説明

VEGFインヒビターを用いる腫瘍退縮方法

本出願において、被験体において腫瘍を退縮または抑制するための方法が、開示される。この方法は、血管内皮増殖因子(VEGF)媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な薬剤を、腫瘍を退縮または抑制する必要がある被験体に投与し、その結果、その腫瘍が退縮または阻害されるようにする工程による。本発明の方法は、腫瘍の大きさの減少、および腫瘍転移の阻害をもたらす。この方法は、嵩高い転移性癌に罹患している患者にとって特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、血管内皮増殖因子(VEGF)活性を阻害することにより腫瘍および転移の退縮を促進するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連分野の説明)
血管内皮増殖因子(VEGF)発現は、ヒトの癌においてほぼ遍在的であり、これは、腫瘍の新脈管形成の重要な媒介因子としてのVEGFの役割と一致する。VEGFまたはそのVEGFR−2レセプターに結合することによりVEGFの機能を遮断すると、複数の種々の異種移植片モデルにおいて移植された腫瘍細胞の増殖が阻害される(例えば、Gerberら(2000)Cancer Res.60:6253〜6258参照)。可溶性VEGFアンタゴニスト(「VEGFトラップ(Trap)」と呼ばれる)が、記載されている(Kimら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:11399〜404;Holashら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:11393〜8)。これらは、その全体が参考として具体的に援用される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の簡単な要旨)
第一の局面において、本発明は、腫瘍を退縮することまたは腫瘍の大きさを減少することが必要な被験体において、腫瘍を退縮するためまたは腫瘍の大きさを減少するための方法を特徴とし、この方法は、その被験体に、VEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な治療上有効な量の薬剤を投与する工程を包含し、その腫瘍は、退縮する。用語「退縮」とは、腫瘍の大きさを低減または減少すること(例えば、腫瘍を縮小すること)を意味する。
【0004】
具体的な実施形態においてVEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な薬剤は、VEGFアンタゴニストである。より具体的には、このVEGFアンタゴニストとしては、アセチル化された、Flt−1(1−3)−Fc、Flt−1(1−3R→N)−Fc、Flt−1(1−3ΔB)−Fc、Flt−1(2−3ΔB)−Fc、Flt−1(2−3)−Fc、Flt−1D2−VEGFR3D3−FcΔC1(a)、Flt−1D2−Flk−1D3−FcΔC1(a)、およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)からなる群より選択される、VEGFトラップ(trap)が挙げられる。具体的な好ましい実施形態において、上記VEGFトラップは、配列番号1において示されるヌクレオチド配列と配列番号2において示されるアミノ酸配列とを有する、VEGFR1R2−FcΔC1(a)(VEGFトラップR1R2とも呼ばれる)である。本発明は、配列番号1において示されるヌクレオチド配列および/または配列番号2において示されるアミノ酸配列と、少なくとも90%、95%、98%、または少なくとも99%相同であるVEGFトラップの使用を包含する。他の具体的な実施形態において、上記薬剤は、抗体、脂質、核酸、低分子、アプタマー、アンチセンス分子、糖質、ペプチド模倣物、またはハプテンである。
【0005】
本発明の方法により処置されるべき被験体は、好ましくは、1種以上の腫瘍を有するヒト被験体(例えば、嵩高い疾患(同所腫瘍、自然転移病変、および自然発生腫瘍が挙げられる)を伴う癌に罹患しているヒト被験体)であるが、本発明の方法は、処置を必要とする任意の哺乳動物(家畜種を含む)にとって有用である。さらなる実施形態において、本発明の方法は、他の治療方法(癌の処置において使用される他の薬剤を含む)と組み合わせて使用され得る。
【0006】
上記薬剤の投与は、当該分野で公知の任意の方法(皮下投与経路、筋肉内投与経路、皮内投与経路、腹腔内投与経路、静脈内投与経路、鼻腔内投与経路、または経口投与経路を含む)により得る。
【0007】
第二の局面において、本発明は、転移(例えば、肺転移)を退縮する必要がある被験体において転移を退縮する方法を特徴とし、この方法は、その被験体に、VEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な治療上有効な量の薬剤を投与する工程を包含する。
【0008】
第三の局面において、本発明は、腫瘍の大きさが減少するように腫瘍を処置する方法を特徴とし、この方法は、その被験体に、VEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な薬剤を投与する工程を包含し、その腫瘍は大きさが減少する。
【0009】
第四の局面において、本発明は、転移性癌に罹患している被験体において転移性癌を処置する方法を特徴として、この方法は、その被験体に、VEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な薬剤を投与する工程を包含し、その腫瘍は大きさが減少する。
【0010】
他の目的および利点は、続く詳細な説明を概観することにより明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(詳細な説明)
本方法を記載する前に、本発明は、記載される特定の方法および実験条件に限定されないことが理解されるべきである。なぜなら、そのような方法および条件は、変化し得るからである。本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためだけのものであり、限定的であることは意図されないこともまた理解されるべきである。なぜなら、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるからである。
【0012】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、その文脈が明らかに他のように示さない限りは、複数の言及物を包含する。従って、例えば、「方法(a method)」に対する言及は、本明細書中に記載されそして/または本開示などを読むと当業者にとって明らかになる型の1つ以上の方法および/もしくは工程を包含する。
【0013】
他のように定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるのと類似するかまたは等しい任意の方法および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法および材料が、ここに記載される。本明細書中で言及されるすべての刊行物は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0014】
(一般的説明)
以前の研究は、最少残留疾患のモデルにおけるVEGFの役割に焦点を当てていた。この研究において、インヒビターが使用され、定着された脈管構造を有する大きな病変および遠位転移を処置することではなく、腫瘍増殖を防止することが目的であった。このアプローチを支持するのは、正常組織において定着した脈管ネットワーク(動員された平滑筋様脈管周囲細胞が内皮に接着する)は、VEGFが除去または拮抗された場合に不安定にはならないようであるという知見(Benjaminら(1999)J.Clin.Invest.103:159〜165)である。脈管ネットワークの増殖および発達後のVEGF生成を停止するように操作された腫瘍は、主に、脈管壁細胞を欠く脈管の退縮を示す(Benjaminら(1999)(上記))。
