TOFD法を用いた溶接部の探傷方法および探傷装置
【課題】TOFD法によって溶接で接続されたノズルのきずの位置を容易に算出できるノズル用の探傷装置およびその方法を提供する。
【解決手段】TOFD法を用いた溶接部の探傷装置は、溶接部60を挟んで配置される、送信側探触子12および受信側探触子11とを含む。送信側探触子12は60°で溶接部60に超音波ビームを送信し、受信側探触子11は超音波ビームによる溶接部60のきず70からの回折波を受信する。装置はさらに、送信探触子12から受信探触子11への超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出する楕円軌跡算出手段と、受信探触子の受信角度を複数切替えて、算出された楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出するエコー高さ算出手段と、楕円軌跡算出手段の算出した楕円軌跡とエコー高さ算出手段の算出したエコー高さに基づいて溶接部のきずの位置を算出するきず位置算出手段とを含む。
【解決手段】TOFD法を用いた溶接部の探傷装置は、溶接部60を挟んで配置される、送信側探触子12および受信側探触子11とを含む。送信側探触子12は60°で溶接部60に超音波ビームを送信し、受信側探触子11は超音波ビームによる溶接部60のきず70からの回折波を受信する。装置はさらに、送信探触子12から受信探触子11への超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出する楕円軌跡算出手段と、受信探触子の受信角度を複数切替えて、算出された楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出するエコー高さ算出手段と、楕円軌跡算出手段の算出した楕円軌跡とエコー高さ算出手段の算出したエコー高さに基づいて溶接部のきずの位置を算出するきず位置算出手段とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は溶接部の探傷方法および探傷装置に関し、特に、溶接で接続されたノズルを探傷するTOFD(Time Of Flight Diffraction)法を用いた探傷方法および探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TOFD法は、試験体表面に2個の縦波探触子(送信用探触子と受信用探触子)を一定の間隔で対向させ、試験体表面を伝わるラテラル波または試験体裏面からの反射波と欠陥先端からの回折波の伝播時間の差を利用して、欠陥検出または欠陥寸法測定を行なう方法である。TOFD法は、解析に際し、欠陥先端で生じるモード変換横波等の影響を受けないように最も早く受信する縦波だけに着目する。また、通常は、指向性の鈍い探触子を使用することで一度に広い範囲の試験を行なう。
【0003】
従来のTOFDを用いた探傷装置が、例えば特開2005−70017号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1によれば、対となる送波用探触子1と受波用探触子2を、対象物3の表面に一定距離を隔てて配置し、送波用探触子1から対象物中に超音波を放射し、該対象物中に存在欠陥の端部で生じる回折波を受波用探触子2で受波して、回折波の縦波成分と横波成分を各々検出し、検出された縦波成分と前記横波成分の到達時刻差に基づいて、該回折波を生じた欠陥端部から受波用探触子2に至る距離Lを推定するという点を開示する。また、特許文献は、送信用探触子から受信用探触子に至る伝播経路長を互いに等しくするきずの上端部の位置は、送信用探触子と受信用探触子との位置を焦点とする楕円軌跡の上に存在するという点を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−70017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のTOFD法を用いた探傷を行なう探傷装置の治具や小径管円周継手の溶接部の検査は上記のように構成されていた。それぞれ、送信側と受信側とを含む一組の探触子を溶接線を中央にして所定の間隔を保持して探傷する構成であった。このような構成であれば、溶接部が両探触子の中央部に位置するように配置される場合は探傷が可能であるが、ノズルの溶接部のような、溶接線が送信用および受信用探触子の中央部に位置しない場合には探傷ができないという問題があった。
【0006】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、TOFD法によって溶接で接続されたノズルのきずの位置を容易に検出できるノズル用の探傷装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るTOFD法を用いた溶接部の探傷方法は、送信側探触子と受信側探触子とを前記溶接部を挟んで配置し、送信側探触子から所定の角度で溶接部に超音波ビームを送信し、受信側探触子で溶接部のきずからの回折波を受信し、送信側探触子から受信側探触子への超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出し、受信探触子の受信角度を複数切替えて、算検出された楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出し、算出された複数の回折波のエコー高さに基づいて溶接部のきずの位置を算出する。
好ましくは、溶接部のきずの位置は、受信角度を複数切替えた受信回折波の強度に応じてきずの位置を検出する。
【0008】
