説明

X線CT装置、診断画像作成システムおよび診断画像作成方法

【課題】診断画像を生成するための画像処理を行なう際、必要な範囲を指定して2D画像データをロードすることにより、より短時間で診断画像を作成することが可能なX線CT装置、診断画像作成システムおよび診断画像作成方法である。
【解決手段】生データを収集する生データ収集手段23、24、25、26と、生データからMPR画像データを生成するMPR画像再構成手段35aと、MPR画像データを保存するMPR画像データベース35bと、ロードすべきMPR画像データの範囲を指定するロード範囲指定手段35cと、指定範囲のMPR画像データをMPR画像データベース35bからロードする画像ロード手段35dと、ロードされたMPR画像データを元データとして3次元画像データを再構成する画像再構成手段35fと、3次元画像データを元データとして目的に応じた各種画像処理を行なうことにより診断画像を作成する画像処理手段35gとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体から収集された生体情報から診断画像を生成するための画像処理を行なう際、画像処理に必要な範囲を指定してデータをロードすることが可能なX線CT装置、診断画像作成システムおよび診断画像作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像診断装置の1つであるX線CT装置は、X線を被検体に照射して収集されたX線検出データから被検体の診断画像を再構成する装置である。
【0003】
図10は、従来のX線CT装置の構成の一例を示す図である、図11は、図10に示す従来のX線CT装置により、診断画像を生成する際における手順を示すフローチャートである。
【0004】
従来のX線CT装置1は、ガントリ部2とコンピュータ装置3とで構成される。ガントリ部2のX線管23に高電圧発生装置5から管電流や管電圧が供給され、被検体PにX線が照射される。被検体Pに照射され、被検体Pを透過したX線は、X線検出器6で検出される。X線検出器6の出力であるX線検出信号はデータ収集部7に与えられてデジタル化された生データが生成される。データ収集部7で生成された生データは、コンピュータ装置3に与えられ、一旦、記憶装置8に保存される。
【0005】
つまり、図11のステップS1に示すようにスキャンが実行され、生データが収集される。次に、ステップS2において収集された生データから画像データが再構成される。
【0006】
画像データを再構成する場合には、まず生データが前処理部9に与えられて各種補正処理等の前処理が施された後、投影データに変換される。投影データは、メモリ部10において一時的に保存された後、画像再構成部11に与えられる。そして、画像再構成部11において、投影データからCT画像データが診断画像として再構成され、再構成されたCT画像データは記憶装置8に書き込まれて保存される。
【0007】
この際、コンピュータ装置3内において、各データは制御部12により管理され、必要な情報は入力部13からコンピュータ装置3に入力される一方、生成された各種画像等の情報が画像表示部14に表示される。
【0008】
コンピュータ装置3において生成されるCT画像データは、通常各スライスにおける複数の2次元(2D)画像データとして再構成されて記憶装置8に保存されるが、実際の診断に際しては、今やこれらの複数の2D画像データからシェーディング・ボリューム・レンダリング(SVR:Shading volume rendering)画像、最大値投影(MIP:Maximum Intensity Projection;)画像、断面変換(MPR:Multi−planar reconstruction;)画像等の画像データを生成するために3次元(3D)画像データを作成することが必須となる。このため、記憶装置8に保存された2D画像データは、3D画像データ作成のために、コンピュータ装置3内に各種プログラムや回路構成より形成された診断画像作成システム15に読み込まれる。
【0009】
すなわち、図11のステップS3に示すように、診断画像作成システム15の画像ロード手段15aにより、記憶装置8に保存された2D画像データのうち、目的とする3D画像データの作成のために必要な全て2D画像データが診断画像作成システム15にロードされる。つまり、記憶装置8に保存された2D画像データは、患者ごとに例えばStudyと呼ばれるカテゴリに分類され、共通のStudyに属する2D画像データは、さらに患者の頭部や胸部等の部位別に例えばSeriesと呼ばれるカテゴリに分類される。
【0010】
そして、各Series内では、ある患者の特定の部位における複数の2D画像データが例えばImageデータとして識別管理される。
