説明

VAL−4によって媒介される白血球の接着を阻害するピリミジニルスルホンアミド化合物

VLA−4に結合する化合物が開示される。特定のこれらの化合物はまた、白血球の接着を、特にVLA−4により媒介される白血球の接着を阻害する。このような化合物は、ヒトまたは動物の被験体における炎症性疾患、例えば、喘息、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、AIDS痴呆、糖尿病、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、組織移植、腫瘍転移および心筋虚血の治療に有用である。前記化合物はまた、多発性硬化症のような炎症性脳疾患の治療のために投与できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本願は、2006年2月27日出願の米国仮特許出願第60/777,595号からの優先権を主張し、この開示はその全体において本明細書中で参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、白血球の接着を、特にα4インテグリンによって媒介される白血球の接着を阻害する化合物に関し、ここで、α4インテグリンは好ましくはVLA−4である。本発明はまた、このような化合物を含む医薬組成物、さらには、本発明の化合物または医薬組成物のいずれかを用いる、例えば、炎症の治療方法にも関する。
【0003】
(参照)
1 Hemler and Takada,欧州特許出願公開第330,506号,1989年8月30日公開
2 Elices, et al., Cell, 60:577 584 (1990)
3 Springer, Nature, 346:425 434 (1990)
4 Osborn, Cell, 62:3 6 (1990)
5 Vedder, et al., Surgery, 106:509 (1989)
6 Pretolani, et al., J. Exp. Med., 180:795 (1994)
7 Abraham, et al., J. Clin. Invest., 93:776 (1994)
8 Mulligan, et al., J. Immunology, 150:2407 (1993)
9 Cybulsky, et al., Science, 251:788 (1991)
10 Li, et al., Arterioscler. Thromb., 13:197 (1993)
11 Sasseville, et al., Am. J. Path., 144:27 (1994)
12 Yang, et al., Proc. Nat. Acad. Science (USA), 90:10494 (1993)
13 Burkly, et al., Diabetes, 43:529 (1994)
14 Baron, et al., J. Clin. Invest., 93:1700 (1994)
15 Hamann, et al., J. Immunology, 152:3238 (1994)
16 Yednock, et al., Nature, 356:63 (1992)
17 Baron, et al., J. Exp. Med., 177:57 (1993)
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19 van Dinther−Janssen, et al., Annals. Rheumatic Dis., 52:672 (1993)
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26 Bao, et al., Diff., 52:239 (1993)
27 Lauri, et al., British J. Cancer, 68:862 (1993)
28 Kawaguchi, et al., Japanese J. Cancer Res., 83:1304 (1992)
29 Konradi, et al., PCT/US00/01686, filed, January 21, 2000。
【0004】
上記の公開はすべて本明細書中でそれぞれ個別の公開がその全体を参考として援用することを特別におよび個別に示される程度に、その全体を参考として援用する。
【背景技術】
【0005】
(技術水準)
VLA−4(α4β1インテグリン、CD49d/CD29とも呼ばれる)は、最初、HemlerおよびTakadaにより確認され、細胞表面受容体のβ1インテグリンファミリー(ファミリーの各々は2つのサブユニット、α鎖およびβ鎖を含む)の成員である。VLA−4は、α4鎖およびβ1鎖を含む。少なくとも9種のβ1インテグリンがあり、全ては同じβ1鎖を共有し、各々が異なるα鎖を有する。これらの9種の受容体は全て、様々な細胞マトリックス分子、例えば、フィブロネクチン、ラミニン、およびコラーゲンの異なる相補的部分に結合する。VLA−4は、例えば、フィブロネクチンに結合する。VLA−4また、内皮細胞および他の細胞により発現される非マトリックス分子にも結合する。これらの非マトリックス分子にはVCAM−1が含まれ、これは、培養されているサイトカイン活性化ヒト臍帯静脈内皮細胞に発現される。VLA−4の別個のエピトープがフィブロネクチンおよびVCAM−1結合活性を担っており、各々の活性は独立に阻害されることが示された
【0006】
VAL−4および他の細胞表面受容体により媒介される細胞間接着は、かなりの数の炎症反応に関連する。傷害部位または他の炎症刺激部位では、活性化された血管内皮細胞が白血球に接着する分子を発現する。内皮細胞への白血球接着のメカニズムは、1つには、内皮細胞上の対応する細胞表面分子に対する、白血球細胞表面受容体の認識および結合を含む。一旦結合すると、白血球は血管壁を通して移動して、損傷部位に入り、感染に抗するケミカルメディエータを放出する。免疫系の接着受容体の概説については、例えば、SpringerおよびOsbornを参照。
【0007】
炎症性脳障害、例えば、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、多発性硬化症(MS)および髄膜炎は、内皮/白血球の接着メカニズムが他の点では健康な脳組織の破壊を起こす中枢神経系障害の例である。多数の白血球が、これらの炎症性疾患を有する患者における血管脳関門(BBB)を通して移動する。白血球は、神経伝達を損傷し、麻痺を生ずる広範な組織障害を引き起こす毒性メディエータを放出する。
【0008】
他の器官系において、組織損傷はまた、白血球の移動または活性化を生じる接着メカニズムを通じて起こる。例えば、心臓組織に対する心筋虚血の後の初期傷害は、傷害組織に白血球が入り、さらなる傷害を引き起こすことによってさらに悪化し得ることが示された(Vedder他)。接着メカニズムにより媒介される他の炎症性または治療を要する病気には、例として、喘息6〜8、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症9〜10、AIDS痴呆11、糖尿病12〜14(急性若年型糖尿病が含まれる)、炎症性腸疾患15(潰瘍性大腸炎およびクローン病が含まれる)、多発性硬化症16〜17、関節リウマチ18〜21、組織移植22、腫瘍転移23〜28、髄膜炎、脳炎、脳卒中、および他の脳外傷、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血、および白血球介在急性肺傷害(例えば、成人呼吸窮迫症候群で起こるもの)が含まれる。
【0009】
置換アミノピリミジンは、1つの化学類として、VCAM−1へのVLA−4の結合を阻害するとして開示されており、それゆえに、抗炎症性を示す29。これらの化合物はこのような結合に対するアンタゴニスト性を有するが、これらの化合物の生体利用能の向上はそれらの効能を増大させるであろう。
【特許文献1】欧州特許出願公開第330,506号明細書
【非特許文献1】Cell, 60:577 584 (1990)
【非特許文献2】Nature, 346:425 434 (1990)
【非特許文献3】Cell, 62:3 6 (1990)
【非特許文献4】Surgery, 106:509 (1989)
【非特許文献5】J. Exp. Med., 180:795 (1994)
【非特許文献6】Science, 251:788 (1991)
【非特許文献7】Am. J. Path., 144:27 (1994)
【非特許文献8】Proc. Nat. Acad. Science (USA), 90:10494 (1993)
【非特許文献9】J. Immunology, 152:3238 (1994)
【非特許文献10】Nature, 356:63 (1992)
【非特許文献11】J. Immunology, 147:4207 (1991)
【非特許文献12】Transpl. Proceed., 25:813 (1993)
【非特許文献13】Can. Res., 54:3233 (1994)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、VAL−4媒介疾患を治療するための化合物、それらの薬学的に許容される塩およびエステル、それらの組成物、それらの合成、ならびに方法を提供する。本発明のこれらの化合物についてのin vivoデータ(これらの化合物はそのように評価された)に基づいて、これらの化合物は、通常の曲線下面積(area under the curve、AUC)分析によって判定すると、経口投与された時、生体利用能の改善を示すと想定される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施形態において、本発明は、式Iの化合物:
【0012】
【化12】

または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを提供し、
式中、
は、CからCのアルキルおよびCからCのハロアルキルからなる群から選択され;
は、CからCのアルキル、CからCのアルケニル、CからCのアルキニル、およびCからCのシクロアルキルからなる群から選択される。
【0013】
いくつかの実施形態において、RはCからCのアルキルである。別の実施形態において、Rはメチルまたはトリフルオロメチルである。さらに別の実施形態において、Rはメチルである。
【0014】
いくつかの実施形態において、RはCからCのアルキルである。別の実施形態において、RはCからCのアルキルである。さらに別の実施形態において、Rはメチル、エチル、イソプロピルまたはn−プロピルである。別の実施形態において、Rはメチルまたはエチルであり、さらに別の実施形態において、Rはイソプロピルである。
【0015】
いくつかの実施形態において、RはCからCのシクロアルキルである。別の実施形態において、Rはシクロペンチルである。
【0016】
いくつかの実施形態において、RはCからCのアルケニルである。別の実施形態において、Rはアリルである。
【0017】
いくつかの実施形態において、RはCからCのアルキニルである。別の実施形態において、Rはプロパルギルである。
【0018】
本発明の化合物の例には、表1に列挙されるRおよびR基を有するものが含まれる(これらの薬学的に許容される塩、またはエステルを含めて)。
【0019】
【表1】

別の実施形態において、本発明は式IIの化合物:
【0020】
【化13】

または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルを提供し、
式中、
は、CからCのアルキルおよびCからCのハロアルキルからなる群から選択され;
は、CからCのアルキル、CからCのアルケニル、CからCのアルキニル、およびCからCのシクロアルキルからなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態において、RはCからCのアルキルである。別の実施形態において、Rはメチルまたはトリフルオロメチルである。さらに別の実施形態において、Rはメチルである。
【0022】
いくつかの実施形態において、RはCからCのアルキルである。別の実施形態において、RはCからCのアルキルである。さらに別の実施形態において、Rは、メチル、エチル、イソプロピルまたはn−プロピルである。別の実施形態において、Rはメチルまたはエチルであり、さらに別の実施形態において、Rはイソプロピルである。
【0023】
いくつかの実施形態において、RはCからCのシクロアルキルである。別の実施形態において、Rはシクロペンチルである。
【0024】
いくつかの実施形態において、RはCからCのアルケニルである。別の実施形態において、Rはアリルである。
【0025】
いくつかの実施形態において、RはCからCのアルキニルである。別の実施形態において、Rはプロパルギルである。
【0026】
本発明の化合物の例には、表2に列挙されるRおよびR基を有するものが含まれる(これらの薬学的に許容される塩、またはエステルを含めて)。
【0027】
【表2】

フェニル環上のピロリジニルカルボニルオキシ基のオルトおよびメタ置換もまた本発明の範囲内にある。
【0028】
本発明はまた、表3の化合物、さらには薬学的に許容されるこれらの塩、またはエステルを提供する。
【0029】
【表3−1】

【0030】
【表3−2】

【0031】
【表3−3】

別の態様において、本発明は、薬学的に許容される担体、および本明細書に定義される1種または複数の化合物の治療有効量を含む医薬組成物を提供する。
【0032】
その方法の態様の1つにおいて、本発明は、患者における、α4インテグリン、好ましくはVLA−4により少なくとも部分的に媒介される疾患を治療するための方法を対象とし、この方法は、薬学的に許容される担体、および本発明の1種または複数の化合物の治療有効量を含む医薬組成物を投与することを含む。
【0033】
本発明の化合物および医薬組成物は、α4インテグリンにより少なくとも部分的に媒介される病状を治療するのに有用であり、ここで、α4インテグリンは好ましくはVLA−4または白血球接着性である。このような病状には、例として、喘息、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、AIDS痴呆、糖尿病(急性若年型糖尿病が含まれる)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病が含まれる)、多発性硬化症、関節リウマチ、組織移植、腫瘍転移、髄膜炎、脳炎、脳卒中、および他の脳外傷、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血および白血球介在急性肺傷害(例えば、成人呼吸窮迫症候群で起こるもの)が含まれる。
【0034】
他の病状には、これらに限らないが、炎症性の病気、例えば、結節性紅斑、アレルギー性結膜炎、視神経炎、ブドウ膜炎、アレルギー性鼻炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、血管炎、ライター症候群、全身性エリテマトーデス、進行性全身性硬化症、多発性筋炎、皮膚筋炎、ウェゲナー肉芽腫症、大動脈炎、サルコイドーシス、リンパ球減少症、側頭動脈炎、心膜炎、心筋炎、鬱血性心不全、結節性多発動脈炎、過敏症症候群、アレルギー、好酸球増多症候群、チャーグ−ストラウス症候群、慢性閉塞性肺疾患、過敏性肺臓炎、慢性活動性肝炎、間質性膀胱炎、自己免疫内分泌不全、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫再生不良性貧血、慢性持続性肝炎、および甲状腺炎が含まれる。
【0035】
一実施形態において、α4インテグリンにより媒介される病状は炎症性疾患である。
【0036】
別の実施形態において、病状は自己免疫疾患である。
【0037】
いくつかの実施形態において、疾患は、喘息、多発性硬化症および炎症性腸疾患から選択される。別の実施形態において、疾患はクローン病である。さらに別の実施形態において、疾患は関節リウマチである。
【0038】
別の態様において、本発明は、式Iの化合物:
【0039】
【化14】

または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの調製方法を提供し、
式中、
は、CからCのアルキルおよびCからCのハロアルキルからなる群から選択され;
は、CからCのアルキル、CからCのアルケニル、CからCのアルキニル、およびCからCのシクロアルキルからなる群から選択され、
この方法は、
(a)式IIIの化合物:
【0040】
【化15】

[Pgはカルボキシル保護基である]
を、還元的アミノ化条件下で、CからCのアルデヒドまたはケトン、CからCのアルケニルアルデヒドまたはアルケニルケトン、CからCのアルキニルアルデヒドまたはアルキニルケトン、C〜Cシクロアルキルケトンおよびベンズアルデヒドに接触させて、式IVの化合物:
【0041】
【化16】

を得ること、
(b)化合物IVを、式Vの化合物:
【0042】
【化17】

を生成する条件下で、式RSOZ(Zはハロである)のスルホニルハライドに接触させること、および
(c)カルボキシル保護基を除去して、式Iの化合物を得ること
を含む。
【0043】
別の態様において、本発明は、式Iの化合物:
【0044】
【化18】

または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの調製方法を提供し、
式中、
は、CからCのアルキルおよびCからCのハロアルキルからなる群から選択され;
は、CからCのアルキル、CからCのアルケニル、CからCのアルキニル、およびCからCのシクロアルキルからなる群から選択され、
この方法は、
(a)式VIの化合物:
【0045】
【化19】

[Pgはカルボキシル保護基である]
を、過剰のR’SOXに接触させて、式VIIの化合物:
【0046】
【化20】

を得ること、
(b)式VIIの化合物から1つの−SOR’基を選択的に除去して、式VIIIの化合物:
【0047】
【化23】

を得ること、
(c)式VIIIの化合物を、式R−X(Xはハロである)を有するアルキル化剤、またはRがメチルである時は硫酸ジメチルに接触させて、式IXの化合物を生成させること、および
【0048】
【化24】

