説明

X線源

【課題】 高出力化を可能にするX線源を提供する。
【解決手段】 X線源1は、高圧電源部17と、X線管27と、高圧電源部17から突出して設けられX線管27を包囲する金属筒29と、この高圧電源部17及び金属筒29を格納する筐体3と、を備えている。筐体3には、冷却ファン55aが設けられており、筐体3の内部において金属筒29の周囲で冷却風を流動させることで、高温となるX線管27を収容する金属筒29を効率的に冷却することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、マイクロフォーカスX線源として利用されるX線源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、非特許文献1に記載のマイクロフォーカスX線源(浜松ホトニクス株式会社製、製品番号L9181S)が知られている。このマイクロフォーカスX線源は、電子銃からの電子をターゲットに衝突させ、発生したX線を照射窓を介して外部に照射させるX線管を備えたタイプのX線源である。このマイクロフォーカスX線源は、検査対象物を透過したX線による透過画像に基づいて検査対象物の異常を発見するX線非破壊検査装置に用いられている。
【非特許文献1】マイクロフォーカスX線源シリーズ,浜松ホトニクス株式会社,平成16年4月,p.1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この種のマイクロフォーカスX線源は、出力が高くなるほど運転時におけるX線管からの発熱が大きくなり、X線管が高温になる。そして、X線管が高温になることによる出力低下が発生するので、X線源の高出力化を図ろうとすれば、X線管をより高い効率で冷却することが必要となる。上記のX線源では、制御基板等を格納する筐体からX線管を収容するX線管包囲部を露出させる構造によって、X線管からの熱を放散し易くしている。その上で、さらに冷却効率を高める方法の一つとして、運転中には、外付けの冷却ファンにより、露出したX線管包囲部に冷却風を送ることでX線管が冷却されている。ところが、この場合、冷却ファンからの冷却風が拡散し、X線管包囲部に冷却風を集中的に当てることが困難であるため、X線管の冷却を十分に図ることが出来なかった。さらに、X線管の冷却にムラが発生するため、出力の不安定化や出力の低下を招き易くなり、このX線源を容易に高出力化することができなかった。
【0004】
X線源の出力が低い場合には、X線の照射量が少ないため、X線非破壊検査装置の場合に、明瞭な透過画像を得ることができず、精度が高い検査が困難である。特に、搬送ライン上で流通する検査対象物を高速で透視検査する場合には、X線を照射できる時間を短く設定する必要があるので、X線源の出力が低い場合には明瞭な透過画像が得られなかった。
【0005】
そこで、本発明は、高出力化を可能にするX線源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明のX線源は、絶縁材料でモールドされた高圧電源部と、高圧電源部からの電力によってX線を外部に照射するX線管と、高圧電源部から突出して設けられ、X線管の少なくとも一部を包囲するX線管包囲部と、高圧電源部及びX線管包囲部を格納する筐体と、筐体の内部においてX線管包囲部の周囲で冷却風を流動させる冷却ファンと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
このX線源では、冷却ファンにより発生する冷却風は筐体内を流動することになるので、この冷却風をX線管包囲部の周囲に効率良く、ムラなく接触させることができる。このため、X線管で発生する熱をX線管包囲部から効率よく除去し、X線管を効率よく冷却することができるので、X線源の高出力化が可能となる。
【0008】
また、筐体は、X線管からのX線を照射する照射部を有する第1の壁と、第1の壁に対して略直交する方向に延びると共に冷却ファンが設けられた第2の壁と、第1の壁と第2の壁とを連結する傾斜壁と、を有することが好ましい。この場合、第1の壁と第2の壁を連結する壁を傾斜壁とすることで、筐体内でスムーズな冷却風の流れを出現させることができ、その結果として、効率よくX線管包囲部を冷却することができる。
