説明

U形シール

【課題】偏芯回転運動をする被密封平面に対して密封安定性に優れたU形シールを提供する。
【解決手段】横断面形状がU形の樹脂製シール本体10と、シール本体10の凹溝11内に装入された金属製内装弾性体20と、から成るU形シールに於て、シール本体10が被密封平面21,21に接触する密封部位12,12の形状が、リップを省略して平坦面状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、U形シールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図12に示すようなU形シール41が公知である。即ち、合成樹脂製のシール本体42と、その凹溝43内に装入された金属製内装ばね44とを、備えている。本出願人は、上記図12に示したような構造のU形シール41に関して、特許文献1,2に示すような発明を過去に提案した。
上述のような従来のU形シール41は、ロッドシールやピストンシールとして、ロッド軸心と平行な方向に凹溝43が開口し、さらに、横断面三角山型のリップ45,46を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−76870号公報
【特許文献2】特開平8−82372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図12に示すように、(線状に相手面47,48に接触する)三角山型小凸条のリップ45,46を有することによって、相手面(被密封円周面)47,48に対する面圧Pのグラフ図に於て、比較的鋭いピーク49を示す。このように、相手面47,48に接する接触面積を小さくして、接触面圧Pに鋭いピーク49を有する急峻山型として、シール面圧(接触面圧P)を大として、密封性を保っている。
しかし、従来のこのようなU形シールを平面シール用として、スクロールコンプレッサ等に適用しようとしても、密封安定性に欠ける場合があり、また、早期摩耗を生じて適用が至難であることが判明した。
特に、スクロールコンプレッサのスクロール盤等は偏芯回転運動を行いつつ前記リップ45に摺接し、かつ、スクロール盤の被密封平面の切削加工ツールマークの方向と上記偏芯回転運動等の複雑な運動との組合せ等により密封性に悪影響が出やすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明は、底壁部と一対の側壁部とから成る横断面形状がU形の樹脂製シール本体と、該シール本体の凹溝内に装入された金属製内装弾性体と、から成り;被密封平面の一方がシール溝の溝底面であり、他方がスクロール盤であって;上記シール本体の一対の側壁部の各々の外面を、リップを省略した平坦面状に形成して、上記被密封平面に対応させるように構成し;さらに、上記側壁部の開口端部の少なくとも一方には、上記金属製内装弾性体の離脱防止及び上記開口端部が上記スクロール盤側の微小間隙へ侵入するのを防止するための係止突部を有するものである。
また、上記係止突部が設けられた開口端部に於て、上記係止突部を含んだ開口端部の厚さ寸法は、上記微小間隙よりも大きく設定されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るU形シールによれば、流体の種類、密封部位の小さなキズ、相手の被密封平面の切削ツールマーク、各種の運動形態(軌跡)にかかわらず、常に安定して優れた密封性能を発揮する。さらに、偏芯回転運動や螺旋回転運動等を行う被密封平面に摺接しても、早期摩耗を発生せず、耐久性と密封安定性に優れている。かつ、安価かつ容易に製造可能となる。かつ、微小間隙に、シール本体の側壁部の開口端部が侵入して挟まることを防止して、寿命が延長される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の適用箇所の一例を説明する簡略断面図である。
【図2】図1のY部の拡大詳細図である。
【図3】本発明の実施の一形態を示す断面説明図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す断面説明図である。
