説明

X線診断装置及び電圧生成装置

【課題】X線管で放電が発生した場合であっても、電圧生成装置の故障やX線管のさらなる耐電圧不良を誘発することなく、診断に適したX線透過画像を提供する。
【解決手段】一実施形態に係るX線診断装置は、X線を発生するX線管と、X線を検出するX線検出器と、電圧を生成してX線管に印加する電圧生成部と、X線管に生じる管電圧又は管電流を計測する計測部と、計測された管電圧又は管電流に基づいてX線管に生じる放電を検出する放電検出部と、電圧生成部を動作させてX線管への電圧印加を開始させ、放電検出部が放電を検出した場合には電圧生成部の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、電圧生成部の積算動作期間が目標値に達すると電圧生成部の動作を停止させる制御部と、X線検出器の検出結果に基づき画像を生成する画像生成部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、被検体のX線透過画像を撮影するX線診断装置、及びX線源にX線を発生させるための電圧を生成する電圧生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、被検体に向けてX線を照射し、患者を透過したX線をX線検出器などにより捉えて、その透過線量に比例した陰影像であるX線透過画像を生成する装置である。医師や検査技師等の操作者は、X線診断装置で生成されるX線透過画像を観察することで、被検体の診断を行う。
【0003】
上記X線は、例えばX線管の陽極及び陰極間に電圧生成装置により生成された高電圧を印加することで発生させている。X線管は、耐電圧不良等により放電を生じることがある。従来、放電が発生した場合には、電圧生成装置の故障やX線管のさらなる耐電圧不良の誘発を防ぐべく、X線管への高電圧印加を停止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−33822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
X線診断装置にて被検体のX線透過画像を撮影している最中にX線管への高電圧印加を停止した場合、予定していた撮影の必要線量に対して、X線検出器で検出される線量が不足する。このため、診断用の画像は、線量不足により診断に適さない画像となる場合がある。
【0006】
また、放電が発生しても電圧生成装置がX線管への高電圧印加を続ける場合、電圧生成装置の故障やX線管のさらなる耐電圧不良を誘発させる虞がある。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、X線管で放電が発生した場合であっても、電圧生成装置の故障やX線管のさらなる耐電圧不良を誘発することなく、診断に適したX線透過画像を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係るX線診断装置は、X線を発生するX線管と、X線を検出するX線検出器と、電圧を生成してX線管に印加する電圧生成部と、X線管に生じる管電圧又は管電流を計測する計測部と、計測された管電圧又は管電流に基づいてX線管に生じる放電を検出する放電検出部と、電圧生成部を動作させてX線管への電圧印加を開始させ、放電検出部が放電を検出した場合には電圧生成部の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、電圧生成部の積算動作期間が目標値に達すると電圧生成部の動作を停止させる制御部と、X線検出器の検出結果に基づき画像を生成する画像生成部とを備える。
【0009】
他の実施形態に係るX線診断装置は、X線を発生するX線管と、X線を検出するX線検出器と、電圧を生成してX線管に印加する電圧生成部と、X線管に生じる管電圧又は管電流を計測する計測部と、計測された管電圧又は管電流に基づいてX線管に生じる放電を検出する放電検出部と、電圧生成部を動作させてX線管への電圧印加を開始させ、放電検出部が放電を検出した場合には電圧生成部の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、X線検出器によって検出されるX線の積算線量が目標値に達すると電圧生成部の動作を停止させる制御部と、X線検出器の検出結果に基づき画像を生成する画像生成部とを備える。
【0010】
一実施形態に係る電圧生成装置は、X線管に印加する電圧を生成する電圧生成部と、X線管に生じる管電圧又は管電流を計測する計測部と、計測された管電圧又は管電流に基づいてX線管に生じる放電を検出する放電検出部と、電圧生成部を動作させてX線管への電圧印加を開始させ、放電検出部が放電を検出した場合には電圧生成部の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、電圧生成部の積算動作期間が目標値に達すると電圧生成部の動作を停止させる制御部とを備える。
