説明

VOC捕集装置

【課題】 試料を加工することなく、種々の試料に対し適切な材料負荷率(部材表面積/チャンバー容積)を設定でき、VOCの放散速度を使用態様に近い状態で再現してVOCを捕集することを可能にする。
【解決手段】 試料10を内側に置いて試料から放散する揮発性化合物を囲うケーシング2と、揮発性化合物を捕集する捕集部4と、前記ケーシング2と前記捕集部4との間に介在してそれぞれに通気可能に連結され、かつ内容積を可変としたチャンバ3を備える。巨大な装置を利用せずに短時間でVOCを捕集、評価することができ、さらには試料の表面積を調整することなくVOC捕集装置側でその内容積を調節してVOCの放散速度を試料の実際の使用態様に応じたVOCの放散速度に調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建材や車のシート等から放散されるVOCを採取するためのVOC捕集装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用の車室内のシート等の内装材などから放散する揮発性化合物(以下VOCと略す)が健康に与える影響が懸念されている。室内の空気質の向上には、現状の内装部品からどのような成分が発生しているのかを把握する必要がある。
従来、建材や車のシート等から放散されるVOCを採取するには、密閉された巨大な容器や部屋内にその試料全体を入れておき、長時間かけて放散させる手法がJIS A1901で規格されている(内容積20リットル以上、時間24時間以上)。
しかしながら、このような方法では、(1)装置が巨大、(2)巨大装置内に測定対象をそのまま入れる必要がある、(3)内容積が大きいため状態を安定させる時間が長い等、問題点が多く非常に手間がかかることから、近年、簡易なVOC採取方法が検討されている。
例えば、特許文献1、2では、所定面積の試料表面を、所定内容量のケーシングで覆い、該ケーシングに捕集管を連結してケーシング内で放散されたVOCを捕集管を通して捕集するVOC捕集装置が提案されている。これら先行技術文献によれば、小型な装置により試料から放散するVOCを採取することが可能になる。図9は、従来の小型VOC捕集装置の一例の概略を示すものであり、捕集管51が接続されたケーシング50の外周側にさらに外筒52を配置し、ケーシング50と外筒52との間にエアなどを供給してケーシング内と外界とを隔離性を確実にしている。ケーシング50で覆われる試料10の表面から放散されるVOCがケーシング50によって確保され、捕集管51で捕集される。
【特許文献1】特開2002−122521号公報
【特許文献2】特開2004−163208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、VOCの放散速度は、試料の表面積と放散される容積に大きく依存することが知られている。すなわち試料と空間容積比(材料負荷率)が異なると放散濃度も大きく異なるため、空間濃度を評価する際は、この材料負荷率をどのように設定するかが評価の鍵となる。そのため、建材や車のシート等試料の使用態様に即したVOCを捕集するためには、それら試料の表面積とそれら試料が使用される場所の容積とに基づき表面積又は捕集装置の内容積を調節して適切な材料負荷率(部材表面積/チャンバー容積)でVOCを捕集することが必要である。
しかし、従来の簡易なVOC捕集装置では、固定の内容積しか持たないため、VOCの放散速度を使用態様に近い状態を再現してVOCを捕集することはできず、そのために試料の表面積を調節することが必要であり、試料を加工することなくそのまま測定することはできないという問題がある。
【0004】
本発明は、上記事情を背景としてなされたものであり、試料を加工することなく、適切な材料負荷率(部材表面積/チャンバー容積)を設定して、VOCの放散速度を使用態様に近い状態を再現してVOCを捕集することが可能なVOC捕集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明のVOC捕集装置のうち、請求項1記載の発明は、試料の一部または全部を内側に置いて該試料から放散する揮発性化合物を囲うケーシングと、前記揮発性化合物を捕集する捕集部と、前記ケーシングと前記捕集部との間に介在してそれぞれに通気可能に連結され、かつ内容積を可変としたチャンバとを備えることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載のVOC捕集装置は、請求項1記載の発明において、前記チャンバは、予め定めた複数の設置位置に基づいて内部を仕切ってチャンバの内容積を段階的に変更可能な隔壁を少なくとも一つ備