説明

TLR7の合成RNAベースのアゴニスト

本発明は、免疫治療適用のための免疫調節剤としての新規安定化オリゴリボヌクレオチド類の治療使用に関する。具体的に、本発明は、改善されたヌクレアーゼおよびRNase安定性を有し、TLR7を介して免疫調節性活性を選択的に誘発する新規RNAベースのオリゴリボヌクレオチド類を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年2月10日出願の米国仮出願番号61/151,211の利益を主張し、その開示は引用により本明細書に明示的に包含させる。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、一般に、免疫調節剤としてオリゴリボヌクレオチド類を使用する免疫学および免疫療法適用に関する。より具体的に、本発明は、免疫調節性RNA組成物およびトール様受容体7(TLR7)を介する免疫応答調節のためのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連分野の要約
免疫応答は、応答に関与する細胞のサブセットに基づく先天的応答および適応応答の両方が関与する。例えば、遅延型過敏および細胞毒性Tリンパ球(CTL)活性化のような古典的細胞媒介性機能に関与するTヘルパー(Th)細胞はTh1細胞であり、一方、B細胞活性化のヘルパー細胞として関与するTh細胞は、Th2細胞である。免疫応答のタイプは、抗原暴露に応答して産生されるサイトカイン類およびケモカイン類に影響される。サイトカイン類は、Tヘルパー1(Th1)細胞とTヘルパー2(Th2)細胞の均衡に作用することにより免疫応答を制御する手段を提供し、それは、起こる免疫応答のタイプに直接影響する。均衡がTh1細胞の細胞数増加に傾いたならば、細胞媒介性免疫応答が起こり、これは、細胞毒性T細胞(CTL)の活性化を含む。均衡がTh2細胞の細胞数増加に傾いたならば、体液性または抗体免疫応答が起こる。これらの免疫応答のそれぞれが、Th1細胞およびTh2細胞から分泌されるサイトカイン類の異なるセットをもたらす。Th1細胞およびTh2細胞により分泌されるサイトカイン類の差異は、これらの2種のT細胞サブセットの異なる生物学的機能の結果であり得る。
【0004】
Th1細胞は、抗原(例えば、ウイルス感染、細胞内病原体、および腫瘍細胞)に対する身体の先天的応答に関与する。抗原に対する最初の応答は、抗原提示細胞(例えば、活性化マクロファージおよび樹状細胞)からのIL−12分泌と、それに付随するTh1細胞活性化であり得る。活性化Th1細胞は、ある種のサイトカイン類(例えば、IL−2、IFN−ガンマおよび他のサイトカイン類)の分泌を引き起こし、それに付随して抗原特異的CTLが活性化する。Th2細胞は、細菌、寄生虫、抗原、およびアレルゲンに応答して活性化されることが既知であり、ある種のサイトカイン類(例えば、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−9、IL−10、IL−13および他のサイトカイン類)およびケモカイン類を介して身体の適応免疫応答(例えば、免疫グロブリン産生および好酸球活性化)を仲介し得る。これらのサイトカイン類のいくつかがB細胞増殖および抗体産生増加を引き起こし得る。加えて、これらのサイトカイン類のいくつかが他のサイトカイン類の放出を刺激または阻害し得る(例えば、IL−10は、Th1細胞からのIFN−γ分泌および樹状細胞からのIL−12分泌を阻害する)。最終的に、Th1細胞とTh2細胞の均衡、および選択した刺激に応答して遊離されたサイトカイン類およびケモカイン類が、身体の免疫系の疾患に対する応答に重要な役割を有する。例えば、IFN−αはC型肝炎を阻止し得、そしてIP−1αおよびMIP−1β(それぞれCCL3およびCCL4としても既知)はHIV−1感染を阻止し得る。Th1/Th2免疫応答の最適な平衡化が、種々の疾患の処置および予防に免疫系が使用される機会を提供する。
【0005】
Th1免疫応答を、哺乳動物で、例えば非メチル化CpGジヌクレオチドを含む細菌または合成DNAの導入により誘発でき、その免疫応答は、パターン認識受容体(PRR)として知られるある種の免疫細胞上の受容体への、特異的オリゴヌクレオチド配列(例えば、非メチル化CpG)の提示に由来する。これらのPRRのいくつかはトール様受容体(TLR)である。
【0006】
TLRは、微生物感染に応答した先天的免疫応答の誘発に密接に関係する。脊椎動物で、TLRは病原体関連分子構造(PAMP)を認識することが知られている、少なくとも11種のタンパク質(TLR1からTLR11)のファミリーを構成する。いくつかのTLRは、細胞外病原体を検知し、応答を開始するために細胞表面に位置し、他のTLRは、細胞内病原体を検知し、応答を開始するために細胞内部に位置する。表1は、TLR、それに対する既知アゴニストおよびTLRを含むことが知られている細胞型を示す(Diebold, S.S. et al. (2004) Science 303: 1529-31; Liew, F. et al. (2005) Nature 5: 446-58; Hemmi, H. et al. (2002) Nat. Immunol. 3: 196-200; Jurk, M. et al., (2002) Nat. Immunol. 3: 499; Lee, J. et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 6646-51; Alexopoulou, L. (2001) Nature 413: 732-38)。
【表1】

【0007】
リガンドとTLRの相互作用が仲介するシグナル伝達経路は、TLRファミリーのほとんどのメンバーが共有し、toll/IL−1受容体(TIRドメイン)、骨髄分化マーカー88(MyD88)、IL−1R関連キナーゼ(IRAK)、インターフェロン制御因子(IRF)、TNF受容体関連因子(TRAF)、TGFβ−活性化キナーゼ1、IκBキナーゼ類、IκB、およびNF−κBを含む(例えば:Akira, S. (2003) J. Biol. Chem. 278: 38105およびGeller et al. (2008) Curr. Drug Dev. Tech. 5: 29-38参照)。より具体的に、TLR1、2、4、5、6、7、8、9、および11に関して、このシグナル伝達カスケードは、ホモ二量体としてエンドソーム膜または細胞表面に存在する膜結合TLRと相互作用し、そして活性化するPAMPリガンドから開始する。活性化後、受容体は、立体構造変化を受けて、TLR3以外の全TLRシグナル伝達経路に共通するアダプタータンパク質であるTIRドメイン含有タンパク質MyD88の動員が可能となる。MyD88はIRAK4を動員し、それはIRAK1をリン酸化および活性化する。活性化IRAK1はTRAF6と結合し、それは、ポリユビキチンのTRAF6への付加を触媒する。ユビキチン付加はTAK/TAB複合体を活性化し、続いてリン酸化IRFが、NF−κB放出および核への輸送をもたらす。核内のNF−κBは炎症誘発性遺伝子の発現を誘発する(例えば、Trinchieri and Sher (2007) Nat. Rev. Immunol. 7: 179-90参照)。
【0008】
TLRおよびそこから生じるシグナル伝達の選択的局在化は、免疫応答におけるそれらの役割のいくつかの見解を提供する。免疫応答は、応答に関与する細胞サブセットに基づき、先天的および適応応答の両方を含む。例えば、遅延型過敏および細胞毒性Tリンパ球(CTL)活性化のような古典的細胞媒介性機能に関与するTヘルパー細胞はTh1細胞である。この応答は、抗原(例えば、ウイルス感染、細胞内病原体、および腫瘍細胞)に対する身体の先天的応答であり、IFN−ガンマの分泌と、それに付随するCTLの活性化をもたらす。
【0009】
炎症性応答制御への関与の結果として、TLRは、自己免疫性、感染性疾患、および炎症を含む多くの疾患の病因に役割を有することが示されている(Papadimitraki et al. (2007) J. Autoimmun. 29: 310-18; Sun et al. (2007) Inflam. Allergy Drug Targets 6: 223-35; Diebold (2008) Adv. Drug Deliv. Rev. 60: 813-23; Cook, D.N. et al. (2004) Nature Immunol. 5: 975-79; Tse and Horner (2008) Semin. Immunopathol. 30: 53-62; Tobias & Curtiss (2008) Semin. Immunopathol. 30: 23-27; Ropert et al. (2008) Semin. Immunopathol. 30: 41-51; Lee et al. (2008) Semin. Immunopathol. 30: 3-9; Gao et al. (2008) Semin. Immunopathol. 30: 29-40; Vijay-Kumar et al. (2008) Semin. Immunopathol. 30: 11-21)。
【0010】