【0011】
他の実施形態に係る電圧生成装置は、X線管に印加する電圧を生成する電圧生成部と、X線管に生じる管電圧又は管電流を計測する計測部と、計測された管電圧又は管電流に基づいてX線管に生じる放電を検出する放電検出部と、電圧生成部を動作させてX線管への電圧印加を開始させ、放電検出部が放電を検出した場合には電圧生成部の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、X線管から放射されるX線を検出するX線検出器によって検出されるX線の積算線量が目標値に達すると電圧生成部の動作を停止させる制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】各実施形態で共通するX線診断装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】放電非発生時の管電圧、管電流、積算線量の経時変化を示すタイムチャート。
【図3】放電発生時の管電圧、管電流、積算線量の経時変化を示すタイムチャート。
【図4】第1の実施形態に係る制御回路の動作を示すフローチャート。
【図5】同実施形態に係る放電発生時の管電圧、管電流、積算線量の経時変化を示すタイムチャート。
【図6】第2の実施形態に係る制御回路の動作を示すフローチャート。
【図7】同実施形態に係る放電発生時の管電圧、管電流、積算線量の経時変化を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1,第2の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
以下の説明において、同一の構成要素には同一の符号を付し、重複説明は必要な場合に限り行う。
【0014】
先ず、各実施形態にて共通する構成について述べる。
[X線診断装置の構成]
図1は、各実施形態で共通するX線診断装置の要部構成を示すブロック図である。
このX線診断装置は、コンソール装置1、電圧生成装置2、X線管3、及びX線検出器4等を備えている。
【0015】
コンソール装置1は、入力部11、表示部12、及び画像生成部13等を備えている。
【0016】
入力部11は、例えば機械式の操作ボタン、ポインティングデバイス、マウス、トラックボール、或いは表示部12の表示面上に設けられたタッチパネル等であり、X線診断装置を操作する医師や技師等の操作者が各種コマンドや情報を入力するために用いられる。
【0017】
表示部12は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニタを有し、入力部11を介して操作者からの入力を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)や、画像生成部13によって生成されたX線透過画像等を表示する。
【0018】
画像生成部13は、X線のパルス照射に同期してX線検出器4に蓄積された電荷を読み出すとともに、読み出した電気信号をデジタルデータに変換して各種画像処理を行い、X線透過画像を生成する。
【0019】
電圧生成装置2は、制御回路20、インバータ21、高電圧トランス22、整流回路23、複数の分圧抵抗器24、及び管電流計測回路25等を備えている。
【0020】
インバータ21は、インバータ駆動パルスより交流を生成し、生成した交流を高電圧トランス22に出力する。パルス発生のタイミングや、パルスのデューティ(パルス発生区間/パルス周期)等は、制御回路20によって制御される。
【0021】
高電圧トランス22は、インバータ21から入力される交流を昇圧し、昇圧した後の交流を整流回路23に出力する。
【0022】
整流回路23は、高電圧トランス22から入力される交流を直流に変換し、X線管3の陽極(+)・陰極(−)間に印加する。このようにして、X線管3に高電圧(例えば最大±75kV)が印加される。
なお、インバータ21、高電圧トランス22、及び整流回路23によって、各実施形態に係る電圧生成部が構成される。
【0023】
X線管3は、印加された高電圧に応じてX線を発生する。X線検出器4は、X線管3にて発生して被検体Pを透過したX線を検出し、検出したX線の強度(線量)に応じた大きさのX線検出信号を画像生成部13に出力する。X線検出器4としては、例えば直接変換方式のフラットパネルディテクタ(FPD)等が用いられる。
【0024】
画像生成部13は、X線検出器4から入力されるX線検出信号をデジタルデータに変換し、変換後のデジタル信号に対し、エッジ強調やフィルタリング等の必要な画像処理を施すことで、被検体PのX線透過画像を生成する。画像生成部13で生成されたX線透過画像は、表示部12に表示されるとともに、図示せぬ画像記憶部に記憶される。
【0025】
分圧抵抗器24は、整流回路23からX線管3の陽極に印加される正電圧、及び、整流回路23からX線管3の陰極に印加される負電圧を所定の分圧比で分圧して取り出すための直列接続の抵抗器である。