(d)カルボキシル保護基を除去して、式Iの化合物を得ること
を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
前記のように、本発明は、白血球の接着を、特に、α4インテグリン、好ましくはVLA−4により少なくとも部分的に媒介される白血球の接着を阻害する化合物に関する。しかし、本発明をさらに詳細に説明する前に、まず、次の用語を定義する。
【0050】
定義
特に断らなければ、明細書および特許請求の範囲において用いられる次の用語は、下に記載の意味を有する。
【0051】
本明細書において、特に断らなければ、「アルキル」は、1から4個の炭素原子、好ましくは1から3個の炭素原子を有する線状または分岐状の1価の炭化水素基を表す。この用語は、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルのような基によって例示される。
【0052】
「アルケニル」は、少なくとも1つ、好ましくは1つのビニル(>C=C<)不飽和部分を有する、2から4個の炭素原子、好ましくは2から3個の炭素原子の線状または分岐状の1価の炭化水素基を表す。このようなアルケニル基の例には、ビニル(−CH=CH)、アリル(−CHCH=CH)、n−プロペン−1−イル(−CH=CHCH)、n−ブテン−2−イル(−CHCH=CHCH)などが含まれる。この用語には、シスおよびトランス異性体またはこれらの異性体の混合物が含まれる。
【0053】
「アルケニル」は、少なくとも1つ、好ましくは1つのアセチレン性不飽和(−C≡C−)部分を有し、2から4個の炭素原子、好ましくは2から3個の炭素原子を有する線状または分岐状の1価の炭化水素基を表す。このようなアルケニル基の例には、アセチレニル(−C≡CH)、プロパルギル(−CH≡CH)、n−プロピン−1−イル(−CH≡CHCH)などが含まれる。
【0054】
「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを表し、好ましくは、フルオロまたはクロロのいずれかである。
【0055】
「ハロアルキル」は、1から5個のハロ基を有するアルキル基を表す。好ましくは、このような基は1から3個のハロ基および1から2個の炭素原子を有する。ハロアルキル基の例には、ハロメチル(例えば、フルオロメチル)、ジハロメチル(例えば、ジフルオロメチル)、トリハロメチル(例えば、トリフルオロメチル)、ハロエチル(例えば、2−クロロエト−1−イル)、トリハロエチル(例えば、2,2,2−トリフルオロエト−1−イル)、ハロプロピル(例えば、3−クロロプロプ−1−イル)およびトリハロプロピル(例えば、3,3,3−トリフルオロプロプ−1−イル)が含まれる。
【0056】
「薬学的に許容される担体」は、一般的に、安全で毒性がなく、生物学的にも他の点でも望ましくなくはない医薬組成物を調製するのに有用な担体を意味し、ヒトの医薬用途だけでなく獣医薬用途にも許容される担体を含む。本明細書および特許請求の範囲において用いられる「薬学的に許容される担体」には、このような担体の1種および2種以上のどちらも含まれる。
【0057】
「薬学的に許容される塩」は、本発明の化合物の生物学的効果および性質を保持し、生物学的にも他の点でも望ましくなくはない塩を表す。多くの場合、本発明の化合物は、アミノおよび/またはカルボキシル基あるいはこれらに似た基の存在のおかげで、酸および/または塩基の塩を生成できる。
【0058】
薬学的に許容される塩基付加塩は、無機および有機の塩基から調製できる。無機塩基から誘導される塩には、単に例としてであるが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、およびマグネシウムの塩が含まれる。有機塩基から誘導される塩には、これらに限らないが、第1級、第2級、および第3級アミン、例えば、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン、置換アルキルアミン、ジ(置換アルキル)アミン、トリ(置換アルキル)アミン、アルケニルアミン、ジアルケニルアミン、トリアルケニルアミン、置換アルケニルアミン、ジ(置換アルケニル)アミン、トリ(置換アルケニル)アミン、シクロアルキルアミン、ジ(シクロアルキル)アミン、トリ(シクロアルキル)アミン、置換シクロアルキルアミン、ジ置換シクロアルキルアミン、トリ置換シクロアルキルアミン、シクロアルケニルアミン、ジ(シクロアルケニル)アミン、トリ(シクロアルケニル)アミン、置換シクロアルケニルアミン、ジ置換シクロアルケニルアミン、トリ置換シクロアルケニルアミン、アリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ヘテロアリールアミン、ジヘテロアリールアミン、トリヘテロアリールアミン、複素環アミン、ジ複素環アミン、トリ複素環アミン、混合ジ−およびトリ−アミン(そのアミンの置換基の少なくとも2つが異なり、アルキル、置換アルキル、アルケニル、置換アルケニル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、シクロアルケニル、置換シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール、複素環などからなる群から選択される)の塩が含まれる。やはり含まれるのは、2つまたは3つの置換基が、アミノ窒素と一緒に、複素環式またはヘテロアリール基を形成するアミンである。
【0059】
適切なアミンの例には、単に例としてであるが、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリ(イソ−プロピル)アミン、トリ(n−プロピル)アミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、トロメタミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、N−アルキルグルカミン、テオブロミン、プリン類、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、N−エチルピペリジンなどが含まれる。他のカルボン酸誘導体、例えば、カルボン酸アミド(カルボキサミド、低級アルキルカルボキサミド、ジアルキルカルボキサミド、などが含まれる)は、本発明の実施において有用であると思われることもまた理解されるべきである。
【0060】
薬学的に許容される酸付加塩は、無機および有機の酸から調製され得る。無機酸から誘導される塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸の塩などが含まれる。有機酸から誘導される塩には、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエン−スルホン酸、サリチル酸などの塩が含まれる。
【0061】
「薬学的に許容される陽イオン」という用語は、薬学的に許容される塩の陽イオンを表す。
【0062】
本明細書において定義されている置換基の全てにおいて、それら自体に対するさらなる置換基を有する置換基を定義することにより(例えば、それ自体置換アリール基により置換されている置換アリール基を、置換基として有する置換アリール、など)到達するポリマーは、本明細書では、含めると意図されていない。このような場合、このような置換基の最大数は3つである。すなわち、上の定義の各々は、例えば、置換アリール基は、−置換アリール−(置換アリール)−(置換アリール)までに限定されるという制限によって制約されている。
【0063】
疾患を「治療すること」またはその「治療」は、
(1)疾患を防止すること、すなわち、疾患に曝される、または罹り易くなっているかもしれないが、まだ疾患の症状を経験していない、または示していない哺乳動物において、疾患の臨床症状を示さないようにすること、
(2)疾患を抑制すること、すなわち、疾患またはその臨床徴候の進展を阻む、または弱めること、あるいは、
(3)疾患を和らげること、すなわち、疾患またはその臨床徴候を軽減すること
を含む。
【0064】
「治療有効量」は、疾患を治療するために哺乳動物に投与された時、その疾患に対するこのような治療を達成するのに十分である、化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重篤度、ならびに治療される哺乳動物の年齢、体重などに応じて変わるであろう。
【0065】
インテグリンは、大部分の細胞外マトリックスタンパク質、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、およびラミニンに結合する、動物細胞上の主な受容体である、膜貫通相同リンカータンパク質の大きなファミリーである。インテグリンは、α鎖およびβ鎖からなるヘテロダイマーである。今日まで、9種の異なるαサブユニットおよび14種の異なるβサブユニットから作られる、20種の異なるインテグリンヘテロダイマーが確認されている。「α4インテグリン」という用語は、βサブユニットのいずれかと対になったα4サブユニットを含む種類のヘテロダイマーで酵素連結型細胞表面受容体を表す。VLA−4は、α4インテグリンの例であり、α4とβ1サブユニットとのヘテロダイマーであり、α4β1インテグリンとも呼ばれる。
【0066】
化合物調製
本発明の化合物は、容易に入手できる出発物質から、次の一般的方法および手順を用いて調製できる。典型的な、または好ましいプロセス条件(すなわち、反応温度、時間、反応物のモル比、溶媒、圧力など)が記載されるが、特に断らなければ、他のプロセス条件もまた用いられ得ることが理解されるであろう。最適な反応条件は、用いられる特定の反応物または溶媒により変わり得るが、このような条件は、当業者により、慣例となっている最適化手順によって決定され得る。
【0067】
さらに、当業者には明らかであろうが、特定の官能基が望ましくない反応を受けることを防ぐために、一般に用いられている保護基が必要であり得る。様々な官能基に対する適切な保護基、さらには特定の官能基を保護し、脱保護するための適切な条件は、当技術分野においてよく知られている。例えば、多数の保護基が、T. W. Greene、およびG. M. Wuts、「Protecting Groups in Organic Synthesis」、第2版、Wiley、New York、1991年、およびそれに引用されている参考文献に記載されている。
【0068】
さらに、本発明の化合物は通常、1つまたは複数のキラル中心を含むであろう。したがって、望まれる場合、このような化合物は、純粋な立体異性体として、すなわち、個々のエナンチオマーまたはジアステレオマーとして、あるいは立体異性体濃縮(enriched)混合物として、調製または分離できる。このような立体異性体(および濃縮混合物)の全ては、特に断らなければ、本発明の範囲内に含まれる。純粋な立体異性体(または濃縮混合物)は、例えば、光学活性出発物質、または当技術分野においてよく知られている立体選択的な試薬を用いて調製され得る。別法として、このような化合物のラセミ混合物は、例えば、キラルカラムクロマトグラフィー、キラル分割試薬などを用いて分離できる。
【0069】
本発明のほとんどの化合物は、ChemDraw v.10.0(Cambridgesoft(100 Cambridge Park Drive、Cambridge、MA 02140)から入手可能)を用いて命名された。
【0070】
一実施形態において、本発明の化合物は、スキーム1として下に記載されるようにして調製でき、このスキームでは、単に例示の目的で、Rはメチルであり、Rはイソプロピルである。
【0071】
【化25】

ここで、Pgは、ベンジル、t−ブチルなどのようなカルボキシル保護基である。
【0072】
スキーム1は、Rがアルキルまたはシクロアルキルである化合物の調製に特に有用である。
【0073】
スキーム1において、5−アミノピリミジン出発中間体(化合物1.1)は、米国特許第7026384号B1に詳細に記載され、例示のみのために、このスキームでは、4−置換フェニルアラニン誘導体として示されている。言うまでもなく、2−および3−置換フェニルアラニン誘導体は同様の反応経路に従うであろうことが理解される。
【0074】
具体的には、スキーム1において、5−アミノ−2−ジエチルアミノ−4−置換ピリミジン(化合物1.1)(5重量%Pd/Cまたは5重量%PtOによる還元によって、対応する5−ニトロ−ピリミジンから調製される)が、通常の還元的アミノ化条件下で、僅かに過剰のC〜Cアルデヒドまたはケトン(スキーム1ではアセトンにより例示されている)と反応させられる。スキーム1では、化合物1.1の5−アミノ基が中間体イミン(示されていない)を生成し、これが、通常の還元剤(例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、PtOのような適切な触媒上の水素など)によって、対応するアミン(化合物1.2)にin situで還元される。反応は、テトラヒドロフラン、塩化メチレンなどのような適切な不活性稀釈剤中で実施される。反応は、反応が実質的に完了するまで(これは、通常、約0.5から16時間以内に起こる)、約0℃から約30℃に保たれる。反応が完了すると、化合物1.2は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過などを含めて、通常の方法によって回収されるか、あるいは別法として、精製および/または分離なしに次のステップで用いられる。
【0075】
対応するアルキルスルホニルアミド基(化合物1.3)への化合物1.2のアミン基の変換は、通常の方法により進行する。例えば、1つの方法では、化合物1.2は、生成する酸を捕捉するための適切な塩基、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなどの存在下に、僅かに過剰のアルカンスルホニルハライド、例えばメタンスルホニルクロリドに接触させられる。反応は、好ましくは、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルムなどのような適切な不活性溶媒中で実施される。反応は、好ましくは、約−5℃から−30℃で実施され、反応が実質的に完了するまで(これは、通常、0.5から16時間で起こる)続けられる。反応が完了すると、化合物1.3は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過などを含めて、通常の方法によって回収できる、あるいは別法として、精製および/または分離なしに次のステップで用いられる。
【0076】
アルキルスルホニルハライドは、知られている化合物か、または通常の合成手順によって調製できる化合物のいずれかである。このような化合物は通常、対応するスルホン酸から、すなわち、式R−SOH(Rは上で定義された通りである)の化合物から、三塩化リンおよび五塩化リンを用いて調製される。スルホニルクロリドを得るために、反応は通常、溶媒無しかまたは不活性溶媒(例えば、ジクロロメタン)中のいずれかで、0℃から約80℃の範囲の温度で、約1から約48時間、スルホン酸を約2から5モル当量の三塩化リンまたは五塩化リンに接触させることによって実施される。別法として、スルホニルクロリドは、対応するチオール化合物から、すなわち、式R−SH(Rは上で定義された通りである)の化合物から、このチオールを通常の反応条件下で塩素(Cl)および水により処理することによって調製できる。
【0077】
本発明において使用されるスルホニルクロリドの例には、これらに限らないが、メタンスルホニルクロリド、エタンスルホニルクロリド、2−プロパンスルホニルクロリド、1−ブタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、2,2,2−トリフルオロエタンスルホニルクロリドなどが含まれる。
【0078】
次いで、化合物1.3のカルボキシル保護基は、通常の条件により外されて、式Iの化合物である化合物1.4が得られる。一実施形態において、t−ブチル保護基は、ギ酸との接触により外すことができる。別の実施形態において、ベンジル保護基は、高い水素の圧力の下で、通常メタノールのようなプロトン性溶媒中、(パラジウム/カーボン)触媒の存在下に水素に接触させることにより外すことができる。反応が完了すると、化合物1.4は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過などを含めて、通常の方法によって回収できる。
【0079】
別の実施形態において、本発明の化合物は、下にスキーム2として記載されるようにして調製できる。
【0080】
【化26】

ここで、RおよびRは本明細書で定義された通りであり、Pgはカルボキシル保護基であり、Xはハロである。
【0081】
スキーム2において、5−アミノピリミジン出発中間体(化合物1.1)は、米国特許第7026382号B1に詳細に記載されており、例示のみのために、このスキームでは、4−置換フェニルアラニン誘導体として示されている。言うまでもなく、2−および3−置換フェニルアラニン誘導体は同様の反応経路に従うであろうことが理解される。
【0082】
具体的には、スキーム2において、5−アミノ−2−ジエチルアミノ−4−置換ピリミジン(化合物1.1)(5重量%Pd/Cまたは5重量%PtOによる還元によって、対応する5−ニトロ−ピリミジンから調製される)が、生成する酸を捕捉するために適切な塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)の存在下に、僅かに過剰のR−スルホニルハライド(例えばメタンスルホニルクロリド)と反応させられる。反応は、好ましくは、適切な不活性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルムなど)中で実施される。反応は、好ましくは、約−5℃から30℃で実施され、反応が実質的に完了するまで(これは、通常、0.5から16時間で起こる)続けられる。反応が完了すると、化合物1.5は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過などを含めて、通常の方法によって回収できる、あるいは別法として、精製および/または分離なしに次のステップで用いられる。
【0083】
化合物1.5からの1つのRSO−基の選択的除去は、通常の条件下で進行する。例えば、任意選択でTHFなどの存在の下での、メタノール、エタノール、または水のようなプロトン性溶媒(例えば、メタノール/テトラヒドロフランの1:1混合物、または水/テトラヒドロフランの1:1混合物)中での化合物1.5と塩基との反応は、化合物1.6を与える。反応混合物は、過剰の適切な塩基(例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなど)を含み、反応は、好ましくは、20℃から60℃のような高温に保たれる。反応は、実質的に完了するまで(これは、通常、24〜144時間で起こる)続けられる。反応が完了すると、化合物1.6は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過などを含めて、通常の方法によって回収できる、あるいは別法として、精製および/または分離なしに次のステップで用いられる。
【0084】
化合物1.6と、過剰のアルキルハライド、硫酸ジアルキル、アルケニルハライド、アルキニルハライド、またはシクロアルキルハライド(すなわち、X−R − 「ハライド化合物」)との反応は、通常の条件下で進行して、化合物1.7を与える。この反応は通常、不活性稀釈剤(例えば、アセトン、クロロホルム、塩化メチレンなど)中で、反応の間に生成する酸を捕捉するための塩基(例えば、炭酸カリウム、トリエチルアミンなど)の存在下に、化合物1.6と、約1.1から20当量程のハライド化合物とを接触させることによって実施される。反応は、好ましくは、約20℃から60℃で実施され、実質的に完了するまで(これは、通常、0.1から16時間で起こる)続けられる。反応が完了すると、化合物1.6は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過などを含めて、通常の方法によって回収できる、あるいは別法として、精製および/または分離なしに次のステップで用いられる。
【0085】
次いで、化合物1.7のカルボキシ保護基は通常の条件により外されて、化合物1.8(式Iの化合物)が得られる。一実施形態において、t−ブチル保護基は、ギ酸との接触により外すことができる。別の実施形態において、ベンジル保護基は、高い水素の圧力の下で、通常メタノールのようなプロトン性溶媒中、(パラジウム/カーボン)触媒の存在下に水素に接触させることにより外すことができる。反応が完了すると、化合物1.8は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過などを含めて、通常の方法によって回収できる。
【0086】
さらに別の実施形態において、本発明の化合物は、下にスキーム3として記載されるようにして調製できる。
【0087】
【化27】