【0009】
また、X線管包囲部の外周には、X線管で発生する熱を放散させる冷却フィンが設けられていることが好ましい。この場合、冷却フィンによって、X線管包囲部とその周囲を流動する冷却風との接触面積が大きくなるので、X線管包囲部を効率良く冷却することができる。
【0010】
また、本発明のX線源は、筐体が、高圧電源部とX線管とX線管包囲部とを有するX線発生部が収容されると共に冷却ファンが設けられたX線発生部収容空間と、X線発生部を制御する制御部を収容する制御部収容空間と、を内部に有しており、筐体内には、X線発生部収容空間と制御部収容空間との間に位置する仕切壁が設けられてもよい。この場合、X線発生部の冷却後に高温となった冷却風が、制御部の方向へ流動することを、仕切壁によって抑制することができるので、制御部の温度上昇を抑制することができる。その結果として、制御部の動作を安定させることができる。
【0011】
また、仕切壁は、X線管包囲部と制御部との間を仕切り、仕切壁には、X線発生部収容空間と制御部収容空間とを連通する通風口が設けられてもよい。この場合、X線管包囲部の冷却後に高温となった冷却風が、制御部へ直接流入することが抑制できると同時に、冷却ファンによって発生する冷却風の一部が開口を通じて制御部に流入し、制御部の冷却に寄与することとなる。
【0012】
また、本発明のX線源は、仕切壁が、X線発生部収容空間と制御部収容空間とを区画してもよい。この場合、冷却ファンによりX線発生部収容空間に集中的に冷却風を流動させることにより、X線発生部を集中的に冷却することができる。
【0013】
また、本発明のX線源では、筐体の制御部収容空間側に、別の冷却ファンが更に設けられていてもよい。この場合、X線発生部収容空間を冷却ファンにより集中的に冷却し、制御部収容空間を別の冷却ファンにより集中的に冷却することができる。よって、両空間をそれぞれ個別に冷却することで、X線発生部及び制御部を効率よく冷却することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、X線源の高出力化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るX線源の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0016】
(第1実施形態)
図1及び図2に示すように、X線源1は、電子銃からの電子をターゲットに衝突させ、発生したX線を照射窓を介して外部に照射させるX線管を備えたタイプのX線源であり、例えば、X線非破壊検査装置におけるX線源として用いられる。このX線源1の筐体3内部には、X線を発生させ且つ照射させるX線発生部5と、そのX線発生部5を制御する制御部7とが格納されている。筐体3の内部空間は、X線発生部5を収容するX線発生部収容空間R1と、制御部7を収納する制御部収容空間R2とから構成されており、X線発生部収容空間R1と制御部収容空間R2との間には、筐体3の上部内壁から下方に向けて延びる仕切壁15が設けられている。
【0017】
図3に示すように、X線発生部5は、筐体3の底板3aに固定された高圧電源部17と、この高圧電源部17から電力の供給を受けてX線を照射するX線管27と、このX線管27の一部を包囲する金属筒(X線管包囲部)29とを備えている。この高圧電源部17は、高電圧を発生させ得る高圧トランス19と、高圧トランス19で発生した高電圧を増倍させてX線管27に供給する高圧供給回路23と、高圧トランス19と高圧供給回路23とを連結する接続線25aと、高圧供給回路23とX線管27とを連結する接続線25bとを備えている。そして、高圧供給回路23と、接続線25a,25bとは、電気絶縁性材料(例えば、エポキシ樹脂)からなる絶縁ブロック21中にモールドされており、高圧トランス19は、絶縁ブロック21の側面で制御部7側に突出して設けられている。このような高圧電源部17の構造によって、高電圧が印加される高圧供給回路23、接続線25a,25bからの外部への放電が防止されている。
【0018】
