説明

VOC処理装置用熱回収装置及び熱回収方法

【課題】VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱を回収して、冷熱の有効活用を図る。
【解決手段】有機溶剤を含有する溶剤廃液に含まれるVOCを燃焼処理する廃ガス処理装置2と、前記溶剤廃液からVOCを気化させて燃料として前記廃ガス処理装置へ供給する溶剤廃液処理装置3と、を有するVOC処理装置1から排出される冷熱を回収するVOC処理装置用熱回収装置101であって、前記溶剤廃液処理装置が、VOCを気化させる際の気化熱によって温度が低下することで発生する冷熱を冷熱媒体に蓄熱して回収する冷熱回収部102と、前記冷熱回収部で回収された冷熱を、前記冷熱媒体の移送によって、所定の空間または機器設備を冷却するための熱交換器114へ供給する冷熱媒体供給部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VOC処理装置用熱回収装置及び熱回収方法に関する。より詳細には、有機溶剤を含有している溶剤廃液から有機溶剤を回収するための溶剤廃液処理装置を備えるVOC処理装置において、溶剤廃液処理装置にて発生する冷熱を回収するVOC処理装置用熱回収装置、及び熱回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶剤は、種々の用途、例えば、接着剤、粘着剤、塗料等を製造するための原材料として幅広く用いられている。これらの用途において、有機溶剤を使用する設備から、揮発性有機化合物(以下、VOC、またはVOCガスと称する)を含有する廃ガスと、VOC成分を含有する溶剤廃液が発生する。そのため、これらの有機溶剤を使用するVOC発生設備からの、VOCを含有する廃ガス、及び溶剤廃液から気化させたVOCガスを処理する、VOC処理装置が開発されている。例えば、特許文献1には、VOCを含有する廃ガスと、溶剤廃液を気化させて発生するVOCガスとを合わせて燃焼させることにより、VOCを含有する廃ガスと溶剤廃液を効率的に処理する、VOC処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−302030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているような、従来のVOC処理装置は、該VOC処理装置に備わる溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液を溜めた容器を加熱し、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させることにより、溶剤廃液からVOCガス成分を分離し、VOC処理装置に導入して燃焼処理している。この従来技術によるVOC処理装置は、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、気化するVOCガス成分が気化熱として溶剤廃液の熱を奪うため、溶剤廃液の温度が低下し、冷熱が発生している。しかし、VOCガス成分の抽出のために、溶剤廃液を溜めた容器を加熱するため、温度が低下した溶剤廃液が有する冷熱を利用することなく、冷熱エネルギーを活用しないで無駄にしているという問題があった。
【0005】
上記した問題に鑑み、本発明では、VOC処理装置に配接された溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱を回収して、冷熱の有効活用を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するために、VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置が、溶剤廃液からVOCガスを気化させる際の、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることによって温度が低下することで発生する冷熱を冷熱媒体に蓄熱して回収し、回収した冷熱を、所定の空間または機器設備の冷却に用いる。
【0007】
詳細には、本発明に係るVOC処理装置用熱回収装置は、有機溶剤を含有する溶剤廃液に含まれるVOCを燃焼処理する廃ガス処理装置と、前記溶剤廃液からVOCを気化させて燃料として前記廃ガス処理装置へ供給する溶剤廃液処理装置と、を有するVOC処理装置から排出される冷熱を回収するVOC処理装置用熱回収装置であって、前記溶剤廃液処
理装置が、VOCを気化させる際の気化熱によって温度が低下することで発生する冷熱を冷熱媒体に蓄熱して回収する冷熱回収部と、前記冷熱回収部で回収された冷熱を、前記冷熱媒体の移送によって、所定の空間または機器設備を冷却するための熱交換器へ供給する冷熱媒体供給部と、を備える。
【0008】
本発明では、VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱が、冷熱媒体に蓄熱して回収され、回収された冷熱が所定の空間を冷却するための熱交換器へ供給される。そのため、従来は利用されていなかった、VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置において発生する冷熱の、有効活用を図ることができる。冷却する所定の空間は、冷却が必要とされる空間であればよく、特に限定されない。また、冷却する所定の空間には、VOC処理装置が設置される工場の室内、工場近隣の建物の室内などが例示される。また、冷却する対象の機器設備としては、冷熱を必要とする機器設備であればよく、特に限定されないが、例えば、塗料などが塗布されたウェブを、乾燥装置により乾燥させた後に冷却するための、冷却ロールなどが挙げられる。