管電流計測回路25は、X線管3に流れる管電流Iを計測する。
【0026】
制御回路20は、制御の中枢として機能するCPU(Central Processing Unit)、固定的データを記憶したROM(Read Only Memory)、メインメモリとして機能するRAM(Random Access Memory)、電圧計測回路201、放電検出回路(放電検出部)202、積算線量計測回路203、及びタイマ204等を有している。
【0027】
制御回路20は、上記CPUによって上記ROMに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、X線管3に印加する電圧の制御に関わる種々の動作を実現する。この動作の詳細については、各実施形態にて後述する。
【0028】
電圧計測回路201には、分圧抵抗器24で取り出された図中(A)で示す正電圧と、(B)で示す負電圧が入力される。電圧計測回路201は、入力された正電圧及び負電圧の差分と、分圧抵抗器24の分圧比とに基づき、X線管3に印加される管電圧Vを検出し、検出した管電圧Vを放電検出回路202に出力する。
【0029】
なお、管電流計測回路25及び電圧計測回路201によって、各実施形態に係る計測部が構成される。
【0030】
放電検出回路202には、管電圧Vに加え、管電流計測回路25から出力された図中(C)で示す管電流Iが入力される。放電検出回路202は、入力された管電圧V又は管電流Iに基づいて、X線管3における放電の発生及びその終了を検出する。
【0031】
積算線量計測回路203には、X線検出器4から出力された図中(D)で示すX線検出信号の一部が入力される。このX線検出信号は、画像生成部13に出力されるX線検出信号の一部であってもよいし、自動露出制御専用のX線検出素子から出力されるX線検出信号であってもよい。積算線量計測回路203は、主に第2の実施形態にて使用されるものであり、X線検出器4から入力されるX線検出信号で示される値を積算する。この積算値は、X線検出器4で検出されるX線の積算線量Xを表す。
【0032】
タイマ204は、第1の実施形態においてはインバータ21の動作時間のカウントに、第2の実施形態においてはバックアップタイマ時間のカウントに用いられる。
【0033】
[管電圧,管電流,積算線量の関係]
1フレームのX線透過画像を得る際の管電圧V、管電流I、及び積算線量Xの関係について説明する。
【0034】
図2は、放電非発生時の管電圧V、管電流I、及び積算線量Xの経時変化を示すタイムチャートであり、図3は、放電発生時の管電圧V、管電流I、及び積算線量Xの経時変化を示すタイムチャートである。ここで、入力部11の操作により、管電圧Vの目標値が100kV(±50kV)、管電流Iの目標値が200mA、撮影時間(適正露出時間)が10msに設定されているものとする。
【0035】
制御回路20がインバータ21に管電圧V,管電流Iの目標値を指定して動作開始を指示すると、インバータ21がこれら目標値に応じた駆動パルスにより交流の生成を開始する。インバータ21で生成された交流が高電圧トランス22で昇圧され、整流回路23で直流に変換されて、X線管3に印加される。このときX線管3の管電圧V及び管電流Iは除々に上昇し、やがて管電圧Vは目標値である100kV(±50kV)で安定し、管電流Iは目標値である200mAで安定する。その後、インバータ21が交流の供給を停止すると、管電圧V及び管電流Iが除々に低下し、0kV,0mAになる。
積算線量Xは、X線管3に管電圧Vが印加され始めてから除々に増加し、やがて適正線量に達する。
【0036】
撮影時間は、管電圧Vが管電圧閾値Vsを超える時間である。管電圧閾値Vsは、X線管3が良好なX線透過画像を生成できる量のX線を発生するのに必要な最低限の管電圧を示すものであり、経験的、実験的、乃至は理論的に定められる。インバータ21が交流を高電圧トランス22に供給する期間(以下、インバータ動作期間T)の目標値Taは、放電非発生時において管電圧Vが管電圧閾値Vsを超える期間が上記撮影時間となるように、例えば計算式やテーブルを用いて制御回路20によって設定される。
【0037】
また、撮影時間よりも十分長い撮影画像検出期間Tdが設定されており、この期間Td内にX線検出器4が出力するX線検出信号に基づいて、画像生成部13がX線透過画像を生成する。
【0038】
X線管3に放電が発生すると、図3に示すように、管電圧Vが低下し、管電流Iが急激に上昇する。このとき、例えば放電発生時にX線管3への電圧印加を停止する制御を採用するならば、インバータ21に交流の供給を停止させる。これにより、管電圧Vが0kVに低下し、管電流Iが0mAに低下する。
【0039】
しかしこの場合、X線管3から放射されるX線の線量が不足するので、積算線量Xが適正線量に達しない。したがって、撮影画像検出期間Tdの経過後に画像生成部13が生成するX線透過画像の画質が劣化する。
