説明

TV会議システム、映像配信装置、及びデータ処理方法

【課題】階層的に符号化された映像データの特徴を用いて実行される送信データ調整によるネットワーク帯域制御技術と、送信する映像の種類を検知する画像認識技術を組み合わせ、映像端末間を中継する映像配信装置にて処理を行い、映像の種類にとって最適な解像度、フレームレート、SNRで映像データを送信する。
【解決手段】映像配信装置は、映像端末から受信され、複数の階層を含む符号化データ中の階層の一部分を復号化する部分的復号化手段と、復号化された映像データの映像の種類を判別する映像種類判別手段と、判別結果に基づいて優先させる階層を指定する優先階層指定手段と、指定された階層を優先的に残しながら符号化データに含まれる階層の一部分を取り除いた調整符号化データを生成する階層切出手段と、を備え、階層切出手段により生成された調整符号化データを配信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークによりリアルタイムで映像データや音声データを送受信するTV会議システムに関し、特に端末と端末間とを中継する映像配信装置が行う配信映像の品質調整技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
TV会議システムにおいては、映像データと音声データとをリアルタイムに送受信するため、使用するネットワークの品質が保証されていない場合には、十分な性能を発揮できないことがある。そこで、端末と端末間の通信を中継する映像配信装置は通信パケットの損失や通信遅延時間などの情報を交換し、使用しているネットワークの状態を検知する。この検知したネットワークの状態に合わせて、端末が送受信する映像の解像度、フレームレートやSNR(画質)を調整するという制御技術が考えられている。
これに対し、スケーラブル映像符号化技術を用いて送信先である各端末とネットワークの状態に合わせて映像データ量を映像配信装置で調節する技術が既に知られている。
【0003】
ここで、従来のTV会議システムについて説明する。図5は、従来のTV会議システムにおける端末と映像配信装置の構成を示す図である。図5は従来のH.264/SVC(スケーラブル映像符号化)を用いたTV会議システムにおける端末と端末間を中継する映像配信装置の構成を表している。
TV会議システム100は、各拠点A、Bに夫々設置されて、映像データ等の送受信を行う端末110(110a、110b)と、TV会議をしている際の自拠点の映像を撮影するカメラ121(121a、121b)と、TV会議をしている他拠点の映像を表示するディスプレイ123(123a、123b)と、夫々の端末110aと110bを中継する映像配信装置130と、を備えている。
端末110は、映像データをH.264/SVC方式にて圧縮符号化するH.264/SVCエンコーダー111と、H.264/SVC方式にて圧縮符号化された映像データを復号化するH.264/SVCデコーダー113と、を備えている。端末110は、映像配信装置130との間で映像データ等の通信を行う。
カメラ121は、TV会議をしている際の映像を撮影する装置である。ディスプレイ123は他拠点の映像を表示する装置である。カメラ121とディスプレイ123は、夫々端末110に接続されている。
映像配信装置130は、映像データの中継と送信データ量の調整を行う装置であり、ネットワーク状態・受信端末状態検知部131と、映像データのレイヤー切出部133(133a、133b)と、を備えている。
【0004】
以上のように構成されたTV会議システム100の動作について、端末110aから端末110bに映像データが送信される場合の例により説明する。
端末110aのH.264/SVCエンコーダー111aは、カメラ121aで撮影された自拠点の映像をスケーラブル圧縮符号化し、映像配信装置130に送信する。ここでH.264/SVCを用いた映像符号化では、空間(解像度)、時間(フレームレート)、画質(SNR)の情報を粗い情報から細かい情報へと階層化(レイヤー化)して符号化することにより、解像度、フレームレート、SNRのスケーラビリティを実現することが知られている。以降、各レイヤーはそれぞれ、空間レイヤー(解像度)、時間レイヤー(フレームレート)、画質レイヤー(SNR)と表現する。
