説明

X線CT装置

【課題】より適切なタイミングで造影イメージングスキャンを実行することによって、より少ない被曝量で必要なX線造影CT画像を得ることである。
【解決手段】X線CT装置は、スキャン条件設定手段及びイメージング手段を備える。スキャン条件設定手段は、被検体に注入された造影剤の濃度の指標値に応じて不等間隔でX線検出データのサンプリング間隔を設定する。イメージング手段は、前記サンプリング間隔でX線検出データを収集し、収集したX線検出データに基づいて造影画像データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CT (computed tomography)装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、X線CT装置によるイメージング法の1つとして、造影イメージングが行われている。造影イメージングでは、被検体の血管に造影剤が注入され、主に血流動態がイメージングされる。従来の血流パフュージョン用の造影イメージングは、造影剤注入後に一定間隔で実行される間欠スキャン、間欠スキャン後に実行される連続スキャン及び連続スキャン後に実行される間欠スキャンで構成される。
【0003】
間欠スキャンはX線を断続的に被検体に照射して一定間隔で繰り返されるスキャンであり、連続スキャンはX線の照射を停止させずに連続的に行う単一のスキャンである。間欠スキャン及び連続スキャンの実行タイミングは、造影剤の注入時刻からの経過時間によって制御される。
【0004】
例えば、造影剤の注入時刻からT0秒後に間欠スキャンが開始され、その後のT1秒後に連続スキャンが開始される。更に、造影剤の注入時刻からT2秒後に連続スキャンが終了する一方、間欠スキャンが開始される。そして、造影剤の注入時刻からT3秒後に連続スキャン後の間欠スキャンが終了する。
【0005】
また、画像上に関心領域(ROI: region of interest)を設定し、ROI内におけるCT値に応じて間欠スキャン及び連続スキャンの実行タイミングを決定する技術も提案されている。この技術では、間欠スキャンが開始された後にCT値が第1の閾値を超えると連続スキャンが開始される。そして、CT値が第1の閾値以下となると連続スキャンが終了する一方、間欠スキャンが開始される。更に、CT値が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となると、間欠スキャンが終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−207876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したようなX線CT装置による造影イメージングでは、より適切なタイミングで間欠スキャン及び連続スキャンを実行することが望まれる。また、必要以上にスキャンが実行されることによる被検体の被曝量の増加を抑制することが望まれる。
【0008】
本発明は、より適切なタイミングで造影イメージングスキャンを実行することによって、より少ない被曝量で必要なX線造影CT画像を得ることが可能なX線CT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態に係るX線CT装置は、スキャン条件設定手段及びイメージング手段を備える。スキャン条件設定手段は、被検体に注入された造影剤の濃度の指標値に応じて不等間隔でX線検出データのサンプリング間隔を設定する。イメージング手段は、前記サンプリング間隔でX線検出データを収集し、収集したX線検出データに基づいて造影画像データを生成する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るX線CT装置の構成図。
【図2】図1に示すX線CT装置により実行される間欠スキャンと連続スキャンの開始タイミングを示す図。
【図3】直前にサンプリングされたCT値に基づいて、次のデータサンプリング開始タイミングを設定することによって図2に示すスキャン条件を設定する方法を説明する図。
【図4】直前にサンプリングされたCT値に基づいて、N回先のデータサンプリング開始タイミングを設定することによって図2に示すスキャン条件を設定する方法を説明する図。