以下に説明する第1,第2の実施形態では、このような画質の劣化を防止するための構成を開示する。
【0040】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、放電の発生によるX線透過画像の画質劣化を防止すべく、放電発生時にインバータ21の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、インバータ21の積算動作期間が上記目標値Taに達するとインバータ21等の動作を停止させることで、十分な積算線量Xを得る。
【0041】
本実施形態に係る動作の詳細につき、図4,図5を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態に係る制御回路20の動作を示すフローチャートであり、図5は、本実施形態に係る放電発生時の管電圧V、管電流I、及び積算線量Xの経時変化を示すタイムチャートである。なお、入力部11の操作により、管電圧Vの目標値が100kV(±50kV)、管電流Iの目標値が200mA、撮影時間が10msに設定されているものとする。
【0042】
X線透過画像の撮影開始がコンソール装置1から指示されると、制御回路20は、X線管3への高電圧の印加を開始する(ステップS101)。すなわち、制御回路20は、インバータ21に管電圧Vの目標値に応じた交流の供給開始を指令する。このときインバータ21が管電圧Vの目標値に応じた交流の供給を開始し、高電圧トランス22及び整流回路23を介してX線管3に高電圧の印加が開始される。高電圧が印加されたX線管3はX線を発生し、被検体Pを透過したX線をX線検出器4が検出する。
【0043】
さらに、制御回路20は、タイマ204にタイムカウントを開始させる(ステップS102)。
【0044】
次に、制御回路20は、放電検出回路202によって放電の発生が検出されたか否かを判定する(ステップS103)。放電検出回路202は、例えば図5に示すように、インバータ21の動作中に電圧計測回路201によって計測される管電圧Vが、予め上記ROMに記憶された管電圧閾値Vsdを下回ったことを以って放電が発生したと判定する。或いは、管電流計測回路25によって計測される管電流Iが、予め上記ROMに記憶された管電流閾値Isdを上回ったことを以って放電が発生したと判定してもよい。また、放電検出回路202は、放電検出後、管電流計測回路25によって計測される管電流Iが0mAまで低下したことを以って放電が終了したと判定する。上記閾値Vsd,Isdは、放電が発生したとみなせる管電圧,管電流を示すものであり、経験的、実験的、乃至は理論的に定められる。
【0045】
放電検出回路202によって放電が検出されていないならば(ステップS103のNO)、制御回路20は、タイマ204のタイムカウントがインバータ動作期間Tの目標値Taに達したか否かを判定する(ステップS104)。タイムカウントが目標値Taに達していないならば(ステップS104のNO)、ステップS103に戻る。
【0046】
このようにステップS103,S104の動作が繰り返される間、図2に示したように管電圧V,管電流Iがそれぞれの目標値まで上昇する。これに応じて、積算線量Xも上昇する。
【0047】
やがて放電の発生が検出されずタイマ204のタイムカウントがインバータ動作期間に達したならば(ステップS104のYES)、制御回路20は、インバータ21に交流の供給を停止させることで、X線管3への高電圧の印加を停止する(ステップS105)。そして、タイマ204のタイムカウントを停止させてゼロにリセットし(ステップS106)、1フレームのX線透過画像を生成するための動作が完了する。
【0048】
このように放電が発生することなく動作が完了した場合、図2に示した場合と同様に積算線量Xは適正線量に達するので、良好なX線透過画像が得られる。
【0049】
一方、タイマ204のタイムカウントがインバータ動作期間Tの目標値Taに達するまでに放電検出回路202が放電の発生を検出した場合(ステップS103のYES)、制御回路20は、インバータ21の動作を停止させ、X線管3への高電圧の印加を一時中断する(ステップS107)。さらに、制御回路20は、タイマ204にタイムカウントを一時停止させる(ステップS108)。
【0050】
その後、制御回路20は、放電の終了を待つ(ステップS109)。放電検出回路202が放電の終了を検出したならば(ステップS109のYES)、制御回路20は、インバータ動作期間Tの目標値Taを補正する(ステップS110)。この処理は、放電発生による管電圧V,管電流Iの立ち下がり、及び、インバータ21を再び動作させることに伴い発生する管電圧V,管電流Iの立ち上がりの影響を排除すべく行うものである。具体的には、放電発生後に管電圧Vが管電圧閾値Vsから管電圧閾値Vsdまで立ち下がる期間、及び、インバータ21の動作再開後に管電圧Vが管電圧閾値Vsまで立ち上がる期間に応じた分だけ、目標値Taをデフォルトよりも長くする。そうすると、図5に示すように、放電発生前に管電圧Vが管電圧閾値Vsを超える期間(6ms)と、放電発生後に管電圧Vが管電圧閾値Vsを超える期間(4ms)との和が、撮影時間(10ms)と一致することになる。