この発明の他の局面においては、TOFD法を用いた溶接部の探傷装置は、溶接部を挟んで配置される、送信側探触子および受信側探触子を含み、送信側探触子は所定の角度で前記溶接部に超音波ビームを送信し、受信側探触子で溶接部のきずからの回折波を受信し、送信側探触子から受信側探触子への超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出する楕円軌跡算出手段と、受信側探触子の受信角度を複数切替えて、算出された楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出するエコー高さ算出手段と、楕円軌跡算出手段の算出した楕円軌跡とエコー高さ算出手段の算出したエコー高さに基づいて溶接部のきずの位置を検出するきず位置算出手段とを含む。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、所定の間隔で送信側探触子と受信側探触子とを配置し、送信側探触子から受信側探触子への超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出して、受信側探触子の受信角度を複数切替えて、楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出して、楕円軌跡上で検出したエコー高さに基づいて溶接部のきずの位置を算出するため、送受信側探触子間の偏った位置に溶接部が位置する場合においてもきずの位置を容易に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】横穴試験体を示す図である。
【図2】横穴試験体を示す図である。
【図3】横穴試験体を示す図である。
【図4】溶接によってノズルを胴部に接続した場合の送受信探触子の配置位置を示す図である。
【図5】開先形状を示す断面図である。
【図6】板厚が200mmの場合の探傷可能領域を示す図である。
【図7】溶接部で接続されたノズルを有する胴部における探触子の配置を示す断面図である。
【図8】溶接部で接続されたノズルを有する胴部における探触子の配置を示す平面図である。
【図9】溶接部におけるきずへの送信側探触子からの超音波の送信と、きずから受信側探触子が受信する超音波の受信角度の考え方を示す図である。
【図10】送受信探触子を用いてきず位置を算出するための概念を示す図である。
【図11】送受信探触子を用いてきず位置を検出する方法を示す図である。
【図12】探傷装置のブロック図である。
【図13】特定のソフトウエアを用いたTOFD法での結果表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この発明の基本的な考え方について説明する。発明者らは、ノズルを溶接で接合した場合の溶接部の欠陥(きず)をどの範囲で検出可能かを知るために、きずを模した横穴を有する横穴試験体101〜103を制作し、それを探傷試験器で探傷して、きずの位置を求めるための送受信探触子の位置および送受信角度を見つけだした。
【0012】
なお、「きず」とは非破壊試験の結果から判断される不完全部又は不連続部のことであり、このうち、不合格となるきずを「欠陥」という。
【0013】
製作した横穴試験体101を図1に示す。図1(A)は平面図であり、図1(B)は正面図(図1(A)においてB−Bで示す矢視図)であり、図1(C)は側面図(図1(A)においてC−Cで示す矢視図)である。図1を参照して、横穴試験体101は、長さ800mm、高さ250mm、厚さ40mmの直方体の板であって、図に示すように、異なる位置に貫通孔102、103を有している。具体的には、横穴試験体101は、深さ20mmと50mmの位置に径5mmの貫通孔102,103を有している。
【0014】
横穴試験体102を図2に示す。図2(A)は平面図であり、図2(B)は正面図(図2(A)においてB−Bで示す矢視図)であり、図2(C)は側面図(図2(A)においてC−Cで示す矢視図)である。図2を参照して、横穴試験体102は、長さ800mm、高さ250mm、厚さ40mmの直方体の板であって、図に示すように、深さ30mmと100mmの位置に径5mmの貫通孔112,113とを有している。
【0015】
同様に、図3を参照して、横穴試験体103は、深さ150mmと200mmの位置に径6mmの貫通孔122,123を有している。
【0016】
図4は溶接によってノズル131を胴部133に接続した場合に、発明者らが考えた送受信探触子の配置位置を示す図である。図4を参照して、胴部133にノズル131を溶接した場合に、ノズルネック部132に受信側探触子11を配置し受信側探触子11に対して溶接部134を挟んで送信側探触子12を配置するようにした。
【0017】
ここで、送信側探触子12は周波数が5MHz、その送信角度が送信側探触子12の載置されている平面から反時計方向に60°で送信する。
【0018】
探傷範囲の検討に先立ち、開先形状を仮定した。図5は、既存のノズル開先形状をベースとした、板厚200mmの胴部の開先形状(図中斜線部)を示す。図5を参照して、開先135は上部115と下部116とを有し、上部115の寸法は115mmで開先角度θは35°である。板厚が変わっても開先角度はそのままとしてビード幅が狭くなるような溶接部を仮定した。このとき、ノズル131側のビード止端部を基準位置(図中Y=0で示す)とした。
【0019】
探傷範囲の確認に際しては、横穴試験体101,111,121を用いて送信受信探触子を所定の間隔に配置し、横穴に対して相対的に送信受信探触子を移動させて、最大エコーが得られた位置、エコー高さが最大エコーの1/2(−6dB)および1/4(−12dB)となる位置を調べ、探触子、位置ごとに結果をまとめて探傷範囲とした。
【0020】
上記の条件で板厚をいろいろ変化させて寸法に応じて探傷配置と探傷可能範囲について検討した。図6は板厚が200mmの場合の探傷可能領域を示す図である。斜線で示した範囲が探傷可能領域である。ここでは送信探触子が4個用いられる。受信側探触子41に近いほうから第1〜第4送信側探触子42〜45という。第1および第2送信側探触子42,43の送信条件は5MHz60°であり、第3および第4送信側探触子44,45の送信条件は2MHz60°である。
【0021】
なお、図6において、Y=0は基準位置を示し、受信側探触子41は基準位置から左側に距離a離れた位置に載置され、送信側探触子42〜45は基準位置から右側に、それぞれ、距離e、d、c、b離れた位置に載置される。また、送信側探触子42の下端の左側から斜め左下方向に延びる二点鎖線で示した線が溶接部の形状である。
【0022】
