説明

VRRPシステム及びVRRPプログラム

【課題】N+m構成を好適に実現することが可能なVRRPシステムを提供する。
【解決手段】VRRPシステムは、互いに通信可能に接続された複数の転送ノード10からなり、転送ノード10は、当該転送ノード10に一意の優先度が記憶された記憶部11と、優先度が所定値以上であるか否かを判定する判定部12と、優先度が所定値以上であると判定された場合に、マスタとして機能するマスタ部13と、優先度が所定値未満であると判定された場合に、バックアップとして機能するバックアップ部14と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP(Internet Protocol)ネットワークにおいて、複数の転送ノードが冗長構成であるVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)グループを構成するVRRPシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
IPネットワークにおける転送ノードの高信頼化のために冗長化を行う場合には、転送ノードにおける障害の自動検出と、予備の転送ノードへの自動切換が短時間で行われることが望ましい。かかる技術の一つとして、VRRPが挙げられる。
【0003】
VRRPでは、複数の転送ノードが一の冗長化グループ(以下、VRRPグループと称する)を構成し、一のVRRPグループのうち、最も優先度が高い転送ノードがマスタ(現用系装置)となり、他の転送ノードがバックアップ(予備系装置)となる。すなわち、従来のVRRPグループは、1台のマスタと、m台のバックアップと、からなる、いわゆる1+m構成を呈する。ここで、「1+m」は、マスタが1台、バックアップがm台であることを意味する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】”Virtual Router Redundancy Protocol (VRRP) Version 3 for IPv4 and IPv6”、[平成23年8月1日検索]、インターネット〈 http://tools.ietf.org/html/rfc5798〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、N台のマスタと、m台のバックアップと、からなるN+m構成が必要とされている。VRRPを用いてN+m構成を実現する方式としては、前記した1+m構成のVRRPグループを、N台のマスタの分だけ作成する方式が挙げられる。しかし、かかる方式では、1+m構成のVRRPグループ設定に合わせて物理的な転送ノードを設置すると、N×m台のバックアップが必要となるため、転送ノードの台数が増えてしまう。
【0006】
そこで、m台のバックアップをN台のマスタに対応させることが考えられる。すなわち、N台のマスタは、それぞれ一のVRRPグループに所属し、m台のバックアップは、N台分のVRRPグループに所属するようにする。しかし、かかるNのVRRPグループを採用すると、以下のような問題が発生するおそれがある。
(1)マスタに障害が発生した場合、最も優先度の高いバックアップが新たなマスタとして起動するが、かかるバックアップは他のマスタのバックアップも兼任しているため、複数のマスタに障害が発生すると、一のバックアップに負荷が集中するおそれがある。
(2)障害が発生したマスタが復旧し、かかる転送ノードをバックアップとして起動させる場合に、復旧した転送ノードは一のVRRPグループにしか所属していないため、N+m構成が崩れてしまう。
(3)マスタを増設する場合、新たなVRRPグループを作成し、m台のバックアップに対してVRRPグループの追加を手動で設定する必要がある。
(4)マスタを減設する場合、転送ノードの障害と誤認識されないよう、m台のバックアップに対してVRRPグループの削除を手動で設定する必要がある。
【0007】
