説明

X線導波路

【課題】 X線の伝搬損失が少なく、導波モードが位相制御され、酸化による劣化が少なく、作成が容易なX線導波路を提供する。
【解決手段】 X線導波路は、物質の屈折率実部が1以下となる波長帯域のX線を導波させるためのコア103と、コア103にX線を閉じ込めるためのクラッド101,102と、を備える。コア103は、屈折率実部が異なる複数の物質を含む1次元周期構造を有する。複数の物質は、有機物または気体または真空と、無機物と、を含む。コア103とクラッド101,102は、コア103とクラッド101,102の界面での全反射臨界角が1次元周期構造の周期性に起因するブラッグ角よりも大きくなるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線導波路に関し、特にX線光学系、X線撮像技術、X線露光技術などにおけるX線光学系などに用いられるX線導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
数10nm以下の短い波長の電磁波を扱う際、異物質間における電磁波に対する屈折率差が10−4以下と非常に小さく、例えば全反射角が非常に小さくなる。X線を含めたこのような電磁波をコントロールするために、大型の空間光学系が用いられてきており、今でもなお主流となっている。空間光学系をなしている主な部品として、異なる屈折率の材料を交互に積層した多層膜反射鏡があり、これはビーム整形、スポットサイズ変換、波長選択などの様々な役割を担っている。
【0003】
主流であるこのような空間光学系に対し、従来のポリキャピラリのようなX線導波管はその中にX線を閉じ込めて伝搬させるものである。近年では光学系の小型化、高性能化を目指し、薄膜や多層膜中にX線を閉じ込めて伝搬させる、X線導波路の研究が行われている。
【0004】
具体的には、全反射によりX線を閉じ込める形態の複数の薄膜X線導波路が隣接して配置されたX線導波路(非特許文献1参照)や、二層の1次元の周期構造により導波層を挟み込んだ形の薄膜導波路(非特許文献2参照)などの研究が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Physical Review B”,Volume 62,Number 24,p.16939(2000−II)
【非特許文献2】“Physical Review B”,Volume 67,Number 23,p.233303(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1では周期構造をなす各層の基本の導波路に全反射によりX線を閉じ込めるために、各層のクラッドは電子密度の大きい物質により構成されるため、X線の伝搬損失が大きくなる。クラッドに用いる物質の種類の選択性も低く、その中でも酸化されやすい物質が多いため、導波路の酸化劣化などの問題が存在する。さらに、このような物質を複数層積層させるための工程に時間がかかる。
【0007】
また、非特許文献2では、クラッドとして設けられた多層膜のブラッグ反射によりコアにX線を閉じ込めるX線導波路が提案されているが、NiとCにより構成される多層膜であり、このような材料を十分な総数積層するために非常に長い時間と手間がかかる。さらに、吸収の大きい金属材料を用いているために多層膜中でのX線の吸収損失が大きくなるとともに、酸化劣化の問題が存在する。
【0008】
本発明は、従来の上記のような課題を鑑みてなされたものであり、X線の伝搬損失が少なく、導波モードが位相制御され、酸化による劣化が少なく、作成が容易なX線導波路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面としてのX線導波路は、物質の屈折率実部が1以下となる波長帯域のX線を導波させるためのコアと、前記コアに前記X線を閉じ込めるためのクラッドと、を備えるX線導波路であって、前記コアは、屈折率実部が異なる複数の物質を含む1次元周期構造を有し、前記複数の物質は、有機物または気体または真空と、無機物と、を含み、前記コアと前記クラッドは、該コアと該クラッドの界面での全反射臨界角が前記1次元周期構造の周期性に起因するブラッグ角よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、X線の伝搬損失が少なく、導波モードが位相制御され、酸化による劣化が少なく、作成が容易なX線導波路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のX線導波路の一実施態様を示す概略図である。
【図2】伝搬モードのもつ損失の有効伝搬角度依存性を表す図である。
【図3】導波モードの電場強度分布を表す図である。
【図4】本発明の実施例1のX線導波路を示す概略図である。
【図5】導波モードの電場強度分布を表す図である。
【図6】本発明のX線導波路のコアとクラッドとの界面におけるX線の全反射を説明するための図である。