なお、受信側探触子41の受信条件は、送信条件が5MHz60°のものについては、5MHzで5°、25°、および、60°であり、送信条件が2Hz60°のものについては、2MHzで5°、25°、および、60°である。
【0023】
図6に示すように、200mmの板厚において、送信側探触子の送信条件を2MHz、5MHz、60°とし、受信側探触子の受信条件は、2MHzで5°、25°および60°ならびに5MHz、60°、5MHzで5°、25°および60°であれば、必要な領域を探傷できる。このように、板厚に応じて溶接部をカバーできるように送信側および受信側探触子を配置すればノズルの溶接部の探傷が可能であることがわかる。
【0024】
次に、具体的なノズル溶接部の探傷方法および探触子の配置の決定方法について説明する。上記のことから、ノズル溶接部の探傷方法および探触子の配置を次のように決定した。
【0025】
探傷は管胴部の内面からも可能であるが、外面側から行なう。また、送信および受信周波数は適用する板厚ごとに縦波5MHzまたは2MHzを使用する。具体的には板厚50mm以下のとき縦波5MHzを使用し、板厚50mm〜200mmのとき縦波2MHzと5MHzとを併用する。
【0026】
また、送信側探触子および受信側探触子の組合せは次のようにする。
【0027】
溶接部全体をカバーするために3種類の受信角度で探傷する。
【0028】
送信側60°と受信側5°、送信側60°と受信側25°、送信側60°と受信側60°のそれぞれの探触子の組合せとする。
【0029】
次に探触子の配置について説明する。図7は溶接部60で接続されたノズル61を有する胴部62における探触子の配置を示す図である。図7を参照して、は溶接部60を挟んで受信側探触子51と送信側探触子52、53が配置される。また、図8(A)は図7に示したような探触子において、好ましい配置を示す平面図である。また、図8(B)は図8(A)と同様の図であるが、ノズル61の径が大きい場合を示す図である。具体的には、図8(A)はノズル溶接部半径が150mmの場合の図であり、図8(B)はノズル溶接部半径が300mmの場合を示す図である。
【0030】
図7および図8を参照して、第1送信側探触子52と第2送信側探触子53とが溶接部60を挟んでノズル61の反対側に載置され、受信側探触子51がノズル61側に載置される。
【0031】
また、図8(A)に示すように、60°の送信側探触子52cと5°の受信側探触子51cの組と、25°の送信側探触子52bと25°の受信側探触子51bの組と、60°の送信側探触子52aと60°の受信側探触子51aの組との3組の送信側および受信側探触子をノズル溶接部60の中心から扇状に並べて探傷すれば、一度にその部分の探傷が可能になる。
【0032】
次に、この実施の形態におけるきずの高さおよびきずの深さの評価方法について説明する。図9は溶接部におけるきずへの送信側探触子12からの超音波の送信と、きずから受信側探触子11が受信する超音波の受信角度の考え方を示す図である。ここでは、ノズルの溶接部を探傷するために、受信側探触子11は溶接部60の近傍に配置され、送信側探触子12は溶接部60から離れた位置に配置される。
【0033】
送信側探触子12と受信側探触子11との超音波入射位置の間隔をfとする。送信側探触子12から受信側探触子11へ送信される超音波ビームのうち、きず70を反射する伝播経路長wを有する楕円軌跡を求め、これと、受信側探触子11におけるエコー高さの高い受信角度θとの交点がきず70で反射する位置を示す。
【0034】
きず70で反射する伝播経路長wは探傷図形から読取れるため、楕円軌跡が算出され、受信側探触子11による受信角度θが推定できれば、きずの位置を算出することが可能になる。
【0035】
受信側探触子11の受信角度θとしては最もエコー高さが高い角度を求める必要がある。これは、受信側探触子11において受信角度をスキャンすればよい。
【0036】
一方で、複数の角度、例えば、5°、25°、60°の各々の角度で受信側探触子で検出した同一のきずと推定されるエコーのエコー高さから求めてもよい。周波数、振動直径が同一の探触子は、超音波ビームの拡がりがほぼ同様と考え、各々の探触子のエコー高さの比から受信角度を求める。例えば、図9において、θが5°と25°とのエコー高さの比が1:2であれば、θが5°と25°との間を2:1に按分した位置にきずが存在すると判断できる。
【0037】
次に、きずの深さの算出方法について説明する。前述のようにきず位置は、送受信側探触子11、12の間隔ときずの上端部の位置における伝播経路長と受信波のエコー高さから計算される。
【0038】
図10は送受信探触子を用いてきず位置を算出するための具体的な方法を示す図である。図10(A)は概念を模式化した図であり、図10(B)は、図10(A)のように模式化される前の実際の送信側探触子12と、受信側探触子11と、両者によって特定されるきず70の位置関係を示す図である。
【0039】
ここで、X=0およびY=0の位置を原点とし、焦点Fの位置に送信側探触子11と受信側探触子12とが位置するものとする。w/2+w/2=wは送信側探触子12から受信側探触子11への超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を形成する距離であり、θは異なる受信側探触子の受信波のエコー高さから求めた受信角度である。
【0040】
また、aは楕円の長辺であり、bは楕円の短辺であり、cはエコー高さから求めた受信波のY軸の切片である。
【0041】
この例であれば、楕円の軌跡と受信側探触子11の位置から受信角度θで引いた直線との交点14(○で示す)がきず70の位置として推定される。
【0042】
具体的には、きず70の位置14は、楕円と直線の連立式から求める。このようにすれば、交点の座標(x,y)を求めることができる。
【0043】
次に、きず70の高さの算出について説明する。上で求めたきず70の上端位置14のX座標上にきずがあるものとして、きず70の下端からのエコーの伝播距離から計算される楕円の式にX座標の値を代入して下端位置を求める。そして上端位置と下端位置との差をきず70の高さとする。
