説明

X線透視撮影台

【課題】単体故障時における安全機能を確認可能とするX線透視撮影台を提供する。
【解決手段】被検者101を載置する透視台102と、被検者101にX線を照射するX線管装置と、前記被検者の透過X線を検出するX線検出器と、前記X線管装置に電力を供給するX線高電圧装置と、これらの機器を操作する操作卓104と、前記透視台102を前記被検者101の身長方向に移動可能に支持する支持部109と、透視台102が支持部109に対して移動する可動範囲が異なる複数段の安全機構(105、106、107)とを備え、前記複数段の安全機構(105、106、107)のうちの任意の安全機構に動作確認を実施するときには、前記任意の安全機構よりも狭い可動範囲が設定された安全機構を非作動とする制御装置103を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線透視撮影台に係り、特にX線透視撮台の異常個所を認識する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のX線透視撮影台に関しては、特許文献1に記載されたものがある。
特許文献1は、X線を被検者に照射してX線透視・撮影を行う手段と、該X線透視・撮影によって得られたX線透視画像をモニタに表示する表示手段と、装置の正常動作許容範囲を予め設定しておき、装置の動作が該許容範囲を越えたとき異常であることを検出する異常検出手段と、該異常検出手段の出力に基づき装置の動作を停止させる制御手段とを有するX線透視撮影装置であって、前記異常検出手段の出力に基づき、異常個所を前記モニタ上に表示させる異常表示手段を備えることで、異常が発生したことを速やかにオペレータあるいは手術関係者に伝えることができるX線透視撮影装置を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-336526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1には、通常のX線透視撮影台に備わっているエンコーダ・マイクロスイッチ等の位置検出部品の故障(以下、単体故障という)が起きた際に動作する部品の確認方法が開示されていないため、X線透視撮影台が有している二重三重の安全機構を確認する方法を確立できなかったものと思料する。
【0005】
そこで、本発明は、単体故障時における安全機能を確認可能とするX線透視撮影台を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、被検者を載置する透視台と、前記被検者にX線を照射するX線管装置と、前記被検者の透過X線を検出するX線検出器と、前記X線管装置に電力を供給するX線高電圧装置と、これらの機器を操作する操作卓と、前記透視台を前記被検者の身長方向に移動可能に支持する支持部と、前記支持部に対する前記透視台の位置検出する位置検出部と、前記透視台が前記支持部に対して移動する可動範囲が異なる複数段の安全機構とを備えたX線透視撮影台であって、前記複数段の安全機構のうちの任意の安全機構に動作確認を実施するときには、前記任意の安全機構よりも狭い可動範囲が設定された安全機構を非作動とする制御部を備えたことを特徴とするX線透視撮影台によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、単体故障時における安全機能を確認可能とするX線透視撮影台を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の各実施例に採用するX線透視撮影台の構成例を示す構成図。
【図2】図1のX線透視撮影台の主要部を示すブロック図。
【図3】実施例1のソフトリミットの処理を示すフローチャート。
【図4】実施例1のマイクロスイッチの処理を示すフローチャート。
【図5】実施例1のメカストッパの処理を示すフローチャート。
【図6】実施例2の遠隔操作卓の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について図面を用いて説明する。図1は本発明の各実施例に採用するX線透視撮影台の構成例を示す構成図である。
【0010】
X線透視撮影台は、被検者 101に照射するX線を発生するX線管装置401と、X線管装置401に電力を供給するX線高電圧装置301と、これらの機器を統合的に操作する遠隔操作卓104とを備える。被検者101は臥位時には床面に水平となり、立位時には床面に垂直になる透視台と呼ばれる台に支持されている。
【0011】
X線透視撮影台を構成する機器のうち、X線透視撮影台102とX線高電圧装置301は、被検者101の透視撮影を行なう撮影室100に設置され、遠隔操作卓104は、撮影室100に隣接する操作室200に設置される。
【0012】
操作室200は、撮影室100で発生するX線を遮蔽できる構造を有しており、X線透視撮影台102を操作する操作者201への被検者のX線透視によるX線被曝を防止している。