【0015】
本明細書中に開示される本発明は、VEGF除去に対して内皮のみの腫瘍脈管の見かけ上の感受性が、絶対的ではなく相対的であり得るか否か、そしてこの病理学的脈管構造が、全体的にVEGF依存性のままであり得るかを決定するための実験から生じる。腫瘍由来のVEGFの除去は、なお、関連する間質細胞により提供される低レベルのVEGFしかその内皮には必要ではない脈管の生存を可能にし得る。そのような腫瘍脈管は、正常組織の脈管構造と比較した場合に、なお、比較的未熟でありかつ病理学的であり得、従って、VEGFの遮断に対して影響を受け得る。従って、腫瘍VEGFおよび間質VEGFの両方の遮断は、少なくともいくつかの腫瘍における内皮−脈管周囲細胞のシグナル伝達を潜在的に妨害し得、脈管構造の不安定化および明らかな腫瘍退縮をもたらすと、仮定された。
【0016】
下記の実験は、最近記載された可溶性デコイレセプターである、Holashら(2002)Proc.Natl.Acad.Scie.USA 99:11393〜11398において記載されたVEGFトラップを用いて、実行された。この構築物は、VEGFR−1のドメインおよびVEGFR−2のドメインの両方を組み込み、以前に報告されたVEGFアンタゴニストよりも有意に高い親和性でVEGFに結合する。腫瘍脈管微小環境におけるさらなるVEGFを遮断すると、既存の脈管構造の破壊が生じるか否かを調査するために、VEGFトラップであるVEGFR1R2−FcΔC1が、定着した異種移植片を有する動物および転移を有する動物に投与された。
【0017】
(定義)
用語「治療有効用量」により、望ましい効果(そのために、この用量が投与される)を生じる用量が意味される。正確な用量は、処置の目的に依存し、公知の技術(例えば、Lloyd(1999)The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding参照)を使用して、当業者により確認可能である。
【0018】
用語「ブロッカー」、「インヒビター」、または「アンタゴニスト」によって、化学反応もしくは化学的応答、または生理反応もしくは生理的応答を、遅延または防止する物質が意味される。一般的なブロッカーまたはインヒビターとしては、アンチセンス分子、抗体、アンタゴニスト、およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、VEGFブロッカーまたはVEGFインヒビターの例は、VEGFレセプターベースのアンタゴニストであり、これには、例えば、抗VEGF抗体またはVEGFトラップ(例えば、VEGFR1R2−FcΔC1(a)(配列番号1〜2)が挙げられる。VEGFレセプターベースのアンタゴニスト(VEGFR1R2−FcΔC1(a)を含む)の完全な説明については、PCT公開公報WO 00/75319(この内容は、その全体が参考として本明細書中に援用される)を参照されたい。
【0019】
「低分子」とは、約500ダルトン未満の分子量を有すると本明細書中で定義され、化学物質およびペプチド分子を包含し得る。
【0020】
(核酸構築物)
本発明のVEGF特異的融合タンパク質の個々の成分は、本明細書により提供される指示を伴って、当該分野で公知の分子生物学的方法により構築され得る。これらの成分は、第一細胞レセプタータンパク質(例えば、VEGFR1);第二細胞レセプタータンパク質(例えば、VEGFR2);多量体化成分(例えば、Fc)から選択される。
【0021】
本発明の方法において有用なVEGF特異的融合タンパク質の具体的実施形態は、その融合タンパク質が(例えば、多量体(好ましくは、二量体)として)会合するのを可能にする、多量体化成分を含む。好ましくは、上記多量体化成分は、免疫グロブリン由来のドメインを含む。適切な多量体化成分は、免疫グロブリン重鎖ヒンジ領域をコードする配列(Takahashiら、1982 Cell 29:671〜679)、免疫グロブリン遺伝子配列、およびそれらの部分である。
【0022】
本発明の方法において有用な融合タンパク質をコードする核酸構築物は、当該分野で公知の方法により発現ベクター中に挿入され、この核酸分子は、発現制御配列に作動可能に連結されている。タンパク質の生成用の宿主−ベクター系(そのタンパク質の発現のために適切な宿主細胞中に導入される発現ベクターを含む)は、当該分野で公知である。その適切な宿主細胞は、細菌細胞(例えば、E.coli)、酵母細胞(例えば、Pichia pastoris)、昆虫細胞(例えば、Spodoptera frugiperda)、または哺乳動物細胞(例えば、COS細胞、CHO細胞、293細胞、BHK細胞、もしくはNS0細胞)であり得る。
【0023】
(アンチセンス核酸)
本発明の一局面において、VEGF媒介性活性が、VEGFアンチセンス核酸の使用によって遮断または阻害される。本発明は、VEGFをコードする遺伝子もしくはcDNAまたはその一部に対して、アンチセンスである少なくとも6ヌクレオチドを含む核酸の治療的使用または予防的使用を提供する。本明細書中で使用される場合、VEGF「アンチセンス」核酸とは、VEGFをコードするRNA(好ましくは、mRNA)の一部に対して相補的ないくらかの配列によってハイブリダイズすることが可能な、核酸を指す。上記アンチセンス核酸は、VEGFをコードするmRNAのコード領域および/または非コード領域に対して相補的であり得る。そのようなアンチセンス核酸は、VEGF発現を防止する化合物として有用性を有し、そして腫瘍縮退のために使用され得る。本発明のアンチセンス核酸は、二本鎖または一本鎖のオリゴヌクレオチド、RNAもしくはDNA、あるいはそれらの改変形または誘導体であり、そのアンチセンス核酸は、細胞に直接投与されても、または導入された外因性配列の転写により細胞内で生成されてもよい。
【0024】
上記VEGFアンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチドであり、好ましくは、6オリゴヌクレオチド〜約50オリゴヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドである。具体的局面において、上記オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、または少なくとも200ヌクレオチドである。上記オリゴヌクレオチドは、DNA、もしくはRNA、またはそれらのキメラ混合物もしくは誘導体もしくは改変形態であり得、そして一本鎖であっても二本鎖であってもよい。さらに、上記アンチセンス分子は、核酸模倣物であるポリマー(例えば、PNA、モルホリノオリゴ、およびLNA)であり得る。他の型のアンチセンス分子としては、短い二本鎖RNA(siRNAとして公知である)および短いヘアピンRNA、ならびに長いdsRNA(>50bpであるが通常は≧500bpである)が挙げられる。
【0025】
(阻害リボザイム)
本発明の局面において、腫瘍は、癌を罹患している被験体において、VEGFをコードする遺伝子mRNA転写物を触媒的に切断するように設計されたリボザイム分子を使用し、標的遺伝子mRNAの翻訳(従って、その遺伝子産物の発現)を防止することによって、VEGF活性レベルを減少することによって、退縮され得る。
【0026】
リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒可能な酵素的RNA分子である。リボザイムの作用機構は、相補的な標的RNAに対するそのリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、その後のヌクレオチド鎖切断事象を含む。リボザイム分子の組成は、その標的遺伝子mRNAに対して相補的な1つ以上の配列を含まなければならず、そしてmRAN切断を担う周知の触媒配列を含まなければならない。この配列については、例えば、米国特許第5,093,246号を参照のこと。部位特異的認識配列でmRNAを切断するリボザイムが、VEGFをコードするmRNAを破壊するために使用され得るが、ハンマーヘッドリボザイムの使用が、好ましい。ハンマーヘッドリボザイムは、その標的mRNAと相補的塩基対を形成する隣接領域により指示される位置でmRNAを切断する。唯一の必要条件は、その標的mRNAが、2塩基の配列(5’−UG−3’)を有することである。ハンマーヘッドリボザイムの構築および生成は、当該分野で周知である。本発明のリボザイムはまた、RNAエンドリボヌクレアーゼ(本明細書中で以後「Cech型リボザイム」)(例えば、Tetrahymena thermophila中に天然に存在するRNAエンドリボヌクレアーゼ(IVSまたはL−19 IVS RNAとして公知である))を含む。このCech型リボザイムは、標的RNA配列にハイブリダイズする8塩基対活性部位を有し、この部位の後で、その標的RNAの切断が生じる。本発明は、VEGFをコードする遺伝子中に存在する8塩基対活性配列を標的とする、Cech型リボザイムを包含する。
【0027】
(VEGFタンパク質に対する抗体の生成)
本発明の別の局面において、本発明は、VEGF活性を結合および遮断することが可能な、抗VEGF抗体または抗体フラグメントを用いて実施され得る。抗VEGF抗体は、例えば、米国特許第6,121,230号(本明細書中に参考として具体的に援用される)において開示される。用語「抗体」とは、本明細書中で使用される場合、抗原に特異的に結合してその抗原を認識する、免疫グロブリン遺伝子またはそのフラグメント由来のフレームワーク領域を含むポリペプチドを指す。認識される免疫グロブリン遺伝子は、κ定常領域、λ定常領域、α定常領域、γ定常領域、δ定常領域、ε定常領域、およびμ定常領域、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖は、κまたはλのいずれかとして分類される。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεとして分類され、これはさらに、それぞれ免疫グロブリンクラスであるIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを規定する。各IgGクラス中には、種々のアイソタイプ(例えば、IgG、IgG、IgG、IgG)が存在する。代表的には、抗体の抗原結合領域は、結合特異性および結合親和性を決定する際に最も重要である。
【0028】
抗体は、インタクトな免疫グロブリンとして、または種々のペプチダーゼを用いた消化により生成される充分に特徴付けられた多数のフラグメントとして、存在する。例えば、ペプシンは、ヒンジ領域中のジスルフィド結合の下で抗体を消化して、F(ab)’(Fabのダイマー)を生成する。これ自体は、ジスルフィド結合によりV−C1に結合した軽鎖である。このF(ab)’は、ヒンジ領域中のジスルフィド結合を破壊するように穏やかな条件下で還元され得、それによりこのF(ab)’ダイマーは、Fab’モノマーへと変換される。このFab’モノマーは、本質的にはFabであり、ヒンジ領域部分を備える。種々の抗体フラグメントが、インタクトな抗体の消化に関して定義されるが、当業者は、そのようなフラグメントが、化学的に、または組換えDNA方法論を使用することにより、新規に合成され得ることを認識する。従って、用語「抗体」とはまた、本明細書中で使用される場合は、抗体全体の改変により生成される抗体フラグメント、または組換えDNA方法論を使用して新規に合成される抗体フラグメント(例えば、単鎖Fv(scFv))、またはファージディスプレイライブラリーを使用して同定される抗体フラグメント(例えば、McCaffertyら(1990)Nature 348:552〜554参照)のいずれかを含む。
【0029】
抗体を調製するための方法は、当該分野で公知である。例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature 256:495〜497;HarlowおよびLane(1988)Antibodies:a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Lab.,Cold Spring Harbor,NY参照のこと。目的とする抗体の重鎖をコードする遺伝子および軽鎖をコードする遺伝子は、細胞からクローニングされ得る。例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子は、ハイブリドーマからクローニングされ得、そして組換えモノクローナル抗体を生成するために使用され得る。モノクローナル抗体の重鎖をコードする遺伝子ライブラリーおよび軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーはまた、ハイブリドーマまたは形質細胞から生成され得る。重鎖遺伝子産物および軽鎖遺伝子産物のランダムな組み合わせにより、種々の抗原特異性を有する抗体の大きなプールが生成される。単鎖抗体または組換え抗体を生成するための技術(米国特許第4,946,778号;米国特許第4,816,567号)が、本発明の融合タンパク質および方法において使用される抗体を生成するために適合され得る。また、トランスジェニックマウスまたは他の生物(例えば、他の哺乳動物)が、ヒト抗体またはヒト化抗体を発現するために使用され得る。あるいは、ファージディスプレイ技術が、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFabフラグメントを同定するために使用され得る。
【0030】
(抗体のスクリーニングおよび選択)
好ましい抗体のスクリーニングおよび選択は、当該分野で公知である種々の方法により実施され得る。標的抗原に対して特異的なモノクローナル抗体の存在についての初期スクリーニングが、例えば、ELISAベースの方法の使用を介して実施され得る。二次スクリーニングは、好ましくは、本発明の多重特異的融合タンパク質の構築において使用するために望ましいモノクローナル抗体を同定および選択するために実施される。二次スクリーニングは、当該分野で公知の適切な任意の方法を用いて実施され得る。ある好ましい方法(「バイオセンサー修飾補助プロファイリング(「BiaMAP」)と呼ばれる)が、同時係属中の米国特許出願番号60/423,017(2002年11月01日出願)(本明細書中にその全体が参考として具体的に援用される)に記載される。BiaMAPは、望ましい特徴を有するモノクローナル抗体を生成するハイブリドーマクローンの迅速な同定を可能にする。より具体的には、モノクローナル抗体は、抗体:抗原相互作用の評価に基づいて、別個のエピトープ関連グループへと選別される。
【0031】
(処置集団)
嵩高い疾患(同所性腫瘍、自然発生転移性病変、および/または自然発生腫瘍を含む)を伴う癌に罹患しているヒト患者は、本発明の方法による処置のための候補である。種々の抗血管新生因子が、移植された異種移植片の増殖を防止する。これは、ヒト癌患者における最小残留疾患の状態を模倣する状態である。しかし、抵抗性癌を有する多くの患者は、嵩高い原発性病変または転移を有する。この集団は、それらの疾患が原因で死ぬ危険が高く、既存の腫瘍および転移を退縮することが可能な抗新脈管形成薬物から大いに恩恵を受ける。
【0032】
(投与方法)