【図5】直前にサンプリングされたCT値に基づいて、データサンプリング開始タイミングをT秒後に設定することによって図2に示すスキャン条件を設定する方法を説明する図。
【図6】図1に示すX線CT装置により被検体の造影イメージングを実行する際の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係るX線CT装置について添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の実施形態に係るX線CT装置の構成図である。
【0013】
X線CT装置1は、造影剤注入装置2、寝台3、撮影系4、制御系5、データ処理系6、入力装置7及び表示装置8を有する。
【0014】
造影剤注入装置2は、被検体Pに造影剤を注入する装置である。このため、X線CT装置1は、被検体Pの造影イメージングを実行する機能を備えている。そして、X線CT装置1には、血流のパフュージョン解析に用いられるダイナミック3次元(3D: three dimensional)ボリューム造影CT画像データを収集する機能が備えられる。
【0015】
撮影系4は、X線管4AとX線検出器4Bとを寝台3にセットされた被検体Pを挟んで対向配置して構成される。そして、X線管4Aから被検体PにX線を曝射し、被検体Pを透過したX線をX線検出器4BによりX線検出データとして検出できるように構成される。
【0016】
制御系5は、撮影系4を制御する機能を有する。そのために、制御系5は、高電圧発生装置9、駆動装置10及びスキャン制御装置11を備えている。高電圧発生装置9は、X線管4Aに高電圧を印加して所望のエネルギを有するX線を発生させる機能を有する。駆動装置10は、寝台3及び撮影系4を駆動させることによってX線の曝射位置及び方向を制御する機能を有する。
【0017】
スキャン制御装置11は、入力装置7からの入力情報に従ってスキャン条件を設定し、設定したスキャン条件に従ってスキャンが実行されるように高電圧発生装置9及び駆動装置10を制御する機能を有する。スキャンには、診断画像データとしてX線造影CT画像データを収集するイメージングスキャンと、イメージングスキャンに先だってイメージングスキャン用のスキャン条件を設定するためのプレスキャンがある。また、イメージングスキャンには、X線を断続的に被検体Pに照射してX線検出データの収集を繰り返す間欠スキャンと、X線の照射を停止させずに連続的にX線検出データの収集を行う連続スキャンとがある。
【0018】
スキャン制御装置11には、データ収集領域設定部12及びスキャンタイミング設定部13が備えられる。データ収集領域設定部12は、入力装置7から入力された指示情報に従ってX線検出データの収集領域をスキャン条件として設定する機能を有する。
【0019】
スキャンタイミング設定部13は、データ処理系6から取得した造影剤の濃度の指標値に基づいて間欠スキャン及び連続スキャンによるX線検出データの収集タイミングをスキャン条件としてリアルタイムに設定する機能を有する。造影剤の濃度の指標値としては、CT値が挙げられるが、データ処理後の画素値等の他の指標値を用いてもよい。以下、造影剤の濃度の指標値としてCT値を用いる場合について説明する。
【0020】
図2は、図1に示すX線CT装置1により実行される間欠スキャンと連続スキャンの開始タイミングを示す図である。
【0021】
図2において縦軸は、CT値を示し、横軸は時間を示す。また、図2中の曲線は、CT値を指標値とする造影剤の時間濃度曲線(TDC: time density curve)を、縦方向の線分は間欠スキャンの開始タイミングを、斜線部は連続スキャンの実行期間を、それぞれ示す。
【0022】
図2に示すように、TDCは、造影剤の注入後から徐々に増加し、ピークを呈した後、減少するカーブとなる。X線検出データは、CT値がピークとなる付近において高時間分解能を有するデータとして収集することが望ましい。
【0023】
そこで、スキャンタイミング設定部13は、CT値が相対的に小さい程、X線検出データのサンプリング間隔ΔTが長くなる一方、CT値が相対的に大きい程、X線検出データのサンプリング間隔ΔTが短くなるように不等間隔でX線検出データの収集タイミングを設定するように構成される。