映像配信装置130は端末110bと通信を行い、ネットワーク状態・受信端末状態検知部131にて、受信側端末との間のネットワークNの状態(使用可能な通信帯域、パケット損失率など)と受信側の端末110bの状態(処理性能、現在の稼働率など)を検知し、検知した結果に応じて、端末110aから受信した映像データの調整をする。この調整の際にはレイヤー切出部133aを用いて、受信した映像データからレイヤーを切り出し、受信側端末である端末110bに送信する。
端末110bは、映像配信装置130から受信した映像データをH.264/SVCデコーダー113bによって復号化し、ディスプレイ123bに表示する。
これを拠点Aと拠点Bとの間で双方向に行うことにより、互いの映像を送受信する。
【0005】
図6は、従来のTV会議システムにおける映像データの処理フロー図である。従来のH.264/SVCを用いたTV会議システムにおいて、映像データは以下のように処理される。なお、端末110aを送信側端末とし、端末110bを受信側端末として説明する。
(ステップS101)送信側端末110aはカメラ121aにて撮影した映像を、H.264/SVCエンコーダー111aにて圧縮符号化する。
(ステップS102)送信側端末110aは、圧縮符号化された映像データを映像配信装置130に送信する。
(ステップS103)映像配信装置130は、送信側端末110aから映像データを受信する。
(ステップS104)ネットワーク状態・受信端末状態検知部131は、受信側端末110bの状態、ネットワークNの状態から送信可能なデータ量を検知する。
(ステップS105)レイヤー切出部133aは、受信した映像データのレイヤーを切り出し、ステップS104で検知した送信可能なデータ量に調整する。
(ステップS106)映像配信装置130は、受信側端末110bに映像データを送信する。
(ステップS107)受信側端末110bは映像配信装置130から映像データを受信する。
(ステップS108)H.264/SVCデコーダー113bは、受信した映像データをH.264/SVC方式にて復号化する。
(ステップS109)受信側端末110bは、復号化した映像データをディスプレイ123bに表示する。
以上のようなステップでTV会議の映像配信を実施している。
【0006】
上記と同様の技術として特許文献1には、音声品質の劣化や遅延を抑える目的で、映像音声制御装置がネットワークの状態や各クライアントのCPUの状態の変化によって、クライアントまたは各映像配信装置に対してビットレート、フレームレート、解像度およびフレーム間引きの少なくとも1つを含む映像の品質を調整するように制御する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら従来の制御技術では、映像の種類に関係なく、ネットワークの状態や端末の状態に基づいて、映像配信装置が送信する映像データの解像度、フレームレート、SNRを調節する。従って、解像度が重要な映像であっても解像度を下げて、またフレームレートが重要ではないにもかかわらずフレームレートはそのままにして送信されるといったような、映像コンテンツに対して最適ではない調整が行われるという問題があった。
たとえば、図5、6に示したTV会議システムにおいては、レイヤー切り出しによる映像データ量の調整の際に、その映像データの種類を考慮してないため、映像コンテンツに対して最適ではない調整が行われるという問題がある。上記問題は、特許文献1においても、解決されていない。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、階層的に符号化された映像データの特徴を用いて実行される送信データ調整による帯域制御技術と、送信する映像の種類を検知する画像認識技術を組み合わせ、端末間を中継する映像配信装置にて処理を行うことにより、端末の構成を変えずに、映像の種類にとって最適な解像度、フレームレート、SNRで映像データを送信することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係るTV会議システムは、映像データを符号化して複数の階層が含まれる符号化データを生成する映像端末と、該映像端末から受信した前記符号化データに含まれる階層の少なくとも一部分を復号化する部分的復号化手段と、該部分