TRPV1アゴニストを送達するための装置
密封性裏打ち層、ならびにTR−JPV1アゴニストおよび非親水性溶媒を含む薬剤デポーを含む薬剤送達装置が記載されている。薬剤デポーは、接着性ポリマー基質、液体リザーバー、またはマイクロリザーバー液滴など、さまざまな形態を採りうる。薬剤送達装置を作製および使用する方法も記載されている。薬剤デポーは、一般的にはカプサイシンを含むが、その他のTRPV1アゴニスト、例えば、カプサイシノイド、カプサイシン類似化合物、およびカプサイシン誘導体などを取り込むよう処方することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2005年2月14日に出願された米国仮特許出願第60/652,923号(この全体が参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
(分野)
本明細書記載の装置および方法は、薬剤送達分野に属する。より具体的には、記載されている装置および方法は、痛みを緩和するためにカプサイシンおよびその他のTRPV1アゴニストを経皮送達することに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
一過性受容体電位バニロイド受容体1(TRPV1)は、小型の無髄末梢神経線維(皮膚侵害受容器)上で選択的に発現されるカプサイシン応答型リガンド依存性陽イオンチャネルである(非特許文献1;および非特許文献2参照)。TRPV1が、カプサイシンなどのアゴニスト、および熱や水素イオンなど、その他の因子によって活性化されると、カルシウムが細胞の中に入りこんできて、痛みのシグナルを開始させる。
【0004】
カプサイシンおよびその他のTRPV1アゴニストは、複数の症状を緩和するのに有効であるかもしれない。例えば、カプサイシンは、さまざまなタイプの痛み、例えば、神経因性疼痛および慢性の痛み(糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、HIV感染症、外傷、複合性局所疼痛症候群、三叉神経痛、肢端紅痛症、および幻想痛に関連した痛みなど)、混合型の侵害受容器および/または神経障害の複合的病因によって生じる痛み(例えば、癌、変形性関節症、線維筋痛、腰痛、炎症性痛覚過敏、外陰部前庭炎もしくは外陰部痛、洞ポリープ様(sinus polyps)間質性膀胱炎、神経因性膀胱または過活動膀胱、前立腺肥大、鼻炎、手術、外傷、直腸過敏、口腔灼熱症、口腔粘膜炎、ヘルペス(またはその他のウイルス感染症)、前立腺肥大症、および頭痛)を治療するために使用することができる(非特許文献3;Backonjaら、”A Single One Hour Application of High−Concentration Capsaicin Patches Leads to Four Weeks of Pain Relief in Postherpetic Neuralgia Patients” American Academy of Neurology, 2003 (学会要旨);非特許文献4参照)。また、カプサイシンは、皮膚炎、そう痒症、かゆみ、乾癬、いぼおよび皺などの皮膚症状、ならびに、耳鳴および癌(特に皮膚癌)などの症状を治療するために使用することができる(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9参照)。
【0005】
多数の薬剤送達装置でカプサイシンを送達しようとしてきた。例えば、Robbinsに付与された特許文献1は、神経因性疼痛を治療するためにカプサイシンおよび/またはカプサイシン類似化合物を5重量%よりも高い濃度で含む薬剤送達装置を使用することを記載している。Mullerに対する特許文献2は、治療用化合物不透過性の裏打ち層、カプサイシンおよび両親媒性溶媒を含むポリシロキサン基質、および使用前に取り除く保護フィルムを含む局所用パッチについて記載している。さらに、Muhammad et al.に対する特許文献3は、TRPV1アゴニストの局所用液体処方剤の送達と薬理学的特性について記載している。しかし、これらの参考文献のいずれにも、パッチ処方剤において、非親水性浸透促進剤の助けを借りてカプサイシンを送達することについては記載がない。特に、これらの参考文献のいずれも、水不溶性化合物の皮膚を経由した送達を促進するために密封性の裏打ち層を使用することについて記載していない。
【0006】
皮膚から水が逃げ出すのを防止/最小化するため、言い換えれば、経上皮水損失(TEWL)を実質的に予防するために密封性の裏打ち層を使用することが当業者に知られている。また、この水の保持が、角質層への水分補給、ひいては、薬剤分子などの浸透剤に対する皮膚の透過性を増加させる結果をもたらす(非特許文献10参照)。しかし、この逃げてゆく水および非親水性浸透促進剤を使用して、薬剤デポーの熱力学的活量を増加させることは記載されたことがない。
【特許文献1】米国特許第6,239,180号明細書
【特許文献2】国際公開第04/089361号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0090557号明細書
【非特許文献1】Caterina and Julius、”The Vanilloid Receptor: A Molecular Gateway to the Pain Pathway” Annu Rev Neurosci,(2001)24:487−517
【非特許文献2】Montellら、”A unified nomenclature for the superfamily of TRP cation channels,” Mol Cell(2002)9:229−31
【非特許文献3】Szallasi and Blumberg ”Vanilloid (Capsaicin) Receptors and Mechanisms,” Pharm Revs(1999)51:159−211
【非特許文献4】Bergerら、J Pain Symptom Management(1995)10:243−8
【非特許文献5】Bernsteinら、”Effects of Topically Applied Capsaicin on Moderate and Severe Psoriasis Vulgaris,” J Am Acad Dermatol(1986)15:504−507
【非特許文献6】Ellisら、”A Double−Blind Evaluation of Topical Capsaicin in Pruritic Psoriasis,” J Am Acad Dermatol(1993)29:438−42
【非特許文献7】Saperら、Arch Neurol(2002)59:990−4
【非特許文献8】Vassら、Neuroscience(2001)103:189−201
【非特許文献9】Moller,”Similarities between severe tinnitus and chronic pain” J Am Acad Audiol.(2000)11:115−24
【非特許文献10】Robertsら、Water: The Most Natural Penetartion Enhancer. In: Pharmaceutical Skin Penetration Enhancement, Eds. K. A. Walter and J. Hadgraft. Marcel Dekker,(1993)New York, pp.1−30
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、痛みおよびその他の症状を治療するために、カプサイシンおよびその他のTRPV1アゴニストを送達するための非親水性浸透促進剤を含む密封性パッチ剤があることは望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要旨)
本明細書に記載されているのは、カプサイシンおよびその他のTRPV1アゴニストを投与するための薬剤送達装置および方法である。一般的に、薬剤送達装置は、痛みを治療するのに役立つ、経皮送達するための治療上有効な量の有効薬剤を含む。この装置は、通常、局所施用するように構成されており、治療を必要とする領域に薬剤を局所的に投与することを提供する。
【0009】
この薬剤送達装置は、通常のパッチ型、例えば、ポリマー基質、接着剤、または容器として処方することができ、当技術分野において周知の方法によって作ることができる。ただし、すべての場合において、装置は、経上皮水損失を実質的に予防する密封性の裏打ち層および非親水性の浸透促進剤を含む。
【0010】
このパッチ剤は、一般的にはカプサイシンを含むが、その他のTRPV1アゴニスト、例えば、カプサイシノイド、カプサイシン類似化合物、およびカプサイシン誘導体などを取り込むよう処方することもできる。このパッチ剤は、TRPV1アゴニストを、装置に対する薬剤デポーの重量の少なくとも約0.04%、少なくとも約2%、少なくとも約4%、少なくとも約6%、少なくとも約8%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、または少なくとも約30%の量を構成し得る。また、本パッチ剤で使用される具体的な非親水性浸透促進剤は、装置のタイプ(例えば、ポリマー基質、液体リザーバーなど)、使用される接着剤などによってさまざまであるが、すべての場合において、ClogP値は1.0よりも大きい。
【0011】
薬剤送達装置を使用して、さまざまな症状を治療することができる。例えば、さまざまなタイプの痛み、例えば、神経因性疼痛および慢性の痛み(糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、HIV感染症、外傷、複合性局所疼痛症候群、三叉神経痛、肢端紅痛症、および幻想痛に関連した痛みなど)、混合型の侵害受容器および/または神経障害の複合的病因によって生じる痛み(例えば、癌、変形性関節症、線維筋痛、腰痛、炎症性痛覚過敏、外陰部前庭炎もしくは外陰部痛、洞ポリープ様間質性膀胱炎、神経因性膀胱または過活動膀胱、前立腺肥大、鼻炎、手術、外傷、直腸過敏、口腔灼熱症、口腔粘膜炎、ヘルペス(またはその他のウイルス感染症)、前立腺肥大症、および頭痛)などを治療するために使用することができる。この薬剤送達装置は、皮膚炎、そう痒症、かゆみ、乾癬、いぼおよび皺などの皮膚症状、ならびに、耳鳴および癌(特に皮膚癌)などの症状を治療するために有効薬剤を送達することもできる。
【0012】
痛みを治療する方法も記載されている。いくつかの変法では、この方法は、TRPV1アゴニスト、ClogP値が1.0よりも大きい非親水性浸透促進剤、および密封性裏打ち層をもつ薬剤送達装置を、被験体の皮膚または粘膜に適用して、痛みを緩和するために、治療上有効な量のTRPV1アゴニストを送達することを含む。また、TRPV1アゴニストは、少なくとも約15分間にわたって、または約15分間よりも長い時間にわたって、約30分間よりも長い時間にわたって、約1時間よりも長い時間にわたって、約4時間よりも長い時間にわたって、約6時間よりも長い時間にわたって、約12時間よりも長い時間にわたって、約18時間よりも長い時間にわたって、または約24時間以上よりも長い時間にわたって送達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(詳細な説明)
本明細書記載の薬剤送達装置は、非親水性浸透促進剤を含み、表示された症状、例えば、痛みや皮膚症状に対する治療上有効な量の有効薬剤を送達するかぎり、いかなる構成であってもよい。一般的には、この装置は、密封性の裏打ち層、非親水性浸透促進剤、非親水性浸透促進剤に部分的または完全に溶解して、生じた組成物が、接着剤の中に分散しているか、液体リザーバーになっているか、または一体型基質などになっている有効薬剤、および剥ぎ取り可能な剥離ライナーをもつように構成されているパッチである。
【0014】
前記したように、非親水性浸透促進剤を密閉性パッチへ取り込むことは、薬剤デポーの熱力学的活量を高めると考えられている。非親水性浸透促進剤を使用する別の利点は、有効薬剤が加水分解すると、これが含まれていることがもつ効果が減少することに関する。エステルおよびアミドは加水分解に特に敏感である。カプサイシンおよびカプサイシノイドはアミドである。したがって、より長期の貯蔵期間を確保するためには、無水剤形のカプサイシンを含む製剤があることが望ましい。また、両親媒性溶媒および親水性溶媒が示す吸湿性のために、製剤の成分が入手、保存、および製造の過程で無水であることを保証するのは困難である。例えば、接着剤を希釈するために使用された溶媒を蒸発させるためのパッチの乾燥が、処方剤の中に存在する水蒸気を効率的に除去することができない比較的低温度(すなわち、40℃まで)でしばしば行われる。このことを考慮すると、親水性および両親媒性の皮膚浸透促進剤は、皮膚パッチおよび経皮パッチなど、多くの異なるタイプの剤形に使用するのには望ましくない。
【0015】
さらに、エタノール、アセトン、およびDMSOなどの親水性および両親媒性の皮膚浸透促進剤は、角質層の細胞内ドメインの中に優先的に配分されることが知られている。これに対して、非親水性皮膚浸透促進剤は、角質層の構造脂質の間にインターカレートして、角質細胞を実際に透過性にすることなく角質細胞の充填を破壊する可能性がより高い(Rolf Daniels, ”Strategies for skin penetration enhancement,” Skin Care Forum, Issue 37, August 2004参照)。したがって、低度の皮膚の損傷または炎症が、非親水性皮膚浸透促進剤の使用に伴う可能性がある。
【0016】
本明細書において、「有効薬剤」、「有効な」、「薬剤」、または「治療用化合物」という用語は互換的に使用され、カプサイシン、その他のTRPV1アゴニスト、またはこれらの併用物を意味する。「治療上有効な量」は、痛みまたはその他いずれかの表示された症状を治療するのに有効な薬剤量を意味する。さらに、本明細書で使用される場合、「薬剤デポー」という用語は、薬剤が取り込まれる薬剤送達装置の部分または層を意味し、密閉性裏打ち層、剥離ライナー、および拡散速度調節膜を含まない。また、薬剤が接着剤塊の中に存在しない場合には接着剤も含まない。
【0017】
「浸透促進剤」および「溶媒」という用語は互換的に使用され、以下のものを除く、分子(例えば、薬剤分子)が皮膚に浸透するのを促進する任意の(液体または固体)化合物を意味する:1,3−ブタンジオールなどのブタンジオール類、ジプロピレングリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールおよびジエチレングリコールのカルボン酸エステル、6〜18個の炭素原子からなるポリエトキシル化脂肪アルコール、2,2−ジメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン(登録商標Solketal)、およびこれらの混合物。
【0018】
さらに、本明細書において、「治療する」、「治療すること」、または「治療」という用語は、痛みもしくは症状もしくは症状の根本原因を消散もしくは軽減すること、または症状を予防することを意味する。
【0019】
カプサイシンまたはその他のTRPV1アゴニストによる治療が望ましい症状は、神経因性疼痛(糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、HIV/AIDS、外傷、複合性局所疼痛症候群、三叉神経痛、肢端紅痛症、および幻想痛に関連した痛みなど)、混合型の侵害受容器および/または神経障害の複合的病因によって生じる痛み(例えば、癌、変形性関節症、線維筋痛および腰痛)、頭痛、炎症性痛覚過敏、間質性膀胱炎、ならびに皮膚炎、そう痒症、かゆみ、乾癬、およびいぼなどの皮膚症状などであるが、これらに限定されない。一般的に、カプサイシンおよびその他のTRPV1アゴニストを含む薬剤送達装置を使用して、カプサイシンの局所投与が有益である症状を治療することができる。本明細書において、「局所的」、「局所投与」および「局所的に」という用語は、カプサイシンまたはその他のTRPV1アゴニストを皮膚または粘膜に局所投与することを意味する。
【0020】
施用する際には、パッチから剥離ライナーをまず除去する。次に、密閉性裏打ち層を皮膚または粘膜面に向かい合わせて、このパッチを治療すべき皮膚または粘膜の表面に置く。必要に応じて、パッチを確実に接着するために、パッチを軽く押さえてもよい。剥離ライナーは、通常、薬剤不透過性の物質から作られ、施用する前に装置を保護するためだけに役立つ使い捨て要素として構成される。
【0021】
I.薬剤送達装置
前記のように、本明細書記載の薬剤送達装置は、密封性の裏打ち層、非親水性浸透促進剤を含み、治療上有効な量の薬剤を送達するかぎり、いかなる形態であってもよい。
【0022】
一般的に、望ましい施用法の必要に応じて、この装置にさまざまな程度の可塑性を与えるように裏打ち層を適応させることができる。裏打ち層の機能は、経上皮水、薬剤および非親水性浸透促進剤が周囲の中に失われることを予防する密封性バリアーを提供すること、およびパッチを保護することである。裏打ち層用に選択される物質は、最小限の薬剤化合物透過性および促進剤透過性を示すべきであり、これらのものまたは接着剤と不適合であるべきではない。理想的には、裏打ち材は、薬剤を含む混合物を成型することができる支持体であって、製造、保存、および使用する際に、それがしっかり結合している支持体を形成できるものでなければならない。そのような物質の例は、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、着色ポリエチレンにアルミニウム蒸気塗膜を有する/有しないポリエステルを加えたもの、およびエチレン酢酸ビニル共重合体を含むポリエステルなどであるが、これらに限定されない。商業ブランドの例は、商標CoTranおよび商標Scotchpak裏打ちフィルムなどである。裏打ち層の上で基質を直接成型する代わりに、個別に基質を成型してから裏打ち材に固着させてもよい。
【0023】
一つの変法において、薬剤送達装置は基質系である。基質系は、(最も単純な例では)有効薬剤(すなわち、被験体へ送達される化合物)を透過させない密封性裏打ち層、有効薬剤を含む層、および使用前に除去される剥離ライナーを特徴とする。有効薬剤を含む層は、完全または部分的に溶解した形で有効薬剤を含み、理想的には自己接着性である。この基質系はいくつかの層から構成されていてもよく、調節膜を含んでよい。この型のシステムで使用するのに適した接着性ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリイソブチレン、およびこれらを組み合わせたものであるが、それらに限定されない。基質系は、層ごとに有効薬剤の濃度が異なる複数の層であってよく、そのような構造は、有効薬剤の放出プロファイルを時間をかけて改変する手段として役立つ。
【0024】
接着性基質型の送達装置において使用される接着剤は、市販されていて当業者に知られている多様な接着剤から選択することができる。例えば、普通の接着剤はポリイソブチレン、ポリアクリル酸、およびポリシロキサンを基剤とするものである。接着剤は、高分子量のポリエチレンオキシドまたはポリビニルピロリドンなど、親水性のものであってもよい。接着剤の選択は、機能的接着性(functioning adhesive)基質型の薬剤送達装置を実現する上で決定的に重要な意味をもつ。非親水性浸透促進剤および薬剤が接着剤の中に直接充填されるため、これらの添加剤の存在下で、接着剤はその化学的性質、粘弾性、および接着性を保持しなければならない。接着性は、皮膚に即座に接着すること、および接着を維持するのに十分な粘着性を含む。皮膚浸透促進剤が存在すると接着剤が粘ついたりべとついたりし、その結果、装置を除去した後に、凝集破壊が生じたり、患者の皮膚に残存接着剤が残ったりすることがしばしば見られる。場合によっては、この装置が接着性を完全に失って剥離することもある。通常、粘性および接着性の消失が、接着性基質型送達装置に充填することができる非親水性促進剤の量および型を決定し制限することになる。アクリル酸から作られるいくつかの接着剤、例えば、Avery社、およびNational Starch and Chemical Company社から入手できるものは、溶媒型および可塑化型いずれの非親水性促進剤であっても、比較的高量の負荷に耐えることができる。さらに、Dow−Corning社のBio−PSAも非親水性浸透促進剤に適合する。
