説明

X線管用磁気シールド板

【課題】X線管において、試料の位置に漏洩するX線管の磁界型電子レンズによる磁界をレンズ性能に殆ど影響することなく遮蔽すると共に、試料が非磁性体である場合には磁界型電子レンズによる磁界を遮蔽せずに、試料を透過するX線を観察したときに最大限の高倍率が得られるようにすることのできるX線管用磁気シールド板を提供する。
【解決手段】磁界型の対物レンズによって電子線を集束させて、X線ターゲットに照射することにより発生するX線を試料に照射するX線管の前記X線ターゲットと前記試料の間に設置される、磁性体から成るX線管用磁気シールド板であって、X線を通すための孔を有し、X線管に対して着脱可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線ターゲットに電子線を集束させて照射することにより発生するX線を試料に照射するX線管の対物レンズや集束レンズ等の磁界型電子レンズによって発生する磁界を遮蔽するためのX線管用磁気シールド板に関する。
【背景技術】
【0002】
X線顕微装置は、X線管によって試料にX線を照射し、試料を透過したX線の画像を検出することによって、試料内部の微細な構造を非破壊で透視検査する装置である。図5は、従来の一般的なX線顕微装置の構成例を示している。X線顕微装置21は、電子線Reを発する電子銃1と、電子線Reを集束させるための磁界型電子レンズである集束レンズ2及び対物レンズ3と、電子線Reが集束することによってX線Rxを発生させるX線ターゲット6と、X線Rxが照射される被検査体としての試料7と、試料7を透過したX線Rxを検出するX線画像検出器8とを具備している。対物レンズ3の周りには強いレンズ磁界を発生させるために、磁束の通路であるヨークの切れ端部となるポールピース(磁極片)上極4とポールピース下極5が設けられている。なお、集束レンズ2、対物レンズ3及びポールピース上極4とポールピース下極5は、電子線Reの光軸Yに関して回転対称となる形状をしている。
【0003】
X線顕微装置21において、電子銃1から発せられた電子線Reは、集束レンズ2及び対物レンズ3によってX線ターゲット6上に電子線プローブとして集束し、X線ターゲット6に集束した電子線Reが当たることによってX線Rxが発生する。X線Rxは試料7に照射され、試料7を透過したX線RxはX線画像検出器8によって画像として検出され、試料7の内部が拡大投影されることによって、試料7内部の微細構造を非破壊で透視検査する。
【0004】
X線画像検出器8で検出されるX線像の分解能は、電子線ReがX線ターゲット6上に集束する際に形成される電子線プローブの径に大きく依存している。高分解能X線顕微装置では、電子線プローブのプローブ径(直径)dをできる限り小さく絞る必要がある。図6に、電子線Reの電子線プローブのプローブ径dと集束角αを示す。
【0005】
一方、X線像をリアルタイムで観察する場合には、明るい像を得る必要があり、そのためには電子線Reのプローブ電流ioをできる限り大きくする必要がある。プローブ電流ioと、電子線Reの電子源平均輝度R、集束角α及びプローブ径dとの関係は下記数1で与えられる。
(数1)
io=R・π・α・π・(d/2)
数1よりプローブ電流ioは、プローブ径d及び集束角αの自乗に比例する。したがって、プローブ径dを小さくするとプローブ電流ioは小さくなるので、X線像を明るくするためには、集束角αをできる限り大きくする必要がある。
【0006】
しかし、集束角αを大きくすると、収差(主として光軸上の球面収差)によってX線ターゲット6上の電子線Reは大きく広がる。この広がりは、電子レンズの球面収差係数をCsとするとCsαで与えられるため、広がりを小さくするためにはできるだけ球面収差係数Csを小さくする必要がある。球面収差係数Csは、通常X線顕微装置21の磁界型の電子レンズの磁界(レンズ)中心からX線ターゲット6までの距離の略3〜4乗に比例する。したがって、球面収差係数Csを小さくするために、X線ターゲット6の位置をできる限り磁界中心に近づける必要がある。
【0007】
一方、高分解能で観察を行う際には、試料7をX線ターゲット6に近づけて観察しないと、分解能に見合った高倍率を得ることはできない。しかし、X線ターゲット6を磁極の内部に置いた場合、試料7が極く小さい場合を除いて、試料7をX線ターゲット6に近づけることはできない。したがって、X線ターゲット6の位置は必然的に磁極の外部で、できる限り磁界中心に近い位置となる。このようにした場合、X線顕微装置21のポールピース上極4とポールピース下極5、X線ターゲット6及び試料7の位置関係と、光軸Y上の磁界Bzの分布例は図7に示される。