的復号化手段により復号化された映像データの映像の種類を判別する映像種類判別手段と、該映像種類判別手段による判別結果に基づいて、前記符号化データに含まれる階層の中で優先させる階層を指定する優先階層指定手段と、該優先階層指定手段により指定された階層を優先的に残しながら、前記符号化データに含まれる階層の一部分を取り除いた調整符号化データを生成する階層切出手段と、を備え、該階層切出手段により生成された前記調整符号化データを配信する映像配信装置と、が接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、階層的に符号化された映像データの特徴を用いて実行される送信データ調整による帯域制御技術と、送信する映像の種類を検知する画像認識技術を組み合わせ、端末間を中継する映像配信装置にて処理を行うことにより、端末の構成を変えずに、映像の種類にとって最適な解像度、フレームレート、SNRで映像データを送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1実施形態に係るTV会議システムを示した概略構成図である。
【図2】本発明の1実施形態に係るTV会議システムの端末と映像配信装置の具体的な内容を示した概略構成図である。
【図3】本発明の1実施形態に係る符号化映像データを示す模式図である。
【図4】本発明の1実施形態に係るTV会議システムにおける映像データの処理フロー図である。
【図5】従来のTV会議システムにおける端末と映像配信装置の構成を示す図である。
【図6】従来のTV会議システムにおける映像データの処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態を説明する。本発明は、TV会議システムのようなリアルタイムで映像を送受信するシステムにおいて、端末や端末間を中継する映像配信装置が行う送信映像の調整に際して、以下の特徴を有する。
要するに、端末は従来通りの構成でスケーラブルにエンコードされた映像データを、端末間を中継する映像配信装置に送信する。映像配信装置ではスケーラブルにエンコードされた映像データのうち空間レイヤーの低解像度側のレイヤーをデコードし、デコードされた映像から映像の種類を検知する。映像配信装置は検知された映像の種類から現在の映像コンテンツにとって解像度、フレームレート、又は画質のいずれが重要かを判断する。映像配信装置は従来通りの方法で各受信端末のネットワーク状態を検知しており、送信可能な帯域に合わせて映像データ量を調整するが、上記の判断結果に応じて解像度、フレームレート、画質を優先的に残してデータ量を調整し、各端末に送信することが特徴になっている。
上記記載の本発明の特徴について、以下、図面を用いて詳細に解説する。
【0012】
図1は、本発明の1実施形態に係るTV会議システムを示した概略構成図である。TV会議システム1は、各拠点A、Bに夫々設置されて、映像データ等の送受信を行う端末10(10a、10b)と、TV会議をしている際の自拠点の映像を撮影するカメラ21(21a、21b)と、TV会議をしている他拠点の映像を表示するディスプレイ23(23a、23b)と、夫々の端末10a、10bを中継する映像配信装置30と、を備えている。また、各端末10a、10bと映像配信装置30は、互いにネットワークNを介して接続されている。
以下の説明において拠点Aの装置と拠点Bの装置を区別しないときは、「端末10」のようにアルファベットの小文字符号を省略して記載する。
【0013】
図2は、本発明の1実施形態に係るTV会議システムの端末と映像配信装置の具体的な内容を示した概略構成図である。図2では、本発明のTV会議システムにおける端末と端末間を中継する映像配信装置の構成を表している。この構成の特徴は、図5に示した従来の構成に加え、映像配信装置に従来周知のH.264/SVCデコーダー35、映像種類判別部37と優先レイヤー指定部39を備えていることである。
図2に示すように、拠点A、Bに夫々設置された端末は従来と同様の構成(図5参照)を有している。すなわち、端末10は、映像データをH.264/SVC方式にて圧縮符号化するH.264/SVCエンコーダー11(符号化手段)と、H.264/SVC方式にて圧縮符号化された映像データを復号化するH.264/SVCデコーダー13(復号化手段)と、を備えている。端末10は、映像配信装置30との間で映像データ等の通信を行う。カメラ21は、TV会議をしている際の映像を撮影する装置である。ディスプレイ23は他拠点の映像を表示する装置である。カメラ21とディスプレイ23は、夫々端末10に接続されている。