【0011】
このときロードの対象となる2D画像データを指定するために、記憶装置8に保存された2D画像データのリスト(Studyリスト、Seriesリスト、Imageリスト)を文字情報として表示する機能が備えられた装置も既に提供されている。さらに、Imageリストから2D画像データを1枚1枚個別に選択すると、選択された2D画像データが参照用に縮小表示されるように構成した装置も提供されている。
【0012】
そして、あるSeriesが選択されて、選択されたSeriesに属する全ての2D画像データが3D画像データの作成のためにロードされることとなる。
【0013】
次に、ステップS4に示すように、画像再構成手段15bにより、ロードされた2D画像データから3D画像データが再構成される。さらに、ステップS5において、再構成された3D画像データを元データとして画像処理手段15cにより各種画像処理が施されて、目的に応じたSVR画像、MIP画像、MPR画像等の診断画像が作成される。
【0014】
さらに、同様に別の患者や別の部位における診断画像を作成する場合には、再びステップS3において対応する患者の部位におけるSeriesが選択され、選択されたSeriesに属する全ての2D画像データがロードされる。
【0015】
尚、関連する画像表示装置として、例えば特許文献1に参照される技術がある。
【特許文献1】特開2000−200341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
近年、X線CT装置の性能は、ハード面およびソフト面のいずれについても向上されているものの、依然、MPR画像データや3D画像データのようなデータサイズの大きい情報の作成に要する情報処理時間は無視できないものであると言える。まして、これからはマルチスライスCTの導入が進んでおり、撮影1回当たりの画像数は従来と比べて10倍から100倍にも増加しているのが現状である。
【0017】
このような背景から、ある診断画像を得るために、全ての2D画像データを逐一ロードして3D画像データを再構成するとなると、膨大な時間が必要となることが予想される。
【0018】
加えて、一旦ロードした2D画像データのうち、ある特定の範囲内の2D画像データのみを用いて3D画像データの再構成処理を行なうことができない。このため、3D画像データからMPR画像等の画像を作成するための画像処理にも、ロードした2D画像データ数(Volumeサイズ)の大きさに依存してより多くの時間がかかることとなる。
【0019】
一方、ロード対象となる2D画像データを選択する際における参照用の2D画像は、文字情報であるリストから選択された2D画像のみが表示されるため、記憶装置8に保存されている各2D画像データの全体像、すなわち3次元的なイメージが把握しにくく、本当に必要な範囲のみの2D画像データをロードすることも容易ではない。
【0020】
また、このような問題は、X線CT装置1に限らず、2D画像データから3D画像データを再構成させるMRI装置等の画像診断装置においても共通の問題であると考えられる。
【0021】
本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、被検体から収集された生体情報から診断画像を生成するための画像処理を行なう際、画像処理に必要な範囲を指定して2D画像データをロードすることにより、より短時間で診断画像を作成することが可能なX線CT装置、診断画像作成システムおよび診断画像作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明に係るX線CT装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、被検体にX線を照射するとともに前記被検体を透過したX線を検出することにより生データを収集する生データ収集手段と、前記生データからMPR画像データを生成するMPR画像再構成手段と、前記MPR画像データを保存するMPR画像データベースと、3次元画像データの再構成のために前記MPR画像データベースからロードすべき前記MPR画像データの範囲を指定するロード範囲指定手段と、このロード範囲指定手段により指定された範囲の前記MPR画像データを前記MPR画像データベースからロードする画像ロード手段と、前記画像ロード手段によりロードされた前記MPR画像データを元データとして前記3次元画像データを再構成する画像再構成手段と、前記画像再構成手段により再構成された前記3次元画像データを元データとして目的に応じた各種画像処理を行なうことにより診断画像を作成する画像処理手段とを有することを特徴とするものである。
【0023】