【0009】
本発明に係るVOC処理装置用熱回収装置において、前記冷熱媒体供給部は、前記冷熱回収部で前記冷熱媒体に蓄熱して回収された冷熱を移送する前記冷熱媒体が、前記熱交換器へ向けて流れる前記冷熱媒体の往き流路と、前記熱交換器を通過した前記冷熱媒体が、前記冷熱回収部へ向けて流れる冷熱媒体の還り流路とを含む構成とすることができる。冷熱媒体の往き流路と還り流路を備えることで、冷熱回収部と熱交換器との間で冷熱媒体を循環させることができる。なお、本発明に係るVOC処理装置用熱回収装置は、冷熱回収部で冷熱媒体に蓄熱して回収された冷熱を、一時的に蓄える冷熱蓄熱部を更に備える構成としてもよい。これにより、例えば、冷却要求が無い場合には、回収した冷熱を一時的に蓄えることが可能となる。
【0010】
ここで、例えば、冷却要求が無い期間では、冷熱媒体が熱交換器で加熱されないため、冷熱媒体の温度が次第に低下することが懸念される。従って、室内の温度や外気温度よりも低い低温の冷熱媒体を、冷熱回収部にそのまま戻すと、溶剤廃液処理装置において、溶剤を気化させる効率が低下することが懸念される。そこで、本発明に係るVOC処理装置用熱回収装置は、前記冷熱媒体の還り流路に設けられ、前記熱交換器を通過した前記冷熱媒体の温度を調整する、冷熱媒体の温度調整部を更に備える構成としてもよい。冷熱媒体の温度調整部を備えることで、冷熱媒体の温度調整(例えば、加熱)が可能となる。なお、温度調整部は、必要に応じて冷却用として用いてもよい。冷熱媒体の温度が低い場合において、この冷熱媒体を加熱することで、温度が低い冷熱媒体を冷熱回収部にそのまま戻した際に懸念される、溶剤廃液処理装置において、溶剤の気化効率の低下を抑制することができる。温度調整部による温度調整は、例えば、冷熱回収部の入り口と出口の温度を計測し、計測結果に基づいて行うことができる。
【0011】
また、本発明に係るVOC処理装置用熱回収装置は、前記廃ガス処理装置から発生する温熱を温熱媒体に蓄積して回収する温熱回収部と、前記温熱回収部で回収された温熱を、前記温熱媒体の移送によって、前記冷熱媒体の温度調整部に分配する温熱分配部と、を更に備える構成としてもよい。温度調整部で用いる加熱源は、外部から伝熱ヒータなどで調達してもよいが、温度回収部で温熱媒体に蓄積して回収された温熱を利用してもよい。これにより、省エネルギー化を実現できる。
【0012】
また、本発明に係るVOC処理装置用熱回収装置は、前記廃ガス処理装置から発生する温熱を温熱媒体に蓄積して回収する温熱回収部と、前記温熱回収部で回収された温熱を、前記温熱媒体の移送によって、前記所定の空間または機器設備を加熱するための熱交換器へ供給する温熱媒体供給部と、を更に備える構成としてもよい。これにより、温熱も有効
に活用することができる。
【0013】
ここで、本発明は、熱回収方法として特定してもよい。すなわち、本発明は、有機溶剤を含有する溶剤廃液に含まれるVOCを燃焼処理する廃ガス処理装置と、前記溶剤廃液からVOCを気化させて燃料として前記廃ガス処理装置へ供給する溶剤廃液処理装置と、を有するVOC処理装置から排出される冷熱を回収する熱回収方法であって、前記溶剤廃液処理装置が、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱を、冷熱媒体に蓄熱して回収する冷熱回収工程と、前記冷熱回収工程で回収された冷熱を、前記冷熱媒体の移送によって、所定の空間または機器設備を冷却するための熱交換器へ供給する冷熱媒体供給工程と、を備える。
【0014】
本発明では、VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱を、冷熱媒体に蓄熱することによって回収される。回収された冷熱が、前記冷熱媒体の移送によって、所定の空間または機器設備を冷却するための熱交換器へ供給される。そのため、従来、利用されていなかった、VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置において発生する冷熱の、有効活用を図ることができる。
【0015】
なお、本発明は、上述したVOC処理装置及びVOC処理装置用熱回収装置を含む、熱回収利用システムとして特定することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、VOC処理装置に配設された溶剤廃液処理装置において、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱を、冷熱媒体に蓄熱させ回収して、冷熱の有効活用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のVOC処理装置用熱回収装置の、第1実施形態を示す、概略構成図である。
【図2】本発明のVOC処理装置用熱回収装置の、第2実施形態を示す、概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
次に、本発明の、第1実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101について、図面に基づいて説明する。図1は、VOC処理装置1及びVOC処理装置用熱回収装置101を含む、熱回収利用システム200を示している。尚、以下で説明する実施形態は例示であり、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0019】