端末10のH.264/SVCエンコーダー11は、カメラ21で撮影された自拠点の映像をスケーラブル圧縮符号化してスケーラブル符号化データを生成し、映像配信装置30に送信する。ここでH.264/SVCを用いた映像符号化では、空間(解像度)、時間(フレームレート)、画質(SNR)の情報を粗い情報から細かい情報へと階層化(レイヤー化)して符号化することにより、解像度、フレームレート、SNRのスケーラビリティを実現することが知られている。なお、「レイヤー」と「階層」は同義である。以降、各レイヤーはそれぞれ、空間レイヤー(解像度)、時間レイヤー(フレームレート)、画質レイヤー(SNR)と表現する。
【0014】
映像配信装置30は、映像データの中継と送信データ量の調整を行う装置であり、従来と同様の構成として、ネットワーク状態・受信端末状態検知部31と、映像データのレイヤー切出部33(33a、33b:階層切出手段)と、を備えている。さらに、映像配信装置30は、H.264/SVCデコーダー35(35a、35b:部分的復号化手段)と、映像種類判別部37(37a、37b)と優先レイヤー指定部39(39a、39b:優先階層指定手段)とを備えている。
ネットワーク状態・受信端末状態検知部31は、受信側となる端末10と通信を行い、受信側端末との間に介在するネットワークNの状態(使用可能な通信帯域、パケット損失率など)と受信側の端末10の状態(処理性能、現在の稼働率など)を検知し、受信側の端末10に対して送信することができるデータ量を算出する。
H.264/SVCデコーダー35は、端末10から受信したスケーラブル符号化データを受信し、空間レイヤーの下層側レイヤー(低解像度側のレイヤー)のみを復号化して低解像度の映像データを得る。処理の詳細については後述する。映像種類判別部37は、この低解像度の映像データから、映像の種類を判別する。優先レイヤー指定部39は、判別された映像の種類に基づいて、映像データのうち空間レイヤー、時間レイヤー、画質レイヤーのいずれを優先させるかを指定する。
レイヤー切出部33は、ネットワーク状態・受信端末状態検知部31により算出された送信データ量と、優先レイヤー指定部39により指定された優先レイヤーとに基づいて、送信側の端末10から受信したスケーラブル符号化データに含まれるレイヤーの一部分を取り除いて、データ量が調整された調整符号化データを生成する。そして、受信側の端末10に送信する。
【0015】
H.264/SVCデコーダー35によるスケーラブル符号化データの復号化について説明する。スケーラブル符号化とは、信号を粗い情報から細かい情報へと階層的に符号化する技術の総称である。圧縮符号化されたデータがスケーラブルであるとは、復号したときの画像の品質を再符号化することなく、向上させたり、低下させたりすることが可能であることを意味する。スケーラブル符号化された映像データでは、解像度の階層として空間レイヤー、フレームレートの階層として時間レイヤー、画質として画質レイヤーというふうに、それぞれ複数の階層を持つ。この複数の階層のうち、どの階層まで復号するかによって、映像の品質を向上させたり、低下させたりすることが可能である。図3は、本発明の1実施形態に係る符号化映像データを示す模式図である。図3には、例として空間レイヤー3階層、画質レイヤー3階層の符号化映像データの場合を示している。
端末10から送信されたスケーラブル符号化データ40を映像配信装置30が受信した後、H.264/SVCデコーダー35はスケーラブル符号化データ40の復号化を行う。ここで、H.264/SVCデコーダー35は、スケーラブル符号化データ40に含まれるレイヤーの少なくとも一部分を復号化する。「一部分を復号化する」とは、映像種類判別部37において正確に映像データの種類を判別可能な情報が得られる程度に、幾つかのレイヤーを復号化するということである。具体的には、H.264/SVCデコーダー35は、スケーラブル符号化データ40に含まれる空間レイヤーの最下層レイヤーに含まれる映像データを復号化する。なお、正確に映像データの種類を判別するにあたって一定の画質が必要であることから、H.264/SVCデコーダー35は、最下層の空間レイヤーにある全ての画質レイヤーを復号化する。