【図7】有効伝搬角度を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明のX線導波路の一実施態様を示す概略図である。本発明に係るX線導波路は、物質の屈折率実部が1以下となる波長帯域のX線を導波させるためのコア103と、前記コアに前記X線を閉じ込めるためのクラッド101、102からなるX線導波路である。そして、前記コア103が、屈折率実部が異なる複数の物質が1次元方向に周期的に積層された1次元周期構造からなり、前記複数の物質の少なくとも一種の物質が有機物であり、少なくとも一種の物質が前記1次元周期構造の面内方向で連続した無機物である。また、前記コアと前記クラッドの界面での全反射臨界角が、前記1次元周期構造の周期性に起因するブラッグ角よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
本発明において、X線とは物質の屈折率実部が1以下となる波長帯域の電磁波である。具体的には、本発明におけるX線とは、極端紫外光(EUV光)を含む100nm以下の波長の電磁波を指す。
【0015】
またこのような短い波長の電磁波の周波数には、非常に高く物質の最外殻電子が応答できないため、紫外光の波長より長い波長をもつ電磁波(可視光や赤外線)の周波数帯域と異なり、X線に対しては物質の屈折率の実部が1より小さくなることが知られている。このようなX線に対する物質の屈折率nは一般的に、下記の式(1)で表されるように、実数部の1からのずれ量δ、吸収に関係する虚数部のβ’を用いて表される。
【0016】
【数1】

【0017】
δは物質の電子密度ρに比例するため電子密度の大きい物質ほど屈折率の実部が小さくなることになる。また、屈折率実部n’は、1−δとなる。さらに、ρは原子密度ρと原子番号Zに比例する。このようにX線に対する物質の屈折率は複素数で表されるが、その実部を本明細書中では屈折率実部または屈折率の実部と称し、虚部を屈折率虚部または屈折率の虚部と称する。
【0018】
上記X線に対して屈折率実部が最大となる場合は、X線が真空中を伝搬する場合であるが、一般的環境下では気体でないほぼすべての物質に対して空気の屈折率実部が最大となる。本明細書中においては、真空に対しても物質という文言を適用する。
【0019】
本発明において、コアは、屈折率実部が異なる複数の物質からなる1次元周期構造を備え、前記複数の物質の少なくとも一種の物質が有機物または空気などの気体または真空であり、少なくとも別の一種の物質が連続した無機物であることを特徴とする。本発明において屈折率実部が異なる複数の物質とは多くの場合電子密度が異なる二種以上の物質である。
【0020】
コアの1次元の周期構造を構成する物質の一種がX線の吸収が少ない有機物であることにより、X線の吸収による伝搬損失を小さくすることができる。また、連続した無機物とはSiOやTiOなどのようにSiやTiなどの無機元素が共有結合によりOなどを介して膜状に結合している物質や、AuやPtのように金属結合により膜状に結合している物質を表す。このような連続した無機物により1次元の周期構造自体の強度を強くすることができる。さらに、SiOやTiOなどの酸化物を用いると、酸化による劣化や構造変化をなくすことができ耐久性があがる。
【0021】
本発明において、1次元周期構造を多層膜として構成することができる。この場合、酸化物である無機物を積層する方法としては、蒸着やスパッタ法などがある。このような無機物と有機物が1次元方向に交互に積層されてなる1次元周期構造が本発明における多層膜である。周期構造をなす要素構造中の無機物は、多層膜の面内方向で連続して形成されているが、各要素構造間において連続している必要はない。
【0022】
さらにこのような有機物と無機物の物質により構成される多層膜として、ゾルゲル法を用いて作製されるメソ構造体膜であるラメラ膜などが挙げられる。多層膜がメソ構造体であるラメラ膜であることが好ましい。ここでいうラメラ膜とは、ラメラ構造を有するメソ構造体膜を指す。メソ構造体膜は、界面活性剤の自己集合によって形成される有機−無機ハイブリッド材料膜を指す。メソ構造体膜には、種々のメソスケールの構造周期性を有するものがあるが、本発明では有機成分と無機成分のシート(薄膜)が積層した、ラメラ構造のものが好適に用いられる。このようなメソ構造体膜の無機成分としては、SiO、TiO、SnO、ZrOなどの酸化物が代表的である。これらラメラ構造のメソ構造体膜はゾル−ゲル法などの手法で基板上に形成することができる。ラメラ構造のメソ構造体膜の構造周期は、使用する界面活性剤の種類や濃度、反応条件などによって適宜所望の値に調整することが可能である。ラメラ構造のメソ構造体膜は、一つの工程において自己組織的に1次元周期構造を形成するので、作製工程の時間と手間を大幅に削減できる。
【0023】
本発明において、メソ構造体膜は、2から50nmの構造周期をもつ周期構造体である。ラメラ構造は、異なる二種類の物質より構成される層状構造であり、この二種類の物質は無機成分を主とする物質と、有機成分を主とする物質により構成される。この無機成分を主とする物質と有機成分を主とする物質は、必要に応じて結合されていてよい。結合されたものの具体例としては、アルキル基の結合したシロキサン化合物から調製されるメソ構造体を挙げることができる。
【0024】