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項3記載のVOC捕集装置は、請求項1記載の発明において、前記チャンバは、チャンバの内容積を変更可能な複数の位置にそれぞれ固定壁が設けられており、該固定壁は固定壁の両面側に連通する連通部を有し、該連通部の任意の一つを封止して該固定壁を前記隔壁とする封止部材を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載のVOC捕集装置は、請求項3記載の発明において、前記複数の固定壁はそれぞれ、前記揮発性化合物の通気方向に沿って互い違いの位置に連通部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項5記載のVOC捕集装置は、請求項2〜4のいずれかに記載の発明において、前記隔壁の位置に従って、前記ケーシングに対する連通部の位置が変更可能となっていることを特徴とする。
【0010】
請求項6記載のVOC捕集装置は、請求項2〜5のいずれかに記載の発明において、前記隔壁の位置に従って、前記捕集部に対する連通部の位置が変更可能となっていることを特徴とする。
【0011】
すなわち、本発明によれば、ケーシングにチャンバが連通するように接続されているので、ケーシング内に置かれている試料からVOCが放散される際の放散内容積が、ケーシングの内容積とチャンバの内容積とが加算されたものになり、短時間でVOCが捕集される。そして、ケーシングの内容積は固定されているもののチャンバの内容積は可変になっており、チャンバの内容積を変更することで上記放散内容積が変更される。したがって、試料の表面積を調整することなくチャンバの内容積変更によって所望の放散内容積を設定することができ、試料の使用形態などに従って適切な材料負荷率(部材表面積/チャンバー容積)によってVOCを採取することができる。採取されたVOCは、捕集管などの捕集部を通して吸着剤などによって捕集され、分析などに供することができる。
【0012】
なお、チャンバを可変とする構成については本発明としては特に限定されるものではなく、連続的に変化させるもの、段階的に変化させるもの、任意の値に変更可能なもの、予め設定した値に変更可能なもの等のいずれであってもよい。
例えば、請求項2記載の発明によれば、予め定めた複数の設置位置に内部を仕切る隔壁を設置することでチャンバの内容積を段階的に変更することができる。
【0013】
なお、隔壁は、手動または適宜のアクチュエータなどを用いて所定の位置に設置できるものであればよく、特定の構造に限定されるものではない。例えば、チャンバ内に隔壁を係止するための凹凸形状などの係止部を前記所定設置位置に合わせて設けておき、前記係止部に係止する凹凸形状などの係止部を隔壁側に設け、これら係止部を互いに係止することで隔壁を設置することができる。また、チャンバ内に連通部を有する固定壁(板材、隔膜など)を設けておき、上記連通部を開閉することで隔壁の設置位置を変更することも可能である。
【0014】
なお、隔壁の設置位置を変更する場合には、ケーシングに対する連通部または捕集部に対する連通部の位置を変更可能にすることで、VOCの流路を調整することができ、望ましくは、ケーシングの連通部から捕集部の連通部に至るまで、最大長またはこれに近い距離が得られるようにする。したがって、チャンバの内部空間を仕切る隔壁の近傍にケーシングまたは捕集部に対する連通部を設けるのが望ましい。チャンバ内に、VOCが移動するために十分な長さの流路を確保することで、VOCの均一拡散が促進される。
【0015】
さらに、請求項4に示すようにチャンバ内に前記固定壁を複数設け、該固定壁に設けられている連通部を、VOCの通気方向に沿って固定壁間で互い違いの位置に設けるようにすることでVOCの対流、撹拌が活発になり、VOCの均一化が一層良好になされる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明のVOC捕集装置によれば、試料の一部または全部を内側に置いて該試料から放散する揮発性化合物を囲うケーシングと、前記揮発性化合物を捕集する捕集部と、前記ケーシングと前記捕集部との間に介在してそれぞれに通気可能に連結され、かつ内容積を可変としたチャンバとを備えるので、巨大な装置を利用せずに簡易かつ短時間でVOCを捕集、評価することができ、さらに、試料の表面積を調整することなくVOC捕集装置側でその内容積を調節してVOCの放散速度を調節することができる。その結果、対象となる試料を加工する必要がなく、試料の実際の使用態様に応じたVOCの放散速度を確保することができる。そして、本発明によれば、試料表面にあてる持ち運び可能な小型のタイプとすることができ、大物部材および実部材などの現場評価を効率的に行うことが可能になる。例えば、半日程度ですべての評価が終了可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の一実施形態を図1、2に基づいて説明する。
