み得る。当業者には認識されるように、複製起点とは関連しないライブラリの核酸分子、および他の核酸分子は、複製起点を有する他の核酸分子に挿入することができる、または、キットの消耗性の成分となると考えられる。
【0115】
本発明のキットにおいて提供されるベクターは著しく変化することが可能である。ほとんどの例においては、これらのベクターは、1つの複製起点、少なくとも1つの選択可能なマーカー、および少なくとも1つのTer部位を含むものであり、1つまたは複数の組換え部位を含み得る。例えば、本発明のキットにおいて提供されるベクターは、2つの異なる部位における核酸分子の挿入を可能にするような、4つの別々の組換え部位を有し得る。本発明のキットにおいて提供されるベクターの他の特質は、本明細書の他の部分において説明される。
【0116】
本発明のキットはまた、プライマーと共に提供されることが可能である。これらのプライマーは一般に、特定のヌクレオチド配列を有する分子にアニールするように設計される。例えば、これらのプライマーは、特定の核酸分子を増幅するためのPCRにおける使用のために設計することができる。さらに、本発明のキットと共に提供されるプライマーは、ベクター配列にハイブリダイズするように設計された配列決定プライマーでありうる。したがって、そのようなプライマーは一般に、ベクターに挿入された核酸分子を配列決定するためのキットの一部として提供される。
【0117】
1つまたは複数(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、8個、10個、15個)の緩衝液を、本発明のキットにおいて提供することができる。これらの緩衝液は、作用濃度にて提供することができる、または、濃縮された形態において提供し、後に作用濃度にまで希釈することができる。これらの緩衝液はしばしば、緩衝液自体または緩衝液中の分子のいずれかの活性の増強または安定化のために、塩、金属イオン、補因子、金属イオンキレート試薬等を含むと考えられる。さらに、これらの緩衝液は、乾燥形態または水性形態において提供することができる。緩衝液が乾燥形態で提供される場合、それらは一般に、使用前に水に溶解される。本発明のキットにおける使用に適した緩衝液の例は、以下の実施例において説明される。
【0118】
本発明との使用に適した支持体(例えば、上記にてより詳細を説明される、固体支持体、半固体支持体、ビーズ、マルチウェルチューブ等)も、本発明のキットと共に提供することができる。
【0119】
本発明のキットは、上記にて説明される、または、本明細書の他の部分で説明される成分の実質的に任意の組み合わせを含み得る。当業者には認識されるように、本発明のキットと共に提供される成分は、キットについて意図される使用によって異なる。したがって、キットは、本明細書において説明される様々な機能を行うように設計することができ、そのようなキットの成分はそれに応じて変化する。
【0120】
関連技術分野における当業者には、本明細書において説明される方法および適用への他の適切な改変および適応が、当業者に既知の情報を考慮して、本明細書において含まれる本発明の説明から容易に明らかとなること、ならびに、本発明または任意のその態様の範囲から逸脱せずに行い得ることが理解される。これで本発明は詳細に説明され、これによって例証のためにのみ含まれ、本発明を限定することを意図されない、以下の実施例を参照することにより、本発明はより明らかに理解される。
【0121】
実施例
実施例1
プラスミドにおけるRTP/Ter相互作用の使用
RTP/Ter相互作用による複製機能の終結を利用して、プラスミドにおけるTer配列の存在を選択しないことができる。例えば、2つのTer配列を、各Ter部位の非許容側が複製起点に対して近接して位置するように逆方向反復配列として配置された特定の核酸セグメントに挿入することができる。複製複合体は、Ter部位間のプラスミドのセグメントを複製することができない。したがって、プラスミドは、複製されず、失われる。複製は、起点から、複製複合体が終結配列に達するまで、双方向に進行し得る。機能的なRTPを生産する宿主細胞においては、プラスミドの複製はTer部位において停止され、プラスミドは複製されない。機能的なRTPを生産しない宿主細胞においては、プラスミドが複製される。
【0122】
望ましいならば、プラスミドは、例えば選択可能なマーカーをコードする、1つまたは複数の付加的な核酸セグメントを含み得る。選択可能なマーカーは、機能的なRTPを生産する宿主においては複製されないTer部位間の位置を含む、プラスミド上の任意の部位に配置することが可能である。プラスミドは、RTP-宿主株においては複製されることが可能であり、RTP+株においては複製されない。プラスミドの存在は、例えば選択可能なマーカーが抗生物質耐性を与える遺伝子である場合は、抗生物質のように、適切な負の選択を用いて、RTP-株において選択することができる。他のマーカー遺伝子は、例えば、栄養マーカー、重金属、ハロゲン化有機物、浸透ショック、pHショック、温度ショック、分離後宿主殺し、対立遺伝子付加、即ち、ccdB、ccdA、制限遺伝子セット、および条件致死sacBを含む。
【0123】
Ter部位を含むプラスミドのもう一つの適用は、組換えクローニング法におけるものである。本方法のためには、プラスミドに組換え部位(RS1およびRS2)を備えることが可能である。図2において示される、この種のプラスミドは、組換え反応においてRS1およびRS2と反応する、組換え部位を含む核酸と反応させることが可能である。その結果、Ter部位を含むセグメントの、核酸に由来するセグメントとの置き換えが生じる。得られる分子はTer部位を含まないため、RTP+宿主細胞において複製される。RS1およびRS2の前者または後者のみの反応から生じるいかなる中間体分子も、Ter部位をさらに含み、RTP+宿主においては複製されない。
【0124】
実施例2
固体支持体への核酸の付着
RTPまたはTer結合タンパク質によって認識されるTer部位を有する核酸は、Ter結合タンパク質を介して、固体支持体に付着することができる。例えば、Ter結合タンパク質は、共有結合によって固体支持体に付着することができる。いくつかの態様において、Ter結合タンパク質上の反応基を、タンパク質を固体支持体に付着するために利用することができる(図5を参照のこと)。例えば、固体支持体は、タンパク質上に存在するアミンに結合されるアルデヒド官能基を含むように調製することができる。Ter結合タンパク質の固体支持体への結合のために適した試薬および技術は、Hermanson、Bioconjugate Techniques、Academic Press Inc.、San Diego、CA、1996において見出すことができる。Ter結合タンパク質のTer部位への結合は、その後、Ter部位を含む分子を固体支持体に付着するために使用することができる。
【0125】
本方法は、例えばポリリシン被覆ガラスを使用する従来法のように複数点ではなく、1点において核酸が付着されるため、結合された核酸がプローブおよび操作に対してよりアクセス可能になるという点において、当技術分野において知られている標準法を超えた利点を示す。また、固体支持体環境に導入される以前に、標的核酸をTer部位を含む核酸にアクセス可能とすることもあり得る。その後、Ter結合タンパク質を、Ter部位を含む核酸の集団の一部または全体にでさえ結合させることが可能である。選択的に、Ter部位を含む核酸の標的核酸との相互作用が、Ter結合タンパク質への結合に必要となる可能性がある。