図1に示した、第1実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101は、有機溶剤を使用するVOC発生設備10から排出されるVOCを含有する廃ガス、および溶剤廃液から気化させたVOCガス、を燃焼処理するVOC処理装置1が発生する温熱、及びVOC処理装置1に付帯する溶剤廃液処理装置3が発生する冷熱を、それぞれ回収し利用する装置である。先ず、VOC処理装置1について説明する。
【0020】
<VOC処理装置の構成>
VOC処理装置1は、有機溶剤を使用するVOC発生設備10から排出される、VOCを含有する廃ガス50を燃焼処理する廃ガス処理装置2と、VOC発生設備10及び他の有機溶剤を使用する設備より排出される溶剤廃液52から気化させたVOCガスを、燃料として廃ガス処理装置2に供給する溶剤廃液処理装置3とを備える。VOC処理装置1で
処理されるVOCの種類は、可燃性の有機溶剤であればよく、特に限定されない。
【0021】
可燃性の有機溶剤の具体的な例としては、トルエン、キシレン、ノルマルヘキサンなどの炭化水素系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチルなどのエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール系溶剤、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチレングリコールジメチルエーテルなどのアルコールエーテル系溶剤、などの各種有機溶剤の蒸気が挙げられる。
【0022】
上記の廃ガス処理装置2には、マイクロガスタービンVOC処理装置、ボイラー、ガスタービン、蓄熱式脱臭装置(RTO)、レシプロエンジンなどが例示される。これらの廃ガス処理装置は、VOCガスの供給を受けて当該ガス中のVOCを燃焼処理することができる。例えば、廃ガス処理装置2が、ボイラーの場合には、VOCを含有する廃ガスを燃料として燃焼処理し、その熱エネルギーによって容器116内を循環する温熱媒体を加熱し、高温の温熱媒体を得る。廃ガス処理装置2がVOCを含有する廃ガスを燃焼させることによって、VOCが水や二酸化炭素に分解され、大気放出が許容される形態にまで処理することが可能である。また、VOC発生設備10と廃ガス処理装置2との間には、VOCを含有する廃ガス50を、VOC発生設備10から該廃ガス処理装置2へ移送する廃ガス移送流路21が設けられている。更に、後述するように、廃ガス処理装置2には、溶剤廃液52から気化させたVOCガスが燃料として、溶剤廃液処理装置3から供給される。このため、廃ガス処理装置2は、VOCを含有する廃ガス50だけではなく、溶剤廃液処理装置3から気化させて供給されるVOCガスをも燃焼処理することが可能である。このVOCガスを燃焼する際に発生する熱は、後述する、第1実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101の、温熱回収部105によって温熱として回収される。
【0023】
溶剤廃液処理装置3は、溶剤廃液容器31と、溶剤気化槽32と、排気ガス供給流路34と、VOCガス送出流路35とを有する。溶剤廃液容器31は、溶剤廃液52が貯留される。溶剤廃液52は、VOC発生設備10から排出される溶剤廃液に限定されず、他の有機溶剤を使用する設備から排出される溶剤廃液を含んでもよい。尚、溶剤廃液52には、1種類または複数種の有機溶剤が混合されていてもよい。溶剤廃液容器31と溶剤気化槽32とは、溶剤廃液移送流路36によって接続されており、該溶剤廃液移送流路36に設置されたポンプ39が動作することによって、溶剤廃液容器31から溶剤気化槽32へ溶剤廃液52が供給される。
【0024】
溶剤気化槽32の材質は、耐久性の観点からステンレスなどの耐食性を有する金属が好適である。また、溶剤気化槽32は、該溶剤気化槽32の内部の、溶剤廃液52の液面53の高さを検出するための、レベル計(図示せず)を有する。制御部5は、レベル計の検出結果に基づいて、ポンプ39の動作を制御する。尚、制御部5は、CPU、メモリ等を含むコンピュータと、コンピュータ上で実行されるプログラムによって実現することができる。制御部5は、レベル計の検出結果が、下限値以下になった場合、ポンプ39を動作させ、溶剤廃液容器31から溶剤気化槽32へ溶剤廃液52を供給する。そして、制御部5は、レベル計の検出結果が、上限値から下限値の間に達した場合、ポンプ39を停止させ、溶剤廃液容器31から溶剤気化槽32への溶剤廃液52の供給を停止する。上限値及び下限値は、溶剤気化槽32の容量、混合冷熱媒体の還り流路112や冷熱媒体の往き流路113の溶剤気化槽32との接続位置などに基づいて適宜既定することができる。
【0025】
排気ガス供給流路34は、廃ガス処理装置2から燃焼処理によって生じる排気ガス54を、溶剤気化槽32への吹き込み用の気体として供給する。また、溶剤気化槽32には、排気ガス供給流路34を介して供給される排気ガス54を溶剤廃液52中に吹き込む、排気ガス供給流路40が取り付けられている。排気ガス供給流路40の吹き出し口は、レベ