【0025】
図1は、密封性裏打ち層1および接着性基質層2を含む接着性基質型パッチであって、有効薬剤のデポーとしても、装置を皮膚に接着させる手段としても役立つ接着性基質型パッチを示している。有効薬剤を含む接着性基質層2は、接着性ポリマー基質2の中に分散している薬剤を含んでもよい。ここで、「分散」という用語は、薬剤を基質全体にくまなく分布させることを意味する。薬剤は、溶解した状態および/または非溶解状態で分散していてよい。
【0026】
別の変法において、薬剤送達装置は、図2および3に示されているように、一体型基質の装置である。一体型の装置において、接着剤以外の物質は薬剤デポーとして役立つ。これらの送達装置では、基質材としてハイドロゲル材料を使用してもよい。例えば、ポリウレタン、ゼラチン、およびペクチンを使用することができる。また、薬剤デポーは、(ゲル様塊から固体塊にわたる硬度をもつ)エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのような物質の中で形成してもよい。このような薬剤デポーは、効率的な薬剤送達に必要とされる、比較的大量の非親水性浸透促進剤またはその混合物を含むことができる。ゲル様の硬度をもつ薬剤デポーの場合には、皮膚表面とデポーを接触させるために、拡散速度調節膜を含んでいてもよい。堅い/固体のデポーの場合には、拡散速度調節膜を使用することも随意である。
【0027】
図2および3に関して、一体型基質型の薬剤送達装置は、不透過性裏打ち層1、一体型基質層2、随意の拡散速度調節膜5、および接着層4を含む。裏打ち層1、膜5および接着層4は、上記したように選択する。拡散速度調節膜の機能の一つは、この装置の製造を単純化する接着層を構造的に支持することである。一体型基質層は、この一体型層が薬剤リザーバーとして働き、皮膚接着剤が剥離ライナーと一体型層を接触させる、図1の接着層と区別される。
【0028】
いくつかの例において、図3に示されているように、接着層5は、非親水性浸透促進剤と接触しないように、パッチの周辺部に適用してもよい。これは、高負荷および/または非親水性浸透促進剤の性質が接着に干渉する状況において特に望ましい。
【0029】
一体型基質材料は、通常、使用される非親水性浸透促進剤などの大量の液体を保持することができる材料である。適当な物質は、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)メタクリル酸エチル(EMA)混合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジン、ゼラチン、ペクチン、およびその他の親水性物質などのポリマーである。使用される溶媒型の促進剤を保持するために、細孔粒子をポリマー一体型層に組み込んでもよい。経皮パッチの中に細孔粒子を使用することは、米国特許第5,028,535号において、Katz et al.によって、米国特許第4,952,402号においてSparks et al.によって、米国特許第4,927,687号においてNuwayser et al.によって開示されており、これらは全て、その全体が参照されて、本明細書に組み込まれる。
【0030】
薬剤浸透促進剤および非親水性浸透促進剤は、親水性ポリマーに取り込む前に、細孔粒子の中に充填することができる。そうすれば、粒子が混合して、基質全体に均等に分散するかもしれない。粒子を大量に充填すると、ポリマー基質の中にチャネルが形成されるために、治療用化合物および非親水性浸透促進剤の放出が促進される。適当な細孔粒子は、珪藻土、シリカ、Hoechst Celanese発売のセルロースアセテート繊維、およびDow Corning発売の登録商標Polytrapである。
【0031】
一体型層は、次のようにして調製することができる。まず、接着性ポリマー溶液を得るか調製する。非親水性浸透促進剤の中で、薬剤の溶液または分散液を別に調製して、薬剤が溶解するか、均一に分散するまで混合する。次に、増粘剤を添加または混合して、薬剤/非親水性浸透促進剤の溶液または分散液の粘度を調整することができる。例えば、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを使用して、粘度を調整することができる。そして、得られた溶液または分散液を接着性ポリマー溶液に添加し、この混合物を、薬剤溶液/分散液が液滴の形で接着剤の中に分布するように均一化する。適当な溶媒は、後に乾燥によって取り除かれるが、それをこの混合物に加えて、均一化および/または成型を促進することができる。このような溶媒の例は、n−ヘプタンおよび酢酸エチルである。次に、均一化された接着剤の塊または溶液を型の中に流し込むか、単独または望ましい基質材の上で成型することができる。次に、溶媒を蒸発させるために、成型物を室温、または少し高温のオーブンの中に放置する。溶媒の蒸発を促すために、真空または気流を利用してもよい。溶媒が蒸発すると、接着性基質は、典型的には約30〜200μmの厚さがある接着性ポリマーフィルムの形態をとる。
【0032】
さらに別の変法において、薬剤送達装置は、リザーバーシステムである。リザーバーシステムにおいては、ポーチ(不透過性の裏打ち層を拡散速度調節膜と熱融着させて形成される)は、液体に完全または部分的に溶解した薬剤を含む。液体リザーバーシステムの例を、図4および5に示す。ここで、「拡散速度調節膜」という用語は、通常、送達装置からの薬剤放出速度を制限する半透過膜を意味する。この膜は、細孔フィルムであっても、無孔性隔壁膜であってもよい。この薬剤送達装置のデザインでは、皮膚と向かい合う側も、使用前に除去する必要があるフィルムによって保護される。
【0033】
ここで図4および5を参照すると、リザーバー型の薬剤送達装置は、装置の皮膚に向かい合わない側から皮膚に向かい合う側に向かって、不透過性裏打ち層1、薬剤リザーバー(薬剤デポー)2、拡散速度調節膜5、および接着層4を含む。裏打ち層1は、上記接着性基質型送達装置について記載されているものと同じであってよい。リザーバーはさまざまな形態を採ることができ、例えば、ゲル状または非ゲル状の、非親水性浸透促進剤またはその混合液の中に薬剤を溶解していてもよい。あるいは、薬剤/非親水性促進剤の混合液が、適宜、ポリウレタンフォームなどのパッド状または泡状の物質の孔の中に含まれていてもよい。リザーバーの一つの機能は、薬剤および非親水性促進剤を膜層と十分接触した状態に保つことである。
【0034】
拡散速度調節膜5は、そのもっとも単純な機能において、接着層4を機械的に支える。膜層及び裏打ち層を周縁部で熱融着して、薬剤リザーバーを密封するポーチを形成する。本明細書において、膜層および裏打ち層の「周縁部」という用語は、一緒に密封されて、薬剤リザーバーの境界を画する領域を意味する。したがって、外部膜および裏打ち層材料は、薬剤リザーバーおよび周縁部から外側に延びていてもよい。膜および接着層は治療用化合物および促進剤を自由に透過させなければならない。そのようなものとして、膜層は、膜の選択によって調整された拡散抵抗を提供するはずである。一般的に、拡散速度調節膜は、g/cm2/24時で表わされる周知のMVTR(水蒸気透過速度)値をもつ。制限的なものではないが、15〜100g/cm2/24時という典型的なMVTR値が一般的に適当である。この範囲外のMVTR値も、薬剤の物理化学的特性、リザーバーの中でのその濃度、リザーバーの熱力学的特性および投薬量、ならびに所望の投与速度によっては妥当であるかもしれない。
【0035】
リザーバーシステムの利点は、リザーバーの中に含まれる非親水性浸透促進剤を改変することによって、より簡単に薬剤の飽和溶解度を調整できることにある。熱力学的な理由で、リザーバーシステムは、薬剤が飽和濃度よりも低すぎない濃度で薬剤送達装置の薬剤含有部分に存在する場合には、皮膚の内部およびその上で薬剤を放出させるのに有利である。必要とされる薬剤の量に対する薬剤送達装置の取り込み能力を広範囲に調整して、薬剤溶液の量およびこの溶液の飽和度を調整して具体的な必要に適したものとすることができる。例えば、薬剤溶液の飽和は、ほぼ飽和した状態から超飽和状態に及ぶことが可能であり、あるいは、この溶液は、薬剤の非溶解画分を含んでいてもよい。ほぼ飽和した、または超飽和した薬剤溶液は、薬剤が放出される傾向を高める高熱力学的活性系である。
【0036】
さらなる変法において、薬剤送達装置はマイクロリザーバーシステムである。マイクロリザーバーシステムは、一般的には、基質型およびリザーバー型のシステムを組み合わせたものと見られている。マイクロリザーバーシステムにおいて、非常に低粘度から非常に高粘度までの液体が、完全または部分的に溶解した状態の薬剤を含み、固体の接着性基質の中に微細な液滴として分散している。必要に応じて、このシステムの液体成分の粘度を、増粘剤、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または高分子量ポリアクリル酸もしくはその塩および/もしくはエステルなど誘導体を使用して高めることができる。
【0037】
一つの変法において、マイクロリザーバー型の薬剤送達装置は、密封型裏打ち層、非親水性浸透促進剤の中に完全または部分的に溶解した薬剤溶液のマイクロリザーバーを含有する自己接着性基質、およびこの装置を使用する前に除去する保護フィルム(剥離ライナー)を含む。マイクロリザーバーシステムの中の薬剤(たとえば、カプサイシン)は、完全または部分的に溶解しており、生じた溶液および/または混合液は、例えば、エチルセルロースおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースなどの増粘剤によってゲル状になっており、その結果、接着剤または接着剤の混合物と混合すると、接着剤塊全体に分離した小球を形成して、薬剤の「マイクロリザーバー」を形成するようになっている。本明細書記載の装置および方法を目的とする場合、「マイクロリザーバー」および「マイクロリザーバー液滴」という用語は、薬剤、および非親水性浸透促進剤または非親水性促進剤の混合物を含み、随意では、増粘剤を含むことができる微細分散した液滴を意味する。「マイクロリザーバー型システム」という用語は、付加的成分の有無にかかわらず、接着剤塊(例えば、感圧接着剤(PSA))の中に分散するこれらのマイクロリザーバー液滴の集合体を指す。
【0038】
本明細書において、「接着剤」および「接着剤塊」という用語は、皮膚、ならびに密閉性もしくは不透過性の裏打ちフィルムまたは拡散速度調節膜に付着する能力がある物質を意味する。「感圧接着剤」という用語は、皮膚に押しつけるとその表面に付着する接着剤(例えば、ポリシロキサン、ポリアクリル酸、またはポリイソブチレン)を意味する。一般的には、ポリシロキサンまたはポリアクリル酸またはポリイソブチレンから作られる自己接着性基質が、接着剤塊の重量の少なくとも約0.001%、接着剤塊の重量の少なくとも0.01%、接着剤塊の重量の少なくとも0.1%、接着剤塊の重量の少なくとも1%、接着剤塊の重量の少なくとも3%、接着剤塊の重量の少なくとも5%、接着剤塊の重量の少なくとも10%、接着剤塊の重量の15%、接着剤塊の重量の少なくとも20%、または接着剤塊の重量の少なくとも30%という量の有効薬剤を含むように構成されるであろう。
【0039】
驚くべきことに、本発明者らは、1.0以上のClogP値を持つ非親水性浸透促進剤を装置の中に含ませることによって、高濃度のカプサイシンまたはその他のTRPV1アゴニストを含む、慢性疼痛または皮膚症状を治療するための薬剤送達装置を改良することができることを発見した。「ClogP」という用語は、Biobyte Corp社(Claremont, Calif., USA)の「ClogP for Windows(登録商標)」ソフトウエア、バージョン4.0によって計算された水/オクタノール分配係数を意味する。薬剤の経皮および経上皮送達を高める、そのような浸透促進剤の固有の能力とは別に、経上皮水分損失(TEWL)も、本発明記載の薬剤送達装置の機能に関与する。TEWLは皮膚の表面から水が失われることを意味し、汗腺によって水が失われることとは明確に異なる機構である。それは連続的な過程であり、皮膚が完全であることを評価するパラメーターであると考えられている(すなわち、負傷したか透過性になった皮膚はより高いTEWLを示す)。浸透促進剤を含む薬剤リザーバー(すなわち、パッチ)が、TEWLによって皮膚の表面から逃げる水を捉えて保持する場合、薬剤原料の水における溶解度が小さければ、薬剤原料の熱力学的活性を高めることができる。これによって、結果的に、送達装置からの治療用化合物の放出を増大させることができる。
【0040】
当業者は、両親媒性または親水性の皮膚浸透促進剤を使用することが、このような送達装置においてごく一般的であると考えている。しかし、そのような周知の装置においては、水が、そこに含まれている両親媒性および親水性の皮膚浸透促進剤と混和性であるために、皮膚の表面から失われる水が捉えられて、薬剤リザーバーの一部になってしまう。その結果、そのようなシステムでは、TEWLを防止することから得られる水を利用することができない。また、このような吸湿性のシステムは、製造過程で大気中の水蒸気を取り込みやすく、その結果、製造および/または保存の過程で薬剤の加水分解をもたらす。
【0041】
これに対して、本発明で考案された薬剤送達装置は、薬剤が(完全または部分的に)可溶化されているために薬剤リザーバーを形成している非親水性皮膚透過促進剤を利用する。このような薬物送達装置において、皮膚の表面から失われた水がこのリザーバーによって捉えられると、皮膚浸透促進剤は、水との非混和性があるために、熱力学的活性を増加させる。その結果、リザーバーからの皮膚浸透促進剤の放出が増え、それによって、より多くの治療用化合物が皮膚の中に、恐らくは皮膚を経由して送達される。
【0042】
A.TRPV1アゴニスト
本発明において有用なTRPV1アゴニストは、カプサイシン、カプサイシンのアナログおよび誘導体、ならびにTRPV1の作用薬であるその他の低分子量化合物(すなわち、MW<1000)などであるが、これらに限定されない。カプサイシンは、TRPV1アゴニストのプロトタイプとみなすことができる。カプサイシン(別名8−メチル−N−バニリル−トランス−6−ノネンアミド、(6E)−N−[(4−ヒドロキシ−3−メトオキシフェニル)メチル]−8−メチルノン−6−エンアミド、N−[(4−ヒドロキシ−3−メトオキシフェニル)メチル]−8−メチル−(6E)−6−ノネンアミド、N−(3−メトオキシ−4−ヒドロキシベンジル)−8−メチルノントラン−6−エンアミド、(E)−N−[(4−ヒドロキシ−3−メトオキシフェニル)メチル]−8−メチル−6−ノネンアミド)は以下の化学構造をもつ。
【0043】
【化1】
薬剤送達装置において使用するのに適したカプサイシンアナログは、天然および合成のカプサイシン誘導体およびアナログ(「カプサイシノイド」)、例えば、米国特許第5,762,963号に記載されているものなどであり、この特許文献はその全体を参照されて本明細書に組み込まれる。
【0044】
カプサイシンに加えて、多様なカプサイシンアナログおよび誘導体、ならびにその他のTRPV1アゴニストを投与することができる。カプサイシノイドのようなバニロイドが有用なTRPV1アゴニストの例である。本明細書記載の装置および方法とともに使用するのに適したバニロイドの例は、N−バニリル−アルカンジエンアミド、N−バニリル−アルカンジエニル、N−バニリル−シス−一不飽和アルケンアミド、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、およびホモジヒドロカプサイシンである。
【0045】
TRPV1アゴニストは、ピペリン、セスキテルペンジアルデヒド(例えば、ワルブルガナール、ポリゴジアル、またはイソベレラル(isovelleral))など、バニリル官能基を欠いた化合物であってもよい。一つの実施態様において、TRPV1アゴニスト1は、スクチゲラルなどのトリプレニル・フェノールである。TRPV1アゴニスト1のさらなる例が、米国特許第4,599,342号、第5,962,532号、第5,762,963号、第5,221,692号、第4,313,958号、第4,532,139号、第4,544,668号、第4,564,633号、第4,544,669号、第4,493,848号、第4,532,139号、第4,564,633号、第4,544,668号、およびPCT国際公開公報第00/50387号に記載されており、これらはそれぞれ全体を参照されて、本明細書に組み込まれる。その他の有用なTRPV1アゴニストは薬理学的に有効なジンゲロール、ピペリン、ショウガオールなどであり、より具体的には、グアヤコール、オイゲノール、ジンゲロン、シバマイド、ノニバマイド、ヌバニル、オルバニル、NE−19550、NE−21610、およびNE−28345(Drayら、1990, Eur.J.Pharmacol 181:289−93およびBrand et al.,1990, Agents Actions 31:329−40参照)、レシニフェラトキシン、レシニフェラトキシンアナログ、およびレシニフェラトキシン誘導体などである(例えば、チンヤトキシン(tinyatoxin))。さらに、前記のアゴニストのいずれの幾何異性体および立体異性体も、本明細書記載の装置および方法とともに使用することができる。
【0046】
その他の適当なTRPV1アゴニストは、脂肪族の環状、通常、または分岐状の置換によってアミド化されたモノフェノールモノ置換ベンジルアミンなど、TRPV1受容体結合部分をもつバニロイドである。本明細書記載の装置および方法とともに使用するのに適当な、さらに別のTRPV1アゴニストは、標準的な方法、例えば、米国特許公開第20030104085号に記載されている方法を用いて容易に同定することができ、この公報はその全体が参照されて本明細書に組み込まれる。TRPV1アゴニストを同定するために有用なアッセイ法には、制限はなく、受容体結合アッセイ法、TRPV1受容体を発現する細胞におけるカルシウム流入または膜電位の促進の機能評価、そのような細胞における細胞死誘発能力を測定する方法(例えば、C線維ニューロンの選択的除去)、および当技術分野において知られているその他のアッセイ法などがある。
【0047】
アゴニストと前記したいずれかの薬学的に許容できる塩の混合液を使用してもよい。Szallasi and Blumberg, 1999, Pharmacological Reviews 51:159−211、米国特許第5,879,696号およびこれらの中の参考文献を参照のこと。装置の中のTRPV1アゴニストの濃度は薬剤デポーの重量の約0%から約90%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約70%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約50%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約30%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約20%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約10%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約8%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約6%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約5%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約4%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約2%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約1%の間である。いくつかの例において、装置の中のTRPV1アゴニストの濃度は、薬剤デポーの重量の0.04%以下である。