ここで、Rは上で定義された通りであり、Pgは、ベンジル、t−ブチルなどのようなカルボキシル保護基であり、R2’は、ヨード基に結合したCH部分を有する、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはフェニルアルキレン基である。
【0088】
スキーム1において、5−アミノピリミジン出発中間体(化合物1.1)は、米国特許第7026382号B1に詳細に記載されており、例示のみのために、このスキームでは、4−置換フェニルアラニン誘導体として示されている。言うまでもなく、2−および3−置換フェニルアラニン誘導体は同様の反応経路に従うであろうことが理解される。
【0089】
具体的には、スキーム1において、5−アミノ−2−ジエチルアミノ−4−置換ピリミジン(化合物1.1)(5重量%Pd/Cまたは5重量%PtOによる還元によって、対応する5−ニトロ−ピリミジンから調製される)が、通常の方法によって、対応するトリフルオロアセトアミド(化合物1.8)に変換される。例えば、僅かに過剰のトリフルオロ酢酸無水物が、化合物1.1と、適切な不活性稀釈剤(例えば、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、ピリジンなど)中で、一緒にされる。この反応は、反応が実質的に完了するまで(これは、通常、0.5から24時間以内に起こる)約0℃から30℃に保たれる。反応が完了すると、化合物1.8は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過などを含めて、通常の方法によって回収されるか、あるいは別法として、精製および/または分離なしに次のステップで用いられる。
【0090】
対応するN(R2’),N−トリフルオロアセトアミドピリミジン(化合物1.9)への化合物1.8の変換は、やはり、通常の技法により進行する。例えば、過剰のハライド(R2’−I)が、過剰の適切な塩基(例えば、炭酸カリウム)の存在下に、化合物1.8と、適切な不活性稀釈剤(例えば、DMF)中で一緒にされる。一実施形態において、ほぼ2当量のR2’−Iおよび炭酸カリウムが用いられる。反応は密封容器中で雰囲気条件下で保たれ、反応が実質的に完了するまで(これは、通常、20〜72時間で起こる)続けられる。反応が完了すると、化合物1.9は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過を含めて、通常の方法によって回収されるか、あるいは別法として、精製および/または分離なしに次のステップで用いられる。
【0091】
次いで、トリフルオロアセチル基は除去されて、対応するアミン(化合物1.10)が得られる。この実施形態において、トリフルオロアセチル基は、アミン保護基としての役割を果たす。上のように、この反応は、例えば、化合物1.9と大過剰の適切な塩基(例えば、炭酸カリウム)とを、水とプロトン性溶媒(例えば、メタノール)の混合物中で接触させることによって、通常の通り進行する。反応は、40℃から60℃のような高温で実施され、反応が実質的に完了するまで続けられる。反応が完了すると、化合物1.10は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過を含めて、通常の方法によって回収されるか、あるいは別法として、精製および/または分離なしに次のステップで用いられる。
【0092】
次に、対応するアルキルスルホニルアミド基(化合物1.11)への化合物1.10のアミン基の変換は、通常の方法により進行する。例えば、1つの方法では、化合物1.10が、生成する酸を捕捉するために適切な塩基(例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)の存在下に、僅かに過剰のアルキルスルホニルハライドに接触させられる。反応は、好ましくは、適切な不活性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン、クロロホルムなど)中で実施される。反応は、好ましくは、0℃から30℃で実施され、反応が実質的に完了するまで(これは、通常、2〜48時間で起こる)続けられる。反応が完了すると、化合物1.11は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過を含めて、通常の方法によって回収できる、あるいは別法として、精製および/または分離なしに次のステップで用いられる。
【0093】
化合物1.11のカルボキシル保護基は、通常の条件により除去でき、化合物1.12(式Iの化合物)が得られる。一実施形態において、t−ブチル保護基は、ギ酸との接触により外すことができる。別の実施形態において、ベンジル保護基は、高い水素の圧力の下で、通常メタノールのようなプロトン性溶媒中、(パラジウム/カーボン)触媒の存在下に水素に接触させることにより外すことができる。反応が完了すると、化合物1.12は、中和、蒸発、抽出、沈殿、クロマトグラフィー、濾過などを含めて、通常の方法によって回収できる。
【0094】
本発明はまた本発明の化合物のエステルも含む。エステルの調製は、上に記載された様々なスキームに、例えば、スキーム1(化合物1.3)、スキーム2(化合物1.7)、およびスキーム3(化合物1.11)に例示されている。さらに、実施例1は、(S)−4−(3−tert−ブトキシ−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−イソプロピルメチルスルホンアミド)−ピリミジン−4−イルアミノ)−3−オキソプロピル)フェニルピロリジン−1−カルボキシレートの調製を記載し、実施例4は、(S)−4−(3−tert−ブトキシ−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−(プロプ−2−イニル)メチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−オキソプロピル)フェニルピロリジン−1−カルボキシレートの調製を記載する。本発明の酸のエステルは、また、当技術分野においてよく知られている方法によって、酸から調製できる。例えば、アミノ酸のメチルエステルは、Brenner and Huber、Helv. Chim. Acta 1953年、36、1109頁の方法を用いて調製できる。
【0095】
医薬製剤
医薬として用いられる時、本発明の化合物は、通常、医薬組成物の形で投与される。これらの化合物は、経口、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、および鼻腔内を含めて、様々な経路によって投与できる。これらの化合物は、注射および経口組成物のどちらとしても効果的である。このような組成物は、製薬技術においてよく知られている仕方で調製され、少なくとも1種の活性化合物を含む。
【0096】
本発明はまた、活性成分として上の式I〜IIの化合物の1種または複数を、薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物も含む。本発明の組成物の製造では、活性成分は通常、賦形剤と混合され、賦形剤により希釈される、あるいは、カプセル、サシェ、紙または他の入れ物の形態であり得る担体内に包まれる。用いられる賦形剤は、通常、ヒトの患者または他の哺乳動物に投与するのに適する賦形剤である。賦形剤が稀釈剤としての役目を果たす時、それは、活性成分のビヒクル、担体、媒体の機能を果たす、固体、半固体、または液体の物質であり得る。こうして、本発明の組成物は、錠剤、丸剤、粉末、薬用ドロップ、サシェ、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体として、または液体媒体における)、例えば10重量%までの活性化合物を含む軟膏、ソフトおよびハードゼラチンカプセル、坐薬、滅菌注射液、ならびにパッケージ化滅菌粉末の形態であり得る。
【0097】
製剤の調製において、活性化合物を、他の成分と一緒にする前に、粉砕して適切な粒径にする必要があり得る。活性化合物が実質的に不溶である場合、それは通常、200メッシュ未満の粒径に粉砕される。活性化合物が実質的に水溶性である場合、粒径は通常、製剤において実質的に均一な分布が得られるように、粉砕により、例えば約40メッシュに調整される。
【0098】
適切な賦形剤のいくつかの例には、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン類、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、マイクロクリスタリンセルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースが含まれる。製剤は、さらに、滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイル;湿潤剤;乳化剤および懸濁剤;保存剤、例えば、ヒドロキシ安息香酸メチルおよびプロピル;甘味料;ならびに香味料を含み得る。本発明の組成物は、当技術分野において知られている手順を用いることによって、患者に投与された後、活性成分を速放、持続または遅延放出させるように製剤できる。
【0099】
静脈内製剤による治療剤の投与は、製薬業界においてよく知られている。静脈内製剤は、単に治療剤が可溶である組成物であること以外に、特定の品質を有しているべきである。例えば、製剤は(複数の)活性成分の全体としての安定性を高めるべきであり、また、製剤の製造は費用効率の高いものであるべきである。これらの要素の全てが、最終的に、静脈内製剤の全体としての成功および有用性を決める。
【0100】
本発明の化合物の医薬製剤に含められ得る他の補助的な添加剤は、次の通りである:溶媒:エタノール、グリセロール、プロピレングリコール;安定剤:エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸;殺菌性保存剤:ベンジルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン;緩衝剤:クエン酸/クエン酸ナトリウム、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウム、酢酸/酢酸ナトリウム、マレイン酸/マレイン酸ナトリウム、フタル酸水素ナトリウム、リン酸/リン酸二水素カリウム、リン酸/リン酸水素二ナトリウム;および張性調整剤(tonicity modifier):塩化ナトリウム、マンニトール、デキストロース。
【0101】
緩衝剤の存在は、約4から約8の範囲、より好ましくは約4から約6の範囲に水溶液のpHを保つために必要であり得る。緩衝系は、一般的に、弱酸とその可溶性塩の混合物、例えば、クエン酸ナトリウム/クエン酸;あるいは、二塩基酸のモノカチオンまたはジカチオン塩、例えば、酒石酸水素カリウム、酒石酸水素ナトリウム、リン酸/リン酸二水素カリウム、およびリン酸/リン酸水素二ナトリウムである。
【0102】
使用される緩衝系の量は、(1)所望のpH;および(2)薬剤の量に依存する。一般的に、使用される緩衝系の量は、4から8の範囲のpHに保つために、製剤の緩衝剤:薬剤のモル比で(緩衝剤のモル数は、緩衝剤成分、例えば、クエン酸ナトリウムおよびクエン酸を合わせたモル数と見なされている)0.5:1から50:1であり、通常、緩衝剤(合わせた)と存在する薬剤とのモル比で1:1から10:1が用いられる。
【0103】
本発明において有用な1つの緩衝剤は、組成物の水溶液のpHを4〜6に保つのに十分な、1mL当たり1から15mgのクエン酸に対して、1mL当たり5から50mgのクエン酸ナトリウムの範囲のクエン酸ナトリウム/クエン酸である。
【0104】
緩衝剤はまた、ガラス容器またはゴム栓から浸出するか、あるいは普通の水道水に存在し得る、溶解した金属イオン(例えば、Ca、Mg、Fe、Al、Ba)による、可溶性金属の錯体生成による薬剤の沈殿を防ぐためにも存在し得る。緩衝剤は、薬剤との競合的錯化剤として働き、望ましくない微粒子の生成に至る、可溶性金属の錯体を生成し得る。
【0105】
さらに、添加剤、例えば、ヒトの血液と同じ値に張性を調節するための約1〜8mg/mLの量の塩化ナトリウムの存在は、静脈内製剤の投与で、吐き気または下痢のような望ましくない副作用に、また可能性として関連する血液障害に至り得る、赤血球の膨張または収縮を避けるために必要であり得る。一般に、製剤の張性は、282から288mOsm/kgの範囲にあるヒトの血液のそれに合致し、一般に、285mOs/kgであり、この値は、塩化ナトリウムの0.9%溶液に対応する浸透圧に等しい。
【0106】
静脈内製剤は、直接の静脈内注射(i.v.ボーラス)によって投与できる、あるいは、0.9%塩化ナトリウム注射液または他の適合する注入溶液のような適当な注入溶液に加えることにより、注入によって投与できる。
【0107】
本発明の組成物は、好ましくは、経口の単位投与形態として製剤され、各投与は、約1から約250mg、より普通には約5から約100mg、例えば約10から約30mgの活性成分を含む。「単位投薬形態」という用語は、ヒトの患者または他の哺乳動物に対して、一体化した投与として適する物理的に分離している単位を表し、各単位は、所望の治療効果を生ずるように計算された予め決められた量の活性物質を、適切な医薬賦形剤と共に含む。
【0108】
活性化合物は広い投与量範囲に渡って効果があり、通常、薬学的に有効な量で投与される。しかし、実際に投与される化合物の量は、治療される病状、選択される投与経路、投与される実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、および反応、患者の症状の重篤度などを含めて、関連する状況を考慮に入れて、医師により決められることが理解されるであろう。
【0109】
錠剤のような固体組成物の調製では、活性主成分は、本発明の化合物の均質な混合物を含む固体予備製剤組成物を生成するために、医薬賦形剤と混合される。これらの予備製剤組成物を均質であると言う場合、活性成分が組成物の全体に一様に分散しているので、組成物が、錠剤、丸剤およびカプセルのような、等しく効果的な単位投与形態に容易に小分割できることを意味する。次いで、この固体予備製剤は、例えば0.1から約500mgの本発明の活性成分を含む、前記のタイプの単位投与形態に小分割される。
【0110】
本発明の錠剤または丸剤は、長期作用の利点をもたらす投与形態とするために、コーティングされても、あるいは別の仕方で構成されてもよい。例えば、錠剤または丸剤は、内側投与部分および外側投与部分を備え、後者が前者を覆う外皮の形態になっていてもよい。この2つの部分は溶腸性の層によって隔てることができ、この層は、胃における崩壊に抗し、内側部分がそのまま十二指腸に入るか、または遅れて放出されるように働く。様々な材料が、このような腸溶性の層またはコーティングのために使用でき、このような材料には、かなりの数のポリマー酸、ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコール、およびセルロースアセテートのような材料との混合物が含まれる。
【0111】
本発明の新規組成物が経口投与または注射による投与のために組み入れられ得る液体の形態には、水溶液、適切に香味付けされたシロップ、水性または油性懸濁液、および食用オイル(例えば、綿実油、ゴマ油、ココナッツオイル、またはピーナッツオイル)、さらにはエレキシル剤および類似の医薬ビヒクルにより香味付けされたエマルジョンが含まれる。
【0112】
吸入または通気のための組成物には、薬学的に許容される水性溶媒または有機溶媒の溶液および懸濁液、あるいはこれらの混合物、ならびに粉末が含まれる。液体または固体の組成物は、前記の薬学的に許容される適切な賦形剤を含み得る。好ましくは、本発明の組成物は、局部的または全身的効果のために、経口または鼻による呼吸器経路によって投与される。好ましくは薬学的に許容される溶媒中の組成物は、不活性ガスの使用によって霧状にされ得る。霧状にされた溶液は、霧化装置から直接吸い込まれてもよい、あるいは、霧化装置がフェイステントマスク(face masks tent)または間欠的な陽圧呼吸器に取り付けられていてもよい。溶液、懸濁液、または粉末の組成物は、適切なやり方で製剤を送り届ける装置から、好ましくは経口または経鼻で、投与され得る。
【0113】
次の製剤例は、本発明の医薬組成物を例示する。
【0114】
製剤例1
次の成分を含むハードゼラチンカプセルが調製される。
【0115】
成分 量(mg/カプセル)
活性成分 30.0
デンプン 305.0
ステアリン酸マグネシウム 5.0
上の成分は、混合され、340mgの量でハードゼラチンカプセルに充填される。
【0116】
製剤例2
錠剤製剤が下の成分を用いて調製される。
【0117】
成分 量(mg/錠剤)
活性成分 25.0
セルロース、マイクロクリスタリン 200.0
コロイド状二酸化ケイ素 10.0
ステアリン酸 5.0
成分はブレンドされ、錠剤とするために圧縮され、各240mgの重さである。
【0118】
製剤例3
次の成分を含む、吸入器用の乾燥粉末製剤が調製される。
【0119】
成分 重量%
活性成分 5
ラクトース 95
活性成分はラクトースと混合され、混合物は乾燥粉末吸入器具に入れられる。
【0120】
製剤例4
錠剤(各30mgの活性成分を含む)が次の通り調製される。
【0121】
成分 量(mg/錠剤)
活性成分 30.0mg
デンプン 45.0mg
マイクロクリスタリンセルロース 35.0mg
ポリビニルピロリドン 4.0mg
(滅菌した水に10%溶液として)
デンプングリコール酸ナトリウム 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
タルク 1.0mg。
【0122】
活性成分、デンプン、およびセルロースは、No.20メッシュのU.S.篩に通され、十分に混合される。得られた粉末とポリビニルピロリドンの溶液が混合され、次いで、16メッシュのU.S.篩に通される。こうして生成した顆粒は、50℃から60℃で乾燥され、16メッシュのU.S.篩に通される。デンプングリコール酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、およびタルクは、前もってNo.30メッシュのU.S.篩に通され、次いで、前記顆粒に加えられ、混合した後、打錠機で圧縮されて、各120mgの重さの錠剤を生じる。
【0123】
製剤例5
カプセル(各40mgの薬剤を含む)が次の通り製造される。
【0124】
成分 量(mg/カプセル)
活性成分 40.0mg
デンプン 109.0mg
ステアリン酸マグネシウム 1.0mg
合計 150.0mg
活性成分、デンプンおよびステアリン酸マグネシウムがブレンドされ、No.20メッシュのU.S.篩に通され、150mgの量でハードゼラチンカプセルに充填される。
【0125】
製剤例6
坐薬(各25mgの活性成分を含む)が次の通り製造される。
【0126】
成分 量
活性成分 25mg
飽和脂肪酸グリセリド 2,000mgになるまで
活性成分が、No.60メッシュのU.S.篩に通され、必要とされるできるだけ少ない熱を用いて前もって融解された飽和脂肪酸グリセリドに懸濁される。次いで、この混合物は、2.0gの公称容量の坐薬型に注がれ、放冷される。
【0127】
製剤例7
懸濁液(5.0mlの用量当たり、各々50mgの薬剤を含む)が次の通り製造される。
【0128】
成分 量
活性成分 50.0mg
キサンタンガム 4.0mg
カルボキシメチルセルロースナトリウム
(11%)
マイクロクリスタリンセルロース(89%) 50.0mg
スクロース 1.75mg
安息香酸ナトリウム 10.0mg
香味料および着色剤 十分量
精製水 5.0mLになるまで。
【0129】
活性成分、スクロールおよびキサンタンガムはブレンドされ、No.10メッシュのU.S.篩に通され、次いで、前もって調製したマイクロクリスタリンセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムの水溶液と混合される。安息香酸ナトリウム、香味料、および着色剤は、いくらかの水により希釈され、撹拌しながら添加される。次いで、必要とされる体積となるように十分な量の水が添加される。
【0130】
製剤例8
成分 量
(mg/カプセル)
活性成分 15.0mg
デンプン 407.0mg
ステアリン酸マグネシウム 3.0mg
合計 425.0mg
活性成分、デンプン、およびステアリン酸マグネシウムはブレンドされ、No.20メッシュのU.S.篩に通され、425.0mgの量でハードゼラチンカプセルに充填される。
【0131】
製剤例9
皮下製剤は次の通り調製できる。
【0132】
成分 量
活性成分 5.0mg
トウモロコシ油 1.0mL
製剤例10
静脈内製剤は次の通り調製できる。
【0133】
成分 量
活性成分 250mg
等張生理食塩水 1000mL。
【0134】
本発明の方法において用いられる別の製剤は、経皮デリバリーデバイス(「パッチ」)を用いる。このような経皮パッチは、制御された量で本発明の化合物を連続的または不連続的に注入するために使用され得る。薬剤のデリバリーのための経皮パッチの作製および使用は、当技術分野においてよく知られている。例えば、1991年6月11日に発行された米国特許第5023252号(本明細書に参照を通じて組み込まれる)を参照。このようなパッチは、薬剤の連続的、脈動的、または要求に応じたデリバリーのために作製され得る。
【0135】
しばしば、医薬組成物を脳に、直接または間接的かのいずれかで、導入することが望ましい、または必要であろう。直接的な技法は通常、血液脳関門を避けて迂回するために、薬剤デリバリーカテーテルを患者の脳室系に配置することを含む。身体の特定の解剖学的部位に生体因子を運ぶために使用される、このような埋め込み型デリバリーシステムの1つは、米国特許第5011472号に記載されており、この特許は、参照を通じて本明細書に組み込まれる。
【0136】
間接的な技法は通常、親水性薬剤を脂溶性薬剤に変換することによって薬剤を潜伏化(latentiation)するように、組成物を処方することを含む。潜伏化は、一般的に、薬物をより脂溶性にし、そして血液脳関門を横切って運ばれ易くするために、その薬物上に存在するヒドロキシル基、カルボニル基、硫酸基、および第一アミン基をブロッキングすることを通じて達成される。別法として、親水性薬剤のデリバリーは、血液脳関門を一時的に開くことができる高張液の動脈内注入により向上され得る。
【0137】
本発明において使用される他の適切な配合は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mace Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版(1985年)に見出すことができる。
【0138】
上で注意したように、本明細書に記載されている化合物は、前記の様々なドラッグデリバリーシステムに使用するのに適する。さらに、投与された化合物のin vivo血清中半減期を増大させるために、化合物は、コロイドとして調製されるリポソームの内腔に、包み込まれ、導入されてもよく、あるいは、化合物の血清中半減期を延ばす他の通常の技法が用いられてもよい。例えば、Szokaらの米国特許第4235871号、米国特許第4501728号、および米国特許第4837028号(これらの特許の各々は参照を通じて本明細書に組み込まれる)に記載のように、様々な方法がリポソームを調製するために利用できる。
【0139】
所望の生体活性を有する化合物は、改善された薬理学的性質(例えば、in vivoでの安定性、生体利用能)のような所望の性質、あるいは、診断用途では被検出能をもつように、必要に応じて修飾され得る。安定性は、様々なやり方で、例えば、ペプチダーゼあるいはヒトの血漿または血清と共にインキュベートしている間のタンパク質の半減期を求めることによって評価分析できる。かなりの数のこのようなタンパク質安定性アッセイが記載されている(例えば、Verhoefら、Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet.、1990年、15(2):83〜93頁を参照)。
【0140】
本発明のコンジュゲート(conjugate)は、VLA−4のアンタゴニストであり、非コンジュゲート化合物に比べてin vivoでの保持が向上していると考えられる。体内でのコンジュゲートのこのような保持の向上により、薬剤の必要な投与量は減少し、このため、転じて、副作用が少なくなり、毒性の可能性が低下する。さらに、薬剤製剤は、同様の、または改善された治療効果を達成しながら、より少ない頻度で患者に投与され得る。
【0141】
本発明のコンジュゲートは、VLA−4への競合的結合によって、VLA−4により媒介される、内皮細胞への白血球の接着の阻害をin vivoで示すと予想される。好ましくは、本発明の化合物は、VLA−4または白血球の接着により媒介される疾患の治療のための静脈内製剤に使用できる。このような疾患には、哺乳動物患者における炎症性疾患、例えば、喘息、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、AIDS痴呆、糖尿病(急性若年型糖尿病が含まれる)、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎およびクローン病が含まれる)、多発性硬化症、関節リウマチ、組織移植、腫瘍転移、髄膜炎、脳炎、脳卒中、および他の脳外傷、腎炎、網膜炎、アトピー性皮膚炎、乾癬、心筋虚血、および急性白血球介在肺傷害(例えば、成人呼吸窮迫症候群で起こるもの)が含まれる。本発明の製剤は、クローン病のような炎症性腸疾患、多発性硬化症および関節リウマチの治療に特に有用である。
【0142】
炎症性の病気の治療における効能を実証するための適切なin vivoモデルには、マウス、ラット、モルモットまたは霊長類におけるEAE(実験的自己免疫性脳脊髄炎)、さらには、α4インテグリンに依存する他の炎症モデルが含まれる。
【0143】
炎症性腸疾患または「IBD」は、腹部の激痛および疼痛、下痢、体重低下ならびに腸内出血を含む症状により一般的に現れる、腸に炎症を起こさせる1群の障害を表す。IBDは、2つの似た疾患である潰瘍性大腸炎(「UC」)およびクローン病(「CD」)に対する全体語である。
【0144】
クローン病(「CD」)は、消化(GI)管に炎症を生ずる慢性的自己免疫障害である。GI管のどの部分も関係し得るが、最も普通には、CDは、小腸および/または結腸を冒す。クローン病では、腸の全ての重なりが関係し得るし、正常で健康な腸が、病んだ腸の断片の間に存在し得る。CDは、線維症、狭窄症および裂傷(fissuring)、疾患路と、隣接構造体(すなわち、膀胱、他の腸セグメント、皮膚)との間の瘻孔ならびに膿瘍と関連する。CD患者は通常、下痢、腹痛および体重低下と共存している。腹痛は通常、一見無害であるが実は有害で、柔らかい、炎症性の塊を伴い得る。熱、体重低下、口内炎、肛門周囲瘻孔および/または裂傷、関節炎、ならびに結節性紅斑が全て、一般的に見られる。CDに関連するかなりの死亡率が、特に、現在入手できる薬剤によって制御されない疾患を有する患者において、ある。中程度または重篤な疾患を有する患者の75%までは手術を必要とし、これらの患者の75%までは、手術後の疾患の再発を10年以内に経験し、50%までは、20年以内に再手術を受けるであろう。この高い再発率は、活動期疾患および疾患寛解の維持の両方のための新しい効果的な治療が必要であることを示す。
【0145】
潰瘍性大腸炎または「UC」は、出血性下痢に特徴がある、大腸および直腸の慢性的、一時的、炎症性疾患である。潰瘍性大腸炎は、大部分は結腸粘膜および粘膜下層に限定された炎症反応である。潰瘍性大腸炎は位置によって分類できる:「直腸炎」は、直腸だけに関係し、「直腸S状結腸炎」は直腸およびS状結腸を冒し、「左側大腸炎」は大腸の左側全体を含み、「全大腸炎」は結腸全体に炎症を起こす。リンパ球およびマクロファージは、炎症性腸疾患の病変部に非常にたくさんあり、炎症傷害に寄与し得る。炎症性腸疾患(IBD)の例示的動物モデルは、HLA−B27トランスジェニックラットで実施される。これらのラットは、脊椎関節症(骨格に影響を及ぼす1群の炎症性の病気)に関連するヒトHLA−B27分子(重鎖およびベータグロブリン遺伝子)を過剰発現する。骨格の炎症性の変化の発症前に、これらの動物は、小腸に非肉芽腫炎を示し、結腸に陰窩膿瘍をびまんさせる(ヒトのクローン病の病変に似た病変)。効能の研究は、下の実施例Jに記載するように、本発明の化合物を用いて、HLA−B27トランスジェニックラットIBDモデルで実施した。
【0146】
喘息は、気管支気道の発作的狭窄を助長する様々な刺激に対する気管−気管支樹の反応性の増大により特徴付けられる疾患である。前記刺激は、IgEで被覆されたマスト細胞からの様々な炎症メディエータ(ヒスタミン、好酸球および好中球遊走因子、ロイコトリエン、プロスタグランジンおよび血小板活性化因子が含まれる)の放出を引き起こす。これらの因子の放出は、好塩基球、好酸球および好中球を補充し、これらが炎症傷害を引き起こす。
【0147】
喘息のin vivo研究のための適切ないくつかの動物モデルには、ラット喘息モデル、マウス喘息モデル、および実施例Eに記載のヒツジモデルが含まれ得る。
【0148】
アテローム性動脈硬化症は、動脈(例えば、冠状動脈、頸動脈、大動脈および腸骨動脈)の疾患である。基本的な病変部であるアテロームは、内膜内に盛り上がった病巣プラーク(脂質のコアと被覆している繊維性の皮膜とを有する)からなる。アテロームは動脈血流を危険に曝し、冒された動脈を弱くする。心筋および脳梗塞は、この疾患の主な結果である。マクロファージおよび白血球は、アテロームに補充され、炎症傷害に寄与する。
【0149】
関節リウマチは、関節の損傷および破壊を主に引き起こす、慢性、再発性の炎症性疾患である。関節リウマチは、最初、手および足の小関節を冒すが、次いで、手首、肘、足首および膝に影響を及ぼし得る。関節炎は、骨膜細胞と、関節の骨膜表層に循環から浸潤する白血球との相互作用により生じる。例えば、Paul、Immunology(3版、Raven Press、1993年)参照。時間が経つと、骨びらん、軟骨の破壊、および関節の一体性の完全な喪失が起こり得る。いつかは、多数の器官系が冒され得る。
【0150】
関節リウマチにおける関節損傷は、可能性として自己免疫または感染による、引金となる偶発事象の後で、滑膜マクロファージおよび線維芽細胞の増殖で始まる。リンパ球は血管周辺部分に浸潤し、内皮細胞が増殖する。次いで、血管新生が起こる。冒された関節の血管は、炎症細胞の小さな凝塊(clot)により塞がれるようになる。時間が経つと、炎症を起こした滑膜組織が不規則に成長し始め、侵食性パンヌス組織を生成する。パンヌスは、軟骨および骨を侵食し、破壊する。多種多様なサイトカイン、インターロイキン、プロテイナーゼ、および成長因子が放出され、関節のさらなる破壊、および全身合併症の進展を引き起こす。Firestein G.S.「Etiology and pathogenesis of rheumatoid arthritis」、Ruddy S, Harris ED、Sledge CB、Kelley WN編「Kelley’s Textbook of Rheumatology」、第7版、Philadelphia:W.B. Saunders、2005年:996〜1042頁を参照。
【0151】
関節リウマチの研究のための適切な動物モデルには、本明細書の実施例GおよびHに記載のアジュバント誘発関節炎(「AIA」)およびコラーゲン誘発関節炎(「CIA」)が含まれ得る。
【0152】
本発明の化合物が望まれる別の徴候は、VLA−4により媒介される器官または移植片の拒絶の治療においてである。ここ数年に渡って、皮膚、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓および骨髄のような組織および器官を移植するための外科技術の有効性がかなり改善された。恐らく、残っている主な問題は、移植された同種移植片または器官に対する受容者の免疫寛容を誘発させる、満足のいく薬剤の無いことである。同種細胞または器官が宿主に移植される時(すなわち、提供者および受容者が同じ種の異なる個人である)、宿主の免疫系は、移植体の外来抗原に免疫反応を仕掛けると思われ(宿主対移植片病)、移植された組織は破壊される。CD8細胞、CD4細胞および単球は全て、移植組織の拒絶に関与している。α−4インテグリンに結合する本発明の化合物は、とりわけ、受容者における、アロ抗原に誘発される免疫反応を阻止して、このような細胞が、移植された組織または器官の破壊に関与することを防ぐのに有用である。例えば、Paulら、Transplant International 9、420〜425頁(1996年);Georczynskiら、Immunology 87、573〜580頁(1996年);Georcyznskiら、Transplant. Immunol. 3、55〜61頁(1995年);Yangら、Transplantation 60、71〜76(1995年);Andersonら、APMIS 102、23〜27頁(1994年)を参照。
【0153】
VLA−4に結合する本発明の化合物に関連する用途は、「移植片対宿主」病(「GVHD」)に関与する免疫反応を修飾することにある。Schlegelら、J, Inamunol. 155、3856〜3865(1995年)を参照。GVHDは、免疫能のある細胞が同種受容体に移された時に起こる、命に関わる可能性のある疾患である。この状況では、提供者の免疫能細胞が、受容者の組織を攻撃し得る。皮膚、腸管上皮および肝臓の組織は、よくある標的であり、GVHDの進行の間に破壊され得る。この疾患は、骨髄移植におけるような、免疫組織が移植されている時に、特に重大な問題を生じる;しかし、心臓および肝臓移植を含めて他の場合に同様に、重篤でないGVHDもまた報告されている。本発明の治療剤は、とりわけ、提供者のT細胞の活性化を阻止して、宿主の標的細胞を溶解させるそれらの能力を阻むために使用される。
【0154】
本発明の化合物のさらなる用途は、腫瘍転移を抑制することである。いくつかの腫瘍細胞は、VLA−4を発現すると報告されており、VLA−4に結合する化合物は、このような細胞が内皮細胞に接着することを阻止する。Steinbackら、Urol. Res. 23、175〜83頁(1995年);Oroszら、Int. J. Cancer 60、867〜71頁(1995年);Freedmanら、Leuk. Lymphoma 13、47〜52頁(1994年);Okahara ら、Cancer Res. 54、3233〜6(1994年)。
【0155】
本発明の化合物のさらなる用途は、多発性硬化症の治療にある。多発性硬化症は、米国で、250,000から350,000と見積もられる人々を襲う進行性の神経系自己免疫疾患である。多発性硬化症は、特定の白血球がミエリン(神経線維を包む絶縁性の鞘)を攻撃し、その破壊を開始する特殊な自己免疫反応の結果であると考えられる。多発性硬化症の動物モデルでは、VLA−4に対するネズミ(murine)モノクローナル抗体は、内皮への白血球の接着を阻止し、こうして動物における中枢神経系の炎症と、それに続く麻痺を防ぐことが示された16
【0156】
本発明の医薬組成物は、様々な薬剤デリバリーシステムに用いるのに適している。本発明において使用される適切な製剤は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mace Publishing Company、Philadelphia、PA、第17版(1985年)に見出される。
【0157】
患者に投与される量は、投与されているもの、投与の目的(例えば、予防または治療)、患者の状態、投与方式などに応じて変わるであろう。治療目的では、組成物は、すでに疾患を患っている患者に、疾患の症状およびその併発症を治すか、またはその進行を少なくとも部分的に止めるのに十分な量で投与される。これを達成するための適量は、「治療に有効な用量」として定義される。この使用での有効な量は、本明細書に記載のもののような適切な動物モデルでのデータを参照して、治療されている病状、さらには、炎症の重篤度、患者の年齢、体重および一般的状態などのような要素に依存する、担当医の判断により決まるであろう。このようなデータに基づいて、適切なヒトへの投与量を見積もる方法は、当技術分野において知られている(例えば、Wagner, J.G.「Pharmacokinetics for the Pharmaceutical Scientist」、Technomic, Inc.、Lancaster、PA、1993年を参照)。
【0158】
患者に投与される組成物は、前記の医薬組成物の形態としてである。これらの組成物は、通常の滅菌技術によって滅菌されても、あるいは、滅菌濾過されてもよい。得られる水溶液は、そのまま使用されるようにパッケージ化されても、あるいは凍結乾燥されてもよく、凍結乾燥された調製剤は、投与の前に、滅菌水性担体と一緒にされる。
【0159】
所望の生体活性を有する化合物は、改善された薬理学的性質(例えば、in vivoでの安定性、生体利用能)のような所望の性質、あるいは、診断用途では被検出能をもつように、必要に応じて修飾され得る。安定性は、様々なやり方で、例えば、ペプチダーゼあるいはヒトの血漿または血清と共にインキュベートしている間のタンパク質の半減期を求めることによって評価分析できる。かなりの数のこのようなタンパク質安定性アッセイが記載されている(例えば、Verhoefら、Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet.、1990年、15(2):83〜93頁を参照)。
【0160】
本発明の化合物の治療のための投与量は、例えば、治療がなされる特定の使用、化合物の投与の仕方、患者の健康および状態、処方する医師の判断に応じて変わるであろう。例えば、静脈内投与では、容量は通常、体重1kg当たり約20μgから約2000μg、好ましくは約20μgから約500μg、より好ましくは、体重1kg当たり約100μgから約300μgの範囲にあるであろう。鼻腔内投与での適切な投与量範囲は、通常、体重1kg当たり約0.1pgから約1mgである。有効な用量は、in vitroの、または動物モデルの試験系から得られる用量−反応曲線から外挿できる。
【0161】
本発明の化合物はまた、αβ、およびαβインテグリンに結合できる、またはこれらの作用を遮断できる。したがって、本発明の化合物はまた、これらのインテグリンが各々のリガンドに結合することにより誘発される症状、障害または疾患を防止するまたは回復に向かわせるのにも有用である。
【0162】
本発明の別の態様において、本明細書に記載の化合物および組成物は、例えば多発性硬化症の場合における中枢神経系への、あるいは炎症誘発ミエリン破壊を生じる部分への、血流からの免疫細胞の移動を抑制するために使用できる。好ましくは、これらの作用剤は、脱ミエリン化を抑制し、さらに再ミエリン化を促進し得る様に、免疫細胞の移動を抑制する。作用剤はまた、浸潤する免疫細胞が、主にCNSにおける、ミエリンの鞘の成長に悪影響を与える先天的代謝障害で、中枢神経系の脱ミエリン化を防ぎ、再ミエリン化を促進し得る。作用剤はまた、脱ミエリン化による疾患または病気により誘発される麻痺を有する患者に投与される時に、好ましくは、麻痺を軽減する。
【0163】
本明細書に開示の組成物、化合物および方法による治療に含められる炎症性疾患には、脱ミエリンに関係する病気が広く含まれる。組織学的には、ミエリン異常は、脱ミエリン化または異常ミエリン化のいずれかである。脱ミエリン化はミエリンの破壊を意味する。異常ミエリン化は、オリゴデンドロサイトの機能異常により生じる、欠陥のあるミエリンの形成または保持を表す。好ましくは、本明細書に開示の組成物および方法は、脱ミエリン、および再ミエリンによる補助に関連する疾患および病気を治療すると想定される。治療されると想定されるさらなる疾患および病気には、髄膜炎、脳炎および脊髄傷害、ならびに広く炎症反応の結果として脱ミエリンを誘発する病気が含まれる。
【0164】
本明細書に開示の組成物、化合物およびカクテルは、脱ミエリン化に関連する病気および疾患の治療に使用されると想定される。脱ミエリン化が関与する疾患および状態には、これらに限らないが、多発性硬化症、先天性代謝障害(例えば、フェニルケトン尿症(PKU)、テイ−サックス病、ニーマン−ピック病、ゴーシェ病、ハーラー症候群、クラッベ病、および成長している鞘に影響を与える他の白質ジストロフィー)、異常ミエリン化による神経障害(例えば、ギランバレー症候群、慢性免疫脱ミエリン化多発ニューロパチー(chronic immune demyelinating polyneuropathy、CIDP)、多巣性CIDP、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、抗MAG(ミエリン結合糖タンパク質)症候群、GALOP(Gait disorder、Autoantibody、Late−age、Onset、Polyneuropathy、歩行障害、自己抗体、晩期、発症、多発ニューロパチー)症候群、抗スルファチド抗体症候群、抗GM2抗体症候群、POEMS(多発ニューロパシー、臓器腫大、内分泌異常、Mタンパク質および皮膚症状)症候群(クロウ−フカセ症候群および高月病としても知られる)、神経周囲炎、IgM抗GD1b抗体症候群、薬剤に関連する脱ミエリン化(例えば、クロロキン、FK506、ペルヘキシリン、プロカインアミド、およびジメルジンの投与により生じる)、他の遺伝性脱ミエリン病(例えば、糖鎖欠損糖タンパク質、コケイン症候群、先天性ミエリン形成不全、先天性筋ジストロフィー、ファーバー病、マリネスコ−シェーグレン症候群、異染性白質ジストロフィー、ペリツェウス−メルツバッヘル病、レフサム病、プリオン関連病、およびサラ病)、ならびに、他の脱ミエリン病(例えば、髄膜炎、脳炎(急性散在性脳脊髄炎(ADEM)としても知られる)、または脊髄傷害)あるいは疾患が含まれる。
【0165】
これらの疾患をin vivoで研究するために使用できる様々な疾患モデルが存在する。例えば、動物モデルには、以下が含まれるが、これらに限らない。
【0166】
【表4】