また、本発明に係る診断画像作成システムは、上述の目的を達成するために、請求項5に記載したように、画像診断装置において収集された生データからMPR画像データを生成するMPR画像再構成手段と、前記MPR画像データを保存するMPR画像データベースと、3次元画像データの再構成のために前記MPR画像データベースからロードすべき前記MPR画像データの範囲を指定するロード範囲指定手段と、このロード範囲指定手段により指定された範囲の前記MPR画像データを前記MPR画像データベースからロードする画像ロード手段と、前記画像ロード手段によりロードされた前記MPR画像データを元データとして前記3次元画像データを再構成する画像再構成手段と、前記画像再構成手段により再構成された前記3次元画像データを元データとして目的に応じた各種画像処理を行なうことにより診断画像を作成する画像処理手段とを有することを特徴とするものである。
【0024】
また、本発明に係る診断画像作成方法は、上述の目的を達成するために、請求項6に記載したように、画像診断装置において収集された生データからMPR画像データを生成するステップと、前記MPR画像データを保存するステップと、前記保存された前記MPR画像データのうち3次元画像データの再構成のためにロードすべき前記MPR画像データの範囲を指定するステップと、ロードすべき前記MPR画像データの範囲として指定された範囲の前記MPR画像データを前記保存された前記MPR画像データからロードするステップと、前記ロードされた前記MPR画像データを元データとして前記3次元画像データを再構成するステップと、前記再構成された前記3次元画像データを元データとして目的に応じた各種画像処理を行なうことにより診断画像を作成するステップとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るX線CT装置、診断画像作成システムおよび診断画像作成方法においては、被検体から収集された生体情報から診断画像を生成するための画像処理を行なう際、画像処理に必要な範囲を指定して2D画像データをロードすることにより、より短時間で診断画像を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に係るX線CT装置、診断画像作成システムおよび診断画像作成方法の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0027】
図1は本発明に係るX線CT装置の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【0028】
X線CT装置20は、ガントリ部21およびコンピュータ装置22とから構成される。ガントリ部21は、X線管23、高電圧発生装置24、X線検出器25およびデータ収集部26(DAS;Data Aquisition System)を有する。X線管23とX線検出器25とは、高速で且つ連続的に回転する図示しない回転リングに被検体Pを挟んで互いに対向する位置に搭載される。
【0029】
そして、高電圧発生装置24はコンピュータ装置22からの制御信号によりX線管23に管電流や管電圧を供給し、X線検出器25で被検体Pを透過したX線を検出できるように構成される。さらに、X線検出器25で検出されたX線検出信号はデータ収集部26に与えられてデジタル化され、生データとしてコンピュータ装置22に与えられる構成とされる。つまり、高電圧発生装置24、X線管23、X線検出器25、データ収集部26により被検体Pの生体情報である生データを収集する生データ収集手段としての機能がX線CT装置20に備えられる。
【0030】
コンピュータ装置22は、画像処理装置27、画像表示部28および入力部29とから構成される。画像処理装置27は、制御部30を中枢として、データ収集部26から出力される生データを補正処理等を経て投影データに変換する前処理部31、投影データを記憶するメモリ部32、投影データからCT画像データを再構成する画像再構成部33、CT画像データやデータ収集部26から出力された生データを一時的に保管する記憶装置34、記憶装置34からCT画像データや生データを読み込んで診断画像を生成する診断画像作成システム35とから構成される。
【0031】
診断画像作成システム35は、MPR画像再構成手段35a、MPR画像データベース35b、ロード範囲指定手段35c、画像ロード手段35d、再構成範囲指定手段35e、画像再構成手段35f、画像処理手段35gを備える。
【0032】