【0024】
従って、X線検出データのサンプリング間隔ΔTが第1の閾値TH1未満となるときは、連続スキャンが実行され、X線検出データのサンプリング間隔ΔTが第1の閾値TH1以上となるときは、間欠スキャンが実行される。第1の閾値TH1は、例えば0.5秒程度に設定することができる。そして、隣接する間欠スキャンのスキャン間隔がX線検出データのサンプリング間隔ΔTとなる。
【0025】
更に、X線検出データのサンプリング間隔ΔTが第2の閾値TH2以上となる場合には、次の間欠スキャンが実行されずに終了するようにスキャン条件が設定される。
【0026】
換言すれば、CT値が大きい程、間欠スキャンのスキャン間隔が短くなる一方、CT値が小さい程、間欠スキャンのスキャン間隔が長くなり、かつCT値がある値以上となると連続スキャンが実行される一方、CT値がある値未満となると間欠スキャンが終了するというスキャン条件がスキャンタイミング設定部13により設定される。
【0027】
尚、連続スキャン内におけるX線検出データのサンプリング間隔ΔTは、制御容易化のため一定としてもよい。
【0028】
CT値に応じたX線検出データのサンプリング間隔ΔTは、様々なアルゴリズムに従って設定することができる。ここでは、3通りの設定方法の例について説明する。
【0029】
図3は、直前にサンプリングされたCT値に基づいて、次のデータサンプリング開始タイミングを設定することによって図2に示すスキャン条件を設定する方法を説明する図である。
【0030】
図3において、縦軸は、CT値を示し、横軸は時間を示す。また、図3中の曲線は、CT値を指標とする造影剤のTDCを、縦方向の線分はX線検出データ及びCT値のサンプリング開始タイミングを、それぞれ示す。尚、1回の間欠スキャンでは、1つのCT値がサンプリングされるため、サンプリング開始タイミングは間欠スキャンの開始タイミングに相当する。一方、連続スキャンでは、複数のCT値がサンプリングされるため、1回の連続スキャンにおいてサンプリングされるCT値の数だけサンプリング開始タイミングが設定される。
【0031】
図3に示すようにi回目(iは自然数)にサンプリングされたCT値に基づいてi+1回目のX線検出データのサンプリング開始タイミングを設定することができる。この場合、例えば式(1)のようにi+1番目におけるサンプリングの開始時刻ti+1をi番目におけるサンプリングの開始時刻tiから計算する計算式を定義することができる。
ti+1 = ti+ΔT = ti+K1/CTi (1)
但し、式(1)においてΔTはX線検出データのサンプリング間隔、K1は正の値をとる係数、CTiはi回目にサンプリングされたCT値である。
【0032】
式(1)に示す計算式によれば、i回目にサンプリングされたCT値が大きい程、サンプリング間隔ΔT = K1/CTiが小さくなるように、i+1番目におけるサンプリングの開始時刻ti+1を設定することができる。尚、K1は経験的に決定することができる。
【0033】
図4は、直前にサンプリングされたCT値に基づいて、N回先のデータサンプリング開始タイミングを設定することによって図2に示すスキャン条件を設定する方法を説明する図である。
【0034】
図4において、縦軸は、CT値を示し、横軸は時間を示す。また、図4中の曲線は、CT値を指標とする造影剤のTDCを、縦方向の線分はX線検出データ及びCT値のサンプリング開始タイミングを、それぞれ示す。
【0035】
図4に示すようにi回目にサンプリングされたCT値に基づいてi+N回目(Nは自然数)のX線検出データのサンプリング開始タイミングを設定することができる。図4は、N=3の場合の例を示している。この場合、例えば式(2)のようにi+N番目におけるサンプリングの開始時刻ti+Nをi番目におけるサンプリングの開始時刻tiから計算する計算式を定義することができる。
ti+N = ti+ΔTN = ti+K2/CTi (2)
但し、式(2)においてΔTNはX線検出データのN回分のサンプリング間隔、K2は正の値をとる係数、CTiはi回目にサンプリングされたCT値である。
【0036】
