説明

VOC除去装置及びVOC除去用メタルフィルタ及びその製造方法

【課題】従来のVOC除去方法は、ヒータで温めた空気で吸着ロータを加熱するのだが、その風量がかなり少ないため、VOCが脱着する温度まで吸着ロータもしくは吸着剤を温めるのに時間がかかってしまう、または、吸着ロータもしくは吸着剤が温まらず、脱着が十分に行われないという課題があった。
【解決手段】吸着塔1の内部に、ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2と、加熱手段としてのコイル3と、送風手段としてのファン5とを備えている。脱着工程において、コイル3に通電することにより高周波を発生させ、ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2を加熱して、吸着したVOCを脱着させる。脱着させたVOCはファン5によってゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2の下流から排出し、VOC発生源へ回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物(VOC)が大気に排出されるのを抑制するための、VOC除去装置及びVOC除去用メタルフィルタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染防止の観点から、工業用部品などの洗浄工程において、VOCの排出抑制、すなわち有機溶剤などの大気への蒸散防止が求められている。これを解決するために、様々なVOC除去方法が提案されている。
【0003】
従来、この種のVOC除去装置は、セラミックや活性炭のシートをハニカム形状に成形し、それに吸着剤を担持した吸着ロータを用いて、VOCの除去を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載のVOC除去方法は、VOCを含むガスを吸着ロータに流して吸着除去する。その後、吸着時の風量に比べて少ない風量の熱風を流して、吸着ロータもしくは吸着剤を温めることによりVOCを脱着し、回収する方法である。
【特許文献1】特開2000−93727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のVOC除去方法は、脱着時の風量がかなり少ないため、VOCが脱着する温度まで吸着ロータもしくは吸着剤を温めるのに時間がかかってしまう、または、吸着ロータもしくは吸着剤が温まらず、脱着が十分に行われないという課題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、速やかにVOCを脱着または/および分解することができる手段を設けたVOC除去装置を提供することを目的としている。
【0007】
また、本発明は、上記のVOC除去装置に搭載するVOC除去用メタルフィルタ、およびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のVOC除去装置は、VOCを吸着することができる吸着剤を担持したVOC除去用メタルフィルタを1個または複数個設け、さらに、吸着したVOCを脱着または/および分解するための手段を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
このVOC除去装置により、VOCが大気に排出されるのを抑制することができるとともに、吸着したVOCを効率良く脱着回収または/および分解することができる。
【0010】
また、本発明のVOC除去用メタルフィルタは、VOCを吸着することができる吸着剤として、活性炭、ゼオライト及びセピオライトより選ばれるいずれか1種、または2種以上を含むことを特徴とするものである。
【0011】
これにより、フィルタを通過するガスからVOCを吸着除去することができる。
【0012】
また、本発明のVOC除去用メタルフィルタの製造方法は、吸着剤を担持する前に、フィルタ基材の表面積を大きくするための処理、および/またはフィルタ基材と吸着剤との密着性を向上させるための処理を施した後に、吸着剤を溶媒に分散させた液にフィルタ基材を含浸し、乾燥させた後、仮焼することを特徴とするVOC除去用メタルフィルタの製造方法である。
【0013】
この製造方法により、フィルタ基材と吸着剤との密着性に優れたVOC除去用メタルフィルタを得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、VOCを吸着することができる吸着剤を担持したVOC除去用メタルフィルタを設けたVOC除去装置を提供することができ、VOCが大気に排出されるのを抑制することができるとともに、吸着したVOCを効率良く脱着回収または/および分解することができる。