【0013】
なお、撮影室100と操作室200との間には、窓200Wが設けられ、操作室200から撮影室100の様子を監視することができるようになっているが、この窓200Wも、撮影室100からのX線を 遮蔽できるように、鉛入りガラスなどで構成されている。
【0014】
X線高電圧装置301は、遠隔操作卓104に入力されたX線の強度と照射間隔情報に基づいて、電力をX線管装置401に供給する。供給される電力は、X線高電圧装置301の透視又は撮影に対応した管電圧(X線管球の陽極と陰極間に印加する電圧)と、管電流(X線管球の陽極と陰極間に流れる電流)の積である。
【0015】
また、X線透視撮影台102は、被検者101にX線を照射するX線管装置401と、支持枠30に支持され前記X線管装置401を支持する支柱部50と、支持枠30の内部でX線管装置401に対向して配置され、被検者101を透過したX線を検出する蛍光増倍管(イメージングインテシファイア)またはフラットパネルディテクタ(FPD)を用いたX線検出器70とを備える。
【0016】
図2は図1のX線透視撮影台の主要部を示すブロック図である。符号の101は被検者、102はX線透視撮影台(透視台)、103は制御装置、104は遠隔操作卓、105は駆動系のソフトリミット、106は位置検出用のマイクロスイッチ、107はメカストッパ(またはそれに準じる機構)、108は信号発生器(異常表示手段)、109は透視台102を例えば被検者102の身長方向に床面上に水平に移動可能に支持する支持部である。
【0017】
X線透視撮影台は、通常次の動作が行われる。
制御装置103は遠隔操作卓104より入力された操作信号に基づき、X線透視撮影台102を動作させる。このとき、X線透視撮影台102の可動部の位置及び傾斜角を図示しないロータリーエンコーダまたはポテンショメータを用いて位置情報制御装置103に出力する。X線透視撮影台102の位置が正常許容範囲の限界(以下駆動系のソフトリミット105)になる、また、X線透視撮影台102は安全上の機能として駆動系のソフトリミット105の範囲外に、位置検出用のマイクロスイッチ106、メカストッパ107を搭載している。位置検出用のマイクロスイッチ106、メカストッパ107は、X線透視撮影台102の意図しない動作・異常に対応するためであり、安全にX線透視撮影台を用いるには必須のものである。
【実施例1】
【0018】
実施例1では、制御装置103に単一故障モードを搭載しておき、第1の安全機構の確認を行う手順について図3を用いて説明する。図3は実施例1のソフトリミットの処理を示すフローチャートである。
【0019】
ステップS301(部品状態確認モードON)
制御部103は、部品状態確認モードを開始する。
【0020】
ステップS302(動作信号計算)
制御部103は、ソフトリミット105の位置を擬似的に計算する。X線透視撮影台102の各軸を遠隔操作卓104、もしくは制御装置103に予め組み込まれている自動運転制御を用いて動作させる。
【0021】
ステップS303(ソフトリミット検出?)
制御部103は、ソフトリミット105の正常な検出ができたか否かを判定する。判定の結果、検出可能と判定すればステップS304に移行する。また、検出不可能と判定すればステップS305に移行する。
【0022】
ステップS304(検出可を表示(確認音))
制御部103は、ソフトリミット105が検出可能と判定されたので、信号発生器108に検出可能の信号を生成させ、検出可をX線画像の表示モニタなどの表示器に表示するか、X線画像の表示モニタがパーソナルコンピュータである場合はそのパーソナルコンピュータに内蔵されるスピーカに確認音を鳴らせ、端子Aに移行する。
【0023】
ステップS305(検出不可を表示(警告音))
制御部103は、ソフトリミット105が検出不可能と判定されたので、信号発生器108に検出不可能の信号を生成させ、検出不可をX線画像の表示モニタなどの表示器に表示するか、パーソナルコンピュータに内蔵されるスピーカに警告音を鳴らせる。
【0024】
ステップS306(基板交換)
操作者は検出不可を表示又は警告音で認識したので、ソフトリミット105を作動させる基板を交換する。制御部103は、交換された基板の動作を確認するため、再びステップS302に移行する。
【0025】
図4は実施例1のマイクロスイッチの処理を示すフローチャートである。
【0026】
ステップS401(ソフトリミット動作OFF)
制御部103は、ソフトリミット動作を停止する。
【0027】
ステップS402(動作信号計算)
制御部103は、図示しないロータリーエンコーダまたはポテンショメータが故障したことによって、ソフトリミット105の位置(透視台の可動範囲)を超えてしまった状態を擬似的に計算する。この擬似的計算のもとでX線透視撮影台102の各軸を遠隔操作卓104、もしくは制御装置103に予め組み込まれている自動運転制御を用いて動作させる。
【0028】
ステップS403(マイクロスイッチ検出?)