MPR画像再構成手段35aは、記憶装置34に保存された生データあるいはCT画像データを元データとして画像再構成処理を施すことにより、3D画像データを再構成する際の元データとしてMPR画像データを生成する機能を有する。尚、MPR画像再構成手段35aが、MPR画像データを生データから直接生成するように構成すれば、より少ない情報処理でMPR画像データを生成することができる。また、再構成されるMPR画像データは、Axial断面、Sagittal断面、Coronal断面の全てについての2D画像データとすることが望ましいが、これらの2D画像データの一部としたり、他の断面における2D画像データとしてもよい。
【0033】
MPR画像データベース35bには、MPR画像再構成手段35aにより生成されたMPR画像データが保存される。尚、記憶装置34をMPR画像データベース35bとして利用してもよい。
【0034】
ロード範囲指定手段35cは、3D画像データの再構成のためにロードすべきMPR画像データの範囲を入力部29からの情報に基づいて指定する機能と、指定されたロード範囲をロード範囲情報として画像ロード手段35dに与える機能を有する。
【0035】
また、ロード範囲指定手段35cは、MPR画像データベース35bに保存されたMPR画像データを画像表示部28に与えることにより、3D画像データを再構成するためにロードすべきMPR画像データの範囲の指定が容易となるように参照用に表示させる機能を有する。さらに、ロード範囲指定手段35cには、参照用に表示させるMPR画像データを指定するための画像リスト表示画面情報を画像表示部28に与えて表示させる機能も備えられる。
【0036】
そして、例えば、マウス等の入力部29の操作により、画像リスト表示画面やロード範囲を指定するためのロード範囲指定画面を画像表示部28に表示させることができるように画像リスト表示アプリケーションあるいはロード範囲指定画面表示アプリケーションとして動作するように構成される。
【0037】
画像ロード手段35dは、ロード範囲指定手段35cから受けたロード範囲情報に基づいて、指定されたロード範囲に含まれるMPR画像データをMPR画像データベース35bからロードする機能と、ロードしたMPR画像データを画像再構成手段35fに与える機能とを有する。
【0038】
再構成範囲指定手段35eは、画像ロード手段35dによりロードされたMPR画像データのうち、3D画像データの再構成のための元データとすべき範囲を入力部29からの情報に基づいて指定する機能と、指定された範囲を再構成範囲情報として画像再構成手段35fに与える機能を有する。
【0039】
画像再構成手段35fは、再構成範囲指定手段35eから受けた再構成範囲情報に基づいて、3D画像データの再構成のための元データとすべき範囲に含まれるMPR画像データに対して画像再構成処理を施すことにより、3D画像データを生成する機能と、生成した3D画像データを画像処理手段35gに与える機能を有する。
【0040】
画像処理手段35gは、画像再構成手段35fから受けた3D画像データを元データとして、目的に応じた各種画像処理を行なうことにより、SVR画像、MIP画像、任意断面におけるMPR画像といった診断画像を作成する機能と、必要に応じて作成した診断画像を画像表示部28に与えて表示させる機能とを有する。
【0041】
次に、X線CT装置20の作用について説明する。
【0042】
図2は、図1に示すX線CT装置20により、スキャンを実行してから診断画像を作成するまでの手順の一例を示すフローチャートであり、図中Sに数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0043】
まず、ステップS10において、スキャンにより被検体の生データが収集される。すなわち、高電圧発生装置24からX線管23に管電流や管電圧が供給され、被検体PにX線が照射される。被検体Pに照射され、被検体Pを透過したX線は、X線検出器25で検出される。X線検出器25の出力であるX線検出信号はデータ収集部26に与えられてデジタル化された生データが生成される。
【0044】
データ収集部26は、生成した生データを記憶装置34に書き込むが、必要に応じて前処理部31において生データは各種補正処理等の前処理が施された後、記憶装置34に保存される。
【0045】
次に、ステップS11において、MPR画像再構成手段35aは、記憶装置34に保存された生データを元データとして画像再構成処理を施すことにより、3D画像データを再構成する際の元データとしてMPR画像データを生成する。MPR画像再構成手段35aにより、再構成されるMPR画像データは、例えばAxial断面、Sagittal断面、Coronal断面の全てについての2D画像データとされる。そして、生成されたMPR画像データは、MPR画像データベース35bに保存される。
【0046】