【0044】
ここで、交点を求める関係式は次のとおりである。
y=√((1-X2)/a2)*b2)
y=tanη×X+c
【0045】
次に、具体的な算出方法について説明する。ここでは、図1〜3に示したような複数の貫通孔を有する試験体を用いて、貫通孔をきずとして検出し、その位置を求める場合を説明する。図11はパソコンの表示画面を示す図である。図11(A)は受信角度が60°の探触子で受信した場合の試験体におけるある特定のきずに対して、そのきずの位置をカーソルで特定する場合を示す図であり、図11(B)はその場合のエコー高さを示す図である。図11(A)において横軸は試験体の端部からの距離を示し、縦軸は伝播時間を示す。図11(B)において横軸は試験体の端部からの距離を示し、縦軸はエコー高さを示す。同様に、図11(C)と(D)は受信角度が25°の場合の、図11(E)と(F)とは受信角度が5°の場合の、きずの位置と、エコー高さを示す。
【0046】
図11(A)および(B)を参照して、受信角度が60°の探触子で受信した場合のきずの位置の特定方法について説明する。図11(A)に示すように、画面上には試験体に設けられた複数のきずが画面上に参照番号71,72等で示すように表示される。表示されたそれぞれのきずのうち、所望のきず(ここでは参照番号72)をカーソル線81〜83で選択する。ここでカーソル線82はきずの上端部の位置を、カーソル線83はきずの下端部の位置を示す。
【0047】
図11(A)において、きずの位置を特定すると、その位置におけるのエコー波形86が図11(B)に示すように表示される。ここでカーソル線82で示すきずの上端部がエコー波形86の極小部86aに対応し、カーソル線83で示すきずの下端部がエコー波形86の極大部86bに対応する。このようにしてきずの位置を特定すると、その時のエコー高さ等のデータが自動的に後に説明する、図13(A)に示すように入力される。
【0048】
図12に図11に示したような表示画面を表示する表示部を有する探傷装置20のブロック図を示す。図12を参照して、探傷装置20は、制御部21と、表示部22と、演算部23と、受信側探触子11と送信側探触子12とのインターフェースとなるI/O部24とを有するパソコンであって、制御部21が表示部22、演算部23、I/O部24を制御してきずの位置を特定する。
【0049】
次に、探傷装置20を用いたきず70の位置の解析方法について説明する。探傷装置20は、きずの深さ算出機能を備えている。この機能は、エクセル(登録商標)のような表計算ソフトウエアに連動して、探傷結果のカーソル表示位置や伝播時間とエコー高さ等をこの表計算ソフトウエアに与えて表計算ソフトウエア上で算出し、その結果を表示部に表示する機能である。
【0050】
なお、上記したように算出結果はカーソルの動きにあわせてリアルタイムで表示部22に表示される。
【0051】
一例として、図13にこのソフトウエアを用いたTOFD法での結果表示画面を示す。
【0052】
図13(A)は図11に示したようにカーソルを用いてきずの位置を特定したときのソフトウエアの表示画面例を示す図である。ここでは、ある探傷例における、受信側探触子の公称屈折角と、探傷ゲイン値と、上端エコー高さと、下端エコー高さと、上端ビームの伝播時間と、下端ビームの伝播時間とが、それぞれの角度ごとに自動的に入力された状態を示す。上記したように、受信側探触子11の公称屈折角ごとに、探傷感度のゲインが調整され、上端エコー高さ、下端エコー高さ、上端伝播時間、下端伝播時間が表示される。
【0053】
これが入力されると、図12(B)に示すように、きず位置、きず深さ、および、きず高さが上記の式に基づいて自動的に算出される。
【0054】
なお、上記実施の形態においては、屈折角として、5°、25°、60°の場合について説明したが、これに限らず、溶接部をカバーできれば、3つの角度に限らず、2つの角度等であってもよいし、複数の角度において、他の組合せでもよい。
【0055】
また、上記実施の形態において、送信角度は60°の場合について説明したが、これに限らず、任意の角度であってもよい。
【0056】
図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明に係るTOFD法を用いた溶接部の探傷装置および探傷方法は、溶接で接続されたノズルのきずの位置等を簡単に算出できるため、ノズルの溶接部の探傷装置、および、その方法として有利に利用される。
【符号の説明】
【0058】
11,41 受信側探触子、12,42 送信側探触子、20 探傷装置、21 制御部、22 表示部、23 演算部、24 I/O部、60 溶接部、61,131 ノズル、62,133 胴部、101、111,121 横穴試験体、102,103、112,113,122,123 貫通孔。
【技術分野】
【0001】
この発明は溶接部の探傷方法および探傷装置に関し、特に、溶接で接続されたノズルを探傷するTOFD(Time Of Flight Diffraction)法を用いた探傷方法および探傷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
TOFD法は、試験体表面に2個の縦波探触子(送信用探触子と受信用探触子)を一定の間隔で対向させ、試験体表面を伝わるラテラル波または試験体裏面からの反射波と欠陥先端からの回折波の伝播時間の差を利用して、欠陥検出または欠陥寸法測定を行なう方法である。TOFD法は、解析に際し、欠陥先端で生じるモード変換横波等の影響を受けないように最も早く受信する縦波だけに着目する。また、通常は、指向性の鈍い探触子を使用することで一度に広い範囲の試験を行なう。
【0003】