【0008】
電子レンズによる励磁をかなり強くする必要があるので、図7に示されるように電子レンズによる軸上磁界Bzは、X線ターゲット6を超えて試料7の位置まで0.1〜0.3テスラ、或いはこれ以上の強さで食み出すようになる。このような状態でも試料7が非磁性体であれば、試料7がレンズの磁界を乱すことはなく、電子レンズの性能に影響が出ることはないので問題はない。しかし、試料7が磁性体である場合は、試料7によって電子レンズの磁界が乱され電子レンズの性能を悪化させる。更に、試料7が強い磁界によって引っ張られ、試料7が破壊されたり、X線ターゲット6を損傷したりする恐れがある。このため、安定した観察が困難である。
【0009】
このような電子レンズによって生成される磁界を遮蔽するようにした従来技術として、特開平10−106466号公報(特許文献1)には、スピンSEMにおいて漏洩磁界を遮蔽するようにした磁界形対物電子レンズが開示されている。この磁界形対物電子レンズでは、磁界を形成するコイルによって励磁される下部磁極片に、非磁性体又は磁性体から成るスペーサを介して磁気シールドを固定している。磁気シールドは直径dの電子線通過孔を有し、この直径dは下部磁極片の磁極の直径より小さくなっている。このようにして、磁界形対物レンズから試料側に漏洩する磁界の大きさが地磁気より小さくなるようにしている。
【0010】
また、特開平2−181350号公報(特許文献2)には、対物レンズからの漏洩磁界を遮蔽するために、磁気シールド部材を設けた透過形電子顕微鏡が開示されている。この透過型電子顕微鏡に備えられたトップエントリステージには、試料ホルダが着脱可能になっており、試料ホルダに磁気シールドを固定している。試料の磁区観察を行う際には、磁気シールドを固定した試料ホルダに試料を設けて観察を行い、高分解能観察を行う際には、トップエントリステージから試料ホルダを取り外し、別の位置に試料を設定できるようにしている。
【0011】
更に、特開平6−283128号公報(特許文献3)には、着脱可能な磁界シールドを備えて、収束レンズ、対物レンズなどからの漏洩磁界の影響を事実上全く受けないようにした第一試料室と、対物レンズ内に備えて、高い拡大率の像を結像でき、高分解能な投射像の得ることができる第二試料室を具備した電子顕微鏡が開示されている。
【特許文献1】特開平10−106466号公報
【特許文献2】特開平2−181350号公報
【特許文献3】特開平6−283128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献1乃至3は、いずれも電子顕微鏡において電子レンズによる磁界を遮蔽して試料を観察するようにしたものであるが、弱い磁界(例えば0.001〜0.01テスラ)を高度に遮蔽しようとするものであり、対象とする磁界の強さは電子レンズの性能には全く関係しない小さなレベルである。また、X線ターゲットを備えたX線顕微装置のようなX線管において電子レンズによる磁界を遮蔽して試料を観察するものではない。
【0013】
本発明は上述のような事情によりなされたものであり、本発明の目的は、X線管において、試料の位置に漏洩するX線管の磁界型電子レンズによる磁界をレンズ性能に殆ど影響することなく遮蔽すると共に、試料が非磁性体である場合には磁界型電子レンズによる磁界を遮蔽せずに、試料を透過するX線を観察したときに最大限の高倍率が得られるようにすることのできるX線管用磁気シールド板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、磁界型の対物レンズによって電子線を集束させて、X線ターゲットに照射することにより発生するX線を試料に照射するX線管の前記X線ターゲットと前記試料の間に設置される、磁性体から成るX線管用磁気シールド板に関し、本発明の上記目的は、前記X線を通すための孔を有し、前記X線管に対して着脱可能になっていることによって達成される。
【0015】