本発明は、前記した事情に鑑みて創作されたものであり、N+m構成を好適に実現することが可能なVRRPシステム及びVRRPプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明のVRRPシステムは、互いに通信可能に接続された複数の転送ノードからなるVRRPシステムであって、前記転送ノードは、当該転送ノードに一意の優先度が記憶された記憶部と、前記優先度が所定値以上であるか否かを判定する判定部と、前記優先度が前記所定値以上であると判定された場合に、マスタとして機能するマスタ部と、前記優先度が前記所定値未満であると判定された場合に、バックアップとして機能するバックアップ部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によると、複数のマスタに障害が発生した場合には、バックアップのうち優先度の高いものから順にマスタに切り換わるので、1台のバックアップが複数のマスタとして動作することを防ぎ、バックアップ間の負荷分散を最適化することができる。
また、本発明の実施形態に係るVRRPシステム1は、バックアップがマスタ管理テーブルを生成して常にデータの最新化を図ることができる。
【0010】
前記記憶部には、VRRPシステムに一意のID(VRID)が記憶されており、前記転送ノードは、前記優先度に基づいて仮想MACアドレスを生成して前記記憶部に記憶させる仮想MACアドレス生成部を備え、前記マスタ部は、前記IDと、当該転送ノードの前記優先度と、前記仮想MACアドレスと、を含む信号を、前記優先度が前記所定値未満と判定された前記転送ノードのうち、前記優先度が最大の前記転送ノードへ送信し、前記優先度が前記所定値未満と判定された前記転送ノードのうち、前記優先度が最大の前記転送ノードの前記バックアップ部は、前記信号を受信し、前記優先度が前記所定値以上と判定された前記転送ノードの前記優先度及び前記仮想MACアドレスを関連付けて前記記憶部に記憶させる構成であってもよい。
【0011】
かかる構成によると、優先度に基づいて仮想MACアドレスを生成するので、単一のVRRPグループ内において転送ノードごとに異なる仮想MACアドレスを設定することができる。また、バックアップがマスタ管理テーブルを生成して常にデータの最新化を図ることができる。また、全てのマスタ及びバックアップが一のVRRPグループに所属している(全てのマスタ及びバックアップが同一のID(VRRPグループのIDであるVRID)を有する)ので、マスタの増設及び減設を容易に行うことができる。
【0012】
前記記憶部には、前記転送ノードに一意の仮想IPアドレスが記憶されており、前記マスタ部は、前記信号に前記仮想IPアドレスを含めて送信し、前記優先度が前記所定値未満と判定された前記転送ノードのうち、前記優先度が最大の前記転送ノードの前記バックアップ部は、前記信号を受信しなかった前記転送ノードに関する前記転送ノードの前記優先度、前記仮想MACアドレス及び前記仮想IPアドレスを、当該転送ノードの優先度、仮想MACアドレス及び仮想IPアドレスとして前記記憶部に記憶させ、当該転送ノードの前記判定部は、前記優先度が前記所定値以上であると判定し、当該転送ノードの前記マスタ部は、マスタとして機能する構成であってもよい。
【0013】
かかる構成によると、障害の発生時において自動的に転送ノードの設定を変更することができる。
【0014】
バックアップからマスタに切り換わった前記転送ノードの前記マスタ部は、変更前の前記優先度を前記IDとして含むとともに、変更後の前記優先度及び前記仮想MACアドレスを含む信号を他の前記転送ノードへ送信し、他の前記転送ノードの前記判定部は、受信した信号の前記IDが前記記憶部に記憶されたIDと異なり、かつ、受信した信号の前記優先度が前記記憶部に記憶された優先度と同一の場合に、前記バックアップ部を機能させ、他の前記転送ノードの前記バックアップ部は、受信した信号の前記IDを当該転送ノードの優先度として前記記憶部に記憶させ、他の前記転送ノードの前記仮想MACアドレス生成部は、変更後の前記優先度に基づいて仮想MACアドレスを新たに生成する構成であってもよい。
【0015】
かかる構成によると、障害からの復旧時において自動的に転送ノードの設定を変更することができる。
【0016】