従来のTOFDを用いた探傷装置が、例えば特開2005−70017号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1によれば、対となる送波用探触子1と受波用探触子2を、対象物3の表面に一定距離を隔てて配置し、送波用探触子1から対象物中に超音波を放射し、該対象物中に存在欠陥の端部で生じる回折波を受波用探触子2で受波して、回折波の縦波成分と横波成分を各々検出し、検出された縦波成分と前記横波成分の到達時刻差に基づいて、該回折波を生じた欠陥端部から受波用探触子2に至る距離Lを推定するという点を開示する。また、特許文献は、送信用探触子から受信用探触子に至る伝播経路長を互いに等しくするきずの上端部の位置は、送信用探触子と受信用探触子との位置を焦点とする楕円軌跡の上に存在するという点を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−70017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のTOFD法を用いた探傷を行なう探傷装置の治具や小径管円周継手の溶接部の検査は上記のように構成されていた。それぞれ、送信側と受信側とを含む一組の探触子を溶接線を中央にして所定の間隔を保持して探傷する構成であった。このような構成であれば、溶接部が両探触子の中央部に位置するように配置される場合は探傷が可能であるが、ノズルの溶接部のような、溶接線が送信用および受信用探触子の中央部に位置しない場合には探傷ができないという問題があった。
【0006】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、TOFD法によって溶接で接続されたノズルのきずの位置を容易に検出できるノズル用の探傷装置およびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るTOFD法を用いた溶接部の探傷方法は、送信側探触子と受信側探触子とを前記溶接部を挟んで配置し、送信側探触子から所定の角度で溶接部に超音波ビームを送信し、受信側探触子で溶接部のきずからの回折波を受信し、送信側探触子から受信側探触子への超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出し、受信探触子の受信角度を複数切替えて、算検出された楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出し、算出された複数の回折波のエコー高さに基づいて溶接部のきずの位置を算出する。
好ましくは、溶接部のきずの位置は、受信角度を複数切替えた受信回折波の強度に応じてきずの位置を検出する。
【0008】
この発明の他の局面においては、TOFD法を用いた溶接部の探傷装置は、溶接部を挟んで配置される、送信側探触子および受信側探触子を含み、送信側探触子は所定の角度で前記溶接部に超音波ビームを送信し、受信側探触子で溶接部のきずからの回折波を受信し、送信側探触子から受信側探触子への超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出する楕円軌跡算出手段と、受信側探触子の受信角度を複数切替えて、算出された楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出するエコー高さ算出手段と、楕円軌跡算出手段の算出した楕円軌跡とエコー高さ算出手段の算出したエコー高さに基づいて溶接部のきずの位置を検出するきず位置算出手段とを含む。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、所定の間隔で送信側探触子と受信側探触子とを配置し、送信側探触子から受信側探触子への超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出して、受信側探触子の受信角度を複数切替えて、楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出して、楕円軌跡上で検出したエコー高さに基づいて溶接部のきずの位置を算出するため、送受信側探触子間の偏った位置に溶接部が位置する場合においてもきずの位置を容易に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】横穴試験体を示す図である。
【図2】横穴試験体を示す図である。
【図3】横穴試験体を示す図である。
【図4】溶接によってノズルを胴部に接続した場合の送受信探触子の配置位置を示す図である。
【図5】開先形状を示す断面図である。
【図6】板厚が200mmの場合の探傷可能領域を示す図である。
【図7】溶接部で接続されたノズルを有する胴部における探触子の配置を示す断面図である。
【図8】溶接部で接続されたノズルを有する胴部における探触子の配置を示す平面図である。
【図9】溶接部におけるきずへの送信側探触子からの超音波の送信と、きずから受信側探触子が受信する超音波の受信角度の考え方を示す図である。
【図10】送受信探触子を用いてきず位置を算出するための概念を示す図である。
【図11】送受信探触子を用いてきず位置を検出する方法を示す図である。
【図12】探傷装置のブロック図である。
【図13】特定のソフトウエアを用いたTOFD法での結果表示画面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。まず、この発明の基本的な考え方について説明する。発明者らは、ノズルを溶接で接合した場合の溶接部の欠陥(きず)をどの範囲で検出可能かを知るために、きずを模した横穴を有する横穴試験体101〜103を制作し、それを探傷試験器で探傷して、きずの位置を求めるための送受信探触子の位置および送受信角度を見つけだした。
【0012】
なお、「きず」とは非破壊試験の結果から判断される不完全部又は不連続部のことであり、このうち、不合格となるきずを「欠陥」という。
【0013】
製作した横穴試験体101を図1に示す。図1(A)は平面図であり、図1(B)は正面図(図1(A)においてB−Bで示す矢視図)であり、図1(C)は側面図(図1(A)においてC−Cで示す矢視図)である。図1を参照して、横穴試験体101は、長さ800mm、高さ250mm、厚さ40mmの直方体の板であって、図に示すように、異なる位置に貫通孔102、103を有している。具体的には、横穴試験体101は、深さ20mmと50mmの位置に径5mmの貫通孔102,103を有している。
【0014】