本発明の上記目的は、前記X線管用磁気シールド板と前記対物レンズのポールピース下極との間に間隙を設けて、前記X線管用磁気シールド板を前記対物レンズの磁気回路から切り離すようにしたことによって、或いは前記間隙が0.3mm〜2mmであることによって、或いは前記X線管用磁気シールド板の厚さが2mm以下であることによって、或いは前記X線管用磁気シールド板は円盤であることによって、或いは前記円盤の直径が前記X線管の対物レンズのポールピース下極の穴の直径の0.5倍〜1.5倍であることによって、或いは前記円盤の一部に切り欠きが設けられていることによって、或いは前記孔は、断面が前記X線の進行方向に大きくなっていく円錐台形状をしていることによって、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るX線管用磁気シールド板によれば、X線ターゲットと試料の間に磁性体で成り、X線を通すための孔を有するX線管用磁気シールド板を着脱可能に設置するので、試料が磁性体の場合には、X線管の磁界型電子レンズによって試料の位置に漏洩する磁界をレンズ性能に殆ど影響することなく遮蔽し、磁界擾乱による磁界型電子レンズの性能の低下を防止し、磁力による試料の移動及び試料の破壊を防止すると共に、磁力によって試料がX線ターゲットと衝突してX線ターゲットが破損するのを防止することができる。更に、試料が非磁性体の場合には、試料を透過するX線を観察する際にX線管用磁気シールド板を取り外し、最大限の高倍率が得られるように試料とX線ターゲットの距離を小さくすることができるので、透過X線を高分解能で観察するのに適している。また、X線管用磁気シールド板はX線ターゲットの外側に設置されるため、電子線をX線ターゲットに集束するための磁界には殆ど影響を与えることなく、試料の位置における漏洩磁界を遮蔽することができる。
【0017】
なお、X線管用磁気シールド板と対物レンズのポールピース下極との間隙を0.3mm〜2mmにして、X線管用磁気シールド板の厚さを2mm以下とし、X線管用磁気シールド板を直径が対物レンズの穴径の0.5〜1.5倍の円盤とすることによって、より効果的にX線管の電子レンズによる漏洩磁界をレンズ性能への影響を更に押さえて遮蔽することができると共に、試料の透過X線を観察する際に充分な高倍率を得ることができる。
【0018】
更に、X線管用磁気シールド板は、X線を試料に照射することによって発生する蛍光X線分析を行うときに、X線の照射領域を制限するための絞りとしても機能し、試料の分析領域を限定することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係るX線管用磁気シールド板によれば、X線を発生するX線ターゲットと、X線ターゲットからのX線が照射される試料との間に、X線管から発生する磁界を遮蔽するために磁性体から成るX線管用磁気シールド板を設置する。X線管用磁気シールド板はX線ターゲットからのX線を通すための孔を有する。また、X線管用磁気シールド板はX線管から着脱可能となっており、試料が非磁性体の場合には取り外せるようになっている。
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るX線管用磁気シールド板9を設置したX線顕微装置20の構成例を示す断面構成図である。図1に示されるように、X線管用磁気シールド板9は、X線Rxを発生するX線ターゲット6とX線Rxが照射される試料7との間に着脱可能に設置され、X線Rxを通すための孔9Aを有している。また、X線管用磁気シールド板9は円盤であり、X線顕微装置20の磁界型電子レンズである集束レンズ2及び対物レンズ3から発生する磁界を試料7の位置で遮蔽するために、鉄、パーマロイ等の磁性体でできている。X線管用磁気シールド板9が設置されていることを除いてX線顕微装置20の構成は図5に示されるX線顕微装置21と同じであるが、本発明に係るX線管用磁気シールド板9を設けることが可能なX線管の構成は、図1に示されるX線顕微装置20の構成に限定されるものではない。
【0022】
図1に示されるX線顕微装置20において、試料7の位置に集束レンズ2及び対物レンズ3のX線顕微装置20の磁界型電子レンズによって発生する磁界は、X線管用磁気シールド板9によって遮蔽される。また、X線ターゲット6から発生したX線は、X線管用磁気シールド板9の孔9Aを通って試料7に照射されるため、X線管用磁気シールド板9の孔9Aによって試料7に照射されるX線Rxを制限することもできる。これを利用して、蛍光X線分析を行うときに試料7にX線が照射される分析領域を限定することができる。
【0023】