式(2)に示す計算式によれば、i回目にサンプリングされたCT値が大きい程、N回分のサンプリング間隔ΔTN = K2/CTiが小さくなるように、i+N番目におけるサンプリングの開始時刻ti+Nを設定することができる。尚、1番目からN-1番目おけるサンプリングの開始時刻t1, t2, ..., tN-1は、任意の初期値に設定すればよい。例えば、2番目からN-1番目おけるサンプリングの開始時刻t2, ..., tN-1を式(1)により決定してもよい。或いは、K1とともに経験的に決定することもできる。
【0037】
図5は、直前にサンプリングされたCT値に基づいて、データサンプリング開始タイミングをT秒後に設定することによって図2に示すスキャン条件を設定する方法を説明する図である。
【0038】
図5において、縦軸は、CT値を示し、横軸は時間を示す。また、図5中の曲線は、CT値を指標とする造影剤のTDCを、縦方向の線分はX線検出データ及びCT値の開始タイミングを、それぞれ示す。
【0039】
図5に示すように、最初のj回分のサンプリングの開始時刻t1, t2, ..., tjを初期値に設定し、CT値がサンプリングされる度にT秒後にサンプリングの開始時刻tTを設定することもできる。図5は、j=2とした場合の例を示す。この場合、例えば式(3)のようにT秒後におけるサンプリングの開始時刻tTを基準となるCT値のサンプリング開始時刻t0から計算する計算式を定義することができる。
tT = t0+T = t0+K3/CT0 (3)
但し、式(3)においてK3は正の値をとる係数、CT0は基準となるCT値である。尚、K3は経験的に決定することができる。
【0040】
式(3)によりサンプリングの開始時刻tTを設定すると、開始時刻tTは基準となるCT値のサンプリング時刻t0及びCT値に応じた経過時間T = K3/CT0のみに依存する。すなわち、サンプリングの開始時刻tTは、サンプリングの順序とは無関係にCT値(CT0)に応じて決定される。このため、図5に示すようにTDCのカーブ形状が乱れて極小値が出現するような場合であっても、適切にサンプリングの開始時刻tTを設定することができる。図5に示すように、TDCのカーブ形状によっては、サンプリング順序の逆転も起こり得る。
【0041】
図3から図5に示すサンプリングの開始時刻の設定方法は、基準となるCT値から1つのサンプリングの開始時刻を設定する方法であるが、基準となるCT値から2つ以上のサンプリングの開始時刻を設定するようにしてもよい。
【0042】
また、スキャンタイミング設定部13に、サンプリング間隔ΔTの自動補正機能を設けることができる。例えば、ノイズや体動等の影響によって図5に示すようにCT値が滑らかに変化しない場合には、サンプリング間隔ΔTが局所的に大きくなったり逆に小さくなる恐れがある。このため、あるサンプリング間隔ΔTに対する第1の閾値TH1又は第2の閾値TH2を用いた閾値処理の結果が、前後におけるサンプリング間隔ΔTに対する閾値処理の結果と異なる可能性がある。
【0043】
そこで、過去に設定したX線検出データのサンプリングタイミングに基づいて、特定のサンプリングタイミングが異常値であるか否かの判定を行い、異常値であると判定されたサンプリングタイミングを過去に設定されたサンプリングタイミングに基づいて補正することができる。
【0044】
例えば、図4に示すようにあるCT値に基づいて3回以上先のX線検出データのサンプリングタイミングを設定するようにすれば、サンプリングが実行される前にあるサンプリング間隔ΔTを前後のサンプリング間隔ΔTと比較することができる。そこで、あるサンプリング間隔ΔTに対する閾値処理の結果が前後におけるサンプリング間隔ΔTに対する閾値処理の結果と異なる場合には、そのサンプリング間隔ΔTを異常値として検出することができる。
【0045】
更に、異常値として検出されたサンプリング間隔ΔTを、前後のサンプリング間隔ΔTや過去のサンプリング間隔ΔTに基づいて補間等の処理によって補正することができる。これにより、造影剤のTDCの形状が乱れている場合であっても、適切にX線検出データのサンプリングタイミングを設定することができる。
【0046】
また、図3に示すように、2回以上先のX線検出データのサンプリングタイミングが設定されていない場合であっても、過去のサンプリング間隔ΔTの履歴情報から微分処理等のデータ処理によって極端に変動したサンプリング間隔ΔTを異常値として検出することができる。この場合、過去のサンプリング間隔ΔTの履歴情報から外挿やフィッティング等の処理によって異常値として検出されたサンプリング間隔ΔTを補正することができる。