次に、ステップS12において、3D画像データを再構成するためにロードすべきMPR画像データの範囲が指定される。そのために、まず、ロードすべきMPR画像データの範囲をユーザが指定できるように、ロード範囲指定手段35cはMPR画像データベース35bに保存された各MPR画像データの画像リスト表示画面情報を作成して画像表示部28に与える。このため、画像表示部28には、MPR画像データの画像リスト表示画面が表示される。すなわち、ユーザは、マウス等の入力部29の操作により、画像リストの表示指令をロード範囲指定手段35cに与えることにより、画像リスト表示アプリケーションを起動させる。
【0047】
図3は、図1に示すX線CT装置20の画像表示部28に表示されるMPR画像データの画像リスト表示画面の一例を示す図である。
【0048】
図3に示すように、画像表示部28には、MPR画像データの画像リスト表示画面が表示される。MPR画像データ(Axial断面、Sagittal断面、Coronal断面の2D画像データ)は、患者ごとに例えばStudyと呼ばれるカテゴリに分類され、共通のStudyに属するMPR画像データは、さらに患者の頭部や胸部等の部位別に例えばSeriesと呼ばれるカテゴリに分類される。そして、各Series内では、ある患者の特定の部位における複数のMPR画像データが例えばImageとして分類されて識別管理される。
【0049】
このため、画像リスト表示画面には、Studyリスト、Seriesリスト、Imageリストが表示される。そして、ユーザは、画像リスト表示画面からStudyやSeriesをマウス等の入力部29から選択することができる。さらに、Seriesに属するMPR画像データであるImageデータを選択することができる。
【0050】
また、画像リスト表示画面には、プレビューとしてMPR画像データ表示部40が設けられ、選択されたImageデータが参照用に表示される。さらに、スクロールバーやボタン等のGUI(Graphical User Interface)を用いることにより、複数のImageデータを選択して切り換えて移動可能にMPR画像データ表示部40に表示させることもできる。
【0051】
MPR画像データが画像リスト表示画面において文字情報として選択され、ロード範囲指定用に決定されると、ロード範囲指定画面表示アプリケーションが起動し、画像表示部28には、ロード範囲指定画面が表示される。すなわち、ロード範囲指定手段35cは、MPR画像データベース35bに保存されたMPR画像データであるAxial断面、Sagittal断面、Coronal断面の2D画像データを画像表示部28に与える。
【0052】
図4は、図1に示すX線CT装置20の画像表示部28に表示されるMPR画像データのロード範囲指定画面の一例を示す図である。
【0053】
図4に示すように、ロード範囲指定画面には、Axial断面、Sagittal断面、Coronal断面の2D画像データが表示される。さらに、GUIによりレイアウトの変更が可能であり、参照用の付帯機能としてスライス厚の計測機能を始めとする各種機能が設けられる。
【0054】
このため、ユーザは、Axial断面、Sagittal断面、Coronal断面の2D画像データを参照し、必要に応じて各種付帯機能を活用することにより、被検体Pの3次元的なイメージを把握することができる。
【0055】
次に、ロード範囲指定画面を介したMPR画像データのロード範囲の指定手順の一例について説明する。まず、入力部29の操作により、Axial断面、Sagittal断面、Coronal断面の2D画像データにオーバーレイを表示させる。
【0056】
図5は、図4に示すロード範囲指定画面にオーバーレイを表示させた例を示す図である。
【0057】
図5に示すように、例えば、Axial断面、Sagittal断面、Coronal断面の2D画像データそれぞれについて、水平方向および垂直方向にそれぞれオーバーレイが表示される。また、ロード範囲指定画面には、ロード範囲指定用の各種アプリケーション42がボタンとして表示される。
【0058】
そして、例えば、マウスによりロード範囲指定の開始が選択されると、ロード範囲指定用のアプリケーションが起動し、必要な画面が表示される。
【0059】
図6は、図5に示すロード範囲指定画面にオーバーレイを表示させた場合において、ロード範囲の指定を開始させる際における画面の一例を示す図である。
【0060】
図6に示すように、マウスによりロード範囲指定の開始が選択されると、具体的な指示を与えるための画面43が表示される。
【0061】
次に、マウスによるドラッグ等の入力部29の操作により、オーバーレイ41をロード範囲の境界としたい位置に移動する。そして、例えばマウスの右ボタンをクリックすると、サブメニューが表示される。
【0062】
図7は、図6に示すロード範囲指定画面に表示されたオーバーレイ41を移動させた例を示す図である。
【0063】
