説明

USB機器、及びUSB接続システム

【課題】ホストからのリセットに基づいてリセット動作を実行できるUSB機器、これに接続するホスト装置、及びUSB接続システムを提供し、内部通信障害の復旧等のリセット動作を可能として可用性を向上する。
【解決手段】USB機器に、通常モードでは機器全体の制御動作を実行すると共に、省エネモードではその動作を停止するCPUと、CPUの通常モード及び省エネモードを監視すると共に、CPUに供給するクロック信号の切り替えにより両モード間を状態遷移させる状態監視回路を備え、リセット信号を受信したとき、CPUが省エネモードの場合には、CPUを通常モードへ状態遷移させる一方、CPUが通常モードの場合には、CPU及びUSB通信手段をリセットさせる信号をリセット回路に送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばホスト装置とUSB機器とをUSBケーブルで接続し、通信障害や暴走時にUSB機器にリセットをかけて復旧するようなUSB機器、及びUSB接続システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回線異常やM/C(接続モジュール)のハングアップ等によるATMの内部通信障害は、フィールドにおいて一定の発生頻度があり、削減することができてない。
【0003】
このため既存のATMでは、専用のAC電源のOFF/ON機能を使用した復旧手段を備えている。この復旧手段は、復旧用の専用回線を用いているため、必然的にコスト増となっている。
【0004】
また、一部モジュールは電源をDC供給で行っているため、このような復旧手段で復旧させることが出来ない問題もある。
【0005】
さらに、既存のコンビニエンスストア向けのATMや海外向けのATM等では、RS−232C(COM)の信号を使用したハードリセット機能による復旧手段を備えている。
【0006】
一方、市場からの要求として、ATMについて省エネ機能(スリープ機能)を実現することが求められている。
【0007】
省エネ機能を実現しようとすると、省エネモード中はCPUが応答できないため、省エネモードから復旧するためには復旧専用の信号・回路が必要となり、さらに通信ラインに省エネモード検出専用回路を備えることが必要となる。
【0008】
このような状況下において、近年では、メインコントローラ(パーソナルコンピュータ)に標準搭載されているUSB(Universal Serial Bus)を、ATMの内部通信として採用することが提案されている。
【0009】
そして、通信障害や暴走時にUSB機器にリセットをかけて復旧する方法としては、USB回線の他に専用回線を付加して、この専用回線を介してUSBデバイスにリセットを実行するデバイス制御システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
また、通信異常の状態を発見した時に、USBライン上のリセットを検出し、自動的にUSB機器のリセットを実行するUSB機器も提案されている(特許文献2参照)。
【0011】
【特許文献1】特開2003−131956号公報
【特許文献2】特開2002−373036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、専用回線を介してリセットする方法では、別途専用回線を設けることによる大幅なコスト増が伴うと共に、汎用USB機器を改造しなければならないという問題がある。
【0013】
また、USBライン上のリセットを検出し自動的にUSB機器のリセットを実行する方法では、USB回線上にリセットが入れば必ずUSB機器がリセットを実行するため、USBの通信品質を損なうことになる。
【0014】
またこの場合、USBライン上のリセットにより強制的にリセットが入ってしまうため、付帯的に状態を監視してリセット又は省エネ等を切替えることができない問題がある。
【0015】
この発明は、上述した問題に鑑み、ホストからのリセットに基づいて強制動作を実行できるUSB機器、及びUSB接続システムを提供し、内部通信障害の復旧や省エネモードからの復旧等の強制動作を可能とすることで可用性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、通常モードでは機器全体の制御動作を実行すると共に、省エネモードではその動作を停止するCPUと、USBケーブルを介してホスト装置とデータ通信するUSB通信手段を備え、前記USB通信手段を介して前記ホスト装置から受信するリセット信号に基づいて前記CPU及び前記USB通信手段をリセットするUSB機器であって、前記CPUの前記通常モード及び前記省エネモードを監視すると共に、該CPUに供給するクロック信号の切り替えにより両モード間を状態遷移させる状態監視回路を備え、さらに状態監視回路は、前記USB通信手段を介して前記リセット信号を受信したとき、前記CPUが前記省エネモードの場合には、該CPUを前記通常モードへ状態遷移させる一方、前記CPUが前記通常モードの場合には、該CPU及び前記USB通信手段をリセットさせる信号をリセット回路に送信するUSB機器であることを特徴とする。