CpGジヌクレオチドを含むアンチセンスオリゴヌクレオチド類を使用した免疫応答の刺激が検討されている(Zhao, Q. et al. (1996) Biochem. Pharmacol. 26: 173-82)。その後、TLR9が細菌および合成DNAに存在する非メチル化CpGモチーフを認識することが検討されている(Hemmi, H. et al. (2000) Nature 408: 740-45)。CpG含有ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド類の他の修飾もまた、TLR9を介して作用するおよび免疫応答を調節する能力に影響する(例えば、Zhao et al. (1996) Biochem. Pharmacol. 51: 173-82; Zhao et al. (1996) Biochem. Pharmacol. 52: 1537-44; Zhao et al. (1997) Antisense Nucleic Acid Drug Dev. 7: 495-502; Zhao et al. (1999) Bioorg. Med. Chem. Lett. 9: 3453-58; Zhao et al. (2000) Bioorg. Med. Chem. Lett. 10: 1051-54; Yu et al. (2000) Bioorg. Med. Chem. Lett. 10: 2585-88; Yu et al. (2001) Bioorg. Med. Chem. Lett. 11: 2263-67; and Kandimalla et al. (2001) Bioorg. Med. Chem. 9: 807-13参照)。加えて、構造活性相関試験が、非メチル化CpGジヌクレオチドによりもたらされるものとは異なる特異的免疫応答プロファイルを誘発する合成モチーフおよび新規DNAベースの構造の同定を可能にしている。(Kandimalla, E.R. et al. (2005) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 6925-30; Kandimalla, E.R. et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 14303-08; Cong, Y.P. et al. (2003) Biochem. Biophys. Res. Commun. 310: 1133-39; Kandimalla, E.R. et al. (2003) Biochem. Biophys. Res. Commun. 306: 948-53; Kandimalla, E.R. et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31: 2393-400; Yu, D. et al. (2003) Bioorg. Med. Chem. 11: 459-64; Bhagat, L. et al. (2003) Biochem. Biophys. Res. Commun. 300: 853-61; Yu, D. et al. (2002) Nucleic Acids Res. 30: 4460-69; Yu, D. et al. (2002) J. Med. Chem. 45: 4540-48; Yu, D. et al. (2002) Biochem. Biophys. Res. Commun. 297: 83-90; Kandimalla, E.R. et al. (2002) Bioconjug. Chem. 13: 966-74; Yu, D.K. et al. (2002) Nucleic Acids Res. 30: 1613-19; Yu, D. et al. (2001) Bioorg. Med. Chem. 9: 2803-08; Yu, D. et al. (2001) Bioorg. Med. Chem. Lett. 11: 2263-67; Kandimalla, E.R. et al. (2001) Bioorg. Med. Chem. 9: 807-13; Yu, D. et al. (2000) Bioorg. Med. Chem. Lett. 10: 2585-88; Putta, M.R. et al. (2006) Nucleic Acids Res. 34: 3231-38)。しかしながら、現在まで、TLR7およびTLR8に対する天然リガンドは未知であった。
【0011】
TLR7およびTLR8が、多くのヌクレオシド類を含むウイルスおよび合成一本鎖RNAおよび小分子を認識することが示されている(Diebold, S.S., et al. (2004) Science 303: 1529-31)。Dieboldらは、インフルエンザウイルスに対するIFN−α応答が、インフルエンザゲノムRNAのエンドソーム認識ならびにTLR7およびMyD88の手段によるシグナル伝達を必要とすることを示し、TLR7に対するリガンドとしてssRNAを同定した。ある種の合成化合物、イミダゾキノロン類、イミキモド(R−837)、およびレシキモド(R−848)は、TLR7およびTLR8のリガンドである(Hemmi, H. et al. (2002) Nat. Immunol 3: 196-200; Jurk, M. et al. (2002) Nat. Immunol 3: 499)。加えて、ある種のグアノシン類似体、例えば7−デアザ−G、7−チア−8−オキソ−G(TOG)、および7−アリル−8−オキソ−G(ロキソリビン)が、高濃度でTLR7を活性化することが示されている(Lee, J. et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 6646-51)。しかしながら、これらの小分子、例えば、イミキモドは他の受容体を介して作用することも知られている(Schon, M.P. et al. (2006) J. Invest. Dermatol. 126: 1338-47)。
【0012】
TLR7またはTLR8認識についての特異的ssRNAモチーフが何も知られていないこと、および刺激性ssRNA分子が広範囲である可能性は、TLR7およびTLR8が、自己RNAおよびウイルスRNAの両方を認識できることを示唆する。最近、ある種のGUリッチオリゴリボヌクレオチド類が免疫賦活性であり、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)または他の脂質試薬と複合体化したときTLR7およびTLR8を介して作用することが示された(Heil et al. (2004) Science 303: 1526-29; Lipford et al., 国際公開番号WO03/086280; Wagner et al., 国際公開番号WO98/32462)。しかしながら、RNA分子が、長年、例えばリボザイムとして、および最近はsiRNAおよびマイクロRNAとして使用されており、リボザイム、siRNAおよびマイクロRNAとして使用されるRNAはGUジヌクレオチドを含む。加えて、多くのこれらのRNA分子が、脂質の存在下、TLR刺激を介して免疫応答を誘発することが示されている(Kariko et al. (2005) Immunity 23: 165-75; Ma, Z. et al. (2005) Biochem. Biophys. Res. Commun. 330: 755-59)。しかしながら、これらのRNA分子の不安定さが、多くの領域(例えば、ヒト疾患の予防および処置)でのこれらの分子の使用および適用を妨げている。
【0013】
リボースまたはデオキシリボース糖を含むオリゴヌクレオチド類およびオリゴデオキシヌクレオチド類が、診断的プロービング、PCRプライミング、遺伝子発現のアンチセンス阻害、siRNA、マイクロRNA、アプタマー、リボザイム、およびトール様受容体(TLR)に基づく免疫治療剤を含み、これらに限定されない広範な分野で使用されている。最近、多くの刊行物に、免疫調節剤としてのオリゴデオキシヌクレオチド類の使用、ならびに、アレルギー、喘息、自己免疫疾患、癌、および感染症のような多くの疾患のための免疫療法適用におけるそれらの単独でのまたはアジュバントとしての使用が記載されている。
【0014】
DNAオリゴヌクレオチド類がTLR9により認識され、一方でRNAオリゴヌクレオチド類がTLR7および/またはTLR8により認識されるとの事実は、DNAとRNAの間の三次元構造の差異による可能性が高い。しかしながら、DNAとRNAの間の化学的差異もまた、DNAを、RNAよりはるかに化学的および酵素的に安定化している。
【0015】
RNAは広範な細胞外リボヌクレアーゼ類(RNase)により急速に分解され、それにより、抗原提示細胞に到達する自己ssRNAは、たとえあったとしても、ほんの僅かであることが確実である。核酸類のエキソヌクレアーゼ分解は、ほとんど3'−ヌクレアーゼ消化であり、僅かな割合が5'−エキソヌクレアーゼ作用を介する。エキソヌクレアーゼ消化に加えて、RNAはまた、RNaseのエンドヌクレアーゼ活性によっても分解され得る。RNAベースの分子は、現在まで、ヌクレアーゼ類に対する安定性を提供するために脂質と複合体化しなければならない。
【0016】
これらのリボヌクレアーゼ類は、自己免疫性反応性を妨げる必須機能を提供する一方で、リボヌクレアーゼ類が合成ssRNAおよび天然ssRNAの両方を急速に分解するため、免疫療法に利用するために設計された合成ssRNA分子にとって、本質的な問題を提起する。このハードルを越えるため、ssRNA分子の分解に対する保護が、ssRNAのリポソームへの封入、ポリチレンイミンとの縮合、N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチルスルフェート(DOTAP)のような分子によると複合体化によって試みられている。しかしながら、これらの保護手段は、不安定なままでいるssRNAに適用される二次的手段であり、これらの保護手段の、ssRNA(天然または合成)のインビボでの効力および免疫調節性活性に対する影響は不明なままである。
【0017】
Agrawalら(米国特許出願公開番号2008/0171712)は、TLR7およびTLR8に結合する新規SIMRA組成物群を記載する。しかしながら、TLR7に選択的に結合する化合物を開発する課題が残っている。観念的には、この課題は、併用したときワクチン接種の効果を改善する、または免疫応答の誘発または増強が有益である疾患、例えば癌、自己免疫障害、気道炎症、炎症性障害、感染症、皮膚障害、アレルギー、喘息、または病原体が原因の疾患を処置および/または予防するような多くの臨床上適切な適用が行われる新規免疫治療剤として作用し得る本質的に安定なRNAを基本とする分子の設計によって解決されるものである。