【図5】本発明の構成と作用の説明図である。
【図6】本発明の他の種々の変形例を示す要部断面図である。
【図7】本発明の別の変形例を示す要部断面図である。
【図8】本発明のさらに別の変形例を示す要部断面図である。
【図9】参考例を示した要部断面図である。
【図10】別の参考例を示した要部断面図である。
【図11】参考例の構成と作用の説明図である。
【図12】従来例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示の実施の形態に基づいて本発明を詳説する。
図1に於て、本発明に係るU形シールS1 ,S2 が適用された密封構造を例示し、スクロールコンプレッサ2の偏芯回転運動Mを行うスクロール盤3と、固定ケーシング4の間の平面状微小間隙Gの密封を行う。
図2は図1のY部を拡大した詳細図であり、この図1と図2に示すように、一軸心L4 を中心として同心円状に大径・小径のU形シールS1 ,S2 が配設される。
【0009】
第1の実施形態のU形シールS1 は、ラジアル内方向に開口し、大径であり、第2の実施形態のU形シールS2 は、ラジアル外方向に開口し、小径である。被密封流体は、例えば、冷媒と油である。図1と図2を、一軸心L4 に沿った方向から見ると、密封空間5が円環状に形成され、前述の微小間隙Gに相当の厚さ寸法を有する円環状密封空間5が、大径U形シールS1 と小径U形シールS2 にて密封状に形成される。なお、受持部材6から図1中の矢印P0 方向から送られる流体は、スクロール盤3に貫設された流路孔7を介して、密封空間5へ、図2の矢印P0 のように流入する。
【0010】
スクロール盤3は軸心L3 廻りに回転(自転)すると共に、この軸心L3 は一軸心L4 廻りに回転(公転)し、複雑な偏芯回転運動Mを起こす。Eは両軸心L3 ,L4 の偏芯量を示す。
そして、図3に大径側のU形シールS1 を例示し、図4に小径側のU形シールS2 を例示する。
【0011】
本発明に係るU形シールS1 ,S2 は、横断面形状がU形の樹脂製シール本体10と、このシール本体10の凹溝11内に装入された金属製内装弾性体20と、から成り、上記樹脂としては、PTFE等の耐摩耗かつ低摩擦材が好適であり、また、上記金属としては、ステンレス鋼等の耐腐食材が好適である。
【0012】
そして、シール本体10が、被密封平面21,21に接触する密封部位12,12の形状が、図2〜図8に於ては、平坦面状であり、従来例の図12に示したリップ45,46が省略されている。
さらに詳しく説明すれば、樹脂製シール本体10は、全体が円環状であって、図3ではラジアル内方向へ凹溝11が開口し、また、図4では、ラジアル外方向へ凹溝11が開口して、いずれも、底壁部13と一対の側壁部14,15とから成る横断面U形である。
【0013】
このシール本体10の一対の上記側壁部14,15の各々の外面を平坦面状に形成して、被密封平面21,21に対応させる。このように、側壁部14,15の外面を、図3(A)(B)及び図4(A)(B)に示すように、平坦面状に形成することで、側壁部14,15の各々が被密封平面21,21に接触する部位、即ち、密封部位12,12からリップを省略した平坦面状に形成する。
【0014】
図3(B),図4(B)は、シール本体10のみの自由状態を示す断面図であって、側壁部14と側壁部15は相互に平行であって、従って、両外面も相互に平行である。
図3(A),図4(A)は、凹溝11内に横断面U字状の薄板バネから成る弾性体20が装入された状態の組立構造としての自由状態を示し、底壁部13から開口端部16,17に向かって、両側壁部14,15が僅かに開脚状となる。言い換えると、高さ寸法Hがしだいに増加する。
また、各側壁部14,15の開口端部16,17には小鈎型に(開口内方に)折曲形成された係止突部18,18を有し、内装された弾性体20の離脱を防止する。