この高圧電源部17の上方に位置するX線管27は、反射型ターゲットタイプのものであり、棒状の陽極27bを絶縁状態に保持して収容したバルブ部27aと、棒状陽極27bの端部に設けられたターゲット27cを収容したターゲット収容部27dと、ターゲット27cの反射面に向けて電子線を出射する電子銃27kを収容した電子銃部27eとを備えている。
【0019】
このバルブ部27aとターゲット収容部27dとは同軸に配置されており、この軸線に対して電子銃部27eの軸線は略直交している。また、棒状陽極27bの基端部は、高電圧印加部27gとしてバルブ部27aの下部から下方に突出している。
【0020】
この高電圧印加部27gの下部にはソケット33が結合されており、ソケット33は、高圧電源部17の接続線25bを介して高圧供給回路23に接続されている。このような構成により、X線管27には、接続線25bを介して高圧供給回路23から高電圧が供給される。そして、X線管27が高電圧の供給を受けた状態で、電子銃部27e内の電子銃27kがターゲット27cに向けて電子を出射すると、ターゲット27cからX線が発生し、このX線がターゲット収容部27dの開口部に設けられたX線照射窓27hから照射される。
【0021】
なお、X線管27は、その内部を真空にして封止された密封型のものである。例えばX線管27には、図示しない排気管が設けられており、この排気管を介してバルブ部27a、ターゲット収容部27d及び電子銃部27eの内部が真空引きされた後、排気管を封止することによって密封される。
【0022】
金属筒29は、高圧電源部17の上面から上方に突出して設けられており、X線管27を包囲する円筒形に形成されている。金属筒29は、X線管27から発生する熱を効率よく放散させるために、放熱性に優れた金属(例えば、アルミニウム)からなると共に、水平方向に延びる複数の冷却フィン29aが周囲に設けられている。冷却フィン29aは、金属筒29の周面で円周方向に延びる凸条部として設けられ、金属筒29の表面積を拡大するものであり、X線管27から発生する熱を効率よく放散させることができる。
【0023】
この金属筒29の先端面には開口29jが形成され、この開口29jからX線管27のバルブ部27aが挿入され、金属筒29の内部空間には、液状の電気絶縁性物質である絶縁オイル31が注入されている。そして、X線管27のバルブ部27aとターゲット収容部27dとの間には取付フランジ27fが形成されており、この取付フランジ27fによってX線管27は金属筒29の先端面に固定され、バルブ部27aは絶縁オイル31に浸漬されている。この絶縁オイル31の採用によって、X線管27のバルブ部27aが絶縁オイル31で包囲され、X線管27からの外部への放電が防止されている。
【0024】
続いて、制御部7について説明する。図1及び図4に示すように、制御部7は、制御部収容空間R2内に設けられ、第1回路基板35、第2回路基板37、及び駆動電源部39を有している。この第1回路基板35は、高圧電源部17で発生させ得る電圧を、高電圧(例えば160kV)から低電圧(例えば0V)までコントロールしている。更に、第1回路基板35は、電子銃部27eにおける電子の放出のタイミングや管電圧、管電流などのコントロールを行う。第2回路基板37は、外部からの制御信号に基づいて第1回路基板35の動作をコントロールする。駆動電源部39は、外部から供給される電力をAC/DC変換(またはDC/DC変換)するコンバータであり、これら第1回路基板35及び第2回路基板37に駆動電力を供給すると共に、X線発生部5の高圧トランス19に高電圧を発生させるための電力を供給する。なお、これらの第1回路基板35、第2回路基板37、駆動電源部39及びX線発生部5は、適宜、図示しない配線によって互いに電気的接続が図られている。
【0025】
この制御部7にあっては、第1回路基板35、第2回路基板37及び駆動電源部39が、制御部収容空間R2内にコンパクトに収容され、かつ、確実に固定されることが好ましい。このため、制御部7には、制御部収容空間R2内に、導熱性の金属(例えば、アルミニウム)からなる回路基板ホルダー49が設けられ、この回路基板ホルダー49に、第1回路基板35、第2回路基板37、及び駆動電源部39が支持された構造をなしている。
【0026】