【0015】
また、VOCを吸着することができる吸着剤を担持したVOC除去用メタルフィルタを提供するとともに、VOC除去用メタルフィルタの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、VOC除去用メタルフィルタを、1個または複数個設けたことを特徴とするVOC除去装置である。
【0017】
これにより、本発明のVOC除去装置はVOC除去用メタルフィルタを備えているので、VOCを吸着除去して大気に放出させないようにすることができる。
【0018】
ここに示すVOCとは、有機溶剤が揮発したときなどに発生する揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds)の略である。
【0019】
本発明の請求項2に記載の発明は、VOC除去用メタルフィルタを、直列または並列に複数個設けたことを特徴とするVOC除去装置である。
【0020】
これにより、VOCを吸着除去して大気に放出させないようにするVOC除去装置を得ることができる。
【0021】
VOC除去用メタルフィルタの並べ方としては、複数のフィルタを直列に並べて一つの吸着塔としても良く、また、複数のフィルタを並列に並べて一つの吸着塔としても良い。さらに、複数のフィルタを並列に並べたものを複数段積み重ねて一つの吸着塔としても良い。
【0022】
本発明の請求項3に記載の発明は、加熱手段を設けたことを特徴とするVOC除去装置である。
【0023】
これにより、本発明のVOC除去装置は加熱手段を備えているので、吸着したVOCを効率良く脱着または/および分解することができる。
【0024】
加熱手段としては、ヒータでメタルフィルタを加熱する、ヒータで温めた空気をメタルフィルタに流すことによって加熱する、ヒータに直接通電して加熱する、または、高周波誘導により加熱するといった方法が考えられる。
【0025】
本発明の請求項4に記載の発明は、前記加熱手段が、高周波誘導による加熱であることを特徴とするVOC除去装置である。
【0026】
これにより、高周波誘導により加熱可能な金属を、速やかに加熱することができるため、吸着したVOCを効率良く脱着または/および分解することができる。
【0027】
高周波誘導による加熱は、ヒータでフィルタを温める方法に比べて、短時間でフィルタを加熱することができる。
【0028】
本発明の請求項5に記載の発明は、減圧手段を設けたことを特徴とするVOC除去装置である。
【0029】
これにより、吸着剤周辺の圧力を減圧することができるので、吸着したVOCを脱着することができるVOC除去装置を得ることができる。
【0030】
また、減圧手段としては、真空ポンプなどを用いることができる。
【0031】
本発明の請求項6に記載の発明は、吸着したVOCを酸化させるための手段を設けたことを特徴とするVOC除去装置である。
【0032】
これにより、吸着したVOCを酸化することができるため、VOCを大気に放出させないようにするVOC除去装置を得ることができる。
【0033】
また、VOCを酸化する手段としては、バーナーやヒータを用いた直接加熱、プラズマによる酸化、オゾンによる酸化、および、白金などの酸化触媒を設けるなどの手段が挙げられる。
【0034】
本発明の請求項7に記載の発明は、送風機を設けたことを特徴とするVOC除去装置である。
【0035】
これにより、VOCを含む空気をVOC除去用メタルフィルタに送ったり、脱着したVOCをVOC除去装置の外へ送り出したりすることができる。
【0036】
本発明の請求項8に記載の発明は、VOCの濃度を測定するための手段を設けたことを特徴とするVOC除去装置である。
【0037】
これにより、VOC除去用メタルフィルタを通過したVOC濃度、および、脱着したVOC濃度を測定することができるため、VOC除去装置が正しく稼動しているか、あるいは、VOC除去用メタルフィルタが劣化した場合などに、フィルタの交換時期などの目安とすることができる。
【0038】
本発明の請求項9に記載の発明は、温度を測定するための手段を設けたことを特徴とするVOC除去装置である。
【0039】
これにより、VOC除去用メタルフィルタなどの温度を測定することができるので、フィルタの温度が異常に上昇したのを検知して装置の電源を自動的にストップさせる、というように安全装置と連動させて用いることで、VOC除去装置の安全性を確保することができる。
【0040】
また、温度を測定するための手段としては、熱伝対などが考えられる。
【0041】
本発明の請求項10に記載の発明は、VOCを吸着することができる吸着剤を担持したことを特徴とするVOC除去用メタルフィルタである。
【0042】