本発明は、有効量の本発明の薬剤を被験体に投与する工程を包含する、処置方法を提供する。好ましい局面において、その薬剤は、実質的に精製されている(例えば、その効果を制限する物質も、望ましくない副作用を生じる物質も、実質的には含まない)。その被験体は、好ましくは動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、ネコ、イヌなど)であり、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。
【0033】
種々の送達系が、公知であり、本発明の薬剤を投与するために使用され得る(例えば、リポソーム中へのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、その化合物を発現可能な組換え細胞、レセプター媒介性エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、1987、J.Biol.Chem.262:4429〜4432参照)、レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部としての核酸の構築など)。導入方法は、経腸的または非経口的であり、これには、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻内経路、および経口経路が含まれるが、これらに限定されない。上記化合物は、任意の従来経路によって(例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮内層または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜、および腸粘膜など)を通る吸収によって)、投与され得、他の生物学的に活性な薬剤とともに投与され得る。投与は、全身投与であっても、局所投与であってもよい。投与は、急性であっても、慢性(例えば、毎日、毎週、毎月など)であっても、他の薬剤と組み合わせてもよい。
【0034】
別の実施形態において、上記活性な薬剤は、小胞(特に、リポソーム)(Langer(1990)Science 249:1527〜1533)中で送達され得る。なお別の実施形態において、上記活性な薬剤は、制御放出系において送達され得る。一実施形態において、ポンプが使用され得る(Langer(1990)(前出)参照)。別の実施形態において、ポリマー物質が、使用され得る(Howardら(1989)J.Neurosurg.71:105参照)。本発明の活性な薬剤が、タンパク質をコードする核酸である別の実施形態において、その核酸は、適切な核酸発現ベクターの一部としてその核酸を構築し、その核酸が細胞内核酸になるように投与することによって(例えば、レトロウイルスベクターを使用して(例えば、米国特許第4,980,286号参照)、または直接注射により、または微粒子ボンバードメント(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupont)を使用して、または脂質もしくは細胞表面レセプターもしくはトランスフェクト剤でコーティングすることにより、または核に侵入することが公知であるホメオボックス様ペプチド(例えば、Joliotら、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1864〜1868参照)に連結されているその核酸を投与することなどによって)、その核酸によりコードされるタンパク質の発現を促進するようにインビボで投与され得る。あるいは、核酸は、細胞内に導入され得、そして例えば、相同組換えによって、発現のための宿主細胞DNA内に組み込まれ得る。
【0035】
(細胞トランスフェクションおよび遺伝子治療)
本発明は、インビトロおよびインビボにおける細胞のトランスフェクションのための、本発明のVEGF特異的融合タンパク質をコードする核酸の使用を包含する。これらの核酸は、標的細胞および生物のトランスフェクションのための周知の多数のベクターのうちのいずれかに挿入され得る。上記核酸は、そのベクターと標的細胞との相互作用を介して、エキソビボおよびインビボで細胞中にトランスフェクトされる。トランスフェクトされた細胞の再導入は、当該分野で公知の任意の方法(カプセル化した細胞の再移植を含む)によって達成され得る。上記組成物は、治療応答を惹起するために充分な量で被験体に(例えば、筋肉中への注射によって)投与される。これを達成するために充分な量は、「治療上有効な用量または量」として定義される。
【0036】
別の局面において、本発明は、ヒトにおいて腫瘍を退縮する方法を提供し、この方法は、本発明のVEGF特異的融合タンパク質をコードする核酸で細胞をトランスフェクトする工程を包含し、この核酸は、上記VEGF特異的融合タンパク質をコードする核酸に作動可能に連結された誘導性プロモーターを含む。ヒト疾患の処置または予防における遺伝子治療手順について、例えば、Van Brunt(1998)Biotechnology 6:1149〜1154参照。
【0037】
(併用療法)
多数の実施形態において、本発明のVEGF特異的融合タンパク質は、1種以上のさらなる化合物または治療と組み合わせて、投与され得る。併用療法は、VEGF特異的融合タンパク質と1種以上のさらなる薬剤とを含む単一の薬学的投与処方物の投与;ならびにVEGF特異的融合タンパク質と、1種以上のさらなる薬剤とを、それ自体が別個の薬学的投与処方物中で投与することを包含する。例えば、本発明のVEGF特異的融合タンパク質および血糖降下剤は、単一の経口投与組成物(例えば、錠剤もしくはカプセル)にて一緒に患者に投与されても、または各々の薬剤が別個の経口投与処方物中で投与されてもよい。別個の投与処方物が使用される場合、本発明のVEGF特異的融合タンパク質と1種以上のさらなる薬剤とが、同時に、または別々に時差のある時間に(すなわち、連続的に)投与され得る。
【0038】
(薬学的組成物)
本発明の方法の実施において有用な薬学的組成物は、治療上有効な量の活性薬剤と、薬学的に受容可能なキャリアとを含む。用語「薬学的に受容可能な」とは、動物(より詳しくはヒト)における使用について、米国連邦政府の規制当局もしくは州政府により承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般的に認識される薬局方に列挙されていることを意味する。用語「キャリア」とは、治療剤がともに投与される、希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的キャリアは、滅菌した液体(例えば、水および油(石油起源の油、動物起源の油、植物起源の油、または合成起源の油(例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油など)が挙げられる)であり得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが、挙げられる、上記組成物はまた、望ましい場合には、少量の湿潤剤または乳化剤またはpH緩衝化剤を含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、散剤、徐放処方物などの形態を採り得る。上記組成物は、従来の結合剤およびキャリア(例えば、トリグリセリド)を用いて、坐剤として処方され得る。経口処方物は、標準的キャリア(例えば、薬剤グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなど)を含み得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martin「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。
【0039】