【0047】
次に図1を参照した説明に戻る。データ処理系6は、再構成部14及びCT値測定部15を有する。再構成部14は、X線検出データに対する画像再構成処理によってX線CT画像データを生成する機能と、生成したX線CT画像データを表示装置8に出力する機能を有する。
【0048】
CT値測定部15は、入力装置7から入力された指示情報に従ってROIの設定用の画像データを参照してROIを設定する機能、X線CT画像データに基づいて、設定されたROI内の各画素におけるCT値の代表値を測定する機能及び測定したCT値の代表値をROIに対応するCT値としてスキャンタイミング設定部13に与える機能を有する。ROI内のCT値の代表値としては、例えば、CT値の平均値、最大値或いは中央値等の値を用いることができる。以降では、CT値の代表値も単にCT値と称する。
【0049】
また、必要に応じてCT値測定部15には、X線CT画像データに基づいて被検体Pの特定の部位における動き量を任意の画像処理によって検出し、検出した動き量に応じてROIを自動修正する機能が備えられる。
【0050】
次にX線CT装置1の動作および作用について説明する。
【0051】
図6は、図1に示すX線CT装置1により被検体Pの造影イメージングを実行する際の流れを示すフローチャートである。
【0052】
まずステップS1において、スキャン制御装置11による制御によって、高電圧発生装置9及び駆動装置10を通じて撮影系4及び寝台3が制御される。そして、撮影系4は、ROIの設定用の画像データを収集する被曝量の少ないプレスキャンを実行する。
【0053】
すなわち、スキャン制御装置11のデータ収集領域設定部12において、入力装置7から入力された指示情報に従ってROIの設定用の画像データの収集領域が設定される。そして、スキャン制御装置11からの制御信号に従って、駆動装置10が寝台3及び撮影系4の相対位置を制御する。一方、スキャン制御装置11からの制御信号に従って高電圧発生装置9から高電圧が撮影系4のX線管4Aに印加される。これにより、X線管4Aから被検体PにX線が曝射され、被検体Pを透過したX線がX線検出器4BによりX線検出データとして検出される。検出されたX線検出データは、データ処理系6に出力される。
【0054】
そうすると、再構成部14は、X線検出データに対する画像再構成処理によって画像データを生成する。生成された画像データは表示装置8においてROI設定用の画像として表示される。
【0055】
次に、ステップS2において、CT値測定部15は、入力装置7から入力された指示情報に従って表示装置8に表示された画像を通じてCT値の計測用のROIを設定する。
【0056】
次に、ステップS3において、造影剤注入装置2から被検体Pに造影剤がボーラス注入される。
【0057】
次に、ステップS4において、スキャン制御装置11による制御下において、撮影系4は、間欠スキャンを開始する。すなわち、スキャン制御装置11は、間欠スキャンの実行指示を制御信号として撮影系4に与える。そして、プレスキャンと同様な流れでX線検出データが収集され、再構成部14においてX線検出データからX線CT画像データが再構成される。
【0058】
次に、ステップS5において、CT値測定部15は、X線CT画像データのROI内におけるCT値の測定し、測定したCT値をスキャンタイミング設定部13に与える。
【0059】
尚、ROIは被検体Pの体動等の要因によってCT値の計測対象となる領域からずれる場合がある。このため、イメージングスキャン中に入力装置7の操作によりCT値測定部15にROIの修正指示情報を入力することによって手動でROIを修正することができる。或いは、CT値測定部15がX線CT画像データに対する画像処理によってROI部分の動き量を測定し、動き量に追従してROIを自動補正するようにしてもよい。
【0060】
次に、ステップS6において、スキャンタイミング設定部13は、CT値に基づいてX線検出データのサンプリングタイミングを決定する。決定方法としては、例えば図3から図5に示す方法を利用できる。すなわち、スキャンタイミング設定部13は、CT値が小さい程、X線検出データのサンプリングタイミングを遅く設定し、CT値が大きい程、X線検出データのサンプリングタイミングを早く設定する。