図1は、本発明のVOC捕集装置1の概略を示す正面断面図であり、図2は、図1のII−II線で断面した平面断面図である。
VOC捕集装置1は、外壁を二重にして、下方に開口部を向けて漏斗状に形成したケーシング2と、該ケーシング2の上方に位置して該ケーシング2に通気可能に連結された箱形のチャンバ3と、該チャンバ3に通気可能に連結された捕集部(図では捕集管4のみ図示)とを備えている。
【0018】
ケーシング2は、二重外壁22で囲まれた内部空間20に連通し、上部に開口した連通管21を有しており、該連通管21に、チャンバ3の下方中央部に設けたケーシング連通部31が通気可能に接続されている。ケーシング2の二重外壁22は上記したように2重構造となっており、二重壁内空間23は、筒状になって下方に開口している。また、ケーシング2の上方側では、前記連通管21を囲んで、上端が閉じられた筒部24を有している。該筒部24は側方に外部のガス供給管5が接続されている。
なお、この実施形態では、ケーシングの構成として上記二重外壁構造のものについて説明したが、本発明としてはケーシングの構造が特定のものに限定されるものではなく、試料から放散されるVOCを確保できる構造のものであればよい。
【0019】
次に、チャンバ3内の内部空間30は、下方部において上記ケーシング連通部31に連通し、上方部において捕集管連通部32に連通している。捕集管連通部32は、さらに、捕集部の一部を構成する捕集管4に連結されている。チャンバ3は、上記内部空間30を仕切る複数の隔壁33a…33dを備えており、各隔壁は、それぞれ独立して取り外しおよび設置が可能になっている。したがって各隔壁の着脱により内部空間30の内容積を変更することができる。なお、各隔壁33a…33dの設置位置は予め設定しておくのが望ましく、これにより操作者は内部空間30の内容積を容易かつ段階的に変更することができる。なお、チャンバ3の上壁部34は取り外し可能になっており、隔壁33a…33dの設置状態を変更する場合には、該上壁部34を取り外した後、所望の隔壁の脱着を行い、その後、上壁部34を取り付けることで、内部空間30の内容積を設定したチャンバ3として使用することができる。例えば、隔壁33b、33cで囲まれた内部空間は、隔壁33bを取り外すことで内部容積をほぼ倍にでき、さらに隔壁33cを取り外すことで3倍にすることができる。
各隔壁の設置位置を予め定めておく場合には、隔壁とチャンバ内壁との間に嵌合部を形成しておき、所定位置において容易に着脱可能としておくのが望ましい。
また、前記した捕集管4は、捕集部の一部を構成しており、吸着剤などが内包され、図示しない分析装置などに接続されている。ただし、本発明としては、捕集部の構成が特定のものに限定されるものではなく、捕捉したVOCを捕集できる機能を有するものであればよい。
【0020】
次に、上記VOC捕集装置1を用いたVOCの捕集動作について説明する。
先ず、試料の使用形態などを考慮して、必要な材料負荷率を決定する。この材料負荷率aは、試料の表面積S、ケーシング2の内容積Vc、チャンバ3の内容積Vxとして、
a=S/(Vc+Vx)で示される。
ここで、SおよびVcは固定であるので、チャンバ3の内容積Vxを変更することで、所望の材料負荷率が得られる。したがって、所望の材料負荷率に従って、各隔壁の脱着を行って、チャンバ3における内容積を決定しておく。隔壁の脱着は、上記したように、上壁部34を取り外して各隔壁の脱着を行い、その後、上壁部34を取り付けることにより容易に行うことができる。
【0021】
次に、上記VOC捕集装置1のケーシング2の開口部を試料10の表面上に設置する。この際に、二重外壁22の先端は試料10に密着しており、これにより試料10の所定の表面積がケーシング2によって囲まれることになる。
次いで、適宜の回数、間隔で、ガス供給管5から純空気や不活性ガスなどのシールド兼キャリアガスを導入する。ガスは、二重壁内空間23を下降して、その先端から外方および内方に放出される。このガスの流れによって内部空間20、30の換気がなされるとともに、外部空間からのコンタミネーションが防止される。
上記試料10の表面からは上記(Vc+Vx)の内容積を有する内部空間に対しVOCの放散が生ずる。所定時間のVOC放散を行った後は、前記ガス供給管5を通したガスの導入によるVOCの移送や捕集部における吸引などによって内部空間20、30内にあるVOCを捕集管4で回収し、所望の検出等の作業を行う。