【0017】
前記USB通信手段は、USBデバイスコントローラ等、USB規格を使用して通信する手段で構成することを含む。
【0018】
前記構成により、USB機器はリセット信号に基づいてリセットを実行することができる。従って、例えばUSB機器全体のハードリセット等を行うことができ、可用性を高めることができる。
【0019】
また、通常状態での強制動作と省エネ状態での強制動作を分けることができ、省エネ状態の際にハードリセット等のリセット動作を行うことを防止することができる。
【0020】
またこの発明は、前記ホスト装置は、請求項1に記載のUSB機器とUSBケーブルを介してデータ通信するUSB通信手段と、制御処理を実行する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記USB機器との通信エラー発生の際に前記USB機器に対して前記リセット信号を送信するリセット信号送信処理と、所定時間が経過しても通信エラーが解消しなかった場合に再度前記リセット信号を送信するリトライ処理とを実行するホスト装置であって、該ホスト装置と、前記USB機器とをUSBケーブルで接続したUSB接続システムとすることができる。
これにより、ホスト装置がUSB機器の障害を確実に復旧することができる。
【0021】
これにより、例えばホストとATM間(USB機器)の通信、パーソナルコンピュータ(ホスト)とスキャナやプリンタ等(USB機器)との通信等、USBを利用した接続でUSB機器に強制動作を実行させることができ、確実なリセット処理や状態遷移処理等を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明により、ホストからのリセットに基づいてUSB機器にリセット動作を強制実行させることができ、内部通信障害の復旧等によって可用性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
まず、図1に示す全体構成のブロック図と共に、ホスト10とUSB機器30を接続して構成するUSB接続システム1について説明する。
【0024】
この実施形態では、USB機器30としてATM(現金払預機)を用い、ホスト10として上記ATMの上位装置となるホストマシンを用いた現金払預システムにUSB接続システム1を導入している。
【0025】
USB接続システム1は、パーソナルコンピュータ(PC)で構成するホスト10と、USB機器30とをUSBケーブル25で接続して構成している。
【0026】
ホスト10とUSB機器30とを接続するUSBケーブル25の間には、USBハブ20を介在させ、複数のUSB機器30をUSBハブ20に接続できるようにしている。これにより、1つのホスト10で複数のUSB機器30を制御できるようにしている。
【0027】
ホスト10は、USBケーブル25を介してUSB機器30に信号の送受信を行うUSBホストコントローラ11を備えている。なお、ホスト10はパーソナルコンピュータであるから、この他にも構成要素として図示省略する制御装置(CPU)、記憶装置(ハードディスク)、入力装置(マウス、キーボード)、及び表示装置(液晶ディスプレイ又はCRTディスプレイ)を備えていることは周知のとおりである。
【0028】
USBケーブル25は、USB規格によるデータ電送を行うケーブルであり、図示省略するVBUS、D+、D−、GNDの4つのラインで構成している。なお、VBUSが電源供給を行い、D+及びD−が信号送受信を行うことは周知のとおりである。
【0029】
USB機器30は、通信部31aと検出部31bからなるUSBデバイスコントローラ31、CPU32、リセット回路33、及び状態監視回路34を備えている。
【0030】
USBデバイスコントローラ31は、USBケーブル25を介してホスト10との通信を司る通信部31aと、ホスト10から送信されるソフトリセット信号(SE0)を検知して出力する検出部31bとで構成する。
【0031】
なお、前記通信部31aと検出部31bは、分割して別個に設け、該通信部31aと検出部31bとを接続する構成としても良い。
また、ソフトリセット信号(SE0)は、ホスト10がUSBケーブル25内の信号線であるD+,D−の両方に0Vを一定時間以上出力する状態を指す。
【0032】
CPU32は、USB機器30の主制御部であり、USB機器30全体の各種制御動作を実行する。省エネモードでは動作を停止する。
【0033】
リセット回路33は、状態監視回路34からハードリセット信号を受信すると、CPU32を含めてUSB機器30全体にハードリセットをかける。
【0034】