【0048】
当然のことながら、所定の望ましい総薬剤負荷量にするには、接着性基質の厚さおよび/または浸透促進剤またはその混合液に含まれる薬剤の濃度を変更することによって、負荷の割合を変えることができる。また、パッチから放出される薬剤の流動速度を目的に合わせて使用している間中一定に保つために、接着性基質中の薬剤量が望ましい薬用量を超えて、濃度勾配を高く維持することも可能である。例えば、24時間にわたり総量30mgの薬剤を送達し、その後新しい装置と交換されるようにデザインされた装置では、50〜100mgもの薬剤を装置の中に含ませることができる。このようにして、24時間後にも、薬剤の高熱力学的活性を確保する。同様の理由で、過剰量の非親水性の促進剤を、本願において企図された装置に含ませることができる。
【0049】
B.浸透促進剤/溶媒
両親媒性分子は、非水溶性の炭化水素鎖に結合した水溶性の極性基をもつことを特徴とする。一般的に、両親媒性の浸透促進剤は極性頭部基をもち、水溶液系および非親水系において、かなり高い可溶性を示す。これらのカテゴリーには、界面活性剤、短鎖アルコール、荷電第4アンモニウム化合物が含まれる。このような両親媒性溶媒の例は、1,3−ブタンジオールなどのブタンジオール類、ジプロピレングリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールおよびジエチレングリコールのカルボン酸エステル、6〜18個の炭素原子からなるポリエトキシ化脂肪アルコールまたは2,2−ジメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン(登録商標Solketal)もしくはこれらの溶媒の混合液である。
【0050】
作用についての特定の理論に拘泥するのではないが、浸透促進剤は、多様な機構、例えば、膜の流動性の増加、角質層に存在する細胞間脂質二重膜の選択的撹乱、組織の誘電率の増加によって示される新しい極性経路の開通などによって作用すると考えられる。(Eric W. Smith and Howard I. Maibach (1995) In: Percutaneous Penetration Enhancers CRC Press New York, pp. 1−20)。本明細書記載の薬剤送達装置に取り込むことができる非親水性の浸透促進剤の例は、1−メントン、ミリスチン酸イソプロピル、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサン酸イソプロピル、酢酸ブチル、吉草酸メチル、オレイン酸エチル、d−ピペリトン、d−プレゴン、n−ヘキサン、オクタノール、ミリスチルアルコール、メチルノネノイルアルコール、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ミリスチン酸、ステアリン酸、およびパルミチン酸イソプロピルを含むが、これらに限定されない。
【0051】
他の非親水性浸透促進剤を、例えば、Franz型拡散細胞を使用する、ラット、ブタまたはヒトの皮膚上でインビトロ皮膚透過試験(Franzら、”Transdermal Delivery” In: Treatise on Controlled Drug Delivery. A. Kydonieus. Ed. Marcell Dekker: New York, 1992; pp 341−421参照)などのアッセイ法を用いて同定することができる。KarandeおよびMitragotriの高スループット法(Karande and Mitragotri,2002, ”High throughput screening of transdermal formulations” Pharm Res 19:655−60, and Karande and Mitragotri, 2004, ”Discovery of transdermal penetration enhancers by high−throughput screening”)など、促進剤を評価するための、その他多くの方法が当技術分野において知られている。
【0052】
本発明で使用するのに適した非親水性浸透促進剤は、薬学的に許容できる非親水性の浸透促進剤である。薬学的に許容できる非親水性の浸透促進剤は、有害な影響を与えずに、ヒト患者の皮膚に施用することができる(すなわち、使用レベルでは、低いかまたは許容できる毒性を有する)。また、使用される非親水性浸透促進剤は、一般的に、ClogP値が1.0以上である。ClogP値が2.0以上、3.0以上、5.0以上、7.0以上、または9.0以上の非親水性の浸透促進剤も使用することができる。このような浸透促進剤は、以下の種類のいずれかに由来する促進剤を含むが、これらに限定されない:フェノール類およびポリオール類、(直鎖または分岐)脂肪酸など、脂肪長鎖アルコールまたはその他のアルコール;テルペン類(例えば、モノテルペン、ジテルペンおよびセキテルペン、炭化水素、アルコール、ケトン);脂肪酸のエステル、エーテル、アミド、アミン、炭化水素など。
【0053】
両親媒性浸透促進剤は、その親水性のために接着剤に適合しないため、促進剤系を単独で接着剤に取り込むことは難しい。使用される非親水性促進剤は、一般的に、本来は疎水性がより強く、接着剤とより適合する。リザーバー型および一体型の両方の装置に適用可能な変法の一つにおいて、非親水性浸透促進剤を、治療用化合物とともに薬剤デポーの中に入れる。別の実施態様において、非親水性浸透促進剤を接着層の中に取り込ませるが、薬剤は薬剤デポーの中に入れる。非親水性浸透促進剤を接着層の中に入れると、促進剤が角質層と直接接触するため、しばしば望ましい。場合によっては、非親水性浸透促進剤を、薬剤リザーバーだけでなく、接着剤の中にも充填する。
【0054】
下記の表1に、適当な非親水性溶媒およびそのClogP値の具体的な例を示す。
【0055】
【表1】
C.マイクロリザーバーシステム
既述したように、一つの変形において、薬剤送達装置はマイクロリザーバーシステムである。この型の薬剤送達装置においては、ポリシロキサンを使用することができる。ポリシロキサンは、溶媒を含まない2成分システム、または有機溶媒の溶液から作ることができる。薬剤送達装置を作製するには、溶媒に溶けている自己接着性ポリシロキサンが好適である。
【0056】
ポリシロキサンには、基本的に異なる2種類の変異体があるが、通常型ポリシロキサンは、化学式1に示すような遊離シラノール基をもち、シアノール基はトリメチルシリル基によって誘導体化されている。
【0057】
【化2】
このようなアミン耐性ポリシロキサンも、塩基性治療用化合物および/または塩基性賦形剤を含まない、治療用化合物含有薬剤送達装置に適していることが証明されている。化学式1は、重縮合によってジメチルシロキサンから調製される直鎖状ポリシロキサン分子の構造を示している。三次元架橋結合は、メチルシロキサンの付加的使用によって達成することができる。
【0058】
本明細書記載の方法および装置とともに使用するのに適したその他のポリシロキサンは、他のアルキル遊離基、またはフェニル遊離基によって完全または部分的に置換されたメチル基をもつ。
【0059】
また、マイクロリザーバーシステムの溶媒または溶媒混合物は、粘性促進添加物を含むことも可能である。粘性促進添加物の例は、例えば、セルロース誘導体(エチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなど)、ならびに高分子量ポリアクリル酸またはその塩および/またはエステルなどの誘導体などである。
【0060】
基質中のマイクロリザーバー液滴の割合は、典型的には約40重量%未満、より典型的には約35重量%未満、最も典型的には約20重量%と30重量%の間である。
【0061】
中程度の粘着性のポリシロキサンおよび高粘着性のポリシロキサンの混合物を、本明細書記載の装置および方法とともに使用してもよい。基質の中で使用するのに適したポリシロキサンは、直鎖状の二官能性オリゴマーおよび分岐多官能性オリゴマーから合成され、両タイプのオリゴマーの比率によって接着剤の物理特性が決定される。官能性が高いオリゴマーほど、強い凝集力と低い粘着性をもつ、架橋性が強い接着剤をもたらし、官能性が低いオリゴマーほど、高い粘着性と弱い凝集力をもつ、架橋性の弱い接着剤をもたらす。例えば、下記の実施例において使用される高粘着型は、ヒトの皮膚に固着するには十分な粘着性があるのに、中度粘性型は全く粘着性ではないが、それにもかかわらず、装置の中のその他の成分、例えば、マイクロリザーバー中のカプサイシンおよび浸透促進剤の軟化作用を補償するのに役立つ。シリコンオイル(例えば、ジメチコン)を、例えば0.5〜5重量%のシリコンオイルを使って、基質の接着性を高めるために加えてもよい。
【0062】
一つの変法において、基質は、少なくとも約0.05重量%〜約10重量%のカプサイシンまたはカプサイシンアナログ、約10重量%〜約25重量%のオレイルアルコール、約0重量%〜約5重量%のエチルセルロース、約0重量%〜約5重量%のシリコンオイル、および約55重量%〜約85重量%の自己接着性感圧性ポリシロキサンを含む。基質の被覆材重量は、典型的には約30〜約350g/m2であり、より典型的には、約50〜約120g/m2である。裏打ち層に適した材料は、例えば、ポリエステルフィルム(例えば、厚さ10〜60μm)、エチレン酢酸ビニル共重合体などである。
【0063】
別の変法において、マイクロリザーバー型の装置は、小さい液滴(「マイクロリザーバー」)の形状で接着性基質の中に分散している液体状の薬物調製物を含む。マイクロリザーバー系の外見は古典的な基質系に似ており、顕微鏡下でしか小さいマイクロリザーバーを見分けることができないため、典型的な基質型の系からマイクロリザーバー系を見分けることは難しい。したがって、前述および後述の項において、薬剤送達装置の治療用化合物含有部分は、「基質」とも表現されている。得られる液滴のサイズは、撹拌条件および撹拌過程での剪断力に依存する。このサイズは非常に一貫しており、同じ混合条件を用いて再現可能である。マイクロリザーバーの液滴のサイズ範囲は、約1μmから約150μm、または約5μmから約50μm、または約10μmから約30μmであろう。
【0064】
しかしながら、古典的な基質系と異なり、マイクロリザーバー系においては、治療用化合物は主にマイクロリザーバーの中に(そして、接着剤中には少量のみ)含まれていることに留意されたい。この意味で、マイクロリザーバー系は、基質型の薬剤送達装置およびリザーバー型の薬剤送達装置の混合型とみなすことができ、両方の薬剤送達装置の改変型の利点を組み合わせている。古典的なリザーバー系におけると同じように、溶媒を選択することによって、飽和溶解度を特定の条件に適した値に容易に調節することができ、また、古典的な基質系におけると同じように、ハサミを用いて、漏出させることなく、薬剤送達装置を小型の薬剤送達装置に分割することができる。
【0065】
また、本明細書記載のマイクロリザーバーシステムは、治療用化合物および賦形剤の放出を調節するために拡散速度調節膜を含むことができる。しかし、施用時間が短く、治療成分が速やかに放出される場合には、通常、調節膜は存在しない。
【0066】
本明細書記載の装置とともに使用するのに適したシステムの組成の一例を、以下の表2に示す。
【0067】
【表2】
基質の厚さは、約30〜約350g/m2の被覆材重量に相当するであろうが、具体的な処方設計の特性によっては、異なった値を使用してもよい。また、約50μm〜約100μmの基質の厚さが適当であろう。
【0068】
さらに、薬剤送達装置用の裏打ち層は、理想的には、薬剤および選択された非親水性溶媒(例えば、オレイルアルコール)に関して、比較的不透過性または不活性であるべきである。一つの適当な裏打ち層はポリエステルであるが、その他の材料、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体およびポリアミドも適当である。実際には、厚さ約51μmのポリエステルフィルムが非常に適していることが証明されている。基質の裏打ち層への粘着力を増やすためには、裏打ち層の基質との接触面をシリコン処理することが有利である。ポリアクリル酸から作られる接着剤は、そのようなシリコン処理されたフィルムに付着しないか、接着力が比較的弱いが、ポリシロキサンから作られる接着剤は、シリコン処理されたフィルムと化学的に類似しているため、比較的十分に接着する。
【0069】
また、薬剤送達装置は、典型的には保護フィルムを含み、保存期間中、装置を保護するが、使用前に除去される。ポリエステルフィルムはいったん表面処理されると、ポリシロキサンから作られる接着剤を付着させないため、典型的には、ポリエステルフィルムを使用する。適当なフィルムはいくつかの製造業者から供給されており、当業者に知られている。
【0070】
II.装置の作製法
ここで、局所的薬剤送達装置の作製方法を説明する。典型的には、この方法は、治療用化合物を完全または部分的に非親水性溶媒に溶解させること、この溶液をポリシロキサンまたは基質成分の溶液に添加すること、および攪拌して分散させること、得られた分散液を、除去可能な保護層の上にコーティングして、ポリシロキサンの溶媒を温度を上げながら除去すること、および乾燥した層の上に裏打ち層をラミネート加工することを含む。
【0071】
接着剤に適した溶媒は、例えば、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンなどの石油エーテルまたはアルカン、または酢酸エチルである。もし、適当な薬剤、例えば、エチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体を添加することによって、治療用化合物溶液の粘性が増大するならば、治療用化合物溶液の分散液をより容易に実現することができる。そして、接着剤の溶媒を除去した後、望ましい厚さの基質層を提供する厚さにして、除去可能な保護フィルムの上に、この分散物をコーティングする。次に、裏打ち層を用いて、乾燥した層をラミネート加工し、こうして完成した薬剤送達装置のラミネートを得ることができる。
【0072】
このラミネートから薬剤送達装置を望ましい形状およびサイズに打ち抜き、一次包装用の適当な小袋に詰めることができる。一次包装物は、米国特許第RE37,934号に記載されているように、紙/糊/アルミニウム箔/糊/登録商標Barexからなるラミネート箔でよい。なお、この特許はその全体が参照されて本明細書に組み込まれる。登録商標Barexは、ゴム変性アクリロニトリル共重合体から作られる熱融着性ポリマーであって、薬剤送達装置の揮発性成分に対する吸収性が低いことで区別される。
【0073】
マイクロリザーバー系が、一般的には、治療用化合物の放出を調節する拡散速度調節膜を有しないため、治療用化合物を皮膚の深層へ放出するのを調節する唯一の要素は、皮膚または皮膚の最上層である角質層であろう。したがって、基質組成物の最適化は、ヒトの皮膚を用いたインビトロでの透過試験や、Venterら、2001, “A comparative study of an in situ adapted diffusion cell and an in vitro Franz diffusion cell method for transdermal absorption of doxylamine” Eur J Pharm Sci, 13:169−77に記載されているFranz拡散細胞によって行なうことができる。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、上記の薬剤送達装置を作製し使用する方法をより十分に説明するのに役立つ。当然のことながら、これらの実施例は、例示目的のためだけに提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0075】
実施例1:薬剤デポーの中にカプサイシンを0.04重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
80mgのカプサイシンに対して、16.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース200mgを添加して、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4201(36.74グラム)と登録商標Bio−PSA4301(146.98グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約273.6g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0076】
実施例2:薬剤デポーの中にカプサイシンを2.0重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
4.0gのカプサイシンに対して、20.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース200mgを添加し、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4301(175.80グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約277.9g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0077】
実施例3:薬剤デポーの中にカプサイシンを4重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
8.0gのカプサイシンに対して、36.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース2.0gを添加し、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4301(154.0グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約218.4g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0078】
実施例4:薬剤デポーの中にカプサイシンを6重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
12.0gのカプサイシンに対して、40.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース4.0gを添加し、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4301(144.0グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約245.0g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0079】
実施例5:薬剤デポーの中にカプサイシンを8重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