また、他種の試料からVOCを捕集する際には、VOCの放散に必要な内容積を設定し、該設定内容積に基づいてチャンバ3の隔壁33a〜33dの脱着を行い、チャンバ3における内容積を変更する。その後は、上記と同様に試料からのVOC回収を、適切な材料負荷率によって行うことができる。
【0022】
以下に、他の実施形態を図3に基づいて説明する。なお、上記実施形態と同様の構造については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
上記実施形態では、隔壁を脱着することによってチャンバの内容積を変更可能としているが、以下に示す実施形態では、チャンバ3内に、スライド移動可能に一つの隔壁33を配置してチャンバ3内の内部空間30の内容積を変更可能にしている。隔壁33のスライド位置は、a、b、cの3箇所が定められており、したがって、チャンバ3の内容積は段階的に変更することができる。また、上記隔壁33の移動に合わせて、隔壁33の移動位置の近傍(図示左方近傍)にそれぞれ捕集管4に連通する捕集管連通部32a…32dが設けられている。捕集管連通部32a…32dは、それぞれチャンバ3の内部に連通しており、それぞれに開閉弁35a…35dが介設されている。一方、ケーシング連通部31は、チャンバ3の端部(図示左端)下方に設けられている。チャンバ3の上壁部34は取り外し可能になっており、隔壁33の設置位置をスライド移動して変更する場合には、該上壁部34を取り外した後、隔壁を所望位置に移動させ、その後、上壁部34を取り付けてクランプ36で固定することで、チャンバ3として使用することができる。なお、隔壁33は、手動によりスライドさせる他、アクチュエータなどを用いて機械的にスライドさせることも可能である、
上記隔壁33は、例えば、a位置に移動すると、内部空間30は、内容積が最も小さくなり、b位置、c位置に移動させるに連れて内容積が増大する。その際には、隔壁33の移動位置に従って、開閉弁35a…35dの開閉が調節され、隔壁33に最も近い開閉弁が開かれ、その開閉弁よりも図示左方にある開閉弁は閉じられる。
【0023】
上記実施形態では、隔壁33の移動に伴ってチャンバ3の内容積が変更されるとともに、捕集管連通部の位置が変更されて、ケーシング連通部31から捕集管連通部に至る距離が最も大きな距離となるように捕集管連通部の位置が定められる。これによりチャンバ3内での流路が長く確保されるので、VOCがチャンバ3内を移動する際に、VOCが均一に拡散することができ、捕集後のVOCの分析のバラツキなどを小さくして分析精度を高めることができる。
【0024】
次に、他の実施形態を図4に基づいて説明する。
上記各実施形態では、チャンバの内容積変更を段階的に行う装置について説明したが、以下の実施形態は、チャンバの内容積を連続的に変更可能としたものである。なお、上記実施形態と同様の構造については同一の符号を付してその説明を省略または簡略化する。
ケーシング200は、内部が空洞で下方が開口されたドーム型の形状を有しており、その上部にケーシング200の内部空間201に連通する連通管202が設けられている。連通管202には、開閉弁203を介してチャンバ300のケーシング連通管302(ケーシング連通部に相当)が接続されている。ケーシング連通管302は、チャンバ300に至る共通管303に接続され、共通管303は、シリンダ型のチャンバ300の内部空間301に連通している。内部空間301は、チャンバ300の本体内壁と、該本体内壁を摺動可能なピストン305とに囲まれて構成されており、ピストン305を摺動させることで内容積を連続的に変更することができる。ピストン305は、ロッド306を介して手動やアクチュエータの動作などによって摺動させることができる。
なお、上記共通管303には、捕集部連通管304が連結され、該捕集部連通管304に捕集管400が接続されている。
【0025】
上記VOC捕集装置では、VOC放散用の空間が内部空間201および内部空間301で構成され、ピストン305の摺動によって内部空間301の内容積を調整することで、内部空間201の内容積と合わせて所望の内容積が得られる。試料10から放散されるVOCは、上記内部空間201および内部空間301で捕捉され、捕集管400を通して捕集される。
なお、上記実施形態では、チャンバの内容積を連続的に任意に変更することができるので、多様な内容積を得ることができる。ただし、前記実施形態のように予め定めた値で多段に設定可能にしたものでは、操作者が容易かつ速やかに内容積の設定を行えるという利点がある。また、上記実施形態では、ピストンを予め定めた位置にのみ移動可能として、チャンバの内容積の変更を段階的に行う構成とすることも可能である。
【0026】
次に、他の実施形態を図5、6に基づいて説明する。