回路基板ホルダー49は、導熱性の金属からなる第1プレート(第1の部材)45と、第2のプレート(第2の部材)47とからなる。第1プレート45は、底板3aに対して傾斜して立設させた第1平板部46を有しており、第2プレート47は、底板3aに対して略垂直に立設させた第2平板部48を有している。この第1プレート45及び第2プレート47は、下端がネジ49aによってそれぞれ底板3aに固定されており、プレート45,47の上端同士が重ねられた状態でネジ(締結手段の一例)49bによって連結されている。
【0027】
そして、第1平板部46は、第1回路基板35を取り付けるための第1取付面45aを有しており、第2平板部48は、第2回路基板37を取り付けるための第2取付面47b及び第2取付面47bの裏面である第3取付面47cを有している。このように回路基板ホルダー49は山形構造をなすことで、回路基板ホルダー49自体の機械的強度を維持しつつ、回路基板ホルダー49に取り付けられる回路基板35,37を底板3aに対して確実に固定することができる。
【0028】
また、第2プレート47の下部は、筐体3の側壁3fに近づくようにL字状に屈曲しており、高圧電源部17の高圧トランス19は第2プレート47と第1プレート45との間に位置するようになっている。
【0029】
第1回路基板35は、スペーサ51を介して第1プレート45の第1取付面45aに沿って取り付けられている。同様に、第2回路基板37は、スペーサ51を介して第2プレート47の第2取付面47bに沿って取り付けられ、駆動電源部39は、第2プレート47の第3取付面47cに沿ってスペーサ51を介して取り付けられている。
【0030】
この回路基板ホルダー49の第1取付面45aは、底板3aに対して傾斜して設けられているので、第1回路基板35を傾けたまま制御部収容空間R2に収めることができ、X線源1の低背化に寄与している。また、回路基板ホルダー49が第1プレート45及び第2プレート47の2部材で構成されていることから、第1〜第3取付面45a,47b,47cに回路基板35,37及び駆動電源部39を取り付けた後に、第1プレート45と第2プレート47とをネジ止めによって連結させることで駆動電源部39を第1プレート45と第2プレート47との間に配置し、回路基板ホルダー49を完成させることができるので、制御部7の組付け作業性が向上する。
【0031】
このようなX線源1は、運転中に、X線管27が発熱するので、X線管27及び金属筒29が高温となってしまう。このX線管27の発熱は、X線照射の出力が高いほど大きくなり、X線管27が高温になると、他の部品に悪影響を及ぼすと共に、X線管27の出力低下を招いてしまうので、X線管27を効率よく冷却すべく金属筒29を効率よく冷却する必要がある。
【0032】
そこで、X線源1においては、図1に示すように、金属筒29を含むX線発生部5を筐体3の内部へ格納し、筐体3の底板3aに対し直交する方向に起立する側壁(第2の壁)3bに冷却ファンユニット55を設け、筐体3内で冷却風を流動させることによって、金属筒29を冷却することにしている。
【0033】
図1及び図4に示すように、この筐体3は、底板3aに平行に延びると共に、X線管27からのX線を外部に照射するための開口(照射部)3jが設けられた上壁(第1の壁)3cを有している。この開口3jは、X線管27の照射窓27hに対応する位置に設けられ、照射窓27hを外部に露出させている。また、筐体3では、上壁3cと側壁3bとを連結する壁が傾斜壁3dとして形成されている。更に、側壁3bに対向する側壁3fと、上壁3cと、を連結する壁も同様に傾斜壁3eとされている。上壁3cに対する傾斜壁3dと傾斜壁3eとの傾斜の程度は、互いに異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0034】
冷却ファンユニット55は上述のように筐体3の側壁3bに設けられており、側壁3bに垂直な軸線を中心として回転する冷却ファン55aを有している。冷却ファン55aは回転することにより、筐体3外部から内部へ向けて空気を流動させる。冷却ファン55aは、冷却風が直接X線発生部5に当たるようにX線発生部5の近傍に位置している。
【0035】