【発明の概要】
【0018】
発明の要約
第一の面において、本発明は、TLR7を特異的に活性化し、さらに下に定義する新規安定化免疫調節性RNA(SIMRA)化合物、およびTLR7を介する免疫応答の誘発および/または増強のためのそれらの使用に関する。本発明の新規化学物質は、免疫応答の誘発が実質的により有効であり、分解に対する感受性が実質的により低い、免疫応答誘発および/または増強化合物を提供する。本発明の方法は、免疫療法適用のためのサイトカインおよび/またはケモカインプロファイルを修飾するためのTLR7特異的SIMRAの使用を可能にする。
【0019】
第一の面の他の態様において、本発明は、アジュバントとしてTLR7特異的SIMRA化合物を提供する。
【0020】
第二の面において、本発明は医薬組成物を提供する。これらの組成物は、本発明のTLR7特異的SIMRA化合物の少なくとも1個および生理学的に許容されるまたは薬学的に許容される担体を含む。
【0021】
第三の面において、本発明は個体における免疫応答を誘発する方法であって、脊椎動物に本発明のTLR7特異的SIMRA化合物の少なくとも1個を投与することを含む方法を提供する。
【0022】
第四の面において、本発明は、免疫応答の誘発および/または増強が有益である疾患または障害、例えば癌、自己免疫障害、気道炎症、炎症性障害、感染症、皮膚障害、アレルギー、喘息、または病原体が原因の疾患を有する患者の治療的処置方法であって、かかる障害または疾患を有する該患者に、本発明のTLR7特異的SIMRA化合物の少なくとも1個を薬学的有効量で投与することを含む方法を提供する。
【0023】
第五の面において、本発明は脊椎動物における免疫応答の誘発および/または増強が有益である疾患または障害、例えば癌、自己免疫障害、気道炎症、炎症性障害、感染性疾患、皮膚障害、アレルギー、喘息、または病原体が原因の疾患の予防的処置方法であって、かかる障害または疾患に感受性の脊椎動物に、本発明のTLR7特異的SIMRA化合物の少なくとも1個を薬学的有効量で投与することを含む方法を提供する。
【0024】
第六の面において、本発明は、サイトカインまたはケモカイン類を産生できる細胞(例えば、免疫細胞、PBMC)を単離する方法であって、かかる細胞を標準細胞培養条件下で培養し、かかる細胞を、単離細胞のサイトカイン類またはケモカイン類の産生または分泌レベルが増加するように、本発明のTLR7特異的SIMRA化合物の少なくとも1個でエクスビボで処置し、処置細胞を、疾患の予防または処置のためにサイトカインまたはケモカイン治療を必要とする患者に投与または再投与することを含む方法を提供する。
【0025】
本発明のこの面のさらなる態様において、疾患の予防または処置のためにサイトカインまたはケモカイン治療を必要とする患者に、第六の面の単離した、TLR7特異的SIMRA処置細胞を、1種以上の本発明のTLR7特異的SIMRA化合物および/または1種以上のTLR7および/またはTLR8アゴニストと組み合わせて投与する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のTLR7特異的SIMRA化合物の平行合成のための合成スキーム。DMTr=4,4'−ジメトキシトリチル;CE=シアノエチル。本発明のTLR7特異的SIMRA化合物を実施例1に従い合成した。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好ましい態様の詳細な記載
本発明は、免疫療法適用のための免疫調節剤としてのオリゴリボヌクレオチド類の治療的使用に関する。具体的に、本発明は、TLR7を介して選択的に免疫応答を調節する、インビボ安定性が改善されたRNAベースのオリゴヌクレオチド類(TLR7特異的SIMRA化合物)を提供する。種々の先天的および獲得免疫応答機構を、例えば安定なTLR7特異的SIMRA化合物を用いる樹状細胞および他の抗原提示細胞の活性化を介して開始することにより、得られるサイトカインプロファイルは、病原体、感染細胞、または腫瘍細胞の破壊と、抗原特異的抗体およびCTL応答の発生をもたらす。それ故に、本発明は、各々固有の免疫調節特性を有する、一連のTLR7特異的SIMRA化合物を提供する。この方法で、免疫応答の範囲および性質は、ある適応に望ましい一連の免疫調節性特性を有するTLR7特異的SIMRA化合物を提供することにより、種々の医学的適応のためにカスタマイズできる。本明細書に引用する特許、特許出願、および参考文献は、各々が具体的におよび個々に引用により包含させると示されるのと同定度に引用により本明細書に包含させる。ここに引用する何らかの参考文献の、何らかの教示と本明細書の間に矛盾があるときには、本発明の目的で本明細書が優先される。
【0028】
本発明は、免疫応答増強のためのTLR7特異的SIMRA化合物の使用方法を提供する。かかる方法は、成人および小児ならびに獣医適用における、癌、自己免疫障害、喘息、呼吸器アレルギー、食物アレルギー、皮膚アレルギー、および細菌、寄生虫、およびウイルス感染の処置およびワクチンアジュバントとしての適用を含み、これらに限定されない免疫療法適用への使用が見出される。それ故に、本発明は、さらに、免疫療法のための最適レベルの免疫調節効果を有する新規TLR7特異的SIMRA化合物、ならびにかかる化合物の製造および使用方法を提供する。加えて、本発明のTLR7特異的SIMRA化合物は、アジュバントとして、または疾患の予防および処置のためのTLR7特異的SIMRA化合物の免疫調節効果を消滅させない、該疾患または状態の処置に有用な薬剤と組み合わせて、有用である。
【0029】
定義
用語“2'−置換リボヌクレオシド”または“2'−置換アラビノシド”は、一般に、ペントース基の2'位のヒドロキシル基が置換され、2'−置換または2'−O−置換リボヌクレオシドとなったリボヌクレオシド類またはアラビノヌクレオシド類を意味する。ある態様において、かかる置換は、1〜6個の飽和または不飽和炭素原子を含む低級ヒドロカルビル基、ハロゲン原子、または6〜10個の炭素原子を有するアリール基での置換であり、ここで、かかるヒドロカルビル基、またはアリール基は非置換であっても、例えば、ハロ基、ヒドロキシ基、トリフルオロメチル基、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボアルコキシ基、またはアミノ基で置換されていてもよい。本発明のアラビノヌクレオシド類は、アラビノ−G、アラビノ−C、アラビノ−U、アラビノ−Aを含み、これらに限定されない。2'−O−置換リボヌクレオシド類または2'−O−置換−アラビノシド類の例は、2'−アミノ、2'−フルオロ、2'−アリル、2'−O−アルキルおよび2'−プロパルギルリボヌクレオシド類またはアラビノシド類、2'−O−メチルリボヌクレオシド類または2'−O−メチルアラビノシド類、および2'−O−メトキシエトキシリボヌクレオシド類または2'−O−メトキシエトキシアラビノシド類を含み、これらに限定されない。
【0030】
用語“3'”は、方向性で使用されるとき、一般に、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド内の他の領域または位置から3'(糖の3'位置に向かう)の該ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド内の領域または位置を意味する。
【0031】
用語“5'”は、方向性で使用されるとき、一般に、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド内の他の領域または位置から5'(糖の5'位置に向かう)の該ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド内の領域または位置を意味する。
【0032】
用語“約”は、一般に、その正確な数値が重要ではないことを意味する。例えば、オリゴリボヌクレオチド類中のリボヌクレオシド残基の数は重要ではなく、そして1個または2個少ないリボヌクレオシドまたはアラビノヌクレオシド残基、または1個から数個の付加的リボヌクレオシドまたはアラビノヌクレオシド残基を有するオリゴリボヌクレオチド類が、上に記載した態様の各々と同等であるとして考慮される。
【0033】
用語“アジュバント”は、一般に、ワクチンまたは抗原のような免疫剤に追加したとき、該混合物への暴露によるレシピエント宿主における該薬剤に対する免疫応答を増強または強化する物質を意味する。
【0034】
用語“気道炎症”は、一般に、喘息を含む、感染性アレルゲンが原因の呼吸管の炎症を意味する。
【0035】
用語“アレルゲン”は、一般に、物質への暴露によりアレルギー性応答を誘発する、分子、通常タンパク質の抗原または抗原性部分を意味する。典型的に対象は、例えば、膨疹および発赤試験により、または当分野で既知の任意の方法により示されるように、アレルゲンに対してアレルギーである。分子は、該分子への暴露によりほんの僅かな割合の対象しかアレルギー性(例えば、IgE)免疫応答を誘発しなくても、アレルゲンと言う。
【0036】
用語“アレルギー”は、一般に、食物アレルギー、呼吸器アレルギー、および皮膚アレルギーを含み、これらに限定されない。
【0037】
用語“抗原”は、一般に、抗体により、またはT細胞抗原受容体により認識され、選択的に結合させる物質を意味する。抗原はペプチド類、タンパク質類、ヌクレオシド類、ヌクレオチド類、およびそれらの組合せを含み得て、これらに限定されない。抗原は天然でも合成でもよく、一般的に、該抗原に特異的である免疫応答を誘発する。
【0038】
用語“自己免疫障害”は、一般に、“自己”抗原が免疫系による攻撃を受ける障害を意味する。
【0039】