無機成分を主とする無機物の材料は特に限定されるものではないが、その例としては、製造可能性、周期構造体を屈折率実部が異なる物質より構成するという観点から、無機酸化物が挙げられる。この無機酸化物の例としては、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ジルコニア、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化亜鉛を挙げることができる。壁部の表面は、必要に応じて修飾されていてよい。たとえば、水の吸着を抑制するために、疎水性の分子を修飾してもよい。
【0025】
有機成分を主とする有機物は、特に制限されるものではないが、その例としては、界面活性剤や、分子集合体の形成機能を有する部位が、壁部を形成する材料または壁部を形成する材料の前駆体と結合している材料が挙げられる。この界面活性剤の例としては、イオン性、非イオン性の界面活性剤を挙げることができる。このイオン性界面活性剤の例としては、トリメチルアルキルアンモニウムイオンのハロゲン化物塩を挙げることができる。このアルキル鎖の鎖長の例としては、炭素数で10から22が挙げられる。非イオン性の界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコールを親水基として含むものを挙げることができる。ポリエチレングリコールを親水基として含む界面活性剤の具体例としては、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール‐ポリプロピレングリコール‐ポリエチレングリコールのブロックコポリマーを挙げることができる。ポリエチレングリコールアルキルエーテルのこのアルキル鎖の鎖長の例としては、炭素数で10から22、ポリエチレングリコールの繰返し数の例としては、2から50を挙げることができる。この疎水基、親水基を変化させることにより構造周期を変化させることが可能である。一般的に疎水基、親水基を大きなものとすることにより構造周期を拡大することが可能である。この有機成分を主とする物質としては、必要に応じて、または、使用する材料、工程の結果として水、有機溶媒、塩等が含まれていてよい。この有機溶媒の例としては、アルコール、エーテル、炭化水素が挙げられる。
【0026】
次に、メソ構造体膜の製造方法について説明する。
【0027】
メソ構造体膜の製造方法は、特に制限されるものではないが、たとえば、集合体として機能する両親媒性物質(特に界面活性剤)の溶液に、無機酸化物の前駆体を加え、成膜を行い、無機酸化物の生成反応を進行させることによって製造される。
【0028】
また、界面活性剤に加えて、構造周期を調整するための添加物を加えてもよい。この構造周期を調整するための添加物としては、疎水性物質が挙げられる。この疎水性物質の例としては、アルカン類、親水性基を含まない芳香族化合物が挙げられ、その具体的な例としては、オクタンが挙げられる。
【0029】
無機酸化物の前駆体の例としては、ケイ素や金属元素のアルコキサイド、塩化物が挙げられる。さらに具体的な例としては、Si,Sn,Zr,Ti,Nb,Ta,Al,W,Hf,Znのアルコキサイド、塩化物が挙げられる。アルコキサイドの例としては、メトキサイド、エトキサイド、プロポキサイド、または、その一部がアルキル基に置換されたものが挙げられる。
【0030】
製膜法の例としては、ディップコート法、スピンコート法、水熱合成法が挙げられる。
【0031】
さらに、本発明における1次元周期構造の特別な例として、メソポーラス材料とその孔の中に有機物などが充填しているメソポーラス膜を挙げることができる。これらのメソポーラス膜は無機物中に、孔または有機物が充填された孔が2次元または3次元方向で配置されたものであるが、作製材料や条件により1次元方向に平均屈折率が周期的な分布をもつ、屈折率または密度に着目した場合に1次元周期構造となる。特に孔の中を空気などの気体または真空にすることにより、膜を構成する物質間の屈折率差を大きくできるとともに、X線の伝搬損失を小さくできる。このようなメソポーラス膜について以下説明する。
【0032】
(A)孔の中が空洞なメソポーラス膜について
孔径が2から50nmの多孔質材料で、壁部の材料は特に限定されるものではないが、その例としては、製造可能性から、無機酸化物が挙げられる。この無機酸化物の例としては、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化ジルコニア、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化亜鉛を挙げることができる。壁部の表面は、必要に応じて修飾されていてよい。たとえば、水の吸着を抑制するために、疎水性の分子を修飾してもよい。
【0033】
メソポーラス膜の調製法は、特に制限されるものではないが、たとえば、以下の方法で調製することができる。集合体が鋳型として機能する両親媒性物質の溶液に、無機酸化物の前駆体を加え、成膜を行い、無機酸化物の生成反応を進行させる。その後に、鋳型分子を除去することにより、多孔質材料とする。
【0034】