この冷却ファン55aにより筐体3の内部に取り込まれた空気は、冷却風としてX線発生部収容空間R1で流動し、金属筒29にムラなく当たりながら、金属筒29の周囲を通過しつつ、側壁3fの方向に流れていくことになる。そして、金属筒29の周囲を通過する冷却風は、冷却フィン29aにより案内されて円滑に水平方向に流動しながら、十分な接触面積をもって金属筒29に接触し、金属筒29から効率よく熱を除去していく。その結果、金属筒29を効率よく冷却することができ、金属筒29に包囲されたX線管27を効率よく冷却することができる。そして、金属筒29がムラなく冷却風に接触し、冷却されるので、X線管27の温度ムラによる出力変動や出力低下を抑制することができる。その後、金属筒29から熱を受け取って温度が上昇した冷却風は、傾斜壁3eに設けられた排気口3kを通じて外部に排出される。
【0036】
このとき、上壁3cと側壁3bとを連結する壁が傾斜壁3dとされていることから、冷却風の淀みが抑制され、筐体3内でのスムーズな冷却風の流れを出現させることができる。その結果として、金属筒29の周囲にスムーズに冷却風が流動し、効率よく金属筒29を冷却することができる。なお、筐体3の上壁3cと側壁3fとを連結する壁も同様に傾斜壁3eとされているので、このことも冷却風のスムーズな流動に寄与している。以上のように、X線源1では、金属筒29を効率よく冷却することで、X線管27を効率よく冷却できるので、X線源の高出力化が可能となる。
【0037】
なお、X線源1は、制御部収容空間R2側の側壁3bの一部に、パソコン等と接続されるコネクタ部(図示せず)を有しており、X線源1にはこのコネクタ部を介してパソコン等からの制御情報等に関する信号の入出力が行われる。底板3aを除いた筐体3のうち、冷却ファンユニット55やコネクタ部(図示せず)は、制御部7等との配線接続を有しているので、筐体3の他の部位と別部材になっていると、X線源1の整備等の面において好ましい。本実施形態においては、冷却ファンユニット55やコネクタ部(図示せず)は、底板3aに固定されて制御部7と配線接続されている。
【0038】
なお、X線源1の筐体3には、傾斜壁3d及び傾斜壁3eが形成されていることで、以下のような効果も得られる。この傾斜壁3d,3eが形成されない場合には、上壁3cと側壁3b、3fとの間に角部が形成されることになる。ここで、そのようなX線源によって検査対象物を傾けた状態の透視画像を取得する場合には、傾けた検査対象物が角部に当たるため、照射窓27hと検査対象物とを十分に近接させることが出来ない。これに比してX線源1にあっては、角部に邪魔されることなく、検査対象物をより照射窓27hに近接させることができる。このため、より拡大率の大きい検査対象物の透視画像を得ることができる。
【0039】
また、このようなX線源1にあっては、制御部7の第1及び第2回路基板35、37及び駆動電源部39には様々な電子部品が実装されている。各部品の動作特性を安定させるにあたって、これらの部品を冷却することが必要である。特に、駆動電源部39は、AC/DC変換(またはDC/DC変換)を行う際に大量の熱を発生するので、効率的に冷却することが必要である。
【0040】
そこで、筐体3における仕切壁15は、X線発生部収容空間R1と制御部収容空間R2とを完全に仕切らずに、金属筒29と制御部7との間を仕切り、仕切壁15の下方には、X線発生部収容空間R1と制御部収容空間R2とを連通する通風口59が設けられている。このように、金属筒29と制御部7との間が仕切壁15によって仕切られているため、金属筒29の冷却後に高温となった冷却風が、制御部収容空間R2へ直接流入することが抑制できる。また、金属筒29から発せられる放射熱が仕切壁15によって遮断され、制御部7に直接伝播されることが抑制できる。その結果、制御部7の温度上昇を抑制することができ、制御部7の各回路基板35,37の動作を安定させることができる。それと同時に、通風口59によってX線発生部収容空間R1と制御部収容空間R2とが連通されていることから、冷却ファン55aによって発生する冷却風の一部が通風口59を通じて制御部収容空間R2に流入するので、この冷却風によって制御部7を冷却することができる。
【0041】