3'または5'分解の遮断または“キャップ”もしくは“キャッピング”は、オリゴリボヌクレオチドの3'または5'端が、ヌクレアーゼ分解(例えば、3'−エキソヌクレアーゼ分解)の阻害に十分な他の分子(例えば、リンカーまたは他の非RNAヌクレオチド)に結合していることを意味する。
【0040】
用語“担体”は、一般に、全ての賦形剤、希釈剤、増量剤、塩、緩衝剤、安定化剤、可溶化剤、油、脂質、脂質含有小胞、マイクロスフェア、リポソーム封入、または医薬製剤への使用が当分野で既知の他の物質を含む。担体、賦形剤、または希釈剤の特性は、特定の適用のための投与経路によることは当然である。これらの物質を含む薬学的に許容される製剤の製造は、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, ed. A. Gennaro, Mack Publishing Co., Easton, PA, 1990に記載されている。
【0041】
用語“共投与”は、一般に、免疫応答を調節するために十分に短い間隔での少なくとも2種の異なる物質の投与を意味する。共投与は少なくとも2種の異なる物質の同時投与を含む。
【0042】
用語“相補性”は、一般にある核酸とハイブリダイズする能力を有することを意味する。かかるハイブリダイゼーションは、通常、好ましくはワトソン−クリックまたはフーグスティーン塩基対を形成するための、相補鎖間の水素結合の結果であるが、他の形態の水素結合、ならびに塩基スタッキングもハイブリダイゼーションをもたらし得る。
【0043】
用語“免疫調節性オリゴリボヌクレオチド”は、一般に、魚、鳥、または哺乳動物のような脊椎動物に応答したとき、免疫応答を誘発するか、または抑制するオリゴリボヌクレオチドを意味する。
【0044】
用語“と組み合わせて”は、一般に、一患者における同じ疾患の処置の経過中であり、そしてTLR7特異的SIMRA化合物と、TLR7特異的SIMRA化合物の免疫調節効果を消滅させない、該疾患または状態の処置に有用な薬剤の投与を含む。かかる投与は、同時投与または共投与を含む任意の順番であってよく、ならびに時間的に数秒から最長数日離れ、または数分から数日離れ、または数分から数時間離れていてよい。かかる組合せ処置はまた、TLR7特異的SIMRA化合物および/または独立して該薬剤の1回を超える投与を含み得る。TLR7特異的SIMRA化合物および該薬剤の投与は、同じ投与経路でも異なる投与経路でもよい。
【0045】
用語“個体”または“対象”は、一般に、ヒトのような哺乳動物を意味する。哺乳動物は、一般に、ヒト、非ヒト霊長類、ラット、マウス、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、およびウサギを含み、これらに限定されない。
【0046】
用語“線状合成”は、一般に免疫調節性オリゴリボヌクレオチドの一端から始まり、他端へと直線的に進む合成を意味する。線状合成は、免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類への同一のまたは同一ではない(長さ、塩基組成および/または取り込まれている化学修飾の点で)モノマー単位の取り込みを可能にする。
【0047】
用語“リンカー”は、一般に、オリゴリボヌクレオチドに糖、塩基、または主鎖を介して、共有または非共有結合の方法で結合できる全ての基を意味する。リンカーは、2個以上のヌクレオシド類の結合に使用でき、またはオリゴリボヌクレオチド内の5'および/または3'末端ヌクレオチドの結合に使用できる。かかるリンカーは、非ヌクレオチドリンカーまたはヌクレオチドリンカーのいずれでもよい。
【0048】
用語“修飾ヌクレオシド”は、一般に、修飾ヘテロ環塩基、修飾糖部分、またはそれらの任意の組合せを含むヌクレオシドを意味する。ある態様において、修飾ヌクレオシドは、ここに記載する非天然ピリミジンまたはプリンヌクレオシドである。本発明の目的で、修飾ヌクレオシド、ピリミジンまたはプリン類似体または天然に存在しないピリミジンまたはプリンを互換的に使用でき、天然に存在しない塩基および/または天然に存在しない糖基を含むヌクレオシドと言う。本発明の目的で、塩基は、グアニン、シトシン、アデニン、またはウラシルでないならば非天然であると見なす。ある態様において、修飾ヌクレオシドは、TLR7活性を妨害することなく安定性を改善するために、オリゴリボヌクレオチドの選択した位置に置き換えて入れることができる2'−置換リボヌクレオシド、アラビノヌクレオシド、または2'−デオキシ−2'−置換−アラビノシドである。
【0049】
用語“調節”または“刺激”は、一般に、応答の誘発および/または増強に由来し得る応答または応答における質的差異のような変化を意味する。
【0050】
用語“非ヌクレオチドリンカー”は、一般に、共有または非共有結合によりオリゴリボヌクレオチドに結合できる、ヌクレオチド架橋以外の化学基を意味する。好ましくはかかる非ヌクレオチドリンカーは、約2Å〜約200Å長であり、cis配向でもtrans配向でもよい。
【0051】
用語“ヌクレオチド架橋”は、一般に、隣接ヌクレオシド間の、ホスフェート、非ホスフェート、荷電、または中性基(例えば、ホスホジエステル、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート)から成る、糖を介して2個のヌクレオシドを結合させる(例えば、3'−3'、2'−3'、2'−5'、3'−5')化学架橋を意味する。
【0052】
用語“ペプチド”は、一般に、該ペプチドがハプテンであってもなくても、生物学的応答、例えば、抗体産生またはサイトカイン活性に影響を与えるために十分な長さおよび組成である、ポリペプチド類を意味する。用語“ペプチド”は、修飾アミノ酸類(天然に存在しても存在しなくても)を含んでよく、ここで、かかる修飾は、リン酸化、グリコシル化、ペグ化、脂質化(lipidization)、およびメチル化を含む。
【0053】
用語“薬学的に許容される”または“生理学的に許容される”は、一般に、本発明の化合物の有効性を妨げず、細胞、細胞培養、組織、または生物のような生物学的系と適合する物質を意味する。好ましくは、生物学的系は脊椎動物のような生存生物である。
【0054】
用語“薬学的有効量”は、一般に、有益な結果のような所望の生物学的作用をもたらすのに十分な量を意味する。それ故に、“薬学的有効量”はそれが投与される状況による。薬学的有効量を、1回以上の予防的または治療的投与で投与してよい。
【0055】
用語“SIMRA”は、一般に安定化免疫調節性RNA化合物を意味し、ここで、該化合物は、一本鎖RNA(ssRNA)および/または二本鎖RNA(dsRNA)、および3'末端を保護または安定化するための修飾(例えば、3'分解を遮断することによりまたは3'末端をキャッピングすることによりまたは2個以上のオリゴリボヌクレオチドの3'末端を連結することにより)を含んでよいが、SIMRAは、非修飾オリゴリボヌクレオチドよりインビボで安定であるか、または安定であるはずであり、それ故に、その免疫調節性能に影響する。SIMRAは修飾オリゴリボヌクレオチド類を含み得る。SIMRA化合物は、オリゴリボヌクレオチドの安定性をさらに改善するために、その5'末端(例えば、5'分解を遮断することによりまたは5'末端をキャッピングすることにより)にも修飾を含んでよい。SIMRAは直鎖でも分枝鎖でもよく、核酸類は、例えば、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、または別の架橋を介して連結された、リボヌクレオシドのポリマーである。SIMRAはリボース糖残基またはその誘導体に共有結合したプリン(アデニン(A)またはグアニン(G)またはその誘導体(例えば、7−デアザ−G、アラビノ−Gおよびアラビノ−A))またはピリミジン(シトシン(C)またはウラシル(U)、またはその誘導体(例えば、アラビノ−Cおよびアラビノ−U))塩基を含み得る。
【0056】
用語“処置”は、一般に、症状の軽減、疾患進行の遅延または改善を含み得る、有益なまたは望む結果を得るための方法を意味する。
【0057】
用語“ウイルス疾患”は、一般に、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、後天性免疫不全症候群(AIDS)、および帯状疱疹を含み、これらに限定されない、その病原因子としてウイルスを有する疾患を意味する。
【0058】
第一の面において、本発明は新規TLR7特異的SIMRA化合物を提供する。本出願は、免疫調節性オリゴリボヌクレオチドの3'末端を保護するための修飾(例えば、3'分解の遮断または3'末端のキャッピングによるまた2個以上のオリゴリボヌクレオチドの3'末端の連結による)が、その免疫調節性能に驚くほど影響することを示す。加えて、この保護がオリゴリボヌクレオチド類の安定性を驚くほど改善し、脂質会合または他の保護手段の必要性を無くすことが確認された。さらに、3'末端に追加したまたは組み合わせた5'分解の遮断または5'末端のキャッピングもまたオリゴリボヌクレオチドの安定性を改善できる。
【0059】
本発明において、新規SIMRA化合物でのTLR7の活性化および独特の免疫応答(例えば、サイトカインおよび/またはケモカインプロファイルの変化)の誘発が証明される。それ故に、本発明は、TLR7サイトカインおよび/またはケモカインの活性化を介して、それに関連するプロファイルが、免疫調節性オリゴリボヌクレオチドの一部として修飾塩基、修飾糖類、主鎖、リンカー、結合、および/またはキャップを含む修飾化学構造を使用して調節できることを示す。
【0060】