この両親媒性物質は、特に限定されるものではないが、界面活性剤が適している。界面活性剤分子の例としては、イオン性、非イオン性の界面活性剤を挙げることができる。このイオン性界面活性剤の例としては、トリメチルアルキルアンモニウムイオンのハロゲン化物塩を挙げることができる。このアルキル鎖の鎖長の例としては、炭素数で10から22が挙げられる。非イオン性の界面活性剤の例としては、ポリエチレングリコールを親水基として含むものを挙げることができる。ポリエチレングリコールを親水基として含む界面活性剤の具体例としては、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール‐ポリプロピレングリコール‐ポリエチレングリコールのブロックコポリマーを挙げることができる。ポリエチレングリコールアルキルエーテルのこのアルキル鎖の鎖長の例としては、炭素数で10から22、ポリエチレングリコールの繰返し数の例としては、2から50を挙げることができる。この疎水基、親水基を変化させることにより構造周期を変化させることが可能である。一般的に疎水基、親水基を大きなものとすることにより孔径を拡大することが可能である。また、界面活性剤に加えて、構造周期を調整するための添加物を加えてもよい。この構造周期を調整するための添加物としては、疎水性物質が挙げられる。この疎水性物質の例としては、アルカン類、親水性基を含まない芳香族化合物が挙げられ、その具体的な例としては、オクタンが挙げられる。
【0035】
無機酸化物の前駆体の例としては、ケイ素や金属元素のアルコキサイド、塩化物が挙げられる。さらに具体的な例としては、Si,Sn,Zr,Ti,Nb,Ta,Al,W,Hf,Znのアルコキサイド、塩化物が挙げられる。アルコキサイドの例としては、メトキサイド、エトキサイド、プロポキサイド、または、その一部がアルキル基に置換されたものが挙げられる。
【0036】
製膜法の例としては、ディップコート法、スピンコート法、水熱合成法が挙げられる。鋳型分子の除去方法の例としては、焼成、抽出、紫外線照射、オゾン処理が挙げられる。
【0037】
(B)メソポーラス膜の孔が主に有機化合物で充填されたものについて
壁部の材料については、(A)の項に記載したものと同様のものを使用することができる。孔を充填する物質については、有機化合物を主とするものであれば特に制限されるものではない。この「主」の意味としては、体積比で50%以上を意味する。この有機化合物の例としては、界面活性剤や、分子集合体の形成機能を有する部位が、壁部を形成する材料または壁部を形成する材料の前駆体と結合している材料が挙げられる。この界面活性剤の例としては、(A)の項で記載した界面活性剤を挙げることができる。また分子集合体の形成機能を有する部位が壁部を形成する材料、または、壁部を形成する材料の前駆体と結合している材料の例としては、アルキル基を有するアルコキシシラン、アルキル基を有するオリゴシロキサン化合物を挙げることができる。このアルキル鎖の鎖長の例としては、炭素数で10から22が挙げられる。
【0038】
孔の内部には、必要に応じて、または、使用する材料、工程の結果として水、有機溶媒、塩等が含まれていてよい。この有機溶媒の例としては、アルコール、エーテル、炭化水素が挙げられる。
【0039】
メソポーラス膜の孔が主に有機化合物で充填されたものの調製法は、特に制限されるものではないが、たとえば、(A)の項に記載したメソポーラス膜の調製法の鋳型の除去以前の工程を挙げることができる。
【0040】
本発明のX線導波路は、コアとクラッドとの界面における全反射によりX線を1次元周期構造であるコアの中に閉じ込めて導波モードを形成し、X線を伝搬させる。そして、前記コアと前記クラッドの界面での全反射臨界角が、前記1次元周期構造の周期性に起因するブラッグ角よりも大きいことを特徴とする。
【0041】
図6に示すX線導波路は、クラッド602とクラッド603にコア601が挟まれた形態であり、低屈折率実部をもつ物質の層606と高屈折率実部をもつ物質の層605によりなる基本構造604が、積層されたものがコア601を構成している。607がクラッドとコアの界面における全反射臨界角、608がブラッグ角、さらに1次元周期構造が多層膜である場合、609が基本構造中の物質界面における全反射臨界角を表す。
【0042】
図6中において、クラッドとコアの界面における全反射臨界角θc−total、多層膜中の基本構造をなす各層の界面での全反射臨界角θc−multi、多層膜の周期性に起因するブラッグ角θの例を示してある。本明細書中ではこれらの角度は、膜の面に平行な方向から測られるものとする。図中の矢印X線の進行方向を示す。
【0043】
クラッドとコアの界面におけるクラッド側の物質の屈折率実部をnclad、コア側の物質の屈折率実部をncoreとした場合の、膜の面に平行な方向からの全反射臨界角θc−total(°)は、nclad<ncoreとして、下記の式(2)
【0044】
【数2】

【0045】
で表される。
【0046】
コアの1次元周期構造の周期をd、コアである1次元周期構造の平均屈折率実部をnavgとした場合、コア中での多重回折の有無に関わらず次の式(3)のようにおおよそのブラッグ角θ(°)が定義される。
【0047】
【数3】

【0048】
mは定数、λはX線の波長である。
【0049】