横穴試験体102を図2に示す。図2(A)は平面図であり、図2(B)は正面図(図2(A)においてB−Bで示す矢視図)であり、図2(C)は側面図(図2(A)においてC−Cで示す矢視図)である。図2を参照して、横穴試験体102は、長さ800mm、高さ250mm、厚さ40mmの直方体の板であって、図に示すように、深さ30mmと100mmの位置に径5mmの貫通孔112,113とを有している。
【0015】
同様に、図3を参照して、横穴試験体103は、深さ150mmと200mmの位置に径6mmの貫通孔122,123を有している。
【0016】
図4は溶接によってノズル131を胴部133に接続した場合に、発明者らが考えた送受信探触子の配置位置を示す図である。図4を参照して、胴部133にノズル131を溶接した場合に、ノズルネック部132に受信側探触子11を配置し受信側探触子11に対して溶接部134を挟んで送信側探触子12を配置するようにした。
【0017】
ここで、送信側探触子12は周波数が5MHz、その送信角度が送信側探触子12の載置されている平面から反時計方向に60°で送信する。
【0018】
探傷範囲の検討に先立ち、開先形状を仮定した。図5は、既存のノズル開先形状をベースとした、板厚200mmの胴部の開先形状(図中斜線部)を示す。図5を参照して、開先135は上部115と下部116とを有し、上部115の寸法は115mmで開先角度θは35°である。板厚が変わっても開先角度はそのままとしてビード幅が狭くなるような溶接部を仮定した。このとき、ノズル131側のビード止端部を基準位置(図中Y=0で示す)とした。
【0019】
探傷範囲の確認に際しては、横穴試験体101,111,121を用いて送信受信探触子を所定の間隔に配置し、横穴に対して相対的に送信受信探触子を移動させて、最大エコーが得られた位置、エコー高さが最大エコーの1/2(−6dB)および1/4(−12dB)となる位置を調べ、探触子、位置ごとに結果をまとめて探傷範囲とした。
【0020】
上記の条件で板厚をいろいろ変化させて寸法に応じて探傷配置と探傷可能範囲について検討した。図6は板厚が200mmの場合の探傷可能領域を示す図である。斜線で示した範囲が探傷可能領域である。ここでは送信探触子が4個用いられる。受信側探触子41に近いほうから第1〜第4送信側探触子42〜45という。第1および第2送信側探触子42,43の送信条件は5MHz60°であり、第3および第4送信側探触子44,45の送信条件は2MHz60°である。
【0021】
なお、図6において、Y=0は基準位置を示し、受信側探触子41は基準位置から左側に距離a離れた位置に載置され、送信側探触子42〜45は基準位置から右側に、それぞれ、距離e、d、c、b離れた位置に載置される。また、送信側探触子42の下端の左側から斜め左下方向に延びる二点鎖線で示した線が溶接部の形状である。
【0022】
なお、受信側探触子41の受信条件は、送信条件が5MHz60°のものについては、5MHzで5°、25°、および、60°であり、送信条件が2Hz60°のものについては、2MHzで5°、25°、および、60°である。
【0023】
図6に示すように、200mmの板厚において、送信側探触子の送信条件を2MHz、5MHz、60°とし、受信側探触子の受信条件は、2MHzで5°、25°および60°ならびに5MHz、60°、5MHzで5°、25°および60°であれば、必要な領域を探傷できる。このように、板厚に応じて溶接部をカバーできるように送信側および受信側探触子を配置すればノズルの溶接部の探傷が可能であることがわかる。
【0024】
次に、具体的なノズル溶接部の探傷方法および探触子の配置の決定方法について説明する。上記のことから、ノズル溶接部の探傷方法および探触子の配置を次のように決定した。
【0025】
探傷は管胴部の内面からも可能であるが、外面側から行なう。また、送信および受信周波数は適用する板厚ごとに縦波5MHzまたは2MHzを使用する。具体的には板厚50mm以下のとき縦波5MHzを使用し、板厚50mm〜200mmのとき縦波2MHzと5MHzとを併用する。
【0026】
また、送信側探触子および受信側探触子の組合せは次のようにする。
【0027】
溶接部全体をカバーするために3種類の受信角度で探傷する。
【0028】
送信側60°と受信側5°、送信側60°と受信側25°、送信側60°と受信側60°のそれぞれの探触子の組合せとする。
【0029】
次に探触子の配置について説明する。図7は溶接部60で接続されたノズル61を有する胴部62における探触子の配置を示す図である。図7を参照して、は溶接部60を挟んで受信側探触子51と送信側探触子52、53が配置される。また、図8(A)は図7に示したような探触子において、好ましい配置を示す平面図である。また、図8(B)は図8(A)と同様の図であるが、ノズル61の径が大きい場合を示す図である。具体的には、図8(A)はノズル溶接部半径が150mmの場合の図であり、図8(B)はノズル溶接部半径が300mmの場合を示す図である。
【0030】
図7および図8を参照して、第1送信側探触子52と第2送信側探触子53とが溶接部60を挟んでノズル61の反対側に載置され、受信側探触子51がノズル61側に載置される。
【0031】
また、図8(A)に示すように、60°の送信側探触子52cと5°の受信側探触子51cの組と、25°の送信側探触子52bと25°の受信側探触子51bの組と、60°の送信側探触子52aと60°の受信側探触子51aの組との3組の送信側および受信側探触子をノズル溶接部60の中心から扇状に並べて探傷すれば、一度にその部分の探傷が可能になる。
【0032】
次に、この実施の形態におけるきずの高さおよびきずの深さの評価方法について説明する。図9は溶接部におけるきずへの送信側探触子12からの超音波の送信と、きずから受信側探触子11が受信する超音波の受信角度の考え方を示す図である。ここでは、ノズルの溶接部を探傷するために、受信側探触子11は溶接部60の近傍に配置され、送信側探触子12は溶接部60から離れた位置に配置される。
【0033】
送信側探触子12と受信側探触子11との超音波入射位置の間隔をfとする。送信側探触子12から受信側探触子11へ送信される超音波ビームのうち、きず70を反射する伝播経路長wを有する楕円軌跡を求め、これと、受信側探触子11におけるエコー高さの高い受信角度θとの交点がきず70で反射する位置を示す。