最も普通の脱ミエリン化疾患は、多発性硬化症(「MS」)であるが、他の多くの代謝および炎症障害が欠陥のある、または異常なミエリン化を生じる。MSは慢性神経疾患であり、これは、成人初期に現れ、大抵の場合、かなりの身体障害に進展する。米国だけで約350,000のMSの事例がある。外傷以外で、MSは成人初期および中期における最も多い神経学的身体障害の原因である。
【0167】
MSの原因はこれから決定されようとしている。MSは、慢性炎症、脱ミエリン化およびグリオーシス(瘢痕)により特徴付けられる。脱ミエリン化は軸索伝導に負または正のどちらかの影響を生じ得る。正の伝導異常には、軸索伝導の遅延、高い−低くない−周波数のインパルス列の存在下に起こる変動する伝導遮断(block)、または完全な伝導遮断が含まれる。正の伝導異常には、異所性インパルスの発生、自発的または引き続く機械的ストレス、および脱ミエリン化軸索(exon)の間の異常な「混線」が含まれる。
【0168】
ミエリンタンパク質(ミエリン塩基性タンパク質(MBP)またはミエリンプロテオリピドタンパク質(PLP)のいずれか)に対して反応性のT細胞が、実験的アレルギー性脳脊髄炎においてCNSの炎症を媒介することが観察された。患者のCNS免疫グロブリン(Ig)のレベルが高まることもまた確認された。MSにおいて認められる組織損傷のいくらかは、活性化T細胞、マクロファージまたはアストロサイトのサイトカイン産生物によって媒介される。
【0169】
今日、MSと診断された患者の80%が病気の発症後20年生存する。MSを取り扱う治療には、(1)急性増悪の治療を含めて疾患の推移の変更を目的とし、疾患の長期の抑制に向けられる治療;(2)MSの症状の治療;(3)内科治療の合併症の防止および治療;および(4)個人的および社会的な2次的問題の処理;が含まれる。
【0170】
MSの発症は、劇的であることも、あるいは、患者が治療を求めようとしないほど穏やかなこともある。最も共通する症状には、1つまたは複数の四肢の衰弱、視神経炎による視覚のかすみ、感覚障害、複視および運動失調が含まれる。疾患の推移は、3つの一般的区分に階層化され得る:(1)再発型MS、(2)慢性進行性MS、および(3)静止状態MS。再発型MSは、周期的に起こる神経機能障害の発症により特徴付けられる。MSの発症は通常、数日から数週間に渡って進展し、その後は、完全に、または部分的に回復するか、あるいは全く回復しないこともある。発症からの回復は、通常、症状のピークから数週間ないし数ヶ月以内に起こるが、まれに、回復に2年以上かかることもある。
【0171】
慢性進行性MSでは、安定化または寛解の期間なしに、徐々に悪化が進行する。この形態は、再発型MSの前歴のある患者(患者の20%で、再発を思い起こすことができないが)で進展する。急性の再発はまた進行する経過の間に起こり得る。
【0172】
第3の形態は静止状態のMSである。静止状態のMSは、様々な度合いの一定の神経学的欠損により特徴付けられる。静止状態MSのほとんどの患者は、再発型MSの前歴を有する。
【0173】
疾患の推移はまた、患者の年齢にも依存する。例えば、良好な予後要素には、早期発症(幼少期を含めて)、再発型の推移、および発症後5年で残存する身体障害がほとんどないことが含まれる。対照的に、悪い予後は、高齢(すなわち、40歳以上)での発症、および進行性の推移に関連している。慢性進行性MSは再発型MSより高齢で始まる傾向があるので、これらの変数は相互に依存している。慢性進行性MSによる身体障害は、通常、患者の進行性対麻痺または四肢麻痺(麻痺)のせいである。本発明の一態様において、患者が疾患の再発段階にあるよりもむしろ寛解期にある時に、好ましくは、患者は治療されるであろう。
【0174】
副腎皮質刺激ホルモンまたは経口コルチコステロイド(例えば、経口プレドニゾンまたは静脈内メチルプレドニゾロン)のいずれかの短期間の使用は、MSの急性増悪患者を治療するための単なる特別な治療手段である。
【0175】
より新しいMSの治療法には、インターフェロンβ−1b、インターフェロンβ−1a、およびコパキソン(登録商標)(以前はコポリマー1として知られていた)による患者の治療が含まれる。これらの3種の薬剤は、疾患の再発率をかなり低下させることが示された。これらの薬剤は、筋肉内または皮下に自己投与される。
【0176】
しかし、現行の治療薬剤使用法のどれも、自発的な再ミエリン化を促進、または許容しない、あるいは麻痺を軽減しないだけでなく、脱ミエリンを抑制しない。本発明の一態様は、本明細書に開示の薬剤により、単独で、または他の標準的な治療薬剤使用法と組み合わせて、MSを治療することを想定する。
【0177】
放射線もまた脱ミエリン化を誘発し得る。放射線による中枢神経系(CNS)毒は、(1)管構造に対する損傷、(2)オリゴデンドロサイト−2とアストロサイトの前駆細胞および成熟オリゴデンドロサイトの消失、(3)海馬、小脳および大脳皮質における神経幹細胞集団の消失、およびサイトカイン発現の全身での変化、により引き起こされると考えられている。ほとんどの放射線損傷は、特定の癌の治療の間に施される放射線療法により生じる。総説には、Belkaら、2001年、Br. J Cancer 85:1233〜9頁を参照。しかし、放射線暴露はまた、宇宙飛行士にとって(Hopewell、1994年、Adv. Space Res. 14:433〜42頁)、さらには、放射性物質への暴露という事態においても問題である。
【0178】
これらの病状および疾患もまた、一時的に緩和するか、または改善する治療に適すると想定されている。
【実施例】
【0179】
以下の合成および生物学的実施例は、本発明を例示するために提供されており、如何なる仕方においても、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。特に断らなければ、全ての温度は摂氏度である。下の実施例では、次の省略形は以下の意味を有する。省略形が定義されていない場合、それは一般的に受け入れられている意味を有する。
【0180】
Å =オングストローム
br s =ブロードシングレット
BSA =ウシ血清アルブミン
d =ダブレット
dd =ダブルダブレット
dq =ダブルカルテット
dsextet =ダブルセクステット
DMF =ジメチルホルムアミド
EC50 =所望の反応が集団の50パーセントにある投与量
EDTA =エチレンジアミン四酢酸
EtOAc =酢酸エチル
EtOH =エタノール
EtN =トリエチルアミン
EM =発光波長(nm)
EX =励起波長(nm)
g =グラム
HBSS =ハンクス平衡塩溶液
HEPES =4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸
HPLC =高速液体クロマトグラフィー
hrsまたはh =時間
IC50 =in vivoで酵素の50%阻害に必要とされる阻害剤の濃度
in. =インチ
i.p. =腹腔内に
i−PrOH =イソ−プロパノール
kg =キログラム
L =リットル
LC/MS =液体クロマトグラフィー/質量分析
m =マルチプレット
=平方メートル
M =モル(molar)
mbar =ミリバール
mg =ミリグラム
MHz =メガヘルツ
min. =分
mL =ミリリットル
mm =ミリメートル
mM =ミリモル
mmol =ミリモル
mOsm =ミリオスモル
MTBE =メチルtert−ブチルエーテル
m/zまたはM/Z =質量と電荷の比
N =規定度
ng =ナノグラム
nm =ナノメートル
NMR =核磁気共鳴
PBS =リン酸緩衝化生理食塩水
PBS++ =カルシウムおよびマグネシウムを含むPBS
ppm =百万分率
psi =ポンド/平方インチ
p.o. =口からの(per os)、文字通りに「口によって」、経口胃管投与(oral gavage)を含む
q =カルテット
q.s. =十分量
=保持因子(物質が移動した距離/溶媒最前部が移動した距離の比)
rpm =回転数/分
rtまたはRT =室温
=保持時間
s =シングレット
t =トリプレット
TFA =トリフルオロ酢酸
THF =テトラヒドロフラン
TLC =薄層クロマトグラフィー
UV =紫外
wt/wt =重量と重量の比
w/v =重量と体積の比
μg =マイクログラム
μm =ミクロン
μM =マイクロモル。
【0181】
(実施例1)
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−イソプロピルメチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸の調製
下に示すスキーム4に、実施例1で用いた合成プロトコルを要約する。
【0182】
【化28】