図7に示すように、例えば、水平方向のオーバーレイ41をロード範囲指定画面の上方向に移動させて、マウスの右ボタンをクリックすると、サブメニュー44が表示される。ここで、サブメニュー44の開始(start)を選択すると、水平方向のオーバーレイ41の位置が水平方向のロード範囲の開始位置として確定される。
【0064】
図8は、図7に示すロード範囲指定画面の水平方向のオーバーレイ41をロード範囲の開始位置として確定させた例を示す図である。
【0065】
図8に示すように、オーバーレイ41の位置がロード範囲の開始位置として確定されると、例えば、逆三角形のマーク45でロード範囲の開始位置である旨が表示される。
【0066】
さらに同様な手順で、オーバーレイ41の移動により水平方向のロード範囲の終了位置を確定することができる。
【0067】
図9は、図8に示すロード範囲指定画面において、水平方向のオーバーレイ41を移動させてロード範囲の終了位置を確定させた例を示す図である。
【0068】
図9に示すように、オーバーレイ41の移動により水平方向のロード範囲の終了位置が確定されると、例えば、三角形のマーク46でロード範囲の終了位置である旨が表示される。この結果、水平方向のロード範囲が確定する。
【0069】
このようにして、ロード範囲指定画面を介したGUI技術によりMPR画像データのロード範囲を指定することができる。また、必要に応じて垂直方向のロード範囲を指定することもできる。さらに、このようなロード範囲の指定は変更することも可能であり、マウスに限らず、キー等の他の入力部29の操作によっても行なうことができる。
【0070】
そして、例えばマウス等の入力部29の操作により、指定したロード範囲のロードを図5におけるロード範囲指定画面において指示すると、ロード範囲指定手段35cは、指定されたロード範囲をロード範囲情報として画像ロード手段35dに与える。
【0071】
そして図2の、ステップS13において、画像ロード手段35dは、ロード範囲指定手段35cから受けたロード範囲情報に基づいて、指定されたロード範囲に含まれるMPR画像データをMPR画像データベース35bからロードする。このため、ロードされるMPR画像データは、診断画像の生成に必要と考えられる範囲のみとなり、より少ない情報処理量で短時間にMPR画像データをロードすることができる。そして、画像ロード手段35dは、ロードしたMPR画像データを画像再構成手段35fに与える。
【0072】
この結果、ロードされたMPR画像データを元データとして3D画像データの再構成が可能となる。ここで、3D画像データの再構成には、3次元的な情報を含んだMPR画像データが元データとして利用されるため、ロードされたMPR画像データから、さらに3D画像データの再構成に用いる3D画像データの範囲を指定することもできる。
【0073】
そこで、ステップS14において、3D画像データの再構成に用いる3D画像データの範囲を指定する場合には、入力部29の操作により、3D画像データの再構成のための元データとすべきMPR画像データの範囲が再構成範囲指定手段35eに与えられる。3D画像データを再構成する際のMPR画像データの範囲の指定方法は任意であるが、例えばロード範囲の指定方法と同様にGUIを用いて実現することができる。そして、再構成範囲指定手段35eは、指定されたMPR画像データの範囲を再構成範囲情報として画像再構成手段35fに与える。
【0074】
次に、ステップS15において、画像再構成手段35fは、再構成範囲指定手段35eから受けた再構成範囲情報に基づいて、3D画像データの再構成のための元データとすべき範囲に含まれるMPR画像データに対して画像再構成処理を施すことにより、3D画像データを生成する。このため、診断画像に必要な範囲と考えられる3D画像データのみを元データとして、より少ない情報処理量で短時間に3D画像データを再構成することができる。そして、画像再構成手段35fは、生成された3D画像データを画像処理手段35gに与える。
【0075】
次に、ステップS15において、画像処理手段35gは、画像再構成手段35fから受けた3D画像データを元データとして、目的に応じた各種画像処理を行なうことにより、SVR画像、MIP画像、任意断面におけるMPR画像といった診断画像を作成する。そして、画像処理手段35gは、作成した診断画像を画像表示部28に与えて表示させる。
【0076】
このため、ユーザは、より少ない情報処理量で短時間に生成されて表示された診断画像を参照することにより、各種診断を行なうことが可能となる。
【0077】