ル計の下限値よりも低い位置に設けられ、溶剤廃液処理装置3の運転中は、常時、溶剤廃液52の液面53よりも下に位置している。排気ガス供給流路40は、廃ガス処理装置2で生じる排気ガス54を溶剤気化槽32内の溶剤廃液52中に吹き込む。排気ガス54は、廃ガス処理装置2において燃焼処理されているため、VOCを含まず、かつ高温となっている。その結果、排気ガス54のVOCの分圧(VOCを含まないので実質的に0である。)と、排気ガス54の温度におけるVOCの飽和蒸気圧との差により、溶剤廃液52中のVOCが排気ガス54の泡中に気化する。この気化は、極めて短い時間で完結し、排気ガス54の温度におけるVOCの飽和蒸気圧に到達する。従って、排気ガス54の温度が高いほど、VOCの飽和蒸気圧が高くなるので、効率よく気化させることが可能である。尚、沸点が高い液体のVOCを蒸発させるわけではないので、排気ガス54の温度は、著しく高温とする必要はなく、溶剤廃液52中の有機溶剤の沸点以下でも十分である。また、溶剤廃液処理装置3は、溶剤廃液52からVOCを気化させる際に、精密な蒸留精製の操作と異なり、簡単な有機溶剤の蒸発操作であることから、溶剤廃液52中に、複数種の有機溶剤が混合されていても、一括、且つ連続的に有機溶剤を気化させることが可能である。
【0026】
更に、排気ガス54を、排気ガス供給流路40から溶剤廃液52中に吹き込み、溶剤廃液52中のVOCが排気ガス54の泡中に気化することにより蒸発潜熱が、溶剤廃液52から奪われるため、溶剤廃液52の温度が低下し、冷熱が発生する。後述する、第1実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101における冷熱回収部102によって、VOCが気化することにより溶剤廃液の温度を低下させて発生した冷熱が冷熱媒体に蓄熱され回収される。
【0027】
VOCガス送出流路35は、気化したVOCが滞留している溶剤気化槽32の上部空間と、廃ガス移送流路21の下流側とを接続する。気化したVOCが、VOC発生設備10から廃ガス処理装置2へ移送される廃ガス50と合流する。その結果、気化したVOCを、廃ガス処理装置2の燃料として利用することが可能となる。VOCガス送出流路35には、ファン41が設けられている。ファン41が動作することによって、気化したVOCを溶剤気化槽32から引き出す、吸引力を得ることが可能である。尚、排気ガス供給流路40に供給されるガスは、排気ガス54が100%である必要はなく、供給される排気ガス54の温度を下げるために他の気体が混入されてもよい。混入される気体は、任意に選定できるが、通常は空気で十分である。そして、空気などの他の気体は、排気ガス供給流路34に図示しない分岐流路を設けて混入させることができる。本明細書では、溶剤気化槽32の溶剤廃液52中のVOCを気化する際に用いる排気ガス54を、気化用空気55と記載することがある。
【0028】
VOCガス送出流路35が、廃ガス移送流路21と接続される部分より下流(廃ガス処理装置2に近い側)には、廃ガス移送流路21を流れる廃ガス50中のVOC濃度を測定するガス濃度計42が設けられている。ガス濃度計42は、廃ガス50中のVOCと溶剤廃液52から気化したVOCとが混合した濃度を測定する位置に設置され、廃ガス処理装置2に供給されるVOCの総量をモニタリングすることが可能である。
【0029】
排気ガス供給流路34には、気化用空気55を廃ガス処理装置2から溶剤気化槽32に向けて送出する、ファン43が設けられている。制御部5は、ガス濃度計42の検出値に基づき、排気ガス供給流路34に設けられたファン43の動作を制御する。制御部5は、ガス濃度計42の検出結果が設定されたVOC濃度より低下した場合、ファン43を動作させ、気化用空気55を溶剤気化槽32に供給して溶剤廃液52中でバブリングさせてVOCを気化させ、あるいは気化用空気55の供給量を増加させてVOCの気化量を増加させる。また、制御部5は、ガス濃度計42の検出結果が設定されたVOC濃度より上昇した場合、ファン43の動作を停止させ、気化用空気55の供給を停止してVOCの気化を
停止させ、あるいはファン43の動作を弱めることにより、気化用空気55の供給量を減少させてVOCの気化量を減少させるようになっている。
【0030】
<VOC処理装置の使用方法>
次に、VOC処理装置1の、使用方法について説明する。有機溶剤は、種々の用途、例えば、接着剤、粘着剤、塗料等を製造するための原材料として幅広く用いられている。これらの用途において、有機溶剤を使用するVOC発生設備10としては、例えば、溶剤型塗料の塗工機、乾燥炉などが挙げられる。溶剤型塗料の塗工機、乾燥炉などから排出されるVOCは、塗膜の乾燥や硬化のために吹付けられる加熱された空気と混合した廃ガスとして、有機溶剤を使用するVOC発生設備10から排出される。排出されるVOCガスは、廃ガス移送流路21を介して廃ガス処理装置2に供給され、燃焼処理される。また、有機溶剤を使用するVOC発生設備10からは、塗工に使用した粘着剤組成物、樹脂等の固形分などの不純物が有機溶剤に混入した、溶剤廃液52が排出される。
【0031】
VOC処理装置1を運転する際、先ず、制御部5によって、排気ガス供給流路34のファン43およびVOCガス送出流路35のファン41の運転が開始される。その結果、溶剤気化槽32に、排気ガス54の流れが形成される。制御部5は、レベル計が検出する溶剤気化槽32内の溶剤廃液52の液面53が下限値以下であると判断した場合、ポンプ39の運転を開始し、液面53が上限値から下限値の間に到達するまで、溶剤廃液容器31に貯留された溶剤廃液52を、溶剤気化槽32に移送する。
【0032】