スキーム4において、化合物4は、5−ニトロピリジン化合物1から、次々と3ポットで調製した。スキーム4の合成プロトコルは、次の1つまたは複数によって、この化合物の調製をかなり簡単にする。
【0183】
1)相当に速くなったニトロ基還元ステップ;
2)同一溶媒および同一触媒により同一フラスコ中で実施されるので、操作の数が減り、酸素に弱い生成物の空気への暴露が最少化される、簡素化された還元/還元的アミノ化の連鎖;
3)還元的アミノ化ステップの条件が、ビスイソプロピルアミノピリミジン副生成物の生成を最少化し、こうして化合物3のクロマトグラフィーによる精製の必要を無くする;
4)モノイソプロピルアミノピリミジン中間体(化合物2)の精製を、対応するL−酒石酸塩の液中粉砕(trituration)によって、可能にする条件が記載される(化合物2のこの別個の精製の必要もまた、還元的アミノ化ステップの改良によって不必要となったが);
5)MTBE−ヘキサンまたはMTBE−シクロヘキサンからの結晶化による化合物3の別個の精製条件が確立された。
【0184】
スキーム4の反応ステップにおいて、Biotage Flash 75Lを用い、800gのKP−Silシリカカートリッジ(32〜63μM、60オングストローム、500〜550m/g)を用いて、フラッシュクロマトグラフィーを実施した。Rは、順相で、EM Science Silica Gel 60 F(254)、厚さ250μMのプレートを用いる分析薄層クロマトグラフィーについて報告する。NMRスペクトルは、Varian Gemini 300MHzスペクトロメーター(Hスペクトルでは300MHz、13Cスペクトルでは75MHz)で得た。分析HPLCは、Phenomenex Luna 3μm、C−18、30×4.6mmカラムを有する、Agilent 1100 Series HPLCで実施した。検出器はUV(210nm)であった。溶媒は、0.1%のTFAを含む水、および0.1%のTFAを含むアセトニトリルであった。標準流量は1.5mL/minであり、標準的方法は、20%CHCNから70%CHCNまで、2.33分で変わる溶媒の勾配を有し、M1と名づけた。別の方法は、M2と名づけ、2mL/minの流量、および20%CHCNから70%CHCNまで1.75分で変わる勾配を有していた。方法M15は、1.5mL/minの流量を有し、溶媒組成は20%CHCNから70%CHCNまで10分で変わり、70%で2分間保持し、次いで、95%まで1分で上昇させ、95%で2分間保持した。LC/MSは、エレクトロスプレーイオン化(化学イオン化と特に指示しなければ)により、Agilent 1100 Series HPLC/Series 1100MSDで実施した。カラムおよび条件は独立したHPLCに一致させた。
【0185】
ステップ1:(S)−4−(3−tert−ブトキシ−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(イソプロピルアミノ)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−オキソプロピル)フェニルピロリジン−1−カルボキシレート(2)の調製
【0186】
【化29】

ニトロピリミジン−カルバメート1(100g、189mmol)およびPtO(6.33g、27.85mmol)を360mLの含水THF(5%のHO)に懸濁させた。混合物を水素(60psig)の下で、室温で撹拌した。3時間後に、TLC(シリカゲル、50%EtOAc/ヘキサン)は、ニトロ基の完全な還元を示した(EtOAcを用いるシリカでのTLC分析は、アミノピリミジンに対してR=0.2(筋状)、出発ニトロピリミジン−カルバメートに対してR=0.86を示した)。これに関して、この2ステッププロセスにおける両ステップにPtOを使用することにより、1ポット反応が可能になり、ニトロ基の還元速度が劇的に速まるという前記の付加的な特徴を有する。いずれにしても、アミノピリミジン生成物は酸化される傾向があるので、空気/酸素に対する暴露は最少化するように注意が払われるべきである。
【0187】
エタノール(200mL)、アセトン(21mL、1.5当量)、および氷酢酸(3.0mL、0.28当量)を水素化フラスコ内のアミノピリミジン溶液に加えた。排気およびパージングの後、フラスコをH(60psig)で加圧した。還元的アミノ化を、一夜、進行させた。EtOAcを溶離液として用いるシリカでのTLCは、イソプロピルアミノ−ピリミジンに対してR=0.41(筋状)、出発アミノピリミジン−カルバメートに対してR=0.11を示した。TLCおよびLC/MSのいずれも、生成したビスイソプロピルアミノピリミジンを実質的に含まない、完全な反応を確証した。必用であれば、反応の進行を追跡するための別の手段としてHPLCを用いることができる。粗反応溶液をEtOAc(1L)により希釈し、塩基性アルミナ(400mL)のパッドを通して濾過した。EtOAc(200mL)およびEtOH(200mL)によりアルミナを洗い、合わせた有機溶液を真空濃縮した。フラスコにNを入れた。粘性のあるオイルを無水トルエン(700mL)に再溶解し、濃縮した。フラスコに窒素を入れた後、さらに400mLのトルエンを共沸除去することにより、生成物を再び乾燥させた。粘性のある赤みを帯びた茶色のオイルを得た。
【0188】
LC/MSにより明白に示されるように、ビス−イソプロピルアミノピリミジンカルバメート不純物をクロマトグラフィーにより除去する必要があった先行技術に比べて、この手順により、非常に少量のビス−イソプロピルアミノピリミジンカルバメート不純物が生成した。
【0189】
モノ−イソプロピルアミノピリミジン2の型どおりの精製ステップが必要である場合、それを、THF/エーテルから、(L)−酒石酸塩として析出させ、液中粉砕することができる。小規模での例は次の通り:(5.09g、99.6%の収率)L−酒石酸(1.42g)を高温THF(45mL)に溶かした。この高温の酒石酸溶液を、ゴム状のイソプロピルアミノ−ピリミジン2(5.1g)に加えた。均質になるまで混合物をぐるぐるかき混ぜて、温めた。溶液は、ピンク−紫色から黄褐色(tan)に変わった。溶液を真空濃縮して、黄褐色のゴム状物を得た。エーテル(約150mL)を加え、その際に、油状化が見られた。エーテル混合物を真空濃縮した。アセトン(約20mL)、次いで、エーテル(約200mL)を加え、ゴム状オイルの生成が再び見られた。混合物に3回目の濃縮をした。塩化メチレン(5〜10mL)を、その後、エーテル(約80mL)を加えた。明るいオレンジ−ピンク色の上澄みの下に、黄褐色の沈殿の生成が見られた。混合物を濾過した。沈殿をエーテル(50mL)により、次いで、再び、アセトン(約60mL)とエーテルの混合物(1:1)により洗った。沈殿を一夜、真空乾燥して、クリーム色に着色した固体を得た(4.9g、76%の収率)。固体酒石酸塩の少量のアリコートを、i−PrOHおよびEtOHに溶かし、塩基性アルミナの小さなプラグに通して、遊離塩基を得た。遊離塩基のアリコートを、TLCおよびLC/MSによって分析した。残りの塩は、CHCl(250ml)と1NのNaHCO(150mL)の混合物に懸濁させた。混合といくらかのバブリングにより、溶けた固体および遊離塩基アミンを有機層に抽出した。水性相をEtOAc(150mL)によりもう一度抽出し、有機抽出物を合わせ、MgSO(約150g)で乾燥した。乾燥した有機溶液を、塩基性アルミナ(約100g)に通して、薄いピンク色の溶液を得て、それを真空濃縮して、黄褐色/ピンク色のゴム状物を得た(3.28g、出発ニトロカルバメートから64%の収率)。
【0190】
モノイソプロピルアミノピリミジンカルバメート2と塩を生成させる試みの中で、いくつかの他の酸を調べた。p−トルエンスルホン酸およびメタンスルホン酸はオイルを生じた。固体の塩はHClおよびHPOにより生成できたが、酒石酸により最も好ましい溶解特性が得られると思われた。HClおよびリン酸の塩は、CHCl、i−PrOH、およびアセトンに容易に溶けるように見えたが、他方、酒石酸塩は、CHClにおおかた不溶で、他の溶媒には部分的にのみ溶けるように見えた。
【0191】
ステップ2:(S)−4−(3−tert−ブトキシ−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−イソプロピルメチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−オキソプロピル)フェニルピロリジン−1−カルボキシレート(3)の調製
【0192】
【化30】