【0051】
目標値Taを補正した後、制御回路20は、インバータ21の動作を再開させることで、X線管3への高電圧の印加を再開する(ステップS111)。さらに制御回路20は、タイマ204にタイムカウントを再開させる(ステップS112)。
【0052】
その後、ステップS103に戻り、放電の発生、及び、タイマ204のタイムカウントの目標値Taへの到達を待つ。やがてタイマ204のタイムカウントが目標値Taに達したならば、制御回路20は、X線管3への高電圧の印加を停止し(ステップS105)、タイマ204のタイムカウントを停止させてゼロにリセットし(ステップS106)、1フレームのX線透過画像を生成するための動作が完了する。
【0053】
このように1回の放電が発生した際には、図5に示すインバータ動作期間T1,T2のように、インバータ21が放電発生前後の2回に分けて動作する。これにより、放電発生前のインバータ21の動作だけでは不足する線量が、放電発生後のインバータ21の動作で補われて適正線量に達する。したがって、放電発生時においても、良好なX線診断画像を生成することができる。また、放電が発生した場合であっても、放電発生前のX線照射が有効に活用されるので、診断に寄与しない無駄なX線照射が減り、被検体Pの被曝量を低減できる。
【0054】
さらに、放電が発生した際には、ステップS110にてインバータ動作期間Tの目標値Taを適正な値に補正するので、放電による管電圧V,管電流Iの立ち下がり,立ち上がりの影響を排除できる。
【0055】
なお、図5の例では1回の放電が発生する場合を示したが、1フレームのX線透過画像を得るための撮影時に複数回の放電が発生した場合であっても、ステップS101〜S112の動作によって適正線量を得ることができる。
【0056】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態では、放電発生時にインバータ21の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、積算線量Xが予め定められた目標値である積算閾値Xsに達するとインバータ21等の動作を停止させる。積算閾値Xsは、良好なX線透過画像を生成するための適正な線量の下限値を示すものであり、経験的、実験的、乃至は理論的に定められて、例えば予め上記ROMに記憶されている。
【0057】
本実施形態に係る動作の詳細につき、図6,図7を参照しながら説明する。
図6は、本実施形態に係る制御回路20の動作を示すフローチャートであり、図7は、本実施形態に係る放電発生時の管電圧V、管電流I、及び積算線量Xの経時変化を示すタイムチャートである。なお、入力部11の操作により、管電圧Vの目標値が100kV(±50kV)、管電流Iの目標値が200mA、撮影時間が10ms、バックアップタイマ時間BTが20msに設定され、撮影画像検出期間Tdがバックアップタイマ時間BTと同じか若干長めに設定されているものとする。
【0058】
X線透過画像の撮影開始がコンソール装置1から指示されると、制御回路20は、X線管3への高電圧の印加を開始する(ステップS201)。すなわち、制御回路20は、インバータ21に管電圧Vの目標値に応じた交流の供給開始を指令する。このときインバータ21が管電圧Vの目標値に応じた交流の供給を開始し、高電圧トランス22及び整流回路23を介してX線管3に高電圧の印加が開始される。高電圧が印加されたX線管3はX線を発生し、被検体Pを透過したX線をX線検出器4が検出する。
【0059】
さらに、制御回路20は、タイマ204にタイムカウントを開始させるとともに(ステップS202)、積算線量計測回路203にX線検出器4から入力されるX線検出信号で示される値の積算を開始させる(ステップS203)。
【0060】
次に、制御回路20は、放電検出回路202によって放電の発生が検出されたか否かを判定する(ステップS204)。放電の発生や終了は、第1の実施形態と同様の手法により、放電検出回路202によって検出される。
【0061】
放電検出回路202によって放電が検出されていないならば(ステップS204のNO)、制御回路20は、積算線量計測回路203によって計測される積算線量Xが積算閾値Xsに達したか否かを判定する(ステップS205)。積算線量Xが積算閾値Xsに達していないならば(ステップS205のNO)、制御回路20は、タイマ204のタイムカウントがバックアップタイマ時間BTに達したか否かを判定する(ステップS206)。タイムカウントがバックアップタイマ時間BTに達していないならば(ステップS206のNO)、ステップS204に戻る。
【0062】
このようにステップS204〜S206の動作が繰り返される間、図2に示したように管電圧V,管電流Iがそれぞれの目標値まで上昇する。これに応じて、積算線量Xも上昇する。