また、本発明は、コンピュータを前記したVRRPシステムの転送ノードとして機能させるVRRPプログラムとしても具現化可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、N+m構成を好適に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係るVRRPシステムを示す図、(b)〜(d)はマスタであるルータが送信する信号を示す図、(e)はバックアップであるルータが生成するマスタ管理テーブルを示す図である。
【図2】ルータを示すブロック図である。
【図3】(a)はマスタであるルータに障害が発生した状態を示す図、(b)は更新されたマスタ管理テーブルを示す図である。
【図4】(a)は障害が発生したルータが復旧した状態を示す図、(b)はバックアップからマスタに切り換わったルータが送信する信号を示す図、(c)は更新されたマスタ管理テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。図1(a)に示すように、本発明の実施形態に係るVRRPシステム1は、転送ノード(ゲートウェイ装置ともいう)である複数のルータ10(10A〜10E)が互いに通信可能に接続されているシステムである。複数のルータ10は、IP(Internet Protocol)ネットワークにおける冗長構成である単一のVRRP(Virtual Router Redundancy Protocol)グループを構成する。
【0020】
図2に示すように、本発明の実施形態に係るルータ10は、いわゆるIPルータであって、機能部として、記憶部11と、判定部12と、マスタ部13と、バックアップ部14と、仮想MACアドレス生成部15と、を備える。
【0021】
<記憶部>
記憶部11には、VRRPグループに一意のIDであるVRIDと、当該ルータ10に一意の優先度(Priority)と、当該ルータ10に一意の仮想MACアドレスと、当該ルータ10に一意の仮想IPアドレスと、が記憶されている。VRIDは、全てのルータ10において同一の値であり、本実施形態では、図1(a)に示すように、「0x00」に設定されている。優先度は、全てのルータ10において異なる値であり、「1(優先度最小)」から「254(優先度最大)」の間の値をとる。本実施形態では、図1(a)に示すように、ルータ10Aの優先度は「130」、ルータ10Bの優先度は「140」、ルータ10Cの優先度は「150」、ルータ10Dの優先度は「10」、ルータ10Eの優先度は「20」に設定されている。これらVRID及び優先度、並びに仮想IPアドレスの設定手法については公知であるため、説明を省略する。なお、VRRPシステム1は、ルータ10それぞれに付与された優先度を、適宜変更することができるように構成されている。
【0022】
<判定部>
判定部12は、記憶部11に記憶された優先度が所定値以上であるか否かを判定する。本実施形態において、所定値は「127」である。判定部12は、優先度が所定値以上であると判定した場合には、判定結果に基づいてマスタ部13を起動させ、優先度が所定値未満であると判定した場合には、判定結果に基づいてバックアップ部14を起動させる。ただし、本実施形態では、所定値である「127」が優先度として設定されないように構成されている。すなわち、優先度が「128〜254」に設定されたルータ10はマスタとなり、優先度が「1〜126」に設定されたルータ10はバックアップとなる。
【0023】
<マスタ部>
マスタ部13は、記憶部11に記憶された優先度が所定値以上である(本実施形態では、所定値よりも大きい)場合に起動し、マスタ(現用系装置)として機能し、図示しない一の端末から送信されたデータを他の端末へと転送する。マスタ部13は、記憶部11からVRID、優先度、仮想MACアドレス及び仮想IPアドレスを読み出し、これらを含む信号(Advertisement Packet)を生成し、他のルータ10B〜10E、少なくともバックアップとして機能する他のルータ10(10D,10E)へ定期的に送信する。
【0024】