16.0gのカプサイシンに対して、44.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース4.0gを添加し、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4301(136.0グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約352.9g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0080】
実施例6:薬剤デポーの中にカプサイシンを10重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
20.0gのカプサイシンに対して、50.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース4.0gを添加し、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4301(126.0グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約81.8g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0081】
実施例7:薬剤デポーの中にカプサイシンを0.04重量%含む一体型装置の調製法
1.2mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1999mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0082】
実施例8:薬剤デポーの中にカプサイシンを2重量%含む一体型装置の調製法
60mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1940mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0083】
実施例9:薬剤デポーの中にカプサイシンを4重量%含む一体型装置の調製法
120mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1880mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0084】
実施例10:薬剤デポーの中にカプサイシンを6重量%含む一体型装置の調製法
180mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1820mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0085】
実施例11:薬剤デポーの中にカプサイシンを8重量%含む一体型装置の調製法
240mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1760mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0086】
実施例12:薬剤デポーの中にカプサイシンを10重量%含む一体型装置の調製法
300mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1700mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0087】
実施例13:薬剤デポーの中にカプサイシンを4重量%含む一体型装置の調製法
120mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース1880mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0088】
実施例14:インビトロ溶解アッセイ法
マイクロリザーバー型送達装置。実施例1〜6に記載したパッチから剥離ライナーを除去して、両面接着テープを用いて、ガラス板(6cm×6cm)の上に載せ、テープの一方の側がガラス板に付着し、もう一方の側がパッチの裏打ち層に付着するようにした。パッチが容器に触れることなく水性溶媒に曝されるよう、0.1%w/vアジ化ナトリウムを含む脱イオン水200mLに6枚のガラス板を浸した。容器にかたく栓をして、これを振とう機の上に載せた。振とうは穏やかな横方向の振動であって、タンブリングを含まなかった。溶液のサンプルを、30分、1時間、3時間、および18時間目に採取し(サンプルサイズ200μL)、カプサイシン含有量についてHPLCで解析した。カプサイシン放出の結果を下記の表3に示す。
【0089】
【表3】
図6は、放出されるカプサイシンの量が、時間およびパッチ内のカプサイシン濃度に対して直線的に変化することを示している。10% w/wパッチから放出されるカプサイシンの量が、8% w/wパッチに比べて低いのは、10% w/wパッチ上のコーティングが相対的に薄いせいであることに留意されたい(上記実施例5と6を比較されたい)。
【0090】
一体型送達装置。実施例7〜12に記載したパッチから剥離ライナーを除去して、両面接着テープを用いて、ガラス板(6cm×6cm)の上に載せ、テープの一方の側がガラス板に付着し、もう一方の側がパッチの裏打ち層に付着するようにした。パッチが容器に触れることなく水性溶媒に曝されるよう、0.1%w/vアジ化ナトリウムを含む脱イオン水200mLに6枚のガラス板を浸した。容器にかたく栓をして、これを振とう機の上に載せた。振とうは穏やかな横方向の振動であって、タンブリングを含まなかった。溶液のサンプルを、30分、1時間、3時間、および24時間目に採取し(サンプルサイズ200μL)、カプサイシン含有量についてHPLCで解析した。カプサイシン放出の結果を下記の表4に示す。
【0091】
【表4】
一体型パッチの場合にも、図7は、放出されるカプサイシンの量が、時間およびパッチ内のカプサイシン濃度に対して直線的に変化することを示している。マイクロリザーバー型パッチに比べて、一体型パッチから放出されるカプサイシンの量が低いのは、拡散速度調節膜が存在するために予想されたとおりであることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】不透過性の裏打ち層1、マイクロリザーバー液滴2の形で分散している活性薬剤を含む自己接着性基質、および使用前に除去する保護フィルム3を含むマイクロリザーバー型の薬剤送達装置を示している。
【図2】不透過性の裏打ち層1、有効薬剤が、ゲル様塊または固体塊2を形成するポリマー基質の中に溶解および/または分散させている有効薬剤デポーとして働く一体型基質、接着層4、および使用前に除去する保護フィルム3を含む一体型の薬剤送達装置を示している。2と4の間に随意で拡散速度調節膜(図示せず)をもつことも可能である。
【図3】不透過性の裏打ち層1、有効薬剤が、ゲル様塊または固体塊2を形成するポリマー基質の中に溶解および/または分散させている有効薬剤デポーとして働く一体型基質、拡散速度調節膜5、拡散速度調節膜が一方の側で皮膚の表面に直接接触し、もう一方の側で一体型基質と直接接触できるようにした周縁部の接着層4、および使用前に除去する保護フィルム3を含む一体型の薬剤送達装置を示している。不透過性の裏打ち層1が、拡散速度調節膜5と熱融着されて、一体型基質が密封されているポケットを作り出していることに注意されたい。
【図4】不透過性の裏打ち層1、有効薬剤を完全または部分的に浸透促進剤またはその混合液2に溶解させている有効薬剤デポーとして働く液体リザーバー、拡散速度調節膜5、接着層4、および使用前に除去する保護フィルム3を含む液体リザーバー型の薬剤送達装置を示している。
【図5】不透過性の裏打ち層1、有効薬剤を完全または部分的に浸透促進剤またはその混合液2に溶解させている有効薬剤デポーとして働く液体リザーバー、拡散速度調節膜5、拡散速度調節膜が一方の側で皮膚の表面に直接接触し、もう一方の側で一体型基質と直接接触できるようにした周縁部の接着層4、および使用前に除去する保護フィルム3を含む液体リザーバー型の薬剤送達装置を示している。ここでも、不透過性の裏打ち層1が、拡散速度調節膜5と熱融着されて、有効薬剤を含む液体リザーバー2が密封されているポケットを作り出していることに注意されたい。
【図6】カプサイシンが、6個のマイクロリザーバーパッチ剤から18時間にわたって脱イオン水の中にインビトロで放出されることを示している。各パッチ剤は、異なったカプサイシン濃度を含んでいた。以下のカプサイシン濃度(薬剤デポーの重量で)をテストした:0.04%、2%、4%、6%、8%、および10%。
【図7】カプサイシンが、6個の一体型パッチ剤から24時間にわたって脱イオン水の中にインビトロで放出されることを示している。各パッチ剤は、異なったカプサイシン濃度を含んでいた。以下のカプサイシン濃度(薬剤デポーの重量で)をテストした:0.04%、2%、4%、6%、8%、および10%。
【図8】早期の時点(すなわち、30分後、1時間後、および3時間後)における曲線の形をより詳しく図示するために図7の一部を選択した図を示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2005年2月14日に出願された米国仮特許出願第60/652,923号(この全体が参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
(分野)
本明細書記載の装置および方法は、薬剤送達分野に属する。より具体的には、記載されている装置および方法は、痛みを緩和するためにカプサイシンおよびその他のTRPV1アゴニストを経皮送達することに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
一過性受容体電位バニロイド受容体1(TRPV1)は、小型の無髄末梢神経線維(皮膚侵害受容器)上で選択的に発現されるカプサイシン応答型リガンド依存性陽イオンチャネルである(非特許文献1;および非特許文献2参照)。TRPV1が、カプサイシンなどのアゴニスト、および熱や水素イオンなど、その他の因子によって活性化されると、カルシウムが細胞の中に入りこんできて、痛みのシグナルを開始させる。
【0004】
カプサイシンおよびその他のTRPV1アゴニストは、複数の症状を緩和するのに有効であるかもしれない。例えば、カプサイシンは、さまざまなタイプの痛み、例えば、神経因性疼痛および慢性の痛み(糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、HIV感染症、外傷、複合性局所疼痛症候群、三叉神経痛、肢端紅痛症、および幻想痛に関連した痛みなど)、混合型の侵害受容器および/または神経障害の複合的病因によって生じる痛み(例えば、癌、変形性関節症、線維筋痛、腰痛、炎症性痛覚過敏、外陰部前庭炎もしくは外陰部痛、洞ポリープ様(sinus polyps)間質性膀胱炎、神経因性膀胱または過活動膀胱、前立腺肥大、鼻炎、手術、外傷、直腸過敏、口腔灼熱症、口腔粘膜炎、ヘルペス(またはその他のウイルス感染症)、前立腺肥大症、および頭痛)を治療するために使用することができる(非特許文献3;Backonjaら、”A Single One Hour Application of High−Concentration Capsaicin Patches Leads to Four Weeks of Pain Relief in Postherpetic Neuralgia Patients” American Academy of Neurology, 2003 (学会要旨);非特許文献4参照)。また、カプサイシンは、皮膚炎、そう痒症、かゆみ、乾癬、いぼおよび皺などの皮膚症状、ならびに、耳鳴および癌(特に皮膚癌)などの症状を治療するために使用することができる(非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9参照)。
【0005】
多数の薬剤送達装置でカプサイシンを送達しようとしてきた。例えば、Robbinsに付与された特許文献1は、神経因性疼痛を治療するためにカプサイシンおよび/またはカプサイシン類似化合物を5重量%よりも高い濃度で含む薬剤送達装置を使用することを記載している。Mullerに対する特許文献2は、治療用化合物不透過性の裏打ち層、カプサイシンおよび両親媒性溶媒を含むポリシロキサン基質、および使用前に取り除く保護フィルムを含む局所用パッチについて記載している。さらに、Muhammad et al.に対する特許文献3は、TRPV1アゴニストの局所用液体処方剤の送達と薬理学的特性について記載している。しかし、これらの参考文献のいずれにも、パッチ処方剤において、非親水性浸透促進剤の助けを借りてカプサイシンを送達することについては記載がない。特に、これらの参考文献のいずれも、水不溶性化合物の皮膚を経由した送達を促進するために密封性の裏打ち層を使用することについて記載していない。
【0006】
皮膚から水が逃げ出すのを防止/最小化するため、言い換えれば、経上皮水損失(TEWL)を実質的に予防するために密封性の裏打ち層を使用することが当業者に知られている。また、この水の保持が、角質層への水分補給、ひいては、薬剤分子などの浸透剤に対する皮膚の透過性を増加させる結果をもたらす(非特許文献10参照)。しかし、この逃げてゆく水および非親水性浸透促進剤を使用して、薬剤デポーの熱力学的活量を増加させることは記載されたことがない。
【特許文献1】米国特許第6,239,180号明細書
【特許文献2】国際公開第04/089361号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0090557号明細書
【非特許文献1】Caterina and Julius、”The Vanilloid Receptor: A Molecular Gateway to the Pain Pathway” Annu Rev Neurosci,(2001)24:487−517
【非特許文献2】Montellら、”A unified nomenclature for the superfamily of TRP cation channels,” Mol Cell(2002)9:229−31
【非特許文献3】Szallasi and Blumberg ”Vanilloid (Capsaicin) Receptors and Mechanisms,” Pharm Revs(1999)51:159−211
【非特許文献4】Bergerら、J Pain Symptom Management(1995)10:243−8
【非特許文献5】Bernsteinら、”Effects of Topically Applied Capsaicin on Moderate and Severe Psoriasis Vulgaris,” J Am Acad Dermatol(1986)15:504−507
【非特許文献6】Ellisら、”A Double−Blind Evaluation of Topical Capsaicin in Pruritic Psoriasis,” J Am Acad Dermatol(1993)29:438−42
【非特許文献7】Saperら、Arch Neurol(2002)59:990−4
【非特許文献8】Vassら、Neuroscience(2001)103:189−201
【非特許文献9】Moller,”Similarities between severe tinnitus and chronic pain” J Am Acad Audiol.(2000)11:115−24
【非特許文献10】Robertsら、Water: The Most Natural Penetartion Enhancer. In: Pharmaceutical Skin Penetration Enhancement, Eds. K. A. Walter and J. Hadgraft. Marcel Dekker,(1993)New York, pp.1−30
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、痛みおよびその他の症状を治療するために、カプサイシンおよびその他のTRPV1アゴニストを送達するための非親水性浸透促進剤を含む密封性パッチ剤があることは望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要旨)
本明細書に記載されているのは、カプサイシンおよびその他のTRPV1アゴニストを投与するための薬剤送達装置および方法である。一般的に、薬剤送達装置は、痛みを治療するのに役立つ、経皮送達するための治療上有効な量の有効薬剤を含む。この装置は、通常、局所施用するように構成されており、治療を必要とする領域に薬剤を局所的に投与することを提供する。
【0009】
この薬剤送達装置は、通常のパッチ型、例えば、ポリマー基質、接着剤、または容器として処方することができ、当技術分野において周知の方法によって作ることができる。ただし、すべての場合において、装置は、経上皮水損失を実質的に予防する密封性の裏打ち層および非親水性の浸透促進剤を含む。
【0010】
このパッチ剤は、一般的にはカプサイシンを含むが、その他のTRPV1アゴニスト、例えば、カプサイシノイド、カプサイシン類似化合物、およびカプサイシン誘導体などを取り込むよう処方することもできる。このパッチ剤は、TRPV1アゴニストを、装置に対する薬剤デポーの重量の少なくとも約0.04%、少なくとも約2%、少なくとも約4%、少なくとも約6%、少なくとも約8%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、または少なくとも約30%の量を構成し得る。また、本パッチ剤で使用される具体的な非親水性浸透促進剤は、装置のタイプ(例えば、ポリマー基質、液体リザーバーなど)、使用される接着剤などによってさまざまであるが、すべての場合において、ClogP値は1.0よりも大きい。
【0011】
薬剤送達装置を使用して、さまざまな症状を治療することができる。例えば、さまざまなタイプの痛み、例えば、神経因性疼痛および慢性の痛み(糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、HIV感染症、外傷、複合性局所疼痛症候群、三叉神経痛、肢端紅痛症、および幻想痛に関連した痛みなど)、混合型の侵害受容器および/または神経障害の複合的病因によって生じる痛み(例えば、癌、変形性関節症、線維筋痛、腰痛、炎症性痛覚過敏、外陰部前庭炎もしくは外陰部痛、洞ポリープ様間質性膀胱炎、神経因性膀胱または過活動膀胱、前立腺肥大、鼻炎、手術、外傷、直腸過敏、口腔灼熱症、口腔粘膜炎、ヘルペス(またはその他のウイルス感染症)、前立腺肥大症、および頭痛)などを治療するために使用することができる。この薬剤送達装置は、皮膚炎、そう痒症、かゆみ、乾癬、いぼおよび皺などの皮膚症状、ならびに、耳鳴および癌(特に皮膚癌)などの症状を治療するために有効薬剤を送達することもできる。
【0012】
痛みを治療する方法も記載されている。いくつかの変法では、この方法は、TRPV1アゴニスト、ClogP値が1.0よりも大きい非親水性浸透促進剤、および密封性裏打ち層をもつ薬剤送達装置を、被験体の皮膚または粘膜に適用して、痛みを緩和するために、治療上有効な量のTRPV1アゴニストを送達することを含む。また、TRPV1アゴニストは、少なくとも約15分間にわたって、または約15分間よりも長い時間にわたって、約30分間よりも長い時間にわたって、約1時間よりも長い時間にわたって、約4時間よりも長い時間にわたって、約6時間よりも長い時間にわたって、約12時間よりも長い時間にわたって、約18時間よりも長い時間にわたって、または約24時間以上よりも長い時間にわたって送達することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(詳細な説明)