図5に示すチャンバ310では、図5示左右方向に所定の間隔で板状の固定壁331〜337が配置されており、各固定壁では、一端部側がチャンバ310の内壁から離隔することによって連通部321〜327が設けられている。なお、固定壁331、333、335、337では、図示下端側に連通部321、323、325、327を有しており、固定壁332、334、336では、図示上端側に連通部322、324、326を有している。上記により、連通部は、図示左右方向(通気方向)に沿って上下に互い違いの位置に設けられている。上記連通部の内、連通部322、324、326には、封止部材として封止板330を配置、係合して連通部の封止が可能となっている。連通部を封止した固定壁は、チャンバの内部を仕切る隔壁として機能する。
【0027】
固定壁332、334または固定壁336と、封止板330との係合方法を、固定壁332を例にして図6に示す。すなわち、固定壁332の上端面に凹部332aを形成し、これに係合可能な凸部330aを封止板330の下端面に形成する。一方、上壁部34の下面に凹部34bを形成し、封止板330の上端面に凸部330bを形成する。封止板330によって連通部322を封止する際には、クランプ36を取り外して上壁部34を開けた後、上記凹部332aと凸部330aを係合し、さらに、上壁部34を被せつつ、凸部330bと凹部34bとを嵌合させる。その後、クランプ36を取り付けることで所定の内容積を有するチャンバ3が得られる。なお、固定壁334、336も同様の構成を有しており、また、これら固定壁の位置に対応して上壁部34の下面に凹部が形成されている。上記封止板330を取り付ける固定壁を選定することで、チャンバ3内の内部空間320の内容積を段階的に変更することができる。
【0028】
また、この実施形態のチャンバ310では、ケーシング連通部311が、チャンバ310の図示下方左部に設けられ、捕集管連通部312、314、316、318が、それぞれ固定壁332、334、336、チャンバの右方内壁310aの左方近傍において、上壁部34に設けられており、各捕集管連通部は、チャンバ310の内部と連通している。また捕集管連通部312、314、316、318には、それぞれ開閉弁313、315、317、319が設けられており、隔壁近傍の捕集管連通部を捕集管に対し連通させ、それよりも左方にある捕集管連通部を閉止することができる。
上記構成により、ケーシング連通部311から導入されるVOCは、内部空間310の下方側に位置する連通部を通って上方側に移動する行程を一度以上経た後に、隔壁に規制されて隔壁の左方上方側に位置する捕集管連通部から外部へと排出させることになり、図示右方への移動と上下移動とが組み合わされてVOCが撹拌されながら均一に拡散する。また、隔壁に近い位置に捕集管連通部が位置するので内部空間内での流路長が十分に確保されて、上記均一拡散がより良好になる。
【0029】
次に、さらに他の実施形態を図7、8に基づいて説明する。
図7に示すチャンバ350では、図7示左右方向に所定の間隔で膜状の固定壁371〜377が配置されており、各固定壁では、端部側に近接して貫通孔を形成することによって連通部361〜367が設けられている。なお、固定壁371、373、375、377では、図示下端側に連通部361、363、365、367が位置し、固定壁372、374、376では、図示上端側に連通部362、364、366が位置している。上記により、連通部は、図示左右方向(通気方向)に沿って上下に互い違いに位置している。上記連通部の内、連通部362、364、366には、封止部材として封止膜370を配置、係合して連通部が封止可能となっている。連通部を封止した固定壁は、チャンバ350の内部空間を仕切る隔壁として機能する。
【0030】
固定壁372、374または固定壁376と、封止膜370との係合方法を、固定壁372を例にして図8に示す。すなわち、固定壁372の右側面に、一方向を開放して封止膜370をスライドして脱着可能なスライド枠372aを設置する。封止膜370によって連通部362を封止する際には、クランプ36を取り外して上壁部34を開けた後、スライド枠372aに封止膜370をスライドしつつ装入し、連通部362を封止する。これにより固定壁372が隔壁として機能する。その後、クランプ36を取り付けることで所定の内容積を有するチャンバ350が得られる。なお、固定壁374、376も同様の構成を有している。上記封止膜370を取り付ける固定壁を選定することで、チャンバ350内の内部空間360の内容積を段階的に変更することができる。また、この実施形態のチャンバ350でも、ケーシング連通部351が、チャンバ350の図示下方左部に設けられ、捕集管連通部352、354、356、358が、それぞれ固定壁372、374、376、チャンバ350の右方内壁350aの左方近傍において、上壁部34に設けられている。各捕集管連通部は、チャンバ350の内部と連通している。また捕集管連通部352、354、356、358には、それぞれ開閉弁353、355、357、359が設けられており、隔壁近傍の捕集管連通部を捕集管に対し連通させ、それよりも左方の捕集関連通部を閉止することができる。