【0016】
映像種類判別部37は、復号化された映像データを用いて映像の種類の判別を行う。この結果に応じて優先レイヤー指定部39が、解像度、画質、又はフレームレートのいずれが映像にとって重要であるものかを特定する。映像種類の判別結果の一例として、
(A1)映像種類判別部37において、映像の大きさが必要であると判定された時には、優先レイヤー指定部39で解像度を優先するように指定する。
(A2)映像種類判別部37において、映像に文字情報など精密なものが映っていると判定された時には、優先レイヤー指定部39で画質を優先するように指定する。
(A3)映像種類判別部37において、映像内に動き(変化)が多い時には、優先レイヤー指定部39でフレームレートを優先するように指定する。
が挙げられる。そして優先レイヤー指定部39は、レイヤー切出部33に優先するべきレイヤー(優先レイヤー)を切り出さないように指示を行う。すなわち、
【0017】
(B1)解像度を優先させる場合、優先レイヤー指定部39は「解像度レイヤーを切り出さない」という指示をレイヤー切出部33に行う。
(B2)画質を優先させる場合、優先レイヤー指定部39は「画質レイヤーを切り出さない」という指示をレイヤー切出部33に行う。
(B3)フレームレートを優先させる場合、優先レイヤー指定部39は「時間レイヤーを切り出さない」という指示をレイヤー切出部33に行う。
優先レイヤー指定部39によって指定された優先レイヤーと、ネットワーク状態・受信端末状態検知部31によって検知された送信可能データ量とに基づいて、レイヤー切出部33はレイヤーの切り出しによる送信データ量調整を行う。すなわち、レイヤー切出部33は、スケーラブル符号化データに含まれるレイヤーのうち、指定された優先レイヤー以外のレイヤーを取り除くことにより、送信データ量の調整を行う。
なお、映像種類判別部37では、非特許文献1に記載されたような既存の顔検出技術などの画像認識技術を用いて、撮影した映像データの種類を判別する。例えば、顔認識技術を用いて、顔が認識されれば、映像内に人物がいると判断できるため、動きのある映像だということが分かる。このときには、優先レイヤー指定部39は、フレームレートが重要であると判断し、優先的に時間レイヤーを残すようにレイヤー切出部33に指示する。逆に、顔が検出されなければ、TV会議の場合、フレームレートよりも解像度、又は画質の方が重要であると判断し、優先的に空間、又は画質レイヤーを残すようにレイヤー切出部33に指示する。なお、上記方式により映像データの種類を判別する場合、1フレーム分の映像データ(画像データ)があれば、映像種類の判別が可能である。
【0018】
上述のTV会議システムにおける処理の流れについて説明する。図4は、本発明の1実施形態に係るTV会議システムにおける映像データの処理フロー図である。図示するフローは、映像種類判別部37において人物検出技術を用いて映像種類を判別する場合の処理フローである。以下、説明の簡略化のため、端末10aを送信端末とし、端末10bを受信端末として説明する。もちろん実際には、各端末10a、10bが夫々送受信端末として機能し、また、3つ以上の端末10が映像配信装置30に接続されていても構わない。
(ステップS1)送信側端末10aでは、カメラ21aにて撮影した映像データを、H.264/SVCエンコーダー11aがスケーラブル圧縮符号化してスケーラブル符号化データを生成する。
(ステップS2)送信側端末10aは、スケーラブル符号化データを映像配信装置30に送信する。
(ステップS3)映像配信装置30は、送信側端末10aからスケーラブル符号化データを受信する。
(ステップS4)ネットワーク状態・受信端末状態検知部31は、受信側端末10bの状態、ネットワークNの状態(使用可能な通信帯域、パケット損失率など)から送信可能なデータ量を算出する。
(ステップS5)H.264/SVCデコーダー35は、スケーラブル符号化データの最下位の解像度レイヤーのみを復号化する。
(ステップS6)映像種類判別部37は、部分的に復号化された映像データを基に映像内に人がいるかどうかを判別する。
【0019】