本明細書記載の薬剤送達装置は、非親水性浸透促進剤を含み、表示された症状、例えば、痛みや皮膚症状に対する治療上有効な量の有効薬剤を送達するかぎり、いかなる構成であってもよい。一般的には、この装置は、密封性の裏打ち層、非親水性浸透促進剤、非親水性浸透促進剤に部分的または完全に溶解して、生じた組成物が、接着剤の中に分散しているか、液体リザーバーになっているか、または一体型基質などになっている有効薬剤、および剥ぎ取り可能な剥離ライナーをもつように構成されているパッチである。
【0014】
前記したように、非親水性浸透促進剤を密閉性パッチへ取り込むことは、薬剤デポーの熱力学的活量を高めると考えられている。非親水性浸透促進剤を使用する別の利点は、有効薬剤が加水分解すると、これが含まれていることがもつ効果が減少することに関する。エステルおよびアミドは加水分解に特に敏感である。カプサイシンおよびカプサイシノイドはアミドである。したがって、より長期の貯蔵期間を確保するためには、無水剤形のカプサイシンを含む製剤があることが望ましい。また、両親媒性溶媒および親水性溶媒が示す吸湿性のために、製剤の成分が入手、保存、および製造の過程で無水であることを保証するのは困難である。例えば、接着剤を希釈するために使用された溶媒を蒸発させるためのパッチの乾燥が、処方剤の中に存在する水蒸気を効率的に除去することができない比較的低温度(すなわち、40℃まで)でしばしば行われる。このことを考慮すると、親水性および両親媒性の皮膚浸透促進剤は、皮膚パッチおよび経皮パッチなど、多くの異なるタイプの剤形に使用するのには望ましくない。
【0015】
さらに、エタノール、アセトン、およびDMSOなどの親水性および両親媒性の皮膚浸透促進剤は、角質層の細胞内ドメインの中に優先的に配分されることが知られている。これに対して、非親水性皮膚浸透促進剤は、角質層の構造脂質の間にインターカレートして、角質細胞を実際に透過性にすることなく角質細胞の充填を破壊する可能性がより高い(Rolf Daniels, ”Strategies for skin penetration enhancement,” Skin Care Forum, Issue 37, August 2004参照)。したがって、低度の皮膚の損傷または炎症が、非親水性皮膚浸透促進剤の使用に伴う可能性がある。
【0016】
本明細書において、「有効薬剤」、「有効な」、「薬剤」、または「治療用化合物」という用語は互換的に使用され、カプサイシン、その他のTRPV1アゴニスト、またはこれらの併用物を意味する。「治療上有効な量」は、痛みまたはその他いずれかの表示された症状を治療するのに有効な薬剤量を意味する。さらに、本明細書で使用される場合、「薬剤デポー」という用語は、薬剤が取り込まれる薬剤送達装置の部分または層を意味し、密閉性裏打ち層、剥離ライナー、および拡散速度調節膜を含まない。また、薬剤が接着剤塊の中に存在しない場合には接着剤も含まない。
【0017】
「浸透促進剤」および「溶媒」という用語は互換的に使用され、以下のものを除く、分子(例えば、薬剤分子)が皮膚に浸透するのを促進する任意の(液体または固体)化合物を意味する:1,3−ブタンジオールなどのブタンジオール類、ジプロピレングリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールおよびジエチレングリコールのカルボン酸エステル、6〜18個の炭素原子からなるポリエトキシル化脂肪アルコール、2,2−ジメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン(登録商標Solketal)、およびこれらの混合物。
【0018】
さらに、本明細書において、「治療する」、「治療すること」、または「治療」という用語は、痛みもしくは症状もしくは症状の根本原因を消散もしくは軽減すること、または症状を予防することを意味する。
【0019】
カプサイシンまたはその他のTRPV1アゴニストによる治療が望ましい症状は、神経因性疼痛(糖尿病性神経障害、ヘルペス後神経痛、HIV/AIDS、外傷、複合性局所疼痛症候群、三叉神経痛、肢端紅痛症、および幻想痛に関連した痛みなど)、混合型の侵害受容器および/または神経障害の複合的病因によって生じる痛み(例えば、癌、変形性関節症、線維筋痛および腰痛)、頭痛、炎症性痛覚過敏、間質性膀胱炎、ならびに皮膚炎、そう痒症、かゆみ、乾癬、およびいぼなどの皮膚症状などであるが、これらに限定されない。一般的に、カプサイシンおよびその他のTRPV1アゴニストを含む薬剤送達装置を使用して、カプサイシンの局所投与が有益である症状を治療することができる。本明細書において、「局所的」、「局所投与」および「局所的に」という用語は、カプサイシンまたはその他のTRPV1アゴニストを皮膚または粘膜に局所投与することを意味する。
【0020】
施用する際には、パッチから剥離ライナーをまず除去する。次に、密閉性裏打ち層を皮膚または粘膜面に向かい合わせて、このパッチを治療すべき皮膚または粘膜の表面に置く。必要に応じて、パッチを確実に接着するために、パッチを軽く押さえてもよい。剥離ライナーは、通常、薬剤不透過性の物質から作られ、施用する前に装置を保護するためだけに役立つ使い捨て要素として構成される。
【0021】
I.薬剤送達装置
前記のように、本明細書記載の薬剤送達装置は、密封性の裏打ち層、非親水性浸透促進剤を含み、治療上有効な量の薬剤を送達するかぎり、いかなる形態であってもよい。
【0022】
一般的に、望ましい施用法の必要に応じて、この装置にさまざまな程度の可塑性を与えるように裏打ち層を適応させることができる。裏打ち層の機能は、経上皮水、薬剤および非親水性浸透促進剤が周囲の中に失われることを予防する密封性バリアーを提供すること、およびパッチを保護することである。裏打ち層用に選択される物質は、最小限の薬剤化合物透過性および促進剤透過性を示すべきであり、これらのものまたは接着剤と不適合であるべきではない。理想的には、裏打ち材は、薬剤を含む混合物を成型することができる支持体であって、製造、保存、および使用する際に、それがしっかり結合している支持体を形成できるものでなければならない。そのような物質の例は、ポリウレタン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、着色ポリエチレンにアルミニウム蒸気塗膜を有する/有しないポリエステルを加えたもの、およびエチレン酢酸ビニル共重合体を含むポリエステルなどであるが、これらに限定されない。商業ブランドの例は、商標CoTranおよび商標Scotchpak裏打ちフィルムなどである。裏打ち層の上で基質を直接成型する代わりに、個別に基質を成型してから裏打ち材に固着させてもよい。
【0023】
一つの変法において、薬剤送達装置は基質系である。基質系は、(最も単純な例では)有効薬剤(すなわち、被験体へ送達される化合物)を透過させない密封性裏打ち層、有効薬剤を含む層、および使用前に除去される剥離ライナーを特徴とする。有効薬剤を含む層は、完全または部分的に溶解した形で有効薬剤を含み、理想的には自己接着性である。この基質系はいくつかの層から構成されていてもよく、調節膜を含んでよい。この型のシステムで使用するのに適した接着性ポリマーは、ポリアクリル酸、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリイソブチレン、およびこれらを組み合わせたものであるが、それらに限定されない。基質系は、層ごとに有効薬剤の濃度が異なる複数の層であってよく、そのような構造は、有効薬剤の放出プロファイルを時間をかけて改変する手段として役立つ。
【0024】
接着性基質型の送達装置において使用される接着剤は、市販されていて当業者に知られている多様な接着剤から選択することができる。例えば、普通の接着剤はポリイソブチレン、ポリアクリル酸、およびポリシロキサンを基剤とするものである。接着剤は、高分子量のポリエチレンオキシドまたはポリビニルピロリドンなど、親水性のものであってもよい。接着剤の選択は、機能的接着性(functioning adhesive)基質型の薬剤送達装置を実現する上で決定的に重要な意味をもつ。非親水性浸透促進剤および薬剤が接着剤の中に直接充填されるため、これらの添加剤の存在下で、接着剤はその化学的性質、粘弾性、および接着性を保持しなければならない。接着性は、皮膚に即座に接着すること、および接着を維持するのに十分な粘着性を含む。皮膚浸透促進剤が存在すると接着剤が粘ついたりべとついたりし、その結果、装置を除去した後に、凝集破壊が生じたり、患者の皮膚に残存接着剤が残ったりすることがしばしば見られる。場合によっては、この装置が接着性を完全に失って剥離することもある。通常、粘性および接着性の消失が、接着性基質型送達装置に充填することができる非親水性促進剤の量および型を決定し制限することになる。アクリル酸から作られるいくつかの接着剤、例えば、Avery社、およびNational Starch and Chemical Company社から入手できるものは、溶媒型および可塑化型いずれの非親水性促進剤であっても、比較的高量の負荷に耐えることができる。さらに、Dow−Corning社のBio−PSAも非親水性浸透促進剤に適合する。
【0025】
図1は、密封性裏打ち層1および接着性基質層2を含む接着性基質型パッチであって、有効薬剤のデポーとしても、装置を皮膚に接着させる手段としても役立つ接着性基質型パッチを示している。有効薬剤を含む接着性基質層2は、接着性ポリマー基質2の中に分散している薬剤を含んでもよい。ここで、「分散」という用語は、薬剤を基質全体にくまなく分布させることを意味する。薬剤は、溶解した状態および/または非溶解状態で分散していてよい。
【0026】
別の変法において、薬剤送達装置は、図2および3に示されているように、一体型基質の装置である。一体型の装置において、接着剤以外の物質は薬剤デポーとして役立つ。これらの送達装置では、基質材としてハイドロゲル材料を使用してもよい。例えば、ポリウレタン、ゼラチン、およびペクチンを使用することができる。また、薬剤デポーは、(ゲル様塊から固体塊にわたる硬度をもつ)エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースのような物質の中で形成してもよい。このような薬剤デポーは、効率的な薬剤送達に必要とされる、比較的大量の非親水性浸透促進剤またはその混合物を含むことができる。ゲル様の硬度をもつ薬剤デポーの場合には、皮膚表面とデポーを接触させるために、拡散速度調節膜を含んでいてもよい。堅い/固体のデポーの場合には、拡散速度調節膜を使用することも随意である。
【0027】
図2および3に関して、一体型基質型の薬剤送達装置は、不透過性裏打ち層1、一体型基質層2、随意の拡散速度調節膜5、および接着層4を含む。裏打ち層1、膜5および接着層4は、上記したように選択する。拡散速度調節膜の機能の一つは、この装置の製造を単純化する接着層を構造的に支持することである。一体型基質層は、この一体型層が薬剤リザーバーとして働き、皮膚接着剤が剥離ライナーと一体型層を接触させる、図1の接着層と区別される。
【0028】
いくつかの例において、図3に示されているように、接着層5は、非親水性浸透促進剤と接触しないように、パッチの周辺部に適用してもよい。これは、高負荷および/または非親水性浸透促進剤の性質が接着に干渉する状況において特に望ましい。
【0029】
一体型基質材料は、通常、使用される非親水性浸透促進剤などの大量の液体を保持することができる材料である。適当な物質は、メタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)メタクリル酸エチル(EMA)混合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリジン、ゼラチン、ペクチン、およびその他の親水性物質などのポリマーである。使用される溶媒型の促進剤を保持するために、細孔粒子をポリマー一体型層に組み込んでもよい。経皮パッチの中に細孔粒子を使用することは、米国特許第5,028,535号において、Katz et al.によって、米国特許第4,952,402号においてSparks et al.によって、米国特許第4,927,687号においてNuwayser et al.によって開示されており、これらは全て、その全体が参照されて、本明細書に組み込まれる。
【0030】
薬剤浸透促進剤および非親水性浸透促進剤は、親水性ポリマーに取り込む前に、細孔粒子の中に充填することができる。そうすれば、粒子が混合して、基質全体に均等に分散するかもしれない。粒子を大量に充填すると、ポリマー基質の中にチャネルが形成されるために、治療用化合物および非親水性浸透促進剤の放出が促進される。適当な細孔粒子は、珪藻土、シリカ、Hoechst Celanese発売のセルロースアセテート繊維、およびDow Corning発売の登録商標Polytrapである。
【0031】
一体型層は、次のようにして調製することができる。まず、接着性ポリマー溶液を得るか調製する。非親水性浸透促進剤の中で、薬剤の溶液または分散液を別に調製して、薬剤が溶解するか、均一に分散するまで混合する。次に、増粘剤を添加または混合して、薬剤/非親水性浸透促進剤の溶液または分散液の粘度を調整することができる。例えば、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースを使用して、粘度を調整することができる。そして、得られた溶液または分散液を接着性ポリマー溶液に添加し、この混合物を、薬剤溶液/分散液が液滴の形で接着剤の中に分布するように均一化する。適当な溶媒は、後に乾燥によって取り除かれるが、それをこの混合物に加えて、均一化および/または成型を促進することができる。このような溶媒の例は、n−ヘプタンおよび酢酸エチルである。次に、均一化された接着剤の塊または溶液を型の中に流し込むか、単独または望ましい基質材の上で成型することができる。次に、溶媒を蒸発させるために、成型物を室温、または少し高温のオーブンの中に放置する。溶媒の蒸発を促すために、真空または気流を利用してもよい。溶媒が蒸発すると、接着性基質は、典型的には約30〜200μmの厚さがある接着性ポリマーフィルムの形態をとる。
【0032】
さらに別の変法において、薬剤送達装置は、リザーバーシステムである。リザーバーシステムにおいては、ポーチ(不透過性の裏打ち層を拡散速度調節膜と熱融着させて形成される)は、液体に完全または部分的に溶解した薬剤を含む。液体リザーバーシステムの例を、図4および5に示す。ここで、「拡散速度調節膜」という用語は、通常、送達装置からの薬剤放出速度を制限する半透過膜を意味する。この膜は、細孔フィルムであっても、無孔性隔壁膜であってもよい。この薬剤送達装置のデザインでは、皮膚と向かい合う側も、使用前に除去する必要があるフィルムによって保護される。
【0033】
ここで図4および5を参照すると、リザーバー型の薬剤送達装置は、装置の皮膚に向かい合わない側から皮膚に向かい合う側に向かって、不透過性裏打ち層1、薬剤リザーバー(薬剤デポー)2、拡散速度調節膜5、および接着層4を含む。裏打ち層1は、上記接着性基質型送達装置について記載されているものと同じであってよい。リザーバーはさまざまな形態を採ることができ、例えば、ゲル状または非ゲル状の、非親水性浸透促進剤またはその混合液の中に薬剤を溶解していてもよい。あるいは、薬剤/非親水性促進剤の混合液が、適宜、ポリウレタンフォームなどのパッド状または泡状の物質の孔の中に含まれていてもよい。リザーバーの一つの機能は、薬剤および非親水性促進剤を膜層と十分接触した状態に保つことである。
【0034】
拡散速度調節膜5は、そのもっとも単純な機能において、接着層4を機械的に支える。膜層及び裏打ち層を周縁部で熱融着して、薬剤リザーバーを密封するポーチを形成する。本明細書において、膜層および裏打ち層の「周縁部」という用語は、一緒に密封されて、薬剤リザーバーの境界を画する領域を意味する。したがって、外部膜および裏打ち層材料は、薬剤リザーバーおよび周縁部から外側に延びていてもよい。膜および接着層は治療用化合物および促進剤を自由に透過させなければならない。そのようなものとして、膜層は、膜の選択によって調整された拡散抵抗を提供するはずである。一般的に、拡散速度調節膜は、g/cm2/24時で表わされる周知のMVTR(水蒸気透過速度)値をもつ。制限的なものではないが、15〜100g/cm2/24時という典型的なMVTR値が一般的に適当である。この範囲外のMVTR値も、薬剤の物理化学的特性、リザーバーの中でのその濃度、リザーバーの熱力学的特性および投薬量、ならびに所望の投与速度によっては妥当であるかもしれない。
【0035】
リザーバーシステムの利点は、リザーバーの中に含まれる非親水性浸透促進剤を改変することによって、より簡単に薬剤の飽和溶解度を調整できることにある。熱力学的な理由で、リザーバーシステムは、薬剤が飽和濃度よりも低すぎない濃度で薬剤送達装置の薬剤含有部分に存在する場合には、皮膚の内部およびその上で薬剤を放出させるのに有利である。必要とされる薬剤の量に対する薬剤送達装置の取り込み能力を広範囲に調整して、薬剤溶液の量およびこの溶液の飽和度を調整して具体的な必要に適したものとすることができる。例えば、薬剤溶液の飽和は、ほぼ飽和した状態から超飽和状態に及ぶことが可能であり、あるいは、この溶液は、薬剤の非溶解画分を含んでいてもよい。ほぼ飽和した、または超飽和した薬剤溶液は、薬剤が放出される傾向を高める高熱力学的活性系である。
【0036】
さらなる変法において、薬剤送達装置はマイクロリザーバーシステムである。マイクロリザーバーシステムは、一般的には、基質型およびリザーバー型のシステムを組み合わせたものと見られている。マイクロリザーバーシステムにおいて、非常に低粘度から非常に高粘度までの液体が、完全または部分的に溶解した状態の薬剤を含み、固体の接着性基質の中に微細な液滴として分散している。必要に応じて、このシステムの液体成分の粘度を、増粘剤、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または高分子量ポリアクリル酸もしくはその塩および/もしくはエステルなど誘導体を使用して高めることができる。
【0037】
一つの変法において、マイクロリザーバー型の薬剤送達装置は、密封型裏打ち層、非親水性浸透促進剤の中に完全または部分的に溶解した薬剤溶液のマイクロリザーバーを含有する自己接着性基質、およびこの装置を使用する前に除去する保護フィルム(剥離ライナー)を含む。マイクロリザーバーシステムの中の薬剤(たとえば、カプサイシン)は、完全または部分的に溶解しており、生じた溶液および/または混合液は、例えば、エチルセルロースおよび/またはヒドロキシプロピルセルロースなどの増粘剤によってゲル状になっており、その結果、接着剤または接着剤の混合物と混合すると、接着剤塊全体に分離した小球を形成して、薬剤の「マイクロリザーバー」を形成するようになっている。本明細書記載の装置および方法を目的とする場合、「マイクロリザーバー」および「マイクロリザーバー液滴」という用語は、薬剤、および非親水性浸透促進剤または非親水性促進剤の混合物を含み、随意では、増粘剤を含むことができる微細分散した液滴を意味する。「マイクロリザーバー型システム」という用語は、付加的成分の有無にかかわらず、接着剤塊(例えば、感圧接着剤(PSA))の中に分散するこれらのマイクロリザーバー液滴の集合体を指す。
【0038】
本明細書において、「接着剤」および「接着剤塊」という用語は、皮膚、ならびに密閉性もしくは不透過性の裏打ちフィルムまたは拡散速度調節膜に付着する能力がある物質を意味する。「感圧接着剤」という用語は、皮膚に押しつけるとその表面に付着する接着剤(例えば、ポリシロキサン、ポリアクリル酸、またはポリイソブチレン)を意味する。一般的には、ポリシロキサンまたはポリアクリル酸またはポリイソブチレンから作られる自己接着性基質が、接着剤塊の重量の少なくとも約0.001%、接着剤塊の重量の少なくとも0.01%、接着剤塊の重量の少なくとも0.1%、接着剤塊の重量の少なくとも1%、接着剤塊の重量の少なくとも3%、接着剤塊の重量の少なくとも5%、接着剤塊の重量の少なくとも10%、接着剤塊の重量の15%、接着剤塊の重量の少なくとも20%、または接着剤塊の重量の少なくとも30%という量の有効薬剤を含むように構成されるであろう。