【0126】
実施例3
平滑末端断片の定方向クローニング
本発明は、平滑末端核酸断片の定方向クローニングのための材料および方法を提供する。平滑末端断片は、関心対象の核酸標的のPCR増幅によって作製することができる。いくつかの態様において、関心対象のDNA標的を増幅するために使用されるプライマーの1つが、終結配列の一部に相当する配列を取り込むような増幅反応を行うことができる。増幅反応産物は、一方の末端に終結配列の一部を有する平滑末端核酸断片となる。そのような断片を定方向クローニングするために、それ自体も終結部位の一部を含むようなベクターに断片を連結することができる。
【0127】
いくつかの好ましい態様において、ベクターによって含まれる終結部位の一部、および、PCR断片によって含まれる終結部位の一部を組み合わせ、1つの完全な終結部位を形成させることができる(図3を参照のこと)。この状況においては、平滑末端断片は、ベクターに一方向においてのみクローニングすることができる。得られるプラスミド上の完全な終結部位配列の存在によって、複製終結タンパク質の存在下におけるプラスミドの複製が著しく無効になると考えられる。プラスミドが挿入された宿主細胞の複製は、選択可能なマーカー、即ち、抗生物質耐性マーカーをコードする、プラスミドの存在に依存するため、完全な終結部位が再構成されたプラスミドを含む宿主細胞の複製は、終結部位が再構成されなかった細胞と比較して、激しく損なわれる(図3を参照のこと)。
【0128】
したがって、ライゲーション後、2つの種類のベクター、即ち、完全な終結部位配列を有するベクター、および、終結部位配列の2つの分断された部分を含むベクターが形成される。形質転換後、2つの宿主細胞集団が形成される。一方の集団は完全な終結部位配列を含有するベクターを含み、他方の集団は分断された終結部位配列を有するベクターを含む。選択培地上において成長させた後、分断された終結部位配列を含む細胞は、完全な終結部位配列を含むものを上回る成長を示す。
【0129】
ベクターを、組換え部位に近接するTer部位の一部を導入するように構築することができる。いくつかの好ましい態様において、上記に説明される終結部位の一部を、組換え部位の全てまたは一部と組み合わせることができる。この種の態様において、平滑末端断片のベクターへの挿入によって、機能的な組換え部位を含むベクターの生産がもたらされる。適切な方向において平滑末端断片を有するベクターを含むコロニーを同定した後、組換えクローニング技術を用いて、ベクターをさらに操作することができる。
【0130】
定方向クローニングは、関心対象のDNAセグメントのベクターにおける方向特異的な成立を与える。セグメントの方向によって、どの配列決定プライマーを使用するか、および、プラスミドが有する発現シグナルと相対的にどこにオープンリーディングフレーム核酸があるかなど、次なる反応のための情報が提供されるため、断片の方向が知られているということによって、与えられたクローン構築物の価値が著しく増加する。
【0131】
組換え体についての正の選択が望ましい状況においては、関心対象の遺伝子を、スタッファー断片が終結配列を中断するように、終結配列を含むベクターにクローニングすることができる。関心対象の遺伝子によるスタッファーの置き換えによって、終結配列が中断される。挿入配列を有さないクローニング部位の再ライゲーションによって、プラスミドを複製不可能に変える終結部位が再構成されるため、スタッファーを有さない非組換えベクターは、細胞への形質転換の際に成立しない(図4を参照のこと)。したがって、クローニングされた挿入配列の方向付け、および、挿入配列を含むベクターについての選択は、同じ配列要素によって、同じ段階において達成することができる。
【0132】
実施例4
選択ベクターの調製
望ましい方向にある挿入配列を有するベクターの選択におけるRTP/Ter相互作用の実用性を示すため、以下のようにベクターを構築した。pDONR201(Invitrogen Corporation、Carlsbad、CA)の骨格を、双方のattLセグメントのコア近接点においてSpeI部位を導入したプライマーを用いたPCRによって増幅した。大腸菌に由来するTerBの5'配列および3'配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、β-ガラクトシダーゼ遺伝子の5'末端および3'末端に付け加えた。PCRにおいて使用されたプライマーは、前述のプラスミド骨格への単位複製配列のクローニング、およびその後の、構築物からのβ-ガラクトシダーゼの除去を可能にする、制限酵素部位を導入した。β-ガラクトシダーゼ遺伝子を切り出した後、得られた線状平滑末端ベクターをゲル精製した(図3および図14)。最終ベクターは、β-ガラクトシダーゼの切り出し後、分断されたTerB部位を含んでいた。TerB部位の5'末端(図3における菱形および線)は、表1におけるTerB配列のヌクレオチド1〜15を含んでいた一方、3'末端(図3における丸および線)は、ヌクレオチド16〜21を含んでいた。
【0133】
TerB要素の3'側部分をスペクチノマイシン遺伝子の3'末端に付け加えたプライマーを用いたPCRによって増幅された、スペクチノマイシン耐性をコードする遺伝子を用いて、被験挿入配列を構築した。表1のTerB配列のヌクレオチド16〜21の逆相補鎖を、スペクチノマイシン遺伝子の3'末端に加えた。さらに、平滑末端制限酵素部位を5'側の発現シグナルおよび3'側の逆向きTer配列に対して遠位に導入した。これらの制限酵素を用いて、単位複製配列を分解し、平滑末端断片を生じさせた。
【0134】
ライゲーション:
ベクター1μlまたは10μlのいずれかに、挿入DNA 5μlを加え、反応溶液20μl 中において16℃にて2.5時間連結させた。さらに、ベクター1μlまたは10μlのいずれかを、挿入DNAを加えずに、同じ反応条件に供した。フェノール/クロロホルムを用いて反応溶液を抽出し、エタノール沈殿し、10μl中にて再構築した。ライブラリ効率100μlのDH5a(Invitrogen、Carlsbad、CA)を、製造業者のプロトコールに従い、各ライゲーション液によって形質転換し、カナマイシンを含むLB培地上に播いた。
【0135】
2つの明確な別個のコロニー形態、大および小。結果は表2において示される。
【0136】
【表2】
【0137】
8個の「挿入配列なし」コロニー、12個の1:5(ベクター:挿入配列比)コロニー、および21個の10:5コロニーから、プラスミドDNAを調製した。いずれのコロニー形態をも、DNA調製のために選択した。挿入配列の存在および方向について診断的である制限酵素によるDNA分解を行った。コロニー形態を予測因子として用いると、93%(25/27)が望ましい方向を有していた。コピー数の減少か、成長速度の低下、またはその両方によって、望ましくない方向の83%(10/12)からのプラスミド収量は、比較的少量であった(図13Aおよび図13Bを参照のこと)。
【0138】
実施例5
トランスフェクション効率の改善および配列の標的化