本発明のX線導波路を構成している物質の物性パラメータ、導波路の構造パラメータ、およびX線の波長は、次の式(4)を満たすように設計されているものとする。
【0050】
【数4】

【0051】
このことにより、1次元周期構造であるコアがもつ1次元周期性に起因するブラッグ角付近などの有効伝搬角度をもつ導波モードを、常にクラッドによりコアに閉じ込め、X線の伝搬に寄与させることができる。ここで、本明細書中において有効伝搬角度θ’(°)は、膜の面に平行な方向から測られる角度であり、導波モードの伝搬方向の波数ベクトル(伝搬定数)k、真空中の波数ベクトルkを用いて下記の式(5)で表されるものとする。連続条件によりkは各層の界面で一定なので、図7に示すように、導波モードの基本波の伝搬定数kと真空中の波数ベクトルk0Oとの間で定義される角度で、導波モードの基本波が真空中で進行する角度を、有効伝搬角度θ’(°)は表している。これは近似的にコア中での導波モードの基本波の伝搬角度を表すと考えることができるため、今後の説明に用いることとする。
【0052】
【数5】

【0053】
本発明のX線導波路は、1次元周期構造を多層膜として構成し、前記多層膜をなす各層の界面における全反射臨界角が、前記多層膜の周期性に起因するブラッグ角よりも小さくなるような前記複数の物質により前記多層膜が構成されているものとすることができる。
【0054】
本発明のコアをなす多層膜は、屈折率実部の異なる複数の物質の膜が周期的に積層されたものであるが、隣り合う膜界面において屈折率実部の違いによる全反射臨界角が存在する。多層膜をなす異なる屈折率実部の物質が3種類以上ある場合には、全反射臨界角は複数存在する場合があるが、それらを総じてθc−multi(°)とする。
【0055】
【数6】

【0056】
上記の式(6)のように、多層膜中の全反射臨界角が多層膜の周期性に起因するブラッグ角よりも小さい場合には、ブラッグ角付近以上の角度で多層膜中の界面に入射されるX線は全反射を起されず、部分的な反射または屈折を起こすこととなる。多層膜は複数の異なる屈折率実部の周期的に積層された膜により構成されているので、界面も積層方向に複数存在し、多層膜内部のX線はこれら界面において反射、屈折を繰り返すこととなる。本発明における多層膜は1次元の周期構造であるので、多層膜内部でのX線のこのような反射、屈折の繰り返しは多重干渉を引き起こす。その結果、多層膜の周期構造に共鳴できる条件をもつX線、すなわち多層膜内部で存在できる伝搬モードが形成され、本発明のX線導波路構造のコア中に導波モードが形成されることになる。これを周期共鳴導波モードと称する。特別な場合として、1次元周期構造をメソポーラス膜で構成した場合、θc−multiは存在しないので、この場合にも数(6)を満たすものとなる。
【0057】
このような周期共鳴導波モードはそれぞれ有効伝搬角度をもち、最も小さな有効伝搬角度をもつ周期共鳴導波モードの有効伝搬角度は多層膜のブラッグ角付近に現れることになる。周期共鳴導波モードは周期構造の周期性に共鳴するモードなので、本明細書中では周期共鳴導波モードと称することとする。これは多層膜を周期数無限の1次元フォトニック結晶として考えた場合の最低次バンドを満たす伝搬モードに相当し、この伝搬モードがクラッドとコアとの界面での全反射により閉じ込められたものとなる。
【0058】
現実の1次元周期構造では、その周期数は有限であるため、そのフォトニックバンド構造は無限周期の1次元周期構造のフォトニックバンド構造からずれてくるが、周期数が増えるほど導波モードの特性は無限周期のフォトニックバンド上のそれに近づくことになる。また、ブラッグ角は周期共鳴導波モードの有効伝搬角度よりやや大きい角度となるが、このブラッグ反射は周期性によるフォトニックバンドギャップの効果により引き起こされる。X線のエネルギーが一定として導波モードの有効伝搬角度を考えた場合、角度で見た場合のフォトニックバンドギャップ端の角度に相当する角度付近をもつ二つの導波モードが形成されることによる。これらのうち低角度側の有効伝搬角度をもつ導波モードが、最低次の周期共鳴導波モードである。周期共鳴導波モードの電場強度の空間的分布中で、電場強度の腹の数は基本的に、多層膜の周期数と一致する。高次のブラッグ角に相当する有効伝搬角度をもつ、高次の周期共鳴導波モードの腹の位置は、基本的に1次元周期構造の周期数の2以上の自然数倍となる。
【0059】
また有限の周期数をもつ多層膜においては、上記のような周期共鳴導波モードのもつ有効伝搬角度以外の角度をもつ導波モードも存在し得る。これらは周期共鳴導波モードではなくコアである多層膜全体を、屈折率実部が平均化された均一媒質として考えた場合に存在する導波モードで、その特性に基本的には多層膜の周期性の影響は少ない。一方、本発明のX線導波路の構成で実現される周期共鳴導波モードでは、周期構造の周期数が増えるほど、より多層膜であるコアの中心へ電場が集中し、クラッドへの染み出しも少なくなり、X線の伝搬損失が小さくなる。また、電場強度分布の包絡曲線はコアの中央に偏った形状となり、よりクラッドへのしみ出しによる損失が小さくなる。さらに、本発明のX線導波路中で用いられる周期共鳴導波モードの位相は、1次元周期構造の周期性の高い方向、つまりクラッドとコアの界面に垂直かつ導波方向に垂直な方向において、そろったものとなり、空間的なコヒーレンスを有することができる。本発明において導波モードの位相がそろうということは、導波方向に垂直な面内での電磁場の位相差が0であるということだけではなく、周期構造の空間的な屈折率分布に対応して電磁場の位相差が周期的に−πと+πの間で変化していることをも意味する。本発明における周期共鳴導波モードは、導波方向に垂直な方向において、電場の位相が周期構造の周期と同じ周期で−πと+πの間で変化しているものとなる。