なお、この係止突部18は、図7,図8に示すように、両側壁部14,15の一方のみに形成するも好ましい場合がある。図7は図3に対応して、ラジアル内方向に凹溝11が開口した変形例であり、図8は図4に対応して、ラジアル外方向に開口した変形例を示す。係止突部18以外の構成は、図3,図4と同様であり、重複説明を省略する。
また、係止突部18の存在によって、微小間隙Gに開口端部16が、侵入して、挟まることを防止する。従って、係止突部18を含んだ開口端部16の厚さ寸法H16を、H16>Gのように設定する(図3参照)。
【0015】
次に、図5の横断面に於て、側壁部14,15の幅寸法をW0 とし、前述した密封部位12の幅寸法をW1 とすると、0.50・W0 ≦W1 <1.0 ・W0 なる数式が成立するように、U形シールS1 ,S2 の寸法と形状、及び、シール溝8の寸法等を設定する。
1 <0.50・W0 の場合は、急激に密封性及び耐久性が低下する。
【0016】
ところで、本発明に係るU形シールS1 ,S2 をスクロールコンプレッサ2の密封に用いる(図1と図2参照)。前記被密封平面21,21は、シール溝8の溝底面8A、及び、偏芯回転運動するスクロール盤3が相当する。
スクロールコンプレッサ2の密封に用いた場合、図1〜図8に於て、U形シールS1 ,S2 の内装弾性体20,20の弾発付勢力F20によって、スクロール盤3は(常時)微小間隙Gをもって浮き上った浮動状態を維持させる。
【0017】
例えば、微小間隙Gを0.20〜0.80mmの内の適切な数値に予め設定し、図3(A),図4(A)に示した組立構造の自由状態下のU形シールS1 ,S2 の高さ寸法(厚さ寸法)H0 は、図3(C),図4(C)に示したように、シール溝8の深さ寸法H8 と微小間隙Gとの合計寸法H3 よりも、大きく設定する。
例えば、G=0.50mm,H8 =2.60mmとすると、H3 =G+H8 =3.10mmとなる。これに対して、図3(A),図4(A)の組付け自由状態下のU形シールS1 ,S2 の高さ寸法H0 を、3.30mm〜3.80mmに設定する。
【0018】
ところで、シール本体10の側壁部14,15の表面粗さについて説明すれば、算術平均粗さRaの表記で、 6.3a以下とする。好ましくは、 3.2a以下とする。これによって、従来例(図12)よりも面圧が低くても、シール面圧が流体圧よりも大きく確保でき、密封性能を安定して良好に保ち得る。なお、本発明では、弾性体20をシール本体10の凹溝11に内装したので、シール溝8も小さくて済む。従来、バネ部材(弾性体)をシール材の外部に付加するものが知られているが、このような従来品では、シール溝8を深く形成する必要があったのに対し、本発明では、シール溝8は浅くて済み、コンパクト化を図り得る。さらに、従来の上記シール材は横断面矩型で、かつ、バイアスカットがされていたのに対し、本発明のシール本体10にはバイアスカットが無く、密封性がさらに優れる。
【0019】
なお、内装弾性体20は、板厚寸法が例えば0.05mmであって、角張ったジグザグ状に折曲った定尺帯材を、横断面U字型に弯曲させたものであり、極めて上記板厚寸法は小さいものが望ましい。なお、(図示省略するが)内装弾性体20として、金属製コイルバネを用いても良い。既述の通り、シール本体10の側壁部14,15(密封部位12)の表面粗さを、 6.3a以下(好ましくは 3.2a以下)に設定したことで、十分な密封性能を発揮可能であり、摩耗も著しく低減できる。
図5に於て、面圧グラフ図から判るように、なだらかで低い丘陵形を呈し、偏芯回転運動等の複雑な高速運動を行う被密封平面21に対して、摩耗が著しく低減できると共に、十分な密封性能を安定して発揮する。
【0020】
ところで、上述した実施の形態では、係止突部18は開口内方へ折曲形成された小鈎型であったが、これに限定されず、図6(A)〜(D)に各々示すような形状とすることも自由である。なお、図6(A)〜(D)は、図3(B)又は図4(B)に対応した変形例を示す。
即ち、図6(A)では、係止突部18の断面形状を台型とし、図6(B)では三角形として、いずれの場合も、凹溝11の内部から開口外方に向かって、開口寸法が減少する勾配面22を形成している。これによって、加工性、及び、内装弾性体20が不意に離脱しない作用効果は、上述した実施の形態と同程度である。