【0034】
きず70で反射する伝播経路長wは探傷図形から読取れるため、楕円軌跡が算出され、受信側探触子11による受信角度θが推定できれば、きずの位置を算出することが可能になる。
【0035】
受信側探触子11の受信角度θとしては最もエコー高さが高い角度を求める必要がある。これは、受信側探触子11において受信角度をスキャンすればよい。
【0036】
一方で、複数の角度、例えば、5°、25°、60°の各々の角度で受信側探触子で検出した同一のきずと推定されるエコーのエコー高さから求めてもよい。周波数、振動直径が同一の探触子は、超音波ビームの拡がりがほぼ同様と考え、各々の探触子のエコー高さの比から受信角度を求める。例えば、図9において、θが5°と25°とのエコー高さの比が1:2であれば、θが5°と25°との間を2:1に按分した位置にきずが存在すると判断できる。
【0037】
次に、きずの深さの算出方法について説明する。前述のようにきず位置は、送受信側探触子11、12の間隔ときずの上端部の位置における伝播経路長と受信波のエコー高さから計算される。
【0038】
図10は送受信探触子を用いてきず位置を算出するための具体的な方法を示す図である。図10(A)は概念を模式化した図であり、図10(B)は、図10(A)のように模式化される前の実際の送信側探触子12と、受信側探触子11と、両者によって特定されるきず70の位置関係を示す図である。
【0039】
ここで、X=0およびY=0の位置を原点とし、焦点Fの位置に送信側探触子11と受信側探触子12とが位置するものとする。w/2+w/2=wは送信側探触子12から受信側探触子11への超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を形成する距離であり、θは異なる受信側探触子の受信波のエコー高さから求めた受信角度である。
【0040】
また、aは楕円の長辺であり、bは楕円の短辺であり、cはエコー高さから求めた受信波のY軸の切片である。
【0041】
この例であれば、楕円の軌跡と受信側探触子11の位置から受信角度θで引いた直線との交点14(○で示す)がきず70の位置として推定される。
【0042】
具体的には、きず70の位置14は、楕円と直線の連立式から求める。このようにすれば、交点の座標(x,y)を求めることができる。
【0043】
次に、きず70の高さの算出について説明する。上で求めたきず70の上端位置14のX座標上にきずがあるものとして、きず70の下端からのエコーの伝播距離から計算される楕円の式にX座標の値を代入して下端位置を求める。そして上端位置と下端位置との差をきず70の高さとする。
【0044】
ここで、交点を求める関係式は次のとおりである。
y=√((1-X2)/a2)*b2)
y=tanη×X+c
【0045】
次に、具体的な算出方法について説明する。ここでは、図1〜3に示したような複数の貫通孔を有する試験体を用いて、貫通孔をきずとして検出し、その位置を求める場合を説明する。図11はパソコンの表示画面を示す図である。図11(A)は受信角度が60°の探触子で受信した場合の試験体におけるある特定のきずに対して、そのきずの位置をカーソルで特定する場合を示す図であり、図11(B)はその場合のエコー高さを示す図である。図11(A)において横軸は試験体の端部からの距離を示し、縦軸は伝播時間を示す。図11(B)において横軸は試験体の端部からの距離を示し、縦軸はエコー高さを示す。同様に、図11(C)と(D)は受信角度が25°の場合の、図11(E)と(F)とは受信角度が5°の場合の、きずの位置と、エコー高さを示す。
【0046】
図11(A)および(B)を参照して、受信角度が60°の探触子で受信した場合のきずの位置の特定方法について説明する。図11(A)に示すように、画面上には試験体に設けられた複数のきずが画面上に参照番号71,72等で示すように表示される。表示されたそれぞれのきずのうち、所望のきず(ここでは参照番号72)をカーソル線81〜83で選択する。ここでカーソル線82はきずの上端部の位置を、カーソル線83はきずの下端部の位置を示す。
【0047】
図11(A)において、きずの位置を特定すると、その位置におけるのエコー波形86が図11(B)に示すように表示される。ここでカーソル線82で示すきずの上端部がエコー波形86の極小部86aに対応し、カーソル線83で示すきずの下端部がエコー波形86の極大部86bに対応する。このようにしてきずの位置を特定すると、その時のエコー高さ等のデータが自動的に後に説明する、図13(A)に示すように入力される。
【0048】
図12に図11に示したような表示画面を表示する表示部を有する探傷装置20のブロック図を示す。図12を参照して、探傷装置20は、制御部21と、表示部22と、演算部23と、受信側探触子11と送信側探触子12とのインターフェースとなるI/O部24とを有するパソコンであって、制御部21が表示部22、演算部23、I/O部24を制御してきずの位置を特定する。
【0049】
次に、探傷装置20を用いたきず70の位置の解析方法について説明する。探傷装置20は、きずの深さ算出機能を備えている。この機能は、エクセル(登録商標)のような表計算ソフトウエアに連動して、探傷結果のカーソル表示位置や伝播時間とエコー高さ等をこの表計算ソフトウエアに与えて表計算ソフトウエア上で算出し、その結果を表示部に表示する機能である。
【0050】
なお、上記したように算出結果はカーソルの動きにあわせてリアルタイムで表示部22に表示される。
【0051】
一例として、図13にこのソフトウエアを用いたTOFD法での結果表示画面を示す。
【0052】
図13(A)は図11に示したようにカーソルを用いてきずの位置を特定したときのソフトウエアの表示画面例を示す図である。ここでは、ある探傷例における、受信側探触子の公称屈折角と、探傷ゲイン値と、上端エコー高さと、下端エコー高さと、上端ビームの伝播時間と、下端ビームの伝播時間とが、それぞれの角度ごとに自動的に入力された状態を示す。上記したように、受信側探触子11の公称屈折角ごとに、探傷感度のゲインが調整され、上端エコー高さ、下端エコー高さ、上端伝播時間、下端伝播時間が表示される。