このとき、回路基板ホルダー49が上述のように構成されていることから、図4に示すように、制御部収容空間R2には、第1プレート45と第2プレート47と底板3aとで囲まれたトンネル部R2aが出現する。このトンネル部R2aは、冷却風が通風口59を通じて流入して来る方向(図4の紙面に垂直な方向)に延びているので、冷却風の通風路として機能する。従って、トンネル部R2aに集中するような、スムーズな冷却風の流動が発生する。そして、このトンネル部R2a内には、駆動電源部39が存在しているので、駆動電源部39で発生する熱が冷却風によって効率よく除去され、駆動電源部39を集中的に且つ効率良く冷却することができる。その結果、駆動電源部39の動作特性を安定させることができる。
【0042】
また、高圧トランス19は、制御部17の方向に向かって絶縁ブロック21から突出して設けられており、トンネル部R2a内に位置することから、高圧トランス19も、このトンネル部R2aを流動する冷却風に接触することとなる(図2参照)。よって、高温となる高圧トランス19もこの冷却風によって効率よく冷却される。そして、駆動電源部39及び高圧トランス19から熱を受け取って温度が上昇した冷却風は、筐体3の側壁3gに設けられた排気口3h(図1及び図2参照)を通じて外部に排出される。
【0043】
また、このとき、通風口59を通じて制御部収容空間R2に流入して来た冷却風は、その一部が回路基板ホルダー49の外側の空間R2bにも流入し、この外側空間R2bで構成された通風路内には、第1回路基板35及び第2回路基板37が存在しているので、空間R2bを流動する冷却風によって回路基板35,37が冷却される。
【0044】
このように、第1回路基板35及び第2回路基板37を冷却する冷却風と、駆動電源部39及び高圧トランス19を冷却する冷却風とがそれぞれ別の通風路を流動することから、これらの冷却風が混合されることが回路基板ホルダー49によって抑制される。これにより、大量の熱を発生する駆動電源部39及び高圧トランス19が効率よく冷却される一方で、駆動電源部39及び高圧トランス19の冷却により温度が上昇した冷却風がトンネル部R2aへ流入して第1回路基板35及び第2回路基板37の温度が却って上昇してしまうことを抑制することができる。その結果、第1回路基板35及び第2回路基板37の各部品の動作特性を安定させることができる。
【0045】
なお、これらの第1回路基板35、第2回路基板37及び駆動電源部39は、スペーサ51を介して各取付面45a,47b,47cから浮いた状態で取り付けられていることから、冷却風が、第1回路基板35、第2回路基板37及び駆動電源部39の表裏双方に接触することになる。よって、このような取り付け方も、第1回路基板35、第2回路基板37及び駆動電源部39の効率の良い冷却に寄与している。
【0046】
また、第1回路基板35の部品の中で、パワートランジスタ61(図2参照)は、比較的大きい熱を発生するので、第1回路基板35から離し、高圧電源部17と冷却ファンユニット55との間に設けられた金属製のヒートシンク63に密着させて設置されている。このとき、パワートランジスタ61は、図示しない配線により第1回路基板35と電気的に接続されることで、第1回路基板35の一部品として機能する。このような配置により、ヒートシンク63が冷却ファン55aからの冷却風を受けて冷却され、ヒートシンク63に密着したパワートランジスタ61が間接的に冷却される。このように、特に大きい熱を発生する部品を回路基板本体側から遠ざけて個別に冷却することにより、効果的に制御部7の温度上昇を抑制することができる。
【0047】
(第2実施形態)
図5に示すように、X線源71は筐体73を備えている。この筐体73には、X線発生部収容空間R1と制御部収容空間R2とを仕切る仕切壁75が、筐体73の内壁から延びて形成されている。すなわち、筐体73の内部空間は、仕切壁75によって、X線発生部収容空間R1と制御部収容空間R2とに区画されており、両空間の間では、互いに冷却風が流入、流出しないようになっている。このようなX線源71の構成によれば、冷却ファン55aによってX線発生部収容空間R1内に冷却風を流動させ、金属筒29を含むX線発生部5を集中的に冷却することができると共に、高温となった冷却風が制御部収容空間R2へ流入することを確実に抑制することができる。
【0048】