【0021】
また、図6(C)では係止突部18を、逆勾配面23を有する倒立台型とし、内装弾性体20の係止が一層確実となって、不意に外れることがない。
また、図6(D)では、係止突部18を、L字型として、内装弾性体20が一層離脱しにくくなる利点がある。この図6(D)の形状は、言い換えると、図3(B)又は図4(B)に示した小鈎型の係止突部18,18が相互に接近した開口端部を凹溝11内方へさらに折曲げて小折曲部24を連設したL字型である。
なお、図6(A)〜(D)の各変形例に於て、係止突部18は側壁部14,15の両者に付設されているが、これを側壁部14,15の一方にのみ付設するも、自由である(図7,図8参照)。
また、係止突部18の外端面18Aは、平坦面状の密封部位12に対して直角に形成されており、微小間隙Gに開口端部16が侵入して挟まることを、防いでいる。ここで、係止突部18を含んだ開口端部16の厚さ寸法H16を、H16>Gのように設定する(図3,図5,図7参照)。
【0022】
次に、図9に於て、参考例を示す。また、図10に於て、別の参考例を示す。
図9(A)(B)(C)は係止突部18が2個か1個かの相違、及び、1個の場合に(図の)上下のいずれに有るかの相違を示す。図10(A)(B)(C)も同様である。そして、図11に於て、装着使用状態の作用を示している。
この図9と図10及び図11に示したように、シール本体10は、スクロール盤3等の運動する部材の摺動平面211 に接触する第1密封部位121 の形状が、リップを省略して平坦面状とした第1側壁部141 を備えているが、シール溝8の溝底面8Aから成る静止平面213 に(静的に)接触する第2密封部位123 の形状が、横断面三角山型等のリップ146 を有する。
言い換えると、図2〜図8の既述の実施の形状では、一対の密封部位12,12はリップを省略した平坦面状であったのに対して、図9〜図11では、摺動平面211 と接触(摺接)するところの第1密封部位121 のみが、リップを省略した平坦面状である。
【0023】
そして、横断面に於て、上記第1側壁部141 の幅寸法をW0 とし、上記第1密封部位121 の幅寸法をW1 とすると、0.50・W0 ≦W1 <1.0 ・W0 なる数式が成立するように構成する。即ち、図5にて述べた実施の形態の一方の側壁部14の幅寸法W0 ,W1 の関係が、図9,図10に示した第1側壁部141 にもそのまま適用される。
さらに、上記第1側壁部141 の開口端部16には係止突部18を有し、該係止突部18を含んだ開口端部16の厚さ寸法H16は、上記微小間隙Gよりも大きく設定されている。即ち、図3,図4にて述べた実施の形態の側壁部14,15の開口端部16の厚さ寸法H16は、図9,図10に示した第1側壁部141 にもそのまま適用される。
【0024】
さらに説明すれば、横断面U形の樹脂製シール本体10は、底壁部13と、摺動平面211 に接触(摺接)する第1側壁部141 と、静止平面213 (溝底面8A)に接触する第2側壁部152 と、から成り、この第1側壁部141 の外面(上面)を平坦面状に形成して摺動平面211 (スクロール盤3の下面)に接触させる第1密封部位121 には、リップが省略されている。
しかしながら、第2側壁部152 の外面(下面)には、リップ146 を突設して、静止平面213 に静的に対応(接触)させる。
【0025】
図11の面圧グラフ図に示すように、第1側壁部141 が摺動平面211 に接触する面圧分布P3 はなだらかな低い丘陵形を呈し、偏芯回転運動等の複雑な高速運動を行う摺動平面211 (被密封平面21)に対して、摩耗が低減され、優れた(運動)密封性能を安定して発揮する。他方、第2側壁部152 が静止平面213 (溝底面8A)に接触する面圧分布P8 は、鋭いピーク49を有する急峻山型であり、シール面圧(接触面圧P)が大きく、優れた密封性能を発揮し、かつ、寿命が短くならない(静止状態のシールであるから)。