【0061】
次に、ステップS7において、スキャンタイミング設定部13は、直前の間欠スキャンの開始タイミングと次回の間欠スキャンの開始タイミングとの差、つまりX線検出データのサンプリング間隔ΔTを計算する。そして、スキャンタイミング設定部13は、計算されたサンプリング間隔ΔTを連続スキャンの開始条件として設定された第1の閾値TH1と比較する。
【0062】
造影剤の注入時刻からの経過時間が短く、CT値が小さい場合には、サンプリング間隔ΔTは長く設定されている。従って、サンプリング間隔ΔTは第1の閾値TH1以上であると判定される。
【0063】
この場合、ステップS8において、スキャンタイミング設定部13は、サンプリング間隔ΔTを、間欠スキャンの終了条件として設定された第2の閾値TH1と比較する。
【0064】
造影剤のTDCがピークを超える前は、CT値が相対的に小さくても増加傾向にある。このため、CT値は所定の値以上となり、サンプリング間隔ΔTは、第2の閾値TH1未満であると判定される。
【0065】
この場合、再びステップS4において間欠スキャンが開始される。そして、造影剤がROIに到達することによりROIにおけるCT値が上昇し、ステップS7において、サンプリング間隔ΔTが第1の閾値TH1未満であると判定されるまで間欠スキャンが繰り返される。
【0066】
ステップS7において、サンプリング間隔ΔTが第1の閾値TH1未満であると判定されると、ステップS9において、スキャン制御装置11による制御下において、撮影系4は、連続スキャンを開始する。すなわち、スキャン制御装置11は、連続スキャンの実行指示を制御信号として撮影系4に与える。そして、間欠スキャンと同様な流れで連続的にX線検出データがダイナミック収集され、再構成部14においてX線検出データからX線造影CT画像データが再構成される。
【0067】
連続スキャンにおいて、X線造影CT画像データが生成されると、再びステップS5においてROI内におけるCT値が測定される。そして、ステップS7において、サンプリング間隔ΔTが第1の閾値TH1以上であると判定されるまで連続スキャン、CT値の測定及びサンプリングタイミングの設定が繰り返される。
【0068】
造影剤のTDCがピークを越え、CT値が減少するとサンプリング間隔ΔTが長く設定される。このため、ステップS7において、サンプリング間隔ΔTが第1の閾値TH1以上であると判定される。この場合、ステップS8において、サンプリング間隔ΔTが第2の閾値TH1未満であると判定されると、再びステップS4において間欠スキャンが開始される。
【0069】
そして、ステップS8において、サンプリング間隔ΔTが第2の閾値TH1以上であると判定されるまで、間欠スキャンが繰り返される。更に、時間の経過によりCT値が十分に減少し、ステップS8において、サンプリング間隔ΔTが第2の閾値TH1以上であると判定されると、ステップS10において、スキャン制御装置11による制御によって間欠スキャンが終了する。すなわち、スキャン制御装置11は、間欠スキャンの停止指示を制御信号として撮影系4に与え、撮影系4は間欠スキャンを終了させる。
【0070】
上記の流れは一例であり、造影剤のTDCの形状によっては連続スキャンが実行されずに間欠スキャンが終了する場合や連続スキャン終了後に間欠スキャンが実行され、再度連続スキャンが開始される場合などが起こり得る。
【0071】
そこで、必要に応じてスキャンタイミング設定部13が、X線検出データのサンプリング間隔ΔTに対するエラー検出を行い、サンプリング間隔ΔTが異常値であると判定された場合には、サンプリング間隔ΔTの自動補正を行う。例えば、上述したように、あるサンプリング間隔ΔTに対する閾値処理の結果が前後におけるサンプリング間隔ΔTに対する閾値処理の結果と異なる場合には、そのサンプリング間隔ΔTを異常値として検出することができる。そして、異常値として検出されたサンプリング間隔ΔTは補間処理等の処理によって自動補正することができる。
【0072】