別の局面において、本発明は、トランスフェクション効率を改善するための材料および方法を提供する。いくつかの好ましい態様において、1つまたは複数のTer部位を含む核酸は、核酸上に含まれる配列のトランスフェクション効率および/または発現を改善するために、Ter結合タンパク質と接触させることができる。いくつかの態様において、細胞の取り込み、細胞局在化、核酸の安定性、またはその組み合わせを改善する、1つまたは複数の修飾を含むように、Ter結合タンパク質を修飾することができる。いくつかの態様において、Ter結合タンパク質を、1つまたは複数の細胞の受容体によって認識される、1つまたは複数のリガンドを含むように修飾することができる。例えば、Ter結合タンパク質は、これに限定されるわけではないが、アミノ酸配列アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)を含有するタンパク質またはペプチドを含む、1つまたは複数のインテグリン結合リガンドを含むように誘導されることが可能である。そのようなタンパク質またはペプチドは、そのようなタンパク質またはペプチドとTer結合タンパク質の間の融合タンパク質の、主要配列の一部でありうる。他の態様において、そのようなタンパク質またはペプチドは、従来的なタンパク質-タンパク質リンカーを用いて、Ter結合タンパク質に付着させることができる。例えば、内在のアミノ基を介して1つのRGD配列を含むタンパク質またはペプチドは、グルタルアルデヒドのような架橋試薬を用いて連結することができる。他の態様において、1つのRGD配列を含むタンパク質またはペプチドは、チオール部分またはヒドロキシル部分のような、他の反応性の機能的部分を介して、Ter結合タンパク質に連結することができる。反応性の機能的部分の連結は、タンパク質化学の技術分野においては日常的に行われることが、当業者には理解される。
【0139】
この種のいくつかの態様において、核酸分子は、複数のTer部位を含み得る。例えば、線状核酸は、分子の各末端に1つのTer部位を有し得る。核酸は、1つまたは複数の修飾を有する、1つまたは複数のTer結合融合タンパク質と接触させることができる。いくつかの態様において、Ter結合融合タンパク質は、核酸の取り込みおよび細胞標的化を増強するように設計された、2つまたはそれ以上の異なる修飾を含み得る。例えば、あるTer結合融合タンパク質は、受容体リガンドを含むように修飾することができ、別のTer結合融合タンパク質は、核局在化配列を含むように修飾することができる。各種類のものが1つの核酸分子に結合するように、核酸を双方の修飾タンパク質と接触させることができる。分子の細胞へのトランスフェクションは、受容体リガンドの存在によって増強され、発現は、核局在化配列に仲介される、核への核酸の輸送によって増強される。
【0140】
実施例6
インビボにおいて線状DNA分子の末端を保護するためにTer結合タンパク質/Terを用いて、細胞における遺伝子ターゲティング/ノックアウトを改善する
本発明のある態様において、Ter部位を含む核酸を、機能的Ter結合タンパク質と接触させ、安定な核酸-タンパク質複合体を形成させることができる。安定な複合体はその後、従来的な技術を用いて、レシピエント宿主細胞にトランスフェクションすることができる。この種の態様は、例えば、例として胚性幹細胞のような細胞におけるノックアウトを作製するためのように、遺伝子ターゲティング/ノックアウトの効率を改善するために有用となり得る。いくつかの好ましい態様において、核酸は、核酸の各末端上にあり得る1つまたは複数のTer部位と共に提供されうる。この種の分子を、Ter結合タンパク質および/またはTer結合融合タンパク質と接触させる場合、安定な複合体は、核酸の各末端に1つまたは複数のTer結合タンパク質を含み得る。核酸の末端におけるTer結合タンパク質の存在によって、細胞取り込み後の核酸分子の安定性が増強されうる。この種の態様における使用のためのTer結合タンパク質は、例えば核標的化配列のような、細胞内標的化配列を含み得る。
【0141】
ある態様において、2つのTer部位を有する核酸は、線状分子の形態を固定するように、多価Ter結合タンパク質と接触してもよい。選択的に、例えば1つまたは複数のトポイソメラーゼ酵素および適した補因子を用いて分子を処理することによって、形態を改変するために分子を処理することができる。
【0142】
実施例7
生物学的分子の検出において使用するための検出分子を有するTer結合融合体の使用
ある態様において、本発明は、生物学的分子の検出において使用するための材料および方法を含む。いくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、検出分子を含み得る。適切な検出分子には、これに限定されるわけではないが、発色団、蛍光団、および酵素などが含まれる。いくつかの好ましい態様において、検出分子は、その活性を測定することができる任意の酵素でありうる。適した酵素には、これに限定されるわけではないが、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、およびβ-グルクロニダーゼなどが含まれる。いくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、同じまたは異なることが可能である、複数の検出可能な部分を含み得る。
【0143】
ある態様において、検出される生物学的分子は核酸であり得る。いくつかの態様において、核酸を、フィルターおよび/またはアレイのような固体支持体に固定することができる。関心対象の核酸を検出するために、関心対象の核酸にハイブリダイズすることができる配列を含むプローブ核酸に、Ter部位を含む配列を備えることができる。Ter部位は、ヘアピン分子の形態において提供することができる、または、その代わりに、Ter部位の1つの鎖を、関心対象の核酸にハイブリダイズできる核酸に取り込むことができる、および、核酸に取り込まれたTer部位の鎖に相補的な配列を有する第二のオリゴヌクレオチドを別個の分子として提供することができる。この種の態様において、第二のオリゴヌクレオチドを、プローブ核酸の標的核酸へのハイブリダイゼーションの前または後のいずれかに提供することができる。Ter部位を含むプローブ分子の標的分子へのハイブリダイゼーション後、Ter部位を含むプローブ分子は、検出可能な部分を含むTer結合タンパク質を用いて検出することができる。本態様は図8において例示される。
【0144】
実施例8
Ter結合タンパク質で被覆した固体支持体の使用
1つまたは複数のTer結合タンパク質が付着された固体支持体は、混合物からTer部位を含む分子を精製するために使用することができる。混合物は、例えばPCR反応のような望ましい反応の結果でありうる。PCR産物または開始鋳型は、Ter部位を含み得る。反応完了後、Ter結合タンパク質を含む固体支持体(例えば、磁気ビーズ)と混合物を接触させることによって、反応混合物の残りから、Ter部位を含む分子を分離することができる。混合物の残りの成分をその後、ビーズから洗浄し、固体支持体からTer部位を含む分子を溶出させることができる。本態様は、様々な生物学的分子を、それらを含む混合物から分離するために使用することができる。他の態様は、これに限定されるわけではないが、ほんの二、三例を挙げると、挿入配列からベクターを分離する段階;反応成分から配列決定産物、例えばPCR反応またはエキソヌクレアーゼ反応におけるdNTPまたはdNMPからDNAを分離する段階;ミニプレップからプラスミドを分離する段階を含む。