これにより、VOCを吸着することができる吸着剤がフィルタ表面に担持されるため、VOCを吸着除去することができるVOC除去用メタルフィルタを得ることができる。
【0043】
また、メタルフィルタはセラミックフィルタに比べて耐衝撃性に優れるため、振動の多い所などでの使用に適している。金属の種類は特に限定しないが、VOCを含むガスにさらされるため、ステンレスなどの耐腐食性を有する金属が好ましい。
【0044】
また、ここに示すメタルフィルタには、発泡金属、金属製不織布、金属製ファイバーメッシュやこれらの組合せによって造られる金属材料なども用いることができ、形状には特に制限はない。
【0045】
本発明の請求項11に記載の発明は、VOCを吸着することができる吸着剤が、活性炭、ゼオライト及びセピオライトより選ばれるいずれか1種、または2種以上を含むことを特徴とするVOC除去用メタルフィルタである。
【0046】
これにより、活性炭、ゼオライト及びセピオライトより選ばれるいずれか1種、または2種以上を含む吸着剤がフィルタ表面に担持されるため、VOC除去用メタルフィルタを通過するガスから、VOCを効率的に吸着除去することができる。
【0047】
また、吸着質の種類に合わせて、活性炭、ゼオライト及びセピオライトを、イオン交換するなどの化学的処理を施すのも良い。
【0048】
また、吸着したVOCを分解するための酸化触媒を、吸着剤の表面に担持するのも良い。
【0049】
本発明の請求項12に記載の発明は、フィルタ基材の材質が磁性を有することを特徴とするVOC除去用メタルフィルタである。
【0050】
これにより、フィルタが磁性を有するため、VOC除去用メタルフィルタを加熱する手段として、熱風を流して加熱する、フィルタに直接通電して加熱するといった方法だけでなく、高周波誘導による加熱なども可能となる。
【0051】
本発明の請求項13に記載の発明は、フィルタ基材の材質が耐熱性を有することを特徴とするVOC除去用メタルフィルタである。
【0052】
これにより、VOC除去用メタルフィルタが耐熱性を有するため、吸着させたVOCを脱着させるために加熱した場合において、高温で脱着操作を繰り返し行ってもフィルタが劣化することなく、高い耐久性を有することとなる。
【0053】
本発明の請求項14に記載の発明は、フィルタ基材の形状がハニカム、リング状またはボール状であることを特徴とするVOC除去用メタルフィルタである。
【0054】
これにより、フィルタの表面積が大きくなるので、フィルタ表面への吸着剤の担持量を増やすことができるため、フィルタを通過するVOCを効率良く吸着することができる。
【0055】
また、リング状およびボール状フィルタは、通風可能な容器、例えば外壁が網目になっている容器に充填して、それを一つのフィルタとして用いることができる。
【0056】
また、ここに示すリング状とは、中が空洞の円柱形状のことであり、円柱の大きさは特に限定しないが、表面積を大きくするために、空洞の大きさはできるだけ大きいほうが好ましい。
【0057】
本発明の請求項15に記載の発明は、VOCを吸着することができる吸着剤を溶媒に分散させた液に、フィルタ基材を含浸し、乾燥させた後、仮焼することを特徴とするVOC除去用メタルフィルタ製造方法である。
【0058】
これにより、効率良くフィルタ基材に吸着剤を担持することができとともに、吸着剤が均一かつ薄膜に担持したVOC除去用メタルフィルタを得ることができる。
【0059】
ここに示す溶媒とは、水、アルコール類、その他有機溶剤などを用いることができる。
【0060】
吸着剤を溶媒に分散させる方法としては、スターラや羽根で攪拌する、または、ボールミルを用いて分散させる方法が考えられ、分散させる際に、界面活性剤のような分散剤を添加するのが好ましい。
【0061】
また、フィルタ基材と吸着剤との密着性を向上させるために、吸着剤を分散させた液にバインダを添加するのも良い。
【0062】
本発明の請求項16に記載の発明は、VOCを吸着することができる吸着剤を担持する前に、フィルタ基材の表面積を大きくするための処理を施したことを特徴とするVOC除去用メタルフィルタ製造方法である。
【0063】
これにより、フィルタ基材の表面積が大きくなるので、より多くの吸着剤をフィルタ基材の表面に担持することができる。
【0064】
フィルタ基材の表面積を大きくする処理としては、フィルタの表面に酸化被膜が形成される温度でフィルタを焼成する、または、無機酸化物でメタルフィルタを被覆することが考えられる。また、その両方の処理を施すのも良い。
【0065】
メタルフィルタを被覆する無機酸化物としては、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、および、それらの混合物などを用いることができる。メタルフィルタを無機酸化物で被覆することにより、耐熱性および耐腐食性を付与することもできる。