【0063】
やがて放電の発生が検出されず積算線量Xが積算閾値Xsに達したならば(ステップS205のYES)、制御回路20は、インバータ21に交流の供給を停止させることで、X線管3への高電圧の印加を停止する(ステップS207)。そして、タイマ204のタイムカウントを停止させてゼロにリセットし(ステップS208)、積算線量計測回路203による積算を停止させて積算線量Xをゼロにリセットして(ステップS209)、1フレームのX線透過画像を生成するための動作が完了する。
【0064】
このように放電が発生することなく動作が完了した場合、図2に示した場合と同様に積算線量Xは適正線量に達するので、良好なX線透過画像が得られる。
【0065】
一方、積算線量Xが積算閾値Xsに達するまでに放電検出回路202が放電の発生を検出した場合(ステップS204のYES)、制御回路20は、インバータ21の動作を停止させ、X線管3への高電圧の印加を一時中断する(ステップS210)。
【0066】
その後、制御回路20は、放電の終了を待つ(ステップS211)。放電検出回路202が放電の終了を検出したならば(ステップS211のYES)、制御回路20は、タイマ204のタイムカウントがバックアップタイマ時間BTに達しているか否かを判定する(ステップS212)。
【0067】
タイマ204のタイムカウントがバックアップタイマ時間BTに達していないならば(ステップS212のNO)、制御回路20は、インバータ21の動作を再開させることで、X線管3への高電圧の印加を再開する(ステップS213)。
【0068】
その後、ステップS204に戻り、放電の発生、積算線量の積算閾値Xsへの到達、及び、タイマ204のタイムカウントのバックアップタイマ時間BTへの到達を待つ。やがて、積算線量Xが積算閾値Xsに達したならば(ステップS205のYES)、制御回路20は、X線管3への高電圧の印加を停止し(ステップS207)、タイマ204のタイムカウントを停止させてゼロにリセットし(ステップS208)、積算線量計測回路203による積算を停止させて(ステップS209)、1フレームのX線透過画像を生成するための動作が完了する。
【0069】
このように本実施形態においても、1回の放電が発生した際には、図7に示すインバータ動作期間T1,T2のようにインバータ21が放電発生前後の2回に分けて動作する。しかも、放電発生後のインバータ21の動作は、積算線量Xが積算閾値Xsに達するまで継続するので、適正な線量に基づくX線透過画像を確実に得ることができる。また、放電が発生した場合であっても、放電発生前のX線照射が有効に活用されるので、診断に寄与しない無駄なX線照射が減り、被検体Pの被爆量を低減できる。
【0070】
なお、ステップS206,S212において、タイマ204のタイムカウントがバックアップタイマ時間BTに達しているならば(ステップS206,S212のYES)、ステップS207〜S209又はステップS208〜S209を経て1フレームのX線透過画像を生成するための動作が完了する。
【0071】
このようにバックアップタイマ時間BT経過時にX線管3への高電圧印加を強制停止することで、重度の障害により放電が繰り返されるなどして動作がフリーズしたり、被検体Pに必要以上のX線を曝射するといった事態が防止される。
【0072】
以上説明した第1,第2の実施形態の構成によれば、放電発生中にはX線管3への電圧印加を停止するので、電圧生成装置2の故障やX線管3のさらなる耐電圧不良を誘発することがない。さらに、放電終了後には積算線量Xが適正な量に達するようにインバータ21を動作させるので、診断に適したX線透過画像が得られる。
【0073】
(変形例)
上記各実施形態に開示された構成は、実施段階において各構成要素を適宜変形して具体化できる。
【0074】
例えば、上記各実施形態では、制御回路20に設けられたCPUが同じく制御回路20に設けられたROMに記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより、X線管3に印加する電圧の制御に関わる種々の動作を実現するとした。しかしながら、これらの動作の全て、或いは一部は、CPUとは別途に設けられた回路等のハードウェアによって実現されてもよいし、上記コンピュータプログラムとハードウェアとを協調させることで実現されてもよい。
【0075】
また、上記コンピュータプログラムは、インターネット等のネットワークからX線診断装置や電圧生成装置2にダウンロードされてもよいし、CD−ROMやUSBメモリ等の記録媒体に記録された状態で提供され、X線診断装置や電圧生成装置2にインストールされてもよい。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