【0145】
本発明のいくつかの態様において、Ter結合タンパク質は、1つまたは複数の固体支持体に、共有結合によって付着することができる。固体支持体は、当技術分野において習慣的に使用される任意の形態のものが可能であり、例えば、フィルター、ファイバー、膜、スライドガラス、ビーズ、および/または96ウェルプレートの形態にあることが可能である。
【0146】
Ter部位を有する核酸を精製するために、固体支持体に付着されたTer結合タンパク質と核酸を含む溶液を接触させ、複合体を形成させる。Ter部位を含まない核酸は結合されず、結合された核酸から分離することができる(図6Aおよび図6Bを参照のこと)。本態様は、例えばミニプレップにおける、細胞溶解物からのプラスミドの精製において有用となる。
【0147】
実施例9
核酸分子における部位を並列させ、産物の合成を増大させるためのTer結合タンパク質/Terの使用
さらに別の局面において、本発明は、核酸分子における部位を並列させる方法に関連する。ある態様において、2つのTer部位を含む核酸を、多価の(即ち二価の)Ter結合タンパク質と接触させる。核酸分子上の各結合部位は、多価Ter結合タンパク質上の部位に結合し、その結果、2つの部位の並列がもたらされる。核酸は選択的に、例えば組換え反応、エンドヌクレアーゼ反応、ライゲーションなどのような、付加的な操作を受けることが可能である。
【0148】
別の態様において、本発明は、分子内の部位を望ましい空間関係に移動させるために使用することができる。例えば、本発明は、2つの部位(例えば線状核酸分子の2つの末端、「A」および「B」)を並列させるために使用することができる(図10を参照のこと)。図10は、核酸分子に沿って転位することができる酵素を用いた、本発明のある態様を表す。図10は、転位酵素としてポリメラーゼ酵素を示すものであるが、転位酵素として、例えばヘリカーゼのような他の酵素も使用できることは、当業者には理解される。
【0149】
二重鎖DNAは、DNA/タンパク質相互作用および転写が許容されるように適切に配置されたTer部位を一方の末端「A」に、および、RNAポリメラーゼのためのプロモーターをTer部位の近くに含む。Ter結合タンパク質は、例えば融合タンパク質を構築することによって、プロモーターを認識するRNAポリメラーゼと機能的に会合している。Ter結合タンパク質-RNAポリメラーゼ複合体を線状二重鎖DNAに加える場合、Ter結合タンパク質はTerに結合し、RNAポリメラーゼは近くのプロモーターに結合する。一定の条件下におけるヌクレオチドの添加により、二重鎖DNAを他方の末端に向かって進むRNAポリメラーゼによる転写がもたらされる。結合されたTer結合タンパク質は、「A」末端を「B」末端に向かって引き寄せる。「A」と「B」がきわめて近接にある場合、2つの末端は、より効率的にアニールまたは連結されることが可能である。約250 塩基対(bp)〜250,000 bp、好ましくは1,000 bp〜100,000 bpの核酸分子の末端を並置することができる。ほんの二、三例を挙げると、大腸菌RNAポリメラーゼホロ酵素、T7 RNAポリメラーゼ、またはSP6 RNAポリメラーゼのような、DNA鎖上の特定の部位に対して指向させることが可能なポリメラーゼを使用することができる。このようにして、線状DNAの末端における分子内の結合を増加させることができ、キメラ分子の形成を減少させることができる。
【0150】
この種の態様の別の局面は、Ter結合タンパク質-ポリメラーゼ融合体の相互作用の結果として観察される、再開始速度(およびそれによる、産物の合成)の増加である。第一産物の合成の完了後、融合タンパク質のポリメラーゼ部分は、鋳型分子を解離し得る。Ter結合部分は、鋳型を解離せず、その結果、次なる開始および重合のサイクルが始まり得るプロモーターにポリメラーゼが即時に配置されることになる。
【0151】
実施例10
単鎖核酸の産生をモニタリングするためのTer結合タンパク質の使用
Ter結合タンパク質が、単鎖Ter部位には結合できないということを、二重鎖DNAから単鎖DNAへの転換、またはその逆について、モニタリングまたは選択を行うために使用することができる。二重鎖DNAの形成をモニタリングする段階は、二重鎖PCR産物の形成を検出するために、または、二重鎖DNA産物の形成の、リアルタイムの検出および測定のために使用することができる。例えば、標的配列の増幅を、Ter配列を取り込むプライマーを用いて行うことができる。プライマーはまた、蛍光分子のような検出可能な標識をも含み得る。増幅は、検出可能な標識の蛍光を消光できる部分を選択的に含み得る、Ter結合タンパク質の存在下において行うことができる。Ter結合タンパク質はプライマーに結合しないため、開始時蛍光は、Ter結合タンパク質によって実質的に改変することができない。増幅が進むにつれ、二重鎖Ter部位が形成されてTer結合タンパク質が結合する。Ter結合タンパク質上の消光部分の存在によって、蛍光の減少が生じる。
【0152】
別の態様において、蛍光が消光されるように配置された蛍光団およびクエンチャー(消光剤)の双方を含むような、Ter部位を含むプライマーを用いて、増幅反応を行うことができる。エキソヌクレアーゼを含むように修飾されたTer結合タンパク質を、増幅反応に加える。増幅は二重鎖Ter部位を形成しながら進行し、Ter結合タンパク質は二重鎖部位に結合し、エキソヌクレアーゼを、二重鎖核酸からクエンチャーを取り除かせる定位置につかせ、それにより、二重鎖核酸の形成の機能として観察される蛍光を増加させる。
【0153】
別の態様において、少なくともTer部位部分を含む少なくとも部分的には単鎖の核酸を、固体支持体に結合することができる。結合された核酸は、同様に少なくとも部分的には単鎖の第二の核酸と接触させることができ、2つの核酸のハイブリダイゼーションによって、Ter結合タンパク質に結合されることが可能なTer部位の形成がもたらされるように、単鎖部分は、第一の核酸のものと相補的な配列を含む。Ter結合タンパク質は選択的に、例えば検出可能な標識を含み得るような、修飾Ter結合タンパク質でありうる。
【0154】
実施例11
単鎖核酸を作製するためのTer結合タンパク質の使用
さらに別の局面において、本発明は、Ter部位を含む二重鎖(ds)DNAから単鎖(ss)DNAを作製する方法に関連する(図9を参照のこと)。本方法は、二重鎖DNA上のTer部位にTer結合タンパク質を結合させる段階、結合されたTer結合タンパク質によって一方の鎖の酵素による分解が阻害されるような、エキソヌクレアーゼによってDNAの一方の鎖を分解する段階、および、残りの非分解単鎖DNAを精製する段階を含む。
【0155】
さらに別の局面において、本発明は、所望の断片を作製する方法に関連する。本方法は、二重鎖DNA上のTer部位にTer結合タンパク質を結合させる段階、エキソヌクレアーゼによってDNAの一方の鎖を分解する段階であり、結合されたTer結合タンパク質によって、一方の鎖の酵素による分解が阻害されるような段階を含む。選択的に、残りの非分解単鎖DNAを精製することができる。これは、Ter部位を含む二重鎖(ds)DNAから単鎖(ss)DNA断片を作製するために使用することができる(図9)。選択的に、単鎖DNAは、二重鎖DNAに転換することができる。