そして、廃ガス処理装置2が、VOCを含有する廃ガス中のVOCを燃焼処理し、レベル計が下限値の液面53の高さまで検出し、排気ガス供給流路34のファン43の運転により、溶剤廃液52に気化用空気55が吹き込まれる。気化用空気55の吹き込みにより、溶剤気化槽32内の溶剤廃液52中のVOCが、気化用空気55の泡中に気化する。そして、溶剤廃液52中のVOCが気化する際に気化熱が溶剤廃液52から奪われることにより、溶剤廃液52の温度が低下し、冷熱が発生する。また、排気ガス供給流路34のファン43およびVOCガス送出流路35のファン41の運転によって、既に、廃ガス50および排気ガス54の流れが形成されている。気化した溶剤廃液52中のVOCが、燃料送出流路35を介して廃ガス処理装置2に供給され、溶剤廃液52の燃焼処理が開始される。溶剤廃液52の燃焼処理が開始されたら、ガス濃度計42が、廃ガス処理装置2に送出されるガス中の、VOC濃度を計測する。
【0033】
廃ガス処理装置2および溶剤廃液処理装置3によって、溶剤廃液52の燃焼処理が進行すれば、液面53が低下する。そこで、制御部5は、レベル計が検出する液面53の高さに基づき、ポンプ39を運転又は停止させ、溶剤気化槽32内の溶剤廃液52の液面53が上限値と下限値との間に維持するように制御する。例えば、液面53の高さが下限値まで低下した場合に、溶剤廃液容器31から溶剤気化槽32に、溶剤廃液52を補充する。
【0034】
廃ガス処理装置2に供給されるガスは、溶剤気化槽32から気化して送出されたVOCガスと、有機溶剤を使用するVOC発生設備10から排出される廃ガス50が混合されたものである。有機溶剤を使用するVOC発生設備10の稼働状況などにより、廃ガス50の排出量や含まれるVOCの濃度が変動する。従って、制御部5は、ガス濃度計42によって測定されたVOC濃度に基づき、溶剤気化槽32でのVOCの気化量をファン43により調節することによって、廃ガス処理装置2に供給される廃ガス50の排出量や廃ガス中のVOC濃度を、爆発防止等の安全性の観点から設定される範囲内に制御する。また、廃ガス処理装置2に好適なVOCの濃度や量となるように、制御することが可能である。
【0035】
VOC処理装置1の運転を停止する際、先ず、溶剤廃液処理装置3は、制御部5によって、排気ガス供給流路34のファン43を停止し、所定時間経過後に燃料送出流路35の
ファン41を停止する。溶剤廃液処理装置3の運転を停止した場合でも、廃ガス移送流路21は通じたままであるため、廃ガス処理装置2による廃ガス50の燃焼処理は、常時行うことが可能である。
【0036】
<VOC処理装置用熱回収装置の構成>
第1実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101は、図1に示すように、冷熱回収部102と、冷熱媒体貯蔵タンク103(冷熱蓄熱部)と、熱交換器114(冷却用熱交換器)と、温熱回収部105と、温熱媒体貯蔵タンク106(温熱蓄熱部)と、熱交換器120(加熱用熱交換器)と、制御部108を主な構成とする。
【0037】
冷熱回収部102は、溶剤気化槽32内の溶剤廃液からVOCを気化させる際に、気化熱が奪われることによって、溶剤廃液の温度が低下することで発生する冷熱を、冷熱媒体に蓄熱して回収する。第1実施形態の冷熱回収部102は、少なくとも溶剤廃液52の液面53が到達する部分の溶剤気化槽32の外面を囲い、その内部に冷熱媒体が流れる冷熱媒体用流路が形成された冷熱回収ジャケットからなる。また、冷熱回収部102は、溶剤気化槽32の内部に配設した、冷熱媒体が内部を通る蛇管でもよく、さらには、冷熱回収ジャケットと蛇管との併用でもよい。冷熱回収部102は、溶剤気化槽32の内部の溶剤廃液と、冷熱媒体との熱交換を行なう。冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体は、後述する冷熱媒体貯蔵タンク103および熱交換器114へ供給される。尚、冷熱媒体は、経済性や安全性の点から水が好適に使用できるが、水に限定されず、溶剤廃液処理装置3からの冷熱を伝えることが可能なものであればよく、特に限定されない。冷熱媒体の温度が、氷点下よりも低下する可能性があることを想定すると、冷熱媒体の凝固点温度が0℃よりも低いことが好ましい。普通の水道水に、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの氷結防止剤、腐食防止剤などを添加し、凝固点温度を0℃〜−30℃となるように調整すると共に金属配管の腐食を防止できるようにした、一般に市販されている冷媒(ブラインとも呼ばれる)を使用してもよい。
【0038】
冷熱媒体貯蔵タンク103は、冷熱媒体の往き流路113の上流側の一部と冷熱媒体貯蔵流路111によって冷熱回収部102と接続されており、冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体を貯蔵する。冷熱媒体貯蔵タンク103は、断熱性能を有しており、冷熱媒体貯蔵タンク103内の冷熱媒体を保冷しておくことができる。また、冷熱媒体貯蔵タンク103は、冷熱媒体の還り流路115によって、後述する冷熱交換器114と接続されており、冷熱交換器114において熱交換が終わった冷熱媒体を貯蔵する。また、冷熱媒体貯蔵タンク103には、冷熱回収部102へ繋がる混合冷熱媒体の還り流路112が接続されている。混合冷熱媒体の還り流路112には、冷熱媒体貯蔵タンク103に貯蔵される、冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体と、冷熱交換器114において熱交換が終わった冷熱媒体とが混合した冷熱媒体が流れる。すなわち、混合した冷熱媒体は、混合冷熱媒体の還り流路112によって冷熱媒体貯蔵タンク103から冷熱回収部102へ戻すことができる。尚、実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101は、冷熱媒体貯蔵タンク103に貯蔵されている冷熱媒体を冷熱交換器114へ直接供給する構成(図示を省略)としてもよいし、冷熱回収部102と冷熱交換器114とを直接循環する構成(図示を省略)としても良い。