【0039】
驚くべきことに、本発明者らは、1.0以上のClogP値を持つ非親水性浸透促進剤を装置の中に含ませることによって、高濃度のカプサイシンまたはその他のTRPV1アゴニストを含む、慢性疼痛または皮膚症状を治療するための薬剤送達装置を改良することができることを発見した。「ClogP」という用語は、Biobyte Corp社(Claremont, Calif., USA)の「ClogP for Windows(登録商標)」ソフトウエア、バージョン4.0によって計算された水/オクタノール分配係数を意味する。薬剤の経皮および経上皮送達を高める、そのような浸透促進剤の固有の能力とは別に、経上皮水分損失(TEWL)も、本発明記載の薬剤送達装置の機能に関与する。TEWLは皮膚の表面から水が失われることを意味し、汗腺によって水が失われることとは明確に異なる機構である。それは連続的な過程であり、皮膚が完全であることを評価するパラメーターであると考えられている(すなわち、負傷したか透過性になった皮膚はより高いTEWLを示す)。浸透促進剤を含む薬剤リザーバー(すなわち、パッチ)が、TEWLによって皮膚の表面から逃げる水を捉えて保持する場合、薬剤原料の水における溶解度が小さければ、薬剤原料の熱力学的活性を高めることができる。これによって、結果的に、送達装置からの治療用化合物の放出を増大させることができる。
【0040】
当業者は、両親媒性または親水性の皮膚浸透促進剤を使用することが、このような送達装置においてごく一般的であると考えている。しかし、そのような周知の装置においては、水が、そこに含まれている両親媒性および親水性の皮膚浸透促進剤と混和性であるために、皮膚の表面から失われる水が捉えられて、薬剤リザーバーの一部になってしまう。その結果、そのようなシステムでは、TEWLを防止することから得られる水を利用することができない。また、このような吸湿性のシステムは、製造過程で大気中の水蒸気を取り込みやすく、その結果、製造および/または保存の過程で薬剤の加水分解をもたらす。
【0041】
これに対して、本発明で考案された薬剤送達装置は、薬剤が(完全または部分的に)可溶化されているために薬剤リザーバーを形成している非親水性皮膚透過促進剤を利用する。このような薬物送達装置において、皮膚の表面から失われた水がこのリザーバーによって捉えられると、皮膚浸透促進剤は、水との非混和性があるために、熱力学的活性を増加させる。その結果、リザーバーからの皮膚浸透促進剤の放出が増え、それによって、より多くの治療用化合物が皮膚の中に、恐らくは皮膚を経由して送達される。
【0042】
A.TRPV1アゴニスト
本発明において有用なTRPV1アゴニストは、カプサイシン、カプサイシンのアナログおよび誘導体、ならびにTRPV1の作用薬であるその他の低分子量化合物(すなわち、MW<1000)などであるが、これらに限定されない。カプサイシンは、TRPV1アゴニストのプロトタイプとみなすことができる。カプサイシン(別名8−メチル−N−バニリル−トランス−6−ノネンアミド、(6E)−N−[(4−ヒドロキシ−3−メトオキシフェニル)メチル]−8−メチルノン−6−エンアミド、N−[(4−ヒドロキシ−3−メトオキシフェニル)メチル]−8−メチル−(6E)−6−ノネンアミド、N−(3−メトオキシ−4−ヒドロキシベンジル)−8−メチルノントラン−6−エンアミド、(E)−N−[(4−ヒドロキシ−3−メトオキシフェニル)メチル]−8−メチル−6−ノネンアミド)は以下の化学構造をもつ。
【0043】
【化1】
薬剤送達装置において使用するのに適したカプサイシンアナログは、天然および合成のカプサイシン誘導体およびアナログ(「カプサイシノイド」)、例えば、米国特許第5,762,963号に記載されているものなどであり、この特許文献はその全体を参照されて本明細書に組み込まれる。
【0044】
カプサイシンに加えて、多様なカプサイシンアナログおよび誘導体、ならびにその他のTRPV1アゴニストを投与することができる。カプサイシノイドのようなバニロイドが有用なTRPV1アゴニストの例である。本明細書記載の装置および方法とともに使用するのに適したバニロイドの例は、N−バニリル−アルカンジエンアミド、N−バニリル−アルカンジエニル、N−バニリル−シス−一不飽和アルケンアミド、カプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ノルヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、およびホモジヒドロカプサイシンである。
【0045】
TRPV1アゴニストは、ピペリン、セスキテルペンジアルデヒド(例えば、ワルブルガナール、ポリゴジアル、またはイソベレラル(isovelleral))など、バニリル官能基を欠いた化合物であってもよい。一つの実施態様において、TRPV1アゴニスト1は、スクチゲラルなどのトリプレニル・フェノールである。TRPV1アゴニスト1のさらなる例が、米国特許第4,599,342号、第5,962,532号、第5,762,963号、第5,221,692号、第4,313,958号、第4,532,139号、第4,544,668号、第4,564,633号、第4,544,669号、第4,493,848号、第4,532,139号、第4,564,633号、第4,544,668号、およびPCT国際公開公報第00/50387号に記載されており、これらはそれぞれ全体を参照されて、本明細書に組み込まれる。その他の有用なTRPV1アゴニストは薬理学的に有効なジンゲロール、ピペリン、ショウガオールなどであり、より具体的には、グアヤコール、オイゲノール、ジンゲロン、シバマイド、ノニバマイド、ヌバニル、オルバニル、NE−19550、NE−21610、およびNE−28345(Drayら、1990, Eur.J.Pharmacol 181:289−93およびBrand et al.,1990, Agents Actions 31:329−40参照)、レシニフェラトキシン、レシニフェラトキシンアナログ、およびレシニフェラトキシン誘導体などである(例えば、チンヤトキシン(tinyatoxin))。さらに、前記のアゴニストのいずれの幾何異性体および立体異性体も、本明細書記載の装置および方法とともに使用することができる。
【0046】
その他の適当なTRPV1アゴニストは、脂肪族の環状、通常、または分岐状の置換によってアミド化されたモノフェノールモノ置換ベンジルアミンなど、TRPV1受容体結合部分をもつバニロイドである。本明細書記載の装置および方法とともに使用するのに適当な、さらに別のTRPV1アゴニストは、標準的な方法、例えば、米国特許公開第20030104085号に記載されている方法を用いて容易に同定することができ、この公報はその全体が参照されて本明細書に組み込まれる。TRPV1アゴニストを同定するために有用なアッセイ法には、制限はなく、受容体結合アッセイ法、TRPV1受容体を発現する細胞におけるカルシウム流入または膜電位の促進の機能評価、そのような細胞における細胞死誘発能力を測定する方法(例えば、C線維ニューロンの選択的除去)、および当技術分野において知られているその他のアッセイ法などがある。
【0047】
アゴニストと前記したいずれかの薬学的に許容できる塩の混合液を使用してもよい。Szallasi and Blumberg, 1999, Pharmacological Reviews 51:159−211、米国特許第5,879,696号およびこれらの中の参考文献を参照のこと。装置の中のTRPV1アゴニストの濃度は薬剤デポーの重量の約0%から約90%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約70%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約50%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約30%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約20%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約10%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約8%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約6%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約5%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約4%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約2%の間、薬剤デポーの重量の約0%から約1%の間である。いくつかの例において、装置の中のTRPV1アゴニストの濃度は、薬剤デポーの重量の0.04%以下である。
【0048】
当然のことながら、所定の望ましい総薬剤負荷量にするには、接着性基質の厚さおよび/または浸透促進剤またはその混合液に含まれる薬剤の濃度を変更することによって、負荷の割合を変えることができる。また、パッチから放出される薬剤の流動速度を目的に合わせて使用している間中一定に保つために、接着性基質中の薬剤量が望ましい薬用量を超えて、濃度勾配を高く維持することも可能である。例えば、24時間にわたり総量30mgの薬剤を送達し、その後新しい装置と交換されるようにデザインされた装置では、50〜100mgもの薬剤を装置の中に含ませることができる。このようにして、24時間後にも、薬剤の高熱力学的活性を確保する。同様の理由で、過剰量の非親水性の促進剤を、本願において企図された装置に含ませることができる。
【0049】
B.浸透促進剤/溶媒
両親媒性分子は、非水溶性の炭化水素鎖に結合した水溶性の極性基をもつことを特徴とする。一般的に、両親媒性の浸透促進剤は極性頭部基をもち、水溶液系および非親水系において、かなり高い可溶性を示す。これらのカテゴリーには、界面活性剤、短鎖アルコール、荷電第4アンモニウム化合物が含まれる。このような両親媒性溶媒の例は、1,3−ブタンジオールなどのブタンジオール類、ジプロピレングリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールおよびジエチレングリコールのカルボン酸エステル、6〜18個の炭素原子からなるポリエトキシ化脂肪アルコールまたは2,2−ジメチル−4−ヒドロキシメチル−1,3−ジオキソラン(登録商標Solketal)もしくはこれらの溶媒の混合液である。
【0050】
作用についての特定の理論に拘泥するのではないが、浸透促進剤は、多様な機構、例えば、膜の流動性の増加、角質層に存在する細胞間脂質二重膜の選択的撹乱、組織の誘電率の増加によって示される新しい極性経路の開通などによって作用すると考えられる。(Eric W. Smith and Howard I. Maibach (1995) In: Percutaneous Penetration Enhancers CRC Press New York, pp. 1−20)。本明細書記載の薬剤送達装置に取り込むことができる非親水性の浸透促進剤の例は、1−メントン、ミリスチン酸イソプロピル、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ヘキサン酸イソプロピル、酢酸ブチル、吉草酸メチル、オレイン酸エチル、d−ピペリトン、d−プレゴン、n−ヘキサン、オクタノール、ミリスチルアルコール、メチルノネノイルアルコール、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ミリスチン酸、ステアリン酸、およびパルミチン酸イソプロピルを含むが、これらに限定されない。
【0051】
他の非親水性浸透促進剤を、例えば、Franz型拡散細胞を使用する、ラット、ブタまたはヒトの皮膚上でインビトロ皮膚透過試験(Franzら、”Transdermal Delivery” In: Treatise on Controlled Drug Delivery. A. Kydonieus. Ed. Marcell Dekker: New York, 1992; pp 341−421参照)などのアッセイ法を用いて同定することができる。KarandeおよびMitragotriの高スループット法(Karande and Mitragotri,2002, ”High throughput screening of transdermal formulations” Pharm Res 19:655−60, and Karande and Mitragotri, 2004, ”Discovery of transdermal penetration enhancers by high−throughput screening”)など、促進剤を評価するための、その他多くの方法が当技術分野において知られている。
【0052】
本発明で使用するのに適した非親水性浸透促進剤は、薬学的に許容できる非親水性の浸透促進剤である。薬学的に許容できる非親水性の浸透促進剤は、有害な影響を与えずに、ヒト患者の皮膚に施用することができる(すなわち、使用レベルでは、低いかまたは許容できる毒性を有する)。また、使用される非親水性浸透促進剤は、一般的に、ClogP値が1.0以上である。ClogP値が2.0以上、3.0以上、5.0以上、7.0以上、または9.0以上の非親水性の浸透促進剤も使用することができる。このような浸透促進剤は、以下の種類のいずれかに由来する促進剤を含むが、これらに限定されない:フェノール類およびポリオール類、(直鎖または分岐)脂肪酸など、脂肪長鎖アルコールまたはその他のアルコール;テルペン類(例えば、モノテルペン、ジテルペンおよびセキテルペン、炭化水素、アルコール、ケトン);脂肪酸のエステル、エーテル、アミド、アミン、炭化水素など。
【0053】
両親媒性浸透促進剤は、その親水性のために接着剤に適合しないため、促進剤系を単独で接着剤に取り込むことは難しい。使用される非親水性促進剤は、一般的に、本来は疎水性がより強く、接着剤とより適合する。リザーバー型および一体型の両方の装置に適用可能な変法の一つにおいて、非親水性浸透促進剤を、治療用化合物とともに薬剤デポーの中に入れる。別の実施態様において、非親水性浸透促進剤を接着層の中に取り込ませるが、薬剤は薬剤デポーの中に入れる。非親水性浸透促進剤を接着層の中に入れると、促進剤が角質層と直接接触するため、しばしば望ましい。場合によっては、非親水性浸透促進剤を、薬剤リザーバーだけでなく、接着剤の中にも充填する。
【0054】
下記の表1に、適当な非親水性溶媒およびそのClogP値の具体的な例を示す。
【0055】
【表1】
C.マイクロリザーバーシステム
既述したように、一つの変形において、薬剤送達装置はマイクロリザーバーシステムである。この型の薬剤送達装置においては、ポリシロキサンを使用することができる。ポリシロキサンは、溶媒を含まない2成分システム、または有機溶媒の溶液から作ることができる。薬剤送達装置を作製するには、溶媒に溶けている自己接着性ポリシロキサンが好適である。
【0056】
ポリシロキサンには、基本的に異なる2種類の変異体があるが、通常型ポリシロキサンは、化学式1に示すような遊離シラノール基をもち、シアノール基はトリメチルシリル基によって誘導体化されている。
【0057】
【化2】
このようなアミン耐性ポリシロキサンも、塩基性治療用化合物および/または塩基性賦形剤を含まない、治療用化合物含有薬剤送達装置に適していることが証明されている。化学式1は、重縮合によってジメチルシロキサンから調製される直鎖状ポリシロキサン分子の構造を示している。三次元架橋結合は、メチルシロキサンの付加的使用によって達成することができる。
【0058】
本明細書記載の方法および装置とともに使用するのに適したその他のポリシロキサンは、他のアルキル遊離基、またはフェニル遊離基によって完全または部分的に置換されたメチル基をもつ。
【0059】
また、マイクロリザーバーシステムの溶媒または溶媒混合物は、粘性促進添加物を含むことも可能である。粘性促進添加物の例は、例えば、セルロース誘導体(エチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなど)、ならびに高分子量ポリアクリル酸またはその塩および/またはエステルなどの誘導体などである。
【0060】
基質中のマイクロリザーバー液滴の割合は、典型的には約40重量%未満、より典型的には約35重量%未満、最も典型的には約20重量%と30重量%の間である。
【0061】
中程度の粘着性のポリシロキサンおよび高粘着性のポリシロキサンの混合物を、本明細書記載の装置および方法とともに使用してもよい。基質の中で使用するのに適したポリシロキサンは、直鎖状の二官能性オリゴマーおよび分岐多官能性オリゴマーから合成され、両タイプのオリゴマーの比率によって接着剤の物理特性が決定される。官能性が高いオリゴマーほど、強い凝集力と低い粘着性をもつ、架橋性が強い接着剤をもたらし、官能性が低いオリゴマーほど、高い粘着性と弱い凝集力をもつ、架橋性の弱い接着剤をもたらす。例えば、下記の実施例において使用される高粘着型は、ヒトの皮膚に固着するには十分な粘着性があるのに、中度粘性型は全く粘着性ではないが、それにもかかわらず、装置の中のその他の成分、例えば、マイクロリザーバー中のカプサイシンおよび浸透促進剤の軟化作用を補償するのに役立つ。シリコンオイル(例えば、ジメチコン)を、例えば0.5〜5重量%のシリコンオイルを使って、基質の接着性を高めるために加えてもよい。
【0062】
一つの変法において、基質は、少なくとも約0.05重量%〜約10重量%のカプサイシンまたはカプサイシンアナログ、約10重量%〜約25重量%のオレイルアルコール、約0重量%〜約5重量%のエチルセルロース、約0重量%〜約5重量%のシリコンオイル、および約55重量%〜約85重量%の自己接着性感圧性ポリシロキサンを含む。基質の被覆材重量は、典型的には約30〜約350g/m2であり、より典型的には、約50〜約120g/m2である。裏打ち層に適した材料は、例えば、ポリエステルフィルム(例えば、厚さ10〜60μm)、エチレン酢酸ビニル共重合体などである。
【0063】
別の変法において、マイクロリザーバー型の装置は、小さい液滴(「マイクロリザーバー」)の形状で接着性基質の中に分散している液体状の薬物調製物を含む。マイクロリザーバー系の外見は古典的な基質系に似ており、顕微鏡下でしか小さいマイクロリザーバーを見分けることができないため、典型的な基質型の系からマイクロリザーバー系を見分けることは難しい。したがって、前述および後述の項において、薬剤送達装置の治療用化合物含有部分は、「基質」とも表現されている。得られる液滴のサイズは、撹拌条件および撹拌過程での剪断力に依存する。このサイズは非常に一貫しており、同じ混合条件を用いて再現可能である。マイクロリザーバーの液滴のサイズ範囲は、約1μmから約150μm、または約5μmから約50μm、または約10μmから約30μmであろう。
【0064】
しかしながら、古典的な基質系と異なり、マイクロリザーバー系においては、治療用化合物は主にマイクロリザーバーの中に(そして、接着剤中には少量のみ)含まれていることに留意されたい。この意味で、マイクロリザーバー系は、基質型の薬剤送達装置およびリザーバー型の薬剤送達装置の混合型とみなすことができ、両方の薬剤送達装置の改変型の利点を組み合わせている。古典的なリザーバー系におけると同じように、溶媒を選択することによって、飽和溶解度を特定の条件に適した値に容易に調節することができ、また、古典的な基質系におけると同じように、ハサミを用いて、漏出させることなく、薬剤送達装置を小型の薬剤送達装置に分割することができる。