好ましい実施形態において、上記組成物は、ヒトへの静脈内投与、皮下投与、または筋肉内投与のために適合された薬学的組成物として、慣用的手順に従って処方される。必要な場合、上記組成物はまた、可溶化剤および注射部位での疼痛を緩和するための局所麻酔剤(例えば、リドカイン)を含み得る。上記組成物が注入によって投与される場合、その組成物は、滅菌した薬剤グレードの水または生理食塩水を含む注入ボトルで分散され得る。その組成物が注射により投与される場合、滅菌した注射用水または生理食塩水のアンプルが、上記成分を投与前に混合し得るように提供され得る。
【0040】
本発明の活性薬剤は、中性形態または塩形態として処方され得る。薬学的に受容可能な塩としては、遊離アミノ基と形成される塩(例えば、塩酸由来の塩、リン酸由来の塩、酢酸由来の塩、シュウ酸由来の塩、酒石酸由来の塩など)、および遊離カルボキシル基と形成される塩(例えば、ナトリウム由来の塩、カリウム由来の塩、アンモニウム由来の塩、カルシウム由来の塩、水酸化第二鉄由来の塩、イソプロピルアミン由来の塩、トリエチルアミン由来の塩、2−エチルアミノエタノール由来の塩、ヒスチジン由来の塩、プロカイン由来の塩など)が挙げられる。
【0041】
本発明の処置方法において有効な本発明の活性薬剤の量は、本記載に基づいて標準的臨床技術によって決定され得る。さらに、インビトロアッセイが、最適な投与量範囲を同定するのを補助するために必要に応じて使用され得る。上記処方物において使用されるべき正確な用量はまた、投与経路、および状態の重篤度に依存し、実施者の判断および各被験体の事情に従って決定されるべきである。しかし、静脈内投与のために適切な投与範囲は、一般的には、体重1kg当たり約50〜5000μgの活性化合物である。鼻内投与のために適切な投与量範囲は、一般的には、約0.01pg/体重kg〜1mg/体重kgである。有効用量は、インビトロ試験系または動物モデル試験系から誘導される用量応答曲線から外挿され得る。
【0042】
全身投与のために、治療上有効な用量は、まずインビトロアッセイから推定され得る。例えば、細胞培養物中で決定したIC50を含む循環濃度範囲を達成するための用量が、動物モデルにおいて処方され得る。そのような情報は、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定するために、使用され得る。初期投与量はまた、インビボデータ(例えば、動物モデル)から、当該分野で周知の技術を使用して推定され得る。当業者は、動物データに基づいて、ヒトへの投与を容易に最適化し得る。
【0043】
投与量および投与間隔は、治療効果を維持するために充分な上記化合物の血漿レベルを提供するために、個別の調整され得る。当業者は、過度な実験を伴わずに、治療上有効な局所投与量を最適化することが可能である。
【0044】
投与される化合物量は、当然、処置される被験体、被験体の体重、疾患の重篤度、投与様式、および主治医の判断に依存する。上記治療は、症状が検出可能である間、または症状が検出可能ではない場合でさえ、断続的に反復され得る。上記治療は、単独でかまたは他の薬物と組み合わせて、提供され得る。
【0045】
(キット)
本発明はまた、包装材料と、その包装材料内に収容された薬剤とを備える、製品を提供し、この薬剤は、本発明の少なくとも1種のVEGF特異的融合タンパク質を含み、この包装材料は、上記VEGF特異的融合タンパク質が腫瘍退縮のために使用され得ることを示す標識または包装挿入物を備える。
【0046】
(具体的実施形態)
以前の研究者は、一層の脈管壁細胞が内皮に近接して存在する腫瘍脈管は、腫瘍由来VEGFの除去の影響から保護されると報告している(例えば、Abramovitchら(1999)Cancer Res.59:5012〜5016参照)。本発明者らは、内皮細胞または間質細胞により局所生成されるVEGFの効果は、腫瘍のVEGF生成を停止することによって変化される必要はないことを理由付けた。さらに、低レベルのVEGFは、研究された可溶性レセプターVEGFトラップ構築物(Kimら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:11399〜11404;Holashら(2002)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:11393〜11398(これらは、本明細書中にその全体が参考として具体的に援用される))よりもこの因子について親和性が低い薬剤によっては捕捉されないかもしれない。内皮−脈管壁細胞輸送におけるVEGFの役割が、腫瘍脈管の完全性にとって重要である場合、成熟腫瘍の脈管構造さえ、そのような高親和性抗VEGF薬剤による破壊に対して感受性であり得る。本明細書中に提供される結果は、使用したVEGFインヒビターが、既存の腫瘍における内皮細胞および動員された脈管周囲細胞の両方の同時アポトーシスを、脈管壁細胞層の見掛けの防御効果を伴わずに引き起こしたことを示す。
【0047】
下記の実験において示されるように、VEGFトラップは、定着した腫瘍を有する実験動物における腫瘍脈管構造をほぼ完全に消滅させ、内皮成分および脈管壁成分の両方の迅速に進行する消失を引き起こした。脈管の退縮の後には、既存の大きな異種移植片の有意な退縮が続いた。さらに、既存の肺微小転移は、大きさおよび細胞数の両方を顕著に減少し、1回以上のVEGFトラップの投与後にアポトーシスを提示した。このことは、これらの病変におけるVEGF依存性ホメオスタシスについての役割もまた示唆した。微小転移に近接する肺微小脈管のパターンは、VEGFトラップに対する暴露によって変化しないようであったので、退縮は、他のVEGF機能(例えば、透過性)の破壊に関連し得る。そのような微小転移は、腫瘍細胞の低酸素が新脈管形成を刺激する大きさに達する前に、拡散によって供給され得る。提供される結果は、癌治療における標的としてのVEGFの重要性について証拠を提供し、そして抗VEGF戦略が、腫瘍増殖を停止し得るだけではなく実際の退縮も生じ得る証拠を提供する。これらの結果は、転移性の嵩高い癌を有する患者、ならびに最小残留疾患を有する患者の処置における、VEGFインヒビターの使用を支持する。
【0048】
本発明の他の特徴は、本発明の例示のために提供されるが、本発明の限定であることは意図されない、例示的実施形態についての以下の説明の過程で明らかになる。
【実施例】
【0049】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物の生成方法および使用方法についての完全な開示および説明を当業者に提供するために示され、そして以下の実施例は、本発明者らが自身の発明と見なすものの範囲を限定することは意図されない。使用する数字(例えば、量、温度など)に関して精度を確保するための努力がなされたが、いくつかの実験誤差および偏差が、計上されるべきである。他のように示されない限り、部は、重量部であり、分子量は、平均分子量であり、温度は、℃であり、および圧力は、大気圧または大気圧付近である。
【0050】
(実施例1:VEGFトラップ注射の間の定着した腫瘍の退縮)
(異種移植片モデル)
SK−NEP−1ウィルムス腫瘍細胞(American Type Culture Collection,Manassas,VA)、SY5Y神経芽細胞腫細胞(American Type Culture Collection,Manassas,VA)、またはHUH肝芽細胞腫細胞(HuH−6、日本国茨城県理研バイオリソースセンター)を、15%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco,Grand Island,NY)を補充したMcCoy 5A培地(Mediatech,Fisher Scientific,Springfield,NJ)を含む培養中で維持した。細胞を、37℃にて5%CO中でコンフルエントになるまで増殖させ、採集し、トリパンブルー染色により計数し、そして滅菌したリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で洗浄し、1ml当たり濃度10細胞にて再懸濁した。異種移植片を、4〜6週齢の雌NCRヌードマウス(NCI−Frederick Cancer Reserch and Development Center,Frederick,MD)中に、ヒト細胞株SK−NEP−1細胞、SY5Y細胞、または肝芽細胞腫細胞のうちの1つ由来の10細胞の腎臓内注射によって定着させ、そして特定の時間、増殖させた。