【0060】
本発明のX線導波路の一実施態様は、図1に示す様に、クラッド101と102によりコア103が挟まれた構成となっており、クラッドとコアの界面における全反射によりX線をコアに閉じ込めるものである。
【0061】
コア103は、例えば界面活性剤と無機物の前駆体を含む溶液からゾルゲル法により作製されるラメラ膜(ラメラ構造体のメソ構造体膜)とすることができる。このラメラ膜は、厚さおよそ2ナノメートルのSiOと厚さおよそ8ナノメートルの有機物が交互に50周期積層されたものであり、周期は約10ナノメートルである。また、クラッド101、102としてAuを用いている。なお、本発明においては、前記複数の物質が周期的に積層された多層膜が有する周期性の周期数が20以上であることが好ましい。
【0062】
この場合、コア中の各層での全反射臨界角はおよそ0.08°であり、コアの周期性によるブラッグ角は式(3)からおよそ0.21°である。そのため、式(6)の条件θc−multi<θが満たされ、ブラッグ角付近の伝搬角のX線が多重干渉を起こすことができ、ブラッグ角付近の角度をもつ基本波のモードを形成することができる。また、クラッドとコアの界面での全反射臨界角θc−totalは式(2)により、およそ0.25°である。コアの周期性によるθはおよそ0.21°であるため、式(4)の条件であるθ<θc−totalという関係が満たされて、クラッドとコアの界面での全反射によりコアにX線を閉じ込めることができる。この構造は式(6)、式(4)の条件を満たすことができるので、周期共鳴導波モードを形成することができる。
【0063】
図1のX線導波路に関して、17.5キロエレクトロンボルトのX線に対して、数値計算によりコア中に形成される導波モードの有効伝搬角度と伝搬定数との関係を求めたものが図2に示す図である。図2は横軸:有効伝搬角度、縦軸:伝搬定数の虚部としてある。つまり伝搬に寄与するモードの損失の伝搬角度依存性を表すものである。伝搬定数の虚部は導波モードの減衰に関係する部分で、導波モードの損失を表すものと考えることができるからである。図中領域203と204の境目に相当する角度がコアとクラッドの界面における全反射臨界角である。203はクラッドとコアとの界面における全反射臨界角より小さい有効伝搬角度をもつ伝搬モードを表し、損失が小さい導波モードを表す角度範囲である。204はクラッドとコアとの界面における全反射臨界角より大きい有効伝搬角度となり損失が大きい放射モードとなる。
【0064】
また、全反射臨界角より小さい角度の有効伝搬角度をもつ203の領域において、201が最低次の周期共鳴導波モードであり、その損失は非常に小さくなり有効な導波モードとなることがわかる。この導波モード201の有効伝搬角より少しだけ大きい角度領域202にはモードが存在しておらず、この領域が多層膜のブラッグ反射の原因となるフォトニックバンドギャップである。ここで、図2中から得られる全反射臨界角およびブラッグ角付近の角度と、式(2)と式(4)から得られる全反射臨界角およびブラッグ角にはずれがある。これは実際の構造中ではX線の染み出しや複雑な干渉により光路長などが実際の構造のそれらとは異なってくるからである。
【0065】
また、この201の導波モードの空間的な電場強度分布を図3に示す。図3において、多層膜中の周期性の影響を受けることにより、周期性がない一様膜であるコアの場合に比べて、全体のエネルギーは多層膜のより中心に偏るとともに、クラッドへ染み出すX線も少なくなり伝搬損失を小さくすることができる。図3において、横軸を膜の面に垂直な方向すなわちy方向での位置とし、301と302がAuのクラッド101と102の部分に相当し、303はコア103に相当するものである。また、201の最低次の周期共鳴導波モードの電波強度分布から、電場強度の極大値の数は周期構造の周期数と一致し、多層膜中の吸収の少ない物質の部分へ電場が集中することになり、損失が低くなる。また、図2において201の導波モードの有効伝搬角度付近でこの導波モード以外に極端に損失の小さな導波モードが存在しないので、201の導波モードは他の導波モードと区別されてより励起されやすいものとなる。このことにより、201の導波モードの有効伝搬角度付近の導波モードを励起されたとしても得られる導波モードは201に相当する周期共鳴導波モードが支配的であり、その特性として位相がそろったものとなる。
【0066】
また本発明のX線導波路は、前記多層膜をなす各膜の界面における全反射臨界角が、前記多層膜の周期性に起因するブラッグ角よりも大きくなるような前記複数の物質により前記多層膜が構成されているものとすることもできる。
【0067】
この構成は、扱うエネルギーのX線に対し、
【0068】
【数7】

【0069】