一つの態様において、本発明は、3'末端で、またはヌクレオシド間架橋または官能化核酸塩基または糖を介して非ヌクレオチドリンカーに連結した少なくとも2個のRNAベースのオリゴヌクレオチドを含む免疫調節性化合物を提供する。本発明のかかる態様は、少なくとも1個の利用できる5'末端を有してよく、それはキャップをしてもキャップをしなくてもよい。この構造が、脂質会合または他の保護の必要なしに、TLR7特異的SIMRA化合物にさらなる安定性(例えば、エキソヌクレアーゼ活性の阻害)を提供することが確認された。“利用できる5'末端”は、TLR7特異的SIMRAの5'末端が、TLR7特異的SIMRA化合物のTLR7を介する免疫応答の調節を妨げる方法で修飾されていないことを意味する。
【0061】
本発明のこの面の他の態は、少なくとも2個のオリゴリボヌクレオチド類を含み、ここで、本免疫調節性化合物は、表2の式I〜IVで示される構造を有し、これに限定されない。
【表2】

【0062】
ドメインA、B、およびCは、独立して約2〜約35リボヌクレオチド長、およびある態様において約2〜約20、または約2〜約12、または約2〜約11、または約2〜約8リボヌクレオチド長であり得る。ドメインA、B、およびCは同一であっても、同一でなくてもよい。ドメインA、B、およびCは、独立して、自己相補性ドメイン、ホモまたはヘテロリボヌクレオチド配列、またはリンカーを有するまたは有さない5'−3'または2'−5'RNAであり得る。式IVに使用される、“n”は1から無限までである。
【0063】
“X”は、3'または5'架橋、リン酸基、核酸塩基、非RNAヌクレオチドを介してよいドメインA、B、および/またはCを結合またはキャッピングするリンカー、または脂肪族、芳香族性、アリール、環状、キラル、キラル、ペプチド、炭水化物、脂質、脂肪酸、モノ〜トリまたはヘキサポリエチレングリコール、またはヘテロ環基、またはそれらの組合せであり得る非ヌクレオチドリンカーである。
【0064】
さらなる態様において、本発明は、非ヌクレオチドリンカーにより連結された少なくとも2個のオリゴリボヌクレオチドを含むTLR7特異的SIMRA化合物であり、ここで、これらの免疫調節性オリゴリボヌクレオチドの配列は、少なくとも部分的に自己相補性である。これらのオリゴリボヌクレオチドの相補性配列が分子間水素結合を可能にし、それによりオリゴリボヌクレオチドの二次構造を取ることを可能にする。付加的オリゴリボヌクレオチドを一緒に連結し、それにより、例えば式IVのような、本発明のオリゴリボヌクレオチドの鎖、または多量体を形成できる。
【0065】
同様の考察が、異なる塩基配列の免疫調節性オリゴリボヌクレオチド間の分子間塩基対形成に当てはまる。それ故に、複数の免疫調節性オリゴリボヌクレオチドを一緒に使用するとき、この複数の免疫調節性オリゴリボヌクレオチドは、必須ではないが、互いに少なくとも部分的に相補性の配列を含んでよい。一つの態様において複数の免疫調節性オリゴリボヌクレオチドは、第一配列を有する免疫調節性オリゴリボヌクレオチドおよび第二の配列を有する免疫調節性オリゴリボヌクレオチドを含み、ここで、第一の配列および第二の配は、少なくとも40%または少なくとも50%相補性である。例えば、少なくとも50%相補性である2個の8量体の場合、それらは、4個、5個、6個、7個、または8個のG−C、A−U、および/またはG−U不安定塩基対を形成し得る。かかる塩基対は、必ずしもではないが、相補性免疫調節性オリゴリボヌクレオチドのいずれかの末端に位置する塩基を含む。相補性の程度は、複数免疫調節性オリゴリボヌクレオチド間のアライメントに依存し得て、かかるアライメントは、一または多ヌクレオシドオーバーハングを有しても有さなくてもよい。他の態様において、相補性の程度は少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%または100%である。
【0066】
当業者には認識される通り、記載した免疫調節性化合物は、複数ドメインの配列が分子間水素結合を可能にする相補性であるため、二次構造を有し得る。さらに、表2の式IIIおよびIVに示される通り、付加的な連結されたRNAベースのオリゴヌクレオチドが分子間水素結合を介して結合でき、それにより鎖、または多量体を形成し、ここで、任意の数の架橋したRNAベースのオリゴヌクレオチドを取り込んでよい。
【0067】
他の態様において、本発明は、3'または5'末端で、またはヌクレオシド間架橋または官能化核酸塩基または糖を介して非ヌクレオチドリンカーに連結した少なくとも2個のRNAベースのオリゴヌクレオチドを含み、ここで、該リンカー(例えば、キャップ)が少なくとも1個の5'末端に結合している、免疫調節性化合物を提供する。この構造は、TLR7特異的SIMRA化合物にさらなる安定性(例えば、エキソヌクレアーゼ活性の阻害)を与えることが確認された。TLR7特異的SIMRAの5'末端は、TLR7特異的SIMRA化合物のTLR7を介する免疫応答の調節を妨げる方法で修飾されていない。
【0068】
ある態様において、オリゴリボヌクレオチド類は、各々独立して約2〜約35個のリボヌクレオシド残基を有する。それ故に、ある態様においてオリゴリボヌクレオチドは、独立して、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34または35リボヌクレオチド長であり得る。好ましくは、オリゴリボヌクレオチドは約4〜約30個のリボヌクレオシド残基、より好ましくは約4〜約20個のリボヌクレオシド残基または約4〜約11個のリボヌクレオシド残基である。ある態様において、免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類は、約1〜約18個、または約1〜約11個、または約5〜約14個のリボヌクレオシド残基を有するオリゴリボヌクレオチド類を含む。ある態様において、オリゴリボヌクレオチド類の1個以上は、11個のリボヌクレオチド類または約8〜約14個のリボヌクレオチド類または約10〜約12個のリボヌクレオチド類を有する。免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類に関連して、好ましい態様は、約1〜約35個のリボヌクレオチド類、好ましくは約5〜約26個のリボヌクレオチド類、より好ましくは約13〜約26個のリボヌクレオチド類を含む。好ましくは、免疫調節性オリゴリボヌクレオチドは、少なくとも1個のホスホジエステル、ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエートリボヌクレオシド間架橋を有する。
【0069】
例示的態様において、各リボヌクレオシド単位は、ヘテロ環塩基およびペントフラノシル、トレハロース、アラビノース、2'−デオキシ−2'−置換アラビノース、2'−O−置換リボースまたはアラビノースまたはヘキソース糖基を含む。リボヌクレオシド残基は、多数の既知のリボヌクレオシド間結合のいずれかによって結合できる。かかるリボヌクレオシド間結合は、ホスホジエステル(Po)、ホスホロチオエート(Ps)、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、アルキルホスホノチオエート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、シロキサン、カーボネート、カルボアルコキシ、アセトアミデート、カルバメート、モルホリノ、ボラノ、チオエーテル、架橋ホスホロアミデート、架橋メチレンホスホネート、架橋ホスホロチオエート、およびスルホンリボヌクレオシド間結合、またはそれらの任意の組合せを含み、これらに限定されない。
【0070】
加えて、例示的オリゴリボヌクレオチドを、交互のホスホジエステルおよびホスホロチオエート結合(例えば、N1Po2Ps3PonPs、ここで、Nは本発明のリボヌクレオシドである)、ホスホジエステル結合区画とその後のホスホロチオエート結合区画(例えば、N1Po2Po3PonPo1Ps2Ps3PsnPs、ここで、Nは本発明のリボヌクレオシドである)、およびホスホロチオエート結合区画とその後のホスホジエステル結合区画(例えば、N1Ps2Ps3PsnPs1Po2Po3PonPo、ここで、Nは本発明のリボヌクレオシドである)を含み、これらに限定されない、かかるリボヌクレオシド間結合の任意の組合せで結合してよい。
【0071】
本リボヌクレオチドについてのコンジュゲーション可能な位置を下の式Vで示し、式中、Bはヘテロ環塩基を意味する。
【化1】

【0072】
本発明のTLR7特異的SIMRA化合物は、天然に存在するリボヌクレオシド類、修飾リボヌクレオシド類、またはそれらの混合物を含み得る。
【0073】
本発明において、新規TLR7特異的SIMRA化合物は、ある種の化学修飾を取り込むことによりヒトTLR7により認識され、免疫応答の誘発をもたらす。かかる化学修飾は、グアニン類似体、例えば7−デアザ−G、ara−G、6−チオ−G、イノシン、Iso−G、ロキソリビン、TOG(7−チオ−8−オキソ)−G、8−ブロモ−G、8−ヒドロキシ−G、5−アミノホルマイシンB、オキソホルマイシン、7−メチル−G、9−p−クロロフェニル−8−アザ−G、9−フェニル−G、9−ヘキシル−グアニン、7−デアザ−9−ベンジル−G、6−クロロ−7−デアザグアニン、6−メトキシ−7−デアザグアニン、8−アザ−7−デアザ−G(PPG)、2−(ジメチルアミノ)グアノシン、7−メチル−6−チオグアノシン、8−ベンジルオキシグアノシン、9−デアザグアノシン、および1−(B−D−リボフラノシル)−2−オキソ−7−デアザ−8−メチル−プリンを含み、これらに限定されない。化学修飾はまた、アデニン類似体、例えば9−ベンジル−8−ヒドロキシ−2−(2−メトキシエトキシ)アデニン、2−アミノ−N2−O−、メチルアデノシン、8−アザ−7−デアザ−A、7−デアザ−A、ara−A、ビダラビン、2−アミノアデノシン、N1−メチルアデノシン、8−アザアデノシン、および5−ヨードツベルシジンも含み、これらに限定されない。化学修飾はまた、シトシンおよびウラシル類似体、例えばシュードウリジン、ara−C、ara−U、5−メチルシチジン、4−チオウリジン、N4−エチルウリジン、ゼブラリン、5−アミノアリルウリジン、N3−メチルウリジン、および5−フルオロウリジンも含み、これらに限定されない。