【0039】
熱交換器114は、冷熱回収部102で回収された冷熱、換言すると冷熱回収部102で冷却された冷熱媒体と空気との間で熱交換を行う。これにより、室内の空気が冷却される。熱交換器114には、冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体が流れる冷熱媒体の往き流路113が接続されており、冷熱媒体が供給される。熱交換器114は、フィンチューブ型熱交換器であり、熱交換器114内部に形成された流路内を冷熱媒体が流れ、流路外の外気との熱交換が行われる。その結果、室内の空気が冷却される。熱交換器114は、室内に設けられた他の空調機の冷却運転を補助することが可能である。なお、冷
熱媒体の往き流路113には、平均で5℃から7℃程度の冷熱媒体が流れる。冷熱回収部102の近傍の冷熱媒体の往き流路113を流れる冷熱媒体の温度は、1℃から2℃になることもある。熱交換器114には、このように、平均で5℃から7℃程度の冷熱媒体が供給される。上記冷熱媒体の温度は例示であり、上記温度に限定されない。熱交換器114には、熱交換器114を通過し、熱交換が終わった冷熱媒体が流れる冷熱媒体の還り流路115が接続されている。従って、熱交換器114において熱交換が終わった冷熱媒体は、この冷熱媒体の還り流路115を流れて冷熱媒体貯蔵タンク103へ移送される。尚、熱交換器114は、フィンチューブ型熱交換器に限定されず、冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体と外気との熱交換を行うことが可能であればよい。
【0040】
<冷却系循環路における冷熱媒体の流れ>
熱回収部102で回収された冷熱を、所定の空間を冷却するための熱交換器114へ移送して、例えば、室内空間の冷房に役立てることを以下に説明する。第1実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101では、冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体が、冷熱媒体の往き流路113を通って熱交換器114へ供給される。熱交換器114において熱交換が終わった冷熱媒体は、冷熱媒体の還り流路115を通って冷熱媒体貯蔵タンク103へ移送され、冷熱媒体貯蔵タンク103で貯蔵される。貯蔵された冷熱媒体は、混合冷熱媒体の還り流路112を通って冷熱回収部102へ戻され、循環させることが可能である。本明細書では、この冷熱媒体の循環路を、室内を冷やすことが可能な冷却系循環路と称する。また、第1実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101では、冷熱回収部102において冷却された冷熱媒体が、冷熱媒体の往き流路113の上流側の一部及び冷熱媒体貯蔵流路111を通って冷熱媒体貯蔵タンク103へ移送され、冷熱媒体貯蔵タンク103で貯蔵される。貯蔵された冷熱媒体は、混合冷熱媒体の還り流路112を通って冷熱回収部102へ戻され、冷却系循環路とは別の循環路で冷熱媒体により循環させることが可能である。本明細書では、この冷熱媒体の循環路を、冷熱を蓄えることが可能な冷熱蓄熱系循環路と称する。なお、制御部108は、温度センサ126で検知される室内の温度に基づいて弁122、123の開度を調整して、冷却系循環路と冷熱蓄熱系循環路の何れに冷熱媒体を循環させるかを制御することができる。
【0041】
次に、温熱回収部105について説明する。温熱回収部105は、廃ガス処理装置2から発生する温熱を回収する。第1実施形態に係る温熱回収部105は、廃ガス処理装置2内において温熱媒体を保有する容器116に相当する。廃ガス処理装置2は、上述したように、廃ガス50を燃料として、例えば数百度の温度で燃焼させ、その熱エネルギーによって容器116内の温熱媒体を加熱する。温熱回収部105は、温熱熱媒が流れる温熱媒体貯蔵流路117により、温熱媒体貯蔵タンク106に接続されている。温熱媒体は、冷熱回収部102と同様に、廃ガス処理装置2からの熱を伝えることが可能なものであればよく、特に限定されない。温熱媒体の使用温度が、50℃〜100℃程度までならば、安全性や管理のし易さの点から温水を使用するのが好ましい。また、温熱媒体の使用温度が、100℃〜300℃程度ならば、一般に市販されている炭化水素系の熱媒体油を使用することもできる。また、温熱回収部105は、廃ガス処理装置2からの温熱を回収することができればよく、上記形態に限定されない。
【0042】
温熱媒体貯蔵タンク106は、温熱媒体の往き流路119の上流側の一部と温熱媒体貯蔵流路117によって温熱回収部105と接続されており、温熱回収部105において加熱された温熱媒体を貯蔵する。温熱媒体貯蔵タンク106は、断熱性能を有しており、温熱媒体貯蔵タンク106内の温熱媒体を保温できる。また、温熱媒体貯蔵タンク106は、温熱媒体の還り流路121によって、後述する熱交換器120と接続されており、熱交換器120において熱交換が終わった温熱媒体を貯蔵する。また、温熱媒体貯蔵タンク106には、温熱回収部105へ繋がる混合温熱媒体の還り流路118が接続されている。混合温熱媒体の還り流路118には、温熱媒体貯蔵タンク106に貯蔵される、温熱回収