図11から明らかとなったように、摺動平面211 と静止平面213 とを区別して、平坦面状の第1密封部位121 と、リップ146 を有する第2側壁面152 の第2密封部位123 とを、併用した図9〜図11 の参考例は、U形シールとして、全体の耐久性及び密封性能(シ
ール性)に、優れているといえる。
【0026】
以上詳述したように、本発明は、横断面形状がU形の樹脂製シール本体10と、該シール本体10の凹溝11内に装入された金属製内装弾性体20と、から成るU形シールに於て、上記シール本体10が被密封平面21,21に接触する密封部位12,12の形状が、リップを省略して平坦面状であるので、平面運動用として優れた密封安定性を示し、特に、複雑な偏芯回転運動等を行う被密封平面に対して、好適であって、密封安定性及び耐摩耗性を発揮する。かつ、製作も容易である。
【0027】
また、底壁部13と一対の側壁部14,15とから成る横断面形状U形の樹脂製シール本体10と、該シール本体10の凹溝11内に装入された金属製内装弾性体20と、から成るU形シールに於て、上記シール本体10の上記一対の側壁部14,15の各々の外面を平坦面状に形成して被密封平面21,21に対応させるように構成し、各々の該側壁部14,15が該被密封平面21,21に接触する密封部位12,12からリップを省略した構成であるので、平面運動用として優れた密封安定性を示し、特に、複雑な偏芯回転運動等を行う被密封平面に対して、好適であって、密封安定性及び耐摩耗性を発揮する。かつ、製作も容易である。
【0028】
また、横断面に於て、上記側壁部14,15の幅寸法をW0 とし、上記密封部位12の幅寸法をW1 とすると、0.50・W0 ≦W1 <1.0 ・W0 なる数式が成立するように構成したので、従来例の図12のようにリップ45に対して直交方向の往復動や、リップ45に沿っての一定方向の運動ではない、複雑な偏芯回転運動や、サイクロイド軌跡を描く複雑な運動を、行う被密封平面21に対しても、安定した密封性能を長期にわたって発揮できる。
【0029】
また、スクロールコンプレッサ2の密封に用いられて、上記被密封平面21,21の一方がシール溝8の溝底面8Aであり、他方が偏芯回転運動するスクロール盤3であって、上記内装弾性体20の弾発付勢力F20によって該スクロール盤3が微小間隙Gをもって浮き上った浮動状態を維持させている構成であるので、シール溝8が小型断面積のもので済み、装置のコンパクト化に貢献できる。しかも、高速で偏芯回転運動するスクロール盤3は、小さい抵抗を受けるのみで、浮動し易く、密封流体の外部漏洩も極めて微少乃至零となる。
また、上記側壁部14,15の開口端部16,17の少なくとも一方には係止突部18を有し、該係止突部18を含んだ開口端部16の厚さ寸法H16は、上記微小間隙Gよりも大きく設定されているので、微小間隙Gに開口端部16が、侵入して挟まることを防止できる。
【0030】
また、参考例では、横断面形状がU形の樹脂製シール本体10と、該シール本体10の凹溝11内に装入された金属製内装弾性体20と、から成るU形シールに於て、上記シール本体10が相互に平行な摺動平面211 と静止平面213 に接触する第1密封部位121 と第2密封部位123 を備えると共に、上記摺動平面211 に接触する第1密封部位121 の形状が、リップを省略して平坦面状であって、上記静止平面213 に接触する第2密封部位123 がリップ146 を有する構成としたので、第1密封部位121 は平面運動(摺動)用として安定して優れた密封性能を発揮し、耐摩耗性にも優れ、しかも、第2密封部位123 は、静止平面213 に対する静的(固定)シール部としての優れた密封性能を示し、U形シール全体として、密封性能と寿命に優れる。
【0031】