また、X線源71は、筐体73の制御部収容空間R2側に、冷却ファンユニット55とは別の冷却ファンユニット77を備えている。この冷却ファンユニット77と、他の冷却ファンユニット55とは並置されており、冷却ファン77aで発生する冷却風が直接第1回路基板35に当たるように、第1回路基板35の近傍に冷却ファン77aを配置している。このような構成により、冷却ファン55aによってX線発生部収容空間R1内に冷却風を流動させ、X線発生部5を集中的に冷却すると同時に、冷却ファン77aによって制御部収容空間R2内に冷却風を流動させ、制御部7を集中的に冷却することができる。このように、X線発生部収容空間R1と制御部収容空間R2とをそれぞれ個別に冷却することで、金属筒29を含むX線発生部5及び駆動電源部39を含む制御部7を効率よく冷却することができる。なお、この場合、パワートランジスタ61及びパワートランジスタ61を冷却するための金属製のヒートシンク63は、制御部収容空間R2の冷却ファン77aの近傍に配置すると、冷却効率が高くなり好ましい。
【0049】
以上のように、X線源71によっても、金属筒29を効率よく冷却することで、X線管27を効率よく冷却できるので、X線源の高出力化が可能となり、制御部7の駆動電源部39を効率よく冷却することで、駆動電源部39の各部品の動作特性を安定させることができる。
【0050】
(第3実施形態)
図6に示すように、X線源91における制御部7は、互いに独立したプレート81,83で構成される回路基板ホルダー85を介して回路基板35,37を底板3aに固定する構造をなしている。このようなX線源91によっても、プレート81とプレート83との間の空間を流動する冷却風によって、駆動電源部39が効率よく冷却される。なお、このプレート81,83は、上壁3cに達するまで延び、上壁3cに接触してもよい。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、冷却ファン55a,77aとして、筐体の外部から内部へ空気を送り込む吸気タイプの冷却ファンを用いているが、冷却ファン55a,77aは、筐体の内部から外部へ空気を送り出す排気タイプであってもよい。
【0052】
また、冷却ファン55aの配置は側壁3bに限らず、筐体3の内部において金属筒29の周囲で冷却風を流動させるような位置であれば、他の部位に設けてもよい。例えば、筐体3に通風口を設け、その通風口の近傍かつ筐体3内部に冷却ファンを配置することで、金属筒29の周囲で冷却風を流動させてもよい。
【0053】
また、X線発生部収容空間R1及び制御部収容空間R2のそれぞれに、複数の冷却ファンを設けてもよい。この場合、吸気タイプの冷却ファンと、排気タイプの冷却ファンとを組合せて設けることができる。例えば、X線発生部収容空間R1の、側壁3bの冷却ファン55aに加えて、その略対向する側の壁(特に傾斜壁3e)に排気タイプの冷却ファンを更に設けることができる。また、例えば、制御部収容空間R2の、側壁3bの冷却ファン77aに加えて、その略対向する側の壁(特に側壁3f)や、側壁3gに排気タイプの冷却ファンを更に設けることができる。
【0054】
また、X線発生部収容空間R1と制御部収容空間R2とが区画されない場合において、X線発生部収容空間側R1に吸気タイプの冷却ファンを設け、制御部収容空間R2側に排気タイプの冷却ファンを設けてもよく、X線発生部収容空間側R1に排気タイプの冷却ファンを設け、制御部収容空間R2側に吸気タイプの冷却ファンを設けてもよい。例えば、X線発生部収容空間R1側の吸気タイプの冷却ファン55aに加えて、制御部収容空間R2に冷却ファンを設ける場合、駆動電源部39を有するトンネル部R2aの空気を筐体外にスムーズに送り出せるように、側壁3gに排気タイプの冷却ファンを配置してもよい。
【0055】
また、X線管27は反射型ターゲットタイプでなく、透過型ターゲットタイプであってもよい。また、X線管27は、全体が金属筒29に収容されてもよく、この場合、X線管からのX線を外部へ照射するために、金属筒29には、X線透過性の高い部位を設けることができる。また、X線管27の一部は、金属筒29から突出し、かつ、更に筐体3から突出していてもよい。X線管27を包囲する金属筒29には、冷却フィン29aが設けられなくてもよい。
【0056】