状態監視回路34は、CPU32から省エネ指示信号及び省エネクリア信号を受信してCPU32の状態を監視する。USBデバイスコントローラ31の検出部31bからソフトリセット検出信号を受信すると、CPU32の状態によって、リセット回路33にハードリセット信号を送信するか、CPU32に省エネ解除信号を送信するかいずれか一方の処理を行う。
【0035】
なお、USB機器30はATMであるから、制御装置(CPU32)に加えて、図示省略する記憶装置(ハードディスク)、入力装置(タッチパネル)、表示装置(液晶ディスプレイ又はCRTディスプレイ)、及び現金処理装置(貨幣の真偽判別及び金種判別を実行)を備えていることは周知のとおりである。
【0036】
以上の構成により、USB機器30は、ホスト10から受信するソフトリセット信号という一種類の信号に対し、CPU32の状態に応じてハードリセット処理又は省エネ解除処理という複数の処理から1つの処理を選択して実行することができる。
【0037】
次に、図2に示すタイミングチャート図、及び図3、図4に示す処理フロー図と共に、USB機器30の動作について説明する。
【0038】
まず、ホスト10がソフトリセット信号(SE0)を出力し、タイミングAに示すようにUSBデバイスコントローラ31が該ソフトリセット信号を受信すると、タイミングBに示すように検出部31bがソフトリセット検出信号を出力する。
【0039】
状態監視回路34は、図3に示すように上記ソフトリセット信号を受信するまで待機しており、ソフトリセット信号を検出すると(ステップn1)、省エネ指示(図2)の状態を確認してCPUステータス(図2)が通常モードか確認する(ステップn2)。
【0040】
通常モードであれば(ステップn2:YES)、ハードリセット処理として、タイミングC(図2)にてハードリセット信号をリセット回路33に出力し、リセット回路33から一定時間全体リセットを出力してハードリセットを行い(ステップn3)、処理を終了する。
【0041】
ハードリセット実行から一定時間が経過すると、タイミングD(図2)に示すように通常モードに復旧する。
【0042】
省エネモードへの遷移は、タイミングE(図2)に示すようにホスト10から省エネコマンドを受信して行う。
【0043】
すなわち、図4の処理フロー図に示すように、省エネ状態への遷移指示のコマンドを受信すると(ステップs1:YES)、タイミングFでCPU32が状態監視回路34に省エネ指示信号を送信する(ステップs2)。
【0044】
タイミングGでウォッチドックタイマをEnableからDisenableに切替え、これと共にシステムCLKを停止する。
このようにして省エネモードに遷移し(ステップs3)、処理を終了する。
【0045】
省エネモード中に、タイミングHに示すようにホスト10からソフトリセットを受信した場合、すなわち図3のステップn2でCPUステータスが通常モードでなかった場合は(ステップn2:NO)、通常モードに遷移する遷移処理を実行する。
【0046】
該遷移処理では、まずタイミングJ(図2)に示すようにウォッチドッグタイマをEnablueにしてシステムCLKを起動する。
【0047】
タイミングK(図2)に示すように省エネ解除信号を出力し(ステップn4)、タイミングL(図2)に示すように省エネ指示をクリアして通常モードに遷移する(ステップn5)。
【0048】
以上の動作により、ホスト10は、USB機器30から正常な応答が得られなかった場合、ソフトリセット信号(SE0)を送信するだけで、USB機器30を応答可能に復旧させることができる。
【0049】
すなわち、検出部31bが出力するソフトリセット検出信号により、状態監視回路34は、CPU32が通常モードであればUSB機器30全体のハードリセットを実行し、CPU32が省エネモードであれば通常モードに遷移する。
【0050】
これにより、CPU32が省エネモードであるためにホスト10に応答しなかった場合でも、ハードリセットがかかってしまうことを防止し、最適な動作でUSB機器30がホスト10に応答できる状態へ復旧することができる。
【0051】
また、検出部31bからのソフトリセット検出信号によって復旧を行うため、図5の表に示すように、殆どの障害状態から復旧することが可能となる。
【0052】
具体的には、USBホストコントローラ11が正常であれば、CPU32が正常か暴走かに関わらず、復旧を行うことができる。
また、USBホストコントローラ11が暴走又はハングアップしていても、ソフトリセット検出信号(例えばINI1)が出力可能な状態であれば、CPU32が正常か暴走かに関わらず、復旧を行うことができる。
【0053】
また、USBホストコントローラ11は正常であるが電送異常や回線接続断が生じている場合は、CPU32が正常であれば復旧を行うことができる。
このような多様なケースに対応することで大抵の場合は復旧でき、可用性を十分高めることができる。