I…管電流、V…管電圧、X…積算線量、Vs…管電圧閾値、Td…撮影画像検出期間、Vsd…管電圧閾値、Isd…管電流閾値、T…インバータ動作期間、2…電圧生成装置、3…X線管、4…X線検出器、20…制御回路、21…インバータ、25…管電流計測回路、201…電圧計測回路、202…放電検出回路、203…積算線量計測回路、204…タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生するX線管と、
被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
X線を発生させるための電圧を生成して前記X線管に印加する電圧生成部と、
前記電圧生成部が生成した電圧が印加された前記X線管に生じる管電圧又は管電流を計測する計測部と、
前記計測部が計測した管電圧又は管電流に基づいて、前記X線管に生じる放電を検出する放電検出部と、
前記電圧生成部を動作させて前記X線管への電圧印加を開始させ、前記放電検出部が放電を検出した場合には前記電圧生成部の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、前記電圧生成部の積算動作期間が目標値に達すると前記電圧生成部の動作を停止させる制御部と、
前記X線検出器の検出結果に基づき、画像を生成する画像生成部と、
を備えていることを特徴とするX線診断装置。
【請求項2】
前記放電検出部が放電を検出したとき、前記制御部は前記目標値を、前記放電の発生に伴う管電圧の立ち下がり及び前記電圧生成部の動作再開に伴う管電圧の立ち上がりに応じた期間だけ長くなるように補正することを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
X線を発生するX線管と、
被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、
X線を発生させるための電圧を生成して前記X線管に印加する電圧生成部と、
前記電圧生成部が生成した電圧が印加された前記X線管に生じる管電圧又は管電流を計測する計測部と、
前記計測部が計測した管電圧又は管電流に基づいて、前記X線管に生じる放電を検出する放電検出部と、
前記電圧生成部を動作させて前記X線管への電圧印加を開始させ、前記放電検出部が放電を検出した場合には前記電圧生成部の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、前記X線検出器によって検出されるX線の積算線量が目標値に達すると前記電圧生成部の動作を停止させる制御部と、
前記X線検出器の検出結果に基づき、画像を生成する画像生成部と、
を備えていることを特徴とするX線診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、所定時間が経過するまでに前記積算線量が前記目標値に達しない場合、前記電圧生成部の動作を停止させることを特徴とする請求項3に記載のX線診断装置。
【請求項5】
X線を発生するX線管に印加する電圧を生成する電圧生成部と、
前記電圧生成部が生成した電圧が印加された前記X線管に生じる管電圧又は管電流を計測する計測部と、
前記計測部が計測した管電圧又は管電流に基づいて、前記X線管に生じる放電を検出する放電検出部と、
前記電圧生成部を動作させて前記X線管への電圧印加を開始させ、前記放電検出部が放電を検出した場合には前記電圧生成部の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、前記電圧生成部の積算動作期間が目標値に達すると前記電圧生成部の動作を停止させる制御部と、
を備えていることを特徴とする電圧生成装置。
【請求項6】
前記放電検出部が放電を検出したとき、前記制御部は前記目標値を、前記放電の発生に伴う管電圧の立ち下がり及び前記電圧生成部の動作再開に伴う管電圧の立ち上がりに応じた期間だけ長くなるように補正することを特徴とする請求項5に記載の電圧生成装置。
【請求項7】
X線を発生するX線管に印加する電圧を生成する電圧生成部と、
前記電圧生成部が生成した電圧が印加された前記X線管に生じる管電圧又は管電流を計測する計測部と、
前記計測部が計測した管電圧又は管電流に基づいて、前記X線管に生じる放電を検出する放電検出部と、
前記電圧生成部を動作させて前記X線管への電圧印加を開始させ、前記放電検出部が放電を検出した場合には前記電圧生成部の動作を一時停止させるとともに当該放電の終了後に再開させ、前記X線管から放射されるX線を検出するX線検出器によって検出されるX線の積算線量が目標値に達すると前記電圧生成部の動作を停止させる制御部と、
を備えていることを特徴とする電圧生成装置。
【請求項8】
前記制御部は、所定時間が経過するまでに前記積算線量が前記目標値に達しない場合、前記電圧生成部の動作を停止させることを特徴とする請求項7に記載の電圧生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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