【0066】
本発明の請求項17に記載の発明は、VOCを吸着することができる吸着剤を担持する前に、フィルタ基材と吸着剤との密着性を向上させるための処理を施したことを特徴とするVOC除去用メタルフィルタ製造方法である。
【0067】
これにより、フィルタ基材と吸着剤との密着性が向上するため、担持した吸着剤が剥離しにくいVOC除去用メタルフィルタを得ることができる。
【0068】
フィルタ基材と吸着剤との密着性を向上させるための処理としては、無機酸化物でメタルフィルタを被覆することが考えられる。
【0069】
メタルフィルタを被覆する無機酸化物としては、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、および、それらの混合物などを用いることができる。メタルフィルタを無機酸化物で被覆することにより、耐熱性および耐腐食性を付与することもできる。
【0070】
メタルフィルタを無機酸化物で被覆する方法としては、メタルフィルタを無機酸化物のゾルに含浸する、無機酸化物のゾルをメタルフィルタ内部に流し込む、無機酸化物のゾルをスプレーする、または、無機酸化物のゾルをはけ等で塗る、といった方法が挙げられる。
【0071】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明するが、以下の解釈に何ら限定されるものではない。
【0072】
(実施の形態1)
本発明のVOC除去装置の概要について図1を参照しながら説明する。本発明のVOC除去装置は、吸着塔1の内部に、ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2と、加熱手段として、通電することにより高周波を発生することができるコイル3と、温度測定手段としての熱伝対4と、送風手段としてのファン5とを備えている。
【0073】
(吸着工程)VOCを含んだ空気はファン5によってゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2へ送られる。ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2に担持されたゼオライトの作用によって、VOCは吸着除去され、VOCが除去された清浄空気がゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2の下流から排出される。
【0074】
(脱着工程)コイル3に通電することにより高周波を発生させ、ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2を加熱して、吸着剤に吸着したVOCを脱着させる。高周波誘導による加熱は、ヒータでフィルタを温める方法に比べて、短時間でフィルタを加熱することができる。脱着させたVOCは、ファン5によってゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2の下流から排出し、VOC発生源へ回収する。このとき、ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2が異常に加熱されることを防ぐため、熱伝対4でゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2の温度を測定し、設定温度を超えたら自動的にコイル3への通電をストップする制御機構を備えている。
【0075】
(実施の形態2)
実施の形態1と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。本発明のVOC除去装置の概要について図2を参照しながら説明する。本発明のVOC除去装置は、吸着塔1の内部に、加熱手段として、通電することにより高周波を発生することができるコイル3と、温度測定手段としての熱伝対4と、送風手段としてのファン5と、白金触媒担持VOC除去用メタルフィルタ6とを備えている。
【0076】
白金触媒担持VOC除去用メタルフィルタ6は、コイル3に通電して高周波を発生させることにより加熱されている。高周波誘導による加熱は、ヒータでフィルタを温める方法に比べて、短時間でフィルタを加熱することができる。白金触媒担持VOC除去用メタルフィルタ6の温度を熱伝対4で測定し、設定温度より低いときにはコイル3に通電して加熱し、設定温度を超えたら自動的にコイル3への通電をストップする制御機構を備えることにより、白金触媒担持VOC除去用メタルフィルタ6は一定の温度に保たれている。
【0077】
VOCを含んだ空気はファン5によって白金触媒担持VOC除去用メタルフィルタ6へ送られる。白金触媒担持VOC除去用メタルフィルタ6に担持された白金触媒の作用によって、VOCは無害な水や二酸化炭素に分解され、VOCが除去された清浄空気が白金触媒担持VOC除去用メタルフィルタ6の下流から排出される。