【0156】
実施例12
核酸の形態を調節するための、Ter結合タンパク質の使用
さらに別の局面において、本発明は、核酸分子の形態を調節する方法に関連する。ある局面において、本発明は、線状DNAの超らせん性を維持する方法であり、二重鎖、超らせんDNAが、線状化後に超らせんのままであることが望ましいセグメントの各末端に、2つのTer部位を1つずつ含むような方法を提供する(図11)。二価Ter結合タンパク質のような多価Ter結合タンパク質を、双方のTer部位が結合されることが可能であり、その結果、一方のドメインが他方とは独立して回転できるように、一方のトポロジカルなドメインが他方から隔離されるように加える。二価Ter結合タンパク質は、例えば、リンカーを用いて、または用いずに、Ter結合タンパク質をコードするオープンリーディングフレームの直列反復配列をクローニングすることによって、または、2つの分子を架橋させることによって、作製することができる。DNA断片が一旦線状化されれば、Ter部位に含まれる非線状化ドメインは、Ter結合タンパク質の1つが解離されるまで超らせんのままである。本方法は、超らせん化が有益であるような反応のために有用である。
【0157】
別の局面において、2つのTer部位を有する線状核酸分子は、二価Ter結合タンパク質と線状核酸を接触させ、複合体を形成させる段階、および、分子の超らせん化をもたらすような条件下において、1つまたは複数のトポイソメラーゼ酵素と複合体を接触させる段階によって、2つのTer部位の間で超らせん化させることが可能である。
【0158】
実施例13
核酸分子上の規定された部位において重合反応を停止させるための、Ter結合タンパク質/Terの相互作用の使用
核酸分子におけるTer部位の存在を、重合反応、即ちPCR反応または転写反応において、全長未満の産物を作製するために使用することができる。例として、例えばT7プロモーターのようなプロモーター、および、プロモーターからの転写がTer部位に向かって行われるように配列されたTer部位を含む核酸を、T7ポリメラーゼおよび適切な補因子と接触させることができる。核酸が、Ter部位に結合されたTer結合タンパク質を有する場合、転写は、Ter結合タンパク質によってポリメラーゼが停止されるまで進められ、結果的に、定められた長さの転写産物の生産がもたらされる。
【0159】
別の局面において、本方法は、PCRを用いたクローニングにおいて利便のために、「付着末端」を有する二重鎖断片を作製するために使用することができる。図12に関して、単鎖の利用可能な配列A、二本鎖Ter部位の上鎖ter'、および、鋳型にアニールすることができるセグメントを含むような、オリゴヌクレオチド#1を作製する。オリゴヌクレオチド#2は、オリゴヌクレオチド#1のter'にハイブリダイズする二本鎖Ter部位の下鎖を含む。
【0160】
オリゴヌクレオチド#1とオリゴヌクレオチド#2がアニールされる場合、望ましい鋳型にハイブリダイズする配列に付着された、完全な二重鎖Ter部位が生じる。Ter部位を認識する熱安定性Ter結合タンパク質を、複合体に右から遭遇する複製フォークが停止されるように結合させる。
【0161】
PCR反応は、鋳型を導入することによって開始される。PCRの間、ポリメラーゼはTer結合タンパク質/Ter複合体の右側で停止され、その結果その遺伝子座においてニックが生じる。
【0162】
PCR後、二重鎖DNAを単離し、除タンパク質し、その結果、オリゴヌクレオチド#2を失い、望ましい突出部が生じる。
【0163】
実施例14
生物学的分子を検出する方法
別の局面において、本発明は、好ましくは、少なくとも1つのTer部位、および、その生物学的分子と特異的な複合体を形成する部分を含有する核酸部分を含む試薬と、生物学的分子を接触させる段階、検出分子に融合されたTer結合タンパク質と複合体を接触させる段階であり、Ter結合タンパク質が試薬の核酸部分に結合するような段階、および、検出分子を検出する段階であり、検出分子の存在が生物学的分子の存在と相関するような段階を含む、生物学的分子を検出する方法に関連する。いくつかの態様において、検出分子は、発色団、蛍光団、酵素、およびエピトープからなる群より選択することができる。
【0164】
ここまでで、理解を明らかにするための例示および実施例として、本発明のいくつかの詳細が完全に説明されたが、本発明の範囲または任意のその特定の態様に影響を与えずに、広いおよび同等の範囲の条件、明確な記述および他のパラメータ内において、本発明を改変または改変することによって、本発明が行われ得ること、ならびに、そのような改変または変化が、添付の特許請求の範囲内に包含されると意図されることが、当業者には明白であると考えられる。
【0165】
本明細書において言及される、全ての刊行物、特許および特許出願は、本発明が属する技術分野における当業者の技術のレベルを示すものであり、各個別の刊行物、特許および特許出願が具体的かつ別々に参照として組み入れられると示されるのと同程度に参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
【図1】Ter部位を含むプラスミドの複製の模式図である。
【図2】Ter配列を選択可能なマーカーとして使用する方法の模式図である。RS=制限部位または組換え部位、rep ori=複製起点、矢印は複製の方向を示す。
【図3】Ter配列を用いた、組換えプラスミドの正の選択方法の模式図である。GOI=関心対象のDNAまたは遺伝子、黒塗りの菱形=Ter断片の5'末端、黒塗りの丸=Ter断片の3'末端、rep ori=複製起点、矢印は複製の方向を示す。
【図4】Ter配列を用いた、望ましい核酸の挿入および組換えプラスミドについての正の選択方法の、模式図である。GOI=関心対象のDNAまたは遺伝子、黒塗りの菱形=Ter断片の5'末端、黒塗りの丸=Ter断片の3'末端、rep ori=複製起点、矢印は複製の方向を示す。
【図5】Ter配列を用いて核酸を固体支持体に付着させる方法の模式図である。
【図6A】図6Aおよび図6Bは、Ter配列を用いて核酸分子を精製する方法の模式図である。図6Aは、Ter部位(黒い四角)がプラスミド上のスタッファー断片(波線)上に存在し、固体支持体に付着させたTer結合タンパク質(TBP)を用いて、未反応のプラスミド、および、部分的に反応したプラスミドを除去させ、正しく反応したプラスミドを精製させるような態様を示す。RE=制限酵素、TBP=Ter結合タンパク質。
【図6B】図6Aおよび図6Bは、Ter配列を用いて核酸分子を精製する方法の模式図である。図6Bは、Ter部位(黒い四角)がプラスミド上に存在し、固体支持体に付着させたTer結合タンパク質(TBP)を用いて、反応混合物から未反応のプラスミド、および、部分的に反応したプラスミドを除去させ、関心対象の望ましい核酸を反応混合物から精製させるような態様を示す。RE=制限酵素、TBP=Ter結合タンパク質。
【図7】Ter配列を用いて、ポリメラーゼ連鎖反応産物からTer部位(黒い四角)を含む鋳型を精製する方法についての模式図である。TBP=Ter結合タンパク質。