図2は、X線管用磁気シールド板9の位置と寸法、及びX線管用磁気シールド板9を設置した場合の光軸Yに沿った軸上磁界Bzの分布例を示す図である。図2に示されるように、X線管用磁気シールド板9とポールピース下極5の間に間隙sを設けることによって、X線管用磁気シールド板9を対物レンズ3の磁気回路から浮かせるようにしている。間隙sを大きくとると、漏洩磁界の遮蔽効果を大きくでき、レンズ性能への影響を更に小さくできるが、X線ターゲット6と試料7の距離を小さくできないため、試料7の透過X線を観察する際に充分な高倍率が得られなくなる。一方、間隙sが小さ過ぎると、X線管用磁気シールド板9が対物レンズ3の磁気回路に組み込まれてしまい、漏洩磁界の遮蔽効果が小さくなり、レンズ性能への影響も大きくなってしまう。試料7の透過X線を観察する際に適度な高倍率が得られると共に、X線管用磁気シールド板9による磁界遮蔽効果を充分に得て、更にレンズ性能への影響を小さくするためには、間隙sを0.3mm〜2mmにすることが好ましい。
【0024】
また、X線管用磁気シールド板9の直径d1は、漏洩磁界の遮蔽をレンズ性能への影響をより小さく押さえて効果的に行うために、対物レンズ3のポールピース下極5の穴径bの0.5倍〜1.5倍であることが好ましい。X線管用磁気シールド板9の厚さtは、大きい方が磁界遮蔽効果が大きくなる。しかし、X線管用磁気シールド板9の厚さtを大きくすると、X線ターゲット6と試料7の間の距離を小さくできないため、試料7を透過するX線を観察する際に高倍率が得られなくなってしまう。このため、X線管用磁気シールド板9の厚さtは2mm以下とすることが好ましい。
【0025】
X線管用磁気シールド板9の孔9Aの直径d2は、小さい方がX線顕微装置20の電子レンズから発生する磁界の遮蔽効果が大きい。例えば、孔9Aの直径d2が2mmでも磁界の遮蔽効果はかなり大きいが、孔9Aの直径d2を1mmとすると、磁界の遮蔽効果は孔9Aの直径d2を2mmとした場合の2倍程度になる。一方、孔9Aの直径d2が小さいと、X線管用磁気シールド板9の心出しが難しくなる。これはX線ターゲット6上で、電子線Reが正確にX線ターゲット6の中心にある保証がないからである。
【0026】
図2の実線で示される曲線はX線管用磁気シールド板9を設置した場合の軸上磁界Bzの分布例であり、破線で示される曲線はX線管用磁気シールド板9を設置しなかった場合の軸上磁界Bzの分布例である。図2に示されるように、X線管用磁気シールド板9を設置することによって、X線ターゲット6の下側で磁界が小さくなっている。一方、電子線Reを集束させるためのX線ターゲット6より上側の磁界には殆ど影響がなく、レンズ性能には殆ど影響はない。したがって、X線管用磁気シールド板9を設置しても、X線ターゲット6に電子線Reの電子線プローブを集束させるために作用する磁界にはほとんど影響を与えず、X線ターゲット6より外側に漏洩する磁界を遮蔽するだけである。そのため、X線管用磁気シールド板9は、電子線Reの電子線プローブに対する対物レンズ性能である収差、焦点距離にはほとんど影響しない。また、X線管用磁気シールド板9の位置の調節に関しては高度な機械的精度を必要としない。よって、本発明に係るX線管用磁気シールド板9による漏洩磁界の遮蔽方法は、試料7の透過X線像によって内部構造を高分解能で観察するのに適している。
【0027】
試料7が磁性体の場合、X線管用磁気シールド板9を設置することによって、試料7による磁界擾乱によってX線顕微装置20の電子レンズの性能の低下、磁力による試料7の移動及び試料7の破壊を防止できる。また、X線ターゲット6は、薄いベリリウム板材にタングステン等の重金属を蒸着させたものであり、真空シールも兼ねている。このX線ターゲット6に、磁力によって試料7が引っ張られて試料7がX線ターゲット6に衝突すると、X線ターゲット6は容易に破壊されてしまう恐れがある。X線管用磁気シールド板9を設置することは、磁性体の試料7がX線ターゲット6に衝突しないようにするための、プロテクタとしての効果もある。
【0028】
試料7が磁性体の場合に、試料7の透過X線をできる限り高倍率で観察するためには、漏洩磁界の大きさが許容値以下になる位置で、できる限り試料7をX線ターゲット6に近づける必要がある。また、X線管用磁気シールド板9の位置の調節に関しては高度な機械的精度を必要としないので、X線管用磁気シールド板9は着脱可能になっている。そのため、試料7が非磁性体の場合にはX線管用磁気シールド板9を取り外すことによって、試料7をX線ターゲット6にできる限り近づけることが可能となって、試料7の透過X線を最大限の高倍率で観察することができる。
【0029】