【0065】
また、本明細書記載のマイクロリザーバーシステムは、治療用化合物および賦形剤の放出を調節するために拡散速度調節膜を含むことができる。しかし、施用時間が短く、治療成分が速やかに放出される場合には、通常、調節膜は存在しない。
【0066】
本明細書記載の装置とともに使用するのに適したシステムの組成の一例を、以下の表2に示す。
【0067】
【表2】
基質の厚さは、約30〜約350g/m2の被覆材重量に相当するであろうが、具体的な処方設計の特性によっては、異なった値を使用してもよい。また、約50μm〜約100μmの基質の厚さが適当であろう。
【0068】
さらに、薬剤送達装置用の裏打ち層は、理想的には、薬剤および選択された非親水性溶媒(例えば、オレイルアルコール)に関して、比較的不透過性または不活性であるべきである。一つの適当な裏打ち層はポリエステルであるが、その他の材料、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合体およびポリアミドも適当である。実際には、厚さ約51μmのポリエステルフィルムが非常に適していることが証明されている。基質の裏打ち層への粘着力を増やすためには、裏打ち層の基質との接触面をシリコン処理することが有利である。ポリアクリル酸から作られる接着剤は、そのようなシリコン処理されたフィルムに付着しないか、接着力が比較的弱いが、ポリシロキサンから作られる接着剤は、シリコン処理されたフィルムと化学的に類似しているため、比較的十分に接着する。
【0069】
また、薬剤送達装置は、典型的には保護フィルムを含み、保存期間中、装置を保護するが、使用前に除去される。ポリエステルフィルムはいったん表面処理されると、ポリシロキサンから作られる接着剤を付着させないため、典型的には、ポリエステルフィルムを使用する。適当なフィルムはいくつかの製造業者から供給されており、当業者に知られている。
【0070】
II.装置の作製法
ここで、局所的薬剤送達装置の作製方法を説明する。典型的には、この方法は、治療用化合物を完全または部分的に非親水性溶媒に溶解させること、この溶液をポリシロキサンまたは基質成分の溶液に添加すること、および攪拌して分散させること、得られた分散液を、除去可能な保護層の上にコーティングして、ポリシロキサンの溶媒を温度を上げながら除去すること、および乾燥した層の上に裏打ち層をラミネート加工することを含む。
【0071】
接着剤に適した溶媒は、例えば、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンなどの石油エーテルまたはアルカン、または酢酸エチルである。もし、適当な薬剤、例えば、エチルセルロースまたはヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体を添加することによって、治療用化合物溶液の粘性が増大するならば、治療用化合物溶液の分散液をより容易に実現することができる。そして、接着剤の溶媒を除去した後、望ましい厚さの基質層を提供する厚さにして、除去可能な保護フィルムの上に、この分散物をコーティングする。次に、裏打ち層を用いて、乾燥した層をラミネート加工し、こうして完成した薬剤送達装置のラミネートを得ることができる。
【0072】
このラミネートから薬剤送達装置を望ましい形状およびサイズに打ち抜き、一次包装用の適当な小袋に詰めることができる。一次包装物は、米国特許第RE37,934号に記載されているように、紙/糊/アルミニウム箔/糊/登録商標Barexからなるラミネート箔でよい。なお、この特許はその全体が参照されて本明細書に組み込まれる。登録商標Barexは、ゴム変性アクリロニトリル共重合体から作られる熱融着性ポリマーであって、薬剤送達装置の揮発性成分に対する吸収性が低いことで区別される。
【0073】
マイクロリザーバー系が、一般的には、治療用化合物の放出を調節する拡散速度調節膜を有しないため、治療用化合物を皮膚の深層へ放出するのを調節する唯一の要素は、皮膚または皮膚の最上層である角質層であろう。したがって、基質組成物の最適化は、ヒトの皮膚を用いたインビトロでの透過試験や、Venterら、2001, “A comparative study of an in situ adapted diffusion cell and an in vitro Franz diffusion cell method for transdermal absorption of doxylamine” Eur J Pharm Sci, 13:169−77に記載されているFranz拡散細胞によって行なうことができる。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、上記の薬剤送達装置を作製し使用する方法をより十分に説明するのに役立つ。当然のことながら、これらの実施例は、例示目的のためだけに提供され、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0075】
実施例1:薬剤デポーの中にカプサイシンを0.04重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
80mgのカプサイシンに対して、16.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース200mgを添加して、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4201(36.74グラム)と登録商標Bio−PSA4301(146.98グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約273.6g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0076】
実施例2:薬剤デポーの中にカプサイシンを2.0重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
4.0gのカプサイシンに対して、20.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース200mgを添加し、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4301(175.80グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約277.9g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0077】
実施例3:薬剤デポーの中にカプサイシンを4重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
8.0gのカプサイシンに対して、36.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース2.0gを添加し、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4301(154.0グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約218.4g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0078】
実施例4:薬剤デポーの中にカプサイシンを6重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
12.0gのカプサイシンに対して、40.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース4.0gを添加し、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4301(144.0グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約245.0g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0079】
実施例5:薬剤デポーの中にカプサイシンを8重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
16.0gのカプサイシンに対して、44.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース4.0gを添加し、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4301(136.0グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約352.9g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0080】
実施例6:薬剤デポーの中にカプサイシンを10重量%含むマイクロリザーバー型装置の調製法
20.0gのカプサイシンに対して、50.0グラムのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース4.0gを添加し、十分に混合してから、2時間放置した。登録商標Bio−PSA4301(126.0グラム)を加えて、オレイルアルコール、カプサイシン、およびエチルセルロースのゲル状混合物が、微細な小球として接着剤の中に均等に分散されるまで、この接着剤塊を勢いよくかき混ぜた。続いて、得られた接着性基質を、剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022の上にコーティングしてから、35℃と40℃の間の温度で、溶媒のn−ヘプタンを温風乾燥させた。n−ヘプタン除去後の被覆材重量は約81.8g/m2であった。次に、乾燥したフィルムを、ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733によってラミネート加工してから、完成した薬剤送達装置(5cm×5cm)を打ち抜いた。次に、打ち出された送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0081】
実施例7:薬剤デポーの中にカプサイシンを0.04重量%含む一体型装置の調製法
1.2mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1999mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0082】
実施例8:薬剤デポーの中にカプサイシンを2重量%含む一体型装置の調製法
60mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1940mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0083】
実施例9:薬剤デポーの中にカプサイシンを4重量%含む一体型装置の調製法
120mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1880mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0084】
実施例10:薬剤デポーの中にカプサイシンを6重量%含む一体型装置の調製法
180mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1820mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0085】
実施例11:薬剤デポーの中にカプサイシンを8重量%含む一体型装置の調製法
240mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1760mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0086】
実施例12:薬剤デポーの中にカプサイシンを10重量%含む一体型装置の調製法
300mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、ゼラチン1700mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0087】
実施例13:薬剤デポーの中にカプサイシンを4重量%含む一体型装置の調製法
120mgのカプサイシンに対して、1000mgのオレイルアルコールを添加して、これらの成分を混合した。次に、エチルセルロース1880mgを添加して、十分に混合した。ポリエステルの裏打ち層である商標3M商標Scotchpak9733を、商標3M商標CoTran9712と熱融着させて、一端が開いた5cm×5cmのポーチを作った。このポリエステルの裏打ち層が、全ての側でポーチの境界から約1cmはみ出していた。上記の混合物をポーチに詰めてから巻いて、ポーチの端まで延ばして均一な厚さの層を作った。そして、開いた側を熱融着した。次に、ポーチの外側まではみ出しているポリエステルの裏打ち層を、登録商標Bio−PSA4201の薄層でコーティングし、その後、これを35℃と40℃の間の温度で温風乾燥させた。次に、乾燥した接着フィルムを、6cm×6cmの剥離ライナーである商標3M商標Scotchpak1022を用いてラミネート加工した。そして、完成した薬剤送達装置を、一次包装用ラミネート箔でできた小袋の中に密封した。
【0088】
実施例14:インビトロ溶解アッセイ法
マイクロリザーバー型送達装置。実施例1〜6に記載したパッチから剥離ライナーを除去して、両面接着テープを用いて、ガラス板(6cm×6cm)の上に載せ、テープの一方の側がガラス板に付着し、もう一方の側がパッチの裏打ち層に付着するようにした。パッチが容器に触れることなく水性溶媒に曝されるよう、0.1%w/vアジ化ナトリウムを含む脱イオン水200mLに6枚のガラス板を浸した。容器にかたく栓をして、これを振とう機の上に載せた。振とうは穏やかな横方向の振動であって、タンブリングを含まなかった。溶液のサンプルを、30分、1時間、3時間、および18時間目に採取し(サンプルサイズ200μL)、カプサイシン含有量についてHPLCで解析した。カプサイシン放出の結果を下記の表3に示す。
【0089】
【表3】
図6は、放出されるカプサイシンの量が、時間およびパッチ内のカプサイシン濃度に対して直線的に変化することを示している。10% w/wパッチから放出されるカプサイシンの量が、8% w/wパッチに比べて低いのは、10% w/wパッチ上のコーティングが相対的に薄いせいであることに留意されたい(上記実施例5と6を比較されたい)。
【0090】
一体型送達装置。実施例7〜12に記載したパッチから剥離ライナーを除去して、両面接着テープを用いて、ガラス板(6cm×6cm)の上に載せ、テープの一方の側がガラス板に付着し、もう一方の側がパッチの裏打ち層に付着するようにした。パッチが容器に触れることなく水性溶媒に曝されるよう、0.1%w/vアジ化ナトリウムを含む脱イオン水200mLに6枚のガラス板を浸した。容器にかたく栓をして、これを振とう機の上に載せた。振とうは穏やかな横方向の振動であって、タンブリングを含まなかった。溶液のサンプルを、30分、1時間、3時間、および24時間目に採取し(サンプルサイズ200μL)、カプサイシン含有量についてHPLCで解析した。カプサイシン放出の結果を下記の表4に示す。
【0091】
【表4】
一体型パッチの場合にも、図7は、放出されるカプサイシンの量が、時間およびパッチ内のカプサイシン濃度に対して直線的に変化することを示している。マイクロリザーバー型パッチに比べて、一体型パッチから放出されるカプサイシンの量が低いのは、拡散速度調節膜が存在するために予想されたとおりであることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】不透過性の裏打ち層1、マイクロリザーバー液滴2の形で分散している活性薬剤を含む自己接着性基質、および使用前に除去する保護フィルム3を含むマイクロリザーバー型の薬剤送達装置を示している。
【図2】不透過性の裏打ち層1、有効薬剤が、ゲル様塊または固体塊2を形成するポリマー基質の中に溶解および/または分散させている有効薬剤デポーとして働く一体型基質、接着層4、および使用前に除去する保護フィルム3を含む一体型の薬剤送達装置を示している。2と4の間に随意で拡散速度調節膜(図示せず)をもつことも可能である。
【図3】不透過性の裏打ち層1、有効薬剤が、ゲル様塊または固体塊2を形成するポリマー基質の中に溶解および/または分散させている有効薬剤デポーとして働く一体型基質、拡散速度調節膜5、拡散速度調節膜が一方の側で皮膚の表面に直接接触し、もう一方の側で一体型基質と直接接触できるようにした周縁部の接着層4、および使用前に除去する保護フィルム3を含む一体型の薬剤送達装置を示している。不透過性の裏打ち層1が、拡散速度調節膜5と熱融着されて、一体型基質が密封されているポケットを作り出していることに注意されたい。
【図4】不透過性の裏打ち層1、有効薬剤を完全または部分的に浸透促進剤またはその混合液2に溶解させている有効薬剤デポーとして働く液体リザーバー、拡散速度調節膜5、接着層4、および使用前に除去する保護フィルム3を含む液体リザーバー型の薬剤送達装置を示している。
【図5】不透過性の裏打ち層1、有効薬剤を完全または部分的に浸透促進剤またはその混合液2に溶解させている有効薬剤デポーとして働く液体リザーバー、拡散速度調節膜5、拡散速度調節膜が一方の側で皮膚の表面に直接接触し、もう一方の側で一体型基質と直接接触できるようにした周縁部の接着層4、および使用前に除去する保護フィルム3を含む液体リザーバー型の薬剤送達装置を示している。ここでも、不透過性の裏打ち層1が、拡散速度調節膜5と熱融着されて、有効薬剤を含む液体リザーバー2が密封されているポケットを作り出していることに注意されたい。
【図6】カプサイシンが、6個のマイクロリザーバーパッチ剤から18時間にわたって脱イオン水の中にインビトロで放出されることを示している。各パッチ剤は、異なったカプサイシン濃度を含んでいた。以下のカプサイシン濃度(薬剤デポーの重量で)をテストした:0.04%、2%、4%、6%、8%、および10%。
【図7】カプサイシンが、6個の一体型パッチ剤から24時間にわたって脱イオン水の中にインビトロで放出されることを示している。各パッチ剤は、異なったカプサイシン濃度を含んでいた。以下のカプサイシン濃度(薬剤デポーの重量で)をテストした:0.04%、2%、4%、6%、8%、および10%。
【図8】早期の時点(すなわち、30分後、1時間後、および3時間後)における曲線の形をより詳しく図示するために図7の一部を選択した図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)治療上有効な量のTRPV1アゴニストを有する薬剤デポー;
b)ClogP値が1.0よりも大きい非親水性浸透促進剤;および
c)密封裏打ち層
を含む薬剤送達装置。
【請求項2】