【図8】Ter配列を用いた、標的検出方法の模式図である。TBP=Ter結合タンパク質、X=存在する場合は、検出分子。
【図9】Ter配列を用いて単鎖核酸を作製する方法についての模式図である。TBP=Ter結合タンパク質。
【図10】Ter配列を用いて、同じ核酸の2つの末端を並置する方法についての模式図である。T7=T7 RNAポリメラーゼ、TBP=Ter結合タンパク質。
【図11】Ter配列を用いて、線状核酸のある領域の超らせん性を維持する方法についての模式図である。TBP=Ter結合タンパク質。
【図12】Ter配列を用いて突出「付着末端」を作製する方法についての模式図である。A=単鎖の利用可能な配列、ter'=二本鎖Ter配列の下鎖、アニーリング=鋳型にアニーリングできるセグメント、ter=ter'にハイブリダイズする二本鎖ter配列の上鎖。
【図13】図13Aおよび図13Bは、Ter部位を用いて定方向クローニングを使用した組換えベクターの解析の結果を示す。13Aにおいては、レーンは以下のように泳動された:M、1 kbマーカー、レーン1、3、5、7、9、11、13、および15、挿入配列なし;レーン2、4、6、8、10、12、14、16〜24、1μlベクター/5μl挿入配列。13Bにおいては、レーンは以下のように泳動された:M、1 kbマーカー、レーン1〜24、10μlベクター/5μl挿入配列。+=正しく配向された挿入配列、*=逆向きの挿入配列、-=挿入配列なし、0=DNAは検出されない。
【図14】実施例5において使用される構築物の模式図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのTer部位の全てまたは一部を含むように操作される、単離された核酸分子。
【請求項2】
核酸が複製起点を含み、かつ、2つのTer部位間の配列が複製されないように複製起点に対してTer部位が配置される、請求項1記載の核酸分子。
【請求項3】
TerB部位の全てまたは一部を含む、請求項1記載の核酸分子。
【請求項4】
プラスミド、トランスポゾン、BAC、YAC、およびファージからなる群より選択される、請求項2記載の核酸分子。
【請求項5】
各末端においてTer結合タンパク質によって結合されることが可能なTer部位の全てまたは一部を含む線状分子である、請求項1記載の核酸分子。
【請求項6】
組換え配列、制限酵素認識配列、複製起点、選択可能なマーカー配列からなる群より選択される、1つまたは複数の配列をさらに含む、請求項5記載の分子。
【請求項7】
修飾されたTer結合タンパク質。
【請求項8】
Tusタンパク質またはRTPを含む、請求項7記載のタンパク質。
【請求項9】
修飾が、少なくとも1つのポリペプチドを含む、請求項7記載のタンパク質。
【請求項10】
修飾が、緑色蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼおよびβ-グルクロニダーゼからなる群より選択される、請求項7記載のタンパク質。
【請求項11】
修飾が、少なくとも1つの蛍光分子を含む、請求項7記載のタンパク質。
【請求項12】
修飾が、少なくとも1つの発色団を含む、請求項7記載のタンパク質。
【請求項13】
Ter部位の全てまたは一部を含有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む、固体支持体。
【請求項14】
非生物材料である、請求項13記載の固体支持体。
【請求項15】
オリゴヌクレオチドがステムループまたはヘアピンを形成することが可能である、請求項13記載の固体支持体。
【請求項16】
ステムループまたはヘアピンの二本鎖部分がTer部位を含む、請求項15記載の固体支持体。
【請求項17】
Ter結合タンパク質を含む、固体支持体。
【請求項18】
非生物材料である、請求項17記載の固体支持体。
【請求項19】
Ter結合タンパク質がTusまたはRTPである、請求項17記載の固体支持体。
【請求項20】
以下の段階を含む、定方向クローニング方法:
1つまたは複数のTer部位またはその一部を含む核酸分子を提供する段階;
1つまたは複数のTer部位またはその一部を含むベクター分子を提供する段階;
ベクター分子に核酸分子を挿入する段階;および
望ましい方向にある核酸分子を含むベクター分子を選択する段階。
【請求項21】
選択段階が以下の段階を含む、請求項20記載の方法:
Ter結合タンパク質を発現する宿主細胞に、ベクター分子をトランスフェクションする段階。
【請求項22】
Ter結合タンパク質がTusまたはRTPである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
選択段階が、望ましくない方向にある核酸分子を含むベクター分子の複製の阻害を含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
核酸分子中のTer部位、および、ベクター中のTer部位が、部分的なTer部位である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
以下の段階を含む、核酸を固体支持体に付着させる方法:
1つまたは複数のTer結合タンパク質を固体支持体に付着させる段階;および
Ter部位を含む第一の核酸とTer結合タンパク質を接触させる段階。
【請求項26】
Ter結合タンパク質がTusタンパク質またはRTPである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
第一の核酸を第二の核酸と接触させる段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
以下の段階を含む、核酸のトランスフェクション効率を改善する方法:
核酸においてTer部位を提供する段階;および
Ter結合タンパク質と核酸を接触させる段階。
【請求項29】
Ter結合タンパク質が修飾Ter結合タンパク質である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
Ter結合タンパク質が受容体結合リガンドを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
Ter結合タンパク質が細胞標的化配列を含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
Ter結合タンパク質が細胞表面結合成分を含む、請求項29記載の方法。
【請求項33】
細胞標的化配列が核局在化配列である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
Ter結合タンパク質をさらに含む、請求項1記載の線状核酸分子を含む組成物。
【請求項35】
Ter結合タンパク質がTusタンパク質またはRTPである、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
以下の段階を含む、インビボにおける線状核酸分子の安定性を改善する方法:
1つまたは複数のTer部位を含む線状核酸分子を提供する段階;
Ter結合タンパク質と核酸を接触させ、安定な核酸-タンパク質複合体を形成させる段階;および
単独でトランスフェクションした核酸よりも複合体の方が安定である、安定な核酸-タンパク質複合体を宿主細胞に導入する段階。