【0053】
これが入力されると、図12(B)に示すように、きず位置、きず深さ、および、きず高さが上記の式に基づいて自動的に算出される。
【0054】
なお、上記実施の形態においては、屈折角として、5°、25°、60°の場合について説明したが、これに限らず、溶接部をカバーできれば、3つの角度に限らず、2つの角度等であってもよいし、複数の角度において、他の組合せでもよい。
【0055】
また、上記実施の形態において、送信角度は60°の場合について説明したが、これに限らず、任意の角度であってもよい。
【0056】
図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
この発明に係るTOFD法を用いた溶接部の探傷装置および探傷方法は、溶接で接続されたノズルのきずの位置等を簡単に算出できるため、ノズルの溶接部の探傷装置、および、その方法として有利に利用される。
【符号の説明】
【0058】
11,41 受信側探触子、12,42 送信側探触子、20 探傷装置、21 制御部、22 表示部、23 演算部、24 I/O部、60 溶接部、61,131 ノズル、62,133 胴部、101、111,121 横穴試験体、102,103、112,113,122,123 貫通孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TOFD法を用いた溶接部の探傷方法であって、
送信側探触子と受信側探触子とを前記溶接部を挟んで配置し、
前記送信側探触子から所定の角度で前記溶接部に超音波ビームを送信し、
前記受信側探触子で前記超音波ビームによる前記溶接部のきずからの回折波を受信し、
前記送信探触子から前記受信探触子への前記超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出し、
前記受信探触子の受信角度を複数切替えて、前記検出された楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出し、
前記検出された複数の回折波のエコー高さに基づいて前記溶接部のきずの位置を算出する、TOFD法を用いた溶接部の探傷方法。
【請求項2】
前記溶接部のきずの位置の検出は、受信角度を複数切替えた回折波の強度に応じて検出する、請求項1に記載のTOFD法を用いた溶接部の探傷方法。
【請求項3】
TOFD法を用いた溶接部の探傷装置であって、
溶接部を挟んで配置される、送信側探触子および受信側探触子を含み、
前記送信側探触子は所定の角度で前記溶接部に超音波ビームを送信し、
前記受信側探触子は前記超音波ビームによる前記溶接部のきずからの回折波を受信し、
前記送信探触子から前記受信探触子への前記超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出する楕円軌跡算出手段と、
前記受信探触子の受信角度を複数切替えて、前記算出された楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出するエコー高さ検出手段と、
前記楕円軌跡算出手段の算出した楕円軌跡と前記エコー高さ算出手段の算出したエコー高さに基づいて前記溶接部のきずの位置を算出するきず位置算出手段とを含む、TOFD法を用いた溶接部の探傷装置。
【請求項1】
TOFD法を用いた溶接部の探傷方法であって、
送信側探触子と受信側探触子とを前記溶接部を挟んで配置し、
前記送信側探触子から所定の角度で前記溶接部に超音波ビームを送信し、
前記受信側探触子で前記超音波ビームによる前記溶接部のきずからの回折波を受信し、
前記送信探触子から前記受信探触子への前記超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出し、
前記受信探触子の受信角度を複数切替えて、前記検出された楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出し、
前記検出された複数の回折波のエコー高さに基づいて前記溶接部のきずの位置を算出する、TOFD法を用いた溶接部の探傷方法。
【請求項2】
前記溶接部のきずの位置の検出は、受信角度を複数切替えた回折波の強度に応じて検出する、請求項1に記載のTOFD法を用いた溶接部の探傷方法。
【請求項3】
TOFD法を用いた溶接部の探傷装置であって、
溶接部を挟んで配置される、送信側探触子および受信側探触子を含み、
前記送信側探触子は所定の角度で前記溶接部に超音波ビームを送信し、
前記受信側探触子は前記超音波ビームによる前記溶接部のきずからの回折波を受信し、
前記送信探触子から前記受信探触子への前記超音波の伝播経路長を等しくする楕円軌跡を算出する楕円軌跡算出手段と、
前記受信探触子の受信角度を複数切替えて、前記算出された楕円軌跡上で複数の回折波のエコー高さを算出するエコー高さ検出手段と、
前記楕円軌跡算出手段の算出した楕円軌跡と前記エコー高さ算出手段の算出したエコー高さに基づいて前記溶接部のきずの位置を算出するきず位置算出手段とを含む、TOFD法を用いた溶接部の探傷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−92468(P2013−92468A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235283(P2011−235283)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000134925)株式会社ニチゾウテック (22)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000134925)株式会社ニチゾウテック (22)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】
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