【0074】
本発明の“免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類”は、3'または2'末端で、または官能化リボースまたは官能化リボ核酸塩基で非ヌクレオチドまたはヌクレオチドリンカーを介して共有結合的にまたは非共有結合的に連結した、少なくとも2個のオリゴリボヌクレオチドを含むTLR7特異的SIMRA化合物である。非共有結合的架橋は、静電相互作用、疎水性相互作用、π−スタッキング相互作用、および水素結合を含み、これらに限定されない。
【0075】
ある態様において、非ヌクレオチドリンカーは、表3に記載したものを含んでよく、これらに限定されない。
【表3】

【0076】
ある態様において、小分子リンカーは、グリセロールまたは式HO−(CH)−CH(OH)−(CH)−OH(式中、oおよびpは独立して1〜約6、1〜約4、または1〜約3の整数である)のグリセロールホモログである。ある他の態様において、小分子リンカーは1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンの誘導体である。かかる誘導体のいくつかは、式HO−(CH)−C(O)NH−CH−CH(OH)−CH−NHC(O)−(CH)−OH(式中、mは0〜約10、0〜約6、2〜約6、または2〜約4の整数である)を有する。
【0077】
本発明に従ういくつかの非ヌクレオチドリンカーは、表2の式IIにより示される通り、2個を超えるオリゴリボヌクレオチドの結合を可能にする。例えば、小分子リンカーグリセロールは、オリゴリボヌクレオチドが共有結合し得る3個のヒドロキシル基を有する。本発明のいくつかの免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類は、それ故、3'末端で非ヌクレオチドリンカーに連結した2個を超えるオリゴリボヌクレオチド類(例えば、ドメインCなど、付加的ドメインは、ドメインA、B、C、およびDについて上に定義したオリゴリボヌクレオチド類を含む)を含む。
【0078】
本発明の免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類は、好都合に、自動合成装置およびホスホロアミデート法を使用して合成できる。ある態様において、免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類は、線状合成法により合成する。別の合成方法は、合成が中央リンカー部分から外側へと進む“平行合成”である(図1参照)。米国特許番号5,912,332に記載の通り、固体支持体結合リンカーを平行合成に使用できる。あるいは、普遍的固体支持体(例えばホスフェート結合制御細孔ガラス(phosphate attached controlled pore glass))支持体を使用できる。
【0079】
免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類の平行合成はいくつかの点で線状合成より有利である:(1)平行合成は同一モノマー単位の取り込みを可能にする;(2)線状合成と異なり、両方の(または全ての)モノマー単位を同時に合成でき、それにより、合成工程数および合成に必要な時間は、モノマー単位の合成と同じである;そして(3)合成工程の減少により、最終免疫調節性オリゴリボヌクレオチド生成物の純度および収率が改善される。
【0080】
合成プロトコールの最後に、免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類を、修飾ヌクレオシドが取り込まれたら、好都合なことに濃アンモニア溶液で、またはホスホロアミデート供給社の推奨通り脱保護できる。生成物免疫調節性オリゴリボヌクレオチドは、好ましくは逆相HPLCにより精製し、脱トリチル化し、脱塩し、そして透析する。
【0081】
表4は、本発明のTLR7特異的SIMR化合物を示す。特にことわらない限り、全てのヌクレオシド類はリボヌクレオシド類であり、そして全ての架橋はホスホロチオエートである。
【表4】

【表5】

=7−デアザ−G;X=1,2,3−プロパンジオール
【0082】
第二の面において、本発明は、本発明のTLR7特異的SIMR化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を提供する。
【0083】
第三の面において、本発明は、脊椎動物においてTLR7仲介免疫応答を起こす方法であって、該脊椎動物に本発明のTLR7特異的SIMR化合物を投与することを含む、方法を提供する。ある態様において、脊椎動物は哺乳動物である。好ましい態様において、本発明のTLR7特異的SIMRA化合物を、免疫調節の必要な脊椎動物に投与する。
【0084】
第四の面において、本発明は、疾患または障害を有する患者の治療的処置方法であって、該患者に本発明のTLR7特異的SIMR化合物を投与する方法を提供する。種々の態様において、処置する疾患または障害は、癌、自己免疫障害、感染性疾患、気道炎症、炎症性障害、アレルギー、喘息、または病原体が原因の疾患を含み、これらに限定されない、免疫調節が望ましい可能性があるものである。病原体は細菌、寄生虫、真菌、ウイルス、ウイロイド、およびプリオンを含む。
【0085】
第五の面において、本発明は疾患または障害の予防方法であって、該患者に本発明のTLR7特異的SIMR化合物を投与する方法を提供する。種々の態様において、予防する疾患または障害は、癌、自己免疫障害、気道炎症、炎症性障害、感染性疾患、アレルギー、喘息、または病原体が原因の疾患を含み、これらに限定されない、免疫調節が望ましい可能性があるものである。病原体は細菌、寄生虫、真菌、ウイルス、ウイロイド、およびプリオンを含む。
【0086】
第六の面において、本発明は、障害の予防または処置方法であって、サイトカイン類またはケモカイン類を産生できる細胞キャップ(免疫細胞、B細胞、制御性T細胞、B細胞、PBMC、pDCおよびリンパ系細胞を含み、これらに限定されない)を単離し、かかる細胞を標準細胞培養条件下で培養し、かかる細胞を、単離細胞のサイトカイン類またはケモカイン類産生または分泌レベルが増加するようにTLR7特異的SIMRAでエクスビボで処置し、処置細胞を、疾患の予防または処置のためにサイトカインまたはケモカイン治療を必要とする患者に投与または再投与することを含む、方法を提供する。本発明のこの面は、活性化免疫細胞を産生するための標準養子細胞免疫療法技術に従う。
【0087】
本発明のこの面のある態様において、サイトカイン類またはケモカイン類を産生できる細胞を、疾患または障害を有しているまたは有していない対象から単離し得る。かかる単離は、同定および選択を含む場合があり、下の具体的実施例に記載したものを含む、標準細胞単離法を使用して行い得る。かかる単離細胞を、標準細胞培養法に従い、標準細胞培養条件を使用して培養し、これは、下の具体的実施例に記載した培養法および条件を含み得る。本発明のこの態様のさらなる面において、単離細胞を、少なくとも1個の本発明のTLR7特異的SIMRAの存在下、かかる1個以上の本発明のTLR7特異的SIMRAの非存在下で培養した単離細胞と比較して、サイトカイン類および/またはケモカイン類の産生および/または分泌の誘発、増加または向上に十分な量および時間で、培養する。かかる時間は秒単位から、分単位、時間単位、日単位までである。かかる単離したTLR7特異的SIMRA処置細胞は、ドナーへの再投与、または第二の組織学的に適合する患者への投与により、有用性を見ることができ、ここで、かかるドナーまたは第二の患者は、サイトカイン類および/またはケモカイン類の産生および/または分泌の誘発、増加または向上を必要とする。例えば、癌、自己免疫障害、気道炎症、炎症性障害、感染性疾患、アレルギー、喘息または病原体が原因の疾患を有するドナーへの再投与または第二の患者への投与。かかる再投与または投与は、カテーテルまたは注射投与または任意の他の有効な経路を含む、多様な方式を使用して達成し得る。本発明のこの面はまた、免疫応答を開始する能力が限られているかまたは不完全であり得るまたは免疫無防備状態である患者(例えば、HIVに感染している患者および骨髄移植患者)への有用性も見ることができる。本発明のこの面はまた、本発明のTLR7特異的SIMRAの、単離したTLR7特異的SIMRA処置細胞を投与したまたは再投与した患者への投与と組み合わせても有用性を見ることができる。
【0088】
本発明の方法の全てにおいて、本発明のTLR7特異的SIMRA化合物は、単独で、またはTLR7特異的SIMRA化合物の免疫調節効果を消滅させない、該疾患または状態の処置または予防に有用な他の薬剤と組み合わせて、直接免疫調節効果を生じることにより多様に作用し得る。本発明の何れの方法においても、疾患または状態の処置または予防に有用な薬剤は、ワクチン、抗原、抗体、好ましくはモノクローナル抗体、細胞毒性剤、アレルゲン、抗生物質、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド類、TLRアゴニスト(例えば、TLR9のアゴニストおよび/またはTLR7のアゴニストおよび/またはTLR8のアゴニスト)、化学療法剤(伝統的化学療法剤および近代的標的治療剤)、標的治療剤、活性化細胞、ペプチド類、タンパク質、遺伝子治療ベクター、ペプチドワクチン、タンパク質ワクチン、DNAワクチン、アジュバント、および共刺激分子(例えば、サイトカイン類、ケモカイン類、タンパク質リガンド、トランス活性化因子、ペプチド類または修飾アミノ酸を含むペプチド類)、またはそれらの組合せを含み、これらに限定されない。例えば、癌の処置において、本発明のTLR7特異的SIMRA化合物を、1種以上の化学療法化合物、標的治療剤および/またはモノクローナル抗体と組み合わせて投与することが意図される。あるいは、本薬剤は、抗原またはアレルゲンをコードするDNAベクターを含み得る。あるいは、本発明のTLR7特異的SIMRA化合物を、TLR7特異的SIMRA化合物に対する免疫応答の特性または強度を高めるために、他のアジュバントと組み合わせて投与できる。