上記構成により、ケーシング連通部351から導入されるVOCは、図示右方への移動と上下移動とが組み合わされ、かつ十分に長い流路を経てVOCが均一に拡散する。
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明は、上記実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態のVOC捕集装置を示す一部を断面した正面図である。
【図2】同じく、図1のII−II線断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態におけるチャンバを示す断面正面図である。
【図4】本発明の他の実施形態におけるVOC捕集装置を示す一部を断面した正面図である。
【図5】本発明の他の実施形態におけるチャンバを示す断面正面図である。
【図6】同じく、封止部材を係合した固定壁を示す一部拡大斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態におけるチャンバを示す断面正面図である。
【図8】同じく、封止部材を配置した固定壁を示す一部拡大斜視図である。
【図9】従来のVOC捕集装置の概略を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 VOC捕集装置
2 ケーシング
3 チャンバ
4 捕集管
20 内部空間
21 連通管
30 内部空間
31 ケーシング連通部
32 捕集管連通部
32a、32b、32c、32d 捕集管連通部
33 移動隔壁
33a、33b、33c、33d 隔壁
200 ケーシング
201 内部空間
300 チャンバ
301 内部空間
302 ケーシング連通管
304 捕集部連通管
305 ピストン
310 チャンバ
311 ケーシング連通部
312、314、316、318 捕集管連通部
320 内部空間
321、322、323、324、325、326、327 連通部
330 封止板
331、332、333、334、335、336、337 固定壁
350 チャンバ
361、362、363、364、365、366、367 連通部
370 封止膜
371、372、373、374、375、376、377 固定壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の一部または全部を内側に置いて該試料から放散する揮発性化合物を囲うケーシングと、前記揮発性化合物を捕集する捕集部と、前記ケーシングと前記捕集部との間に介在してそれぞれに通気可能に連結され、かつ内容積を可変としたチャンバとを備えることを特徴とするVOC捕集装置。
【請求項2】
前記チャンバは、予め定めた複数の設置位置に基づいて内部を仕切ってチャンバの内容積を段階的に変更可能な隔壁を少なくとも一つ備えていることを特徴とする請求項1記載のVOC捕集装置。
【請求項3】
前記チャンバは、チャンバの内容積を変更可能な複数の位置にそれぞれ固定壁が設けられており、該固定壁は固定壁の両面側に連通する連通部を有し、該連通部の任意の一つを封止して該固定壁を前記隔壁とする封止部材を備えることを特徴とする請求項2記載のVOC捕集装置。
【請求項4】
前記複数の固定壁はそれぞれ、前記揮発性化合物の通気方向に沿って互い違いの位置に連通部が設けられていることを特徴とする請求項3記載のVOC捕集装置。
【請求項5】
前記隔壁の位置に従って、前記ケーシングに対する連通部の位置が変更可能となっていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のVOC捕集装置。
【請求項6】
前記隔壁の位置に従って、前記捕集部に対する連通部の位置が変更可能となっていることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載のVOC捕集装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−226745(P2006−226745A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38660(P2005−38660)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】