部105において加熱された温熱媒体と、熱交換器120において熱交換が終わった温熱媒体とが混合した温熱媒体が流れる。すなわち、混合した温熱媒体は、混合温熱媒体の還り流路118によって温熱媒体貯蔵タンク106から温熱回収部105へ戻すことができる。尚、第1実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101は、温熱媒体貯蔵タンク106に貯蔵されている温熱媒体を熱交換器120へ直接供給する構成(図示を省略)としてもよいし、温熱回収部105と熱交換器120とを直接循環する構成(図示を省略)としても良い。
【0043】
熱交換器120は、温熱回収部105で回収された温熱、換言すると温熱回収部105で加熱された温熱媒体と空気との間で熱交換を行う。これにより、室内の空気が暖められる。熱交換器120は、熱交換器114と同様に、フィンチューブ型熱交換器であり、温熱回収部105において加熱された温熱媒体が温熱媒体の往き流路119を通って供給される。熱交換器120は、該熱交換器120内部に形成された温熱媒体が流れる流路内の温熱媒体と該流路外の外気との熱交換を行う。その結果、室内に温かい空気が供給される。熱交換器120は、室内に設けられた他の空調機の加熱運転を補助することが可能である。なお、温熱媒体の往き流路119には、40℃から90℃の温熱媒体が流れる。熱交換器120には、このように40℃から90℃の温熱媒体が供給される。なお、温熱媒体の温度は、例示であり、上記温度に限定されない。熱交換器120には、熱交換器120を通過し、熱交換が終わった温熱媒体が流れる温熱媒体の還り流路121が接続されている。従って、熱交換器120において熱交換の終わった温熱媒体は、この温熱媒体の還り流路121を流れて温熱媒体貯蔵タンク106へ移送される。尚、熱交換器120は、フィンチューブ型熱交換器に限定されず、温熱回収部105において加熱された温熱媒体と外気との熱交換を行うことが可能であればよい。
【0044】
<加熱系循環路における温熱媒体の流れ>
温熱回収部105で回収された温熱を、所定の空間を加熱するための熱交換器120へ移送して、例えば、室内空間の暖房に役立てることを以下に説明する。第1実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101では、温熱回収部105において温度の上昇した温熱媒体が温熱媒体の往き流路119を通って熱交換器120へ供給される。熱交換器120において熱交換が終わった温熱媒体は温熱媒体の還り流路121を通って温熱媒体貯蔵タンク106へ移送され、温熱媒体貯蔵タンク106で貯蔵される。貯蔵された温熱媒体は、混合温熱媒体の還り流路118を通って温熱回収部105へ戻され、循環させることが可能である。本明細書では、この温熱媒体の循環路を、室内を暖めることが可能な加熱系循環路と称する。また、第1実施形態に係るVOC処理装置用熱回収装置101では、温熱回収部105において温度の上昇した温熱媒体が、温熱媒体の往き流路119の上流側の一部及び温熱媒体貯蔵流路117を通って温熱媒体貯蔵タンク106へ移送され、温熱媒体貯蔵タンク106で貯蔵される。貯蔵された温熱媒体は、混合温熱媒体の還り流路118を通って温熱回収部105へ戻され、加熱系循環路とは別の循環路で温熱媒体を循環させることが可能である。本明細書では、この温熱媒体の循環路を、温熱を蓄えることが可能な温熱蓄熱系循環路と称する。なお、制御部108は、温度センサ126で検知される室内の温度に基づいて弁124、125の開度を調整して、加熱系循環路と温熱蓄熱系循環路の何れに温熱媒体を循環させるかを制御する。
【0045】
<作用効果>
以上説明した、第1実施形態に係るVOC処理装置1及びVOC処理装置用熱回収装置101を含む熱回収利用システム200によれば、VOC処理装置1で発生する溶剤廃液から冷熱が冷熱媒体に蓄熱されて回収され、回収された冷熱が、所定の空間または機器設備を冷却するための熱交換器へ供給される。そのため、従来利用されていなかったVOC処理装置1からの冷熱の有効活用を図ることができる。
【0046】
また、冷熱媒体貯蔵タンク103を備えることで、例えば冷却要求が無い場合には、回収した冷熱を冷熱媒体に一時的に蓄えることが可能となる。また、温熱を回収する温熱回収部105を備えることで、廃ガス処理装置2から発生する温熱を温熱媒体に蓄積して回収し、回収した温熱を有効に活用することができる。また、温熱媒体貯蔵タンク106を備えることで、例えば加熱要求が無い場合には、回収した温熱を一時的に蓄えることが可能となる。なお、冷熱回収部102で回収した冷熱を利用する熱交換器114と温熱回収部105で回収した温熱を利用する熱交換器120を一つの空調ユニットとして構成してもよい。これにより、室内の冷却と加熱を行うことができる。このような空調ユニットは、室内温度の微調整が可能な空調機の補助空調機として機能させることができる。その結果、室内温度の微調整を行う空調機の省エネルギー化を実現できる。
【0047】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る熱回収利用システム201は、混合冷熱媒体の還り流路112に設けられ、熱交換器114を通過した冷熱媒体の温度を調整する温度調整部170を更に備える。温度調整部170は、冷熱媒体貯蔵タンク103から出力される冷熱媒体との間で熱交換を行う熱交換器によって構成することができる。温度調整部170には、温熱回収部105から供給される温熱媒体が、温度調整用の温熱媒体として流れる温度調整用温熱媒体の往き流路171(本発明の、温熱分配部に相当する。)が接続されている。これにより、温度調整部170は、温熱回収部105で回収した温熱媒体を用いて、冷熱媒体を加熱することができる。また、温度調整部170には、温度調整部170を通過した温熱媒体を、混合温熱媒体の還り流路118へ戻す、温度調整用温熱媒体の還り流路172が接続されている。これにより、温度調整部170を通過した温熱媒体が、温熱回収部105へ戻される。