【請求項37】
宿主細胞がTer結合タンパク質を発現する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
線状核酸が、1つまたは複数の遺伝子の全てまたは一部を含む、請求項36記載の方法。
【請求項39】
以下の段階を含む、生物学的分子を検出する方法:
試薬が、核酸部分および、生物学的分子と特異的な複合体を形成することができる部分を含む、試薬と生物学的分子を接触させて検出混合物を形成させる段階;
核酸結合タンパク質が試薬の核酸部分と特異的に結合する、検出分子を含む核酸結合タンパク質と検出混合物を接触させる段階;ならびに
検出分子の存在が生物学的分子の存在と相関しかつ検出分子の不在が生物学的分子の不在と相関する、検出混合物における検出分子の有無を決定する段階。
【請求項40】
試薬の核酸部分がTer部位を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
核酸結合タンパク質がTer結合タンパク質である、請求項39記載の方法。
【請求項42】
検出分子が、放射性標識、エピトープ、ハプテン、ミメトープ、親和性タグ、アプタマー、発色団、蛍光団および酵素からなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項43】
検出分子が、緑色蛍光タンパク質、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼおよびルシフェラーゼからなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項44】
固体支持体に付着されたTer結合タンパク質を含む、組成物。
【請求項45】
固体支持体が非生物材料である、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
Ter結合タンパク質がTusまたはRTPである、請求項44記載の組成物。
【請求項47】
固体支持体がビーズである、請求項44記載の組成物。
【請求項48】
固体支持体がクロマトグラフィー媒体である、請求項44記載の組成物。
【請求項49】
固体支持体がフィルターまたは膜である、請求項44記載の組成物。
【請求項50】
以下の段階を含む、Ter部位を含む核酸を混合物から分離する方法:
Ter結合タンパク質がTer部位に結合する、Ter結合タンパク質を含む組成物と核酸を接触させる段階;および
結合された核酸を混合物から分離する段階。
【請求項51】
Ter結合タンパク質が固体支持体に付着される、請求項50記載の方法。
【請求項52】
Ter結合タンパク質がTusまたはRTPである、請求項50記載の方法。
【請求項53】
Ter結合タンパク質に結合されていない少なくとも1つの核酸が、混合物に含まれる、請求項50記載の方法。
【請求項54】
以下からなる群より選択される少なくとも2つの成分を含有する核酸を含むキット:
少なくとも2つのTer部位の全てまたは一部を含むように操作された核酸分子;1つまたは複数のTer結合タンパク質;1つまたは複数のヌクレオチド;1つまたは複数のDNAポリメラーゼ;1つまたは複数の逆転写酵素;1つまたは複数の適切な緩衝液、1つまたは複数のプライマー;使用説明書;および、1つまたは複数の終結物質。
【請求項55】
以下の段階を含む、核酸分子上のTer部位を、核酸分子上の第二の部位と並列させる方法:
Ter部位を有する核酸分子を提供する段階;
核酸分子に沿って転位できる酵素と機能的に会合しているTer結合タンパク質と核酸を接触させる段階;および
酵素の転位をもたらす反応を行い、それにより、Ter部位および第二の部位を並列させる段階。
【請求項56】
核酸がTer部位の近傍にプロモーターを含み、かつ酵素がポリメラーゼである、請求項55記載の方法。
【請求項57】
以下の段階を含む、クローニングの方法:
Ter部位の一部を各末端に含む線状ベクターを提供する段階;
核酸と連結しないベクターによって機能的Ter部位が再形成される、ベクターと関心対象の核酸を連結してライゲーション混合物を形成させる段階;および
機能的Ter部位を有するベクターを受け取る宿主細胞がベクターを複製しない、ライゲーション混合物を宿主細胞に導入する段階。
【請求項1】
少なくとも2つのTer部位の全てまたは一部を含むように操作される、単離された核酸分子。
【請求項2】
核酸が複製起点を含み、かつ、2つのTer部位間の配列が複製されないように複製起点に対してTer部位が配置される、請求項1記載の核酸分子。
【請求項3】
TerB部位の全てまたは一部を含む、請求項1記載の核酸分子。
【請求項4】
プラスミド、トランスポゾン、BAC、YAC、およびファージからなる群より選択される、請求項2記載の核酸分子。
【請求項5】
各末端においてTer結合タンパク質によって結合されることが可能なTer部位の全てまたは一部を含む線状分子である、請求項1記載の核酸分子。
【請求項6】
組換え配列、制限酵素認識配列、複製起点、選択可能なマーカー配列からなる群より選択される、1つまたは複数の配列をさらに含む、請求項5記載の分子。
【請求項7】
修飾されたTer結合タンパク質。
【請求項8】
Tusタンパク質またはRTPを含む、請求項7記載のタンパク質。
【請求項9】
修飾が、少なくとも1つのポリペプチドを含む、請求項7記載のタンパク質。
【請求項10】
修飾が、緑色蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼおよびβ-グルクロニダーゼからなる群より選択される、請求項7記載のタンパク質。
【請求項11】
修飾が、少なくとも1つの蛍光分子を含む、請求項7記載のタンパク質。
【請求項12】
修飾が、少なくとも1つの発色団を含む、請求項7記載のタンパク質。
【請求項13】
Ter部位の全てまたは一部を含有する少なくとも1つのオリゴヌクレオチドを含む、固体支持体。
【請求項14】
非生物材料である、請求項13記載の固体支持体。
【請求項15】
オリゴヌクレオチドがステムループまたはヘアピンを形成することが可能である、請求項13記載の固体支持体。
【請求項16】
ステムループまたはヘアピンの二本鎖部分がTer部位を含む、請求項15記載の固体支持体。
【請求項17】
Ter結合タンパク質を含む、固体支持体。
【請求項18】
非生物材料である、請求項17記載の固体支持体。
【請求項19】
Ter結合タンパク質がTusまたはRTPである、請求項17記載の固体支持体。
【請求項20】
以下の段階を含む、定方向クローニング方法:
1つまたは複数のTer部位またはその一部を含む核酸分子を提供する段階;
1つまたは複数のTer部位またはその一部を含むベクター分子を提供する段階;
ベクター分子に核酸分子を挿入する段階;および
望ましい方向にある核酸分子を含むベクター分子を選択する段階。
【請求項21】
選択段階が以下の段階を含む、請求項20記載の方法:
Ter結合タンパク質を発現する宿主細胞に、ベクター分子をトランスフェクションする段階。
【請求項22】
Ter結合タンパク質がTusまたはRTPである、請求項21記載の方法。
【請求項23】
選択段階が、望ましくない方向にある核酸分子を含むベクター分子の複製の阻害を含む、請求項20記載の方法。