有効薬剤が、カプサイシン、カプサイシノイド、カプサイシン類似化合物、カプサイシン誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記TRPV1アゴニストがカプサイシンを含む、請求項2記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記TRPV1アゴニストがカプサイシノイドを含む、請求項2記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記TRPV1アゴニストがカプサイシン類似化合物を含む、請求項2記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記TRPV1アゴニストがカプサイシン誘導体を含む、請求項2記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記TRPV1アゴニストが、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約30%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記TRPV1アゴニストが、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約20%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記TRPV1アゴニストが、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約10%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記TRPV1アゴニストが、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約8%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記TRPV1アゴニストが前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約6%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記TRPV1アゴニストが前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約5%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記TRPV1アゴニストが前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約4%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
前記TRPV1アゴニストが前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約2%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
前記TRPV1アゴニストが前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約0.04%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項16】
前記非親水性浸透促進剤が、1−メントン、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルイソソルビド、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、酪酸イソプロピル、ヘキサン酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸メチル、吉草酸メチル、オレイン酸エチル、d−ピペリトン、d−プロゲン(pulogene)、n−ヘキサン、クエン酸、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、メタノール、ブタノール、tert−ブタノール、オクタノール、ミリスチルアルコール、メチル・ノネノイル(nonenoyl)アルコール、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸イソプロピル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項17】
前記非親水性浸透促進剤がオレイルアルコールを含む、請求項16記載の薬剤送達装置。
【請求項18】
前記非親水性浸透促進剤が1−メントンを含む、請求項16記載の薬剤送達装置。
【請求項19】
前記非親水性浸透促進剤のClogP値が2.0以上である、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項20】
前記非親水性浸透促進剤のClogP値が3.0以上である、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項21】
前記非親水性浸透促進剤のClogP値が5.0以上である、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項22】
前記非親水性浸透促進剤のClogP値が7.0以上である、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項23】
前記非親水性浸透促進剤のClogP値が9.0以上である、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項24】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約35%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項25】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約30%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項26】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約25%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項27】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約20%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項28】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約15%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項29】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約10%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項30】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約5%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項31】
前記TRPV1アゴニストが、前記薬剤デポーの中に溶解、部分溶解、または分散している、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項32】
前記薬剤デポーがポリマー基質を含む、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項33】
前記ポリマー基質が接着性基質を含む、請求項32記載の薬剤送達装置。
【請求項34】
前記ポリマー基質が、ゼラチン、ポリアクリル酸塩、ポリイソブチレン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、およびこれらのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される、請求項32記載の薬剤送達装置。
【請求項35】
前記薬剤デポーが、マイクロリザーバーの中に溶解または部分溶解しているTRPV1アゴニストを含む、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項36】
前記薬剤デポーが、液体リザーバーの中にTRPV1アゴニストを含む、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項37】
拡散速度調節膜をさらに含む、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項38】
痛みまたは皮膚症状を治療する方法であって、
a)以下のものを含む薬剤送達装置を、被験体の皮膚または粘膜に施用すること:
a)TRPV1アゴニスト;
b)ClogP値が1よりも大きい非親水性浸透促進剤;および
c)密封性裏打ち層、および
b)該痛みまたは皮膚症状を緩和するために、治療上有効な量のTRPV1アゴニストを送達すること
を含む方法。
【請求項39】
前記TRPV1アゴニストがカプサイシンを含む、請求項38記載の方法。
【請求項1】
a)治療上有効な量のTRPV1アゴニストを有する薬剤デポー;
b)ClogP値が1.0よりも大きい非親水性浸透促進剤;および
c)密封裏打ち層
を含む薬剤送達装置。
【請求項2】
有効薬剤が、カプサイシン、カプサイシノイド、カプサイシン類似化合物、カプサイシン誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記TRPV1アゴニストがカプサイシンを含む、請求項2記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記TRPV1アゴニストがカプサイシノイドを含む、請求項2記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記TRPV1アゴニストがカプサイシン類似化合物を含む、請求項2記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記TRPV1アゴニストがカプサイシン誘導体を含む、請求項2記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記TRPV1アゴニストが、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約30%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記TRPV1アゴニストが、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約20%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記TRPV1アゴニストが、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約10%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記TRPV1アゴニストが、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約8%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記TRPV1アゴニストが前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約6%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記TRPV1アゴニストが前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約5%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記TRPV1アゴニストが前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約4%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項14】
前記TRPV1アゴニストが前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約2%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項15】
前記TRPV1アゴニストが前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約0.04%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項16】
前記非親水性浸透促進剤が、1−メントン、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルイソソルビド、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、酪酸イソプロピル、ヘキサン酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸メチル、吉草酸メチル、オレイン酸エチル、d−ピペリトン、d−プロゲン(pulogene)、n−ヘキサン、クエン酸、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、メタノール、ブタノール、tert−ブタノール、オクタノール、ミリスチルアルコール、メチル・ノネノイル(nonenoyl)アルコール、セチルアルコール、セテアリルアルコール、ステアリルアルコール、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸イソプロピル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項17】
前記非親水性浸透促進剤がオレイルアルコールを含む、請求項16記載の薬剤送達装置。
【請求項18】
前記非親水性浸透促進剤が1−メントンを含む、請求項16記載の薬剤送達装置。
【請求項19】
前記非親水性浸透促進剤のClogP値が2.0以上である、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項20】
前記非親水性浸透促進剤のClogP値が3.0以上である、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項21】
前記非親水性浸透促進剤のClogP値が5.0以上である、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項22】
前記非親水性浸透促進剤のClogP値が7.0以上である、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項23】
前記非親水性浸透促進剤のClogP値が9.0以上である、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項24】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約35%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項25】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約30%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項26】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約25%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項27】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約20%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項28】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約15%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項29】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約10%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項30】
前記非親水性浸透促進剤が、前記薬剤デポーのうち、重量で少なくとも約5%を構成する、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項31】
前記TRPV1アゴニストが、前記薬剤デポーの中に溶解、部分溶解、または分散している、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項32】
前記薬剤デポーがポリマー基質を含む、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項33】
前記ポリマー基質が接着性基質を含む、請求項32記載の薬剤送達装置。
【請求項34】
前記ポリマー基質が、ゼラチン、ポリアクリル酸塩、ポリイソブチレン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、およびこれらのコポリマーおよび混合物からなる群から選択される、請求項32記載の薬剤送達装置。
【請求項35】
前記薬剤デポーが、マイクロリザーバーの中に溶解または部分溶解しているTRPV1アゴニストを含む、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項36】
前記薬剤デポーが、液体リザーバーの中にTRPV1アゴニストを含む、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項37】
拡散速度調節膜をさらに含む、請求項1記載の薬剤送達装置。
【請求項38】
痛みまたは皮膚症状を治療する方法であって、
a)以下のものを含む薬剤送達装置を、被験体の皮膚または粘膜に施用すること:
a)TRPV1アゴニスト;
b)ClogP値が1よりも大きい非親水性浸透促進剤;および
c)密封性裏打ち層、および
b)該痛みまたは皮膚症状を緩和するために、治療上有効な量のTRPV1アゴニストを送達すること
を含む方法。
【請求項39】
前記TRPV1アゴニストがカプサイシンを含む、請求項38記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2008−530139(P2008−530139A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−555375(P2007−555375)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/005453
【国際公開番号】WO2006/089012
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(505080910)ニューロジェシックス, インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/005453
【国際公開番号】WO2006/089012
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(505080910)ニューロジェシックス, インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
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