制御部103は、マイクロスイッチ106の正常な検出ができたか否かを判定する。判定の結果、検出可能と判定すればステップS404に移行する。また、検出不可能と判定すればステップS405に移行する。
【0029】
ステップS404(検出可を表示(確認音))
制御部103は、マイクロスイッチ106が検出可能と判定されたので、信号発生器108に検出可能の信号を生成させ、検出可をX線画像の表示モニタなどの表示器に表示するか、X線画像の表示モニタがパーソナルコンピュータである場合はそのパーソナルコンピュータに内蔵されるスピーカに確認音を鳴らせ、端子Bに移行する。
【0030】
ステップS405(検出不可を表示(警告音))
制御部103は、マイクロスイッチ106が検出不可能と判定されたので、信号発生器108に検出不可能の信号を生成させ、検出不可をX線画像の表示モニタなどの表示器に表示するか、パーソナルコンピュータに内蔵されるスピーカに警告音を鳴らせる。
【0031】
ステップS406(マイクロスイッチ交換)
操作者は検出不可を表示又は警告音で認識したので、マイクロスイッチ106を交換する。制御部103は、交換されたマイクロスイッチ106の動作を確認するため、再びステップS402に移行する。
【0032】
図5は実施例1のメカストッパの処理を示すフローチャートである。
ステップS501(マイクロスイッチ動作OFF)
制御部103は、マイクロスイッチ動作を停止する。
【0033】
ステップS502(動作信号計算)
制御部103は、図示しないロータリーエンコーダまたはポテンショメータが故障したことによって、マイクロスイッチ106の位置(透視台の可動範囲)を超えてしまった状態を擬似的に計算する。この擬似的計算のもとでX線透視撮影台102の各軸を遠隔操作卓104、もしくは制御装置103に予め組み込まれている自動運転制御を用いて動作させる。
【0034】
ステップS503(メカストッパに接触?)
制御部103は、可動部がメカストッパ107に接触し停止したか否かを判定する。判定の結果、接触し停止したと判定すればステップS504に移行する。また、接触し停止しないと判定すればステップS506に移行する。
【0035】
ステップS504(問題なしを表示(確認音))
制御部103は、メカストッパ107が接触し停止したと判定されたので、信号発生器108に検出可能の信号を生成させ、接触後停止可をX線画像の表示モニタなどの表示器に表示するか、パーソナルコンピュータに内蔵されるスピーカに確認音を鳴らせる。
【0036】
ステップS505(部品状態確認モードOFF)
制御部103は、部品状態確認モードを終了する。
【0037】
ステップS506(問題ありを表示(警告音))
制御部103は、メカストッパ107が接触し停止しないと判定されたので、信号発生器108に検出不可能の信号を生成させ、接触後停止不可をX線画像の表示モニタなどの表示器に表示するか、パーソナルコンピュータに内蔵されるスピーカに警告音を鳴らせる。
【0038】
ステップS507(メカストッパ交換)
操作者は検出不可を表示又は警告音で認識したので、メカストッパ107を交換する。制御部103は、交換されたメカストッパの動作を確認するため、再びステップS302に移行する。
【0039】
以上説明した実施例1によれば、被検者101を載置する透視台102と、被検者101にX線を照射するX線管装置401と、前記被検者の透過X線を検出するX線検出器70と、前記X線管装置に電力を供給するX線高電圧装置301と、これらの機器を操作する操作卓104と、前記透視台102を前記被検者101の身長方向に移動可能に支持する支持部109と、透視台102が支持部109に対して移動する可動範囲が異なる複数段の安全機構(105.106、107)とを備え、前記複数段の安全機構(105.106、107)のうちの任意の安全機構に動作確認を実施するときには、前記任意の安全機構よりも狭い可動範囲が設定された安全機構を非作動とする制御装置103を備えるため、単体故障時における安全機能を確認可能とするX線透視撮影台を提供することができる。
【0040】
また、実施例1の特有の効果はメカストッパ107の耐久性・信頼性を事前に確認できる。メカストッパ107衝突時に欠損・破壊があった場合には、補修・修理を行うことで、事故が起きた際の最悪の事態(操作者・被検者の負傷)を回避できるため、長期に渡って安全なX線透視撮影台102を提供することが可能になる。
【0041】
また、衝突する位置は図示しないロータリーエンコーダまたはポテンショメータで制御システム103が監視しているため、メカストッパ107の位置に来た際には、その旨を信号発生器108に表示及び警告音として表すことで認識できる。
【実施例2】
【0042】
実施例1にて、位置検出用のマイクロスイッチ106、メカストッパ107の確認を行っている際には、図6に示すように、遠隔操作卓104より通常時では発生しない警告音を発し続けるようになっている。
【0043】
図6は実施例2の処理を示すフローチャートである。
ステップS601(部品状態確認モードON)