【請求項24】
核酸分子中のTer部位、および、ベクター中のTer部位が、部分的なTer部位である、請求項20記載の方法。
【請求項25】
以下の段階を含む、核酸を固体支持体に付着させる方法:
1つまたは複数のTer結合タンパク質を固体支持体に付着させる段階;および
Ter部位を含む第一の核酸とTer結合タンパク質を接触させる段階。
【請求項26】
Ter結合タンパク質がTusタンパク質またはRTPである、請求項25記載の方法。
【請求項27】
第一の核酸を第二の核酸と接触させる段階をさらに含む、請求項25記載の方法。
【請求項28】
以下の段階を含む、核酸のトランスフェクション効率を改善する方法:
核酸においてTer部位を提供する段階;および
Ter結合タンパク質と核酸を接触させる段階。
【請求項29】
Ter結合タンパク質が修飾Ter結合タンパク質である、請求項28記載の方法。
【請求項30】
Ter結合タンパク質が受容体結合リガンドを含む、請求項29記載の方法。
【請求項31】
Ter結合タンパク質が細胞標的化配列を含む、請求項29記載の方法。
【請求項32】
Ter結合タンパク質が細胞表面結合成分を含む、請求項29記載の方法。
【請求項33】
細胞標的化配列が核局在化配列である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
Ter結合タンパク質をさらに含む、請求項1記載の線状核酸分子を含む組成物。
【請求項35】
Ter結合タンパク質がTusタンパク質またはRTPである、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
以下の段階を含む、インビボにおける線状核酸分子の安定性を改善する方法:
1つまたは複数のTer部位を含む線状核酸分子を提供する段階;
Ter結合タンパク質と核酸を接触させ、安定な核酸-タンパク質複合体を形成させる段階;および
単独でトランスフェクションした核酸よりも複合体の方が安定である、安定な核酸-タンパク質複合体を宿主細胞に導入する段階。
【請求項37】
宿主細胞がTer結合タンパク質を発現する、請求項36記載の方法。
【請求項38】
線状核酸が、1つまたは複数の遺伝子の全てまたは一部を含む、請求項36記載の方法。
【請求項39】
以下の段階を含む、生物学的分子を検出する方法:
試薬が、核酸部分および、生物学的分子と特異的な複合体を形成することができる部分を含む、試薬と生物学的分子を接触させて検出混合物を形成させる段階;
核酸結合タンパク質が試薬の核酸部分と特異的に結合する、検出分子を含む核酸結合タンパク質と検出混合物を接触させる段階;ならびに
検出分子の存在が生物学的分子の存在と相関しかつ検出分子の不在が生物学的分子の不在と相関する、検出混合物における検出分子の有無を決定する段階。
【請求項40】
試薬の核酸部分がTer部位を含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
核酸結合タンパク質がTer結合タンパク質である、請求項39記載の方法。
【請求項42】
検出分子が、放射性標識、エピトープ、ハプテン、ミメトープ、親和性タグ、アプタマー、発色団、蛍光団および酵素からなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項43】
検出分子が、緑色蛍光タンパク質、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼおよびルシフェラーゼからなる群より選択される、請求項39記載の方法。
【請求項44】
固体支持体に付着されたTer結合タンパク質を含む、組成物。
【請求項45】
固体支持体が非生物材料である、請求項44記載の組成物。
【請求項46】
Ter結合タンパク質がTusまたはRTPである、請求項44記載の組成物。
【請求項47】
固体支持体がビーズである、請求項44記載の組成物。
【請求項48】
固体支持体がクロマトグラフィー媒体である、請求項44記載の組成物。
【請求項49】
固体支持体がフィルターまたは膜である、請求項44記載の組成物。
【請求項50】
以下の段階を含む、Ter部位を含む核酸を混合物から分離する方法:
Ter結合タンパク質がTer部位に結合する、Ter結合タンパク質を含む組成物と核酸を接触させる段階;および
結合された核酸を混合物から分離する段階。
【請求項51】
Ter結合タンパク質が固体支持体に付着される、請求項50記載の方法。
【請求項52】
Ter結合タンパク質がTusまたはRTPである、請求項50記載の方法。
【請求項53】
Ter結合タンパク質に結合されていない少なくとも1つの核酸が、混合物に含まれる、請求項50記載の方法。
【請求項54】
以下からなる群より選択される少なくとも2つの成分を含有する核酸を含むキット:
少なくとも2つのTer部位の全てまたは一部を含むように操作された核酸分子;1つまたは複数のTer結合タンパク質;1つまたは複数のヌクレオチド;1つまたは複数のDNAポリメラーゼ;1つまたは複数の逆転写酵素;1つまたは複数の適切な緩衝液、1つまたは複数のプライマー;使用説明書;および、1つまたは複数の終結物質。
【請求項55】
以下の段階を含む、核酸分子上のTer部位を、核酸分子上の第二の部位と並列させる方法:
Ter部位を有する核酸分子を提供する段階;
核酸分子に沿って転位できる酵素と機能的に会合しているTer結合タンパク質と核酸を接触させる段階;および
酵素の転位をもたらす反応を行い、それにより、Ter部位および第二の部位を並列させる段階。
【請求項56】
核酸がTer部位の近傍にプロモーターを含み、かつ酵素がポリメラーゼである、請求項55記載の方法。
【請求項57】
以下の段階を含む、クローニングの方法:
Ter部位の一部を各末端に含む線状ベクターを提供する段階;
核酸と連結しないベクターによって機能的Ter部位が再形成される、ベクターと関心対象の核酸を連結してライゲーション混合物を形成させる段階;および
機能的Ter部位を有するベクターを受け取る宿主細胞がベクターを複製しない、ライゲーション混合物を宿主細胞に導入する段階。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−111(P2009−111A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−154222(P2008−154222)
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【分割の表示】特願2002−563294(P2002−563294)の分割
【原出願日】平成14年2月7日(2002.2.7)
【出願人】(502221282)インヴィトロジェン コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【分割の表示】特願2002−563294(P2002−563294)の分割
【原出願日】平成14年2月7日(2002.2.7)
【出願人】(502221282)インヴィトロジェン コーポレーション (113)
【Fターム(参考)】
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