【0078】
(実施の形態3)
実施の形態1、2と同一部分は同一番号を付し、詳細な説明は省略する。本発明のVOC除去装置の概要について図3を参照しながら説明する。本発明のVOC除去装置は、吸着塔1の内部に、ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2と、加熱手段として、通電することにより高周波を発生することができるコイル3と、温度測定手段としての熱伝対4と、送風手段としてのファン5と、減圧手段としての真空ポンプ7と、吸気口弁8と、排気口弁9と、真空ポンプ口弁10とを、備えている。
【0079】
(吸着工程)吸気口弁8と、排気口弁9とは、弁が開いた状態になっており、真空ポンプ口弁10は、閉じた状態になっている。
【0080】
VOCを含んだ空気はファン5によってゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2へ送られる。ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2に担持されたゼオライトの作用によって、VOCは吸着除去され、VOCが除去された清浄空気がゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2の下流から排出される。
【0081】
(脱着工程)吸気口弁8と、排気口弁9とは、弁が閉じた状態になっており、真空ポンプ口弁10は、開いた状態になっている。
【0082】
真空ポンプ7を起動し、吸着塔1の内部を減圧すると同時に、コイル3に通電することにより高周波を発生させ、ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2を加熱して、吸着剤に吸着したVOCを脱着させる。高周波誘導による加熱は、ヒータでフィルタを温める方法に比べて、短時間でフィルタを加熱することができる。脱着させたVOCは、ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2の下流から排出し、真空ポンプ7を経由してVOC発生源へ回収する。このとき、ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2が異常に加熱されることを防ぐため、熱伝対4でゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ2の温度を測定し、設定温度を超えたら自動的にコイル3への通電をストップする制御機構を備えている。
【実施例】
【0083】
(実施例1)
高周波誘導加熱によるステンレスハニカムVOC除去用メタルフィルタの加熱試験を行った。その試験方法を図4に、結果を図5に示す。
【0084】
大きさ150mm×150mm×60mmのステンレスハニカムVOC除去用メタルフィルタ11の近傍にコイル3を配して高周波誘導加熱し、熱伝対4によりステンレスハニカムVOC除去用メタルフィルタ11の表面温度を測定した。このときのコイル3の消費電力は約690Wであった。
【0085】
図5は、コイル3から10mm離れた位置のステンレスハニカムVOC除去用メタルフィルタ11の表面温度を測定した結果である。
【0086】
図5より、コイル3から10mm離れた位置のステンレスハニカムVOC除去用メタルフィルタ11の表面温度は、60秒後には160℃まで達することがわかった。これにより、脱着工程に移行してから60秒後には、VOCが脱着するのに十分な温度に達していることが確認された。
【0087】
(実施例2)
本発明のVOC除去用メタルフィルタの製造方法を示す。
【0088】
はじめに、ステンレスハニカム12を、フィルタ基材の表面積を大きくするための処理として、1100℃で1時間焼成し、フィルタ基材表面に酸化被膜13を形成した。次いで、フィルタ基材と吸着剤との密着性を向上させるための処理として、シリカを主成分とするゾルにステンレスハニカムをディップし、150℃で2時間乾燥、500℃で2時間仮焼することにより、シリカ層14を形成した。次いで、ゼオライトを分散させた液にステンレスハニカムをディップし、150℃で2時間乾燥、500℃で2時間仮焼することにより、ゼオライト層15を形成した。
【0089】
上記製造方法により製造したVOC除去用メタルフィルタの断面概念図を図6に示す。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のVOC除去装置により、VOCが大気に排出されるのを抑制することができるとともに、吸着したVOCを効率良く脱着回収または/および分解することができるので有用である。