ステップ1によるイプロピルアミノピリミジンカルバメート2(189mmolと仮定する)を、ピリジン(680mL)に溶かし、溶液をN下に0℃に冷却した。メタンスルホニルクロリド(44mL、3.0当量)を、イプロピルアミノピリミジンカルバメートの冷却したピリジン溶液に、20分間かけてシリンジポンプにより加えた。氷浴を取り除き、溶液をRTまで温めた。溶液を6時間撹拌した。少量のアリコートを取り出し、小規模のワークアップを実施した(EtOAcにより希釈し、5%のKHPO、塩水(brine)により洗い、次いで、MgSOで乾燥)。TLCによる分析は、反応が完了し、概ね清浄であることを示した(残留ピリジンによるベースラインスポット以外に1スポットだけ)。本体の反応溶液を濃縮した。650mLの留出物を捕集した時、血のように赤いオイルを、EtOAc(2L)により希釈した。有機溶液を、5%のKHPO(1Lおよび750mL)、0.2Nのクエン酸(1L)、ならびに塩水(1L)により洗った。有機溶液をMgSO(150g)で乾燥した。乾燥した有機溶液を、シリカゲル(1L)のパッドに通して濾過して、緑−黒色の溶液を得た。フラスコおよびシリカゲルをEtOAc(1.5L)により洗い、有機溶液の全体積を3.5Lとした。溶液を、塩基性アルミナ(300mL)のパッドに通して濾過して、深い緑色の溶液を得た。この溶液を真空濃縮した。赤みを帯びたゴム状物(150g)を得た。
【0193】
フラスコを窒素でフラッシングし、栓をし、冷蔵庫に入れると、赤−茶色の固体を生成した。LC/MSは、許容される純度を示したが、TLC分析は、明るい赤のベースラインスポット、さらには2つから3つの非常にぼやけた不純物を示した。ピリジンの臭いはまだ存在していた。赤−茶色の固体を、CHCl(100mL)、THF(200mL)、およびエーテル(800mL)の混合物に溶かした。この溶液をシリカゲル(1L)のパッドに通して濾過/溶離し、シリカをエーテル(3L)で洗った。ほとんどの着色したベースライン不純物はシリカゲルに保持された。溶液を濃縮して、赤色のオイルを得て、それを乾燥してピンク色の発泡固体(100g)とし、それをLC/MSにより分析すると94.7%の純度であった。次いで、この物質を、CHCl(3L)、CHClおよびエーテル(1:1;4L)、エーテル(4L)、エーテル:THF(1:1;4L)、ならびに、5%のEtNおよび2%のEtOHを含むEtOAc(4L)により溶離させるシリカゲル(2L)でのクロマトグラフィーにかけた。CHCl:エーテルの溶離液は、赤色オイルの混合フラクション(12.4g;フラクションA)を与え、エーテル溶離液は、黄褐色のオイル(13g;フラクションB)を与え、それは概ね純粋であった。物質の大部分は、カラムに残り、所望の生成物がカラムで結晶化したことが分かった。エーテル:THF、およびEtOAc(5%のEtNおよび2%のEtOHを含む)による溶離は、生成物を再溶解させ、濃厚な中心部(plug)(フラクションC)として溶離させた。フラクションAおよびBは合わせて、一緒に濃縮した。フラクションCは、別に濃縮した。濃縮および乾燥により、どちらのフラクションでも結晶が生成した。さらなる調査により、その固体は、メチルtert−ブチルエーテル(MTBE)、シクロヘキサン、エーテル−ヘキサン(1:1)、MTBE−ヘキサン類、またはシクロヘキサン−ヘキサン類から再結晶できることを見出した。AおよびBを合わせたフラクション、ならびにフラクションCは、各々、MTBE−ヘキサン類から再結晶して、白色固体としてtert−ブチルエステル3(全体で57.75g、純度>99%)、および赤色の濾液/母液を得た。母液を濃縮して、赤色のオイル(24g)得た。母液オイルは、Biotage 75でクロマトグラフィーにかけ、CHCl中4%THF(12L)により溶離させて、高濃度化したフラクションを得て、次いで、それを濃縮し、再結晶して、さらに14gの精製tert−ブチルエステルを得た。
【0194】
方法M2によるLC/MSは、t=1.97分を与え、所望の生成物に対する[M+1]でM/Z=619であった。
【0195】
方法M15によるLC/MSは、t=6.09分を与え、所望の生成物に対する[M+1]でM/Z=619であった。
H NMR (CDCl, 300 MHz) δ, ppm: 0.88 (d, j = 6 Hz, 1.4H), 1.04 (d, j = 6 Hz, 2H), 1.20 (m, 10H), 1.37 (s, 4.8H), 1.39 (s, 4.8H), 1.93 (AA’BB’, 4H), 2.80 (s, 1.7H), 2.9 (s, 1.6H), 3.18 (m, 2.4H), 3.4−3.7 (m 2つの見掛け上トリプレットの重なり, 8.3H), 4.40 (セクステット, j = 6 Hz, 1.1H), 4.8 (セクステット, 1H), 5.64 (d, j = 6.5 Hz, 0.5H), 5.70 (d, j = 6.5 Hz, 0.5H), 7.03 (m, 2H), 7.18 (見掛け上dd, 2H), 7.80 (d, j = 4 Hz, 1H)。H NMRは複数のロータマーを示す。
【0196】
メタンスルホニルクロリドによる処理は、THF中で、さらなる塩基はほとんど、または全く無しになされると想定される。塩基が用いられる場合、トリエチルアミンまたはジイソプロピルエチルアミンのような塩基が用いられるべきである。
【0197】
ステップ3:(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−イソプロピルメチル−スルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸(4)の調製
【0198】
【化31】

ステップ2によるt−ブチルエステル(57.75g、0.093mol)のギ酸(1.5L)溶液を、50℃で一夜加熱し、次いで、真空濃縮した。別法として、この反応はまた、70℃または80℃で、60〜90分間でも実施できる。
【0199】
水(約100mL)を粗生成物に加え、混合物を濃縮乾燥した。残留物を高真空下に乾燥した。この粗生成物を1.0NのHCl(250mLおよび200mL)に2回、溶解し、濃縮した。生成物を2回、高温THFに溶かし、濃縮乾燥して、発泡固体を得た。発泡固体を高真空下に65℃で2時間乾燥した。この固体をフラスコからこすり取り、真空オーブンで一夜乾燥して(60℃、28in.Hg)、(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−イソプロピルメチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸−4の塩酸塩(50.9g;98.3%の純度)を得た。
【0200】
M15の方法によるLC/MSは、t=1.96分、M/Z=563を与えた。
【0201】
M2の方法によるLC/MSは、t=1.43分、M/Z=563を与えた。
H NMR (CDOD, 300 MHz) δ, ppm: 0.80 (d, j = 6 Hz, 1.4H), 1.02 (d, j = 6 Hz, 1.6H), 1.23 (m, 9.2H), 1.80−2.0 (AA’BB’ + m, 5.2H), 2.99 (d, 3.2H), 3.2−3.45 (m, 4.5H), 3.45−3.8 (m, 7.6H), 4.40 (セクステット, 1H), 4.90 (m, 3H), 7.00 (d, 2H), 7.23 (d, 2H), 7.60 (d, 0.25H), 7.75 (d, 1H), 7.83 (d, 0.25H).
13C NMR (CDOD, 75 MHz) δ, ppm: 6.5, 14.7, 14.8,15.4, 15.5, 19.4, 20.0, 20.2, 29.91, 30.44, 33.95, 34.15, 41.03, 41.08, (41.71, 41.99, 42.28, 42.6, 42.8, 43.1 −溶媒ピーク), 47.21, 47.36, 50.01, 50.42, 62.43, 102.11, 102.23, 116.78, 124.9, 125.19, 128.54, 129.01, 138.49, 139.02, 145.53, 145.60, 145.78, 148.68, 156.77, 156.86, 166.91, 167.07。
【0202】
(実施例2)
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−エチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸(7)の調製
【0203】
【化32】

ステップ1:(S)−4−(3−tert−ブトキシ−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−ニトロピリミジン−4−イルアミノ)−3−オキソプロピル)フェニルピロリジン−1−カルボキシレート(6)の1ポット還元/還元エチル化
【0204】
【化33】

ニトロ−カルバメート(化合物5、10.8g、20mmol)をTHF(35mL)でスラリー化し、水(1mL、3vol%)を加えた。この溶液を撹拌し、アダムズ触媒(0.360g、6モル%)を加え、排気(50mmHg)および乾燥窒素による再充填(10psi)の3サイクルにより溶液を脱酸素した。最後に、反応容器を水素により加圧し(60psi)、反応混合物を90分間、激しく撹拌した。必要であるか、または望まれる場合、水素化反応の進行はTLC(シリカゲル、ジクロロメタン:メタノール(95:5)により溶離)により追跡できる。ニトロカルバメートのRは0.95、第1級アミン=0.16である。
【0205】
水素を乾燥窒素に置き換えた(排気および窒素による再充填の3サイクル)。エタノール(25mL)、酢酸(0.3mL)およびアセトアルデヒド(1.2mL、21mmol、1.05当量)を加え、揮発性アセトアルデヒドの損失を最少化するように低圧(約150mmHg)で容器をある程度排気し、窒素により再充填し(10psi)、反応混合物を50分間激しく撹拌した。この時間の最後に、2回のある程度の排気と水素による再加圧によって、窒素を水素(60psi)に置き換えた。混合物をさらに45分間撹拌した。還元的アミノ化の進行は、TLC(シリカゲル、ジクロロメタン:メタノール(95:5)により溶離)により追跡できる。第1級アミンのR=0.16、第2級アミン−0.32、および第3級アミン=0.43。プロセスの終わりに、排気および窒素による再充填の3サイクルによって水素を除き、セライト床で触媒を濾別し、メタノールを用いて洗い、濾液をストリッピングし乾燥して琥珀色のオイル(11.9g)を得た。この生成物は酸素に弱く、その結果、かなり暗色化し、TLCで低Rの物質が現れた。全ての取扱いは適切な事前の対策をもってなされるべきである。
【0206】
反応生成物は、ジクロロメタン:メタノールの混合物(97:3、0.3%の水酸化アンモニウムを含む)を用いるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。N−エチル生成物を含むフラクションを一緒にして、7.9gの化合物6を琥珀色のオイルとして得た(98.5%の純度;73%の収率)。この粗生成物の純度は、多くの目的にとって、特に、予想される次の反応の生成物が結晶性であると知られている場合、適切であると思われる。
H−NMR, CDCl, (δ): 7.60 (s, 1H), 7.17 (d, J=8.4Hz, 2H), 7.05 (d, J=8.4Hz, 2H), 5.75 (d, J=7.5Hz, 1H), 4.84 (q, J=6.6Hz, 1H), 3.64−3.46 (m, 8H), 3.19 (d, J=6.3Hz, 2H), 2.86 (q, J=7.2Hz, 2H), 1.94 (m, 4H), 1.39 (s, 9H), 1.20−1.11 (m, 9H).
13C−NMR, CDCl, (δ): 171.7, 157.7, 157.5, 153.1, 150.3, 145.8, 133.7, 130.2, 121.5, 117.4, 81.8, 54.7, 46.4, 46.3, 42.4, 41.7, 37.4, 28.0, 25.8, 24.9, 15.5, 13.5.
MS (m/z): 527.3 [M+1]。
【0207】
ステップ2および3:(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−エチルメチルスルホンアミド)−ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸(7)
実施例1のステップ2および3の手順に従って、化合物6を、対応する(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−エチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸(7)に変換し、この化合物を次の通り特性評価した。
H−NMR, CDCl, (δ): 8.17 (s, 1H), 7.77 (s, 1H), 7.26−7.23 (m, 2H), 7.00−6.98 (d, 2H), 4.85−4.82 (m, 1H), 3.58−3.51 (m, 6H), 3.43−3.39 (m, 3H), 2.96−2.84 (m, 3H), 2.01−1.91 (m, 4H), 1.29−0.97 (m, 9H);
13C−NMR, CDCl, (δ):175.6, 165.7, 157.2, 155.2, 152.0, 151.8, 151.7, 151.3, 136.0, 135.9, 131.5, 123.0, 110.5, 56.7, 43.8, 39.4, 39.2, 37.4, 26.7, 25.8, 14.4, 13.3;および
MS:M(+H) 549。
【0208】
(実施例3)
(S)−2−(5−(N−シクロペンチルメチルスルホンアミド)−2−(ジエチルアミノ)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸(8)の調製
【0209】
【化34】

実施例1の手順に従い、アセトン (実施例1)またはアセトアルデヒド (実施例2)の代わりにシクロペンタノンを用い、(S)−2−(5−(N−シクロペンチルメチルスルホンアミド)−2−(ジエチルアミノ)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸8を調製し、次の通り特性評価した。
H−NMR, CDCl, (δ): 7.74−7.71 (d, 1H), 7.28−7.24 (m, 2H), 7.04−7.00 (m, 2H), 5.00−4.95 (m, 1H), 4.37−4.27 (m, 1H), 3.60−3.37 (m, 9H), 3.00−2.97 (d, 3H), 2.03−1.78 (m, 6H), 1.67−1.40 (m, 6H), 1.31−1.23 (m, 6H);
13C−NMR, CDCl, (δ): 173.6, 173.4, 163.1, 155.1, 152.4, 152.0, 145.3, 144.7, 135.5, 135.1, 131.6, 131.4, 123.2, 109.6, 109.4, 62.5, 62.3, 56.7, 56.5, 48.1, 40.3, 40.1, 36.8, 36.4, 31.2, 30.5, 26.7, 25.8, 23.2, 23.1, 12.7;および
MS: M(+H) 589。
【0210】
(実施例4)
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−(プロプ−2−イニル)メチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸(13)の調製
下に示すスキーム6に、実施例4において用いた合成プロトコルを要約する。
【0211】
【化35】

ステップ1:(S)−4−(3−tert−ブトキシ−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−(メチルスルホニル)−メチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−オキソプロピル)フェニルピロリジン−1−カルボキシレート(10)
アミノピリミジン(2.0g、4.0mmol−化合物9)(化合物1の還元により調製)を、ジクロロメタン(10mL)に溶かした。THF(10mL)およびトリエチルアミン(2.8mL、20mmol)を加え、反応物を氷浴で冷却した。メタンスルホニルクロリド(1.1mL、14mmol)を加え、反応物を18時間、室温に温めた。反応混合物を真空濃縮し、残留物を酢酸エチルに溶かし取った。この溶液を0.2Nのクエン酸、水、飽和NaHCO、および塩水により洗った。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、真空濃縮して、粗生成物を茶色発泡体として得た。この残留物をフラッシュクロマトグラフィー(2:3 酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、2.2g(73%)のジ−スルホニル化物を黄色発泡体として得た(化合物10)。
【0212】
ステップ2:(S)−4−(3−tert−ブトキシ−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(メチルスルホンアミド)−ピリミジン−4−イルアミノ)−3−オキソプロピル)フェニルピロリジン−1−カルボキシレート(11)
化合物10(2.2g、3.4mmol)をメタノール(5mL)およびTHF(5mL)に溶かした。1.0MのKCO(10mL)を加え、反応混合物を40℃で96時間加熱した。反応混合物を、2NのHClによりpH3まで酸性化し、酢酸エチルで抽出した。有機層を塩水により洗い、NaSOで乾燥し、濾過し、真空濃縮して、1.68g(86%)の生成物をベージュ色発泡体として得た(化合物11)。この粗物質を精製なしに用いた。
【0213】
ステップ3:(S)−4−(3−tert−ブトキシ−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−プロプ−2−イニル)メチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−オキソプロピル)フェニルピロリジン−1−カルボキシレート(12)
化合物11(0.20g、0.35mmol)、KCO(0.073g、0.53mmol)、およびアセトン(3mL)を、封管に入れ、室温で1時間撹拌した。プロパルギルクロリド(0.26mL、3.5mmol)を加え、反応物を密封し、48時間加熱還流した。反応混合物を真空濃縮し、残留物を酢酸エチルに溶かし取った。この溶液を水および/または塩水により洗った。有機層をNaSOで乾燥し、濾過し、真空濃縮して、粗生成物をオレンジ色のフィルムとして得た。この残留物をフラッシュクロマトグラフィー(1:1 酢酸エチル/ヘキサン)により精製して、0.11g(51%)の化合物12を透明フィルムとして得た。
MS (m/z) 615, (M+H)
【0214】
ステップ4:(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−(プロプ−2−イニル)メチルスルホンアミド)−ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸(13)
ギ酸(2mL)を、t−ブチルエステル(100mg)に加え、40℃で一夜、撹拌した。減圧下にギ酸を除去して、化合物13を定量的収率で得て、次の通り特性評価した。
H−NMR, CDCl, (δ): 8.13 (s, 1H), 7.97 (s, 1H), 7.26−7.24 (d, 2H), 7.02−6.99 (d, 2H), 4.59−4.44 (m, 1H), 4.04−3.79 (m, 1H), 3.64−3.53 (m, 6H), 3.45−3.39 (t, 3H), 3.08−2.84 (m, 4H), 2.84−1.89 (m, 4H)1.22−1.17 (t, 6H);
13C−NMR, CDCl, (δ): 165.3, 155.3, 151.8, 136.1, 131.5, 123.0, 76.1, 76.0, 56.8, 49.9, 48.1, 43.8, 41.2, 40.2, 37.4, 26.7, 25.9, 13.3;および
MS:M(+H) 559。
【0215】
(実施例5)
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−メチルメチルスルホンアミド)−ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸(14)の調製
【0216】
【化36】