【0048】
また、第2実施形態に係る熱回収利用システム201では、冷熱回収部102の入口部と出口部には、夫々、入口側温度センサ181と出口側温度センサ182が設けられ、これらの各センサによって冷熱媒体の温度が検出されている。また、温度調整用温熱媒体の往き流路171には、温度調整部170へ供給する温度調整用の温熱媒体の流量を調整する弁183が設けられている。制御部108は、入口側温度センサ181と出口側温度センサ182で検知される冷熱媒体の温度に基づいて弁183の開度を調整し、温度調整部170へ供給する温熱媒体の流量を制御する。
【0049】
以上説明した、第2実施形態に係る熱回収利用システム201によれば、冷熱媒体の温度が低く、冷熱媒体を冷熱回収部102へそのまま戻すと、溶剤を気化させる効率が低下することが懸念される場合において、冷熱媒体を加熱することができる。これにより、温度が低い冷熱媒体を冷熱回収部102にそのまま戻した際に懸念される溶剤の気化効率の低下を抑制することができる。また、冷熱媒体を加熱する温熱媒体には、温熱回収部105で回収した温熱を利用することができるので、省エネルギー化を実現できる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・VOC処理装置
2・・・廃ガス処理装置
21・・・廃ガス移送流路
3・・・溶剤廃液処理装置
31・・・溶剤廃液容器
32・・・溶剤気化槽
34・・・排気ガス供給流路
35・・・燃料送出流路
36・・・溶剤廃液移送流路
40・・・排気ガス供給流路
10・・・VOC発生設備
101・・・VOC処理装置用熱回収装置
102・・・冷熱回収部
103・・・冷熱媒体貯蔵タンク
105・・・温熱回収部
106・・・温熱媒体貯蔵タンク
108・・・制御部
111・・・冷熱媒体貯蔵流路
112・・・混合冷熱媒体の還り流路
113・・・冷熱媒体の往き流路
114・・・熱交換器
115・・・冷熱媒体の還り流路
116・・・容器
117・・・温熱媒体貯蔵流路
118・・・混合温熱媒体の還り流路
119・・・温熱媒体の往き流路
120・・・熱交換器
121・・・温熱媒体の還り流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶剤を含有する溶剤廃液に含まれるVOCを燃焼処理する廃ガス処理装置と、前記溶剤廃液からVOCを気化させて燃料として前記廃ガス処理装置へ供給する溶剤廃液処理装置と、を有するVOC処理装置から排出される冷熱を回収するVOC処理装置用熱回収装置であって、
前記溶剤廃液処理装置が、VOCを気化させる際の気化熱によって温度が低下することで発生する冷熱を冷熱媒体に蓄熱して回収する冷熱回収部と、
前記冷熱回収部で回収された冷熱を、前記冷熱媒体の移送によって、所定の空間または機器設備を冷却するための熱交換器へ供給する冷熱媒体供給部と、を備えるVOC処理装置用熱回収装置。
【請求項2】
前記冷熱媒体供給部は、前記冷熱回収部で前記冷熱媒体に蓄熱して回収された冷熱を移送する前記冷熱媒体が、前記熱交換器へ向けて流れる前記冷熱媒体の往き流路と、前記熱交換器を通過した前記冷熱媒体が、前記冷熱回収部へ向けて流れる冷熱媒体の還り流路とを含む、請求項1に記載のVOC処理装置用熱回収装置。
【請求項3】
前記冷熱媒体の還り流路に設けられ、前記熱交換器を通過した前記冷熱媒体の温度を調整する、前記冷熱媒体の温度調整部を更に備える、請求項2に記載のVOC処理装置用熱回収装置。
【請求項4】
前記廃ガス処理装置から発生する温熱を、温熱媒体に蓄熱して回収する温熱回収部と、
前記温熱回収部で回収された温熱を、前記温熱媒体の移送によって、前記冷熱媒体の前記温度調整部に分配する温熱分配部と、を更に備える請求項3に記載のVOC処理装置用熱回収装置。
【請求項5】
前記廃ガス処理装置から発生する温熱を、温熱媒体に蓄熱して回収する温熱回収部と、
前記温熱回収部で回収された温熱を、前記温熱媒体の移送によって、前記所定の空間または機器設備を加熱するための熱交換器へ供給する温熱媒体供給部と、を更に備える請求項1から4の何れか1項に記載のVOC処理装置用熱回収装置。
【請求項6】
有機溶剤を含有する溶剤廃液に含まれるVOCを燃焼処理する廃ガス処理装置と、前記溶剤廃液からVOCを気化させて燃料として前記廃ガス処理装置へ供給する溶剤廃液処理装置と、を有するVOC処理装置から排出される冷熱を回収する熱回収方法であって、
前記溶剤廃液処理装置が、溶剤廃液からVOCガスを気化蒸発させる際に、溶剤廃液から蒸発潜熱が奪われることに伴い発生する冷熱を、冷熱媒体に蓄熱して回収する冷熱回収工程と、
前記冷熱回収工程で回収された冷熱を、前記冷熱媒体の移送によって、所定の空間または機器設備を冷却するための熱交換器へ供給する冷熱媒体供給工程と、を備える熱回収方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−79778(P2013−79778A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220637(P2011−220637)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】