説明

TIS−B装置及び情報配信方法

【課題】TIS−Bを利用する場合、二次監視レーダや航空機に悪影響を与えることなく信号を配信する。
【解決手段】二次監視レーダからの質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を入力し、当該応答信号に含まれる航空機の位置情報から二次監視レーダのアンテナの向きを予測するアンテナ予測手段213と、アンテナ予測手段213が予測した向きが所定範囲のとき、信号の配信を制限する送信制御手段214とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機の位置情報を配信する放送型交通情報サービス(TIS−B)で利用されるTIS−B装置及び情報配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の飛行は、質問信号や応答信号を送受信する二次監視レーダ等のレーダを利用して監視されている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。また、レーダによる監視の他、航空機の飛行の安全を図るための航空機同士の衝突を防止するシステムとして、航空機同士で位置情報を交換する放送型自動従属監視(ADS−B:Automatic Dependent Surveillance-Broadcast)も利用されている。
【0003】
一方、現状ではADS−B装置に対応する装置を搭載する航空機の数はまだ少ない。そのため、ADS−B装置が各航空機に普及されるまでの間、地上から航空機の位置情報を配信(送信)する放送型交通情報サービス(TIS−B:Traffic information Service-Broadcast)の併用も検討されている。このようなADS−B装置やTIS−B装置を利用することで、二次監視レーダによる監視に加え、有用な情報を航空機で効率良く取得することが可能になり、航空機同士の衝突等の危険の回避を高めることが可能となる。
【0004】
しかしながら、ADS−B装置やTIS−B装置で利用される信号の形式は、他装置への干渉等の影響が強い。地上のTIS−B装置は、二次監視レーダ等の他の装置と非同期で利用されるため、TIS−B装置から配信する信号が、二次監視レーダに対する航空機の応答信号(以下、単に「航空機の応答信号」とする)と干渉するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−248296号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Michael C. Stevens “Secondary Surveillance Radar” 1988, ISBN 0-89006-292-7.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、TIS−Bを利用する場合、TIS−B装置から送信される信号が航空機の応答信号と干渉するおそれがある。
【0008】
したがって本発明は、TIS−Bを利用する場合、二次監視レーダや航空機に悪影響を与えることなく信号を配信するTIS−B装置及び情報配信方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴に係るTIS−B装置は、航空機から送信された当該航空機の位置情報を含む信号を入力するとともに、飛行する航空機に関する情報を二次監視レーダから入力すると、航空機の位置情報を含む信号を生成して配信するTIS−B装置であって、前記二次監視レーダからの質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を入力し、当該応答信号に含まれる前記航空機の位置情報から前記二次監視レーダのアンテナの向きを予測するアンテナ予測手段と、前記アンテナ予測手段が予測した向きが所定範囲のとき、信号の配信を制限する送信制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、TIS−Bを利用する場合、二次監視レーダや航空機に悪影響を与えることなく信号を配信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るTIS−B装置が利用される環境について説明する概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るTIS−B装置の構成について説明するブロック図である。
【図3】二次監視レーダのアンテナの向きと図2のTIS−B装置との関係について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を用いて本発明に係るTIS−B装置について説明する。図1に示すように、本発明に係るTIS−B装置1は、TIS−B(放送型交通情報サービス)で利用される装置であって、二次監視レーダ2と航空機T1、T2、T3とが質問応答を行なうとともに、ADS―Bに対応するADS−B搭載機T1、T2がADS−B信号である拡張スキッタを送受信する環境下で使用される。
【0013】
TIS−B装置1は、図2に示すように、航空機から送信された信号(応答信号、ADS−B信号)を受信して受信信号を処理する受信装置10と、受信装置10が受信した信号に含まれる情報と、二次監視レーダ2が取得した情報とからTIS−B信号である拡張スキッタを送信信号として生成し、生成したTIS−B信号を送信する送信装置20とを備えている。