【0054】
また、ホスト10の制御装置には、USB機器30へのソフトリセット信号の後、一定時間が経過してもUSB機器30と正常通信が出来なかった場合、再度ソフトリセット信号を送信するリトライ処理を設定すると良い。
このリトライ処理は、2回又は3回等、所定の回数に設定しておくと良い。
これにより、USB機器30のCPU32の暴走によってたまたまUSB機器30のハードリセット等が出来なかった場合に対応することができる。
【0055】
すなわち、暴走したCPU32が、検出部31bがソフトリセット検出信号を出力した直後に割込みをクリアしてしまった場合、状態監視回路34(若しくは割込み検知回路)はソフトリセット検出信号を受信することができない。
しかし、これはタイミングに関わる偶然によって発生するため、リトライにより再実行すれば、次は正常にUSB機器30のハードリセット等を行うことができる可能性が高く、確実にUSB機器30の復旧を行うことができる。
このように、同一動作をリトライして繰り返すことにより、確実にUSB機器30を復旧させることができる。
【0056】
また、状態監視回路34は、検出部31bからソフトリセット検出信号を受信する構成としたが、検出部31bにソフトリセットの有無を取得しに行く構成としても良い。
【0057】
また、USB機器30は、乗車券の販売等を行う券売機、又は、駅の入退場規制を行う駅改札機等、ホストに接続して使用する他の機器としても良い。
【0058】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の制御手段は、実施形態のホスト10の制御装置に対応し、
以下同様に、
ホストのUSB通信手段は、USBホストコントローラ11に対応し、
USB機器のUSB通信手段は、USBデバイスコントローラ31に対応し、
クロック信号はシステムCLKに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】USB接続システムの全体構成を示すブロック図。
【図2】動作のタイミングを示すタイミングチャート図。
【図3】USB機器の状態監視回路の動作を示す処理フロー図。
【図4】USB機器の状態監視回路の動作を示す処理フロー図。
【図5】USB機器の状態による復旧可否を表で示す図。
【符号の説明】
【0060】
1…USB接続システム
10…ホスト
11…USBホストコントローラ
25…USBケーブル
30…USB機器
31…USBデバイスコントローラ
32…CPU
33…リセット回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常モードでは機器全体の制御動作を実行すると共に、省エネモードではその動作を停止するCPUと、
USBケーブルを介してホスト装置とデータ通信するUSB通信手段を備え、
前記USB通信手段を介して前記ホスト装置から受信するリセット信号に基づいて前記CPU及び前記USB通信手段をリセットするUSB機器であって、
前記CPUの前記通常モード及び前記省エネモードを監視すると共に、該CPUに供給するクロック信号の切り替えにより両モード間を状態遷移させる状態監視回路を備え、
さらに状態監視回路は、前記USB通信手段を介して前記リセット信号を受信したとき、
前記CPUが前記省エネモードの場合には、該CPUを前記通常モードへ状態遷移させる一方、
前記CPUが前記通常モードの場合には、該CPU及び前記USB通信手段をリセットさせる信号をリセット回路に送信することを特徴とする
USB機器。
【請求項2】
前記ホスト装置は、
請求項1に記載のUSB機器とUSBケーブルを介してデータ通信するUSB通信手段と、
制御処理を実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記USB機器との通信エラー発生の際に前記USB機器に対して前記リセット信号を送信するリセット信号送信処理と、
所定時間が経過しても通信エラーが解消しなかった場合に再度前記リセット信号を送信するリトライ処理とを実行するホスト装置であって、
該ホスト装置と、前記USB機器とをUSBケーブルで接続した
USB接続システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−8819(P2011−8819A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187146(P2010−187146)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【分割の表示】特願2004−175167(P2004−175167)の分割
【原出願日】平成16年6月14日(2004.6.14)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】