すなわち、ルータ10Aのマスタ部13は、VRID「0x00」、優先度「130」、仮想MACアドレス「VA」及び仮想IPアドレス「va」を含む信号(図1(b)参照)を生成し、他のルータ10B〜10E、少なくともルータ10D,10Eへ定期的に送信する。また、ルータ10Bのマスタ部13は、VRID「0x00」、優先度「140」、仮想MACアドレス「VB」及び仮想IPアドレス「vb」を含む信号(図1(c)参照)を生成し、他のルータ10A,10C〜10E、少なくともルータ10D,10Eへ定期的に送信する。また、ルータ10Cのマスタ部13は、VRID「0x00」、優先度「150」、仮想MACアドレス「VC」及び仮想IPアドレス「vc」を含む信号(図1(d)参照)を生成し、他のルータ10A,10B,10D,10E、少なくともルータ10D,10Eへ定期的に送信する。
【0025】
<バックアップ部>
バックアップ部14は、記憶部11に記憶された優先度が所定値未満である場合に起動し、バックアップ(予備系装置)として機能する。ルータ10D,10Eのバックアップ部14は、マスタとして機能する他のルータ10(10A〜10C)から送信された信号を受信し、受信した信号に含まれるVRID、優先度、仮想MACアドレス及び仮想IPアドレスをルータ10ごとに関連付けたマスタ管理テーブルを生成して記憶部11に記憶させる(図1(e)参照)。ここで、マスタであるルータ10A〜10Cは、VRIDが同一であるため、優先度をIDとして識別される。すなわち、ルータ10A〜10Cのマスタとしての動作に優先度は関係なく、優先度は、マスタであるルータ10A〜10Cを識別するためのIDとして用いられる。
【0026】
<仮想MACアドレス生成部>
仮想MACアドレス生成部15は、記憶部11に記憶された優先度に基づいて、ルータ10に一意の仮想MACアドレスを生成し、記憶部11に記憶させる。本実施形態において、仮想MACアドレス生成部15は、RFC5798で規定されるVirtual Router MAC Address Formatに一部変更を加えた手法によって仮想MACアドレスを生成し、記憶部11に記憶させる。本実施形態において、仮想MACアドレス生成部15は、下位の2byteにVRIDに代えて優先度を使用して仮想MACアドレスを生成しており、IPv4の場合には、従来は「00-00-5E-00-01-{VRID}」という仮想MACアドレスが生成されるところ、本実施形態では、「00-00-5E-00-01-{優先度}」という仮想MACアドレスが生成される。
【0027】
<動作例>
続いて、本発明の実施形態に係るVRRPシステム1の動作例について説明する。ここで、各ルータ10の記憶部11には、VRID、優先度及び仮想IPアドレスが予め記憶されているものとする。
【0028】
まず、各ルータ10の判定部12は、記憶部11に記憶された優先度が所定値以上であるか否かを判定する。かかる判定結果に基づいて、ルータ10A〜10Cのマスタ部13及びルータ10D,10Eのバックアップ部14が起動する。本実施形態では、ルータ10A〜10Cは、VRRPシステム1におけるマスタとして機能し、ルータ10D,10Eは、VRRPシステム1におけるバックアップとして機能する。また、各ルータ10の仮想MACアドレス生成部15は、記憶部11に記憶された優先度に基づいて、ルータ10に一意の仮想MACアドレスを生成し、記憶部11に記憶させる。すなわち、この時点におけるVRRPシステム1は、3台のマスタ(ルータ10A〜10C)と2台のバックアップ(ルータ10D,10E)とからなる「3+2」構成の単一のVRRPグループである。
【0029】
続いて、ルータ10A〜10Cのマスタ部13は、当該ルータ10のVRID、優先度、仮想MACアドレス及び仮想IPアドレスを含む信号を生成し(図1(b)〜(d)参照)、少なくともバックアップであるルータ10D,10Eへ定期的に送信する。ルータ10D,10Eのバックアップ部14は、ルータ10A〜10Cから送信された信号を受信すると、受信した信号に含まれる含まれるVRID、優先度、仮想MACアドレス及び仮想IPアドレスをルータ10ごとに関連付けたマスタ管理テーブルを生成して記憶部11に記憶させる(図1(e)参照)。
【0030】