また、回路基板ホルダー49は、ネジ止めに限らず、溶接や接着によって底板3aに固定されてもよい。また、回路基板ホルダー49は、筐体3の底板3a以外の部分に固定されてもよく、筐体3に固定された部材に固定されてもよい。また、第1プレート45と第2プレート47とは、ネジ止めに限らず、溶接や接着によって連結されてもよい。回路基板ホルダー49は、1部材からなるもの又は第1プレート45と第2プレート47との2部材からなるものに限らず、更に多数の部材を組み合わせて形成されてもよい。この場合、平板からなる多数の部材を組み合わせて回路基板ホルダーを形成することで、屈曲の加工を省略することもできる。また、回路基板ホルダー49は導熱性の金属に限らず、樹脂製であっても良い。
【0057】
また、以上に述べた各構成は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、互いに組合せることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係るX線源の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示したX線源の正面図である。
【図3】図1に示したX線源のX線発生部の断面図である。
【図4】図1に示したX線源の制御部の断面図である。
【図5】本発明に係るX線源の第2の実施形態を示す正面図である。
【図6】本発明に係るX線源の第3の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0059】
1,71,91…X線源、3,73…筐体、3c…上壁(第1の壁)、3b…側壁(第2の壁)、3d…傾斜壁、3j…開口(照射部)、5…X線発生部、7…制御部、15…仕切壁、17…高圧電源部、27…X線管、29a…冷却フィン、29…金属筒(X線管包囲部)、55a,77a…冷却ファン、59…通風口、75…仕切壁、R1…X線発生部収容空間、R2…制御部収容空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材料でモールドされた高圧電源部と、
前記高圧電源部からの電力によってX線を外部に照射するX線管と、
前記高圧電源部から突出して設けられ、前記X線管の少なくとも一部を包囲するX線管包囲部と、
前記高圧電源部及び前記X線管包囲部を格納する筐体と、
前記筐体の内部において前記X線管包囲部の周囲で冷却風を流動させる冷却ファンと、を備えたことを特徴とするX線源。
【請求項2】
前記筐体は、
前記X線管からの前記X線を照射する照射部を有する第1の壁と、
前記第1の壁に対して略直交する方向に延びると共に前記冷却ファンが設けられた第2の壁と、
前記第1の壁と前記第2の壁とを連結する傾斜壁と、を有することを特徴とする請求項1に記載のX線源。
【請求項3】
前記X線管包囲部の外周には、前記X線管で発生する熱を放散させる冷却フィンが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線源。
【請求項4】
前記筐体は、
前記高圧電源部と前記X線管と前記X線管包囲部とを有するX線発生部が収容されると共に前記冷却ファンが設けられたX線発生部収容空間と、
前記X線発生部を制御する制御部を収容する制御部収容空間と、を内部に有しており、
前記筐体内には、前記X線発生部収容空間と前記制御部収容空間との間に位置する仕切壁が設けられたことを特徴とする請求項1〜3に記載のX線源。
【請求項5】
前記仕切壁は、前記X線管包囲部と前記制御部との間を仕切り、前記仕切壁には、前記X線発生部収容空間と前記制御部収容空間とを連通する通風口が設けられたことを特徴とする請求項4に記載のX線源。
【請求項6】
前記仕切壁は、前記X線発生部収容空間と前記制御部収容空間とを区画することを特徴とする請求項4に記載のX線源。
【請求項7】
前記筐体の前記制御部収容空間側には、別の冷却ファンが更に設けられていることを特徴とする請求項4〜6に記載のX線源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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