【0051】
各細胞株を利用する実験のために、5〜6週間後に、大きな腫瘍がすべてのマウスにおいて触知可能であった。コホートをランダムに選択して(n=10)、0日目コントロールを提供した。残りのマウスを2つのグループに分割し、それらに、毎週2回、VEGFトラップ(500mg;Regeneron Pharmaceuticals,Tarrytown,NY)または等量のヒトFcタンパク質を、同容量のビヒクル中で注射した。ウィルムス腫瘍を用いる実験のために、マウス(各時点で、コントロール動物および処理動物、n=5)を、注射開始後1日目、5日目、8日目、15日目、および27日目にて安楽死させ、腫瘍を切除して秤量した。処理したマウスのみが、36日目まで生存した(n=10)。同様に、肝芽細胞腫細胞株および神経芽細胞腫細胞株を使用する研究のために、マウスを腫瘍退縮および腫瘍増殖についてカリパスでモニターし、間隔を空けて安楽死させた。
【0052】
(結果)
(ウィルムス腫瘍)
5週間増殖させた同所移植したSK−NEP−1ヒトウィルムス腫瘍細胞は、大きな腹膜後腫瘍(平均重量5.8g+1.1g)を形成した。その後、VEGFトラップ(500mg)またはFcコントロールタンパク質の注射を、二週間毎に腹腔内投与した。処理マウスおよびコントロールマウスのサブセットを、間隔を空けて安楽死させた。36日目までに、平均腫瘍体重は、79.3%減少した(36日目、1.2g±0.3g、p<0.0002)(図1)。肉眼検査の際に、VEGFトラップ処理した腫瘍は、コントロール腫瘍と比較して顕著に青白く、15日目までに脈管構造が顕著に減少し、36日目までに脈管が事実上なかった。腎臓(腫瘍組織により大いに置換された)は、その腫瘍組織が引っ込むと再出現し、36日目までに顕著に通常の外観に戻った。
【0053】
(肝芽細胞腫)
5週間増殖させた直腸内移植したHUH−6ヒト肝芽細胞腫細胞は、大きな腹腔後腫瘍(平均重量3.0±0.5g)を形成した。VEGFトラップ(500mg)またはFcコントロールタンパク質の注射を、二週間毎に腹腔内投与した。処理マウスおよびコントロールマウスのサブセットを、間隔を空けて安楽死させた。VEGFトラップの開始後、腫瘍増殖は完全に停止し、15日目までに見掛け上のプラトーに達し、このプラトーは、44日目にこの実験が終了するまで維持された(平均腫瘍重量2.1±0.19g、15日目;2.2+0.4g、29日目;2.0+0.3g、44日目、0日目コントロールに対してp=0.058)(図2)。対照的に、コントロール腫瘍は、増殖し続け、44日目に、同じ時点でのVEGFトラップ処理腫瘍よりも有意に大きかった(それぞれ、6.9+1.0g 対 2.0+0.3g;P=0.0112)。
【0054】
(神経芽細胞腫)
他の細胞株と同様に、SY5Y神経芽細胞腫細胞は、大きな腹腔後腫瘍を形成した。腫瘍移植の5週間後、未処理マウスにおける腫瘍は、大きさ6.65±0.84gに達し、1週間以内(D6)にて、大きさ7.28±1.16g(n=10)に達した。この時点で、コントロールコホート中のすべてのマウスを、屠殺しなければならなかった。この時点で、VEGFトラップで処理したマウスは、3.31±0.96gの腫瘍を有した(n=5、p<0.0278)。このことは、退縮が生じたことを示唆した。
【0055】
(実施例2:VEGFトラップ注射の間のウィルムス腫瘍における既存の脈管構造の退縮)
(レクチン灌流)
安楽死の前に、各時点で選択したマウスに、フルオレセイン標識したLycopersicon esculentumレクチン(100μlの生理食塩水中100μg、Vector Laboratories,Burlingame,CA)を左心室に脈管内注射した。その脈管構造を、Thurstonら(1996)Am.J.Physiol.271:H2547〜2562に記載されるように、PBS中の1%パラホルムアルデヒド(pH7.4)の注入によって固定し、その後、PBSの灌流によって洗浄した。
【0056】
(デジタル画像分析)
フルオレセイン標識レクチン研究からのデジタル画像を、Spot RT Sliderデジタルカメラ(Diagnostic Instruments,Sterling Heights,Michigan)を備えたNikon E600蛍光顕微鏡(10×対物レンズ)から獲得し、TIFFファイルとして保存した。新脈管形成および腫瘍脈管構造の定量的評価を、Wildら(2000)Microvasc.Res.59:368〜376によって記載されたようなコンピューター支援式デジタル画像分析によって実施したが、但し、フルオレセイン標識レクチン(FL)を、CD−31に対するフィコエリトリン(PE)結合体化モノクローナル抗体の代わりに用いた。全視野当たりのFL陽性ピクセルの画分を、記載された(Wildら(2000)前出)ようなコンピューター支援式方法によって定量した。脈管構造の変化を、分岐点(節)、終点、および全脈管長を定量することによって評価した。画像を、一般的な閾値の適用、その画像の反転、形態学的衰退、およびスケルトン化の後に、記載された(Wildら(2000)(前出))ように、Adobe Photoshop(Adobe Inc.,Mountain View,CA)とImage Processing Tool Kit(Reindeer Graphics,Inc.,Raleigh,NC)との組み合わせを使用して分析した。
【0057】
(PECAM−1免疫染色)
コントロール腫瘍およびVEGFトラップ処理腫瘍を、ラット抗マウス血小板内皮細胞接着分子1(PECAM−1)モノクローナル抗体(Research Diagnostics,Inc.,Flanders,NJ)およびウサギ抗ラットビオチン化二次抗体(Zymed Laboratories,Inc.,South San Francisco,CA)で免疫染色した。増強型西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ストレプトアビジンおよび基質である色素原のAEC(3−アミノ−9−エチルカルバゾール)を使用して、シグナル(HistoStain−Plusキット、Zymed)を可視化し、スライドを、Nikon Eclipse E600顕微鏡を使用して試験した。
【0058】
(aSMA免疫染色)
モノクローナル抗a−平滑筋アクチン(aSMA)抗体(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)を、室温で30分間インキュベートした。その後、標本を、1:400のウサギ抗マウスビオチン化二次抗体とともにインキュベートした。フルオレセイン標識アビジンを使用して、緑色蛍光シグナルを発色させた。標本を分析し、蛍光顕微鏡によって写真を撮影した。
【0059】
(共焦点顕微鏡)
レクチンを灌流した腫瘍の連続光学切片を、共焦点レーザー走査顕微鏡(Zeiss LSM 410)を使用して獲得した。コンピューター化したアルゴリズムを使用して、被写界深度によって、色コードをフルオレセイン標識脈管に割り当てた。
【0060】
(結果)