ここで、図3(a)に示すように、ルータ10Aに障害が発生した場合には、ルータ10D,10Eのバックアップ部14は、ルータ10Aからの信号を受信することができない。ルータ10D,10Eのバックアップ部14は、所定時間の間ルータ10Aからの信号を受信しなかった場合に、記憶部11に記憶されたルータ10Aの優先度、仮想MACアドレス及び仮想IPアドレスをマスタ管理テーブルから削除する(図3(b)参照)。また、かかる削除に先立って、バックアップのうち優先度が最大のルータ10Eのバックアップ部14は、信号を受信しなかったルータ10Aに関する優先度、仮想MACアドレス及び仮想IPアドレスを、当該ルータ10Eの優先度及び仮想IPアドレスとして記憶部11に記憶させる。なお、記憶部11には、以前の優先度も記憶されたままである。そして、ルータ10Eの判定部12は、優先度が所定値よりも大きいと判定し、かかる判定結果に基づいて、ルータ10Eのマスタ部13が起動するとともに、ルータ10Eのバックアップ部14が起動停止する。すなわち、バックアップであるルータ10D,10Eのうち、優先度が最大のルータ10Eが、障害が発生したルータ10Aの機能を引き継いでマスタとして機能する。すなわち、この時点におけるVRRPシステム1は、3台のマスタ(ルータ10B,10C,10E)と1台のバックアップ(ルータ10D)とからなる「3+1」構成の単一のVRRPグループである。
【0031】
ここで、ルータ10D,10Eのうち、優先度が最大であるルータ10Eがマスタとして機能する手法について説明する。まず、ルータ10D,10Eのバックアップ部10D,10Eは、所定時間の間ルータ10Aからの信号を受信しなかった場合に、ルータ10D,10Eのマスタ部13が起動するとともに、ルータ10D,10Eのバックアップ部14が起動停止する。各バックアップ部10D,10Eは、優先度が大きいほど所定時間が短くなるように設定されたタイマを有しており、かかるタイマによってマスタ部13の起動及びバックアップ部の起動停止を管理している。すなわち、優先度が大きいルータ10Eのバックアップ部14が、先にタイマが満了することによって起動停止し、ルータ10Eのマスタ部13が起動する。そして、マスタであるルータ10B,10C,10Eは、優先度を含む信号(Advertisement Packet)を他のルータ10へ定期的に送信する。優先度が小さいルータ10Dのバックアップ部14は、新しくマスタとなったルータ10Eからの信号を受信すると、タイマをクリアする。かかる手法は、従来のVRRPで用いられている手法(RFC5798)と同様であるが、優先度が最大であるルータ10Eがマスタとして機能する手法は、前記したものに限定されない。
【0032】
続いて、バックアップからマスタに切り換わったルータ10Eのマスタ部13(図4(a)参照)は、変更前の優先度「20」をVRIDとして含むとともに、変更後の優先度「130」、仮想MACアドレス「VA」及び仮想IPアドレス「va」を含む信号(Advertisement Packet)を生成し(図4(b)参照)、他のルータ10(10A〜10D)へ定期的に送信する。ルータ10Dのバックアップ部14は、ルータ10Eのマスタ部13から送信された信号を受信し、受信した信号に基づいて、マスタ管理テーブルを更新する(図4(c)参照)。
【0033】
また、ルータ10Aが復旧すると(図4(a)参照)、ルータ10Aの判定部12は、ルータ10Eのマスタ部13から送信された信号を受信し、受信した信号に含まれるVRIDが記憶部11に記憶されたVRIDと同一であるか否か、受信した信号に含まれる優先度が記憶部11に記憶された優先度と同一であるか否か、を判定する。受信した信号に含まれるVRIDが記憶部11に記憶されたVRIDと異なり、かつ、受信した信号に含まれる優先度が記憶部11に記憶された優先度と同一の場合に、判定部12は、判定結果をバックアップ部14へ出力する。バックアップ部14は、判定結果に基づいて起動し、受信した信号に含まれるIDをルータ10Aの優先度として記憶部11に記憶させ、仮想MACアドレス生成部15は、変更後の優先度に基づいて仮想MACアドレスを新たに生成し、記憶部11に記憶させる。また、ルータ10Aの仮想IPアドレスも、公知の手法にて新たに生成される(「va」→「rx」)。すなわち、この時点におけるVRRPシステム1は3台のマスタ(ルータ10B,10C,10E)と2台のバックアップ(ルータ10A,10D)とからなる「3+2」構成の単一のVRRPグループである。
【0034】