(ステップS7)映像種類判別部37にて人が検知された場合(ステップS6にてYes)、優先レイヤー指定部39は、時間レイヤーを優先的に残すようにレイヤー切出部33に指示する。
(ステップS8)レイヤー切出部33は、時間レイヤーを優先的に残しつつ、他のレイヤーを切り出すことにより、ネットワーク状態・受信端末状態検知部31(ステップS4)にて算出されたデータ量に調節した調整符号化データを生成する。
(ステップS9)映像種類判別部37にて人が検知されなかった場合(ステップS6にてNo)、優先レイヤー指定部39は、空間レイヤーを優先的に残すようにレイヤー切出部33に指示する。
(ステップS10)レイヤー切出部33は、空間レイヤーを優先的に残しつつ、他のレイヤーを切り出すことにより、ネットワーク状態・受信端末状態検知部31(ステップS4)にて算出されたデータ量に調節した調整符号化データを生成する。
(ステップS11)映像配信装置30は受信側端末10bに調整符号化データを送信する。
(ステップS12)受信側端末10bは映像配信装置30から調整符号化データを受信する。
(ステップS13)H.264/SVCデコーダー13bは、調整符号化データを復号化して映像データを得る。
(ステップS14)復号化された映像データをディスプレイ23bに表示する。
【0020】
本発明においては、以上の処理ステップでTV会議の映像配信を実施できる。
この実施例では、映像内の人物を認識する画像認識技術を用いて、映像種類判別部37にて映像の種類を検知しているが、撮影する状況、目的に合わせて他の画像認識技術に組み替えることで、映像種類判別部37において様々な映像の種類を検知することが可能である。
このような構成において映像配信装置は、ネットワークの状態だけではなく撮影した映像の種類を考慮して送信データ量を調整するので、撮影している映像の目的に合った最適な映像データの調整を行うことができる。端末側のH.264/SVCエンコーダーは、映像の種類に合わせてエンコードパラメータの調整を行う必要がなく、送信可能な範囲で高品質に映像を符号化しておけばよい上に、端末の構成は従来と同様で済むため、従来の端末を継続的に利用しても今回の発明の効果を得られる。また、演算能力の高い映像配信装置側に最適にデータ量の調整を行う処理を任せることができるので、端末コストを少なくできる利点もある。
【0021】
このように本発明においては、端末は従来通りの構成でスケーラブルにエンコードされた映像データを、端末間を中継する映像配信装置に送信する。映像配信装置ではスケーラブルにエンコードされた映像データのうち、空間レイヤーの低解度側のいくつかのレイヤーのみをデコードし、デコードされた映像から映像の種類を検知する。映像配信装置は検知された映像の種類から現在の映像コンテンツにとって解像度とフレームレートのどちらが重要かを判断する。映像配信装置は従来通りの方法で各受信端末のネットワーク状態を検知しており、送信可能な帯域に合わせて、映像データ量を調整するが、このときに映像の種類に応じて解像度、フレームレート、SNRのいずれかを優先的に残してデータ量に調整し、各端末に送信する。
従って、本発明によれば、スケーラブルに符号化された映像データの特徴を用いて実行される送信データ調整によるネットワーク帯域制御技術と、送信する映像の種類を検知する画像認識技術を組み合わせ、端末間を中継する映像配信装置にて処理を行うことにより、端末の構成を変えずに、映像の種類にとって最適な解像度、フレームレート、SNRで映像データを送信することができる。
【符号の説明】
【0022】
1…TV会議システム、10…端末、11…H.264/SVCエンコーダー、13…H.264/SVCデコーダー、21…カメラ、23…ディスプレイ、30…映像配信装置、31…ネットワーク状態・受信端末状態検知部、33…レイヤー切出部、35…H.264/SVCデコーダー、37…映像種類判別部、39…優先レイヤー指定部、40…スケーラブル符号化データ、100…TV会議システム、110…端末、121…カメラ、123…ディスプレイ、130…映像配信装置、131…ネットワーク状態・受信端末状態検知部、133…レイヤー切出部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2007−194823
【非特許文献】
【0024】