VEGFトラップ処理により引き起こされた脈管の変化を、以下のようにして試験した。脈管管腔の輪郭を得るために、フルオレセイン標識Lycopersicon esculentumレクチンを、腫瘍を保有する動物中に脈管内注射した。最初のVEGFトラップ注射の一日後(1日目)、レクチンで輪郭付けた脈管の顕著な減少が、観察された。別の実験において、定量的画像分析を使用して、VEGFトラップ注射した1日後の腫瘍において、微小脈管密度(MVD)、レクチンを灌流した脈管の全長、脈管端部、および分岐点/節を比較した。腫瘍重量は、同じ時点のコントロールと比較して不変であった。VEGFトラップで処理した腫瘍脈管構造は、未処理コントロールと比較すると、測定したすべてのパラメーターにおいて有意な減少を示した:MVDは54%減少(37,599±23,428対81,167±39,363;平均白色ピクセル数±標準偏差(SD),p=0.037)、全脈管長は42%減少(3,340±1,244対5,725±1,438,p=0.01)、脈管端部は63%減少(127±22対347±178,p<0.004)、および分岐点/節は80%減少(17±6対85±40,p<0.004)。脈管構造は、進行的に消失し、15日目までに脈管がほぼ完全に存在しなかった。脈管構造の変化がないことが、VEGFトラップで処理した動物中の正常組織において観察された(データは、示さず)。
【0061】
これらの灌流研究を、同じサンプル中のこれらの集団についての特異的免疫染色を実施することによって、腫瘍中の内皮細胞および動員された脈管周囲細胞の状態と比較した。これらの結果は、内皮細胞中の同様の時点での減少を示した。PECAM−1免疫陽性脈管構造は、VEGFトラップを1回注射した後(1日目)に減少し、15日目までに内皮が消滅した。腫瘍細胞の壊死が、5日目までに明らかであった。
【0062】
脈管壁細胞の動員は、VEGFの除去の間に腫瘍内皮をアポトーシスから防御することが提唱されている。この場合、aSMA免疫陽性脈管構造(Morikawaら(2002)Am.J.Pathol.160:985〜1000)は、VEGF遮断の間に退縮しないか、または内皮細胞単独よりもゆっくり退縮することが予測され得る。しかし、aSMAについての免疫染色は、この細胞集団が、1回のVEGFトラップ注射後に減少し、内皮と並行して15日目までに存在しなかったことを示した。
【0063】
この迅速な内皮細胞および脈管周囲細胞の退縮から生じる脈管の解剖学的変化を詳細に試験するために、共焦点顕微鏡分析を、初回VEGFトラップ注射の1日後にレクチンを灌流した腫瘍の切片を介する擬似深度着色(pseudo−depth coloring)を用いて実施した。これらの研究は、VEGFトラップが、脈管分布の迅速な減少を引き起こすのみならず、突然の脈管短縮もまた引き起こし、これは管腔崩壊と一致することを示す。
【0064】
(実施例3.内皮細胞および脈管壁細胞におけるアポトーシス)
(PECAM−1、aSMA、およびTUNEL二重染色)
アポトーシスを、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ媒介性デオキシウリジン三リン酸ニック端部標識(TUNEL)染色によって決定した。PECAM−1/アポトーシスおよびaSMA/アポトーシスについての免疫蛍光二重染色を、ApopTag Red In Situ Apoptosis Detection Kit(Intergen Company,Purchase,NY)と、ラット抗マウスPECAM−1モノクローナル抗体または抗aSMAモノクローナル抗体のいずれかとを使用して、凍結切片に対して実施した。ビオチン化二次抗体を、フルオレセイン標識アビジンと組み合わせて使用して、内皮細胞および脈管壁細胞をそれぞれ可視化した。スライドを、蛍光顕微鏡によって試験して写真撮影した。
【0065】
VEGF媒介性シグナル伝達が、成熟腫瘍脈管の内皮細胞および脈管壁細胞の両方の生存にとって重要である場合、アポトーシスが、両方の細胞集団において同時に検出可能であるはずである。PECAM−1およびaSMA免疫染色と組み合わせた上記TUNELアッセイを使用する二重標識は、初回VEGFトラップ注射の一日後の異種移植片脈管の両方の構成成分におけるアポトーシスを示した。より広範なアポトーシスが、5日目に、内皮細胞および動員された脈管周囲細胞において観察された(データは示さず)。これらの知見は、VEGFの強力な遮断が、腫瘍脈管の両方の構成成分をアポトーシスから防御する内皮−脈管壁細胞シグナル伝達を、迅速に妨害することを示唆する。従って、特定のVEGFレベルは、「成熟」脈管構造においてさえ、安定性にとって重要であり得る。
【0066】
(実施例4.腫瘍における脈管形成因子の発現の変化)
VEGFの発現は、低酸素により精巧に調節され(例えば、Levyら(1995)J.Biol.Chem.270:13333〜1340)、一方、アンジオポエチン2(Ang−2)は、VEGFおよび低酸素の両方により調節される(Ohら(1999)J.Biol.Chem.274:15732〜15739)。従って、VEGFとAng−2との同時発現は、低酸素に対する腫瘍細胞の生理的応答の指標として役立ち得、この応答は、通常は、脈管形成再構築および新規毛細管出芽を促進する(Maisonpierreら(1997)Science 277:55〜60)。さらに、Ang−2は、VEGFが欠損している場合に脈管退縮を引き起こし得る(Holashら(1999)(前出))。脈管退縮の結果としてのみ退縮している腫瘍は、これらの因子の全体的アップレギュレーションを示すが、VEGFR−2(増殖中の脈管構造についてのマーカーである)の発現の減少を示すと理由付けられた。従って、VEGF、Ang−2、およびVEGFR−2の発現を、インサイチュハイブリダイゼーションにより調査した。
【0067】
(インサイチュハイブリダイゼーション)
組織を、まず、4%パラホルムアルデヒド中に一晩保存し、17%スクロースに移し、そしてOCT化合物中に包埋し、そして凍結した。その後、組織切片を、以前に記載された(Holashら(1999)Science 284:1994〜1998(本明細書中にその全体が参考として援用される)ようにヒトVEGF、Ang−2、またはマウスVEGFR−2にハイブリダイズするプローブを含む35S標識cRNAでプロービングした。
【0068】
(結果)
VEGFおよびAng−2の発現は、0日目と36日目との間で顕著に増加した。逆に、腫瘍におけるVEGFR−2の発現は、同じ期間にわたって減少した。これは、このレセプターを発現する内皮細胞の消滅と一致した。
【0069】
(実施例5.VEGFトラップ投与の間の定着した肺転移の退縮)
VEGFの遮断は、使用したモデルにおいて、肺微小転移のその後の形成を減少することが、以前に示された(Roweら(2000)J.Pediatr.Surg.35:30〜33)。しかし、肺転移の維持におけるVEGFの役割は、未知である。
【0070】
(転移の分析)
各々の腫瘍保有する動物の肺全体にわたるヘマトキシリンおよびエオシンで染色した切片の3つの異なるレベルを、転移について試験した。転移1つ当たりの細胞を計数し、転移の直径を、2人の観察者によって独立して測定し、それらの数を平均した。体積を、標準式:(長さ)×(幅)×(0.5)により計算した。
【0071】
(統計分析)
画像分析測定値、腫瘍重量および転移測定値(細胞数、最大直径、および体積)の比較を、Kruskal−Wallis分析を使用して実施した。
【0072】
(結果)
上記の結果から、0日目のマウスの60%および36日目のVEGFトラップ処理マウスの50%が肺転移を有したこと、および定着した転移の数は有意に変化しなかったことが、見出された。しかし、肺腫瘍沈着は、コントロールと比較して、VEGFトラップで処理した肺において顕著に小さかった。その肺病変の大きさを、0日目および36日目に、直径(図3A)、体積(図3B)、および個々の細胞数(図3C)によって定量した。3つすべての測定によって、肺転移の大きさの有意な減少が存在した。転移の平均直径は、80%減少し(225.2±35.4m対89.2±8.4m、P=0.0005)、平均体積は、78%減少し(0.0023±0.0009mm→0.00018±0.0001mm、P=0.0004)、そして転移1つ当たりの平均細胞数は、83%減少した(115.3±16.9→20.1±7.2、P=0.0002)。TUNELアッセイは、1回のVEGFトラップ投与の後に肺転移におけるアポトーシスを示し(データは、示さず)、一方、アポトーシス細胞は、0日目のコントロール転移において稀であった。0日目の転移は、周囲の新規脈管にではなく肺毛細管に近接していた。これは、36日目の転移においても変化しなかったパターンであった。