つまり以上のようなX線CT装置1は、造影スキャンを行う場合に、着目領域に設定したROI内におけるCT値に応じてX線検出データのサンプリング間隔、スキャンの開始タイミング及びスキャンの終了タイミングを動的に決定するようにしたものである。更に、X線CT装置1は、CT値が上昇した場合には、間欠スキャンを自動的に停止させて連続スキャンを開始する一方、その後CT値が下降した場合には、連続スキャンを自動的に停止させて間欠スキャンを開始するようにしたものである。
【0073】
このため、X線CT装置1によれば、造影剤の濃度に応じた適切な間隔でデータ収集を行うことができる。この結果、スキャンの回数を診断画像の生成に必要な回数とし、被検体Pの過剰な被曝を抑制することができる。また、X線CT装置1によれば、従来のような間欠スキャンと連続スキャンとを組み合わせたプランの作成作業を省くことができる。
【0074】
更に、X線CT装置1によれば、ノイズや体動によりCT値が異常値となっても、エラー検出処理及び補正処理によってX線検出データのサンプリング間隔を適切な間隔に設定することができる。このため、意図しないスキャンの開始による無用な被曝を回避する一方、意図しないスキャンの終了も回避することができる。
【0075】
以上、特定の実施形態について記載したが、記載された実施形態は一例に過ぎず、発明の範囲を限定するものではない。ここに記載された新規な方法及び装置は、様々な他の様式で具現化することができる。また、ここに記載された方法及び装置の様式において、発明の要旨から逸脱しない範囲で、種々の省略、置換及び変更を行うことができる。添付された請求の範囲及びその均等物は、発明の範囲及び要旨に包含されているものとして、そのような種々の様式及び変形例を含んでいる。
【符号の説明】
【0076】
1 X線CT装置
2 造影剤注入装置
3 寝台
4 撮影系
4A X線管
4B X線検出器
5 制御系
6 データ処理系
7 入力装置
8 表示装置
9 高電圧発生装置
10 駆動装置
11 スキャン制御装置
12 データ収集領域設定部
13 スキャンタイミング設定部
14 再構成部
15 CT値測定部
P 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に注入された造影剤の濃度の指標値に応じて不等間隔でX線検出データのサンプリング間隔を設定するスキャン条件設定手段と、
前記サンプリング間隔で前記X線検出データを収集し、収集したX線検出データに基づいて造影画像データを生成するイメージング手段と、
を備えるX線CT装置。
【請求項2】
前記スキャン条件設定手段は、前記サンプリング間隔の異常を検出した場合には、過去に設定されたサンプリング間隔に基づいて補正するように構成される請求項1記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記スキャン条件設定手段は、前記サンプリング間隔に対する閾値処理によって前記X線検出データを断続的に収集する間欠スキャンと前記X線検出データを連続的に収集する連続スキャンの各開始タイミングを設定するように構成される請求項1記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記スキャン条件設定手段は、前記指標値に基づいて、3回以上先の前記X線検出データのサンプリングタイミングを設定するように構成される請求項1記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記スキャン条件設定手段は、前記X線検出データの複数回分のサンプリングタイミングを初期値として設定し、前記X線検出データに基づく前記指標値がサンプリングされる度に前記指標値に応じた経過時間後に前記X線検出データのサンプリングタイミングを設定するように構成される請求項1記載のX線CT装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−110572(P2012−110572A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263619(P2010−263619)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【出願人】(594164531)東芝医用システムエンジニアリング株式会社 (892)
【Fターム(参考)】