【0089】
本発明の方法の全てにおいて、単独で、または何れかの他の薬剤と組み合わせた本発明のTLR7特異的SIMR化合物の投与は、非経腸、粘膜送達、経口、舌下、経皮、局所、吸入、鼻内、エアロゾル、眼内、気管内、直腸内、膣、遺伝子銃、皮膚パッチ、または点眼剤または洗口剤形態を含み、これらに限定されない任意の経路により行うことができる。本発明のTLR7特異的SIMR化合物の治療組成物の投与は、薬学的有効量を使用する既知方法を使用して、疾患の症状を軽減する、または疾患の疾病指示マーカーを低下させるのに十分な期間行うことができる。例えば、疾患および/または障害の処置のための薬学的に有効量の本発明のTLR7特異的SIMR化合物は、症状を軽減するまたは減らす、または腫瘍、癌、または細菌、ウイルス、または真菌感染を遅延もしくは軽減するために必要な量である。ワクチンアジュバントとして使用するための薬学的有効量は、ワクチンまたは抗原に対する対象の免疫応答をブーストするのに有用な量である。併用する抗原に対する免疫応答を調節する組成物の投与に関連して、薬学的に有効量の本発明のTLR7特異的SIMR化合物は、その抗原を単独で投与したときに得られる免疫応答と比較して、所望の調節を達成するのに十分な量である。特定の適用についての有効量は処置する疾患または状態、投与する特定のオリゴヌクレオチド、対象の体格または疾患または状態の重症度のような因子によって変わり得る。当業者は、過度の実験を要することなく、特定のオリゴヌクレオチドの薬学的有効量を経験的に決定できる。
【0090】
全身投与するとき、治療組成物は、好ましくは本発明のTLR7特異的SIMR化合物の血中濃度を約0.0001マイクロモル〜約10マイクロモルに到達させるのに十分な投与量で投与する。局所投与については、これより遙かに低濃度で有効であり得て、かつ遙かに高い濃度が許容され得る。好ましくは、本発明のTLR7特異的SIMR化合物の総投与量は、約0.001mg/患者/日〜約200mg/kg体重/日の範囲である。治療的有効量の本発明の治療組成物の1種以上を、同時に、または連続的に一処置として個体に投与することが望ましいことがある。
【0091】
本発明のTLR7特異的SIMRA化合物は、場合により1種以上のアレルゲンおよび/または抗原(自己または外来)、免疫原性タンパク質またはペプチド、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、コレラ毒素Bサブユニット、または任意の他の免疫原性担体タンパク質と連結してよい。本発明のTLR7特異的SIMR化合物を、TLRアゴニスト(例えば、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、および/またはTLR9のアゴニスト)、フロイント不完全アジュバント、KLH、モノホスホリル脂質A(MPL)、ミョウバン、ならびにQS−21およびイミキモドを含むサポニン類、またはそれらの組合せを含み、これらに限定されない他の化合物(例えば、アジュバント)と組み合わせても使用できる。
【0092】
本発明のこの面の方法は、免疫系の試験モデルとして有用である。本方法はまた、ヒトまたは動物疾患の予防または治療的処置にも有用である。例えば、本方法は、小児、成人、および獣医用ワクチン適用に有用である。
【0093】
以下の実施例は、本発明のある種の例示的態様をさらに説明することを意図し、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例】
【0094】
実施例1
免疫調節性オリゴリボヌクレオチド合成
免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類を、自動DNA/RNA合成装置でのホスホロアミデート化学を用いて、化学合成した。N−アセチル保護した(U以外)2'−O−TBDMS RNAモノマー、A、G、C、およびUをSigma-Aldrichから購入した。7−デアザ−G、イノシンをChemGenes Corporationから購入した。0.25M 5−エチルチオ−1H−テトラゾール、PAC−無水物キャップAおよびキャップBをGlen Researchから購入した。3%トリクロロ酢酸(TCA)のジクロロメタン(DCM)溶液および5%3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシド(Beaucage reagent)は社内で製造した。
【0095】
免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類を1−2μM規模で標準RNA合成プロトコールを使用して合成した。
【0096】
開裂および塩基脱保護
免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類を固体支持体から開裂し、エキソ−環状−アミン類の保護基をメチルアミンおよび水酸化アンモニウム溶液中で除去した。得られる溶液をSpeedVacで完全に乾燥させた。
【0097】
IE HPLC精製
免疫調節性オリゴリボヌクレオチド類をイオン交換HPLCにより精製した。Dionex DNAPac 100カラムを使用。粗免疫調節性オリゴリボヌクレオチド溶液をHPLCに注入した。上記勾配を行い、フラクションを回収した。90%を超えて所望の生成物を含む全フラクションを混合し、溶液をほとんど乾固するまでRotoVapで蒸発させた。無RNAse水を添加して、最終体積10mlとした。
【0098】
C−18逆相脱塩
Watersから購入したC-18 Sep-Pakカートリッジを、10mlのアセトニトリル、続いて10mlの0.5M 酢酸ナトリウムをカートリッジを通すことにより洗浄した。次いで、10mlの免疫調節性オリゴリボヌクレオチド溶液をカートリッジに載せた。15mlの水を使用して、塩を洗い流した。免疫調節性オリゴリボヌクレオチドを、最後に1mlの50%アセトニトリルの水溶液を使用して溶出した。溶液をSpeedVacに30分間入れた。残った溶液を0.2ミクロン・フィルターを通して濾過し、凍結乾燥させた。固体を無RNAse水に再溶解して、所望の濃度とした。最終溶液を0℃未満で貯蔵した。オリゴリボヌクレオチド類を、キャピラリー電気泳動、イオン交換HPLC、およびPAGE分析により純度を分析し、MALDI−ToF質量分析で分子量を分析した。
【0099】
実施例2
TLR発現HEK293細胞を用いるアッセイプロトコール
HEK293またはHEK293XL/ヒトTLR7またはHEK293またはHEK293XL/ヒトTLR8細胞(InvivoGen, San Diego, CA)を、48ウェルプレートで、10%熱不活性化FBS添加250μl/ウェルDMEM中、5%COインキュベーターで培養した。
【0100】
レポーター遺伝子形質転換
ヒトTLR7またはTLR8を安定に発現するHEK293またはHEK293XL細胞(InvivoGen, San Diego, CA)を、48ウェルプレートで、10%熱不活性化FBS添加250μl/ウェルDMEM中、5%COインキュベーターで培養した。80%コンフルエンスで、培養物を、培養培地中4μl/mlのリポフェクタミン(Invitrogen, Carlsbad, CA)の存在下、400ng/mlのSEAP(分泌型のヒト胚アルカリホスファターゼ)レポータープラスミド(pNifty2-Seap)(Invivogen)で一過性にトランスフェクションした。プラスミドDNAおよびリポフェクタミンを、別々に無血清培地で希釈し、室温で5分間インキュベートした。インキュベーション後、希釈したDNAおよびリポフェクタミンを混合し、混合物を室温で20分間インキュベートした。100ngのプラスミドDNAおよび1μlのリポフェクタミンを含む25μl量のDNA/リポフェクタミン混合物を、細胞培養プレートの各ウェルに添加し、培養を4時間続けた。
【0101】
IMO処置
トランスフェクション後、培地を新鮮培養培地に変えた。ヒトTLR7またはTLR8を発現するHEK293またはHEK29XL細胞を、50μg/mlの本発明のTLR7特異的SIMRAまたはPBSコントロールで刺激し、培養を18〜20時間続けた。TLR7特異的SIMRA処置の最後に、30μlの培養上清を各処置から取り、製造者のプロトコールに従うSEAPアッセイに使用した(InvivoGen)。
【0102】
SEAP(分泌型のヒト胚アルカリホスファターゼ)アッセイ
簡単に言うと、培養上清をp−ニトロフェニル(phynyl)ホスフェート基質とインキュベートし、黄色の発色をプレートリーダーで405nmで測定した。
【0103】
ヒトTLR7およびTLR8発現HEK293細胞中のTLR7およびTLR8活性を表5に示す。表5に示すデータは、HEK293細胞を50μg/mlの本発明のTLR7特異的SIMRAで18時間刺激し、NF−κBレベルをSEAP(分泌型のヒト胚アルカリホスファターゼ)アッセイを使用して測定して作成した。データは、NF−κB活性のPBSコントロールに対する増加倍率として示す。(Putta, M.R. et al. (2006) Nucleic Acids Res. 34: 3231-38)。表5に示すデータは、本発明のTLR7特異的SIMRAの投与が明確かつ特異的TLR7仲介免疫応答プロファイルを生じさせることを示す。
【表6】

=7−デアザ−G;X=1,2,3−プロパンジオール(グリセロール)
【0104】
実施例3
ヒト細胞培養プロトコール
ヒトPBMC単離
新たに採血した健常ボランティアの血液(CBR Laboratories, Boston, MA)由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll密度勾配遠心法(Histopaque-1077, Sigma)により単離した。