【0073】
本発明は、本発明の趣旨からも必須の特性からも逸脱することなく、他の具体的な形態で具体化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】図1は、異種移植片脈管の退縮および腫瘍の退縮を示す。マウスを、VEGFトラップ(500mg)または等量のヒトFcタンパク質で処理した。マウスを、注射開始後1日目、5日目、8日目、15日目、および27日目に安楽死させた(平均腫瘍重量±平均標準誤差:それぞれ、5.5±1.02g、4.2±0.66g、3.9±0.87g、3.5±0.91g、2.7±0.8g)。処理したマウスだけが、36日目まで生存した(平均腫瘍重量±平均標準誤差:1.2g±0.3g、0日目のコントロールに対してP<0.0002)。誤差バーは、平均の標準誤差を示す。
【図2】図2は、VEGFトラップ処理した脈管構造の内皮および脈管の壁区画における、腔灌流の進行的減少を示す。
【図3】図3は、肺転移に対するVEGFトラップの影響を示す。腫瘍を保有する動物における肺転移の発生率および近接する肺微小脈管のパターンは、VEGFトラップ投与の間に有意には変化しなかったが、直径(A)、体積(B)、および細胞数(C)は、有意に減少した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍退縮の処置のための医薬の調製における、VEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な薬剤の使用。
【請求項2】
請求項1に記載の使用であって、前記腫瘍退縮の処置は、腫瘍の大きさの減少をもたらす、使用。
【請求項3】
請求項1〜2のうちのいずれか1項に記載の使用であって、前記VEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な薬剤は、VEGF活性またはVEGF発現を阻害することが可能な分子である、使用。
【請求項4】
請求項3に記載の使用であって、前記VEGF発現を阻害することが可能な分子は、抗体、核酸、VEGFトラップ、低分子、脂質、および糖質からなる群より選択されるVEGFアンタゴニストである、使用。
【請求項5】
請求項4に記載の使用であって、前記VEGFトラップは、アセチル化された、Flt−1(1−3)−Fc、Flt−1(1−3R→N)−Fc、Flt−1(1−3ΔB)−Fc、Flt−1(2−3ΔB)−Fc、Flt−1(2−3)−Fc、Flt−1D2−VEGFR3D3−FcΔC1(a)、Flt−1D2−Flk−1D3−FcΔC1(a)、およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)からなる群より選択される、使用。
【請求項6】
請求項4に記載の使用であって、前記発現を阻害することが可能な薬剤は、アンチセンス分子である、使用。
【請求項7】
請求項1に記載の使用であって、前記医薬は、皮下経路、筋肉内経路、皮内経路、腹腔内経路、静脈内経路、鼻腔内経路、または経口経路を介する投与のための医薬である、使用。
【請求項8】
腫瘍転移に罹患しているヒト被験体において腫瘍転移を退縮させるための医薬の調製における、VEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な薬剤の使用。
【請求項9】
請求項8に記載の使用であって、前記VEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な薬剤は、VEGF活性またはVEGF発現を阻害することが可能な分子である、使用。
【請求項10】
請求項9に記載の使用であって、前記VEGF発現を阻害することが可能な分子は、抗体、核酸、VEGFトラップ、低分子、脂質、および糖質からなる群より選択されるVEGFアンタゴニストである、使用。
【請求項11】
請求項10に記載の使用であって、前記VEGFトラップは、アセチル化された、Flt−1(1−3)−Fc、Flt−1(1−3R→N)−Fc、Flt−1(1−3ΔB)−Fc、Flt−1(2−3ΔB)−Fc、Flt−1(2−3)−Fc、Flt−1D2−VEGFR3D3−FcΔC1(a)、Flt−1D2−Flk−1D3−FcΔC1(a)、およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)からなる群より選択される、使用。
【請求項12】
請求項8に記載の使用であって、前記医薬は、皮下経路、筋肉内経路、皮内経路、腹腔内経路、静脈内経路、鼻腔内経路、または経口経路を介する投与のための医薬である、使用。
【請求項13】
転移性癌に罹患しているヒト被験体において転移性癌を処置するための医薬の調製における、VEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な薬剤の使用。
【請求項14】
請求項13に記載の使用であって、前記VEGF媒介性活性を遮断、阻害、または回復することが可能な薬剤は、VEGF活性またはVEGF発現を阻害することが可能な分子である、使用。
【請求項15】
請求項14に記載の使用であって、前記VEGF発現を阻害することが可能な分子は、抗体、核酸、VEGFトラップ、低分子、脂質、および糖質からなる群より選択されるVEGFアンタゴニストである、使用。
【請求項16】
請求項15に記載の使用であって、前記VEGFトラップは、アセチル化された、Flt−1(1−3)−Fc、Flt−1(1−3R→N)−FC、Flt−1(1−3ΔB)−Fc、Flt−1(2−3ΔB)−Fc、Flt−1(2−3)−Fc、Flt−1D2−VEGFR3D3−FcΔC1(a)、Flt−1D2−Flk−1D3−FcΔC1(a)、およびVEGFR1R2−FcΔC1(a)からなる群より選択される、使用。
【請求項17】
請求項13に記載の使用であって、前記医薬は、皮下経路、筋肉内経路、皮内経路、腹腔内経路、静脈内経路、鼻腔内経路、または経口経路を介する投与のための医薬である、使用。
【請求項18】
製品であって、
(a)包装材料と;
(b)該包装材料内に収容された薬剤と;
を備え、該薬剤は、本発明の少なくとも1種のVEGF特異的融合タンパク質を含み、該包装材料は、該VEGF特異的融合タンパク質が腫瘍退縮のために使用され得ることを示す標識または包装挿入物を備える、製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−527198(P2006−527198A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515190(P2006−515190)
【出願日】平成16年6月4日(2004.6.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/017721
【国際公開番号】WO2004/110490
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(597160510)リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (50)
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
【出願人】(306018457)ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク (25)
【Fターム(参考)】