本発明の実施形態に係るVRRPシステム1は、複数のマスタに障害が発生した場合には、バックアップのうち優先度の高いものから順にマスタに切り換わるので、1台のバックアップが複数のマスタとして動作することを防ぎ、バックアップ間の負荷分散を最適化することができる。
また、本発明の実施形態に係るVRRPシステム1は、優先度に基づいて仮想MACアドレスを生成するので、単一のVRRPグループ内においてルータ10ごとに異なる仮想MACアドレスを設定することができる。
また、本発明の実施形態に係るVRRPシステム1は、バックアップがマスタ管理テーブルを生成して常にデータの最新化を図ることができる。
また、本発明の実施形態に係るVRRPシステム1は、障害の発生時及び復旧時において自動的にルータ10の設定を変更することができる。
また、本発明の実施形態に係るVRRPシステム1は、全てのマスタ及びバックアップが一のVRRPグループに所属している(全てのマスタ及びバックアップが同一のVRIDを有する)ので、マスタの増設及び減設を容易に行うことができる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、VRRPシステム1に所属するルータ10の優先度として、「所定値」である「127」は用いないように設定し、マスタを減設する際に、ルータ10のマスタ部13が優先度「127」を含む信号を他のルータ10へ送信し、バックアップであるルータ10のバックアップ部14が、かかる信号を受信すると、ルータ10に関する情報をマスタ管理テーブルから削除する構成であってもよい。かかる構成によると、マスタの減設を容易に行うことができる。マスタの減設に用いる優先度としては、他にも最小の「1」、最大の「254」を用いることができる。また、本発明は、コンピュータを前記したルータ10として機能させるVRRPプログラムとしても具現化可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 VRRPシステム
10 ルータ(転送ノード)
11 記憶部
12 判定部
13 マスタ部
14 バックアップ部
15 仮想MACアドレス生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに通信可能に接続された複数の転送ノードからなるVRRPシステムであって、
前記転送ノードは、
当該転送ノードに一意の優先度が記憶された記憶部と、
前記優先度が所定値以上であるか否かを判定する判定部と、
前記優先度が前記所定値以上であると判定された場合に、マスタとして機能するマスタ部と、
前記優先度が前記所定値未満であると判定された場合に、バックアップとして機能するバックアップ部と、
を備えることを特徴とするVRRPシステム。
【請求項2】
前記記憶部には、VRRPシステムに一意のIDが記憶されており、
前記転送ノードは、前記優先度に基づいて仮想MACアドレスを生成して前記記憶部に記憶させる仮想MACアドレス生成部を備え、
前記マスタ部は、前記IDと、当該転送ノードの前記優先度と、前記仮想MACアドレスと、を含む信号を、前記優先度が前記所定値未満と判定された前記転送ノードのうち、前記優先度が最大の前記転送ノードへ送信し、
前記優先度が前記所定値未満と判定された前記転送ノードのうち、前記優先度が最大の前記転送ノードの前記バックアップ部は、前記信号を受信し、前記優先度が前記所定値以上と判定された前記転送ノードの前記優先度及び前記仮想MACアドレスを関連付けて前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする請求項1に記載のVRRPシステム。
【請求項3】
前記記憶部には、前記転送ノードに一意の仮想IPアドレスが記憶されており、
前記マスタ部は、前記信号に前記仮想IPアドレスを含めて送信し、
前記優先度が前記所定値未満と判定された前記転送ノードのうち、前記優先度が最大の前記転送ノードの前記バックアップ部は、前記信号を受信しなかった前記転送ノードに関する前記転送ノードの前記優先度、前記仮想MACアドレス及び前記仮想IPアドレスを、当該転送ノードの優先度、仮想MACアドレス及び仮想IPアドレスとして前記記憶部に記憶させ、
当該転送ノードの前記判定部は、前記優先度が前記所定値以上であると判定し、当該転送ノードの前記マスタ部は、マスタとして機能する
ことを特徴とする請求項2に記載のVRRPシステム。