実施例4の手順に従い、プロパルギルクロリドの代わりに硫酸ジメチルを用い、標題の化合物を調製し、次の通り特性評価した。
H−NMR, CDCl, (δ): 8.14 (s, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.26−7.23 (d, 2H), 7.01−6.98 (d, 2H), 4.84−4.81 (m, 1H), 3.60−3.53 (m, 6H), 3.43−3.38 (m, 3H), 3.09 (s, 3H), 2.94 (s, 3H), 2.00−1.91 (m, 4H), 1.22−1.18 (t, 6H);
13C−NMR, CDCl, (δ):175.5, 165.4, 160.7, 156.3, 155.3, 151.8, 149.1, 136.0, 131.6, 123.0, 113.4, 56.9, 43.9, 38.8, 38.1, 37.4, 26.7, 25.8, 13.2;および
MS:M(+H) 535。
【0217】
(実施例A)
α4β1インテグリン接着アッセイ:ヒト血漿フィブロネクチンへのJurkat(商標)細胞の接着
手順
96ウェルプレート(Coster 3590 EIAプレート)を、ヒトフィブロネクチン(Gibco/BRL cat#33016−023)により、10μg/mLの濃度で、4℃で一夜、コーティングした。次いで、プレートを、ウシ血清アルブミンの生理食塩水溶液(BSA;0.3%)によりブロックした。Jurkat(商標)細胞(対数増殖期に保った)を、製造者の教示に従ってカルセインAMにより標識し、Hepes/生理食塩水/BSAに、2×10個の細胞/mLの濃度で懸濁させた。次いで、細胞を試験および対照化合物に室温で30分間曝し、その後、フィブロネクチンをコーティングしたプレートの個々のウェルに移した。37℃で35分間、接着させた。次いで、ウェルを、穏やかな吸引と、新鮮な生理食塩水によるピペッティングにより洗った。残って付着している細胞に付随する蛍光を、蛍光プレートリーダーを用い、EX485/EM530で計測した。
【0218】
3日目にアッセイを実施するために、定常期のJurkat(商標)細胞を、1日目に1:10に、2日目に1:2に最初に分割することによって細胞培養を準備した。1日目に1:10に分割した細胞は、4日目のアッセイのために3日目に1:4に分割した。
【0219】
アッセイプレートは、最初に、Gibco/BRLヒトフィブロネクチン(cat#33016−023)のPBS++作業溶液を10μg/mLで作ることによって調製した。
【0220】
次いで、Coster 3590 EIAプレートを、室温で2時間、50μL/ウェルでコーティングした(しかし、それはまた、4℃で一夜放置してもよい)。最後に、プレートを吸引し、Hepes/生理食塩水の緩衝液(100μL/ウェル)により、rtで1時間ブロックし、その後、150μLのPBS++により3回洗った。
【0221】
化合物の希釈は、化合物の1:3の段階希釈液を次の様に調製することによって実施した。各プレート(4つの化合物/プレート)で、600μLを、Titertubeラックの4つのBio−Rad Titertubeに入れた。当技術分野においてよく知られている方法を用いて、2X濃度を与えるように、十分な化合物を各々の適切な管に入れた。Falcon Flexiplateを用いて、100μLのHepes/生理食塩水緩衝液またはヒト血清を、列BからGまでに入れた。ピペッターで一様な間隔の4つのチップを有する、180μLに設定したマルチチャネルピペッターを用いた。各々の組の4つの管を5回混合し、180μLの2X化合物を、列Bの各化合物希釈の最初の段に移し、列Aは空で残した。180μLを列Aの他のウェルに入れた。段階希釈は、50μLを次の希釈液に移し、プレートを5回混合し、混合後に毎回チップを交換することによって、プレートを下って実施した。希釈は列Fで止めた。列Gには化合物は存在しなかった。
【0222】
21/6抗体の20μg/mL溶液(HEPES/生理食塩水緩衝液またはヒト血清中)は、陽性対照であり、細胞懸濁プレートに加えるために、試薬槽(trough)にとっておいた。
【0223】
細胞染色は、最初に、対数増殖期のJurkat(商標)細胞を、50mLの管で遠心することによって(1,100rpm、5分間)採取することにより実施した。これらの細胞を、50mLのPBS++に再懸濁し、遠心し、20mLのPBS++に再懸濁した。細胞は、20μLのカルセインAMをRTで30分間加えることによって染色した。体積を、HEPES/生理食塩水緩衝液により50mLにし、細胞を数え、遠心し、HEPES/生理食塩水緩衝液またはヒト血清に、2×10個の細胞/mLになるように再懸濁した。
【0224】
化合物は次の手順を用いてインキュベートした。新しいflexiplateに、列BからHまで、65μLの染色した細胞を入れた。次いで、65μLの2X化合物を、プレートを組み上げた後、適切な列に入れ、3回混合した。65μLの2X−21/6抗体を列Hに入れ、3回混合した。最後に、プレートを室温で30分間、インキュベートした。
【0225】
フィブロネクチンの接着は、次のワークアップ手順の後、蛍光プレートリーダーを用い、EX485/EM530で測定した。インキュベーションの後、細胞を3回混合し、100μLを、フィブロネクチンでコーティングしたプレートに移し、37℃で約35分間、インキュベートした。各プレートを、列毎に、100μLのRT PBS++をウェルの側面にピペットで穏やかに落とし、吸引のためにプレートを90度回転することによって洗った。全部で3回の洗浄で、この手順を繰り返した。各ウェルは、洗浄後、ウェルの側面にピペットで落とすことにより、100μLにより満たした。
【0226】
IC50の値を、ヒト血清の存在する場合と、ヒト血清の存在しない場合の両方で、各化合物について計算した。IC50は、増殖または活性が50%だけ抑制される濃度である。本明細書に開示の化合物は、全て、フィブロネクチンアッセイに従って試験した時、0.1μM未満のIC50を有することが見出された。
【0227】
(実施例B)
α4β1への候補化合物の結合を評価するためのin vitro飽和アッセイ
対数増殖期のJurkat(商標)細胞を、20μg/mLの15/7抗体を含む正常動物血漿で洗い、それに再懸濁させた(Yednockら、J. Biol. Chem.、(1995年)270(48):28740頁)。
【0228】
標準曲線のための標準的な12点段階希釈を用い、66μMから0.01μMの範囲の様々な濃度で候補化合物の既知量を含む正常血漿試料、あるいは、候補化合物で処理した動物の末梢血から得た血漿試料のいずれかに、Jurkat(商標)細胞を2倍希釈した。
【0229】
次いで、細胞を室温で30分間インキュベートし、結合していない15/7抗体を除去するために、2%のウシ胎児血清および各々1mMの塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを含むリン酸緩衝化生理食塩水(「PBS」)(アッセイ媒体)により2回洗った。
【0230】
次いで、細胞を、フィコエリスリン結合ヤギF(ab’)2抗マウスIgG Fc(Immunotech、Westbrook、ME)(これは、研究されている動物種からの5%の血清との共インキュベーションにより、何らかの非特異的交差反応のために吸着された)に、1:200で曝し、暗所で、4℃で30分間インキュベートした。
【0231】
細胞を、アッセイ媒体により2回洗い、それに再懸濁した。次いで、Yednockら、J. Biol. Chem.、(1995年)270:28740頁に記載の標準的蛍光活性化セルソーター(「FACS」)分析により、細胞を分析した。
【0232】
次いで、データを、例えば、通常の用量−反応の様式で、蛍光vs.用量としてグラフ化した。曲線の上側平坦部を生じる用量レベルは、in vivoモデルにおいて効能を得るために必要とされるレベルを表す。
【0233】
α4依存in vitro効能アッセイの結果は、本発明の特定の化合物は、このアッセイで試験した時、20μg/mL未満のEC50でα4β1インテグリンの阻害を示したことを表す。
【0234】
(実施例C)
VLA−4への化合物の結合を評価するためのin vitroアッセイ
in vitroアッセイを、αβインテグリンへの候補化合物の結合を評価するために用いた。このアッセイにおいて結合する化合物は、通常のアッセイ(例えば、競合アッセイ)により生体試料におけるVCAM−1のレベルを評価するために使用できる。このアッセイは、約1μMのように低いIC50値に対して高精度である。
【0235】
αβインテグリンの活性を、可溶性VCAM−1と、高レベルのαβを発現するヒトT細胞系であるJurkat(商標)細胞(例えば、American Type Culture Collection No.TIB 152、T1B 153、およびCRL 8163)との相互作用により求めた。VCAM−1は、細胞表面と、αβインテグリンに依存する仕方で相互作用する(Yednockら、J. Biol. Chem.、(1995年)270:28740頁)。
【0236】
組換え体可溶性VCAM−1を、N末端にVCAM−1の7つの細胞外ドメインと、C末端にヒトIgG重鎖定常部を含むキメラ融合タンパク質として発現させた。このVCAM−1融合タンパク質を、前掲のYednockにより記載されているやり方で作り、精製した。
【0237】
Jurkat(商標)細胞は、前掲のYednockにより記載されているように、10%のウシ胎児血清、ペニシリン、ストレプトマイシンおよびグルタミンを追加したRPMI 1640で増殖した。
【0238】
Jurkat(商標)細胞を、1.5mMのMnClおよび5μg/mLの15/7抗体により氷の上で30分間インキュベートした。Mn2+は、受容体を活性化してリガンドの結合を増し、15/7は、αβの活性化されたリガンド結合コンホメーションを認識し、このコンホメーションに分子を固定して、VCAM−1/αβインテグリンの相互作用を安定化するモノクローナル抗体である。Yednockら、前掲。15/7抗体に類似の抗体は他の研究者により調製され(Luqueら、1996年、J. Biol. Chem. 271:11067頁)、このアッセイに使用され得る。
【0239】
次いで、標準的な5点段階希釈を用い、66μMから0.01μMの範囲の様々な濃度の候補化合物と共に、細胞を、室温で30分間、インキュベートした。次いで、15μLの可溶性組換え体VCAM−1融合タンパク質を、Jurkat(商標)細胞に加え、氷の上で30分間インキュベートした。Yednockら、前掲。
【0240】
次に、細胞を2回洗い、PE結合ヤギF(ab’)抗マウスIgG Fc(Immunotech、Westbrook、Me.)に、1:200で再懸濁し、暗所で30分間、氷の上でインキュベートした。細胞を2回洗い、前掲のYednockらに記載の標準的蛍光活性化セルソーター(「FACS」)分析により、分析した。
【0241】
約15μM未満のIC50を有する化合物は、αβに対する結合アフィニティを有する。
【0242】
このアッセイにより試験した時、上の実施例で調製した化合物は、15μM以下のIC50を有する、または有すると予想される(あるいは、in vivoで活性であると予想される)。本アッセイで特定の化合物は、5μM未満のIC50を有していた。
【0243】
(実施例D)
生体利用能の決定のためのカセット投与および血清分析
経口での生体利用能を、ラットにカセット(すなわち、1つの投与溶液当たり6種の化合物の混合物)で投与することによってスクリーニングした。カセットは、10mg/kgの総用量で、5種の試験品および標準化合物を含む。各々の化合物/試験品は、等モルの1NのNaOHによりナトリウム塩に変換し、水に、2mg/mLで溶かした。カセットは、等容積の6種の溶液の各々を混合することによって調製した。カセット投与溶液は、十分に混合し、次いで、pHを7.5〜9に調整した。投与溶液は研究の前日に調製し、室温で一夜、撹拌した。
【0244】
Charles River LaboratoriesからのオスのSprague Dawley(SD)ラット(6〜8週齢)をこのスクリーニングに用いた。ラットは少なくとも1日隔離し、食物と水にいつでもありつけた。カセットを投与する前の晩に、約16時間ラットに餌を与えなかった。
【0245】
4匹のSDラットを、各カセットに割り当てた。単一用量の投与溶液を各ラットに経口投与した。投与容積(5mL/kg)および時間を記録し、投与後2hでラットに餌を与えた。
【0246】
血液試料を、心臓穿刺により次の時点で採取した:4h、8hおよび12h。採血の直前に、COガスにより10〜20秒以内でラットに麻酔をかけた。12−hourの試料を採取した後、ラットをCOによる窒息と、その後の頸椎脱臼により安楽死させた。
【0247】
血液試料は、処理される前、ヘパリンで凝血防止されたマイクロテイナー(microtainer)管に、雰囲気より低い温度(4℃)に保った。血液試料を遠心し(10,000rpm、5分間)、血漿試料を取り出し、薬剤レベルを分析するまで、−20℃の冷蔵庫に保管した。血漿中の薬剤レベルは、直接血漿沈殿法に対する次のプロトコルを用いて分析した。
【0248】
in vivo血漿試料は、1.5mL 96ウェルプレートに、順番に、100μLの試験血漿、150μLのメタノールを加え、その後、10〜20秒間の渦発生撹拌を行なうことにより調製した。150μLの0.05ng/μLの内部標準(アセトニトリル中)を加え、30秒間、渦発生撹拌した。
【0249】
標準曲線試料は、1.5mL 96ウェルプレートに、順番に、100μLの対照マウス血漿、その後、150μLのメタノールを加え、10〜20秒間の渦発生撹拌を行なうことにより調製した。150μLの0.05ng/μLの内部標準(アセトニトリル中)を加え、30秒間、渦発生撹拌した。0.5ng/mLから2,000ng/mLの標準曲線範囲を得るように、試料に0〜200ng(10濃度)の当該化合物(50%メタノール中)を加えた。再び、試料を30秒間、渦発生撹拌する。
【0250】
次いで、試料をEppendorf microfugeで、20から30分間、3、000rpmで遠心し、その後、80〜90%の上澄みを清浄な96ウェルプレートに移した。次に、試料が乾くまで有機溶媒を蒸発させた(N下、40℃/30〜60分(Zymark Turbovap))。
【0251】
次いで、残留物を200〜600Lの移動相(50%CHOH/0.1%TFA)に溶かした。次に、LC/MS/MSを、PE−Sciex API−3000三連四重極質量分析計(SN0749707)(Perkin−Elmer)、Series200オートサンプラー、およびShimadzu 10Aポンプを用いて行なった。PE−Sciex Analyst(v1.1)によりデータを取得し、データの分析および数量化は、PE−Sciex Analyst(v1.1)を用いて実施した。5〜50μlの容積の試料を逆相ThermoHypersil DASH−18カラム(Keystone 2.0×20mm、5μm、部品番号:8823025−701)に注入し、25%CHOH、0.1%TFA→100%CHOH、0.1%TFAの移動相を用いた。約300μL/分の流量で運転時間は約8分であった。
【0252】
曲線下面積(AUC)を、t=0から最後の血漿濃度サンプリング時間txまで、一次台形公式を用いて計算した(「Handbook of Basic Pharmacokinetics」、Wolfgang A. Ritschel、Gregory L. Kearns、第5版、1999年を参照)。
【0253】
AUC0〜tx=Σ0〜n((C+Cn+1)/2))・(tn+1−t)[(μg/mL)h]
カセット投与方式の場合に、血管外投与後、4、8および12hでの試料で、AUCは、t=0からt=12hまで計算した。
【0254】
上の実施例1〜5の化合物の各々は、このアッセイで試験した時、少なくとも5μgh/mL(10mg/kgの用量での投与に規格化した場合)のAUCを有していた。
【0255】
(実施例E)
喘息モデル(E1)
αβインテグリンにより媒介される炎症性の病気には、例えば、慢性喘息により起こる、好酸球流入(influx)、気道過敏および閉塞が含まれる。以下に、喘息治療に用いられる本発明の化合物のin vivoでの作用を研究するために用いられる、喘息の動物モデルを記載する。
【0256】
ラット喘息モデル(E2)
Chapmanら、Am J. Resp. Crit. Care Med.、153〜4頁、A219(1996年)、およびChapmanら、Am. J. Resp. Crit. Care Med. 155:4、A881(1997年)(これらはどちらも参照を通じて全体として組み込まれる)に記載の手順に従う。
【0257】
オバルブミン(OA;10μg/mL)を、水酸化アルミニウム(10mg/mL)と混合し、0日目にラット(Brown Norway)に注射する(i.p.)。アジュバントと一緒のOAの注射を、7日目および14日目に繰り返した。21日目に、感作動物をプラスチックチューブに拘束し、鼻だけ暴露される装置で、OAのエアロゾル(10mg/kg)に曝す(60分間)。動物は72時間後に、ペントバルビタール(250mg/kg、i.p.)により殺す。3アリコート(4mL)のHanks液(HBSS×10、100ml;EDTA 100mM、100mL;HEPES 1M、25mL;HOにより1Lにする)を用いて、気管カニューレにより肺を洗浄する。回収した細胞を貯め、回収した流体の全容積を、Hanks液の添加により12mLに調節する。全細胞を数え(Sysmex microcell counter F−500、TOA Medical Electronics Otd.、日本)、塗抹は、回収流体を希釈し(約106個の細胞/mLに)、アリコート(100μL)を遠心すること(Cytospin、Shandon,英国)によって作製した。塗抹を風乾し、堅牢性グリーンのメタノール溶液(2mg/mL)を用いて5秒間で固定し、好酸球、好中球、マクロファージおよび白血球を区別するために、エオシンG(5秒)およびチアジン(5秒)で染色した(Diff−Quick、Browne Ltd.、英国)。塗抹当たり合計500個の細胞を、オイル浸漬下に、光学顕微鏡により数えた(×100)。本発明の化合物は、0.5%カルボキシメチルセルロースおよび2%Tween 80に懸濁液として製剤し、アレルゲン(オバルブミン)に感作したラットに経口投与できる。能動感作したラット(Brown Norway)の気道におけるアレルゲン誘発白血球集積を抑制した化合物は、このモデルで活性であると見なされる。
【0258】
マウス喘息モデル(E3)
化合物はまた、Kungら、Am J. Respir. Cell Mol. Biol.、13:360〜365頁(1995年)、およびSchneiderら、(1999年)、 Am J. Respir. Cell Mol. Biol.、20:448〜457頁(1999年)(これらは各々参照を通じて全体として組み込まれる)により記載の手順に従って、急性肺炎のマウスモデルでも評価される。メスのBlack/6匹のマウス(8〜12週齢)を、20μgのova(Grade 4、Sigma)および2mgのinject Alum(Pierce)を含む、0.2mLのova/alumの混合物の腹腔内注射によって1日目に感作する。ブースター注射を、14日目に投与する。マウスは、28および29日目に、エアロゾル化した1%ova(0.9%生理食塩水中)により、20分間攻撃される。マウスを安楽死させ、気管支肺胞洗浄試料(3mL)を30日目(最初の攻撃から48時間後)に捕集した。好酸球は、FACS/FITC染色法により計数した。本発明の化合物は、0.5%カルボキシメチルセルロースおよび2%Tween 80に懸濁液として製剤し、アレルゲン(オバルブミン)に感作したラットに経口投与される。能動感作したC57BL/6マウスの気道におけるアレルゲン誘発白血球集積を抑制した化合物は、このモデルで活性であると見なされる。
【0259】
ヒツジ喘息モデル(E4)
このモデルは、Abrahamら、J.Clin, Invest、93:776〜787頁(1994年)、およびAbrahamら、Am J. Respir. Crit. Care Med.、156:696〜703頁(1997年)(これらのどちらも参照を通じて全体として組み込まれる)により記載の手順を用いる。本発明の化合物は、ブタ回虫抗原に過敏なヒツジへの、静脈内(生理食塩水溶液)、経口(2%Tween 80、0.5%カルボキシメチルセルロース)、およびエアロゾル投与によって評価される。早期抗原誘発気管支反応を減らす、および/または遅発型気道反応を阻止する(例えば、抗原誘発遅発反応および気道過敏(「AHR」)に対する防御作用を有する)化合物が、このモデルにおいて活性であると見なされる。
【0260】
吸入したブタ回虫抗原に対して早期および遅発気管支反応の両方を発現することが示されたアレルギーヒツジを、気道への候補化合物の作用を研究するために用いる。2%リドカインによる鼻腔の局部麻酔の後、バルーンカテーテルを、1つの鼻孔を通して食道下部に進める。次いで、動物は、ガイドとして柔軟な気管支ファイバースコープを用い、他方の鼻孔を通して、カフ付き気管内チューブにより飼育される。
【0261】
胸膜内圧は、Abraham(1994年)に従って見積もる。エアロゾル(下の配合を参照)は、Andersonカスケードインパクターにより求めると3.2μmの空気動力学的粒径(mass median aerodynamic diameter)を有するエアロゾルを供給する使い捨ての医療用ネブライザーを用いて発生させる。ネブライザーは、ソレノイドバルブおよび圧縮空気(20psi)源からなる薬量計装置に連結する。ネブライザーの吐出は、プラスチック製のT字管に向かい、その1つの端は、ピストン式呼吸器の吸気ポートに連結する。ソレノイドバルブを、呼吸器の吸気サイクルの始めに1秒間働かせる。エアロゾルは、500mLのVTで、20回呼吸/分の速さで送り込む。単なる0.5%炭酸水素ナトリウム溶液を対照として用いる。
【0262】
気管支反応を評価するために、Abraham(1994年)に従って、カルバコールに対する累積濃度−反応曲線を作成する。気管支生検は、処置の開始前後、および抗原の攻撃後24時間に行なう。気管支生検はAbraham(1994年)に従って実施する。
【0263】
肺胞マクロファージのin vitroでの接着研究もまた、Abraham(1994年)に従って実施でき、接着細胞のパーセンテージを計算できる。
【0264】
エアロゾル製剤
0.5%炭酸水素ナトリウム/生理食塩水(w/v)に、30.0mg/mLの濃度で、化合物溶液を、次の手順を用いて調製する。
【0265】
A.0.5%炭酸水素ナトリウム/生理食塩水の保存溶液の調製:100.0mL
【0266】
【表5】