また、底壁部13と、摺動平面211 に接触する第1側壁部141 と、静止平面213 に接触する第2側壁部152 と、から成る横断面形状U形の樹脂製シール本体10と、該シール本体10の凹溝11内に装入された金属製内装弾性体20とを、備えたU形シールに於て、上記シール本体10の上記第1側壁部141 の外面を平坦面状に形成して上記摺動平面211 に対応させ、上記第1側壁部141 が上記摺動平面211 に接触する第1密封部位121 からリップを省略し、かつ、上記第2側壁部152 の外面にリップ146 を形成して、上記静止平面213 に対応させた構成であるので、第1密封部位121 は平面運動(摺動)用として安定して優れた密封性能を発揮し、耐摩耗性にも優れ、しかも、第2密封部位123 は、静止平面213 に対する静的(固定)シール部としての優れた密封性能を示し、U形シール全体として、密封性能と寿命に優れる。
【0032】
また、横断面に於て、上記第1側壁部141 の幅寸法をW0 とし、上記第1密封部位121 の幅寸法をW1 とすると、0.50・W0 ≦W1 <1.0 ・W0 なる数式が成立するように構成したので、従来例の図12のようにリップ45に対して直交方向の往復動や、リップ45に沿っての一定方向の運動ではない、複雑な偏芯回転運動や、サイクロイド軌跡を描く複雑な運動を、行う被密封平面21に対しても、安定した密封性能を長期にわたって発揮できる。
【0033】
また、スクロールコンプレッサ2の密封に用いられて、上記静止平面213 がシール溝8の溝底面8Aであり、上記摺動平面211 が偏芯回転運動するスクロール盤3であって、上記内装弾性体20の弾発付勢力F20によって該スクロール盤3が微小間隙Gをもって浮き上った浮動状態を維持させている構成であるので、シール溝8が小型断面積のもので済み、装置のコンパクト化に貢献できる。しかも、高速で偏芯回転運動するスクロール盤3は、小さい抵抗を受けるのみで、浮動し易く、密封流体の外部漏洩も極めて微少乃至零となる。
また、上記側壁部141 の開口端部16には係止突部18を有し、該係止突部18を含んだ開口端部16の厚さ寸法H16は、上記微小間隙Gよりも大きく設定されているので、微小間隙Gに開口端部16が、侵入して挟まることを防止できる。
【符号の説明】
【0034】
3 スクロール盤
8 シール溝
8A 溝底面
10 シール本体
11 凹溝
12 密封部位
13 底壁部
14,15 側壁部
16,17 開口端部
18 係止突部
20 内装弾性体
21 被密封平面
16 厚さ寸法
1 ,S2 U形シール
G 微小間隙
3 ,P8 面圧分布
0 ,W1 幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁部(13)と一対の側壁部 (14)(15) とから成る横断面形状がU形の樹脂製シール本体(10)と、該シール本体(10)の凹溝(11)内に装入された金属製内装弾性体(20)と、から成り、
被密封平面 (21)(21) の一方がシール溝(8)の溝底面(8A)であり、他方がスクロール盤(3)であって、
上記シール本体(10)の一対の側壁部 (14)(15) の各々の外面を、リップを省略した平坦面状に形成して、上記被密封平面 (21)(21) に対応させるように構成し、
さらに、上記側壁部 (14)(15) の開口端部 (16)(17) の少なくとも一方には、上記金属製内装弾性体(20)の離脱防止及び上記開口端部 (16)(17) が上記スクロール盤(3)側の微小間隙(G)へ侵入するのを防止するための係止突部(18)を有することを特徴とするU形シール。
【請求項2】
上記係止突部(18)が設けられた開口端部 (16)(17) に於て、上記係止突部(18)を含んだ開口端部 (16)(17) の厚さ寸法(H16)は、上記微小間隙(G)よりも大きく設定されている請求項1記載のU形シール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−32848(P2013−32848A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−237990(P2012−237990)
【出願日】平成24年10月29日(2012.10.29)
【分割の表示】特願2011−84588(P2011−84588)の分割
【原出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】