【請求項4】
バックアップからマスタに切り換わった前記転送ノードの前記マスタ部は、変更前の前記優先度を前記IDとして含むとともに、変更後の前記優先度及び前記仮想MACアドレスを含む信号を他の前記転送ノードへ送信し、
他の前記転送ノードの前記判定部は、受信した信号の前記IDが前記記憶部に記憶されたIDと異なり、かつ、受信した信号の前記優先度が前記記憶部に記憶された優先度と同一の場合に、前記バックアップ部を機能させ、
他の前記転送ノードの前記バックアップ部は、受信した信号の前記IDを当該転送ノードの優先度として前記記憶部に記憶させ、
他の前記転送ノードの前記仮想MACアドレス生成部は、変更後の前記優先度に基づいて仮想MACアドレスを新たに生成する
ことを特徴とする請求項3に記載のVRRPシステム。
【請求項5】
互いに通信可能に接続された複数のコンピュータからなるVRRPシステムを構成するために、
前記コンピュータを、
記憶部に記憶された優先度が所定値以上であるか否かを判定する判定部、
前記優先度が前記所定値以上であると判定された場合に、マスタとして機能するマスタ部、及び、
前記優先度が前記所定値未満であると判定された場合に、バックアップとして機能するバックアップ部、
として機能させるVRRPプログラム。
【請求項6】
前記記憶部には、VRRPシステムに一意のIDが記憶されており、
前記コンピュータを、前記優先度に基づいて仮想MACアドレスを生成して前記記憶部に記憶させる仮想MACアドレス生成部として機能させ、
前記マスタ部は、前記IDと、当該コンピュータの前記優先度と、前記仮想MACアドレスと、を含む信号を、前記優先度が前記所定値未満と判定された前記コンピュータのうち、前記優先度が最大の前記コンピュータへ送信し、
前記優先度が前記所定値未満と判定された前記コンピュータのうち、前記優先度が最大の前記コンピュータの前記バックアップ部は、前記信号を受信し、前記優先度が前記所定値以上と判定された前記コンピュータの前記優先度及び前記仮想MACアドレスを関連付けて前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする請求項5に記載のVRRPプログラム。
【請求項7】
前記記憶部には、前記転送ノードに一意の仮想IPアドレスが記憶されており、
前記マスタ部は、前記信号に前記仮想IPアドレスを含めて送信し、
前記優先度が前記所定値未満と判定された前記コンピュータのうち、前記優先度が最大の前記コンピュータの前記バックアップ部は、前記信号を受信しなかった前記コンピュータに関する前記コンピュータの前記優先度、前記仮想MACアドレス及び前記仮想IPアドレスを、当該コンピュータの優先度、仮想MACアドレス及び前記仮想IPアドレスとして前記記憶部に記憶させ、
当該コンピュータの前記判定部は、前記優先度が前記所定値以上であると判定し、当該コンピュータの前記マスタ部は、マスタとして機能する
ことを特徴とする請求項6に記載のVRRPプログラム。
【請求項8】
バックアップからマスタに切り換わった前記コンピュータの前記マスタ部は、変更前の前記優先度を前記IDとして含むとともに、変更後の前記優先度及び前記仮想MACアドレスを含む信号を他の前記コンピュータへ送信し、
他の前記コンピュータの前記判定部は、受信した信号の前記IDが前記記憶部に記憶されたIDと異なり、かつ、受信した信号の前記優先度が前記記憶部に記憶された優先度と同一の場合に、前記バックアップ部を機能させ、
他の前記コンピュータの前記バックアップ部は、受信した信号の前記IDを当該コンピュータの優先度として前記記憶部に記憶させ、
他の前記コンピュータの前記仮想MACアドレス生成部は、変更後の前記優先度に基づいて仮想MACアドレスを新たに生成する
ことを特徴とする請求項7に記載のVRRPプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−46252(P2013−46252A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182966(P2011−182966)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】