試料7の透過X線を観察する際に、試料7を大きく傾けて多方位から透過X線を観察する3次元観察を行う場合がある。X線顕微装置の場合、試料7をX線ターゲット6との距離をできるだけ小さくするため、試料7のみを傾斜することは困難である。そこで図3に示されるように、X線ターゲット6からX線Rxを発生させる電子光学系と試料7を共に大きく傾けて3次元観察を行う。または、試料7に対向するX線画像検出器8の向きを、X線ターゲット6上のX線発生位置を回転中心にして大きく振ることによって3次元観察を行う。図3(a)では電子線Reの光軸Yと同じ方向に試料7を透過するX線RxをX線画像検出器8で画像として検出するようになっており、図3(b)及び図3(c)では電子線Reの光軸Yに対して傾いた方向に試料7を透過するX線RxをX線画像検出器8で画像として検出するようになっている。
【0030】
このような3次元観察を行う場合には、X線管用磁気シールド板9の孔9Aは、電子線Reの光軸Yに対して傾いた方向に照射されたX線Rxも通すようにする必要がある。そのため、図4に示されるように、X線管用磁気シールド板9の孔9Aを断面がX線Rxの進行方向に大きくなる円錐台形状にする必要がある。この場合も孔9Aの直径d2が小さい方が漏洩磁界の遮蔽効果が大きくなるので、このことを考慮に入れて孔9Aの直径d2を調節する必要がある。
【0031】
以上の本発明の実施形態では、X線管用磁気シールド板9を円盤としたが、本発明に係るX線管用磁気シールド板は円盤に限定されない。例えば、X線管用磁気シールド板は、円盤の一部に切り欠きを設けたような円盤に準ずるものであっても良い。また、X線管用磁気シールド板の形状は、三角形、四角形又は不規則な形状であっても良い。
【0032】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るX線管用磁気シールド板を設置したX線顕微装置の断面構成図である。
【図2】X線管用磁気シールド板の位置と寸法、及びX線管用磁気シールド板を設置した場合の光軸Yに沿った軸上磁界Bzの分布を示す図である。
【図3】X線顕微装置における3次元観察を説明する図である。
【図4】円錐台形状の孔を有するX線管用磁気シールド板の断面図である。
【図5】X線顕微装置の一般的な構成例を示す図である。
【図6】電子線プローブのプローブ径と集束角を示す図である。
【図7】従来のX線顕微装置における、光軸Yに沿った軸上磁界Bzの分布を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 電子銃
2 集束レンズ
3 対物レンズ
4 ポールピース上極
5 ポールピース下極
6 X線ターゲット
7 試料
8 X線画像検出器
9 X線管用磁気シールド板
20、21 X線顕微装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界型の対物レンズによって電子線を集束させて、X線ターゲットに照射することにより発生するX線を試料に照射するX線管の前記X線ターゲットと前記試料の間に設置される、磁性体から成るX線管用磁気シールド板であって、前記X線を通すための孔を有し、前記X線管に対して着脱可能になっていることを特徴とするX線管用磁気シールド板。
【請求項2】
前記X線管用磁気シールド板と前記対物レンズのポールピース下極との間に間隙を設けて、前記X線管用磁気シールド板を前記対物レンズの磁気回路から切り離すようにした請求項1に記載のX線管用磁気シールド板。
【請求項3】
前記間隙が0.3mm〜2mmである請求項2に記載のX線管用磁気シールド板。
【請求項4】
前記X線管用磁気シールド板の厚さが2mm以下である請求項1乃至3のいずれかに記載のX線管用磁気シールド板。
【請求項5】
前記X線管用磁気シールド板は円盤である請求項1乃至4のいずれかに記載のX線管用磁気シールド板。
【請求項6】
前記円盤の直径が前記X線管の対物レンズのポールピース下極の穴の直径の0.5倍〜1.5倍である請求項5に記載のX線管用磁気シールド板。
【請求項7】
前記円盤の一部に切り欠きが設けられている請求項5又は6に記載のX線管用磁気シールド板。
【請求項8】
前記孔は、断面が前記X線の進行方向に大きくなっていく円錐台形状をしている請求項1乃至7のいずれかに記載のX線管用磁気シールド板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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