手順
1.0.5gの炭酸水素ナトリウムを100mLのメスフラスコに入れる。
【0267】
2.約90.0mLの生理食塩水を加え、溶けるまで超音波処理する。
【0268】
3.生理食塩水により100.0mLになるまで十分量を加え、十分に混合する。
【0269】
B.30.0mg/mLの化合物の調製:10.0mL
【0270】
【表6】

手順
1.0.300gの化合物を10.0mLのメスフラスコに入れる。
【0271】
2.約9.7mLの0.5%炭酸水素ナトリウム/生理食塩水保存溶液を入れる。
【0272】
3.化合物が完全に溶けるまで超音波処理する。
【0273】
4.0.5%炭酸水素ナトリウム/生理食塩水の保存溶液を10.0mLになるまで十分量を加え、十分に混合する。
【0274】
(実施例F)
アジュバント誘発関節炎
アジュバント誘発関節炎(「AIA」)は、関節リウマチ(「RA」)の研究に有用な動物モデルであり、Lewisラットの尻尾の基部に結核菌を注射することによって誘発される。注射の後10日と15日の間に、動物は、重篤な進行性関節炎を発症する。
【0275】
一般的に、化合物は、ラットにおけるアジュバント誘発浮腫により生じる後足の腫れおよび骨損傷を直すそれらの能力で試験される。AIAにより生じる後足の腫れの抑制を正確に評価するために、2段階の炎症が定義される:(1)1次的および2次的、注射された後足、(2)2次的、注射されてない後足(これは、通常、注射された足における炎症の発生から約11日で発症し始める)。後者のタイプの炎症の減少は、免疫抑制活性の徴候である。Chang, Arth. Rheum.、20、1135〜1141頁(1977年)と比較。
【0276】
AIAのような、RAの動物モデルを用いると、疾患の初期段階に関与する細胞事象を研究できる。マクロファージおよび白血球でのCD44の発現は、アジュバント関節炎の発症初期の間に上向き調節されるが、LFA 1の発現は、疾患の進展の中で、遅れて、上向き調節される。アジュバント関節炎の最初の段階での接着分子と内皮との間の相互作用を理解することで、RAの治療において用いられる方法をかなり前進させることができるであろう。
【0277】
(実施例G)
ラットにおけるコラーゲン誘発関節炎
目的:炎症、軟骨破壊、およびラットにおけるII型コラーゲン関節炎の進展において起こる骨吸収の抑制のために、1日2回経口投与される((−1日目)〜20日目)本発明の代表的化合物(「化合物A」)の効能を評価すること。
【0278】
動物:到着時、125〜150gの重さであった、54匹のメスLewisラット(Harlan)(50匹のレスポンダーを得るために、10匹の6グループに対して、10日目、11日目、12日目に、50匹にコラーゲンを注射)。4〜5匹/籠で収容した動物(関節炎で10匹/グループ、正常な対照体で4匹/グループ)を、4〜8日間、順応させた。動物には、3mg/kgで1日2回経口、10mg/kgで1日2回経口、30mg/kgで1日2回経口で投与した。
【0279】
材料:ビヒクル中の作用剤または薬剤、II型コラーゲン、フロイント不完全アジュバント、メトトレキサート(Sigma)、化合物A。
【0280】
研究計画の概略
投与は、マイナス1日目に開始した。
【0281】
順応させた動物にイソフルランで麻酔をかけ、コラーゲンを注入した(0日目)。2回目のコラーゲン注入のために6日目に、それらに再び麻酔をかけた。コラーゲンは、0.01N酢酸に4mg/mLの溶液を作ることによって調製した。等しい体積のコラーゲンとフロイント不完全アジュバントを、この材料の一滴が水中に置かれた時、その形状を保つまで、手による混合によって乳化した。各動物は、背中の3箇所に塗られる毎に、300μLの混合物を与えられる。
【0282】
正常(発症前)の左および右の足首関節のカリパス測定を、9日目に行なった。10〜12日目に、関節炎の発症が起こった。
【0283】
ラットは、研究の(−)1、6、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20日目に重さを測り、足首のカリパス測定は、9日目から始めて毎日行なった。最終の体重は、20日目に測った。最終の体重測定の後、最後の血漿採取のために、動物に麻酔をかけ、次いで、安楽死させた。
【0284】
両方の後足および膝を取り出した。後足を秤量し、ホルマリンの中に(膝と共に)入れ、次いで、顕微鏡観察のために処理した。
【0285】
関節の処理
固定液に1〜2日間、次に、脱灰液に4〜5日間の後、足首関節を、縦に半分に切断し、膝を前頭面で半分に切断し、処理し、包埋し、薄片化し、トルイジンブルーにより染色した。
【0286】
化合物Aは、足首炎症の治療を受けなかった対照に比べて、また試験された用量(3.0mg/kg、10.0mg/kg、および30.0mg/kg)での膝の組織病理学により、かなりの抑制を示した。
【0287】
(実施例H)
HLA−B27ラットにおける大腸炎の誘発
大腸炎を逆転させる本発明の化合物の効能を、HLA−27Bトランスジェニックラットで評価した。HLA−27Bトランスジェニックラットは、ヒトのクローン病を模した炎症性腸疾患の動物モデルとして用いられている。これらのラットは、ヒトMHCクラスI HLA−B27重鎖およびベータ−2ミクログロブリンタンパク質を過剰発現し、このため、結腸の炎症を含めて様々な自己免疫疾患を誘発する。
【0288】
大腸炎を消散させる、本発明の化合物Aの治療効果は、HLB−B27トランスジェニックラットで評価した。病気に罹ったラットに、100mg/kgの本発明の化合物Aを1日2回、16日間、皮下投与した。100mg/kgの本発明の化合物Aを投与された動物試料は、大腸炎の臨床的および組織学的な消散を示し、抗α4抗体GG5/3により処置した陽性対照グループと同様の効能を示した。
【0289】
疾患活動性指数(Disease Activity Index、DAI)の評価点は、100mg/kgの本発明の化合物A、および10mg/kgのGG5/3(陽性対照)を投与したラットでは、ビヒクルを投与したラットより、全体として改善された評価点を示した。化合物AおよびGG5/3を投与したラットでの糞便硬度およびFOB評価点は、ビヒクルのグループとは統計的に差異があった。
【0290】
大腸炎の誘発
20匹のHLA−B27トランスジェニックラット(6〜9週齢)を、Taconicに発注した。ラットは動物施設において10週間順応させた。動物用床敷は、「汚れた」環境フロラを制御するために、1週間に1度、異なる籠で混ぜ合わせた。
【0291】
処置
ラットは登録し、重さおよびDAI評価点(FC≧3、FOB≧2)に基づいて、4つのグループ(n=5)に無作為に選んだ。これらの実験グループに、100mg/kg(pH2.8)で化合物Aを1日2回、16日間皮下投与し、次回投与の直前(at trough)に終結させた。対照グループには、ビヒクル処理(pH3.2)グループ、および10mg/kg(5mL/kg)で、0日目、3日目、および6日目に皮下投与し、8日目に投与直前に終結させたGG5/3(マウス抗ラットα4インテグリン抗体)陽性対照グループが含まれていた(表H1)。化合物Aおよびビヒクル処理剤は、5日毎に製剤した。
【0292】
表H1 IBDに対する研究計画
【0293】
【表7】

エンドポイント情報(read−outs)
疾患活動性指数評価点、糞便硬度試験および便潜血検査を、1週間に4回行なって、生存中臨床評価点を得た。研究での主な情報源は、盲腸、近位結腸、中位結腸、および遠位結腸の組織病理学分析であった。IBD評価システムを適用した(表H2)。
【0294】
表H2 IBD評価システム
【0295】
【表8】

疾患活動性指数(DAI)評価点は、ビヒクルグループより、化合物AおよびGG5/3(陽性対照)を投与したラットで低かった。化合物AおよびGG5/3(陽性対照)投与グループに対する糞便硬度および便潜血検査AUCの評価点もまた、ビヒクルとは統計的に差異があった。
【0296】
本発明のいくつかの実施形態が例示され説明されたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、それらに様々な変更がなされ得ることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1】

[式中、
は、CからCのアルキルおよびCからCのハロアルキルからなる群から選択され;
は、CからCのアルキル、CからCのアルケニル、CからCのアルキニル、およびCからCのシクロアルキルからなる群から選択される]
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステル。
【請求項2】
がCからCのアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がメチルまたはトリフルオロメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
がCからCのアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
がCからCのアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
がメチルまたはエチルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
がイソプロピルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項9】
がCからCのシクロアルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
がシクロペンチルである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
がCからCのアルケニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
がアリルである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
がCからCのアルキニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
がプロパルギルである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
式IIの化合物:
【化2】

[式中、
は、CからCのアルキルおよびCからCのハロアルキルからなる群から選択され;
は、CからCのアルキル、CからCのアルケニル、CからCのアルキニル、およびCからCのシクロアルキルからなる群から選択される]
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステル。
【請求項16】
がCからCのアルキルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
がメチルまたはトリフルオロメチルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項18】
がメチルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項19】
がCからCのアルキルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項20】
がCからCのアルキルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項21】
がメチルまたはエチルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
がイソプロピルである、請求項20に記載の化合物。
【請求項23】
がCからCのシクロアルキルである、請求項16に記載の化合物。
【請求項24】
がシクロペンチルである、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
がCからCのアルケニルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項26】
がアリルである、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
がCからCのアルキニルである、請求項15に記載の化合物。
【請求項28】
がプロパルギルである、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
以下からなる群から選択される化合物:
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−エチル−1,1,1−トリフルオロメチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−イソプロピルメチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(5−(N−シクロペンチルメチルスルホンアミド)−2−(ジエチルアミノ)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−メチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−(プロプ−2−イニル)メチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−エチルメチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(5−(N−アリルメチルスルホンアミド)−2−(ジエチルアミノ)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−エチルブチルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)−プロパン酸;
(S)−2−(5−(3−クロロ−N−エチルプロピルスルホンアミド)−2−(ジエチルアミノ)−ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(5−(3−クロロ−N−メチルプロピル−スルホンアミド)−2−(ジエチルアミノ)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−エチル−3,3,3−トリフルオロプロピルスルホンアミド)−ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)プロパン酸;
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−エチルプロピルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)フェニル)−プロパン酸;および
(S)−2−(2−(ジエチルアミノ)−5−(N−エチル−2−メチルプロピルスルホンアミド)ピリミジン−4−イルアミノ)−3−(4−(ピロリジン−1−カルボニルオキシ)−フェニル)プロパン酸;
ならびに、これらの薬学的に許容される塩またはエステル。
【請求項30】
薬学的に許容される担体、および請求項1に記載の1種または複数の化合物の治療有効量を含む医薬組成物。
【請求項31】
患者における、α4インテグリンにより少なくとも部分的に媒介される疾患を治療する方法であって、請求項30に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項32】
哺乳動物患者における疾患の炎症要素を減少する、および/または妨げるための方法であって、該哺乳動物に請求項30に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項33】
哺乳動物患者における自己免疫反応を減少する、および/または妨げるための方法であって、該哺乳動物に請求項30に記載の医薬組成物を投与することを含む方法。
【請求項34】
前記疾患が、喘息、多発性硬化症および炎症性腸疾患から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記疾患がクローン病である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患が関節リウマチである、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
式Iの化合物:
【化3】

[式中、
は、CからCのアルキルおよびCからCのハロアルキルからなる群から選択され;
は、CからCのアルキル、CからCのアルケニル、CからCのアルキニル、およびCからCのシクロアルキルからなる群から選択される]
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの調製方法であって、
(a)式IIIの化合物:
【化4】

[Pgはカルボキシル保護基である]
を、還元的アミノ化条件下で、CからCのアルデヒドまたはケトン、CからCのアルケニルアルデヒドまたはアルケニルケトン、CからCのアルキニルアルデヒドまたはアルキニルケトン、C〜Cシクロアルキルケトンおよびベンズアルデヒドに接触させて、式IVの化合物:
【化5】

を得ること、
(b)化合物IVを、式Vの化合物:
【化6】

を生成する条件下で、式RSOZ(Zはハロである)のスルホニルハライドに接触させること、および
(c)カルボキシル保護基を除去して、式Iの化合物を得ること
を含む方法。
【請求項38】
式Iの化合物:
【化7】

[式中、
は、CからCのアルキルおよびCからCのハロアルキルからなる群から選択され;
は、CからCのアルキル、CからCのアルケニル、CからCのアルキニル、およびCからCのシクロアルキルからなる群から選択される]
または薬学的に許容されるその塩もしくはエステルの調製方法であって、
(a)式VIの化合物:
【化8】

[Pgはカルボキシル保護基である]
を、過剰のR’SOXに接触させて、式VIIの化合物:
【化9】

を得ること、
(b)式VIIの化合物から1つの−SOR’基を選択的に除去して、式VIIIの化合物:
【化10】

を得ること、
(c)式VIIIの化合物を、式R−X(Xはハロである)を有するアルキル化剤、またはRがメチルである時は硫酸ジメチルに接触させて、式IXの化合物を生成させること、および
【化11】

(d)カルボキシル保護基を除去して、式Iの化合物を得ること
を含む方法。

【公表番号】特表2009−528296(P2009−528296A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556582(P2008−556582)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/062824
【国際公開番号】WO2007/101165
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(399013971)エラン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (75)
【Fターム(参考)】