【0014】
受信装置10は、航空機から送信されたADS−B信号等の応答信号を受信する受信手段11と、受信手段11が受信した受信信号を2値化処理する2値化手段12と、受信信号のうちADS−B信号(拡張スキッタ)を復号処理し、復号結果を送信装置20に出力する拡張スキッタ処理手段13と、受信信号のうちモードS応答信号を復号処理し、復号結果を送信装置20に出力するモードS応答処理手段14とを備える。
【0015】
送信装置20は、受信装置10から取得したADS−B信号の復号結果に含まれるADS−B搭載機に関する情報と、二次監視レーダ2から取得した監視情報に含まれる航空機に関する情報とを入力すると送信信号であるTIS−B信号(拡張スキッタ)を生成する情報処理部21と、情報処理部21で生成されたTIS−B信号の送信タイミングを管理する送信管理手段22と、情報処理部21で生成されたTIS−B信号を送信信号の形式に変換し、送信管理手段22で管理されるタイミングで出力する送信信号変換手段23と、送信信号変換手段23で変換後のTIS−B信号を、送信する送信手段24とを備えている。
【0016】
この送信装置20では、通常は所定のタイミング(例えば、0.5秒間隔)でTIS−B信号を送信しているが、TIS−B装置1が送信するTIS−B信号が航空機の応答信号とで発生する干渉を防止する必要がある。そのため、情報処理部21は、TIS−B信号と航空機の応答信号が干渉しやすいタイミングでTIS−B信号の送信を制御して干渉を防止する。具体的には、情報処理部21は、図2に示すように、送信信号生成手段211、領域決定手段212、アンテナ予測手段213及び送信制御手段214を有している。
【0017】
送信信号生成手段211は、受信装置10から取得するADS−B信号の復号処理の結果と、二次監視レーダ2から取得する航空機の監視情報(監視している航空機のモードSアドレスと位置)とを利用して送信するTIS−B信号を生成する。具体的には、送信信号生成手段211は、ADS−B信号の送信処理の結果からADS−B搭載機の飛行状況を把握し、二次監視レーダ2が監視する航空機の飛行状況を把握する。また、送信信号生成手段211は、ADS−B搭載機に対してADS−B未搭載機の飛行状況を配信するため、ADS−B未搭載機に関する情報を含むTIS−B信号を生成する。
【0018】
領域決定手段212は、TIS−B装置1の位置情報、二次監視レーダ2のアンテナの位置情報、TIS−B信号の送信の制御に利用する領域、信号の送信の制御方法等を入力すると、入力した情報から干渉防止のためにTIS−B信号の送信制御の判断に利用する航空機の飛行領域とアンテナの向きとの関係を求める。
【0019】
図3に示すようにTIS−B装置1と二次監視レーダ2とが位置し、二次監視レーダ2は、航空機T1〜T6との間で質問応答を行なっているとする。例えば、二次監視レーダ2のアンテナの方向XがTIS−B装置1の位置とは全く反対の図3(a)に示す状態のとき、二次監視レーダ2は、航空機T5と質問応答を行っている。したがって、TIS−B装置1からTIS−B信号を送信したとしても、二次監視レーダ2では干渉の影響を受ける可能性は低い。
【0020】
これに対し、図3(b)に示すように、二次監視レーダ2のアンテナの方向XがTIS−B装置1を向いている状態では、二次監視レーダ2では航空機T1、T2と質問応答を行っていると予測できる。したがって、TIS−B装置1がTIS−B信号を送信すると、二次監視レーダ2と航空機T1、T2との質問応答の信号とTIS−B信号とが干渉する可能性が高い。
【0021】
TIS−B装置1は、この図3(b)の状態のように、二次監視レーダ2が干渉の影響を受けやすいタイミングではTIS−B信号の送信を制限する必要がある。そのため、領域決定手段212は、TIS−B装置1がTIS−B信号を送信すると干渉が生じやすい領域を制限領域として決定し、アンテナ予測手段213に出力する。図3(b)に示す例の場合、二次監視レーダ2のアンテナを軸としてαからβの放射状の範囲が制限領域となる。
【0022】
この制限領域は、固定する必要はなく、対象となる領域を飛行する航空機の数に応じて設定することができる。すなわち、飛行する航空機の数が多い場合、送受信される質問信号や応答信号の数が多いため、干渉が発生しやすいために制限領域は広くする必要がある。一方、飛行する航空機の数が少ない場合、送受信される質問信号や応答信号の数が少ないため、干渉が発生しにくく制限領域を狭くすることができる。
【0023】
アンテナ予測手段213は、領域決定手段212で決定された制限領域と、受信装置10から取得するモードS応答信号の復号結果とを利用して二次監視レーダ2のアンテナの向きを予測する。具体的には、受信装置10から取得したモードS応答の復号結果に含まれる航空機の位置情報が領域決定手段212で決定された制限領域に存在する場合、領域決定手段212は、二次監視レーダ2のアンテナが制限領域に向いている、すなわち、TIS−B装置1の方向を向いていると予測する。一方、復号結果に含まれる位置情報が領域決定手段212で決定された制限領域外に存在する場合、領域決定手段212は、二次監視レーダ2のアンテナは制限領域に向いていない、すなわち、TIS−B装置1の方向を向いていないと予測する。
【0024】