制御部103は、部品状態確認モードを開始する。
【0044】
ステップS602(部品状態確認モード固有の警告音ON)
制御部103は、部品状態確認モード固有の警告音を鳴らすモードを開始する。
【0045】
ステップS503(部品状態確認モードOFF)
制御部103は、部品状態確認モードを終了する。
【0046】
ステップS504(部品状態確認モード固有の警告音OFF)
制御部103は、部品状態確認モード固有の警告音を鳴らすモードを終了する。
以上説明した実施例2によれば、被検者101を載置する透視台102と、被検者101にX線を照射するX線管装置401と、前記被検者の透過X線を検出するX線検出器70と、前記X線管装置に電力を供給するX線高電圧装置301と、これらの機器を操作する操作卓104と、前記透視台102を前記被検者101の身長方向に移動可能に支持する支持部109と、透視台102が支持部109に対して移動する可動範囲が異なる複数段の安全機構(105.106、107)とを備え、前記複数段の安全機構(105.106、107)のうちの任意の安全機構に動作確認を実施するときには、前記任意の安全機構よりも狭い可動範囲が設定された安全機構を非作動とする制御装置103を備えるため、単体故障時における安全機能を確認可能とするX線透視撮影台を提供することができる。
【0047】
また、実施例2の特有の効果は、確認作業終了後の時点で、X線透視撮影台が通常状態であるか、または安全確認作業状態であるかを認識できるため、部品故障再現状態のままのX線透視撮影台を動作することを未然に防止することができる。
【0048】
(その他変形例)
上記実施例1では、ソフトリミット105、マイクロスイッチ106及びメカストッパ107の順序で動作確認を実施する例を説明したが、ソフトリミット105、マイクロスイッチ106、あるいはメカストッパ107を単独で動作確認を実施する場合もある。
【0049】
ソフトリミット105を単独で動作確認する場合は、図3〜図5のフローチャートで、ステップS301からステップS306を実施し、最後にステップS505を実施する。
【0050】
マイクロスイッチ106を単独で動作確認する場合は、図3〜図5のフローチャートで、ステップS301を実施し、引き続きステップS401からステップS406を実施し、最後にステップS505を実施する。
【0051】
メカストッパ107を単独で動作確認する場合は、図3〜図5のフローチャートで、ステップS301とステップS401を実施し、引き続きステップS501からステップS507を実施する。
以上説明したように、ソフトリミット105、マイクロスイッチ106、あるいはメカストッパ107を単独で動作確認を実施する場合には、上記手順で動作するプログラムを作成し、作成したプログラムを実行すればよい。
【符号の説明】
【0052】
100 撮影室、200 操作室、200W 窓、201 操作者、301 X線高電圧装置、401 X線管装置、30 支持枠、50 支柱部 、70 X線検出器、101 被検者、102 X線透視撮影台、103 制御装置、104 遠隔操作卓、105 ソフトリミット、106 位置検出用のマイクロスイッチ、107 メカストッパ、108 信号発生器(異常表示手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者を載置する透視台と、前記被検者にX線を照射するX線管装置と、前記被検者の透過X線を検出するX線検出器と、前記X線管装置に電力を供給するX線高電圧装置と、これらの機器を操作する操作卓と、前記透視台を前記被検者の身長方向に移動可能に支持する支持部と、前記支持部に対する前記透視台の位置検出する位置検出部と、前記透視台が前記支持部に対して移動する可動範囲が異なる複数段の安全機構とを備えたX線透視撮影台であって、
前記複数段の安全機構のうちの任意の安全機構に動作確認を実施するときには、前記任意の安全機構よりも狭い可動範囲が設定された安全機構を非作動とする制御部を備えたことを特徴とするX線透視撮影台。
【請求項2】
前記複数段の安全機構は、少なくとも前記透視台の可動範囲を最も狭く設定した第1段の安全機構と、前記第1段の安全機構よりも広い前記透視台の可動範囲を設定した第2段の安全機構と、前記第2段の安全機構よりも広い前記透視台の可動範囲を設定した第3段の安全機構とを有することを特徴とする請求項1に記載のX線透視撮影台。
【請求項3】
前記複数段の安全機構は、前記X線透視撮影台を制御するソフトウエアによる第1段の安全機構と、前記X線透視撮影台に設けられるハードウエアによる第2段の安全機構と、前記X線透視撮影台を構成する機構による第3段の安全機構とを有することを特徴とする請求項1に記載のX線透視撮影台。
【請求項4】
前記操作卓は、部品状態確認モード固有の警告音を発生することを特徴とする請求項1又は2に記載のX線透視撮影台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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