を満たすものである。この条件下では、コアとクラッドとの界面における全反射により閉じ込められたX線は、さらに多層膜内部の各界面での全反射によりそれぞれの膜の中に閉じ込められることになる。この構成の場合、多層膜内部の界面において全反射が起こるので、多層膜を構成している物質の種類が2種類の場合、または3種類以上かつすべての界面で全反射が起こる場合、多層膜内部の界面での部分反射や屈折は起こらなくなり、多重干渉は起こらない。さらに、多層膜を構成している物質の種類が3種類以上で少なくとも1部分の界面において全反射が起こらない場合でも、多重干渉は起こらなくなる。そのため、周期性の現れであるブラッグ反射、また上記したような周期共鳴導波モードという考え方がなりたたなくなるため、得られる導波モードの有効伝搬角度はブラッグ角からははずれた角度であることも可能となる。
【0070】
またこの構成のコアの中に存在する導波モードは多層膜中の各膜に閉じ込められた個別の導波モードがエバネッセン波で結合した結果得られる連成モードとなる。そのために、コア中の最低次の導波モードでも特定の有効伝搬角度付近に多層膜の周期数だけの数のモードが存在することになる。これらのもつ有効伝搬角度は狭い角度範囲に存在するため、実験上得られる導波モードはこれらが混ざりあったものとなり、複数モードによる大きなエネルギー輸送が可能となる。また、これら導波モードの有効伝搬角度がある角度範囲に分散しているため、集光ビームや角度に広がりがあるビームを導波路に結合しやすくなる。さらに、多層膜内部の各膜にX線を閉じ込めるため、コア全体を導波路とするモードが存在しないので、必要のないモードを排除することができる。この構成の場合には、基本的に各低損失材料中にX線を全反射で閉じ込めるため、材料による吸収損失が小さくなる。
【実施例1】
【0071】
図4は、本発明の実施例1のX線導波路を示す概略図である。Si基板401上にスパッタでタングステンを成膜したものを下部クラッド402とし、その上にゾルゲル法により多層膜であるラメラ膜のコア404を作製し、さらにスパッタで上部クラッド403を形成したものである。
【0072】
本実施例では、ラメラ構造をもつメソ構造体膜(ラメラ膜)の無機物が酸化ケイ素である。このラメラ膜の作製方法としては、以下のような工程が例として挙げられる。
【0073】
(a)メソ構造体膜の前駆体溶液調製
ラメラ構造を持つ酸化ケイ素メソ構造体膜は、ディップコート法で調製される。メソ構造体の前駆体溶液は、エタノール、0.01M塩酸、テトラエトキシシランを加え20分間混合した溶液にブロックポリマーのエタノール溶液を加え、3時間攪拌することで調製される。なお、ブロックポリマーは、エチレンオキサイド(20)プロピレンオキサイド(70)エチレンオキサイド(20):(以降、EO(20)PO(70)EO(20)と記載する(カッコ内は、各ブロックの繰り返し数))である。エタノールにかえてメタノール、プロパノール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリルを使用することも可能である。混合比(モル比)は、テトラエトキシシラン:1.0、塩酸:0.0011、エタノール:5.2、ブロックポリマー:0.026、エタノール:3.5とする。溶液は、膜厚調整の目的で適宜希釈して使用する。
【0074】
(b)メソ構造体膜の製膜
洗浄した基板に、ディップコート装置を用いて0.5から2mms−1の引き上げ速度でディップコートを行う。このときの温度は、25℃、相対湿度は、40%である。製膜後、膜は、25℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽で24時間保持される。
【0075】
(c)評価
調製されたメソ構造体膜をブラッグ−ブレンターノ配置のエックス線回折分析を行う。その結果、このメソ構造体膜は,基板面の法線方向に高い秩序性をもち、その面間隔は、およそ10.24nmであることが確認される。
【0076】
コア404が下部クラッド402および403により挟まれた形となっており、コア404とクラッド402の界面、コア404とクラッド403の界面での全反射により特定のエネルギーのX線をコア404に閉じ込めるものである。コア404のラメラ膜は、SiOと有機物が厚さそれぞれ約3.1ナノメートルと、約7.2ナノメートルで交互に50層積層された構造で、その周期はおよそ10.24ナノメートルとなる。
【0077】
この構成によれば、コア404である多層膜の周期と、それをなす物質の屈折率実部の関係が式(6)を満たしている。そのために、12.4キロエレクトロンボルトのX線は、コアとクラッドの界面における全反射臨界角が約0.35°以下の角度であるブラッグ角0.28°付近の有効伝搬角度で伝播され、クラッドとコアの界面における全反射によりコア404に閉じ込められる。つまり、導波路に導波モードが励起される。
【0078】
この導波モードは、コア中での多重干渉の結果得られる周期共鳴導波モードである。図5は周期共鳴導波モードの電場強度分布である。図5中、501はSi基板の一部分、502は下部クラッド、503はコア、504は上部クラッド、505は空気の一部に相当する領域である。電場強度の極大値の数は多層膜の周期数に一致し、その値は、構造性の非対称性による偏りは見られるがコアの中心付近ほど強くなっていることがわかる。また、この導波モードは損失が小さいので効率の良い導波路を実現できることになる。