送信制御手段214は、予測するアンテナの向きに応じて送信信号生成手段211による信号の生成を制御して、TIS−B信号の送信を制御する。具体的には、上述したように、送信管理手段22は、通常は所定のタイミングでTIS−B信号を送信しているが、アンテナ予測手段213によって二次監視レーダ2のアンテナがTIS−B装置1の方向を向いていると判定された場合、送信制御手段214は、アンテナの向きが制限領域を外れると予測される所定期間、TIS−B信号の送信を停止させたり、TIS−B信号の送信率を低減(例えば、50%低減)させるように送信信号生成手段211を制御する。
【0025】
すなわち、航空機がモードS応答信号を送信するのは、二次監視レーダ2と航空機との間で質問応答が行われている場合である。また、受信手段11が制限領域に存在する航空機からモードS応答信号を受信した場合、二次監視レーダ2のアンテナは、このTIS−B装置1の方向を向いていると判断することが可能であり、このような状態でTIS−B信号を送信すると干渉が発生するおそれがある。したがって、送信制御手段214は、このような状態のときには、TIS−B信号の送信を制御して干渉を防止する。
【0026】
上述したように、本発明の実施形態に係るTIS−B装置1では、二次監視レーダ2のアンテナがTIS−B装置1の方向に向いている場合にTIS−B信号の送信を停止したり送信率を低減するように制御する。したがって、二次監視レーダ2と航空機との間で質問応答がされている場合、TIS−B信号によって干渉することを防止することができる。
【0027】
なお、上述のアンテナ予測手段213では、領域決定手段212で決定された制限領域に航空機が存在しない場合、二次監視レーダ2のアンテナの方向を判定することはできないが、このような場合にはTIS−B装置1がTIS−B信号を送信しても干渉が生じる恐れがない。そのため、TIS−B装置1では、TIS−B信号の送信を制限する必要もないため、問題は生じない。
【0028】
上記のように、本発明を実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例および運用技術が明らかとなる。また、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0029】
1…TIS−B装置
10…受信装置
11…受信手段
12…値化手段
13…拡張スキッタ処理手段
14…応答処理手段
20…送信装置
21…情報処理部
211…送信信号生成手段
212…領域決定手段
213…アンテナ予測手段
214…送信制御手段
22…送信管理手段
23…送信信号変換手段
24…送信手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機から送信された当該航空機の位置情報を含む信号を入力するとともに、飛行する航空機に関する情報を二次監視レーダから入力すると、航空機の位置情報を含む信号を生成して配信するTIS−B装置であって、
前記二次監視レーダからの質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を入力し、当該応答信号に含まれる前記航空機の位置情報から前記二次監視レーダのアンテナの向きを予測するアンテナ予測手段と、
前記アンテナ予測手段が予測した向きが所定範囲のとき、信号の配信を制限する送信制御手段と、
を備えることを特徴とするTIS−B装置。
【請求項2】
前記アンテナ予測手段は、前記航空機が前記アンテナから当該TIS−B装置を含む所定の放射状の範囲に存在するとき、前記アンテナは当該TIS−B装置の方向を向いていると予測し、
前記送信制御手段は、前記アンテナ予測手段によって前記アンテナが当該TIS−B装置の方向を向いていると予測されると、信号の配信を制限することを特徴とする請求項1に記載のTIS−B装置。
【請求項3】
前記送信制御手段は、前記アンテナ予測手段が予測したアンテナの向きが所定範囲のとき、信号の送信を所定期間停止又は信号の送信率を所定期間低減させることを特徴とする請求項1又は2に記載のTIS−B装置。
【請求項4】
配信する信号の生成に利用する位置情報を含む信号はADS−B信号であって、
前記アンテナ予測手段がアンテナの向きの予測に利用する応答信号はモードS応答信号であって、
配信する信号はTIS−B信号であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のTIS−B装置。
【請求項5】
航空機から送信された当該航空機の位置情報を含む信号を入力するとともに、飛行する航空機に関する情報を二次監視レーダから入力すると、航空機の位置情報を含む信号を生成して配信するTIS−B装置で利用される情報配信方法あって、
前記二次監視レーダからの質問信号に応答して航空機から送信された応答信号を入力し、当該応答信号に含まれる前記航空機の位置情報から前記二次監視レーダのアンテナの向きを予測するステップと、
予測した前記アンテナの向きが所定範囲のとき、信号の配信を制限するステップと、
を備えることを特徴とする情報配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−186627(P2011−186627A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49368(P2010−49368)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】