次に、ステップS16において、ユーザは別途診断画像を生成する場合には、診断画像の生成に必要な3D画像データの範囲を入力部29の操作によって指定する。すなわち、既にロードしたMPR画像データの範囲内で3D画像データを再構成できる場合には、3D画像データの再構成処理の元データとすべき再構成範囲が指定される。そして、再びステップS14において再構成範囲指定手段35eにより再構成範囲が決定され、3D画像データおよび診断画像が、それぞれ画像再構成手段35fおよび画像処理手段35gにより生成される。
【0078】
つまり、3D画像データの再構成処理の元データがMPR画像データであるため、既にロードしたMPR画像データの範囲内で3D画像データを再構成できる場合には、再度MPR画像データをロードすることなく、より簡易な処理で短時間に3D画像データおよび診断画像を生成することが可能となる。
【0079】
一方、既にロードしたMPR画像データの範囲内で3D画像データを再構成でない場合には、MPR画像データのロード範囲が指定される。そして、再びステップS12において、ロード範囲指定手段35cによりMPR画像データのロード範囲が確定され、同様な手順で3D画像データおよび診断画像が生成される。
【0080】
ただし、このとき、3D画像データの再構成処理に必要な全てのMPR画像データをロード範囲とする必要はなく、既にロードされたMPR画像データのうち新たな3D画像データの再構成処理に必要なMPR画像データをロード範囲から除外するとともに、既にロードされたMPR画像データのうち新たな3D画像データの再構成処理に不要なMPR画像データを消去するようにすることができる。
【0081】
つまり、以上のようなX線CT装置20は、3D画像データを再構成するためにロードすべきデータを文字情報であるリストから選択して指定するのではなく、生データあるいは2D画像データから自動的に作成されたMPR画像データ(Axial、Sagittal、Coronalの2D画像データ)を表示させることにより、MPR画像上で3D画像データの再構成に必要な範囲を指定してロードするものである。
【0082】
このため、X線CT装置20によれば、3D画像データの再構成に必要な、よりデータサイズの小さいMPR画像データのみを指定して容易かつ短時間にロードすることができる。この結果、不要なデータのロードがなくなって、ロードされる画像枚数(Volumeサイズ)に依存して増加するMPR画像データの生成、3D画像データの再構成、各種画像処理といった処理の処理時間を低減させることが可能となる。
【0083】
また、X線CT装置20によれば、3D画像再構成する都度、必要な全てのMPR画像データをロードさせずに、既にロードされているMPR画像データの範囲外におけるMPR画像データのみをロードさせればよいことにできる。このため、さらにロード時間や各種情報処理時間を低減させて、常に少ないデータでX線CT装置20を動作させ続けることも可能となる。特に既にロードされているMPR画像データの範囲内において3D画像を再構成する場合には、MPR画像データのロードが不要となるため有効である。
【0084】
尚、上述した診断画像作成方法は、X線CT装置20に限らず、MRI装置等の他の画像診断装置における3D画像データの再構成処理や診断画像の作成に適用させることができる。このため、診断画像作成システム35をX線CT装置20内に設けずに独立して構成してもよく、逆に他の画像診断装置に内蔵してもよい。また、目的に応じて診断画像作成システム35の構成要素の一部を省略してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明に係るX線CT装置の実施の形態を示す機能ブロック図。
【図2】図1に示すX線CT装置により、スキャンを実行してから診断画像を作成するまでの手順の一例を示すフローチャート。
【図3】図1に示すX線CT装置の画像表示部に表示されるMPR画像データの画像リスト表示画面の一例を示す図。
【図4】図1に示すX線CT装置の画像表示部に表示されるMPR画像データのロード範囲指定画面の一例を示す図。
【図5】図4に示すロード範囲指定画面にオーバーレイを表示させた例を示す図。
【図6】図5に示すロード範囲指定画面にオーバーレイを表示させた場合において、ロード範囲の指定を開始させる際における画面の一例を示す図。
【図7】図6に示すロード範囲指定画面に表示されたオーバーレイを移動させた例を示す図。
【図8】図7に示すロード範囲指定画面の水平方向のオーバーレイをロード範囲の開始位置として確定させた例を示す図。
【図9】図8に示すロード範囲指定画面において、水平方向のオーバーレイを移動させてロード範囲の終了位置を確定させた例を示す図。
【図10】従来のX線CT装置の構成の一例を示す図。
【図11】図10に示す従来のX線CT装置により、診断画像を生成する際における手順を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0086】