【実施例2】
【0079】
本発明の実施例2は、実施例1のX線導波路のコアを、無機物の部分が酸化チタンであるラメラ膜としたものである。本実施例のラメラ膜であるラメラ構造を有するメソ構造体膜の作製方法を以下説明する。
【0080】
(a)メソ構造体膜の前駆体溶液調製
ラメラ構造を持つ酸化チタン素メソ構造体膜は、ディップコート法で調製される。メソ構造体の前駆体溶液は、テトラエトキシチタンを濃塩酸に加え5分間混合した溶液にブロックポリマーEO(20)PO(70)EO(20)のエタノール溶液を加え、3時間攪拌することで調製される。エタノールにかえてメタノール、プロパノール、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリルを使用することも可能である。混合比(モル比)は、テトラエトキシチタン:1.0、塩酸:1.8、ブロックポリマー:0.029、エタノール:14とする。溶液は、膜厚調整の目的で適宜希釈して使用する。
【0081】
(b)メソ構造体膜の製膜
洗浄した基板に、ディップコート装置を用いて0.5から2mms−1の引き上げ速度でディップコートを行う。このときの温度は、25℃、相対湿度は、40%である。製膜後、膜は、25℃、相対湿度50%の恒温恒湿槽で2週間保持される。
【0082】
(c)評価
調製されたメソ構造体膜をブラッグ−ブレンターノ配置のエックス線回折分析を行う。その結果、このメソ構造体膜は,基板面の法線方向に高い秩序性をもち、その面間隔は、およそ11nmであることが確認される。
【0083】
前記コアと前記クラッドの界面での全反射臨界角は約0.3度で、前記多層膜の周期性に起因するブラッグ角は約0.19°である。
【0084】
このX線導波路の構成によれば、ブラッグ角約0.19°付近の有効伝搬角をもつ導波モードを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のX線導波路は、シンクロトロンなどから出力されるX線を操作するためのX線光学系、X線撮像技術、X線露光技術などにおけるX線光学系などに用いられる部品などのX線光学技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
101 クラッド
102 クラッド
103 コア
201 最低次の周期共鳴導波モードを表す点
202 フォトニックバンドギャップに相当する領域
203 導波モードを表す領域
204 放射モードを表す領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の屈折率実部が1以下となる波長帯域のX線を導波させるためのコアと、前記コアに前記X線を閉じ込めるためのクラッドと、を備えるX線導波路であって、
前記コアは、屈折率実部が異なる複数の物質を含む1次元周期構造を有し、
前記複数の物質は、有機物または気体または真空と、無機物と、を含み、
前記コアと前記クラッドは、該コアと該クラッドの界面での全反射臨界角が前記1次元周期構造の周期性に起因するブラッグ角よりも大きくなるように構成されていることを特徴とするX線導波路。
【請求項2】
前記1次元周期構造が多層膜を含み、
前記多層膜は、該多層膜の各層の界面における全反射臨界角が該多層膜の周期性に起因するブラッグ角よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のX線導波路。
【請求項3】
前記1次元周期構造が多層膜を含み、
前記多層膜は、該多層膜の各層の界面における全反射臨界角が該多層膜の周期性に起因するブラッグ角よりも大きくなるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のX線導波路。
【請求項4】
前記無機物は、酸化物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線導波路。
【請求項5】
前記多層膜は、メソ構造体であるラメラ膜であることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載のX線導波路。
【請求項6】
前記1次元周期構造がメソポーラス材料を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のX線導波路。
【請求項7】
前記1次元周期構造の周期数は、20以上であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のX線導波路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−14153(P2012−14153A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101309(P2011−101309)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】