【0105】
ヒトpDC単離
新たに採血した健常ボランティアの血液(CBR Laboratories, Boston, MA)由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll密度勾配遠心法(Histopaque-1077, Sigma)により単離できる。pDCを、製造者の指示に従いBDCA4細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用するポジティブ選択によりPBMCから単離できる。
【0106】
ヒトmDC単離
新たに採血した健常ボランティアの血液(CBR Laboratories, Boston, MA)由来の末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll密度勾配遠心法(Histopaque-1077, Sigma)により単離できる。骨髄樹状細胞(mDC)を、製造者の指示に従いBDCA4細胞単離キット(Miltenyi Biotec)を使用するポジティブ選択によりPBMCから単離できる。
【0107】
マルチプレックスサイトカインアッセイ
ヒトPBMCを、5×10細胞/mlを使用して48ウェルプレートに播種した。pDCを、96ウェル皿に1×10細胞/mlを使用して播種できる。DPBS(pH7.4;Mediatech)に溶解した本発明のTLR7特異的SIMRA化合物を、細胞培養に最終濃度50または100μg/mlで添加した。次いで細胞を37℃で24時間インキュベートし、上清をルミネックスマルチプレックスまたはELISAアッセイのために回収した。実験を3個のウェルで行った。IFN−α、IL−6、またはTNF−αの濃度をサンドイッチELISAにより測定した。サイトカイン抗体およびスタンダートを含む必要な試薬をPharMingenから購入した。
【0108】
ルミネックスマルチプレックスアッセイを、Biosourceヒトマルチプレックスサイトカインアッセイキットを使用して、Luminex 100/200装置で行い、データをApplied Cytometry Systems(Sacramento, CA)が提供するStarStationソフトウェアを使用して解析した。
【0109】
ヒトPBMCからのサイトカイン濃度を表6に示す。表6に示すデータは、新たに採血した健常ボランティアの血液からPBMCを単離し、100μg/ml用量のTLR7特異的SIMRAと24時間培養し;上清を回収し、サイトカイン濃度用ルミネックスマルチプレックスアッセイで解析することにより作成した。表6に示す結果は、本発明のTLR7特異的SIMRAオリゴヌクレオチド類の投与が、独特のサイトカインおよびケモカインプロファイルをもたらすことを証明する。
【表7】

=7−デアザ−G;X=1,2,3−プロパンジオール(グリセロール)
データ50μg/ml濃度
【0110】
実施例4
TLR7アゴニスト化合物で処置したマウスモデルにおけるインビボサイトカイン分泌
5〜6週齢のC57BL/6マウスをTaconic Farms, Germantown, NYから得て、Idera Pharmaceutical's IACUC approved animal protocolsに従い飼養した。マウス(n=3)に、個々の本発明のTLR7特異的SIMR化合物を25mg/kg(1回投与量)で皮下注射(s.c.)した。血清を、TLR7特異的SIMRA投与2時間後後眼窩放血により採取し、サイトカインおよびケモカイン濃度をサンドイッチELISAまたはルミネックスマルチプレックスアッセイにより測定した。結果を表7にしめし、これは、本発明のTLR7特異的SIMRAオリゴヌクレオチド類のインビボ投与が独特のサイトカインおよびケモカインプロファイルをもたらすことを証明する。サイトカインおよびケモカイン抗体およびスタンダードを含む全ての試薬をPharMingen(San Diego, CA)から購入した。
【表9】

=7−デアザ−G;X=1,2,3−プロパンジオール(グリセロール)
【0111】
実施例5
血清安定性アッセイ
約0.5ODの例示的な本発明のTLR7特異的SIMR化合物を、個々に1%ヒト血清のPBS溶液中、30分間、37℃でインキュベートしてよい。1%ヒト血清中、30分間のインキュベーション後、TLR7特異的SIMRA化合物をアニオン交換HPLCで解析して、血清処置前に存在したTLR7特異的SIMRA化合物の量と比較して、残留している完全長TLR7特異的SIMRA化合物の割合を決定してよい。結果は、RNAベースの化合物上に為した本発明の化学修飾が、その安定性を増強できることを証明するものであると予測される。
【0112】
均等物
上に記載した発明は、明瞭化および理解の目的で幾分詳細に記載しているが、当業者には、本明細書の解釈から、本発明の真の範囲および添付する特許請求の範囲から逸脱することなく、形式および詳細を変化させ得ることは当然である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SIMRA#1、SIMRA#2、SIMRA#3、SIMRA#4、SIMRA#5、SIMRA#6、SIMRA#7、SIMRA#8、SIMRA#9、SIMRA#10、SIMRA#11、SIMRA#12、SIMRA#13、SIMRA#14、SIMRA#15、SIMRA#16、SIMRA#17、SIMRA#18、SIMRA#19、SIMRA#20、SIMRA#21、SIMRA#22、SIMRA#23、SIMRA#24、SIMRA#25、SIMRA#26、SIMRA#27、SIMRA#28、SIMRA#29、SIMRA#30、およびSIMRA#31から成る群から選択される、TLR7特異的SIMRA化合物。
【請求項2】
請求項1に記載のTLR7特異的SIMRA化合物および生理学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項3】
個体における免疫応答を誘発する方法であって、脊椎動物に請求項1に記載のTLR7特異的SIMRA化合物を投与することを含む方法。
【請求項4】
免疫応答の調節が有益である疾患または障害を有する脊椎動物の治療的処置方法であって、該脊椎動物に請求項1に記載のTLR7特異的SIMRA化合物を薬学的有効量で投与することを含む方法。
【請求項5】
疾患または障害が癌、自己免疫障害、気道炎症、炎症性障害、感染性疾患、皮膚障害、アレルギー、喘息または病原体が原因の疾患である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1種以上の化学療法化合物の投与をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
標的治療剤の投与をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
抗体の投与をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
DNAワクチン、タンパク質ワクチンおよびペプチドワクチンから成る群から選択されるワクチンの投与をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
抗原の投与をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
アジュバントをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
免疫応答の調節が有益である疾患または障害を有する個体を予防的に処置する方法であって、該脊椎動物に請求項1に記載のTLR7特異的SIMRA化合物を薬学的有効量で投与することを含む、方法。
【請求項13】
疾患または障害が脊椎動物における癌、自己免疫障害、気道炎症、炎症性障害、感染性疾患、皮膚障害、アレルギー、喘息または病原体が原因の疾患である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1種以上の化学療法化合物の投与をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
標的治療剤の投与をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
抗体の投与をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
DNAワクチン、タンパク質ワクチンおよびペプチドワクチンから成る群から選択されるワクチンの投与をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
抗原の投与をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
アジュバントの投与をさらに含む、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−517226(P2012−517226A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549347(P2011−549347)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/023769
【国際公開番号】WO2010/093705
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(398032717)イデラ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (38)
【氏名又は名称原語表記】Idera Pharmaceuticals, Inc.
【Fターム(参考)】