20 X線CT装置
21 ガントリ部
22 コンピュータ装置
23 X線管
24 高電圧発生装置
25 X線検出器
26 データ収集部
27 画像処理装置
28 画像表示部
29 入力部
30 制御部
31 前処理部
32 メモリ部
33 画像再構成部
34 記憶装置
35 診断画像作成システム
35a MPR画像再構成手段
35b MPR画像データベース
35c ロード範囲指定手段
35d 画像ロード手段
35e 再構成範囲指定手段
35f 画像再構成手段
35g 画像処理手段
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体にX線を照射するとともに前記被検体を透過したX線を検出することにより生データを収集する生データ収集手段と、
前記生データからMPR画像データを生成するMPR画像再構成手段と、
前記MPR画像データを保存するMPR画像データベースと、
3次元画像データの再構成のために前記MPR画像データベースからロードすべき前記MPR画像データの範囲を指定するロード範囲指定手段と、
このロード範囲指定手段により指定された範囲の前記MPR画像データを前記MPR画像データベースからロードする画像ロード手段と、
前記画像ロード手段によりロードされた前記MPR画像データを元データとして前記3次元画像データを再構成する画像再構成手段と、
前記画像再構成手段により再構成された前記3次元画像データを元データとして目的に応じた各種画像処理を行なうことにより診断画像を作成する画像処理手段と、
を有することを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記画像ロード手段によりロードされた前記MPR画像データのうち前記3次元画像データの再構成のための元データとすべき範囲を指定する再構成範囲指定手段を設け、前記画像再構成手段は、前記再構成範囲指定手段により指定された範囲の前記3次元画像データを元データとして前記3次元画像データを再構成するように構成したことを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記MPR画像再構成手段は、前記生データから直接MPR画像データを生成するように構成したことを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記ロード範囲指定手段は、前記MPR画像データベースに保存された前記MPR画像データを表示させ、表示させた前記MPR画像データを介してロードすべき前記MPR画像データの範囲を指定することができるように構成したことを特徴とする請求項1記載のX線CT装置。
【請求項5】
画像診断装置において収集された生データからMPR画像データを生成するMPR画像再構成手段と、
前記MPR画像データを保存するMPR画像データベースと、
3次元画像データの再構成のために前記MPR画像データベースからロードすべき前記MPR画像データの範囲を指定するロード範囲指定手段と、
このロード範囲指定手段により指定された範囲の前記MPR画像データを前記MPR画像データベースからロードする画像ロード手段と、
前記画像ロード手段によりロードされた前記MPR画像データを元データとして前記3次元画像データを再構成する画像再構成手段と、
前記画像再構成手段により再構成された前記3次元画像データを元データとして目的に応じた各種画像処理を行なうことにより診断画像を作成する画像処理手段と、
を有することを特徴とする診断画像作成システム。
【請求項6】
画像診断装置において収集された生データからMPR画像データを生成するステップと、
前記MPR画像データを保存するステップと、
前記保存された前記MPR画像データのうち3次元画像データの再構成のためにロードすべき前記MPR画像データの範囲を指定するステップと、
ロードすべき前記MPR画像データの範囲として指定された範囲の前記MPR画像データを前記保存された前記MPR画像データからロードするステップと、
前記ロードされた前記MPR画像データを元データとして前記3次元画像データを再構成するステップと、
前記再構成された前記3次元画像データを元データとして目的に応じた各種画像処理を行なうことにより診断画像を作成するステップと、
を有することを特徴とする診断画像作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−87826(P2006−87826A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280206(P2004−280206)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】