【非特許文献1】社団法人電子情報通信学会 信学技報PRMU2005−99(2005−10)「GMMによる肌モデルを用いた背景にロバストな人物検出」

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像データを符号化して複数の階層が含まれる符号化データを生成する映像端末と、
該映像端末から受信した前記符号化データに含まれる階層の少なくとも一部分を復号化する部分的復号化手段と、該部分的復号化手段により復号化された映像データの映像の種類を判別する映像種類判別手段と、該映像種類判別手段による判別結果に基づいて、前記符号化データに含まれる階層の中で優先させる階層を指定する優先階層指定手段と、該優先階層指定手段により指定された階層を優先的に残しながら、前記符号化データに含まれる階層の一部分を取り除いた調整符号化データを生成する階層切出手段と、を備え、該階層切出手段により生成された前記調整符号化データを配信する映像配信装置と、
が接続されていることを特徴とするTV会議システム。
【請求項2】
前記映像配信装置は、前記映像端末との間に介在するネットワークの状態を検知して該ネットワークの状態に適合する送信可能データ量を算出するネットワーク状態検知手段を備え、
前記階層切出手段は、前記ネットワーク状態検知手段により算出された前記送信可能データ量に応じてデータ量を調整した調整符号化データを生成することを特徴とする請求項1に記載のTV会議システム。
【請求項3】
前記映像配信装置は、前記調整符号化データを受信する映像端末の状態を検知して該映像端末の状態に適合する送信可能データ量を算出する受信端末状態検知手段を備え、
前記階層切出手段は、前記受信端末状態検知手段により算出された前記送信可能データ量に応じてデータ量を調整した調整符号化データを生成することを特徴とする請求項1又は2に記載のTV会議システム。
【請求項4】
前記部分的復号化手段は、前記符号化データに含まれる空間階層の下層階層を復号化することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のTV会議システム。
【請求項5】
前記優先階層指定手段は、前記符号化データに含まれる解像度階層、時間階層、又は画質階層の何れかを優先するように指示することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のTV会議システム。
【請求項6】
映像端末から受信され、複数の階層を含む符号化データ中の前記階層の少なくとも一部分を復号化する部分的復号化手段と、該部分的復号化手段により復号化された映像データの映像の種類を判別する映像種類判別手段と、該映像種類判別手段による判別結果に基づいて前記符号化データに含まれる階層の中で優先させる階層を指定する優先階層指定手段と、該優先階層指定手段により指定された階層を優先的に残しながら前記符号化データに含まれる階層の一部分を取り除いた調整符号化データを生成する階層切出手段と、を備え、該階層切出手段により生成された前記調整符号化データを配信することを特徴とする映像配信装置。
【請求項7】
複数の階層を含んだ状態にて映像端末から送信される符号化データを映像配信装置で処理するデータ処理方法であって、
前記映像端末から受信した符号化データに含まれる階層の少なくとも一部分を復号化する部分的復号化ステップと、
該部分的復号化ステップにより復号化された映像データの映像の種類を判別する映像種類判別ステップと、
該映像種類判別ステップによる判別結果に基づいて前記符号化データに含まれる階層の中で優先させる階層を指定する優先階層指定ステップと、
該優先階層指定ステップにより指定された階層を優先的に残しながら前記符号化データに含まれる階層の一部分を取り除いた調整符号化データを生成する階層切出ステップと、
を有することを特徴とするデータ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−48356(P2013−48356A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185990(P2011−185990)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】