【0091】
また、本発明のVOC除去用メタルフィルタにより、VOCが大気に排出されるのを抑制することができるので有用である。
【0092】
また、本発明のVOC除去用メタルフィルタ製造方法により、フィルタ基材と吸着剤との密着性に優れたVOC除去用メタルフィルタを得ることができるので有用である。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】実施の形態1におけるVOC除去装置の概念断面図
【図2】実施の形態2におけるVOC除去装置の概念断面図
【図3】実施の形態3におけるVOC除去装置の概念断面図
【図4】実施例1における高周波誘導加熱によるステンレスハニカムVOC除去用メタルフィルタの加熱試験方法を示す図
【図5】実施例1における高周波誘導加熱によるステンレスハニカムVOC除去用メタルフィルタの加熱試験結果を示す図
【図6】実施例2におけるVOC除去用メタルフィルタの断面概念図
【符号の説明】
【0094】
1 吸着塔
2 ゼオライト担持VOC除去用メタルフィルタ
3 コイル
4 熱伝対
5 ファン
6 白金触媒担持VOC除去用メタルフィルタ
7 真空ポンプ
8 吸気口弁
9 排気口弁
10 真空ポンプ口弁
11 ステンレスハニカムVOC除去用メタルフィルタ
12 ステンレスハニカム
13 酸化被膜
14 シリカ層
15 ゼオライト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VOC除去用メタルフィルタを、1個または複数個設けたことを特徴とするVOC除去装置。
【請求項2】
VOC除去用メタルフィルタを、直列または並列に複数個設けたことを特徴とする請求項1記載のVOC除去装置。
【請求項3】
加熱手段を設けたことを特徴とする請求項1または2記載のVOC除去装置。
【請求項4】
加熱手段が、高周波誘導による加熱であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のVOC除去装置。
【請求項5】
減圧手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のVOC除去装置。
【請求項6】
吸着したVOCを酸化させるための手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のVOC除去装置。
【請求項7】
送風機を設けたことを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のVOC除去装置。
【請求項8】
VOCの濃度を測定するための手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載のVOC除去装置。
【請求項9】
温度を測定するための手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至8いずれかに記載のVOC除去装置。
【請求項10】
VOCを吸着することができる吸着剤を担持したことを特徴とする請求項1記載のVOC除去用メタルフィルタ。
【請求項11】
吸着剤が、活性炭、ゼオライト及びセピオライトより選ばれるいずれか1種、または2種以上を含むことを特徴とする請求項10記載のVOC除去用メタルフィルタ。
【請求項12】
フィルタ基材の材質が磁性を有することを特徴とする請求項10または11記載のVOC除去用メタルフィルタ。
【請求項13】
フィルタ基材の材質が耐熱性を有することを特徴とする請求項10乃至12いずれかに記載のVOC除去用メタルフィルタ。
【請求項14】
フィルタ基材の形状がハニカム、リング状またはボール状であることを特徴とする請求項10乃至13いずれかに記載のVOC除去用メタルフィルタ。
【請求項15】
VOCを吸着することができる吸着剤を溶媒に分散させた液に、フィルタ基材を含浸し、乾燥させた後、仮焼することを特徴とするVOC除去用メタルフィルタ製造方法。
【請求項16】
吸着剤を担持する前に、フィルタ基材の表面積を大きくするための処理を施したことを特徴とする請求項15記載のVOC除去用メタルフィルタ製造方法。
【請求項17】
吸着剤を担持する前に、フィルタ基材と吸着剤との密着性を向上させるための処理を施したことを特徴とする請求項15または16記載のVOC除去用メタルフィルタ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−245039(P2007−245039A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73812(P2006−73812)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】